JP2010073571A - リチウムイオン二次電池およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】合金系負極活物質を含有する高容量および高出力型のリチウムイオン二次電池において、充放電サイクルの繰返しに伴う電池の膨れ、負極活物質層の変形や破損などの発生が防止され、充放電サイクル特性や耐用寿命の低下を防止する。
【解決手段】 リチウムイオン二次電池の電極群を、正極、セパレータおよび負極がこの順番で積層された単位電極を、セパレータを介在させて2個以上積層した積層型電極群とし、負極が、合金系負極活物質を含有する薄膜状負極活物質層を含むように構成するとともに、初回の充放電を加圧下に行う。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は主に、合金系負極活物質を含有する積層型電極群の改良に関する。
リチウムイオン二次電池は、高容量および高エネルギー密度を有し、小型化および軽量化が容易なことから、たとえば、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノート型パーソナルコンピュータ、ビデオカメラ、携帯ゲーム機などの携帯用小型電子機器の電源として汎用されている。また、電気自動車、ハイブリッド自動車などの車載用電源、無停電電源などとしての応用開発も進められている。現在の代表的なリチウムイオン二次電池としては、正極活物質としてリチウムコバルト化合物を含有する正極と、ポリオレフィン製多孔質膜であるセパレータと、負極活物質として炭素材料を含有する負極とを含むものが挙げられる。
このように、リチウムイオン二次電池は容量および出力が高く、比較的長寿命であるが、携帯用小型電子機器のさらなる多機能化が進み、小型電子機器の消費電力が増大するとともに、リチウムイオン二次電池にも種々の性能向上が求められている。その1つとして、さらなる高容量化および高出力化が挙げられ、そのためには、たとえば、高容量の負極活物質の開発が進められている。高容量の負極活物質としては、珪素、錫、ゲルマニウム、これらの酸化物、これらを含有する化合物、合金などの、リチウムと合金化する合金系負極活物質が注目を集めている。合金系負極活物質は高い放電容量を有しているので、リチウムイオン二次電池の高容量化には効果的である。たとえば、珪素の理論放電容量は約4199mAh/gであり、従来から負極活物質として用いられる黒鉛の理論放電容量の約11倍である。
合金系負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵および放出に伴い、比較的大きな膨張および収縮を繰り返すという特性を有している。このため、合金系負極活物質を用いるリチウムイオン二次電池では、充放電の回数が増加すると、充放電に伴う合金系負極活物質の体積膨張が大きくなり、主に負極が変形して電池の厚みが増加するという解決すべき課題がある。さらに、合金系負極活物資の膨張により、電極群の内部に空隙が生じ、合金系負極活物質を含有する負極活物質層が集電体から部分的に剥離し、電池の充放電サイクル特性が低下するとともに、電池の耐用寿命を縮めるという問題もある。
このような課題を解決するため、たとえば、扁平状の捲回型電極群を含むリチウムイオン二次電池において、該電極群の平面部を該電極群の厚み方向に加圧しながら、最初の充放電を行う技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1で用いられる扁平状の捲回型電極は、正極および合金系負極活物質を含有する負極を、セパレータを介して捲回して作製したものである。また、捲回型電極群の平面部に加える圧力は、1.0×104N/cm2以上と規定されている。特許文献1によれば、充放電の繰返しに伴う電池の膨れが防止され、充放電特性に優れるリチウムイオン二次電池が得られると記載されている。
特許文献1のリチウムイオン二次電池では、充放電サイクルの繰返しに伴う電池の膨れはやや軽減されるが、その効果は十分ではない。すなわち、特許文献1の実施例1では、充放電サイクル毎に扁平状の捲回型電極群を加圧することにより、100サイクル後の電池厚みの初回サイクル後の電池厚みに対する割合(以下単に「電池厚みの増加率」とする)を約106%に抑えている。
しかしながら、充放電サイクル毎に加圧するのは、現実の使用では非常に困難である。また、実施例2では初回サイクルのみで加圧を行い、電池厚みの増加率は約111%であり、同じく初回サイクルのみで加圧を行う比較例1よりも電池厚みの増加率が大きくなっている。このことから、初回の充放電時に電極群を加圧することで、電池の膨れを防止する事はできるが、厚み増加の防止は不十分になる可能性がある。
特開2007−258084号公報
本発明の目的は、充放電サイクルの繰返しに伴う電池の膨れ、負極活物質層の変形や破損などの発生が確実に防止され、充放電サイクル特性に優れ、耐用寿命が長く、かつ高容量および高出力を有するリチウムイオン二次電池を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究過程で、特許文献1において、初回充放電時の加圧だけでは電池の膨れが十分に防止されない原因について考察した。特許文献1の実施例では、合金系負極活物質である珪素粉末と結着剤である熱可塑性ポリイミドとを含有する、厚さ数十μmの負極活物質層が使用されている。そしてこの負極活物質層における、珪素粉末および熱可塑性ポリイミドの含有割合は重量比で90:10であり、結着剤を含有する一般的な負極活物質層に比べると、結着剤の含有割合がかなり高率である。
一方、熱可塑性ポリイミドは耐熱性および機械的強度の高いエンジニアリングプラスチックではあるが、電子部品などにおいてフレキシブル基板の材料として用いられ、厚さ数十μm程度では柔軟性があり、ある程度の変形が可能である。したがって、初回充放電を加圧下に行っても、負極活物質層に高率で含有される熱可塑性ポリイミドが変形して、珪素粉末の膨張および収縮を吸収する緩衝材として機能していると考えられる。その結果、初回充放電時の加圧が十分な効果を示さず、充放電サイクル数が増加するにつれて珪素粉末の膨張および収縮が大きくなり、変形の度合ひいては電池の膨れが大きくなるものと推測される。
本発明者らは、上記のような知見に基づいてさらに研究を進めた。そして、実質的に合金系負極活物質からなる薄膜状負極活物質層を用い、かつ電極群を捲回型から積層型に変更する場合には、初回の充放電時のみに電極群の厚み方向への加圧を行うだけで、合金系負極活物質の膨張および収縮に伴う電極の変形および電池の膨れが抑制されることを見出した。本発明者らは、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、リチウムを吸蔵放出可能な正極活物質を含有する正極活物質層および正極集電体を備える正極と、セパレータと、合金系負極活物質を含有する薄膜状負極活物質層および負極集電体を備える負極とを厚み方向に重ね合わせた単位電極を、セパレータを介して2以上積層した積層型電極群を含み、初回の充放電が加圧下に行われるリチウムイオン二次電池に係る。
薄膜状負極活物質層は合金系負極活物質を含有し、かつ蒸着、化学的気相成長またはスパッタリングにより形成されていることが好ましい。
初回の充放電は1.0×104〜5.0×106N/m2の加圧下に行われることが好ましい。
単位電極の積層数は2〜100であることが好ましい。
単位電極の引張強度が3N/mm以上であり、かつ引張伸び率が0.05%以上であることが好ましい。
薄膜状負極活物質層の膜厚は3〜30μmであることが好ましい。
薄膜状負極活物質層は、合金系負極活物質を含有しかつ負極集電体表面から外方に延びるように形成される複数の柱状体を含むことが好ましい。
合金系負極活物質は、珪素、珪素酸化物、珪素窒化物、珪素含有合金、珪素化合物、錫、錫酸化物、錫含有合金および錫化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
また本発明は、単位電極作製工程、電極群作製工程および初回充放電工程を含み、
単位電極作製工程は、リチウムを吸蔵放出可能な正極活物質を含有する正極活物質層および正極集電体を備える正極と、セパレータと、合金系負極活物質を含有する薄膜状負極活物質層および負極集電体を備える負極とをこの順番で厚み方向に重ね合わせて単位電極を作製し、
電極群作製工程は、単位電極と単位電極との間にセパレータを介在させて、2以上の単位電極を積層して積層型電極群を作製し、
初回充放電工程は、積層型電極群を加圧しながら初回の充放電を行なうリチウムイオン二次電池の製造方法に係る。
本発明によれば、充放電により膨張および収縮を繰り返す合金系負極活物質を用いるにもかかわらず、充放電を長期的に繰り返しても、電池の膨れなどが発生し難くなり、信頼性が高く、充放電サイクル特性の低下が少なく、かつ耐用寿命の長いリチウムイオン二次電池が得られる。しかも、本発明のリチウムイオン二次電池は、合金系負極活物質を用いているので、従来のリチウムイオン二次電池に比べて高容量および高出力である。
本発明のリチウムイオン二次電池は、(1)正極、セパレータおよび負極をこの順番で重ね合わせた電極を、セパレータを介して複数個積層した積層型電極群を用いること、ならびに(2)初回の充放電を加圧下に行うことを特徴する。
本発明において、上記したような優れた効果が得られる理由は十分明らかではないが、次のように推測される。
すなわち本発明では、実質的に合金系負極活物質のみからなる薄膜状負極活物質層(以下「合金系活物質層」とする)を使用する。合金系活物質層は、たとえば、蒸着、化学的気相成長、スパッタリングなどにより形成されるので、合金系負極活物質と共に結着剤を含有する負極活物質層(以下「結着剤系活物質層」とする)よりも、膜厚を小さくし、かつ全体的に均一な膜厚にすることができる。これにより、合金系負極活物質層の一部に大きな応力が発生し、集電体ひいては電極全体の変形、合金系負極活物質層の集電体からの剥離などを抑制できるものと推測される。
また、本発明の合金系活物質層は、合金系負極活物質の膨張および収縮を吸収する緩衝材になる結着剤を含有していない。なお、合金系活物質層はセパレータを介して正極活物質層に対向し、結着剤と同様の柔軟性を有するセパレータに接触している。しかしながら、セパレータは膜厚が薄く、しかも、結着剤含有率が通常5重量%未満でありかつ表面硬度が比較的高い正極活物質層に接触しているので、加圧時に合金系負極活物質の膨張および収縮を吸収する緩衝材として機能することはほとんどない。
このような合金系活物質層に対して加圧下に初回の充放電を行うと、合金系活物質層の膜厚が均一であることから、合金系活物質層全体にほぼ均一な圧力が付加される。このとき、合金系負極活物質は充電によりリチウムイオンを吸蔵して膨張するが、厚み方向に加圧されているので、厚み方向への膨張が制限された状態で、合金系負極活物質の最大膨張時の形状がほぼ定められる。もちろん、充放電の繰返しにより膨張量は若干増加するが、電池の耐用期間全般において、初回の充放電時に定められた最大膨張時の形状が維持されるものと推測される。したがって、充放電を繰り返しても、電池の膨れが大きくなるのを抑制できる。
なお、合金系活物質層を含む捲回型電極では、平板状に捲回しても、幅方向の両端に屈曲部分(以下「R部」とする)が存在する。このような捲回型電極を加圧すると、R部において合金系活物質層に付加される圧力が不均一になるおそれがある。また、R部が固定されている事により、加圧充放電時に合金系負極活物質の膨張収縮が不均一になり、電極変形が生じる可能性がある。したがって、本発明では、合金系活物質層を含む積層型電極に対して初回充放電時に加圧を行うことにより、電池の膨れが抑制され、充放電サイクル特性の低下が少ないリチウムイオン二次電池を得ることに成功している。
本発明のリチウムイオン二次電池は、たとえば、積層型電極群、正極リード、負極リード、外装ケースおよび非水電解質を含む。
積層型電極群は、セパレータを介して単位電極を積層したものであり、単位電極は、後記するように、正極、セパレータおよび負極を含む。単位電極の積層数は好ましくは2〜100、さらに好ましくは4〜20である。積層数が2未満では、十分な容量および出力を有する電池が得られないおそれがある。一方、積層数が100を超えると、電池の厚さが大きくなり過ぎ、充放電の繰返しに伴う電池の膨れが顕著になるとともに、電池を使用する電子機器の種類が制限される。
また、単位電極は、引張強度が3N/mm以上かつ引張伸び率が0.05%以上であることが好ましく、引張強度が6N/mm以上かつ引張伸び率が0.5%以上であることがさらに好ましい。電極の引張強度および引張伸び率を前記範囲に設定することにより、電池の膨れがさらに抑制され、単位電極の積層数の設計自由度が増す。引張強度および引張伸び率の少なくとも一方が前記範囲を下回ると、電池の膨れをさらに抑制する効果が小さくなる。
なお、本明細書において、単位電極の引張強度および引張伸び率は、次のようにして測定される。引張強度はJIS Z2241に従って測定する。ここでいう引張強度は、以下の式から算出される。
引張強度(N/mm)=集電体の断面積当りの破断強度(N/mm2)×集電体の厚み(mm)
また、引張伸び率はJIS C 2318に従い、次のようにして測定する。単位電極を切断して15mm×25mmの試料片を作成する。この試料片を引張試験機に装着し、引張速度5mm/分で長さ方向に引っ張る。そして、試料片の長さ(25mm)に対する試料が破断した際の伸びの百分率として、引張伸び率(%)を算出する。
単位電極は、前記したように、正極、セパレータおよび負極を含む。
正極は、正極集電体と正極活物質層とを含む。正極集電体には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属材料または導電性樹脂からなる多孔性または無孔の導電性基板が挙げられる。多孔性導電性基板としては、たとえば、メッシュ体、ネット体、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群成形体(不織布など)などが挙げられる。無孔の導電性基板としては、たとえば、箔、シート、フィルムなどが挙げられる。導電性基板の厚みは特に制限されないが、通常は1〜100μm、好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは50〜50μm、特に好ましくは10〜30μmである。
正極活物質層は、正極集電体の厚み方向の片方または両方の表面に設けられ、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極活物質を含有する。さらに正極活物質層は正極活物質とともに、導電剤、結着剤などを含んでもよい。
正極活物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リチウム含有複合金属酸化物、オリビン型リチウム塩、カルコゲン化合物、二酸化マンガンなどが挙げられる。リチウム含有複合金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物または該金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。ここで、異種元素としては、たとえば、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bなどが挙げられ、Mn、Al、Co、Ni、Mgなどが好ましい。異種元素は1種でもよくまたは2種以上でもよい。
これらの正極活物質の中でも、リチウム含有複合金属酸化物を好ましく使用できる。リチウム含有複合金属酸化物の具体例としては、たとえば、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-y2、LixCoy1-yz、LixNi1-yyz、LixMn24、LixMn2-yy4、LiMPO4、Li2MPO4F(前記各式中、MはNa、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、VおよびBよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。x=0〜1.2、y=0〜0.9、z=2.0〜2.3である。)、などが挙げられる。ここで、リチウムのモル比を示すx値は、充放電により増減する。
また、オリビン型リチウム塩としては、たとえば、LiFePO4などが挙げられる。カルコゲン化合物としては、たとえば、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどが挙げられる。正極活物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
導電剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、天然黒鉛、人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、フェニレン誘導体などの有機導電性材料などが挙げられる。導電剤は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。
結着剤としても、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ヘキシル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ヘキシル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、変性アクリルゴム、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
また、2種以上のモノマー化合物を含有する共重合体を結着剤として使用できる。モノマー化合物の具体例としては、たとえば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンなどが挙げられる。結着剤は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。
正極活物質層は、たとえば、正極合剤スラリーを正極集電体表面に塗布し、乾燥させ、必要に応じて圧延することにより形成できる。正極合剤スラリーは、正極活物質および必要に応じて導電剤、結着剤などを有機溶媒に溶解または分散させることにより調製できる。有機溶媒としては、たとえば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアミン、アセトン、シクロヘキサノンなどを使用できる。
正極合剤スラリーが正極活物質、導電剤および結着剤を含有する場合、これらの3成分の使用割合は特に制限されないが、好ましくは、これら3成分の使用合計量に対して、正極活物質80〜98重量%、導電剤1〜10重量%および結着剤1〜10重量%の範囲から適宜選択し、合計量が100重量%になるように使用すればよい。正極活物質層の厚みは各種条件に応じて適宜選択されるが、たとえば、正極活物質層を正極集電体の両面に設ける場合は、正極活物質層の合計厚みは50〜200μm程度が好ましい。
負極は、図示しない負極集電体と負極活物質層とを含む。負極集電体には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ステンレス鋼、ニッケル、銅、銅合金などの金属材料または導電性樹脂からなる多孔性または無孔の導電性基板が挙げられる。多孔性導電性基板としては、たとえば、メッシュ体、ネット体、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群成形体(不織布など)などが挙げられる。無孔の導電性基板としては、たとえば、箔、シート、フィルムなどが挙げられる。多孔性または無孔の導電性基板の厚みは特に制限されないが、通常は1〜100μm、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは5〜40μm、特に好ましくは5〜30μmである。
負極活物質層は、合金系負極活物質を主成分として含有する。合金系負極活物質としては、公知のものを使用でき、たとえば、珪素、珪素酸化物、珪素窒化物、珪素含有合金、珪素化合物、錫、錫酸化物、錫含有合金、錫化合物などが挙げられる。
珪素酸化物としては、たとえば、組成式:SiOa(0.05<a<1.95)で表される酸化珪素が挙げられる。珪素窒化物としては、たとえば、組成式:SiNb(0<b<4/3)で表される窒化珪素が挙げられる。珪素含有合金としては、たとえば、珪素とFe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Cu、Zn、Ge、In、SnおよびTiよりなる群から選ばれる1または2以上の元素を含む合金が挙げられる。珪素化合物としては、たとえば、珪素、珪素酸化物、珪素窒化物または珪素含有合金に含まれる珪素の一部がB、Mg、Ni、Ti、Mo、Co、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Nb、Ta、V、W、Zn、C、NおよびSnよりなる群から選ばれる1または2以上の元素で置換された化合物が挙げられる。
錫酸化物としては、たとえば、SnO2、組成式:SnOd(0<d<2)で表される酸化珪素などが挙げられる。錫含有合金としては、たとえば、Ni−Sn合金、Mg−Sn合金、Fe−Sn合金、Cu−Sn合金、Ti−Sn合金などが挙げられる。錫化合物としては、たとえば、SnSiO3、Ni2Sn4、Mg2Snなどが挙げられる。
これらの中でも、珪素、錫、珪素酸化物、錫酸化物などが好ましく、珪素、珪素酸化物などが特に好ましい。合金系負極活物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
薄膜状負極活物質層は、好ましくは、スパッタリング法、蒸着法、化学的気相成長(CVD)法などの公知の薄膜形成法に従って、負極集電体の表面に形成できる。これらの方法で形成される薄膜状負極活物質層は、合金系負極活物質の含有率がほぼ100%であり、高容量化および高出力化が可能になる。また、これらの方法を採用する場合、負極活物質層の厚みひいては電池の厚みを従来よりも薄くできるので、たとえば、携帯用電子機器の小型化、薄型化への対応が容易である。
薄膜状負極活物質層の厚みは、好ましくは3〜30μm、さらに好ましくは5〜20μmである。薄膜状負極活物質層の厚みを前記範囲に設定することにより、薄膜状負極活物質の厚みの均一化がさらに容易になり、電池の膨れを抑制する効果が一層向上する。
また、本発明では、薄膜状負極活物質層の表面に、さらにリチウム金属層を形成してもよい。このとき、リチウム金属の量は、初回充放電時に薄膜状負極活物質層に蓄えられる不可逆容量に相当する量とすればよい。リチウム金属層は、たとえば、蒸着などによって形成できる。
セパレータは、正極と負極との間に設けられる。セパレータには、所定のイオン透過度、機械的強度、絶縁性などを併せ持つシート状物またはフィルム状物が用いられる。セパレータの具体例としては、たとえば、微多孔膜、織布、不織布などの、多孔性のシート状物またはフィルム状物が挙げられる。微多孔膜は単層膜および多層膜(複合膜)のいずれでもよい。単層膜は1種の材料からなる。多層膜(複合膜)は1種の材料からなる単層膜の積層体または異なる材料からなる単層膜の積層体である。
セパレータの材料には各種樹脂材料を使用できるが、耐久性、シャットダウン機能、電池の安全性などを考慮すると、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが好ましい。なお、シャットダウン機能とは、電池の異常発熱時に貫通孔が閉塞し、それによりイオンの透過を抑制し、電池反応を遮断する機能である。必要に応じて、微多孔膜、織布、不織布などを2層以上積層してセパレータを構成してもよい。
セパレータの厚さは一般的には5〜300μmであるが、好ましくは5〜40μm、より好ましくは10〜30μm、さらに好ましくは10〜25μmである。また、セパレータの空孔率は好ましくは30〜70%、より好ましくは35〜60%である。ここで空孔率とは、セパレータの体積に占める、セパレータ中に存在する細孔の総容積の比である。
正極リードは、一端が正極集電体に接続され、他端が図示しない外装ケースの開口からリチウムイオン二次電池の外部に導出されている。正極リードの材質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウムなどが挙げられる。負極リードは、一端が負極集電体に接続され、他端が図示しない外装ケースの開口からリチウムイオン二次電池の外部に導出されている。負極リードの材質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ニッケル、銅などが挙げられる。
外装ケースには、たとえば、金属製ケース、積層ラミネートフィルム製ケースなどを使用できる。外装ケースには、捲回型電極群、電解質などを外装ケース内部に収容するための開口が形成されている。ガスケットは、外装ケースの開口を封止するために用いられる封口部材である。ガスケットと共に他の一般的な封口部材を併用してもよい。ガスケット以外の封口部材で外装ケースの開口を封口してもよい。また、封口部材を使用せずに、外装ケースの開口を溶着などによって直接封止してもよい。
非水電解質は、リチウムイオン伝導性を有する電解質であり、主に積層型電極群に含浸される。非水電解質としては、たとえば、液状非水電解質、ゲル状非水電解質、固体状電解質(たとえば高分子固体電解質)などが挙げられる。
液状非水電解質は、溶質(支持塩)と非水溶媒とを含み、さらに必要に応じて各種添加剤を含む。溶質は通常非水溶媒中に溶解する。液状非水電解質は、たとえば、セパレータに含浸される。
溶質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、LiBCl4、ホウ酸塩類、イミド塩類などが挙げられる。
ホウ酸塩類としては、ビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ホウ酸リチウムなどが挙げられる。
イミド塩類としては、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム((CF3SO22NLi)、トリフルオロメタンスルホン酸ノナフルオロブタンスルホン酸イミドリチウム((CF3SO2)(C49SO2)NLi)、ビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミドリチウム((C25SO22NLi)などが挙げられる。溶質は1種を単独で用いてもよくまたは必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶質の非水溶媒に対する溶解量は、0.5〜2モル/Lの範囲内とすることが望ましい。
非水溶媒としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステルなどが挙げられる。環状炭酸エステルとしては、たとえば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)などが挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、たとえば、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)などが挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、たとえば、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)などが挙げられる。非水溶媒は1種を単独で用いてもよくまたは必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
添加剤としては、たとえば、充放電効率を向上させる材料、電池を不活性化させる材料などが挙げられる。充放電効率を向上させる材料は、たとえば、負極上で分解してリチウムイオン伝導性の高い被膜を形成し、充放電効率を向上させる。このような材料の具体例としては、たとえば、ビニレンカーボネート(VC)、4−メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4−エチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、4−プロピルビニレンカーボネート、4,5−ジプロピルビニレンカーボネート、4−フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートおよびジビニルエチレンカーボネートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。なお、上記化合物は、その水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよい。
電池を不活性化させる材料は、たとえば、電池の過充電時に分解して電極表面に被膜を形成することによって電池を不活性化する。このような材料としては、たとえば、ベンゼン誘導体が挙げられる。ベンゼン誘導体としては、フェニル基と、フェニル基に隣接する環状化合物基とを含むベンゼン化合物が挙げられる。環状化合物基としては、たとえば、フェニル基、環状エーテル基、環状エステル基、シクロアルキル基、フェノキシ基などが好ましい。ベンゼン誘導体の具体例としては、たとえば、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。ベンゼン誘導体は1種を単独で使用できまたは2種以上を組み合わせて使用できる。ただし、ベンゼン誘導体の液状非水電解質における含有量は、非水溶媒100体積部に対して10体積部以下であることが好ましい。
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と液状非水電解質を保持する高分子材料とを含むものである。ここで用いる高分子材料は液状物をゲル化させ得るものである。高分子材料としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレートなどが挙げられる。
固体状電解質は、たとえば、溶質(支持塩)と高分子材料とを含む。溶質は前記で例示したものと同様のものを使用できる。高分子材料としては、たとえば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体などが挙げられる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、たとえば、次のようにして製造できる。
まず、正極と負極とを、その間にセパレータを介在させて重ね合わせ、単位電極を作製する。単位電極において、正極の正極集電体に正極リードの一端を接続し、負極の負極集電体に負極リードの一端を接続する。次に、単位電極と単位電極との間にセパレータを介在させて、2以上の単位電極を積層し、積層型電極群を作製する。この積層型電極群を外装ケースに挿入し、正極リードおよび負極リードの他端を外装ケースの外部に導出させるとともに、外装ケースの内部に非水電解質を注液する。この状態で、外装ケースの内部を真空減圧しながら開口を、溶着させることによって、初回充放電前の電池が得られる。
この電池に、加圧下に初回の充放電を行う。加圧方法は特に制限されず、たとえば、プレス加圧、静水圧加圧などが挙げられる。
プレス加圧では、主に、積層型電極群の厚み方向に圧力が付加される。プレス加圧に際しては、一般的なプレス加圧機を使用できる。圧力は、好ましくは1.0×104〜5.0×106N/m2である。圧力が1.0×104N/m2未満では、充放電の繰返しに伴う電池の膨れの発生を防止する効果が不十分になり、電池の膨れが発生し易くなるおそれがある。一方、圧力が5.0×106N/m2を超えると、場合によっては、活物質層の変形、集電体からの剥離などを引き起こし、電池の膨れ、内部短絡などが発生するおそれがある。プレス加圧は、好ましくは20〜60℃程度の温度下に行われ、0.5〜10時間程度で終了する。
静水圧加圧では、電池の全体に対して、ほぼ均一な圧力が付加される。静水圧加圧には、CIP(Cold Isostatic press)法、HIP(HotIsostaticpress)法、ホットプレス法などがある。CIP法では、たとえば、5〜50℃程度、好ましくは10〜30℃程度の温度下に行われる。HIP法は、たとえば、65℃以上の加熱下に行われる。これらの方法の中でも、加圧対象物が平板状または扁平状電池であること、簡易な装置を使用でき、被覆用被膜に耐熱性が要求されないことを考慮すると、CIP法が好ましい。被覆用被膜とは、加圧対象物の全体を覆う膜状物である。
より具体的には、静水圧加圧は、たとえば、リチウムイオン二次電池の表面を液体遮断性のある対象物被覆用被膜で覆い、これを静水圧加圧装置に装填して加圧することにより行われる。CIP法の場合、対象物被覆用被膜としては、たとえば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂材料、天然ゴム、イソプレンゴムなどのゴム材料を使用できる。対象物被覆用被膜は、たとえば、ディッピング法、真空パッキング法などにより、リチウムイオン二次電池の表面に形成できる。また、リチウムイオン二次電池を薄肉の金属カプセルに挿入し、真空中で該金属カプセルを密封すると共に電子ビーム溶接で密封し、これを静水圧加圧装置に装填し、加圧してもよい。金属製カプセルの材質としては、たとえば、銅、ステンレス鋼などが挙げられる。
静水圧加圧の圧力(加圧圧力)は、特に制限されないが、好ましくは1.0×104〜5.0×106N/m2である。圧力が1.0×104N/m2未満では、充放電の繰返しに伴う電池の膨れの発生を防止する効果が不十分になり、電池の膨れが発生し易くなるおそれがある。一方、圧力が5.0×106N/m2を超えると、場合によっては、活物質層の変形、集電体からの剥離などを引き起こし、電池の膨れ、内部短絡などが発生するおそれがある。また、大型の装置が必要になり、製造コストが高価になるという問題もある。静水圧加圧は、たとえば、5〜50℃程度、好ましくは10〜30℃程度の温度下および前記圧力下に行われ、0.5〜24時間程度で終了する。
充放電の条件は特に制限されないが、その一例を挙げれば、次の通りである。
加圧下の電池を、25℃環境温度において次の条件で充放電させる。まず、設計容量に対し、時間率1.0Cの定電流で電池電圧が4.2Vになるまで充電し、4.2Vの定電圧で時間率0.05Cの電流値に減衰させる定電圧充電を行い、その後、30分間休止させる。その後、時間率1.0Cの電流値で、電池電圧が3.0Vに低下するまで定電流で放電させる。
このように、積層型電極群を含むリチウムイオン二次電池に、加圧下に初回の充放電を行うことにより、本発明のリチウムイオン二次電池が得られる。
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池に含まれる単位電極1の構成を模式的に示す縦断面図である。図2は、図1に示す単位電極1に含まれる負極集電体22の構成を模式的に示す斜視図である。図3は、図1に示す単位電極1に含まれる負極12の構成を模式的に示す縦断面図である。図4は、薄膜状負極活物質層23を作製するための電子ビーム式蒸着装置30の構成を模式的に示す側面図である。
図1に示す単位電極1は、正極10、セパレータ11および負極12を含み、薄膜状負極活物質層23が、複数の柱状体26の集合体として形成されていることを特徴とする。柱状体26と柱状体26との間に、柱状体26の膨張および収縮を吸収する空間を設けることがさらに好ましい。このような構成により、初回充放電時の加圧により、柱状体26の最大膨張時の形状が定められる際に、セパレータ11および負極集電体22に対して余分な応力が付加し難くなり、柱状体26の最大膨張時の形状が揃い、電池の膨れを抑制する効果がより一層大きくなる。
正極10は、正極集電体20および正極活物質層21を含む。正極集電体20および正極活物質層21は、上記した正極集電体および正極活物質層と同様の構成を有している。
セパレータ11も、上記したセパレータと同様の構成を有している。
負極12は、負極集電体22と、負極活物質層23とを含む。
負極集電体22は、図2に示すように、厚み方向の両方またはいずれか一方の表面に、複数の凸部25が設けられていることを特徴とする。
凸部25は、負極集電体22の厚み方向の表面22a(以下単に「表面22a」とする)から、負極集電体22の外方に向けて延びる突起物である。凸部25の高さは、表面22aに対して垂直な方向において、表面22aから、凸部25の表面22aに対して最も遠い部分(最先端部分)までの長さである。凸部25の高さは特に制限はないが、好ましくは、その平均高さが3〜10μm程度になるように形成される。また、凸部25の表面22aに平行な方向における断面径も特に制限されないが、たとえば、1〜50μmである。
凸部25の平均高さは、たとえば、負極集電体22の厚み方向における集電体22の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、たとえば、100個の凸部25の高さを測定し、得られた測定値から平均値を算出することによって決定できる。凸部25も断面径も、凸部25の高さと同様にして測定できる。なお、複数の凸部25は全て同じ高さまたは同じ断面径に形成する必要はない。
凸部25は、その成長方向の先端部分にほぼ平面状の頂部を有する。成長方向とは、表面22aから負極集電体22の外方に延びる方向である。凸部25が先端部分に平面状の頂部を有することによって、凸部25と柱状体26との接合性が向上する。この先端部分の平面は、表面22aに対してほぼ平行であることが接合強度を高める上ではさらに好ましい。
凸部25の形状は、本実施の形態では、円形である。凸部25の形状とは、負極集電体22の表面22aとは反対側の表面が水平面と一致するように集電体22を載置し、鉛直方向上方から見た凸部25の形状である。なお、凸部25の形状は円形に限定されず、たとえば、多角形、楕円形などでもよい。多角形は、製造コストなどを考慮すると、3角形〜8角形が好ましい。さらには、平行四辺形、台形、ひし形などでもよい。
凸部25の個数、凸部25同士の間隔などは特に制限されず、凸部25の大きさ(高さ、断面径など)、凸部25表面に設けられる柱状体26の大きさなどに応じて適宜選択される。凸部25の個数の一例を示せば、1万〜1000万個/cm2程度である。また、隣り合う凸部25の軸線間距離が2〜100μm程度になるように、凸部25を形成するのが好ましい。
凸部25表面に、図示しない突起を形成してもよい。これによって、たとえば、凸部25と柱状体26との接合性が一層向上し、柱状体26の凸部25からの剥離、剥離伝播などがより確実に防止される。突起は、凸部25表面から凸部25の外方に突出するように設けられる。突起は、凸部25よりも大きさの小さいものが複数形成されてもよい。また、突起は、凸部25の側面に、周方向および/または凸部25の成長方向に延びるように形成されてもよい。また、凸部25がその先端部分に平面状の頂部を有する場合は、1または複数の、凸部25よりも小さな突起が頂部に形成されてもよく、さらに一方の方向に長く延びる1または複数の突起が頂部に形成されてもよい。
負極集電体22は、たとえば、金属シートなどに凹凸を形成する技術を利用して製造できる。具体的には、たとえば、凸部25の形状、寸法および配置に対応する凹部が、周面に形成されたロール(以下「凸部形成用ロール」とする)を使用する。金属シートとしては、たとえば、金属箔、金属フィルムなどが挙げられる。金属シートの片面に凸部25を形成する場合は、凸部形成用ロールと表面の平滑なロールとをそれぞれの軸線が平行になるように圧接させ、その圧接部分に金属シートを通過させて加圧成形すればよい。
また、金属シートの両面に凸部25を形成する場合は、2本の凸部形成用ロールをそれぞれの軸線が平行になるように圧接させ、その圧接部分に金属シートを通過させて加圧成形すればよい。ここで、ロールの圧接圧は金属シートの材質、厚み、凸部25の形状、寸法、加圧成形後の金属シートすなわち負極集電体22の厚みの設定値などに応じて適宜選択される。
凸部形成用ロールは、たとえば、セラミックロールの表面における所定位置に、凸部25の形状、寸法および配置に対応する凹部を形成することによって製造できる。ここで、セラミックロールとしては、たとえば、芯用ロールと、溶射層とを含むものが用いられる。芯用ロールには、たとえば、鉄、ステンレス鋼などからなるロールを使用できる。溶射層は、芯用ロール表面に、酸化クロムなどのセラミック材料を均一に溶射することによって形成される。溶射層に孔が形成される。孔の形成には、たとえば、セラミックス材料などの成形加工に用いられる一般的なレーザーを使用できる。
別形態の凸部形成用ロールは、芯用ロールと、下地層と、溶射層とを含む。芯用ロールはセラミックロールの芯用ロールと同じものである。下地層は、芯用ロール表面に形成される。下地層表面には、凸部25の形状、寸法および配置に対応する凹部が形成される。下地層に凹部を形成するには、たとえば、片面に凹部を有する樹脂シートを成形し、該樹脂シートの凹部が形成された面とは反対側の面を芯用ロール表面に巻き付けて接着すればよい。
樹脂シートを構成する合成樹脂としては機械的強度の高いものが好ましく、たとえば、不飽和ポリエステル、熱硬化性ポリイミド、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。溶射層は、酸化クロムなどのセラミック材料を下地層の表面の凹凸に沿うように溶射することによって形成される。したがって、下地層に形成される凹部は、溶射層の層厚を考慮して、設計寸法よりも溶射層の層厚分だけ大きめに形成される。
別形態の凸部形成用ロールは、芯用ロールと、超硬合金層とを含む。芯用ロールはセラミックロールの芯用ロールと同じものである。超硬合金層は芯用ロールの表面に形成され、炭化タングステンなどの超硬合金を含む。超硬合金層は、芯用ロールに、円筒状に形成した超硬合金を焼き嵌めするかまたは冷やし嵌めすることによって形成できる。超硬合金層の焼き嵌めとは、円筒状の超硬合金を暖めて膨張させ、芯用ロールに嵌めることである。また、超硬合金層の冷やし嵌めとは、芯用ロールを冷却して収縮させ、超硬合金の円筒に挿入することである。超硬合金層の表面には、たとえば、レーザー加工によって凸部25の形状、寸法および配置に対応する凹部が形成される。
別形態の凸部形成用ロールは、硬質鉄系ロールの表面に、たとえば、レーザー加工によって凸部25の寸法、形状および配置に対応する凹部が形成されたものである。硬質鉄系ロールは、たとえば、金属箔の圧延製造に用いられる。硬質の鉄系ロールとしては、ハイス鋼、鍛鋼などからなるロールが挙げられる。ハイス鋼には、モリブデン、タングステン、バナジウムなどの金属が添加し、熱処理して硬度を高めた鉄系材料である。鍛鋼は、よう鋼を鋳型に鋳込んで造られた鋼塊またはその鋼塊から製造された鋼片を加熱し、プレスおよびハンマーで鍛造しまたは圧延および鍛造することにより鍛錬成形し、これを熱処理することによって製造される鉄系材料である。
さらに、凸部25表面の1または複数の突起は、たとえば、フォトレジスト法により凸部25表面にレジストパターンを形成し、該パターンに従って金属めっきを施すことによって形成できる。また、凸部25を設計寸法よりも大きい寸法で形成しておき、エッチング法により凸部25表面の所定箇所を除去することによっても、突起を形成できる。なお、凸部25自体の形成にも、フォトレジスト法とめっき法とを組み合わせた方法が利用できる。
負極活物質層23は、たとえば、図1に示すように、凸部25表面から負極集電体22の外方に向けて延びる複数の柱状体26の集合体として形成される。通常、1つの凸部25に、1つの柱状体26が形成される。柱状体26は、負極集電体22の表面22aに対して垂直な方向または前記垂直な方向に対して傾きを有して延びる。また、複数の柱状体26は、隣り合う柱状体26との間に間隙を有して互いに離隔しているので、充放電の際の膨張および収縮による応力が緩和され、負極活物質層23が凸部25から剥離し難くなり、負極集電体22の変形も起こり難い。
柱状体26は、図3に示すように、8個の柱状塊26a、26b、26c、26d、26e、26f、26g、26hを積層した柱状物として形成されるのがさらに好ましい。なお、本実施形態では8個の柱状塊を積層するが、それに限定されず、2個以上の任意の数の柱状塊を積層して柱状体を形成できる。柱状体26の形成には、まず、凸部25の頂部およびそれに続く側面の一部を被覆するように柱状塊26aを形成する。次に、凸部25の残りの側面および柱状塊26aの頂部表面の一部を被覆するように柱状塊26bを形成する。すなわち、図3において、柱状塊26aは凸部25の頂部を含む一方の端部に形成され、柱状塊26bは部分的には柱状塊26aに重なるが、残りの部分は凸部25の他方の端部に形成される。
さらに、柱状塊26aの頂部表面の残りおよび柱状塊26bの頂部表面の一部を被覆するように柱状塊26cが形成される。すなわち、柱状塊26cは主に柱状塊26aに接するように形成される。さらに、柱状塊26dは主に柱状塊26bに接するように形成される。以下同様にして、柱状塊26e、26f、26g、26hを交互にジグザグに積層することによって、柱状体26が形成される。なお、本実施形態では、8個の柱状塊が積層されるが、それに限定されず、2個以上の任意の数の柱状塊を積層できる。
柱状体26は、たとえば、図4に示す電子ビーム式蒸着装置30によって形成できる。図4では、蒸着装置30内部の各部材も実線で示す。蒸着装置30は、チャンバー31、第1の配管32、固定台33、ノズル34、ターゲット35、図示しない電子ビーム発生装置、電源36および図示しない第2の配管を含む。チャンバー31は内部空間を有する耐圧性の容器状部材であり、その内部に第1の配管32、固定台33、ノズル34およびターゲット35を収容する。第1の配管32は、一端がノズル34に接続され、他端がチャンバー31の外方に延びて図示しないマスフローコントローラを介して図示しない原料ガスボンベまたは原料ガス製造装置に接続される。原料ガスとしては、たとえば、酸素、窒素などが挙げられる。第1の配管32は、ノズル34に原料ガスを供給する。
固定台33は、回転自在に支持される板状部材であり、その厚み方向の一方の面に負極集電体22を固定できるように設けられる。固定台33は、図4における実線で示される位置と一点破線で示される位置との間を回転する。実線で示される位置は、固定台33の負極集電体22を固定する側の面が鉛直方向下方のノズル34を臨み、固定台33と水平方向の直線とが成す角の角度がα°である位置である。一点破線で示される位置は、固定台33の負極集電体22を固定する側の面が鉛直方向下方のノズル34を臨み、固定台33と水平方向の直線とが成す角の角度が(180−α)°である位置である。角度α°は、形成しようとする柱状体26の寸法などに応じて適宜選択できる。
ノズル34は、鉛直方向において固定台33とターゲット35との間に設けられ、第1の配管32の一端が接続されている。ノズル34は、ターゲット35から鉛直方向上方に上昇してくる合金系負極活物質の蒸気と第1の配管32から供給される原料ガスとを混合し、固定台33表面に固定される負極集電体22表面に供給する。ターゲット35は合金系負極活物質またはその原料を収容する。電子ビーム発生装置は、ターゲット35に収容される合金系負極活物質またはその原料に電子ビームを照射して加熱し、これらの蒸気を発生させる。電源36はチャンバー31の外部に設けられて、電子ビーム発生装置に電気的に接続され、電子ビームを発生させるための電圧を電子ビーム発生装置に印加する。第2の配管は、チャンバー31内の雰囲気になるガスを導入する。なお、蒸着装置30と同じ構成を有する電子ビーム式蒸着装置が、たとえば、アルバック(株)から市販されている。
電子ビーム式蒸着装置30によれば、まず、負極集電体22を固定台33に固定し、チャンバー31内部に酸素ガスを導入する。この状態で、ターゲット35において合金系負極活物質またはその原料に電子ビームを照射して加熱し、その蒸気を発生させる。本実施形態では、合金系負極活物質として珪素を使用する。発生した蒸気は鉛直方向上方に上昇し、ノズル34から導入した、原料ガスと混合された後、さらに上昇し、固定台33に固定された負極集電体22の表面に供給され、図示しない凸部25表面に、珪素と酸素とを含む層が形成される。このとき、固定台33を実線の位置に配置することによって、凸部25表面に図3に示す柱状塊26aが形成される。次に、固定台33を一点破線の位置に角変位させることによって、図3に示す柱状塊26bが形成される。このように固定台33の位置を交互に回転させることによって、図3に示す8つの柱状塊26a、26b、26c、26d、26e、26f、26g、26hの積層体である柱状体26が形成される。
なお、合金系負極活物質がたとえばSiOa(0.05<a<1.95)で表される珪素酸化物である場合、柱状体26の厚み方向に酸素の濃度勾配が出来るように、柱状体26を形成してもよい。具体的には、負極集電体22に近接する部分で酸素の含有率を高くし、負極集電体22から離反するに従って、酸素含有量を減らすように構成すればよい。これによって、凸部25と柱状体26との接合性をさらに向上させることができる。
なお、ノズル34から原料ガスを供給しない場合は、珪素または錫単体を主成分とする柱状体26が形成される。
本発明のリチウムイオン二次電池は、従来のリチウムイオン二次電池と同様の用途に使用でき、特にパーソナルコンピュータ、携帯電話、モバイル機器、携帯用情報端末、携帯用ゲーム機器などの携帯用電子機器の電源として好適に使用できる。
以下に実施例および比較例ならびに試験例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
(1)正極活物質の作製
NiSO4水溶液に、Ni:Co:Al=7:2:1(モル比)になるようにコバルトの硫酸塩およびアルミニウムの硫酸塩を加えて金属イオン濃度2mol/Lの水溶液を調製した。この水溶液に撹拌下、2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を徐々に滴下して中和することにより、Ni0.7Co0.2Al0.1(OH)2で示される組成を有する三元系の沈殿物を共沈法により生成させた。この沈殿物をろ過により分離し、水洗し、80℃で乾燥し、複合水酸化物を得た。得られた複合水酸化物の平均粒径を粒度分布計(商品名:MT3000、日機装(株)製)にて測定した結果、平均粒径10μmであった。
この複合水酸化物を大気中にて900℃で10時間加熱して熱処理を行い、Ni0.7Co0.2Al0.1Oで示される組成を有する三元系の複合酸化物を得た。ここでNi、CoおよびAlの原子数の和とLiの原子数とが等量になるように水酸化リチウム1水和物を加え、大気中にて800℃で10時間加熱して熱処理を行うことにより、LiNi0.7Co0.2Al0.12で示される組成を有するリチウムニッケル含有複合金属酸化物を得た。このリチウムニッケル含有複合金属酸化物を粉末X線回折にて分析した結果、単一相の六方晶層状構造であると共に、CoおよびAlが固溶していることが確認された。こうして、二次粒子の平均粒径が10μm、BET法による比表面積が0.45m2/gの正極活物質を得た。
(2)正極の作製
上記で得られた正極活物質の粉末100g、アセチレンブラック(導電剤)3g、ポリフッ化ビニリデン粉末(結着剤)3gおよびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)50mlを充分に混合して正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストを厚み20μmのアルミニウム箔(正極集電体)の片面に塗布し、乾燥した後、もう一方の面にペーストを塗布して、乾燥した。その後、圧延して、正極活物質層を形成した。50mm×79mmのサイズで、端部に10mm角のリード取り付け部を設けるように正極を切り出した。得られた正極において、アルミニウム箔の片面に担持された正極活物質層は、厚み60μmであった。リード取り付け部の活物質層を剥離し、正極リードを超音波溶接により取り付けた。
(3)負極の作製
図5は、負極活物質層を形成するための蒸着装置40の構成を模式的に示す側面図である。蒸着装置40は、真空チャンバー41、集電体搬送手段42、原料ガス供給手段48、プラズマ化手段49、シリコンターゲット50a、50b、遮蔽板51および図示しない電子ビーム加熱手段を含む。真空チャンバー1は減圧可能な内部空間を有する耐圧性容器であり、その内部空間に、集電体搬送手段42、原料ガス供給手段48、プラズマ化手段49、シリコンターゲット50a、50b、遮蔽板51および電子ビーム加熱手段を収容する。
集電体搬送手段42は、巻き出しローラ43、キャン44、巻き取りローラ45および搬送ローラ46、47を含む。巻き出しローラ43、キャン44および搬送ローラ46、47は、それぞれ軸心回りに回転自在に設けられる。巻き出しローラ43には長尺状の負極集電体55が捲回されている。キャン44は他のローラよりも大径であり、その内部に図示しない冷却手段を備えている。負極集電体55がキャン44の表面を搬送される際に、負極集電体55も冷却される。これによって、合金系負極活物質の蒸気が冷却して析出し、薄膜が形成される。
巻き取りローラ45は図示しない駆動手段によってその軸心回りに回転駆動可能に設けられている。巻き取りローラ45には負極集電体55の一端が固定され、巻き取りローラ45が回転することによって、負極集電体55が巻き出しローラ43から搬送ローラ46、キャン44および搬送ローラ47を介して搬送される。そして、負極集電体55の表面に合金系負極活物質の薄膜が形成された負極56が巻き取りローラ45に巻き取られる。
原料ガス供給手段48は、珪素または錫の酸化物、窒化物などを主成分とする薄膜を形成する場合に、酸素、窒素などの原料ガスを真空チャンバー41内に供給する。プラズマ化手段49は、原料ガス供給手段48によって供給される原料ガスをプラズマ化する。シリコンターゲット50a、50bは、珪素を含む薄膜を形成する場合に用いられる。遮蔽版51は、キャン43の鉛直方向下方およびシリコンターゲット50a、50bの鉛直方向上方において、水平方向に移動可能に設けられている。遮蔽版51は、負極集電体55表面の薄膜の形成状況に応じて、その水平方向の位置が適宜調整される。電子ビーム加熱手段は、シリコンターゲット50a、50bに電子ビームを照射して加熱し、珪素の蒸気を発生させる。
蒸着装置40を用いて、下記の条件で、負極集電体55表面に、厚さ8μmの負極活物質層(ここではシリコン薄膜)を形成した。
真空チャンバー41内の圧力:8.0×10-5Torr
負極集電体55:厚み35μmの電解銅箔(古河サーキットフォイル(株)製)
負極56の巻き取りローラ45による巻き取り速度(負極集電体55の搬送速度):2cm/分
原料ガス:供給せず。
ターゲット50a、50b:純度99.9999%のシリコン単結晶(信越化学工業(株)製)
電子ビームの加速電圧:−8kV
電子ビームのエミッション:300mA
得られた負極56を55mm×85mmで端部に10mm角のリード取り付け部を設けるように裁断し、負極板を作製した。この負極板について、負極活物質層(シリコン薄膜)の表面にリチウム金属を蒸着した。リチウム金属を蒸着することによって、負極活物質層に初回充放電時に蓄えられる不可逆容量に相当するリチウムを補填した。リチウム金属の蒸着は、アルゴン雰囲気下にて、抵抗加熱蒸着装置((株)アルバック製)を用いて行った。抵抗加熱蒸着装置内のタンタル製ボートにリチウム金属を装填し、負極活物質層がタンタル製ボートを臨むように負極を固定し、アルゴン雰囲気内にて、タンタル製ボートに50Aの電流を通電して10分間蒸着を行った。これによって、本発明で使用する負極板を得た。
(4)非水電解質の調製
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:1の割合で含む混合溶媒に、LiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。
(5)リチウムイオン二次電池の作製
ポリエチレン微多孔膜(セパレータ、商品名:ハイポア、厚さ20μm、旭化成(株)製)を介して正極活物質層と負極活物質層とが対向するように、正極板、ポリエチレン微多孔膜および負極板を重ね合わせて単位電極を作製した。単位電極と単位電極との間にセパレータ(ハイポア)を介在させて、単位電極9枚を積層し、積層型電極群を作製した。この積層型電極群にポリプロピレン(PP)樹脂からなるタブを有するアルミニウム製正極リードおよびニッケル製負極リードを接続した後、アルミニウムラミネートシートからなる外装ケースに挿入し、封口部にPPタブが配置されるようにして、熱溶着させた。その後、非水電解質を注液し、外装ケース内部を真空減圧しながら、外装ケースの開口を溶着させて、リチウムイオン二次電池を作製した。
(6)加圧下での初回充放電
上記で得られたリチウムイオン二次電池に、プレス加圧を行いながら、初回の充放電を行い、本発明のリチウムイオン二次電池を作製した。加圧条件は、温度25℃、圧力2×105N/m2あった。なお、プレス機の加圧子の加圧面は、捲回型電極群の厚み方向の側面全面によりも面積が大きいものを用い、厚み方向の側面全面を均一に加圧した。また、初回充放電条件は、次に示す通りである。
25℃環境温度において、設計容量(1200mAh)に対し、時間率0.2C(240mA)の定電流で電池電圧が4.2Vになるまで充電し、4.2Vの定電圧で時間率0.05C(60mA)の電流値に減衰させる定電圧充電を行い、その後、20分間休止させた。その後、時間率0.2C(240mA)の電流値で、電池電圧が2.5Vに低下するまで定電流で放電させた。充放電が終了した後に、加圧を開放した。
(実施例2)
負極の作製方法を次のように変更する以外は、実施例1と同様にして本発明のリチウムイオン二次電池を作製した。
(負極の作製)
径50mmの鉄製ロール表面に酸化クロムを溶射して厚さ100μmのセラミック層を形成した。このセラミック層の表面に、レーザー加工により、直径12μm、深さ8μmの円形の凹部である孔を形成し、凸部形成用ロールを作製した。この孔は、隣り合う孔との軸線間距離が20μmである最密充填配置とした。この孔の底部は中央部がほぼ平面状であり、底部端部と孔の側面とが繋がる部分が丸みを帯びた形状であった。
一方、全量に対して0.03重量%の割合でジルコニアを含有する合金銅箔(商品名:HCL−02Z、厚さ20μm、日立電線(株)製)を、アルゴンガス雰囲気中、600℃で30分間加熱し、焼き鈍しを行った。この合金銅箔を、2本の凸部形成用ロールを圧接させた圧接部に線圧2t/cmで通過させて、合金銅箔の両面を加圧成形し、本発明で使用する負極集電体を作製した。得られた負極集電体の厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、負極集電体の表面には複数の凸部が形成されていた。凸部の平均高さは約8μmであった。
負極活物質層は、図4に示す電子ビーム式蒸着装置30と同じ構造を有する市販の蒸着装置((株)アルバック製)を用いて、負極集電体表面に形成された凸部に形成した。蒸着における条件は下記の通りである。なお、100mm×185mmの負極集電体を固定した固定台が、水平方向の直線に対する角度α=60°の位置(図4に示す実線の位置)と、角度(180−α)=120°の位置(図4に示す一点破線の位置)との間を交互に角変位するように設定した。これにより、図3に示すような柱状塊が8層積層された複数の柱状体を形成した。この柱状体は凸部の頂部および頂部近傍の側面から、凸部の延びる方向に成長していた。
負極活物質原料(蒸発源):ケイ素、純度99.9999%、(株)高純度化学研究所製
ノズルから放出される酸素:純度99.7%、日本酸素(株)製、
ノズルからの酸素放出流量:80sccm
角度α:60°
電子ビームの加速電圧:−8kV
エミッション:500mA
蒸着時間:3分
複数の柱状体の集合体として形成された負極活物質層の厚みは16μmであった。負極活物質層の厚みは、負極の厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、凸部表面に形成された負極活物質層10個について、凸部頂点から負極活物質層頂点までの長さそれぞれを求め、得られた10個の測定値の平均値として求められた。また、負極活物質層に含まれる酸素量を燃焼法により定量したところ、負極活物質層を構成する化合物の組成がSiO0.5であることが判った。上記方法で活物質層を形成した反対側の面に対して、上記方法と同様の方法で活物質を形成し、これにより集電体の両面に活物質層を形成した負極を得た。
次に、負極活物質層の表面にリチウム金属を蒸着した。リチウム金属を蒸着することによって、負極活物質層に初回充放電時に蓄えられる不可逆容量に相当するリチウムを補填した。リチウム金属の蒸着は、アルゴン雰囲気下にて、抵抗加熱蒸着装置((株)アルバック製)を用いて行った。抵抗加熱蒸着装置内のタンタル製ボートにリチウム金属を装填し、負極活物質層がタンタル製ボートを臨むように負極を固定し、アルゴン雰囲気内にて、タンタル製ボートに50Aの電流を通電して10分間蒸着を行った。この蒸着も、負極の両面に実施した。この負極を55×85mmになるように裁断した。
(比較例1)
プレス加圧を行わない以外は、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
(比較例2)
プレス加圧を行わない以外は、実施例2と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製した。
(電池容量評価)
実施例1〜2および比較例1〜2のリチウムイオン二次電池について、以下の条件で充放電サイクルを3回繰返し、3回目の放電容量を求めた。結果を表1に示す。
定電流充電:240mA、終止電圧4.2V。
定電圧充電:4.2V、終止電流60mA、休止時間20分。
定電流放電:電流240mA、終止電圧2.5V、休止時間20分。
(充放電サイクル特性)
実施例1〜2および比較例1〜2のリチウムイオン二次電池について、25℃環境下において800mAで4.2Vまで定電流充電した後、800mAで2.5Vまで定電流放電する工程を繰り返した。そして、50サイクル後に、240mAで4.2V〜2.5Vの範囲で定電流充放電を行い、0.2C放電での放電容量を調べた。そして、初期の0.2C放電容量に対する50サイクル後の0.2C放電容量の比をサイクル容量維持率(%)として求めた。結果を表1に示す。
(電池厚み変化)
初期充電後に電池の厚みを測定して、充電前後の電池厚みを計測した。電池厚み増加率を算出し、電極群の変形有無を確認した。
Figure 2010073571
表1から、本発明における積層型電池を用いて加圧下で充放電を行うことにより、充放電容量やサイクル特性などの電池特性を損なうことなく、充放電サイクルを繰り返した後の電池厚みの増加が抑制されることが確認された。充放電サイクルを繰り返した後の電池厚みは電極群の挫屈により増加すると考えられる。したがって、本発明により電極群の変形を抑制できることが明らかである。
本発明のリチウムイオン二次電池は、従来のリチウムイオン二次電池と同様の用途に使用でき、特に、パーソナルコンピュータ、携帯電話、モバイル機器、携帯情報端末(PDA)、携帯用ゲーム機器、ビデオカメラなどの携帯用電子機器の電源として有用である。また、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車などにおいて電気モーターを補助する二次電池、電動工具、掃除機、ロボットなどの駆動用電源、プラグインHEVの動力源などとしての利用も期待される。
本発明のリチウムイオン二次電池に含まれる単位電極の構成を模式的に示す縦断面図である。 図1に示す単位電極に含まれる負極集電体の構成を模式的に示す斜視図である。 図1に示す単位電極に含まれる負極の構成を模式的に示す縦断面図である。 薄膜状負極活物質層を作製するための電子ビーム式蒸着装置の構成を模式的に示す側面図である。 別態の蒸着装置の構成を模式的に示す側面図である。
符号の説明
1 単位電極
10 正極
11 セパレータ
12 負極
20 正極集電体
21 正極活物質層
22 負極集電体
23 薄膜状負極活物質層
25 凸部
26 柱状体
30 電子ビーム式蒸着装置
40 蒸着装置

Claims (9)

  1. リチウムを吸蔵放出可能な正極活物質を含有する正極活物質層および正極集電体を備える正極と、セパレータと、合金系負極活物質を含有する薄膜状負極活物質層および負極集電体を備える負極とを厚み方向に重ね合わせた単位電極を、セパレータを介して2以上積層した積層型電極群を含み、少なくとも初回の充放電が加圧下に行われるリチウムイオン二次電池。
  2. 薄膜状負極活物質層が合金系負極活物質を含有し、かつ蒸着、化学的気相成長またはスパッタリングにより形成されている請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 初回の充放電が1.0×104〜5.0×106N/m2の加圧下に行われる請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 単位電極の積層数が2〜100である請求項1〜3のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 単位電極の引張強度が3N/mm以上であり、かつ引張伸び率が0.05%以上である請求項1〜4のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池。
  6. 薄膜状負極活物質層の膜厚が3〜30μmである請求項1〜5のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池。
  7. 薄膜状負極活物質層が、合金系負極活物質を含有しかつ負極集電体表面から外方に延びるように形成される複数の柱状体を含む請求項1〜6のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池。
  8. 合金系負極活物質が、珪素、珪素酸化物、珪素窒化物、珪素含有合金、珪素化合物、錫、錫酸化物、錫含有合金および錫化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1〜7のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池。
  9. 単位電極作製工程、電極群作製工程および初回充放電工程を含み、
    単位電極作製工程は、リチウムを吸蔵放出可能な正極活物質を含有する正極活物質層および正極集電体を備える正極と、セパレータと、合金系負極活物質を含有する薄膜状負極活物質層および負極集電体を備える負極とをこの順番で厚み方向に重ね合わせて単位電極を作製し、
    電極群作製工程は、単位電極と単位電極との間にセパレータを介在させて、2以上の単位電極を積層して積層型電極群を作製し、
    初回充放電工程は、積層型電極群を加圧しながら初回の充放電を行なうリチウムイオン二次電池の製造方法。
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