JP4792204B2 - 高い有機溶媒溶解性、高熱可塑性、高靭性および高ガラス転移温度を併せ持つポリイミド、およびその製造方法 - Google Patents

高い有機溶媒溶解性、高熱可塑性、高靭性および高ガラス転移温度を併せ持つポリイミド、およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、優れた加工性即ち有機溶媒溶解性および熱可塑性を有し、且つ高靭性および高ガラス転移温度を併せ持つ新規なポリイミド、およびその製造方法に関する。
ポリイミドは優れた耐熱性のみならず、耐薬品性、耐放射線性、電気絶縁性、優れた機械的性質などの特性を併せ持つことから、フレキシブルプリント配線回路用基板、テープオートメーションボンディング用基材、半導体素子の保護膜、集積回路の層間絶縁膜等、様々な電子デバイスに現在広く利用されている。
一般にポリイミドは、無水ピロメリット酸等の芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンとをジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性有機溶媒中で等モル反応させて得られる高重合度のポリイミド前駆体を、膜などに成形し加熱硬化して得られる。
しかしながらポリイミドの耐熱性を保持するためには、分子設計上、骨格構造を剛直にせざるを得ず、結果としてポリイミドは有機溶媒に殆ど不溶で、ガラス転移温度以上でも溶融しないため、ポリイミドそのものを成型加工することは通常容易ではない。
従って通常、アミド系有機溶媒に高い溶解性を示すポリイミド前駆体を経由する方法が用いられる。具体的にはポリイミド前駆体の非プロトン性有機溶媒溶液を金属基板上に塗布・乾燥後、250℃ないし350℃という高温で加熱し、脱水閉環(イミド化)反応せしめることでポリイミド膜を形成する。
しかしながら、このようにイミド化反応温度が非常に高いため、いくつかの分野では上記製膜工程を適用することができない場合がある。例えば液晶ディスプレーのカラー化に不可欠なカラーフィルターの耐熱温度は200℃程度であり、ポリイミド前駆体のイミド化を経由して液晶配向膜用ポリイミド膜を形成しようとしても、この温度では塗布膜のイミド化反応を完結することができない。
上記分野には有機溶媒に可溶なポリイミドが適用されている。この場合、ポリイミドを有機溶媒に溶解した溶液(ワニス)を基板に塗布後、単に溶媒を揮発させるだけでよいため、イミド化温度よりもはるかに低い温度で膜を形成することが可能である。例えば溶媒として、沸点が高く揮発しにくいN−メチル−2−ピロリドンを用いた場合でも150℃ないし200℃での処理で十分である。
前駆体を経由する通常のポリイミド製膜工程では、金属基板とポリイミド膜の積層体において発生する熱応力の問題は深刻である。高温でのイミド化反応の際には熱応力は緩和された状態にあるが、積層体をイミド化温度から室温へ冷却する過程で熱応力が発生し、金属基板とポリイミド膜との間の線熱膨張係数の差が大きいほど、またイミド化温度が高いほど増加する。
熱応力低減の方策として、ポリイミドの低熱膨張化が挙げられる。殆どのポリイミドでは線熱膨張係数が40〜80ppm/Kの範囲にあり、金属基板例えば銅の線熱膨張係数17ppm/Kよりもはるかに大きいため、銅の値に近い、およそ20ppm/K以下を示す低熱膨張ポリイミドの研究開発が行われている。
別の方策は熱処理温度の低下を図るものである。その一つはイミド化触媒をポリイミド前駆体膜中に分散させ、イミド化反応温度そのものを低下させる試みであり、もう一つは可溶性ポリイミドを用いる方法である。
前者の低温硬化型ポリイミド系におけるイミド化触媒としては、3−ヒドロキシ安息香酸や4−ヒドロキシフェニル酢酸等がイミド化温度を大きく低下させるのに有効であり、無水ピロメリット酸と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから成るポリイミド前駆体系においても180℃程度でほぼイミド化反応が完結することが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
しかしながら、この技術ではポリイミド前駆体膜中に大量のイミド化触媒(繰り返し単位に対して2倍モル)を添加する必要があるため、膜純度や膜減りの問題が生じる。更に、低温硬化(イミド化)して得られたポリイミド膜はその硬化温度以上の環境に置かれると熱変形や著しい寸法変化が起る恐れがある。
一方、後者の有機溶媒可溶性ポリイミドでは、前述のように製膜にそれほど高温処理を必要としないため、たとえ膜の線熱膨張係数がそれほど低くなくても、製膜温度から室温まで冷却する過程での膜の収縮量はそれほど大きくはならず、残留応力をある程度抑えることができる。
ポリイミド前駆体溶液を銅等の基板に塗布・イミド化する製膜工程では、ポリイミド前駆体膜中に銅がマイグレーションし、電気特性が低下するといった問題がある。これを防ぐためには銅基板の表面処理を施さねばならない。これに対して可溶性ポリイミドでは銅のマイグレーションの心配はないため、銅の表面処理等の余計な工程を必要としない。
また前駆体を経由するポリイミド膜作製法では、イミド化反応に伴う脱離成分が発生するため、およそ膜厚100μmを越える厚いフィルムを作製することは困難である。一方、可溶性ポリイミドを用いる製膜工程ではイミド化反応を伴わないため、多段階塗工を行えば厚さ1mmを越えるポリイミドシートでも作製可能である。
フレキシブルプリント配線基板(FPC)にポリイミドが用いられているが、機械的強度が必要な部分にはガラス/エポキシ等の複合材料を用いた裏打ち材の使用が不可欠となっている。これはFPCに用いるポリイミドフィルムの製造工程上、膜厚の制限があるためである。上述のように可溶性ポリイミドを用いて厚いポリイミドシートの製造が可能になれば、裏打ち工程の省略、結果としてFPCの小型化を図ることができる。
しかしながらポリイミドに有機溶媒可溶性を付与しようと企て、主鎖へ屈曲結合の導入、あるいは側鎖として嵩高い置換基を導入すると、一般にガラス転移温度が大きく低下することになる。従って、250℃以上のガラス転移温度を有し、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性有機溶媒に10重量%以上の高い濃度で溶解する、実用上有益なポリイミドを得ることは分子設計上容易ではない。
例えば式(3)(ここでR1はメチル基やエチル基等のアルキル基で、R2は同様なアルキル基または水素基を表す)のような、屈曲結合およびアルキル置換基を有するジアミンをモノマーとして用いると、有機溶媒に可溶なポリイミドを得ることができる。
Figure 0004792204
しかしながら、このようなジアミンを用いて重合を行うと、置換基の立体障害により重合反応性が著しく低下して十分高い重合度のポリイミド前駆体を得ることは困難であり、ポリイミド膜の靭性に問題が生ずる。
またトリフルオロメチル置換基の導入はポリイミドの分子間力を弱め、溶解性向上に大きく寄与することが知られている。例えば酸二無水物として4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物を用いると、立体障害もなく、高重合度のポリイミド前駆体を得ることができる。しかしながらフッ素化モノマーの使用は製造コストの点で不利である。
ポリイミド前駆体重合時に末端封止剤を用いることにより、ポリイミドの重合度が低くなるように調節すると、一般に溶解性や熱可塑性が向上するが、同時にガラス転移温度の減少や膜靭性の急激な低下を伴う。従ってFPC等の膜靭性を要求される分野では、分子量制御による加工性付与のアプローチはあまり好ましくない。
このように溶解性ポリイミドは塗膜形成工程上様々な利点を有するが、これ加え、ポリイミド膜が熱可塑性も示すならば、より広範な分野への応用が期待される。例えばポリイミド/銅積層板(銅張り板)作製時の接着剤やFPCおける回路保護膜に適用することができる。
近年、FPCにおける電気回路配線の高密度化に伴い、ポリイミド膜自身の高度な寸法安定性が求められるようになってきた。このような高密度配線用途では、これまでアクリル系接着剤等を介してポリイミドフィルムを銅箔と張り合わせる、3層型銅張り板が主流であったが、銅箔上に直接ポリイミド前駆体を塗布・熱硬化(キャスト法)する2層型、或いは耐熱性の熱可塑性ポリイミドを接着剤として用いる擬似2層型銅張り板へと移行しつつある。
もし溶解性、熱可塑性、高ガラス転移温度、高靭性を同時に満足するポリイミドがあれば、銅箔に低熱膨張性ポリイミド膜をキャスト法により形成した後、その上に溶解性ポリイミド溶液を塗布・乾燥し、これと銅箔を熱圧着することで、容易に両面銅張り板を作製することが可能となる。
これはあらかじめ銅箔上に溶解性ポリイミド膜を形成しておいて、銅/低熱膨張性ポリイミド膜積層体のポリイミド面に張り合わせても同様に作製できる。ここで溶解性ポリイミドは従来の接着剤同様、溶解性ポリイミド溶液の塗布厚即ち、接着層の厚みを容易に制御できる点で有利である。
有機溶媒溶解性および熱可塑性を併せ持つポリイミドとして、ULTEM1000(General Electric社)が知られているが、ガラス点転移温度が215℃とそれほど高くなく、ハンダリフロー工程時の耐熱性に問題があるため、FPC用途に適用不可である。
大場,「工業材料」,Vol.43,No.6,p.48(1995)
本発明は優れた加工性即ち有機溶媒溶解性および熱可塑性を有し、且つ十分な靭性および高ガラス転移温度を併せ持つ、上記産業分野において実用上有益なポリイミド及びその製造方法を提供するものである。
以上の問題を鑑み、鋭意研究を積み重ねた結果、式(2)で表されるポリイミドが上記の要求特性を満たすことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に示すものである。
1)式(1):
Figure 0004792204
(式中、Rは、二価の芳香族基または脂肪族基を表すが、但し、オキシジフェニル−4,4’−ジイルではない)で示される反復単位を有するポリイミド前駆体。
2)N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃、0.5重量%の濃度における固有粘度が、0.1dL/g以上である、前記1)に記載のポリイミド前駆体。
3)式(2):
Figure 0004792204
(式中、Rは、二価の芳香族基または脂肪族基を表すが、但し、オキシジフェニル−4,4’−ジイルではない)で示される反復単位を有するポリイミド。
4)N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃、0.5重量%の濃度における固有粘度が、0.1dL/g以上である、前記3)に記載のポリイミド。
5)N−メチル−2−ピロリドンに対し、25℃で、5重量%以上の溶解度を有する、前記3)または4)に記載のポリイミド。
6)前記1)または2)に記載のポリイミド前駆体を、加熱あるいは脱水試薬によって脱水環化反応させることを特徴とする、前記3)〜5)いずれかに記載のポリイミドの製造方法。
7)熱可塑性であって、且つ230℃以上のガラス転移温度および高靭性を有することを特徴とする、前記3)〜5)いずれかに記載のポリイミドを含むフィルム。
8)前記5)に記載のポリイミドを含むワニス。
有機溶媒に対する高い溶解性、高い熱可塑性および高ガラス転移温度を両立させるため、本発明では2,2’−ビフェニレン結合に着目した。もしその異性体である4,4’−ビフェニレン結合をポリイミド主鎖中に導入すると、骨格が剛直になり、ガラス転移は大きく増加することが期待されるが、その反面、ポリマー鎖どうしが密に充填しやすいため、分子間相互作用が強まり結晶性が増加し、溶解性は極端に低下する恐れがある。
これに対して2,2’−ビフェニレン結合では、ビフェニルのオルト位に連結されているため、立体障害により、ビフェニル部位の分子平面が相互に大きくねじれ、主鎖骨格に大きな折れ曲がりを生ずる。これにより、分子間相互作用が大きく弱まり、溶解性が飛躍的に向上することが期待される。また、この立体障害は同時にビフェニル結合の周りの内部回転を妨げるため、高いガラス転移温度を保持するものと考えられる。
2,2’−ビフェニレン結合を有するモノマーは2,2’−ビフェノールとトリメリット酸無水物クロリドから容易に合成することができ、得られたモノマーも高純度である。しかも使用する原料は安価に入手でき、ポリイミドの製造コストの点で有利である。
エーテル結合を介して2,2’−ビフェニレン単位を含有する酸二無水物、即ち、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物から誘導されたポリイミドが公表されている(今井,柿本編,「ポリイミド最近の進歩1994」,レイテック,1994,p.25)。例えば、この酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから得られたポリイミドはN−メチル−2−ピロリドンに可溶であるが、ガラス転移温度は213℃とそれほど高くならない。これはエーテル結合の内部回転障壁が低いためである。
これに対して本発明に係る式(2)で表されるポリイミドは2,2’−ビフェニレン単位をより内部回転しにくいエステル結合を介して導入しているため、より高いガラス転移温度を示すことが期待される。
さらに、エステル結合を介して2,2’−ビフェニレン単位を含有する酸二無水物、即ち、2,2’−ジ(トリメリトキシ)ビフェニル二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから誘導されたポリイミドが報告されている(米国特許第3,355,427号)。しかしながら、当該特許文献には、2,2’−ビフェニレン構造を採用することにより、ポリイミドが、有機溶媒に対する高い溶解性を示すとともに、熱可塑性であって、且つ高いガラス転移温度および高靭性といった成型加工における優れた特性を達成しうることについて、何ら開示されていない。
以下に本発明を詳細に説明する。
2,2’−ビフェニレン単位含有酸二無水物モノマーの合成は以下のように行う。まず、2,2’−ビフェノールをテトラヒドロフラン等の有機溶媒に溶解し、これに脱酸剤としてピリジンやトリエチルアミンのような3級アミンを添加する。この溶液へ2,2’−ビフェノールに対して2倍モルのトリメリット酸無水物クロリドのテトラヒドロフラン溶液を氷冷下に徐々に滴下し、次いで室温で24時間攪拌して目的の式(4):
Figure 0004792204
で示される酸二無水物モノマーを得ることができる。反応終了後、この反応溶液中に含まれる3級アミンの塩酸塩を除去するため、例えば、反応溶媒を減圧留去後、生成物をクロロホルムや酢酸エチル等に溶解し、水と共に振とうして塩酸塩を抽出除去する。その後、溶媒を留去することにより、目的の酸二無水物が得られるが、上記操作により酸無水物基が一部加水分解を受けるので、これを真空中、200℃で熱閉環処理することにより、重合に供することができる。更により純度を上げるために、好ましくは、トルエン/シクロヘキサン混合溶媒等で再結晶し、真空中、200℃で熱閉環処理する。
副生成物の塩酸塩は、極めて水に溶けやすいことから、例えば、反応溶液を大量の水中に滴下し、沈澱した生成物を濾取し、水で洗浄することでも簡単に除去することができる。その他、当業者に公知の方法により、適宜、塩酸塩を除去することができる。
閉環処理は無水酢酸のような脱水剤に溶解し、これを加熱還流することでも行えるが、目的物が着色する傾向があるため、光学用途に使用する場合は熱閉環する方が好ましい。
ポリイミド前駆体の重合は以下のように行う。まずジアミン成分を重合溶媒に溶解し、これに式(4)で示される酸二無水物粉末を徐々に添加し、メカニカルスターラーを用い、室温で0.5〜24時間攪拌する。この際、モノマー濃度は5〜40重量%、好ましくは10〜35重量%である。このモノマー濃度範囲で重合を行うことにより均一で高重合度のポリイミド前駆体溶液を得ることができる。
モノマー濃度が高いほど高重合度のポリイミド前駆体が得られる傾向があるため、最終的なポリイミドの用途に応じて、ポリイミド前駆体の重合度を調節することができる。例えば、ポリイミド膜が特に高靭性を必要とする用途では、できるだけ高い濃度で重合を開始することが好ましい。
重合反応の際、酸無水物成分とジアミン成分とのモル比は、酸無水物成分/ジアミン成分=0.7〜1.3であることが好ましく、特に、0.95〜1.05の範囲が好ましい。
本発明のポリイミド前駆体は、N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃、0.5重量%の濃度で測定した固有粘度が0.1dL/g以上であり、ポリイミドの所望の用途に応じて、0.1〜5.0dL/gの範囲であるのが好ましく、0.2〜3.0dL/gの範囲であるのがより好ましい。
重合溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,2−ジメトキシエタン−ビス(2−メトキシエチル)エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ピコリン、ピリジン、アセトン、クロロホルム、トルエン、キシレン等の非プロトン性溶媒および、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール等のプロトン性溶媒が使用可能である。またこれらの溶媒は単独でも、2種類以上混合して用いてもよい。
ポリイミドの要求特性を著しく損なわない範囲で使用可能な芳香族ジアミンとしては、特に限定されないが、例えば炭素数6〜30個の単環式または多環式芳香族ジアミン(これらは場合により置換されていてもよい)であり、好ましくは炭素数6〜24個の単環式、縮合多環式あるいは芳香族基が直接または架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族ジアミン(ここで、架橋員とは、原子数1〜6個のスペーサー基であって、例えばアルキレン、−O−、−NH−、カルボニル、スルフィニル、スルホニルまたはこれらの組み合わせであってよい。これらは場合により、1つ以上のハロゲン、ヒドロキシル、または炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン化アルキルもしくはアルコキシで置換されていてもよい)であり、例えば2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p−ターフェニレンジアミン等が例として挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
また、ポリイミドの要求特性を著しく損なわない範囲で使用可能な脂肪族ジアミンとしては、特に限定されないが、例えば炭素数2〜30個の鎖式または脂環式ジアミン、あるいはこれらの組み合わせ(これらは場合により置換されていてもよい)であり、好ましくは炭素数2〜24個の鎖式または脂環式ジアミン、あるいはこれらの組み合わせ(これらは場合により、1つ以上のハロゲン、ヒドロキシル、または炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン化アルキルもしくはアルコキシで置換されていてもよく、および/または1つ以上の−O−、−NH−、カルボニル、スルフィニル、またはスルホニルで中断されていてもよい)であり、例えばトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、シス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン(トランス/シス混合物)、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルシクロヘキシルアミン)、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
高い熱安定性や高いガラス転移温度を保持するために、脂肪族ジアミンとして1,4−ジアミノシクロヘキサンのような脂環式ジアミンを用いた方が好ましい。
しかしながら、一般に脂肪族ジアミンをポリイミド前駆体重合反応に供した場合、重合初期に塩が形成され、重合の進行が妨げられることが起る。脂肪族ジアミンの中では特にトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサンと殆どの酸二無水物との組み合わせではより強固な塩が形成され、しばしば重合が全く進まない。
しかしながら、本発明に係る式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物を用いた場合、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサンと速やかに反応して、高重合度のポリイミド前駆体を容易に得ることができる。そのため、脂肪族ジアミンをクロロトリメチルシランの如きシリル化剤でシリル化するような煩雑な重合前処理工程を必要としない。
本発明に係るポリイミドの要求特性および重合反応性を著しく損なわない範囲で、式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物以外の酸二無水物成分を部分的に使用しても差し支えない。共重合酸二無水物としては特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。共重合成分としてこれらを単独あるいは2種類以上用いてもよい。
ポリイミド前駆体の重合の際しばしば添加される高分子溶解促進剤即ちリチウムブロミドやリチウムクロリドのような金属塩類は、本発明に係るポリイミド前駆体重合反応では使用する必要がない。一般にポリイミド膜中に金属イオンが痕跡量でも残留すると、電子デバイスとしての信頼性を著しく低下させることから、特にそのような用途を指向する場合には、金属塩類の使用は好ましくない。
得られたポリイミド前駆体溶液から、常法により固体状のポリイミド前駆体を単離してもよいが、得られたポリイミド前駆体溶液をそのまま、ガラス板、ステンレス板、アルミ板、ポリエステルフィルム等の基板上に塗布し、40℃〜180℃の温度で、0.5〜24時間乾燥させてもよい。得られたポリイミド前駆体膜を基板上で空気中、窒素等の不活性ガス雰囲気中あるいは真空中、200℃〜430℃、好ましくは250℃〜400℃の温度で熱処理することでポリイミド膜が得られる。更に後述するような脱水環化試薬中にポリイミド前駆体膜を浸漬する方法によってもポリイミド膜を得ることができる。
本発明に係るポリイミドは可溶性であるため、上記のようにポリイミド前駆体を重合した後、引き続き、その溶液を加熱還流してイミド化反応せしめ、均一なポリイミド溶液を得ることができる。また、化学的にイミド化することもできる。即ちポリイミド前駆体溶液を激しく攪拌しながら、これに無水酢酸のような脱水剤、およびピリジンあるいはトリエチルアミンのような塩基性触媒を滴下することで、均一なポリイミド溶液が得られる。
γ−ピコリン等の塩基触媒、およびキシレンを含むm−クレゾールにモノマーを溶解し、副生成物である水を共沸除去しながら160℃で数時間加熱する方法(ワンポット重合法)によってもポリイミド前駆体を経由しないでポリイミドを合成することができる。
上記のように加熱還流、化学イミド化、あるいはワンポット法により得られたポリイミド溶液を水やアルコール等の沈澱剤へ滴下することでポリイミド粉末として取り出すことができる。このポリイミド粉末あるいは熱イミド化によって得られたポリイミド膜をN−メチル−2−ピロリドンのような非プロトン性有機溶媒に再溶解することで、均一なポリイミド溶液を得ることもできる。
通常のポリイミドがほとんど有機溶媒に不溶であるのに対し、本発明のポリイミドは、高い有機溶媒溶解性を有し、非プロトン性有機溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒に対し、25℃で、5重量%以上の溶解度を有する。具体的には、N−メチル−2−ピロリドンに対し、25℃で、5重量%以上、特には10重量%以上、特に好ましいものは20重量%以上の溶解度を有する。
本発明のポリイミドは、N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃、0.5重量%の濃度で測定した固有粘度が0.1dL/g以上であり、ポリイミドの所望の用途に応じて、0.1〜5.0dL/gの範囲であるのが好ましく、0.2〜3.0dL/gの範囲であるのがより好ましい。例えば、ポリイミド膜が特に高靭性を必要とする、FPCのような用途では、固有粘度が0.5dL/g以上であるのが好ましく、特に0.5〜5.0dL/gの範囲であるのが好ましい。
このポリイミド溶液は貯蔵安定性が高いため、電子材料用途として好ましくないリチウムクロリドの如き金属塩溶解促進剤は、添加する必要がない。
得られたポリイミド溶液を、前記と同様に、ガラス板、ステンレス板、アルミ板、ポリエステルフィルム等の基板上に塗布し、150℃〜220℃の温度で、0.5〜24時間乾燥させ、溶媒を揮発させることによってポリイミド膜が得ることもできる。
このようにして得られたポリイミドから成形されるポリイミド膜中には、必要に応じて酸化安定剤、末端封止剤、フィラー、シランカップリング剤、感光剤、光重合開始剤および増感剤等の添加物を混合しても差し支えない。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
製造例1)
酸二無水物の合成
よく乾燥した攪拌機付三口フラスコ中、2,2’−ビフェノール20mmol(3.7240g)を無水テトラヒドロフラン40mLと無水ピリジン200mmol(16mL)の混合溶媒に溶解し、反応容器をセプタムキャップでシールした。氷浴中で冷却しながらこの溶液に、トリメリット酸無水物クロリド40mmol(8.4221g)の無水テトラヒドロフラン(85mL)溶液をシリンジにて徐々に滴下し、更に室温で数時間攪拌した。反応終了後、沈殿した塩酸塩をデカンテーションおよび濾過により分離し、溶液層の溶媒を留去して粗生成物を得た。これをクロロホルムに溶解し、分液ロート中、水で洗浄を繰り返し、残留塩酸塩を完全に分離した。クロロホルムを留去し、160℃で24時間真空乾燥後、トルエン/シクロヘキサン(体積比9/1)より再結晶した。濾別した結晶を更に200℃で24時間真空乾燥して目的の酸二無水物を得た。赤外吸収スペクトル(図1)より目的のテトラカルボン酸二無水物が得られ、熱閉環も完全に行われたことが確認された。
参考例2)
ポリイミド前駆体の重合、イミド化およびポリイミド膜特性の評価
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中にp−フェニレンジアミン10mmol(1.0814g)を入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミド16mLに溶解した後、この溶液に製造例1で得られたテトラカルボン酸二無水物粉末10mmol(5.3439g)を攪拌下に徐々に加えた。10分後、溶液粘度が急激に増加したため、溶媒4mLを加え希釈した。更に室温で24時間撹拌し透明、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。このポリイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、極めて高い溶液貯蔵安定を示した。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃、0.5重量%の濃度でオストワルド粘度計にて測定したポリイミド前駆体の固有粘度は0.53dL/gであった。このポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、1時間で乾燥して得たポリイミド前駆体膜を基板上で減圧下300℃で1時間、熱イミド化を行い、膜厚20μmの透明なポリイミド膜を得た。このポリイミド膜は完全に2つ折り(180゜折り曲げ)にしても破断せず、靭性を示した。またN−メチル−2−ピロリドンに対する溶解度を調べたところ、25℃で、23重量%以上溶解し、ポリイミド溶液は高い貯蔵安定性を示した。また、その固有粘度はポリイミド前駆体とほぼ同等であった。ポリイミド膜について動的粘弾性測定を行った結果、243℃にガラス転移点(動的粘弾性曲線における損失ピークより決定)が見られ、ガラス転移温度以上で貯蔵弾性率の急激な低下を示した。300℃以上では金属基板に強く熱融着するほど、高い熱可塑性が見られた。その他の膜物性は線熱膨張係数(100℃から200℃の間の平均値)66ppm/K、5%重量減少温度(昇温速度10℃/分)は窒素中で433℃、空気中で430℃であった。このようにこのポリイミドは熱および溶液加工性並びに240℃を越える高いガラス転移温度、高い熱安定性、および十分な膜靭性を示した。得られたポリイミド前駆体膜およびポリイミド膜の赤外線吸収スペクトルを図2、図3にそれぞれ示す。
(実施例3)
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中にo−トリジン10mmol(2.1229g)を入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミド18mLに溶解した後、この溶液に製造例1で得られたテトラカルボン酸二無水物粉末10mmol(5.3439g)を徐々に加えた。室温で24時間撹拌し透明、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。このポリイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、極めて高い溶液貯蔵安定を示した。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃、0.5重量%の濃度でオストワルド粘度計にて測定したポリイミド前駆体の固有粘度は0.30dL/gであった。このポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、1時間で乾燥して得たポリイミド前駆体膜を基板上で減圧下300℃で1時間、熱イミド化を行い、膜厚20μmの透明なポリイミド膜を得た。このポリイミド膜は完全に2つ折り(180゜折り曲げ)にしても破断せず、靭性を示した。またN−メチル−2−ピロリドンに対する溶解度を調べたところ、25℃で、21重量%以上溶解し、ポリイミド溶液は高い貯蔵安定性を示した。また、その固有粘度はポリイミド前駆体とほぼ同等であった。ポリイミド膜について動的粘弾性測定を行った結果、253℃にガラス転移点(動的粘弾性曲線における損失ピークより決定)が見られ、ガラス転移温度以上で貯蔵弾性率の急激な低下を示した。300℃以上では金属基板に強く熱融着するほど、高い熱可塑性が見られた。その他の膜物性は線熱膨張係数(100℃から200℃の間の平均値)76ppm/K、5%重量減少温度(昇温速度10℃/分)は窒素中で423℃、空気中で420℃であった。このようにこのポリイミドは熱および溶液加工性並びに250℃を越える高いガラス転移温度、高い熱安定性、および十分な膜靭性を示した。
(実施例4)
よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中にm−トリジン10mmol(2.1229g)を入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したN,N−ジメチルアセトアミド18mLに溶解した後、この溶液に製造例1で得られたテトラカルボン酸二無水物粉末10mmol(5.3439g)を徐々に加えた。10分後、溶液粘度が急激に増加したため、溶媒5mLを加え、更に10分経過後、溶媒8mLを加え希釈した。引き続き室温で24時間撹拌し透明、均一で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。このポリイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、極めて高い溶液貯蔵安定を示した。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃、0.5重量%の濃度でオストワルド粘度計にて測定したポリイミド前駆体の固有粘度は0.98dL/gであった。このポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、1時間で乾燥して得たポリイミド前駆体膜を基板上で減圧下300℃で1時間、熱イミド化を行い、膜厚20μmの透明なポリイミド膜を得た。このポリイミド膜は完全に2つ折り(180゜折り曲げ)にしても破断せず、靭性を示した。またN−メチル−2−ピロリドンに対する溶解度を調べたところ、25℃で、23重量%以上溶解し、ポリイミド溶液は高い貯蔵安定性を示した。また、その固有粘度はポリイミド前駆体とほぼ同等であった。ポリイミド膜について動的粘弾性測定を行った結果、238℃にガラス転移点(動的粘弾性曲線における損失ピークより決定)が見られ、ガラス転移温度以上で貯蔵弾性率の急激な低下を示した。300℃以上では金属基板に強く熱融着するほど、高い熱可塑性が見られた。その他の膜物性は線熱膨張係数(100℃から200℃の間の平均値)74ppm/K、5%重量減少温度(昇温速度10℃/分)は窒素中で431℃、空気中で405℃であった。このようにこのポリイミドは熱および溶液加工性並びに約240℃の高いガラス転移温度、高い熱安定性、および十分な膜靭性を示した。
参考例5)
参考例2で得られたポリイミド前駆体溶液にN,N−ジメチルアセトアミドを添加し、10重量%の濃度まで希釈した。この溶液20mLに無水酢酸とピリジンの混合溶媒(体積比7:3)5mLを激しく攪拌しながら滴下後、更に室温で3時間攪拌し、均一なポリイミド溶液を得た。これを大量のメタノール中に滴下することによりポリイミドを沈澱させ、濾別、乾燥した。このポリイミドの赤外吸収スペクトルは参考例2に記載したポリイミド膜のスペクトル(図3)と殆ど同じであり、イミド化反応の完結が確認された。このポリイミド粉末をN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、得られた20重量%のポリイミドワニスは長期に渡ってゲル化することなく高い貯蔵安定性を示した。このワニスをガラス基板上に塗布し、120℃で1時間乾燥させ、ポリイミド膜を得た。更に250℃で1時間、熱処理を施したポリイミド膜は参考例2に記載したものと同様な物性を示した。また参考例2で得られたポリイミド膜をN−メチル−2−ピロリドンに溶解した場合も全く同様であった。
(実施例6)
参考例5に記載の方法に従い、実施例3および4に記載のポリイミド前駆体溶液からも、貯蔵安定性の高い、20重量%のポリイミドワニスが得られた。
(比較例1)
製造例1に記載の方法で、4,4’−ビフェノールとトリメリット酸無水物クロリドより、テトラカルボン酸二無水物を合成した。この酸二無水物とp−フェニレンジアミンより、固有粘度1.12dL/gのポリイミド前駆体が得られた。参考例2および実施例3に記載の方法に従って、膜厚20μmの透明で強靭なポリイミド膜を得た。しかしながら、このポリイミド膜は如何なる有機溶媒に対して不溶であった。また、動的粘弾性測定において明瞭なガラス転移点は観測されず、全く熱可塑性を示さなかった。化学イミド化して得られたポリイミド粉末も同様に、溶解性、熱可塑性共に全く示さなかった。また、ジアミン成分として4,4’−オキシジアニリンを用いても、溶解性および熱可塑性の改善は見られなかった。
(比較例2)
製造例1に記載の方法で、ハイドロキノンとトリメリット酸無水物クロリドより、テトラカルボン酸二無水物を合成した。この酸二無水物とp−フェニレンジアミンより、固有粘度5.19dL/gのポリイミド前駆体が得られた。参考例2および実施例3に記載の方法に従って、膜厚20μmの透明で強靭なポリイミド膜を得た。しかしながら、このポリイミド膜は如何なる有機溶媒に対して不溶であった。また、動的粘弾性測定において明瞭なガラス転移点は観測されず、全く熱可塑性を示さなかった。化学イミド化して得られたポリイミド粉末も同様に、溶解性、熱可塑性共に全く示さなかった。また、ジアミン成分として4,4’−オキシジアニリンを用いても、溶解性および熱可塑性の改善は見られなかった。
(比較例3)
参考例2および実施例3と同様な方法で、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)と3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物よりポリイミド前駆体を重合したが、固有粘度は0.1dL/g程度しか上がらなかった。これより得られたポリイミド膜は各種有機溶媒に高い溶解性を示した。しかしながらこのポリイミド膜は極めて脆弱で、自己自立性がなく、動的粘弾性測定によりガラス転移温度を決定することができなかった。これはジアミンの立体障害に基づく低重合反応性に起因して、得られたポリイミドの分子量が低く、ポリマー鎖間の絡み合いの程度が低いことが原因である。
本発明のポリイミドは、ガラス転移温度以上で貯蔵弾性率の急激な低下を示す、すなわち熱可塑性ポリイミドであり、且つ有機溶媒に対する高い溶解性、高いガラス転移温度および高靭性を同時に満足する実用上有益なものであり、特にFPCのような、加工性と高靭性との両立を要求されるような分野への応用に有用である。
製造例1に記載のテトラカルボン酸二無水物の赤外線吸収スペクトルである。 参考例2に記載のポリイミド前駆体膜の赤外線吸収スペクトルである。 参考例2に記載のポリイミド膜の赤外線吸収スペクトルである。

Claims (6)

  1. 式(1):
    Figure 0004792204

    (式中、Rは、2,2’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイルまたは3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイルを表す)で示される反復単位を有し、且つN,N−ジメチルアセトアミド中、30℃、0.5重量%の濃度における固有粘度が、0.1dL/g以上である、ポリイミド前駆体。
  2. 式(2):
    Figure 0004792204

    (式中、Rは、2,2’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイルまたは3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジイルを表す)で示される反復単位を有し、且つN,N−ジメチルアセトアミド中、30℃、0.5重量%の濃度における固有粘度が、0.1dL/g以上である、ポリイミド。
  3. N−メチル−2−ピロリドンに対し、25℃で、5重量%以上の溶解度を有する、請求項に記載のポリイミド。
  4. 請求項に記載のポリイミド前駆体を、加熱あるいは脱水試薬によって脱水環化反応させることを特徴とする、請求項2または3に記載のポリイミドの製造方法。
  5. 熱可塑性であって、且つ230℃以上のガラス転移温度および高靭性を有する、請求項2または3に記載のポリイミドを含有するフィルム。
  6. 請求項に記載のポリイミドを含むワニス。
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