JP2012256539A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】 電池サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】 リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質をもつ正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能であって珪素又は/及び珪素化合物からなる負極活物質をもつ負極と電解液とを備えている。負極活物質は、初期充放電を行うことにより生成し且つ4価のSiを含むSEI被膜により被覆される。電解液は、フッ素系化合物を含むことが好ましい。
【選択図】 図2
【解決手段】 リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質をもつ正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能であって珪素又は/及び珪素化合物からなる負極活物質をもつ負極と電解液とを備えている。負極活物質は、初期充放電を行うことにより生成し且つ4価のSiを含むSEI被膜により被覆される。電解液は、フッ素系化合物を含むことが好ましい。
【選択図】 図2
Description
本発明は、リチウムイオン二次電池、特に負極に関する。
リチウムイオン二次電池などの二次電池は、小型で大容量であるため、携帯電話やノート型パソコンといった幅広い分野で用いられている。
リチウムイオン二次電池は、正極と負極と電解液とから構成されている。正極は、例えば、リチウム・マンガン複合酸化物、リチウム・コバルト複合酸化物、リチウム・ニッケル複合酸化物などのリチウムと遷移金属との金属複合酸化物からなる正極活物質と、正極活物質で被覆された集電体とからなる。
負極は、リチウムイオンを吸蔵・放出し得る負極活物質が集電体を被覆して形成されている。リチウムイオンを吸蔵・放出し得る負極活物質として、近年、酸化珪素(SiOx:0.5≦x≦1.5程度)の使用が検討されている。酸化珪素SiOxは、熱処理されると、SiとSiO2とに分解することが知られている。これは、不均化反応といい、SiとOとの比が概ね1:1の均質な固体の一酸化珪素SiOであれば、固体の内部反応によりSi相とSiO2相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細であり、SiO2相により被覆されている。Si相は、Liイオンを吸蔵・放出し得る珪素単体を含み、Liイオンの膨張・収縮により体積が膨張したり収縮したりする。SiO2相は、Si相の膨張・収縮を吸収し、また、電解液がSi相に接触することを防止することで電解液の分解反応を抑制して、電池のサイクル特性を向上させる。
上記リチウムイオン二次電池について充放電を行うと、リチウムイオンが電解液を通じて正極活物質と負極活物質との間で挿入・脱離が行われる。その際には、電解液中に含まれる電解質が一部還元分解され、その分解生成物が、負極活物質表面を被覆して被膜を形成する。この被膜は、リチウムイオンは通すが、電子は通さないという膜であり、固体電解質界面被膜(SEI:Solid Electrolyte Interphase)と言われている。被膜は、負極活物質表面を被覆することで、電解質と負極活物質とが直接接触することを防止して電解質の分解劣化を抑えている。負極活物質表面を被覆するSEI被膜については、従来、特許文献1〜5に記載されている。
発明者らは、SEI被膜の性状、成分構成について、鋭意探求してきた。その中で、従来技術にない新規な特徴を見いだし、その特徴に基づいて本願発明に想到した。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、電池サイクル特性に優れた二次電池を提供することを課題とする。
(1)本発明のリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質をもつ正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能であって珪素又は/及び珪素化合物からなる負極活物質をもつ負極と電解液とを備えたリチウムイオン二次電池であって、前記負極活物質は、初期充放電を行うことにより生成し且つ4価のSiを含むSEI被膜により被覆されていることを特徴とする。
(2)前記リチウムイオン二次電池において、前記初期充放電は、35℃以上80℃以下の温度で行うことが好ましい。
(3)前記リチウムイオン二次電池において、前記SEI被膜には、更に、1価のSi、2価のSi及び3価のSiの少なくとも1種を含むことが好ましい。
(4)前記リチウムイオン二次電池において、電圧15kV、電流10mAの条件で放射されるAlKα(単色)線を用いるX線光電子分光法(XPS)により測定され波形分離されたスペクトルにおいて、結合エネルギーが103eV付近にピークが存在することが好ましい。
(5)前記リチウムイオン二次電池において、電圧15kV、電流10mAの条件で放射されるAlKα(単色)線を用いるX線光電子分光法(XPS)により測定され波形分離されたスペクトルにおいて、結合エネルギーが103eV付近及び102eV付近にピークが存在することが好ましい。
(6)前記リチウムイオン二次電池において、前記結合エネルギーが前記102eVのピークに対する前記結合エネルギーが103eVのピークの積分強度比は、1以上3以下であることが好ましい。
(7)前記リチウムイオン二次電池において、前記リチウムイオン二次電池において、前記電解液は、フッ素系化合物を含むことが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池によれば、負極活物質が、初期充放電を行うことにより生成し且つ4価のSi(珪素)を含むSEI被膜により被覆されている。このため、電池のサイクル特性に優れている。
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極と正極と電解液とを備えている。
(負極)
負極は、負極活物質と集電体とからなる。負極活物質は、負極活物質層として集電体に圧着されることが一般的である。集電体は、例えば、銅や銅合金などの金属製のメッシュや金属箔を用いるとよい。
負極は、負極活物質と集電体とからなる。負極活物質は、負極活物質層として集電体に圧着されることが一般的である。集電体は、例えば、銅や銅合金などの金属製のメッシュや金属箔を用いるとよい。
負極活物質は、粒子状又は粉末状の負極活物質粒子を構成している。負極活物質粒子の平均粒径は、0.01〜10μm、更には、0.01〜5μmであることがよい。
図1に示すように、負極活物質粒子3は、珪素又は/及び珪素化合物からなるコア部1と、コア部1を被覆するSEI被膜2(以下、単に被膜2とする)とからなる。コア部1は、Si相とSiO2相とからなる。Si相は、珪素単体からなり、Liイオンを吸蔵・放出し得る相であり、Liイオンの吸蔵・放出に伴って膨張・収縮する。SiO2相は、SiO2からなり、Si相の膨張・収縮を吸収する。Si相がSiO2相により被覆されることで、Si相とSiO2相とからなる負極活物質粒子3を形成しているとよい。さらには、微細化された複数のSi相がSiO2相により被覆されて一体となって、1つの粒子、即ち負極活物質粒子3を形成しているとよい。この場合には、負極活物質粒子3全体の体積変化を効果的に抑えることができる。
コア部1におけるSi相に対するSiO2相の質量比は、1〜3であることが好ましい。前記質量比が1未満の場合には、コア部1の膨張・収縮が大きく、負極活物質層にクラックが生じるおそれがある。一方、前記質量比が3を超える場合には、コア部1でのLiの吸蔵・放出量が少なく、電気容量が低くなるおそれがある。
負極活物質粒子3のコア部1は、Si相とSiO2相とのみから構成されていてもよい。また、コア部1は、Si相とSiO2相とを主成分としているが、その他に、負極活物質粒子3のコア部1の成分として、公知の活物質を含んでいても良い。具体的には、Li、Caなどの金属とSiとを含む金属珪素複合酸化物の少なくとも1種を混合していてもよい。
負極活物質粒子3の被膜2は、Liイオンが通過可能な絶縁膜であり、4価のSi(珪素)を含む。4価のSiは、負極活物質を構成する酸化珪素が、電解質と反応して生成したものと考えられる。4価のSiを含む珪素化合物としては、例えば、SiO2、H2SiF6などが挙げられる。
被膜2の中に4価のSiが含まれることにより、電池サイクル特性が向上する。これは、被膜2の強度が高くなり、酸化珪素からなるコア部1の体積変形に柔軟に追従でき、被膜2に亀裂が生じにくく、電解液がコア部1を構成する珪素に直接接触することが抑えられ、電解質の劣化を抑えることができるからである。
被膜2中の4価のSi(Si4+)は、例えば、X線光電子分光法(以下、XPSという。)により検出される。XPSは、負極活物質粒子の表面にX線を照射したときに生じる光電子のエネルギーを測定することで、粒子表面部分の構成元素とその電子状態を分析することができる。XPSによる4価のSiの検出では、負極活物質粒子3に、電圧15kV、電流10mAの条件で放射されるAlKα線(単色)を励起X線として照射したときに、負極活物質表面から放出されるスペクトルを分析する。この強度のX線励起光を負極活物質粒子3の表面に照射することにより、被膜2内の構成元素から放射された光電子を検出することができる。XPSで103eV付近に出現するピークAは、4価のSiに起因するピークである(図2(a)参照)。
被膜2中の4価のSiは、例えば、組み付けた電池に所定の温度で初期充放電を行うことにより生成する。初期充放電とは、二次電池組み付け途中又は組み付け後に行う初回の充放電であり、一般にコンディショニング処理ともいう。
初期充放電処理の具体例としては、第1に、負極と正極とセパレータからなる電極体を電池容器内に収容し電解液を注入し初期充放電を行った後に、密封する。第2に、電極体及び電解液を電池容器内に収容し密封することで二次電池組み付け後に、初期充放電を施す。充放電の作業性の観点から、二次電池組み付け後に充放電を施すことがよい。
初期充放電としての充放電の回数は、1回以上であればよく、更には2回以上5回以下であることが好ましい。初期充放電時の充電及び放電は、所定の条件下で行うことがよく、例えば、定電流で行うことがよい。また、所定の温度下で初期充放電を行うとよい。
被膜2中に4価のSiを生成させるには、初期充放電を施す際の温度は、35℃以上80℃以下であることがよく、更にはその下限は40℃であることが好ましく、上限は60℃、更には55℃であることが好ましい。このように、常温より若干高めの温度で初期充放電を行うことで、活物質であるSiO中のSiが溶出、反応することにより、被膜2中に4価のSiが出現する。
初期充放電を施す際の温度が低すぎると、被膜2が厚くなり、負極活物質粒子3のコア部1の膨張・収縮により、被膜2の最表面部に、亀裂や欠損が生じるおそれがある。被膜2最表面部の亀裂や欠損した部分から電解液が浸透し、コア部1内の珪素と反応して、電解液が劣化し、電池のサイクル特性が低くなるおそれがある。初期充放電の温度が高すぎると、電解液の成分、特に溶媒が変質し、電池特性が低下するおそれがある。
また、初期充放電の後に、リチウムイオン二次電池を所定の温度に静置するエージング処理を施しても良い。エージング処理の温度は、35℃以上80℃以下であることがよく、更にはエージング処理の温度の下限は40℃であることが好ましく、上限は60℃、更には55℃であることが好ましい。エージング処理の温度が低すぎると、被膜2が厚くなり、負極活物質粒子3のコア部1の膨張・収縮により、被膜2の最表面部に亀裂や欠損が生じるおそれがある。エージング処理の温度が高すぎると、電解液の成分が変質し、電池特性が低下するおそれがある。
また、被膜2中の4価のSiは、例えば、適切な添加剤の使用でも出現すると考えられる。
被膜2の中には、4価のSiの他に、1〜3価のSi(Si1+、Si2+、Si3+)を含んでいる場合がある。1〜3価のSiは、例えば、珪酸リチウム(Li4SiO4,Li2SiO3など)、炭化珪素などの化合物として含まれている。電圧15kV、電流10mAの条件で放射されるAlKα線(単色)を用いるXPSにより測定されるスペクトルにおいて、1〜3価のSiに起因するピークBは、102eV付近に出現する(図2(a)参照)。
XPSにより検知される波形分離後のスペクトルにおいて、負極活物質表面の1〜3価のSiに起因するピークに対する4価のSiに起因するピークの積分強度比は、1以上3以下であることが好ましく、更には1以上2以下であることが望ましい。この場合には、被膜2の亀裂の発生を効果的に抑えることができる。前記積分強度比が1未満の場合には、被膜2に含まれる4価のSiの含有量が少なすぎ、被膜2に亀裂が生じるおそれがある。
XPSでは、電圧15kV、電流10mAの条件で放射されるAlKα(単色)線を用いる。波形分離後のスペクトルにおける、負極活物質表面の1〜3価のSiに起因するピークBに対する4価のSiに起因するピークAの積分強度比は、図2(a)に示すように、ピークBの左右両側の最下点を結ぶ線とピークBの曲線との間に形成される山状部分の面積に対する、ピークAの左右両側の最下点を結ぶ線とピークAの曲線との間に形成される山状部分の面積の比率をいう。
被膜2の中には、上記4価のSi及び1〜3価のSiの他に、フッ化リチウムを含んでいることが多い。フッ化リチウムは、電解液に含まれるフッ化系塩がコア部と接触して分解反応して形成されたものである。被膜2の中には、フッ化リチウムのほかに、コア部1の成分である珪素又は/及び珪素化合物や、電解液の成分などを含んでいても良い。
被膜2は、負極活物質粒子3のコア部1の全表面を被覆しているとよい。コア部1が、電解液と接触して、電解液中の電解質を分解することを抑制し、またコア部1に吸蔵されているLiイオンの溶出を抑制するためである。
なお、上記の負極活物質粒子を主たる負極活物質とした上で、既に公知の他の負極活物質(たとえば黒鉛、Sn、Siなど)を添加して用いてもよい。
負極活物質層には、前記負極活物質の他に、結着剤や、導電助材などを含んでいても良い。
結着剤は、特に限定されるものではなく、既に公知のものを用いればよい。たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂など高電位においても分解しない樹脂を用いることができる。結着剤の配合割合は、質量比で、負極活物質:結着剤=1:0.05〜1:0.5であるのが好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
導電助材としては、リチウムイオン二次電池の電極で一般的に用いられている材料を用いればよい。たとえば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック(炭素質微粒子)、炭素繊維などの導電性炭素材料を用いるのが好ましく、導電性炭素材料の他にも、導電性有機化合物などの既知の導電助剤を用いてもよい。これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を混合して用いるとよい。導電助材の配合割合は、質量比で、負極活物質:導電助材=1:0.01〜1:0.5であるのが好ましい。導電助材が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助材が多すぎると電極の成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
リチウムイオン二次電池の負極に用いられる負極活物質粒子3を製造する方法について説明する。負極活物質粒子3のコア部1の原料として、一酸化珪素を含む原料粉末を用いるとよい。この場合、原料粉末中の一酸化珪素を、SiO2相とSi相との二相に不均化する。一酸化珪素の不均化では、SiとOとの原子比が概ね1:1の均質な固体である一酸化珪素(SiOn:nは0.5≦n≦1.5)が固体内部の反応により、SiO2相とSi相との二相に分離する。不均化により得られる酸化珪素粉末は、SiO2相とSi相とを含む。
原料粉末の一酸化珪素の不均化は、原料粉末にエネルギーを与えることにより進行する。一例として、原料粉末を加熱する、ミリングする、などの方法が挙げられる。
原料粉末を加熱する場合、一般に、酸素を絶った状態であれば800℃以上で、ほぼすべての一酸化珪素が不均化して二相に分離すると言われている。具体的には、非結晶性の一酸化珪素粉末を含む原料粉末に対して、真空中又は不活性ガス中などの不活性雰囲気中で800〜1200℃、1〜5時間の熱処理を行うことにより、非結晶性のSiO2相と結晶性のSi相の2相を含む酸化珪素粉末が得られる。
原料粉末をミリングする場合には、ミリングの機械的エネルギーの一部が、原料粉末の固相界面における化学的な原子拡散に寄与し、酸化物相と珪素相などを生成する。ミリングでは、原料粉末を、真空中、アルゴンガス中などの不活性ガス雰囲気下で、V型混合機、ボールミル、アトライタ、ジェットミル、振動ミル、高エネルギーボールミル等を使用して混合するとよい。ミリング後にさらに熱処理を施すことで、一酸化珪素の不均化をさらに促進させてもよい。
(正極)
正極は、集電体と、集電体の表面を被覆する正極活物質層とからなる。正極活物質層は、正極活物質を含み、好ましくは、更に、結着剤及び/又は導電助材を含む。導電助材および結着剤は、特に限定はなく、非水系二次電池で使用可能なものであればよい。正極活物質としては、例えば、リチウム・マンガン複合酸化物、リチウム・コバルト複合酸化物、リチウム・ニッケル複合酸化物などのリチウムと遷移金属との金属複合酸化物を用いる。具体的には、LiCoO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、Li2MnO3、Sなどが挙げられる。また、集電体は、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼など、非水系二次電池の正極に一般的に使用されるものであればよい。
正極は、集電体と、集電体の表面を被覆する正極活物質層とからなる。正極活物質層は、正極活物質を含み、好ましくは、更に、結着剤及び/又は導電助材を含む。導電助材および結着剤は、特に限定はなく、非水系二次電池で使用可能なものであればよい。正極活物質としては、例えば、リチウム・マンガン複合酸化物、リチウム・コバルト複合酸化物、リチウム・ニッケル複合酸化物などのリチウムと遷移金属との金属複合酸化物を用いる。具体的には、LiCoO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、Li2MnO3、Sなどが挙げられる。また、集電体は、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼など、非水系二次電池の正極に一般的に使用されるものであればよい。
(セパレータ)
正極と負極との間には、セパレータが介設されることが多い。セパレータは、正極と負極とを分離し非水電解液を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い微多孔膜を用いることができる。
正極と負極との間には、セパレータが介設されることが多い。セパレータは、正極と負極とを分離し非水電解液を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い微多孔膜を用いることができる。
(電解液)
電解液は、非水電解液であるとよい。非水電解液は、有機溶媒に電解質であるフッ素系化合物を溶解させたものである。電解質であるフッ素系化合物は、有機溶媒に可溶なアルカリ金属フッ化塩であることが好ましい。アルカリ金属フッ化塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、NaPF6、NaBF4、及びNaAsF6の群から選ばれる少なくとも1種を用いるとよい。非水電解液の有機溶媒は、非プロトン性有機溶媒であることがよく、たとえば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等から選ばれる一種以上を用いることができる。
電解液は、非水電解液であるとよい。非水電解液は、有機溶媒に電解質であるフッ素系化合物を溶解させたものである。電解質であるフッ素系化合物は、有機溶媒に可溶なアルカリ金属フッ化塩であることが好ましい。アルカリ金属フッ化塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、NaPF6、NaBF4、及びNaAsF6の群から選ばれる少なくとも1種を用いるとよい。非水電解液の有機溶媒は、非プロトン性有機溶媒であることがよく、たとえば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等から選ばれる一種以上を用いることができる。
リチウムイオン二次電池の形状に特に限定はなく、円筒型、積層型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極にセパレータを挟装させ電極体とし、正極集電体および負極集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後、この電極体を非水電解液とともに電池容器に密閉して電池となる。
リチウムイオン二次電池の試料1,2を以下のように製造し、XPS及び電池サイクル特性を測定した。
(試料1)
試料1のリチウムイオン二次電池を以下のように作製し、電池のサイクル評価試験を行った。
試料1のリチウムイオン二次電池を以下のように作製し、電池のサイクル評価試験を行った。
まず、市販のSiO粉末を不活性ガス雰囲気中で900℃、2時間加熱処理を行った。これにより、SiO粉末が不均化されて、負極活物質粒子3が得られた。次に、上記の不均化された酸化珪素からなる負極活物質粒子3と、ほかの負極活物質としての均質黒鉛(SMG)と、導電助材としてのケッチェンブラック(KB)と、結着剤としてのポリアミドイミド−シリカハイブリッド樹脂(AI-Si)と高分子量ポリアミドイミド(AI-301)を混合し、溶媒を加えてスラリー状の混合物を得た。溶媒は、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)であった。上記の不均化酸化珪素とSMGとKBとAI-SiとAI-301との質量比は百分率で、不均化酸化珪素/SMG/KB/AI-Si/AI-301=42/40/3/7.5/7.5であった。
上記ポリアミドイミド−シリカハイブリッド樹脂の商品名は、「コンポセランH900」(荒川化学工業社製)で、アルコキシシリル基をポリアミドイミド樹脂に結合してなる。
次に、スラリー状の混合物を、ドクターブレードを用いて集電体である銅箔の片面に成膜化し、所定の圧力でプレスし、200℃、2時間加熱し、放冷した。これにより、集電体表面に負極活物質層が固定されてなる負極が形成された。
次に、正極活物質としてのリチウム・ニッケル系複合酸化物LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)とを混合してスラリーとした。リチウム・ニッケル系複合酸化物とPVdFとABとの重量比は百分率で、リチウム・ニッケル系複合酸化物/PVdF/AB=88/6/6であった。このスラリーを集電体としてのアルミニウム箔の片面に塗布し、プレスし、焼成した。これにより、集電体の表面に正極活物質層を固定してなる正極を得た。
正極と負極との間に、セパレータとしてのポリプロピレン多孔質膜を挟み込んだ。この正極、セパレータ及び負極からなる電極体を複数積層した。2枚のアルミニウムフィルムの周囲を、一部を除いて熱溶着をすることにより封止して、袋状とした。袋状のアルミニウムフィルムの中に、積層された電極体を入れ、更に、電解液を入れた。電解液は、電解質としてのLiPF6が、有機溶媒に溶解してなる。有機溶媒は、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートを、3質量部と4質量部と4質量部の配合比で混合して調製した。電解液中のLiPF6の濃度は、1mol/Lであった。
その後、真空引きしながら、アルミニウムフィルムの開口部分を完全に気密に封止した。このとき、正極側及び負極側の集電体の先端を、フィルムの端縁部から突出させ、外部端子に接続可能とし、ラミネート電池を得た。
このように組み付けたラミネート電池に初期充放電(コンディショニング処理)を行った。この初期充放電は、1回目:0.2Cの定電流(CC)で4.1Vまで充電(0.2C−4.1V)、0.2Cの定電流(CC)で3Vまで放電(0.2C−3V)、2回目:0.2Cの定電流定電圧(CCCV)で4.1Vまで充電(0.2C−4.1V )、0.1Cの定電流(CC)で3Vまで放電(0.1C−3V)、3回目:1Cの定電流定電圧(CCCV)で4.2Vまで充電(1C−4.2V)、1Cの定電流(CC)で3Vまで放電(1C−3V)の条件で行なった。初期充放電では、充電と放電を各3回行った。初期充放電の電池の温度は55℃とした。初期充放電の後に、リチウムイオン二次電池を常温(25℃)に戻した。
(試料2)
試料2のリチウムイオン二次電池は、リチウムイオン二次電池の初期充放電を25℃で行ったこと以外は、試料1のリチウムイオン二次電池と同様である。
試料2のリチウムイオン二次電池は、リチウムイオン二次電池の初期充放電を25℃で行ったこと以外は、試料1のリチウムイオン二次電池と同様である。
<XPS>
上記試料1,2のリチウムイオン二次電池の負極活物質粒子3についてXPSによりスペクトル強度を測定した。XPSでは、25℃の温度下で、15kV、10mAの条件で放射されるAlKα線を、負極活物質粒子3の表面に照射した。AlKα線の照射角度θは、負極活物質粒子3の表面の接線に対して35°とした(図1)。図2(a)、図2(b)は、それぞれ試料1、試料2の負極活物質粒子3の96eV〜108eVの範囲の結合エネルギーのスペクトルを示す。
上記試料1,2のリチウムイオン二次電池の負極活物質粒子3についてXPSによりスペクトル強度を測定した。XPSでは、25℃の温度下で、15kV、10mAの条件で放射されるAlKα線を、負極活物質粒子3の表面に照射した。AlKα線の照射角度θは、負極活物質粒子3の表面の接線に対して35°とした(図1)。図2(a)、図2(b)は、それぞれ試料1、試料2の負極活物質粒子3の96eV〜108eVの範囲の結合エネルギーのスペクトルを示す。
図2(a)に示すように、試料1の負極活物質粒子3の96eV〜108eVの範囲の結合エネルギーのスペクトルの波形は、複数のピークが重なり合って形成されていた。このため、この範囲のスペクトルについて波形分離をした。その結果、結合エネルギーが103eVの位置にピークAが出現し、102eVの位置にはピークBが出現した。波形分離後のピークBに対するピークAの積分強度比(S4+/S1+〜3+)は、1.5であった。
102eVに出現したピークBは、1〜3価のSiに起因し、103eVに出現したピークAは、4価のSiに起因する。試料1では、負極活物質粒子3の被膜2に、1〜3価のSiのほかに、4価のSiも存在していることがわかる。負極活物質と電解液の成分から考えると、1〜3価のSiは、被膜2中で、おそらく、リチウムシリケイトなどの化合物として存在していると推定される。4価のSiは、SiO2、H2SiF6などの化合物として存在していると推定される。
図2(b)に示すように、試料2の負極活物質粒子3の96〜108eVの範囲の結合エネルギーのスペクトルには、1つの大きなピークBが出現した。このピークBは、102eVに位置しており、試料1の負極活性物質から放出されたスペクトルの波形分離後のピークBと同じ位置であった。試料2では、103eVの位置に、試料1のようなピークAは出現しなかった。波形分離後のピークBに対するピークAの積分強度比(S4+/S1+〜3+)は、0であった。
試料2では、103eVのピークAは出現せず、102eVのピークBが出現したことから、試料2の負極活物質粒子3の被膜2には1〜3価のSiは存在するが、4価のSiは存在しないことがわかる。試料2でも、被膜2中では、1〜3価のSiがリチウムシリケイトなどの化合物として存在していると推定される。
<電池のサイクル実験>
試料1,2のリチウムイオン二次電池のサイクル試験を行った。サイクル試験は、25℃で行い、充電条件を1Cの定電流(CC)で4.2Vまで充電し、放電条件を1Cの定電流(CC)で2.5Vまで放電した。初期充放電処理後の最初の充放電試験を1サイクル目とし、放電容量維持率が60%になるまで同様の充放電を繰り返し行った。各サイクル毎に、放電容量を測定し、各サイクルにおける放電容量維持率を算出した。放電容量維持率は、Nサイクル目の放電容量を初回の放電容量で除した値の百分率((Nサイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)×100)で求められる値である。各サイクル毎の放電容量維持率を図3に示した。
試料1,2のリチウムイオン二次電池のサイクル試験を行った。サイクル試験は、25℃で行い、充電条件を1Cの定電流(CC)で4.2Vまで充電し、放電条件を1Cの定電流(CC)で2.5Vまで放電した。初期充放電処理後の最初の充放電試験を1サイクル目とし、放電容量維持率が60%になるまで同様の充放電を繰り返し行った。各サイクル毎に、放電容量を測定し、各サイクルにおける放電容量維持率を算出した。放電容量維持率は、Nサイクル目の放電容量を初回の放電容量で除した値の百分率((Nサイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)×100)で求められる値である。各サイクル毎の放電容量維持率を図3に示した。
図3に示すように、試料1のリチウムイオン二次電池は、試料2のものに比べて、放電容量維持率が高かった。
上記のように、試料1の負極活物質粒子3の被膜2には、試料2とは異なって、4価のSiが存在していた。試料1の電池サイクル特性が試料2に比べて高くなったのは、SEI膜質の特性向上によると考えられる。
1:コア部、2:被膜、3:負極活物質粒子
Claims (7)
- リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質をもつ正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能であって珪素又は/及び珪素化合物からなる負極活物質をもつ負極と電解液とを備えたリチウムイオン二次電池であって、
前記負極活物質は、初期充放電を行うことにより生成し且つ4価のSiを含むSEI被膜により被覆されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池。 - 前記初期充放電は、35℃以上80℃以下の温度で行う請求項1記載のリチウムイオン二次電池。
- 前記SEI被膜には、更に、1価のSi、2価のSi及び3価のSiの少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池。
- 電圧15kV、電流10mAの条件で放射されるAlKα(単色)線を用いるX線光電子分光法(XPS)により測定され波形分離されたスペクトルにおいて、結合エネルギーが103eV付近にピークが存在する請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
- 電圧15kV、電流10mAの条件で放射されるAlKα(単色)線を用いるX線光電子分光法(XPS)により測定され波形分離されたスペクトルにおいて、結合エネルギーが103eV付近及び102eV付近にピークが存在する請求項3又は4に記載のリチウムイオン二次電池。
- 前記結合エネルギーが前記102eVのピークに対する前記結合エネルギーが103eVのピークの積分強度比は、1以上3以下である請求項5記載のリチウムイオン二次電池。
- 前記電解液は、フッ素系化合物を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
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