JP2006013419A - フレキシブルプリント基板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、温度変化に対してカール、ねじれ、反り等がなく、且つ十分な耐熱性、寸法安定性、接着性、耐折曲げ性等を有し、しかも吸水率が小さく信頼性の高いフレキシブルプリント基板およびその製造方法に関する。
従来、フレキシブルプリント基板またはフラットケーブル(以後、フレキシブルプリント基板に含める)は、一般に導体と有機ポリマーの絶縁材とを接着剤を介して接着して製造されている。しかし、この際に熱圧着等の熱履歴を加えると、冷間時に基板のカール、ねじれ、反り等を生じてその後の導体パターニング等が不可能になる欠点がある。これらの問題は、導体と絶縁材および接着剤との線熱膨張係数のミスマッチに起因する。また、導体と絶縁材とを接着する接着剤層のため、難燃性が低下する、あるいは使用するポリイミドフィルムが高価であることに加え、張り合わせに多大の手間を要すため、フレキシブルプリント基板が高価格になる等の問題がある。
例えば、従来、ポリイミド溶液を金属箔に塗布し、乾燥後に線熱膨張係数の差により生じたカールを、後工程で熱処理により緩和する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この方法では手間がかかる点や、金属箔と絶縁膜の線熱膨張係数が異なることからハンダ浴等の再加熱時に再カールするという点については解決されておらず、満足し得るものではない。
また、特定構造を有するポリイミドまたはポリイミド前駆体溶液を導体上に塗布して低熱膨張の樹脂を得てカールの少ないフレキシブルプリント基板を得る方法が提案されている(例えば、特許文献2および特許文献3参照。)。しかしながら、導体上に製造されるこれらの樹脂フィルムの特性、特に耐折曲げ性が不十分であり、またフレキシブルプリント回路としてハンダに浸漬する際の寸法安定性が不十分である。
また、ポリアミドイミド樹脂を絶縁材とするフラットケーブルも開示されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、この樹脂は吸水性、耐折曲げ性、接着力等の点に問題がある。
本発明の目的は、絶縁材と導体との線熱膨張係数を近づけ、熱履歴を加えてもカール、ねじれ、反り等がなく、且つ十分な耐熱性、寸法安定性、接着性、耐折曲げ性等を有し、しかも吸水率が小さく信頼性の高いフレキシブルプリント基板とその製造法を提供することである。
本発明者らは、上記のような問題点を解決する為に種々研究を行い、特定の構造を有するポリエステルイミド樹脂を絶縁材として用いることにより、温度変化に対してカール、ねじれ、反り等がなく、且つ十分な耐熱性、寸法安定性、接着性、耐折曲げ性等を有し、しかも吸水率が小さく信頼性の高いフレキシブルプリント基板が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、少なくとも導体と絶縁材とを包含するフレキシブルプリント基板において、該絶縁材が、下記一般式(1):
で表される2価の芳香族基または脂環式基(但し、AおよびBにおけるシクロヘキサン環の立体構造は、椅子型トランス配置である)より選択される〕で表される1種または2種以上の繰り返し単位を含むポリエステルイミドを含有することを特徴とするフレキシブルプリント基板に関する。
好ましくは、本発明は、絶縁材が、5000回以上の耐折曲げ性と、3.3以下の誘電率と、30ppm/K以下の線熱膨張係数とを併せ持つ、上記のフレキシブルプリント基板に関する。さらに好ましくは、本発明は、導体と絶縁材とが、接着剤層を介さずに直接接している上記のフレキシブルプリント基板、特には、基板の導体が銅箔であるフレキシブルプリント基板に関する。
本発明はまた、フレキシブルプリント基板の製造方法に関する発明であって、少なくとも導体と絶縁材とを包含するフレキシブルプリント基板の製造方法において、下記一般式(2):
本発明のフレキシブルプリント基板は、低誘電率、低線熱膨張係数であって、且つ十分な膜靭性等の優れた特性を併せ持つポリエステルイミドを絶縁材として用いることにより、絶縁材の線熱膨張係数が導体のそれと近似するため、熱履歴を加えても、カール、ねじれ、反り等がなく、且つ十分な耐熱性、寸法安定性、接着性、耐折曲げ性等を有し、しかも吸水率が小さく信頼性が高いといった、実用上優れた特性を有する。また、製造工程が非常に簡略化でき工業材料として極めて有用である。
上記のような一般式(2)で表されるポリエステルイミド前駆体は、一般式(3)で表される芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体と、下記一般式(4)で表されるジアミンとを反応させて得られる。
但し、Aにおけるシクロヘキサン環の立体構造は、椅子型トランス配置である。好ましくは、Aは、1,4−フェニレン基または1,4−シクロヘキサンジイル基である。また、一般式(3)は、ここではテトラカルボン酸として例示するが、これらのモノ、ジ、トリもしくはテトラ−エステル、酸無水物または酸ハロゲン化物等も勿論使用できる。
式(3)で表される芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体の合成は、慣用のアルコールとカルボン酸とによるエステル結合形成反応により行うことができる。例えば、芳香族テトラカルボン酸の二無水物の合成は、以下のように行うことができる。まずジオールを脱水済みのテトラヒドロフランやN,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶媒に溶解し、これに脱酸剤としてピリジンやトリエチルアミン等の3級アミンを添加する。この溶液へ、用いたジオールに対して2倍モルのトリメリット酸無水物クロリドの溶液を氷で冷却しながら徐々に滴下し、室温で24時間攪拌して目的の式(3′):
(式中、Aは、式(1)と同義である)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物モノマーを得ることができる。反応終了後、上記反応溶液中に含まれる3級アミンの塩酸塩を濾過により除去し、反応溶媒を減圧留去後、適当な溶媒を用いて再結晶を繰返すことで重合に供することのできる高純度なエステル基含有酸二無水物モノマーが得られる。
式(4)中、Bは、式(1)と同義であるが、具体的には、下記の2価の芳香族基または脂環式基が挙げられる。
但し、Bにおけるシクロヘキサン環の立体構造は、椅子型トランス配置である。これらのジアミンから、1種または2種以上が選択される。好ましくは1種または2種のジアミンが選択される。更に好ましくは、少なくとも1種のジアミンは、エステル結合を含むジアミンである。エステル結合を含むジアミンを利用することで、得られるポリエステルイミド樹脂の吸水率をより低下させることができる。エステル結合を含むジアミンは、好ましくは4−アミノ安息香酸4′−アミノフェニルである。
本発明のフレキシブルプリント基板の製造に用いられるポリエステルイミド前駆体溶液の調製は、米国特許第3179635号明細書等に記載された方法によって行うことができる。例えば、まず式(4)で表されるジアミン成分を重合溶媒に溶解し、これに式(3)で表される芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体を徐々に添加する。好ましくはN−メチルピロリドン(NMP)、N,N′−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N′−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、ブチロラクトン、クレゾール、フェノール、ハロゲン化フェノール、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム等の重合溶媒中で、0.5〜48時間攪拌することにより行われる。反応温度は、0〜200℃、好ましくは0〜100℃の温度範囲で行われる。反応温度が200℃を超えると、重合反応中にイミド化反応が進行する場合があり、本発明の低熱膨張化効果が得がたくなるほか、成形性も著しく低下する。この際、モノマー濃度は5〜40重量%、好ましくは10〜35重量%である。このモノマー濃度範囲で重合を行うことにより均一で高重合度のポリエステルイミド前駆体溶液を得ることができる。
本発明のフレキシブルプリント基板は、ポリエステルイミド前駆体溶液を導体上に塗布し、乾燥し、硬化(イミド化)させることにより得られるが、その塗布、乾燥およびイミド化条件は、所望の膜厚や、前駆体溶液に用いた溶媒の種類等に応じて、適宜選択可能である。例えば、導体上に所望の厚さで塗布されたポリエステルイミド前駆体溶液を、40℃〜180℃の温度で乾燥させ、続いて空気中、窒素等の不活性ガス雰囲気中または真空中、200℃〜430℃、好ましくは250℃〜400℃の温度で熱処理することで、ポリエステルイミド膜が得られる。このとき、イミド化温度は、ガラス転移温度以上に上昇させても差し支えない。
本発明のフレキシブルプリント基板は、少なくとも導体と絶縁材を包含するものであるが、導体としては銅、アルミニウム、鉄、銀、パラジウム、ニッケル、クロム、モリブデンまたはそれらの合金が挙げられる。好ましくは銅であり、価格の点で好ましくは電解銅箔である。一般に樹脂溶液を銅箔に直接塗布する場合、電解銅箔は圧延銅箔に比べカールが少ないものを得がたいが、本発明のフレキシブルプリント基板は電解銅箔を用いてもカールのないものを得ることができる。
また、導体はサイディング、ニッケルメッキまたはアルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等によって化学的、機械的な表面処理が施されてもよい。また、予め任意の接着層が形成された導体であっても良い。
さらに、導体表面により接着力の優れたポリイミドまたはその前駆体をアンカーコートとして使用することにより、その上にコートされる本発明の絶縁材の接着力向上を図ることができる。
5000回以上の耐折曲げ性と、3.3以下の誘電率と、30ppm/K以下の線熱膨張係数とを併せ持つ絶縁材を使用することによって、所望の誘電特性を有することに加え、導体と絶縁材に熱履歴を加えてもカール、ねじれ、反り等がなく、且つ十分な耐熱性、寸法安定性、接着性、耐折曲げ性を有し、しかも吸水率が小さく信頼性の高い工業的に有用なフレキシブルプリント基板を得ることができる。
本発明の絶縁材は、低誘電率、低線熱膨張係数を有し、且つ十分な膜靭性を併せ持つものであるが、より線熱膨張係数を下げたり、弾性率を上げたり、流動性をコントロールしたり、あるいは低コスト化するために、無機質、有機質または金属等の粉末、繊維、チョップトストランド等を混合しても使用できる。
また、本発明で得られたフレキシブルプリント基板の非銅面側に任意の接着剤を使用して銅箔を張り合わせ、両面タイプのフレキシブルプリント基板にすることも可能である。
また、本発明で得られたフレキシブルプリント基板の非銅面側に任意の接着剤を使用して銅箔を張り合わせ、両面タイプのフレキシブルプリント基板にすることも可能である。
本発明で使用する絶縁材は、線熱膨張係数が30ppm/K以下であることが望ましい。これより大きいと、金属板や無機質板の上に塗布したとき、カール等の変形、膜のクラック、剥離、基板の破損等が生じる。ここで、線熱膨張係数は、銅箔上にポリエステルイミド前駆体溶液を塗布して、硬化させた後、エッチングして銅箔を溶解除去して得られる25μmのフィルムを250℃に昇温させた後、10℃/minで冷却して240℃から100℃までの間の寸法変化率の平均として求められるもの、すなわち、下記式:
で求められる降温時の寸法変化である。すなわち反りの原因となる降温時の寸法変化率を線熱膨張係数とし、この値が30ppm/K以下であることが望ましい。なお、本発明のフレキシブルプリント基板の絶縁材として使用されるポリエステルイミド膜の、100℃から200℃までの昇温時の線熱膨張係数は、降温時のものと同様の寸法変化率を示す。降温後、フィルムは昇温出発位置に戻る。
で求められる降温時の寸法変化である。すなわち反りの原因となる降温時の寸法変化率を線熱膨張係数とし、この値が30ppm/K以下であることが望ましい。なお、本発明のフレキシブルプリント基板の絶縁材として使用されるポリエステルイミド膜の、100℃から200℃までの昇温時の線熱膨張係数は、降温時のものと同様の寸法変化率を示す。降温後、フィルムは昇温出発位置に戻る。
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
1.ポリエステルイミド前駆体溶液の調製、イミド化およびポリエステルイミド膜特性の評価
尚、下記例における分析値は以下の方法により求めた。
固有粘度
0.5重量%のポリエステルイミド前駆体のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
尚、下記例における分析値は以下の方法により求めた。
固有粘度
0.5重量%のポリエステルイミド前駆体のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
ガラス転移温度
動的粘弾性測定により、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分における損失ピークから求めた。
動的粘弾性測定により、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分における損失ピークから求めた。
5%重量減少温度
ポリエステルイミド膜の熱重量変化を、昇温速度10℃/分で測定し、重量が5%減少した温度を求めた。
ポリエステルイミド膜の熱重量変化を、昇温速度10℃/分で測定し、重量が5%減少した温度を求めた。
線熱膨張係数
熱機械分析により、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、100〜200℃の範囲での平均値として線熱膨張係数を求めた。
熱機械分析により、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、100〜200℃の範囲での平均値として線熱膨張係数を求めた。
複屈折
ポリエステルイミド膜に平行な方向(nin)と垂直な方向(nout)の屈折率をアッベ屈折計(ナトリウムランプ使用、波長589nm)で測定し、これらの屈折率の差から複屈折(Δn=nin−nout)を求めた。
ポリエステルイミド膜に平行な方向(nin)と垂直な方向(nout)の屈折率をアッベ屈折計(ナトリウムランプ使用、波長589nm)で測定し、これらの屈折率の差から複屈折(Δn=nin−nout)を求めた。
誘電率、誘電正接
誘電率および誘電正接は、直径5cmの円形に切り出したポリエステルイミド膜に金を蒸着して電極パターンを形成したもの作製し、これをアジレントテクノロジー社製誘電体測定用電極16451Bではさみ、アジレントテクノロジー社製、高精度LCRメータ4285Aに接続して相対湿度46%で測定した。
更にポリエステルイミド膜の平均屈折率〔nav=(2nin+nout)/3〕に基づいて、次式により1MHzにおける誘電率(ε)を算出した。ε=1.1×nav 2
誘電率および誘電正接は、直径5cmの円形に切り出したポリエステルイミド膜に金を蒸着して電極パターンを形成したもの作製し、これをアジレントテクノロジー社製誘電体測定用電極16451Bではさみ、アジレントテクノロジー社製、高精度LCRメータ4285Aに接続して相対湿度46%で測定した。
更にポリエステルイミド膜の平均屈折率〔nav=(2nin+nout)/3〕に基づいて、次式により1MHzにおける誘電率(ε)を算出した。ε=1.1×nav 2
機械的特性
ポリエステルイミド膜のヤング率、破断強度および破断伸びは、30mm×3mmの試験片について、東洋ボールドウィン社製、テンシロンを用い、8mm/分の引張速度で引張試験を実施して求めた。
ポリエステルイミド膜のヤング率、破断強度および破断伸びは、30mm×3mmの試験片について、東洋ボールドウィン社製、テンシロンを用い、8mm/分の引張速度で引張試験を実施して求めた。
(例1)
よく乾燥した攪拌機付三口フラスコ中、ヒドロキノン20mmol(2.2021g)を無水N,N−ジメチルホルムアミド50mLと無水ピリジン200mmol(16mL)の混合溶媒に溶解し、反応容器をセプタムキャップでシールした。氷浴中で冷却しながらこの溶液に、トリメリット酸無水物クロリド40mmol(8.4221g)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(51mL)溶液をシリンジにて徐々に滴下し、更に室温で数時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をエバポレーターで濃縮し、水中に滴下して沈殿物を得た。これにより一部加水分解を受けて開環するので、閉環するために得られた粗生成物を200℃で24時間真空乾燥後、1,4−ジオキサンより再結晶した。濾別した結晶を更に200℃で24時間真空乾燥した。赤外吸収スペクトルにより目的のテトラカルボン酸二無水物が得られ、熱閉環も完全に行われたことが確認した。
よく乾燥した攪拌機付三口フラスコ中、ヒドロキノン20mmol(2.2021g)を無水N,N−ジメチルホルムアミド50mLと無水ピリジン200mmol(16mL)の混合溶媒に溶解し、反応容器をセプタムキャップでシールした。氷浴中で冷却しながらこの溶液に、トリメリット酸無水物クロリド40mmol(8.4221g)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(51mL)溶液をシリンジにて徐々に滴下し、更に室温で数時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をエバポレーターで濃縮し、水中に滴下して沈殿物を得た。これにより一部加水分解を受けて開環するので、閉環するために得られた粗生成物を200℃で24時間真空乾燥後、1,4−ジオキサンより再結晶した。濾別した結晶を更に200℃で24時間真空乾燥した。赤外吸収スペクトルにより目的のテトラカルボン酸二無水物が得られ、熱閉環も完全に行われたことが確認した。
(例2)
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中に、4−アミノ安息香酸4’−アミノフェニル(APAB)10mmolを入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した後、この溶液に例1で得られたテトラカルボン酸二無水物粉末10mmolを徐々に加えた。同一の溶媒で適宜希釈しながら室温で48時間撹拌し、透明、均一で粘稠なポリエステルイミド前駆体溶液を得た。
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中に、4−アミノ安息香酸4’−アミノフェニル(APAB)10mmolを入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した後、この溶液に例1で得られたテトラカルボン酸二無水物粉末10mmolを徐々に加えた。同一の溶媒で適宜希釈しながら室温で48時間撹拌し、透明、均一で粘稠なポリエステルイミド前駆体溶液を得た。
このポリエステルイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、極めて高い溶液貯蔵安定を示した。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃、0.5重量%の濃度でオストワルド粘度計にて測定したポリエステルイミド前駆体の固有粘度は2.81dL/gと、極めて高重合体であった。
このポリエステルイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、1時間で乾燥して得たポリイエステルミド前駆体膜を基板上、減圧下250℃で1時間、更に300℃で1時間、熱イミド化を行い、基板から剥がした後、最後に350℃で1時間熱処理して、膜厚20μmの透明なポリエステルイミド膜を得た。
このポリエステルイミド膜は180°折曲げ試験によっても破断せず、靭性を示した。このポリエステルイミド膜について動的粘弾性測定(室温〜500℃まで)を行った結果、明瞭なガラス転移点は観測されなかった。この結果より寸法安定性が極めて高いことがわかった。線熱膨張係数は3.3ppm/Kと、シリコン基板と同等の極めて低い値が得られた。極めて高い複屈折値(Δn=0.1990)より、この結果はポリエステルイミド鎖の高度な面内配向によるものと考えられる。吸水率は0.75%と、通常のポリイミド市販品(吸水率2.9%)と比べてはるかに低い値が得られた。また、高精度LCRメータにて周波数1MHzで測定した誘電率は3.22であり、平均屈折率より見積もった誘電率3.26に近い値が得られた。また、誘電正接は0.025と比較的低い値であった。引張特性は、ヤング率が7.1GPa、破断強度が0.22GPaと、極めて高弾性、高強度であり、破断伸びは11%であった。5%重量減少温度は、窒素中で471℃、空気中で452℃であった。このように本ポリエステルイミドは、比較的低い誘電率および誘電正接、シリコン基板に匹敵する極めて低い線熱膨張係数、極めて高いヤング率、および非常に低い吸水率を示し、且つ十分な膜靭性を併せ持つ、フレキシブルプリント基板の絶縁材に要求される特性を満足する、最適な材料であった。
(例3)
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中に、APAB7mmolおよび4,4’−オキシジアニリン3mmolを入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した後、この溶液に例1で得られたテトラカルボン酸二無水物粉末10mmolを徐々に加えた。同一の溶媒で適宜希釈しながら室温で28時間撹拌し、透明、均一で粘稠なポリエステルイミド前駆体溶液を得た。
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中に、APAB7mmolおよび4,4’−オキシジアニリン3mmolを入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した後、この溶液に例1で得られたテトラカルボン酸二無水物粉末10mmolを徐々に加えた。同一の溶媒で適宜希釈しながら室温で28時間撹拌し、透明、均一で粘稠なポリエステルイミド前駆体溶液を得た。
このポリエステルイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、極めて高い溶液貯蔵安定を示した。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃、0.5重量%の濃度でオストワルド粘度計にて測定したポリエステルイミド前駆体の固有粘度は1.08dL/gと、高重合体であった。
このポリエステルイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、1時間で乾燥して得たポリイエステルミド前駆体膜を基板上、減圧下250℃で1時間、更に300℃で1時間、熱イミド化を行い、基板から剥がした後、最後に350℃で1時間熱処理して、膜厚20μmの透明なポリエステルイミド膜を得た。
このポリエステルイミド膜は180°折曲げ試験によっても破断せず、靭性を示した。このポリエステルイミド膜について動的粘弾性測定(室温〜500℃まで)を行った結果、ガラス転移点は395℃であった。また、ガラス転移温度以上でもポリエステルイミド膜の貯蔵弾性率の低下は殆ど見られず寸法安定性が高いことがわかった。線熱膨張係数は14.8ppm/Kと、銅基板にほぼ等しい値が得られた。極めて高い複屈折値(Δn=0.1699)より、この結果はポリエステルイミド鎖の高度な面内配向によるものと考えられる。吸水率は0.66%と、極めて低い値が得られた。また、平均屈折率より見積もった誘電率は3.20であった。引張特性は、ヤング率が6.28GPa、破断強度が0.295GPaと、極めて高弾性、高強度であり、破断伸びは36%であった。5%重量減少温度は、窒素中で487℃、空気中で485℃であった。このように本ポリエステルイミドは、比較的低い誘電率、銅基板にほぼ等しい低線熱膨張係数、極めて高いガラス転移温度、非常に高いヤング率および極めて低い吸水率を示し、且つ十分な膜靭性を併せ持つ、フレキシブルプリント基板の絶縁材に要求される特性を満足する、最適な材料であった。
(比較例1)
参考例1に従い、2,2′−ビフェノールと二倍モルのトリメリット酸無水物クロリドより、エステル基含有テトラカルボン酸二無水物を合成した。この酸二無水物とp−フェニレンジアミンより、実施例1に記載の方法に従ってポリエステルイミド前駆体を重合した。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃、0.5重量%の濃度でオストワルド粘度計にて測定したポリエステルイミド前駆体の固有粘度は0.53dL/gであった。このポリエステルイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、2時間で乾燥して得たポリエステルイミド前駆体膜を基板上で減圧下300℃で1時間、熱イミド化を行い、膜厚20μmの透明で強靭なポリエステルイミド膜を得た。
参考例1に従い、2,2′−ビフェノールと二倍モルのトリメリット酸無水物クロリドより、エステル基含有テトラカルボン酸二無水物を合成した。この酸二無水物とp−フェニレンジアミンより、実施例1に記載の方法に従ってポリエステルイミド前駆体を重合した。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃、0.5重量%の濃度でオストワルド粘度計にて測定したポリエステルイミド前駆体の固有粘度は0.53dL/gであった。このポリエステルイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、2時間で乾燥して得たポリエステルイミド前駆体膜を基板上で減圧下300℃で1時間、熱イミド化を行い、膜厚20μmの透明で強靭なポリエステルイミド膜を得た。
しかしながらこのポリエステルイミド膜の線熱膨張係数は66ppm/Kと高く、本発明に係る要求特性を満足しなかった。これは酸二無水物中の2,2′−ビフェニル結合がパラ結合ではなく、立体障害によりベンゼン環同士が大きくねじれた結果、ポリエステルイミド鎖に大きな折曲りが生じて、熱イミド化時の自発的面内配向が殆ど誘起されなかったことが原因である。
2.ポリエステルイミド前駆体溶液の調製、該前駆体溶液を用いたフレキシブルプリント基板の製造およびその特性の評価
尚、下記実施例1における分析値は以下の方法により求めた。
尚、下記実施例1における分析値は以下の方法により求めた。
接着力
接着力はテンシロンテスターを用い、幅10mm・厚さ25μmの銅張り品の樹脂側を両面テープによりアルミ板に固定し、銅を180℃方向に剥離して求めた。
接着力はテンシロンテスターを用い、幅10mm・厚さ25μmの銅張り品の樹脂側を両面テープによりアルミ板に固定し、銅を180℃方向に剥離して求めた。
線熱膨張係数
線熱膨張係数はイミド化反応が十分終了した試料を用い、サーモメカニカルアナライザー(TMA)を用いて行った。銅箔上にポリエステルイミド前駆体溶液を塗布し、イミド化させた後、銅箔を溶解除去して得られる、膜厚25μmのフィルムを250℃に昇温させた後、10℃/分で冷却して240℃から100℃までの平均の線熱膨張係数を下記式に従って算出した。
線熱膨張係数はイミド化反応が十分終了した試料を用い、サーモメカニカルアナライザー(TMA)を用いて行った。銅箔上にポリエステルイミド前駆体溶液を塗布し、イミド化させた後、銅箔を溶解除去して得られる、膜厚25μmのフィルムを250℃に昇温させた後、10℃/分で冷却して240℃から100℃までの平均の線熱膨張係数を下記式に従って算出した。
機械的特性
線熱膨張係数の測定の場合と同様にして得られたポリエステルイミド膜を用いて、弾性率、破断強度、伸度を、島津製作所製引張り試験機により測定した。耐折曲げ試験は幅10mm・厚さ25μmの銅張り品の試料を用い、東洋精機製作所MIT耐揉疲労試験機(チャック0.38mmR、荷重1Kg)により測定した。
線熱膨張係数の測定の場合と同様にして得られたポリエステルイミド膜を用いて、弾性率、破断強度、伸度を、島津製作所製引張り試験機により測定した。耐折曲げ試験は幅10mm・厚さ25μmの銅張り品の試料を用い、東洋精機製作所MIT耐揉疲労試験機(チャック0.38mmR、荷重1Kg)により測定した。
(実施例1)
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中に、p−フェニレンジアミン3.5146g(0.0325モル)、4,4′−オキシジアニリン3.5042g(0.0175モル)を入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N′−ジメチルアセトアミド69.84gを加えて溶解した。この溶液に参考例1で得られたテトラカルボン酸二無水物粉末22.9165g(0.05モル)を徐々に加える。約30分反応させた後、N,N′−ジメチルアセトアミド49.89gを追加して室温下24時間攪拌し、透明、均一で粘稠なポリエステルイミド前駆体溶液を得た。
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中に、p−フェニレンジアミン3.5146g(0.0325モル)、4,4′−オキシジアニリン3.5042g(0.0175モル)を入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N′−ジメチルアセトアミド69.84gを加えて溶解した。この溶液に参考例1で得られたテトラカルボン酸二無水物粉末22.9165g(0.05モル)を徐々に加える。約30分反応させた後、N,N′−ジメチルアセトアミド49.89gを追加して室温下24時間攪拌し、透明、均一で粘稠なポリエステルイミド前駆体溶液を得た。
得られたポリエステルイミド前駆体溶液を、20μm厚の電解銅箔に塗布し、130℃、10分間乾燥して得たポリエステルイミド前駆体膜を、減圧下、200℃、5分間、更に300℃、5分間熱イミド化を行い、銅張りフレキシブルプリント基板を得た。
得られた銅張りフレキシブルプリント基板の接着力は、0.7Nであり、ハンダ浴浸漬後も何ら変化を示さなかった。また、ハンダ浴浸後においても、カール、ねじれ、反り等の変化は観察されなかった。銅箔を溶解除去したフィルム(25μm厚)の線熱膨張係数は16ppm/Kであった。弾性率は3.8GPa、破断強度は160Mpa、伸度は7.2%であり、耐折曲げ試験は5万回以上であった。また、銅張り品のエッチング前後の寸法変化率は0.1%未満であった。なお、吸水率は、上記例1−3と同様な方法により測定した結果、1.0%であった。
本発明のフレキシブルプリント基板は、ポリエステルの有している機械的物性を保持しており、従来のポリイミドを使用したときのように、導体と積層したときにカール、ねじれ、反り等がない。また、接着剤を介することなく、ポリエステルイミド前駆体溶液を直接導体上に塗布するという製造方法が可能であり、従来のような予め作製したフィルムと導体とを接着剤で張り合わせる方法に比べてその製造工程数が半分以下に減少し、且つ低温硬化性接着剤の使用による耐熱性の大幅な低下や難燃性の低下という問題が生じない。さらに、本発明のフレキシブルプリント基板は、絶縁体と導体との接着力が高く、また導体をエッチングするときの寸法変化率やハンダ付の際の加熱収縮率も非常に小さく、信頼性の高い回路材料となる。また、吸水率が大きいと乾燥なしでは導体と絶縁材の間で脹れや剥れが生じるが、吸水率が低いためにハンダ付に際してこのような問題が起こらず、また、予備乾燥も不要である。また、線膨張係数が低いため多層基板化やリジッド基板との複合化等も容易となる。
すなわち、本発明のフレキシブルプリント基板は、熱履歴を加えてもカール、ねじれ、反り等がなく、且つ十分な耐熱性、寸法安定性、接着性、耐折曲げ性等を有し、しかも吸水率が小さく信頼性が高いものである。また、製造工程が非常に簡略化でき工業材料として極めて有用である。
Claims (5)
- 絶縁材が、5000回以上の耐折曲げ性と、3.3以下の誘電率と、30ppm/K以下の線熱膨張係数とを併せ持ち、且つ低吸水率である、請求項1に記載のフレキシブルプリント基板。
- 導体と絶縁材とが、接着剤層を介さずに直接接している、請求項1または2のいずれかに記載のフレキシブルプリント基板。
- 基板の導体が銅箔である、請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブルプリント基板。
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Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2006120954A1 (ja) * | 2005-05-09 | 2006-11-16 | Tokyo Institute Of Technology | 蛍光材料 |
JP2011221006A (ja) * | 2010-03-23 | 2011-11-04 | Tokyo Electron Ltd | ウェハ型温度検知センサおよびその製造方法 |
US9023974B2 (en) | 2007-01-26 | 2015-05-05 | Honshu Chemical Industry Co., Ltd. | Ester group-containing tetracarboxylic acid dianhydride, novel polyesterimide precursor derived therefrom, and polyesterimide |
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US20170009017A1 (en) * | 2015-07-07 | 2017-01-12 | Microcosm Technology CO, LTD. | Polymide resin, thin film thereof and method for manufacturing the same |
KR20190095556A (ko) | 2012-09-19 | 2019-08-14 | 혼슈우 카가쿠고교 가부시키가이샤 | 폴리이미드 및 그의 성형체 |
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2004
- 2004-11-10 JP JP2004326778A patent/JP2006013419A/ja active Pending
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