JP5656100B1 - 変性セルロースナノファイバーの製造方法 - Google Patents

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Abstract

溶剤を含有した樹脂に容易に複合化することが可能な変性セルロースナノファイバー、該変性セルロースナノファイバーを含有する樹脂組成物を提供する。水酸基を有するセルロースに無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂を反応させて変性セルロースを得る工程と、得られた変性セルロースを微細化処理する工程とを同一工程で行う変性セルロースナノファイバーの製造方法であって、該無水多塩基酸構造は、カルボキシル基が分子内で脱水縮合し環状構造を形成した環状無水多塩基酸構造である。

Description

本発明は、水酸基を有するセルロースに無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂を反応させて変性セルロースを得る工程と、得られた変性セルロースを微細化処理する工程とを同一工程で行う変性セルロースナノファイバー製造方法に関する。
近年開発されたセルロースナノファイバーは、植物由来の天然原料ナノフィラーであり、低比重かつ高強度な樹脂用複合材料として注目されており、樹脂中に少量添加することで補強効果が発現し、破壊靭性や曲げ強度等の機械的強度が上昇することが知られている。
水酸基を多く持つセルロースをナノレベルまで微細化したセルロースナノファイバーを得る方法としては、水中や親水性溶媒中で解繊を行う方法(特許文献1及び2参照)や、樹脂中で解繊を行う方法(特許文献3参照)が知られている。
いずれの方法で作製したセルロースナノファイバーも、その親水性の高さから、エタノール等の水と親和性の高い有機溶媒以外に配合した場合、セルロースナノファイバーが凝集し沈降してしまうため、これらの有機溶媒を含む樹脂への分散が非常に困難であった。
組成物中での分散状態を改善する方法として、セルロースナノファイバーの水酸基と酸無水物を反応させることで、セルロースナノファイバーを半エステル化した変性セルロースナノファイバーを提供し、組成物中での分散状態を改善する方法が提唱されている(特許文献4、5及び6参照)が、この方法においても有機溶媒を含む樹脂への分散は未だ改善されていない。
セルロースナノファイバーを樹脂で変性する方法としてリビングラジカル重合による方法(特許文献7参照)が報告されている。しかしながら、この方法はセルロースナノファイバーに開始基を導入することが難しく、リビングラジカル重合も酸素存在下ではできないなど制約が多く困難である。
特開2005−42283号公報 特開2009−261993号公報 国際公開第2012/043558号 特開2009-293167号公報 特開2011-105799号公報 特開2012-229350号公報 特開2009−263417号公報
本発明は、溶剤中に分散しやすい変性セルロースナノファイバーの簡便な製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、水酸基を有するセルロースに無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂を反応させて変性セルロースを得る工程と、得られた変性セルロースを微細化処理する工程とを同一工程で行うことで、容易に変性セルロースナノファイバーを得る方法見出した。該製造方法により得られる変性セルロースナノファイバーは、溶剤に対する分散性に優れ、溶剤を含有した樹脂にそのまま複合化することが可能であることを見出した。この方法により、低分子の無水多塩基酸をセルロースナノファイバーの水酸基に結合させることでは成し得なかった、溶剤中に分散しやすい変性セルロースナノファイバーが得られることを見出した。
すなわち本発明は、水酸基を有するセルロースに無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂を反応させて変性セルロースを得る工程と、得られた変性セルロースを微細化処理する工程とを同一工程で行う変性セルロースナノファイバーの製造方法であって、該無水多塩基酸構造は、カルボキシル基が分子内で脱水縮合し環状構造を形成した環状無水多塩基酸構造であることを特徴とする変性セルロースナノファイバーの製造方法を提供するものである。
本発明によれば、水酸基を有するセルロースに無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂を反応させて変性セルロースを得る工程と、得られた変性セルロースを微細化処理する工程とを同一工程で行うことで、簡便に変性セルロースナノファイバーを得ることが可能である。また、得られた変性セルロースナノファイバーは、溶剤を含んだ樹脂組成物に対して容易に配合することが可能である。
以下において、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の記載は本発明の実施形態の一例であり、本記載に限定されるものではない。
〔セルロースの種類〕
本発明における変性セルロースナノファイバーは、各種セルロースを微細化する事で得られ、樹脂に含有させることで樹脂の破壊靭性地などを強化できる樹脂強化剤として使用することができる。本発明におけるセルロースは、微細化材料として利用可能なものであればよく、パルプ、綿、紙、レーヨン・キュプラ・ポリノジック・アセテートなどの再生セルロース繊維、バクテリア産生セルロース、ホヤなどの動物由来セルロースなどが利用可能である。
また、これらのセルロースは必要に応じて表面を化学修飾処理をしたものであってもよい。
パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ双方を好適に使用できる。木材パルプとしては、機械パルプと化学パルプとあり、リグニン含有量の少ない化学パルプのほうが好ましい。化学パルプにはサルファイドパルプ、クラフトパルプ、アルカリパルプなどがあるが、いずれも好適に使用できる。非木材パルプとしては、藁、バガス、ケナフ、竹、葦、楮、亜麻などいずれも利用可能である。
綿は主に衣料用繊維に用いられる植物であり、綿花、綿繊維、綿布のいずれも利用可能である。
紙はパルプから繊維を取り出し漉いたもので、新聞紙や廃牛乳パック、コピー済み用紙などの古紙も好適に利用できる。
また、微細化材料としてのセルロースとして、セルロースを破砕し一定の粒径分布を有したセルロース粉末を用いても良く、日本製紙ケミカル社製のKCフロック(登録商標)、旭化成ケミカルズ社性のセオラス(登録商標)、FMC社製のアビセル(登録商標)などが挙げられる。
〔変性セルロースナノファイバー〕
本発明における変性セルロースナノファイバーは、水酸基を有するセルロースに無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂を反応させて変性セルロースを得る工程と、得られた変性セルロースを微細化処理する工程とを同一工程で行うことにより製造することが可能である。これは、無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂中にセルロースを添加し、機械的に箭断力を与えることにより行うことができる。箭断力を与える手段としては、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、一軸押出機、二軸押出機等の押出機、バンバリーミキサー、グラインダー、加圧ニーダー、2本ロール等の公知の混練機等を用い剪断力を与えることができる。これらの中でも高粘度の樹脂中でも安定した剪断力を得られる観点から加圧ニーダーを用いることが好ましい。
本発明の微細化方法により、セルロースは変性セルロースナノファイバー化する。本発明の微細化方法では、例えば、長軸方向に100nm〜1000000nm、短軸方向に5nm〜1000nmに微細化することが可能である。
〔無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂〕
本発明における無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂とは、カルボキシル基が分子内で脱水縮合し環状構造を形成した環状無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂であり、本発明の効果を損ねない範囲であれば公知慣用の樹脂を用いることができるが、好ましくはビニル樹脂が挙げられる。
無水多塩基酸構造を分子内に有するビニル樹脂の合成方法としては、ビニルモノマーと無水多塩基酸を重合もしくは共重合させる方法が挙げられるが、ビニルモノマーと多塩基酸を重合もしくは共重合させた後、脱水縮合し無水環を形成させる方法やカルボキシル基を有するビニルモノマーを重合もしくは共重合させた後水縮合し無水環を形成させる方法、さらにはこれらを組み合わせた方法も可能である。
以下、これらの好ましい無水多塩基酸の例について説明する。直鎖状あるいは分枝鎖状のものとして、無水マロン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水ピメリン酸、無水スベリン酸、無水アゼライン酸、無水セバシン酸、無水マレイン酸が挙げられ、環状構造を有するものとしては、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、Cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
ビニルモノマーとしては、合成時または脱水縮合時にカルボキシル基と反応してしまう、ヒドロキシル基、アミノ基等を持たないものである必要がある他は特に制限されない。例えば、(メタ)アクリル酸エステル誘導体、ビニルエステル誘導体、マレイン酸ジエステル誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体、スチレン誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルケトン誘導体、オレフィン誘導体、マレイミド誘導体、(メタ)アクリロニトリルが好適に挙げられる。ビニル樹脂としては、その中でも特に(メタ)アクリル酸エステル誘導体を重合して得られる(メタ)アクリル樹脂が特に好ましい。
以下、これらのビニルモノマーの好ましい例について説明する。(メタ)アクリル酸エステル誘導体の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸−2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸―2−フェニルビニル、(メタ)アクリル酸―1−プロペニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸―2−アリロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸−γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
ビニルエステル誘導体の例としては、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、および安息香酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸ジエステル誘導体の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、およびマレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
フマル酸ジエステル誘導体の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、およびフマル酸ジブチルなどが挙げられる。
イタコン酸ジエステル誘導体の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、およびイタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド誘導体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
スチレン誘導体の例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、およびα−メチルスチレンなどが挙げられる。
ビニルエーテル誘導体の例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテルおよびフェニルビニルエーテルなどが挙げられる。
ビニルケトン誘導体の例としては、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどが挙げられる。
オレフィン誘導体の例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
マレイミド誘導体の例としては、マレイミド、ブチルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミドなどが挙げられる。
そのほかにも、(メタ)アクリロニトリル、ビニル基が置換した複素環式基(例えば、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルカルバゾールなど)、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクトン等も使用できる。
〔官能基〕
本発明におけるビニル樹脂は、官能基を有しても構わないが、合成時または脱水縮合時にカルボキシル基と反応してしまう水酸基、アミノ基は好ましくない。
前記ビニル樹脂は、前記ビニルモノマーを重合開始剤の存在下、反応容器中で加熱、必要により熟成することにより得ることが出来る。反応条件としては例えば、重合開始剤及び溶媒によって異なるが、反応温度が30〜150℃、好ましくは60〜120℃である。重合は、非反応性溶剤の存在下で行っても差し支えない。
前記重合開始剤としては、例えばt−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド、クメンパーヒドロキシド、アセチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等過酸化物;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等アゾ化合物などが挙げられる。
前記非反応性溶剤としては、例えばヘキサン、ミネラルスピリット等脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メタノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で使用しても、複数種類併用してもかまわない。
本発明において、前記ビニル樹脂は単独で用いても良いが、複数を組み合わせて用いてもかまわない。また、本発明のビニル樹脂は、直鎖型ポリマーであっても分岐型ポリマーであってもよく、分岐型ポリマーの場合くし型でも星型でもかまわない。
〔分子量〕
本発明で使用するビニル樹脂の重量平均分子量は、変性セルロースナノファイバーの溶剤への良好な分散性の観点からは1000以上が好ましく、セルロースの微細化の観点からは6000以下が好ましい。
〔無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂とセルロースの比率〕
本発明において、無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂とセルロースの比率は任意に変更が可能である。微細化後にさらに硬化剤及び又は希釈用樹脂と混合する場合には、予め無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂中のセルロース濃度がある程度高いほうがより樹脂の強化の効果があげられる。一方で、無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂の比率が少なすぎると十分なセルロースの微細化効果を得ることができないだけでなく、セルロースナノファイバーの変性も十分に行われない。セルロースと無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂との組成物中のセルロースの比率は10質量%−90質量%、好ましくは30質量%−80質量%、より好ましくは40質量%−70質量%となる事である。
〔変性セルロースナノファイバーの回収方法〕
前記変性セルロースナノファイバーを回収する場合、未反応の無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂はそのままでも良いし、必要に応じて洗浄除去しても良い。洗浄に用いる溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール系のアルコール系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;NMP、DMF、DMAC等の非プロトン性溶媒が挙げられる。これらの中で、溶媒の除去が容易であり、変性セルロースナノファイバーを良好に分散させることができるという点から、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が好ましい。
本発明の変性セルロースナノファイバーは、溶剤分散性が向上していることから、溶剤系の成形用材料、塗工用材料、塗料材料、接着剤などに好適に使用する事ができる。
また、本発明の変性セルロースナノファイバーは、未変性のセルロースナノファイバーと同様に、無溶剤系の成形用材料、塗工用材料、塗料材料、接着剤なども好適に使用する事ができる。
〔用途〕
本発明における樹脂組成物は、各種用途に好適に利用できる。例えば、自動車部品、航空機部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
以下、本発明の態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔ビニル樹脂合成方法〕
(合成例1)ビニル樹脂(1)の製造
3Lステンレスセパラブルフラスコにメチルエチルケトン950gを計量。窒素通気下、250rpmにて攪拌しながら75℃に加温した。次に1Lステンレス容器にブチルアクリレート700g、スチレン100g、無水マレイン酸100gを計量しガラス棒にて攪拌して得たモノマー混合液を1L滴下ロートに移した。またメチルエチルケトン50g、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業(株)社製「V−59」0.2g、チオグリコール酸100gを計量しガラス棒にてよく攪拌して得た開始剤混合液を300mLの滴下ロートに移した。上記モノマー混合液および開始剤混合液をそれぞれ75℃に加温したメチルエチルケトン中に4時間かけて滴下した。
滴下終了後溶液を20時間75℃に保持し、重合した。重合したビニル樹脂を脱溶剤しビニル樹脂(1)とした。ビニル樹脂(1)を1g計量し、トルエン/メタノール混合液(7/3重量比)を5g加えて攪拌し、120℃の乾燥機に1時間入れ、含有する有機溶媒を除去した。有機溶媒除去後の重量からビニル樹脂(1)の固形分を計算した。固形分は87%であった。またビニル樹脂(1)の重量平均分子量は1900であった。
(合成例2)ビニル樹脂(2)の製造
温度計、撹拌機および還流冷却器を備えた四ツ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(MPA)を3000部仕込んで撹拌しながら130℃に昇温した。次に、メタクリル酸2−エチルヘキシル(2EHMA)750部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)200部、メタクリル酸(MAA)50部からなる混合溶液と、「パーブチルO(登録商標)(日油株式会社製)」150部からなる混合溶液を、それぞれ5時間かけて滴下した。滴下終了後130℃で12時間反応した後、70℃で減圧脱溶剤することで、ビニル樹脂(2)の90%固形分溶液を得た。得られたビニル樹脂(2)の重量平均分子量は1800であった。
(合成例3)ビニル樹脂(3)の製造
3Lステンレスセパラブルフラスコにメチルエチルケトン950gを計量。窒素通気下、250rpmにて攪拌しながら75℃に加温した。次に1Lステンレス容器にブチルアクリレート800g、スチレン100g、無水マレイン酸100gを計量しガラス棒にて攪拌した。その後メチルエチルケトン50g、「パーブチルO(登録商標)(日油株式会社製)」60gを加えガラス棒にてよく攪拌し、混合した。この混合溶液を1L滴下ロートに移し、75℃に加温したメチルエチルケトン中に4時間かけて滴下した。滴下終了後溶液を12時間75℃に保持し、重合した。重合したビニル樹脂をビニル樹脂(3)とした。ビニル樹脂(3)を1g計量し、トルエン/メタノール混合液(7/3重量比)を5g加えて攪拌し、120℃の乾燥機に1時間入れ、含有する有機溶媒を除去した。有機溶媒除去後の重量からビニル樹脂(3)の固形分を計算した。固形分は42%であった。またビニル樹脂(3)の重量平均分子量は35000であった。
〔GPC測定方法〕
樹脂をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過することにより、測定サンプルを調製し、次に、この測定サンプルをゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC東ソー社製商品名「HLC−8220GPC」)に供給して、サンプル流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件で測定を行い、樹脂のポリスチレン換算分子量を測定した値を、重量平均分子量とした。なお、上記GPC測定において、カラムとして、HXL−X、G5000HXL、G3000HXL、G2000HXL、G2000HXL(いずれも東ソー株式会社製)を用い、検出器として示差屈折計を用いた。
〔変性セルロースナノファイバー製造方法〕
(実施例1)
(合成例1)で作製したビニル樹脂(1)150gと日本製紙ケミカル社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標) W100G」150gを、株式会社モリヤマ製加圧ニーダー(DRV0.3GB−E型)を用いて60rpmで180分間加圧混練を行いセルロースの微細化および変性処理を同一工程で行うことで、変性セルロースナノファイバー(以下CNFと略す)(1)を得た。得られた樹脂と変性CNFの混練物であるマスタバッチを0.1%の濃度となるようにアセトンに懸濁し、特殊機械工業(株)製TKホモミキサーA型を用いて15000rpm20分間分散処理を行い、ガラス上に広げてアセトンを乾燥し、走査型電子顕微鏡にてセルロースの微細化状態を確認した。繊維の短軸方向の長さが100nmより細かく解れているセルロースが存在したことから、セルロースの微細化が良好であることが分かった。
(比較例1)
〔セルロースナノファイバー製造方法〕
(合成例2)で作製したビニル樹脂(2)150gと日本製紙ケミカル社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標) W100G」150gを、株式会社モリヤマ製加圧ニーダー(DRV0.3GB−E型)を用いて60rpmで180分間加圧混練を行いセルロースの微細化し未変性CNF(1)を得た。得られた樹脂とCNFの混練物であるマスタバッチを0.1%の濃度となるようにアセトンに懸濁し、特殊機械工業(株)製TKホモミキサーA型を用いて15000rpm20分間分散処理を行い、ガラス上に広げてアセトンを乾燥し、走査型電子顕微鏡にてセルロースの微細化状態を確認した。繊維の短軸方向の長さが100nmより細かく解れているセルロースが存在したことから、セルロースの微細化が良好であることが分かった。
(比較例2)
(合成例3)で作製したビニル樹脂(3)150gと日本製紙ケミカル社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標) W100G」150gを、株式会社モリヤマ製加圧ニーダー(DRV0.3GB−E型)を用いて60rpmで180分間加圧混練を行った。得られた樹脂とセルロースの混練物であるマスタバッチを0.1%の濃度となるようにアセトンに懸濁し、特殊機械工業(株)製TKホモミキサーA型を用いて15000rpm20分間分散処理を行い、ガラス上に広げてアセトンを乾燥し、走査型電子顕微鏡にてセルロースの微細化状態を確認したが、微細化されたセルロースは観察されなかったため、これを変性セルロース(1)とした。
〔溶剤分散性の評価〕
変性CNF(1)、未変性CNF(1)および変性セルロース(1)を0.2g、MEK6.8gをガラス試験管に入れ、よく撹拌し、MEK中に分散させた。試験管を10回反転させ変性パルプまたはパルプを十分にMEK中に分散し、その後静置し、変性CNFまたはCNFの沈降状態を観察した。1分間観察し、CNFが沈降して上澄みが透明になった場合、MEK中の分散安定性×、パルプが沈降せず上澄みが懸濁した場合、MEK中の分散安定性○として変性CNFの分散性を評価した。
Figure 0005656100
本発明によれば、水酸基を有するセルロースに無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂を反応させて変性セルロースを得る工程と、得られた変性セルロースを微細化処理する工程とを同一工程で行うことで、容易に変性セルロースナノファイバーを得ることが可能である。また、変性セルロースナノファイバーは溶剤への分散性が大きく向上しているため、従来のCNFが使用することが困難であった溶剤含有樹脂組成物に好適に使用することが可能である。これにより、従来セルロースナノファイバーの複合化により高い機械強度を付与する目的で使用されていた分野に加え、塗工剤や粘接着剤などに使用できる。例えば、自動車、電車、船舶、飛行機等の輸送機器の内装材、外装材、構造材等や、パソコン、テレビ、電話等の電化製品等の筺体、構造材、内部部品等、建築材、文具、OA機器等の事務機器等の筐体、スポーツ・レジャー用品、構造材として有効に使用することができる。

Claims (3)

  1. 水酸基を有するセルロースに無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂を反応させて変性セルロースを得る工程と、得られた変性セルロースを微細化処理する工程とを同一工程で行う変性セルロースナノファイバーの製造方法であって、該無水多塩基酸構造は、カルボキシル基が分子内で脱水縮合し環状構造を形成した環状無水多塩基酸構造であることを特徴とする変性セルロースナノファイバーの製造方法。
  2. 前記無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂がビニル系樹脂である請求項1に記載の変性セルロースナノファイバーの製造方法。
  3. 前記無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂の重量平均分子量が1000以上6000以下である請求項1又は2に記載の変性セルロースナノファイバーの製造方法。
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