JP2008103148A - 負極および電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れたサイクル特性を得ることが可能な電池を提供する。
【解決手段】負極活物質層2の負極活物質は、ケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子2Aと、ケイ素および酸素を構成元素として有すると共に負極活物質粒子2Aの表面の少なくとも一部を覆う被覆膜2Bとを含んでいる。また、負極結着剤はポリイミドを含んでおり、負極活物質層2中におけるポリイミドの含有量は5重量%以上30重量%以下の範囲内である。高いエネルギー密度が得られると共に、負極活物質粒子1Aがリチウムなどの電極反応物質を吸蔵して合金化した場合においても電解液の分解反応が抑制される。しかも、負極活物質と負極結着剤との間の親和性が向上し、負極活物質間において十分な密着性が得られるため、電気抵抗の増加要因となる負極結着剤の含有量が少なくて済むため、負極活物質層2Bの電気抵抗が低く抑えられる。
【選択図】図1
【解決手段】負極活物質層2の負極活物質は、ケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子2Aと、ケイ素および酸素を構成元素として有すると共に負極活物質粒子2Aの表面の少なくとも一部を覆う被覆膜2Bとを含んでいる。また、負極結着剤はポリイミドを含んでおり、負極活物質層2中におけるポリイミドの含有量は5重量%以上30重量%以下の範囲内である。高いエネルギー密度が得られると共に、負極活物質粒子1Aがリチウムなどの電極反応物質を吸蔵して合金化した場合においても電解液の分解反応が抑制される。しかも、負極活物質と負極結着剤との間の親和性が向上し、負極活物質間において十分な密着性が得られるため、電気抵抗の増加要因となる負極結着剤の含有量が少なくて済むため、負極活物質層2Bの電気抵抗が低く抑えられる。
【選択図】図1
Description
本発明は、負極集電体および負極活物質層を備えた負極、ならびにそれを用いた電池に関する。
近年、カメラ一体型VTR(Videotape Recorder)、携帯電話あるいはノート型パソコンなどのポータブル電子機器が広く普及しており、その小型化、軽量化および長寿命化が強く求められている。これに伴い、ポータブル電子機器の電源として、電池、特に軽量で高エネルギー密度および高出力密度が得られる二次電池の開発が進められている。
中でも、充放電反応にリチウム(Li)の吸蔵および放出を利用する二次電池(いわゆるリチウムイオン二次電池)は、鉛電池やニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるため、大いに期待されている。このリチウムイオン二次電池としては、正極の構成材料(正極活物質)としてリチウムと遷移金属との複合材料、負極の構成材料(負極活物質)として炭素材料、電解液として炭酸エステルをそれぞれ用いたものなどが既に実用化されている。
特に、最近では、ポータブル電子機器の飛躍的な性能向上に伴い、さらなる電池容量の向上を実現するために、負極活物質として炭素材料に代えてケイ素を用いることが検討されている(例えば、特許文献1参照。)。ケイ素の理論容量(4199mAh/g)は黒鉛の理論容量(372mAh/g)よりも格段に大きいため、電池容量の大幅な向上を期待できるからである。
米国特許第4950566号明細書
ところが、リチウムを吸蔵して合金化したケイ素は活性が高いため、電解液が分解しやすく、しかもリチウムが不活性化しやすい点が問題であった。すなわち、充放電を繰り返すと充放電効率が低下しやすいため、十分なサイクル特性が得られない。
そこで、負極活物質層あるいは負極活物質粒子の表面に、ケイ素の酸化物からなる不活性な被膜(酸化被膜)を形成することが提案されている(例えば、特許文献2,3参照。)。ただし、上記した被膜を形成した場合には、その膜厚が大きくなると、反応抵抗が増大することが懸念されている(例えば、特許文献4参照。)。
特開2004−171874号公報
特開2004−185810号公報
特開2004−319469号公報
なお、負極活物質層あるいは負極活物質粒子の表面に被膜を形成する技術については、いくつかの関連技術および周辺技術も知られている。具体的には、リチウムからなる負極活物質層の表面に酸化ケイ素からなる被膜を形成すること(例えば、特許文献5参照。)や、酸素を含有するケイ素粒子からなる負極活物質粒子を用いること(例えば、特許文献6参照。)や、ケイ素からなる負極活物質粒子を含む負極活物質層を非酸化性雰囲気下において焼結すること(例えば、特許文献7参照。)などである。また、負極の結着剤として、ポリフッ化ビニリデンを用いることなどである(例えば、特許文献3,5〜7参照。)。
特開2005−063731号公報
特開2005−063767号公報
特開2004−022433号公報
しかしながら、ポータブル電子機器が益々高性能化および多機能化し続けていることに伴い、今後において二次電池の長寿命化に関する要望が益々大きくなることを考えると、負極活物質層あるいは負極活物質粒子の表面に被膜を形成しただけでは、もはや上記した要望に応えられるだけの十分なサイクル特性が得られない。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、優れたサイクル特性を得ることが可能な負極およびそれを用いた電池を提供することにある。
本発明の第1の負極は、負極集電体と、それに設けられた負極活物質および負極結着剤を含む負極活物質層とを備え、負極活物質が、ケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子と、ケイ素および酸素を構成元素として有すると共に負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆う被覆膜とを含み、負極結着剤がポリイミドを含み、負極活物質層中におけるポリイミドの含有量が5重量%以上30重量%以下の範囲内のものである。また、本発明の第1の電池は、正極および負極と共に電解液を備えたものであり、負極が、負極集電体と、それに設けられた負極活物質および負極結着剤を含む負極活物質層とを備え、負極活物質が、ケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子と、ケイ素および酸素を構成元素として有すると共に負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆う被覆膜とを含み、負極結着剤がポリイミドを含み、負極活物質層中におけるポリイミドの含有量が5重量%以上30重量%以下の範囲内のものである。
また、本発明の第2の負極は、負極集電体と、それに設けられた負極活物質および負極結着剤を含む負極活物質層とを備え、負極活物質が、ケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子と、ケイ素および酸素を構成元素として有すると共に液相析出法により負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆うように形成された被覆膜とを含み、負極結着剤がポリフッ化ビニリデンを含み、負極活物質層中におけるポリフッ化ビニリデンの含有量が6重量%以上20重量%以下の範囲内のものである。また、本発明の第2の電池は、正極および負極と共に電解液を備えたものであり、負極が、負極集電体と、それに設けられた負極活物質および負極結着剤を含む負極活物質層とを備え、負極活物質が、ケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子と、ケイ素および酸素を構成元素として有すると共に液相析出法により負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆うように形成された被覆膜とを含み、負極結着剤がポリフッ化ビニリデンを含み、負極活物質層中におけるポリフッ化ビニリデンの含有量が6重量%以上20重量%以下の範囲内のものである。
本発明の第1の負極および電池によれば、負極活物質がケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子を含むと共に、負極結着剤がポリイミドを含む場合に、その負極活物質がケイ素および酸素を構成元素として有すると共に負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆う被覆膜を含み、負極活物質層中におけるポリイミドの含有量が5重量%以上30重量%以下の範囲内であるので、優れたサイクル特性を得ることができる。また、本発明の第2の負極および電池によれば、負極活物質がケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子を含むと共に、負極結着剤がポリフッ化ビニリデンを含む場合に、その負極活物質がケイ素および酸素を構成元素として有すると共に液相析出法により負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆うように形成された被覆膜を含み、負極活物質層中におけるポリフッ化ビニリデンの含有量が6重量%以上20重量%以下の範囲内であるので、優れたサイクル特性を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る負極の断面構成を模式的に表している。この負極は、電池などの電気化学デバイスに用いられるものであり、負極集電体1と、それに設けられた負極活物質層2とを備えている。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る負極の断面構成を模式的に表している。この負極は、電池などの電気化学デバイスに用いられるものであり、負極集電体1と、それに設けられた負極活物質層2とを備えている。
負極集電体1は、例えば、対向する一対の面を有しており、銅(Cu)、ニッケル(Ni)あるいはステンレスなどの良好な電気化学的安定性、電気伝導性および機械的強度を有する金属材料により構成されている。なお、図1では、負極集電体1の表面が凹凸を有していることを分かりやすくするために、その凹凸を誇張して示している。もちろん、負極集電体1の表面凹凸の程度は、任意に設定可能である。
負極活物質層2は、例えば、負極集電体1の片面のみに設けられており、必要に応じて両面に設けられていてもよい。この負極活物質層2は、負極活物質および負極結着剤を含んでおり、必要に応じて、さらに導電剤などを含んでいてもよい。
負極活物質は、電極反応物質(例えばリチウムなどの軽金属)を吸蔵および放出することが可能な負極材料として、負極活物質粒子2Aと、その表面の少なくとも一部を覆う被覆膜2Bとを含んでいる。この被覆膜2Bを含んでいるのは、負極活物質粒子2Aが保護されるため、その電気化学的安定性が向上するからである。これにより、負極を用いた電気化学デバイスにおいて、電解液の分解反応が抑制されるため、サイクル特性が向上する。なお、図1では、複数の負極活物質粒子2Aが被覆膜2Bにより覆われている様子を見やすくするために、負極集電体1上に複数の負極活物質粒子2Aを整列させて示している。もちろん、複数の負極活物質粒子2Aは、負極集電体1上において整列していなければならないわけではない。
負極活物質粒子2Aは、ケイ素を構成元素として有している。電極反応物質を吸蔵および放出する能力が大きいため、高いエネルギー密度が得られるからである。この負極活物質粒子2Aは、ケイ素の単体、合金あるいは化合物であってもよいし、これらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有するものであってもよい。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてよい。なお、本発明における合金には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含まれる。もちろん、本発明における合金は、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらの2種以上が共存するものもある。
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル、銅、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を有するものなどが挙げられる。
ケイ素の化合物としては、例えば、ケイ素以外の構成元素として、酸素および炭素(C)を有するものが挙げられる。なお、ケイ素の化合物は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、ケイ素の合金について説明した元素の1種あるいは2種以上を含んでいてもよい。
被覆膜2Bは、ケイ素および酸素を構成元素として有しており、例えば、二酸化ケイ素(SiO2 )などの酸化物を含んで構成されている。この被覆膜2Bは、負極活物質粒子2Aの表面の全てを覆っていてもよいし、一部を覆っていてもよい。ただし、負極活物質粒子2Aについて十分な電気化学的安定性を得るためには、図1に示したように、負極活物質粒子2Aの表面の全てを覆っているのが好ましい。
この被覆膜2Bは、例えば、液相析出法、ゾルゲル法、電析法、塗布法あるいはディップコーティング法などの液相法や、蒸着法、スパッタ法あるいは化学気相成長(chemical vapor deposition ;CVD)法などの気相法により形成されたものである。中でも、被覆膜2Bは、液相法により形成されたものであることが好ましい。負極活物質粒子2Aの表面全体に渡って成膜作用が及ぶため、その表面全体を被覆膜2Bで容易に覆うことができるからである。
特に、被覆膜2Bは、液相析出法により形成されたものであることがより好ましい。ケイ素の酸化物を容易に制御しながら負極活物質粒子2Aの表面に均一に析出させることができるからである。しかも、浸漬時間などの条件を変化させることにより、被覆膜2Bの膜厚を十分に稼ぐことができると共に、その膜厚を高精度に設定することができるからである。この液相析出法は、例えば、ケイ素のフッ化物錯体の溶液に、アニオン捕捉剤としてフッ素(F)を配位しやすい溶存種を添加して混合させたのち、ケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子2Aを浸漬させて、フッ化物錯体から生じるフッ素アニオンを溶存種に捕捉させることにより、負極活物質粒子2Aの表面にケイ素の酸化物を析出させる方法である。なお、液相析出法では、例えば、ケイ素のフッ化物錯体に代えて、硫酸イオンなどの他のアニオンを生じるケイ素の化合物を用いてもよい。
被覆膜2Bの膜厚は、例えば、0.1nm以上500nm以下の範囲内である。負極活物質粒子2Aについて十分な電気化学的安定性が得られると共に、十分なエネルギー密度が得られるからである。詳細には、膜厚が0.1nmよりも小さいと、被覆膜2Bにより負極活物質粒子2Aが十分に保護されないため、その負極活物質粒子2Aの電気化学的安定性が低下しすぎる可能性がある。一方、膜厚が500nmよりも大きいと、被覆膜2Bの存在により電極反応が阻害されやすいため、エネルギー密度が低下しすぎる可能性がある。特に、上記した電気化学的安定性およびエネルギー密度の観点からすれば、被覆膜2Bの膜厚は、例えば、1nm以上200nm以下の範囲内であることが好ましく、10nm以上150nm以下の範囲内であることがより好ましい。より高い効果が得られるからである。この被覆膜2Bの膜厚については、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)やX線光電子分光分析装置(ESCA)などを用いて測定することができる。
なお、負極活物質は、例えば、上記した負極活物質粒子2Aおよび被覆膜2Bを含む負極材料と共に、他の負極材料を含んでいてもよい。この他の負極材料としては、例えば、炭素材料が挙げられる。電極反応物質の吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少ないため、負極を用いた電気化学デバイスにおいてサイクル特性が向上し、しかも導電剤としても機能するからである。この炭素材料としては、例えば、黒鉛(人工黒鉛および天然黒鉛を含む)、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、活性炭あるいはカーボンブラックなどが挙げられる。コークス類は、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどを含む。有機高分子化合物焼成体は、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子化合物が焼成されて炭素化したものである。炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状あるいは鱗片状のいずれでもよい。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。
負極結着剤は、ポリイミドを含んでいる。結着性に優れ、しかもポリフッ化ビニリデンなどと比較して電気抵抗が小さいからである。特に、負極活物質層2中におけるポリイミドの含有量は、5重量%以上30重量%以下の範囲内である。電気抵抗の増加要因である負極結着剤の含有量が少ないため、負極を用いた電気化学デバイスにおいて、負極活物質層2の電気抵抗が低く抑えられるからである。これにより、サイクル特性が向上する。詳細には、含有量が5重量%よりも少ないと、負極活物質粒子2Aの結着性が不足しやすいため、サイクル特性が低下しすぎたり、場合によっては負極活物質層2が割れる可能性がある。一方、含有量が30重量%よりも多いと、負極活物質相2の電気抵抗が増加しやすいため、サイクル特性が低下しすぎる可能性がある。なお、図1では、負極結着剤の図示を省略している。
導電剤としては、例えば、黒鉛やカーボンブラックなどの炭素材料が挙げられる。
この負極は、例えば、以下の手順により作製することができる。まず、上記した液相析出法などにより、ケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子2Aの表面の少なくとも一部を覆うように、ケイ素および酸素を構成元素として有する被覆膜2Bを形成することにより、負極活物質を得る。続いて、負極活物質と、ポリイミドを含む負極結着剤と、必要に応じて導電剤などとを混合して負極合剤としたのち、有機溶剤などに分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、ドクターブレードあるいはバーコータなどを用いて正極合剤スラリーを正極集電体1に塗布して乾燥させたのち、必要に応じて加熱しながらロールプレス機などを用いて圧縮成型することにより、負極活物質層2を形成する。これにより、図1に示した負極が完成する。
この負極によれば、負極活物質層2の負極活物質がケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子2Aを含むと共に、負極結着剤がポリイミドを含む場合に、その負極活物質がケイ素および酸素を構成元素として有すると共に負極活物質粒子2Aの表面の少なくとも一部を覆う被覆膜2Bを含み、負極活物質層2中におけるポリイミドの含有量が5重量%以上30重量%以下の範囲内であるので、以下の3つの作用が得られる。第1に、負極活物質粒子2Aがケイ素を構成元素として有しているため、炭素材料を含んでいる場合と比較して、高いエネルギー密度が得られる。第2に、被覆膜2Bにより負極活物質粒子2Aが保護されるため、負極を用いた電気化学デバイスにおいて、負極活物質粒子1Aがリチウムなどの電極反応物質を吸蔵して合金化した場合においても、電解液の分解反応が抑制される。第3に、被覆膜2Bがケイ素および酸素を構成元素として有する場合に負極結着剤がポリイミドを含んでいるため、負極活物質と負極結着剤との間の親和性が向上し、負極活物質間において十分な密着性が得られる。この場合には、電気抵抗の増加要因である負極結着剤の含有量が少なくて済むため、負極活物質層2Bの電気抵抗が低く抑えられる。したがって、負極を用いた電気化学デバイスにおいて、優れたサイクル特性の確保に寄与することができる。
特に、被覆膜2Bが液相析出法により形成されたものであれば、その被覆膜2Bの膜厚が均一化すると共に十分に大きくなるため、より高い効果を得ることができる。
この負極は、例えば、以下のように電気化学デバイスに用いられる。以下では、負極が用いられる電気化学デバイスを代表して、電池について説明する。
(第1の電池)
図2は第1の電池の断面構成を表し、図3は図2に示した第1の電池の主要部の断面構成を拡大して表している。この電池は、負極の容量が電極反応物質(例えばリチウムなどの軽金属)の吸蔵および放出に伴う容量成分により表されるものであり、いわゆるリチウムイオン二次電池である。図2では、いわゆる円筒型と呼ばれる電池構造を示している。
図2は第1の電池の断面構成を表し、図3は図2に示した第1の電池の主要部の断面構成を拡大して表している。この電池は、負極の容量が電極反応物質(例えばリチウムなどの軽金属)の吸蔵および放出に伴う容量成分により表されるものであり、いわゆるリチウムイオン二次電池である。図2では、いわゆる円筒型と呼ばれる電池構造を示している。
この電池は、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、正極21および負極22がセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20と、一対の絶縁板12,13とが収納されたものである。電池缶11は、例えば、ニッケルめっきが施された鉄により構成されており、その一端部および他端部はそれぞれ閉鎖および開放されている。一対の絶縁板12,13は、巻回電極体20を挟み、その巻回周面に対して垂直に延在するように配置されている。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、その内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されている。この安全弁機構15では、内部短絡あるいは外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上となった場合に、ディスク板15Aが反転することにより電池蓋14と巻回電極体20との間の電気的接続が切断されるようになっている。熱感抵抗素子16は、温度の上昇に応じて抵抗が増大することにより電流を制限し、大電流に起因する異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、その表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体20の中心には、例えば、センターピン24が挿入されている。この巻回電極体20では、アルミニウムなどにより構成された正極リード25が正極21に接続されており、ニッケルなどにより構成された負極リード26が負極22に接続されている。正極リード25は、安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は、電池缶11に溶接されることにより電気的に接続されている。
正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられたものである。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでいる。この正極活物質層21Bは、必要に応じて、ポリフッ化ビニリデンなどの正極結着剤や、炭素材料などの導電剤を含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウムあるいはこれらを含む固溶体(Li(Nix Coy Mnz )O2 ;x、yおよびzの値はそれぞれ0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1である。)、またはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム(LiMn2 O4 )あるいはその固溶体(Li(Mn2-v Niv )O4 ;vの値はv<2である。)などのリチウム複合酸化物や、リン酸鉄リチウム(LiFePO4 )などのオリビン構造を有するリン酸化合物などが好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。また、上記した他、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物や、二硫化鉄、二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物や、硫黄や、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子も挙げられる。
負極22は、上記した負極(図1参照)であり、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられたものである。なお、負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bの構成は、それぞれ負極集電体1および負極活物質層2の構成と同様である。
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂からなる多孔質膜や、セラミックからなる多孔質膜などにより構成されており、これらの2種以上の多孔質膜が積層されたものであってもよい。
このセパレータ23には、液状の電解質として電解液が含浸されている。この電解液は、溶媒と、電解質塩とを含んでいる。
溶媒は、例えば、有機溶剤などの非水溶媒を含んでいる。この非水溶媒としては、例えば、炭酸類、エステル類、エーテル類、ラクトン類、ニトリル類、アミド類あるいはスルホン類などが挙げられる。具体的には、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、1,3−ジオキソール−2−オン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホランあるいはジメチルスルホキシド燐酸などが挙げられる。優れた容量特性、保存特性およびサイクル特性が得られるからである。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、溶媒は、炭酸エステルを含んでいるのが好ましく、より具体的には、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの高粘度溶媒と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒とを混合して含んでいるのが好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するため、より高い効果が得られるからである。
特に、溶媒は、フッ化炭酸エステルを含んでいるのが好ましい。正極21および負極22の表面にフッ素系の被膜が形成され、電解液が両極と反応しにくくなるため、その電解液の分解反応が抑制されるからである。これにより、より優れた容量特性およびサイクル特性が得られる。このフッ化炭酸エステルとしては、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)あるいは炭酸ジフルオロメチルメチルなどが挙げられる。中でも、溶媒は、フッ化炭酸エステルとして、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンからなる群のうちの少なくとも1種を含んでいるのが好ましい。容易に入手することができると共に、十分な効果が得られるからである。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。なお、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとしては、より高い効果を得るために、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩を含んでいる。このリチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6 H5 )4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3 SO3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、テトラクロロアルミン酸リチウムLiAlCl4 、六フッ化ケイ酸リチウム(Li2 SiF6 )、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )2 )、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C2 F5 SO2 )2 )、トリスペンタフルオロエチルトリフルオロリン酸リチウム(LiP(C2 H5 )3 F3 )、トリフルオロメチルトリフルオロホウ酸リチウム(LiB(CF3 )F3 )、ペンタフルオロエチルトリフルオロホウ酸リチウム(LiB(C2 H5 )F3 )、テトラキストリフルオロメチルホウ酸リチウム(LiB(CF3 )4 )、ビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、ジフルオロ[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム、1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミドリチウム、1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウムあるいはトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウム(LiC(CF3 SO2 )3 )などが挙げられる。優れた容量特性、保存特性およびサイクル特性が得られるからである。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、電解質塩は、六フッ化リン酸リチウムを含んでいるのが好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。
溶媒中における電解質塩の含有量は、例えば、0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下の範囲内である。優れた容量特性が得られるからである。詳細には、含有量が0.3mol/kgよりも小さいと、電荷輸送に関わるイオンの絶対数が不足しやすくなるため、サイクル特性が低下しすぎる可能性がある。一方、含有量が3.0mol/kgよりも大きいと、正極21および負極22に形成される被膜の抵抗が大きくなりやすいため、やはりサイクル特性が低下しすぎる可能性がある。
この電池は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、例えば、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bを形成することにより、正極21を作製する。この正極活物質層21Bを形成する際には、正極活物質の粉末と、導電剤と、正極結着剤とを混合した正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させることによりペースト状の正極合剤スラリーとし、その正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布して乾燥させたのちに圧縮成型する。また、例えば、上記した負極と同様の形成手順を経て、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bを形成することにより、負極22を作製する。
続いて、正極集電体21Aに正極リード25を溶接して取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接して取り付ける。続いて、正極21および負極22をセパレータ23を介して巻回させることにより巻回電極体20を形成し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に負極リード26の先端部を電池缶11に溶接したのち、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟みながら電池缶11の内部に収納する。続いて、電池缶11の内部に電解液を注入してセパレータ23に含浸させる。最後に、電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図2および図3に示した電池が完成する。
この電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解液を経由して負極22に吸蔵される。一方、放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、電解液を経由して正極21に吸蔵される。
この円筒型の電池によれば、負極22として上記した負極を備えているので、高エネルギー密度が得られ、電解液の分解反応が抑制され、しかも負極活物質層22Bの電気抵抗が低く抑えられる。したがって、優れたサイクル特性を得ることができる。
(第2の電池)
図4は第2の電池の分解斜視構成を表し、図5は図4に示した電池の主要部のV−V線に沿った断面構成を拡大して表している。この電池は、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30が、フィルム状の外装部材40の内部に収納されたものである。この電池構造は、いわゆるラミネートフィルム型と呼ばれている。
図4は第2の電池の分解斜視構成を表し、図5は図4に示した電池の主要部のV−V線に沿った断面構成を拡大して表している。この電池は、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30が、フィルム状の外装部材40の内部に収納されたものである。この電池構造は、いわゆるラミネートフィルム型と呼ばれている。
正極リード31および負極リード32は、例えば、いずれも外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどの金属材料により構成されており、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。これらは、例えば、薄板状あるいは網目状の構造を有している。
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムがこの順に貼り合わされたアルミラミネートフィルムにより構成されている。この外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルムが巻回電極体30と対向するように、2枚の矩形型のアルミラミネートフィルムの外縁部同士が融着あるいは接着剤によって互いに接着された構造を有している。
外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するために密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料により構成されている。この種の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂が挙げられる。
なお、外装部材40は、上記したアルミラミネートフィルムに代えて、他の積層構造を有するラミネートフィルムにより構成されていてもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成されていてもよい。
電極巻回体30は、正極33および負極34がセパレータ35および電解質36を介して積層されたのちに巻回されたものであり、その最外周部は保護テープ37により保護されている。
正極33は、対向する一対の面を有する正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられたものである。負極34は、上記した負極(図1参照)である。すなわち、負極34は、対向する一対の面を有する負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bが設けられたものであり、その負極活物質層34Bが正極活物質層33Bと対向するように配置されている。なお、負極集電体34Aおよび負極活物質層34Bの構成は、それぞれ負極集電体1および負極活物質層2の構成と同様である。また、正極集電体33A、正極活物質層33Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ第1の電池における正極集電体21A、正極活物質層21Bおよびセパレータ23の構成と同様である。
電解質36は、電解液と、それを保持する高分子化合物とを含んでおり、いわゆるゲル電解質である。ゲル電解質は、高いイオン伝導率(例えば室温で1mS/cm以上)が得られると共に漏液が防止されるので好ましい。この電解質36は、例えば、正極33とセパレータ35との間および負極34とセパレータ35との間に設けられている。
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートなどが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。中でも、高分子化合物は、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドを含んでいるのが好ましい。電気化学的に安定化するからである。
電解液の組成は、上記した第1の電池における電解液の組成と同様である。ただし、この場合の溶媒とは、液状の溶媒だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有するものまで含む広い概念である。したがって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
なお、電解質36としては、電解液を高分子化合物に保持させたものに代えて、電解液をそのまま用いてもよい。この場合には、電解液がセパレータ35に含浸される。
このゲル状の電解質36を備えた電池は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、電解液と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を調製し、正極33および負極34のそれぞれに塗布したのちに混合溶剤を揮発させることにより、電解質36を形成する。続いて、正極集電体33Aに正極リード31を取り付けると共に、負極集電体34Aに負極リード32を取り付ける。続いて、電解質36が形成された正極33および負極34をセパレータ35を介して積層させたのち、長手方向に巻回させると共に最外周部に保護テープ37を接着させることにより、巻回電極体30を形成する。続いて、例えば、外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込み、その外装部材40の外縁部同士を熱融着などで密着させることにより巻回電極体30を封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間に、密着フィルム41を挿入する。これにより、図4および図5に示した二次電池が完成する。
なお、上記した電池は、以下のようにして製造してもよい。まず、正極33および負極34にそれぞれ正極リード31および負極リード32を取り付けたのち、それらの正極33および負極34をセパレータ35を介して積層および巻回させると共に最外周部に保護テープ37を接着させることにより、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成する。続いて、外装部材40の間に巻回体を挟み込み、一辺の外周縁部を除く残りの外周縁部を熱融着などで密着させることにより、袋状の外装部材40の内部に収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を調製し、袋状の外装部材40の内部に注入したのち、外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後に、モノマーを熱重合させて高分子化合物とすることにより、ゲル状の電解質36を形成する。これにより、図4および図5に示した二次電池が完成する。
このラミネートフィルム型の電池の作用および効果は、上記した第1の二次電池と同様である。
(第3の電池)
図6は第3の電池の断面構成を表している。この電池は、外装缶54に収納された正極51と外装カップ55に収納された負極52とが、電解液が含浸されたセパレータ53を介して積層されたものであり、外装缶54および外装カップ55の周縁部が絶縁性のガスケット56を介してかしめられることにより密封されている。この電池構造は、いわゆるコイン型と呼ばれている。
図6は第3の電池の断面構成を表している。この電池は、外装缶54に収納された正極51と外装カップ55に収納された負極52とが、電解液が含浸されたセパレータ53を介して積層されたものであり、外装缶54および外装カップ55の周縁部が絶縁性のガスケット56を介してかしめられることにより密封されている。この電池構造は、いわゆるコイン型と呼ばれている。
外装缶54および外装カップ55は、例えば、ステンレスあるいはアルミニウムなどの金属により構成されている。
正極51は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体51Aの片面に正極活物質層51Bが設けられたものである。負極52は、上記した負極(図1参照)ものである。すなわち、負極52は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体52Aの片面に負極活物質層52Bが設けられたものであり、その負極活物質層52Bは、正極活物質層51Bと対向するように配置されている。なお、負極集電体52Aおよび負極活物質層52Bの構成は、それぞれ負極集電体1および負極活物質層2の構成と同様である。また、正極集電体51A、正極活物質層51Bおよびセパレータ53の構成は、それぞれ第1の電池における正極集電体21A、正極活物質層21Bおよびセパレータ23の構成と同様であり、電解液の組成は、第1の電池における電解液の組成と同様である。
この二次電池は、以下のようにして製造することができる。すなわち、まず、第1の電池における正極21および負極22と同様の作製手順により、正極集電体51Aの片面に正極活物質層51Bを形成して正極51を作製すると共に、負極集電体52Aの片面に負極活物質層52Bを形成して負極52を作製する。続いて、正極51と負極52とをセパレータ53を介して積層させたのち、外装缶54と外装カップ55との間にガスケット56を介して挟み込む。最後に、外装缶54をかしめて密封することにより、図6に示した二次電池が完成する。
このコイン型の電池の作用および効果は、上記した第1の電池と同様である。
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態に係る負極は、被覆膜2Bの形成方法が限定されていると共に、負極結着剤の種類および含有量が異なることを除き、上記した第1の実施の形態に係る負極(図1参照)と同様の構成を有しており、しかも同様の作製手順により作製することができる。
本発明の第2の実施の形態に係る負極は、被覆膜2Bの形成方法が限定されていると共に、負極結着剤の種類および含有量が異なることを除き、上記した第1の実施の形態に係る負極(図1参照)と同様の構成を有しており、しかも同様の作製手順により作製することができる。
負極活物質粒子2Aの表面の少なくとも一部を覆っている被覆膜2Bは、液相析出法により形成されたものである。この被覆膜2Bが液相析出法によって形成されているのは、負極活物質粒子2Aの表面全体を被覆膜2Bで容易に覆うことができるからである。また、負極活物質粒子2Aの表面に被覆膜2Bを均一に析出させることができると共に、その被覆膜2Bの膜厚を十分に稼ぎつつ高精度に設定することができるからである。
負極結着剤は、ポリフッ化ビニリデンを含んでいる。結着性に優れているからである。特に、負極活物質層2中におけるポリフッ化ビニリデンの含有量は、6重量%以上20重量%以下の範囲内である。電気抵抗の増加要因である負極結着剤の含有量が少ないため、負極を用いた電気化学デバイスにおいて、負極活物質層2の電気抵抗が低く抑えられるからである。これにより、サイクル特性が向上する。詳細には、含有量が6重量%よりも少ないと、負極活物質粒子2Aの結着性が不足しやすいため、サイクル特性が低下しすぎたり、場合によっては負極活物質層2が割れる可能性がある。一方、含有量が20重量%よりも多いと、負極活物質相2の電気抵抗が大きくなりやすいため、サイクル特性が低下しすぎる可能性がある。
この負極によれば、負極活物質層2の負極活物質がケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子2Aを含むと共に、負極結着剤がポリフッ化ビニリデンを含む場合に、その負極活物質がケイ素および酸素を構成元素として有すると共に液相析出法により負極活物質粒子2Aの表面の少なくとも一部を覆うように形成された被覆膜2Bを含み、負極活物質層2中におけるポリフッ化ビニリデンの含有量が6重量%以上20重量%以下の範囲内であるので、負極結着剤としてポリイミドに代えてポリフッ化ビニリデンを用いた場合においても、上記した第1の実施の形態と同様の作用が得られる。しかも、被覆膜2Bが液相析出法によって形成されており、その膜厚が均一化すると共に十分に大きくなるため、電解液の分解反応の抑制作用および負極活物質と負極結着剤との間の親和性向上作用がより高まる。したがって、負極を用いた電気化学デバイスにおいて、優れたサイクル特性の確保に寄与することができる。
なお、ここでは詳細に説明しないが、本実施の形態の負極は、第1の実施の形態の負極と同様に、既に詳細に説明した第1〜第3の電池に用いることができる。この場合においても、優れたサイクル特性を得ることができる。
本発明の実施例について詳細に説明する。
(1)負極結着剤としてポリイミドを用いて二次電池を製造することにより、そのサイクル特性を調べた。この際、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分により表されるリチウムイオン二次電池となるようにした。
(実施例1−1)
以下の手順により、図6に示したコイン型の二次電池を製造した。
以下の手順により、図6に示したコイン型の二次電池を製造した。
まず、正極51を作製した。すなわち、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中において900℃で5時間に渡って焼成することにより、リチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。続いて、正極活物質としてリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、正極結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部と、導電剤として黒鉛6質量部とを混合して正極合剤としたのち、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、厚さ20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体51Aの片面に正極合剤スラリーを塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機を用いて圧縮成型することにより、正極活物質層51Bを形成した。最後に、直径15.5mmのペレット状に打ち抜いた。
次に、負極52を作製した。すなわち、濃度2mol/dm3 のケイフッ化水素酸にフッ素アニオン補足剤として濃度0.028mol/dm3 のホウ酸を溶解させた溶液に、負極活物質粒子として平均粒径1μmのケイ素粉末を浸漬させることにより、その負極活物質粒子の表面に酸化ケイ素からなる被覆膜を析出させた。この際、浸漬時間を3時間とした。こののち、水で洗浄してから減圧乾燥させることにより、負極活物質粒子の表面を覆うように被覆膜が形成された負極活物質を得た。続いて、負極活物質と、負極結着剤としてポリイミド(PI)とを混合して負極合剤としたのち、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、ペースト状の負極合剤スラリーとした。この際、負極活物質層52B中における負極結着剤の含有量を5重量%とした。続いて、厚さ18μmの銅箔からなる負極集電体52Aの片面に負極合剤スラリーを塗布して乾燥させたのち、ロールプレス機を用いて圧縮成型した。続いて、真空雰囲気中において400℃で12時間に渡って加熱することにより、負極活物質層52Bを形成した。最後に、直径16mmのペレット状に打ち抜いた。
次に、溶媒として炭酸ジエチル(DEC)と4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)とをDEC:FEC=50:50の重量比で混合させたのち、電解質塩として六フッ化リン酸リチウムを1mol/dm3 の濃度となるように溶解させることにより、電解液を調製した。
最後に、正極51と、厚さ25μmの微多孔性ポリエチレンフィルムからなるセパレータ53と、負極52とをこの順に積層したのち、外装缶54上に載置し、セパレータ53に電解液を含浸させた。こののち、外装カップ55を被せ、外装缶54をかしめることにより密封した。
(実施例1−2〜1−6)
浸漬時間をそれぞれ1時間、2時間、3時間、6時間および21時間にし、負極結着剤の含有量を20重量%にしたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
浸漬時間をそれぞれ1時間、2時間、3時間、6時間および21時間にし、負極結着剤の含有量を20重量%にしたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(実施例1−7)
浸漬時間を3時間にし、負極結着剤の含有量を30重量%にしたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
浸漬時間を3時間にし、負極結着剤の含有量を30重量%にしたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(比較例1−1〜1−4)
被覆膜を形成せず、負極結着剤の含有量をそれぞれ5重量%、20重量%、30重量%および40重量%にしたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
被覆膜を形成せず、負極結着剤の含有量をそれぞれ5重量%、20重量%、30重量%および40重量%にしたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(比較例1−5)
負極結着剤の含有量を40重量%にしたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
負極結着剤の含有量を40重量%にしたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
これらの実施例1−1〜1−7および比較例1−1〜1−5の二次電池についてサイクル特性を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
サイクル特性を調べる際には、以下の手順により二次電池を繰り返し充放電したのち、放電容量維持率を算出した。まず、23℃の雰囲気中において充放電を2サイクル行うことにより、2サイクル目の放電容量を求めた。1サイクルの充放電では、1mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が4.2Vに達するまで充電し、引き続き4.2Vの定電圧で電流密度が0.02mA/cm2 に達するまで充電したのち、1mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が2.5Vに達するまで放電した。続いて、同雰囲気中において上記した充放電を合計で100サイクルとなるまで繰り返すことにより、100サイクル目の放電容量を求めた。最後に、放電容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。この放電容量維持率に基づいてサイクル特性を評価する際には、負極結着剤としてPIを用いた場合における評価基準の目安を80%以上とした。
表1に示したように、被覆膜を形成した実施例1−1〜1−7では、その被覆膜を形成しなかった比較例1−1〜1−3と比較して、サイクル特性が向上した。具体的には、放電容量維持率は、PIからなる負極結着剤の含有量が5重量%である場合には比較例1−1(63%)よりも実施例1−1(82%)において増加し、20重量%である場合には比較例1−2(77%)よりも実施例1−2〜1−6(80%〜84%)において増加し、30重量%である場合には比較例1−3(75%)よりも実施例1−7(81%)において増加した。しかも、負極結着剤の含有量が5重量%、20重量%および30重量%である実施例1−1〜1−7では、その含有量が40重量%である比較例1−5とは異なり、サイクル特性が評価基準を満たした。具体的には、放電容量維持率は、実施例1−1〜1−7(80%〜84%)では80%に達したが、比較例1−5(75%)では80%に達しなかった。この場合には、実施例1−2〜1−6の結果に見られる傾向から明らかなように、浸漬時間が長くなるにしたがって被覆膜の被覆率および膜厚が増加し、それに伴って電解液の分解抑制効果が高まるため、放電容量維持率が次第に増加した。もちろん、被覆膜を形成しなかったことを除いて比較例1−5と同様の構成を有する比較例1−4では、その比較例1−5よりも放電容量維持率が減少した。これらのことから、負極活物質層52Bの構成について、負極活物質がケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子を含むと共に、負極結着剤がポリイミドを含むコイン型の二次電池では、ケイ素および酸素を構成元素として有すると共に負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆うように被覆膜を形成すると共に、負極活物質層52B中におけるポリイミドの含有量を5重量%以上30重量%以下の範囲内にすることにより、優れたサイクル特性が得られることが確認された。
(実施例2−1)
溶媒として炭酸エチレン(EC)およびDEC(混合比は重量比でEC:DEC=50:50)を用いたことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。
溶媒として炭酸エチレン(EC)およびDEC(混合比は重量比でEC:DEC=50:50)を用いたことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。
(実施例2−2)
溶媒としてEC、DECおよび炭酸ビニレン(VC)(混合比は重量比でEC:DEC:VC=49.5:49.5:1)を用いたことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。
溶媒としてEC、DECおよび炭酸ビニレン(VC)(混合比は重量比でEC:DEC:VC=49.5:49.5:1)を用いたことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。
(実施例2−3)
溶媒としてEC、DECおよびFEC(混合比は重量比でEC:DEC:FEC=30:60:10)を用いたことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。
溶媒としてEC、DECおよびFEC(混合比は重量比でEC:DEC:FEC=30:60:10)を用いたことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。
(実施例2−4)
溶媒としてEC、DECおよび4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)(混合比は重量比でEC:DEC:DFEC=30:60:10)を用いたことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。
溶媒としてEC、DECおよび4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)(混合比は重量比でEC:DEC:DFEC=30:60:10)を用いたことを除き、実施例1−4と同様の手順を経た。
(比較例2−1〜2−4)
被覆膜を形成しなかったことを除き、実施例2−1〜2−4と同様の手順を経た。
被覆膜を形成しなかったことを除き、実施例2−1〜2−4と同様の手順を経た。
これらの実施例2−1〜2−4および比較例2−1〜2−4の二次電池について、表1と同様にサイクル特性を調べたところ、表2に示した結果が得られた。
表2に示したように、被覆膜を形成した実施例2−1〜2−4では、その被覆膜を形成しなかった比較例2−1〜2−4と比較して、サイクル特性が向上した。具体的には、放電容量維持率は、溶媒がECおよびDECである場合には比較例2−1(38%)よりも実施例2−1(50%)において増加し、EC、DECおよびVCである場合には比較例2−2(52%)よりも実施例2−2(75%)において増加し、EC、DECおよびFECである場合には比較例2−3(60%)よりも実施例2−3(80%)において増加し、EC、DECおよびDFECである場合には比較例2−4(76%)よりも実施例2−4(84%)において増加した。これらのことから、負極活物質層52Bの構成について、負極活物質がケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子を含むと共に、負極結着剤がポリイミドを含むコイン型の二次電池では、ケイ素および酸素を構成元素として有すると共に負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆うように被覆膜を形成することにより、溶媒の組成に関係なくサイクル特性が向上することが確認された。
この場合には、特に、溶媒がECおよびDECを含む実施例2−1、ならびにECおよびDECに加えてそれぞれVC、FECおよびDFECを含む実施例2−2〜2−4を比較すると、放電容量維持率は、実施例2−1〜2−4の順に増加した。しかも、溶媒がFECおよびDFECを含む実施例2−3,2−4では、放電容量維持率が評価基準(80%以上)を満たした。これらのことから、溶媒がVC、FECおよびDFECを含むことにより、この順にサイクル特性が向上すると共に、溶媒がFECおよびDFECを含むことにより、優れたサイクル特性が得られることが確認された。
(実施例3−1)
以下の手順により、図2および図3に示した円筒型の二次電池を製造した。
以下の手順により、図2および図3に示した円筒型の二次電池を製造した。
すなわち、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布して正極活物質層21Bを形成したことを除き、実施例1−1と同様の手順を経て正極21を作製した。続いて、浸漬時間および負極結着剤の含有量をそれぞれ3時間および5重量%にしたと共に、負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを塗布して負極活物質層22Bを形成したことを除き、実施例1−1と同様の手順を経て負極22を作製した。続いて、正極21と、実施例1−1と同様の構成のセパレータ23と、負極22とをこの順に積層してから渦巻状に多数回巻回させたのち、巻き終わり部分を粘着テープで固定することにより、巻回電極体20を形成した。続いて、ニッケルめっきが施された鉄製の電池缶11を準備したのち、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟み、負極リード26を電池缶11に溶接すると共に正極リード25を安全弁機構15に溶接して、その巻回電極体20を電池缶11の内部に収納した。最後に、電池缶11の内部に、実施例1−1と同様の組成の電解液を減圧方式により注入した。続いて、表面にアスファルトが塗布されたガスケット17を介して電池缶11をかしめることにより、安全弁機構15、熱感抵抗素子16および電池蓋14を固定した。
(実施例3−2,3−3)
負極結着剤の含有量をそれぞれ20重量%および30重量%にしたことを除き、実施例3−1と同様の手順を経た。
負極結着剤の含有量をそれぞれ20重量%および30重量%にしたことを除き、実施例3−1と同様の手順を経た。
(比較例3−1〜3−4)
被覆膜を形成せず、負極結着剤の含有量をそれぞれ5重量%、20重量%、30重量%および40重量%にしたことを除き、実施例3−1と同様の手順を経た。
被覆膜を形成せず、負極結着剤の含有量をそれぞれ5重量%、20重量%、30重量%および40重量%にしたことを除き、実施例3−1と同様の手順を経た。
(比較例3−5)
負極結着剤の含有量を40重量%にしたことを除き、実施例3−1と同様の手順を経た。
負極結着剤の含有量を40重量%にしたことを除き、実施例3−1と同様の手順を経た。
これらの実施例3−1〜3−3および比較例3−1〜3−5の二次電池について、表1と同様にサイクル特性を調べたところ、表3に示した結果が得られた。
表3に示したように、被覆膜を形成した実施例3−1〜3−3では、その被覆膜を形成しなかった比較例3−1〜3−3と比較して、サイクル特性が向上した。具体的には、放電容量維持率は、PIからなる負極結着剤の含有量が5重量%である場合には比較例3−1(51%)よりも実施例3−1(80%)において増加し、20重量%である場合には比較例3−2(72%)よりも実施例3−2(83%)において増加し、30重量%である場合には比較例3−3(71%)よりも実施例3−3(81%)において増加した。しかも、負極結着剤の含有量が5重量%、20重量%および30重量%である実施例3−1〜3−3では、その含有量が40重量%である比較例3−5とは異なり、サイクル特性が評価基準(80%以上)を満たした。具体的には、放電容量維持率は、実施例3−1〜3−3(80%〜83%)では80%に達したが、比較例3−5(69%)では80%に達しなかった。もちろん、被覆膜を形成しなかったことを除いて比較例3−5と同様の構成を有する比較例3−4では、その比較例3−5よりも放電容量維持率が減少した。これらのことから、負極活物質層22Bの構成について、負極活物質がケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子を含むと共に、負極結着剤がポリイミドを含む円筒型の二次電池では、ケイ素および酸素を構成元素として有すると共に負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆うように被覆膜を形成すると共に、負極活物質層22B中におけるポリイミドの含有量を5重量%以上30重量%以下の範囲内にすることにより、優れたサイクル特性が得られることが確認された。
(実施例4−1)
以下の手順により、図4および図5に示したラミネートフィルム型の二次電池を製造した。
以下の手順により、図4および図5に示したラミネートフィルム型の二次電池を製造した。
すなわち、正極集電体33Aの両面に正極合剤スラリーを塗布して正極活物質層33Bを形成したことを除き、実施例1−1と同様の手順を経て正極33を作製した。続いて、浸漬時間および負極結着剤の含有量をそれぞれ3時間および5重量%にしたと共に、負極集電体34Aの両面に負極合剤スラリーを塗布して負極活物質層34Bを形成したことを除き、実施例1−1と同様の手順を経て負極34を作製した。
次に、高分子化合物としてフッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とをVDF:HFP=93:7の重量比でブロック共重合させたのち、その高分子化合物と、実施例1−1と同様の組成の電解液と、溶媒として炭酸ジメチルとを混合して前駆溶液としたのち、正極33および負極34に塗布して乾燥させることにより、ゲル状の電解質36を作製した。
次に、正極33と、実施例1−1と同様の構成のセパレータ35と、負極34とをこの順に積層させたのちに長手方向において渦巻状に多数回に渡って巻回し、保護テープ37として粘着テープで巻き終わり部分を固定することにより巻回電極体30を作製した。
最後に、外側からナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリ無延伸エチレンフィルムがこの順に貼り合わされた2枚のアルミラミネートフィルムからなる外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込んだ。こののち、減圧環境中において外装部材40の外縁部同士を熱融着して封止することにより、外装部材40との間に密着フィルム41を介して正極リード31および負極リード32が導出されるように巻回電極体30を収納した。
(実施例4−2,4−3)
負極結着剤の含有量をそれぞれ20重量%および30重量%にしたことを除き、実施例4−1と同様の手順を経た。
負極結着剤の含有量をそれぞれ20重量%および30重量%にしたことを除き、実施例4−1と同様の手順を経た。
(比較例4−1〜4−4)
被覆膜を形成せず、負極結着剤の含有量をそれぞれ5重量%、20重量%、30重量%および40重量%にしたことを除き、実施例4−1と同様の手順を経た。
被覆膜を形成せず、負極結着剤の含有量をそれぞれ5重量%、20重量%、30重量%および40重量%にしたことを除き、実施例4−1と同様の手順を経た。
(比較例4−5)
負極結着剤の含有量を40重量%にしたことを除き、実施例4−1と同様の手順を経た。
負極結着剤の含有量を40重量%にしたことを除き、実施例4−1と同様の手順を経た。
これらの実施例4−1〜4−3および比較例4−1〜4−5の二次電池について、表1と同様にサイクル特性を調べたところ、表4に示した結果が得られた。
表4に示したように、被覆膜を形成した実施例4−1〜4−3では、その被覆膜を形成しなかった比較例4−1〜4−3と比較して、サイクル特性が向上した。具体的には、放電容量維持率は、PIからなる負極結着剤の含有量が5重量%である場合には比較例4−1(54%)よりも実施例4−1(80%)において増加し、20重量%である場合には比較例4−2(74%)よりも実施例4−2(85%)において増加し、30重量%である場合には比較例4−3(72%)よりも実施例4−3(83%)において増加した。しかも、負極結着剤の含有量が5重量%、20重量%および30重量%である実施例4−1〜4−3では、その含有量が40重量%である比較例4−5とは異なり、サイクル特性が評価基準(80%以上)を満たした。具体的には、放電容量維持率は、実施例4−1〜4−3(80%〜83%)では80%に達したが、比較例4−5(68%)では80%に達しなかった。もちろん、被覆膜を形成しなかったことを除いて比較例4−5と同様の構成を有する比較例4−4では、その比較例4−5よりも放電容量維持率が減少した。これらのことから、負極活物質層34Bの構成について、負極活物質がケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子を含むと共に、負極結着剤がポリイミドを含むラミネートフィルム型の二次電池では、ケイ素および酸素を構成元素として有すると共に負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆うように被覆膜を形成すると共に、負極活物質層34B中におけるポリイミドの含有量を5重量%以上30重量%以下の範囲内にすることにより、優れたサイクル特性が得られることが確認された。
(2)負極結着剤としてポリフッ化ビニリデンを用いてコイン型の二次電池を製造することにより、そのサイクル特性を調べた。
(実施例5−1)
負極結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用い、その含有量を6重量%にしたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
負極結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用い、その含有量を6重量%にしたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(実施例5−2〜5−6)
負極結着剤としてPVDFを用い、その含有量を10重量%にしたことを除き、実施例1−2〜1−6と同様の手順を経た。
負極結着剤としてPVDFを用い、その含有量を10重量%にしたことを除き、実施例1−2〜1−6と同様の手順を経た。
(実施例5−7)
負極結着剤としてPVDFを用い、その含有量を20重量%にしたことを除き、実施例1−7と同様の手順を経た。
負極結着剤としてPVDFを用い、その含有量を20重量%にしたことを除き、実施例1−7と同様の手順を経た。
(比較例5−1〜5−4)
被覆膜を形成せず、負極結着剤の含有量をそれぞれ6重量%、10重量%、20重量%および25重量%にしたことを除き、実施例5−1と同様の手順を経た。
被覆膜を形成せず、負極結着剤の含有量をそれぞれ6重量%、10重量%、20重量%および25重量%にしたことを除き、実施例5−1と同様の手順を経た。
(比較例5−5)
負極結着剤の含有量を25重量%にしたことを除き、実施例5−1と同様の手順を経た。
負極結着剤の含有量を25重量%にしたことを除き、実施例5−1と同様の手順を経た。
これらの実施例5−1〜5−7および比較例5−1〜5−5の二次電池について、表1と同様にサイクル特性を調べたところ、表5に示した結果が得られた。なお、放電容量維持率に基づいてサイクル特性を評価する際には、負極結着剤としてPVDFを用いた場合における評価基準の目安を70%以上とした。
表5に示したように、被覆膜を形成した実施例5−1〜5−7では、その被覆膜を形成しなかった比較例5−1〜5−3と比較して、サイクル特性が向上した。具体的には、放電容量維持率は、PVDFからなる負極結着剤の含有量が6重量%である場合には比較例5−1(59%)よりも実施例5−1(76%)において増加し、10重量%である場合には比較例5−2(72%)よりも実施例5−2〜5−6(75%〜78%)において増加し、20重量%である場合には比較例5−3(70%)よりも実施例5−7(75%)において増加した。しかも、負極結着剤の含有量が6重量%、10重量%および20重量%である実施例5−1〜5−7では、その含有量が25重量%である比較例5−5とは異なり、サイクル特性が評価基準を満たした。具体的には、放電容量維持率は、実施例5−1〜5−7(75%〜79%)では70%に達したが、比較例5−5(57%)では70%に達しなかった。この場合には、実施例5−2〜5−6の結果に見られる傾向から明らかなように、浸漬時間が長くなるにしたがって被覆膜の被覆率および膜厚が増加し、それに伴って電解液の分解抑制効果が高まるため、放電容量維持率が次第に増加した。もちろん、被覆膜を形成しなかったことを除いて比較例5−5と同様の構成を有する比較例5−4では、その比較例5−5よりも放電容量維持率が減少した。これらのことから、負極活物質層52Bの構成について、負極活物質がケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子を含むと共に、負極結着剤がポリフッ化ビニリデンを含むコイン型の二次電池では、ケイ素および酸素を構成元素として有すると共に負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆うように被覆膜を形成すると共に、負極活物質層52B中におけるポリフッ化ビニリデンの含有量を6重量%以上20重量%以下の範囲内にすることにより、優れたサイクル特性が得られることが確認された。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の負極の適用用途は、必ずしも電池に限らず、電池以外の他の電気化学デバイスであってもよい。この他の電気化学デバイスとしては、例えば、キャパシタなどが挙げられる。
また、上記実施の形態および実施例では、本発明の電池として、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分により表されるリチウムイオン二次電池について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。本発明の電池は、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の充電容量を正極の充電容量よりも小さくすることにより、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出に基づく容量成分とリチウムの析出および溶解に基づく容量成分とを含み、かつそれらの容量成分の和により表される二次電池についても、同様に適用可能である。
また、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他の1A族元素や、マグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などの2A族元素や、アルミニウムなどの他の軽金属を用いてもよい。この場合においても、負極活物質として、上記実施の形態で説明した負極材料を用いることが可能である。
また、上記実施の形態または実施例では、本発明の電池の電池構造として円筒型、ラミネートフィルム型およびコイン型を例に挙げて説明したが、本発明の電池は、ボタン型あるいは角型などの他の電池構造を有する電池についても適用可能である。もちろん、本発明は、二次電池に限らず、一次電池などの他の電池についても同様に適用可能である。
なお、上記実施の形態および実施例では、負極活物質層中におけるポリイミドあるいはポリフッ化ビニリデンの含有量について、実施例の結果から導き出された適正範囲を説明しているが、その説明は、含有量が上記した範囲外となる可能性を完全に否定するものではない。すなわち、上記した適正範囲は、あくまで本発明の効果を得る上で特に好ましい範囲であり、本発明の効果が得られるのであれば、含有量が上記した範囲から多少外れてもよい。
1,22A,34A,52A…負極集電体、2,22B,34B,52B…負極活物質層、2A…負極活物質粒子、2B…被覆膜、11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17,56…ガスケット、20,30…巻回電極体、21,33,51…正極、21A,33A,51A…正極集電体、21B,33B,51B…正極活物質層、22,34,52…負極、23,35,53…セパレータ、24…センターピン、25,31…正極リード、26,32…負極リード、36…電解質、37…保護テープ、40…外装部材、41…密着フィルム、54…外装缶、55…外装カップ。
Claims (10)
- 負極集電体と、それに設けられた負極活物質および負極結着剤を含む負極活物質層とを備え、
前記負極活物質は、ケイ素(Si)を構成元素として有する負極活物質粒子と、ケイ素および酸素(O)を構成元素として有すると共に前記負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆う被覆膜とを含み、
前記負極結着剤は、ポリイミドを含み、
前記負極活物質層中における前記ポリイミドの含有量は、5重量%以上30重量%以下の範囲内である
ことを特徴とする負極。 - 前記被覆膜は、液相析出法により形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の負極。
- 負極集電体と、それに設けられた負極活物質および負極結着剤を含む負極活物質層とを備え、
前記負極活物質は、ケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子と、ケイ素および酸素を構成元素として有すると共に液相析出法により前記負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆うように形成された被覆膜とを含み、
前記負極結着剤は、ポリフッ化ビニリデンを含み、
前記負極活物質層中における前記ポリフッ化ビニリデンの含有量は、6重量%以上20重量%以下の範囲内である
ことを特徴とする負極。 - 正極および負極と共に電解液を備えた電池であって、
前記負極は、負極集電体と、それに設けられた負極活物質および負極結着剤を含む負極活物質層とを備え、
前記負極活物質は、ケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子と、ケイ素および酸素を構成元素として有すると共に前記負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆う被覆膜とを含み、
前記負極結着剤は、ポリイミドを含み、
前記負極活物質層中における前記ポリイミドの含有量は、5重量%以上30重量%以下の範囲内である
ことを特徴とする電池。 - 前記被覆膜は、液相析出法により形成されたものであることを特徴とする請求項4記載の電池。
- 前記電解液は、フッ素化炭酸エステルを含むことを特徴とする請求項4記載の電池。
- 前記フッ素化炭酸エステルは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンからなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項6記載の電池。
- 正極および負極と共に電解液を備えた電池であって、
前記負極は、負極集電体と、それに設けられた負極活物質および負極結着剤を含む負極活物質層とを備え、
前記負極活物質は、ケイ素を構成元素として有する負極活物質粒子と、ケイ素および酸素を構成元素として有すると共に液相析出法により前記負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆うように形成された被覆膜とを含み、
前記負極結着剤は、ポリフッ化ビニリデンを含み、
前記負極活物質層中における前記ポリフッ化ビニリデンの含有量は、6重量%以上20重量%以下の範囲内である
ことを特徴とする電池。 - 前記電解液は、フッ素化炭酸エステルを含むことを特徴とする請求項8記載の電池。
- 前記フッ素化炭酸エステルは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンからなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
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