本発明者らは、合金系二次電池において、電池性能が急激に低下する原因について検討した。その結果、次の知見を得た。
合金系活物質は、リチウムの吸蔵及び放出に伴って膨張及び収縮し、比較的大きな応力を発生させる。このため、充放電回数が増加すると、合金系活物質からなる負極活物質層の表面及びその内部にクラックが発生する。クラックが発生した場合、もともと非水電解質に直接触れていなかった面(以下「新生面」とする)が現れる。生成した直後の新生面は、高い反応性を有している。
そして、生成した直後の新生面と非水電解質とが接触した場合、新生面においてガスの発生を伴う副反応が起こることにより、副生物が生成する。この副生物は、電極表面に充放電反応を妨げる被膜を形成するために、電極の劣化の原因になる。また、発生したガスは、電池の膨れの原因になる。また、非水電解質が新生面での副反応によって消費されることにより、電池内の非水電解質の量が不足して、その結果、サイクル特性や高出力特性が急激に低下する。
これらの知見から、本発明者らは、負極集電体の表面に、複数の柱状合金系活物質(以下単に「柱状体」とも呼ぶ)を含む負極活物質層を形成し、柱状体間の間隙を維持しながら、柱状体の外表面にポリマー層を形成した非水電解質二次電池用負極を想到するに至った。
合金系活物質からなる柱状体には、充放電サイクル回数の増加に伴って、新生面が生成する場合がある。この場合、柱状体の外表面にポリマー層が形成されていることにより、生成した直後の新生面と非水電解質との接触が顕著に抑制される。その結果、ガスや副生物の発生が抑制される。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態である非水電解質二次電池用負極1(以下単に「負極1」と呼ぶ)の構成を模式的に示す縦断面図である。図2は、図1に示す負極1に含まれる負極集電体10の構成を模式的に示す上面図である。図3は、図1に示す負極1に含まれる負極活物質層12の構成を模式的に示す縦断面図である。図4は、図3に示す負極活物質層12を形成するための電子ビーム式蒸着装置20の構成を模式的に示す側面透視図である。
負極1は、負極集電体10、負極活物質層12及びポリマー層15を含む。
図2に示すように、負極集電体10の表面10aには、複数の凸部11が設けられている。なお、負極集電体10の両方の表面に複数の凸部11を設けてもよい。また、負極集電体10の凸部11が形成されていないシート部分の厚みは特に制限はないが、通常は1〜50μmである。また、負極集電体10は、例えば、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、銅、銅合金等の金属材料からなる。
凸部11は、負極集電体10の厚み方向の表面10a(以下単に「表面10a」とする)から、負極集電体10の外方に向けて延びる突起である。本実施形態では、凸部11は、負極集電体10の表面10aに千鳥配置されているが、それに限定されず、格子状配置、最密充填配置等でもよい。また、凸部11は、不規則的に配置されていてもよい。
凸部11の高さは、平均高さとして好ましくは3〜20μmである。凸部11の高さは、負極集電体10の厚み方向の断面において定義される。負極集電体10の断面は、凸部11の延びる方向における最先端点を含む断面とする。負極集電体10の断面において、前記最先端点から表面10aに降ろした垂線の長さが、凸部11の高さである。凸部11の平均高さは、例えば、負極集電体10の断面を走査型電子顕微鏡で観察して所定個数(例えば10個〜100個)の凸部11の高さを測定し、得られる測定値の平均値として求められる。
凸部11の幅は、好ましくは1〜50μmである。凸部11の幅は、負極集電体10の断面において、表面10aに平行な方向における凸部11の最大長さである。凸部11の幅も、凸部11の高さと同様に、所定個数の凸部11の最大長さを測定し、測定値の平均値として求められる。
なお、全ての凸部11を同じ高さ及び/又は同じ幅に形成する必要はない。
凸部11の形状は、本実施形態では菱形であるが、それに限定されず、円形、多角形、楕円形、平行四辺形、台形等でもよい。凸部11の形状は、表面10aを水平面に一致させた状態での、凸部11の鉛直方向上方からの正投影図における形状である。
凸部11は、本実施形態では頂部(凸部11の成長方向の先端部)が平面であり、この平面は表面10aにほぼ平行である。この平面には、ミクロンサイズ又はナノサイズの凹凸があってもよい。凸部11の頂部が平面であることにより、凸部11と柱状体13との接合強度が高まる。この平面が表面10aにほぼ平行であることにより、前記接合強度がさらに高まる。
凸部11の個数及び凸部11の軸線間距離は、凸部11の寸法(高さ、幅等)、凸部11表面に形成される柱状体13の寸法等に応じて適宜選択される。凸部11の個数は、好ましくは1万個/cm2〜1000万個/cm2である。凸部11の軸線間距離は、好ましくは2〜100μmである。なお、負極集電体10が帯状の長尺物である場合、負極集電体10の幅方向における凸部11の軸線間距離は4〜30μm、負極集電体10の長手方向における凸部11の軸線間距離は4〜40μmであることが好ましい。
凸部11の軸線は、凸部11の形状が円形である場合は、その円を内包できる最小の真円の中心を通り、表面10aに垂直な方向に延びる仮想線である。凸部11の形状が楕円形である場合は、凸部11の軸線は、前記楕円形の長軸と短軸との交点を通り、表面10aに垂直な方向に延びる仮想線である。凸部11の形状が菱形、多角形、平行四辺形又は台形である場合は、凸部11の軸線は、前記各図形の対角線の交点を通り、表面10aに垂直な方向に延びる仮想線である。
凸部11は、その表面(頂部及び側面)に少なくとも1つの突起を有していてもよい。これにより、凸部11と柱状体13との接合強度がさらに高まり、柱状体13の凸部11からの剥離が一層顕著に抑制される。突起は、凸部11表面から外方に延び、凸部11よりも寸法が小さい。突起の立体形状には、円柱状、角柱状、円錐状、角錐状、針状、襞状(一方向に延びる山脈状)等がある。凸部11の側面に形成される襞状の突起は、凸部11の周方向及び成長方向のいずれに延びていてもよい。
負極集電体10は、金属板に凹凸を形成する技術を利用して製造できる。金属板には、金属箔、金属シート、金属フィルム等を使用できる。金属板の材質は、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、銅、銅合金等の金属材料である。金属板に凹凸を形成する技術には、ローラ加工法がある。
ローラ加工法では、複数の凹部が表面に形成されたローラ(以下「凸部用ローラ」とする)を用いて、金属板を機械的にプレス加工する。これにより、金属板の表面に、凹部の寸法、その内部空間の形状、個数及び配置に対応する凸部11が形成された負極集電体10が得られる。
2つの凸部用ローラをそれぞれの軸線が平行になるように圧接させ、金属板をその圧接部に通過させて加圧すると、厚み方向の両方の表面に凸部11が形成された負極集電体10が得られる。凸部用ローラと表面が平滑のローラとをそれぞれの軸線が平行になるように圧接させ、金属板をその圧接部に通過させて加圧すると、厚み方向の片方の表面に凸部11が形成された負極集電体10が得られる。ローラの圧接圧は金属板の材質及び厚み、凸部11の形状及び寸法、負極集電体10の厚みの設定値等に応じて適宜選択される。
ローラ加工を行う前又は後に、金属板に粗面化処理を施しても良い。これにより、凸部11の頂部に粗面を形成できる。その結果、凸部11と柱状体13との接合強度が一層向上する。粗面化処理の具体例としては、粗化めっき、エッチング等が挙げられる。
凸部用ローラは、表面に凹部が形成されたセラミックローラである。セラミックローラは、芯用ローラと溶射層とを含む。芯用ローラには、鉄製ローラ、ステンレス鋼製ローラ等を使用できる。溶射層は、芯用ローラ表面に、酸化クロム等のセラミック材料を均一に溶射することにより形成できる。溶射層に凹部が形成される。凹部の形成には、セラミック材料等の成形加工用レーザを使用できる。
別形態の凸部用ローラは、芯用ローラ、下地層及び溶射層を含む。芯用ローラはセラミックローラの芯用ローラと同じものである。下地層は芯用ローラ表面に形成される樹脂層である。下地層表面に凹部が形成される。下地層は、樹脂シートの一方の表面に凹部を形成した後、この樹脂シートの凹部が形成されていない面と芯用ローラ表面とが接触するように、この樹脂シートを芯用ローラに巻き付けて接着することにより形成される。
下地層の材料としては、機械的強度の高い合成樹脂を使用する。このような合成樹脂の具体例としては、例えば、不飽和ポリエステル、熱硬化性ポリイミド、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
溶射層は、酸化クロム等のセラミック材料を下地層表面の凹凸に沿うように溶射することにより形成される。従って、下地層に形成される凹部は、凸部11の設計寸法よりも溶射層の層厚分だけ大きめに形成するのが好ましい。
別形態の凸部用ローラは、芯用ローラ及び超硬合金層を含む。芯用ローラはセラミックローラの芯用ローラと同じものである。超硬合金層は芯用ローラの表面に形成され、炭化タングステン等の超硬合金を含む。超硬合金層は、焼き嵌め又は冷やし嵌めにより形成できる。焼き嵌めは、円筒状の超硬合金を暖めて膨張させ、芯用ローラに嵌めることである。冷やし嵌めは、芯用ローラを冷却して収縮させ、円筒状の超硬合金に挿入することである。超硬合金層の表面には、レーザ加工によって凹部が形成される。
別形態の凸部用ローラは、凹部が表面に形成された硬質鉄系ローラである。硬質鉄系ローラは、少なくとも表層部がハイス鋼、鍛鋼等からなるローラである。ハイス鋼は、鉄にモリブデン、タングステン、バナジウム等の金属を添加し、熱処理して硬度を高めた鉄系材料である。鍛鋼は、鋼塊又は鋼片を加熱し、鍛造又は圧延及び鍛造して鍛錬成形し、さらに熱処理することにより製造される鉄系材料である。鋼塊は、溶鋼を鋳型に鋳込むことにより製造される。鋼片は、鋼塊から製造される。鍛造は、プレス及びハンマーにより行われる。凹部は、レーザ加工により形成される。
本実施形態では、凸部11が規則的に形成された負極集電体10を使用するが、それに限定されず、凸部11が不規則に形成された負極集電体を用いることもできる。このような負極集電体は、例えば、金属板に粗化めっき、エッチング等を施すことにより作製できる。ここで、金属板は、ローラ加工法で用いるものと同じものを使用できる。
負極1において、負極活物質層12は、図1及び図3に示すように、複数の柱状体13と複数の薄膜状の合金系活物質(以下単に「薄膜部」とも呼ぶ)14とを含む。複数の柱状体13及び薄膜部14は、例えば、気相法により同時に形成できる。具体的な形成方法については、柱状体13及び薄膜部14の構成を説明した後に、詳述する。
柱状体13は、合金系活物質からなり、凸部11表面に支持され、凸部11表面から負極集電体10の外方に向けて延びる。柱状体13は、負極集電体10の表面10aに対して垂直な方向又は前記垂直な方向に対して傾斜した方向に延びる。柱状体13の外表面には、ポリマー層15が形成されている。
柱状体13の高さは、好ましくは1μm〜30μm、さらに好ましくは5μm〜25μmである。柱状体13の高さは、柱状体13の頂部の最先端点から凸部11の頂部表面に降ろした垂線の長さである。柱状体13の高さは、負極1の厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡、レーザ顕微鏡等で観察し、所定個数(例えば10個〜100個)の柱状体13の高さを測定し、得られた測定値の平均値として求められる。
柱状体13が低すぎる場合には、柱状体13のリチウム吸蔵能力が不十分になり、柱状体13による電池の容量及び出力を向上させる効果が低下するおそれがある。柱状体13が高すぎる場合には、柱状体13に含まれる合金系活物質の膨張時に発生する応力が大きくなりすぎ、負極集電体10及び負極1の変形、柱状体13の凸部11からの剥離等が起こるおそれがある。
柱状体13は気相法により形成されるので、柱状体13の外表面は適度な表面粗度を有している。これにより、柱状体13とポリマー層15との密着性が高まる。そして、柱状体13に含有される合金系活物質が体積変化を繰り返しても、ポリマー層15の柱状体13からの剥離が抑制される。その結果、ポリマー層15による、新生面の保護効果が長期にわたって持続する。
ポリマー層15が外表面に形成された、隣り合う一対の柱状体13の間には間隙17が存在している。この間隙17が、合金系活物質の体積変化による応力を緩和する。その結果、柱状体13の凸部11からの剥離、負極集電体10及び負極1の変形等が抑制される。間隙17は、非水電解質を保持する機能をも有している。これにより、電池性能の高水準での安定化を図ることができる。
また、ポリマー層15が外表面に形成された柱状体13間の間隙17は、寸法が0.5μm〜30μmの微細な空間であるため、この部分に非水電解質が貯留され易い。間隙17に貯留された非水電解質は、ポリマー層15を介して柱状体13及び薄膜部14に接触するとともに、セパレータ16とも接触している。このため、柱状体13及び薄膜部14に含有される合金系活物質と非水電解質とが十分に接触する。これにより、電池の高出力特性等を、高水準で安定させることが可能になる。
これらのことにより、生成した直後の新生面と非水電解質との副反応が抑制され、負極1の寿命短縮、負極1及び電池の変形、電池性能の急激な低下等の原因になる副生物及びガスの生成量が顕著に少なくなる。その結果、合金系活物質の長所(高容量)が十分に発揮され、高容量及び高出力で、サイクル特性や高出力特性に優れ、耐用寿命の長い非水電解質二次電池が得られる。
柱状体13は、複数層の合金系活物質の塊(以下、単に「塊」とも呼ぶ)が積層されてなる積層体であることが好ましい。具体的には、例えば、図3に示すような、合金系活物質の塊13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hの積層体である柱状体13が挙げられる。なお、柱状体13は8層からなるが、塊の層数は特に限定されない。
このような積層体である柱状体13は、次のようにして形成される。まず、凸部11の頂部及びそれに続く側面の一部を被覆するように塊13aを形成する。次に、凸部11の残りの側面及び塊13aの頂部表面の一部を被覆するように塊13bを形成する。すなわち、図3において、塊13aは凸部11の頂部を含む一方の端部に形成される。一方、塊13bは部分的には塊13aに重なるが、塊13aに重ならない部分は凸部11の他方の端部に形成される。
さらに、塊13aの頂部表面の残り及び塊13bの頂部表面の一部を被覆するように塊13cを形成する。すなわち、塊13cを主に塊13aに接するように形成する。さらに、塊13dを主に塊13bに接するように形成する。以下同様にして、塊13e、13f、13g、13hを交互に積層することによって、柱状体13が形成される。なお、このような製造方法によれば、隣り合う柱状体13同士の間に薄膜部14を同時に形成することもできる。このような薄膜部14は、電池容量の向上に寄与する。
薄膜部14は、柱状体13と同じ合金系活物質からなり、柱状体13が形成されていない負極集電体10の表面10aに形成されている。より具体的には、薄膜部14は、凸部11間の表面10aに形成されている。負極1の厚み方向において、薄膜部14の一方の表面は負極集電体10に密着しているが、他方の表面(外表面)は柱状体13間の間隙17に面している。薄膜部14の間隙17に面する外表面には、ポリマー層15が形成されている。
すなわち、薄膜部14の外表面もポリマー層15により覆われている。また、薄膜部14は、気相法により形成されるので、その外表面は適度な表面粗度を有している。これにより、薄膜部14に含有される合金系活物質が体積変化を繰り返しても、ポリマー層15の薄膜部14からの剥離が抑制される。また、薄膜部14は、ポリマー層15を介して、柱状体13間の間隙17に面しているので、合金系活物質の体積変化に伴って発生する応力が緩和される。
これらのことにより、充放電サイクル回数の増加に伴って、薄膜部14に新生面が生成しても、生成した直後の新生面と非水電解質との接触による副反応が抑制される。そして、負極1の寿命短縮、負極1及び電池の変形、電池の膨れ、電池性能の低下等の原因になる副生物やガスの生成量が顕著に少なくなる。その結果、合金系活物質の長所(高容量)が十分に発揮され、高容量及び高出力で、サイクル特性や高出力特性に優れ、耐用寿命の長い非水電解質二次電池が得られる。
薄膜部14の厚みは、通常、柱状体13の高さよりも小さく、0.01μm〜5μmであることが好ましく、0.1μm〜3μmであることがさらに好ましい。薄膜部14の厚みが小さすぎると、薄膜部14のリチウム吸蔵能力が不十分になり、薄膜部14による電池の容量及び出力を向上させる効果が低下するおそれがある。また、薄膜部14の厚みが小さすぎることにより、表面10aへのLi析出等が起る可能性が生じる。薄膜部14の厚みが大きすぎると、薄膜部14に含まれる合金系活物質の膨張時に発生する応力が大きくなり、負極集電体10及び負極1の変形等が起こるおそれがある。
柱状体13及び薄膜部14に含有される合金系活物質は、負極電位下で、充電時にリチウムと合金化してリチウムイオンを吸蔵し、かつ放電時にリチウムイオンを放出する物質である。合金系活物質は、非晶質又は低結晶性であることが好ましい。合金系活物質としては、珪素系活物質、錫系活物質等が挙げられる。合金系活物質は、1種を単独で使用でき又は2種以上を組み合わせて使用できる。
珪素系活物質としては、珪素、珪素化合物、これらの部分置換体、前記した珪素化合物や部分置換体の固溶体等が挙げられる。
珪素酸化物としては、式SiOa(0.05<a<1.95)で表される珪素酸化物、式SiCb(0<b<1)で表される珪素炭化物、式SiNc(0<c<4/3)で表される珪素窒化物、珪素と異種元素(A)との合金等が挙げられる。異種元素(A)としては、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn、Ti等が挙げられる。部分置換体は、珪素及び珪素化合物に含まれる珪素原子の一部が、異種元素(B)で置換された化合物である。異種元素(B)としては、B、Mg、Ni、Ti、Mo、Co、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Nb、Ta、V、W、Zn、C、N、Sn等が挙げられる。これらの中では、珪素及び珪素化合物が好ましく、珪素及び珪素酸化物が更に好ましい。
錫系活物質としては、錫、式SnOd(0<d<2)で表される錫酸化物、二酸化錫(SnO2)、錫窒化物、Ni−Sn合金、Mg−Sn合金、Fe−Sn合金、Cu−Sn合金、Ti−Sn合金等の錫含有合金、SnSiO3、Ni2Sn4、Mg2Sn等の錫化合物、前記した錫酸化物、錫窒化物や錫化合物の固溶体等が挙げられる。錫系活物質の中では、錫酸化物、錫含有合金、錫化合物等が好ましい。
柱状体13及び薄膜部14は、気相法により形成される。気相法の具体例としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法、化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法、溶射法等が挙げられる。これらの中でも、真空蒸着法が好ましい。以下に、真空蒸着法による柱状体13及び薄膜部14の形成を、さらに具体的に説明する。
柱状体13及び薄膜部14は、例えば、図4に示す電子ビーム式真空蒸着装置20(以下単に「蒸着装置20」とする)によって形成できる。
蒸着装置20は、チャンバ21、第1配管22、固定台23、ノズル24、ターゲット25、電源26、電子ビーム発生装置30、及び第2配管(不図示)を含む。
チャンバ21は耐圧性容器であり、その内部空間に第1配管22、固定台23、ノズル24、ターゲット25及び電子ビーム発生装置30を収容する。
第1配管22は、一端がノズル24に接続され、他端がチャンバ21の外方に延びてマスフローコントローラ(不図示)を介して原料ガスボンベ又は原料ガス製造装置(いずれも不図示)に接続される。第1配管22は、ノズル24に原料ガスを供給する。原料ガスには、酸素、窒素等を使用する。
固定台23は、回転自在に支持される板状部材であり、その厚み方向の一方の表面に負極集電体10を固定できる。固定台23は、図4における実線で示す位置と一点鎖線で示す位置との間を回転する。実線で示す位置では、固定台23と水平線28との成す角の角度が(90−ω)°=θ°である。一点鎖線で示す位置では、固定台23と水平線28との成す角の角度が(180−θ)°である。鉛直線27と垂直線29との成す角の角度ω°は合金系活物質原料の蒸気の入射角である。垂直線29は、鉛直線27と固定台23との交点を通り、固定台23表面に垂直な直線である。角度ω°は凸部11及び柱状体13の寸法等に応じて適宜選択できる。
ノズル24は、固定台23とターゲット25との間に設けられ、第1配管22の一端が接続され、原料ガスをチャンバ21内に放出する。ターゲット25は合金系活物質の原料を収容する。電子ビーム発生装置30は、ターゲット25に収容される合金系活物質の原料に電子ビームを照射して加熱する。これにより、合金系活物質の原料の蒸気が発生する。この蒸気は、負極集電体10に向けて上昇し、ノズル24から放出されるガスと混合される。
電源26はチャンバ21の外部に設けられ、電子ビーム発生装置30に電圧を印加する。第2配管は、チャンバ21内の雰囲気になるガスを導入する。なお、蒸着装置20と同じ構成を有する電子ビーム式真空蒸着装置が、例えば、アルバック(株)から市販されている。
負極集電体10の表面10aに、珪素酸化物からなる柱状体13及び薄膜部14を形成する場合を例に採り、蒸着装置20の動作を説明する。
蒸着装置20によれば、まず、負極集電体10を固定台23に固定し、チャンバ21内部に酸素(原料ガス)を導入する。次に、ターゲット25に電子ビームを照射し、珪素(合金系活物質原料)の蒸気を発生させる。蒸気は鉛直方向上方に上昇し、ノズル24周辺で酸素と混合される。蒸気と酸素との混合物はさらに上昇し、固定台23に固定された負極集電体10の表面10aに供給される。これにより、凸部11の表面に、珪素酸化物からなる柱状体13が形成され、負極集電体10の凸部11が形成されていない表面10aに、珪素酸化物からなる薄膜部14が形成される。
このとき、固定台23を実線の位置に配置することにより、凸部11表面に図3に示す塊13aを形成する。次に、固定台23を一点鎖線の位置に回転させ、図3に示す塊13bを形成する。このように固定台23の位置を交互に回転させることにより、図3に示す8つの塊13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hの積層体である柱状体13が、複数の凸部11の表面に同時に形成される。それとともに、負極集電体10の凸部11が形成されていない表面10aには、薄膜部14が形成される。これにより、負極活物質層12が形成され、負極1が得られる。
合金系活物質が、例えばSiOa(0.05<a<1.95)で表される珪素酸化物である場合、柱状体13の成長方向に酸素の濃度勾配が出来るように、柱状体13を形成してもよい。具体的には、負極集電体10に近い部分で酸素含有割合を高くし、負極集電体10から遠ざかるに従って、酸素含有割合を減らせばよい。これにより、凸部11と柱状体13との接合強度及び表面10aと薄膜部14との接合強度をさらに高めることができる。ノズル24から原料ガスを供給しない場合は、例えば、珪素又は錫からなる柱状体13及び薄膜部14が形成される。
なお、柱状体13及び薄膜部14の外表面にポリマー層15を形成する前に、柱状体13及び薄膜部14に不可逆容量に相当する量のリチウムを蒸着させてもよい。
ポリマー層15は、柱状体13の外表面及び薄膜部14の外表面のほぼ全面に形成されている。ポリマー層15は、隣り合う柱状体13同士の間に存在する間隙17を埋めないような厚みに形成されている。さらに、ポリマー層15は、負極集電体10の凸部11及び薄膜部14が形成されていない表面10a(以下「非形成面」とする)にも形成することができる。非形成面のポリマー層15は、特に設ける必要はないが、例えば、リチウムイオンが非形成面に金属リチウムとして析出し、電池容量が低下するのを防止するのに有効である。
ポリマー層15の厚みは、ポリマー層15を形成する部位に応じて適宜選択できる。例えば、柱状体13頂部表面では、ポリマー層15を比較的厚く形成するのが好ましい。これは、次のような理由による。柱状体13が延びる方向を縦方向、それに垂直な方向を横方向とする。横方向における柱状体13の膨張は、柱状体13間の間隙17により緩和される。一方、縦方向においては柱状体13の頂部はセパレータ16に当接し、柱状体13の縦方向の膨張を緩和する空間が少ない。従って、ポリマー層15を比較的厚めに形成することにより、ポリマー層15の弾性により、柱状体13の縦方向の膨張を緩和できる。
柱状体13側面では、ポリマー層15の厚みが、最も小さな間隙幅の1/2未満になるように形成されるのが好ましい。これにより、ポリマー層15が外表面に形成された柱状体13が膨張した場合でも、柱状体13同士の接触による応力が緩和され、ポリマー層15の柱状体13からの剥離及び柱状体13の凸部11からの剥離が抑制される。さらに、非水電解質が、柱状体13間の間隙17に流入し易くなる。
間隙幅とは、負極1の厚み方向の断面において、負極集電体10の表面10aに平行な方向における間隙17の長さである。間隙幅は、好ましくは0.5μm〜30μm、さらに好ましくは2μm〜30μmである。
間隙幅が小さすぎると、柱状体13が膨張した場合に、柱状体13同士の接触による応力が大きくなりすぎ、ポリマー層15の柱状体13からの剥離及び柱状体13の凸部11からの剥離が起こるおそれがある。また、柱状体13間の間隙17への非水電解質の流入が抑制されるおそれがある。その結果、電池性能が低下するおそれがある。間隙幅が大きすぎると、間隙17の非水電解質の保持性の低下、柱状体13の個数の減少等から、電池性能が低下するおそれがある。
また、薄膜部14外表面では、ポリマー層15は比較的薄く形成するのが好ましい。薄膜14は、その厚みが比較的薄いので、その膨張応力は柱状体13の膨張応力よりも小さい。さらに、薄膜部14の上部には、膨張応力を緩和する間隙17が存在する。従って、ポリマー層15を薄くしても、ポリマー層15を形成する効果が十分に発揮される。
ポリマー層15の厚みは、ポリマー層15の形成部位に応じて適宜選択されるが、0.01μm〜20μmの範囲から選択するのが好ましく、0.1μm〜20μmの範囲から選択するのがさらに好ましい。例えば、柱状体13側面及び薄膜部14外表面に形成されるポリマー層15の厚みを、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.1〜5μmとし、柱状体13頂部に形成されるポリマー層15の厚みを、好ましくは3〜20μm、さらに好ましくは5〜20μmとすればよい。柱状体13頂部に形成されるポリマー層15は、柱状体13側面及び薄膜部14外表面に形成されるポリマー層15よりも厚くするのがよい。また、負極集電体10の非形成面のポリマー層15も、0.01〜10μm程度の厚みを有していればよい。
ポリマー層15が薄すぎると、合金系活物質の体積膨張に対するポリマー層15の追従性が低下し、ポリマー層15と柱状体13及び薄膜部14との密着性が低下するおそれがある。その結果、ポリマー層15による、新生面の保護効果が低下するおそれがある。また、ポリマー層15が厚すぎると、ポリマー層15のイオン透過性が低下し、電池の出力特性、サイクル特性、保存特性等が低下するおそれがある。
ポリマー層15は主成分が合成樹脂であるため、適度な機械的強度と柔軟性とを併せ持っている。従って、ポリマー層15は、合金系活物質の体積膨張に追従しながらも、変形等を起こし難い。このため、柱状体13及び薄膜部14とポリマー層15との密着が、電池の使用可能期間の全般にわたって維持される。その結果、充放電回数の増加に伴って新生面が生成した場合でも、生成した直後の新生面と非水電解質との接触を抑制できる。
ポリマー層15の空孔率は、好ましくは10%〜70%、より好ましくは15%〜60%、さらに好ましくは20%〜35%である。空孔率が小さすぎると、ポリマー層15のイオン伝導抵抗が大きくなり、高出力特性等が低下する恐れがある。一方、空孔率が大きすぎると、ポリマー層15の機械的強度が低くなり、ポリマー層15の柱状体13及び薄膜部14からの剥離が起こり易くなるおそれがある。
空孔率は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察により求めることができる。より具体的には、まず、SEM観察により画像処理を行って、負極活物質層12の厚さ方向の断面の画像を得る。この画像から、間隙17の合計面積(A)、及び柱状体13の表面を被覆するポリマー層15の合計面積(B)を測定する。空孔率は、得られた測定値を用い、下記式から算出される。
空孔率(%)={(A−B)/(A)}×100
また、空孔率は、水銀ポロシメータを用いて測定することが出来る。水銀ポロシメータを用いた空孔率の測定においては、水銀がポリマー層15内部の空隙に侵入する。その際、空孔率(%)は、100×{空隙に侵入した水銀の体積/(ポリマー層15の真体積+空隙に侵入した水銀の体積)}として計算される。ポリマー層15の真体積は、ポリマー層15の質量とポリマー層15を構成する合成樹脂の比重から計算できる。
ポリマー層15は、リチウムイオン透過性を有し、さらにリチウムイオン伝導性を有することができる。例えば、ポリマー層15の主成分であるリチウムイオン透過性樹脂が、非水電解質との接触により膨潤してリチウムイオン伝導性を示す場合は、ポリマー層15は、リチウムイオン伝導性を示す。また、ポリマー層15が主成分であるリチウムイオン透過性樹脂と共にリチウム塩を含有する場合も、ポリマー層15はリチウムイオン伝導性を示す。リチウムイオン伝導性のポリマー層15を形成すれば、ポリマー層15による電池反応の阻害が抑制される。
ポリマー層15は、リチウムイオン透過性樹脂を含有し、必要に応じてリチウム塩を含有してもよい。リチウムイオン透過性樹脂とは、例えば、フィルム形状に成形した場合に、リチウムイオンの透過が可能な細孔を有する多孔質体になる合成樹脂である。リチウムイオン透過性樹脂の中でも、非水電解質との接触により膨潤してリチウムイオン伝導性を示す樹脂(以下「リチウムイオン伝導性樹脂」とすることがある)がさらに好ましい。電池の組立時に、リチウムイオン伝導性樹脂を含有するポリマー層と非水電解質とが接触することにより、リチウムイオン伝導性を有するポリマー層15が得られる。
このような合成樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、柱状体13及び薄膜部14とポリマー層15との密着性を考慮すると、フッ素樹脂が好ましい。合成樹脂は1種を単独で使用でき又は2種以上を組み合わせて使用できる。
フッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(以下「PVDF」とする)、フッ化ビニリデン(VDF)とオレフィン系モノマーとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。オレフィン系モノマーには、例えば、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン(HFP)、エチレン等がある。フッ素樹脂の中でも、PVDF及びフッ化ビニリデンとオレフィン系モノマーとの共重合体が好ましく、PVDF、及びHFPとVDFとの共重合体がさらに好ましく、PVDFが特に好ましい。
ポリマー層15に添加されるリチウム塩には、非水電解質二次電池の分野で常用されているリチウム塩を使用できる。このようなリチウム塩の具体例としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO3、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、LiBCl4、ホウ酸塩類、イミド塩類等が挙げられる。リチウム塩は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
ポリマー層15の主成分であるリチウムイオン透過性樹脂が、リチウムイオン伝導性樹脂ではない場合でも、ポリマー層15にリチウム塩を添加することにより、リチウムイオン伝導性を有するポリマー層15が得られる。
ポリマー層15は、例えば、ポリマー溶液を柱状体13及び薄膜部14の外表面に塗布し、形成された塗膜を乾燥させることにより形成できる。ポリマー溶液は、合成樹脂及び有機溶媒を含有し、必要に応じてリチウム塩、添加剤等を含有する事ができる。ポリマー溶液は、例えば、合成樹脂、リチウム塩、添加剤等を有機溶媒に溶解又は分散させることにより調製できる。
有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアミン、アセトン、シクロヘキサノン等を使用できる。ポリマー溶液における合成樹脂の含有割合は、合成樹脂の種類、得ようとするポリマー層15の空孔率、厚み等に応じて適宜選択できるが、好ましくは0.1質量%〜25質量%、より好ましくは1質量%〜10質量%である。合成樹脂の含有割合が前記範囲であれば、全体的に均一な組織を有するポリマー層15を形成できる。また、ポリマー層15の柱状体13及び薄膜部14の外表面への密着性が良好になる。
ポリマー溶液における樹脂濃度は、更に好ましくは2質量%〜7.5質量%であり、特に好ましくは2.5質量%〜7質量%である。これにより、柱状体13間の間隙17が確実に残るとともに、柱状体13及び薄膜部14の外表面にポリマー層15を形成する作業性がより一層向上する。
ポリマー溶液の柱状体13及び薄膜部14の外表面への塗布は、公知の方法により実施できる。その具体例としては、例えば、スクリーン印刷、ダイコート、コンマコート、ローラコート、バーコート、グラビアコート、カーテンコート、スプレーコート、エアーナイフコート、リバースコート、ディップスクイズコート、浸漬法等が挙げられる。これらの中でも、浸漬法が好ましい。
なお、ポリマー層15の厚みは、例えば、ポリマー溶液の粘度、塗布量、浸漬法における浸漬時間や浸漬温度等を変更することにより調整できる。さらに、ポリマー溶液の粘度は、ポリマー溶液における合成樹脂の含有量、ポリマー溶液の液温等を変更することにより適宜調整できる。
ポリマー溶液からなる塗膜の乾燥温度は、ポリマー溶液に含有される合成樹脂や有機溶媒の種類等に応じて、通常20℃〜300℃の範囲から適宜選択される。
例えば、ポリマー溶液がPVDFの1〜10質量%NMP溶液であり、該溶液の液温が15〜85℃である場合は、浸漬法によれば、負極活物質層12を該溶液に浸漬させた後、60〜100℃程度で5〜30分程度真空乾燥させればよい。これにより、厚み0.01〜10μm程度のポリマー層15が形成される。
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態である非水電解質二次電池用負極2(以下単に「負極2」とする)の構成を模式的に示す縦断面図である。負極2は、負極1に類似し、構成部材が負極1と同じである場合は、同じ参照符号を付して説明を省略する。
負極2は、負極活物質層12aが、複数の紡錘状柱状体13aを有し、かつ薄膜部14を有していないことを特徴とする。負極2では、紡錘状柱状体13a外表面のほぼ全面及び負極集電体10の凸部11が形成されていない表面10aにポリマー層15が形成されている。それ以外の構成は負極1と同様である。紡錘状柱状体13aも、柱状体13と同様に、蒸着装置20における入射角ω及び合金系活物質の塊の層数を選択することにより作製できる。このような負極2を用いても、負極1と同様の効果が得られる。
[第3実施形態]
図6は、本発明の第3実施形態である非水電解質二次電池3の構成を模式的に示す縦断面図である。非水電解質二次電池3は、正極31及び図1に示す負極1をこれらの間にセパレータ34を介在させて積層した積層型電極群と、正極31に接続された正極リード35と、負極1に接続された負極リード36と、外装ケース38の開口38a、38bを封口するガスケット37と、前記積層型電極群及び非水電解質(不図示)を収容する外装ケース38と、を備えた扁平型電池である。
正極リード35は、一端が正極集電体31aに接続され、他端が外装ケース38の開口38aから非水電解質二次電池3の外部に導出されている。負極リード36は、一端が負極集電体10に接続され、他端が外装ケース38の開口38bから非水電解質二次電池3の外部に導出されている。正極リード35及び負極リード36には、非水電解質二次電池の分野で常用されるものを使用できる。例えば、正極リード35にはアルミニウム製リード、負極リード36にはニッケル製リードをそれぞれ使用できる。
外装ケース38の開口38a、38bはガスケット37によって封止されている。ガスケット37には、各種樹脂材料やゴム材料からなるものを使用できる。外装ケース38の材料には、金属材料、合成樹脂、ラミネートフィルム等がある。ガスケット37を使用せずに、外装ケース38の開口38a、38bを溶着等によって直接封止してもよい。
非水電解質二次電池3は、次のようにして作製される。正極リード35の一端を電極群の正極集電体31aに接続する。負極リード36の一端を電極群の負極集電体10に接続する。電極群を外装ケース38内に挿入し、非水電解質を注液し、正極リード35及び負極リード36の他端を外装ケース38の外部に導出する。次に、外装ケース38の内部を真空減圧しながら開口38a、38bを、ガスケット37を介して溶着して封口することにより、非水電解質二次電池3が得られる。
正極31は、正極集電体31aと、正極集電体31aの表面に支持された正極活物質層31bとを含む。
正極集電体31aとしては、導電性基板が用いられる。導電性基板の材質の具体例としては、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属材料、導電性樹脂等が挙げられる。導電性基板としては、平板や多孔板等が用いられる。平板としては、箔、シート、フィルム等が挙げられる。多孔板としては、メッシュ体、ネット体、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、不織布等がある。導電性基板の厚みは特に限定されないが、例えば、通常1〜500μmであり、好ましくは1〜50μmである。
正極活物質層31bは、リチウムイオンを吸蔵及び放出する正極活物質を含み、正極集電体31aの片面又は両面に形成される。
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出できる各種正極活物質を使用できる。その具体例としては、リチウム含有複合酸化物、オリビン型リン酸リチウム等が挙げられる。
リチウム含有複合酸化物は、リチウムと遷移金属元素とを含む金属酸化物、又は前記金属酸化物中の遷移金属元素の一部が異種元素により置換された金属酸化物である。
遷移金属元素としては、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Cr等が挙げられる。遷移金属元素の中では、Mn、Co、Ni等が好ましい。
また、異種元素としては、Na、Mg、Zn、Al、Pb、Sb、B等が挙げられる。異種元素の中では、Mg、Al等が好ましい。遷移金属元素及び異種元素は、それぞれ1種を単独で使用でき、又は2種以上を組み合わせ使用できる。
リチウム含有複合酸化物の具体例としては、例えば、LilCoO2、LilNiO2、LilMnO2、LilComNi1-mO2、LilComM1-mOn、LilNi1-mMmOn、LilMn2O4、LilMn2-mMnO4(前記各式中、MはNa、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb及びBよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。0<l≦1.2、0≦m≦0.9、2.0≦n≦2.3である。)等が挙げられる。これらの中では、LilComM1-mOnが好ましい。
オリビン型リン酸リチウムの具体例としては、例えば、LiXPO4、Li2XPO4F(式中、XはCo、Ni、Mn及びFeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す)等が挙げられる。
なお、リチウム含有複合酸化物及びオリビン型リン酸リチウムを示す前記各式において、リチウムのモル数は正極活物質作製直後の値であり、充放電により増減する。また、正極活物質は1種を単独で使用でき又は2種以上を組み合わせて使用できる。
正極活物質層31bは、例えば、正極活物質、結着剤、導電剤等を有機溶媒に溶解又は分散させて得られる正極合剤スラリーを正極集電体31aの表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥及び圧延することにより形成される。
結着剤としては、樹脂材料、ゴム材料、水溶性高分子材料等を使用できる。樹脂材料としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ヘキシル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ヘキシル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルホン、ポリヘキサフルオロプロピレン等が挙げられる。ゴム材料としては、スチレンブタジエンゴム、変性アクリルゴム等が挙げられる。水溶性高分子材料としては、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
また、樹脂材料として、2種類以上のモノマー化合物を含有する共重合体を使用できる。モノマー化合物の具体例としては、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエン等が挙げられる。
結着剤は1種を単独で使用でき、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
導電剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛ウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ等の導電性ウィスカ類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体等の有機導電性材料、フッ化カーボン等が挙げられる。導電剤は1種を単独で使用でき、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアミン、アセトン、シクロヘキサノン等を使用できる。
セパレータ34は、正極31と負極1との間に介在するように配置されるイオン透過性絶縁層である。セパレータ34は、負極1側では、その表面の少なくとも一部がポリマー層15の表面と接触していてもよい。
セパレータ34には、所定のイオン透過度、機械的強度、絶縁性等を併せ持ち、細孔を有する多孔質シートを使用できる。多孔質シートには、微多孔膜、織布、不織布等がある。微多孔膜は単層膜及び多層膜のいずれでもよい。単層膜は1種の材料からなる。多層膜は、複数の単層膜の積層体である。多層膜には、同じ材料からなる複数の単層膜の積層体、2種以上の異なる材料からなる単層膜の積層体等がある。また、微多孔膜、織布、不織布等を2層以上積層してもよい。
セパレータ34の材料には各種樹脂材料を使用できるが、耐久性、シャットダウン機能、電池の安全性等を考慮すると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。セパレータ34の厚みは、通常5〜300μm、好ましくは10〜40μmである。セパレータ34の空孔率は、好ましくは30〜70%、より好ましくは35〜60%である。空孔率は、セパレータ34の体積に対する、セパレータ34が有する細孔の総容積の百分率である。空孔率は、水銀ポロシメータ等により測定できる。
セパレータ34には、リチウムイオン伝導性を有する非水電解質が含浸される。ここでの非水電解質は液状非水電解質である。液状非水電解質は、溶質(支持塩)と非水溶媒とを含み、さらに必要に応じて各種添加剤を含む。
溶質としては、非水電解質二次電池の分野で常用されるものを使用でき、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、LiBCl4、ホウ酸塩類、イミド塩類等が挙げられる。
ホウ酸塩類には、ビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ホウ酸リチウム等がある。イミド塩類には、(CF3SO2)2NLi、(CF3SO2)(C4F9SO2)NLi、(C2F5SO2)2NLi等がある。溶質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。非水溶媒1リットルにおける溶質の濃度は、好ましくは0.5〜2モルである。
非水溶媒の具体例としては、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル等が挙げられる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート等が挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等が挙げられる。非水溶媒は1種を単独で使用でき、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
添加剤には、例えば、充放電効率を向上させる添加剤A、電池を不活性化させる添加剤B等がある。添加剤Aには、ビニレンカーボネート、4−メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4−エチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、4−プロピルビニレンカーボネート、4,5−ジプロピルビニレンカーボネート、4−フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネート等がある。これらの化合物は、その水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよい。添加剤Aは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
添加剤Bには、ベンゼン誘導体がある。ベンゼン誘導体には、フェニル基と、フェニル基に隣接する環状化合物基とを含むベンゼン化合物がある。環状化合物基には、フェニル基、環状エーテル基、環状エステル基、シクロアルキル基、フェノキシ基等がある。ベンゼン化合物には、例えば、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテル等がある。添加剤Bは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。添加剤Bの液状非水電解質における含有割合は、非水溶媒100体積部に対して10体積部以下であることが好ましい。
液状非水電解質に代えてゲル状非水電解質を用いることもできる。ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と樹脂材料とを含有する。樹脂材料の具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート等が挙げられる。
本実施形態では、リチウムイオン透過性絶縁層としてセパレータ34を使用するが、それに限定されず、無機酸化物粒子層を用いてもよい。また、セパレータ34と無機酸化物粒子層とを併用してもよい。無機酸化物粒子層は、リチウムイオン透過性絶縁層として機能するとともに、短絡発生時における非水電解質二次電池3の安全性を向上させる。また、無機酸化物粒子層とセパレータ34とを併用すると、セパレータ34の耐用性が顕著に向上する。無機酸化物粒子層は、正極活物質層31b及び負極活物質層12の少なくとも一方の表面に形成できるが、正極活物質層31bの表面に形成するのが好ましい。
無機酸化物粒子層は、無機酸化物粒子及び結着剤を含有する。無機酸化物には、アルミナ、チタニア、シリカ、マグネシア、カルシア等がある。結着剤には、正極活物質層31bの形成に用いるのと同じ結着剤を使用できる。無機酸化物粒子及び結着剤は、それぞれ、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。無機酸化物粒子層における無機酸化物粒子の含有割合は、好ましくは無機酸化物粒子層全量の90〜99.5質量%、さらに好ましくは95〜99質量%であり、残部が結着剤である。
無機酸化物粒子層は、正極活物質層31bと同様にして形成できる。例えば、無機酸化物粒子及び結着剤を有機溶媒に溶解又は分散させてスラリーを調製し、このスラリーを正極活物質層31b又は負極活物質層12の表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥させることにより、無機酸化物粒子層を形成できる。有機溶媒には、正極合剤スラリーに含有されるのと同じ有機溶媒を使用できる。無機酸化物粒子層の厚みは、好ましくは1〜10μmである。
また、本実施形態ではリチウムイオン透過性絶縁層としてセパレータ34を使用するが、セパレータ34に代えて固体電解質層を用いても良い。固体電解質層は、固体電解質を含有する。固体電解質には、無機固体電解質及び有機固体電解質がある。
無機固体電解質としては、(Li3PO4)x−(Li2S)y−(SiS2)zガラス、(Li2S)x−(SiS2)y、(Li2S)x−(P2S5)y、Li2S−P2S5、thio―LISICON等の硫化物系、LiTi2(PO4)3、LiZr2(PO4)3、LiGe2(PO4)3、(La0.5+xLi0.5-3x)TiO3等の酸化物系、LiPON、LiNbO3、LiTaO3、Li3PO4、LiPO4-xNx(xは0<x≦1)、LiN、LiI、LISICON等がある。無機固体電解質からなる固体電解質層は、蒸着、スパッタリング、レーザアブレーション、ガスデポジション、エアロゾルデポジション等により形成できる。
有機固体電解質としては、イオン伝導性ポリマー類、ポリマー電解質等が挙げられる。イオン伝導性ポリマー類としては、低相転移温度(Tg)のポリエーテル、無定形フッ化ビニリデンコポリマー、異種ポリマーのブレンド物等が挙げられる。ポリマー電解質は、マトリックスポリマーとリチウム塩とを含む。マトリックスポリマーとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、ポリカーボネート等が挙げられる。リチウム塩としては、液状非水電解質に含有されるのと同じリチウム塩を使用できる。
本実施形態では、積層型電極群を含む非水電解質二次電池3を例に挙げて説明したが、それに限定されず、本発明の非水電解質二次電池は、捲回型電極群又は扁平型電極群を含んでいてもよい。捲回型電極群は、正極と負極との間にリチウムイオン透過性絶縁層を介在させて、これらを捲回した電極群である。扁平型電極群は、例えば、捲回型電極群を扁平形状に成形した電極群である。扁平型電極群は、正極と負極との間にリチウムイオン透過性絶縁層を介在させて、これらを板に巻き付けることによっても作製できる。
本発明の非水電解質二次電池の形状には、円筒型、角型、扁平型、コイン型、ラミネートフィルム製パック型等がある。
以下に実施例及び比較例ならびに試験例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
(1)正極活物質の作製
硫酸ニッケル水溶液に、Ni:Co=8.5:1.5(モル比)になるように硫酸コバルトを加えて金属イオン濃度2mol/Lの水溶液を調製した。この水溶液に撹拌下、2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を徐々に滴下して中和することにより、Ni0.85Co0.15(OH)2で示される組成を有する二元系の沈殿物を共沈法により生成させた。この沈殿物をろ過により分離し、水洗し、80℃で乾燥し、複合水酸化物を得た。
この複合水酸化物を大気中にて900℃で10時間加熱し、Ni0.85Co0.15Oで示される組成を有する複合酸化物を得た。次に、得られた複合酸化物に、Ni及びCoの原子数の和とLiの原子数とが等しくなるように水酸化リチウム1水和物を加え、大気中にて800℃で10時間加熱することにより、LiNi0.85Co0.15O2で示される組成を有し、二次粒子の体積平均粒径が10μmであるリチウムニッケル含有複合酸化物を、正極活物質として得た。
(2)正極の作製
上記で得られた正極活物質の粉末93g、アセチレンブラック(導電剤)3g、ポリフッ化ビニリデン粉末(結着剤)4g及びN−メチル−2−ピロリドン50mlを充分に混合して正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーを厚み15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗布し、乾燥し、圧延して、厚み120μmの正極活物質層を形成した。得られた正極を15mm×15mmの寸法に切り出し、その上部に5mm×5mmのリード取り付け部を設け、この領域の正極活物質層を除去し、正極板を作製した。
(3)負極の作製
[負極集電体の作製]
まず、負極集電体の作製方法を説明する。図7は、負極集電体43の製造方法を説明する工程図である。図8は、図7に示す負極集電体43の製造方法により得られる負極集電体43の要部の構成を模式的に示す上面図である。
図7に示す負極集電体43の製造方法は、(a)工程及び(b)工程を含む。図7では、(a)及び(b)工程を縦断面図で示している。
(a)工程では、厚み27μmの銅箔(商品名:HCL−02Z、日立電線(株)製)の片面に電解めっきにより粗面化処理を施し、複数の銅粒子(粒径1μm)を付着させた。これにより、表面粗さRzが1.5μmの粗化銅箔40を得た。なお、表面粗さRzは日本工業規格(JISB 0601―1994)に定められた十点平均粗さRzを指す。なお、代わりに、プリント配線基板用に市販されている粗面化銅箔を用いてもよい。
(b)工程では、レーザ彫刻により、セラミックローラ41の表面に複数の凹部42を形成した。複数の凹部42は、セラミックローラ41の表面に垂直な方向から見た形状を菱形とした。菱形の対角線のうち、短い対角線の長さを10μm及び長い対角線の長さを20μmとした。また、隣接する凹部42の短い対角線に沿う間隔を18μm、長い対角線に沿う間隔を20μmとした。また、各凹部42の深さは10μmとした。このセラミックローラ41と、表面の平滑なステンレス鋼製ローラとを、それぞれの軸線が平行になるように圧接させた。2つのローラの圧接部分に粗化銅箔40を線圧1t/cmで通過させることにより、圧延処理を行った。即ち、粗面化銅箔40の粗面化された面を、セラミックローラ41により矢符45の方向に加圧した。
このようにして、図7(c)に示すように、表面に複数の凸部44を有する負極集電体43を得た。このとき、ローラ間を通過した粗化銅箔40のうち、セラミックローラ41の凹部42以外の部分でプレスされた領域は、図示するように平坦化された。一方、粗化銅箔40のうち凹部42に対応する領域は、平坦化されずに凹部42の内部空間に入り込み、凸部44が形成された。凸部44の高さは、セラミックローラ41の凹部42の深さより小さく、約8μmであった。
図8に示すように、負極集電体43では、ほぼ菱形の形状を有する凸部44が、千鳥格子状に配置されていた。また、凸部44の対角線のうち、短い対角線aの長さは約10μm、長い対角線bの長さは約20μmであった。また、隣接する凸部44の、短い対角線aに沿う間隔eは18μm、長い対角線bに沿う間隔dは20μmであった。
[負極活物質層の形成]
上記で得られた負極集電体43を、2cm×10cmに裁断し、図4に示す電子ビーム式蒸着装置20の真空チャンバ21の内部に配置された固定台23に固定した。そして、純度99.7%の酸素ガスを真空チャンバ21に供給しながら、蒸着ユニット(ターゲット25、電子ビーム発生装置30及び偏向ヨークをユニット化したもの)を用いて珪素を蒸発源とする電子ビーム蒸着を行った。蒸発源の珪素を蒸発させるために、電子ビーム発生装置30により発生させた電子ビームを偏向ヨークにより偏向させて蒸発源に照射した。蒸発源には、半導体ウェハを形成する際に生じる端材(スクラップシリコン、純度:99.999%)を用いた。
蒸着にあたり、蒸着角(入射角)ωが70°となるように固定台23を傾斜させ、成膜速度約8nm/s、酸素流量5sccmで第1段目の蒸着工程を行い、高さ2.5μmの1段目の塊を形成した。続いて、固定台23を中心軸のまわりに時計回りに回転させ、上記第1段目の蒸着工程における固定台23の傾斜方向と反対の方向に傾斜させて、蒸着角度ωを−70°とした。この状態で、2段目の塊を形成した。
この後、固定台23の傾斜方向を再び第1段目の蒸着工程と同じ方向に変えて、蒸着角度ωを70°とし、3段目の塊を形成した。次に、第4段目から第20段目までは蒸着角度ωを−70°及び70°の間で交互に切り替えて蒸着を行い、塊の積層体である複数の柱状体を形成した。柱状体の平均高さは22μmであった。間隙幅は、4μm〜10μmであった。また、負極集電体43の柱状体が形成されていない表面には、厚み約2μmの薄膜部が形成されていた。このようにして負極活物質層を形成し、負極を作製した。得られた負極活物質層における珪素量に対する酸素量のモル比の平均値は0.5であった。
上記で得られた負極にリチウム蒸着を行った。蒸着量は不可逆容量に相当する9μmとした。この負極を16mm×16mmの寸法に切り出し、その上部に5mm×5mmのリード取り付け部を設け、この領域の負極活物質層を除去し、負極板を作製した。
(4)ポリマー層の形成
PVDF(分子量400000)をN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、PVDF濃度が4質量%である溶液を調製した。この溶液を80℃に加熱し、上記で得られた負極板を1分間浸漬して引き上げた。その後、85℃で10分間真空乾燥処理を行い、負極板を作製した。この負極板の厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡で観察した。図9は、実施例1で得られた負極の断面の電子顕微鏡写真である。図9から、各柱状体の外表面及び柱状体が形成されていない負極集電体表面に形成された薄膜部外表面にポリマー層が形成されていることが明らかである。ポリマー層の厚みは約2μm、空孔率は30%であった。
(5)積層型電池の作製
上記で得られた正極板及びポリマー層形成後の負極板を、これらの間にポリエチレン微多孔膜(セパレータ、商品名:ハイポア、厚み20μm、旭化成(株)製)を介在させて積層し、積層型電極群を作製した。次に、アルミニウム製正極リードの一端を正極板のリード取り付け部に溶接し、ニッケル製負極リードの一端を負極板のリード取り付け部に溶接した。
得られた電極群をアルミニウムラミネートシートからなる外装ケースに挿入し、さらに非水電解質を外装ケースに注液した。非水電解質には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:1の割合で含む混合溶媒に、LiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させた非水電解質を用いた。次に、正極リード及び負極リードを外装ケースの開口部から外装ケースの外部に導出し、外装ケース内部を真空減圧しながら、外装ケースの開口部を溶着させて、ラミネートフィルム製パック型の非水電解質二次電池を作製した。
(実施例2)
ポリマー層形成用の合成樹脂として、PVDFに代えてヘキサフルオロプロピレン(HFP)含有量が3質量%のVDF(フッ化ビニリデン)−HFP共重合体を用いる以外は、実施例1と同様にして負極及び非水電解質二次電池を作製した。得られた負極を走査型電子顕微鏡で観察したところ、柱状体側面及び薄膜部外表面にポリマー層が形成されていることが確認された。また、側面にポリマー層が形成された柱状体間に、間隙が存在することが確認された。ポリマー層の厚みは約2μm、空孔率は32%であった。
(実施例3)
ポリマー層形成用の合成樹脂として、PVDFに代えてHFP含有量が12質量%のVDF−HFP共重合体を用いる以外は、実施例1と同様にして負極及び非水電解質二次電池を作製した。得られた負極を走査型電子顕微鏡で観察したところ、柱状体側面及び薄膜部外表面にポリマー層が形成されていることが確認された。また、側面にポリマー層が形成された柱状体間に、間隙が存在することが確認された。ポリマー層の厚みは約2μm、空孔率は28%であった。
(実施例4)
ポリマー溶液を調製する時に、溶媒としてジメチルカーボネートを用い、ポリマー材料として、HFP含有量が12質量%のVDF−HFP共重合体を用いた。さらに、プロピレンカーボネートをポリマー溶液全量の15質量%になるように添加した。ポリマー溶液におけるVDF−HFP共重合体の濃度は、4質量%であった。このポリマー溶液(80℃)に負極板を浸漬して引き上げ、室温で10分間乾燥させた。この負極板を用いる以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
得られた負極を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、柱状体側面の一部及び薄膜部外表面に、厚み約0.5μmのポリマー層が形成されているだけでなく、柱状体頂部表面に厚み約6μmのポリマー層が形成されていた。これらのポリマー層の空孔率は、21%であった。
ポリマー溶液の溶媒として高沸点溶媒であるプロピレンカーボネートを添加したため、柱状体側面だけでなく、柱状体頂部にもポリマー層が形成されたものと考えられる。このように、ポリマー溶液の組成を適宜変更するにより、ポリマー層の形成部位を制御することが可能である。
(比較例1)
ポリマー層を形成しない以外は、実施例1と同様にして負極を作製し、非水電解質二次電池を作製した。
(比較例2)
ポリマー溶液におけるPVDF濃度を8質量%に変更する以外は、実施例1と同様にして負極を作製し、非水電解質二次電池を作製した。得られた負極を走査型電子顕微鏡で観察した。図10は、比較例2で得られた負極の断面の電子顕微鏡写真である。図10から、ポリマー層が柱状体間の間隙に入り込み、間隙の大部分が消滅していることが明らかである。なお、得られたポリマー層の空孔率は2%であった。
(試験例1)
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた非水電解質二次電池について、下記の評価試験を実施した。評価試験は、いずれも、20℃環境下で実施した。結果を表1に示す。
[電池容量評価]
各電池について、以下の充放電条件で充電(定電流充電及びそれに続く定電圧充電)及び放電(定電流放電)の充放電を3サイクル繰返し、3回目の放電容量(0.2C容量)を求めた。
定電流充電:0.7C、充電終止電圧4.2V。
定電圧充電:4.2V、充電終止電流0.05C、休止時間20分。
定電流放電:0.2C、放電終止電圧2.5V、休止時間20分。
[高出力特性評価]
各電池について、定電流放電の電流値を0.2Cから1Cに変更する以外は、電池容量評価と同じ充放電条件で1サイクルの充放電を行い、1C容量を求めた。そして、電池容量評価で求められた0.2C容量に対する1C容量の百分率として、高出力特性(レート特性、%)を求めた。
[サイクル特性評価]
各電池について、電池容量評価と同じ充放電条件で1サイクルの充放電を行い、1サイクル放電容量を求めた。その後、定電流放電の電流値を0.2Cから1Cに変更する以外は、1サイクル目と同じ充放電条件で98サイクルの充放電を行った。次に、1サイクル目と同じ充放電条件で充放電を行い、100サイクル放電容量を求めた。1サイクル放電容量に対する100サイクル放電容量の百分率として、サイクル容量維持率(%)を求めた。
[電池の膨れ]
サイクル特性評価において、評価前の電極群厚み及び100サイクル後の電極群厚みを測定し、100サイクル後の電極群厚み(Y)に対する評価前の電極群厚み(X)の変化率として、電池の膨れ(%)を求めた。
電池の膨れ(%)=[(Y−X)/X]×100
表1から、比較例2のように、柱状体間の間隙をポリマー層で充填した場合には、電池の出力特性が著しく低下することが確認された。わずか100サイクル経過後でも、実施例の電池と比較例の電池とでは、サイクル特性に3〜6%の差が付くことが判る。実際に電池を使用する場合には、少なくとも数百回の充放電サイクルが実施されるので、その場合には十数%以上の顕著な差が生じることは明らかである。
また、電池の膨れについても、本発明による効果が確認された。このことから、本発明の非水電解質二次電池は、サイクル特性の向上と高出力特性の確保とを達成する事が可能であり、かつ電池の膨れ等が抑制されることが明らかである。
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
本発明者らは、合金系二次電池において、電池性能が急激に低下する原因について検討した。その結果、次の知見を得た。
合金系活物質は、リチウムの吸蔵及び放出に伴って膨張及び収縮し、比較的大きな応力を発生させる。このため、充放電回数が増加すると、合金系活物質からなる負極活物質層の表面及びその内部にクラックが発生する。クラックが発生した場合、もともと非水電解質に直接触れていなかった面(以下「新生面」とする)が現れる。生成した直後の新生面は、高い反応性を有している。
そして、生成した直後の新生面と非水電解質とが接触した場合、新生面においてガスの発生を伴う副反応が起こることにより、副生物が生成する。この副生物は、電極表面に充放電反応を妨げる被膜を形成するために、電極の劣化の原因になる。また、発生したガスは、電池の膨れの原因になる。また、非水電解質が新生面での副反応によって消費されることにより、電池内の非水電解質の量が不足して、その結果、サイクル特性や高出力特性が急激に低下する。
これらの知見から、本発明者らは、負極集電体の表面に、複数の柱状合金系活物質(以下単に「柱状体」とも呼ぶ)を含む負極活物質層を形成し、柱状体間の間隙を維持しながら、柱状体の外表面にポリマー層を形成した非水電解質二次電池用負極を想到するに至った。
合金系活物質からなる柱状体には、充放電サイクル回数の増加に伴って、新生面が生成する場合がある。この場合、柱状体の外表面にポリマー層が形成されていることにより、生成した直後の新生面と非水電解質との接触が顕著に抑制される。その結果、ガスや副生物の発生が抑制される。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態である非水電解質二次電池用負極1(以下単に「負極1」と呼ぶ)の構成を模式的に示す縦断面図である。図2は、図1に示す負極1に含まれる負極集電体10の構成を模式的に示す上面図である。図3は、図1に示す負極1に含まれる負極活物質層12の構成を模式的に示す縦断面図である。図4は、図3に示す負極活物質層12を形成するための電子ビーム式蒸着装置20の構成を模式的に示す側面透視図である。
負極1は、負極集電体10、負極活物質層12及びポリマー層15を含む。
図2に示すように、負極集電体10の表面10aには、複数の凸部11が設けられている。なお、負極集電体10の両方の表面に複数の凸部11を設けてもよい。また、負極集電体10の凸部11が形成されていないシート部分の厚みは特に制限はないが、通常は1〜50μmである。また、負極集電体10は、例えば、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、銅、銅合金等の金属材料からなる。
凸部11は、負極集電体10の厚み方向の表面10a(以下単に「表面10a」とする)から、負極集電体10の外方に向けて延びる突起である。本実施形態では、凸部11は、負極集電体10の表面10aに千鳥配置されているが、それに限定されず、格子状配置、最密充填配置等でもよい。また、凸部11は、不規則的に配置されていてもよい。
凸部11の高さは、平均高さとして好ましくは3〜20μmである。凸部11の高さは、負極集電体10の厚み方向の断面において定義される。負極集電体10の断面は、凸部11の延びる方向における最先端点を含む断面とする。負極集電体10の断面において、前記最先端点から表面10aに降ろした垂線の長さが、凸部11の高さである。凸部11の平均高さは、例えば、負極集電体10の断面を走査型電子顕微鏡で観察して所定個数(例えば10個〜100個)の凸部11の高さを測定し、得られる測定値の平均値として求められる。
凸部11の幅は、好ましくは1〜50μmである。凸部11の幅は、負極集電体10の断面において、表面10aに平行な方向における凸部11の最大長さである。凸部11の幅も、凸部11の高さと同様に、所定個数の凸部11の最大長さを測定し、測定値の平均値として求められる。
なお、全ての凸部11を同じ高さ及び/又は同じ幅に形成する必要はない。
凸部11の形状は、本実施形態では菱形であるが、それに限定されず、円形、多角形、楕円形、平行四辺形、台形等でもよい。凸部11の形状は、表面10aを水平面に一致させた状態での、凸部11の鉛直方向上方からの正投影図における形状である。
凸部11は、本実施形態では頂部(凸部11の成長方向の先端部)が平面であり、この平面は表面10aにほぼ平行である。この平面には、ミクロンサイズ又はナノサイズの凹凸があってもよい。凸部11の頂部が平面であることにより、凸部11と柱状体13との接合強度が高まる。この平面が表面10aにほぼ平行であることにより、前記接合強度がさらに高まる。
凸部11の個数及び凸部11の軸線間距離は、凸部11の寸法(高さ、幅等)、凸部11表面に形成される柱状体13の寸法等に応じて適宜選択される。凸部11の個数は、好ましくは1万個/cm2〜1000万個/cm2である。凸部11の軸線間距離は、好ましくは2〜100μmである。なお、負極集電体10が帯状の長尺物である場合、負極集電体10の幅方向における凸部11の軸線間距離は4〜30μm、負極集電体10の長手方向における凸部11の軸線間距離は4〜40μmであることが好ましい。
凸部11の軸線は、凸部11の形状が円形である場合は、その円を内包できる最小の真円の中心を通り、表面10aに垂直な方向に延びる仮想線である。凸部11の形状が楕円形である場合は、凸部11の軸線は、前記楕円形の長軸と短軸との交点を通り、表面10aに垂直な方向に延びる仮想線である。凸部11の形状が菱形、多角形、平行四辺形又は台形である場合は、凸部11の軸線は、前記各図形の対角線の交点を通り、表面10aに垂直な方向に延びる仮想線である。
凸部11は、その表面(頂部及び側面)に少なくとも1つの突起を有していてもよい。これにより、凸部11と柱状体13との接合強度がさらに高まり、柱状体13の凸部11からの剥離が一層顕著に抑制される。突起は、凸部11表面から外方に延び、凸部11よりも寸法が小さい。突起の立体形状には、円柱状、角柱状、円錐状、角錐状、針状、襞状(一方向に延びる山脈状)等がある。凸部11の側面に形成される襞状の突起は、凸部11の周方向及び成長方向のいずれに延びていてもよい。
負極集電体10は、金属板に凹凸を形成する技術を利用して製造できる。金属板には、金属箔、金属シート、金属フィルム等を使用できる。金属板の材質は、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、銅、銅合金等の金属材料である。金属板に凹凸を形成する技術には、ローラ加工法がある。
ローラ加工法では、複数の凹部が表面に形成されたローラ(以下「凸部用ローラ」とする)を用いて、金属板を機械的にプレス加工する。これにより、金属板の表面に、凹部の寸法、その内部空間の形状、個数及び配置に対応する凸部11が形成された負極集電体10が得られる。
2つの凸部用ローラをそれぞれの軸線が平行になるように圧接させ、金属板をその圧接部に通過させて加圧すると、厚み方向の両方の表面に凸部11が形成された負極集電体10が得られる。凸部用ローラと表面が平滑のローラとをそれぞれの軸線が平行になるように圧接させ、金属板をその圧接部に通過させて加圧すると、厚み方向の片方の表面に凸部11が形成された負極集電体10が得られる。ローラの圧接圧は金属板の材質及び厚み、凸部11の形状及び寸法、負極集電体10の厚みの設定値等に応じて適宜選択される。
ローラ加工を行う前又は後に、金属板に粗面化処理を施しても良い。これにより、凸部11の頂部に粗面を形成できる。その結果、凸部11と柱状体13との接合強度が一層向上する。粗面化処理の具体例としては、粗化めっき、エッチング等が挙げられる。
凸部用ローラは、表面に凹部が形成されたセラミックローラである。セラミックローラは、芯用ローラと溶射層とを含む。芯用ローラには、鉄製ローラ、ステンレス鋼製ローラ等を使用できる。溶射層は、芯用ローラ表面に、酸化クロム等のセラミック材料を均一に溶射することにより形成できる。溶射層に凹部が形成される。凹部の形成には、セラミック材料等の成形加工用レーザを使用できる。
別形態の凸部用ローラは、芯用ローラ、下地層及び溶射層を含む。芯用ローラはセラミックローラの芯用ローラと同じものである。下地層は芯用ローラ表面に形成される樹脂層である。下地層表面に凹部が形成される。下地層は、樹脂シートの一方の表面に凹部を形成した後、この樹脂シートの凹部が形成されていない面と芯用ローラ表面とが接触するように、この樹脂シートを芯用ローラに巻き付けて接着することにより形成される。
下地層の材料としては、機械的強度の高い合成樹脂を使用する。このような合成樹脂の具体例としては、例えば、不飽和ポリエステル、熱硬化性ポリイミド、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
溶射層は、酸化クロム等のセラミック材料を下地層表面の凹凸に沿うように溶射することにより形成される。従って、下地層に形成される凹部は、凸部11の設計寸法よりも溶射層の層厚分だけ大きめに形成するのが好ましい。
別形態の凸部用ローラは、芯用ローラ及び超硬合金層を含む。芯用ローラはセラミックローラの芯用ローラと同じものである。超硬合金層は芯用ローラの表面に形成され、炭化タングステン等の超硬合金を含む。超硬合金層は、焼き嵌め又は冷やし嵌めにより形成できる。焼き嵌めは、円筒状の超硬合金を暖めて膨張させ、芯用ローラに嵌めることである。冷やし嵌めは、芯用ローラを冷却して収縮させ、円筒状の超硬合金に挿入することである。超硬合金層の表面には、レーザ加工によって凹部が形成される。
別形態の凸部用ローラは、凹部が表面に形成された硬質鉄系ローラである。硬質鉄系ローラは、少なくとも表層部がハイス鋼、鍛鋼等からなるローラである。ハイス鋼は、鉄にモリブデン、タングステン、バナジウム等の金属を添加し、熱処理して硬度を高めた鉄系材料である。鍛鋼は、鋼塊又は鋼片を加熱し、鍛造又は圧延及び鍛造して鍛錬成形し、さらに熱処理することにより製造される鉄系材料である。鋼塊は、溶鋼を鋳型に鋳込むことにより製造される。鋼片は、鋼塊から製造される。鍛造は、プレス及びハンマーにより行われる。凹部は、レーザ加工により形成される。
本実施形態では、凸部11が規則的に形成された負極集電体10を使用するが、それに限定されず、凸部11が不規則に形成された負極集電体を用いることもできる。このような負極集電体は、例えば、金属板に粗化めっき、エッチング等を施すことにより作製できる。ここで、金属板は、ローラ加工法で用いるものと同じものを使用できる。
負極1において、負極活物質層12は、図1及び図3に示すように、複数の柱状体13と複数の薄膜状の合金系活物質(以下単に「薄膜部」とも呼ぶ)14とを含む。複数の柱状体13及び薄膜部14は、例えば、気相法により同時に形成できる。具体的な形成方法については、柱状体13及び薄膜部14の構成を説明した後に、詳述する。
柱状体13は、合金系活物質からなり、凸部11表面に支持され、凸部11表面から負極集電体10の外方に向けて延びる。柱状体13は、負極集電体10の表面10aに対して垂直な方向又は前記垂直な方向に対して傾斜した方向に延びる。柱状体13の外表面には、ポリマー層15が形成されている。
柱状体13の高さは、好ましくは1μm〜30μm、さらに好ましくは5μm〜25μmである。柱状体13の高さは、柱状体13の頂部の最先端点から凸部11の頂部表面に降ろした垂線の長さである。柱状体13の高さは、負極1の厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡、レーザ顕微鏡等で観察し、所定個数(例えば10個〜100個)の柱状体13の高さを測定し、得られた測定値の平均値として求められる。
柱状体13が低すぎる場合には、柱状体13のリチウム吸蔵能力が不十分になり、柱状体13による電池の容量及び出力を向上させる効果が低下するおそれがある。柱状体13が高すぎる場合には、柱状体13に含まれる合金系活物質の膨張時に発生する応力が大きくなりすぎ、負極集電体10及び負極1の変形、柱状体13の凸部11からの剥離等が起こるおそれがある。
柱状体13は気相法により形成されるので、柱状体13の外表面は適度な表面粗度を有している。これにより、柱状体13とポリマー層15との密着性が高まる。そして、柱状体13に含有される合金系活物質が体積変化を繰り返しても、ポリマー層15の柱状体13からの剥離が抑制される。その結果、ポリマー層15による、新生面の保護効果が長期にわたって持続する。
ポリマー層15が外表面に形成された、隣り合う一対の柱状体13の間には間隙17が存在している。この間隙17が、合金系活物質の体積変化による応力を緩和する。その結果、柱状体13の凸部11からの剥離、負極集電体10及び負極1の変形等が抑制される。間隙17は、非水電解質を保持する機能をも有している。これにより、電池性能の高水準での安定化を図ることができる。
また、ポリマー層15が外表面に形成された柱状体13間の間隙17は、寸法が0.5μm〜30μmの微細な空間であるため、この部分に非水電解質が貯留され易い。間隙17に貯留された非水電解質は、ポリマー層15を介して柱状体13及び薄膜部14に接触するとともに、セパレータ16とも接触している。このため、柱状体13及び薄膜部14に含有される合金系活物質と非水電解質とが十分に接触する。これにより、電池の高出力特性等を、高水準で安定させることが可能になる。
これらのことにより、生成した直後の新生面と非水電解質との副反応が抑制され、負極1の寿命短縮、負極1及び電池の変形、電池性能の急激な低下等の原因になる副生物及びガスの生成量が顕著に少なくなる。その結果、合金系活物質の長所(高容量)が十分に発揮され、高容量及び高出力で、サイクル特性や高出力特性に優れ、耐用寿命の長い非水電解質二次電池が得られる。
柱状体13は、複数層の合金系活物質の塊(以下、単に「塊」とも呼ぶ)が積層されてなる積層体であることが好ましい。具体的には、例えば、図3に示すような、合金系活物質の塊13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hの積層体である柱状体13が挙げられる。なお、柱状体13は8層からなるが、塊の層数は特に限定されない。
このような積層体である柱状体13は、次のようにして形成される。まず、凸部11の頂部及びそれに続く側面の一部を被覆するように塊13aを形成する。次に、凸部11の残りの側面及び塊13aの頂部表面の一部を被覆するように塊13bを形成する。すなわち、図3において、塊13aは凸部11の頂部を含む一方の端部に形成される。一方、塊13bは部分的には塊13aに重なるが、塊13aに重ならない部分は凸部11の他方の端部に形成される。
さらに、塊13aの頂部表面の残り及び塊13bの頂部表面の一部を被覆するように塊13cを形成する。すなわち、塊13cを主に塊13aに接するように形成する。さらに、塊13dを主に塊13bに接するように形成する。以下同様にして、塊13e、13f、13g、13hを交互に積層することによって、柱状体13が形成される。なお、このような製造方法によれば、隣り合う柱状体13同士の間に薄膜部14を同時に形成することもできる。このような薄膜部14は、電池容量の向上に寄与する。
薄膜部14は、柱状体13と同じ合金系活物質からなり、柱状体13が形成されていない負極集電体10の表面10aに形成されている。より具体的には、薄膜部14は、凸部11間の表面10aに形成されている。負極1の厚み方向において、薄膜部14の一方の表面は負極集電体10に密着しているが、他方の表面(外表面)は柱状体13間の間隙17に面している。薄膜部14の間隙17に面する外表面には、ポリマー層15が形成されている。
すなわち、薄膜部14の外表面もポリマー層15により覆われている。また、薄膜部14は、気相法により形成されるので、その外表面は適度な表面粗度を有している。これにより、薄膜部14に含有される合金系活物質が体積変化を繰り返しても、ポリマー層15の薄膜部14からの剥離が抑制される。また、薄膜部14は、ポリマー層15を介して、柱状体13間の間隙17に面しているので、合金系活物質の体積変化に伴って発生する応力が緩和される。
これらのことにより、充放電サイクル回数の増加に伴って、薄膜部14に新生面が生成しても、生成した直後の新生面と非水電解質との接触による副反応が抑制される。そして、負極1の寿命短縮、負極1及び電池の変形、電池の膨れ、電池性能の低下等の原因になる副生物やガスの生成量が顕著に少なくなる。その結果、合金系活物質の長所(高容量)が十分に発揮され、高容量及び高出力で、サイクル特性や高出力特性に優れ、耐用寿命の長い非水電解質二次電池が得られる。
薄膜部14の厚みは、通常、柱状体13の高さよりも小さく、0.01μm〜5μmであることが好ましく、0.1μm〜3μmであることがさらに好ましい。薄膜部14の厚みが小さすぎると、薄膜部14のリチウム吸蔵能力が不十分になり、薄膜部14による電池の容量及び出力を向上させる効果が低下するおそれがある。また、薄膜部14の厚みが小さすぎることにより、表面10aへのLi析出等が起る可能性が生じる。薄膜部14の厚みが大きすぎると、薄膜部14に含まれる合金系活物質の膨張時に発生する応力が大きくなり、負極集電体10及び負極1の変形等が起こるおそれがある。
柱状体13及び薄膜部14に含有される合金系活物質は、負極電位下で、充電時にリチウムと合金化してリチウムイオンを吸蔵し、かつ放電時にリチウムイオンを放出する物質である。合金系活物質は、非晶質又は低結晶性であることが好ましい。合金系活物質としては、珪素系活物質、錫系活物質等が挙げられる。合金系活物質は、1種を単独で使用でき又は2種以上を組み合わせて使用できる。
珪素系活物質としては、珪素、珪素化合物、これらの部分置換体、前記した珪素化合物や部分置換体の固溶体等が挙げられる。
珪素酸化物としては、式SiOa(0.05<a<1.95)で表される珪素酸化物、式SiCb(0<b<1)で表される珪素炭化物、式SiNc(0<c<4/3)で表される珪素窒化物、珪素と異種元素(A)との合金等が挙げられる。異種元素(A)としては、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn、Ti等が挙げられる。部分置換体は、珪素及び珪素化合物に含まれる珪素原子の一部が、異種元素(B)で置換された化合物である。異種元素(B)としては、B、Mg、Ni、Ti、Mo、Co、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Nb、Ta、V、W、Zn、C、N、Sn等が挙げられる。これらの中では、珪素及び珪素化合物が好ましく、珪素及び珪素酸化物が更に好ましい。
錫系活物質としては、錫、式SnOd(0<d<2)で表される錫酸化物、二酸化錫(SnO2)、錫窒化物、Ni−Sn合金、Mg−Sn合金、Fe−Sn合金、Cu−Sn合金、Ti−Sn合金等の錫含有合金、SnSiO3、Ni2Sn4、Mg2Sn等の錫化合物、前記した錫酸化物、錫窒化物や錫化合物の固溶体等が挙げられる。錫系活物質の中では、錫酸化物、錫含有合金、錫化合物等が好ましい。
柱状体13及び薄膜部14は、気相法により形成される。気相法の具体例としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法、化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法、溶射法等が挙げられる。これらの中でも、真空蒸着法が好ましい。以下に、真空蒸着法による柱状体13及び薄膜部14の形成を、さらに具体的に説明する。
柱状体13及び薄膜部14は、例えば、図4に示す電子ビーム式真空蒸着装置20(以下単に「蒸着装置20」とする)によって形成できる。
蒸着装置20は、チャンバ21、第1配管22、固定台23、ノズル24、ターゲット25、電源26、電子ビーム発生装置30、及び第2配管(不図示)を含む。
チャンバ21は耐圧性容器であり、その内部空間に第1配管22、固定台23、ノズル24、ターゲット25及び電子ビーム発生装置30を収容する。
第1配管22は、一端がノズル24に接続され、他端がチャンバ21の外方に延びてマスフローコントローラ(不図示)を介して原料ガスボンベ又は原料ガス製造装置(いずれも不図示)に接続される。第1配管22は、ノズル24に原料ガスを供給する。原料ガスには、酸素、窒素等を使用する。
固定台23は、回転自在に支持される板状部材であり、その厚み方向の一方の表面に負極集電体10を固定できる。固定台23は、図4における実線で示す位置と一点鎖線で示す位置との間を回転する。実線で示す位置では、固定台23と水平線28との成す角の角度が(90−ω)°=θ°である。一点鎖線で示す位置では、固定台23と水平線28との成す角の角度が(180−θ)°である。鉛直線27と垂直線29との成す角の角度ω°は合金系活物質原料の蒸気の入射角である。垂直線29は、鉛直線27と固定台23との交点を通り、固定台23表面に垂直な直線である。角度ω°は凸部11及び柱状体13の寸法等に応じて適宜選択できる。
ノズル24は、固定台23とターゲット25との間に設けられ、第1配管22の一端が接続され、原料ガスをチャンバ21内に放出する。ターゲット25は合金系活物質の原料を収容する。電子ビーム発生装置30は、ターゲット25に収容される合金系活物質の原料に電子ビームを照射して加熱する。これにより、合金系活物質の原料の蒸気が発生する。この蒸気は、負極集電体10に向けて上昇し、ノズル24から放出されるガスと混合される。
電源26はチャンバ21の外部に設けられ、電子ビーム発生装置30に電圧を印加する。第2配管は、チャンバ21内の雰囲気になるガスを導入する。なお、蒸着装置20と同じ構成を有する電子ビーム式真空蒸着装置が、例えば、アルバック(株)から市販されている。
負極集電体10の表面10aに、珪素酸化物からなる柱状体13及び薄膜部14を形成する場合を例に採り、蒸着装置20の動作を説明する。
蒸着装置20によれば、まず、負極集電体10を固定台23に固定し、チャンバ21内部に酸素(原料ガス)を導入する。次に、ターゲット25に電子ビームを照射し、珪素(合金系活物質原料)の蒸気を発生させる。蒸気は鉛直方向上方に上昇し、ノズル24周辺で酸素と混合される。蒸気と酸素との混合物はさらに上昇し、固定台23に固定された負極集電体10の表面10aに供給される。これにより、凸部11の表面に、珪素酸化物からなる柱状体13が形成され、負極集電体10の凸部11が形成されていない表面10aに、珪素酸化物からなる薄膜部14が形成される。
このとき、固定台23を実線の位置に配置することにより、凸部11表面に図3に示す塊13aを形成する。次に、固定台23を一点鎖線の位置に回転させ、図3に示す塊13bを形成する。このように固定台23の位置を交互に回転させることにより、図3に示す8つの塊13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13hの積層体である柱状体13が、複数の凸部11の表面に同時に形成される。それとともに、負極集電体10の凸部11が形成されていない表面10aには、薄膜部14が形成される。これにより、負極活物質層12が形成され、負極1が得られる。
合金系活物質が、例えばSiOa(0.05<a<1.95)で表される珪素酸化物である場合、柱状体13の成長方向に酸素の濃度勾配が出来るように、柱状体13を形成してもよい。具体的には、負極集電体10に近い部分で酸素含有割合を高くし、負極集電体10から遠ざかるに従って、酸素含有割合を減らせばよい。これにより、凸部11と柱状体13との接合強度及び表面10aと薄膜部14との接合強度をさらに高めることができる。ノズル24から原料ガスを供給しない場合は、例えば、珪素又は錫からなる柱状体13及び薄膜部14が形成される。
なお、柱状体13及び薄膜部14の外表面にポリマー層15を形成する前に、柱状体13及び薄膜部14に不可逆容量に相当する量のリチウムを蒸着させてもよい。
ポリマー層15は、柱状体13の外表面及び薄膜部14の外表面のほぼ全面に形成されている。ポリマー層15は、隣り合う柱状体13同士の間に存在する間隙17を埋めないような厚みに形成されている。さらに、ポリマー層15は、負極集電体10の凸部11及び薄膜部14が形成されていない表面10a(以下「非形成面」とする)にも形成することができる。非形成面のポリマー層15は、特に設ける必要はないが、例えば、リチウムイオンが非形成面に金属リチウムとして析出し、電池容量が低下するのを防止するのに有効である。
ポリマー層15の厚みは、ポリマー層15を形成する部位に応じて適宜選択できる。例えば、柱状体13頂部表面では、ポリマー層15を比較的厚く形成するのが好ましい。これは、次のような理由による。柱状体13が延びる方向を縦方向、それに垂直な方向を横方向とする。横方向における柱状体13の膨張は、柱状体13間の間隙17により緩和される。一方、縦方向においては柱状体13の頂部はセパレータ16に当接し、柱状体13の縦方向の膨張を緩和する空間が少ない。従って、ポリマー層15を比較的厚めに形成することにより、ポリマー層15の弾性により、柱状体13の縦方向の膨張を緩和できる。
柱状体13側面では、ポリマー層15の厚みが、最も小さな間隙幅の1/2未満になるように形成されるのが好ましい。これにより、ポリマー層15が外表面に形成された柱状体13が膨張した場合でも、柱状体13同士の接触による応力が緩和され、ポリマー層15の柱状体13からの剥離及び柱状体13の凸部11からの剥離が抑制される。さらに、非水電解質が、柱状体13間の間隙17に流入し易くなる。
間隙幅とは、負極1の厚み方向の断面において、負極集電体10の表面10aに平行な方向における間隙17の長さである。間隙幅は、好ましくは0.5μm〜30μm、さらに好ましくは2μm〜30μmである。
間隙幅が小さすぎると、柱状体13が膨張した場合に、柱状体13同士の接触による応力が大きくなりすぎ、ポリマー層15の柱状体13からの剥離及び柱状体13の凸部11からの剥離が起こるおそれがある。また、柱状体13間の間隙17への非水電解質の流入が抑制されるおそれがある。その結果、電池性能が低下するおそれがある。間隙幅が大きすぎると、間隙17の非水電解質の保持性の低下、柱状体13の個数の減少等から、電池性能が低下するおそれがある。
また、薄膜部14外表面では、ポリマー層15は比較的薄く形成するのが好ましい。薄膜14は、その厚みが比較的薄いので、その膨張応力は柱状体13の膨張応力よりも小さい。さらに、薄膜部14の上部には、膨張応力を緩和する間隙17が存在する。従って、ポリマー層15を薄くしても、ポリマー層15を形成する効果が十分に発揮される。
ポリマー層15の厚みは、ポリマー層15の形成部位に応じて適宜選択されるが、0.01μm〜20μmの範囲から選択するのが好ましく、0.1μm〜20μmの範囲から選択するのがさらに好ましい。例えば、柱状体13側面及び薄膜部14外表面に形成されるポリマー層15の厚みを、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.1〜5μmとし、柱状体13頂部に形成されるポリマー層15の厚みを、好ましくは3〜20μm、さらに好ましくは5〜20μmとすればよい。柱状体13頂部に形成されるポリマー層15は、柱状体13側面及び薄膜部14外表面に形成されるポリマー層15よりも厚くするのがよい。また、負極集電体10の非形成面のポリマー層15も、0.01〜10μm程度の厚みを有していればよい。
ポリマー層15が薄すぎると、合金系活物質の体積膨張に対するポリマー層15の追従性が低下し、ポリマー層15と柱状体13及び薄膜部14との密着性が低下するおそれがある。その結果、ポリマー層15による、新生面の保護効果が低下するおそれがある。また、ポリマー層15が厚すぎると、ポリマー層15のイオン透過性が低下し、電池の出力特性、サイクル特性、保存特性等が低下するおそれがある。
ポリマー層15は主成分が合成樹脂であるため、適度な機械的強度と柔軟性とを併せ持っている。従って、ポリマー層15は、合金系活物質の体積膨張に追従しながらも、変形等を起こし難い。このため、柱状体13及び薄膜部14とポリマー層15との密着が、電池の使用可能期間の全般にわたって維持される。その結果、充放電回数の増加に伴って新生面が生成した場合でも、生成した直後の新生面と非水電解質との接触を抑制できる。
ポリマー層15の空孔率は、好ましくは10%〜70%、より好ましくは15%〜60%、さらに好ましくは20%〜35%である。空孔率が小さすぎると、ポリマー層15のイオン伝導抵抗が大きくなり、高出力特性等が低下する恐れがある。一方、空孔率が大きすぎると、ポリマー層15の機械的強度が低くなり、ポリマー層15の柱状体13及び薄膜部14からの剥離が起こり易くなるおそれがある。
空孔率は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察により求めることができる。より具体的には、まず、SEM観察により画像処理を行って、負極活物質層12の厚さ方向の断面の画像を得る。この画像から、間隙17の合計面積(A)、及び柱状体13の表面を被覆するポリマー層15の合計面積(B)を測定する。空孔率は、得られた測定値を用い、下記式から算出される。
空孔率(%)={(A−B)/(A)}×100
また、空孔率は、水銀ポロシメータを用いて測定することが出来る。水銀ポロシメータを用いた空孔率の測定においては、水銀がポリマー層15内部の空隙に侵入する。その際、空孔率(%)は、100×{空隙に侵入した水銀の体積/(ポリマー層15の真体積+空隙に侵入した水銀の体積)}として計算される。ポリマー層15の真体積は、ポリマー層15の質量とポリマー層15を構成する合成樹脂の比重から計算できる。
ポリマー層15は、リチウムイオン透過性を有し、さらにリチウムイオン伝導性を有することができる。例えば、ポリマー層15の主成分であるリチウムイオン透過性樹脂が、非水電解質との接触により膨潤してリチウムイオン伝導性を示す場合は、ポリマー層15は、リチウムイオン伝導性を示す。また、ポリマー層15が主成分であるリチウムイオン透過性樹脂と共にリチウム塩を含有する場合も、ポリマー層15はリチウムイオン伝導性を示す。リチウムイオン伝導性のポリマー層15を形成すれば、ポリマー層15による電池反応の阻害が抑制される。
ポリマー層15は、リチウムイオン透過性樹脂を含有し、必要に応じてリチウム塩を含有してもよい。リチウムイオン透過性樹脂とは、例えば、フィルム形状に成形した場合に、リチウムイオンの透過が可能な細孔を有する多孔質体になる合成樹脂である。リチウムイオン透過性樹脂の中でも、非水電解質との接触により膨潤してリチウムイオン伝導性を示す樹脂(以下「リチウムイオン伝導性樹脂」とすることがある)がさらに好ましい。電池の組立時に、リチウムイオン伝導性樹脂を含有するポリマー層と非水電解質とが接触することにより、リチウムイオン伝導性を有するポリマー層15が得られる。
このような合成樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、柱状体13及び薄膜部14とポリマー層15との密着性を考慮すると、フッ素樹脂が好ましい。合成樹脂は1種を単独で使用でき又は2種以上を組み合わせて使用できる。
フッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(以下「PVDF」とする)、フッ化ビニリデン(VDF)とオレフィン系モノマーとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。オレフィン系モノマーには、例えば、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン(HFP)、エチレン等がある。フッ素樹脂の中でも、PVDF及びフッ化ビニリデンとオレフィン系モノマーとの共重合体が好ましく、PVDF、及びHFPとVDFとの共重合体がさらに好ましく、PVDFが特に好ましい。
ポリマー層15に添加されるリチウム塩には、非水電解質二次電池の分野で常用されているリチウム塩を使用できる。このようなリチウム塩の具体例としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO3、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、LiBCl4、ホウ酸塩類、イミド塩類等が挙げられる。リチウム塩は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
ポリマー層15の主成分であるリチウムイオン透過性樹脂が、リチウムイオン伝導性樹脂ではない場合でも、ポリマー層15にリチウム塩を添加することにより、リチウムイオン伝導性を有するポリマー層15が得られる。
ポリマー層15は、例えば、ポリマー溶液を柱状体13及び薄膜部14の外表面に塗布し、形成された塗膜を乾燥させることにより形成できる。ポリマー溶液は、合成樹脂及び有機溶媒を含有し、必要に応じてリチウム塩、添加剤等を含有する事ができる。ポリマー溶液は、例えば、合成樹脂、リチウム塩、添加剤等を有機溶媒に溶解又は分散させることにより調製できる。
有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアミン、アセトン、シクロヘキサノン等を使用できる。ポリマー溶液における合成樹脂の含有割合は、合成樹脂の種類、得ようとするポリマー層15の空孔率、厚み等に応じて適宜選択できるが、好ましくは0.1質量%〜25質量%、より好ましくは1質量%〜10質量%である。合成樹脂の含有割合が前記範囲であれば、全体的に均一な組織を有するポリマー層15を形成できる。また、ポリマー層15の柱状体13及び薄膜部14の外表面への密着性が良好になる。
ポリマー溶液における樹脂濃度は、更に好ましくは2質量%〜7.5質量%であり、特に好ましくは2.5質量%〜7質量%である。これにより、柱状体13間の間隙17が確実に残るとともに、柱状体13及び薄膜部14の外表面にポリマー層15を形成する作業性がより一層向上する。
ポリマー溶液の柱状体13及び薄膜部14の外表面への塗布は、公知の方法により実施できる。その具体例としては、例えば、スクリーン印刷、ダイコート、コンマコート、ローラコート、バーコート、グラビアコート、カーテンコート、スプレーコート、エアーナイフコート、リバースコート、ディップスクイズコート、浸漬法等が挙げられる。これらの中でも、浸漬法が好ましい。
なお、ポリマー層15の厚みは、例えば、ポリマー溶液の粘度、塗布量、浸漬法における浸漬時間や浸漬温度等を変更することにより調整できる。さらに、ポリマー溶液の粘度は、ポリマー溶液における合成樹脂の含有量、ポリマー溶液の液温等を変更することにより適宜調整できる。
ポリマー溶液からなる塗膜の乾燥温度は、ポリマー溶液に含有される合成樹脂や有機溶媒の種類等に応じて、通常20℃〜300℃の範囲から適宜選択される。
例えば、ポリマー溶液がPVDFの1〜10質量%NMP溶液であり、該溶液の液温が15〜85℃である場合は、浸漬法によれば、負極活物質層12を該溶液に浸漬させた後、60〜100℃程度で5〜30分程度真空乾燥させればよい。これにより、厚み0.01〜10μm程度のポリマー層15が形成される。
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態である非水電解質二次電池用負極2(以下単に「負極2」とする)の構成を模式的に示す縦断面図である。負極2は、負極1に類似し、構成部材が負極1と同じである場合は、同じ参照符号を付して説明を省略する。
負極2は、負極活物質層12aが、複数の紡錘状柱状体13aを有し、かつ薄膜部14を有していないことを特徴とする。負極2では、紡錘状柱状体13a外表面のほぼ全面及び負極集電体10の凸部11が形成されていない表面10aにポリマー層15が形成されている。それ以外の構成は負極1と同様である。紡錘状柱状体13aも、柱状体13と同様に、蒸着装置20における入射角ω及び合金系活物質の塊の層数を選択することにより作製できる。このような負極2を用いても、負極1と同様の効果が得られる。
[第3実施形態]
図6は、本発明の第3実施形態である非水電解質二次電池3の構成を模式的に示す縦断面図である。非水電解質二次電池3は、正極31及び図1に示す負極1をこれらの間にセパレータ34を介在させて積層した積層型電極群と、正極31に接続された正極リード35と、負極1に接続された負極リード36と、外装ケース38の開口38a、38bを封口するガスケット37と、前記積層型電極群及び非水電解質(不図示)を収容する外装ケース38と、を備えた扁平型電池である。
正極リード35は、一端が正極集電体31aに接続され、他端が外装ケース38の開口38aから非水電解質二次電池3の外部に導出されている。負極リード36は、一端が負極集電体10に接続され、他端が外装ケース38の開口38bから非水電解質二次電池3の外部に導出されている。正極リード35及び負極リード36には、非水電解質二次電池の分野で常用されるものを使用できる。例えば、正極リード35にはアルミニウム製リード、負極リード36にはニッケル製リードをそれぞれ使用できる。
外装ケース38の開口38a、38bはガスケット37によって封止されている。ガスケット37には、各種樹脂材料やゴム材料からなるものを使用できる。外装ケース38の材料には、金属材料、合成樹脂、ラミネートフィルム等がある。ガスケット37を使用せずに、外装ケース38の開口38a、38bを溶着等によって直接封止してもよい。
非水電解質二次電池3は、次のようにして作製される。正極リード35の一端を電極群の正極集電体31aに接続する。負極リード36の一端を電極群の負極集電体10に接続する。電極群を外装ケース38内に挿入し、非水電解質を注液し、正極リード35及び負極リード36の他端を外装ケース38の外部に導出する。次に、外装ケース38の内部を真空減圧しながら開口38a、38bを、ガスケット37を介して溶着して封口することにより、非水電解質二次電池3が得られる。
正極31は、正極集電体31aと、正極集電体31aの表面に支持された正極活物質層31bとを含む。
正極集電体31aとしては、導電性基板が用いられる。導電性基板の材質の具体例としては、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属材料、導電性樹脂等が挙げられる。導電性基板としては、平板や多孔板等が用いられる。平板としては、箔、シート、フィルム等が挙げられる。多孔板としては、メッシュ体、ネット体、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、不織布等がある。導電性基板の厚みは特に限定されないが、例えば、通常1〜500μmであり、好ましくは1〜50μmである。
正極活物質層31bは、リチウムイオンを吸蔵及び放出する正極活物質を含み、正極集電体31aの片面又は両面に形成される。
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出できる各種正極活物質を使用できる。その具体例としては、リチウム含有複合酸化物、オリビン型リン酸リチウム等が挙げられる。
リチウム含有複合酸化物は、リチウムと遷移金属元素とを含む金属酸化物、又は前記金属酸化物中の遷移金属元素の一部が異種元素により置換された金属酸化物である。
遷移金属元素としては、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Cr等が挙げられる。遷移金属元素の中では、Mn、Co、Ni等が好ましい。
また、異種元素としては、Na、Mg、Zn、Al、Pb、Sb、B等が挙げられる。異種元素の中では、Mg、Al等が好ましい。遷移金属元素及び異種元素は、それぞれ1種を単独で使用でき、又は2種以上を組み合わせ使用できる。
リチウム含有複合酸化物の具体例としては、例えば、LilCoO2、LilNiO2、LilMnO2、LilComNi1-mO2、LilComM1-mOn、LilNi1-mMmOn、LilMn2O4、LilMn2-mMnO4(前記各式中、MはNa、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb及びBよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。0<l≦1.2、0≦m≦0.9、2.0≦n≦2.3である。)等が挙げられる。これらの中では、LilComM1-mOnが好ましい。
オリビン型リン酸リチウムの具体例としては、例えば、LiXPO4、Li2XPO4F(式中、XはCo、Ni、Mn及びFeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す)等が挙げられる。
なお、リチウム含有複合酸化物及びオリビン型リン酸リチウムを示す前記各式において、リチウムのモル数は正極活物質作製直後の値であり、充放電により増減する。また、正極活物質は1種を単独で使用でき又は2種以上を組み合わせて使用できる。
正極活物質層31bは、例えば、正極活物質、結着剤、導電剤等を有機溶媒に溶解又は分散させて得られる正極合剤スラリーを正極集電体31aの表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥及び圧延することにより形成される。
結着剤としては、樹脂材料、ゴム材料、水溶性高分子材料等を使用できる。樹脂材料としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ヘキシル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ヘキシル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルホン、ポリヘキサフルオロプロピレン等が挙げられる。ゴム材料としては、スチレンブタジエンゴム、変性アクリルゴム等が挙げられる。水溶性高分子材料としては、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
また、樹脂材料として、2種類以上のモノマー化合物を含有する共重合体を使用できる。モノマー化合物の具体例としては、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエン等が挙げられる。
結着剤は1種を単独で使用でき、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
導電剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛ウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ等の導電性ウィスカ類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体等の有機導電性材料、フッ化カーボン等が挙げられる。導電剤は1種を単独で使用でき、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアミン、アセトン、シクロヘキサノン等を使用できる。
セパレータ34は、正極31と負極1との間に介在するように配置されるイオン透過性絶縁層である。セパレータ34は、負極1側では、その表面の少なくとも一部がポリマー層15の表面と接触していてもよい。
セパレータ34には、所定のイオン透過度、機械的強度、絶縁性等を併せ持ち、細孔を有する多孔質シートを使用できる。多孔質シートには、微多孔膜、織布、不織布等がある。微多孔膜は単層膜及び多層膜のいずれでもよい。単層膜は1種の材料からなる。多層膜は、複数の単層膜の積層体である。多層膜には、同じ材料からなる複数の単層膜の積層体、2種以上の異なる材料からなる単層膜の積層体等がある。また、微多孔膜、織布、不織布等を2層以上積層してもよい。
セパレータ34の材料には各種樹脂材料を使用できるが、耐久性、シャットダウン機能、電池の安全性等を考慮すると、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。セパレータ34の厚みは、通常5〜300μm、好ましくは10〜40μmである。セパレータ34の空孔率は、好ましくは30〜70%、より好ましくは35〜60%である。空孔率は、セパレータ34の体積に対する、セパレータ34が有する細孔の総容積の百分率である。空孔率は、水銀ポロシメータ等により測定できる。
セパレータ34には、リチウムイオン伝導性を有する非水電解質が含浸される。ここでの非水電解質は液状非水電解質である。液状非水電解質は、溶質(支持塩)と非水溶媒とを含み、さらに必要に応じて各種添加剤を含む。
溶質としては、非水電解質二次電池の分野で常用されるものを使用でき、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、LiBCl4、ホウ酸塩類、イミド塩類等が挙げられる。
ホウ酸塩類には、ビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ホウ酸リチウム等がある。イミド塩類には、(CF3SO2)2NLi、(CF3SO2)(C4F9SO2)NLi、(C2F5SO2)2NLi等がある。溶質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。非水溶媒1リットルにおける溶質の濃度は、好ましくは0.5〜2モルである。
非水溶媒の具体例としては、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル等が挙げられる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート等が挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等が挙げられる。非水溶媒は1種を単独で使用でき、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
添加剤には、例えば、充放電効率を向上させる添加剤A、電池を不活性化させる添加剤B等がある。添加剤Aには、ビニレンカーボネート、4−メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4−エチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、4−プロピルビニレンカーボネート、4,5−ジプロピルビニレンカーボネート、4−フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネート等がある。これらの化合物は、その水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよい。添加剤Aは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
添加剤Bには、ベンゼン誘導体がある。ベンゼン誘導体には、フェニル基と、フェニル基に隣接する環状化合物基とを含むベンゼン化合物がある。環状化合物基には、フェニル基、環状エーテル基、環状エステル基、シクロアルキル基、フェノキシ基等がある。ベンゼン化合物には、例えば、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテル等がある。添加剤Bは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。添加剤Bの液状非水電解質における含有割合は、非水溶媒100体積部に対して10体積部以下であることが好ましい。
液状非水電解質に代えてゲル状非水電解質を用いることもできる。ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と樹脂材料とを含有する。樹脂材料の具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート等が挙げられる。
本実施形態では、リチウムイオン透過性絶縁層としてセパレータ34を使用するが、それに限定されず、無機酸化物粒子層を用いてもよい。また、セパレータ34と無機酸化物粒子層とを併用してもよい。無機酸化物粒子層は、リチウムイオン透過性絶縁層として機能するとともに、短絡発生時における非水電解質二次電池3の安全性を向上させる。また、無機酸化物粒子層とセパレータ34とを併用すると、セパレータ34の耐用性が顕著に向上する。無機酸化物粒子層は、正極活物質層31b及び負極活物質層12の少なくとも一方の表面に形成できるが、正極活物質層31bの表面に形成するのが好ましい。
無機酸化物粒子層は、無機酸化物粒子及び結着剤を含有する。無機酸化物には、アルミナ、チタニア、シリカ、マグネシア、カルシア等がある。結着剤には、正極活物質層31bの形成に用いるのと同じ結着剤を使用できる。無機酸化物粒子及び結着剤は、それぞれ、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。無機酸化物粒子層における無機酸化物粒子の含有割合は、好ましくは無機酸化物粒子層全量の90〜99.5質量%、さらに好ましくは95〜99質量%であり、残部が結着剤である。
無機酸化物粒子層は、正極活物質層31bと同様にして形成できる。例えば、無機酸化物粒子及び結着剤を有機溶媒に溶解又は分散させてスラリーを調製し、このスラリーを正極活物質層31b又は負極活物質層12の表面に塗布し、得られた塗膜を乾燥させることにより、無機酸化物粒子層を形成できる。有機溶媒には、正極合剤スラリーに含有されるのと同じ有機溶媒を使用できる。無機酸化物粒子層の厚みは、好ましくは1〜10μmである。
また、本実施形態ではリチウムイオン透過性絶縁層としてセパレータ34を使用するが、セパレータ34に代えて固体電解質層を用いても良い。固体電解質層は、固体電解質を含有する。固体電解質には、無機固体電解質及び有機固体電解質がある。
無機固体電解質としては、(Li3PO4)x−(Li2S)y−(SiS2)zガラス、(Li2S)x−(SiS2)y、(Li2S)x−(P2S5)y、Li2S−P2S5、thio―LISICON等の硫化物系、LiTi2(PO4)3、LiZr2(PO4)3、LiGe2(PO4)3、(La0.5+xLi0.5-3x)TiO3等の酸化物系、LiPON、LiNbO3、LiTaO3、Li3PO4、LiPO4-xNx(xは0<x≦1)、LiN、LiI、LISICON等がある。無機固体電解質からなる固体電解質層は、蒸着、スパッタリング、レーザアブレーション、ガスデポジション、エアロゾルデポジション等により形成できる。
有機固体電解質としては、イオン伝導性ポリマー類、ポリマー電解質等が挙げられる。イオン伝導性ポリマー類としては、低相転移温度(Tg)のポリエーテル、無定形フッ化ビニリデンコポリマー、異種ポリマーのブレンド物等が挙げられる。ポリマー電解質は、マトリックスポリマーとリチウム塩とを含む。マトリックスポリマーとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、ポリカーボネート等が挙げられる。リチウム塩としては、液状非水電解質に含有されるのと同じリチウム塩を使用できる。
本実施形態では、積層型電極群を含む非水電解質二次電池3を例に挙げて説明したが、それに限定されず、本発明の非水電解質二次電池は、捲回型電極群又は扁平型電極群を含んでいてもよい。捲回型電極群は、正極と負極との間にリチウムイオン透過性絶縁層を介在させて、これらを捲回した電極群である。扁平型電極群は、例えば、捲回型電極群を扁平形状に成形した電極群である。扁平型電極群は、正極と負極との間にリチウムイオン透過性絶縁層を介在させて、これらを板に巻き付けることによっても作製できる。
本発明の非水電解質二次電池の形状には、円筒型、角型、扁平型、コイン型、ラミネートフィルム製パック型等がある。
以下に実施例及び比較例ならびに試験例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
(1)正極活物質の作製
硫酸ニッケル水溶液に、Ni:Co=8.5:1.5(モル比)になるように硫酸コバルトを加えて金属イオン濃度2mol/Lの水溶液を調製した。この水溶液に撹拌下、2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を徐々に滴下して中和することにより、Ni0.85Co0.15(OH)2で示される組成を有する二元系の沈殿物を共沈法により生成させた。この沈殿物をろ過により分離し、水洗し、80℃で乾燥し、複合水酸化物を得た。
この複合水酸化物を大気中にて900℃で10時間加熱し、Ni0.85Co0.15Oで示される組成を有する複合酸化物を得た。次に、得られた複合酸化物に、Ni及びCoの原子数の和とLiの原子数とが等しくなるように水酸化リチウム1水和物を加え、大気中にて800℃で10時間加熱することにより、LiNi0.85Co0.15O2で示される組成を有し、二次粒子の体積平均粒径が10μmであるリチウムニッケル含有複合酸化物を、正極活物質として得た。
(2)正極の作製
上記で得られた正極活物質の粉末93g、アセチレンブラック(導電剤)3g、ポリフッ化ビニリデン粉末(結着剤)4g及びN−メチル−2−ピロリドン50mlを充分に混合して正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーを厚み15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗布し、乾燥し、圧延して、厚み120μmの正極活物質層を形成した。得られた正極を15mm×15mmの寸法に切り出し、その上部に5mm×5mmのリード取り付け部を設け、この領域の正極活物質層を除去し、正極板を作製した。
(3)負極の作製
[負極集電体の作製]
まず、負極集電体の作製方法を説明する。図7は、負極集電体43の製造方法を説明する工程図である。図8は、図7に示す負極集電体43の製造方法により得られる負極集電体43の要部の構成を模式的に示す上面図である。
図7に示す負極集電体43の製造方法は、(a)工程及び(b)工程を含む。図7では、(a)及び(b)工程を縦断面図で示している。
(a)工程では、厚み27μmの銅箔(商品名:HCL−02Z、日立電線(株)製)の片面に電解めっきにより粗面化処理を施し、複数の銅粒子(粒径1μm)を付着させた。これにより、表面粗さRzが1.5μmの粗化銅箔40を得た。なお、表面粗さRzは日本工業規格(JISB 0601―1994)に定められた十点平均粗さRzを指す。なお、代わりに、プリント配線基板用に市販されている粗面化銅箔を用いてもよい。
(b)工程では、レーザ彫刻により、セラミックローラ41の表面に複数の凹部42を形成した。複数の凹部42は、セラミックローラ41の表面に垂直な方向から見た形状を菱形とした。菱形の対角線のうち、短い対角線の長さを10μm及び長い対角線の長さを20μmとした。また、隣接する凹部42の短い対角線に沿う間隔を18μm、長い対角線に沿う間隔を20μmとした。また、各凹部42の深さは10μmとした。このセラミックローラ41と、表面の平滑なステンレス鋼製ローラとを、それぞれの軸線が平行になるように圧接させた。2つのローラの圧接部分に粗化銅箔40を線圧1t/cmで通過させることにより、圧延処理を行った。即ち、粗面化銅箔40の粗面化された面を、セラミックローラ41により矢符45の方向に加圧した。
このようにして、図7(c)に示すように、表面に複数の凸部44を有する負極集電体43を得た。このとき、ローラ間を通過した粗化銅箔40のうち、セラミックローラ41の凹部42以外の部分でプレスされた領域は、図示するように平坦化された。一方、粗化銅箔40のうち凹部42に対応する領域は、平坦化されずに凹部42の内部空間に入り込み、凸部44が形成された。凸部44の高さは、セラミックローラ41の凹部42の深さより小さく、約8μmであった。
図8に示すように、負極集電体43では、ほぼ菱形の形状を有する凸部44が、千鳥格子状に配置されていた。また、凸部44の対角線のうち、短い対角線aの長さは約10μm、長い対角線bの長さは約20μmであった。また、隣接する凸部44の、短い対角線aに沿う間隔eは18μm、長い対角線bに沿う間隔dは20μmであった。
[負極活物質層の形成]
上記で得られた負極集電体43を、2cm×10cmに裁断し、図4に示す電子ビーム式蒸着装置20の真空チャンバ21の内部に配置された固定台23に固定した。そして、純度99.7%の酸素ガスを真空チャンバ21に供給しながら、蒸着ユニット(ターゲット25、電子ビーム発生装置30及び偏向ヨークをユニット化したもの)を用いて珪素を蒸発源とする電子ビーム蒸着を行った。蒸発源の珪素を蒸発させるために、電子ビーム発生装置30により発生させた電子ビームを偏向ヨークにより偏向させて蒸発源に照射した。蒸発源には、半導体ウェハを形成する際に生じる端材(スクラップシリコン、純度:99.999%)を用いた。
蒸着にあたり、蒸着角(入射角)ωが70°となるように固定台23を傾斜させ、成膜速度約8nm/s、酸素流量5sccmで第1段目の蒸着工程を行い、高さ2.5μmの1段目の塊を形成した。続いて、固定台23を中心軸のまわりに時計回りに回転させ、上記第1段目の蒸着工程における固定台23の傾斜方向と反対の方向に傾斜させて、蒸着角度ωを−70°とした。この状態で、2段目の塊を形成した。
この後、固定台23の傾斜方向を再び第1段目の蒸着工程と同じ方向に変えて、蒸着角度ωを70°とし、3段目の塊を形成した。次に、第4段目から第20段目までは蒸着角度ωを−70°及び70°の間で交互に切り替えて蒸着を行い、塊の積層体である複数の柱状体を形成した。柱状体の平均高さは22μmであった。間隙幅は、4μm〜10μmであった。また、負極集電体43の柱状体が形成されていない表面には、厚み約2μmの薄膜部が形成されていた。このようにして負極活物質層を形成し、負極を作製した。得られた負極活物質層における珪素量に対する酸素量のモル比の平均値は0.5であった。
上記で得られた負極にリチウム蒸着を行った。蒸着量は不可逆容量に相当する9μmとした。この負極を16mm×16mmの寸法に切り出し、その上部に5mm×5mmのリード取り付け部を設け、この領域の負極活物質層を除去し、負極板を作製した。
(4)ポリマー層の形成
PVDF(分子量400000)をN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、PVDF濃度が4質量%である溶液を調製した。この溶液を80℃に加熱し、上記で得られた負極板を1分間浸漬して引き上げた。その後、85℃で10分間真空乾燥処理を行い、負極板を作製した。この負極板の厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡で観察した。図9は、実施例1で得られた負極の断面の電子顕微鏡写真である。図9から、各柱状体の外表面及び柱状体が形成されていない負極集電体表面に形成された薄膜部外表面にポリマー層が形成されていることが明らかである。ポリマー層の厚みは約2μm、空孔率は30%であった。
(5)積層型電池の作製
上記で得られた正極板及びポリマー層形成後の負極板を、これらの間にポリエチレン微多孔膜(セパレータ、商品名:ハイポア、厚み20μm、旭化成(株)製)を介在させて積層し、積層型電極群を作製した。次に、アルミニウム製正極リードの一端を正極板のリード取り付け部に溶接し、ニッケル製負極リードの一端を負極板のリード取り付け部に溶接した。
得られた電極群をアルミニウムラミネートシートからなる外装ケースに挿入し、さらに非水電解質を外装ケースに注液した。非水電解質には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:1の割合で含む混合溶媒に、LiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させた非水電解質を用いた。次に、正極リード及び負極リードを外装ケースの開口部から外装ケースの外部に導出し、外装ケース内部を真空減圧しながら、外装ケースの開口部を溶着させて、ラミネートフィルム製パック型の非水電解質二次電池を作製した。
(実施例2)
ポリマー層形成用の合成樹脂として、PVDFに代えてヘキサフルオロプロピレン(HFP)含有量が3質量%のVDF(フッ化ビニリデン)−HFP共重合体を用いる以外は、実施例1と同様にして負極及び非水電解質二次電池を作製した。得られた負極を走査型電子顕微鏡で観察したところ、柱状体側面及び薄膜部外表面にポリマー層が形成されていることが確認された。また、側面にポリマー層が形成された柱状体間に、間隙が存在することが確認された。ポリマー層の厚みは約2μm、空孔率は32%であった。
(実施例3)
ポリマー層形成用の合成樹脂として、PVDFに代えてHFP含有量が12質量%のVDF−HFP共重合体を用いる以外は、実施例1と同様にして負極及び非水電解質二次電池を作製した。得られた負極を走査型電子顕微鏡で観察したところ、柱状体側面及び薄膜部外表面にポリマー層が形成されていることが確認された。また、側面にポリマー層が形成された柱状体間に、間隙が存在することが確認された。ポリマー層の厚みは約2μm、空孔率は28%であった。
(実施例4)
ポリマー溶液を調製する時に、溶媒としてジメチルカーボネートを用い、ポリマー材料として、HFP含有量が12質量%のVDF−HFP共重合体を用いた。さらに、プロピレンカーボネートをポリマー溶液全量の15質量%になるように添加した。ポリマー溶液におけるVDF−HFP共重合体の濃度は、4質量%であった。このポリマー溶液(80℃)に負極板を浸漬して引き上げ、室温で10分間乾燥させた。この負極板を用いる以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
得られた負極を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、柱状体側面の一部及び薄膜部外表面に、厚み約0.5μmのポリマー層が形成されているだけでなく、柱状体頂部表面に厚み約6μmのポリマー層が形成されていた。これらのポリマー層の空孔率は、21%であった。
ポリマー溶液の溶媒として高沸点溶媒であるプロピレンカーボネートを添加したため、柱状体側面だけでなく、柱状体頂部にもポリマー層が形成されたものと考えられる。このように、ポリマー溶液の組成を適宜変更するにより、ポリマー層の形成部位を制御することが可能である。
(比較例1)
ポリマー層を形成しない以外は、実施例1と同様にして負極を作製し、非水電解質二次電池を作製した。
(比較例2)
ポリマー溶液におけるPVDF濃度を8質量%に変更する以外は、実施例1と同様にして負極を作製し、非水電解質二次電池を作製した。得られた負極を走査型電子顕微鏡で観察した。図10は、比較例2で得られた負極の断面の電子顕微鏡写真である。図10から、ポリマー層が柱状体間の間隙に入り込み、間隙の大部分が消滅していることが明らかである。なお、得られたポリマー層の空孔率は2%であった。
(試験例1)
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた非水電解質二次電池について、下記の評価試験を実施した。評価試験は、いずれも、20℃環境下で実施した。結果を表1に示す。
[電池容量評価]
各電池について、以下の充放電条件で充電(定電流充電及びそれに続く定電圧充電)及び放電(定電流放電)の充放電を3サイクル繰返し、3回目の放電容量(0.2C容量)を求めた。
定電流充電:0.7C、充電終止電圧4.2V。
定電圧充電:4.2V、充電終止電流0.05C、休止時間20分。
定電流放電:0.2C、放電終止電圧2.5V、休止時間20分。
[高出力特性評価]
各電池について、定電流放電の電流値を0.2Cから1Cに変更する以外は、電池容量評価と同じ充放電条件で1サイクルの充放電を行い、1C容量を求めた。そして、電池容量評価で求められた0.2C容量に対する1C容量の百分率として、高出力特性(レート特性、%)を求めた。
[サイクル特性評価]
各電池について、電池容量評価と同じ充放電条件で1サイクルの充放電を行い、1サイクル放電容量を求めた。その後、定電流放電の電流値を0.2Cから1Cに変更する以外は、1サイクル目と同じ充放電条件で98サイクルの充放電を行った。次に、1サイクル目と同じ充放電条件で充放電を行い、100サイクル放電容量を求めた。1サイクル放電容量に対する100サイクル放電容量の百分率として、サイクル容量維持率(%)を求めた。
[電池の膨れ]
サイクル特性評価において、評価前の電極群厚み及び100サイクル後の電極群厚みを測定し、100サイクル後の電極群厚み(Y)に対する評価前の電極群厚み(X)の変化率として、電池の膨れ(%)を求めた。
電池の膨れ(%)=[(Y−X)/X]×100
表1から、比較例2のように、柱状体間の間隙をポリマー層で充填した場合には、電池の出力特性が著しく低下することが確認された。わずか100サイクル経過後でも、実施例の電池と比較例の電池とでは、サイクル特性に3〜6%の差が付くことが判る。実際に電池を使用する場合には、少なくとも数百回の充放電サイクルが実施されるので、その場合には十数%以上の顕著な差が生じることは明らかである。
また、電池の膨れについても、本発明による効果が確認された。このことから、本発明の非水電解質二次電池は、サイクル特性の向上と高出力特性の確保とを達成する事が可能であり、かつ電池の膨れ等が抑制されることが明らかである。
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。