JP4603929B2 - エステルイミドオリゴマー、その熱硬化物およびこれらの製造方法 - Google Patents

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本発明は、優れた加工性即ち有機溶媒溶解性および熱可塑性を有する新規なエステルイミドオリゴマー、高靭性および高ガラス転移温度を併せ持つその熱硬化物、ならびにこれらの製造方法に関する。
ポリイミドは優れた耐熱性のみならず、耐薬品性、耐放射線性、電気絶縁性、優れた機械的性質などの特性を併せ持つことから、フレキシブルプリント配線回路用基板、テープオートメーションボンディング用基材、半導体素子の保護膜、集積回路の層間絶縁膜等、様々な電子デバイスに現在広く利用されている。
一般にポリイミドは、無水ピロメリット酸等の芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンとをジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性有機溶媒中で等モル反応させて得られる高重合度のポリイミド前駆体を、膜などに成形し加熱硬化して得られる。
しかしながらポリイミドの耐熱性を保持するためには、分子設計上、骨格構造を剛直にせざるを得ず、結果としてポリイミドは有機溶媒に殆ど不溶で、ガラス転移温度以上でも溶融しないため、ポリイミドそのものを成型加工することは通常容易ではない。
従って通常、アミド系有機溶媒に高い溶解性を示すポリイミド前駆体を経由する方法が用いられる。具体的にはポリイミド前駆体の非プロトン性有機溶媒溶液を金属基板上に塗布・乾燥後、250℃ないし350℃という高温で加熱し、脱水閉環(イミド化)反応せしめることでポリイミド膜を形成する。
しかしながら、このようにイミド化反応温度が非常に高いため、いくつかの分野では上記製膜工程を適用することができない場合がある。例えば液晶ディスプレーのカラー化に不可欠なカラーフィルターの耐熱温度は200℃程度であり、ポリイミド前駆体のイミド化を経由して液晶配向膜用ポリイミド膜を形成しようとしても、この温度では塗布膜のイミド化反応を完結することができない。
上記分野には有機溶媒に可溶なポリイミドが適用されている。この場合、ポリイミドを有機溶媒に溶解した溶液(ワニス)を基板に塗布後、単に溶媒を揮発させるだけでよいため、イミド化温度よりもはるかに低い温度で膜を形成することが可能である。例えば溶媒として、沸点が高く揮発しにくいN−メチル−2−ピロリドンを用いた場合でも150℃ないし200℃での処理で十分である。
前駆体を経由する通常のポリイミド製膜工程では、金属基板とポリイミド膜の積層体において発生する熱応力の問題は深刻である。高温でのイミド化反応の際には熱応力は緩和された状態にあるが、積層体をイミド化温度から室温へ冷却する過程で熱応力が発生し、金属基板とポリイミド膜との間の線熱膨張係数の差が大きいほど、またイミド化温度が高いほど増加する。
熱応力低減の方策として、ポリイミドの低熱膨張化が挙げられる。殆どのポリイミドでは線熱膨張係数が通常50〜100ppm/Kの範囲にあり、金属基板例えば銅の線熱膨張係数17ppm/Kよりもはるかに大きいため、銅の値に近い、およそ20ppm/K以下を示す低熱膨張ポリイミドの研究開発が行われている。
別の方策は熱処理温度の低下を図るものである。その一つはイミド化触媒をポリイミド前駆体膜中に分散させ、イミド化反応温度そのものを低下させる試みであり、もう一つは可溶性ポリイミドを用いる方法である。
前者の低温硬化型ポリイミド系におけるイミド化触媒としては、3−ヒドロキシ安息香酸や4−ヒドロキシフェニル酢酸等がイミド化温度を大きく低下させるのに有効であり、無水ピロメリット酸と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから成るポリイミド前駆体系においても180℃程度でほぼイミド化反応が完結することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、この技術ではポリイミド前駆体膜中に大量のイミド化触媒(繰り返し単位に対して2倍モル)を添加する必要があるため、膜純度や膜減りの問題が生じる。更に、低温硬化(イミド化)して得られたポリイミド膜はその硬化温度以上の環境に置かれると熱変形や著しい寸法変化が起る恐れがある。
一方、後者の有機溶媒可溶性ポリイミドでは、前述のように製膜にそれほど高温処理を必要としないため、たとえ膜の線熱膨張係数がそれほど低くなくても、製膜温度から室温まで冷却する過程での膜の収縮量はそれほど大きくはならず、残留応力をある程度抑えることができる。
ポリイミド前駆体溶液を銅等の基板に塗布・イミド化する製膜工程では、ポリイミド前駆体膜中に銅がマイグレーションし、電気特性が低下するといった問題がある。これを防ぐためには銅基板の表面処理を施さねばならない。これに対して可溶性ポリイミドでは銅のマイグレーションの心配はないため、銅の表面処理等の余計な工程を必要としない。
また前駆体を経由するポリイミド膜作製法では、イミド化反応に伴う脱離成分が発生するため、およそ膜厚100μmを越える厚いフィルムを作製することは困難である。一方、可溶性ポリイミドを用いる製膜工程ではイミド化反応を伴わないため、多段階塗工を行えば厚さ1mmを越えるポリイミドシートでも作製可能である。
フレキシブルプリント配線基板(FPC)にポリイミドが用いられているが、機械的強度が必要な部分にはガラス/エポキシ等の複合材料を用いた裏打ち材の使用が不可欠となっている。これはFPCに用いるポリイミドフィルムの製造工程上、膜厚の制限があるためである。上述のように可溶性ポリイミドを用いて厚いポリイミドシートの製造が可能になれば、裏打ち工程の省略、結果としてFPCの小型化を図ることができる。
しかしながらポリイミドに有機溶媒可溶性を付与しようと企て、主鎖へ屈曲結合の導入、あるいは側鎖として嵩高い置換基を導入すると、一般にガラス転移温度が大きく低下することになる。従って、250℃以上のガラス転移温度を有し、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性有機溶媒に高い濃度で溶解する、実用上有益なポリイミドを得ることは分子設計上容易ではない。
例えば屈曲結合およびアルキル置換基を含有するジアミンをモノマーとして用いると、有機溶媒に可溶なポリイミドが得られる場合がある。しかしながら、このようなジアミンを用いて重合を行うと、置換基の立体障害により重合反応性が著しく低下して、しばしば十分高い重合度のポリイミド前駆体が得られず、ポリイミド膜の靭性に問題が生ずる。また、アルキル置換基の存在により熱酸化安定性が低下する恐れがある。
またトリフルオロメチル置換基の導入はポリイミドの分子間力を弱め、溶解性向上に大きく寄与することが知られている。例えばテトラカルボン酸二無水物として4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物を用いると、重合反応時の立体障害もなく、高重合度のポリイミド前駆体を得ることができる。しかしながらフッ素化モノマーの使用は製造コストの点で不利である。
ポリイミド前駆体重合時に末端封止剤を用いることにより、ポリイミドの重合度が低くなるように調節すると、一般に溶解性や熱可塑性が向上するが、同時にガラス転移温度の減少や膜靭性の急激な低下を伴う。従ってFPC等の膜靭性を要求される分野では、分子量制御による加工性付与のアプローチはあまり好ましくない。
このように溶解性ポリイミドは塗膜形成工程上様々な利点を有するが、これに加え、ポリイミド膜が熱可塑性も示すならば、より広範な分野への応用が期待される。例えばポリイミド/銅積層板(銅張り板)作製時の接着剤やFPCおける回路保護膜に適用することができる。
近年、FPCにおける電気回路配線の高密度化に伴い、ポリイミド膜自身の高度な寸法安定性が求められるようになってきた。このような高密度配線用途では、これまでアクリル系あるいはエポキシ系接着剤等を介してポリイミドフィルムを銅箔と張り合わせる、3層型銅張り板が主流であったが、銅箔上に直接ポリイミド前駆体を塗布・熱硬化(キャスト法)する2層型、或いは耐熱性の熱可塑性ポリイミドを接着剤として用いる擬似2層型銅張板へと移行しつつある。
もし溶解性、熱可塑性、高ガラス転移温度、高靭性を同時に満足するポリイミドがあれば、銅箔に低熱膨張性ポリイミド膜をキャスト法により形成した後、その上に溶解性ポリイミド溶液を塗布・乾燥し、これと銅箔を熱圧着することで、容易に両面銅張板を作製することが可能となる。
これはあらかじめ銅箔上に溶解性ポリイミド膜を形成しておいて、銅/低熱膨張性ポリイミド膜積層体のポリイミド面に張り合わせても同様に作製できる。ここで溶解性ポリイミドは従来の接着剤同様、溶解性ポリイミド溶液の塗布厚即ち、接着層の厚みを容易に制御できる点で有利である。
しかしながら有機溶媒溶解性および熱可塑性を同時に発現させるためには、ポリマー骨格への屈曲構造や置換基の導入に加えて、分子量を制御する必要もあり、ガラス転移温度が大きく低下する恐れがある。例えば有機溶媒溶解性および熱可塑性を示すポリイミドとして、ULTEM1000(General Electric社)が知られているが、ガラス点転移温度が215℃と比較的低く、ハンダリフロー工程時の耐熱性に問題があるため、FPC用途に適用不可である。
有機溶媒に対する高い溶解性、高い熱可塑性および高ガラス転移温度を両立させるため、本発明者らは、2,2’−ビフェニレン結合に着目した(特願2004−115129号参照)。もしその異性体である4,4’−ビフェニレン結合をポリイミド主鎖中に導入すると、骨格が剛直になり、ガラス転移は大きく増加することが期待されるが、その反面、ポリマー鎖どうしが密に充填しやすいため、分子間相互作用が強まり結晶性が増加し、溶解性は極端に低下する。
これに対して2,2’−ビフェニレン結合では、ビフェニルのオルト位に連結されているため、立体障害により、ビフェニル部位の分子平面が相互に大きくねじれ、主鎖骨格に大きな折れ曲がりを生ずる。これにより、分子間相互作用が大きく弱まり、溶解性が飛躍的に向上することが期待される。また、この立体障害は同時にビフェニル結合の周りの内部回転を妨げるため、高いガラス転移温度を保持するものと考えられる。
2,2’−ビフェニレン結合を有するモノマーは、2,2’−ビフェノールとトリメリット酸無水物クロリドから容易に合成することができ、得られたモノマーも高純度である。しかも使用する原料は安価に入手でき、ポリイミドの製造コストの点で有利である。
エーテル結合を介して2,2’−ビフェニレン単位を含有する酸二無水物、即ち、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物から誘導されたポリイミドが公表されている(例えば、非特許文献2参照)。例えば、この酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから得られたポリイミドはN−メチル−2−ピロリドンに可溶であるが、ガラス転移温度は213℃とそれほど高くならない。これはエーテル結合の内部回転障壁が低いためである。
これに対して本発明らによる前記特許出願に係るポリイミドは、2,2’−ビフェニレン単位をより内部回転しにくいエステル結合を介して導入しているため、より高いガラス転移温度を示す。
さらに、エステル結合を介して2,2’−ビフェニレン単位を含有する酸二無水物、即ち、2,2’−ジ(4−トリメリトイルオキシ)ビフェニル二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから誘導されたポリイミドが報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、当該特許文献には、2,2’−ビフェニレン構造を採用することにより、ポリイミドが、有機溶媒に対する高い溶解性を示すとともに、熱可塑性であって、且つ高いガラス転移温度および高靭性といった成型加工における優れた特性を達成しうることについて、何ら開示されていない。
2,2’−ジ(4−トリメリトイルオキシ)ビフェニル二無水物とパラフェニレンジアミンから誘導されるポリエステルイミドはN−メチル−2−ピロリドンに可溶であり、ガラス転移点は243℃と、既存の可溶性・熱可塑性ポリイミドに比較して優れた特性を示すことが報告されている(例えば非特許文献3参照)。
しかしながら、上記ポリエステルイミドを上記産業分野に応用するためには、熱加工温度の低下、溶融流動性の改善、ガラス転移温度の向上が更に求められるが、実用的な材料は知られていない。
工業材料,Vol.43,No.6 ,(1995) ,p.48 ポリイミド最近の進歩1994,今井,柿本編,レイテック,1994,p.25 高分子学会予稿集,Vol.53,1629(2004) 米国特許第3,355,427号
本発明は、優れた加工性即ち有機溶媒溶解性および熱可塑性を有する新規なエステルイミドオリゴマー、十分な靭性および高ガラス転移温度を併せ持つ、上記産業分野において実用上有益なその熱硬化物、ならびにこれらの製造方法を提供するものである。
以上の問題を鑑み、鋭意研究を積み重ねた結果、式(2)で表されるエステルポリイミドオリゴマーおよびその熱硬化物が上記の要求特性を満たすことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に示すものである。
1) 式(1):
Figure 0004603929
(式中、Aは、二価の芳香族基または脂肪族基を表す)で示される反復単位を有し、かつその末端が、熱架橋性基で封止されていることを特徴とする、エステルイミドオリゴマー前駆体。
2) 式(2):
Figure 0004603929
(式中、Aは、二価の芳香族基または脂肪族基を表す)で示される反復単位を有し、かつその末端が、熱架橋性基で封止されていることを特徴とする、エステルイミドオリゴマー。
3) 式(2)に記載のエステルイミドオリゴマーを、熱架橋反応させることによって得られる熱硬化物。
4) 式(1)に記載のエステルイミドオリゴマー前駆体を、加熱あるいは脱水試薬によって脱水環化反応させることを特徴とする、式(2)に記載のエステルイミドオリゴマーの製造方法。
5) 式(2)に記載のエステルイミドオリゴマーを含有するワニス。
本発明の式(2)で示される反復単位を有し、かつその末端が、熱架橋性基で封止されていることを特徴とする、エステルイミドオリゴマーでは、同じテトラカルボン酸残基とジアミン残基から構成されている対応するポリエステルイミドよりも熱加工温度の低下、溶融流動性の改善、および有機溶媒溶解性の向上が達成され、かつその熱硬化物は、靭性およびガラス転移温度の向上が達成されるため、プリント配線基板などへの実用的な材料として期待される。
以下に本発明を詳細に説明する。
まず式(1)および(2)で示される反復単位を有し、かつその末端が、熱架橋性基で封止されていることを特徴とする、エステルイミドオリゴマー前駆体およびエステルイミドオリゴマーについて説明する。式(1):
Figure 0004603929
および式(2):
Figure 0004603929
において、Aは、二価の芳香族基または脂肪族基を表す。Aは、具体的には、式(1)および(2)で示される反復単位を構成する、芳香族または脂肪族ジアミン成分の残基である、二価の芳香属基または脂肪族基を表す。
本発明に使用可能な芳香族ジアミン成分としては、特に限定されないが、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p−ターフェニレンジアミン等が例として挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
本発明に使用可能な脂肪族ジアミン成分としては特に限定されないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。高い熱安定性や高いガラス転移温度を保持するために、脂肪族ジアミンとして1,4−ジアミノシクロヘキサンのような脂環式ジアミンを用いた方が好ましい。
式(1)および(2)で示される反復単位の重合度は、特に限定されないが、例えば1〜40の範囲であり、好ましくは5〜20の範囲である。
本発明の式(1)および(2)で示される反復単位を有するエステルイミドオリゴマー前駆体およびエステルイミドオリゴマーにおいて、その末端を封止する、熱架橋性基とは、熱架橋性基を有するジカルボン酸無水物成分またはモノアミン成分の残基である基を意味する。使用可能な前記ジカルボン酸無水物成分としては、熱架橋反応性基、例えば、炭素−炭素不飽和結合を有するジカルボン酸無水物であれば特に限定されないが、具体的には、ナジック酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、4−フェニルエチニルフタル酸無水物、4−エチニルフタル酸無水物、4−ビニルフタル酸無水物等が例として挙げられる。
また、使用可能な前記モノアミン成分としては、熱架橋性基、例えば、炭素−炭素不飽和結合を有するモノアミン化合物であれば特に限定されないが、具体的には、4−フェニルエチニルアニリン、4−エチニルアニリン、3−エチニルアニリン、2−エチニルアニリン、4−アミノスチレン、3−アミノスチレン等が例として挙げられる。
式(1)で示される反復単位を有するエステルイミドオリゴマー前駆体の合成は、具体的には以下のように行う。まず、式(1)で示される反復単位を構成する、テトラカルボン酸残基を誘導するテトラカルボン酸二無水物成分である2,2’−ジ(4−トリメリトイルオキシ)ビフェニル二無水物:
Figure 0004603929
と、前記のジアミン成分や熱架橋性基成分などを用意する。テトラカルボン酸二無水物成分は、例えば、2,2’−ビフェノールとトリメリット酸無水物クロリドとから、公知の方法に従い合成することができ、その詳細は、例えば、特願2004−115129号に記載されている。一方、前記のジアミン成分や熱架橋性基成分などは、例えばAldrich社などから試薬として入手可能であるか、または入手可能な試薬から公知の方法に従い合成することができる。
本発明の式(1)で示される反復単位を有し、かつその末端が熱架橋性基で封止されていることを特徴とする、エステルイミドオリゴマー前駆体の合成の一態様として、熱架橋性基成分が、前記ジカルボン酸無水物成分である場合について以下に概説する。すなわち、下記式(1’):
Figure 0004603929
(式中、Aは、二価の芳香族基または脂肪族基を表し、Bは、熱架橋性基を有するジカルボン酸無水物の残基であり、nは、重合度である)で示されるエステルイミドオリゴマー前駆体の合成の場合、まずジアミン成分(X+(Y/2)mol)を重合溶媒に溶解し、この溶液に所定量の2,2’−ジ(4−トリメリトイルオキシ)ビフェニル二無水物粉末(X mol)および前記ジカルボン酸無水物(Y mol)を徐々に添加し、メカニカルスターラーを用い、室温で0.5〜24時間攪拌する。この際、反応溶液中の各モノマー濃度の合計は、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。このモノマー濃度範囲で重合を行うことにより均一なエステルイミドオリゴマー前駆体溶液を得ることができる。前記ジカルボン酸無水物の含有量=((Y/2)/(X+(Y/2))×100(%)は、2〜50%の範囲であり、より好ましくは3〜40%の範囲であり、さらに好ましくは4〜40%の範囲である。
このエステルイミドオリゴマー前駆体溶液から、下記に述べるような常法により、本発明の式(2)で示される反復単位を有し、かつその末端が熱架橋性基で封止されていることを特徴とする、エステルイミドオリゴマーの一態様として、下記式(2’):
Figure 0004603929
で示されるエステルイミドオリゴマーを得ることができる。
また、本発明の式(1)で示される反復単位を有し、かつその末端が熱架橋性基で封止されていることを特徴とする、エステルイミドオリゴマー前駆体の合成の別の一態様として、熱架橋性基成分が、前記モノアミン成分である場合について以下に概説する。すなわち、下記式(1”):
Figure 0004603929
(式中、Aは、二価の芳香族基または脂肪族基を表し、Dは、熱架橋性基を有するモノアミン成分の残基であり、nは、重合度である)で示されるエステルイミドオリゴマー前駆体の合成の場合、まず、ジアミン成分(X’mol)と前記モノアミン(Y’mol)を重合溶媒に溶解し、この溶液に2,2’−ジ(4−トリメリトイルオキシ)ビフェニル二無水物粉末(X’+(Y’/2)mol)を徐々に添加し、メカニカルスターラーを用い、室温で0.5〜24時間攪拌する。この際、反応溶液中の各モノマー濃度の合計は、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。このモノマー濃度範囲で重合を行うことにより均一なエステルイミドオリゴマー前駆体溶液を得ることができる。熱架橋反応性モノアミンの含有量=((Y’/2)/(X’+(Y’/2))×100(%)は、2〜50%の範囲であり、より好ましくは3〜40%の範囲であり、さらに好ましくは4〜40%の範囲である。
このエステルイミドオリゴマー前駆体溶液から、下記に述べるような常法により、本発明の式(2)で示される反復単位を有し、かつその末端が熱架橋性基で封止されていることを特徴とする、エステルイミドオリゴマーの一態様として、下記式(2”):
Figure 0004603929
で示されるエステルイミドオリゴマーを得ることができる。
重合溶媒としてはN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,2−ジメトキシエタン−ビス(2−メトキシエチル)エーテル、テロラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ピコリン、ピリジン、アセトン、クロロホルム、トルエン、キシレン等の非プロトン性溶媒および、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール等のプロトン性溶媒が使用可能である。またこれらの溶媒は単独でも、2種類以上混合して用いてもよい。
本発明に係るエステルイミドオリゴマー硬化物の要求特性の内、いくつかの特性を改善するために、2,2’−ジ(4−トリメリトイルオキシ)ビフェニル二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物成分を部分的に使用することができる。特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらを単独あるいは2種類以上用いてもよい。これらのテトラカルボン酸二無水物は、テトラカルボン酸二無水物の総量に対して、0〜50mol%の範囲で使用され、より好ましくは0〜40mol%である。
本発明に係るエステルイミドオリゴマー、その前駆体、およびこれらの硬化物の反応性および要求特性を著しく損なわない範囲で、熱架橋性基以外の反応性を持たない末端基を部分的に使用しても差し支えない。使用可能な末端封止剤としては特に限定されないが、無水フタル酸、3,4,5,6−テトラクロロ無水フタル酸、3,4,5,6−テトラフルオロ無水フタル酸、アニリン等が例として挙げられる。これらの非反応性末端基は末端基の総量に対して、0〜50mol%の範囲で使用され、より好ましくは0〜40mol%である。
ポリイミド前駆体の重合の際しばしば添加される高分子溶解促進剤、即ちリチウムブロミドやリチウムクロリドのような金属塩類は、本発明に係るエステルイミドオリゴマー前駆体重合反応では使用する必要がない。絶縁材料中に金属イオンが痕跡量でも残留すると、電子デバイスとしての信頼性を著しく低下させることから、特にそのような用途を指向する場合には、金属塩類の使用は好ましくない。
得られたエステルイミドオリゴマー前駆体溶液から、常法により固体状のエステルイミドオリゴマー前駆体を単離してもよいが、得られたエステルイミドオリゴマー前駆体溶液をそのままワニスとして、ガラス板、銅版、ステンレス板、アルミ板、シリコン板、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の基板上に塗布し、40℃〜180℃の温度で、0.5〜24時間乾燥させてもよい。得られたエステルイミドオリゴマー前駆体膜を、基板上で、空気中、窒素等の不活性ガス雰囲気中あるいは真空中、200℃〜430℃、好ましくは250℃〜400℃の温度で熱処理することでエステルイミドオリゴマー膜が得られる。更に後述するような脱水環化試薬中にエステルイミドオリゴマー前駆体膜を浸漬する方法によってもエステルイミドオリゴマー膜を得ることができる。
本発明に係るエステルイミドオリゴマーは可溶性であるため、上記のようにエステルイミドオリゴマー前駆体を合成した後、引き続き、その溶液を加熱還流してイミド化反応せしめ、均一なエステルイミドオリゴマー溶液を得ることができる。また、化学的にイミド化することもできる。即ちエステルイミドオリゴマー前駆体溶液を激しく攪拌しながら、これに無水酢酸のような脱水剤、およびピリジンあるいはトリエチルアミンのような塩基性触媒を滴下することで、均一なエステルイミドオリゴマー溶液が得られる。
γ−ピコリン等の塩基触媒、およびキシレンを含むm−クレゾールにモノマーを溶解し、副生成物である水を共沸除去しながら160℃で数時間加熱する方法(ワンポット重合法)によってもエステルイミドオリゴマー前駆体を経由しないでエステルイミドオリゴマーを合成することができる。
上記のように加熱還流、化学イミド化、あるいはワンポット法により得られたエステルイミドオリゴマー溶液を水やアルコール等の沈澱剤へ滴下することでエステルイミドオリゴマー粉末として取り出すことができる。このエステルイミドオリゴマー粉末あるいは熱イミド化によって得られたエステルイミドオリゴマー膜をN−メチル−2−ピロリドンのような非プロトン性有機溶媒に再溶解することで、均一なエステルイミドオリゴマー溶液を得ることもできる。
通常のポリイミドがほとんど有機溶媒に不溶であるのに対し、本発明のエステルイミドオリゴマーは、高い有機溶媒溶解性を有し、非プロトン性有機溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒に対し、25℃で、5重量%以上の溶解度を有する。具体的には、N−メチル−2−ピロリドンに対し、25℃で、5重量%以上、特には10重量%以上、特に好ましいものは20重量%以上の溶解度を有する。
N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃、0.5重量%の濃度で測定した本発明のエステルイミドオリゴマーの固有粘度は、0.05〜2.0dL/gの範囲であるのが好ましく、0.1〜1.0dL/gの範囲であるのがより好ましい。固有粘度が2.0dL/gを超えると溶融粘度が高くなりすぎて、所望する熱加工性(熱可塑性)を著しく損なう恐れがある。また、0.05dL/gを下回ると、エステルイミドオリゴマー単離工程の際、エステルイミドオリゴマーの粒子が小さすぎて濾過工程で長時間を要する恐れがある。
本発明のエステルイミドオリゴマーの溶液は、その前駆体溶液と同様、貯蔵安定性が極めて高いため、電子材料用途として好ましくないリチウムクロリドの如き金属塩溶解促進剤は、添加する必要がない。
得られたエステルイミドオリゴマー溶液を、前記と同様に、そのままワニスとして、ガラス板、銅版、ステンレス板、アルミ板、シリコン板、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の基板上に塗布し、100℃〜220℃の温度で、0.5〜24時間乾燥させ、溶媒を揮発させることによってエステルイミドオリゴマー膜を得ることもできる。
エステルイミドオリゴマー膜中には、必要に応じて酸化安定剤、末端封止剤、フィラー、シランカップリング剤、感光剤、光重合開始剤および増感剤等の添加物を混合しても差し支えない。
得られたエステルイミドオリゴマー膜を空気中、窒素中あるいは真空中230〜450℃、好ましくは250〜430℃で熱処理することで、基板上に靭性の高い硬化膜を形成することができる。例えばポリイミド/銅箔積層体のポリイミド面に、本発明に係るエステルイミドオリゴマー膜を形成し、その後オリゴマー膜面にもう一つの銅箔を同様な温度範囲で熱圧着すれば、エステルイミドオリゴマー層の溶融・熱硬化反応を経て、両面銅張積層体を作製することが可能となる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
<固有粘度>
0.5重量%のエステルイミドオリゴマー前駆体溶液について、オストワルド粘度計を用い30℃における固有粘度を測定した。
<ガラス転移温度:Tg>
各実施例で得られたエステルイミドオリゴマーの熱硬化膜について、ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて動的粘弾性測定により、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分での昇温過程における損失エネルギーピーク温度からガラス転移温度を求めた。
<線熱膨張係数:CTE>
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて、熱機械分析により、荷重0.5g/厚さ1μm、昇温速度5℃/分における、各実施例で得られたエステルイミドオリゴマーの熱硬化膜の試験片(5mm×20mm)の伸び率より、線熱膨張係数(100〜200℃の範囲の平均値)を求めた。
<誘電率>
アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ4T)を用いて、各実施例で得られたエステルイミドオリゴマーの熱硬化膜の平均屈折率nav=(2nin+nout)/3に基づいて、次式により1MHzにおける誘電率(ε)を算出した(ε=1.1×nav )。
<弾性率、破断伸び>
東洋ボールドウィン社製引張試験機(テンシロンUTM−2)を用いて、各実施例で得られたエステルイミドオリゴマーの熱硬化膜の試験片(3mm×30mm)について引張り試験(延伸速度:8mm/分)を実施し、応力−歪曲線の初期の勾配から弾性率を、フィルムが破断した時の伸び率から破断伸び(%)を求めた。
<5%重量減少温度:T
ブルカーエイエックス社製熱重量分析装置(TG−DTA2000)を用いて、窒素中または空気中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、各実施例で得られたエステルイミドオリゴマーの熱硬化膜サンプルの初期重量が5%減少した時の温度を測定した。
<溶融粘度測定>
エステルイミドオリゴマー粉末を直径2.5cm、厚さ1.7mmの円盤ディスク状に成型し、レオメトリックサイエンティフィック社製平行平板型粘弾性測定装置(RDSII)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度4℃/分、ひずみ0.1%、周波数1Hzで溶融粘度を測定した。
(実施例1)
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中にp−フェニレンジアミン11mmolを入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN−メチル−2−ピロリドンに溶解した後、この溶液に2,2’−ジ(4−トリメリトイルオキシ)ビフェニル二無水物粉末10mmolおよびナジック酸無水物2mmolを攪拌下に徐々に加えた。このとき溶媒量はモノマー濃度が30重量%になるように調節した。室温で24時間撹拌し、均一で粘稠なエステルイミドオリゴマー前駆体溶液を得た。固有粘度は0.140dL/gであった。このエステルイミドオリゴマー前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、2時間で乾燥してエステルイミドオリゴマー前駆体膜を得た。これを基板上、窒素中230℃で1時間、熱イミド化を行い、続いて350℃で1時間熱処理を行い、膜厚20μmのエステルイミド硬化膜を得た。このエステルイミド硬化膜は180゜折曲げ試験をしても破断や亀裂が見られず、靭性を示した。熱硬化前のエステルイミドオリゴマーでは、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の種々の有機溶媒に可溶であり、更に昇温過程において300℃以上で溶融したが、熱硬化後は如何なる溶媒にも不溶で、しかも全く溶融しなかった。表1に熱硬化膜の物性を示す。エステルイミド硬化膜について動的粘弾性測定を行った結果、ガラス転移温度は270℃であった。その他の膜物性は線熱膨張係数54.4ppm/K、5%重量減少温度は窒素中で449℃、空気中で420℃、誘電率は3.07、引張弾性率2.4GPa、破断伸び7%であった。このように本発明のエステルイミドオリゴマーは、優れた有機溶媒溶解性および熱可塑性を示すと共に、そのポリエステルイミドオリゴマーより得られたエステルイミド硬化膜は、高いガラス転移温度、高い熱安定性、および十分な膜靭性を示した。得られたエステルイミド硬化膜の赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
(実施例2)
実施例1に記載した方法と同様にエステルイミドオリゴマー前駆体を合成し、この溶液に無水酢酸/ピリジン混合溶液(体積比7/3)を激しく撹拌しながら滴下して化学イミド化を行った。30分撹拌後、反応溶液をメタノール中に滴下して沈殿させ、更に大量のメタノールで洗浄を繰り返して濾過後、140℃で真空乾燥してエステルイミドオリゴマー粉末を得た。赤外吸収スペクトルより化学イミド化が完結していることが確認された。これをN−メチル−2−ピロリドンに10重量%で再溶解し、これをガラス基板に塗布し、350℃で1時間熱処理して、膜厚20μmのエステルイミド硬化膜を作製した。化学イミド化により得られたエステルイミドオリゴマー(硬化前)は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の種々の有機溶媒に可溶であったが、熱硬化後は如何なる溶媒にも不溶であった。また、エステルイミドオリゴマー(硬化前)の溶融粘度は昇温過程において325℃で極小値(1147ポイズ)を示し、高い溶融流動性を示したが、更に温度が上昇すると熱硬化反応が急激に進行し、溶融粘度は急激に増加した。このように熱硬化後は全く溶融しなくなった。化学イミド化を経由して得られた硬化膜は実施例1に記載したのと同等の膜物性を示した。
(実施例3)
熱架橋性基成分として、ナジック酸無水物の代わりに4−フェニルエチニルフタル酸無水物を用い、熱硬化を400℃で行った以外は、実施例1に記載した方法と同様にエステルイミド硬化膜を作製した。表1に膜物性を示す。
(実施例4)
熱架橋性基成分として、ナジック酸無水物の代わりに無水マレイン酸を用い、p−フェニレンジアミンの代わりに4,4’−オキシジアニリンを用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様にエステルイミドオリゴマー前駆体を合成した。固有粘度は0.076dL/gと非常に低く、これを用いて同様に熱硬化膜の作製を試みたところ、靭性のある硬化膜が得られた。この硬化膜のガラス転移温度は234℃であった。
(実施例5)
テトラカルボン酸二無水物成分として、2,2’−ジ(4−トリメリトイルオキシ)ビフェニル二無水物8mmolおよび3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物2mmolを用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様にエステルイミド硬化膜を作製した。表1に膜物性を示す。
(実施例6)
テトラカルボン酸二無水物成分として、2,2’−ジ(4−トリメリトイルオキシ)ビフェニル二無水物5mmolおよび3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物5mmolを用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様にエステルイミド硬化膜を作製した。表1に膜物性を示す。
(実施例7)
テトラカルボン酸二無水物成分として、2,2’−ジ(4−トリメリトイルオキシ)ビフェニル二無水物8mmolおよびピロメリット酸二無水物2mmolを用いて、実施例1に記載した方法と同様にエステルイミドオリゴマー前駆体を合成した。固有粘度は0.351dL/gであった。実施例1に記載した方法に従って作製した硬化膜のガラス転移温度は275℃であった。
(比較例1)
熱架橋性基成分としてナジック酸無水物を使用せず、代わりに無水フタル酸を用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様にエステルイミド硬化膜を作製したが、得られた膜中には多数の亀裂が生じ、靭性も全く示さなかった。これは末端基として非反応性の無水フタル酸を用いたため、熱処理しても熱架橋反応が起こらず、分子量の低いオリゴマーのままであったためである。膜は極めて脆弱であったため、物性評価を実施しなかった。一方、熱処理温度を350℃から400℃に変更したところ、膜靭性が若干改善されたため膜物性を測定した(表1)。ガラス転移温度は250℃と、実施例1に記載の硬化膜に比べて20℃も低い値であった。これは末端基として非反応性の無水フタル酸を用いたためである。
(比較例2)
テトラカルボン酸二無水物成分として、2,2’−ジ(4−トリメリトイルオキシ)ビフェニル二無水物を使用せず、代わりに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様にイミド硬化膜作製した。しかしながら、得られた硬化膜には多数の亀裂が見られ、極めて脆弱であったため、膜靭性は測定不能であった。これはテトラカルボン酸二無水物成分として、2,2’−ジ(4−トリメリトイルオキシ)ビフェニル二無水物を使用しなかったため、昇温過程で殆ど溶融しなかったためである。テトラカルボン酸二無水物成分として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物を用いた場合も同様であった。
(比較例3)
実施例1と同じテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンから、ポリイミドを以下のように調製した。
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中にp−フェニレンジアミン10mmolを入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミド16mLに溶解した後、この溶液に2,2’−ジ(4−トリメリトイルオキシ)ビフェニル二無水物粉末10mmolを攪拌下に徐々に加えた。10分後、溶液粘度が急激に増加したため、溶媒4mLを加え希釈した。更に室温で24時間撹拌し透明、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。このポリイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、極めて高い溶液貯蔵安定を示した。固有粘度は0.53dL/gであった。このポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、1時間で乾燥して得たポリイミド前駆体膜を基板上で減圧下300℃で1時間、熱イミド化を行い、膜厚20μmの透明なポリイミド膜を得た。このポリイミド膜は完全に2つ折りにしても破断せず、靭性を示した。固有粘度はポリイミド前駆体とほぼ同等であった。ポリイミド膜について動的粘弾性測定を行った結果、243℃にガラス転移点が見られた。線熱膨張係数(100℃から200℃の間の平均値)66ppm/K、5%重量減少温度(昇温速度10℃/分)は窒素中で433℃、空気中で430℃であった。
Figure 0004603929
本発明のエステルイミドオリゴマーは、高い加工性(溶融流動性および有機溶媒溶解性)を示し、その熱硬化膜は高いガラス転移温度および高靭性を同時に満足する実用上有益なものであり、各種電子デバイスにおける耐熱性接着剤等への応用が可能である。
実施例1に記載のエステルイミド硬化膜の赤外線吸収スペクトルである(日本分光株式会社製:FT/IR−5300)。

Claims (5)

  1. 式(1):
    Figure 0004603929

    (式中、Aは、二価の芳香族基または脂肪族基を表す)で示される反復単位を有し、かつその末端が、熱架橋性基で封止されていることを特徴とする、エステルイミドオリゴマー前駆体。
  2. 式(2):
    Figure 0004603929

    (式中、Aは、二価の芳香族基または脂肪族基を表す)で示される反復単位を有し、かつその末端が、熱架橋性基で封止されていることを特徴とする、エステルイミドオリゴマー。
  3. 請求項2に記載のエステルイミドオリゴマーを、熱架橋反応させることによって得られる熱硬化物。
  4. 請求項1に記載のエステルイミドオリゴマー前駆体を、加熱あるいは脱水試薬によって脱水環化反応させることを特徴とする、請求項2に記載のエステルイミドオリゴマーの製造方法。
  5. 請求項2に記載のエステルイミドオリゴマーを含有するワニス。
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