JP2019119869A - 微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
〔1〕 アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に修飾基を有する化合物が結合してなる、平均繊維径が1μm以上300μm以下の疎水変性セルロース繊維を有機溶媒中で微細化処理する工程を含む、微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法であって、前記修飾基を有する化合物が下記一般式(1)〜(3)で示されるアミンからなる群より選択される1種以上のアミンであり、前記疎水変性セルロース繊維における修飾基の総質量がセルロース繊維量100質量部に対して1質量部以上200質量部以下である、微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法。
NH2−R1 (1)
NH−R2R2’ (2)
N−R3R3’R3’’ (3)
〔一般式(1)におけるR1は炭素数6以上30以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、一般式(2)におけるR2及びR2’は、それぞれ同一又は異なっていてもよく、R2及びR2’の総炭素数が8以上40以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、一般式(3)におけるR3、R3’及びR3’’は、それぞれ同一又は異なっていてもよく、R3、R3’及びR3’’の総炭素数が9以上50以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基である。〕
〔2〕 前記〔1〕に記載の製造方法によって製造された微細化疎水変性セルロース繊維と樹脂とを混合する工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
〔3〕 前記〔2〕に記載の製造方法によって製造された樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体の製造方法。
〔4〕 前記〔1〕に記載の製造方法によって製造された微細化疎水変性セルロース繊維と樹脂とを混合して得られる樹脂組成物。
〔5〕 前記〔4〕に記載の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体。
本発明に使用される疎水変性セルロース繊維は、順序を問わず、原料のセルロース繊維にアニオン性基を導入する工程、及び修飾基を導入する工程を行うことによって製造することができ、必要に応じて短繊維化処理する工程を、順序を問わず、さらに実施することができる。
原料のセルロース繊維としては、環境負荷の観点から、天然セルロース繊維を用いることが好ましい。天然セルロース繊維としては、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いられるアニオン性基を含むアニオン変性セルロース繊維(単に「アニオン変性セルロース繊維」とも称する。)は、セルロース繊維中にアニオン性基を含むようにアニオン変性されたセルロース繊維である。
アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基の対となるイオン(カウンターイオン)としては、例えば、製造時のアルカリ存在下で生じるナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びアルミニウムイオン等の金属イオンや、これらの金属イオンを酸で置換して生じるプロトン等が挙げられる。
本発明で用いられるアニオン変性セルロース繊維は、対象のセルロース繊維に酸化処理又はアニオン性基の付加処理を施して、少なくとも1つ以上のアニオン性基を導入してアニオン変性させることによって得ることができる。
アニオン変性の対象となるセルロース繊維としては、原料のセルロース繊維が挙げられる。分散性の観点から、原料のセルロース繊維を、アルカリ加水分解処理や酸加水分解処理等で短繊維化処理した平均繊維長が1μm以上であり、1,000μm以下であるセルロース繊維(以下、短繊維化セルロース繊維とも言う。)を用いることが好ましい。
セルロース繊維にアニオン性基としてカルボキシ基を導入する方法としては、例えばセルロースの水酸基を酸化してカルボキシ基に変換する方法や、セルロースの水酸基にカルボキシ基を有する化合物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させる方法が挙げられる。
セルロース繊維にアニオン性基としてスルホン酸基を導入する方法としては、セルロース繊維に硫酸を添加し加熱する方法等が挙げられる。
本発明における疎水変性セルロース繊維とは、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に、修飾基を有する化合物としてのアミン、即ち、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンからなる群より選択される1種以上のアミンが結合してなる、平均繊維径が1μm以上300μm以下のセルロース繊維である。
本発明で用いられる疎水変性セルロース繊維は、対象のセルロース繊維に所定の修飾基を導入する(「改質する」とも言う。)ことによって得ることができる。修飾基導入の対象となるセルロース繊維は、原料のセルロース繊維にアニオン性基を導入する工程を経て得られたアニオン変性セルロース繊維である。
NH2−R1 (1)
NH−R2R2’ (2)
N−R3R3’R3’’ (3)
〔一般式(1)におけるR1は炭素数6以上30以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、一般式(2)におけるR2及びR2’は、それぞれ同一又は異なっていてもよく、R2及びR2’の総炭素数が8以上40以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、一般式(3)におけるR3、R3’及びR3’’は、それぞれ同一又は異なっていてもよく、R3、R3’及びR3’’の総炭素数が9以上50以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基である。〕
微細化疎水変性セルロース繊維とは、平均繊維径及び平均繊維長が以下に示す範囲内にある疎水変性セルロース繊維をいう。
微細化疎水変性セルロース繊維の平均繊維径としては、分散性の観点から、好ましくは0.1nm以上であり、より好ましくは0.5nm以上であり、更に好ましくは1nm以上であり、更に好ましくは2nm以上である。また、同様の観点から、好ましくは200nm以下であり、より好ましくは100nm以下であり、更に好ましくは50nm以下であり、更に好ましくは20nm以下である。
本工程は、前述の疎水変性セルロース繊維を特定の有機溶媒中で微細化処理する工程であり、微細化処理によって微細化疎水変性セルロール繊維が得られる。微細化処理工程では、前述の疎水変性セルロース繊維が有機溶媒に分散した状態のものや、有機溶媒を除去したものについては新たに溶媒に分散させたものに対して微細化処理を行うことが好ましく、工程(A)を経た場合は工程(A)における有機溶媒と同一の有機溶媒に分散した状態のものに対して微細化処理を行うことがより好ましい。具体的には、特開2013−151661号の微細化工程の説明を参照して実施することができる。
微細化処理で使用できる装置としては公知の分散機が好適なものとして挙げられる。例えば、撹拌翼を備えた撹拌機、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、ロールミル、短軸混練機、2軸機混練機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。装置の運転条件は、添付の取扱い説明書を参照しつつ適宜設定すればよい。
微細化処理の際に使用できる分散媒としての有機溶媒は、分散性の観点から、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン(THF)、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、n−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、t−ブチルアルコール、シクロヘキサノン、アセトニトリル、シリコーンオイル、1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン及びメチルエチルケトンからなる群より選択される1種以上の有機溶媒を含むものであり、より好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、n−プロパノール、酢酸エチル及びエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒を含むものであり、更に好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドンからなる群より選択される1種以上の有機溶媒を含むものである。
本発明の樹脂組成物は、前記製造方法によって製造された微細化疎水変性セルロース繊維と樹脂とを混合することにより得られるものであり、該微細化疎水変性セルロース繊維は、前述の本発明の製造方法によって製造されるものである。かかる樹脂組成物を使用して、公知の成形方法により成形体を製造できる。
使用できる樹脂は特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂を用いることができる。かかる熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、セルロース系樹脂及びゴム系樹脂は、樹脂として1種のみ使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸樹脂等の飽和ポリエステル樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン樹脂;塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、スチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂等のビニル樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上の混合樹脂として用いても良い。これらの中でも、分散性に優れる樹脂組成物が得られることから、オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂及びポリウレタン樹脂が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル系樹脂とは、メタクリル系樹脂及びアクリル系樹脂を含む概念を意味する。
硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂が好ましい。
光硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線照射により、ラジカルやカチオンを発生する光重合開始剤を用いることで重合反応が進行する。
セルロース系樹脂としては、酢酸セルロース(セルロースアセテート)、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース混合アシレートなどの有機酸エステル;硝酸セルロース、リン酸セルロース等の無機酸エステル;硝酸酢酸セルロース等の有機酸無機酸混酸エステル;アセチル化ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロースエーテルエステルなどが挙げられる。上記酢酸セルロースには、セルローストリアセテート(アセチル置換度2.6〜3)、セルロースジアセテート(アセチル置換度2以上2.6未満)、セルロースモノアセテートが含まれる。セルロース系樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明では、樹脂としてゴム系樹脂を用いることができる。ゴム系樹脂は、強度を高めるために、補強材としてカーボンブラックやシリカ等の無機フィラー配合品が汎用されているが、その補強効果にも限界があると考えられる。しかしながら、分散体にゴム系樹脂を配合することで得られる樹脂組成物中での分散性に優れることから、機械的強度及び耐熱性に優れる分散液や成形体(ゴム)を提供することが可能になると考えられる。
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴム、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ゴム、クロロプレンゴム及び変性天然ゴム等が挙げられる。変性天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム、水素化天然ゴム等が挙げられる。非ジエン系ゴムとしては、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、多硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴムなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、前記成分以外に、可塑剤、結晶核剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、加水分解抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レべリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の樹脂組成物を添加することも可能である。
本発明の樹脂組成物は、各成分、即ち、微細化疎水変性セルロース繊維及び樹脂を高圧ホモジナイザーで混合することにより、製造することができる。あるいは、これらの各成分を、ヘンシェルミキサー、自転公転式攪拌機等で攪拌、あるいは密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練することでも調製することができる。
成形体は、樹脂組成物を利用した押出成形、射出成形、プレス成形、注型成形又は溶媒キャスト法等の公知の成形方法を適宜用いることによって調製することができる。本発明の樹脂組成物は、微細化疎水変性セルロース繊維の分散性に優れているので、成形体である各種樹脂製品の機械的強度が従来品よりも向上している。そのため、成形体を各種用途に好適に用いることができる。
測定対象のセルロース繊維にイオン交換水を加えて、その含有量が0.01質量%の分散液を調製する。該分散液を湿式分散タイプ画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、商品名:IF−3200)を用いて、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:1倍、画像分解能:0.835μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:500μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:15%の条件で測定する。セルロース繊維を100本以上測定し、それらの平均ISO繊維径を平均繊維径をとして、平均ISO繊維長を平均繊維長として算出する。
微細化疎水変性セルロース繊維にイオン交換水又はメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて、その含有量が0.0001質量%の分散液を調製する。該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe(NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さを測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を100本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。繊維方向の距離から平均繊維長を算出する。
乾燥質量0.5gの、測定対象のセルロース繊維を100mLビーカーにとり、イオン交換水又はメタノール/水=2/1の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製する。セルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名:AUT−710)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定する。pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、測定対象のセルロース繊維のアニオン性基含有量を算出する。
アニオン性基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/測定対象のセルロース繊維の質量(0.5g)
ハロゲン水分計(島津製作所社製、商品名:MOC−120H)を用いて行う。サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少が0.1%以下となった値を固形分含有量とする。
修飾基の結合量を次のIR測定方法により求め、下記式によりその平均結合量及び導入率を算出する。IR測定は、具体的には、乾燥させた疎水変性セルロース繊維を赤外吸収分光装置(IR)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、商品名:Nicolet 6700)を用いATR法にて測定し、次式により、修飾基の平均結合量及び導入率を算出する。以下はアニオン性基がカルボキシ基の場合を示す。以下の「1720cm−1のピーク強度」は、カルボニル基に由来するピーク強度である。なお、カルボキシ基以外のアニオン性基の場合はピーク強度の値を適宜変更し、修飾基の平均結合量及び導入率を算出すればよい。
修飾基の平均結合量(mmol/g)=[修飾基導入前のセルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)]×[(修飾基導入前のセルロース繊維の1720cm−1のピーク強度 − 疎水変性セルロース繊維の1720cm−1のピーク強度)÷修飾基導入前のセルロース繊維の1720cm−1のピーク強度]
1720cm−1のピーク強度:カルボン酸のカルボニル基に由来するピーク強度
修飾基の導入率(%)={修飾基の平均結合量(mmol/g)/修飾基導入前のセルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)}×100
修飾基の平均結合量を下記式により算出する。以下はアニオン性基がカルボキシ基の場合を示す。なお、カルボキシ基以外のアニオン性基の場合はカルボキシ基を当該アニオン性基に置き換えて、修飾基の平均結合量及び導入率を算出すればよい。
修飾基の平均結合量(mmol/g)=修飾基導入前のセルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)−修飾基導入後のセルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)
修飾基の導入率(%)={修飾基の平均結合量(mmol/g)/修飾基導入前のセルロース繊維中のカルボキシ基含有量(mmol/g)}×100
修飾基の質量は、前記の「疎水変性セルロース繊維の修飾基の平均結合量」と修飾用化合物の分子量から算出し、セルロース原料の質量は、下記の「セルロース繊維(換算量)」として次のように算出する。
疎水変性セルロース繊維におけるセルロース繊維(換算量)は、以下の方法によって測定する。
(1)添加される修飾用化合物が1種類の場合
セルロース繊維量(換算量)を下記式Aによって算出する。
<式A>
セルロース繊維量(換算量)(g)=疎水変性セルロース繊維の質量(g)/〔1+修飾用化合物の分子量(g/mol)×修飾基の結合量(mmol/g)×0.001〕
各修飾用化合物のモル比率(即ち、添加される修飾用化合物の合計モル量を1とした時のモル比率)を考慮して、セルロース繊維量(換算量)を算出する。
一方、セルロース繊維と修飾用化合物との結合様式がアミド結合の場合、上述の式Aにおいて、「修飾用化合物の分子量」とは、修飾用化合物が第1級アミン又は第2級アミンである場合、「(修飾基を有する化合物全体の分子量)−18」である。
調製例1(針葉樹の酸化パルプ)
針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。臭化ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
上記のアニオン変性セルロース繊維に修飾基を導入するための修飾基を有する化合物として、以下のものを使用した。
ドデシルアミン、オレイルアミン、ステアリルアミン、ジヘキシルアミン及びトリヘキシルアミン:いずれも市販の試薬
プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリエチルアミン:いずれも市販の試薬
EOPOアミン:下記に示す比較製造例1により得られたアミン
プロピレングリコール第三級ブチルエーテル132g(1モル)を1Lのオートクレーブに仕込み、75℃に加熱し、フレーク状の水酸化カリウム1.2gを加え、溶解するまで攪拌した。次いで、エチレンオキシド(EO)1541gとプロピレンオキシド(PO)35gを110℃で0.34MPaにて反応させた後、ケイ酸マグネシウム(ダラスグループ社製、商品名:Magnesol 30/40)7.14gを投入して95℃で中和し、得られた生成物をジ第三級ブチル−p−クレゾール 0.16gを添加、混合した後、濾過して、EO/PO共重合体であるポリエーテルを得た。
を四捨五入して2000と算出した。
マグネティックスターラー、撹拌子を備えたビーカーに、調製例1で得られたアニオン変性セルロース繊維を絶乾質量で0.15g仕込んだ。続いて、ドデシルアミンを、アニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基1molに相当する量を仕込み、溶媒としてのMEK 75gで溶解させた。反応液を室温(25℃)で1時間反応させることで、アニオン変性セルロース繊維にアミノ基が結合した疎水変性セルロース繊維のMEK懸濁液を得た(固形分含有量0.2質量%)。
調製例2で得られた疎水変性セルロース繊維のMEK懸濁液を、ホモジナイザー(プライミクス社製、商品名:T.K.ロボミックス)にて5000rpm、5分間撹拌後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、商品名:ナノヴェイタL−ES)にて100MPaで10パス処理した。この処理によって、微細化疎水変性セルロース繊維がMEKに分散した分散体(固形分含有量0.2質量%)を得た。
修飾基を有する化合物として、ドデシルアミンの代わりに表1に示す各化合物を用いたこと以外は調製例2及び実施例1と同様の処理を行って、微細化疎水変性セルロース繊維の分散体(固形分含有量0.2質量%)を得た。
調製例2における溶媒量を75gから30gに変更したこと以外は調製例2及び実施例5と同様の処理を行って、微細化疎水変性セルロース繊維の分散体(固形分含有量0.5質量%)を得た。
調製例2における溶媒の種類をMEKからDMFに変更したこと以外は調製例2及び実施例5と同様の処理を行って、微細化疎水変性セルロース繊維の分散体(固形分含有量0.2質量%)を得た。この微細化疎水変性セルロース繊維の平均繊維径は2.3nm、平均繊維長は539nmであった。
調製例2における修飾基を有する化合物の種類をドデシルアミンから表2に示す化合物に変更したこと以外は調製例2及び実施例1と同様の処理を行って、微細化疎水変性セルロース繊維の分散体(固形分含有量0.2質量%)を得た。なお、比較例4における修飾基を有する化合物の仕込み量は、アニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基0.13molに相当する量とした。
得られた微細化疎水変性セルロース繊維の分散体を室温で1日間静置し、透明性や沈殿物の有無を目視で確認し、以下の評価基準に基づいて評価した。
評価A:透明状態又はやや白濁状態であり、沈殿物は生じない
評価B:一部沈殿物を確認
評価C:完全に分離し、全量が沈殿
分散安定性はA>B>Cの序列で評価され、分散安定性Aで優れた分散安定性を有していること、分散安定性Bで実使用に支障を来さない程度の分散安定性を有していることを示す。
一方、比較例1〜4に示すように、炭化水素基の鎖長が短いアミンやアミン塩化率が制限される高分子アミンを選択すると、微細化疎水変性セルロース繊維の分散体の分散安定性・ナノ分散性が低いことが分かった。
Claims (9)
- アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に修飾基を有する化合物が結合してなる、平均繊維径が1μm以上300μm以下の疎水変性セルロース繊維を有機溶媒中で微細化処理する工程を含む、微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法であって、前記修飾基を有する化合物が下記一般式(1)〜(3)で示されるアミンからなる群より選択される1種以上のアミンであり、前記疎水変性セルロース繊維における修飾基の総質量がセルロース繊維量100質量部に対して1質量部以上200質量部以下である、微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法。
NH2−R1 (1)
NH−R2R2’ (2)
N−R3R3’R3’’ (3)
〔一般式(1)におけるR1は炭素数6以上30以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、一般式(2)におけるR2及びR2’は、それぞれ同一又は異なっていてもよく、R2及びR2’の総炭素数が8以上40以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、一般式(3)におけるR3、R3’及びR3’’は、それぞれ同一又は異なっていてもよく、R3、R3’及びR3’’の総炭素数が9以上50以下の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基である。〕 - 前記修飾基を有する化合物が、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基にイオン結合及び/又は共有結合を介して結合してなるものである、請求項1に記載の製造方法。
- 前記アニオン性基が、カルボキシ基、リン酸基及びスルホン酸基からなる群より選択される1種以上の基を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された微細化疎水変性セルロース繊維と樹脂とを混合する工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
- 樹脂が、オレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ビニル樹脂及びゴム系樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項4に記載の樹脂組成物の製造方法。
- 請求項4又は5に記載の樹脂組成物の製造方法によって製造された樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された微細化疎水変性セルロース繊維と樹脂とを混合して得られる樹脂組成物。
- 樹脂が、オレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ビニル樹脂及びゴム系樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項7に記載の樹脂組成物。
- 請求項7又は8に記載の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体。
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