<上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の製造方法>
本発明のテトラカルボン酸二無水物を得る方法として例えば、脱酸剤(塩基)の存在下、上記式(4)で表される化合物とトリメリット酸無水物の酸ハライドとを反応させる方法(酸ハライド法)、上記式(4)で表される化合物とトリメリット酸無水物との直接脱水反応による方法、上記式(4)で表される化合物のジアセテート体とトリメリット酸無水物とを高温で脱酢酸反応する方法、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水剤を用いて上記式(4)で表される化合物とトリメリット酸無水物とを脱水縮合させる方法、トシルクロリド/N,N-ジメチルホルムアミド/ピリジン混合物を用いてトリメリット酸無水物を活性化して上記式(4)で表される化合物をエステル化する方法が挙げられる。その中でも、原料であるトリメリット酸ハライドを安価に入手可能であることから、酸ハライド法が好ましい。以下、酸ハライド法について詳述する。
酸ハライド法とは具体的には、脱酸剤存在下、上記式(4)で表される化合物と下記式(5)で表されるトリメリット酸無水物の酸ハライドとを反応させ、本発明のテトラカルボン酸二無水物を得る反応のことを示す(以下、本反応をエステル化反応と称することもある)。
原料として使用する上記式(4)で表される化合物は、公知の方法(例えば、特開2018-90560公報に記載の方法)で製造することができる。具体的には、酸存在下、9-フルオレノンと2-ベンジル-6-フェニルフェノールとを反応させることにより得ることができる。
エステル化反応に用いられるトリメリット酸無水物の酸ハライドは下記式(5):
(式中、Yはハロゲン原子を表す。)
で表される構造を有する。これらトリメリット酸無水物の酸ハライドの中でも、トリメリット酸無水物の酸クロリドが安価で入手可能であることから、Yは塩素原子が望ましい。
エステル化反応に用いられる上記式(5)で表されるトリメリット酸無水物の酸ハライドの使用量は通常、上記式(4)で表される化合物1モルに対して、2~4モルであり、好ましくは2~3モルである。トリメリット酸無水物の酸ハライドの使用量を2モル以上とすることにより十分な反応速度を得ることができ、使用量を4モル以下とすることによって、反応終了後未反応の上記式(5)で表されるトリメリット酸無水物の酸ハライドを低減させることが可能であり、その結果、得られる本発明のテトラカルボン酸二無水物の純度を向上させることが可能となる。
エステル化反応で用いられる脱酸剤として、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン等の有機3級アミン類、プロピレンオキサイド、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ類、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。これら脱酸剤は1種、あるいは必要に応じ2種以上併用してもよい。これら脱酸剤の中でも、安価であり、かつ反応後、分離除去が容易であることからピリジンが好適に用いられる。脱酸剤の使用量は、上記式(4)で表される化合物1モルに対して、通常2~4モル、好ましくは2~3モルである。脱酸剤の使用量を2モル以上とすることにより反応速度が向上し、4モル以下とすることにより不純物の生成を抑制することが可能となる。
エステル化反応を実施する際、必要に応じ溶媒を使用することができる。使用可能な溶媒として例えば、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒等が挙げられる。ケトン系溶媒としてアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が、エーテル系溶媒として1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等が、芳香族炭化水素系溶媒としてベンゼン、トルエン、キシレン等が、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒としてクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が、ニトリル系溶媒としてアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ベンゾニトリル等が、アミド系溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が例示される。入手性及び取扱性の点から、エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ニトリル系溶媒が好ましい。これら溶媒は1種、あるいは必要に応じ2種以上併用してもよい。これら溶媒を使用する際の使用量は通常、上記式(4)で表される化合物1重量倍に対し、1~30重量倍、好ましくは1~5重量倍である。
エステル化反応は通常、-10℃~120℃、好ましくは-5℃~100℃、さらに好ましくは20℃~90℃で実施する。反応温度を120℃以下とすることにより副生成物の低減が可能となり、反応温度を-10℃以上とすることにより十分な反応速度を得ることができる。
エステル化反応の実施方法として例えば、上記式(5)で表されるトリメリット酸無水物の酸ハライドと溶媒とを混合させた溶液に、該溶液を撹拌しながら、別途調製した上記式(4)で表される化合物及び脱酸剤を溶媒に混合した溶液を、上記した温度範囲となるよう間欠的あるいは連続的に添加した後、上記した温度範囲にてさらに反応を継続する方法が挙げられる。また、上記式(5)で表されるトリメリット酸無水物の酸ハライドと上記式(4)で表される化合物とを溶媒に混合させた溶液に、脱酸剤をそのまま、あるいは溶媒に混合させた後、上記温度範囲となるよう間欠的あるいは連続的に添加し、添加後、上記した温度範囲でさらに反応を継続する方法が挙げられる。
エステル化反応終了後、反応液を0~35℃に冷却することにより結晶を析出させ、析出した結晶をろ別し、得られた結晶を前述の反応で使用し得る溶媒で洗浄することにより、本発明のテトラカルボン酸二無水物を得ることができる(以下、本工程を晶析工程と称することもある)。また必要に応じ、得られた本発明のテトラカルボン酸二無水物を吸着処理、再晶析等の精製操作に供してもよい。
エステル化反応終了後、上述の晶析工程を実施する前に、必要に応じて、反応液に、水及び水と分離する溶媒とを加えた後、撹拌、水層を分離すること(以下、水洗工程と称することがある)によって、本発明のテトラカルボン酸二無水物を溶媒層に抽出し、過剰分の脱酸剤とトリメリット酸無水物の酸ハライドの加水分解体、及び脱酸剤のハロゲン塩を水層に分配して除去する工程を実施してもよい。
また、反応中あるいは水洗工程にて副生した開環体(本発明のテトラカルボン酸二無水物の加水分解体)は無水酢酸存在下で閉環させ、再度本発明のテトラカルボン酸二無水物とすることができる。その際、必要に応じ溶媒を用いても良い。
前述の方法で得られる、本発明のテトラカルボン酸二無水物は、ポリイミド原料として用いるだけでなく、ポリエステル等の樹脂原料、添加剤やエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂の硬化剤などに用いてもよい。また、本発明のテトラカルボン酸二無水物の純度は、一般式(2)で表されるポリアミック酸又は一般式(3)で表されるポリイミドの重合度を向上させやすい点から、後述する方法で測定されるHPLC純度で、好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上である。
<一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸及びその製造方法>
一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸(以下、本発明のポリアミック酸と称することもある)について詳述する。
本発明のポリアミック酸は、本発明のテトラカルボン酸二無水物と、後述するジアミン類とを反応させて得ることができ、一般式(2)中のZで表されるジアミン残基とは、ジアミンのアミノ基(-NH2)以外の構造を表す。なお、一般式(2)で表される構造以外に、アミド結合に対して3位にエステル結合を有する構造も生成し得る。
本発明のポリアミック酸の分子量は、後述する測定方法により得られる重量平均分子量で1万~70万であることが好ましく、2万~60万であることがより好ましい。ポリアミック酸の分子量が上記範囲にあることで、溶液の粘度が取扱い容易な範囲となり、また、ポリアミック酸溶液からフィルムを成形する場合に割れやひびのないフィルムを得ることができる。
本発明のポリアミック酸は、例えば、後述するジアミン類を後述する重合溶媒に溶解後、通常10~30℃で本発明のテトラカルボン酸二無水物の粉末を添加した後、0~100℃、好ましくは10~60℃で撹拌することで、ポリアミック酸溶液として得ることができる。
本発明で使用可能なジアミン類としては、ポリイミドの製造に用いられる、一般的な芳香族ジアミン類、脂肪族ジアミン類、脂環式ジアミン類等を使用することができる。このようなジアミン類として例えば、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(別名4,4’-オキシジアニリン)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(別名2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル)、3,7-ジアミノ-ジメチルジベンゾチオフェン-5,5-ジオキシド、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン、1,2-ビス[2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、5(6)-アミノ-1-(4-アミノメチル)-1,3,3-トリメチルインダン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,6-ジヒドロキシ-1,3-フェニレンジアミン、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル、1,6-ジアミノヘキサン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(4-シクロヘキシルアミン)、トランス-1,4-シクロヘキサンジアミン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(メチルアミン)、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン-1,3-ジアミン(別名アダマンタン-1,3-ジアミン)、4-アミノ安息香酸4-アミノフェニル、2-(4-アミノフェニル)アミノベンゾオキサゾール、9,9-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2’-ビス(3-スルホプロポキシ)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル-3,3’-ジスルホン酸等が挙げられる。これらジアミン類の中でも、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,7-ジアミノ-ジメチルジベンゾチオフェン-5,5-ジオキシド、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,6-ジアミノヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(4-シクロヘキシルアミン)、トランス-1,4-シクロヘキサンジアミン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(メチルアミン)等が好ましい。さらには、得られるポリイミドの透明性が向上することから4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、トランス-1,4-シクロヘキサンジアミン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(メチルアミン)が、得られるポリイミドの溶媒溶解性が向上すると同時に低誘電率化が可能となることから2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2、2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンが、入手性、経済性の観点から4,4’-ジアミノジフェニルエーテルが、特に好ましい。これらジアミン類は1種、あるいは必要に応じ2種以上併用することもできる。
上記ジアミン類は、本発明のテトラカルボン酸二無水物、及び下記する他の酸二無水物を併用する場合は他の酸二無水物も含めた全酸二無水物1モルに対し通常0.9~1.1モル、重合度を高める観点から好ましくは0.95~1.05モル使用する。
また、必要に応じ一般的な酸二無水物を共重合成分として併用することができる。併用可能な酸二無水物として例えば、無水ピロメリット酸、3,4’-オキシジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、ビフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、m-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、p-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、3-カルボキシメチル-1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸1,4:2,3-二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン等が例示され、これら酸二無水物は1種、あるいは必要に応じ2種以上併用することもできる。他の酸二無水物を併用する場合、全酸二無水物中の他の酸二無水物の使用量は、通常10~90重量%であり、好ましくは30~70重量%である。他の酸二無水物を10重量%以上使用することにより、後述する、他の酸二無水物を併用することによる物性向上効果を十分に得ることができる。一方、他の酸二無水物の使用量を90重量%以下とすることにより、本発明のテトラカルボン酸二無水物の構造に由来する特性が十分に発揮される。
他の酸二無水物を併用する効果として例えば、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物などの含フッ素酸二無水物を併用することにより、得られるポリイミドの低誘電率化が可能となる。
ポリアミック酸を製造する際の溶媒(重合溶媒)としては、原料モノマーである本発明のテトラカルボン酸二無水物及びジアミン類、並びに生成するポリアミック酸を溶解することができれば特に限定されない。このような溶媒として例えば、アミド系溶媒、鎖状エステル系溶媒、環状エステル系溶媒、カーボネート系溶媒、グリコール系溶媒、フェノール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、芳香族系溶媒、スルホン系溶媒、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。アミド系溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等が、鎖状エステル系溶媒として酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル等が、環状エステル系溶媒としてγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン等が、カーボネート系溶媒としてエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が、グリコール系溶媒としてトリエチレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールメチルアセテート、2-メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が、フェノール系溶媒としてフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール等が、エーテル系溶媒としてテトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン等が、ケトン系溶媒としてメチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、アセトフェノン等が、アルコール系溶媒としてブタノール、エタノール等が、芳香族系溶媒としてキシレン、トルエン、クロロベンゼン等が、スルホン系溶媒としてスルホラン等が例示される。好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-ピロリドン等のアミド系溶媒が例示される。これら溶媒は1種、あるいは必要に応じ2種以上併用してもよい。
溶媒の使用量は反応系中のモノマー成分(テトラカルボン酸二無水物+ジアミン類)の合計濃度(モノマー濃度)が通常5~40重量%、好ましくは8~30重量%となる量である。上記モノマー濃度範囲で重合を行うことにより、均一で高重合度のポリアミック酸溶液を得ることができる。なお、上記モノマー濃度範囲よりも低濃度で重合を行うと、ポリアミック酸の重合度が十分高くならず、最終的に得られるポリイミド膜が脆弱になる場合があり、上記モノマー濃度範囲よりも高濃度で重合を行うとモノマーが十分溶解しない場合や反応溶液が不均一になりゲル化する場合がある。前述の方法で得られた本発明のポリアミック酸の溶液は通常、溶液のまま、後述するポリイミド化工程にて使用される。
<一般式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミド及びその製造方法>
本発明の一般式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミド(以下、本発明のポリイミドと称することもある)は、前述の方法で得られた、本発明のポリアミック酸を脱水閉環反応(イミド化反応)に供することで製造することができる。イミド化反応の方法として、熱イミド化法、化学イミド化法等が例示される。
熱イミド化法はポリアミック酸溶液から溶媒を留去してポリアミック酸のフィルムを得、該フィルムを加熱することによってイミド化させ、ポリイミドのフィルムとすることにより実施される。ポリアミック酸のフィルムは、ポリアミック酸溶液をガラス等の基板上に流延し、真空中、窒素等の不活性ガス中、あるいは空気中、通常50~190℃、好ましくは100~180℃で加熱し、溶媒を留去することにより得ることができる。
続いて、得られたポリアミック酸のフィルムを基板上で通常200~400℃、好ましくは250~350℃で加熱する。これにより、イミド化反応が起こり、ポリイミドフィルムを得ることができる。加熱温度は、イミド化反応を十分に行う観点から200℃以上が好ましく、生成したポリイミドフィルムの熱安定性の観点から400℃以下が好ましい。
イミド化反応は空気中で行うこともできるが、真空中あるいは不活性ガス中で行うことが好ましい。
化学イミド化法はポリアミック酸溶液に、撹拌しながら、有機酸無水物及び脱水閉環剤(以下、これら2種を合わせて化学イミド化剤と称することもある)を添加し、温度0~100℃、好ましくは10~50℃で撹拌することにより実施される。
化学イミド化に使用可能な有機酸無水物としては無水酢酸、無水プロピオン酸等が例示される。これら有機酸無水物の中でも、取り扱い、及び分離のし易さから無水酢酸が好ましい。また脱水閉環剤としては、ピリジン、トリエチルアミン、キノリン等が例示される。これら脱水閉環剤の中でも、取り扱い、及び分離のし易さからピリジンが好ましい。化学イミド化剤中の有機酸無水物量は、通常ポリアミック酸の理論脱水量に対して1~10倍モルの範囲であり、好ましくは2~10倍モルである。また脱水閉環剤の量は、通常有機酸無水物量に対して0.1~5倍モルの範囲であり、好ましくは1~5倍モルの範囲である。
上記した化学イミド化法実施後、未反応の化学イミド化剤、有機酸などの副生成物(以下、不純物という)を除去するためにポリイミドを単離・精製してもよい。精製は公知の方法が利用できる。例えば、ポリイミド溶液を、貧溶媒中に添加してポリイミドを析出させた後、ポリイミドを回収して不純物が除去されるまで繰り返し洗浄し、乾燥させ、ポリイミドを得る方法が挙げられる。貧溶媒として使用可能な溶媒としては、ポリイミドを析出させ、不純物を効率よく除去でき、乾燥し易い溶媒であれば良く、かかる溶媒として、水やメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が例示される。これら溶媒は1種、あるいは2種類以上併用してもよい。
貧溶媒中に添加する際のポリイミド溶液のポリイミド濃度は、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。ポリイミド濃度が30重量%より高い場合、析出するポリイミドが粒塊となり、その粒塊中に不純物が残留する場合や、得られたポリイミドを溶媒に再溶解する際に長時間を要する場合がある。また、貧溶媒の使用量はポリイミド溶液に対し通常1重量倍以上であり、好ましくは1.5~100重量倍であり、より好ましくは10~50重量倍である。
得られたポリイミドは必要に応じ、残留溶媒を真空乾燥や熱風乾燥などで除去しても良い。その際の温度は、ポリイミドが変質しない温度であれば制限はなく、例えば30~150℃である。
上記した方法により得られたポリイミドは、そのまま射出成形や加熱圧縮等に供し、成形体としてもよく、また、溶媒に再溶解させポリイミド溶液とした後、フィルム等の成形に供しても良い。
以下、溶媒に再溶解させポリイミド溶液を調製し、ポリイミドフィルムを製造する方法について詳述する。ポリイミドを再溶解させる溶媒としては、使用用途や加工条件に合わせて適宜ポリイミドが溶解する溶媒を用いれば良く、このような溶媒として例えば、アミド系溶媒、エステル系溶媒、カーボネート系溶媒、グリコール系溶媒、フェノール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒等の他、汎用溶媒が挙げられる。アミド系溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等が、エステル系溶媒としてγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル等が、カーボネート系溶媒としてエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が、グリコール系溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が、フェノール系溶媒としてフェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール等が、ケトン系溶媒としてシクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等が、エーテル系溶媒としてテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル等が、その他の汎用溶媒としてアセトフェノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、2-メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロロベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系等が例示される。これら溶媒は1種、あるいは2種類以上併用してもよい。
ポリイミドフィルムは、ポリイミド溶液を例えばガラス等の基板上に流延し、真空中、窒素等の不活性ガス中、あるいは空気中で加熱し溶媒を留去することにより得ることができる。具体的に例えば、オーブン中、通常200~400℃、好ましくは250~350℃で乾燥する。ポリイミドフィルムの作成は空気中で行っても良いが、真空中あるいは不活性ガス中で行うことが好ましい。
前述の方法によって得られる本発明のポリイミドの分子量は、後述する測定方法により得られる重量平均分子量が通常1万~60万であり、2万~50万であることが好ましく、4万~40万であることがより好ましい。ポリイミドの分子量が1万以上であれば、成形可能である。またポリイミドの分子量が60万以下であれば、該ポリイミドの製造時に分子量をコントロールしやすく、また適度な粘度の溶液が得られやすく取扱いが容易である場合が多い。
前述の方法によって得られる本発明のポリイミドは、後述する方法で測定されるガラス転移温度が200℃前後であり、また、熱分解温度が400℃以上である。また、溶媒溶解性に優れ、屈折率も1.63以上と高屈折率を示す。さらには、使用するジアミンとの組み合わせによっては、高透明性をも兼ね備えるポリイミドとなる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。各実施例・参考例に示した各物性値は、以下測定装置、条件にて測定した結果である。
〔1〕LC-MS測定
次の測定条件で分離、質量分析し、目的物を同定した。
・装置:(株)Waters製「Xevo G2 Q-Tof」
・カラム:ACQUITY UPLC(R) BEH Shield RP18
(1.7μm、2.1mmφ×100mm)
・カラム温度:40℃
・検出波長:UV 220-500nm
・移動相:A液=0.1%ギ酸水、B液=アセトニトリル
・移動相流量:0.3mL/分
・移動相グラジエント:A液/B液:45/55(v/v、0分)→0/100(v/v、10分後)→0/100(v/v、15分後)
・検出法:Q-Tof
・イオン化法:APCI(+)法
・Ion Source:温度120℃
・Sampling Cone :電圧 30V、ガスフロー50L/h
・Desolvation Gas:温度500℃、ガスフロー1000L/h
〔2〕HPLC純度
次の測定条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定を行ったときの面積百分率値を各化合物の純度とした。
・装置:(株)島津製作所社製 LC-20AD
・カラム:ZORBAX CN(5μm、4.5mmφ×250mm)
・カラム温度:40℃
・検出波長:UV 254nm、
・移動相:A液=ヘキサン、B液=テトラヒドロフラン
・移動相流量:1.0mL/分
・移動相グラジエント:A液/B液:85/15(v/v、0分)→60/40(v/v、35分後)→0/100(v/v、40分後)
〔3〕ポリアミック酸の重量平均分子量
次の測定条件で、重量平均分子量を測定した。(ポリスチレン換算)
・装置:東ソー(株)製 HLC-8200
・カラム:TSK-GEL Super AWM―H (6.0mmI.D.×15cm)
・移動相:N,N-ジメチルホルムアミド、流量:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・分子量標準物質:ポリスチレン
〔4〕ガラス転移温度(Tg)の測定
エスアイアイ社製熱機械分析装置(DMA6100)を用いて動的粘弾性測定により、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分における損失エネルギー曲線のピーク温度からポリイミドフィルム(膜厚約20μm)のガラス転移温度を求めた。
〔5〕熱分解温度(Td5)の測定
示差熱天秤(リガク(株)製「Thermo plus EVO2」)を用いて、アルミパンに5mgのポリイミドフィルムを精秤し、もう一方のアルミパンは空の状態でセットした。重量値をゼロにセットした後に窒素雰囲気中で昇温速度10℃/minで500℃まで昇温させ、5%重量減少時の温度を測定することで、熱分解温度を測定した。
〔6〕全光線透過率(Tt)の測定
ヘイズメータ(スガ試験機(株)製「HGM-2DP」)を用いてポリイミドフィルムの全光線透過率を測定した。
〔7〕光透過率(T400)の測定
分光光度計((株)島津製作所製「UV-2450」)を用いて、ポリイミド膜の400nmの透過率を測定した。
〔8〕屈折率(nav)の測定
アッベ屈折計((株)アタゴ製「多波長アッベ屈折計 DR-M2」)を用いて、ポリイミド膜に平行な方向(nin)と垂直な方向(nout)の屈折率(波長:589nm)を測定し、ポリイミド膜の平均屈折率(nav)を次式で求めた。
nav=(2nin+nout)/3
〔9〕溶媒溶解性
得られたポリイミド膜または粉末20mgをアセトン(ACT)、酢酸エチル(ETA)、シクロヘキサノン(CHN)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)1mLに入れ、溶解性を試験した。下記の基準で溶媒溶解性を評価した。
〇:室温で溶解する。
△:加温すると溶解し、室温に冷却しても析出しない。
×:不溶。
1.上記式(1)で表される酸二無水物の製造例
<実施例1>
温度計、滴下ロート、攪拌棒を備えた1Lの4つ口フラスコに、無水トリメリット酸クロリド8.63g(41.0mmol)、アセトニトリル30.0g、上記式(4)で表される化合物10.0g(14.6mmol)を仕込み、撹拌後、2℃まで冷却した。冷却後、さらにピリジン2.70g(34.1mmol)を2℃~7℃で滴下した。滴下後、80℃まで昇温し、昇温後、同温度で23時間撹拌を行った。
撹拌終了後、シクロペンチルメチルエーテルを加え、イオン交換水で水洗を4回行い、ピリジン塩酸塩を除去した。水洗後、還流脱水を行い、シクロペンチルメチルエーテルを一部濃縮し、無水酢酸6.00g(58.8mmol)を加え、水洗により開環した酸二無水物の閉環を行った。その後エバポレータでシクロペンチルメチルエーテルを留去することで、本発明のテトラカルボン酸二無水物を含む固体15.6g(純度88.4%)を得た。
得られた本発明のテトラカルボン酸二無水物を含む固体9.00gをテトラヒドロフランに溶解し、分取LC(ワイエムシィ社製「Multiple preparative HPLC LC-forte/R」)を用いて分取した。分取したテトラカルボン酸二無水物をHPLCで確認したところ、わずかに開環体が含まれていたため、無水酢酸3.00g(29.4mmol)を加え、開環した酸二無水物の閉環を行った。得られた溶液を濃縮乾固することで、本発明のテトラカルボン酸二無水物2.10g(収率13.9%、純度98.2%)を得た。
得られた本発明のテトラカルボン酸二無水物をLC-MSを用いて分析し構造を確認した。質量分析チャートを図1に示す。また、マススペクトル値は以下の通りであった。
マススペクトル測定値(M+・):1030.28
2.一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸及び一般式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの製造例
<実施例2>
(一般式(2)で表されるポリアミック酸の内、本発明のテトラカルボン酸二無水物と2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下、TFMBと称する)との反応から得られるポリアミック酸(以下、下記式(2-A)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸と称する)の製造例)
実施例1で得られた、本発明のテトラカルボン酸二無水物0.50g(0.48mmol)及びTFMB0.16g(0.48mmol)とを室温でN,N-ジメチルアセトアミド1.6gに溶解した後、室温で24時間撹拌することにより、上記式(2-A)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、55,021であった。
<実施例3>
(一般式(3)で表されるポリイミドの内、上記式(2-A)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸の化学イミド化による、下記式(3-A)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの製造例)
実施例2で得られた、上記式(2-A)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸のN,N-ジメチルアセトアミド溶液2.3gに、N,N-ジメチルアセトアミド4.3g、無水酢酸0.5g及びピリジン0.2gを加え、室温で24時間撹拌することにより、上記式(3-A)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N-ジメチルアセトアミド溶液を得た。
得られた上記式(3-A)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N-ジメチルアセトアミド溶液を、メタノール25g中へ滴下することで、上記式(3-A)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを析出させた。析出したポリイミドをろ別し、メタノールで洗浄後、乾燥させ、白色のポリイミド粉末0.6gを得た。
得られたポリイミド粉末0.6gにシクロペンタノン3.4gを加えて均一になるまで撹拌することで、上記式(3-A)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのシクロペンタノン溶液を得た。この溶液をガラス板上に塗布した後、60℃で2時間、200℃で1時間加熱して上記式(3-A)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約25μmであった。
表1に得られたポリイミド薄膜のガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td5)、全光線透過率(Tt)、400nmにおける透過率(T400)、屈折率(nav)の測定結果、及び各種溶媒への溶解性を示す。
<実施例4>
(一般式(2)で表されるポリアミック酸の内、本発明のテトラカルボン酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(以下、4,4’-DPEと称する)との反応から得られるポリアミック酸(以下、下記式(2-B)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸と称する)の製造例)
実施例1で得られた、本発明のテトラカルボン酸二無水物0.50g(0.48mmol)及び4,4’-DPE0.10g(0.50mmol)とを室温でN,N-ジメチルアセトアミド1.5gに溶解した後、室温で24時間撹拌することにより、上記式(2-B)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、71,568であった。
<実施例5>
(一般式(3)で表されるポリイミドの内、上記式(2-B)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸の化学イミド化による、下記式(3-B)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの製造例)
実施例4で得た、上記式(2-B)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸のN,N-ジメチルアセトアミド溶液2.1gに、N,N-ジメチルアセトアミド3.9g、無水酢酸0.5g及びピリジン0.2gを加え、室温で24時間撹拌することにより、上記式(3-B)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N-ジメチルアセトアミド溶液を得た。
得られた上記式(3-B)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N-ジメチルアセトアミド溶液をメタノール25g中へ滴下することで、上記式(3-B)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを析出させた。析出したポリイミドをろ別し、メタノールで洗浄後、乾燥させ、淡黄色のポリイミド粉末0.6gを得た。
得られたポリイミド粉末0.6gにN,N-ジメチルアセトアミド2.4gを加えて均一になるまで撹拌することで、上記式(3-B)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N-ジメチルアセトアミド溶液を得た。得られた溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱して上記式(3-B)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約24μmであった。
表1に得られたポリイミド薄膜のガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td5)、全光線透過率(Tt)、400nmにおける透過率(T400)、屈折率(nav)の測定結果、及び各種溶媒への溶解性を示す。
3.他のフルオレン骨格を有する酸二無水物から誘導されるポリイミドの製造例、及び該ポリイミドの物性について
<参考例1>
(下記式(6)で表される酸二無水物とTFMBとから得られる、下記式(7)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの製造例)
下記式(6):
で表されるテトラカルボン酸二無水物1.00g(1.38mmol)及びTFMB0.440g(1.38mmol)を室温でN,N-ジメチルアセトアミド3.6gに溶解し、室温で24時間攪拌することにより、ポリアミック酸のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、75,880であった。
得られたポリアミック酸のN,N-ジメチルアセトアミド溶液5.0gに、N,N-ジメチルアセトアミド9.4g、無水酢酸1.4g及びピリジン0.5gを加えて室温で24時間撹拌することにより、上記式(7)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N-ジメチルアセトアミド溶液を得た。
得られた上記式(7)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N-ジメチルアセトアミド溶液をメタノール50g中へ滴下することで、上記式(7)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを析出させた。析出したポリイミドをろ別し、メタノールで洗浄後、乾燥させ、白色のポリイミド粉末1.4gを得た。
得られたポリイミド粉末1.4gにシクロペンタノン7.9gを加えて均一になるまで撹拌することで、上記式(7)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのシクロペンタノン溶液を得た。得られた溶液をガラス板上に塗布した後、60℃で2時間、200℃で1時間加熱して上記式(7)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約23μmであった。
表1に得られたポリイミド薄膜のガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td5)、全光線透過率(Tt)、400nmにおける透過率(T400)、屈折率(nav)の測定結果、及び各種溶媒への溶解性を示す。
<参考例2>
(上記式(6)で表される酸二無水物と4,4’-DPEとから得られる、下記式(8)で表される繰り返し単位を有するポイミドの製造例)
上記式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物1.00g(1.38mmol)及び4,4’-DPE0.280g(1.38mmol)を室温でN,N-ジメチルアセトアミド3.8gに溶解し、室温で24時間攪拌することにより、ポリアミック酸のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、110,590であった。
得られたポリアミック酸のN,N-ジメチルアセトアミド溶液5.1gに、N,N-ジメチルアセトアミド7.7g、無水酢酸1.4g及びピリジン0.5gを加えて室温で24時間撹拌することにより、上記式(8)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N-ジメチルアセトアミド溶液を得た。
得られた上記式(8)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N-ジメチルアセトアミド溶液をメタノール50g中へ滴下することで、上記式(8)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを析出させた。析出したポリイミドをろ別し、メタノールで洗浄後、乾燥させ、淡黄色のポリイミド粉末1.3gを得た。
得られたポリイミド粉末1.3gにN,N-ジメチルアセトアミド5.2gを加えて均一になるまで撹拌することで、上記式(8)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N-ジメチルアセトアミド溶液を得た。得られた溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱して上記式(8)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約21μmであった。
表1に得られたポリイミド薄膜のガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td5)、全光線透過率(Tt)、400nmにおける透過率(T400)、屈折率(nav)の測定結果、及び各種溶媒への溶解性を示す。