JP2015059155A - 変性セルロースナノファイバーの製造方法 - Google Patents

変性セルロースナノファイバーの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 溶剤中に分散しやすい変性セルロースナノファイバーの製造方法を提供する。
【解決手段】 水酸基を有するセルロースナノファイバーに、無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂を反応させて、変性セルロースナノファイバーを製造する変性セルロースナノファイバーの製造方法であって、該無水多塩基酸構造は、カルボキシル基が分子内で脱水縮合し環状構造を形成した環状無水多塩基酸構造であることにより、溶剤を含んだ樹脂組成物に対して容易に配合することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水酸基を有するセルロースナノファイバーに、無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂を反応させて、変性セルロースナノファイバーを得る変性セルロースナノファイバーの製造方法に関する。
近年開発されたセルロースナノファイバーは、植物由来の天然原料ナノフィラーであり、低比重かつ高強度な樹脂用複合材料として注目されており、樹脂中に少量添加することで補強効果が発現し、破壊靭性や曲げ強度等の機械的強度が上昇することが知られている。
水酸基を多く持つセルロースをナノレベルまで微細化したセルロースナノファイバーを得るには、水中で解繊を行うか、樹脂に大量の水を混合して解繊するか(特許文献1参照)、有機溶剤中でセルロースを微細化する(特許文献2参照)ことで、得ることができる。しかし、この解繊セルロースナノファイバーは、そのナノサイズの大きさから非常に嵩高く、また親水性が高いことから、各種樹脂へと配合する際に、少量を配合しただけでも樹脂組成物の粘度が上昇してしまうため、配合可能量が非常に少量であり、樹脂の機械物性を改善するにはまだ十分であるとは言えなかった。
また、セルロースナノファイバーはその親水性の高さから、エタノール等の水と親和性の高い有機溶媒以外に配合した場合、セルロースナノファイバーが凝集し沈降してしまうため、これらの有機溶媒を含む樹脂への分散が非常に困難であった。
組成物中での分散状態を改善する方法として、セルロースナノファイバーの水酸基と酸無水物を反応させることで、セルロースナノファイバーを半エステル化した変性セルロースナノファイバーを提供し、組成物中での分散状態を改善する方法が提唱されている(特許文献3、4及び5参照)が、この方法においても有機溶媒を含む樹脂への分散は未だ改善されていない。
また、いずれの方法においても、水中でセルロースの解繊を行うため、脱水、乾燥、溶媒置換等の工程が必要であり、工程の煩雑化という課題は解決されていない。
一方、水中や溶媒中でない条件下で、セルロースをナノレベルまで微細化しセルロースナノファイバーを得るため方法として、樹脂中で解繊を行う方法(特許文献6参照)が知られている。
セルロースナノファイバーを樹脂で変性する方法としてリビングラジカル重合による方法(特許文献7参照)が報告されている。しかしながら、この方法はセルロースナノファイバーに開始基を導入することが難しく、リビングラジカル重合も酸素存在下ではできないなど制約が多く困難である。
特開2005−42283号公報 特開2009−261993号公報 特開2009-293167号公報 特開2011-105799号公報 特開2012-229350号公報 国際公開第2012/043558号 特開2009−263417号公報
本発明は、溶剤中に分散しやすい変性セルロースナノファイバーの簡便な製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂を用いることで、セルロースナノファイバーの水酸基に容易に樹脂を結合させることが可能であることを見出した。この方法により、低分子の無水多塩基酸をセルロースナノファイバーの水酸基に結合させることでは成し得なかった、溶剤中に分散しやすい変性セルロースナノファイバーが得られることを見出した。
すなわち本発明は、水酸基を有するセルロースナノファイバーに、無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂を反応させて、変性セルロースナノファイバーを製造する変性セルロースナノファイバーの製造方法であって、該無水多塩基酸構造は、カルボキシル基が分子内で脱水縮合し環状構造を形成した環状無水多塩基酸構造であることを特徴とする変性セルロースナノファイバーの製造方法を提供するものである。
本発明によれば、セルロースナノファイバーの有する水酸基と無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂とを反応させる製造方法によって簡便に変性セルロースナノファイバーが得られる。また、得られた変性セルロースナノファイバーは、溶剤を含んだ樹脂組成物に対して容易に配合することが可能である。
〔セルロースの種類〕
本発明におけるセルロースナノファイバーは、各種セルロースを微細化する事で得られ、樹脂に含有させることで樹脂の破壊靭性地などを強化できる樹脂強化剤として使用することができる。本発明におけるセルロースは、微細化材料として利用可能なものであればよく、パルプ、綿、紙、レーヨン・キュプラ・ポリノジック・アセテートなどの再生セルロース繊維、バクテリア産生セルロース、ホヤなどの動物由来セルロースなどが利用可能である。また、これらのセルロースは必要に応じて表面を化学修飾処理したものであってもよい。
パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ双方を好適に使用できる。木材パルプとしては、機械パルプと化学パルプとあり、リグニン含有量の少ない化学パルプのほうが好ましい。化学パルプにはサルファイドパルプ、クラフトパルプ、アルカリパルプなどがあるが、いずれも好適に使用できる。非木材パルプとしては、藁、バガス、ケナフ、竹、葦、楮、亜麻などいずれも利用可能である。
綿は主に衣料用繊維に用いられる植物であり、綿花、綿繊維、綿布のいずれも利用可能である。
紙はパルプから繊維を取り出し漉いたもので、新聞紙や廃牛乳パック、コピー済み用紙などの古紙も好適に利用できる。
また、微細化材料としてのセルロースとして、セルロースを破砕し一定の粒径分布を有したセルロース粉末を用いても良く、日本製紙ケミカル社製のKCフロック(登録商標)、旭化成ケミカルズ社性のセオラス(登録商標)、FMC社製のアビセル(登録商標)などが挙げられる。
〔セルロースナノファイバー〕
本発明におけるセルロースナノファイバーは、樹脂中でセルロースを微細化することにより製造する方法により得られた、非水系セルロースナノファイバーで有ることが望ましいが、分散媒として水を用いて微細化された、水系セルロースナノファイバーを使用することも可能である。
本発明における水系セルロースナノファイバーを作製する方法としては、公知の方法が採用でき、例えば、前記セルロース繊維含有材料の水懸濁液又はスラリーをリファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸又は多軸混練機、ビーズミル等による機械的な摩砕、ないし叩解することにより解繊する方法が使用できる。必要に応じて、上記の解繊方法を組み合わせて処理してもよい。
分散媒として水を用いて微細化したセルロースナノファイバーを使用する場合は、別の溶媒に置換させ、セルロースナノファイバーを当該溶媒にて分散させておくこと必要がある。別の溶媒としては、セルロースナノファイバーの凝集を防ぐという観点から両親媒性の溶媒であることが好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;n−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等の非プロトン性溶媒等が挙げられ、これらの溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。これらの中で、アセトンが系中の水を除去しやすい点、及びCNFが非常に分散しやすい点から好ましい。
本発明における非水系セルロースナノファイバーは、解繊樹脂中でセルロースを微細化することにより製造することが可能である。解繊樹脂中にセルロースを添加し、機械的に箭断力を与えることにより行うことができる。箭断力を与える手段としては、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、一軸押出機、二軸押出機等の押出機、バンバリーミキサー、グラインダー、加圧ニーダー、2本ロール等の公知の混練機等を用い剪断力を与えることができる。これらの中でも高粘度の樹脂中でも安定した剪断力を得られる観点から加圧ニーダーを用いることが好ましい。
本発明の非水系微細化方法により、セルロースはセルロースナノファイバー化する。本発明の微細化方法では、例えば、長軸方向に100nm〜1000000nm、短軸方向に5nm〜1000nmに微細化することが可能である。
本発明の非水系微細化方法により得られた、セルロースナノファイバーと解繊樹脂の混合物はそのまま変性に用いてもよいし、解繊樹脂を有機溶剤等で洗浄してからも用いても良い。洗浄用有機溶剤としては、セルロースナノファイバーの凝集を防ぐという観点から両親媒性の溶剤であることが好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;酢酸エチル等のエステル系溶剤;n−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等の非プロトン性溶剤等が挙げられ、これらの溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
〔解繊樹脂〕
本発明にける解繊樹脂は、本発明の効果を損ねない範囲であれば公知慣用の樹脂を用いることができるが、具体的にはポリエステル系樹脂、ビニル樹脂、変性エポキシ樹脂などである。
〔ポリエステル系樹脂〕
本発明におけるポリエステル系樹脂とは、下記一般式(1)で表される1種若しくは2種以上のポリオールと、下記一般式(2)で表される1種若しくは2種以上のポリカルボン酸とを反応させて得られる、ポリエステル樹脂である。
A−(OH)m・・・(1)
(式中、Aは酸素原子を含んでいても良い炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族基またはヘテロ環芳香族基を表す。mは2〜4の整数を表す。)
B−(COOH)n・・・(2)
(式中、Bは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族基またはヘテロ環芳香族基を表す。nは2〜4の整数を表す。)
一般式(1)で表されるポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンチルグリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ヘプタンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノ−ルAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール、エチレングリコールカーボネート、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
一般式(2)で表されるポリカルボン酸としては、不飽和二塩基酸およびその無水物があり、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロルマレイン酸及びこれらのエステル等があり、ハロゲン化無水マレイン酸等、アコニット酸などのα,β−不飽和二塩基酸やジヒドロムコン酸等のβ,γ−不飽和二塩基酸が挙げられる。また、飽和二塩基酸およびその無水物として、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸及びこれらのエステル等があり、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、ヘット酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、コハク酸無水物、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン2酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、またこれらのジアルキルエステル等が挙げられる。
なお、上記のポリオールとポリカルボン酸に加えて、実質的にその特性を損なわない程度に1価アルコール、1価カルボン酸、およびヒドロキシカルボン酸を用いても良い。1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、3−ブタノール、n−アミルアルコール、n−ヘキサノール、イソヘキサノール、n−ヘプタノール、イソヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソオクタノール、n−ノナノール、イソノナノール、n−デカノール、イソデカノール、イソウンデカノール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、トリデシルアルコール、ベンジルアルコールステアリルアルコール等が挙げられ、これらを1種または2種以上を用いても良い。1価カルボン酸としては、安息香酸、ヘプタン酸、ノナン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリル酸等が挙げられ、これらを1種または2種以上を用いても良い。ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、p―ヒドロキシ安息香酸挙げられ、これらを1種または2種以上を用いても良い。
また、本発明におけるポリエステル系樹脂としては、上記ポリエステル樹脂を変性して得られる変性ポリエステル樹脂を用いても良い。変性ポリエステル樹脂としては、ウレタン変性ポリエステル、アクリル変性ポリエステル、エポキシ変性ポリエステル、シリコーン変性ポリエステルなどが挙げられる。
また、本発明におけるポリエステル系樹脂としては、直鎖状でもよく、多分岐状ポリエステルを用いてもかまわない。
本発明におけるポリエステル系樹脂は、エステル基濃度が6.0mmol/g以上であることが好ましい。より好ましくは6.0〜14mmol/g、更に好ましくは6.0〜20mmol/g、特に好ましくは6.0〜30mmol/gである。
また、エステル基濃度が6.0mmol/g以上かつ酸価が10KOHmg/g以上であると、好ましい。より好ましくは酸価10〜100KOHmg/g、更に好ましくは10〜200KOHmg/g、特に好ましくは10〜300KOHmg/gである。
また、エステル基濃度が6.0mmol/g以上かつ水酸基価が10以上であると、好ましい。より好ましくは水酸基価10〜500KOHmg/g、更に好ましくは10〜800KOHmg/g、特に好ましくは10〜1000KOHmg/gである。
また、本発明におけるポリエステル系樹脂は、エステル基濃度が6.0mmol/g以上で、酸価が10KOHmg/g以上かつ水酸基価が10KOHmg/g以上であると、特に好ましい。
上記範囲であれば、セルロースの微細化が最も良く進行する。
〔ビニル樹脂〕
本発明におけるビニル樹脂とは、ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体であり、ビニルモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル誘導体、ビニルエステル誘導体、マレイン酸ジエステル誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体、スチレン誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルケトン誘導体、オレフィン誘導体、マレイミド誘導体、(メタ)アクリロニトリルが好適に挙げられる。ビニル樹脂としては、その中でも特に(メタ)アクリル酸エステル誘導体を重合して得られる(メタ)アクリル樹脂が特に好ましい。
以下、これらのビニルモノマーの好ましい例について説明する。(メタ)アクリル酸エステル誘導体の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸―2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸―3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸―4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸―2−フェニルビニル、(メタ)アクリル酸―1−プロペニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸―2−アリロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸−γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
ビニルエステル誘導体の例としては、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、および安息香酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸ジエステル誘導体の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、およびマレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
フマル酸ジエステル誘導体の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、およびフマル酸ジブチルなどが挙げられる。
イタコン酸ジエステル誘導体の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、およびイタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド誘導体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
スチレン誘導体の例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、およびα−メチルスチレンなどが挙げられる。
ビニルエーテル誘導体の例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテルおよびフェニルビニルエーテルなどが挙げられる。
ビニルケトン誘導体の例としては、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどが挙げられる。
オレフィン誘導体の例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
マレイミド誘導体の例としては、マレイミド、ブチルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミドなどが挙げられる。
そのほかにも、(メタ)アクリロニトリル、ビニル基が置換した複素環式基(例えば、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルカルバゾールなど)、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクトン等も使用できる。
〔官能基〕
本発明におけるビニル樹脂は、官能基を有することがこのましい。これは、希釈樹脂との相互作用により機械特性など成形体の物性を向上させることが可能となるからである。官能基としては、具体的にはハロゲン基(フッ素、塩素)、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シラノール基、シアノ基等が挙げられ、これらを複数種有していてもかまわない。
前記ビニル樹脂は、前記ビニルモノマーを重合開始剤の存在下、反応容器中で加熱、必要により熟成することにより得ることが出来る。反応条件としては例えば、重合開始剤及び溶媒によって異なるが、反応温度が30〜150℃、好ましくは60〜120℃である。重合は、非反応性溶剤の存在下で行っても差し支えない。
前記重合開始剤としては、例えばt−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド、クメンパーヒドロキシド、アセチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等過酸化物;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等アゾ化合物などが挙げられる。
前記非反応性溶剤としては、例えばヘキサン、ミネラルスピリット等脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メタノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で使用しても、複数種類併用してもかまわない。
本発明のビニル樹脂は、直鎖型ポリマーであっても分岐型ポリマーであってもよく、分岐型ポリマーの場合くし型でも星型でもかまわない。
〔分子量〕
本発明で解繊樹脂として使用するビニル樹脂の分子量は、重量平均分子量が6000以下であることが好ましい。詳細な理由は不明であるが、重量平均分子量が6000以下であれば、セルロース繊維への親和性が高まるためではないかと予想される。
〔酸価〕
本発明におけるビニル樹脂の重量平均分子量が6000以下のとき、酸価が30KOHmg/g以上60KOHmg/g未満であるとより好ましい。
酸価が30KOHmg/g以上60KOHmg/g未満であれば、セルロースの微細化が良好に進行する。
〔水酸基価〕
本発明におけるビニル樹脂の重量平均分子量が6000以下のとき、水酸価が30KOHmg/g以上であると好ましく、50KOHmg/g以上であるとより好ましい。
水酸基価が30KOHmg/g以上50KOHmg/g未満であれば、セルロースの微細化が良好に進行する。
本発明におけるビニル樹脂の重量平均分子量が6000以下のとき、酸価が30KOHmg/g以上60KOHmg/g未満且つ水酸基価が30KOHmg/g以上であると特に好ましい。
上記範囲であれば、セルロースの微細化が最も良く進行する。
〔変性エポキシ樹脂〕
本発明における変性エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有し、水酸基価が100mgKOH/g以上である変性エポキシ樹脂である。該変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂とカルボキシル基又はアミノ基を有する化合物とを反応させることで得ることができる。
〔エポキシ樹脂〕
本発明で用いるエポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を有する化合物であって、後述するカルボキシル基又はアミノ基を有する化合物と反応して、水酸基価が100mgKOH/g以上である変性エポキシ樹脂を生成するものであればよく、その構造等に特に制限はない。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ノニルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、t−ブチルカテコール型エポキシ樹脂等の多価エポキシ樹脂等が挙げられ、更に1価のエポキシ樹脂としては、ブタノール等の脂肪族アルコール、炭素数11〜12の脂肪族アルコール、フェノール、p−エチルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−ターシャリブチルフェノール、s−ブチルフェノール、ノニルフェノール、キシレノール等の1価フェノール類とエピハロヒドリンとの縮合物、ネオデカン酸等の1価カルボキシル基とエピハロヒドリンとの縮合物等が挙げられ、グリシジルアミンとしては、ジアミノジフェニルメタンとエピハロヒドリンとの縮合物等、多価脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、大豆油、ヒマシ油等の植物油のポリグリシジルエーテルが挙げられ、多価アルキレングリコール型エポキシ樹脂としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、エリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、トリメチロールプロパンとエピハロヒドリンとの縮合物等、更には特開2005−239928号公報記載の水性エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは1種類で用いても、2種類以上を併用しても良い。
前記エポキシ樹脂は、必要に応じて有機溶剤や非反応性希釈剤等を加えて液状化・低粘度化したものであっても良い。
〔カルボキシル基又はアミノ基を有する化合物〕
本発明におけるカルボキシル基又はアミノ基を有する化合物は、上記エポキシ樹脂と反応して水酸基価が100mgKOH/g以上である変性エポキシ樹脂を生成するものであればよく、カルボキシル基を有する化合物と、アミノ基を有する化合物と、カルボキシル基及びアミノ基を有する化合物のいずれか1種以上を用いることができる。また、カルボキシル基又はアミノ基を有する化合物においてさらに水酸基を有するカルボキシル基又はアミノ基を有する化合物は、エポキシ化合物と反応した際に変性エポキシ樹脂に高い水酸基価を付与できるため、特に好ましい。
〔カルボキシル基を有する化合物〕
本発明におけるカルボキシル基を有する化合物とは、カルボキシル基を一つ以上有する化合物である。カルボキシル基を一つ有する化合物として、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、イソプロピル酸、イソステアリン酸、ネオデカン酸、などの脂肪酸、安息香酸、メチル安息香酸、ジメチル安息香酸、トリメチル安息香酸、フェニル酢酸、4−イソプロピル安息香酸、2−フェニルプロパン酸、2−フェニルアクリル酸、3−フェニルプロパン酸、ケイ被酸などの芳香族カルボン酸等が挙げられる。カルボキシル基を二つ以上有する化合物として、具体的には、コハク酸、アジピン酸、テレフタレート酸、イソフタル酸、ピロメリット酸などのカルボン酸類、及びこれらの無水物を挙げることができる。さらに、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロルマレイン酸及びこれらのエステル等があり、ハロゲン化無水マレイン酸等、アコニット酸などのα,β−不飽和二塩基酸やジヒドロムコン酸等のβ,γ−不飽和二塩基酸が挙げられる。また、飽和二塩基酸およびその無水物として、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸及びこれらのエステル等があり、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、ヘット酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、コハク酸無水物、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン2酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等が挙げられる。
〔アミノ基を有する化合物〕
本発明におけるアミノ基を有する化合物とは、アミノ基を一つ以上有する化合物である。具体的には、アミノ基を一つ有する化合物として、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、N,N−ジメチル−2−プロパンアミン、アニリン、トルイジン、2−アミノアントラセンなどをあげることができる。2つ以上のアミノ基を有する化合物としては、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−シクロヘキシルメタンジアミン、ノルボルナンジアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミンなどをあげることができる。
〔カルボキシル基及びアミノ基を有する化合物〕
本発明におけるカルボキシル基及びアミノ基を有する化合物とは、カルボキシル基とアミノ基を一つずつ以上有する化合物である。代表的にはアミノ酸が挙げられ、さらに水酸基を有しても構わない。具体的には、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスオアラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アミノラク酸、テアニン、トリコロミン酸、カイニン酸等が挙げられる。
〔さらに水酸基を有する、カルボキシル基又はアミノ基を有する化合物〕
さらに水酸基を有する、カルボキシル基又はアミノ基を有する化合物とは、カルボキシル基またはアミノ基を有し、さらに水酸基を一つ以上有する化合物である。具体的には、グリコール酸、グリセリン酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシラク酸、リンゴ酸、2,3−ジヒドロキシブタン二酸、クエン酸、イソクエン酸、メバロン酸、バントイン酸、リシノール酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ヒドロキシフェニルプロパン酸、マンデル酸、ベンジル酸、ヒドロキシメチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、ヒドロキシプロピルアミンなどが挙げられる。
〔変性エポキシ樹脂の製造〕
本発明における水酸基価が100mgKOH/g以上である変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂のエポキシ基とカルボキシル基又はアミノ基を有する化合物のカルボキシル基又はアミノ基を反応させることで得ることができる。水酸基価が100mgKOH/gより少ない場合、セルロースとの親和性が低くなることから、セルロースナノファイバーへの解繊は進みにくいため、好ましくない。エポキシ基とカルボキシル基又はアミノ基の反応比は、水酸基価が100mgKOH/g以上生じ、かつ所望のエポキシ基量が残るように任意に設定すればよい。
変性エポキシ樹脂中のエポキシ基量は一分子あたり0.3個以上が好ましく、0.5個以上がさらに好ましく、1個以上が最も好ましい。
変性エポキシ樹脂の製造は、無溶媒もしくは溶媒中で行うことができる。好ましくは、脱溶剤が必要ない無溶媒での反応が好ましい。使用する重合溶媒は特に制限はない。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ブチルセロソルブ、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸イソブチル等が挙げられる。また、これらの溶媒は単独で使用しても良いし、混合して使用しても良い。
また、反応触媒としてルイス酸触媒やルイス塩基触媒を使用しても良い。具体的には、三フッ化ホウ素、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルアミノピリジン、ピリジン、8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。
反応温度は、室温〜200℃の間が好ましい。
本発明において、前記解繊樹脂は単独で用いても良いが、複数を組み合わせて用いてもかまわない。複数を組み合わせて用いる方法としては、例えば、ポリエステル樹脂から2種以上選ぶ方法や、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、変性エポキシ樹脂等の種類が違う樹脂を組み合わせる方法などが挙げられる。
〔解繊樹脂とセルロースの比率〕
本発明において、解繊樹脂とセルロースの比率は任意に変更が可能である。微細化後にさらに硬化剤及び又は希釈用樹脂と混合する場合には、予め解繊樹脂中のセルロース濃度がある程度高いほうがより樹脂の強化の効果があげられる。一方で、解繊樹脂の比率が少なすぎると十分なセルロースの微細化効果を得ることができない。セルロースと解繊樹脂との組成物中のセルロースの比率は10質量%−90質量%、好ましくは30質量%−80質量%、より好ましくは40質量%−70質量%となる事である。
〔無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂〕
本発明において、セルロースナノファイバーに、無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂をさらに添加して、解繊樹脂中でセルロースナノファイバーの含有する水酸基と無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂を反応させることで、変性セルロースナノファイバーを得ることができる。
本発明における無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂とは、カルボキシル基が分子内で脱水縮合し環状構造を形成した環状無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂であり、本発明の効果を損ねない範囲であれば公知慣用の樹脂を用いることができるが、好ましくはビニル樹脂が挙げられる。
〔無水多塩基酸構造を分子内に有する変性用ビニル樹脂の合成〕
無水多塩基酸を分子内に有する変性用ビニル樹脂の合成方法としては、ビニルモノマーと無水多塩基酸を重合もしくは共重合させる方法が挙げられるが、ビニルモノマーと多塩基酸を重合もしくは共重合させた後、脱水縮合し無水環を形成させる方法やカルボキシル基を有するビニルモノマーを重合もしくは共重合させた後水縮合し無水環を形成させる方法、さらにはこれらを組み合わせた方法も可能である。
以下、これらの好ましい無水多塩基酸の例について説明する。直鎖状あるいは分枝鎖状のものとして、無水マロン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水ピメリン酸、無水スベリン酸、無水アゼライン酸、無水セバシン酸、無水マレイン酸が挙げられ、環状構造を有するものとしては、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
ビニルモノマーとしては、合成時または脱水縮合時にカルボキシル基と反応してしまう、ヒドロキシル基、アミノ基等を持たないものである必要がある他は特に制限されない。例えば、(メタ)アクリル酸エステル誘導体、ビニルエステル誘導体、マレイン酸ジエステル誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体、スチレン誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルケトン誘導体、オレフィン誘導体、マレイミド誘導体、(メタ)アクリロニトリルが好適に挙げられる。ビニル樹脂としては、その中でも特に(メタ)アクリル酸エステル誘導体を重合して得られる(メタ)アクリル樹脂が特に好ましい。
以下、これらのビニルモノマーの好ましい例について説明する。(メタ)アクリル酸エステル誘導体の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸−2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸―2−フェニルビニル、(メタ)アクリル酸―1−プロペニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸―2−アリロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸−γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
ビニルエステル誘導体の例としては、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、および安息香酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸ジエステル誘導体の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、およびマレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
フマル酸ジエステル誘導体の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、およびフマル酸ジブチルなどが挙げられる。
イタコン酸ジエステル誘導体の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、およびイタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド誘導体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
スチレン誘導体の例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、およびα−メチルスチレンなどが挙げられる。
ビニルエーテル誘導体の例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテルおよびフェニルビニルエーテルなどが挙げられる。
ビニルケトン誘導体の例としては、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどが挙げられる。
オレフィン誘導体の例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
マレイミド誘導体の例としては、マレイミド、ブチルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミドなどが挙げられる。
そのほかにも、(メタ)アクリロニトリル、ビニル基が置換した複素環式基(例えば、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルカルバゾールなど)、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクトン等も使用できる。
〔官能基〕
本発明における変性用ビニル樹脂は、官能基を有しても構わないが、合成時または脱水縮合時にカルボキシル基と反応してしまう水酸基、アミノ基は好ましくない。
前記変性用ビニル樹脂は、前記ビニルモノマーを重合開始剤の存在下、反応容器中で加熱、必要により熟成することにより得ることが出来る。反応条件としては例えば、重合開始剤及び溶媒によって異なるが、反応温度が30〜150℃、好ましくは60〜120℃である。重合は、非反応性溶剤の存在下で行っても差し支えない。
前記重合開始剤としては、例えばt−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド、クメンパーヒドロキシド、アセチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等過酸化物;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等アゾ化合物などが挙げられる。
前記非反応性溶剤としては、例えばヘキサン、ミネラルスピリット等脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メタノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で使用しても、複数種類併用してもかまわない。
本発明において、前記変性用ビニル樹脂は単独で用いても良いが、複数を組み合わせて用いてもかまわない。また、本発明のビニル樹脂は、直鎖型ポリマーであっても分岐型ポリマーであってもよく、分岐型ポリマーの場合くし型でも星型でもかまわない。
〔分子量〕
本発明における変性用ビニル樹脂の分子量は発明の効果を大きくするために、重量平均分子量が6000以上であることが好ましい。また、セルロースへの反応性の低下を防止する観点からは、重量平均分子量は100000以下であることが好ましい。
〔セルロースナノファイバーと無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂の反応〕
前記方法で得られたセルロースナノファイバーと、無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂とを反応させる場合、公知慣用の方法でセルロースナノファイバーの有する水酸基と無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂の無水多塩基酸構造とを反応させればよい。反応は溶媒中で行ってもよく、無溶媒で行っても良い。
〔溶媒〕
反応溶媒としては、セルロースナノファイバーの凝集を防ぐという観点から両親媒性の溶媒であることが好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;n−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等の非プロトン性溶媒等が挙げられる。ただし、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒のような活性水素をもつ溶媒は、無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂の無水多塩基酸構造と反応するため好ましくない。アルコール系溶媒のような活性水素をもつ溶媒にセルロースナノファイバーが分散している場合は、アルコール系溶媒のような活性水素をもつ溶媒以外の前記両親媒性の溶媒に置換する必要がある。これらの溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。ただし、最終的に用いる溶媒に無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂が溶解しなければならない。
〔反応装置〕
反応装置について得に限定はなく、公知慣用の機器が使用可能である。その中でも、溶媒中で反応を行う場合は、フラスコや反応釜など、密閉且つ加熱可能な反応容器が好適に使用可能である。無溶媒で行う場合は、ニーダーや押出機等、高トルク且つ加温できる機器が好適に使用可能である。
〔反応温度〕
60〜140℃程度加熱すればよい。溶媒を使用する場合は、沸点以上に加熱しないよう注意する必要がある。
〔反応触媒〕
セルロースナノファイバーの有する水酸基と無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂の無水多塩基酸構造との反応を促進したい場合、触媒を使用することができる。触媒としては塩基性触媒や付加エステル化触媒等を使用することができ、炭酸ナトリウム、ジメチルベンジルアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、ピリジン等が挙げられる。
〔セルロースナノファイバーと無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂の配合率〕
本発明において、セルロースナノファイバーと無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂の配合率は、変性セルロースナノファイバー中のセルロースナノフィバー部分と無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂部分の比率が目的の比率である変性セルロースナノファイバーが得られるように適宜調整すればよい。
〔変性セルロースナノファイバー中のセルロースナノフィバー部分と無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂部分の比率〕
本発明において、変性セルロースナノファイバー中のセルロースナノフィバー部分と無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂部分の比率は、セルロースナノファイバー部分を1としたときの無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂部分の重量比で0.5〜200、好ましくは0.8〜100、より好ましくは1〜50である。結合する無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂が少ないと変性の効果が小さい。また重量比を上げるために低分子量の無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂を多くセルロースに結合させることおよび分子量の大きい無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂を結合させることはいずれも困難である。
本発明の変性セルロースナノファイバーは、溶剤分散性が向上していることから、溶剤系の成形用材料、塗工用材料、塗料材料、接着剤などに好適に使用する事ができる。
また、本発明の変性セルロースナノファイバーは、未変性のセルロースナノファイバーと同様に、無溶剤系の成形用材料、塗工用材料、塗料材料、接着剤なども好適に使用する事ができる。
〔用途〕
本発明における成形用材料、塗工用材料、塗料材料、接着剤は、各種用途に好適に利用できる。例えば、自動車部品、航空機部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以下、本発明の態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔ポリエステル系樹脂合成方法〕
(合成例1) ポリエステル系樹脂(1)の製造
窒素ガス導入管、還流コンデンサ、撹拌機を備えた2Lのガラス製フラスコにジエチレングリコール758.2部(7.14mol、仕込みモル比0.53)、アジピン酸652.6部(4.47mol、仕込みモル比0.33)、無水マレイン酸183.9部(1.88mol、仕込みモル比0.14)を仕込み、窒素気流下に、加熱を開始した。
内温200℃にて、常法にて脱水縮合反応を行った。
酸価が13KOHmg/gになったところで、直ちに150℃まで冷却し、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを仕込み原料重量に対し100ppm添加した。
さらに室温まで冷却し水酸基価89KOHmg/g、エステル基濃度9.07mmol/gのポリエステル系樹脂(1)を得た。
〔エステル基濃度の計算方法〕
エステル基濃度は下記計算式(1)により求めた。
エステル基濃度(mmol/g)
=生成エステル基量(mmol)/[仕込みモノマー量(g)−生成水量(g)]・・・(1)
ポリエステル系樹脂(1)を例にエステル基濃度の計算方法を更に詳しく説明する。生成エステル基量は、仕込みモノマーの全量がエステル化反応するものとして計算した。
生成エステル基量=アジピン酸 4.47mol×2 + 無水マレイン酸 1.88mol×2 = 12.70mol
次に、生成水量もエステル基と同様に仕込みモノマーの全量がエステル化反応するものとして計算した。
生成水量=(アジピン酸 4.47mol×2 + 無水マレイン酸 1.88mol) × 18.02 = 194.98g
上記によりポリエステル系樹脂(1)のエステル基濃度は下記計算式(2)により求められる。
エステル基濃度(mmol/g)=12.70×10 mmol / [1594.70−194.98]g = 9.07mmol/g ・・・(2)
〔酸価の測定〕
酸価は、ポリエステル系樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの重量(mg)を示しており、単位はmgKOH/gである。
テトラヒドロフランにポリエステル系樹脂を溶解して、0.1規定の水酸化カリウムメタノール溶液で滴定して求めた。
〔水酸基価の測定〕
水酸基価は、ポリエステル系樹脂1g中のOH基のモル数と同じモル数の水酸化カリウムの重量(mg)を示しており、単位はmgKOH/gである。
13C−NMRスペクトルにおける、水酸基に由来するピークの面積値から求めた。測定装置は、日本電子製JNM−LA300を用い、試料の10wt%重クロロホルム溶液に緩和試薬としてCr(acac)3 10mgを加え、ゲートデカップリング法による13C−NMRの定量測定を行なった。積算は4000回行なった。
〔ビニル樹脂合成方法〕
(合成例2) 無水多塩基酸構造を分子内に有するビニル樹脂(1)の製造
3Lステンレスセパラブルフラスコにメチルエチルケトン950gを計量し、窒素通気下、250rpmにて撹拌しながら75℃に加温した。
次に1Lステンレス容器にブチルアクリレート800g、スチレン100g、無水マレイン酸100gを計量しガラス棒にて撹拌した。
その後メチルエチルケトン50g、「パーブチルO(登録商標)(日本油脂株式会社製)」60gを加えガラス棒にてよく撹拌し、混合した。
この混合溶液を1L滴下ロートに移し、75℃に加温したメチルエチルケトン中に4時間かけて滴下した。
滴下終了後溶液を12時間75℃に保持し、重合した。
重合したビニル樹脂をビニル樹脂(1)とした。
ビニル樹脂(1)を1g計量し、トルエン/メタノール混合液(7/3重量比)を5g加えて撹拌し、120℃の乾燥機に1時間入れ、含有する有機溶媒を除去した。
有機溶媒除去後の重量からビニル樹脂(1)の固形分を計算した。
固形分は42%であった。
またビニル樹脂(1)の重量平均分子量は35000であった。
(合成例3) 無水多塩基酸構造を分子内に有さないビニル樹脂(2)の製造
温度計、撹拌機および還流冷却器を備えた四ツ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(MPA)を3000部仕込んで撹拌しながら130℃に昇温した。
次に、メタクリル酸2−エチルヘキシル(2EHMA)750部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)200部、メタクリル酸(MAA)50部からなる混合溶液と、「パーブチルO(登録商標)(日本油脂株式会社製)」150部からなる混合溶液を、それぞれ5時間かけて滴下した。
滴下終了後130℃で12時間反応した後、70℃で減圧脱溶剤することで、ビニル樹脂(2)の90%固形分溶液を得た。得られたビニル樹脂(2)の重量平均分子量は、1800であった。
(合成例4) 無水多塩基酸構造を分子内に有するビニル樹脂(3)の製造
3Lステンレスセパラブルフラスコにメチルエチルケトン950gを計量し、窒素通気下、250rpmにて撹拌しながら75℃に加温した。
次に1Lステンレス容器にブチルアクリレート700g、スチレン100g、無水マレイン酸100gを計量しガラス棒にて撹拌して得たモノマー混合液を1L滴下ロートに移した。
またメチルエチルケトン50g、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業(株)社製「V−59」0.2g、チオグリコール酸100gを計量しガラス棒にてよく撹拌して得た開始剤混合液を300mLの滴下ロートに移した。
上記モノマー混合液および開始剤混合液をそれぞれ75℃に加温したメチルエチルケトン中に4時間かけて滴下した。
滴下終了後溶液を20時間75℃に保持し、重合した。
重合したビニル樹脂を脱溶剤しビニル樹脂(3)とした。
ビニル樹脂(3)を1g計量し、トルエン/メタノール混合液(7/3重量比)を5g加えて撹拌し、120℃の乾燥機に1時間入れ、含有する有機溶媒を除去した。
有機溶媒除去後の重量からビニル樹脂(3)の固形分を計算した。
固形分は87%であった。
またビニル樹脂(3)の重量平均分子量は1900であった。
〔GPC測定方法〕
樹脂をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過することにより、測定サンプルを調製し、次に、この測定サンプルをゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC東ソー社製商品名「HLC−8220GPC」)に供給して、サンプル流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件で測定を行い、樹脂のポリスチレン換算分子量を測定した値を、重量平均分子量とした。なお、上記GPC測定において、カラムとして、HXL−X、G5000HXL、G3000HXL、G2000HXL、G2000HXL(いずれも東ソー株式会社製)を用い、検出器として示差屈折計を用いた。
〔水系CNFの溶剤置換方法〕
(製造例1)
セルロース濃度10%のCNF含水物「ダイセルファインケム社製 セリッシュ(登録商標) KY−100G」の水分散液50gを入れ、遠心分離を行い、上澄み液を除去し、沈殿物を取り出した。遠心分離管一本あたりに、アセトン50gを加えて、よく撹拌し、アセトン中に分散させ、遠心分離を行い、上澄み液を除去し、沈殿物を取り出した。上記の操作(アセトンの添加、分散、遠心分離、及び上澄み液の除去)をさらに二回繰り返し、固形分5質量%のCNFアセトンスラリーを得た。
〔樹脂でのセルロース微細化方法〕
(製造例2) 樹脂とセルロースナノファイバーの混合物1の製造
合成例1で合成したポリエステル系樹脂(1)を500g、日本製紙ケミカル社製のセルロースパウダー製品「KCフロック(登録商標)W100G」を500g、株式会社モリヤマ社製加圧ニーダー(DRV0.3GB−E型)に投入し、加圧しながら60rpmで180分間加圧混練を行ってセルロースの微細化処理を行い、樹脂とセルロースナノファイバー(以下CNFと略す)の混合物(1)を得た。得られた混合物1を0.1g量り取り、0.1%の濃度となるようにアセトンに懸濁し、特殊機械工業(株)製TKホモミキサーA型を用いて15000rpm20分間分散処理を行い、ガラス上に広げてアセトンを乾燥し、走査型電子顕微鏡にてセルロースの微細化状態を確認した。繊維の短軸方向の長さが100nmより細かく解れているセルロースが存在したことから、セルロースの微細化が良好であることが分かった。
〔変性CNFの製造方法〕
(実施例1)
撹拌子を入れた300mLナスフラスコに(合成例2)で作製したビニル樹脂(1)を100g、(製造例1)で作製したCNFアセトンスラリーを10g計量した。これを、窒素通気下でマグネチックスタラーにて撹拌しながら70℃に加温し、15時間70℃に保持することにより、ビニル樹脂(1)とCNFを反応させ変性CNF(1)を作製した。反応後吸引濾過にて変性CNF(1)を取り出した。その後アセトンを用いて変性CNF(1)を洗浄濾過し、変性CNF(1)アセトンスラリー(固形分50%)を得た。
(実施例2)
撹拌子を入れた300mLナスフラスコに(合成例2)で作製したビニル樹脂(1)を100g、(製造例2)で作製した樹脂とCNFの混合物(1)を1g計量した。これを、窒素通気下でマグネチックスタラーにて撹拌しながら70℃に加温し、15時間70℃に保持することにより、ビニル樹脂(1)とCNFを反応させ変性CNF(2)を作製した。反応後吸引濾過にて変性CNF(2)を取り出した。その後アセトンを用いて変性CNF(2)を洗浄濾過し、変性CNF(2)アセトンスラリー(固形分50%)を得た。
(実施例3)
株式会社モリヤマ製加圧ニーダー(DRV0.3GB−E型)に、(製造例2)で作製した樹脂とCNFの混合物(1)を3g、(合成例2)で作製したビニル樹脂(1)を300g投入し、70℃に加温しながら窒素通気下で、72rpmで18時間撹拌を行うことにより、ビニル樹脂(1)とCNFを反応させ変性CNF(3)を作製した。その後アセトンを用いて変性CNF(3)を洗浄濾過し、変性CNF(3)アセトンスラリー(固形分50%)を得た。
(比較例1)
撹拌子を入れた300mLナスフラスコに(合成例3)で作製したビニル樹脂(2)を100g、(製造例1)で作製した樹脂とCNFの混合物(1)を1g計量した。これを、窒素通気下でマグネチックスタラーにて撹拌しながら70℃に加温し、15時間70℃に保持することにより、ビニル樹脂(2)とCNFを反応させ未変性CNF(1)を作製した。反応後吸引濾過にて未変性CNF(1)を取り出した。その後アセトンを用いて未変性CNF(1)を洗浄濾過し、未変性CNF(1)アセトンスラリー(固形分50%)を得た。
(比較例2)
〔無水多塩基酸変性セルロースナノファイバーの製造〕
撹拌子を入れた300mLナスフラスコにN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)100g、(製造例1)で作製した樹脂とCNFの混合物1を1g、オクテニルコハク酸無水物(新日本理化社製リカシッド(登録商標)OSA)を8g計量した。窒素通気下、マグネチックスタラーにて撹拌しながら80℃に加温し、16時間80℃に保持し、オクテニルコハク酸無水物とパルプを反応させ変性CNF(4)を作製した。反応後吸引濾過にて変性CNF(4)を取り出した。その後アセトンを用いて変性CNF(4)を洗浄濾過し、変性CNF(4)アセトンスラリー(固形分50%)を得た。
(比較例3)
撹拌子を入れた300mLナスフラスコに(合成例4)で作製したビニル樹脂(3)を100g、(製造例1)で作製したCNFアセトンスラリーを10g計量した。これを、窒素通気下でマグネチックスタラーにて撹拌しながら70℃に加温し、15時間70℃に保持することにより、ビニル樹脂(3)とCNFを反応させ変性CNF(5)を作製した。反応後吸引濾過にて変性CNF(5)を取り出した。その後アセトンを用いて変性CNF(5)を洗浄濾過し、変性CNF(5)アセトンスラリー(固形分50%)を得た。
〔溶媒分散性の評価〕
変性CNF(1)〜(5)および未変性CNF(1)を0.2g、MEK6.8gをガラス試験管に入れ、よく撹拌し、MEK中に分散させた。
試験管を10回反転させ変性パルプまたはパルプを十分にMEK中に分散し、その後静置し、変性CNFまたはCNFの沈降状態を観察した。1分間観察し、CNFが沈降して上澄みが透明になった場合、MEK中の分散安定性×、パルプが沈降せず上澄みが懸濁した場合、MEK中の分散安定性○として変性CNFの分散性を評価した。
Figure 2015059155
上記結果から分かるように、実施例1〜3では分散安定性が良好であったが、比較例1〜3では良好な分散安定性を示すことはなかった。
本発明によれば、セルロースナノファイバーの有する水酸基と無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂の無水多塩基酸構造とを反応させることにより、変性セルロースナノファイバーを得ることが可能である。また、変性セルロースナノファイバーは溶剤への分散性が大きく向上しているため、従来のCNFが使用することが困難であった溶剤含有樹脂組成物に好適に使用することが可能である。これにより、従来セルロースナノファイバーの複合化により高い機械強度を付与する目的で使用されていた分野に加え、塗工剤や粘接着剤などに使用できる。例えば、自動車、電車、船舶、飛行機等の輸送機器の内装材、外装材、構造材等や、パソコン、テレビ、電話等の電化製品等の筺体、構造材、内部部品等、建築材、文具、OA機器等の事務機器等の筐体、スポーツ・レジャー用品、構造材として有効に使用することができる。

Claims (3)

  1. 水酸基を有するセルロースナノファイバーに、無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂を反応させて、変性セルロースナノファイバーを製造する変性セルロースナノファイバーの製造方法であって、
    該無水多塩基酸構造は、カルボキシル基が分子内で脱水縮合し環状構造を形成した環状無水多塩基酸構造であることを特徴とする変性セルロースナノファイバーの製造方法。
  2. 前記無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂がビニル系樹脂である請求項1に記載の変性セルロースナノファイバーの製造方法。
  3. 前記無水多塩基酸構造を分子内に有する樹脂の重量平均分子量が6000以上、10000以下である請求項1又は2に記載の変性セルロースナノファイバーの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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