JP2016110777A - リチウムイオン二次電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】負極活物質層がリチウムイオンを吸蔵することに伴うセルの膨張を低減し得るリチウムイオン二次電池の製造方法を提供する。【解決手段】[1]負極活物質層3を有する負極4と、正極7とを有するセルを備えたリチウムイオン二次電池1の製造方法であって、前記負極活物質層の体積密度を0.8g/cm3以上1.5g/cm3以下に調整した後、リチウムプレドープを行うプレドープ工程と、前記セルを加圧しながら初回充電を行う充電工程と、を有するリチウムイオン二次電池の製造方法。[2]前記プレドープ工程において、前記セルを加圧しながらリチウムプレドープを行う前記製造方法。[3]前記セルを0.3kg/cm2以上6.6kg/cm2の圧力にて加圧する前記製造方法。[4]前記充電工程において、前記セルを0.3kg/cm2以上6.6kg/cm2の圧力にて加圧する前記製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池の放電容量が初期充電後に低下することが従来から問題になっている。これを解決するために、例えば、電池製造時の初期充電工程の前に、酸化ケイ素(SiO及びSiO2)を負極活物質として用いた負極とリチウム金属とを反応させるリチウムプレドープ工程が従来から行われている(特許文献1、2参照)。プレドープ工程においては、酸化ケイ素中の二酸化ケイ素(SiO2)が予めリチウムシリケート(Li4SiO4)に変わる。この結果、その後の初期充電工程において、リチウムシリケート等の副生成物が生成したり、電解液中のリチウムイオンが失われて放電容量が低下したりする、という不可逆容量の発生を防止することができる。
特許第4928828号公報 国際公開第2011/125325号
しかしながら、リチウムプレドープを行うことによって、負極活物質層が膨張し、セルの外装体を変形させる問題があった。更に、リチウムプレドープによって負極活物質層がリチウムイオンを吸収したことにより負極活物質層中の空隙が減少したため、初回の充電時にリチウムイオンを吸蔵した負極活物質層およびセルが、リチウムプレドープを行わなかった場合に比べて大きく膨張する問題があった。この問題は、複数のセルを限られた容器内にコンパクトに束ねて収納することを難しくするだけでなく、電池の体積あたりのエネルギー密度を低下させることにもなるので、解決することが求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、負極活物質層がリチウムイオンを吸蔵することに伴うセルの膨張を低減し得るリチウムイオン二次電池の製造方法の提供を課題とする。
[1] 負極活物質層を有する負極と、正極とを有するセルを備えたリチウムイオン二次電池の製造方法であって、前記負極活物質層の体積密度を0.8g/cm以上1.5g/cm以下に調整した後、リチウムプレドープを行うプレドープ工程と、前記セルを加圧しながら初回充電を行う充電工程と、を有する、リチウムイオン二次電池の製造方法。
[2] 前記プレドープ工程において、前記セルを加圧しながらリチウムプレドープを行う、上記[1]に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
[3] 前記セルを0.3kg/cm以上6.6kg/cmの圧力にて加圧する、上記[2]に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
[4] 前記充電工程において、前記セルを0.3kg/cm以上6.6kg/cmの圧力にて加圧する、上記[1]〜[3]の何れか一項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
本発明によれば、リチウムプレドープ前の負極活物質層を加圧することによって負極活物質層を適度な体積密度に引き締めるため、リチウムプレドープ時及びその後の初回充電時における負極活物質層の膨張を低減することができる。上記加圧後の体積密度は適度であるため、負極活物質層がリチウムプレドープ時にリチウムを吸収することを妨げず、リチウムを充分に吸収できるため、不可逆容量を低減し、十分な容量発現率が得られる。
第一実施形態において製造するリチウムイオン二次電池の一例を示す断面模式図である。
本発明の第一実施形態は、図1に示す様に、負極集電体としての第一の有孔導電性板2(以下、負極集電体2と呼ぶことがある。)上に負極活物質層3が形成されてなる負極4と、正極集電体としての第二の有孔導電性板5(以下、正極集電体5と呼ぶことがある。)上に正極活物質層6が形成されてなる正極7と、が積層されてなる電極積層体を備えたリチウムイオン二次電池1の製造方法である。
本明細書及び特許請求の範囲において、「導電性板」の用語は、板状の導電体であることを意味し、導電性材料からなる板材だけに限られず、導電性線材が編まれた布(網)、導電性フィルム、導電性シートを含む用語である。さらに、「金属板」の用語は、板状の金属体であることを意味し、金属製の板材だけに限られず、金属線材が編まれた板状の金属布(金属網)、金属板を薄く延した金属箔、金属フィルム、金属膜を含む用語である。
(体積密度の調整)
本実施形態においては、負極活物質層3の体積密度を、リチウムプレドープ前に、0.8g/cm以上1.5g/cm以下に調整する。体積密度を調整する方法は特に限定されず、例えば、負極活物質層3が形成された負極集電体2を有する負極4を2枚の平板状冶具の間に挟んで、負極活物質層3の全面を厚み方向に均一に加圧する方法が挙げられる。加圧処理を施した負極4を正極7にセパレータ8を介して積層して、電極積層体を得る。
リチウムプレドープ前の負極活物質層3の体積密度は、0.8g/cm以上1.45g/cm以下が好ましく、0.8g/cm以上1.35g/cm以下がより好ましく、0.8g/cm以上1.25g/cm以下がさらに好ましく、0.8g/cm以上1.15g/cm以下が特に好ましく、0.8g/cm以上1.05g/cm以下が最も好ましい。上記の好適な範囲の順に、初回充電時のセル厚みの増加率を低減し、二次電池の容量発現率を高められる傾向がある。
(体積密度の測定方法)
電極を所定の大きさ(例えば、φ16mm)で打ち抜いた測定試料を複数枚準備する。各測定試料の質量を精密天秤にて秤量し、電極活物質層の質量を測定する。予め測定した集電体の質量を測定結果から差し引くことにより、測定試料中の電極活物質層の質量を算出することができる。また、断面出し加工した測定試料をSEMで観察する公知方法によって、電極活物質層の厚みを測定する。各測定値の平均値から下記式(1)に基づいて、電極活物質層の体積密度を算出することができる。
体積密度(g/cm)=電極活物質層の質量(g)/[(電極活物質の厚み(cm)×打ち抜いた電極の面積(cm)]・・・(1)
(プレドープ工程)
上記の加圧処理の後、負極4の最外面に位置する負極活物質層3aの表面に第三の有孔導電性板9を重ね置き、該有孔導電性板9を介して更にリチウム供給板10を重ね置いた電極積層体を得て、この電極積層体が電解液14に接した状態でリチウムプレドープを行う。
本実施形態においては、電極積層体および電解液14を外装体13に封入したセル1を得て、このセル1を加圧しながらリチウムプレドープを行う。セル1を加圧する方法は特に限定されず、例えば、セル1を2枚の平板状冶具の間に挟んで、セル1の全面を厚み方向に均一に加圧する方法が挙げられる。セル1を所定温度において放置することによって、リチウムプレドープを自然に進行させることができる。リチウムプレドープ中のセル1の加圧は必須ではないが、プレドープの進行に伴って負極活物質層3が膨れる傾向があるため、加圧によってこの膨れを抑制することが好ましい。また、リチウムプレドープ時にセル1を冶具に挟んで体積一定を保持することは、その保持と、負極活物質層3及びセル1の内圧の上昇との拮抗によって、セル1を加圧することになる。したがって、リチウムプレドープ時の加圧の方法として、積極的に外部から圧力を加える方法、およびセル1の体積を一定に保ってセル1の内圧の上昇をセル1の加圧に転換する方法、の少なくとも一方を採用することができる。
プレドープ工程においてセル1を加圧する程度としては、負極4を構成する負極材の種類にもよるが、負極4の厚み方向に対して、0.3kg/cm以上6.6kg/cmの圧力にて加圧することが好ましい。0.3kg/cm未満であると、セル1の膨れを防止する効果が得られない場合がある。6.6kg/cm超であると、セル1の膨れを防止できるが、負極活物質層3および正極活物質層6を物理的に押しつぶす恐れがある。
(充電工程)
プレドープ工程の後、セル1の負極集電体2に接続された端子2z及び正極集電体5に接続された端子5zをそれぞれ外部電源に接続してセル1の充電を行う。セル1の充電を初めて行う初回充電時におけるセル1の膨れを抑制するために、セル1を加圧しながら初回充電を行う。加圧の方法は特に限定されず、例えば、プレドープ工程におけるセル1及び負極活物質層3の加圧方法と同じ方法が採用できる。
充電工程においてセル1を加圧する程度としては、負極4を構成する負極材の種類にもよるが、セル1の厚み方向に対して、0.3kg/cm以上6.6kg/cmの圧力にて加圧することが好ましい。0.3kg/cm未満であると、セル1の膨れを防止する効果が得られない場合がある。6.6kg/cm超であると、セル1の膨れを防止できるが、負極活物質層3および正極活物質層6を物理的に押しつぶす恐れがある。
以下、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の各構成を詳細に説明する。特に、リチウムプレドープの効果を高める観点から好ましい実施形態を例示する。
<負極について>
負極4を構成する第一の有孔導電性板2の材料、面積、及び厚みは特に制限されず、公知のリチウムイオン二次電池の負極集電体と同じ材料、面積、及び厚みが適用可能である。例えば、有孔金属板が好適である。具体的には、例えば、面積40×20cm、厚み5〜50μmのパンチング加工を施した圧延銅箔や電解銅箔等が挙げられる。金属板を構成する金属の種類は特に限定されず、例えば、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼等の金属が挙げられる。
本実施形態で使用する有孔導電性板2には、電解液が板を通過することを可能にする貫通孔が複数設けられている。複数の貫通孔の形状、大きさ、個数、相対配置は特に制限されない。個々の孔は互いに独立していてもよいし、互いに連結していてもよい。貫通孔の個数が多過ぎたり、偏って配置されたりしていると、有孔導電性板2の表面に負極活物質層3を保持することが難しくなる場合がある。この場合を考慮して、貫通孔の個数や配置等を適宜調整する。
リチウムプレドープを行う際に、負極集電体2の片面又は両面に形成された負極活物質層3に対して均一にリチウム金属を拡散させる観点から、負極活物質層3を形成した集電体の領域の全面に亘って均一になるべく多数の貫通孔が配置されていることが好ましい。
負極集電体2に設けられた複数の貫通孔の形状や大きさは、互いに同じであっても良いし、異なっていても良い。貫通孔の貫通方向(中心軸線方向)に見たときに、貫通孔の内壁を構成する枠の一部が欠けていても構わない。つまり、「貫通孔」の用語は、導電性板に設けられた切れ込みを含む用語である。
負極集電体2の片面又は両面に負極活物質層3を形成する。負極活物質層3の構成材料(負極材)としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質を含む材料であって、初期充電前におけるリチウムプレドープ工程においてリチウムと不可逆的な反応を起こす負極活物質を含む材料であれば特に制限されず、公知の負極材が適用可能である。
好適な負極活物質として例えば金属酸化物が挙げられる。前記金属酸化物としては、例えば酸化ケイ素等のリチウムと合金化可能な金属酸化物が挙げられる。酸化ケイ素としては、一般式「SiO(式中、zは0.5〜1.5のいずれかの数である。)」で表されるものが例示できる。ここで酸化ケイ素を「SiO」単位で見た場合、このSiOは、アモルファス状のSiOであるか、又はSi:SiOのモル比が約1:1となるように、ナノクラスターのSiの周囲にSiOが存在する、Si及びSiOの複合物である。SiOは、充放電時におけるSiの膨張及び収縮に対して緩衝作用を有すると推測される。
酸化ケイ素は、粉末状又は粒子状であることが好ましい。粒子状の酸化ケイ素の平均粒子径は特に制限されず、例えば1〜30μmであることが好ましい。
負極活物質層3の形成方法は特に限定されず、例えば、負極集電体2上に負極活物質を含む負極材を5〜100μm程度の厚みで塗布した後、負極材に含まれる溶媒を乾燥除去することによって、集電体2上に負極活物質層を形成することができる。負極材としては、酸化ケイ素等の前記負極活物質の他に、PVDF、SBR等のバインダー樹脂(結着剤)及び炭素材料、金属粒子等の導電助剤を含むことが好ましい。これらの負極活物質、バインダー樹脂及び導電助剤の種類及び組み合わせは特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池の負極活物質層を構成する材料の組み合わせが適用できる。
負極集電体2上に負極活物質層3を直接形成する方法を採用してもよいし、他の基材上に負極活物質層3を形成してから、負極集電体2上に負極活物質層3を転写して、さらに圧着する方法も採用してもよい。負極集電体2上に負極活物質層3を直接形成する場合においても、負極集電体2上に負極活物質層3を圧着する処理を行ってもよい。
<正極について>
正極7を構成する第二の有孔導電性板5の材料、面積、及び厚みは特に制限されず、公知のリチウムイオン二次電池の正極集電体と同じ材料、面積、及び厚みが適用可能である。例えば、有孔金属板が好適である。具体的には、例えば、面積40×20cm、厚み5〜50μmのパンチング加工を施した圧延アルミニウム箔等が挙げられる。金属板を構成する金属の種類は特に限定されず、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼等の金属が挙げられる。正極7と負極4の面積が等しいことが好ましいため、第二の有孔導電性板5の面積は、第一の有孔導電性板2の面積と略同等であることが好ましい。
本実施形態で使用する第二の有孔導電性板5には、電解液が板の表面と裏面を通過可能な貫通孔が複数設けられている。複数の貫通孔の形状、大きさ、個数、相対配置の説明は、前述した第一の有孔導電性板2に設けられた貫通孔の説明と同様である。
正極集電体の片面又は両面に正極活物質層6を形成する。正極活物質層6の構成材料(正極材)としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極活物質を含む材料であれば特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池の正極材が適用可能である。
好適な正極活物質として、例えば、リチウム複合コバルト酸化物、リチウム複合ニッケル酸化物、リチウム複合マンガン酸化物等の金属酸リチウム化合物が挙げられる。金属酸リチウム化合物として、一般式「LiM(式中、Mは金属であり;x及びyは、金属Mと酸素Oとの組成比である。)」で表される金属酸リチウム化合物が例示できる。具体的には、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)等が例示できる。また、類似の組成であるオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)が挙げられる。
前記一般式において、Mが複数種の金属であってもよい。このような金属酸リチウム化合物としては、例えば一般式「LiM (式中、M、M及びMは互いに異なる種類の金属であり;p、q、r及びyは、金属M、M及びMと酸素Oとの組成比である。)」で表されるものが例示できる。ここで、p+q+r=xである。前記一般式で表される金属酸リチウム化合物としては、LiNi0.33Mn0.33Co0.33等が例示できる。
正極活物質層6の形成方法は特に限定されず、例えば、正極集電体5上に正極活物質6を含む正極材を5〜100μm程度の厚みで塗布した後、正極材に含まれる溶媒を乾燥除去することによって、正極集電体5上に正極活物質層6を形成することができる。正極材としては、金属酸リチウム化合物等の正極活物質の他に、バインダー樹脂(結着剤)及び導電助剤を含むことが好ましい。これらの正極活物質、バインダー樹脂及び導電助剤の種類及び組み合わせは特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池の正極活物質層を構成する材料の組み合わせが適用できる。
正極集電体5上に正極活物質層6を直接形成する方法を採用してもよいし、他の基材上に正極活物質層6を形成してから、正極集電体5上に正極活物質層6を転写して、さらに圧着させる方法も採用してもよい。正極集電体5上に正極活物質層6を直接形成する場合においても、正極集電体5上に正極活物質層6を圧着させる処理を行ってもよい。
<電極積層体について>
負極4と正極7を対面配置して両電極の短絡を防ぐ目的及び電解液を保持する目的で、両電極の間にセパレータ8を配置して、第一の負極4A(4)、セパレータ8、正極7、セパレータ8、第二の負極4B(4)の順で積層した電極積層体を得る。積層前又は積層後に負極4及び正極7をプレスして、各電極を構成する電極活物質層の体積密度を調整してもよい。
セパレータ8は絶縁性を有し、電解液を保持又は通過させることが可能なものであれば特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池で使用されるセパレータが適用可能である。例えば、オレフィン系樹脂からなる多孔質膜又は不織布、絶縁性粒子からなる多孔性絶縁膜等が挙げられる。絶縁性粒子を含む組成物を負極又は正極の表面に塗布して、セパレータ8としての絶縁性膜を前記表面に形成する公知方法も採用できる。セパレータ8の厚みは、絶縁性が保たれる厚みであれば特に限定されず、例えば5〜50μm程度の厚みが挙げられる。
本実施形態においては、電極積層体の最外面に位置する各負極活物質層3の表面3aに、第三の有孔導電性板9と第四の有孔導電性板11を重ね置き、これらの有孔導電性板9,11を介して更にリチウム供給板10,12を積層する。
以下、第三の有孔導電性板9及びリチウム供給板10について説明するが、第四の有孔導電性板11及びリチウム供給板12の説明もこれと同じであるため省略する。
リチウム供給板10を負極活物質層の表面3aに接触させず、第三の有孔導電性板9を介在させることによって、後で行うリチウムプレドープの際に、負極活物質層3の全体に亘って均一にドープすることができる。仮に、表面3aにリチウム供給板10を直接に配置した場合、表面3aの凹凸の影響及びリチウム供給板10(例えばリチウム金属箔)の皺の影響を受けて、リチウム供給板10が密着する箇所と浮き上がる箇所とが生じる。この場合、密着する箇所が濃くドープされて、浮き上がる箇所が薄くドープされるため、負極活物質層3の全体に亘って均一にドープすることが難しくなる。
第三の有孔導電性板9には、電解液が板を通過することを可能にする貫通孔が複数設けられている。複数の貫通孔の形状、大きさ、個数、相対配置は特に制限されない。個々の孔は互いに独立していてもよいし、互いに連結していてもよい。リチウムプレドープを行う際に、リチウム供給板10から溶出したリチウム金属又はリチウムイオンが、第三の有孔導電性板9を通過して、負極活物質層3に対して均一に拡散する観点から、有孔導電性板9の負極活物質層3に載置する領域の全面に亘って均一になるべく多数の貫通孔が配置されていることが好ましい。
第三の有孔導電性板9が有する貫通孔の平均孔径(穴径)は、例えば、0.001mm〜1.0mmが好ましく、0.01mm〜0.7mmがより好ましく、0.1mm〜0.4mmが更に好ましい。
第三の有孔導電性板9の空孔率は、例えば、5〜50%が好ましく、10〜35%がより好ましく、10〜20%が更に好ましい。
前記空孔率は、有孔を形成した導電性板と有孔を形成する前の導電性板との質量比から算出する方法で求められる。例えば、前記質量比が1/2である場合の空孔率は50%である。
第三の有孔導電性板9を構成する材料は、導電性材料であれば特に限定されず、リチウム金属およびリチウムイオンを吸着し難い材料であることが好ましい。このような導電性材料としては、例えば、前述した電極集電体としても利用可能な銅、アルミニウム、チタン等の金属、合金、導電性ポリマーを含有する多孔質性樹脂又は導電性布等が挙げられる。より具体的には、金属製のパンチング箔(板)、板状のメッシュ等が例示できる。このうち、表面の凹凸が少なく平面性が高い、金属製のパンチング箔を使用することが好ましい。
第三の有孔導電性板9の面積は、リチウム供給板10と略同等又はそれよりも一回り大きい程度の面積であることが好ましい。この面積であると、リチウム供給板10が直接に負極活物質層の表面3aに接触することを防止することができる。また、リチウム供給板10から溶出したリチウム金属又はリチウムイオンが負極活物質層の表面3aにアクセスする容易さを、表面3aの全面においてほぼ均一にする観点から、第三の有孔性導電性板9の面積は、表面3aと略同等又はそれよりも一回り小さい程度の面積であることが好ましい(図1参照)。
第三の有孔導電性板9の厚みは特に限定されず、リチウム供給板10から溶出したリチウム金属又はリチウムイオンが容易に通過して拡散し易くなる観点から、薄い方が好ましい。例えば、5μm〜50μm程度の厚みが好適である。
リチウム供給板10を構成する材料は、接触した電解液にリチウム金属又はリチウムイオンが溶出する材料であれば特に限定されず、公知のリチウムプレドープに使用されるリチウム金属含有材料が適用できる。例えば、リチウム金属又はリチウム合金からなる金属箔、リチウム金属又はリチウム合金を含む多孔性樹脂材料、リチウム金属又はリチウム合金を含む多孔性無機材料等、が挙げられる。リチウム供給板10がリチウム金属箔であると、リチウムプレドープの進行とともにリチウム金属箔が溶解して無くなる。
リチウム供給板10の形状は、第三の有孔性導電板9の表面9aに対して載置可能な平面を有する形状であれば特に限定されず、「板材」だけに限られず、線材が編まれた平面状の布、薄く延した箔、第三の有孔性導電板9の表面9a上に形成された膜等の形状を含む。リチウム供給板10は、第三の有孔性導電板9と同様の複数の貫通孔を有していてもよいし、有していなくてもよい。
リチウム供給板10の厚みは特に限定されず、負極4の不可逆容量を補償する量のリチウム金属を供給可能な厚みを適宜設定すればよい。例えば、リチウム金属箔を使用する場合、10μm〜200μm程度の厚みが好適である。
本実施形態においては、図1に示す様に、正極7の両側に第一の負極4A(4)と第二の負極4B(4)が備えられ、第一の負極4Aの外側の表面に第三の有孔性導電板9を介してリチウム供給板10が積層され、第二の負極4Bの外側の表面に第四の有孔性導電板11を介してリチウム供給板12が積層されている。
本実施形態の構成に代えて、負極4A及び負極4Bのどちらか一方の負極だけにリチウム供給板を配置しても構わないが、リチウムプレドープの処理効率を高める観点から、両方の負極に対してリチウム供給板を配置することが好ましい。
本実施形態の変形例として、負極4/セパレータ8/正極7を1つの積層ユニットとして、複数の積層ユニットが間にセパレータを挟んで積層された電極積層体を備えたリチウムイオン二次電池が挙げられる。この変形例においても、前述したように、電極積層体の最上面および最下面を構成する負極に、それぞれ有孔導電性板9,11を介してリチウム供給板10,12を配置することによって、同様にリチウムプレドープを行うことができる。
例えば20層程度の多数の正極及び負極が積層された電極積層体を備えている場合、当該電極積層体の中間層としてリチウム供給板及び有孔性導電板を配置してもよい。この場合、非導電性のセパレータとリチウム供給板とが接触しないように配置することが好ましく、リチウム供給板を有孔導電性板で挟んだ配置がより好ましい。例えば、「負極―・・・―負極―(有孔性導電板−リチウム供給板―有孔性導電板)―セパレータ―正極―セパレータ―負極―「有孔性導電板−リチウム供給板―有孔性導電板」―セパレータ―正極―セパレータ―・・・―負極」の様に積層することができる。
<電池の組み立てについて>
電極積層体を構成する負極4A,4Bにリチウム供給板10,12を配置した後、電極積層体を外装体13で仮封止する。外装体13の種類は特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池に使用される金属製又は樹脂製の外装体が適用できる。電池の形態は特に限定されず、箱型、コイン型、巻回し型(筒型)、シート型等、公知の電池形態を採用できる。本実施形態においては、外装体13として樹脂フィルムを使用して、電極積層体をラミネートしたシート型のラミネートセルを得る。セルを仮封止する際、負極集電体2及び正極集電体5にそれぞれ電気的に接続された引出配線2z,5z(タブ配線)を外装体13の外部に突出させる。各引出配線は、外部回路へ接続するための電極端子として機能する。
ラミネートセルの仮封止を部分的に解いて、電解質14を注入した後で完全に封止する。電解質14は、ゲル状又は液状であることが好ましく、液状の電解液であることがより好ましい。ゲル状又は液状であると、リチウム供給体10から溶出したリチウム金属又はリチウムイオンの電解質14内における拡散効率が高まり、リチウムプレドープの処理効率が向上する。
<電解液について>
本実施形態においては、リチウム供給体にリチウム金属が含まれるので、電解質14としては、水分が実質的に含まれない(例えば、100ppm未満)非水系電解液が好ましい。非水系電解液としては、例えば、非水系溶媒にリチウム塩が溶解された公知の非水系電解液が挙げられる。具体的には、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4等のリチウム塩が、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、酢酸メチル、蟻酸メチル等の有機溶媒に溶解された電解液が挙げられる。電解液のリチウム塩濃度は特に限定されず、例えば、0.5〜2mol/L程度が挙げられる。
<リチウムプレドープについて>
封止したラミネートセルを所定温度において放置することによって、リチウムプレドープを自然に進行させることができる。この際、ラミネートセルを加圧することにより、リチウムプレドープを更に促進することができる。リチウム供給体10,12から電解液14に溶出したリチウム金属又はリチウムイオンは、有孔導電性板9,11の貫通孔および電極集電体2,5の貫通孔を通過して、各負極活物質層3に拡散及び浸透する。負極活物質層3においては、リチウムシリケート等の副生成物が生成して、不可逆容量の原因物質が不活化されてもよい。
ここで、リチウムプレドープ時に有孔導電性板9,11を備えた状態でラミネートセルを加圧することによって、電極積層体が膨張することを抑制し、電極の厚みの増加をより効果的に抑制することができる。更に、有孔導電性板9,11が介在していることによりリチウムのドープ反応が電極積層体の全体に亘って均一に進むため、ドープ反応が不均一に進んだ場合に発生する電極の歪みを防ぐことができる。この結果、歪みが生じた場合に発生する負極活物質層3の剥がれを防ぎ、負極集電体2に対する負極活物質層3の密着性を一層高めることができる。
本実施形態においては、各負極活物質層の表面3aに直接リチウム供給体10,12を貼り付けず、有孔導電性板9,11を介在させているため、リチウム金属(リチウムイオン)が各負極活物質層3の内部に均一に拡散及び浸透し得る。このメカニズムを以下に考察する。
各負極活物質層の表面(電極表面)に直接リチウム供給体を貼り付けた場合、電極表面が不均一に反応する。これは、ミクロの視点において、電極表面とリチウム供給体とが接触する部分のみが反応し易いためである。反応が先行して進む部分は、リチウムが結合したことにより物理的に膨張する。このため、不均一な反応は、各負活物質層の剥がれ、不均一な膨れによるシワ及びうねりの発生を引き起こす。
一方、パンチング箔等の有孔導電性板9,11を間に介在させる本実施形態の場合、基本的には、有孔導電性板9,11の所定位置に設けられた複数の貫通孔を通して、リチウム金属(リチウムイオン)が電極表面に供給される。つまり、各貫通孔がリチウム金属の供給源になるため、各貫通孔の相対的な配置を制御することによって、電極表面上にリチウム金属の供給源を均一に配置することができる。この結果、各負極活物質層に均一にリチウム金属をドープすることができる。さらに、有孔導電性板9,11が電極表面を押さえているため、電極表面における活物質層の剥がれ、膨れ、シワの発生等を抑制することができる。
本実施形態で使用する有孔導電性板9,11は、導電性であるため、負極表面とリチウム供給体の間に電位差が発生し得る。この電位差があることによってリチウム供給体からリチウム金属(リチウムイオン)が溶出することが促進されると考えられる。この理由は、次のように考えられる。まず、電解液中のリチウムイオンが拡散及び浸透して、負極活物質層内で還元されてリチウム金属になる。これにより電解液中のリチウムイオン濃度が低下する。この濃度低下に伴って、リチウム供給体のリチウム金属がイオン化して電解液中に溶解し、上記濃度低下を抑制する方向に働くと推測される。この一連のプロセスが繰り返されることによってリチウムプレドープが進行するならば、上記の電位差がリチウム金属の溶出及びイオン化に寄与する可能性がある。事実、後述する比較例7の実験結果で示すように、有孔導電性板9,11に代えて非導電性の多孔質セパレータを使用した場合、上記電位差は発生せず、リチウムプレドープが促進されないことが確かめられた。
以下、実施例を示して本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されない。
(1)使用した原料
本実施例で使用した原料を以下に示す。
・導電助剤
アセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」、平均粒子径(48nm))
カーボンナノチューブ(保土谷化学社製「NT−7」、平均繊維径(65nm)、平均繊維長(6um以上))
・バインダー
スチレン−ブタジエン樹脂(以下、「SBR」と略記する)(JSR社製)
・(C)有機溶媒
エチレンカーボネート(以下、「EC」と略記する)(キシダ化学社製)
プロピレンカーボネート(以下、「PC」と略記する)(キシダ化学社製)
[実施例1]
(負極材の製造)
一酸化ケイ素(SiO、平均粒子径1μm、69質量部)、アセチレンブラック(10質量部)、カーボンナノチューブ(6質量部)、ポリアクリル酸リチウム(全酸基の30モル%がリチウム塩とされたもの、以下、「PAALi」と略記することがある、12質量部)、及びSBR(3質量部)を試薬瓶に入れ、さらにここに蒸留水を添加して濃度調整した後、ディスパーを用いて、この濃度調整したものを3000rpmで90分間混合した。次いで、超音波ホモジナイザーを用いてこの混合物を10分間分散処理した後、再度、自公転ミキサーを用いてこの分散物を2000rpmで3分間混合することにより、負極材を得た。ここまでの操作は、すべて25℃で行った。
(負極の製造)
ダイヘッドが装着された塗工機を用いて、厚さ10μmのパンチング銅箔(穴径0.3mm、空孔率16.7%、福田金属箔粉工業社製)の両面に、上記で得られた負極材を塗布した。この際の条件は、塗工速度2m/min、乾燥温度100℃であった。その後、ロールプレス機を用いて、表1の「プレドープ工程前の負極活物質層の体積密度」となるような加圧条件でプレスすることによって、集電体である銅箔上の両面に厚さ、それぞれ25μmの負極活物質層を形成して、負極を得た。得られた負極は、負極活物質層部分(104×62mm)と、未塗工部分(タブ部分、2×2cm)の寸法であった。
前述した方法によって求めた負極活物質層の体積密度は1.0g/cmであった。
(正極材の製造)
ニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム(Ni:Co:Mn=1:1:1、LiNMC)(93質量部)と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(4質量部)と、導電助剤であるカーボンブラック(3質量部)とを混合して正極混合材を調製し、これをN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させて、正極材(スラリー)を得た。
(正極の製造)
負極の製造工程と同様に、ダイヘッドが装着された塗工機を用いて、厚さ15μmのパンチングAl箔(穴径0.3mm、空孔率16.7%、福田金属箔粉工業社製)の両面に、上記で得られた正極材を塗布した。この際の条件は、塗工速度2m/min、乾燥温度140℃であった。その後、ロールプレス機を用いて、表1の「プレドープ工程前の負極活物質層の体積密度」となるような加圧条件でプレスすることによって、集電体である銅箔上の両面に厚さ、それぞれ60μmの正極活物質層を形成して、正極を得た。得られた正極は、正極活物質層部分(102×60mm)と、未塗工部分(タブ部分、2×2cm)の寸法であった。
(電解液の製造)
有機溶媒として、EC及びPCの混合溶媒(EC:PC=30:70(体積比))をポリ容器に量り取り、ここにシュウ酸リチウム−三フッ化ホウ素錯体を加えて、シュウ酸リチウム−三フッ化ホウ素錯体中のリチウム原子の濃度が1.0モル/kgとなるようにし、23℃で混合することにより、電解液を得た。
(リチウムイオン二次電池の製造)
上記で得られた負極及び正極の間にセルロース製セパレータフィルム(日本高度紙工業社製、TBL‐4620)を、第一の負極―セパレータ―正極―セパレータ―第二の負極の順に重ね合せて配置し、各電極の端子用タブを超音波溶接により接合して、各タブを負極及び正極の外方に突出させて、電極積層体を得た(図1参照)。
(リチウムプレドープ工程)
上記で得られた電極積層体の両方の外面を構成する負極の各々に、106×64mmにカットしたパンチング銅箔を、負極活物質層部分を覆うように重ね置き、さらにその上に、負極の不可逆容量を補償するのに必要な量のリチウム金属箔(104×62mm)を設置した。
次いで、この電極積層体の負極及び正極から突出させた前記端子用タブが外部へ突出するように、アルミニウムラミネートフィルムを配置し、電極積層体に電解液を注液後、このフィルムの外周をラミネート加工して電極積層体を真空封止した。その後、得られたセルを加圧治具にセットし、セルを3.3kg/cmの力で加圧状態とし、25℃の恒温槽中にて、48h静置することによりリチウムプレドープ処理を行い、ラミネートセルを製造した。作製した電池の定格容量は1000mAhである。
この後、製造したラミネートセルの初回充電を行う際にも、セルを3.3kg/cmの力で加圧状態とした。
[実施例2〜17]
実施例1と同様に組み立てたラミネートセルを、表1に示す加圧状態にして、プレドープ工程と、その後の充電工程を行い、実施例2〜17のラミネートセルを製造した。ただし、リチウムプレドープ前の負極活物質層の体積密度を実施例1と変えて調整する場合には、負極作製時の加圧状態を適宜変更した。また、実施例11〜13は、セルを加圧しない状態でリチウムプレドープを行った。
[比較例1〜6]
実施例1と同様に組み立てたラミネートセルを、表1に示す加圧状態にして、プレドープ工程と、その後の充電工程を行い、比較例1〜6のラミネートセルを製造した。ただし、リチウムプレドープ前の負極活物質層の体積密度を実施例1と変えて調整する場合には、負極作製時の加圧状態を適宜変更した。また、比較例1は、セルを加圧しない状態でリチウムプレドープを行った。また、比較例1〜2,4は、セルを加圧しない状態で初回の充電を行った。
Figure 2016110777
(セル厚みの評価)
作製した各ラミネートセルの厚みについて、リチウムプレドープ前と、初回充電後において測定した。リチウムプレドープ前の厚みを1としたときの初回充電後の厚みの増加率を算出した。この結果を表2に示す。
(リチウムイオン二次電池の充放電特性の評価)
作製した各リチウムイオン二次電池について、25℃において0.1Cの定電流定電圧充電を、上限電圧4.2Vとして電流値が0.05Cに収束するまで行った後、0.1Cの定電流放電を2.5Vまで行った。次いで、充放電電流を0.5Cとして同様の方法で、充放電サイクルを3回繰り返し行い、リチウムイオン二次電池の状態を安定させた。次いで、充放電電流を0.2Cとして同様の方法で、充放電を行い、容量発現率({[1サイクル目の放電容量(mAh)]/[定格容量(mAh)]}×100)(%)、充放電電流を1Cとして同様の方法で、充放電サイクルを繰り返しおこない100サイクルでの容量維持率({[100サイクル目の放電容量(mAh)]/[1サイクル目の放電容量(mAh)]}×100)(%)を算出した。この結果を表2に示す。
Figure 2016110777
上記の結果から、実施例1〜9においては、リチウムプレドープ前の負極活物質層の密度が適度であり、リチウムプレドープ工程および初回充電工程の両方でセルを充分に加圧しているため、充電後のセルの膨らみが小さく、容量維持率も良好であることが分かる。実施例11〜13においては、リチウムプレドープ時にセルを加圧していないため、充電後のセルの膨らみが実施例1〜9よりも大きいことが分かる。
実施例14〜17においても、実施例1〜9と同様に良好な結果が得られている。実施例14〜17の結果から、リチウムプレドープ前の負極活物質層の密度が高くなるにつれて、セル厚みの増加率が上昇し、容量維持率が低下することが分かる。これは、負極活物質層の密度がリチウムプレドープの程度又は効果に影響を与えていることを示している。
一方、比較例1,2,4においては、初回充電時にセルを加圧していないため、充電後のセルの膨らみが大きいことが分かる。また、比較例3(参考例)においては、初回充電時のセルの加圧の程度が少ないため、充電後のセルの膨らみが大きいことが分かる。また、比較例5,6においては、リチウムプレドープ前の負極活物質層の体積密度が過度に高いため、容量維持率が低下し、セルの膨らみの増加率が高いことが分かる。
[比較例7]
パンチング箔を使用せずに、電極積層体の両方の外面を構成する負極活物質層の上にセルロース製セパレータフィルム(日本高度紙工業社製、TBL‐4620)を重ね合せて、さらにその上にリチウム金属箔を設置したこと以外は比較例1と同様の方法にてラミネートセルを作製した。なお、本実験においては、48時間のリチウムドープ後にセルを開放すると、リチウム金属箔が残っていることが確認された。また、容量発現率が比較例1よりも劣る結果であった。この結果から、非導電性のセパレータよりも導電性の有孔導電性板を介してリチウム金属箔を負極活物質層の上に配置する方がリチウムプレドープの効率が向上することが分かる。
本発明は、リチウムイオン二次電池の分野で広く利用可能である。
1…リチウムイオン二次電池、2…第一の有孔導電性板(負極集電体)、3…負極活物質層、3a…負極活物質層の表面、4A,4B,4…負極、5…第二の有孔導電性板(正極集電体)、6…正極活物質層、6a…正極活物質層の表面、7…正極、8…セパレータ、9…第三の有孔導電性板、10…リチウム供給板、11…第四の有孔導電性板、12…リチウム供給板、13…外装体、14…電解質

Claims (4)

  1. 負極活物質層を有する負極と、正極とを有するセルを備えたリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    前記負極活物質層の体積密度を0.8g/cm以上1.5g/cm以下に調整した後、リチウムプレドープを行うプレドープ工程と、前記セルを加圧しながら初回充電を行う充電工程と、を有する、リチウムイオン二次電池の製造方法。
  2. 前記プレドープ工程において、前記セルを加圧しながらリチウムプレドープを行う、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  3. 前記セルを0.3kg/cm以上6.6kg/cmの圧力にて加圧する、請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  4. 前記充電工程において、前記セルを0.3kg/cm以上6.6kg/cmの圧力にて加圧する、請求項1〜3の何れか一項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
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