JPWO2010093021A1 - エステル基含有テトラカルボン酸二無水物、ポリエステルポリイミド前駆体、ポリエステルイミドおよびこれらの製造方法 - Google Patents

エステル基含有テトラカルボン酸二無水物、ポリエステルポリイミド前駆体、ポリエステルイミドおよびこれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は高いガラス転移温度、金属箔と同等かまたはそれより低い線熱膨張係数、極めて低い吸水率、極めて低い吸湿膨張係数、優れた難燃性、比較的低い弾性率および十分な膜靭性を同時に併せ持つ、FPC用基板、COF用基板、TAB用基板材料、特にFPC用基板材料(ベースフィルム)として有用な【化3】(式中、Rはフェニル基を表し、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表し、nは各々独立して0〜4であり、aは各々独立して0〜4であり、mは2〜4の整数を示し、但し、すべてのnが同時に0であることはなく、各フェニレン基において0≦n+a≦4であり、Xは2価の芳香族基および/または脂肪族基を表す。)で表される反復単位を有するポリエステルイミド、およびその製造方法。

Description

本発明は高いガラス転移温度、金属箔と同等かまたはそれより低い線熱膨張係数、極めて低い吸水率、極めて低い吸湿膨張係数、優れた難燃性、比較的低い弾性率および十分な膜靭性を併せ持つ、フレキシブルプリント配線(FPC)用基板、チップオンフィルム(COF)用基板、テープオートメーションボンディング(TAB)用基板材料、特にFPC用基板材料(ベースフィルム)として有用なポリエステルイミドおよびその製造方法に関する。
ポリイミドは優れた耐熱性のみならず、耐薬品性、耐放射線性、電気絶縁性、優れた機械的性質等の特性を併せ持つことから、現在FPC、COFおよびTAB用基板、半導体素子の保護膜、集積回路の層間絶縁膜等、様々な電子デバイスに現在広く利用されている。ポリイミドはこれらの特性以外にも、製造方法の簡便さ、極めて高い膜純度、入手可能な種々のモノマーを用いた物性改良のしやすさといったことから、近年益々その重要性が高まっている。
電子機器の軽薄短小化が進むにつれてポリイミドへの要求特性も年々厳しさを増し、ハンダ耐熱性だけに留まらず、熱サイクルや吸湿に対するポリイミドフィルムの寸法安定性、透明性、金属層との接着性、難燃性、成型加工性、ビアホール等の微細加工性等、複数の特性を同時に満足する多機能性ポリイミド材料が求められるようになってきている。
近年、FPC、COFおよびTAB用基板としてのポリイミドの需要が飛躍的に増加している。これらの原反材即ち銅張積層板(CCL)の構成は主に3つの様式に分類される。即ち、1)ポリイミドフィルムと銅箔とをエポキシ系接着剤等を用いて貼り付ける3層タイプ、2)銅箔にポリイミドワニスの塗布後乾燥または、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)ワニスを塗布後、乾燥・イミド化するか、あるいは蒸着・スパッタ等によりポリイミドフィルム上に銅層を形成する無接着剤2層タイプ、3)接着層として熱可塑性ポリイミドを用いる擬似2層タイプが知られている。ポリイミドフィルムに高度な寸法安定性が要求される用途では接着剤を使用しない2層FCCLが有利である。寸法安定性は、熱膨張および吸湿の両方に対して求められている。
例えばFPC基板における絶縁材料であるポリイミドは実装工程における様々な熱サイクルに曝されて寸法変化が起こる。これをできるだけ抑えるためには、ポリイミドのTgが工程温度よりも高いことに加えて、Tg以下での線熱膨張係数ができるだけ低いことが望ましい。後述するようにポリイミド層の線熱膨張係数の制御は2層CCL製造工程中に発生する残留応力の低減の観点からも極めて重要である。
多くのポリイミドは有機溶媒に不溶で、ガラス転移温度以上でも溶融しないため、ポリイミドそのものを成型加工することは通常容易ではない。そのためポリイミドは一般に、無水ピロメリット酸(PMDA)等の芳香族テトラカルボン酸二無水物と4,4'−オキシジアニリン(ODA)等の芳香族ジアミンとをジメチルアセトアミド(DMAc)等の非プロトン性極性有機溶媒中で等モル反応させて、まず高重合度のポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を重合し、このワニスを銅箔上に塗布し、250〜400℃で加熱脱水閉環(イミド化)して製膜される。
残留応力は、高温でのイミド化反応後にポリイミド/金属基板積層体を室温へ冷却する過程で発生し、CCLの反り、剥離、膜の割れ等、深刻な問題がしばしば起こる。
熱応力低減の方策として、絶縁膜であるポリイミド自身を低熱膨張化することが有効である。殆どのポリイミドでは線熱膨張係数が40〜100ppm/Kの範囲にあり、金属箔例えば銅の線熱膨張係数17ppm/Kよりもはるかに大きいため、銅の値に近い、およそ20ppm/K以下を示す低熱膨張性ポリイミドの研究開発が行われている。
現在実用的な低熱膨張性ポリイミド材料としては3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンから形成されるポリイミドが最もよく知られている。このポリイミドフィルムは、膜厚や作製条件にもよるが、5〜15ppm/Kと非常に低い線熱膨張係数を示すことが知られている(例えば非特許文献1参照)。しかしながらこのポリイミドフィルムは吸水率が高いという問題点が指摘されている。
ポリイミドの寸法安定性は、熱サイクルだけでなく吸湿に対しても要求される。従来のポリイミドでは2〜3重量%も吸湿する。絶縁層の吸湿は、高密度配線や多層配線においては、寸法変化に伴う回路の位置ずれやポリイミド/導体界面でのコロージョン、イオンマイグレーション、絶縁破壊等、電気特性の低下という問題を生じさせる可能性があり、吸湿の抑制は改善すべき極めて重要な課題であった。そのためポリイミド層はできるだけ吸水率が低いことが求められている。
ポリイミドを低吸水率化するための分子設計として、例えば下記式(4):
Figure 2010093021
で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を使用してポリイミド骨格へエステル結合を導入することが有効であると報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
そのほか、いくつかの異なった構造のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物からのポリイミドも報告されている(例えば特許文献1〜6参照)。
上記式(4)において、中央のフェニレン基の代わりに、p−ポリフェニレン基を導入した、例えば式(5):
Figure 2010093021
で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物では、p−ビフェニレン基(式(5)中、m=2)(例えば特許文献4参照)、p−ターフェニレン基(m=3)、p−クォーターフェニレン基(m=4)のようにp−フェニレン基数を増加すると共に、得られるポリイミドフィルムの低熱膨張特性を保持したままで吸水率および吸湿膨張係数を低下させることができると期待される。
しかしながら、p−ビフェニレン基等のp−ポリフェニレン基の導入により極めて剛直な分子構造となり、溶媒溶解性の著しい低下は避けられない。即ち重合反応の際にこれらのモノマーが重合溶媒に溶解しにくく、重合反応後も溶け残りが生じて、ワニスをガラスフィルター等で濾過する必要が生じたり、極めて長時間の攪拌が必要となる場合、あるいは重合溶液がゲル化する等の製造工程上重大な問題を生じる恐れがある。
上記式(5)におけるp−ポリフェニレン基上にアルキル基やアルコキシ等の置換基を導入することで、モノマーの溶媒溶解性を改善できることが期待される(例えば特許文献6参照)。しかしながらこれらの脂肪族置換基のみを導入したテトラカルボン酸二無水物類より得られるポリイミドフィルムの諸物性は必ずしも十分ではなくさらなる改良が求められている。一方、Cl基に代表されるハロゲン置換基の導入はモノマーの溶媒溶解性およびポリイミドフィルムの難燃性を同時に改善することが可能である。しかしながらポリイミドフィルムを廃棄する際、環境低負荷の観点からハロゲン置換基の導入は採用不可である。
本発明のポリイミドフィルムの適用範囲であるFPC、TAB、COFのうち、FPC用途では近年、従来の低熱膨張性ポリイミドフィルムでは弾性率が高すぎて、低弾性率化も重要な課題となりつつある。これは、FPCを低い曲率半径で急激に折り曲げて狭い空間に実装する際、FPC折曲げ時の反発力が高いと銅箔/ポリイミド界面でのはがれ等のトラブルが起こりやすくなり、折曲げ部位の電気的信頼性を著しく損なう恐れがあるためである。これを回避するには、銅箔および耐熱絶縁層(ベースフィルム)両方の薄膜化と共に、ベースフィルムとして用いられるポリイミドフィルムの低弾性率化が有効である。しかしながら、ベースフィルムに要求される銅箔に近い低CTE値を実現しようとして、剛直で直線性の高い骨格構造を選択してポリイミド鎖の高度な面内配向を引き出すような分子設計を行うと、ポリイミドフィルムの弾性率が増加することになり、低CTE化と低弾性率化を両立することは容易ではない。
モノマーの溶媒溶解性、それに基づくポリイミド前駆体の重合反応性(生産性)やワニスの均一性および貯蔵安定性を保持したまま、ポリイミドフィルムの低線熱膨張係数(目標値として20ppm/K以下)、低吸水率(目標値:0.5%以下)、低吸湿膨張係数(目標値:10ppm/RH%以下)、十分な膜靭性(目標値:破断伸び>20%)、ハンダ耐熱性(目標値:Tg>300℃)、難燃性(目標値:UL94規格、V−0レベル)、且つ従来より大幅に低い引張弾性率(目標値:4GPa以下)を全て同時に満足するFPCのベースフィルム材料を得ることは容易ではなく、このような要求特性を同時に満足する実用的な耐熱絶縁材料は知られていない。
特開平10−070157号公報 特開平11−263785号公報 特開2005−298623号公報 特開2006−013419号公報 特開平09−258229号公報 国際公開第2008/091011号パンフレット
Macromolecules,29,7897(1996) High Performance Polymers,18,697(2006)
本発明は高いガラス転移温度、金属箔と同等かまたはそれより低い線熱膨張係数、極めて低い吸水率、極めて低い吸湿膨張係数、優れた難燃性、比較的低い弾性率および十分な膜靭性を同時に併せ持つ、FPC用基板、COF用基板、TAB用基板材料、特にFPC用基板材料(ベースフィルム)として有用なポリエステルイミドおよびその製造方法を提供するものである。
以上の問題に鑑み、鋭意研究を積み重ねた結果、剛直で直線的な骨格構造を保持したまま嵩高いフェニル置換基を有する骨格構造を特徴とするエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を原料とし、これとジアミンとを重合反応させて得られるポリエステルイミド前駆体をイミド化して得られるポリエステルイミドは、前記課題に記載の諸物性の大部分または一部で従来のポリエステルイミドより優れているばかりか、好ましくは、前記課題における目標物性の全てまたはその殆どを同時に満足するポリイミドであることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明によると、本発明のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物は、一般式(1)
Figure 2010093021
(式中、Rはフェニル基を表し、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表し、nは各々独立して0〜4であり、aは各々独立して0〜4であり、mは2〜4の整数を示し、但し、すべてのnが同時に0であることはなく、各フェニレン基において0≦n+a≦4である。)
で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物である。
また、そのような酸二無水物とアミンとの反応により得られる、本発明のポリエステルイミド前駆体は、一般式(2)
Figure 2010093021
(式中、R、R1、n、m、aは一般式(1)に記載したものと同じであり、Xは2価の芳香族基および/または脂肪族基を表し、エステル基の結合位置は、アミド結合に対してメタ位またはパラ位を表す。)
で表される反復単位を有するポリエステルイミド前駆体である。エステル基の結合位置について、アミド結合に対してm−位である位置は、カルボキシル基に対してp−位である位置のみを表す。
また、固有粘度が0.1〜20.0dL/gの範囲である前記ポリエステルイミド前駆体は本発明の好ましい態様である。
さらに、そのようなポリエステルイミド前駆体から得られる本発明のポリエステルイミドは、一般式(3)
Figure 2010093021
(式中、R、R1、n、m、aおよびXは一般式(2)に記載したものと同じである。)
で表される反復単位を有するポリエステルイミドである。
また本発明によると、前記一般式(2)で表されるポリエステルイミド前駆体を、加熱または脱水環化試薬を用いてイミド化反応させ一般式(3)で表されるポリエステルイミドの製造方法が提供される。
本発明は、式(1)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を原料とし、これと各種ジアミンを組み合わせて重合反応することにより得られるポリエステルイミド前駆体のワニスを金属箔等の基板上に塗布・乾燥・イミド化することで、産業上極めて有用なポリエステルイミドフィルムを提供することができる。
本発明のポリエステルイミドは、該エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の剛直性と置換基の立体的嵩高さという分子構造上の特徴から、重合反応の際に優れた溶媒溶解性および高い重合反応性を示し、さらにポリエステルイミドフィルムとした場合には低線熱膨張係数、低吸水率、低吸湿膨張係数、高ガラス転移温度、低弾性率および/または膜靭性等の諸物性に優れ、また、このような諸物性の大部分または一部が従来のポリエステルイミドフィルムよりも改良されており、好ましくは金属箔と同等かまたはそれより低い線熱膨張係数、極めて低い吸水率、極めて低い吸湿膨張係数、高ガラス転移温度、優れた難燃性、比較的低い弾性率および十分な膜靭性を兼備し、さらに好ましくは銅箔等の金属との接着強度に優れる等の物性を同時に有する従来の材料では得ることのできなかった耐熱絶縁材料を得ることができる。従って本発明のポリエステルイミドはFPC用基板、COF用基板、TAB用基板材料、特にFPC用基板材料(ベースフィルム)として極めて有用である。
図1は、ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを示したものである。(実施例4) 図2は、ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを示したものである。(実施例5) 図3は、ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを示したものである。(実施例6) 図4は、ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを示したものである。(実施例7) 図5は、ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを示したものである。(実施例8) 図6は、ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを示したものである。(実施例9) 図7は、ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを示したものである。(実施例10) 図8は、ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを示したものである。(実施例11) 図9は、ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを示したものである。(実施例12) 図10は、ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを示したものである。(実施例13) 図11は、エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の1H−NMRスペクトルを示したものである。(実施例1) 図12は、エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の1H−NMRスペクトルを示したものである。(実施例2) 図13は、エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の1H−NMRスペクトルを示したものである。(実施例3)
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のポリエステルイミドの原料となりうる本発明の新規なエステル基含有テトラカルボン酸二無水物は、下記一般式(1)で表される。
Figure 2010093021
式中、Rはフェニル基を表し、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表し、nは各々独立して0〜4であり、aは各々独立して0〜4であり、mは2〜4の整数を示し、但し、すべてのnが同時に0であることはなく、各フェニレン基において0≦n+a≦4である。
このような本発明のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の特徴は、フェニル置換基を有するパラエステル結合を介してp−ポリフェニレン基を構造中に導入されている点にある。このようなモノマーを使用することで剛直で直線的な主鎖骨格を保持したまま嵩高いフェニル置換基を有するポリイミドを得ることができる。
従って、一般式(1)において、Rはフェニル基であり、nは各々独立して0〜4である。好ましいnは0、1、または2であり、0または1がより好ましい。但し、フェニル基は、分子中心のp−ポリフェニレン構造に少なくとも1つ置換していることが必要であり、即ち、すべてのnが同時に0であることはない。p−ポリフェニレン基全体でのRの置換数としては、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜2であり、p−ポリフェニレン基全体でのRの置換数が2以上の場合、p−ポリフェニレン基全体でのRの置換数がmよりも大きくなく、各フェニレン基でのnが0または1であることがさらに好ましい。また、本願の効果を損なわない範囲においてフェニル基Rには下記R1で例示したようなアルキル基またはアルコキシ基が置換していてもよく、フェニル基Rに置換基を有する場合、置換基としてはアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。このような置換基の数は1〜2が好ましい。しかしながら、難燃性の点ではフェニル基Rには置換基がない方が好ましい。
また、mは2〜4の整数であり、mが3以上のp−ポリフェニレン構造においては、フェニル基は末端のフェニレン核に置換していることが好ましい。
また、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基または炭素原子数1〜6のアルコキシ基であり、好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基である。炭素原子数1〜6のアルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、環状のシクロアルキル基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数5乃至6のシクロアルキル基であり、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等であり、最も好ましくはメチル基である。
また、炭素原子数1〜6のアルコキシ基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基、環状のシクロアルコキシ基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基、炭素原子数5乃至6のシクロアルコキシ基であり、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。また、aは各々独立して0〜4であり、0、1または2が好ましく、0または1がより好ましい。難燃性の点で、すべてのフェニレン基で各々のaが0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。aが1の場合、R1はアルキル基が好ましく、メチル基等炭素原子数の少ないほうがより好ましい。また、各フェニレン基においてnとaの和は、0≦n+a≦4である。p−ポリフェニレン基にR1が2つ以上置換している場合、R1は同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(1)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物としては、具体的には、例えば、合成のしやすさ、原料の入手の可否および原料コスト等の観点から、下記式(6)〜(8)
Figure 2010093021
Figure 2010093021
Figure 2010093021
さらに、4,4'−ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)−3,3'−ジメチル−5,5'−ジフェニルビフェニル、4,4'−ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジフェニルビフェニル、4,4'−ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)−3,3'−ジメトキシ−5,5'−ジフェニルビフェニル、4,4''−ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)−3−メチル−5−フェニル−p−ターフェニル、4,4'''−ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)−3,3''',5,5'''−テトラフェニル−p−クォーターフェニル等のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
このような本発明の一般式(1)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の製造方法としては、特に制限はなく、例えばフェニル置換基を有する下記一般式(9)
Figure 2010093021
(式中、R、R1、n、mおよびaは一般式(1)のそれと同じである。)
で表されるフェニル置換基を有するジヒドロキシ−p−ポリフェニレン化合物(以下、ジオールとも称呼する場合がある。)またはその誘導体とトリメリット酸無水物またはその誘導体からエステル化反応により合成することができる。
また、前記一般式(9)で表されるジヒドロキシ−p−ポリフェニレン化合物は、本発明のポリエステルイミドの骨格構造となるものであり、具体的には、例えば、
3−フェニル−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、3,3'−ジフェニル−4,4'−ジヒドロキシビフェニル、
Figure 2010093021
3−フェニル−4,4''−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、
Figure 2010093021
3,3''−ジフェニル−4,4''−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、
3,3'''−ジフェニル−4,4'''−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニル
Figure 2010093021
さらに、3,3'−ジメチル−4,4'−ジヒドロキシ−5,5'−ジフェニルビフェニル、
3,3'−ジ−t−ブチル−4,4'−ジヒドロキシ−5,5'−ジフェニルビフェニル、
3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジヒドロキシ−5,5'−ジフェニルビフェニル、
4,4''−ジヒドロキシ−3−メチル−5−フェニル−p−ターフェニル、
4,4'''−ジヒドロキシ−3,3''',5,5'''−テトラフェニル−p−クォーターフェニル等が挙げられる。
このような前記一般式(9)で表されるジオールは、その製造方法については公知の方法を用いて合成することができる。
例えば、特開平2−212449号公報等に記載されているようにフェニル基にブロム基が置換したアルコキシベンゼン類とフェニル基にブロモマグネシウム基を有するアルコキシベンゼン類を反応させた後、得られた生成物のアルコキシル基のアルキル基をBBr3やHBrにより脱離させ水酸基とすることによって得ることができる。
さらに前記一般式(9)において、m=2(ビフェニレン)の場合は、NL6410238号公報に記載されたようにフェニル置換t−ブチルフェノール類を酸化カップリングさせた後、還元してビフェノール類とし、その後、t−ブチルを脱離させて得ることができる。また、特開平8−27051号公報や特開昭56−53631号公報に記載されているようにフェニル基にハロゲン基を有するフェニルフェノール類同士を反応させることにより得ることもできる。
m=3(ターフェニレン)または4(クォーターフェニレン)の場合は、特開2002−234856号公報や特開2005−247809号公報に記載されたように4−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサノン類または4,4'−ビシクロヘキサンノン類とフェノール類とを酸触媒存在下で反応させ、得られたビスフェノール類を熱分解した後、得られた反応生成物を脱水素することによっても得ることができる。
これらのジオールまたはその誘導体とトリメリット酸無水物またはその誘導体からのエステル化反応によるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の製造方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、一般式(9)で表されるジオールのヒドロキシ基とトリメリット酸無水物のカルボキシル基を高温で直接脱水反応させるか、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水試薬を用いて脱水縮合させる方法、あるいはジオールのジアセテート化体とトリメリット酸無水物とを高温で反応させ脱酢酸してエステル化する方法(エステル交換法)、トリメリット酸無水物のカルボキシル基を酸ハライドに変換し、これとジオールとを脱酸剤(塩基)の存在下で反応させる方法(酸ハライド法)、トシルクロリド/N,N−ジメチルホルムアミド/ピリジン混合物を用いてトリメリット酸無水物中のカルボキシル基を活性化してエステル化する方法等が挙げられる。上述の方法の中でもエステル交換法や酸ハライド法が経済性、反応性の点で好ましく適用できる。
以下に、好ましい方法例として酸ハライド法によりエステル化反応を行い、本発明のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を合成する方法についてさらに詳しく説明する。まずトリメリット酸無水物クロリドを溶媒に溶解し、セプタムキャップで密栓する。この溶液に、一般式(9)で表されるジオールおよび適当量の塩基(脱酸剤)を同一溶媒に溶解したものをシリンジまたは滴下ロートにて滴下する。滴下終了後、反応混合物を1〜24時間撹拌する。この際ジオールに対するトリメリット酸無水物クロリドの添加量は通常2倍モル(当量)である。しかしながらトリメリット酸無水物クロリドがジオール体よりもはるかに溶媒溶解性に優れ、反応後に溶媒洗浄により容易に溶解・除去できるという観点から、上記反応の際にジオールに対してトリメリット酸無水物クロリドを過剰に添加してもよい。適用可能なトリメリット酸無水物クロリドの添加量はジオールに対して2〜10倍モル量、好ましくは2〜5倍モル量である。
上記エステル化反応の際、使用可能な溶媒としては、特に限定されないが、テトラヒドロフラン(以下THFと称する)、1,4−ジオキサン、ピコリン、ピリジン、アセトン、クロロホルム、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド(以下DMAcと称する)、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(以下DMFと称する)、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,2−ジメトキシエタン−ビス(2−メトキシエチル)エーテル等の非プロトン性溶媒、およびフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール等のプロトン性溶媒が挙げられる。またこれらの溶媒を単独でも、2種類以上混合して用いてもよい。原料の溶解性の観点からTHF、DMFおよびDMAcが好適に用いられる。またこれらの溶媒はモレキュラーシーブス等を加えて脱水したものであることが好ましい。
上記エステル化反応は、−10〜50℃で行われるが、より好ましくは0〜30℃で行われる。反応温度が50℃よりも高いと一部副反応が起こり、収率が低下する恐れがあり、好ましくない。
該エステル基含有テトラカルボン酸二無水物を得る反応は、溶質濃度1〜50重量%の範囲で行われる。副反応の制御、沈殿物の濾過工程を考慮して、好ましくは5〜30重量%の範囲で行われる。
反応に用いる脱酸剤としては、特に限定されないが、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の有機3級アミン類、プロピレンオキサイド等のエポキシ類、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基等が使用可能である。反応後の分離操作、コスト、有害性等の観点からピリジンが好適に用いられる。
得られた該エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の分離・精製は以下のようにして行う。例としてピリジンを脱酸剤として用いた場合について説明する。上記エステル化反応終了後、用いた溶媒に対する目的物の溶解度が高い場合は、反応混合物から、まず生成したピリジン塩酸塩を濾別し、濾液をエバポレーターで溶媒留去し、析出物を得る。エステル化反応の際にトリメリット酸無水物クロリドを過剰に使用した場合は、この析出物をまずシクロヘキサンやトルエン等の無極性溶媒で洗浄し、残留しているトリメリット酸無水物クロリドを溶解・除去する。その後水で繰り返し洗浄して塩酸塩および過剰量のピリジンを溶解・除去し、100〜230℃で24時間真空乾燥して粉末状の粗生成物を得ることができる。一方、目的物の溶解度が低い場合には、反応溶液から析出した目的物とピリジン塩酸塩の混合物を濾別し、トリメリット酸無水物クロリドを過剰に使用した場合は、まずシクロヘキサンやトルエン等の無極性溶媒で洗浄して残留しているトリメリット酸無水物クロリドを溶解・除去し、さらに水で繰り返し洗浄して塩酸塩および過剰のピリジンを溶解・除去する。また、ピリジン塩酸塩やピリジンを除去するために反応溶液をエバポレーターで適度に濃縮後、これを大量の水中に滴下して水洗と沈殿の析出を同時に行ってもよい。
上記水洗操作の際、洗浄液に1%硝酸銀水溶液を滴下して塩化銀の白色沈殿の生成の有無をもって、塩酸塩が完全に除去されたかどうか簡便に判断することができる。
また、上記水洗操作により該エステル基含有テトラカルボン酸二無水物中の酸無水物基が一部加水分解を受けて、ジカルボン酸に変化する場合があるが、100〜250℃、好ましくは120〜200℃で真空乾燥することで、容易に脱水閉環して酸無水物基に戻すことができる。また上記のような加熱の代わりに有機酸の酸無水物で処理する方法も適用可能である。使用可能な有機酸の酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等が挙げられるが、除去の容易さの点で無水酢酸が好適に用いられる。このようにして得られた粗生成物を、これと反応しない適当な溶媒で再結晶、洗浄、加熱真空乾燥することで重合に供することのできる高純度の本発明に係る該エステル基含有テトラカルボン酸二無水物を得ることができる。
また、今ひとつの好ましい方法例としてエステル交換法によりエステル化反応を行い、本発明のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を合成する方法について説明する。
エステル交換法では、まず、前記一般式(9)のジオール類をカルボン酸ジエステルとする。例えば、無水酢酸等のカルボン酸無水物の過剰量を用いて酢酸等のカルボン酸エステルとする方法、硫酸、またはp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒の存在下にカルボン酸やハロゲン化アシルを反応させる方法等のフェノール類のカルボン酸エステルの製造方法を用いてカルボン酸ジエステル、例えば、酢酸ジエステルとし、これと無水トリメリット酸とのエステル交換反応により本発明のエステル基含有テトラカルボン酸無水物を合成する。トリメリット酸無水物の使用量は、ジオール類の酢酸ジエステルに対して好ましくは2〜10倍モルの範囲、より好ましくは2.6〜3.4倍モルの範囲である。
反応温度は好ましくは200〜230℃の範囲である。触媒は、カルボン酸リチウム塩、例えば酢酸リチウムが好ましい。触媒の使用量としては、ジオール類の酢酸ジエステルに対して0.1〜6モル%の範囲で用いることが好ましい。また反応溶媒は、ジフェニルエーテル等の高沸点の芳香族炭化水素類が挙げられ、その使用量はジオール類酢酸ジエステル1重量部に対して2〜10重量部用いることが好ましい。反応は、例えば、不活性雰囲気下に反応容器に原料の酢酸ジエステル、無水トリメリット酸類、酢酸リチウムおよび溶媒を仕込み攪拌下に昇温して、生成した酢酸を留出させながら反応を完結させる。また、反応終了後、反応溶液から目的物を分離精製する方法は、公知の方法に従い、例えば、反応液をそのまま冷却もしくは貧溶媒を加えて冷却して、析出した結晶を濾別することで粗製乃至高純度の目的物を得ることができる。さらに必要であれば、再結晶・濾過することで高純度品を得ることができる。
また、例えば、上記精製操作で結晶化させる前に、目的物が溶解した溶媒を濾過して無機塩を濾別するか、あるいは、水洗することで無機塩等の金属分をさらに低減させた高純度品を得ることもできる。
次に、本発明の前記一般式(2)で表されるポリエステルイミド前駆体の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。より具体的には、例えば、以下の方法により得られる。まずジアミンを重合溶媒に溶解し、これに先の方法で得られた本発明のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の粉末を徐々に添加し、メカニカルスターラーを用い、0〜100℃、好ましくは20〜60℃で0.5〜100時間好ましくは1〜48時間攪拌する。この際モノマー濃度は5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。このモノマー濃度範囲で重合を行うことにより均一で高重合度のポリイミド前駆体溶液を得ることができる。ポリエステルイミド前駆体の重合度が増加しすぎて、重合溶液が攪拌しにくくなった場合は、適宜同一溶媒で希釈することもできる。
本発明のポリエステルイミド前駆体をイミド化してポリエステルイミドフィルムとして用いた場合の靭性の観点からみると、ポリエステルイミド前駆体の重合度はできるだけ高いことが望ましい。上記モノマー濃度範囲で重合を行うことによりポリマーの重合度が十分高く、モノマーおよびポリマーの溶解性も十分確保することができる。上記範囲より低い濃度で重合を行うと、ポリエステルイミド前駆体の重合度が十分高くならない場合があり、また、上記モノマー濃度範囲より高濃度で重合を行うと、モノマーや生成するポリマーの溶解が不十分となる場合がある。
また、ポリエステルイミドフィルムとした場合の靭性およびワニスのハンドリングの観点からは、ポリエステルイミド前駆体の固有粘度は0.1〜20.0dL/gの範囲が好ましく、0.5〜10.0dL/gの範囲であることがより好ましい。
本発明のポリエステルイミド前駆体を製造するに際し、用いられるジアミン、即ち一般式(2)において2価の芳香族基および/または脂肪族基を表すXで示される骨格を有するジアミンとしては、好ましくは芳香族ジアミンおよび/または脂肪族ジアミンが用いられる。
ポリエステルイミドフィルムとした場合の要求特性に対応して、且つポリエステルイミド前駆体の重合反応性を損なわない範囲であれば特に限定されないが、ポリエステルイミド前駆体の重合の際に使用可能な芳香族ジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4'−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4'−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4'−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4'−オキシジアニリン、3,4'−オキシジアニリン、3,3'−オキシジアニリン、2,4'−オキシジアニリン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンズアニリド、4−アミノフェニル−4'−アミノベンゾエート、ベンジジン、3,3'−ジヒドロキシベンジジン、3,3'−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p−ターフェニレンジアミン等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
また、脂肪族ジアミンとしては、芳香族ジアミンと同じく特に限定されないが、例えば、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、シス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
上記、芳香族ジアミンおよび/または脂肪族ジアミンにおいて、難燃性の点から芳香族ジアミン、即ちXが芳香族基であることが好ましい。また各芳香族基には脂肪族基の置換基を有さないか、または、置換基数が1または2であることがより好ましく、置換基としてはメチル基等のアルキル基が好ましい。さらに、ポリエステルイミドフィルムの低熱膨張特性発現という観点からは、剛直で直線的な構造を有するジアミン即ち、p−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、3,4'−オキシジアニリン、4,4'−ジアミノベンズアニリド、4−アミノフェニル−4'−アミノベンゾエート、ベンジジン、3,3'−ジヒドロキシベンジジン、3,3'−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、p−ターフェニレンジアミン、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン等を使用することが好ましい。この際、これらの剛直性ジアミンの含有量は全ジアミン使用量の10〜100モル%、好ましくは50〜90モル%である。
本発明に係るポリエステルイミド前駆体においては、その重合反応性、ポリエステルイミドの要求特性を著しく損なわない範囲で、酸二無水物として本発明の一般式(1)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物以外の芳香族テトラカルボン酸二無水物および/または脂肪族テトラカルボン酸二無水物を共重合成分として併用することができる。その際に使用可能な芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ハイドロキノン−ビス(トリメリテートアンハイドライド)、メチルハイドロキノン−ビス(トリメリテートアンハイドライド)、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4'−ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)ビフェニル、4,4'−ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)−3,3'−ジメチルビフェニル、4,4''−ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)−3−メチル−p−ターフェニル、4,4'''−ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)−3,3'''−ジメチル−p−クォーターフェニル等が挙げられる。また、これらを2種類以上用いてもよい。
また、使用可能な脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、例えば、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(ジオキソテトラヒドロフリル−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−テトラリン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
本発明のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物以外の上記芳香族テトラカルボン酸二無水物および/または脂肪族テトラカルボン酸二無水物を共重合成分として使用する場合、これらの含有量は全テトラカルボン酸二無水物使用量の0〜50モル%であり、好ましくは0〜30モル%の範囲である。
重合反応の際使用される溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホオキシド等の非プロトン性溶媒が好ましいが、原料モノマーと生成するポリイミド前駆体が溶解すれば問題はなく特に限定されない。使用可能な溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、ジグライム、トリグライム等のエーテル系溶媒、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、スルホラン、ジメチルスルホキシド等のスルホン系溶媒等が挙げられる。
本発明のポリエステルイミド前駆体はその重合溶液を、大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過・乾燥し、粉末として単離することもできる。
次に、本発明の前記一般式(3)で表されるポリエステルイミドの製造方法としては、上記の方法で得られた本発明のポリエステルイミド前駆体を脱水閉環反応(イミド化反応)することで製造することができる。イミド化反応としては、公知の方法を用いることができるが、本発明においては、本発明のポリエステルイミド前駆体を加熱または脱水環化試薬を用いてイミド化させる製造方法が好ましい。
まず、ポリエステルイミドフィルムを製造する方法について述べる。具体的には例えば、ポリエステルイミド前駆体の重合溶液(ワニス)をガラス、銅、アルミニウム、ステンレス、シリコン等の基板上に流延し、オーブン中40〜180℃、好ましくは50〜150℃で乾燥する。得られたポリエステルイミド前駆体フィルムを基板上で真空中、窒素等の不活性ガス中、あるいは空気中、200〜450℃、好ましくは250〜430℃で加熱することで本発明のポリエステルイミドフィルムを製造することができる。加熱温度はイミド化の閉環反応を十分に行なうという観点から200℃以上、生成したポリエステルイミドフィルムの熱安定性の観点から450℃以下が好ましい。またイミド化は熱酸化分解を抑制するという観点から真空中あるいは不活性ガス中で行うことが望ましいが、イミド化温度が高すぎなければ空気中で行っても、差し支えない。
またイミド化反応は、上記のような熱処理の代わりに、ポリエステルイミド前駆体フィルムをピリジンやトリエチルアミン等の3級アミン存在下、無水酢酸等の脱水環化試薬を含有する溶液に浸漬することによって行うことも可能である。また、これらの脱水環化試薬をあらかじめポリエステルイミド前駆体ワニス中に室温で投入・攪拌し、それを上記基板上に流延・乾燥することで、部分的にイミド化したポリエステルイミド前駆体フィルムを作製することもでき、これをさらに上記のように熱処理することでポリエステルイミドフィルムが得られる。
ポリエステルイミド前駆体の重合溶液をそのままあるいは同一の溶媒で適度に希釈した後、そのワニスを150〜230℃に加熱することで、ポリイミド自体が用いた溶媒に溶解する場合、本発明のポリエステルイミドのワニスを容易に製造することができる。溶媒に不溶な場合は、ポリエステルイミド粉末を析出させることができる。この際、イミド化の副生成物である水等を共沸留去するために、トルエンやキシレン等を添加しても差し支えない。また触媒としてγ−ピコリン等の塩基を添加することができる。また、ポリエステルイミドのワニスを大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下して析出させ、これを濾過しポリエステルイミドを粉末として単離することもできる。またポリエステルイミド粉末が溶媒に可溶である場合は、これを上記重合溶媒に再溶解してポリエステルイミドのワニスとすることができる。
本発明のポリエステルイミドは、該エステル基含有テトラカルボン酸二無水物とジアミンを溶媒中高温で反応(ワンポット重合)させることにより、ポリエステルイミド前駆体を単離することなく、一段階で製造することもできる。この際、反応温度は反応促進の観点から、130〜250℃、好ましくは150〜230℃の範囲に保持するとよい。またポリエステルイミドが、用いた溶媒に不溶な場合、ポリエステルイミドは沈殿物として得られ、可溶な場合はポリエステルイミドのワニスとして得られる。ワンポット重合の際使用可能な溶媒は特に限定されず、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒が例として挙げられる。またm−クレゾール等のフェノール系溶媒も使用可能である。これらの溶媒にイミド化反応の副生成物である水を共沸留去するために、トルエンやキシレン等を添加することができる。またイミド化触媒としてγ−ピコリン等の塩基を添加することができる。得られたワニスを大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過しポリエステルイミドを粉末として単離することができる。またポリエステルイミドが溶媒に可溶である場合はその粉末を上記溶媒に再溶解してポリイミドワニスとすることができる。
上記得られたポリエステルイミドワニスを基板上に塗布し、40〜400℃、好ましくは100〜350℃で乾燥することによってもポリエステルイミドフィルムを形成することができる。
また、上記のように得られたポリエステルイミド粉末を200〜450℃、好ましくは250〜430℃で加熱圧縮することでポリエステルイミドの成型体を作製することもできる。
また、ポリエステルイミドを形成する今ひとつの方法として、ポリエステルイミド前駆体溶液中にN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドやトリフルオロ無水酢酸等の脱水試薬を添加・撹拌して0〜100℃、好ましくは20〜60℃で反応させることにより、ポリエステルイミドの異性体であるポリエステルイソイミドが生成する。イソイミド化反応は上記脱水試薬を含有する溶液中にポリエステルイミド前駆体フィルムを浸漬することでも可能である。ポリエステルイソイミドワニスを上記と同様な手順で製膜した後、250〜450℃、好ましくは270〜400℃で熱処理することにより異性化反応させ、ポリエステルイミドへ容易に変換することができる。
本発明のポリエステルイミドをFPC、TAB、COF用絶縁基板材料として適用するために、本発明に係るポリエステルイミドフィルムとしての材料性能としては、該ポリエステルイミドフィルムの線熱膨張係数は30ppm/K以下であることが好ましく、20ppm/K以下であることがより好ましい。また、吸水率は1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。吸湿膨張係数は10ppm/RH%以下であることが好ましく、5ppm/RH%以下であることがより好ましい。ガラス転移温度はハンダ耐熱性の観点から300℃以上であることが好ましく、350℃以上であることがより好ましい。また熱酸化安定性の指標である空気中の5%重量減少温度は高いほどよいが、450℃以上であれば特に重大な問題は生じない。難燃性はUL−94規格においてV−0レベルを達成することが好ましい。TABおよびCOF用途ではポリエステルイミドフィルムの弾性率は特に制限はないが、FPC用途では低反発化の観点から弾性率が低いほどよく、4GPa以下であることが望ましい。フィルムの可撓性の指標として180°折曲試験により破断耐性があれば上記産業分野に適用可能であるが、引張試験における破断伸びは高いほど適用範囲が広がるためより好ましい。特に折り曲げ実装に適用されるFPC用途ではポリエステルイミドフィルムの破断伸びが10%以上であれば適用可能であるが、20%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
本発明のポリエステルイミド層を銅箔上に直接形成してCCLを作製する場合、CCLの密着強度の指標であるピール強度が0.8kgf/cm以上であることが好ましく、1.0kgf/cm以上であることがより好ましい。
本発明のポリエステルイミドおよびその前駆体には、必要に応じて酸化安定剤、フィラー、接着促進剤、シランカップリング剤、感光剤、光重合開始剤、増感剤、末端封止剤、架橋剤等の添加物を加えてもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における物性値は、次の方法により測定した。
<赤外吸収スペクトル>
フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製FT−IR5300またはFT−IR350)を用い、KBr法にてエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の赤外線吸収スペクトルを測定した。また透過法にてポリエステルイミド前駆体およびポリエステルイミド薄膜(約5μm厚)の赤外線吸収スペクトルを測定した。
1H−NMRスペクトル>
日本電子社製NMR分光光度計(ECP400)を用い、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)中でエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の1H−NMRスペクトルを測定した。
<元素分析>
ヤナコテクニカルサイエンス社製有機元素分析装置(CHN CORDER MT−6)を用いて本発明のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の元素分析を行い、炭素、水素、窒素の各元素含有率(重量%)を求めた。
<示差走査熱量分析>
エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の融点および融解曲線は、ブルカーエイエックスエス社製示差走査熱量分析(DSC)装置(DSC3100)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度5℃/分で測定した。融点が高く融解ピークがシャープであるほど、高純度であることを示す。
<固有粘度>
0.5重量%のポリエステルイミド前駆体溶液を、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。得られた還元粘度を固有粘度としてみなした。
<ガラス転移温度:Tg>
ブルカーエイエックスエス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて動的粘弾性測定により、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分における損失エネルギー曲線のピークからポリエステルイミドフィルム(20μm厚)のガラス転移温度を求めた。または試験片に静荷重0.5g/膜厚1μm当たりをかけ、5℃/分で昇温した時の試験片の伸びと温度の関係即ちTMA曲線を得た後、試験片が急激に伸びた温度付近において2つの接線を引きその交点からガラス転移温度を求めた。
<線熱膨張係数:CTE>
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて、熱機械分析により、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、100〜200℃の範囲での平均値としてポリエステルイミドフィルム(20μm厚)の線熱膨張係数を求めた。
<5%重量減少温度:Td5>
ブルカーエイエックスエス社製熱重量分析装置(TG−DTA2000)を用いて、窒素中および空気中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、ポリエステルイミドフィルム(20μm厚)の初期重量が5%減少した時の温度を測定した。これらの値が高いほど、熱安定性が高いことを表す。
<誘電率:εcal>
アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ4T)を用いて、ポリエステルイミドフィルム(20μm厚)に平行な方向(nin)と垂直な方向(nout)の屈折率をアッベ屈折計(ナトリウムランプ使用、波長589nm)で測定し、ポリエステルイミドフィルムの平均屈折率〔nav=(2nin+nout)/3〕に基づいて次の経験式:εcal=1.1×nav2により1MHzにおけるポリエステルイミドフィルムの誘電率(εcal)を算出した。
<吸水率>
50℃で24時間真空乾燥したポリエステルイミドフィルム(膜厚20〜30μm)を24℃の水に24時間浸漬した後、余分な水分を拭き取り、重量増加分から吸水率(%)を求めた。殆どの用途においてこの値が低いほど好ましい。
<吸湿膨張係数:CHE>
ポリエステルイミドフィルム(5mm×20mm×膜厚20μm)を100℃で数時間真空乾燥後、これをブルカーエイエックスエス社製熱機械分析装置(TMA4000)に速やかにセット(チャック間:15mm)して膜厚1μm当たり0.5gの静荷重を試験片にかけ、室温で乾燥窒素を1時間流した後、神栄社製精密湿度供給装置(SRG−1R−1)を用いて相対湿度(RH)80%のウエットガスをTMA4000装置内に導入して、室温における試験片の伸びより、ポリエステルイミドフィルムの吸湿膨張係数を求めた。この値が低いほど吸湿寸法安定性が高いことを意味する。
<弾性率、破断伸び、破断強度>
東洋ボールドウィン社製引張試験機(テンシロンUTM−2)を用いて、ポリエステルイミド試験片(3mm×30mm×20μm厚)について引張試験(延伸速度:8mm/分)を実施し、応力−歪曲線の初期の勾配から弾性率を、フィルムが破断した時の伸び率から破断伸び(%)を求めた。破断伸びが高いほどフィルムの靭性が高いことを意味する。
<難燃性評価>
UL−94V規格に従ってポリエステルイミド試験片(125mm×13mm×20μm厚)の難燃性を評価した。
<剥離試験:ピール強度>
CCLを以下のように作製した。本発明のポリエステルイミド前駆体のNMP溶液を電解銅箔(古河電工社製F3−WS:18μm厚)のマット面に塗付、80℃で3時間空気中で乾燥し、真空中所定の温度で1時間熱イミド化して試験片を得た。これらの試験片について、上記の引張試験と同様な条件で180°剥離試験を実施し、ピール強度を測定した。
[実施例1]
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物(TAOPP−BP)の合成>
式(6):
Figure 2010093021
で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物(以下TAOPP−BPと称する)は以下のように合成した。まずナスフラスコ中、トリメリット酸無水物クロリド10.11g(48mmol)を脱水済みのテトラヒドロフラン(THF)45.5mLに溶解し、セプタムキャップでシールして溶液Aを調製した。別のフラスコ中、式(10)で表されるジオール(以下OPP−BPと称する)6.77g(20mmol)をTHF68.5mLに溶解し、これにピリジン9.7mL(120mmol)を加えてセプタムキャップでシールし溶液Bを調製した。
氷浴中で冷却、攪拌しながら、溶液Aに溶液Bをシリンジにてゆっくりと滴下し、その後室温で12時間攪拌した。反応終了後、白色沈殿物(ピリジン塩酸塩)を濾別し、濾液をエバポレーターで濃縮後、水中に滴下して析出した沈殿物を水で繰り返し洗浄し、160℃で12時間真空乾燥して黄色粉末状粗生成物を得た(収率99%)。これを無水酢酸から再結晶し、無水酢酸およびトルエンで洗浄し、最後に160℃で12時間真空乾燥して黄色結晶を得た。FT−IRスペクトルおよび1H−NMRスペクトルより、得られた生成物は目的とする上記式(6)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物(TAOPP−BP)であることが確認された。DSC測定によるシャープな融解ピークが見られたことから、生成物は高純度であることがわかった。エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の1H−NMRスペクトルを図11に示す。
FT−IR(KBr): 1858cm-1および1784cm-1(酸無水物基C=O伸縮振動吸収帯、1744cm-1(エステル基C=O伸縮振動吸収帯)、1476cm-1(フェニル基およびフェニレン基骨格振動吸収帯)、1223cm-1(C−O−Ph伸縮振動吸収帯)
式(6−1):
Figure 2010093021
1H−NMR(DMSO−d6): δ8.53〜8.55ppm[式(6−1)(1)の芳香族プロトン、d、2H]、δ8.49ppm[式(6−1)(2)の芳香族プロトン、s、2H]、上記式(6−1)(1)+(2)のプロトン合計4H:相対積分強度4.16)、δ8.23〜8.25ppm[式(6−1)(3)の芳香族プロトン、d、2H、相対積分強度2.00]、δ7.93〜7.97ppm(中央4,4'−ビフェニレン基2,2',6,6'位の芳香族プロトン、4H、相対積分強度4.16)、δ7.62〜7.65ppm(フェニル置換基2,4,6位芳香族プロトン、m、6H、相対積分強度6.22)、δ7.30〜7.40ppm(中央4,4'−ビフェニレン基3,3'位の芳香族プロトン2H + フェニル置換基3,5位芳香族プロトン4H、m、合計6H、相対積分強度6.08)
DSC: 融点236.9℃
[実施例2]
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物(TADHTP−Ph)の合成>
式(7):
Figure 2010093021
で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物(以下TADHTP−Phと称する)は以下のように合成した。まずナスフラスコ中、トリメリット酸無水物クロリド10.10g(48mmol)を脱水済みのTHF45.5mLに溶解し、セプタムキャップでシールして溶液Aを調製した。別のフラスコ中、式(11)で表されるジオール(以下DHTP−Phと称する)6.77g(20mmol)をTHF68.5mLに溶解し、これにピリジン9.7mL(120mmol)を加えてセプタムキャップでシールし溶液Bを調製した。
氷浴中で冷却、攪拌しながら、溶液Aに溶液Bをシリンジにてゆっくりと滴下し、その後室温で12時間攪拌した。反応終了後、白色沈殿物(ピリジン塩酸塩)を濾別し、濾液をエバポレーターで濃縮後、水中に滴下して析出した沈殿物を水で繰り返し洗浄し、160℃で12時間真空乾燥して白色粉末状粗生成物を得た(収率71%)。これをγ−ブチロラクトン/トルエン混合溶媒(体積比1/6)から2回再結晶し、同一溶媒で洗浄し、最後に160℃で12時間真空乾燥して白色結晶を得た。FT−IRスペクトルおよび1H−NMRスペクトルより、得られた生成物は目的とする上記式(7)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物(TADHTP−Ph)であることが確認された。DSC測定によるシャープな融解ピークが見られたことから、生成物は高純度であることがわかった。エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の1H−NMRスペクトルを図12に示す。
FT−IR(KBr): 1865cm-1および1782cm-1(酸無水物基C=O伸縮振動吸収帯、1736cm-1(エステル基C=O伸縮振動吸収帯)、1480cm-1(フェニル基およびフェニレン基骨格振動吸収帯)、1227cm-1(C−O−Ph伸縮振動吸収帯)
DSC: 融点250.0℃
元素分析結果 理論値 C:77.47%、H:3.23%
分析値 C:77.49%,H:3.38%
[実施例3]
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物(TADHQP−DP)の合成>
式(8):
Figure 2010093021
で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物(以下TADHQP−DPと称する)は以下のように合成した。まずナスフラスコ中、トリメリット酸無水物クロリド5.05g(24mmol)を脱水済みのN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)3.28mLに溶解し、セプタムキャップでシールして溶液Aを調製した。別のフラスコ中、式(12)で表されるジオール(以下DHQP−DPと称する)4.91g(10mmol)にDMAc5.24mLおよびピリジン3.24mL(40mmol)を加えて、110℃に加熱して溶解させ、セプタムキャップでシールし溶液Bを調製した。
溶液Bにおいて析出しないうちに、これを溶液Aに加え、さらにDMAcを2mL追加して室温で12時間攪拌した。反応終了後、水中に滴下して析出した沈殿物を水で繰り返し洗浄し、160℃で12時間真空乾燥して薄黄色粉末状粗生成物を得た(収率97%)。これを1,4−ジオキサン/トルエン混合溶媒(体積比2/3)から2回再結晶し、同一溶媒で洗浄し、最後に160℃で12時間真空乾燥して黄色針状結晶を得た。FT−IRスペクトルおよび1H−NMRスペクトルより、得られた生成物は目的とする上記式(8)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物(TADHQP−DP)であることが確認された。DSC測定によるシャープな融解ピークが見られたことから、生成物は高純度であることがわかった。エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の1H−NMRスペクトルを図13に示す。
FT−IR(KBr): 1861cm-1および1784cm-1(酸無水物基C=O伸縮振動吸収帯、1746cm-1(エステル基C=O伸縮振動吸収帯)、1478cm-1(フェニル基およびフェニレン基骨格振動吸収帯)、1223cm-1(C−O−Ph伸縮振動吸収帯)
DSC: 融点278.3℃
元素分析結果 理論値 C:77.32%、H:3.60%
分析値 C:77.26%、H:3.66%
[実施例4]
<ポリエステルイミド前駆体の重合、イミド化およびポリエステルイミドフィルム特性の評価>
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中にp−フェニレンジアミン5mmolを入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解した後、この溶液に実施例1に記載の式(6)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物(TAOPP−BP)粉末5mmolを徐々に加えた(全モノマー濃度:22.7重量%)。反応溶液の粘度が増加して攪拌しにくくなったため、同一の溶媒を徐々に加え最終的に全モノマー濃度15.2重量%まで希釈した。72時間撹拌し均一で粘稠なポリエステルイミド前駆体溶液を得た。このポリエステルイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、高い溶液貯蔵安定を示した。NMP中、30℃、0.5重量%の濃度でオストワルド粘度計にて測定したポリエステルイミド前駆体の固有粘度は1.84dL/gであり、高重合体であった。このポリエステルイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、80℃、2時間で乾燥して得たポリエステルイミド前駆体フィルムを基板上、減圧下250℃で1時間、さらに300℃で1時間、熱イミド化を行った後、残留応力を除去するために基板から剥がして340℃で1時間、熱処理を行い、膜厚19μmの淡黄色の透明なポリエステルイミドフィルムを得た。このポリエステルイミドフィルムは180°折曲げ試験によっても破断せず、可撓性を示した。また如何なる有機溶媒に対しても全く溶解性を示さなかった。このポリエステルイミドフィルムについて動的粘弾性測定を行った結果、389℃にガラス転移点(動的粘弾性曲線における損失ピークより決定)が観測された。
また線熱膨張係数は18.8ppm/Kと低い線熱膨張係数を示した。平均屈折率より見積もった誘電率は2.81であり、従来の最も一般的なポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、KAPTON−V)の誘電率(3.3)より低い値であった。5%重量減少温度も窒素中で474℃、空気中で468℃と高いことから十分高い耐熱性を有していることがわかる。また本発明のポリエステルイミドフィルムは吸水率が0.26%と極めて低く、吸湿膨張係数も3.9ppm/RH%であり、KAPTON−Vフィルムの値(吸水率2.9%、吸湿膨張係数24ppm/RH%)と比べるとはるかに低い値であることがわかる。機械的特性は比較的低い引張弾性率(ヤング率)=4.32GPaを示し、破断強度0.194GPa、破断伸び12.1%であった。また、真空中400℃で1時間、熱イミド化して作製したCCLについてピール強度を測定したところ、0.93kgf/cmであり、剛直な骨格のポリイミドとしては非常に高い接着強度を示した。
このようにこのポリエステルイミドは極めて低い線熱膨張係数、非常に低い吸水率、非常に低い吸湿膨張係数、高い熱安定性、比較的低い弾性率および比較的低い誘電率を示した。またUL−94、V−0レベルの難燃性を示した。表1に物性値をまとめる。ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
[実施例5]
ジアミン成分としてp−フェニレンジアミンの代わりに4−アミノフェニル−4'−アミノベンゾエート(以下APABと称する)を使用し、実施例4に記載した方法に準じてポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを図2に示す。
[実施例6]
ジアミン成分としてp−フェニレンジアミンの代わりにm−トリジンを使用し、実施例4に記載した方法に準じてポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを図3に示す。
[実施例7]
ジアミン成分としてp−フェニレンジアミンの代わりにo−トリジンを使用し、実施例4に記載した方法に準じてポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを図4に示す。
[実施例8]
エステル基含有テトラカルボン酸二無水物としてTAOPP−BPの代わりにTADHTP−Phを使用し、ジアミン成分としてp−フェニレンジアミンを用いて、実施例4に記載した方法に準じてポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを図5に示す。
[実施例9]
エステル基含有テトラカルボン酸二無水物としてTADHTP−Ph、ジアミン成分としてo−トリジンを用いて、実施例4に記載した方法に準じてポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを図6に示す。
[実施例10]
エステル基含有テトラカルボン酸二無水物としてTADHQP−DPを使用し、ジアミン成分としてp−フェニレンジアミンを用いて、実施例4に記載した方法に準じてポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを図7に示す。
[実施例11]
エステル基含有テトラカルボン酸二無水物としてTADHQP−DP、ジアミン成分としてAPABを用いて、実施例4に記載した方法に準じてポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを図8に示す。
[実施例12]
エステル基含有テトラカルボン酸二無水物としてTADHQP−DP、ジアミン成分としてm−トリジンを用いて、実施例4に記載した方法に準じてポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを図9に示す。
[実施例13]
エステル基含有テトラカルボン酸二無水物としてTADHQP−DP、ジアミン成分としてo−トリジンを用いて、実施例4に記載した方法に準じてポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。ポリエステルイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを図10に示す。
[実施例14]
p−フェニレンジアミン(5mmol)のNMP溶液にTADHQP−DP(2.5mmol)と後述の式(13)で表されるTA44BP(2.5mmol)の粉末を一度に加えてポリエステルイミド前駆体をランダム共重合し、実施例4に記載した方法に準じて製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。
[実施例15]
p−フェニレンジアミン(5mmol)のNMP溶液にTADHQP−DP(3.5mmol)とTA44BP(1.5mmol)の粉末を一度に加えてポリエステルイミド前駆体をランダム共重合し、実施例4に記載した方法に準じて製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。
[実施例16]
p−フェニレンジアミン(5mmol)のNMP溶液にTA44BP(1.5mmol)の粉末を加えて室温で2時間反応後、TADHQP−DP(3.5mmol)粉末を加えることで、ランダム共重合体とは異なる連鎖を有する連鎖制御ポリエステルイミド前駆体共重合体を重合し、実施例4に記載した方法に準じて製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。
[実施例17]
p−フェニレンジアミン(2.5mmol)および4,4'−オキシジアニリン(2.5mmol)を含むNMP溶液にTADHQP−DP(2.5mmol)とTA44BP(2.5mmol)の粉末を一度に加えてポリエステルイミド前駆体をランダム共重合し、実施例4に記載した方法に準じて製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。
[比較例1]
ジアミンとしてp−フェニレンジアミンを用い、テトラカルボン酸二無水物として下記式(13):
Figure 2010093021
で表される置換基のないエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を用いて実施例4に記載した方法に準じてポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。極めて低いCTE値を示したが、それに伴い弾性率は6.68GPaと非常に高い値を示した。これはフェニル置換基を持たないテトラカルボン酸二無水物を使用したためである。また破断伸びも3.5%と低い値であり、吸水率も0.78%と高く、実施例4に記載の本発明のポリエステルイミドフィルムと比較するとこれらの物性は劣っていた。
[比較例2]
ジアミンとしてp−フェニレンジアミンを用い、テトラカルボン酸二無水物として下記式(14):
Figure 2010093021
で表されるメチル置換基を有するエステル基含有テトラカルボン酸二無水物を用いて実施例4に記載した方法に準じてポリエステルイミド前駆体を重合し、製膜、イミド化してポリエステルイミドフィルムを作製し、同様に物性評価した。物性値を表1に示す。極めて低いCTE値を示したが、それに伴い弾性率は6.21GPaと非常に高い値を示した。これはフェニル置換基を持たないテトラカルボン酸二無水物を使用したためである。また破断伸びも7.3%と低い値であり、吸水率も0.71%と高く、実施例4に記載の本発明のポリエステルイミドフィルムと比較するとこれらの物性は劣っていた。
Figure 2010093021

Claims (5)

  1. 一般式(1)
    Figure 2010093021
    (式中、Rはフェニル基を表し、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表し、nは各々独立して0〜4の整数であり、aは各々独立して0〜4の整数であり、mは2〜4の整数を示し、但し、すべてのnが同時に0であることはなく、各フェニレン基において0≦n+a≦4である。)で表されるエステル基含有テトラカルボン酸二無水物。
  2. 一般式(2)
    Figure 2010093021
    (式中、R、R1、n、m、aは一般式(1)に記載したものと同じであり、Xは2価の芳香族基および/または脂肪族基を表し、エステル基の結合位置は、アミド結合に対してメタ位またはパラ位を表す。)で表される反復単位を有するポリエステルイミド前駆体。
  3. 固有粘度が0.1〜20.0dL/gの範囲である、請求項2に記載のポリエステルイミド前駆体。
  4. 一般式(3)
    Figure 2010093021
    (式中、R、R1、n、m、aおよびXは一般式(2)に記載したものと同じである。)で表される反復単位を有するポリエステルイミド。
  5. 請求項2または3に記載のポリエステルイミド前駆体を、加熱または脱水環化試薬を用いてイミド化反応させることを特徴とする、請求項4に記載のポリエステルイミドの製造方法。
JP2010550562A 2009-02-12 2010-02-12 エステル基含有テトラカルボン酸二無水物、ポリエステルポリイミド前駆体、ポリエステルイミドおよびこれらの製造方法 Active JP5727795B2 (ja)

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