JP2019119869A - 微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法 - Google Patents

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【課題】低コスト化かつ工程の簡略化が図られ、優れた分散性を有する微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法を提供すること。【解決手段】アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に修飾基を有する化合物が結合してなる、平均繊維径が1μm以上300μm以下の疎水変性セルロース繊維を有機溶媒中で微細化処理する工程を含む、微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法であって、前記修飾基を有する化合物が特定の構造を有する1種以上のアミンであり、前記疎水変性セルロース繊維における修飾基の総質量がセルロース繊維量100質量部に対して1質量部以上200質量部以下である、微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法に関する。
従来、有限な資源である石油由来のプラスチック材料が多用されていたが、近年、環境に対する負荷の少ない技術が脚光を浴びるようになり、かかる技術背景の下、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロース繊維、その中でも特に微細セルロース繊維を用いた材料は、種々の機械的特性が著しく向上することから注目されている。
通常、微細セルロース繊維表面は親水的であるために、疎水溶媒や疎水的な樹脂中では凝集してしまう。そのために上記のような系で用いる際は微細セルロース繊維を疎水的に改質する必要がある。
微細セルロース繊維を疎水的に改質する手法はいくつか考案されているものの、そのほとんどはセルロース繊維を一度水系で分散処理を施し微細化した後、改質を行い、その後再び有機溶媒系で分散処理を施す方法である。
特許文献1には、セルロースI型結晶構造を有するセルロースを水に分散させた後、そのセルロースの水酸基を、カルボキシ基を有する置換基に変換する工程と、還元剤による上記セルロースの還元工程と、上記セルロースの分散媒である水を有機溶剤に置換する工程と、上記分散媒置換後のセルロースを特定のポリエーテルアミンによる中和反応により疎水化する工程と、上記疎水化後のセルロースをナノ解繊し、有機溶剤中にセルロースナノファイバーが分散されたゲル状組成物を得る工程と、を備えたゲル状組成物の製法が開示されている。
また非特許文献1には、バルキーな4級アンモニウムカウンターイオンが、溶媒中におけるTEMPO酸化セルロースのナノ分散性に向上することが開示されている。
しかしながら、特許文献1や非特許文献1においては、それぞれポリエーテルアミンや4級アンモニウムカウンターイオンを手段とした技術であり、改質基種が限定されている。加えて、特許文献1では、高分子量のアミンを多量に改質基に用いるため、非特許文献2にあるように改質基重量がセルロース重量に対して過多となって可塑剤的に振舞い、樹脂等の補強材として用いた際に微細セルロース繊維の優れた物性が損なわれるといった課題がある。
特許5944564号
M.Shimizu, et al., Biomacromolecules, 15 2014 H.Soeta, et al., Composites Science and Technology, 147 2017
本発明は、低コスト化かつ工程の簡略化が図られ、優れた分散性を有する微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法に関する。
本発明は、下記〔1〕〜〔5〕に関する。
〔1〕 アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に修飾基を有する化合物が結合してなる、平均繊維径が1μm以上300μm以下の疎水変性セルロース繊維を有機溶媒中で微細化処理する工程を含む、微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法であって、前記修飾基を有する化合物が下記一般式(1)〜(3)で示されるアミンからなる群より選択される1種以上のアミンであり、前記疎水変性セルロース繊維における修飾基の総質量がセルロース繊維量100質量部に対して1質量部以上200質量部以下である、微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法。
NH−R (1)
NH−R2’ (2)
N−R3’3’’ (3)
〔一般式(1)におけるRは炭素数6以上30以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、一般式(2)におけるR及びR2’は、それぞれ同一又は異なっていてもよく、R及びR2’の総炭素数が8以上40以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、一般式(3)におけるR、R3’及びR3’’は、それぞれ同一又は異なっていてもよく、R、R3’及びR3’’の総炭素数が9以上50以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基である。〕
〔2〕 前記〔1〕に記載の製造方法によって製造された微細化疎水変性セルロース繊維と樹脂とを混合する工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
〔3〕 前記〔2〕に記載の製造方法によって製造された樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体の製造方法。
〔4〕 前記〔1〕に記載の製造方法によって製造された微細化疎水変性セルロース繊維と樹脂とを混合して得られる樹脂組成物。
〔5〕 前記〔4〕に記載の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体。
本発明の製造方法によれば、低コスト化かつ工程の簡略化が図られ、優れた分散性を有する微細化疎水変性セルロース繊維を製造することができる。
本発明の製造方法は、特定の修飾基を有する疎水変性セルロース繊維を微細化処理する工程を含む。本発明のような特定の修飾基に着目した製法により、更なる低コスト化と工程の簡略化を達成し、分散性に優れる発明を得る発想はない。本発明で用いられる特定の修飾基を有する化合物は、セルロース繊維と結合した際の立体斥力が大きくなる等の理由から、疎水変性セルロース繊維の調製や微細化処理の際に、セルロース繊維の分散性がより高くなり、その結果、微細化疎水変性セルロース繊維も高い分散性を発揮するものと推定される。
<微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法>
本発明に使用される疎水変性セルロース繊維は、順序を問わず、原料のセルロース繊維にアニオン性基を導入する工程、及び修飾基を導入する工程を行うことによって製造することができ、必要に応じて短繊維化処理する工程を、順序を問わず、さらに実施することができる。
〔セルロース繊維〕
原料のセルロース繊維としては、環境負荷の観点から、天然セルロース繊維を用いることが好ましい。天然セルロース繊維としては、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
原料のセルロース繊維の平均繊維径は特に限定されないが、取扱い性及びコストの観点から、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは5μm以上であり、更に好ましくは15μm以上であり、一方、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは60μm以下である。
また、原料のセルロース繊維の平均繊維長は特に限定されないが、入手性及びコストの観点から、好ましくは1,000μmを超えるものであり、より好ましくは1,200μm以上であり、更に好ましくは1,500μm以上であり、好ましくは10,000μm以下であり、より好ましくは5,000μm以下、更に好ましくは3,000μm以下である。原料のセルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
〔アニオン変性セルロース繊維〕
本発明で用いられるアニオン性基を含むアニオン変性セルロース繊維(単に「アニオン変性セルロース繊維」とも称する。)は、セルロース繊維中にアニオン性基を含むようにアニオン変性されたセルロース繊維である。
アニオン変性セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長の好適範囲は、原料のセルロース繊維のものと同等である。
アニオン変性セルロース繊維は、安定的な微細化及び修飾基導入の観点から、アニオン性基の含有量が、好ましくは0.1mmol/g以上であり、より好ましくは0.5mmol/g以上であり、更に好ましくは0.8mmol/g以上である。その上限は、好ましくは3mmol/g以下であり、より好ましくは2mmol/g以下であり、更に好ましくは1.8mmol/g以下である。このようなアニオン性基の含有量の範囲とするためには、例えば酸化処理等の処理条件を調整したり、還元処理を行うことによって制御することができる。アニオン性基含有量とは、アニオン性基含有セルロース繊維を構成するセルロース繊維中のアニオン性基の総量を意味し、後述の実施例に記載の方法により測定される。
アニオン変性セルロース繊維中に含まれるアニオン性基は、例えばカルボキシ基、スルホン酸基及びリン酸基等が挙げられ、セルロース繊維への導入効率の観点から、カルボキシ基であることが好ましい。
アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基の対となるイオン(カウンターイオン)としては、例えば、製造時のアルカリ存在下で生じるナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びアルミニウムイオン等の金属イオンや、これらの金属イオンを酸で置換して生じるプロトン等が挙げられる。
(アニオン性基を導入する工程)
本発明で用いられるアニオン変性セルロース繊維は、対象のセルロース繊維に酸化処理又はアニオン性基の付加処理を施して、少なくとも1つ以上のアニオン性基を導入してアニオン変性させることによって得ることができる。
アニオン変性の対象となるセルロース繊維としては、原料のセルロース繊維が挙げられる。分散性の観点から、原料のセルロース繊維を、アルカリ加水分解処理や酸加水分解処理等で短繊維化処理した平均繊維長が1μm以上であり、1,000μm以下であるセルロース繊維(以下、短繊維化セルロース繊維とも言う。)を用いることが好ましい。
(i)セルロース繊維にアニオン性基としてカルボキシ基を導入する場合
セルロース繊維にアニオン性基としてカルボキシ基を導入する方法としては、例えばセルロースの水酸基を酸化してカルボキシ基に変換する方法や、セルロースの水酸基にカルボキシ基を有する化合物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させる方法が挙げられる。
前記セルロースの水酸基を酸化処理する方法としては特に制限されないが、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(TEMPO)を触媒として、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤及び臭化ナトリウム等の臭化物を反応させて酸化処理する方法が適用できる。より詳細には、特開2011−140632号公報に記載の方法を参照することができる。
TEMPOを触媒としてセルロース繊維の酸化処理を行うことによって、セルロース構成単位のC6位のヒドロキシメチル基(−CHOH)が選択的にカルボキシ基に変換される。特にこの方法は、原料のセルロース繊維表面の酸化対象となるC6位の水酸基の選択性に優れており、且つ反応条件も穏やかである点で有利である。従って、本発明におけるアニオン変性セルロース繊維の好ましい態様として、セルロース構成単位のC6位がカルボキシ基であるセルロース繊維が挙げられる。本明細書において、かかるセルロース繊維を「酸化セルロース繊維」という場合がある。
セルロース繊維へのカルボキシ基の導入に使用するための、カルボキシ基を有する化合物は特に限定されないが、具体的にはハロゲン化酢酸が挙げられる。ハロゲン化酢酸としては、クロロ酢酸等が挙げられる。
セルロース繊維へのカルボキシ基の導入に使用するための、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物及びそれらの誘導体は特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸及び無水アジピン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物やカルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。これらの化合物は疎水基で置換されていてもよい。
(ii)セルロース繊維にアニオン性基としてスルホン酸基又はリン酸基を導入する場合
セルロース繊維にアニオン性基としてスルホン酸基を導入する方法としては、セルロース繊維に硫酸を添加し加熱する方法等が挙げられる。
セルロース繊維にアニオン性基としてリン酸基を導入する方法としては、乾燥状態又は湿潤状態のセルロース繊維に、リン酸又はリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合する方法や、セルロース繊維の分散液にリン酸又はリン酸誘導体の水溶液を添加する方法等が挙げられる。これらの方法を採用した場合、一般的に、リン酸又はリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合または添加した後に、脱水処理及び加熱処理等を行う。
〔疎水変性セルロース繊維〕
本発明における疎水変性セルロース繊維とは、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に、修飾基を有する化合物としてのアミン、即ち、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンからなる群より選択される1種以上のアミンが結合してなる、平均繊維径が1μm以上300μm以下のセルロース繊維である。
疎水変性セルロース繊維の平均繊維径は、分散性の観点から1μm以上であり、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは15μm以上であり、一方、同様の観点から300μm以下であり、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは60μm以下である。疎水変性セルロース繊維の平均繊維長は、分散性、入手性及び経済性の観点から、好ましくは1,000μm以上であり、より好ましくは1,200μm以上であり、更に好ましくは1,500μm以上であり、一方、同様の観点から好ましくは10,000μm以下であり、より好ましくは5,000μm以下であり、更に好ましくは3,000μm以下である。疎水変性セルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
前記疎水変性セルロース繊維における修飾基の総質量としては、分散性の観点から、セルロース繊維量100質量部に対して1質量部以上であり、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは15質量部以上である。一方、当該繊維を樹脂等に適用した場合の強度等の補強性能を発現させる観点から、セルロース繊維量100質量部に対して200質量部以下であり、好ましくは150質量部以下であり、より好ましくは100質量部以下である。本明細書において、疎水変性セルロース繊維における修飾基の総質量は、後述の実施例に記載の方法によって求めることができる。
疎水変性セルロース繊維における修飾基の平均結合量は、分散性を向上させる観点から、好ましくは0.01mmol/g以上であり、より好ましくは0.05mmol/g以上であり、更に好ましくは0.1mmol/g以上であり、更に好ましくは0.3mmol/g以上であり、更に好ましくは0.5mmol/g以上である。また、反応性の観点から、好ましくは3mmol/g以下であり、より好ましくは2.5mmol/g以下であり、更に好ましくは2mmol/g以下であり、更に好ましくは1.8mmol/g以下であり、更に好ましくは1.5mmol/g以下である。修飾基として任意の2種以上の修飾基が同時にセルロース繊維に導入されている場合、修飾基の平均結合量は、導入されている修飾基の合計量が前記範囲内であることが好ましい。
疎水変性セルロース繊維における修飾基の導入率は、いずれの修飾基についても、分散性の観点から、好ましくは5%以上であり、より好ましくは10%以上であり、更に好ましくは15%以上であり、反応性の観点から、好ましくは100%以下であり、より好ましくは60%以下であり、更に好ましくは50%以下である。
本明細書において、修飾基の平均結合量及び導入率は、改質基種の添加量、改質基種の種類、反応温度、反応時間、溶媒などによって調整することができる。修飾基の平均結合量(mmol/g)及び導入率(%)とは、疎水変性セルロース繊維表面のアニオン性基に修飾基が導入された量及び割合のことである。疎水変性セルロース繊維のアニオン性基含有量は公知の方法(例えば、滴定、IR測定等)に従って測定することで算出できる。修飾基の平均結合量及び導入率は、例えば、実施例に記載された方法で算出される。
(セルロース繊維に修飾基を導入する工程)
本発明で用いられる疎水変性セルロース繊維は、対象のセルロース繊維に所定の修飾基を導入する(「改質する」とも言う。)ことによって得ることができる。修飾基導入の対象となるセルロース繊維は、原料のセルロース繊維にアニオン性基を導入する工程を経て得られたアニオン変性セルロース繊維である。
本発明で用いられる疎水変性セルロース繊維は、アニオン変性セルロース繊維に、後述の修飾基を有する化合物を有機溶媒中で導入する工程(「工程(A)」とする。)を経て得られるものが好ましい。
工程(A)で用いられる有機溶媒としては、用いるアミンが溶解する溶媒であれば特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、イソプロパノール(IPA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン(THF)、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、工程(A)における有機溶媒と、微細化処理工程における有機溶媒とが同一であることが、工程の簡略化の観点からより好ましい。
疎水溶媒や疎水的な樹脂中への分散性を向上させる観点から、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に、修飾基を有する化合物に由来する修飾基が導入される。修飾基を有する化合物は、アニオン性基にイオン結合及び/又は共有結合を介して結合することがより好ましい。具体的な結合様式としては、分散性の観点から、アミン塩等とのイオン結合や、アミド結合、エステル結合及びウレタン結合等の共有結合が挙げられる。
結合様式がイオン結合の場合には、特開2015−143336号公報を参照して修飾基を導入することができる。ここで、修飾基を有する化合物としては、下記一般式(1)〜(3)で示されるアミンからなる群より選択される1種以上のアミンである。
NH−R (1)
NH−R2’ (2)
N−R3’3’’ (3)
〔一般式(1)におけるRは炭素数6以上30以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、一般式(2)におけるR及びR2’は、それぞれ同一又は異なっていてもよく、R及びR2’の総炭素数が8以上40以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、一般式(3)におけるR、R3’及びR3’’は、それぞれ同一又は異なっていてもよく、R、R3’及びR3’’の総炭素数が9以上50以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基である。〕
における炭素数は、分散性の観点から、好ましくは8以上であり、より好ましくは10以上であり、更に好ましくは12以上である。一方、同様の観点から、好ましくは24以下であり、より好ましくは20以下であり、更に好ましくは18以下である。
及びR2’の総炭素数は、分散性の観点から、好ましくは8以上であり、より好ましくは10以上であり、更に好ましくは12以上である。一方、同様の観点から、好ましくは36以下であり、より好ましくは30以下であり、更に好ましくは24以下である。
、R3’及びR3’’の総炭素数は、分散性の観点から、好ましくは9以上であり、より好ましくは10以上であり、更に好ましくは12以上である。一方、同様の観点から、好ましくは42以下であり、より好ましくは36以下であり、更に好ましくは24以下である。
第1級アミン〜第3級アミンとしては、例えば、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミン、オレイルアミン、オクタデシルアミン、ジメチルベヘニルアミンが挙げられる。これらの中では、分散性の観点から、好ましくは、ドデシルアミン、オレイルアミン、ステアリルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミンである。
結合様式が共有結合の場合、例えばアミド結合を介して修飾する場合、特開2015−143337号公報を参照して修飾基を導入することができる。ここで、修飾基を有する化合物として、例えば、一般式(1)で示されるアミン及び/又は一般式(2)で示されるアミンを用いることが好ましい。
修飾基を有する化合物が修飾基として上述した鎖式飽和炭化水素基を有する場合、該鎖式飽和炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってもよい。鎖式飽和炭化水素基の炭素数は、分散性を向上させる観点から、1つの修飾基における炭素数は好ましくは6以上であり、より好ましくは8以上であり、更に好ましくは10以上であり、同様の観点から、好ましくは30以下であり、より好ましく24以下であり、更に好ましくは18以下である。具体的には、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ジヘキシル基、トリヘキシル基等が挙げられる。
修飾基を有する化合物が修飾基として上述した鎖式不飽和炭化水素基を有する場合、該鎖式不飽和炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってもよい。鎖式不飽和炭化水素基の炭素数は、分散性を向上する観点から、1つの修飾基における炭素数は好ましくは6以上であり、より好ましくは8以上であり、更に好ましくは10以上であり、同様の観点から、好ましくは30以下であり、より好ましくは24以下であり、更に好ましくは18以下である。具体的にはオレイル基等が挙げられる。
上述した各種の修飾基を提供し得る、一般式(1)〜(3)で示されるアミンは、市販品を用いることができ、また公知の方法に従って調製することができる。
〔微細化疎水変性セルロース繊維〕
微細化疎水変性セルロース繊維とは、平均繊維径及び平均繊維長が以下に示す範囲内にある疎水変性セルロース繊維をいう。
微細化疎水変性セルロース繊維の平均繊維径としては、分散性の観点から、好ましくは0.1nm以上であり、より好ましくは0.5nm以上であり、更に好ましくは1nm以上であり、更に好ましくは2nm以上である。また、同様の観点から、好ましくは200nm以下であり、より好ましくは100nm以下であり、更に好ましくは50nm以下であり、更に好ましくは20nm以下である。
微細化疎水変性セルロース繊維の平均繊維長としては、分散性の観点から、好ましくは50nm以上であり、より好ましくは80nm以上であり、さらに好ましくは100nm以上である。また、同様の観点から、好ましくは2,000nm以下であり、より好ましくは1,000nm以下であり、更に好ましくは800nm以下である。微細化疎水変性セルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長は後述の実施例に記載の方法により測定される。
(微細化疎水変性セルロール繊維を調製する工程)
本工程は、前述の疎水変性セルロース繊維を特定の有機溶媒中で微細化処理する工程であり、微細化処理によって微細化疎水変性セルロール繊維が得られる。微細化処理工程では、前述の疎水変性セルロース繊維が有機溶媒に分散した状態のものや、有機溶媒を除去したものについては新たに溶媒に分散させたものに対して微細化処理を行うことが好ましく、工程(A)を経た場合は工程(A)における有機溶媒と同一の有機溶媒に分散した状態のものに対して微細化処理を行うことがより好ましい。具体的には、特開2013−151661号の微細化工程の説明を参照して実施することができる。
(分散機)
微細化処理で使用できる装置としては公知の分散機が好適なものとして挙げられる。例えば、撹拌翼を備えた撹拌機、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、ロールミル、短軸混練機、2軸機混練機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。装置の運転条件は、添付の取扱い説明書を参照しつつ適宜設定すればよい。
(有機溶媒)
微細化処理の際に使用できる分散媒としての有機溶媒は、分散性の観点から、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン(THF)、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、n−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、t−ブチルアルコール、シクロヘキサノン、アセトニトリル、シリコーンオイル、1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン及びメチルエチルケトンからなる群より選択される1種以上の有機溶媒を含むものであり、より好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、n−プロパノール、酢酸エチル及びエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒を含むものであり、更に好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドンからなる群より選択される1種以上の有機溶媒を含むものである。
また、上記以外の有機溶媒として、反応性の官能基を有する有機溶媒も使用することができる。反応性の官能基を有する有機溶媒としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸n−へキシル、メタクリル酸n−へキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、フェニルグリシジルエーテルアクリレート等のアクリレート類;ヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のウレタンプレポリマー類;n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ステアリン酸グリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類;クロロスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、ビニル安息香酸等が挙げられる。
このような有機溶媒は疎水変性セルロース繊維との親和性が高いと推定されるため、疎水変性セルロース繊維の調製や微細化処理の際にかかる有機溶媒を使用することによって、セルロース繊維の分散性がより高くなり、その結果、微細化疎水変性セルロース繊維も高い分散性を発揮するものと推定される。
本発明に用いられる有機溶媒は、本発明の効果をより良く発揮させる観点から、25℃における誘電率が好ましくは75以下であり、より好ましくは55以下であり、更に好ましくは45以下であり、一方、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、更に好ましくは3以上である。なお、有機溶媒の誘電率は、液体用誘電率計Model871(日本ルフト社製)を用い25℃にて測定することができる。
微細化処理における有機溶媒の使用量としては、疎水変性セルロース繊維の分散状態を維持できる程度であればよく、特に制限はないが、例えば、懸濁液等の処理対象における固形分含有量として、好ましくは0.01質量%以上となる量であり、好ましくは50質量%以下となる量である。
かくして、疎水変性セルロース繊維に修飾基が結合してなる微細化疎水変性セルロース繊維を得ることができる。微細化疎水変性セルロース繊維は前記有機溶媒に分散した状態(即ち、分散体)で調製される。微細化疎水変性セルロース繊維は分散体の状態で使用することもできるし、あるいは乾燥処理等により分散体から有機溶媒を除去して、乾燥した粉末状体で使用することもできる。
前記分散体には本発明の効果を損なわない任意成分が含まれていてもよい。分散体におけるこれらの任意成分の含有量は、配合量で換算して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下である。任意成分が2種以上の場合、任意成分の量は各任意成分の合計量である。
本発明の製造方法によって製造された微細化疎水変性セルロース繊維は分散性に優れたものであるが、修飾基を有する化合物と微細化疎水変性セルロース繊維の分散性とに着目し、改質工程で特定の修飾基を有する化合物を使用することにより、製造方法の更なる低コスト化と工程の簡略化を達成し得た本発明は、従来より知られた発明からは発想し得ない。
<樹脂組成物及びその製造方法>
本発明の樹脂組成物は、前記製造方法によって製造された微細化疎水変性セルロース繊維と樹脂とを混合することにより得られるものであり、該微細化疎水変性セルロース繊維は、前述の本発明の製造方法によって製造されるものである。かかる樹脂組成物を使用して、公知の成形方法により成形体を製造できる。
(樹脂)
使用できる樹脂は特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂を用いることができる。かかる熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、セルロース系樹脂及びゴム系樹脂は、樹脂として1種のみ使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸樹脂等の飽和ポリエステル樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン樹脂;塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、スチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂等のビニル樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上の混合樹脂として用いても良い。これらの中でも、分散性に優れる樹脂組成物が得られることから、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂及びポリウレタン樹脂が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル系樹脂とは、メタクリル系樹脂及びアクリル系樹脂を含む概念を意味する。
(メタ)アクリル系樹脂としては、該樹脂を構成する全重合体の単量体単位の合計を基準として、50重量%以上の(メタ)アクリル酸メチルを単量体単位として含むものが好ましく、メタクリル系樹脂がより好ましい。
メタクリル系樹脂は、メタクリル酸メチル及びこれに共重合可能な他の単量体を共重合することによって製造することができる。重合方法は特に限定されず、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、注型重合法(例えば、セルキャスト重合法)などが挙げられる。
(硬化性樹脂)
硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂が好ましい。
光硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線照射により、ラジカルやカチオンを発生する光重合開始剤を用いることで重合反応が進行する。
前記光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン類化合物類、ジスルフィド化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物等が挙げられる。より具体的には、特開2018−024967号公報の段落0113に記載の化合物が挙げられる。
光重合開始剤で、例えば、単量体(単官能単量体、多官能単量体)、反応性不飽和基を有するオリゴマー又は樹脂等を重合することができる。
単官能単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系単量体、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの架橋環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。多官能単量体には、2〜8程度の重合性基を有する多官能単量体が含まれ、2官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの架橋環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。3〜8官能単量体としては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
反応性不飽和基を有するオリゴマー又は樹脂としては、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなど)、ポリエステル(メタ)アクリレート(例えば、脂肪族ポリエステル型(メタ)アクリレート、芳香族ポリエステル型(メタ)アクリレートなど)、ウレタン(メタ)アクリレート(ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレートなど)、シリコーン(メタ)アクリレートなどが例示できる。これらのオリゴマー又は樹脂は、前記単量体と共に用いても良い。
光硬化性樹脂は、凝集物が少なく、透明性に優れる樹脂組成物や成形体が得られる観点から、好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ケイ素樹脂及びポリイミド樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらの中では、分散性に優れる分散液が得られることから、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂がより好ましい。
前記樹脂成分を用いる場合は、硬化剤を使用することが好ましい。硬化剤を配合することによって、樹脂組成物から得られる成形体を強固に成形することができ、機械的強度を向上させることができる。尚、硬化剤の配合量は、樹脂の種類及び/又は使用する硬化剤の種類により適宜設定すればよい。
(セルロース系樹脂)
セルロース系樹脂としては、酢酸セルロース(セルロースアセテート)、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース混合アシレートなどの有機酸エステル;硝酸セルロース、リン酸セルロース等の無機酸エステル;硝酸酢酸セルロース等の有機酸無機酸混酸エステル;アセチル化ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロースエーテルエステルなどが挙げられる。上記酢酸セルロースには、セルローストリアセテート(アセチル置換度2.6〜3)、セルロースジアセテート(アセチル置換度2以上2.6未満)、セルロースモノアセテートが含まれる。セルロース系樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ゴム系樹脂)
また、本発明では、樹脂としてゴム系樹脂を用いることができる。ゴム系樹脂は、強度を高めるために、補強材としてカーボンブラックやシリカ等の無機フィラー配合品が汎用されているが、その補強効果にも限界があると考えられる。しかしながら、分散体にゴム系樹脂を配合することで得られる樹脂組成物中での分散性に優れることから、機械的強度及び耐熱性に優れる分散液や成形体(ゴム)を提供することが可能になると考えられる。
ゴム系樹脂としては、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴムが好ましい。
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴム、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ゴム、クロロプレンゴム及び変性天然ゴム等が挙げられる。変性天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム、水素化天然ゴム等が挙げられる。非ジエン系ゴムとしては、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、多硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴムなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
総合すると、樹脂組成物に含有される樹脂としては、オレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ビニル樹脂及びゴム系樹脂からなる群より選択される1種以上が好ましい。
本発明の樹脂組成物における樹脂の量は、成形体の所望の物性や成形法によって一概には決められないが、樹脂本来の性能を発揮させる観点から、配合量で換算して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、一方、微細化疎水変性セルロース繊維の添加効果を発揮させる観点から、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
本発明の樹脂組成物における微細化疎水変性セルロース繊維の量は、樹脂組成物の所望の物性や成形法によって一概には決められないが、微細化疎水変性セルロース繊維の添加効果を発揮させる観点から、配合量で換算して、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、一方、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
(その他の成分)
本発明の樹脂組成物は、前記成分以外に、可塑剤、結晶核剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、加水分解抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レべリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の樹脂組成物を添加することも可能である。
可塑剤としては、特に限定はなく、従来からの可塑剤であるフタル酸エステルやコハク酸エステル、アジピン酸エステルといった多価カルボン酸エステル、グリセリン等脂肪族ポリオールの脂肪酸エステル等が挙げられる。具体的には、特開2008−174718号公報及び特開2008−115372号公報に記載の可塑剤が例示される。
また、本発明の樹脂組成物がゴム系樹脂を含有する場合には、前記以外の成分として、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、ゴム工業界で通常用いられるカーボンブラックやシリカ等の補強用充填剤、各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、プロセスオイル、植物油脂、可塑剤等のタイヤ用、その他一般ゴム用に配合されている各種添加剤を従来の一般的な量で配合させることができる。
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の樹脂組成物は、各成分、即ち、微細化疎水変性セルロース繊維及び樹脂を高圧ホモジナイザーで混合することにより、製造することができる。あるいは、これらの各成分を、ヘンシェルミキサー、自転公転式攪拌機等で攪拌、あるいは密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練することでも調製することができる。
<成形体>
成形体は、樹脂組成物を利用した押出成形、射出成形、プレス成形、注型成形又は溶媒キャスト法等の公知の成形方法を適宜用いることによって調製することができる。本発明の樹脂組成物は、微細化疎水変性セルロース繊維の分散性に優れているので、成形体である各種樹脂製品の機械的強度が従来品よりも向上している。そのため、成形体を各種用途に好適に用いることができる。
樹脂組成物や成形体が使用できる用途は特に限定されないが、例えば透明樹脂材料、3次元造形材料、クッション材、補修材、接着剤、粘着剤、シーリング材、断熱材、吸音材、人工皮革材料、塗料、電子材、包装材料、タイヤ、自動車部品、繊維複合材料に用いることができる。これらの中でも、透明性に優れる成形体が得られる観点からは、特に透明樹脂材料、接着剤、粘着剤、人工皮革材料、塗料、電子材、繊維複合材料用途が好ましく、強度発現の観点からは3次元造形材料、クッション材、補修材、シーリング材、断熱材、吸音材、タイヤ、自動車部品用途が好ましい。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。例中の部は、特記しない限り質量部である。なお、「常圧」とは101.3kPaを、「室温」とは25℃を示す。
〔セルロース繊維、アニオン性基含有セルロース繊維、短繊維化セルロース繊維及び疎水変性セルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長〕
測定対象のセルロース繊維にイオン交換水を加えて、その含有量が0.01質量%の分散液を調製する。該分散液を湿式分散タイプ画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、商品名:IF−3200)を用いて、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:1倍、画像分解能:0.835μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:500μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:15%の条件で測定する。セルロース繊維を100本以上測定し、それらの平均ISO繊維径を平均繊維径をとして、平均ISO繊維長を平均繊維長として算出する。
〔微細化疎水変性セルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長〕
微細化疎水変性セルロース繊維にイオン交換水又はメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて、その含有量が0.0001質量%の分散液を調製する。該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe(NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さを測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を100本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。繊維方向の距離から平均繊維長を算出する。
〔アニオン性基含有セルロース繊維、短繊維化セルロース繊維、疎水変性セルロース繊維のアニオン性基含有量〕
乾燥質量0.5gの、測定対象のセルロース繊維を100mLビーカーにとり、イオン交換水又はメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製する。セルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名:AUT−710)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定する。pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、測定対象のセルロース繊維のアニオン性基含有量を算出する。
アニオン性基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/測定対象のセルロース繊維の質量(0.5g)
〔分散体又は分散液中の固形分含有量〕
ハロゲン水分計(島津製作所社製、商品名:MOC−120H)を用いて行う。サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少が0.1%以下となった値を固形分含有量とする。
〔疎水変性セルロース繊維の修飾基の平均結合量及び導入率(イオン結合)〕
修飾基の結合量を次のIR測定方法により求め、下記式によりその平均結合量及び導入率を算出する。IR測定は、具体的には、乾燥させた疎水変性セルロース繊維を赤外吸収分光装置(IR)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、商品名:Nicolet 6700)を用いATR法にて測定し、次式により、修飾基の平均結合量及び導入率を算出する。以下はアニオン性基がカルボキシ基の場合を示す。以下の「1720cm−1のピーク強度」は、カルボニル基に由来するピーク強度である。なお、カルボキシ基以外のアニオン性基の場合はピーク強度の値を適宜変更し、修飾基の平均結合量及び導入率を算出すればよい。
修飾基の平均結合量(mmol/g)=[修飾基導入前のセルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)]×[(修飾基導入前のセルロース繊維の1720cm−1のピーク強度 − 疎水変性セルロース繊維の1720cm−1のピーク強度)÷修飾基導入前のセルロース繊維の1720cm−1のピーク強度]
1720cm−1のピーク強度:カルボン酸のカルボニル基に由来するピーク強度
修飾基の導入率(%)={修飾基の平均結合量(mmol/g)/修飾基導入前のセルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)}×100
〔疎水変性セルロース繊維の修飾基の平均結合量及び導入率(アミド結合)〕
修飾基の平均結合量を下記式により算出する。以下はアニオン性基がカルボキシ基の場合を示す。なお、カルボキシ基以外のアニオン性基の場合はカルボキシ基を当該アニオン性基に置き換えて、修飾基の平均結合量及び導入率を算出すればよい。
修飾基の平均結合量(mmol/g)=修飾基導入前のセルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)−修飾基導入後のセルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)
修飾基の導入率(%)={修飾基の平均結合量(mmol/g)/修飾基導入前のセルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)}×100
〔疎水変性セルロース繊維におけるセルロース原料100質量部に対する修飾基の総質量部〕
修飾基の質量は、前記の「疎水変性セルロース繊維の修飾基の平均結合量」と修飾用化合物の分子量から算出し、セルロース原料の質量は、下記の「セルロース繊維(換算量)」として次のように算出する。
〔疎水変性セルロース繊維におけるセルロース繊維(換算量)〕
疎水変性セルロース繊維におけるセルロース繊維(換算量)は、以下の方法によって測定する。
(1)添加される修飾用化合物が1種類の場合
セルロース繊維量(換算量)を下記式Aによって算出する。
<式A>
セルロース繊維量(換算量)(g)=疎水変性セルロース繊維の質量(g)/〔1+修飾用化合物の分子量(g/mol)×修飾基の結合量(mmol/g)×0.001〕
(2)添加される修飾用化合物が2種類以上の場合
各修飾用化合物のモル比率(即ち、添加される修飾用化合物の合計モル量を1とした時のモル比率)を考慮して、セルロース繊維量(換算量)を算出する。
なお、セルロース繊維と修飾用化合物との結合様式がイオン結合の場合、上述の式Aにおいて、「修飾用化合物の分子量」とは、修飾用化合物が第1級アミン、第2級アミン又は第3級アミンである場合は「修飾用化合物全体の分子量」を指す。
一方、セルロース繊維と修飾用化合物との結合様式がアミド結合の場合、上述の式Aにおいて、「修飾用化合物の分子量」とは、修飾用化合物が第1級アミン又は第2級アミンである場合、「(修飾基を有する化合物全体の分子量)−18」である。
〔アニオン変性セルロース繊維の調製〕
調製例1(針葉樹の酸化パルプ)
針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。臭化ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
まず、針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gを9900gのイオン交換水で十分に撹拌した後、該パルプ質量100gに対し、TEMPO1.6g、臭化ナトリウム10g、次亜塩素酸ナトリウム28.4gをこの順で添加した。自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名:AUT−701)でpHスタット滴定を用い、十分な撹拌下、0.5M水酸化ナトリウムを滴下してpHを10.5に保持した。反応を120分(20℃)行った後、水酸化ナトリウムの滴下を停止し、酸化パルプを得た。得られた酸化パルプを、コンパクト電気伝導率計(堀場製作所製、LAQUAtwin EC−33B)によるろ液の電導度測定において200μs/cm以下になるまでイオン交換水で十分に洗浄し、次いで脱水処理を行い、固形分34.6%のアニオン変性セルロース繊維を得た。このアニオン変性セルロース繊維の平均繊維径は40μm、平均繊維長は2022μm、カルボキシ基含有量は1.56mmol/gであった。
(修飾基を有する化合物)
上記のアニオン変性セルロース繊維に修飾基を導入するための修飾基を有する化合物として、以下のものを使用した。
ドデシルアミン、オレイルアミン、ステアリルアミン、ジヘキシルアミン及びトリヘキシルアミン:いずれも市販の試薬
プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリエチルアミン:いずれも市販の試薬
EOPOアミン:下記に示す比較製造例1により得られたアミン
比較製造例1(EO/PO共重合部を有するアミン(EOPOアミン)の製造)
製造例1(EO/PO共重合部を有するアミン(EOPOアミン)の製造)
プロピレングリコール第三級ブチルエーテル132g(1モル)を1Lのオートクレーブに仕込み、75℃に加熱し、フレーク状の水酸化カリウム1.2gを加え、溶解するまで攪拌した。次いで、エチレンオキシド(EO)1541gとプロピレンオキシド(PO)35gを110℃で0.34MPaにて反応させた後、ケイ酸マグネシウム(ダラスグループ社製、商品名:Magnesol 30/40)7.14gを投入して95℃で中和し、得られた生成物をジ第三級ブチル−p−クレゾール 0.16gを添加、混合した後、濾過して、EO/PO共重合体であるポリエーテルを得た。
一方、酸化ニッケル/酸化銅/酸化クロム(モル比:75/23/2)(和光純薬工業社)の触媒を充填した1.250mLの管状反応容器に上記で得られたポリエーテル(8.4mL/min)、アンモニア(12.6mL/min)及び水素(0.8mL/min)をそれぞれ供給した。容器の温度を190℃に維持し、圧力を14MPaに維持した。そして容器からの粗流出液を70℃及び3.5mmHgにて30分間留去した。得られたアミノ化ポリエーテル200g及び15%塩酸水溶液93.6gをフラスコに仕込み、反応混合物を100℃にて3.75時間加熱し、第三級ブチルエーテルを酸で開裂させた。そして生成物を15%の水酸化カリウム水溶液144gで中和した。次に中和された生成物を112℃で一時間減圧留去して濾過し、式(i)で表されるEO/PO共重合部を有するモノアミンを得た。なお、得られたモノアミンは、EO/PO共重合部とアミンが直接結合しており、式(i)におけるRは水素原子であった。
Figure 2019119869
なお、アミン共重合部の分子量は、1541〔EO分子量(44)×EO付加モル数(35)〕+464〔PO分子量(58)×PO付加モル数(8.0)〕+58〔出発原料中のPO部分分子量(プロピレングリコール)〕=2063
を四捨五入して2000と算出した。
調製例2(調製例1のアニオン変性セルロース繊維を用いた疎水変性セルロース繊維)
マグネティックスターラー、撹拌子を備えたビーカーに、調製例1で得られたアニオン変性セルロース繊維を絶乾質量で0.15g仕込んだ。続いて、ドデシルアミンを、アニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基1molに相当する量を仕込み、溶媒としてのMEK 75gで溶解させた。反応液を室温(25℃)で1時間反応させることで、アニオン変性セルロース繊維にアミノ基が結合した疎水変性セルロース繊維のMEK懸濁液を得た(固形分含有量0.2質量%)。
実施例1
調製例2で得られた疎水変性セルロース繊維のMEK懸濁液を、ホモジナイザー(プライミクス社製、商品名:T.K.ロボミックス)にて5000rpm、5分間撹拌後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、商品名:ナノヴェイタL−ES)にて100MPaで10パス処理した。この処理によって、微細化疎水変性セルロース繊維がMEKに分散した分散体(固形分含有量0.2質量%)を得た。
実施例2〜5(修飾基を有する化合物の変更)
修飾基を有する化合物として、ドデシルアミンの代わりに表1に示す各化合物を用いたこと以外は調製例2及び実施例1と同様の処理を行って、微細化疎水変性セルロース繊維の分散体(固形分含有量0.2質量%)を得た。
実施例6(高含有量における改質・分散)
調製例2における溶媒量を75gから30gに変更したこと以外は調製例2及び実施例5と同様の処理を行って、微細化疎水変性セルロース繊維の分散体(固形分含有量0.5質量%)を得た。
実施例7(溶媒の種類の変更)
調製例2における溶媒の種類をMEKからDMFに変更したこと以外は調製例2及び実施例5と同様の処理を行って、微細化疎水変性セルロース繊維の分散体(固形分含有量0.2質量%)を得た。この微細化疎水変性セルロース繊維の平均繊維径は2.3nm、平均繊維長は539nmであった。
比較例1〜4(修飾基を有する化合物の種類の変更)
調製例2における修飾基を有する化合物の種類をドデシルアミンから表2に示す化合物に変更したこと以外は調製例2及び実施例1と同様の処理を行って、微細化疎水変性セルロース繊維の分散体(固形分含有量0.2質量%)を得た。なお、比較例4における修飾基を有する化合物の仕込み量は、アニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基0.13molに相当する量とした。
得られた微細化疎水変性セルロース繊維の特性を、下記試験例1の方法に従って評価した。結果を表1〜2に示す。
試験例1(分散安定性試験)
得られた微細化疎水変性セルロース繊維の分散体を室温で1日間静置し、透明性や沈殿物の有無を目視で確認し、以下の評価基準に基づいて評価した。
評価A:透明状態又はやや白濁状態であり、沈殿物は生じない
評価B:一部沈殿物を確認
評価C:完全に分離し、全量が沈殿
分散安定性はA>B>Cの序列で評価され、分散安定性Aで優れた分散安定性を有していること、分散安定性Bで実使用に支障を来さない程度の分散安定性を有していることを示す。
Figure 2019119869
Figure 2019119869
表1〜2より、本発明の範囲内の級数・アルキル鎖長を有するアミンを、修飾基を有する化合物として選択することで、原料セルロースの繊維長や溶媒の種類に依らず、パルプ原料から良好に分散した微細化疎水変性セルロース繊維の分散体を調製可能であることが分かった。しかも、第4級アンモニウム塩を修飾基を有する化合物として使用した場合と比較して、本実施例で使用した特定の第1〜第3級アミンを修飾基を有する化合物として使用した場合、得られる微細化疎水変性セルロース繊維の分散性は低いことが予想されたものの、本発明の方法によれば、得られた微細化疎水変性セルロース繊維の分散性は意外にも優れたものであることが分かった。
一方、比較例1〜4に示すように、炭化水素基の鎖長が短いアミンやアミン塩化率が制限される高分子アミンを選択すると、微細化疎水変性セルロース繊維の分散体の分散安定性・ナノ分散性が低いことが分かった。
本発明の製造方法によって得られた微細化疎水変性セルロース繊維は、有機溶媒に対して高い分散性を有するものであるため、該微細化疎水変性セルロース繊維を含有する分散体や樹脂組成物を、透明樹脂材料、3次元造形材料、クッション材、補修材、粘着剤、接着剤、シーリング材、断熱材、吸音材、人工皮革材料、塗料、電子材、包装材料、タイヤ、自動車部品、繊維複合材料等の各種樹脂製品の機械的強度の向上剤に好適に使用することができる。

Claims (9)

  1. アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に修飾基を有する化合物が結合してなる、平均繊維径が1μm以上300μm以下の疎水変性セルロース繊維を有機溶媒中で微細化処理する工程を含む、微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法であって、前記修飾基を有する化合物が下記一般式(1)〜(3)で示されるアミンからなる群より選択される1種以上のアミンであり、前記疎水変性セルロース繊維における修飾基の総質量がセルロース繊維量100質量部に対して1質量部以上200質量部以下である、微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法。
    NH−R (1)
    NH−R2’ (2)
    N−R3’3’’ (3)
    〔一般式(1)におけるRは炭素数6以上30以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、一般式(2)におけるR及びR2’は、それぞれ同一又は異なっていてもよく、R及びR2’の総炭素数が8以上40以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、一般式(3)におけるR、R3’及びR3’’は、それぞれ同一又は異なっていてもよく、R、R3’及びR3’’の総炭素数が9以上50以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基である。〕
  2. 前記修飾基を有する化合物が、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基にイオン結合及び/又は共有結合を介して結合してなるものである、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記アニオン性基が、カルボキシ基、リン酸基及びスルホン酸基からなる群より選択される1種以上の基を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された微細化疎水変性セルロース繊維と樹脂とを混合する工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
  5. 樹脂が、オレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ビニル樹脂及びゴム系樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項4に記載の樹脂組成物の製造方法。
  6. 請求項4又は5に記載の樹脂組成物の製造方法によって製造された樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体の製造方法。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された微細化疎水変性セルロース繊維と樹脂とを混合して得られる樹脂組成物。
  8. 樹脂が、オレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ビニル樹脂及びゴム系樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項7に記載の樹脂組成物。
  9. 請求項7又は8に記載の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体。
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