JP6202038B2 - リチウムイオン二次電池及びリチウムイオン二次電池の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池及びリチウムイオン二次電池の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、正極活物質粒子を含む正極活物質層を有する正極板と、負極板と、フッ素を含む化合物を有する非水電解液とを備えるリチウムイオン二次電池及びその製造方法に関する。
従来より、リチウムイオン二次電池(以下、単に電池とも言う)では、充電時に電池が高電圧になるため、正極活物質粒子の粒子表面で非水電解液の非水溶媒が酸化分解され易いことが知られている。非水溶媒が酸化分解されて水素イオンが発生すると、非水電解液がフッ素を含む化合物を有する場合には、水素イオンがフッ素と反応してフッ酸(HF)を生成し得る。すると、このフッ酸の作用により、正極活物質粒子中の遷移金属が溶出して、電池容量が少なくなる。このため、このような電池では、充放電サイクル試験を行ったときに、電池容量が大きく低下するという問題がある。
この問題に対し、正極活物質粒子の粒子表面にフッ素を含む被膜を形成することが知られている。正極活物質粒子の粒子表面を被膜で覆うことで、非水電解液が正極活物質に直接接触するのを抑制できるので、充電時等に非水電解液の非水溶媒が酸化分解されるのを抑制できる。特に、フッ素はそれ自体が酸化され難く、また、フッ素を含む被膜は堅牢であるため、非水溶媒の酸化分解を効果的に抑制できる。従って、電池に充放電サイクル試験を行ったときに、電池容量が低下するのを抑制できる。例えば、特許文献1には、遷移金属として少なくともニッケル及びマンガンを含むリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の正極活物質粒子の粒子表面に、フッ素を含む被膜を形成した電池が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲等を参照)。
特開2012−181975号公報
しかしながら、フッ素を含む被膜は、それ自体が抵抗体であるため、被膜により電池抵抗が高くなりがちである。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、充放電サイクル試験における電池容量の低下を適切に抑制できると共に、電池抵抗を適切に低くできるリチウムイオン二次電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明の一態様は、リチウム遷移金属複合酸化物からなる正極活物質粒子を含む正極活物質層を有する正極板と、負極板と、フッ素を含む化合物を有する非水電解液と、を備えるリチウムイオン二次電池であって、上記正極活物質粒子の粒子表面に、フッ素及びリンを含む被膜を有し、上記被膜中のフッ素の原子数Cfとリンの原子数Cpとの比Cf/Cpが、1.89≦Cf/Cp≦2.61を満たし、上記被膜の厚みα(nm)が、10≦α≦15を満たすリチウムイオン二次電池である。
このリチウムイオン二次電池では、正極活物質粒子の粒子表面に被膜を形成しているが、この被膜は、フッ素(F)のほか、リン(P)をも含む。被膜にリンを含ませることで、被膜の抵抗を低くして電池抵抗を低くできることが判った。しかし、被膜中のリンの原子数Cpがフッ素の原子数Cfに対して多すぎると、充放電サイクル試験において電池容量が大きく低下することも判った。
これに対し、上述の電池では、被膜中のフッ素の原子数Cfとリンの原子数Cpとの比Cf/Cpを、1.89≦Cf/Cp≦2.61を満たす範囲としている。Cf/Cp≧1.89とすることで、充放電サイクル試験における電池容量の低下を適切に抑制できる。一方、Cf/Cp≦2.61とすることで、電池抵抗を適切に低くできる。従って、この電池では、充放電サイクル試験における電池容量の低下を適切に抑制することと、電池抵抗を適切に低くすることを、両立させることができる。
更に、フッ素及びリンを含む被膜の厚みαが薄すぎると、具体的には、厚みαが10nmよりも薄いと、充放電サイクル試験において電池容量が低下する。被膜の厚みαが薄すぎると、非水電解液の非水溶媒が正極活物質粒子の粒子表面で酸化分解され易くなり、正極活物質粒子中の遷移金属が溶出し易くなるためと考えられる。
一方、被膜の厚みαが厚すぎると、具体的には、厚みαが15nmよりも厚いと、電池抵抗が大きくなることが判った。被膜は、リンを含有していても、抵抗体であるため、厚みαが厚すぎると、電池抵抗が高くなるためと考えられる。
これに対し、上述のリチウムイオン二次電池では、被膜の厚みα(nm)を、10≦α≦15としているので、充放電サイクル試験における電池容量の低下を更に効果的に抑制できると共に、電池抵抗を更に効果的に低くできる。
「フッ素及びリンを含む被膜」には、フッ素及びリンのほか、非水電解液の成分(電解質や非水溶媒、添加剤など)の分解物などが含まれていてもよい。
「正極活物質粒子」をなす正極活物質としては、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、例えば、遷移金属としてニッケル(Ni)とコバルト(Co)とマンガン(Mn)とを含むリチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物や、遷移金属としてニッケルとマンガンとを含むリチウムニッケルマンガン系複合酸化物、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)が挙げられる。
「正極活物質層」には、正極活物質粒子のほか、例えば、黒鉛、カーボンブラックなどの導電材や、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などの結着剤を含めることができる。
「負極板」は、負極活物質粒子を含む負極活物質層を有する形態とすることができる。負極活物質粒子としては、例えば、黒鉛などリチウムを挿入・脱離可能な炭素材料からなる粒子が挙げられる。
「非水電解液」は、非水溶媒に電解質を溶解させたものであるが、他の添加物を含ませることもできる。なお、非水電解液に含まれる「フッ素を含む化合物」は、フッ素を含む電解質(後述するLiPF6 など)でもよいし、フッ素を含む添加物(後述するLiFなど)でもよい。また、フッ素を含む化合物は、1種のみでもよいし、2種以上含まれていてもよい。
非水溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの有機溶媒が挙げられ、これらを単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。
また、電解質としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3 などが挙げられ、これらを単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
他の添加物としては、例えば、フッ化物や、リン化合物、リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)が挙げられる。
フッ化物としては、例えば、AgF、CoF2、CoF3、CuF、CuF2、FeF2、FeF3、LiF、MnF2、MnF3、SnF2、SnF4、TiF3、TiF4、ZrF4などが挙げられ、これらを単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
リン化合物としては、例えば、LiPO3やLi3PO4が挙げられ、これらを単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
更に、上記のリチウムイオン二次電池であって、前記被膜は、前記比Cf/Cpが、膜厚方向の中央よりも外側の外側部に比べ、上記中央よりも内側の内側部で大きくされてなるリチウムイオン二次電池とすると良い。
この電池では、被膜の外側部よりも内側部で比Cf/Cpを大きくしている。これにより、比Cf/Cpを膜厚方向に一定とした被膜に比べて、充放電サイクル試験における電池容量の低下を更に抑制できる。
更に、上記のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池であって、前記リチウム遷移金属複合酸化物の組成式において示される、リチウムの量Daとリチウムを除く遷移金属酸化物部分の量Dbとの量比Da/Dbが、1.1≦Da/Db≦1.2を満たす正極活物質粒子を用いて形成してなるリチウムイオン二次電池とすると良い。
フッ素は、常温でも酸化力が強く、正極活物質(リチウム遷移金属複合酸化物)のリチウムと反応してフッ化リチウム(LiF)を形成する。このため、正極活物質粒子の粒子表面にフッ素を含む被膜を形成すると、電池反応に寄与できるリチウムの数が減るため、初期の電池容量が小さくなる。
これに対し、上述の電池は、リチウム遷移金属複合酸化物の組成式において示される、リチウムの量Daと遷移金属酸化物部分の量Dbとの量比Da/Dbが、1.1≦Da/Db≦1.2を満たす正極活物質粒子を用いて作製した電池である。
Da/Db≧1.1とすることで、初期の電池容量が小さくなるのを抑制できる。用いた正極活物質粒子中にリチウムが多く存在するため、フッ化リチウムが生成されたとしても、電池容量が低下するのを抑制できるからである。
また、1.1≦Da/Db≦1.2とすることで、電池抵抗を適切に低くできる。その理由は、Da/Db<1.1では、リチウムが少なすぎて、正極活物質粒子からリチウムが抜けすぎるため、電池抵抗が高くなる。一方、Da/Db>1.2では、リチウムが多すぎて、正極活物質粒子の結晶が歪むため、電池抵抗が高くなるからである。
従って、この電池では、初期の電池容量の低下を適切に抑制できると共に、電池抵抗を適切に低くできる。
更に、上記のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池であって、前記正極活物質粒子は、スピネル型の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガン系複合酸化物からなり、TOF−SIMS分析(飛行時間二次イオン質量分析計:Time-of-flight secondary ion mass spectrometer)により定量される、上記正極活物質粒子の前記粒子表面のMn−F量βが、8.2≦β≦8.7を満たすリチウムイオン二次電池とすると良い。
正極活物質粒子の粒子表面のMn−F量βが少なすぎると、具体的には、Mn−F量βが8.2よりも少ないと、電池抵抗が高くなることが判った。その理由は、β<8.2である場合には、Mn−F結合によるリチウムイオンの脱溶媒和効果が低くなるため、電池抵抗が高くなる。一方、β≧8.2とすると、リチウムイオンの脱溶媒和が促進され、電池抵抗が低下すると考えられる。
一方、粒子表面のMn−F量βが多すぎても、具体的には、Mn−F量βが8.7よりも多くても、電池抵抗が大きくなることが判った。その理由は、β>8.7である場合には、正極活物質粒子の結晶がゆがむため、電池抵抗が増加すると考えられる。
他方、充放電サイクル試験における電池容量の低下量は、少なくともMn−F量βが8.2≦β≦8.7の範囲内では、ほぼ一定であり、電池容量の低下を適切に抑制できることが判った。
上述のリチウムイオン二次電池では、正極活物質粒子の粒子表面のMn−F量βを、8.2≦β≦8.7としているので、電池抵抗を適切に低くできると共に、充放電サイクル試験における電池容量の低下を適切に抑制できる。
なお、スピネル型の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガン系複合酸化物(以下、単にスピネル構造のリチウムニッケルマンガン系複合酸化物とも言う)は、以下の一般式(1)で表される。
LiNixyMn2-x-y4 ・・・(1)
但し、xは、x>0、好ましくは、0.2≦x≦1.0である。
また、yは、y≧0、好ましくは、0≦y<1.0である。
また、x+y<2.0である。
また、「M」は、Ni,Mn以外の任意の遷移金属元素または典型金属元素(例えば、Fe,Co,Cu,Cr,Zn及びAlから選択される1種または2種以上)である。或いは、半金属元素(例えば、B,SiおよびGeから選択される1種または2種以上)や非金属元素であってもよい。
なお、正極活物質粒子がスピネル構造を有しているか否かについては、例えばX線構造解析(好ましくは単結晶X線構造解析)によって判別できる。具体的には、CuKα線を使用したX線回折測定によって判別できる。
また、他の態様は、リチウム遷移金属複合酸化物からなる正極活物質粒子を含む正極活物質層を有する正極板と、負極板と、フッ素を含む化合物を有する非水電解液と、を備え、上記正極活物質粒子の粒子表面に、フッ素及びリンを含む被膜を有し、上記被膜中のフッ素の原子数Cfとリンの原子数Cpとの比Cf/Cpが、1.89≦Cf/Cp≦2.61を満たし、上記被膜の厚みα(nm)が、10≦α≦15を満たすリチウムイオン二次電池の製造方法であって、上記正極活物質粒子の粒子表面に、フッ素を含む第1被膜を形成する第1被膜形成工程と、上記第1被膜形成工程の後、上記第1被膜を有する上記正極活物質粒子と、リン化合物とを用いて、上記正極活物質層を有する上記正極板を形成する正極板形成工程と、上記正極板形成工程の後、上記正極板、上記負極板、及び、上記非水電解液を用いて、電池を組み立てる組立工程と、上記組立工程の後、初充電を行って、リンを含む第2被膜を形成し、上記第1被膜と上記第2被膜とからなり、1.89≦Cf/Cp≦2.61を満たす上記被膜を形成する初充電工程と、を備えるリチウムイオン二次電池の製造方法である。
このリチウムイオン二次電池の製造方法によれば、まず、リチウム遷移金属複合酸化物からなる正極活物質粒子の粒子表面に、フッ素を含む第1被膜を形成する(第1被膜形成工程)。この第1被膜は、例えば、正極活物質粒子をフッ素ガスや三フッ化窒素(NF3)ガスを含む雰囲気に曝すことにより形成できる。或いは、正極活物質粒子をフッ化物を含む溶液に浸漬することにより形成してもよい。
その後、第1被膜を有する正極活物質粒子及びリン化合物を用いて正極板を形成し(正極板形成工程)、更に、電池を組み立てて(組立工程)、初充電を行う(初充電工程)。この初充電工程では、正極活物質層中のリン化合物が分解されて、第1被膜上にリンを含む第2被膜が形成される。これにより、フッ素とリンを含み、1.89≦Cf/Cp≦2.61を満たし、厚みα(nm)が10≦α≦15を満たす被膜を容易に形成できる。
また、この製造方法では、フッ素を含む第1被膜を形成した後に、リンを含む第2被膜を形成しているので、第1被膜及び第2被膜からなる被膜は、膜厚方向の中央よりも外側の外側部に比べ内側の内側部で、前述の比Cf/Cpが大きくなる。従って、比Cf/Cpを膜厚方向に一定とした被膜に比べて、充放電サイクル試験における電池容量の低下を更に抑制できる電池を製造できる。
なお、「リン化合物」としては、前述のように、LiPO3やLi3PO4などが挙げられ、これらを単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
更に、上記のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、前記第1被膜形成工程は、前記正極活物質粒子を、フッ素ガス及び三フッ化窒素ガスの少なくともいずれかを含む雰囲気に曝して、前記第1被膜を形成する工程であるリチウムイオン二次電池の製造方法とすると良い。
正極活物質粒子を、フッ素ガス及び三フッ化窒素ガスの少なくともいずれかを含む雰囲気に曝して、第1被膜を形成することで、フッ素を含む第1被膜を容易に形成できる。
更に、上記のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、前記第1被膜形成工程において、上記リチウム遷移金属複合酸化物の組成式において示される、リチウムの量Daとリチウムを除く遷移金属酸化物部分の量Dbとの量比Da/Dbが、1.1≦Da/Db≦1.2を満たす正極活物質粒子を用いるリチウムイオン二次電池の製造方法とすると良い。
この電池の製造方法では、リチウムの量Daと遷移金属酸化物部分の量Dbとの量比Da/Dbが1.1≦Da/Db≦1.2を満たす正極活物質粒子を、第1被膜形成工程で用いて電池を製造する。Da/Db≧1.1とすることで、前述のように、初期の電池容量が小さくなるのを抑制できる。また、1.1≦Da/Db≦1.2とすることで、前述のように、電池抵抗を適切に低くできる。従って、初期の電池容量の低下を適切に抑制できると共に、電池抵抗を適切に低くできる電池を製造できる。
更に、上記のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、前記第1被膜形成工程は、スピネル型の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガン系複合酸化物からなる正極活物質粒子を用い、TOF−SIMS分析により定量される、前記正極活物質粒子の前記粒子表面のMn−F量βが、8.2≦β≦8.7を満たす形態にマンガンとフッ素を結合させて、前記第1被膜を形成する工程であるリチウムイオン二次電池の製造方法とすると良い。
前述のように、正極活物質粒子の粒子表面のMn−F量βを、8.2≦β≦8.7とすることで、電池抵抗を適切に低くできる。一方、少なくとも8.2≦β≦8.7の範囲内では、充放電サイクル試験における電池容量の低下量は、ほぼ一定であり、電池容量の低下を適切に抑制できる。従って、上述の製造方法によれば、電池抵抗を適切に低くできると共に、充放電サイクル試験における電池容量の低下を適切に抑制できる電池を製造できる。
実施形態1,2に係るリチウムイオン二次電池の斜視図である。 実施形態1,2に係るリチウムイオン二次電池を電池横方向及び電池縦方向に沿う平面で切断した縦断面図である。 実施形態1,2に係り、正極板及び負極板をセパレータを介して互いに重ねた状態を示す、電極体の展開図である。 実施形態1,2に係り、正極活物質粒子の断面のうち粒子表面近傍の様子を模式的に示す説明図である。 実施例1,2、参考例1及び比較例1,2に係る各電池について、被膜の比Cf/Cpと、容量維持率及び電池抵抗比との関係を示すグラフである。 実施例1,3及び参考例2,3に係る各電池について、被膜の厚みαと、容量維持率及び電池抵抗比との関係を示すグラフである。 実施例1,4に係る各電池について、スパッタ時間と被膜の比Cf/Cpとの関係を示すグラフである。 実施例1,4に係る各電池の容量維持率を示すグラフである。 実施例5〜8に係る各電池について、正極活物質粒子の量比Da/Dbと、初期容量比及び電池抵抗比との関係を示すグラフである。 実施例9〜13に係る各電池について、正極活物質粒子の粒子表面のMn−F量βと、池抵抗比及び容量維持率との関係を示すグラフである。
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1及び図2に、本実施形態1に係るリチウムイオン二次電池1(以下、単に「電池1」とも言う)を示す。また、図3に、この電池1を構成する電極体20の展開図を示す。更に、図4に、正極活物質粒子24の断面のうち粒子表面24n近傍の状態を模式的に示す。なお、以下では、電池1の電池厚み方向BH、電池横方向CH及び電池縦方向DHを、図1及び図2に示す方向と定めて説明する。
この電池1は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両などに搭載される角型で密閉型のリチウムイオン二次電池である。電池1は、電池ケース10と、この内部に収容された電極体20及び非水電解液40と、電池ケース10に支持された正極端子50及び負極端子51等から構成される。
このうち電池ケース10は、直方体状で金属(本実施形態1ではアルミニウム)からなる。この電池ケース10は、上側のみが開口した直方体箱状のケース本体部材11と、このケース本体部材11の開口11hを閉塞する形態で溶接された矩形板状のケース蓋部材13とから構成される。ケース蓋部材13には、電池ケース10の内圧が所定圧力に達した際に破断開弁する安全弁14が設けられている。また、このケース蓋部材13には、電池ケース10の内外を連通する注液孔13hが形成され、封止部材15で気密に封止されている。
また、ケース蓋部材13には、それぞれ内部端子部材53、外部端子部材54及びボルト55により構成される正極端子50及び負極端子51が、樹脂からなる内部絶縁部材57及び外部絶縁部材58を介して固設されている。なお、正極端子50はアルミニウムからなり、負極端子51は銅からなる。電池ケース10内において、正極端子50は、後述する電極体20のうち正極板21の正極集電部21mに接続し導通している。また、負極端子51は、電極体20のうち負極板31の負極集電部31mに接続し導通している。
次に、電極体20について説明する(図2及び図3参照)。この電極体20は、扁平状をなし、電池ケース10内に収容されている。電極体20は、帯状の正極板21と帯状の負極板31とを、帯状の一対のセパレータ39を介して互いに重ねて捲回し、扁平状に圧縮したものである。
正極板21は、帯状のアルミニウム箔からなる正極集電箔22の両主面のうち、幅方向の一部でかつ長手方向に延びる領域上に、正極活物質層23を帯状に設けてなる。正極活物質層23には、後述する正極活物質粒子24、導電材26、結着剤27及びリン化合物28が含まれる。本実施形態1では、導電材26としてアセチレンブラック(AB)を、結着剤27としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、リン化合物28としてリン酸リチウム(Li3PO4)を用いている。
正極集電箔22のうち、幅方向の片方の端部は、自身の厚み方向に正極活物質層23が存在せず、正極集電箔22が露出した正極集電部21mとなっている。前述の正極端子50は、この正極集電部21mに溶接されている。
正極活物質粒子24は、本実施形態1では、リチウム遷移金属複合酸化物、具体的には、スピネル型の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の1つであるLiNi0.5Mn1.54 からなる。本実施形態1の電池1では、この組成式(LiNi0.5Mn1.54 )において示される、リチウム(Li)の量Daとリチウムを除く遷移金属酸化物部分(Ni0.5Mn1.54 )の量Dbとの量比Da/Dbが、1.1≦Da/Db≦1.2を満たす正極活物質粒子24xを用いて電池1を製造している。本実施形態1では、Da/Db=1.1である。
また、正極活物質粒子24の粒子表面24nには、フッ素及びリンを含む被膜25が形成されている(図4参照)。また、この被膜25には、フッ素及びリンのほか、非水電解液40の他の成分(電解質及び非水溶媒)の分解物も含まれている。
この被膜25は、 被膜25中に含まれるフッ素の原子数Cfとリンの原子数Cpとの比Cf/Cpが、1.89≦Cf/Cp≦2.61を満たしている。本実施形態1では、Cf/Cp=2.23である。
また、この被膜25は、後述するように、上述の比Cf/Cpが、膜厚方向MHの中央(図4中に破線で示す)よりも外側の外側部25bに比べ、中央よりも内側の内側部25aで大きくされている(図7の実施例を参照)。
また、この被膜25の厚みα(nm)は、10≦α≦15を満たしている。本実施形態1では、厚みα=10(nm)である。
なお、被膜25に含まれるフッ素の原子数Cfとリンの原子数Cpとの「比Cf/Cp」は、以下の手法で求める。即ち、電池1を初充電した後、大気非暴露環境下で電池1を解体し、正極板21を取り出す。この正極板21を洗浄した後、アルバック・ファイ株式会社製の走査型X線光電子分光分析器(μ−XPS)であるQuanteraIIを用いて分析する。具体的には、0〜1100eVのワイドスキャン分析により検出された全元素量からフッ素とリンの割合(Atom%)をそれぞれ求め、比Cf/Cpを算出する。
また、被膜25の「厚みα」は、以下の手法で求める。即ち、電池1を初充電した後、大気非暴露環境下で電池1を解体し、正極板21を取り出す。この正極板21を洗浄した後、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製の集束イオンビーム加工観察装置FB−2100を用いて、正極活物質粒子24の薄片を作成し、更に、同社製の超薄膜評価装置HD−2300を用いて、正極活物質粒子24の切断面を観察して、被膜25の厚みαを測定する。
また、被膜25の厚み方向における比Cf/Cpの分布は、以下の手法で求める。即ち、電池1を初充電した後、大気非暴露環境下で電池1を解体し、正極板21を取り出す。この正極板21を洗浄した後、この正極活物質粒子24を、アルバック・ファイ株式会社製の走査型X線光電子分光分析器(μ−XPS)であるQuanteraIIを用いて分析する。具体的には、イオンスパッタを行いながら2分間毎にXPS測定を行うことで、被膜25の厚み方向における比Cf/Cpの分布を測定する。
これにより、図7に実施例として示すスパッタ時間(min)と比Cf/Cpとの関係が得られる。スパッタ時間が0〜4分の間では、比Cf/Cpが小さいのに対し、スパッタ時間が4分を越えると、比Cf/Cpが大きくなる。この結果から、比Cf/Cpが、被膜25の外側部25bに比べて内側部25aで大きくなっていること、即ち、膜厚方向MHの内側にフッ素(F)が多く、外側にリン(P)が多いことが判る。
次に、負極板31について説明する。この負極板31は、帯状の銅箔からなる負極集電箔32の両主面のうち、幅方向の一部でかつ長手方向に延びる領域上に、負極活物質層33を帯状に設けてなる。この負極活物質層33には、負極活物質粒子、結着剤及び増粘剤が含まれる。本実施形態1では、負極活物質粒子として黒鉛粒子を、結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)を、増粘剤としてカルボシキメチルセルロース(CMC)を用いている。また、負極集電箔32のうち、幅方向の片方の端部は、自身の厚み方向に負極活物質層33が存在せず、負極集電箔32が露出した負極集電部31mとなっている。前述の負極端子51は、この負極集電部31mに溶接されている。
セパレータ39は、樹脂からなる多孔質膜であり、帯状をなす。
次に、非水電解液40について説明する。この非水電解液40は、電池ケース10内に収容されており、非水電解液40の一部は電極体20内に含浸され、残りは余剰液として電池ケース10の底部に溜まっている。この非水電解液40の電解質は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6 )であり、その濃度は1.0Mである。また、非水電解液40の非水溶媒は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを、1:1の体積比で混合した混合有機溶媒である。この非水電解液40は、フッ素を含む化合物として、上述のように、LiPF6 を有している。
次いで、上記電池1の製造方法について説明する。まず、正極板21を形成する。具体的には、リチウム遷移金属複合酸化物、本実施形態1では、スピネル型の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガン系複合酸化物であるLiNi0.5Mn1.54 からなり、リチウム(Li)の量Daとリチウムを除く遷移金属酸化物部分(Ni0.5Mn1.54 )の量Dbとの量比Da/Dbが、1.1≦Da/Db≦1.2を満たす(本実施形態1ではDa/Db=1.1)正極活物質粒子24xを用意する。
そして、「第1被膜形成工程」において、この正極活物質粒子24xの粒子表面24xnに、フッ素を含む第1被膜25cを形成する(図4参照)。具体的には、25℃の温度環境下において、正極活物質粒子24xを、フッ素ガスの雰囲気に1時間曝すことで、正極活物質粒子24xの粒子表面24xnに、フッ素を含む第1被膜25cを形成する。
なお、フッ素ガスのガス圧力の大きさを制御することで、第1被膜25cを厚みを調整できる。具体的には、ガス圧力を高くするほど、第1被膜25cを厚く形成できる。本実施形態1では、ガス圧力を700Paとした。
次に、「正極板形成工程」において、第1被膜25cを形成した正極活物質粒子24xと、導電材26(アセチレンブラック)と、結着剤27(ポリフッ化ビニリデン)と、リン化合物28(リン酸リチウム)とを、溶媒(本実施形態1では、NMP)中に投入し、これらを混合して、正極ペーストを作製する。正極活物質粒子24xと導電材26と結着剤27とリン化合物28との配合量は、重量比で92.1:4:3:0.9とする。
その後、この正極ペーストを、帯状のアルミニウム箔からなる正極集電箔22の一方の主面に塗布し、乾燥させて、正極活物質層23を形成する。更に、正極集電箔22の他方の主面にも正極ペーストを塗布し、乾燥させて、正極活物質層23を形成する。その後、これをプレスして、正極板21を得る。
また別途、負極板31を形成しておく。
次に、「組立工程」において、正極板21及び負極板31を一対のセパレータ39を介して互いに重ね、巻き芯を用いて捲回する。更に、これを扁平状に圧縮して電極体20を形成する。
また別途、ケース蓋部材13、内部端子部材53、外部端子部材54、ボルト55、内部絶縁部材57及び外部絶縁部材58を用意する。そして、ケース蓋部材13に、内部絶縁部材57及び外部絶縁部材58を介して、それぞれ内部端子部材53、外部端子部材54及びボルト55からなる正極端子50及び負極端子51を固設する。そして、電極体20の正極集電部21m及び負極集電部31mに、ケース蓋部材13と一体化された正極端子50及び負極端子51をそれぞれ溶接する。
次に、ケース本体部材11を用意し、このケース本体部材11内に、電極体20を収容した後、ケース本体部材11にケース蓋部材13を溶接して電池ケース10を形成する。その後、非水電解液40を、注液孔13hから電池ケース10内に注液し、非水電解液40を電極体20内に含浸させる。その後、注液孔13hを封止部材15で封止する。
次に、「初充電工程」において、この電池に初充電を行って、リンを含む第2被膜25dを形成し、第1被膜25cと第2被膜25dとからなり、1.89≦Cf/Cp≦2.61を満たす被膜25を形成する。具体的には、この電池に0.3Cの定電流で電池電圧0V(SOC0%)から4.9V(SOC100%)まで充電する。
なお、この初充電時の充電電流値の大きさを制御することで、第2被膜25dの厚みを調整できる。具体的には、充電電流値を大きくするほど、第2被膜25dを厚く形成できる。
この初充電の際、正極活物質粒子24の粒子表面24nで非水電解液40の非水溶媒が酸化分解されて水素イオンが発生する。この水素イオンは、非水電解液40中のフッ素を含む化合物(具体的には、LiPF6 )と反応して、フッ酸(HF)を生成する。更に、このフッ酸は、正極活物質層23中のリン化合物28(リン酸リチウム)と反応する。これにより、第1被膜25c上にリンを含む第2被膜25dが形成される。この第2被膜25dには、リンのほか、非水電解液40をなす成分(電解質及び非水溶媒)の分解物も含まれる。そして、これら第1被膜25c及び第2被膜25dによって、1.89≦Cf/Cp≦2.61を満たす被膜25が形成される。
その後は、この電池について、各種検査を行う。かくして、電池1が完成する。
(実施形態2)
次いで、第2の実施形態について説明する。実施形態1では、正極活物質粒子24xを「フッ素ガス」の雰囲気に曝すことで、正極活物質粒子24xの粒子表面24xnに、フッ素を含む第1被膜25cを形成した。これに対し、本実施形態2では、正極活物質粒子24xを「三フッ化窒素ガス」の雰囲気に曝すことで、正極活物質粒子24xの粒子表面24xnに、フッ素を含む第1被膜125cを形成する点が大きく異なる。
本実施形態2に係る電池100は、正極活物質粒子124以外は実施形態1の電池1と同様である。本実施形態2に係る正極活物質粒子124は、リチウム遷移金属複合酸化物、具体的には、スピネル型の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガン系複合酸化物の1つであるLiNi0.5Mn1.54 からなる。本実施形態2の電池100は、実施形態1と同様に、この組成式(LiNi0.5Mn1.54 )において示される、リチウム(Li)の量Daとリチウムを除く遷移金属酸化物部分(Ni0.5Mn1.54 )の量Dbとの量比Da/Dbが、1.1≦Da/Db≦1.2を満たす正極活物質粒子24xを用いて製造している。本実施形態2では、Da/Db=1.1である。
また、正極活物質粒子124の粒子表面124nには、フッ素及びリンを含む被膜125が形成されている(図4参照)。また、この被膜125には、フッ素及びリンのほか、非水電解液40の他の成分(電解質及び非水溶媒)の分解物も含まれている。
この被膜125は、 被膜125中に含まれるフッ素の原子数Cfとリンの原子数Cpとの比Cf/Cpが、1.89≦Cf/Cp≦2.61を満たしている。本実施形態2では、Cf/Cp=2.05である。
また、この被膜125は、上述の比Cf/Cpが、膜厚方向MHの中央よりも外側の外側部125bに比べ、中央よりも内側の内側部125aで大きくされている。
また、この被膜125の厚みα(nm)は、10≦α≦15を満たしている。本実施形態2では、厚みα=10(nm)である。
また、後述するTOF−SIMS分析により定量される、正極活物質粒子124の粒子表面124nのMn−F量βは、8.2≦β≦8.7を満たしている。本実施形態2では、β=8.5である。
なお、正極活物質粒子124の粒子表面124nの「Mn−F量β」は、以下の手法で求める。即ち、電池100を初充電した後、大気非暴露環境下で電池100を解体し、正極板21を取り出す。この正極板21を洗浄した後、飛行時間型二次イオン質量分析計(TOF−SIMS:Time-of-flight secondary ion mass spectrometer,IONTOF社製TOFSIMS5)を用いて分析する。正極活物質粒子124の粒子表面124nの「Mn−F結合」は、TOF−SIMS測定の際「MnF2 」として検出される。従って、このMnF2 成分の二次イオン強度を調査することで、Mn−F量βを求めることができる。そこで、下記の測定条件で測定を行い、その測定結果について、下記の算出式により、質量数(m/z)が110以下の全二次イオンの検出強度の総和に対する、MnF2 成分の二次イオン強度の割合(%)を求め、この値をMn−F量β(%)とした。
(測定条件)
一次イオン:Bi3++
加速電圧:25kV 分析時の帯電防止用電子中和銃:使用
分析領域:200um×200um□
(算出式)
Mn−F量β={(MnF2 成分の二次イオン強度)/(質量数(m/z)が110以下の全二次イオンの検出強度の総和)}×100(%)
次いで、上記電池100の製造方法について説明する。
まず、実施形態1と同様の正極活物質粒子24xを用意し、「第1被膜形成工程」において、この正極活物質粒子24xの粒子表面24xnに、フッ素を含む第1被膜125cを形成する(図4参照)。具体的には、25℃の温度環境下において、正極活物質粒子24xを、三フッ化窒素ガスの雰囲気に1時間曝すことで、正極活物質粒子24xの粒子表面24xnに、フッ素を含む第1被膜125cを形成する。
その際、三フッ化窒素ガスのフッ素(F)が正極活物質粒子24xの粒子表面24xnのマンガン(Mn)と結合する(粒子表面24xnでMn−F結合が生じる)。このMn−F結合は、前述のように、TOF−SIMS分析により定量すると、8.2≦β≦8.7を満たす。本実施形態2では、Mn−F量β=8.5である。
実施形態1では、第1被膜25cの形成にフッ素ガスを用いている。フッ素ガスはフッ素化強度が高いため、フッ素ガスを用いた場合、Mn−F結合は生じ難い。これに対し、本実施形態2では、第1被膜125cの形成に三フッ化窒素ガスを用いている。三フッ化窒素ガスはフッ素ガスよりもフッ素化強度が低いので、三フッ化窒素ガスを用いた場合、Mn−F結合を容易に形成できる。また、Mn−F量βを8.2≦β≦8.7の範囲内に容易に調整できる。
なお、三フッ化窒素ガスのガス圧力の大きさを制御することで、第1被膜125cを厚みを調整できる。具体的には、ガス圧力を高くするほど、第1被膜125cを厚く形成できる。本実施形態2では、ガス圧力を700Paとした。
また、実施形態1の電池1では、Cf/Cp=2.23であるのに対し、本実施形態2の電池100では、それよりも値が小さく、Cf/Cp=2.05である。これは、前述のように三フッ化窒素ガスはフッ素ガスよりもフッ素化強度が低いため、実施形態2の方が、この第1被膜形成工程で粒子表面24xnに結合するフッ素の量が少ないためであると考えられる。
次に、「正極板形成工程」において、第1被膜125cを形成した正極活物質粒子24xと、導電材26(アセチレンブラック)と、結着剤27(ポリフッ化ビニリデン)と、リン化合物28(リン酸リチウム)とを、溶媒(NMP)中に投入し、実施形態1と同様に正極ペーストを作製する。更に、この正極ペーストを用い、実施形態1と同様に正極板21を形成する。
次に、実施形態1と同様に「組立工程」を行う。その後、実施形態1と同様に「初充電工程」を行って、リンを含む第2被膜125dを形成し、第1被膜125cと第2被膜125dとからなり、1.89≦Cf/Cp≦2.61を満たす被膜125を形成する。その後は、この電池について、実施形態1と同様に各種検査を行う。かくして、電池100が完成する。
(実施例、参考例及び比較例)
次いで、本発明の効果を検証するために行った試験の結果について説明する。まず、実施例1,2、参考例1及び比較例1,2として、正極活物質粒子の粒子表面の被膜におけるフッ素の原子数Cfとリンの原子数Cpとの比Cf/Cpをそれぞれ変更した5種類の電池を用意した。具体的には、前述の「第1被膜形成工程」において、正極活物質粒子24xをフッ素ガスで処理する際のガス圧力を、表1に示すように変更することで、フッ素を含む第1被膜の厚みをそれぞれ変更した。なお、比較例1では、フッ素ガスによる処理を行わなかった。これにより、被膜の比Cf/Cpが、1.48(比較例1)、1.89(参考例1)、2.23(実施例)、2.61(実施例)、3.35(比較例2)である電池をそれぞれ製造した。なお、実施例の電池は、前述の実施形態1の電池1と同じである。また、上記以外の部分は、実施形態1の電池1と同様とした。
なお、これら実施例1,2、参考例1及び比較例1,2の各電池では、いずれも、被膜の全体の厚みα(nm)がおよそα=10nm程度である(表1参照)。また、これらの電池では、いずれも、リチウム(Li)の量Daと遷移金属酸化物部分(Ni0.5Mn1.54 )の量Dbとの量比Da/Dbが、Da/Db=1.1である。
Figure 0006202038
次に、実施例1,2、参考例1及び比較例1,2の各電池について、電池抵抗(IV抵抗)をそれぞれ測定した。具体的には、25℃の温度環境下において、各電池をSOC60%に調整し、0.3Cの定電流で10秒間放電を行い、放電終了時の電池電圧値を測定した。更に、放電電流値のみを1C、3C、5Cと異ならせて、それ以外は上記と同様の条件で放電を行って、10秒間放電終了時の電池電圧値をそれぞれ測定した。その後、これらのデータを、横軸を放電電流値、縦軸を電池電圧値とした座標平面にプロットし、最小二乗法により近似直線(一次式)を算出して、その傾きをIV抵抗値として得た。そして、比較例1の電池の電池抵抗(IV抵抗)を基準(=1.0)として、その他の電池の「電池抵抗比」をそれぞれ算出した。その結果を表1及び図5に示す。
また、実施例1,2、参考例1及び比較例1,2の各電池について、「充放電サイクル試験」を行って、試験前後での容量維持率(%)をそれぞれ求めた。具体的には、60℃の温度環境下において、電池電圧3.5Vに調整した各電池を、2Cの定電流で4.9Vまで充電した後、10分間休止した。その後、2Cの定電流で3.5Vまで放電した後、10分間休止した。この充放電を1サイクルとして、これを200サイクル行った。この充放電サイクル試験の前後でそれぞれ電池容量を測定し、試験前の電池容量に対する試験後の電池容量から容量維持率(%)をそれぞれ算出した。その結果を表1及び図5に示す。
まず、電池抵抗比について見ると、表1及び図5から明らかなように、被膜の比Cf/Cpが大きくなるほど、電池抵抗比が大きくなることが判る。その理由は、フッ素を含む被膜は、抵抗体であるため、フッ素の含有量が多くなるほど、電池抵抗が高くなる。一方、リンは、被膜の抵抗を低くする効果があるので、リンの含有量が多くなるほど、電池抵抗が低くなる。このため、被膜中のリンの量に対してフッ素の量が多くなるほど、即ち、比Cf/Cpが大きくなるほど、被膜の抵抗が大きくなり、電池抵抗が大きくなると考えられる。上記の結果から、比Cf/Cpを2.61以下とすることで、電池抵抗を適切に低くできると考えられる。
次に、充放電サイクル試験における容量維持率について見ると、表1及び図5から明らかなように、被膜の比Cf/Cpが大きくなるほど、容量維持率が高くなることが判る。その理由は、フッ素が多いほど、非水電解液40の非水溶媒が正極活物質粒子の粒子表面で酸化分解されるのを抑制できる。このため、非水溶媒の酸化分解により発生する水素イオンが非水電解液40中のフッ素と反応してフッ酸が生成されるのを低減でき、フッ酸の作用により正極活物質粒子中の遷移金属が溶出するのを抑制できる。このため、充放電サイクル試験を行っても、電池容量が減少し難くなると考えられる。上記の結果から、比Cf/Cpを1.89以上とすることで、充放電サイクル試験における電池容量の低下を適切に抑制できると考えられる。
以上より、1.89≦Cf/Cp≦2.61とすることで、充放電サイクル試験における電池容量の低下を適切に抑制することと、電池抵抗を適切に低くすることを、両立させることができる。
次に、実施例1,3及び参考形態2,3として、正極活物質粒子の粒子表面の被膜の厚みαをそれぞれ変更した4種類の電池を用意した。具体的には、前述の初充電工程において、充電電流値の大きさを、表2に示すように変更することで、リンを含む第2被膜の厚みを変更した。これにより、被膜の全体の厚みα(nm)が、7(参考形態2)、10(実施例)、15(実施例)、20(参考形態3)である電池をそれぞれ製造した。なお、上記以外の部分は、実施形態1の電池1と同様とした。
なお、これら実施例1,3及び参考形態2,3の各電池では、いずれも、被膜の比Cf/CpがおよそCf/Cp=2.2程度である(表2参照)。また、これらの電池では、いずれも、リチウム(Li)の量Daと遷移金属酸化物部分(Ni0.5Mn1.54 )の量Dbとの量比Da/Dbが、Da/Db=1.1である。
そして、これら実施例1,3及び参考形態2,3の各電池について、前述のようにして、電池抵抗比と充放電サイクル試験後における容量維持率(%)をそれぞれ求めた。その結果を表2及び図6に示す。
Figure 0006202038
まず、電池抵抗比について見ると、表2及び図6から明らかなように、被膜の厚みαが大きくなるほど、電池抵抗比が大きくなることが判る。その理由は、被膜は、リンを含有していても、抵抗体であるため、厚みαが厚くなるほど、電池抵抗が高くなると考えられる。上記の結果から、被膜の厚みαを15nm以下とするのが好ましいと考えられる。
次に、充放電サイクル試験における容量維持率について見ると、表2及び図6から明らかなように、被膜の厚みαが厚くなるほど、容量維持率が高くなることが判る。その理由は、被膜の厚みαが厚いほど、非水電解液40の非水溶媒が正極活物質粒子の粒子表面で酸化分解され難くなり、正極活物質粒子中の遷移金属が溶出し難くなるためと考えられる。上記の結果から、被膜の厚みαを10nm以上とするのが好ましいと考えられる。
以上より、被膜の厚みα(nm)は、10≦α≦15とするのが好ましい。
次に、実施例として、実施形態1の電池1とは異なる方法で被膜を形成した電池を用意した。具体的には、この実施例では、正極活物質粒子24xについてフッ素ガス処理を行わなかった(表3参照)。その代わりに、正極ペーストの作製にあたり、フッ化物(具体的にはフッ化リチウム(LiF))を正極活物質粒子24x比で0.3wt%、正極ペーストに加えた。そして、この正極ペーストを用いて正極板を作製し、更に電池を製造した。上記以外の部分は、実施形態1の電池1と同様とした。
Figure 0006202038
この電池では、初充電工程の際に、正極活物質層中のリン酸リチウムが分解されると共に、フッ化リチウムも分解されて、リン及びフッ素を含む被膜が正極活物質粒子の粒子表面に形成される。この被膜の厚み方向における比Cf/Cpの分布について、前述の手法により調査したところ、図7に示すスパッタ時間(min)と比Cf/Cpとの関係が得られた。スパッタ時間が0〜10分の範囲で、比Cf/Cpはほぼ一定である。この結果から、実施例の電池では、被膜の比Cf/Cpが、膜厚方向MHでほぼ一定となっていること、即ち、被膜において、フッ素(F)とリン(P)の割合が膜厚方向MHにほぼ一定であることが判る。
なお、実施例の電池における被膜の比Cf/Cpは、Cf/Cp=2.21であり、実施例の電池における被膜の比Cf/Cp(=2.23)とほぼ同じである。また、実施例の電池における被膜の厚みαは、α=10(nm)であり、実施例の電池における被膜の厚みαと同じである。また、実施例の電池における量比Da/Dbは、Da/Db=1.1であり、実施例の電池における量比Da/Dbと同じである。
次に、これら実施例1,4の各電池について、前述のようにして、電池抵抗比と充放電サイクル試験後における容量維持率(%)をそれぞれ求めた。その結果を表3及び図8に示す。
まず、電池抵抗比については、表3から明らかなように、実施例の電池と実施例の電池とで同じ値(=1.2)であった。
一方、充放電サイクル試験における容量維持率については、表3及び図8から明らかなように、実施例の電池の方が実施例の電池に比べて容量維持率が高いことが判る。上記の結果から、被膜の外側部よりも内側部で比Cf/Cpを大きくすることで、充放電サイクル試験における電池容量の低下を更に抑制できる。
次に、実施例5〜8として、リチウム(Li)の量Daと遷移金属酸化物部分(Ni0.5Mn1.54 )の量Dbとの量比Da/Dbをそれぞれ変更した正極活物質粒子を用いて製造した4種類の電池を用意した。具体的には、量比Da/Dbが、1.0(実施例)、1.1(実施例)、1.2(実施例)、1.3(実施例)である正極活物質粒子を用いて、それぞれ電池を製造した。
なお、これら実施例5〜8の各電池では、いずれも、被膜の比Cf/CpがCf/Cp=2.23である(表4参照)。また、これらの電池では、いずれも、被膜の厚みα(nm)がα=10(nm)である。
Figure 0006202038
また、比較例3として、正極活物質粒子の粒子表面にフッ素及びリンを含む被膜を有しない電池を用意した。即ち、この比較例3では、正極活物質粒子24xについて、フッ素ガス処理を行わなかった。また、正極ペーストの作成にあたり、リン酸リチウムを添加しないで正極ペーストを作製し、正極板を作製した。
次に、これら実施例5〜8及び比較例3の各電池について、前述のようにして、電池抵抗比を求めた。なお、実施例5〜8の各電池の電池抵抗比は、比較例3の電池の電池抵抗を基準(=1.00)とした。
また、実施例5〜8及び比較例3の各電池について、初期の電池容量を測定し、比較例3の電池を基準(=1.000)として、その他の電池の「初期容量比」を算出した。その結果を表4及び図9に示す。
まず、電池抵抗比について見ると、表4及び図9から明らかなように、量比Da/Dbが1.1よりも小さい、または、1.2よりも大きいと、電池抵抗比が大きくなり、1.1≦Da/Db≦1.2の範囲では、電池抵抗比が小さいことが判る。その理由は、Da/Db<1.1では、リチウムが少なすぎて、正極活物質粒子からリチウムが抜けすぎるため、電池抵抗が高くなる。一方、Da/Db>1.2では、リチウムが多すぎて、正極活物質粒子の結晶が歪むため、電池抵抗が高くなると考えられる。
次に、初期容量比について見ると、表4及び図9から明らかなように、量比Da/Dbが大きくなるほど、初期容量比が大きくなり、特に、Da/Db≧1.1で初期容量比が大きくなることが判る。その理由は、フッ素は、常温でも酸化力が強く、正極活物質のリチウムと反応してフッ化リチウムを形成する。このため、正極活物質粒子の粒子表面にフッ素を含む被膜を形成すると、電池反応に寄与できるリチウムの数が減るため、初期の電池容量が小さくなる。Da/Dbが大きいほど、用いた正極活物質粒子中にリチウムが多く存在するため、フッ化リチウムが生成されたとしても、電池容量が低下するのを抑制できると考えられる。
以上より、1.1≦Da/Db≦1.2を満たす正極活物質粒子を用いて電池を製造するのが好ましい。
次に、実施例9〜13として、正極活物質粒子の粒子表面のMn−F量βをそれぞれ変更した5種類の電池を用意した。具体的には、Mn−F量βが、8.0(実施例)、8.2(実施例10)、8.5(実施例11)、8.7(実施例12)、8.9(実施例13)である電池を用意した。
なお、これら実施例9〜13の各電池では、いずれも、被膜の比Cf/CpがCf/Cp=2.05である(表5参照)。また、これらの電池では、いずれも、被膜の厚みα(nm)がα=10である。また、これらの電池では、いずれも、リチウム(Li)の量Daと遷移金属酸化物部分(Ni0.5Mn1.54 )の量Dbとの量比Da/Dbが、Da/Db=1.1である。
そして、これら実施例9〜13の各電池について、前述のようにして、電池抵抗比と充放電サイクル試験後における容量維持率(%)をそれぞれ求めた。その結果を表5及び図10に示す。なお、実施例の電池を基準(=1.00)として、実施例10〜13の各電池の「電池抵抗比」を算出した。
Figure 0006202038
まず、電池抵抗比について見ると、表5及び図10から明らかなように、Mn−F量βが8.2よりも小さい、または8.7よりも大きいと、電池抵抗比が大きくなり、8.2≦β≦8.7の範囲では、電池抵抗比が小さいことが判る。その理由は、β<8.2では、Mn−F結合によるリチウムイオンの脱溶媒和効果が低くなるため、電池抵抗が高くなる。一方、β>8.7では、正極活物質粒子の結晶がゆがむため、電池抵抗が高くなると考えられる。この結果から、Mn−F量βは、8.2≦β≦8.7の範囲とするのが好ましいと考えられる。
次に、充放電サイクル試験における容量維持率について見ると、表5及び図10から明らかなように、少なくともMn−F量βが実施例9〜13の範囲(8.0≦β≦8.9)では、Mn−F量βの多寡に拘わらず、容量維持率がほぼ一定であり、容量維持率が良好である(90〜91%)。従って、Mn−F量βを前述の8.2≦β≦8.7の範囲とすれば、電池抵抗を適切に低くすることと、充放電サイクル試験における電池容量の低下を適切に抑制することを、両立させることができると考えられる。
以上で説明したように、実施形態1,2の電池1,100では、正極活物質粒子24,124の粒子表面24n,124nに、フッ素及びリンを含む被膜25,125を有する。これらの被膜25,125は、フッ素の原子数Cfとリンの原子数Cpとの比Cf/Cpが、1.89≦Cf/Cp≦2.61を満たしている。Cf/Cp≧1.89とすることで、充放電サイクル試験における電池容量の低下を適切に抑制できる。一方、Cf/Cp≦2.61とすることで、電池抵抗を適切に低くできる。従って、これらの電池1,100では、充放電サイクル試験における電池容量の低下を適切に抑制することと、電池抵抗を適切に低くすることを、両立させることができる。
更に実施形態1,2では、フッ素及びリンを含む被膜25,125の厚みα(nm)が、10≦α≦15を満たしている。被膜25,125の厚みαが薄すぎると、具体的には厚みαが10nmよりも薄いと、充放電サイクル試験において電池容量が低下する。一方、被膜25,125の厚みαが厚すぎると、具体的には厚みαが15nmよりも厚いと、電池抵抗が大きくなる。これに対し、これらの電池1,100では、被膜25,125の厚みα(nm)を、10≦α≦15としているので、充放電サイクル試験における電池容量の低下を更に効果的に抑制できると共に、電池抵抗を更に効果的に低くできる。
また実施形態1,2では、被膜25,125の外側部25b,125bよりも内側部25a,125aで比Cf/Cpを大きくしている。これにより、比Cf/Cpを膜厚方向MHに一定とした被膜に比べて、充放電サイクル試験における電池容量の低下を更に抑制できる。
また実施形態1,2では、リチウム遷移金属複合酸化物の組成式(具体的にはLiNi0.5Mn1.54 )において示される、リチウム(Li)の量Daと遷移金属酸化物部分(Ni0.5Mn1.54 )の量Dbとの量比Da/Dbが、1.1≦Da/Db≦1.2を満たす正極活物質粒子24xを用いて、電池1,100を製造している。Da/Db≧1.1とすることで、初期の電池容量が小さくなるのを抑制できる。また、1.1≦Da/Db≦1.2とすることで、電池抵抗を適切に低くできる。従って、実施形態1,2の電池1,100では、初期の電池容量の低下を適切に抑制できると共に、電池抵抗を適切に低くできる。
また実施形態2では、正極活物質粒子124の粒子表面124nのMn−F量βを、8.2≦β≦8.7としている。8.2≦β≦8.7とすることで、電池抵抗を適切に低くできる。一方、少なくとも8.2≦β≦8.7の範囲内では、充放電サイクル試験における電池容量の低下量はほぼ一定で、電池容量の低下を適切に抑制できる。従って、実施形態2の電池100では、電池抵抗を適切に低くすることと、充放電サイクル試験における電池容量の低下を適切に抑制することを、両立させることができる。
また、電池1,100の製造方法によれば、まず、正極活物質粒子24xの粒子表面24xnに、フッ素を含む第1被膜25c,125cを形成する(第1被膜形成工程)。その後、第1被膜25c,125cを有する正極活物質粒子24x及びリン化合物28を用いて正極板21を形成し(正極板形成工程)、更に、電池を組み立てて(組立工程)、初充電を行う(初充電工程)。この初充電工程では、正極活物質層23中のリン化合物28が分解されて、リンを含む第2被膜25d,125dが形成される。これにより、フッ素とリンを含み、1.89≦Cf/Cp≦2.61を満たす被膜25,125を容易に形成できる。
また、この製造方法では、フッ素を含む第1被膜25c,125cを形成した後に、リンを含む第2被膜25d,125dを形成しているので、第1被膜25c,125c及び第2被膜25d,125dからなる被膜25,125は、膜厚方向MHの中央よりも外側の外側部25b,125bに比べ内側の内側部25a,125aで、前述の比Cf/Cpが大きくなる。従って、比Cf/Cpを膜厚方向MHに一定とした被膜に比べて、充放電サイクル試験における電池容量の低下を更に抑制できる電池1,100を製造できる。
更に実施形態1,2では、第1被膜形成工程は、正極活物質粒子24xを、フッ素ガス(実施形態1)を含む雰囲気または三フッ化窒素ガス(実施形態2)を含む雰囲気に曝して、第1被膜25c,125cを形成する工程である。これにより、フッ素を含む第1被膜25c,125cを容易に形成できる。特に実施形態2では、三フッ化窒素ガスを用いているので、Mn−F結合を容易に形成でき、Mn−F量βを8.2≦β≦8.7の範囲内に容易に調整できる。
以上において、本発明を実施形態1,2に即して説明したが、本発明は上述の実施形態1,2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態1では、第1被膜形成工程において、正極活物質粒子24xを「フッ素ガス」に曝して第1被膜25cを形成し、実施形態2では、正極活物質粒子24xを「三フッ化窒素ガス」に曝して第1被膜125cを形成しているが、これに限られない。例えば、第1被膜形成工程において、まず、正極活物質粒子24xを「三フッ化窒素ガス」に曝し、その後、「フッ素ガス」に曝すことで第1被膜を形成してもよい。また、第1被膜形成工程において、正極活物質粒子24xを、「フッ素ガス」及び「三フッ化窒素ガス」の両方を含む雰囲気に曝して第1被膜を形成してもよい。
1,100 リチウムイオン二次電池(電池)
20 電極体
21 正極板
22 正極集電箔
23 正極活物質層
24,124 (初充電後の)正極活物質粒子
24n,124n 粒子表面
24x (初充電前の)正極活物質粒子
24xn 粒子表面
25,125 被膜
25a,125a (被膜の)内側部
25b,125b (被膜の)外側部
25c,125c 第1被膜
25d,125d 第2被膜
28 リン化合物
31 負極板
39 セパレータ
40 非水電解液
MH 膜厚方向
α (被膜の)厚み

Claims (8)

  1. リチウム遷移金属複合酸化物からなる正極活物質粒子を含む正極活物質層を有する正極板と、負極板と、フッ素を含む化合物を有する非水電解液と、を備えるリチウムイオン二次電池であって、
    上記正極活物質粒子の粒子表面に、フッ素及びリンを含む被膜を有し、
    上記被膜中のフッ素の原子数Cfとリンの原子数Cpとの比Cf/Cpが、
    1.89≦Cf/Cp≦2.61を満たし、
    上記被膜の厚みα(nm)が、
    10≦α≦15を満たす
    リチウムイオン二次電池。
  2. 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池であって、
    前記被膜は、
    前記比Cf/Cpが、膜厚方向の中央よりも外側の外側部に比べ、上記中央よりも内側の内側部で大きくされてなる
    リチウムイオン二次電池。
  3. 請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池であって、
    記リチウム遷移金属複合酸化物の組成式において示される、リチウムの量Daとリチウムを除く遷移金属酸化物部分の量Dbとの量比Da/Dbが、1.1≦Da/Db≦1.2を満たす正極活物質粒子を用いて形成してなる
    リチウムイオン二次電池。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池であって、
    前記正極活物質粒子は、スピネル型の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガン系複合酸化物からなり、
    TOF−SIMS分析により定量される、上記正極活物質粒子の前記粒子表面のMn−F量βが、8.2≦β≦8.7を満たす
    リチウムイオン二次電池。
  5. リチウム遷移金属複合酸化物からなる正極活物質粒子を含む正極活物質層を有する正極板と、負極板と、フッ素を含む化合物を有する非水電解液と、を備え、
    上記正極活物質粒子の粒子表面に、フッ素及びリンを含む被膜を有し、
    上記被膜中のフッ素の原子数Cfとリンの原子数Cpとの比Cf/Cpが、
    1.89≦Cf/Cp≦2.61を満たし、
    上記被膜の厚みα(nm)が、
    10≦α≦15を満たす
    リチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    上記正極活物質粒子の粒子表面に、フッ素を含む第1被膜を形成する第1被膜形成工程と、
    上記第1被膜形成工程の後、上記第1被膜を有する上記正極活物質粒子と、リン化合物とを用いて、上記正極活物質層を有する上記正極板を形成する正極板形成工程と、
    上記正極板形成工程の後、上記正極板、上記負極板、及び、上記非水電解液を用いて、電池を組み立てる組立工程と、
    上記組立工程の後、初充電を行って、リンを含む第2被膜を形成し、上記第1被膜と上記第2被膜とからなり、1.89≦Cf/Cp≦2.61を満たす上記被膜を形成する初充電工程と、を備える
    リチウムイオン二次電池の製造方法。
  6. 請求項5に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    前記第1被膜形成工程は、
    前記正極活物質粒子を、フッ素ガス及び三フッ化窒素ガスの少なくともいずれかを含む雰囲気に曝して、前記第1被膜を形成する工程である
    リチウムイオン二次電池の製造方法。
  7. 請求項5または請求項6に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    前記第1被膜形成工程において、
    記リチウム遷移金属複合酸化物の組成式において示される、リチウムの量Daとリチウムを除く遷移金属酸化物部分の量Dbとの量比Da/Dbが、1.1≦Da/Db≦1.2を満たす正極活物質粒子を用いる
    リチウムイオン二次電池の製造方法。
  8. 請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
    前記第1被膜形成工程は、
    スピネル型の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガン系複合酸化物からなる正極活物質粒子を用い、
    TOF−SIMS分析により定量される、前記正極活物質粒子の前記粒子表面のMn−F量βが、8.2≦β≦8.7を満たす形態にマンガンとフッ素を結合させて、前記第1被膜を形成する工程である
    リチウムイオン二次電池の製造方法。
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