JP7024090B2 - 電極、非水電解質電池及び電池パック - Google Patents

電極、非水電解質電池及び電池パック Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、電極、非水電解質電池及び電池パックに関する。
リチウムイオン二次電池などの非水電解質電池は、携帯電話などの電子機器だけでなく、ハイブリッド自動車や電気自動車などの車載用電池としても用いられている。このような車載用電池としての利用にあたり、非水電解質電池には、低温環境下における大電流出力特性や、高温環境下における長寿命性及び大容量特性などの向上が求められている。
非水電解質電池の活物質としては、例えば、スピネル型マンガン酸リチウム(LMO)が用いられている。LMOの主な原料元素であるマンガンは、供給量が多く、環境への影響も少ないため、LMOは低コストであり、環境負荷が少ない材料である。また、LMOは、リチウム金属に対するリチウムイオン吸蔵放出電位が高いため、LMOを正極活物質として用いると、エネルギー密度が高い電池を実現することができる。
しかしながら、LMOを含む非水電解質電池において、出力特性と寿命特性との両立については、改善の余地がある。
特開2005-251684号公報 特開2009-110767号公報 特開2014-179240号公報 特開2015-60656号公報
本発明が解決しようとする課題は、出力特性及び寿命特性に優れた電極、非水電解質電池及び電池パックを提供することにある。
実施形態によれば、電極が提供される。電極は、集電体と、活物質含有層とを備える。活物質含有層は、集電体上に設けられている。活物質含有層は、活物質としてLiMn2-xx4で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物を含む。xは、0.22以上0.7以下である。Mは、Mg、Ti、Cr、Fe、Co、Zn、Al、Ga及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。活物質含有層は、Fを含む結着剤を含む。水銀圧入法による活物質含有層の細孔比表面積は、3.5m2/g以上14m2/g以下である。水銀圧入法による1g当りの活物質含有層の細孔体積は、0.08mL/g以上0.13mL/g以下である。活物質含有層の結着剤に含まれるFの原子百分率BとMnの原子百分率Aとの比B/Aは、下記式(1)を満たす。
4≦B/A≦6.5 (1)
Mnの原子百分率Aは、活物質含有層の表面に係るX線光電子分光スペクトルにおいて、638eV以上647eV以下に現れるピークの面積から求められる。Fの原子百分率Bは、活物質含有層の表面に係るX線光電子分光スペクトルにおいて、686eV以上689eV以下に現れるピークの面積から求められる。
他の実施形態によると、非水電解質電池が提供される。非水電解質電池は、正極と、負極と、非水電解質とを含んでいる。正極は、実施形態に係る電極である。
他の実施形態によると、電池パックが提供される。電池パックは、実施形態に係る非水電解質電池を含んでいる。
活物質含有層に係るXPSスペクトルの一例を示すグラフ。 活物質含有層に係るXPSスペクトルの他の例を示すグラフ。 実施形態に係る非水電解質電池の一例の分解斜視図。 図3に示す非水電解質電池に用いられる電極群の部分展開斜視図。 実施形態に係る電池パックの電気回路の一例を示すブロック図。 実施例及び比較例に係るLog微分細孔体積分布曲線を示すグラフ。
実施形態
非水電解質電池は、例えば、一対の電極である正極及び負極と、非水電解質とを備えている。電極は、例えば、集電体と、集電体上に設けられた活物質含有層とを含んでいる。活物質含有層は、例えば、リチウムイオンを吸蔵放出可能な活物質と、活物質同士並びに活物質及び集電体を結着させるための結着剤と、活物質含有層の集電性能を高めるための導電剤とを含んでいる。
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などが用いられている。PVdFは、高温においてフッ化水素(HF)を脱離してポリエンを生成し得る。ポリエンは、電極において酸化劣化されて、電池の内部抵抗を高める要因となり得る。
非水電解質電池の出力特性を向上させるための手段の一つとして、活物質含有層の細孔比表面積を高めることが挙げられる。これにより、活物質と電解質との反応面積が増えるため、出力特性が高まるとともに内部抵抗を低めることができる。活物質含有層の細孔比表面積を高める方法としては、活物質材料の微細化や、あるいは、活物質含有層のポーラス形状化などが挙げられる。しかしながら、このような方法によると、電池の寿命特性の低下や、あるいは、活物質含有層と集電体との密着性が低下するという問題がある。
また、非水電解質電池の出力特性を向上させるための手段の一つとして、電極密度を高めることが挙げられる。電極密度を高めると、活物質と導電剤との接触面積が増えるため、出力特性を高めることができる。一方、電極密度が過剰に高いと、活物質含有層の空隙に電解質が浸透しにくくなるため、出力特性が低下する傾向にある。また、活物質含有層内に不均一に電解質が存在していると、電極反応が均一に生じにくくなる。このような状態で充放電を繰り返すと、活物質等の劣化が局所的に進行して、サイクル特性が低下する傾向にある。また、過充電時や、電池が異常な高温に曝された際に、活物質含有層内で局所的な発熱が生じて二次電池の安全性が低下するという問題を生じ得る。
以上説明した事情等により、出力特性及び寿命特性にともに優れた電池を実現することは困難であった。
(第1の実施形態)
第1の実施形態によれば、電極が提供される。電極は、集電体と、活物質含有層とを備える。活物質含有層は、集電体上に設けられている。活物質含有層は、活物質としてLiMn2-xx4で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物を含む。xは、0.22以上0.7以下である。Mは、Mg、Ti、Cr、Fe、Co、Zn、Al、Ga及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。水銀圧入法による活物質含有層の細孔比表面積は、3.5m2/g以上14m2/g以下である。水銀圧入法による1g当りの活物質含有層の細孔体積は、0.08mL/g以上0.13mL/g以下である。活物質含有層におけるFの原子百分率BとMnの原子百分率Aとの比B/Aは、下記式(1)を満たす。
4≦B/A≦6.5 (1)
Mnの原子百分率Aは、活物質含有層の表面に係るX線光電子分光スペクトルにおいて、638eV以上647eV以下に現れるピークの面積から求められる。Fの原子百分率Bは、活物質含有層の表面に係るX線光電子分光スペクトルにおいて、686eV以上689eV以下に現れるピークの面積から求められる。
第1実施形態に係る電極は、細孔比表面積が比較的高く、かつ、細孔体積が比較的小さい活物質含有層を備えているといえる。このような活物質含有層は、電極反応に寄与する面積が大きいため、リチウムイオン伝導性に優れるとともに、活物質粒子間の距離が短いため、電子伝導性にも優れる。したがって、第1の実施形態に係る電極を用いると、電池の入出力特性を高めることができる。
更に、このように細孔体積が比較的小さい活物質含有層は、機械的安定性が高いため、結着剤の配合量を低減することができる。結着剤の配合量が少ない活物質含有層においては、高温環境下における結着剤の分解反応等が抑制されるため、電池の寿命特性を向上させることができる。また、第1実施形態に係る電極においては、活物質含有層に比較的均一に結着剤が分散されている。このように活物質含有層に結着剤が均一に分散されていると、電極の機械的安定性を保ったまま結着剤の配合量を低減でき、結着剤の分解反応を抑制することができるため、電池の寿命特性を高めることができる。
以上のことから、第1の実施形態に係る電極を用いると、電池の入出力特性及び寿命特性を高めることができる。
第1の実施形態に係る電極について、以下に詳細を説明する。第1の実施形態に係る電極は、集電体と、活物質含有層とを具備する。
<集電体>
集電体としては、例えば金属箔又は合金箔を用いることができる。金属箔の例としては、アルミニウム箔、ステンレス箔及びニッケル箔などを挙げることができる。合金箔の例としては、アルミニウム合金、銅合金及びニッケル合金などを挙げることができる。
<活物質含有層>
活物質含有層は、集電体の少なくとも一方の主面上に担持されている。活物質含有層は、活物質に加え、導電剤及び結着剤を含むことができる。導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合され得る。結着剤は、分散された正極活物質同士を結着させ、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合され得る。
活物質含有層は、活物質としてLiMn2-xx4で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物を含む。Mは、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物に含まれる異種元素を示す。異種元素Mは、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及びニッケル(Ni)からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。異種元素Mを含むスピネル型リチウムマンガン複合酸化物は、異種元素Mを含まないスピネル型リチウムマンガン複合酸化物と比較して、結晶構造が安定な傾向にある。異種元素Mは、アルミニウムを含むことが好ましい。アルミニウムを含むスピネル型リチウムマンガン複合酸化物は、結晶構造が安定であり、充放電に伴うリチウムイオンの吸蔵および放出による結晶構造変化を少なくすることができる。また、異種元素Mは、アルミニウムとともに、チタン、鉄、コバルト及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含んでいてもよい。
xは、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物における異種元素Mによるマンガンの置換量を示す。xは、0.22以上0.7以下である。置換量xは、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光法により求めることができる。置換量Xの測定方法の詳細は後述する。xが0.22より小さいと、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物の結晶構造の安定性が低下する傾向にある。xが0.7より大きいと、充放電容量が低下する傾向にある。xは、0.22以上0.5以下であることが好ましい。xがこの範囲内にあると、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物の安定性が高まり、電池の出力特性を高めることができる。
活物質含有層は、LiMn2-xx4で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物を1種類のみ含んでいてもよく、2種類以上含んでいてもよい。
活物質含有層は、活物質として、LiMn2-xx4で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物に加えて、コバルト酸リチウムを含んでいることが好ましい。活物質含有層がコバルト酸リチウムを含んでいると、電池の寿命特性を高めることができる。すなわち、電池内において、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物は、強い酸化剤となり得る。したがって、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物は、電解質と反応して電解質を分解し得る。コバルト酸リチウムは、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物の酸化剤としての働きを抑制することができる。コバルト酸リチウムは、例えば、LiaCoO2(0<a≦1.1)で表される。
活物質含有層がコバルト酸リチウムを含んでいる場合、活物質含有層に含まれるリチウムマンガン複合酸化物の質量とコバルト酸リチウムの質量との比は、100:0~90:10であることが好ましい。比がこの範囲内にあると、電池の出力特性と寿命特性とを高めることができる。
活物質含有層は、活物質として、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物及びコバルト酸リチウム以外の化合物を含んでいてもよい。このような化合物としては、例えば、リチウムニッケル複合酸化物(例えば、LiuNiO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えば、LiuNi1-sCos2)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えば、LiuNi1-s-tCosMnt2)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(例えば、LiuNi1-s-tCosAlt2)、LiuMn24で表されるスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えば、LiuFePO4、LiuMnPO4、LiuMn1-vFePO4、LiuCoPO4)が挙げられる。上記において、0<u≦1であり、0<s<1であり、0<t<1であり、0≦v≦1であることが好ましい。
活物質含有層に含まれる活物質において、LiMn2-xx4で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物の質量が占める割合は、75質量%以上100質量%以下であることが好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
活物質は、例えば、粒子の形状を有する。すなわち、活物質含有層は、活物質の粒子を含むことができる。活物質粒子は、一次粒子であってもよいし、一次粒子が凝集した二次粒子であってもよいし、又は一次粒子と二次粒子との混合物であってもよい。
活物質含有層において、活物質は、一次粒子の割合が高く、二次粒子の割合が低いことが好ましい。すなわち、二次粒子は、内部に空孔を有することがある。二次粒子内部に存在する一次粒子は、導電剤と接しにくい。したがって、活物質含有層に空孔を有する二次粒子が多く存在すると、活物質含有層の電子伝導性が低下する。それゆえ、活物質含有層において、空孔を有する二次粒子の割合を低め、一次粒子の割合を高めることにより、活物質含有層の電子伝導性を高め内部抵抗を低めることができる。また、活物質含有層において二次粒子の凝集を抑制することにより、細孔体積が比較的小さい活物質含有層においても電解質の浸透性を高めて、電解質の保持不足や、電極反応の不均一化を抑制し、出力特性を高めることができる。
なお、活物質は、解砕された一次粒子を含まないことが好ましい。解砕された一次粒子の粒径は、一次粒子の平均粒径よりも小さい。解砕された一次粒子は、結晶構造の一部が損傷しているおそれがあり、電池の寿命特性を低下させ得る。
活物質の平均粒径は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。活物質の平均粒径は、レーザー回折散乱法による粒度分布により求めることができる。活物質の平均粒径の測定方法の詳細は後述する。活物質の平均粒径が上記の範囲内にあると、活物質含有層の比表面積を高め、電池の出力特性を高めることができる。
なお、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物を含む活物質粒子の平均粒径を、このように比較的小さくすると、電池の容量が低下する、あるいは、電解質の分解が生じ易くなり内部抵抗が高まるという問題が生じ得る。このような問題に対して、第1の実施形態に係る電極では、活物質含有層の細孔体積が比較的小さく、また、結着剤が比較的均一に分散されているため、結着剤の含有量を減らすことができる。結着剤の含有量が少ないと、その分解が抑制されるため、電池の内部抵抗を低めることができる。したがって、第1の実施形態に係る電極は、活物質含有層に含まれる活物質の平均粒径は比較的小さいにもかかわらず、優れた出力特性と寿命特性とを実現することができる。
活物質含有層において、LiMn2-xx4で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物は、二次粒子の形態にあってもよい。スピネル型リチウムマンガン複合酸化物の二次粒子の平均粒径は、2.5μm以上15μm以下であることが好ましく、4μm以上15μm以下であることがより好ましい。二次粒子の平均粒径は、レーザー回折散乱法による粒度分布により求めることができる。二次粒子の平均粒径の測定方法の詳細は後述する。二次粒子の平均粒径がこの範囲内にあると、優れた出力特性と寿命特性とを実現することができる。
活物質含有層において、コバルト酸リチウムが含まれる場合、コバルト酸リチウムは、一次粒子の形態にあることが好ましい。コバルト酸リチウムの一次粒子の平均粒径は、6μm以上12μm以下であることが好ましい。一次粒子の平均粒径は、レーザー回折散乱法による粒度分布により求めることができる。一次粒子の平均粒径の測定方法の詳細は後述する。一次粒子の平均粒径がこの範囲内にあると、優れた出力特性と寿命特性とを実現することができる。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合され得る。導電剤としては、カーボン材料を含むことが好ましい。カーボン材料としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、グラファイト、カーボンナノチューブなどを挙げることができる。活物質含有層は、上記カーボン材料の1種若しくは2種以上を含むことができる。導電剤は、アセチレンブラックであることが好ましい。
導電剤は、例えば、粒子の形状を有する。導電剤粒子の平均粒径は、20nm以上100nm以下であることが好ましい。導電剤粒子の平均粒径は、レーザー回折散乱法による粒度分布により求めることができる。導電剤粒子の平均粒径の測定方法の詳細は後述する。導電剤粒子の平均粒径が上記の範囲内にあると、電極の電子伝導性が高まり、充放電容量を高めることができる。導電剤粒子の平均粒径は、30nm以上70nm以下であることがより好ましい。
活物質含有層において、導電剤が占める割合は、例えば、3質量%以上20質量%以下である。
結着剤は、活物質、導電剤及び集電体を結着させるために必要に応じて用いられる。結着剤としては、分子中にフッ素原子を含む化合物を用いることが好ましい。このような化合物は、耐酸化性に優れるため、電池の寿命特性を高めることができる。このような化合物としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、及びフッ素系ゴムなどが挙げられる。
活物質含有層において、結着剤が占める割合は、1質量%以上1.8質量%以下であることが好ましい。結着剤の割合がこの範囲内にあると、電解質の分解の抑制と、電極の機械的安定性とを両立することができるため、電池の寿命特性を高めることができる。活物質含有層における結着剤の割合は、熱重量―示差熱同時分析計(TG-DTA)により求めることができる。この方法の詳細は後述する。
活物質含有層の細孔比表面積は、3.5m2/g以上14m2/g以下である。活物質含有層の細孔比表面積は、水銀圧入法により求めることができる。この方法の詳細は後述する。細孔比表面積が3.5m2/gよりも低いと、電極反応に寄与する有効面積が小さいため、大電流出力特性が低下する。また、細孔比表面積が14m2/gよりも高いと、初期の出力特性は良好である一方、電解質の酸化分解反応が促進されるため、寿命特性は低下する。活物質含有層の細孔比表面積は、3.8m2/g以上13m2/g以下であることが好ましい。細孔比表面積がこの範囲内にあると、電池の出力特性を高めるとともに電解質の分解反応を抑制することができる。活物質含有層の細孔比表面積は、5m2/g以上13m2/g以下であることがより好ましく、9m2/g以上13m2/g以下であることが更に好ましい。
1g当りの活物質含有層の細孔体積は、0.08mL/g以上0.13mL/g以下である。1g当りの活物質含有層の細孔体積は、水銀圧入法により求めることができる。この方法の詳細は後述する。細孔体積が0.08mL/gより小さいと、活物質含有層へ電解質が浸透しにくくなるため、出力特性及び寿命特性が低下する。細孔体積が0.13mL/gより大きいと、活物質粒子同士、並びに、活物質及び導電剤の接触面積が減少するため、内部抵抗が高まり、大電流出力特性が低下する。また、細孔体積が0.13mL/gより大きいと、電極の機械的安定性が低下する。活物質含有層の細孔体積は、0.09mL/g以上0.12mL/g以下であることが好ましい。細孔体積がこの範囲内にあると、内部抵抗を低め、出力特性を高めることができる。
活物質含有層におけるフッ素(F)の原子百分率Bとマンガン(Mn)の原子百分率Aとの比B/Aは、4以上6.5以下である。マンガン(Mn)の原子百分率Aは、活物質含有層の表面に係るX線光電子分光スペクトルにおいて、638eV以上647eV以下に現れるピークの面積から求められる。フッ素(F)の原子百分率Bは、活物質含有層の表面に係るX線光電子分光スペクトルにおいて、686eV以上689eV以下に現れるピークの面積から求められる。比B/Aの算出方法の詳細は後述する。
比B/Aは、活物質含有層の表面における、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物の表面の結着剤による被覆率と関連していると考えられる。比B/Aが4より低い場合、活物質含有層に含まれる結着剤の量が少なすぎるか、あるいは、結着剤の分散性が悪いことを示し得る。したがって、比B/Aが4より低いと、電極の機械的安定性が低下し、電池の寿命特性が低下する。また、比B/Aが6.5より高い場合、活物質含有層に含まれる結着剤の量が過剰であることを示し得る。したがって、比B/Aが6.5より高いと、高温環境下において結着剤の副反応が促進され、電池の寿命特性が低下する。比B/Aは、5以上6.4以下であることが好ましい。比B/Aがこの範囲内にあると、電極の機械的安定性が高く、また、結着剤の副反応を抑制することができるため、電池の寿命特性を高めることができる。
活物質含有層の密度は、2.9g/cm3以上3.2g/cm3以下であることが好ましい。活物質含有層の密度が高いと、活物質粒子同士、若しくは、活物質と導電剤との接触面積が増えるため、内部抵抗が低下し、出力特性を高めることができる。一方、活物質含有層の密度が過剰に高いと、電解質の浸透性が低下するため、出力特性及び寿命特性が低下する。活物質含有層の密度の測定方法の詳細は後述する。活物質含有層の密度を高める方法としては、電極製造時に、活物質含有層にプレス処理を施すことが挙げられる。
<製造方法>
第1の実施形態に係る電極は、例えば、以下の方法によって作製することができる。先ず、活物質と、任意の導電剤と、任意の結着剤とを適切な溶媒に投入して、混合物を得る。続いて、得られた混合物を撹拌機に投入して、撹拌処理を行い、スラリーを得る。攪拌機としては、例えば、横型ビーズミル(アイメックス社製RMH-03)を使用することができる。ビーズとしては、例えば、直径が2mmのジルコニアビーズを用いる。ビーズミルの撹拌条件は、例えば、回転数を1000rpm以上1200rpm以下とし、流速を40cm3/min以上200cm3/min以下とする。回転数を高めると、スラリー中の一次粒子の割合が高まるため、電極の比表面積が高まる傾向にある。また、流速が高いと、撹拌時間が短くなるため、スラリー中の一次粒子の割合が低下し、電極の比表面積が低下する傾向にある。
次いで、得られたスラリーを、集電体の両面又は片面上に塗布する。この際、集電体において、何れの表面にもスラリーを塗布しない部分を残してもよい。次いで、塗膜を乾燥させて、乾燥後の塗膜にプレス処理を施す。このようにして、電極を得る。
活物質含有層の細孔分布及び粒度分布は、例えば、活物質、導電剤及び結着剤の種類、これらの配合比及びこれらの粒子径や、混合物の撹拌(分散)の条件及びプレス条件などを調整することにより、先に説明した範囲内に調整することができる。
<各種測定方法>
1.活物質含有層の細孔比表面積及び細孔体積の測定方法
先ず、水銀圧入法により、活物質含有層の細孔分布を得る。具体的には、先ず、電極から、短冊状の測定サンプルを複数切り出す。測定サンプルの寸法は、例えば、1.25cm×2.50cmとする。次いで、切り出した測定サンプルの質量を測定する。次に、測定装置のセル内に、24枚の測定サンプルを装入する。これらの測定サンプルを、初期圧約10kPa(約1.5psia、細孔直径約120μm相当)、最高圧414MPa(約59986psia、細孔直径約0.003μm相当)の条件で測定して、電極の細孔分布曲線を得る。測定装置としては、例えば、島津製作所製マイクロメリティックス細孔分布測定装置オートポア9520を用いる。
次いで、同じ電極から切り出した別の測定サンプルから、例えばスパチュラを用いて活物質含有層を剥がし取り、集電体片を得る。次いで、この集電体片の質量を測定する。次いで、測定サンプルの質量から集電体片の質量を減ずることにより、測定サンプルに含まれる活物質含有層の質量を得る。次いで、上記の方法により得られた電極の細孔分布曲線について、再計算を行い、活物質含有層の細孔分布曲線に換算する。このようにして、活物質含有層の細孔分布曲線を得る。
以上のようにして得られた細孔分布及び活物質含有層の質量から、活物質含有層の細孔比表面積と、質量1g当りの細孔体積とをそれぞれ求めることができる。
2.活物質含有層のX線光電子分光分析(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)
先ず、集電体に接していない表面部分を含む活物質含有層の測定サンプルを得る。次いで、測定サンプルを、X線光電子分光分析装置に装入する。分析装置としては、例えば、Thermo Fisher Scientific社製VG Theta Probeを用いる。
測定に際しては、励起X線源として単結晶分光AlKα線を用いる。なお、単結晶分光AlKα線とは、色性をより良くするために、AlKα線を単結晶で分光した光である。この励起X線源を、X線スポットが800×400μmの楕円形になるように、測定サンプルにおいて集電体と接していない表面部分に照射して、X線光電子分光(XPS)スペクトルを得る。XPSスペクトルにおいて、横軸は光電子の結合エネルギーを示し、縦軸は単位時間当りに観測された光電子の個数を示す。
ここで、XPS分析では、サンプルの表面からの例えば0~10nmの深さまでの領域を分析することができる。そのため、XPS分析によると、活物質含有層の表面から0~10nmの深さまでの領域の情報を得ることができる。言い換えると、測定サンプルのX線光電子分光スペクトルは、活物質含有層の表面についてのスペクトルであるということもできる。
次に、活物質含有層におけるフッ素(F)の原子百分率Bと、マンガン(Mn)の原子百分率Aとの比B/Aの算出方法について説明する。
先ず、XPSスペクトル上の各ピークの面積を算出する。具体的には、先ず、XPSスペクトル上の各元素のピークについて、ガウス関数を用いて複数のピークに分離する。次いで、分離後のピークについて、フィッティング解析を行う。次いで、フィッティング解析後の分離ピークを重ね合わせて更にフィッティング解析を行う。次いで、Shirley(シャーリー)法を用いてバックグラウンドを決定し、このバックグラウンドを、更なるフィッティング解析後のXPSスペクトルから差し引く。このようにして得られたXPSスペクトルから、各元素のピークの面積を算出する。
次いで、各元素のピークの面積と、各元素に対応する相対感度係数とから、各元素の原子濃度を算出する。ここで、XPSスペクトル上には、炭素(C)、酸素(O)、リチウム(Li)、フッ素(F)、リン(P)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、及び元素Mに係るピークが現れ得る。したがって、各元素の原子濃度を算出する母数は、上記XPSスペクトル上に現れる元素から算出する。
マンガン(Mn)の原子百分率Aは、Mnの2p軌道の電子のうち全角運動量が3/2の電子(Mn2p3/2)に帰属されるピークの面積から求める。XPSスペクトルにおいて、Mnの2p軌道の電池のうち全角運動量が3/2の電子に帰属されるピークは、638~647eVの結合エネルギー領域に現れる。具体的には、まず、638~647eVの結合エネルギー領域に現れるピークについて、4つのガウス関数でフィッティングして、4つのガウス関数の重ね合わせで表す。そして、4つのガウス関数のうち、結合エネルギーが最も高いものを除いた3つのガウス関数の面積の総和と、マンガンの相対感度係数とから、マンガンの原子百分率Aを算出する。
図1は、活物質含有層に係るXPSスペクトルの一例を示すグラフである。図1に示すXPSスペクトルには、Mnの2p軌道の電子のうち全角運動量が3/2の電子(Mn2p3/2)に帰属されるピークが示されている。このピークは、図1に示すように、4つのガウス関数に分離することができる。
フッ素(F)の原子百分率Bは、686~689eVの結合エネルギー領域にピークを有するF1s軌道の電子に帰属するピークの面積から求める。具体的には、先ず、XPSスペクトルにおいて、F1s軌道の電子に帰属するピークを、2つのガウス関数でフィッティングして、第1ガウス関数及び第2ガウス関数の重ね合わせで表す。F1s軌道の電子に帰属するピークは、683~689eVの結合エネルギー領域に現れる。第1ガウス関数は、683~686eVの結合エネルギー領域にピークを有し、かつ、第2ガウス関数のピークよりも低エネルギー側に存在する。第2ガウス関数は、686~689eVの結合エネルギー領域にピークを有する。第1ガウス関数は、フッ化リチウム(LiF)に由来し得る。第2ガウス関数は、結着剤に含まれるC-F結合に由来し得る。第2ガウス関数の面積と、フッ素の相対感度係数とから、フッ素の原子百分率Bを算出する。
図2は、活物質含有層に係るXPSスペクトルの他の例を示すグラフである。図2に示すXPSスペクトルには、Fの1s軌道の電子に帰属されるピークが示されている。このピークは、図2に示すように、2つのガウス関数に分離することができる。
フッ素(F)の原子百分率Bとマンガン(Mn)の原子百分率Aとの比B/Aは、マンガンの存在比率を1とした際のC-F結合の相対的な存在比率を表し得る。したがって、比B/Aは、第2ガウス関数のピークの面積を相対感度係数を用いて変換した値を、Mnの2p軌道の電子のうち全角運動量が3/2の電子(Mn2p3/2)に帰属されるピークの面積を相対感度係数を用いて変換した値で割ることにより算出できる。
3.活物質含有層の密度の測定方法
活物質含有層の密度は、以下の手順で測定することができる。まず、電極の厚みを、厚み測定機を用いて計測する。次に、裁断機を用いて、電極を1cm×1cmサイズに打ち抜き、電極試料を得る。次いで、この電極試料の質量を測定する。
次に、電極試料から、活物質含有層を剥がし取り、集電体試料を得る。具体的には、例えば、電極試料をN-メチルピロリドンなどの溶媒に浸漬することにより、電極試料から活物質含有層を除去することができる。なお、活物質含有層を剥がすために用いる溶媒としては、集電体を侵食せず且つ活物質含有層を剥がすことができるものであれば、何を使用しても構わない。次いで、集電体試料の厚さと質量とを測定する。
次に、電極試料の厚みから集電体試料の厚みを減じて、活物質含有層の厚みを算出する。この厚みから、活物質含有層の体積を算出する。また、電極試料の質量から集電体試料の質量を減じて、活物質含有層の質量を算出する。次いで、活物質含有層の質量を活物質含有層の体積で除することにより、活物質含有層の密度(単位:g/cm3)を算出することができる。
4.活物質の同定
誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光分析により活物質に含まれている元素の分析ができる。具体的には、先ず、電極から、活物質含有層の一部を採取して、活物質含有層試料を得る。次いで、活物質含有層試料の質量を測定する。次いで、活物質含有層試料を酸加熱処理して、活物質含有層試料から結着剤及び導電剤を取り除く。このようにして得られた試料を、ICP発光分光分析に供する。これにより、活物質に含まれる元素を確認することができる。
5.活物質及び導電剤の平均粒径の測定方法
活物質及び導電剤の平均粒径は、レーザー回折散乱法による粒度分布及び走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)観察により求めることができる。レーザー回折式分布測定装置としては、例えば、島津SALD-300を用いる。
具体的には、まず、ビーカーに活物質試料を約0.1gと、界面活性剤と、1~2mLの蒸留水とを添加して十分に攪拌して、測定試料を調製する。次いで、この測定試料を攪拌水槽に注入し、2秒間隔で64回光度分布を測定して、粒度分布データを得る。次いで、この粒度分布データを解析してメジアン径(D50値)を得る。
次いで、この活物質試料を、SEMで観察して、活物質が、一次粒子の凝集体である二次粒子か、又は、一次粒子なのか、あるいは、一次粒子と二次粒子とが混在しているのかを確認する。SEM観察の結果、活物質が二次粒子であった場合、上記のメジアン径(D50値)を、活物質の二次粒子の平均粒径とする。また、SEM観察の結果、活物質が一次粒子であった場合、上記のメジアン径(D50値)を、活物質の一次粒子の平均粒径とする。また、一次粒子と二次粒子とが混在していた場合、上記のメジアン径(D50値)を、活物質の平均粒径とする。
また、活物質試料の代わりに導電剤試料を用いたこと以外は、上述したのと同様の方法で得られたメジアン径(D50)を、導電剤の平均粒径とすることができる。
6.結着剤の割合の測定方法
活物質含有層における結着剤の割合は、熱重量―示差熱同時分析計(TG-DTA)により求めることができる。具体的には、まず、活物質含有層から活物質含有層試料を掻き取り、これを専用容器に入れて水平差動型のTG-DTAのホルダの上に乗せる。次いで、この試料を加熱炉に導入して、所定の温度まで加熱しながら、各温度毎の減少量を測定する。所定の温度到達時に得られた減少量は、結着剤の熱分解による減少分とみなすことができる。したがって、活物質含有層試料に占めるこの減少量を、活物質含有層全体に占める結着剤の割合とみなすことができる。TG‐DTA分析は、例えば以下の条件で実施する。
測定装置:セイコーインスツル株式会社 TG/DTA6300
温度走査速度:3℃/min
測定温度範囲:25℃~1000℃
試料セル:アルミナ
ガス:大気
ガス流量:200mL/min
以上説明した実施形態に係る電極は、集電体と、活物質含有層とを備える。活物質含有層は、集電体上に設けられている。活物質含有層は、活物質としてスピネル型リチウムマンガン複合酸化物を含む。水銀圧入法による活物質含有層の細孔比表面積は、3.5m2/g以上14m2/g以下である。水銀圧入法による1g当りの活物質含有層の細孔体積は、0.08mL/g以上0.13mL/g以下である。X線光電子分光分析により得られる、活物質含有層におけるFの原子百分率BとMnの原子百分率Aとの比B/Aは、4以上6.5以下である。
この電極は、活物質間の十分な導電性を高めることができ、かつ活物質含有層への非水電解質の浸透性を高めることができると共に、電極の機械的安定性も改善し、副反応を誘発する結着剤の含有量を低減することでサイクル特性を向上することができる。よって、第1の実施形態に係る電極は、入出力特性と寿命特性に優れた電池を実現することができる。
(第2実施形態)
第2の実施形態によれば、非水電解質電池が提供される。第2の実施形態に係る非水電解質電池は、正極と、負極と、非水電解質とを具備する。正極は、第1の実施形態に係る電極である。第2の実施形態に係る非水電解質電池は、第1の実施形態に係る電極を備えているため、入出力特性及び寿命特性に優れている。
負極は、0.4V(対Li/Li+)以上の電位でリチウムイオンの挿入及び脱離が可能な負極活物質を含むことが好ましい。このような負極を具備した第2の実施形態に係る非水電解質電池は、充放電によるリチウムの析出を抑えることができる。よって、このような非水電解質電池は、急速充放電特性により優れる。
次に、第2の実施形態に係る非水電解質電池の詳細を説明する。第2の実施形態に係る非水電解質電池は、電極群を具備することができる。電極群は、正極と、負極とを備える。電極群は、更に、正極及び負極の間に位置したセパレータを備えることができる。正極は、電極群から延出した正極集電タブを含むことができる。また、負極は、電極群から延出した負極集電タブを含むことができる。第2の実施形態に係る非水電解質電池は、容器を更に具備することができる。電極群は、この容器内に収納され得る。容器は、非水電解質を更に収納することができる。非水電解質は、容器内に収納された電極群に含浸され得る。第2の実施形態に係る非水電解質電池は、容器に固定された正極端子及び負極端子を更に具備することができる。正極端子は、正極の正極集電タブに電気的に接続され得る。負極端子は、負極の負極集電タブに電気的に接続され得る。
以下、負極、正極、電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
(1)正極
正極としては、上述した第1の実施形態に係る電極を用いることができる。
(2)負極
負極は、負極集電体と、負極集電体上に形成された負極活物質含有層とを含む。また、負極活物質含有層は、負極活物質に加え、導電剤及び結着剤を含むことができる。導電剤は、集電性能を高め、且つ、負極活物質と負極集電体との接触抵抗を抑えるために配合され得る。結着剤は、分散された負極活物質同士を結着させ、また、負極活物質と負極集電体とを結着させるために配合され得る。
以下に、負極活物質、導電剤、結着剤及び負極集電体として用いることができる材料を説明する。
<負極活物質>
負極活物質は、0.4V(対Li/Li+)以上の電位でリチウムイオンの挿入及び脱離が可能な化合物を用いることが好ましい。負極活物質としては、例えば、Li4+xTi512(xは充放電反応により-1≦x≦3の範囲で変化する)で表されるスピネル型チタン酸リチウム、Li2+xTi37(xは充放電反応により-1≦x≦3の範囲で変化する)で表されるラムステライド型チタン酸リチウム、Nb2TiO7で表されるニオブチタン複合酸化物、又は、P、V、Sn、Cu、NiおよびFeからなる群より選択される少なくとも1種類の元素とTiとを含有する金属複合酸化物などを用いる。P、V、Sn、Cu、NiおよびFeからなる群より選択される少なくとも1種類の元素とTiとを含有する金属複合酸化物は、例えば、TiO2-P25、TiO2-V25、TiO2-P25-SnO2、又は、TiO2-P25-MO(MはCu、Ni及びFeからなる群より選択される少なくとも1つの元素)である。これらの金属複合酸化物は、充電によりリチウムが挿入されることでリチウムチタン複合酸化物に変化する。リチウムチタン複合酸化物のうち、スピネル型チタン酸リチウムがサイクル特性に優れ、好ましい。
負極活物質はその他の活物質として、例えば、炭素質物または金属化合物を含んでいてもよい。炭素質物としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス、気相成長炭素繊維、メソフェーズピッチ系炭素繊維、球状炭素、又は、樹脂焼成炭素である。より好ましい炭素質物として、気相成長炭素繊維、メソフェーズピッチ系炭素繊維、又は球状炭素が挙げられる。炭素質物は、X線回折による(002)面の面間隔d002が0.34nm以下であることが好ましい。
金属化合物としては、金属硫化物、又は、金属窒化物を用いることができる。金属硫化物としては例えばTiS2のような硫化チタン、例えばMoS2のような硫化モリブデン、並びに、例えばFeS、FeS2、若しくはLiFeS2のような硫化鉄を用いることができる。金属窒化物としては、リチウムコバルト窒化物(例えばLisCotN、0<s<4,0<t<0.5)を用いることができる。
<導電剤>
導電剤の例としては、アセチレンブラック、カーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が挙げられる。
<結着剤>
結着剤の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、及びスチレンブタジェンゴムが挙げられる。
<負極集電体>
負極活物質がリチウムイオンを吸蔵及び放出できる物質である場合、負極集電体としては、負極活物質のリチウムイオン吸蔵及び放出電位において電気化学的に安定である材料を用いることができる。負極集電体は、銅、ニッケル、ステンレス及びアルミニウムから選択される少なくとも1種類から作られる金属箔、又はMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される少なくとも1種類の元素を含むアルミニウム合金から作られる合金箔であることが好ましい。負極集電体の形状は、電池の用途に応じて、様々なものを用いることができる。
<製造方法>
負極は、例えば、以下の方法によって作製することができる。まず、負極活物質、結着剤及び必要な場合には導電剤を、汎用されている溶媒、例えばN-メチルピロリドン中で懸濁させ、負極作製用スラリーを調製する。得られたスラリーを、負極集電体上に塗布する。塗布したスラリーを乾燥させ、乾燥後の塗膜をプレスをすることによって、負極集電体と、この負極集電体上に形成された負極活物質含有層とを含む負極を得ることができる。
(3)セパレータ
セパレータとしては、絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、ポリオレフィン、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、及びビニロンのようなポリマーで作られた多孔質フィルム又は不織布を用いることができる。セパレータの材料は1種類であってもよいし、又は2種類以上を組合せて用いてもよい。
(4)電極群
電極群は、正極、セパレータ及び負極を積層したものを捲回した捲回型構造であってもよいし、複数の正極及び複数の負極を間にセパレータを介して交互に積層させたスタック型構造であってもよいし、又はその他の構造を有していてもよい。
(5)非水電解質
非水電解質は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解される電解質塩とを含む。非水溶媒中にはポリマーを含んでもよい。
電解質塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、Li(CF3SO22N(ビストリフルオロメタンスルホニルアミドリチウム;通称LiTFSI)、LiCF3SO3(通称LiTFS)、Li(C25SO22N(ビスペンタフルオロエタンスルホニルアミドリチウム;通称LiBETI)、LiClO4、LiAsF6、LiSbF6、ビスオキサラトホウ酸リチウム{LiB(C242、通称;LiBOB}、ジフルオロ(トリフルオロ-2-オキシド-2-トリフルオロ-メチルプロピオナト(2-)-0,0)ホウ酸リチウム{LiBF2OCOOC(CF32、通称;LiBF2(HHIB)}のようなリチウム塩を用いる。これらの電解質塩は一種類で使用してもよいし二種類以上を混合して用いてもよい。電解質塩としては、LiPF6、LiBF4又はこれらの混合物を用いることが好ましい。
非水電解質における電解質塩濃度は、1モル/L以上3モル/L以下の範囲内にすることが好ましい。電解質塩の濃度がこの範囲内にあると、非水電解質において電解質塩濃度の上昇による粘度増加の影響を抑えつつ、高負荷電流を流した場合の性能をより向上することが可能になる。
非水溶媒は、特に限定されない。非水溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート(PC)やエチレンカーボネート(EC)などの環状カーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)やジメチルカーボネート(DMC)あるいはメチルエチルカーボネート(MEC)もしくはジプロピルカーボネート(DPC)などの鎖状カーボネート、1,2-ジメトキシエタン(DME)、γ-ブチロラクトン(GBL)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeHF)、1,3-ジオキソラン、スルホラン、又は、アセトニトリル(AN)を用いる。これらの溶媒は一種類で使用してもよいし二種類以上を混合して用いてもよい。非水溶媒としては、環状カーボネート及び/または鎖状カーボネートを含む非水溶媒が好ましい。
(6)外装部材
外装部材は、例えば、厚さ0.5mm以下のラミネートフィルム又は厚さ3mm以下の金属製容器が用いられる。金属製容器は、厚さ0.5mm以下であることがより好ましい。また、外装容器としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレン系樹脂、フッ素系樹脂等からなる樹脂製容器を用いてもよい。
外装部材の形状すなわち電池形状は、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、ボタン型等が挙げられる。また、電池は、例えば、携帯用電子機器等に積載される小型用途、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型用途のいずれにも適用することができる。
ラミネートフィルムの例には、樹脂層と、樹脂層間に介在された金属層とを含む多層フィルムが挙げられる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂層は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行って外装部材の形状に成形することができる。
金属製容器は、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等の元素を含む合金が好ましい。合金中に鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属を含む場合、その量は100ppm以下にすることが好ましい。
次に、第2実施形態に係る非水電解質電池の例を、図面を参照しながら更に詳細に説明する。
図3は、実施形態の非水電解質電池の一例の分解斜視図である。図3に示す電池は、密閉型の角型非水電解質電池である。図3に示す非水電解質電池は、外装缶1と、蓋2と、正極外部端子3と、負極外部端子4と、電極群5とを備える。外装缶1と蓋2とから外装部材が構成されている。外装缶1は、有底角筒形状をなし、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄あるいはステンレスなどの金属から形成される。
図4は、図3に示す非水電解質電池に用いられる電極群の部分展開斜視図である。図4に示すように、偏平型の電極群5は、正極6と負極7がその間にセパレータ8を介して偏平形状に捲回されたものである。正極6は、例えば金属箔からなる帯状の正極集電体と、正極集電体の長辺に平行な一端部からなる正極集電タブ6aと、少なくとも正極集電タブ6aの部分を除いて正極集電体に形成された正極材料層(正極活物質含有層)6bとを含む。一方、負極7は、例えば金属箔からなる帯状の負極集電体と、負極集電体の長辺に平行な一端部からなる負極集電タブ7aと、少なくとも負極集電タブ7aの部分を除いて負極集電体に形成された負極材料層(負極活物質含有層)7bとを含む。
このような正極6、セパレータ8及び負極7は、正極集電タブ6aが電極群の捲回軸方向にセパレータ8から突出し、かつ負極集電タブ7aがこれとは反対方向にセパレータ8から突出するよう、正極6及び負極7の位置をずらして捲回されている。このような捲回により、電極群5は、図4に示すように、一方の端面から渦巻状に捲回された正極集電タブ6aが突出し、かつ他方の端面から渦巻状に捲回された負極集電タブ7aが突出している。非水電解質(図示しない)は、電極群5に含浸されている。
図3に示すように、正極集電タブ6a及び負極集電タブ7aは、それぞれ、電極群の捲回中心付近を境にして二つの束に分けられている。導電性の挟持部材9は、略コの字状をした第1,第2の挟持部9a,9bと、第1の挟持部9aと第2の挟持部9bとを電気的に接続する連結部9cとを有する。正負極集電タブ6a,7aは、それぞれ、一方の束が第1の挟持部9aによって挟持され、かつ他方の束が第2の挟持部9bによって挟持される。
正極リード10は、略長方形状の支持板10aと、支持板10aに開口された貫通孔10bと、支持板10aから二股に分岐し、下方に延出した短冊状の集電部10c、10dとを有する。一方、負極リード11は、略長方形状の支持板11aと、支持板11aに開口された貫通孔11bと、支持板11aから二股に分岐し、下方に延出した短冊状の集電部11c、11dとを有する。
正極リード10は、集電部10c、10dの間に挟持部材9を挟む。集電部10cは、挟持部材9の第1の挟持部9aに配置されている。集電部10dは、第2の挟持部9bに配置されている。集電部10c、10dと、第1,第2の挟持部9a,9bと、正極集電タブ6aとは、例えば超音波溶接によって接合される。これにより、電極群5の正極6と正極リード10が正極集電タブ6aを介して電気的に接続される。
負極リード11は、集電部11c、11dの間に挟持部材9を挟んでいる。集電部11cは、挟持部材9の第1の挟持部9aに配置されている。一方、集電部11dは、第2の挟持部9bに配置される。集電部11c、11dと、第1,第2の挟持部9a,9bと、負極集電タブ7aとは、例えば超音波溶接によって接合される。これにより、電極群5の負極7と負極リード11が負極集電タブ7aを介して電気的に接続される。
正負極リード10,11および挟持部材9の材質は、特に指定しないが、正負極外部端子3,4と同じ材質にすることが望ましい。正極外部端子3には、例えば、アルミニウムあるいはアルミニウム合金が使用され、負極外部端子4には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、ニッケル、ニッケルメッキされた鉄などが使用される。例えば、外部端子の材質がアルミニウム又はアルミニウム合金の場合は、リードの材質をアルミニウム、アルミニウム合金にすることが好ましい。また、外部端子が銅の場合は、リードの材質を銅などにすることが望ましい。
矩形板状の蓋2は、外装缶1の開口部に例えばレーザでシーム溶接される。蓋2は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄あるいはステンレスなどの金属から形成される。蓋2と外装缶1は、同じ種類の金属から形成されることが望ましい。正極外部端子3は、正極リード10の支持板10aと電気的に接続され、負極外部端子4は、負極リード11の支持板11aと電気的に接続されている。絶縁ガスケット12は、正負極外部端子3,4と蓋2との間に配置され、正負極外部端子3,4と蓋2とを電気的に絶縁している。絶縁ガスケット12は、樹脂成形品であることが望ましい。
次に、各種分析方法を説明する。
電池に組み込まれている電極を分析する場合、例えば、以下の手順で電極を取り出す。
まず、測定対象の電池を用意する。測定対象の電池は、定格容量の80%以上の放電容量を有するものとする。すなわち、劣化が過剰に進行した電池は測定対象としない。
次に、用意した非水電解質電池を、開回路電圧が2.0~2.2Vになるまで放電する。次に、放電した非水電解質電池を、内部雰囲気の露点が-70℃である、アルゴンを充填したグローブボックス内に移す。このようなグローブボックス内で、非水電解質電池を開く。切り開いた非水電解質電池から、電極群を取り出す。取り出した電極群が正極リード及び負極リードを含む場合は、正極と負極とを短絡させないように注意しながら、正極リード及び負極リードを切断する。
次に、電極群を解体し、正極、負極及びセパレータに分解する。このようにして得られた正極を、エチルメチルカーボネートを溶媒として用いて洗浄する。この洗浄では、分解して得られた部材をエチルメチルカーボネート溶媒に完全に浸し、その状態で60分間放置する。
洗浄後、正極を真空乾燥に供する。真空乾燥に際しては、25℃環境において、大気圧から-97kpa以上となるまで減圧し、その状態を10分間保持する。分解、洗浄及び真空乾燥を実施して取り出した正極を、上述した第1の実施形態と同様の手法で分析することにより、正極活物質含有層の各種物性を得ることができる。また、この正極から採取される活物質含有層試料から、活物質及び導電剤の平均粒径等を得ることができる。
第2の実施形態に係る非水電解質電池は、第1の実施形態に係る電極を備えている。したがって、第2の実施形態に係る非水電解質電池は、出力特性及び寿命特性に優れている。
(第3の実施形態)
第3の実施形態によれば、非水電解質電池を含む電池パックが提供される。非水電解質電池には、第2の実施形態に係る非水電解質電池が使用される。電池パックに含まれる非水電解質電池(単電池)の数は、1個または複数にすることができる。
複数の非水電解質電池は、電気的に直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて接続されて組電池を構成することができる。電池パックは、複数の組電池を含んでいてもよい。
電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、非水電解質電池の充放電を制御する機能を有する。また、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用することができる。
また、電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、非水電解質電池からの電流を外部に出力するため、及び非水電解質電池に電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車の動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
次に、第3の実施形態に係る電池パックの一例を、図面を参照して説明する。図5は、実施形態に係る電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
図5に示す電池パックは、図3及び図4に示した構造を有する複数個の扁平型電池100を含む。これらの単電池100は、図5に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
プリント配線基板には、図5に示すように、サーミスタ25、保護回路26及び外部機器への通電用端子27が搭載されている。なお、プリント配線基板の組電池と対向する面には、組電池の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
組電池の最下層に位置する単電池100の正極外部端子に正極側リード28が接続されており、その先端はプリント配線基板の正極側コネクタ29に挿入されて電気的に接続されている。組電池の最上層に位置する単電池100の負極外部端子に負極側リード30が接続されており、その先端はプリント配線基板の負極側コネクタ31に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ29及び31は、プリント配線基板に形成された配線32及び33をそれぞれ通して保護回路26に接続されている。
サーミスタ25は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路26に送信する。保護回路26は、所定の条件で保護回路26と外部機器への通電用端子27との間のプラス側配線34a及びマイナス側配線34bを遮断することができる。所定の条件の例は、例えばサーミスタ25から、単電池100の温度が所定温度以上であるとの信号を受信したときである。また、所定の条件の他の例は、単電池100の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池100又は単電池100全体について行われる。個々の単電池100を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。図5の電池パックでは、単電池100それぞれに電圧検出のための配線35が接続されており、これら配線35を通して検出信号が保護回路26に送信される。
図5に示した電池パックは複数の単電池100を直列接続した形態を有するが、第3の実施形態に係る電池パックは、電池容量を増大させるために、複数の単電池100を並列に接続してもよい。或いは、第3の実施形態に係る電池パックは、直列接続と並列接続とを組合せて接続された複数の単電池100を備えてもよい。組み上がった電池パックをさらに直列又は並列に接続することもできる。
また、図5に示した電池パックは複数の単電池100を備えているが、第3の実施形態に係る電池パックは1つの単電池100を備えるものでもよい。
また、電池パックの態様は用途により適宜変更される。電池パックの用途としては、大電流特性でのサイクル特性が望まれるものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車等の車載用が挙げられる。特に、車載用が好適である。
本実施形態に係る電池パックを搭載した自動車において、電池パックは、例えば、自動車の動力の回生エネルギーを回収するものである。
以上詳述した第3の実施形態の電池パックは、第2の実施形態の非水電解質電池を含む。したがって、第3の実施形態に係る電池パックは、出力特性及び寿命特性に優れている。
以下に例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、発明の主旨を超えない限り本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
(実施例1)
[正極の作製]
正極活物質にスピネル型リチウムマンガン酸化物LiMn2-XAlx4(平均粒径:9.7μm、x=0.22)及びリチウムコバルト酸化物LiCoO2(平均粒径:6.1μm)、導電剤としてのカーボンブラック、並びに結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)をN-メチルピロリドン中に懸濁させて、分散処理を行い、正極作製用スラリーを得た。N-メチルピロリドンに投入したリチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、アセチレンブラック、及びPVdFは、それぞれ、95質量部、5質量部、5質量部、及び1.30質量部であった。正極作製用スラリーの分散処理に際しては、横型ビーズミル(アイメックス社製RMH-03)を使用し、ビーズにはジルコニアビーズ2mmφを用い、ビーズの充填率を80%とし、ディスク回転は1000rpmとし、流速は200cm3/minとした。次いで、得られた正極作製用スラリーを、電極目付けが57.5g/m2となるように調整しながら、厚さ12μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、塗布膜を乾燥させた。次いで、乾燥後の塗布膜についてプレス処理を行い、正極を得た。
[負極の作製]
負極活物質としてのスピネル型チタン酸リチウムLi4Ti512、導電剤としてグラファイト、及び結着剤としてのPVdFをN-メチルピロリドン中に懸濁させて、負極作製用スラリーを得た。N-メチルピロリドンに投入したチタン酸リチウム、グラファイト、及びPVdFの割合は、それぞれ、95質量%、2.5質量%、及び2.5質量%であった。調製した負極作製用スラリーを、負極集電体の両面に塗布し、塗布膜を乾燥させた。次いで、乾燥後の塗布膜についてプレス処理を行い、負極を得た。
[電極群の作製]
上記のように作製した正極及び負極を、間にセパレータを挟んで重ね合わせて積層体を得た。セパレータとしては厚さが14μmであり、幅が85mmであるセルロース製のセパレータを用いた。得られた積層体を、正極集電体及び負極集電体の幅方向に延びた軸を中心にして捲回した。上記のように捲回した積層体について、80℃での熱プレスを供し、絶縁テープで固定した。このようにして、正極、負極、及びセパレータを備える扁平状の電極群を得た。
[非水電解質の調整]
プロピレンカーボネート(PC)及びジエチルカーボネート(DEC)を1:1の容積比で混合して調製した非水溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0mol/Lの濃度で溶解させて、非水電解質を調製した。
[電池の組み立て]
先に説明したようにして得られた扁平状の電極群を、厚さ0.5mmのアルミニウム板からなる金属缶である外装部材に挿入した。次いで、上記のようにして調製した非水電解質を、外装部材の封口板に設けられた電解液注入口を介して容器内に注入した。次に、電解液注入口の周縁部に封止蓋を溶接することにより、扁平型非水電解質電池を作製した。
(実施例2~12)
実施例2~12では、表1に示すように、正極活物質、正極活物質混合比率、正極作製用スラリーの組成比率、及び分散条件を、実施例1から変更したこと以外、実施例1と同様の方法で電池をそれぞれ作製した。
(比較例1~10)
比較例1~10では、表1に示すように、正極活物質、正極活物質混合比率、正極作製用スラリーの組成比率、及び分散条件を、実施例1から変更したこと以外、実施例1と同様の方法で電池をそれぞれ作製した。比較例10では、スピネル型ではなく三元系のLiNi0.5Co0.2Mn0.32を正極活物質として用いた。
<評価方法>
[正極活物質含有層の密度、細孔体積及び細孔比表面積]
実施例1~12及び比較例1~10に係る正極活物質含有層について、上述した方法で、密度、細孔体積及び細孔比表面積を測定した。この結果を表2に示す。
図6は、実施例及び比較例に係るLog微分細孔体積分布曲線を示すグラフである。図6に示すグラフにおいて横軸は細孔径を示し、縦軸はLog微分細孔体積を示している。図6に示すグラフは、水銀圧入法で得られたものである。
[低温出力試験]
先ず、実施例1~12及び比較例1~10に係る非水電解質電池を、SOC90%に達するまで充電し、-10℃の環境下に静置した。次いで、この際の電池電圧を測定して放電前電圧(V0s)を得た。次いで、この電池を、5Cのレートで120秒間にわたって放電した。次いで、放電後の電池電圧を測定して放電後電圧(V120s)を得た。次いで、放電前電圧(V0s)から、放電後電圧(V120s)を差し引くことで、降下電圧(ΔV=V0s-V120s)を算出した。この結果を表2に示す。
なお、三元系のLiNi0.5Co0.2Mn0.32を正極活物質として用いた比較例10に係る正極は、結着剤の量が不足したため、活物質含有層と集電体とが良好な密着性を保つことができず、低温出力試験による評価を行うことができなかった。
[サイクル試験]
先ず、実施例1~12及び比較例1~10に係る非水電解質電池を、45℃の環境下にて、SOC100%まで5Cのレートで充電した。次いで、充電後の電池を、5Cのレートで、SOC0%まで放電した。この際の放電容量を測定して、1サイクル目の放電容量Wを得た。この充電及び放電を1サイクルとして、2000サイクル行った。2000サイクル目の放電容量を測定し、2000サイクル目の放電容量W1を得た。次いで、放電容量W1を放電容量Wで除することにより、放電容量維持率を算出した。この結果を表2に示す。
なお、三元系のLiNi0.5Co0.2Mn0.32を正極活物質として用いた比較例10に係る正極は、結着剤の量が不足したため、活物質含有層と集電体とが良好な密着性を保つことができず、サイクル試験による評価を行うことができなかった。
以下の表1に、実施例及び比較例に係る正極の製造方法についてまとめる。
Figure 0007024090000001
上記表1において、「正極原料」という見出しの下方の列のうち、「活物質LMO」と表記した列には、LiMn2-xx4で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物のxの値を記載している。また、「M」と表記した列には、LiMn2-xx4で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物において元素Mとして用いた元素を記載している。また、「LMO粒子径(μm)」と表記した列には、LiMn2-xx4で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物の平均粒径を記載している。また、「活物質質量比(LMO:LCO)」と表記した列には、LiMn2-xx4で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物とコバルト酸リチウムとの質量比を記載している。また、「結着剤添加量(mass. %)」表記した列には、正極原料において結着剤が占める割合を記載している。
また、比較例10は、三元系のLiNi0.5Co0.2Mn0.32を正極活物質として用いているため、上記表1の「活物質LMO」と表記した列には「―」と記載している。比較例10の「M」と表記した列には、三元系のNi、Co、Mn比を記載している。比較例10の「LMO粒子径(μm)」と表記した列には、LiNi0.5Co0.2Mn0.32の平均粒径を記載している。また、比較例10の「活物質質量比(LMO:LCO)」と表記した列には、LiNi0.5Co0.2Mn0.32とコバルト酸リチウムとの質量比を記載している。
また、上記表1において、「分散条件」という見出しの下方の列のうち、「回転数(rpm)」と表記した列には、ビーズミルの回転数を記載している。また、「流速(cm3/min)」と表記した列には、ビーズミルの流速を記載している。
以下の表2に正極及び非水電解質電池の特性についてまとめる。
Figure 0007024090000002
上記表2において、「正極特性」という見出しの下方の列のうち、「細孔比表面積(m2/g)」と表記した列には、水銀圧入法で得られた正極活物質含有層の細孔比表面積を記載している。また、「細孔体積(mL/g)」と表記した列には、水銀圧入法により得られた1g当りの正極活物質含有層の細孔体積を記載している。また、「比B/A」と表記した列には、XPS分析により得られた、正極活物質含有層におけるフッ素(F)の原子百分率Bと、マンガン(Mn)の原子百分率Aとの比を記載している。また、「密度(g/cm3)」と表記した列には、正極活物質含有層の密度を記載している。
また、上記表2において、「電池特性」という見出しの下方の列のうち、「低温出力特性(V)」と表記した列には、降下電圧(ΔV=V0s-V120s)を記載している。また、「サイクル特性(%)」と表記した列には、2000サイクル目の放電容量維持率を記載している。
表2に示されているように、実施例1~12に係る非水電解質電池は、低温出力特性とサイクル特性との両立を達成することができた。これは、実施例1~12に係る非水電解質電池は、活物質として、xは0.22以上0.7以下であるLiMn2-xx4で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物を含み、細孔比表面積が3.5m2/g以上14m2/g以下であり、細孔体積は0.08mL/g以上0.13mL/g以下であり、フッ素(F)の原子百分率Bとマンガン(Mn)の原子百分率Aとの比B/Aは、4以上6.5以下である正極活物質含有層を備えるためである。
すなわち、このような正極活物質含有層を備えると、正極活物質含有層中での正極活物質間の十分な導電性を高めることができ、かつ正極活物質含有層への非水電解質の浸透性を高めることができると共に、電極の機械的安定性も改善され、正極活物質含有層において副反応を誘発する結着剤の含有量を低減することができるため、出力特性とサイクル特性とを向上できると考えられる。
一方、上記の活物質、正極活物質含有層の細孔比表面積、細孔体積、及び比B/Aに係る少なくとも1つの要件を満たさない比較例1~10に係る非水電解質電池は、低温出力特性及びサイクル特性の少なくとも一方が、実施例1~12に係る非水電解質電池よりも劣っており、低温出力特性とサイクル特性との両立を達成できなかった。
すなわち、比較例1~10に係る非水電解質電池は、正極活物質含有層中での正極活物質間の導電性が低かったか、正極活物質含有層への非水電解質の浸透性が乏しかったか、あるいは、副反応を誘発する結着剤の含有量が多すぎる、もしくは結着剤の量が極端に不足していたために、低温出力特性とサイクル特性の両方が優れる結果とはならなかったと考えられる。
具体的には、比較例1に係る正極活物質含有層の細孔比表面積は、3.5m2/gよりも低い。このような比較例1に係る非水電解質電池では、実施例1~12に係る非水電解質電池よりも降下電圧ΔVが大きく、低温出力特性が低いことが分かる。すなわち、活物質、正極活物質含有層の細孔体積、及び比B/Aの要件を満たしても、細孔比表面積の要件を満たさなければ入力特性は改善されないことがわかる。
また、比較例2及び3に係る正極活物質含有層の細孔比表面積は、14m/gよりも高い。このような比較例2及び3に係る非水電解質電池では、実施例1~12に係る非水電解質電池よりもサイクル特性が低い。また、これらの結果から、細孔比表面積が大きいほどサイクル特性が低下する傾向があることが分かる。
また、比較例4に係る正極活物質含有層の細孔体積は、0.13mL/gよりも大きい。このような比較例4に係る非水電解質電池は、実施例1~12に係る非水電解質電池と比較して、低温出力特性及びサイクル特性がともに低い。すなわち、細孔体積が過剰に大きいと、正極活物質含有層中での正極活物質間の十分な導電性を高めることができないために低温出力特性が低下し、また電極の機械的安定性が優れないためサイクル特性が低下すると考えられる。
また、比較例5に係る正極活物質含有層の細孔体積は、0.08mL/gよりも小さい。このような比較例5に係る非水電解質電池は、実施例1~12に係る非水電解質電池と比較して、低温出力特性は優れるが、サイクル特性は劣っている。すなわち、細孔体積が過剰に小さいと、正極活物質含有層中での正極活物質間の導電性は高まるため低温出力特性は改善するが、正極活物質含有層への非水電解質の浸透性が悪化するために、サイクル特性は低下すると考えられる。
また、比較例6に係る正極活物質含有層の比B/Aは、6.5よりも高い。このような比較例6に係る非水電解質電池は、実施例1~12に係る非水電解質電池と比較してサイクル特性が低い。これは、比較例6に係る正極活物質含有層において、副反応を誘発する結着剤の含有量が多かったためと考えられる。
また、比較例7に係る正極活物質において、異種元素Mによるマンガンの置換量は、0.22よりも小さい。このような比較例7に係る非水電解質電池は、実施例1~12に係る非水電解質電池と比較してサイクル特性が低い。これは、正極活物質において元素Mとして導入されるアルミニウムの量が少ないため、正極活物質において、リチウムイオンの挿入及び脱離による結晶格子破壊や、非水電解質へのマンガンの溶解が生じたためと考えられる。
また、比較例8に係る正極活物質において、異種元素Mによるマンガンの置換量は、0.7よりも大きい。表2から明らかなように、比較例8に係る非水電解質電池のサイクル特性は、実施例1~12に係る非水電解質電池のサイクル特性とほぼ変わらず、また、比較例8に係る非水電解質電池の低温出力特性は、実施例1~12に係る非水電解質電池の低温出力特性よりも低い。これは、正極活物質の容量が低下したためと考えられる。
また、比較例9に係る正極活物質含有層は、比B/Aが4よりも小さい。このような比較例9に係る非水電解質電池は、実施例1~12に係る非水電解質電池と比較して低温出力特性及びサイクル特性がともに低い。これは、正極作製用スラリーの撹拌処理において、流速が高いために撹拌時間が短く、また、回転数が低いため、スラリーの分散処理が不十分となり、その結果、正極活物質含有層において活物質及び結着剤が均一に分散されなかったためと考えられる。
また、岩塩層状型であるLiNi0.5Co0.2Mn0.32を正極活物質として用いた比較例10において、スラリー作製時の分散を十分に行い、かつ比B/Aを4以上6.5以下とするためには、結着剤の添加量を0.6質量%以下にする必要がある。このようにして作製した電極は、結着剤の量が不足するため、正極活物質含有層と集電体との良好な密着性を保つことができず、電池としての評価は不可であった。
また、表1及び2から明らかなように、元素MとしてTi、Ni、Co及びFeからなる群から選ばれる元素とAlとを含むLiMn2-xx4で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物を用いた実施例9~12に係る非水電解質電池は、元素MとしてAlのみを含むLiMn2-xx4で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物を用いた実施例1~8に係る非水電解質電池と同様に、低温出力特性とサイクル特性とを両立することができた。以上のことから、元素MとしてTi、Ni、Co及びFeからなる群から選ばれる元素を二種類以上含有するLiMn2-xx4で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物を活物質として用いた場合においても、上記のような効果が得られるものと考えられる。
以上に説明した少なくとも1つの実施形態及び実施例によると、電極が提供される。電極は、集電体と、活物質含有層とを備える。活物質含有層は、集電体上に設けられている。活物質含有層は、活物質としてスピネル型リチウムマンガン複合酸化物を含む。水銀圧入法による活物質含有層の細孔比表面積は、3.5m2/g以上14m2/g以下である。水銀圧入法による1g当りの活物質含有層の細孔体積は、0.08mL/g以上0.13mL/g以下である。X線光電子分光分析により得られる、活物質含有層におけるFの原子百分率BとMnの原子百分率Aとの比B/Aは、4以上6.5以下である。
この電極は、活物質間の十分な導電性を高めることができ、かつ活物質含有層への非水電解質の浸透性を高めることができると共に、電極の機械的安定性も改善し、副反応を誘発する結着剤の含有量を低減することでサイクル特性を向上することができる。よって、実施形態に係る電極は、入出力特性と寿命特性に優れた電池を実現することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]集電体と、前記集電体上に設けられた活物質含有層とを備え、
前記活物質含有層は、活物質としてLiMn 2-x x 4 で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物を含み、前記xは0.22以上0.7以下であり、前記MはMg、Ti、Cr、Fe、Co、Zn、Al、Ga及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、
水銀圧入法による前記活物質含有層の細孔比表面積は、3.5m 2 /g以上14m 2 /g以下であり、
前記水銀圧入法による1g当りの前記活物質含有層の細孔体積は、0.08mL/g以上0.13mL/g以下であり、
前記活物質含有層におけるFの原子百分率Bと、Mnの原子百分率Aとの比B/Aは、下記式(1)を満たす電極:
4≦B/A≦6.5 (1)
前記Mnの原子百分率Aは、前記活物質含有層の表面に係るX線光電子分光スペクトルにおいて、638eV以上647eV以下に現れるピークの面積から求められ、前記Fの原子百分率Bは、前記活物質含有層の表面に係るX線光電子分光スペクトルにおいて、686eV以上689eV以下に現れるピークの面積から求められる。
[2] 前記活物質含有層は、Fを含む結着剤を更に含む[1]に記載の電極。
[3] 前記活物質含有層の密度は、2.8g/cm 3 以上3.2g/cm 3 以下である[1]又は[2]に記載の電極。
[4] 前記活物質含有層は、Li a CoO 2 で表されるリチウムコバルト複合酸化物を更に含み、前記aは0より大きく1.1以下である[1]~[3]の何れかに記載の電極。
[5] 前記細孔比表面積は9m 2 /g以上14m 2 /g以下である[1]~[4]の何れかに記載の電極。
[6] [1]~[5]の何れかに記載の電極である正極と、
負極と、
非水電解質と
を含む非水電解質電池。
[7] [6]に記載の非水電解質電池を含む電池パック。

Claims (6)

  1. 集電体と、前記集電体上に設けられた活物質含有層とを備え、
    前記活物質含有層は、活物質としてLiMn2-xx4で表されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物を含み、前記xは0.22以上0.7以下であり、前記MはMg、Ti、Cr、Fe、Co、Zn、Al、Ga及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、
    水銀圧入法による前記活物質含有層の細孔比表面積は、3.5m2/g以上14m2/g以下であり、
    前記水銀圧入法による1g当りの前記活物質含有層の細孔体積は、0.08mL/g以上0.13mL/g以下であり、
    前記活物質含有層は、Fを含む結着剤を含み、
    前記活物質含有層における前記結着剤に含まれるFの原子百分率Bと、Mnの原子百分率Aとの比B/Aは、下記式(1)を満たす電極:
    4≦B/A≦6.5 (1)
    前記Mnの原子百分率Aは、前記活物質含有層の表面に係るX線光電子分光スペクトルにおいて、638eV以上647eV以下に現れるピークの面積から求められ、前記Fの原子百分率Bは、前記活物質含有層の表面に係るX線光電子分光スペクトルにおいて、686eV以上689eV以下に現れるピークの面積から求められる。
  2. 前記活物質含有層の密度は、2.8g/cm3以上3.2g/cm3以下である請求項1に記載の電極。
  3. 前記活物質含有層は、LiaCoO2で表されるリチウムコバルト複合酸化物を更に含み、前記aは0より大きく1.1以下である請求項1~の何れか1項に記載の電極。
  4. 前記細孔比表面積は9m2/g以上14m2/g以下である請求項1~の何れか1項に記載の電極。
  5. 請求項1~の何れか1項に記載の電極である正極と、
    負極と、
    非水電解質と
    を含む非水電解質電池。
  6. 請求項に記載の非水電解質電池を含む電池パック。
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