JP5648904B2 - ポリエステルイミド樹脂組成物、ならびにそれを含浸させたプリプレグ、積層板および半導体装置 - Google Patents

ポリエステルイミド樹脂組成物、ならびにそれを含浸させたプリプレグ、積層板および半導体装置 Download PDF

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Description

本発明は、ポリエステルイミド樹脂組成物、ならびにそれを含浸させたプリプレグ、積層板および半導体装置に関する。
近年、電子機器の高機能化に伴い、電子部品の高密度集積化や高密度実装化が図られており、半導体パッケージなどの小型化や薄型化に対する要求がさらに高まっている。しかしながら、エポキシ樹脂やシアネート樹脂などを用いた従来の半導体パッケージ用基板やプリント配線基板においては、薄肉化によって反りが発生するため、接続不良といった不具合が発生するという問題があった。このような基板の反りは、充填材の添加量を増加させることによって改善されるものの、基板のドリル加工性が低下するという問題があった。
一方、ポリイミド樹脂は、耐熱性や耐薬品性、電気絶縁性、機械的特性に優れた樹脂であり、基板材料への適用が検討されている。しかしながら、ポリイミド樹脂を用いた場合においても、上記のような基板の反りが発生するという問題があり、さらに、ポリイミド樹脂は一般に溶剤に溶解しにくく、樹脂ワニスを用いた基板成形が困難であるという問題があった。このため、ポリイミド樹脂の溶剤溶解性の向上や熱膨張係数の低減が検討されている。
例えば、特開2009−235311号公報(特許文献1)には、フルオレン骨格を有するジアミン残基と、ビフェニル骨格またはフェニレン骨格を有するジアミン残基とを含有するポリイミド樹脂が開示されている。また、特開2010−53336号公報(特許文献2)には、トリジンスルホン酸骨格を有するジアミン残基を含有するポリイミド樹脂が開示されている。これらのポリイミド樹脂は、溶剤に対して良好な溶解性を示すものの、熱膨張係数は未だ十分に低いものではなかった。
また、特開2009−286854号公報(特許文献3)には、エステル結合を有するポリエステルイミド樹脂およびその前駆体が開示されている。このポリエステルイミド樹脂は低い熱膨張係数を有するものの、溶剤に対する溶解性が低く、樹脂ワニスを用いた基板成形が困難であった。このため、前記ポリエステルイミド樹脂を基板材料として使用する場合には、溶剤溶解性に優れるポリエステルイミド樹脂前駆体であるポリエステルアミド酸を基板材料用樹脂として用いる必要があった。しかしながら、一般に、ポリアミド酸を用いて基板を作製すると、プレス成形時に脱水イミド化反応が起こり、発生する水によってボイド発生や成形不良が引き起こされるという問題があった。
このため、ポリイミド樹脂を基板材料として使用するためには、イミド化が完了した状態で溶剤に可溶であり、且つ低い熱膨張係数を有するポリイミド樹脂が必要であった。
特開2009−235311号公報 特開2010−53336号公報 特開2009−286854号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、溶剤に可溶なポリエステルイミド樹脂を含有し、硬化前には良好な含浸性を示し、硬化後には高いガラス転移温度および低い線熱膨脹係数を有するポリエステルイミド樹脂組成物であって、さらにドリル加工性が良好であり、高温下においても反りが少ない積層板を得ることが可能なポリエステルイミド樹脂組成物、ならびにそれを用いたプリプレグ、積層板および半導体装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、置換基としてアリール基を備えるビフェニル骨格を含有する酸無水物エステル残基とアミド結合を含有する芳香族ジアミン残基とからなる構成単位を所定の割合で含有するポリエステルイミド樹脂が溶剤に対して良好な溶解性を示し、このようなポリエステルイミド樹脂を用いることによって、前記特性を有するポリエステルイミド樹脂組成物が得られることを見出し、さらに、このポリエステルイミド樹脂組成物を用いると、前記特性を有する積層板が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のポリエステルイミド樹脂組成物は、下記式(1):
Figure 0005648904
(式(1)中、ArおよびArはアリール基を表し、これらは同じものであっても異なるものであってもよく、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基およびアルコキシ基のうちのいずれかを表し、Xは−NH−C(=O)−または−C(=O)−NH−を表し、nは1または2であり、nが2の場合に前記式(1)中に2個存在するXは同じものであっても異なるものであってもよい。)
で表される構成単位Aと、
下記式(2):
Figure 0005648904
(式(2)中、ArおよびArは前記式(1)中のArおよびArと同一のものであり、Arは、芳香環または脂肪族環を有する2価の基を表す。)
で表される構成単位Bとを含有し、且つ前記構成単位Aの含有率が50〜95モル%であるポリエステルイミド樹脂、および無機充填材を含有することを特徴とするものである。
本発明のポリエステルイミド樹脂組成物において、前記式(1)および前記式(2)中のArおよびArは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のフェニル基または置換もしくは無置換のナフチル基であることが好ましい。
また、前記式(2)中のArが、下記式(I)〜(VIII):
Figure 0005648904
(式(I)中のkは0〜5の整数であり、式(III)中のRおよびRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基および水酸基のうちのいずれかを表し、式(IV)中のRおよびRは、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、式(V)中のRおよびRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基および水酸基のうちのいずれかを表し、式(VIII)中のRおよびR10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基および水酸基のうちのいずれかを表す。)
で表される2価の基のうちのいずれかであることが好ましい。
本発明のプリプレグは、本発明のポリエステルイミド樹脂組成物を基材に含浸させてなることを特徴とするものであり、本発明の積層板は、このプリプレグに熱処理を施すことにより形成される層を備えることを特徴とするものである。また、本発明の半導体装置は、本発明の積層板と、該積層板上に配置された半導体素子とを備えることを特徴とするものである。
なお、前記式(1)で表される構成単位Aおよび前記式(2)で表される構成単位Bを含有するポリエステルイミド樹脂が良好な溶剤溶解性を示し、このポリエステルイミド樹脂を含有する樹脂組成物が硬化前において良好な含浸性を示す理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明にかかるポリエステルイミド樹脂は、ビフェニル骨格に嵩高い側鎖置換基(アリール基)を有するものであるため、分子間相互作用が緩和され、また、アミド結合を有するものであるため、溶媒和効果が発現して、溶剤に対して良好な溶解性を示し、また、基材に対して良好な含浸性を示すと推察される。
また、本発明のポリエステルイミド樹脂組成物が、硬化後において高いガラス転移温度と低い線熱膨張係数を示す理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明にかかるポリエステルイミド樹脂は、パラ位にエステル基が結合したビフェニル骨格やアミド結合といった剛直な骨格を有するものであるため、高い配向性を示し、また、ビフェニル骨格による平面構造が自己スタッキング性を有するため、密な分子パッキングが形成されると推察される。このような高い配向性や分子パッキング形成により、分子が熱により変形しにくくなり、高いガラス転移温度や低い線熱膨張係数を示すと推察される。
本発明によれば、溶剤に可溶なポリエステルイミド樹脂を含有し、硬化前には良好な含浸性を示し、硬化後には高いガラス転移温度および低い線熱膨脹係数を有するポリエステルイミド樹脂組成物であって、さらにドリル加工性が良好であり、高温下においても反りが少ない積層板を得ることが可能なポリエステルイミド樹脂組成物、ならびにそれを用いたプリプレグ、積層板および半導体装置を得ることが可能となる。
合成例1で得られたポリエステルイミド樹脂の赤外線吸収(FT−IR)スペクトルを示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
<ポリエステルイミド樹脂組成物>
先ず、本発明のポリエステルイミド樹脂組成物について説明する。本発明のポリエステルイミド樹脂組成物は、特定のビフェニル骨格を含有する酸無水物エステル残基とアミド結合を含有する特定の芳香族ジアミン残基とからなる構成単位Aを所定の割合で含有するポリエステルイミド樹脂と無機充填材とを含有するものである。
(ポリエステルイミド樹脂)
本発明に用いられるポリエステルイミド樹脂は、下記式(1):
Figure 0005648904
で表される構成単位Aと、下記式(2):
Figure 0005648904
で表される構成単位Bとを含有するものである。なお、前記構成単位Aと前記構成単位Bは異なる構造を有するものである。
前記式(1)中のArおよびArはアリール基を表し、これらは同じものであっても異なるものであってもよく、前記式(2)中のArおよびArは、前記式(1)中のArおよびArと同一ものものである。前記構成単位AおよびBにおいて、ビフェニル骨格の置換基としてアリール基が存在することによって、ポリエステルイミド樹脂の分子間相互作用が緩和され、溶剤溶解性が向上する。このようなアリール基としては、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基が好ましい。置換フェニル基としては、メチルフェニル基やエチルフェニル基などのアルキルフェニル基が挙げられる。また、置換ナフチル基としては、メチルナフチル基やエチルナフチル基などのアルキルナフチル基が挙げられる。
前記式(1)中のXは、−NH−C(=O)−または−C(=O)−NH−を表し、nは1または2である。nが2の場合、前記式(1)中に2個存在するXは同じもの(例えば、アミド結合を含有する芳香族ジアミン残基が下記式(a)で表されるもの)であっても、異なるもの(例えば、アミド結合を含有する芳香族ジアミン残基が下記式(b)で表されるもの)であってもよい。
Figure 0005648904
(式(a)および(b)中のRはそれぞれ独立に前記式(1)中のRまたはRである。)
前記構成単位Aにアミド結合が存在することによって、ポリエステルイミド樹脂組成物の硬化後における線熱膨張係数が低下し、寸法安定性が向上する。その結果、このようなポリエステルイミド樹脂組成物を用いることによって、反りの少ない積層板を得ることが可能となる。
前記式(1)中のRおよびRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基およびアルコキシ基のうちのいずれかを表す。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基などが挙げられ、前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。これらのうち、ポリエステルイミド樹脂組成物の硬化後における線熱膨張係数がより低下し、積層板の反りが低減されるという観点から、RおよびRとしては、水素原子、アルキル基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
前記式(2)中のArは、芳香環または脂肪族環を有する2価の基を表す。ただし、下記式(c):
Figure 0005648904
(式(c)中のR、R、Xおよびnは、前記式(1)中のR、R、Xおよびnと同義である。)
で表される2価の基と異なるものである。前記式(2)中のArとしては、ポリエステルイミド樹脂の分子間相互作用が緩和され、溶剤溶解性が向上するという観点から、下記式(I)〜(VIII):
Figure 0005648904
のいずれかで表される2価の基が好ましく、ポリエステルイミド樹脂に柔軟な屈曲構造が部分的に導入され、ポリエステルイミド樹脂の分子間相互作用が適度に緩和され、適度な溶剤溶解性を示すという観点からは、前記式(I)で表されるものがより好ましく、ポリエステルイミド樹脂組成物の硬化後における線熱膨張係数がより低下し、積層板の反りが低減されるという観点からは、前記式(III)、(IV)、(VIII)で表されるものがより好ましい。
前記式(I)中のkは0〜5の整数であり、0〜2の整数であることが好ましい。前記式(III)中のRおよびRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基および水酸基のうちのいずれかを表し、中でも、水素原子、メチル基、ハロゲン化メチル基、水酸基であることが好ましい。前記式(IV)中のRおよびRは、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、中でも、水素原子、メチル基であることが好ましい。前記式(V)中のRおよびRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基および水酸基のうちのいずれかを表し、中でも、水素原子であることが好ましい。前記式(VIII)中のRおよびR10は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、中でも、水素原子、メチル基であることが好ましい。
本発明にかかるポリエステルイミド樹脂において、前記式(1)で表される構成単位Aの含有率は、ポリエステルイミド樹脂の構成単位全体(100モル%)に対して、50〜95モル%であり、前記式(2)で表される構成単位Bの含有率は、5〜50モル%である。前記構成単位Aの含有率が50モル%未満になると(あるいは、前記構成単位Bの含有率が50モル%を超えると)、ポリエステルイミド樹脂の硬化物の線熱膨張係数が高くなり、他方、前記構成単位Aの含有率が95モル%を超えると(あるいは、前記構成単位Bの含有率が5モル%未満になると)、ポリエステルイミド樹脂を溶剤に均一に溶解させることが困難となる。また、ポリエステルイミド樹脂の溶剤溶解性がより高くなり、線熱膨張係数がより低くなるという観点から、前記構成単位Aの含有率としては60〜90モル%が好ましく、また、前記構成単位Bの含有率としては10〜40モル%が好ましい。
このようなポリエステルイミド樹脂は、溶剤に対して良好な溶解性を示すものである。前記溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素等のアミド系溶媒、ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミドなどの含リン系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の含イオウ系溶媒、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン等のラクトン系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトフェノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒などが挙げられる。また、前記ポリエステルイミド樹脂は熱溶融性も良好である。
また、このようなポリエステルイミド樹脂の硬化物は、ガラス転移温度(Tg)が高く、線熱膨張係数(CTE)が低いものである。Tgとしては250℃以上が好ましく、260℃以上がより好ましい。また、CTEとしては20ppm/K以下が好ましく、17ppm/K以下がより好ましい。なお、Tgの上限としては特に制限はないが、通常400℃以下である。また、CTEの下限も特に制限はないが、通常3ppm/K以上である。
(ポリエステルイミド樹脂の製造方法)
本発明にかかるポリエステルイミド樹脂は、例えば、下記式(3):
Figure 0005648904
で表される酸無水物エステルと、下記式(4):
Figure 0005648904
で表されるアミド結合を含有する芳香族ジアミン(以下、「ジアミンA」という)および下記式(5):
N−Ar−NH (5)
で表されるその他のジアミン(以下、「ジアミンB」という)と、
を反応させて、下記式(6):
Figure 0005648904
で表される、溶剤に可溶なポリエステルイミド前駆体(ポリアミド酸)の構成単位を形成させ、このポリエステルイミド前駆体のカルボキシル基とアミド基とを、脱水処理により閉環反応させることによって製造することができる。
前記式(3)および(6)中のArおよびArは、前記式(1)中のArおよびArと同義であり、前記式(4)中のR、R、Xおよびnは前記式(1)中のR、R、Xおよびnと同義であり、前記式(5)中のArは前記式(2)中のArと同義であり、本発明の溶剤に可溶なポリエステルイミド前駆体(ポリアミド酸)の構成単位である前記式(6)中のYは前記ジアミンAの残基(すなわち、前記式(c)であらわされる2価の基)または前記ジアミンBの残基(すなわち、前記式(5)中のAr)、を表す。
前記ジアミンBとしては、ポリエステルイミド樹脂の分子間相互作用が緩和され、溶剤溶解性が向上するという観点から、前記式(5)中のArが前記式(I)〜(VIII)のいずれかで表される2価の基であるジアミンが好ましく、ポリエステルイミド樹脂に柔軟な屈曲構造が部分的に導入され、ポリエステルイミド樹脂の分子間相互作用が適度に緩和され、適度な溶剤溶解性を示すという観点からは、前記式(5)中のArが前記式(I)で表される2価の基であるジアミンがより好ましく、ポリエステルイミド樹脂組成物の硬化後における線熱膨張係数がより低下し、積層板の反りが低減されるという観点からは、前記式(5)中のArが前記式(III)、(IV)、(VIII)で表される2価の基であるジアミンがより好ましい。
前記酸無水物エステルとジアミン成分(前記ジアミンAおよび前記ジアミンB)とを反応させる場合、その反応温度としては特に制限はなく、室温で反応させることが可能である。また、この反応は溶媒中で行うことが好ましい。ここで用いられる溶媒としては特に制限はないが、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素等のアミド系溶媒、ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド等の含リン系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の含イオウ系溶媒、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン等のラクトン系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトフェノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒などが挙げられ、それらの中でも、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、γ−ブチロラクトン(GBL)などが好ましい。
前記酸無水物エステルと前記ジアミン成分の混合比は特に制限はなく、例えば、酸無水物エステル成分:ジアミン成分(モル比)=2.0:1.0〜1.0:2.0が好ましく、1.2:1.0〜1.0:1.2がより好ましい。
また、前記酸無水物エステルと前記ジアミン成分との反応において、ジアミンAとジアミンBとの混合モル比(ジアミンA:ジアミンB)は、50:50〜95:5である。これにより、前記式(1)で表される構成単位Aの含有率が50〜95モル%のポリエステルイミド樹脂を製造することができる。さらに、この混合モル比を調整することによって、前記構成単位Aの含有率を調整することができ、例えば、ジアミンA:ジアミンB=60:40〜90:10とすることにより、前記構成単位Aの含有率が60〜90モル%のポリエステルイミド樹脂を製造することができる。
このようにして得られるポリエステルイミド前駆体に脱水処理を施すことによって、カルボキシル基とアミド基とが閉環反応し、本発明にかかるポリエステルイミド樹脂を得ることができる。前記脱水処理としては、例えば、150〜180℃での加熱脱水処理や、無水酢酸/ピリジンなどの脱水剤を用いた化学的脱水処理などが挙げられる。また、このような閉環反応は溶媒中で行うことが好ましい。ここで用いられる溶媒としては特に制限はないが、前記酸無水物エステルと前記ジアミン成分との反応において使用したものをそのまま使用することができる。これら溶媒にイミド化反応時の副生物である水を共沸留去する目的で、トルエン、キシレンなどを添加することも可能であり、さらにイミド化反応を促進する目的で、ピリジン、トリエチルアミン、γ−ピコリンなどの塩基を添加することもできる。
(無機充填材)
本発明のポリエステルイミド樹脂組成物には無機充填材が含まれている。無機充填材を含有させることによって、ポリエステルイミド樹脂組成物の流動性を制御したり、ポリエステルイミド樹脂組成物の硬化後の線熱膨張係数を低下させたり、難燃性を向上させたりすることが可能となる。
このような無機充填材としては特に制限はないが、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩などの公知の無機充填材を用いることができ、中でも、溶融シリカを用いることが好ましい。また、無機充填材の形状としては特に制限はなく、球状、板状、針状、繊維状などが挙げられるが、中でも、球状が好ましい。
前記無機充填材の平均粒子径としては特に制限はないが、0.01〜5.0μmが好ましく、0.1〜2.0μmが特に好ましい。無機充填材の平均粒子径が前記下限未満であると、ワニスが高粘度となり、プリプレグ作製時の作業性に影響を与える場合がある。また、前記上限を超えると、ワニス中で無機充填材が沈降するといった現象が起こる場合がある。
本発明のポリエステルイミド樹脂組成物において、無機充填材の含有量としては、ポリエステルイミド樹脂と無機充填材の合計量に対して、30〜80質量%が好ましく、50〜70質量%がより好ましい。無機充填材の含有量が前記下限未満になると、ポリエステルイミド樹脂組成物を用いて作製した積層板の熱膨張係数が高くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記積層板のドリル加工性が低下する傾向にある。
(カップリング剤)
本発明のポリエステルイミド樹脂組成物においては、カップリング剤を含有させることが好ましい。前記カップリング剤を含有させることによって、前記ポリエステルイミド樹脂と前記無機充填材との界面の濡れ性を向上させることができ、これにより、繊維基材などに対してポリエステルイミド樹脂および無機充填材を均一に定着させ、耐熱性、特に吸湿後の半田耐熱性を改良することができる。このようなカップリング剤としては特に制限はないが、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤などのシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル型カップリング剤から選ばれる1種以上のカップリング剤を使用することが好ましい。このようなカップリング剤の含有量としては、ポリエステルイミド樹脂と無機充填材の合計量100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。カップリング剤の含有量が前記下限未満になると、無機充填材をポリエステルイミド樹脂中に均一に分散させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリエステルイミド樹脂組成物の物性が低下する傾向にある。
(溶剤)
本発明のポリエステルイミド樹脂組成物は溶剤を含有していてもよい。このような溶剤としては、ポリエステルイミド樹脂が良好な溶解性を示すもの、例えば、前記例示した溶剤が好ましい。溶剤の含有量としては特に制限はないが、ポリエステルイミド樹脂組成物の含浸性が向上するという観点から、樹脂固形分濃度が5〜30質量%(より好ましくは10〜25質量%)となる量が好ましい。
(ポリエステルイミド樹脂組成物)
本発明のポリエステルイミド樹脂組成物は、前記ポリエステルイミド樹脂と無機充填材と、必要に応じてカップリング剤とを混合することによって製造することができる。また、溶剤を混合することによって樹脂ワニスを得ることができる。このような樹脂ワニスを製造する方法としては、前記ポリエステルイミド樹脂とその合成時に使用した溶媒とを含む反応液と、無機充填材と、必要に応じてカップリング剤、その他半導体パッケージ用基板やプリント配線基板に使用される樹脂組成物において公知の添加剤とを混合して樹脂ワニスを得る方法、あるいは、反応液から前記ポリエステルイミド樹脂を単離した後、得られたポリエステルイミド樹脂と無機充填材と適切な溶剤と、必要に応じてカップリング剤などの前記各成分とを混合して樹脂ワニスを得る方法など、通常適用し得るあらゆる手順、方法を採用できる。また、無機充填材およびカップリング剤の混合方法としては、無機充填材とカップリング剤を乾式混合または湿式混合などにより予め混合して無機充填材をカップリング剤で処理した後、前記ポリエステルイミド樹脂などの残りの樹脂ワニス成分と混合する方法、無機充填材およびカップリング剤を各々別々に残りの樹脂ワニス成分に混合する方法、さらには、予め溶剤に分散したカップリング剤処理または未処理の無機充填材を残りの樹脂ワニス成分と混合する方法、など通常適用し得るあらゆる手順、方法を採用できる。
このようなポリエステルイミド樹脂組成物は、硬化前には良好な含浸性を示し、硬化後には高いガラス転移温度(Tg)および低い線熱膨張係数(CTE)を示すものである。Tgとしては250℃以上が好ましく、260℃以上がより好ましい。また、CTEとしては20ppm/K以下が好ましく、5ppm/K以下がより好ましい。なお、Tgの上限としては特に制限はないが、通常400℃以下である。また、CTEの下限も特に制限はないが、通常0.5ppm/K以上である。
本発明のポリエステルイミド樹脂組成物は、硬化後の線熱膨張係数が低いため、反りが少ない積層板を形成することが可能となる。また、硬化後の線熱膨張係数が低いと無機充填材の含有量を増大させる必要がないため、積層板のドリル加工性が低下することも少なくなる。
次に、本発明のプリプレグ、積層板および半導体装置について説明する。
<プリプレグ>
本発明のプリプレグは、基材に本発明のポリエステルイミド樹脂組成物を含浸させ、必要に応じて乾燥させることによって得られるものである。本発明のプリプレグに用いられる基材としては、ガラス織布、ガラス不織布、ガラスペーパーなどのガラス繊維基材;紙(パルプ)、アラミド繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリエステル繊維、フッ素樹脂繊維などの有機繊維からなる織布や不織布;金属繊維、カーボン繊維、鉱物繊維などからなる織布、不織布、マット類などが挙げられる。これらの基材は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
このような基材に本発明のポリエステルイミド樹脂組成物を含浸させる方法としては特に制限はないが、例えば、前記溶媒を含むポリエステルイミド樹脂組成物(樹脂ワニス)を調製し、これに基材を浸漬する方法;コーターを用いて基材にポリエステルイミド樹脂組成物または前記樹脂ワニスを塗布または塗工する方法;スプレーによりポリエステルイミド樹脂組成物または前記樹脂ワニスを基材に吹き付ける方法などが挙げられる。これらのうち、より均一にポリエステルイミド樹脂組成物を含浸させることができる点で、樹脂ワニスに基材を浸漬する方法が好ましい。
また、プリプレグを製造する段階で必要に応じて乾燥処理を施すことによって、後述する本発明の積層板を製造する際(熱処理を施す際)に、溶剤などの揮発成分が揮発蒸散することを防ぐことができる。このような乾燥条件としては特に制限はなく、温度、圧力(例えば減圧)などを、適宜選択することができる。
<積層板>
本発明の積層板は、本発明のプリプレグに熱処理を施すことによって形成される層を備えるものである。また、前記プリプレグは1枚であっても2枚以上が積層されていてもよい。このような積層板を製造する場合、後述する他の層を形成(積層)する前に1枚または複数枚を積層したプリプレグに熱処理を施してもよいが、1枚または複数枚を積層したプリプレグ上に他の層を形成(積層)した後、これらにまとめて熱処理を施すことが好ましい。これにより、積層するプリプレグ間の界面の接着性が高くなり、層間剥離に起因する物性低下が起こりにくくなる傾向にある。前記熱処理としては加熱加圧成形などが挙げられる。
このような熱処理の温度としては特に制限はないが、220〜300℃が好ましい。本発明にかかるポリエステルイミド樹脂が良好な熱溶融性を有するため、このような温度で熱処理を施すことによって、基材中でポリエステルイミド樹脂が溶融して拡散し、ポリエステルイミド樹脂組成物が基材中にさらに均一に存在する層を形成させることが可能となる。また、加圧処理を施す場合、加圧する圧力としては特に制限はないが、1〜4MPaが好ましい。また、本発明の積層板を製造する際に、必要に応じて、当業者に公知の真空プレスなどの装置を使用することは何ら差し支えない。
本発明の積層板中の他の層としては特に制限はないが、例えば、銅箔、銅合金箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔などの金属箔が挙げられる。このような金属箔を備える積層板は、回路加工を施すことによってプリント配線板として使用することができる。
本発明のポリエステルイミド樹脂組成物が硬化後の線熱膨張係数が低いものであるため、これを用いて形成される本発明の積層板は高温下においても反りが少ないものである。また、樹脂組成物の硬化後の線熱膨張係数が低いと無機充填材の含有量を増大させる必要がないため、本発明の積層板においては、ドリル加工性が低下することも少なくなる。
<半導体装置>
本発明の半導体装置は、本発明の積層板と、この積層板上に配置された半導体そしとを備えるものである。前記半導体素子としては特に制限はなく、TEGチップなど公知の半導体素子を使用することができる。このような半導体装置においては、反りが少ない積層体を備えているあるため、接続不良が発生しにくく、接続信頼性が優れている。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。ポリイミド樹脂の合成に使用した酸無水物およびジアミンの略号および化学式を以下に示す。
(1)酸無水物
・OPPBP−TME:3,3’−ジフェニル−4,4’−ビフェノール−ビス(トリメリテートアンハイドライト)(本州化学工業(株)製)
Figure 0005648904
・OTBP−TME:3,3’−ジ(4−トリル)−4,4’−ビフェノール−ビス(トリメリテートアンハイドライト)
Figure 0005648904
・ONBP−TME:3,3’−ジ(1−ナフチル)−4,4’−ビフェノール−ビス(トリメリテートアンハイドライト)
Figure 0005648904
・PMDA:ピロメリット酸無水物(和光純薬工業(株)製(試薬))
Figure 0005648904
・BPDA:4,4’−ビフタル酸無水物(東京化成工業(株)製(試薬))
Figure 0005648904
・DSDA:3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(新日本理化(株)製)
Figure 0005648904
・BP−TME:4,4’−ビフェノール−ビス(トリメリテートアンハイドライト)(本州化学工業(株)製)
Figure 0005648904
(2)ジアミン
・DABAN:4,4’−ジアミノベンズアニリド(日本純良薬品(株)製)
Figure 0005648904
・MDABAN:4,4’−ジアミノ−2’−メチルベンズアニリド(日本純良薬品(株)製)
Figure 0005648904
・MODABAN:4,4’−ジアミノ−2’−メトキシベンズアニリド(日本純良薬品(株)製)
Figure 0005648904
・APTP:N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド(日本純良薬品(株)製)
Figure 0005648904
・ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(東京化成工業(株)製(試薬))
Figure 0005648904
・DMB:4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル(東京化成工業(株)製(試薬))
Figure 0005648904
・DDS:3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(東京化成工業(株)製(試薬))
Figure 0005648904
・DADMTSN:3,7−ジアミノ−2,8−ジメチルジベンゾチオフェンスルホン(東京化成工業(株)製(試薬))
Figure 0005648904
・ABP:1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ピペラジン(日本純良薬品(株)製)
Figure 0005648904
・BAFL:9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(JFEケミカル(株)製)
Figure 0005648904
・APB:1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(三井化学ファイン(株)製)
Figure 0005648904
なお、OTBP−TMEおよびONBP−TMEについては以下の方法により合成し、他の酸無水物およびジアミンについては各製造元より入手した。
(OTBP−TMEの合成方法)
(1)3,3’−ジ(4−トリル)−4,4’−ビフェノール(OTBP)の合成
温度計、冷却管、攪拌機を備えた1Lの四つ口フラスコに、2−(4−トリル)−4−ブロモフェノール84.20g(0.320モル)、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液280ml、5%のパラジウム/カーボン触媒0.70g、ジオキサン280mlを仕込み、攪拌しながら90℃付近に昇温した。溶液の温度を90℃付近に保ちながら、水70mlに溶解した硫酸ヒドロキシルアミン26.26g(0.160モル)の水溶液を3時間かけて前記溶液に滴下した。滴下終了後、90℃で1時間加熱しながら反応を継続した。得られた反応液を濾過してパラジウム/カーボン触媒を濾別した。濾液を塩酸でpH4付近まで中和した後、クロロホルム150mlを加えて50℃で抽出してクロロホルム層を分離した。分離したクロロホルム溶液を150mlの純水で2回洗浄した後、脱溶媒し、減圧蒸留してモノフェノール成分を除去した。その後、残留物をイソプロピルエーテル/アセトンを用いて再結晶を行い、真空乾燥して白色結晶性粉末38.90gを得た。収率は66.0%であった。FT−IRおよびH−NMRにより得られた結晶の分析を行い、目的の構造(OTBP)であることを確認した。
(2)OTBP−TMEの合成
温度計、還流冷却管、滴下ロートを備えた1Lの四つ口フラスコに、無水トリメリット酸クロライド50.54g(0.240モル)、メチルイソブチルケトン180g、アセトン80gを仕込み、0〜5℃に冷却しながら溶解させた。一方、前記(1)で合成したOTBP36.65g(0.100モル)、ピリジン17.42g(0.300モル)、メチルイソブチルケトン30.0gを混合して室温下で溶解させた。この溶液を滴下ロートを用いて前記四つ口フラスコに温度を0〜5℃に保持しながら撹拌下で2時間かけて滴下して反応を行った。滴下終了後、さらに温度0〜5℃で1時間攪拌した後、70℃で6時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、塩酸水と水を添加して撹拌した後、水層を分離した。得られた油層に水を添加して撹拌した後、水層を分離する操作(水洗)を4回繰り返して、副生物のピリジン塩酸塩を除去した。この水洗時に目的物が開環してテトラカルボン酸が形成されるため、水洗後の油層に無水酢酸40.84g(0.400モル)を加えて温度80〜90℃で20時間かけて閉環させた。得られた溶液を室温まで冷却し、析出した結晶を濾過して白色結晶51.46gを得た。収率は72.0%であった。FT−IRおよびH−NMRにより得られた結晶の分析を行い、目的の構造(OTBP−TME)であることを確認した。
(ONBP−TMEの合成方法)
(1)3,3’−ジ(1−ナフチル)−4,4’−ビフェノール(ONBP)の合成
2−(4−トリル)−4−ブロモフェノールの代わりに2−(1−ナフチル)−4−ブロモフェノール95.73g(0.320モル)を用いた以外は、前記OTBPの合成方法と同様の方法により白色結晶性粉末50.61gを得た。収率は72.1%であった。FT−IRおよびH−NMRにより得られた結晶の分析を行い、目的の構造(ONBP)であることを確認した。
(2)ONBP−TMEの合成
OTBPの代わりに前記(1)で合成したONBP43.85g(0.100モル)を用いた以外は、前記OTBP−TMEの合成方法と同様の方法により白色結晶55.31gを得た。収率は70.3%であった。FT−IRおよびH−NMRにより得られた結晶の分析を行い、目的の構造(ONBP−TME)であることを確認した。
(合成例1)
温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた四つ口のセパラブルフラスコ中に、ジアミン成分としてDABAN7.95g(0.035モル)およびODA3.01(0.015モル)を仕込み、N−メチル−2−ピロリドン40.0gを加えて60℃で攪拌して溶解させた。ジアミン成分が均一に溶解した後、得られた溶液を室温まで冷却し、酸無水物成分として粉末状のOPPBP−TME34.30g(0.050モル)を数回に分けてフラスコ内に添加し、室温で48時間攪拌して反応させ、ポリエステルイミド前駆体溶液を得た。
前記フラスコにディーンスターク管を取り付け、フラスコ内のポリエステルイミド前駆体溶液に共沸溶媒としてトルエン10.2gを添加し、窒素気流下、185℃で還流反応を行い、生成水を系外に除去しながら6時間還流反応を継続した。反応後、反応液を室温まで冷却し、NMPで適当に希釈した後、1Lのメタノール中に滴下して再沈を行い、吸引濾過により樹脂粉末を単離した。得られた樹脂粉末をさらに1Lのメタノールで洗浄した後、濾過・風乾し、さらに120℃で24時間真空乾燥を行い、精製樹脂粉末40.6gを得た。収率は90%であった。
FT−IRおよびH−NMRにより得られた精製樹脂粉末の分析を行い、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=7:3で含有するもの)であることを確認した。なおこのポリエステルイミド樹脂の赤外線吸収(FT−IR)スペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計((株)島津製作所製「FTIR―8900」)を用い、KBr透過法により測定した。その結果を図1に示す。
(合成例2)
ジアミン成分としてMDABAN9.65g(0.040モル)およびODA2.00g(0.010モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=8:2で含有するもの)40.3gを合成した。収率は88%であった。
(合成例3)
ジアミン成分としてMODABAN11.58g(0.045モル)およびODA1.00g(0.005モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=9:1で含有するもの)40.2gを合成した。収率は86%であった。
(合成例4)
ジアミン成分としてAPTP10.39g(0.030モル)およびODA6.97g(0.020モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=6:4で含有するもの)47.4gを合成した。収率は92%であった。
(合成例5)
ジアミン成分としてDABAN7.95g(0.035モル)およびDMB3.72g(0.015モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=7:3で含有するもの)41.7gを合成した。収率は91%であった。
(合成例6)
ジアミン成分としてDABAN9.09g(0.040モル)およびDDS2.48g(0.010モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=8:2で含有するもの)41.2gを合成した。収率は90%であった。
(合成例7)
ジアミン成分としてDABAN6.82g(0.030モル)およびDADMTSN5.49g(0.020モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=6:4で含有するもの)40.0gを合成した。収率は86%であった。
(合成例8)
ジアミン成分としてAPTP13.86g(0.040モル)およびABP3.24g(0.010モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=8:2で含有するもの)45.2gを合成した。収率は89%であった。
(合成例9)
酸無水物成分としてOTBP−TME35.73g(0.050モル)、ジアミン成分としてDABAN10.23g(0.045モル)およびBAFL1.74g(0.005モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=9:1で含有するもの)41.8gを合成した。収率は88%であった。
(合成例10)
酸無水物成分としてONBP−TME39.33g(0.050モル)、ジアミン成分としてDABAN10.23g(0.045モル)およびBAFL1.74g(0.005モル)を用いた以外は合成例1と同様にして、目的とする構造を有するポリエステルイミド樹脂(前記構造単位Aと前記構造単位Bとをモル比A:B=9:1で含有するもの)43.5gを合成した。収率は85%であった。
(比較合成例1)
酸無水物成分としてPMDA10.91g(0.050モル)を用いた以外は合成例1と同様にしてポリイミド樹脂の合成を行なったところ、185℃での還流反応中に反応物が析出したが、そのまま還流反応を6時間継続した。反応後、反応液と析出物を1Lのメタノール中に投入して再沈殿を行い、吸引濾過により樹脂粉末を単離した。得られた樹脂粉末をさらに1Lのメタノールで洗浄した後、濾過・風乾し、さらに120℃で24時間真空乾燥を行い、精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末19.9gを得た。収率は92%であった。
(比較合成例2)
酸無水物成分としてBPDA14.71g(0.050モル)を用いた以外は合成例1と同様にしてポリイミド樹脂の合成を行なったところ、185℃での還流反応中に反応物が析出したが、そのまま還流反応を6時間継続した。反応後、比較合成例1と同様にして精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末23.2gを得た。収率は91%であった。
(比較合成例3)
酸無水物成分としてDSDA17.90g(0.050モル)を用いた以外は合成例1と同様にしてポリイミド樹脂の合成を行なったところ、185℃での還流反応中に反応物が析出したが、そのまま還流反応を6時間継続した。反応後、比較合成例1と同様にして精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末23.5gを得た。収率は82%であった。
(比較合成例4)
酸無水物成分としてBP−TME26.72g(0.050モル)、ジアミン成分としてDABAN6.70g(0.025モル)およびODA5.01(0.025モル)を用いた以外は合成例1と同様にしてポリイミド樹脂の合成を行なったところ、185℃での還流反応中に反応物が析出したが、そのまま還流反応を6時間継続した。反応後、比較合成例1と同様にして精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末36.0gを得た。収率は94%であった。
(比較合成例5)
酸無水物成分としてBPDA14.71g(0.050モル)、ジアミン成分としてODA10.01(0.050モル)を用いた以外は合成例1と同様にしてポリイミド樹脂の合成を行なったところ、185℃での還流反応中に反応物が析出したが、そのまま還流反応を6時間継続した。反応後、比較合成例1と同様にして精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末21.8gを得た。収率は89%であった。
(比較合成例6)
酸無水物成分としてDSDA17.90g(0.050モル)、ジアミン成分としてAPB14.62(0.050モル)を用いた以外は合成例1と同様にして精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末26.5gを合成した。収率は82%であった。
(比較合成例7)
酸無水物成分としてBP−TME26.72g(0.050モル)、ジアミン成分としてBAFL17.42(0.050モル)を用いた以外は合成例1と同様にしてポリイミド樹脂の合成を行なったところ、185℃での還流反応中に反応物が析出したが、そのまま還流反応を6時間継続した。反応後、比較合成例1と同様にして精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末38.7gを得た。収率は88%であった。
(比較合成例8)
ジアミン成分としてDABAN11.36(0.050モル)を用いた以外は合成例1と同様にしてポリイミド樹脂の合成を行なったところ、185℃での還流反応終了後、室温まで冷却中に反応液のゲル化が起こった。ゲル化物を1Lのメタノール中に投入して析出した固形分をミキサーで粉砕し、吸引濾過により樹脂粉末を単離した。得られた樹脂粉末をさらに1Lのメタノールで洗浄した後、濾過・風乾し、さらに120℃で24時間真空乾燥を行い、精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末41.0gを得た。収率は90%であった。
(比較合成例9)
ジアミン成分としてDABAN3.41(0.015モル)およびBAFL12.20(0.035モル)を用いた以外は合成例1と同様にして精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末40.8gを合成した。収率は84%であった。
(比較合成例10)
ジアミン成分としてBAFL17.42(0.050モル)を用いた以外は合成例1と同様にして精製樹脂(ポリイミド樹脂)粉末42.3gを合成した。収率は82%であった。
得られたポリイミド樹脂の特性評価方法を以下に示す。
(1)溶剤溶解性
樹脂濃度が10質量%となるようにポリイミド樹脂にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加え、60℃で加熱しながら攪拌により混合して溶液を調製した。この溶液を室温まで冷却し、室温で24時間放置した後の溶液の状態を目視により観察して、樹脂の溶解性を下記の3段階で評価した。その結果を表1に示す。
A:析出物やゲル化物が見られず、均一透明な溶解性に優れるもの。
B:僅かな析出物やゲル化物が見られ、やや溶解性に劣るもの。
C:明確な析出物やゲル化物が見られ、溶解性に劣るもの。
(2)還元粘度
ポリイミド樹脂にNMPを加えて樹脂濃度が0.5質量%の溶液を調製し、この溶液の30℃の還元粘度をウベローデ粘度計を用いて測定した。その結果を表1に示す。
(3)ガラス転移温度
ポリイミド樹脂にNMPを加えて樹脂濃度が10質量%のワニスを調製した。このワニスをガラス基板上に流延し、空気中、80℃で2時間乾燥し、さらに窒素オーブン中、200℃で2時間乾燥した後、残留応力を除去するために基板からポリイミド膜を剥がして、真空中、250℃で1時間熱処理を行い、膜厚30μmのポリイミド膜を得た。
このポリイミド膜について、粘弾性スペクトロメータ(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「DMS6100」)を用いて、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、tanδピークからポリイミド膜(30μm厚)のガラス転移温度(Tg)を求めた。その結果を表1に示す。
(4)熱膨張係数
前記(3)と同様にして作製した膜厚30μmのポリイミド膜について、熱・応力・歪測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「TMA/SS6100」)を用いて、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度10℃/分の条件で熱機械分析を行い、60〜260℃の範囲でのポリイミド膜の面方向(X方向)の伸びの平均値を求め、この値からポリイミド膜(30μm厚)の面方向(X方向)の線熱膨張係数(CTE)を求めた。その結果を表1に示す。
Figure 0005648904
表1に示した結果から明らかなように、本発明にかかる酸無水物単位とジアミンA単位とからなる構成単位Aを所定の割合で含有するポリエステルイミド樹脂(合成例1〜10)はいずれも、室温下、樹脂濃度10質量%においてNMPに可溶なものであり、製膜可能なものであった。また、いずれのポリエステルイミド膜もTgが260℃以上であり、耐熱性の高いものであることがわかった。さらに、CTEは20ppm/K以下であり、寸法変化の小さい材料であることがわかった。
一方、本発明にかかる酸無水物単位を含まないポリイミド樹脂(比較合成例1〜7)、ジアミン単位として本発明にかかるジアミンA単位のみを含むポリイミド樹脂(比較合成例8)はNMPには不溶であった。特に、比較合成例6で得られたポリイミド樹脂はNMP溶液中で膨潤するもののNMPには不溶であった。このように、比較合成例1〜8で得られたポリイミド樹脂はNMPに均一に溶解しなかったため、溶液の還元粘度測定は困難であり、また、ワニスの調製が困難であったため、ポリイミド膜が作製できず、ガラス転移温度および熱膨張係数は測定できなかった。
他方、本発明にかかるジアミンA単位の含有率が50モル%未満のポリイミド樹脂(比較合成例9〜10)は、室温下、樹脂濃度10質量%においてNMPに可溶なものであり、製膜可能なものであった。また、ポリイミド膜はTgが286〜298℃であり、耐熱性の高いものであった。しかしながら、CTEが54〜65ppm/Kであり、本発明にかかるポリエステルイミド樹脂に比べて寸法安定性に劣るものであった。
(実施例1)
(1)樹脂ワニスの調製
合成例1で得られたポリエステルイミド樹脂35.0質量部、無機充填材として球状溶融シリカ((株)アドマテックス製「SO−25R」、平均粒径0.5μm)65.0質量部、シランカップリング剤(日本ユニカー(株)製「A187」)0.3質量部を混合し、この混合物に固形分濃度が50質量%となるようにNMPを加え、高速攪拌装置を用いて30分間攪拌して樹脂ワニスを得た。
(2)プリプレグの作製
前記(1)で得られた樹脂ワニスを、厚さ90μmのガラス織布(ユニチカ(株)製「E10Tクロス」)および厚さ27μmのガラス織布(ユニチカ(株)製「E03Eクロス」)にそれぞれ含浸させ、150℃の加熱炉で2分間乾燥して、厚さ100μmのプリプレグと厚さ40μmのプリプレグを作製した。
(3)銅張積層板の作製
前記(2)で得られた厚さ100μmのプリプレグの両面に、厚さ12μmの銅箔(三井金属鉱業(株)製「3EC−M3−VLP」)を重ね、圧力3MPa、温度260℃で2時間加熱加圧成形して両面銅箔を有する銅張積層板(厚さ0.1mm)を作製した。
(4)多層プリント配線板の作製
前記(3)で得られた銅張積層板に、0.1mmのドリルビットを用いてスルーホール加工を行った後、メッキによりスルーホールを充填した。次いで、銅張積層板の両面にエッチングを施して回路を形成し、内層回路基板を作製した。この内層回路基板の表裏に、前記(2)で得られた厚さ40μmのプリプレグを重ね合わせ、これを、真空プレスを用いて温度260℃、圧力3MPaで2時間真空加熱成形して多層プリント配線板を作製した。
(5)半導体装置の作製
前記(4)で得られた多層プリント配線板の絶縁層(厚さ40μmのプリプレグ部分)に炭酸レーザー装置を用いて開口部を設け、電解銅めっきにより絶縁層表面に外層回路を形成し、外層回路と内層回路との導通を図った。なお、外層回路には、半導体素子を実装するための接続用電極部を設けた。次に、最外層としてソルダーレジスト(太陽インキ社製、PSR4000/AUS308)を形成し、半導体素子が実装できるように露光・現像により接続用電極部を露出させ、ニッケル金メッキ処理を施した後、多層プリント配線板を50mm×50mmの大きさに切断した。
次に、半導体装置の組み立てを行なった。半導体素子としては、半田バンプがSn/Pb組成の共晶で形成され、回路保護膜がポジ型感光性樹脂(住友ベークライト(株)製「CRC−8300」)で形成されたTEGチップ(サイズ15mm×15mm、厚み0.8mm)を使用した。先ず、半田バンプにフラックス材を転写法により均一に塗布し、フリップチップボンダー装置を用いて前期多層プリント配線板上に加熱圧着により半導体素子を搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト(株)製「CRP−4152S」)を充填し、液状封止樹脂を温度150℃、120分の条件下で硬化させることにより半導体装置を作製した。なお、半導体素子と多層プリント配線板とは、300個の半田バンプを介して接続され、得られた半導体装置は、デイジーチェーンを有し、これにより接続部の導通を確認することができる。
(実施例2〜10)
合成例1で得られたポリエステルイミド樹脂の代わりに、それぞれ合成例2〜10で得られたポリエステルイミド樹脂35.0質量部を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
(比較例1)
合成例1で得られたポリエステルイミド樹脂の代わりに、比較合成例10で得られたポリイミド樹脂35.0質量部を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
(比較例2)
ポリエステルイミド樹脂35.0質量部の代わりに、ビスマレイミド樹脂として2,2’−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシフェニル)プロパン(ケイ・アイ化成(株)製「BMI−80」)25.7質量部、その硬化剤として4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(三井化学ファイン(株)製「4,4’−DAS」)9.3質量部を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
(比較例3)
ポリエステルイミド樹脂35.0質量部の代わりに、エポキシ樹脂としてビフェニルアラルキルノボラックエポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC−3000」)20.0質量部、シアネート樹脂としてノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン(株)製「プリマセットPT−30」)15.0質量部、これらの硬化剤として2−フェニルー4−メチルイミダゾール(四国化成工業(株)製「キュアゾール2P4MZ」)0.15質量部を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
(比較例4)
比較合成例10で得られたポリイミド樹脂の含有量を30.0質量部に、球状溶融シリカの含有量を70.0質量部に変更した以外は比較例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
(比較例5)
ビスマレイミド樹脂の含有量を22.0質量部に、その硬化剤の含有量を8.0質量部に、球状溶融シリカの含有量を70.0質量部に変更した以外は比較例2と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
(比較例6)
エポキシ樹脂の含有量を17.1質量部に、シアネート樹脂の含有量を12.9質量部に、硬化剤の含有量を0.12質量部に、球状溶融シリカの含有量を70.0質量部に変更した以外は比較例3と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
(比較例7)
比較合成例10で得られたポリイミド樹脂の含有量を25.0質量部に、球状溶融シリカの含有量を75.0質量部に変更した以外は比較例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
(比較例8)
ビスマレイミド樹脂の含有量を18.4質量部に、その硬化剤の含有量を6.6質量部に、球状溶融シリカの含有量を75.0質量部に変更した以外は比較例2と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
(比較例9)
エポキシ樹脂の含有量を14.3質量部に、シアネート樹脂の含有量を10.7質量部に、硬化剤の含有量を0.10質量部に、球状溶融シリカの含有量を75.0質量部に変更した以外は比較例3と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置を作製した。
得られた樹脂ワニス、プリプレグ、銅張積層板、多層プリント配線板および半導体装置の特性評価方法を以下に示す。
(1)含浸性
銅張積層板(厚さ0.1mm)の断面を走査電子顕微鏡(日本電子(株)製「JCM−5700」)を用いて観察した。この断面観察において観察されたボイドの面積の割合に基づいて、樹脂ワニスの含浸性を下記の3段階で評価した。その結果を表2〜3に示す。
A:ボイドの面積が断面の全面積の10%未満であった場合。
B:ボイドの面積が断面の全面積の10〜30%であった場合。
C:ボイドの面積が断面の全面積の30%を超えた場合。
(2)ガラス転移温度
銅張積層板(厚さ0.1mm)の銅箔を全面エッチングにより除去し、得られた積層板から6mm×25mmの試験片を切り出し、この積層板について、粘弾性スペクトロメータ(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「DMS6100」)を用いて、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、tanδピークから積層体のガラス転移温度(Tg)を算出した。その結果を表2〜3に示す。
(3)熱膨張係数
銅張積層板(厚さ0.1mm)の銅箔を全面エッチングにより除去し、得られた積層板から5mm×20mmの試験片を切り出し、熱・応力・歪測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「TMA/SS6100」)を用いて、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分の条件で熱機械分析を行い、60〜260℃の範囲での積層体の面方向(X方向)の伸びの平均値を求め、この値から積層板の面方向(X方向)の線熱膨張係数(CTE)を求めた。その結果を表2〜3に示す。
(4)ドリル加工性
銅張積層板(厚さ0.1mm)に、直径0.1mmのドリル刃を用い、30万回転/個で2000個の穴を開けた後のドリル刃の刃先の状態を下記の2段階で判定し、ドリル加工性を評価した。その結果を表2〜3に示す。
A:刃先が十分残っており、再研磨によるドリル刃の再生が可能。
B:刃先が丸まってしまい、ドリル刃の再生が困難。
(5)多層プリント配線板の反り量
多層プリント配線板について、温度可変レーザー三次元測定機((株)日立テクノロジーアンドサービス製「LS220−MT100MT50」)を用い、測定温度25℃または260℃において高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい部分の値を多層プリント配線板の反り量とした。その結果を表2〜3に示す。
(6)接続信頼性
10個の半導体装置について、デイジーチェーンにより接続部の導通を確認し、接続信頼性を導通不良個数で評価した。その結果を表2〜3に示す。
Figure 0005648904
Figure 0005648904
表2に示した結果から明らかなように、本発明にかかる酸無水物単位とジアミン単位とからなる構成単位Aを所定の割合で含有するポリエステルイミド樹脂を用いた場合(実施例1〜10)には、樹脂ワニスは含浸性に優れており、積層板はCTEが4ppm/K以下と低く、寸法変化が小さく、ドリル加工性も良好であり、多層プリント配線板は反りが小さく、半導体装置は接続信頼性に優れていた。
一方、表3に示した結果から明らかなように、本発明にかかるジアミンA単位を含まないポリイミド樹脂を用いた場合(比較例1)、ビスマレイミド樹脂を用いた場合(比較例2)、ならびにエポキシ樹脂とシアネート樹脂を併用した場合(比較例3)には、樹脂ワニスは含浸性に優れ、積層板のドリル加工性は良好であるものの、積層板はCTEが8ppm/K以上と高く、寸法変化が大きく、多層プリント配線板は反りが大きく、半導体装置においては接続不良が発生したものがあった。
また、比較例1〜3で得られた樹脂ワニスに対して、それぞれ無機充填材の含有率を増大させた場合(比較例4〜6)には、積層板のCTEは低下するものの、十分に低いものではなく、多層プリント配線板の反りや半導体装置の接続信頼性も十分に改善されなかった。また、本発明にかかるジアミンA単位を含まないポリイミド樹脂を用いた場合(比較例4)ならびにビスマレイミド樹脂を用いた場合(比較例5)には、樹脂ワニスの含浸性が低下し、さらに、ビスマレイミド樹脂を用いた場合(比較例5)ならびにエポキシ樹脂とシアネート樹脂を併用した場合(比較例6)には、積層板のドリル加工性が低下した。
無機充填材の含有率をさらに増大させると、本発明にかかるジアミンA単位を含まないポリイミド樹脂を用いた場合(比較例7)には、樹脂ワニスの含浸性が著しく低下し、評価試験に使用可能なプリプレグが作製できなかった。一方、ビスマレイミド樹脂を用いた場合(比較例8)ならびにエポキシ樹脂とシアネート樹脂を併用した場合(比較例9)には、積層板のCTEはさらに低下して4ppm/K以下となったが、樹脂ワニスの含浸性や積層板のドリル加工性がさらに低下し、半導体装置の接続信頼性も十分には改善されなかった。また、多層プリント配線板の反りは改善され、25℃においては十分なものであったが、260℃においては十分なものではなかった。
以上説明したように、本発明によれば、溶剤に可溶なポリエステルイミド樹脂を含有し、硬化前には良好な含浸性を示し、硬化後には高いガラス転移温度および低い線熱膨脹係数を有するポリエステルイミド樹脂組成物を得ることが可能となる。このようなポリエステルイミド樹脂組成物を用いると、耐熱性に優れ、高温下においても反りが少なく、ドリル加工性も良好な本発明の積層板を得ることができる。
したがって、このような積層板は、半導体の実装温度領域においても線熱膨張係数が増大しにくく、実装時の基板の反りを低減させることができるため、薄型のシステム・イン・パッケージ基板や半導体パッケージ用基板として特に有用である。

Claims (6)

  1. 下記式(1):
    Figure 0005648904
    (式(1)中、ArおよびArはアリール基を表し、これらは同じものであっても異なるものであってもよく、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基およびアルコキシ基のうちのいずれかを表し、Xは−NH−C(=O)−または−C(=O)−NH−を表し、nは1または2であり、nが2の場合に前記式(1)中に2個存在するXは同じものであっても異なるものであってもよい。)
    で表される構成単位Aと、
    下記式(2):
    Figure 0005648904
    (式(2)中、ArおよびArは前記式(1)中のArおよびArと同一のものであり、Arは、芳香環または脂肪族環を有する2価の基を表す。)
    で表される構成単位Bとを含有し、且つ前記構成単位Aの含有率が50〜95モル%であるポリエステルイミド樹脂、および無機充填材を含有することを特徴とするポリエステルイミド樹脂組成物。
  2. 前記式(1)および前記式(2)中のArおよびArが、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のフェニル基または置換もしくは無置換のナフチル基であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルイミド樹脂組成物。
  3. 前記式(2)中のArが、下記式(I)〜(VIII):
    Figure 0005648904
    (式(I)中のkは0〜5の整数であり、式(III)中のRおよびRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基および水酸基のうちのいずれかを表し、式(IV)中のRおよびRは、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、式(V)中のRおよびRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基および水酸基のうちのいずれかを表し、式(VIII)中のRおよびR10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基および水酸基のうちのいずれかを表す。)
    で表される2価の基のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルイミド樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のポリエステルイミド樹脂組成物を基材に含浸させてなることを特徴とするプリプレグ。
  5. 請求項4に記載のプリプレグに熱処理を施すことにより形成される層を備えることを特徴とする積層板。
  6. 請求項5に記載の積層板と、該積層板上に配置された半導体素子とを備えることを特徴とする半導体装置。
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