JPWO2010016493A1 - (メタ)アクリル酸無水物の製造方法及び保存方法、並びに(メタ)アクリル酸エステルの製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリル酸無水物の製造方法及び保存方法、並びに(メタ)アクリル酸エステルの製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、(メタ)アクリル酸と脂肪酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸無水物を製造する方法において、高収率、高効率で、かつ、副反応を抑制可能な(メタ)アクリル酸無水物の製造方法を提供することを目的とする。本発明に係る(メタ)アクリル酸無水物の製造方法は、脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とを反応させて、副生する脂肪酸を抜き出しながら(メタ)アクリル酸無水物を製造する(メタ)アクリル酸無水物の製造方法であって、反応液中の(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸のモル比が0.3以上になるように調整しながら反応を行うことを特徴とする。

Description

本発明は、(メタ)アクリル酸と脂肪酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸無水物を製造する方法、および(メタ)アクリル酸無水物を保存する方法に関するものである。また、(メタ)アクリル酸無水物をアルコールと反応させて(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法に関するものである。
(メタ)アクリル酸と脂肪酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸無水物を製造する方法として、特許文献1には、酢酸ナトリウムなどの触媒を使用して副生した酢酸を除去しながら(メタ)アクリル酸と無水酢酸から(メタ)アクリル酸無水物を製造する方法が記載されている。特許文献2には、副生した酢酸を除去しながら無水酢酸及び/又は(メタ)アクリル酸を反応媒体中に導入することにより、除去された酢酸を少なくとも部分的に置き換える方法が記載されている。
これらの方法では、いずれも反応を10時間以内で終えている。しかし、工業的には数トン規模で無水酢酸を使用するので、副生した酢酸の抜き出しにはより長い時間を要する。酢酸、無水酢酸及び(メタ)アクリル酸は各温度での蒸気圧が近いため、これらの混合物から酢酸を精留により分離するためには、理論段数が多く、内径が大きな精留塔が必要になる。しかし、立地や構造上の問題から蒸留塔の大きさに制約が生じるため、還流比を大きくして精製効率を高める方法が採られる。この場合、留出液の大部分を蒸留塔に戻すことになるので、酢酸の抜き出し効率が大幅に低下し、反応時間を長くせざるを得ない。
例えば、特許文献3の実施例4には、4Lのガラスフラスコに直径50mm、充填高さ850mmの蒸留付属装置を備えた装置を使用し、763gの無水酢酸を使用した液を3時間で反応させる方法が記載されている。還流比5:1という溜出液の8割以上を蒸留塔に戻すことにより精製効率を高めているが、溜出した酢酸には8.5%の無水酢酸が含まれている。
本発明者らの検討により、当該反応では(メタ)アクリル酸無水物の分解反応、多量化、メタクリル酸のマイケル付加などの副反応が進行していることが分かった。従来の方法では反応時間が短いため、副反応物量が少ない、分析方法の不備があったなどの理由によりこれらの副反応は問題とされなかった。しかし、本発明者らの検討により、反応時間が長くなると、副反応の影響が大きくなり、収率、純度の低下が顕著になる事がわかった。さらに(メタ)アクリル酸無水物は保存中に分解反応、多量化、メタクリル酸のマイケル付加などの副反応が進行し、経時的に純度が低下することがわかった。
(メタ)アクリル酸無水物は、アルコール類と反応させて(メタ)アクリル酸エステルを製造する際の原料に使用されるが、このような副生成物の多い(メタ)アクリル酸無水物を使用すると、当該副生成物とアルコール類とが反応するため、(メタ)アクリル酸エステルの純度及び収率が低下する。
(メタ)アクリル酸エステルの製造方法としては、(メタ)アクリル酸無水物とアルコールとを反応させる方法が知られている。特許文献1にはフェニル(メタ)アクリレートの製造方法として、(メタ)アクリル酸無水物とフェノール類とを反応させる方法が記載されている。しかし、特許文献1記載の方法では使用した(メタ)アクリル酸無水物とほほ等モル副生する(メタ)アクリル酸を水酸化ナトリウム水溶液及び水で洗浄して除去している。この方法では、大量の(メタ)アクリル酸を処分するため、資源を浪費する上、廃水処理の負荷が大きい。
原料として使用可能な化合物を含有している反応液から原料を回収して、再度使用する方法は一般に行われている。通常、これらの方法は、一段の反応において実施されるため、回収した原料に製品が混入していても問題は生じない。
一方、フェニル(メタ)アクリレートの製造方法において、(メタ)アクリル酸無水物を合成し、フェノールと反応させてフェニル(メタ)アクリレート製造するなどの二段階で実施する反応の場合、二段階目の反応ではフェニル(メタ)アクリレートやフェノール性水酸基を有する化合物が存在する。これらの化合物は、本来、一段階目の反応には存在しない化合物である。
二段階目に副生する(メタ)アクリル酸を通常の方法で回収して一段階目の反応で再使用すると、この(メタ)アクリル酸はフェニル(メタ)アクリレートやフェノールなどを含有しているため、一段目の反応において酢酸フェニルなどの副生物が生成し、(メタ)アクリル酸無水物の純度が低下する。さらに、これにより得られるフェニル(メタ)アクリレートの純度や収率が低下する。
本発明者らの検討により、(メタ)アクリル酸エステルの製造において、回収した(メタ)アクリル酸に、アルコールと脂肪酸無水物との反応生成物、(メタ)アクリル酸エステルおよびアルコールが3質量%をこえて混在すると、回収した(メタ)アクリル酸を使用して製造した(メタ)アクリル酸エステルの純度が大きく低下することを見出した。また、さらに検討を進めた結果、回収した(メタ)アクリル酸中に含まれるアルコールと脂肪酸無水物との反応生成物、(メタ)アクリル酸エステルおよびアルコールが、(メタ)アクリル酸無水物を製造する工程で副生する脂肪酸と反応して脂肪酸アルコールエステルに変化することを見出した。この脂肪酸アルコールエステルは(メタ)アクリル酸エステルを製造する工程まで残留し、蒸留などの精製操作による除去が難しく、純度低下の原因になることが判明した。
特開2000−191590号公報 特開2003−40832号公報 特開昭54−135706号公報
本発明は、(メタ)アクリル酸と脂肪酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸無水物を製造する方法において、高収率、高純度で(メタ)アクリル酸無水物を製造する方法を提供することを目的とする。また、(メタ)アクリル酸無水物の経時的な減少を抑制する(メタ)アクリル酸無水物の保存方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、(メタ)アクリル酸と脂肪酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸無水物を製造し、製造した(メタ)アクリル酸無水物をアルコールと反応させて(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法において、副生する(メタ)アクリル酸を有効利用しつつ、高純度の(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは(メタ)アクリル酸無水物に対して0.3倍モル以上の(メタ)アクリル酸が共存すると、(メタ)アクリル酸無水物の安定性が著しく向上することを見出した。また、特定の触媒を使用することにより、安定性が向上することを見出した。
すなわち本発明の第一の発明は、
下記一般式(1)で表される脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とを反応させて、副生する脂肪酸を抜き出しながら(メタ)アクリル酸無水物を製造する(メタ)アクリル酸無水物の製造方法であって、
反応液中の(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸のモル比が0.3以上になるように調整しながら反応を行う(メタ)アクリル酸無水物の製造方法である。
Figure 2010016493
(式(1)において、Rは直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基又はアルケニル基、Rは直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基を示す。)。
また、本発明の第二の発明は、
下記一般式(1)で表される脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とを反応させて、副生する脂肪酸を抜き出しながら(メタ)アクリル酸無水物を製造する(メタ)アクリル酸無水物の製造方法であって、
Paulingの電気陰性度1.0以上の金属を含む化合物からなる触媒の存在下で反応を行うことを特徴とする(メタ)アクリル酸無水物の製造方法である。
Figure 2010016493
(式(1)において、Rは直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基又はアルケニル基、Rは直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基を示す。)。
また、本発明の第三の発明は、
(メタ)アクリル酸無水物1モルに対して0.3〜2モルとなる量の(メタ)アクリル酸を共存させる(メタ)アクリル酸無水物の保存方法である。
そして、さらには、本発明の第一の発明または第二の発明により得られた(メタ)アクリル酸無水物を用いて(メタ)アクリル酸エステルを製造する際に、回収した(メタ)アクリル酸中のアルコールと前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物との反応生成物、(メタ)アクリル酸エステルおよび前記アルコールの合計の含有量が3質量%より少ないと、回収した(メタ)アクリル酸を使用して製造した(メタ)アクリル酸エステルの純度の低下が抑えられることを見出した。
即ち、本発明の第四の発明は、
以下の一連の工程(A)〜工程(C)を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法であって、一連の工程(A)〜工程(C)を行って(メタ)アクリル酸エステルを製造した後に、次の一連の工程(A)〜工程(C)を行う際に、工程(A)において、前の一連の工程中の工程(C1)で回収した(メタ)アクリル酸を用いることを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法である。
(A)第一の発明又は第二の発明により(メタ)アクリル酸無水物を製造する工程、
(B)アルコールと前記工程(A)の反応で得られる(メタ)アクリル酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸エステルを製造する工程、
(C)前記工程(B)で得られた未精製の(メタ)アクリル酸エステルを精製して(メタ)アクリル酸エステルを得る工程であって、下記の工程(C1)と工程(C2)を含む工程、
(C1)前記工程(B)の反応で副生する(メタ)アクリル酸を、前記工程(B)の反応で副生する前記アルコールと前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物との反応生成物、(メタ)アクリル酸エステルおよび前記アルコールの合計の含有量が留出物中3質量%以下になるように、蒸留によって回収する工程、
(C2)前記工程(C1)において留出しなかった反応液を精製して、(メタ)アクリル酸エステルを得る工程。
本発明の(メタ)アクリル酸無水物の製造方法によれば、高収率、高純度で(メタ)アクリル酸無水物を得ることができる。また、本発明の(メタ)アクリル酸無水物の保存方法は、(メタ)アクリル酸無水物の経時的な減少を抑制し、高い保存安定性を示す。
本発明の方法によれば、(メタ)アクリル酸と脂肪酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸無水物を製造し、製造した(メタ)アクリル酸無水物をアルコールと反応させて(メタ)アクリル酸エステル製造する方法において、副生する(メタ)アクリル酸を有効利用しつつ、高純度の(メタ)アクリル酸エステルを得ることが可能である。
メタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比に対する、加熱後のメタクリル酸無水物の残存率を示す図である。
本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタクリル酸を示し、(メタ)アクリル酸無水物とはアクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、又はアクリル酸とメタクリル酸の酸無水物(混合酸無水物)を示す。また、(メタ)アクリル酸フェニルとは、フェニルメタクリレートまたはフェニルアクリレートを示し、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを示す。本発明において(メタ)アクリル酸無水物は以下の工程(A)の方法によって製造される。
また、本発明において、(メタ)アクリル酸エステルは以下の工程(A)〜工程(C)を含む方法により製造される。そして、本発明においては、一連の工程(A)〜工程(C)を行って(メタ)アクリル酸エステルを製造した後に、次の一連の工程(A)〜工程(C)を行う際に、工程(A)において、前の一連の工程中の工程(C1)で回収した(メタ)アクリル酸を用いることが出来る。
(A)(メタ)アクリル酸無水物を製造する工程、
(B)アルコールと前記工程(A)の反応で得られる(メタ)アクリル酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸エステルを製造する工程、
(C)前記工程(B)で得られた未精製の(メタ)アクリル酸エステルを精製して(メタ)アクリル酸エステルを得る工程であって、下記の工程(C1)と工程(C2)を含む工程、
(C1)前記工程(B)の反応で副生する(メタ)アクリル酸を、前記工程(B)の反応で副生する前記アルコールと一般式(1)で表される脂肪酸無水物との反応生成物、(メタ)アクリル酸エステルおよび前記アルコールの合計の含有量が留出物中3質量%以下になるように、蒸留によって回収する工程、
(C2)前記工程(C1)において留出しなかった反応液を精製して、(メタ)アクリル酸エステルを得る工程。
[工程(A):(メタ)アクリル酸無水物を製造する工程]
前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とを反応させて、副生する脂肪酸を抜き出しながら(メタ)アクリル酸無水物を製造する工程について説明する。
本発明の(メタ)アクリル酸無水物の製造方法は、前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とを反応させて、副生する脂肪酸を抜き出しながら(メタ)アクリル酸無水物を製造する(メタ)アクリル酸無水物の製造方法であって、反応液中の(メタ)アクリル酸無水物1モルに対する(メタ)アクリル酸のモル比が0.3以上になるように調整しながら反応させることを特徴とする。
また、本発明の(メタ)アクリル酸無水物の製造方法は、前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とを反応させて、副生する脂肪酸を抜き出しながら(メタ)アクリル酸無水物を製造する(メタ)アクリル酸無水物の製造方法であって、Paulingの電気陰性度1.0以上の金属を含む化合物からなる触媒の存在下で反応を行うことを特徴とする。
本工程の(メタ)アクリル酸無水物の製造方法において、原料として使用する脂肪酸無水物は、前記一般式(1)で表される化合物である。
具体的に、Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などが挙げられる。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。(メタ)アクリル酸と反応して副生する脂肪酸と生成した(メタ)アクリル酸無水物との蒸留塔における分離性の点から、Rはメチル基、エチル基、ビニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。同様にRはメチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。脂肪酸無水物としては、前記理由及び反応による副生脂肪酸の安全性の点から、無水酢酸(酢酸同士の酸無水物)が好ましい。
本工程の製造方法では、前記脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とを反応させる。その際に副生する脂肪酸は、当該脂肪酸無水物が加水分解されて生成する脂肪酸と同じものである。例えば、脂肪酸無水物が無水酢酸の場合、副生する脂肪酸は酢酸である。
また、(メタ)アクリル酸無水物を製造する際に中間体として、脂肪酸無水物に由来する脂肪酸と(メタ)アクリル酸との混合酸無水物(以下、混合酸無水物とする)が存在する。
前記一般式(1)において、Rが、反応させるアクリル酸から派生するビニル基又はメタクリル酸から派生するイソプロペニル基以外の場合に混合酸無水物が生成する。例えば、無水酢酸とアクリル酸の反応では、一般式(1)において、Rがビニル基、Rがメチル基の混合酸無水物が生成する。したがって、これら混合酸無水物は、更に(メタ)アクリル酸と反応し得るものである。
本発明では、反応液中の(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸のモル比を0.3以上に調整する。前記モル比を0.3以上することにより(メタ)アクリル酸の安定性が向上し、このモル比が大きいほど(メタ)アクリル酸無水物の安定性がより向上するため、0.5以上が好ましい。
本発明では、反応終了時に反応液中の(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸のモル比を0.3から2に調整することが好ましい。前記と同様の理由でモル比は0.5以上がより好ましい。一方、(メタ)アクリル酸無水物に対するメタクリル酸が多いほど、得られた反応液を使用して(メタ)アクリル酸エステルを製造させる際に反応器が大きくなること、また、後述するように、貯蔵時に容量の大きな容器が必要になること、得られた(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とを分離するための負荷が増大すること、などの理由により、前記モル比は2以下が好ましい。前記モル比は1以下がより好ましく、0.8以下がさらに好ましい。(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸のモル比が大きくなるほど、モル比の増加に対する本発明の効果の増加は少なくなるので、上記課題の解決が優先される場合がある。
反応の過程で、一時的に(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸のモル比が上記の範囲を外れていても、短時間であれば問題ない。
本工程においては、生成物である(メタ)アクリル酸無水物に対する原料である脂肪酸無水物のモル比が0.01以下になった時点を反応終了時とすることが好ましい。
しかし、脂肪酸無水物が検出限界以下の量となっても、混合酸無水物が残留しているため、反応は(メタ)アクリル酸無水物に対する混合酸無水物の量のモル比が0.02以下となった状態で終了することがより好ましい。例えば、酢酸と(メタ)アクリル酸との混合酸無水物が(メタ)アクリル酸無水物中に存在すると、アルコールと反応させたとき、酢酸エステルと(メタ)アクリル酸となり、目的とする(メタ)アクリル酸エステルの収率、選択性が低下する。(メタ)アクリル酸無水物の収率、(メタ)アクリル酸エステルを製造する際の収率、選択性の点から、(メタ)アクリル酸無水物に対する混合酸無水物のモル比が0.01以下になった状態で反応を終了することがさらに好ましく、0.005以下になった状態で反応を終了することが特に好ましい。また、反応時間の長大化は副生成物の増加につながるため、(メタ)アクリル酸無水物に対する混合酸無水物のモル比が0.0001以上で反応を終了することが好ましく、0.001以上で反応を終了することがより好ましい。
反応液中の(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸のモル比を0.3以上になるように調整する方法、反応終了時に前記モル比が0.3〜2となるように調節する方法としては、装置の仕様及び能力を勘案して仕込み量を決定する方法、反応液又は溜出液の組成を分析して(メタ)アクリル酸又は脂肪酸無水物の追加供給量を算出して供給する方法、反応液又は溜出液の組成を分析して温度や圧力、還流比などの運転条件を決定して、制御する方法などが挙げられる。
これらの方法の中でも、容易に制御可能であることから、(メタ)アクリル酸又は脂肪酸無水物を追加供給する方法が好ましく、反応の全期間あるいは後期に(メタ)アクリル酸を供給する方法が好ましい。供給方法は、直接反応容器に導入する方法、蒸留塔に導入して塔内を下降させて供給する方法などいずれの方法でも良い。
例えば、メタクリル酸又は脂肪酸無水物の追加供給量を算出する方法として、最初に脂肪酸無水物に対する(メタ)アクリル酸の仕込みモル比を約4倍にし、理論段数10段の精留塔で還流比を1.5から適宜大きくして溜分を抜き出す際に、定期的に釜内の組成を分析して、目的のモル比になるように脂肪酸無水物を追加供給する方法が挙げられる。また、最初に脂肪酸無水物に対する(メタ)アクリル酸の仕込みモル比を約2倍にし、理論段数10段の精留塔で還流比を2から適宜大きくして溜分を抜き出す際に、定期的に釜内の組成を分析して、脂肪酸無水物および混合酸無水物が消失する量の(メタ)アクリル酸を追加供給していく方法が挙げられる。
従来技術では、副生する脂肪酸を抜き出しながら脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸を反応させた場合、反応の前半においては、(メタ)アクリル酸無水物生成量が少なく、(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸のモル比が大きいため、(メタ)アクリル酸無水物は比較的安定である。しかし、反応の進行により、(メタ)アクリル酸が消費される上に、(メタ)アクリル酸の一部は副生脂肪酸とともに溜出するため、(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸のモル比は小さくなる。そのため、従来技術では、反応後期には(メタ)アクリル酸はほとんど残存しなくなり、生成した(メタ)アクリル酸無水物の安定性が大きく低下していた。
(メタ)アクリル酸無水物の製造に際して、原料の(メタ)アクリル酸は、脂肪酸無水物に対し2〜8倍モル使用することが好ましい。脂肪酸無水物基準の(メタ)アクリル酸無水物収率の点から、(メタ)アクリル酸は脂肪酸無水物に対し2.2倍モル以上であることが好ましく、2.4倍モル以上であることがより好ましい。
また、反応終了時に反応液中の(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸のモル比を0.3〜2とする際における(メタ)アクリル酸量の調整負荷軽減の点から、(メタ)アクリル酸は脂肪酸無水物に対し6倍モル以下であることが好ましく、4倍モル以下であることがより好ましい。
最初に反応器に原料を仕込む方法としては、脂肪酸無水物及び(メタ)アクリル酸の両方を一括して仕込む方法、いずれか一方の原料を反応器に仕込む方法、一方の原料を全て仕込んで他方を一部仕込む方法、又は、両方の原料を一部仕込む方法のいずれでもよい。後の三者の場合、残りの原料は反応開始後に分割又は連続のいずれの方法で供給してもよい。
また、本工程における(メタ)アクリル酸無水物の製造方法においては、触媒を用いることができる。無触媒であると反応時間が長くなり、(メタ)アクリル酸無水物の分解反応、多量化、メタクリル酸のマイケル付加などの好ましくない副反応生成物が多くなる。
触媒としては金属化合物、酸触媒、塩基触媒、不均一系触媒などが挙げられる。
前記金属化合物としては、金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、塩化物、硝酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩などの無機酸との塩;酢酸塩や(メタ)アクリル酸塩、スルホン酸塩などの有機酸塩;アセチルアセトナート、シクロペンタジエニル錯体などの錯塩などが挙げられる。
前記酸触媒としては、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、塩酸及びヘテロポリ酸などの無機酸;メタスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、カンファースルホン酸などの有機酸などが挙げられる。また、塩基触媒としては、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、トリエチルアミンなどの有機塩基などが挙げられる。
前記不均一系触媒としては、塩基性イオン交換樹脂及び酸性イオン交換樹脂などのイオン交換樹脂、活性成分をシリカやアルミナ、チタニアなどの担体に固定した触媒が使用可能である。
前記触媒の中でも、活性(反応速度)、選択性及び着色防止の点から、金属化合物が好ましい。副反応生成物が少ないことからPaulingの電気陰性度が1.0以上の金属の化合物が好ましく、1.5以上の金属の化合物がより好ましい。バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、インジウムから選択される1種以上の金属の化合物がさらに好ましい。特に、コバルト、ニッケル、インジウムの化合物は好ましくない副生物量が少ないので最適である。活性の点から、周期律表の第2周期から第5周期に属するものが好ましく、第4周期から第5周期に属するものがより好ましく、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、亜鉛、インジウムの化合物がより好ましい。また、選択性の点から金属化合物は酸化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、(メタ)アクリル酸塩等の塩が好ましい。
以上の触媒の中で、活性及び選択性の点から、コバルト、ニッケル、インジウムの化合物が最も好ましい。
一方、Paulingの電気陰性度が1.0未満の金属であるナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の金属の化合物は好ましくない。
また、前記触媒は、操作性の点から必要量全てが反応系に溶解するものが好ましい。触媒は単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。本発明の触媒の機能を損なわない限り、他の元素や化合物が含まれていてもよい。
触媒を反応器に仕込む方法としては、例えば、全量を最初に反応器に仕込む方法、最初に一部を仕込み、残りを後で供給する方法などが挙げられる。
前記触媒の使用量は、反応全体を通して使用した前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物の総仕込み量に対し、0.000001〜0.005倍モルが好ましい。反応を円滑に進行させる点から、触媒の使用量は前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物の仕込み量に対し0.000005倍モル以上が好ましく、0.00001倍モル以上がより好ましい。一方、触媒の除去や副反応の抑制の点から、触媒の使用量は前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物の仕込み量に対して0.001倍モル以下が好ましく、0.0005倍モル以下がより好ましい。特に、脂肪酸無水物のロスがないこと、未精製のままでもエステル化反応などに十分使用できることから、0.0001倍モル以下がさらに好ましい。
反応は、生産性及び溶媒回収の負荷などの点から、無溶媒で行うことが好ましいが、必要により反応に不活性な溶媒を用いることもできる。不活性な溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒;ジエチルケトン、ジイソプロピルケトンなどのケトン系溶媒などが使用できる。不活性な溶媒を使用する場合、その使用量としては、(メタ)アクリル酸の質量に対して1〜30倍量が好ましい。溶媒としては、副生する脂肪酸と共沸しやすいものが好ましい。
(メタ)アクリル酸無水物を製造する反応温度は、30〜120℃の範囲が好ましい。反応を円滑に進行することができる点から、反応温度は50℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。一方、重合や副反応を抑制する点から、反応温度は100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい。
反応方式としては、例えば、単一の反応器内に全ての原料を仕込んで反応を完結させる回分式、反応器内に原料を連続的に供給して連続的に反応させる連続式、反応器と配合タンクとを備え、反応器と配合タンクとの間で原料を循環させながら反応器で反応させる循環式などが挙げられる。副生する脂肪酸など(メタ)アクリル酸無水物よりも沸点の低い化合物をできるだけ除去するためには、回分式が好ましい。
反応は副生する脂肪酸を系外に除去しながら行う。副生する脂肪酸と他の化合物とを分離する方法としては、例えば、複数段の蒸留塔(精留塔)を用いて蒸留する方法が挙げられる。蒸留塔には、例えば、ステンレス鋼、ガラス、陶磁器製などのラシヒリング、レッシングリング、ディクソンパッキン、ポールリング、サドル、スルザーパッキンなどの形状を有する充填物を使用した充填塔、多孔板塔や泡鐘塔などの棚段塔などが使用できる。蒸留塔と反応器との接続は、反応器の上部に蒸留塔が連接された形態、反応器と接続された別容器の上部に蒸留塔が連接された形態、蒸留塔の上段から下段のいずれかの位置に反応器が接続された形態のいずれでも良い。いずれの接続形態においても、反応器と蒸留塔の間の経路は一つでも複数でも良く、途中に熱交換器などの装置が介在していてもよい。
蒸留塔の理論段数は、副生する脂肪酸と他の化合物との分離性の点から、3段以上が好ましく、5段以上がより好ましい。一方、差圧及び装置規模の点から30段以下が好ましく、20段以下がより好ましい。
蒸留塔の理論段数は、副生する脂肪酸と他の化合物との分離性の点から、3段以上が好ましく、5段以上がより好ましい。一方、差圧及び装置規模の点から30段以下が好ましく、20段以下がより好ましい。
蒸留では、還流器を使用しない内部還流や還流器を使用して還流比を制御する方式が使用できる。還流比は、装置の規模、生産性、分離性などを考慮し適宜決めることができるが、0.2〜10の範囲が好ましい。還流比は、分離性の点から0.5以上がより好ましく、1以上がさらに好ましい。一方、生産性の点から6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。還流比は反応液の組成にあわせて、反応中に適宜調整することが好ましい。
副生する脂肪酸を系外に除去するに際しては、当該脂肪酸と他の化合物とを完全に分離する必要はない。また、当該脂肪酸と共に脂肪酸無水物や混合酸無水物、(メタ)アクリル酸無水物が蒸留塔から溜出する場合は、この溜出液の一部又は全部を別の(メタ)アクリル酸無水物の製造に使用してもよい。
圧力は、反応温度や蒸留塔の段数などを考慮して適宜決めることができる。反応の進行とともに反応液の組成が変わり、全体の蒸気圧が低下するので、副生した脂肪酸を除去するためには精留が実施できる状態になるように圧力を下げていくことが好ましい。反応は釜内の圧力を調節しながら実施するが、反応温度や蒸留塔の段数などを考慮して塔頂の圧力を調整してもよい。このような方法としては、例えば、大気圧で反応温度80℃に調節して反応を開始した後、徐々に減圧にする方法が挙げられる。
本工程における反応時間は、反応容器内の一般式(1)で表される脂肪酸無水物又は混合酸無水物の残量をもとに適宜決定できる。しかし、反応を12時間未満で終了させるためには、無水(メタ)アクリル酸の製造量に対して、精留塔などの設備が大きくなりすぎるという問題があるため、12時間以上とすることが好ましい。(メタ)アクリル酸無水物の収率及び精留塔設備の大きさの点から、反応時間は15時間以上が好ましく、18時間以上がより好ましい。一方、生産性の点から反応時間は72時間以下が好ましく、60時間以下がより好ましく、48時間以下がさらに好ましい。また、反応時間は短いほど副反応が抑制される。なお、反応時間は、回分式、半回分式の反応装置において脂肪酸の除去を開始したときを反応開始時点として、前記反応終了時までの時間とする。反応の終了は、脂肪酸又は残った(メタ)アクリル酸の除去を停止することによって実施される。連続式の場合の反応時間は、反応容器の実容量と同じ量の(メタ)アクリル酸無水物を製造するために必要な時間である。
本工程において、(メタ)アクリル酸無水物の製造に際して、重合防止剤を使用することができる。重合防止剤は反応器中に導入し、蒸留塔の塔頂や塔の途中にも重合防止剤を導入することが好ましい。反応器に使用する重合防止剤は、酸無水物及び(メタ)アクリル酸に対して不活性な重合防止剤が好ましい。
重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン等のキノン系重合防止剤、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合防止剤、アルキル化ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン等のアミン系重合防止剤、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルや4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルなどのヒンダートアミン系重合防止剤、金属銅、硫酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等のジチオカルバミン酸銅系重合防止剤などが挙げられる。これらの重合防止剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合防止剤の添加量は、その種類や条件により影響されるが、反応液重量に対して0.01〜10000ppmの範囲が好ましい。また、反応液に酸素を含む気体をバブリングさせることにより、重合防止効果が向上する場合がある。
本工程の製造方法によって得られる(メタ)アクリル酸無水物は、そのままでも(メタ)アクリル酸以外の不純物が少ないため、特に精製処理を施さなくとも十分使用可能である。ただし、更に高純度の(メタ)アクリル酸無水物を得たい場合は、反応終了後、精留や洗浄など既知の方法によって精製することができる。ただし、後述のように、以後の保存時に(メタ)アクリル酸無水物が分解するので、精製を行わないことが好ましい。
[工程(B):アルコールと前記工程(A)の反応で得られる(メタ)アクリル酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸エステルを製造する工程]
工程(B)におけるアルコールと前記工程(A)の反応で得られる(メタ)アクリル酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸エステルを製造する工程について説明する。
原料のアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−へキシルアルコール、n−へプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコール、アリルアルコール、ブチンジオール等の不飽和アルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1−アダマンタノール、2−アダマンタノール、1−アダマンタンメタノール等の環式アルコール、フェノール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等の多価アルコール、さらには、これらのアルコールの少なくとも一つの位置がアミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基等の置換基に置換されたアルコール、構造中にエーテル結合、エステル結合等を有したアルコールなどが挙げられる。これらのアルコールの中でも、生成した(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸を蒸留生成する場合の分離性の点から、炭素数5以上のアルコールが好ましい。また、選択性の点から、アミノ基などの(メタ)アクリル酸無水物と反応する置換基を持たないアルコールが好ましい。
本工程において(メタ)アクリル酸エステルを製造するのに際し、(メタ)アクリル酸無水物は、アルコールに対し0.5〜5倍モル使用することが好ましい。アルコール基準の(メタ)アクリル酸エステル収率及びアルコール残留量低減の観点から、(メタ)アクリル酸無水物はアルコールに対し0.8倍モル以上がより好ましく、0.9倍モル以上がさらに好ましい。
また、反応後の(メタ)アクリル酸無水物の処理又は回収負荷低減の観点から、(メタ)アクリル酸無水物は、アルコールに対し1.2倍モル以下がより好ましく、1.1倍モル以下がさらに好ましい。
残留した(メタ)アクリル酸無水物と(メタ)アクリル酸エステルの蒸留による分離が難しい場合、得られる(メタ)アクリル酸エステルの純度の観点から、アルコールを(メタ)アクリル酸無水物に対し過剰量仕込むことが好ましい。
反応器に原料を仕込む方法としては、1)(メタ)アクリル酸無水物及びアルコールの両方を一括して仕込む方法、2)どちらか一方の原料を全て反応器に仕込んだ後、他方の原料を供給する方法、3)一方の原料全量と他方の原料の一部仕込んだ後、残りの原料を供給する方法、又は、4)両方の原料を一部仕込んだ後、残りの原料を供給する方法のいずれでもよい。後から原料を供給する場合、残りの原料は反応開始後に分割又は連続供給などいずれの方法で実施してもよい。
本工程における(メタ)アクリル酸エステルの製造は、触媒を用いることが好ましい。無触媒であると反応時間が長くなり、重合や副反応が進行する場合がある。
前記触媒としては金属化合物、酸触媒、塩基触媒、不均一系触媒などが挙げられる。
前記金属化合物としては、金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、塩化物、硝酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩などの無機酸との塩;酢酸塩、(メタ)アクリル酸塩、スルホン酸塩などの有機酸塩;アセチルアセトナート、シクロペンタジエニル錯体などの錯塩などが挙げられる。
前記酸触媒としては、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、塩酸及びヘテロポリ酸などの無機酸;メタスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、カンファースルホン酸などの有機酸などが挙げられる。また、前記塩基触媒としては、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、トリエチルアミンなどの有機塩基などが挙げられる。
前記不均一系触媒としては、塩基性イオン交換樹脂及び酸性イオン交換樹脂などのイオン交換樹脂、活性成分をシリカやアルミナ、チタニアなどの担体に固定した触媒が使用可能である。
これらの触媒の中で、活性の観点から酸性イオン交換樹脂、ヘテロポリ酸などが好ましい。また、(メタ)アクリル酸回収率の観点から、硫酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の硫酸系触媒が好ましく、硫酸がより好ましい。
触媒は工程(A)で使用したものと同じものでも異なっていても良い。また、触媒は工程(A)で使用したものにさらに、同じものや別なものを新たに加えても良い。本工程に悪影響がなければ、工程(A)で使用した触媒が残留したままでも良い。
前記触媒は単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。前記触媒を仕込む方法としては、例えば、全量を最初に反応器に仕込む方法、最初に一部を仕込み、残りを後で供給する方法などが挙げられる。
本工程において、触媒の使用量は、アルコールの仕込み量に対し0.0001〜0.3倍モルが好ましい。反応を円滑に進行させる観点から、触媒の使用量はアルコールに対し0.001倍モル以上がより好ましく、0.01倍モル以上がさらに好ましい。一方、触媒の除去や副反応の抑制の観点から、触媒の使用量はアルコールに対して0.2倍モル以下がより好ましく、0.1倍モル以下がさらに好ましい。
反応は、生産性および溶媒回収の負荷などの点から、無溶媒で行うことが好ましいが、必要に応じて反応に不活性な溶媒を用いることもできる。このような溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;ジエチルケトン、ジイソプロピルケトンなどのケトン類などが使用できる。溶媒は副生する脂肪酸と共沸しやすいものが好ましい。溶媒の使用量は(メタ)アクリル酸の質量に対して0.1〜30倍が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルを製造する反応温度は、30〜120℃の範囲が好ましい。反応を円滑に進行させる点から、反応温度は50℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。一方、重合や副反応を抑制する点から、反応温度は100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい。
反応方式としては、例えば、単一の反応器内に全ての原料を仕込んで反応を完結させる回分式、反応器内に原料を連続的に供給して連続的に反応させる連続式、反応器と配合タンクとを備え、反応器と配合タンクとの間で原料を循環させながら反応器で反応させる循環式などが挙げられる。なお、反応は副生する(メタ)アクリル酸を回収しながら行ってもよい。圧力は、減圧した状態、大気圧、加圧した状態のいずれでもよい。
(メタ)アクリル酸エステルを製造する際の反応時間は、反応容器内の(メタ)アクリル酸無水物又はアルコールの残量を基に適宜決定できる。通常は、(メタ)アクリル酸エステルに対するアルコールのモル比が0.05以下で反応を終了する。回収した(メタ)アクリル酸中のアルコール含有量を減らす観点から、(メタ)アクリル酸エステルに対するアルコールのモル比が0.03以下で反応を終了するのが好ましく、0.01以下で反応を終了するのがより好ましい。
反応時間は、仕込み比、反応温度から適宜決定することができるが、通常0.5〜48である。収率の観点から反応時間は1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。重合及び副反応抑制の観点から反応時間は36時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、12時間以下がさらに好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法においては、重合防止剤を使用することができる。重合防止剤は反応器中に導入し、蒸留塔の塔頂や塔の途中にも重合防止剤を導入することが好ましい。反応器に使用する重合防止剤としては、酸無水物及び(メタ)アクリル酸に対して不活性な重合防止剤が好ましい。
使用できる重合防止剤の例としては、工程(A)で使用する重合防止剤と同様のものが挙げられる。これらの重合防止剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合防止剤の添加量は、その種類や条件により影響されるが、反応液質量に対して0.01〜10000ppmの範囲が好ましい。また、反応液に酸素を含む気体をバブリングさせることにより、重合防止効果が向上することがある。
[工程(C):前記工程(B)で得られた未精製の(メタ)アクリル酸エステルを精製して(メタ)アクリル酸エステルを得る工程]
工程(C)における副生する前記工程(B)で得られた(メタ)アクリル酸エステルを精製して(メタ)アクリル酸エステルを得る工程について説明する。工程(C)は以下の工程(C1)と工程(C2)を含んでいる。
工程(C1):前記工程(B)の反応で副生する(メタ)アクリル酸を、前記工程(B)の反応で副生する前記アルコールと前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物との反応生成物、(メタ)アクリル酸エステルおよび前記アルコールの合計の含有量が留出物中3質量%以下になるように、蒸留によって回収する工程、
工程(C2):前記工程(C1)において留出しなかった反応液を精製して、(メタ)アクリル酸エステルを得る工程。
工程(C1)において、(メタ)アクリル酸の回収に際しては、(メタ)アクリル酸に含まれる前記工程(B)の反応で副生する、前記アルコールと前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物との反応生成物、(メタ)アクリル酸エステルおよび前記アルコールの合計の含有量が留出物中3質量%以下になるように、蒸留によって回収する必要がある。以下、「前記工程(B)の反応で副生する、前記アルコールと前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物との反応生成物、(メタ)アクリル酸エステルおよび前記アルコールの合計の含有量」を「混入物含有量」と表記する。
回収される(メタ)アクリル酸に含まれる混入物含有量が多いと、工程(A)において酢酸エステル等の脂肪酸エステルが副生する。副生した酢酸エステルは安定であるため、その後の工程(B)においても残留する。酢酸エステルは(メタ)アクリル酸エステルと沸点が大きく変わらない場合が多く、酢酸エステルと(メタ)アクリル酸エステルを蒸留などの精製で分離することは困難であり、酢酸エステルの副生は(メタ)アクリル酸エステルの純度低下につながる。また、(メタ)アクリル酸エステル中の酢酸エステルは、その含有量が多いほど、精製により取り除かれる割合が少なくなる。
(メタ)アクリル酸エステルの純度低下を抑制する観点から、回収される(メタ)アクリル酸に含まれる混入物含有量は3質量%以下とする。好ましくは、1質量%以下である。蒸留により回収した(メタ)アクリル酸を再利用して製造する(メタ)アクリル酸エステル中の酢酸エステル量を低減することができることから、0.5質量%以下にすることがさらに好ましい。
混入物含有量を低減する方法として、アルコール量を低減する場合は、前述した範囲に(メタ)アクリル酸無水物に対するアルコールの使用量を調整する方法、蒸留条件を適宜調整する方法が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルや、アルコールと前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物との反応生成物の量を低減する場合は、蒸留条件を適宜調整する方法が挙げられる。(メタ)アクリル酸を回収する方法としては、例えば、単蒸留、複数段の蒸留塔(精留塔)を用いて蒸留する方法が挙げられる。蒸留塔には、例えば、ステンレス鋼、ガラス、陶磁器製などのラシヒリング、レッシングリング、ディクソンパッキン、ポールリング、サドル、スルザーパッキンなどの形状を有する充填物を使用した充填塔、多孔板塔や泡鐘塔などの棚段塔などが使用できる。蒸留塔は、反応器の上部に連接された形態、配管などで反応器と接続された別容器の上部に連接された形態、反応器から蒸留塔の上段から下段のいずれかの位置に配管などによりつながれた形態のいずれでもよい。いずれの形態も反応器と蒸留塔の間の経路は一つでも複数でもよく、途中に熱交換器などの装置が介在していてもよい。
蒸留塔の理論段数は、(メタ)アクリル酸に含まれる混入物含有量の低減の観点から、3段以上が好ましく、5段以上がより好ましい。一方、差圧及び装置規模の点から30段以下が好ましく、20段以下がより好ましい。
蒸留では、還流器を使用しない内部還流や還流器を使用して還流比を制御する方法が使用できる。還流比は、装置の規模、生産性、分離性などを考慮し適宜決めることができるが、0.2〜10の範囲が好ましい。還流比は、(メタ)アクリル酸に含まれる混入物含有量の低減の観点から、0.5以上がより好ましく、1以上がさらに好ましい。一方、生産性の点から6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。還流比は反応液の組成にあわせて、反応中に適宜調整することが好ましい。
(メタ)アクリル酸の回収量は、(メタ)アクリル酸に含まれる混入物含有量の低減の観点から、処理する反応液に含まれる(メタ)アクリル酸の96質量%以下にすることが好ましく、94質量%以下にすることがより好ましく、92質量%以下にすることがさらに好ましい。その後に留出する混入物含有量が多い(メタ)アクリル酸は、新たに(メタ)アクリル酸エステルを製造する工程や新たに製造した(メタ)アクリル酸エステルの精製時に導入して、共に精製してもよい。
蒸留温度は10〜150℃の範囲で実施できる。蒸気量を十分に維持する観点から蒸留温度は30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。重合や副反応を抑制する観点から蒸留温度は130℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。
圧力は、温度や蒸留塔の段数などを考慮して適宜決めることができる。蒸留温度を低くできる観点から減圧下で蒸留することが好ましい。
(メタ)アクリル酸の回収においては、重合防止剤を使用することができる。重合防止剤は反応器中に導入し、蒸留塔の塔頂や塔の途中にも重合防止剤を導入することが好ましい。反応器に使用する重合防止剤は、(メタ)アクリル酸に対して不活性な重合防止剤が好ましい。
使用できる重合防止剤の例としては、工程(A)と同様の重合防止剤が挙げられる。これらの重合防止剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
以上の条件を適宜設定することにより、回収される(メタ)アクリル酸に含まれる混入物含有量を3質量%以下にすることが可能である。
工程(C2)において、(メタ)アクリル酸エステルは(メタ)アクリル酸回収後、蒸留や吸着剤処理、洗浄、晶析など既知の方法によって精製することができる。
(メタ)アクリル酸エステルを蒸留する方法としては、例えば、単蒸留、複数段の蒸留塔(精留塔)、薄膜蒸留などの方法が挙げられる。蒸留塔には、例えば、ステンレス鋼、ガラス、陶磁器製などのラシヒリング、レッシングリング、ディクソンパッキン、ポールリング、サドル、スルザーパッキンなどの形状を有する充填物を使用した充填塔、多孔板塔や泡鐘塔などの棚段塔などが使用できる。蒸留塔は、反応器の上部に連接された形態、配管などで反応器と接続された別容器の上部に連接された形態、反応器から蒸留塔の上段から下段のいずれかの位置に配管などによりつながれた形態のいずれでも良い。いずれの形態も反応器と蒸留塔の間の経路は一つでも複数でもよく、途中に熱交換器などの装置が介在していても良い。
蒸留塔の理論段数は、(メタ)アクリル酸エステルの純度の観点から、3段以上が好ましく、5段以上がより好ましい。一方、差圧及び装置規模の観点から30段以下が好ましく、20段以下がより好ましい。
蒸留では、還流器を使用しない内部還流や還流器を使用して還流比を制御する方法が使用できる。還流比は、装置の規模、生産性、分離性などを考慮し適宜決めることができるが、0.2〜10の範囲が好ましい。還流比は、(メタ)アクリル酸エステルの純度の観点から、0.5以上がより好ましく、1以上がさらに好ましい。一方、生産性の点から6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。還流比は反応液の組成にあわせて、反応中に適宜調整することが好ましい。
蒸留温度は10〜180℃の範囲で実施できる。蒸気量を十分に維持する観点から蒸留温度は30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。重合や副反応を抑制する観点から蒸留温度は160℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。
圧力は、温度や蒸留塔の段数などを考慮して適宜決定することができる。蒸留温度を低く出来る観点から減圧下で蒸留することが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルを洗浄する方法としては、水、食塩、硫酸ナトリウムなどの塩の水溶液、塩基性物質の水溶液によって洗浄する方法が挙げられる。塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、トリエチルアミンなどの有機塩基等が挙げられる。また、これらの塩基性物質を2種類以上組み合わせて使用することも可能である。洗浄は1回でも複数回でもよい。更に、異なる塩基性物質の水溶液により複数回の洗浄を行うこともできる。塩基性物質で洗浄後は、有機層に残存する塩基性物質を除くために水による洗浄を行うことが好ましい。洗浄に使用する水は、蒸留水やイオン交換樹脂等で脱イオンされた純水を使用することが好ましい。
洗浄用水溶液中の塩や塩基性物質の濃度は1〜30質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましい。洗浄水の量が1質量%未満であると、十分に洗浄の効果が得られず、また30質量%を超えると析出物が生じる場合がある。
反応液の分離性を上げるため必要に応じて有機溶媒を加えてもよい。使用できる溶媒の例としては工程(B)で上げたものと同じ溶媒が使用できる。
溶媒の量としては、反応液に対し0.1〜10倍が好ましく、0.5〜5倍がより好ましい。溶媒の量が0.1倍未満であると、洗浄に使用する水や水溶液への移動が起こる場合がある。また10倍を超えると溶媒を回収する際に時間がかかる場合がある。
(メタ)アクリル酸エステルを吸着剤処理する方法としては、カラムクロマトグラフィー、吸着剤を懸濁して不純物を吸着させた後、吸着剤を分離する方法などが挙げられる。
吸着剤としては、活性白土、ハイドロタルサイト類、多孔質の重合体、イオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂又は陰イオン交換樹脂)、活性炭、吸着樹脂、シリカゲル、シリカアルミナ系吸着剤、アルミナゲル、活性アルミナ、二酸化ケイ素、ゼオライト等が挙げられる。
吸着剤使用量は(メタ)アクリル酸エステルに対し0.05〜20質量%である。特に0.5〜10質量%が好ましい。0.05質量%より少ない場合は不純物の低減効果が充分に得られず、20質量%より多い場合は(メタ)アクリル酸エステルの吸着によるロスや吸着剤をろ過などにより分離する場合の負荷が大きくなる。
(メタ)アクリル酸エステルと吸着剤とを接触させる際の温度は、特に限定されないが、通常、0〜100℃である。処理時の副反応抑制の観点から接触させる際の温度は、60℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。
反応液と吸着剤とを接触させる際の時間は、吸着剤の種類やその使用量などによって異なるが、通常、1〜120分間程度、特に3〜60分間程度が好ましい。
吸着剤による吸着処理を施した後には、例えば、ろ過などの方法により、(メタ)アクリル酸エステルと吸着剤とを分離することができる。フィルターとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂製メンブランフィルターなどが挙げられる。
反応液に必要に応じて有機溶媒を加えてもよい。使用できる溶媒の例としては工程(B)で挙げたものと同じ溶媒が使用できる。
溶媒の量としては、反応液に対し0.1〜10倍が好ましく、0.5〜5倍がより好ましい。溶媒の量が0.1倍未満であると、洗浄に使用する水や水溶液への移動が起こる場合がある。また10倍を超えると溶媒を回収する際に時間がかかる。
(メタ)アクリル酸エステルを晶析する方法としては、反応液の温度を下げて結晶を析出させる方法、反応液中の低沸物質を除くことによって濃縮して結晶を析出させる方法などが挙げられる。晶析を行う場合、溶媒を添加してもよい。溶媒は飽和炭化水素溶媒が好ましい。飽和炭化水素溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、ノナン、オクタン、イソオクタン、デカンなどが挙げられる。これらは1種でもよく、2種以上を混合して使用しても良い。
(メタ)アクリル酸エステルの精製においては、重合防止剤を使用することができる。重合防止剤は反応器中に導入し、蒸留塔の塔頂や塔の途中にも重合防止剤を導入することが好ましい。反応器に使用する重合防止剤は、(メタ)アクリル酸エステルに対して不活性な重合防止剤が好ましい。
使用できる重合防止剤の例としては、工程(A)と同様の重合防止剤が挙げられる。これらの重合防止剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[回収(メタ)アクリル酸の使用]
本発明では、一連の工程(A)〜工程(C)を行って(メタ)アクリル酸エステルを製造した後に、次の一連の工程(A)〜工程(C)を行う際に、工程(A)において、前の一連の工程中の工程(C1)で回収した(メタ)アクリル酸を用いる。
工程(C1)において回収した(メタ)アクリル酸を前記工程(A)で用いる(メタ)アクリル酸として再利用する方法について説明する。
前記工程(C1)において回収した(メタ)アクリル酸は純度が高いため、そのまま前記工程(A)で用いる(メタ)アクリル酸として使用可能であるが、必要により洗浄、再蒸留、吸着剤による処理などを行ってもよい。
前記工程(C1)において回収した(メタ)アクリル酸を前記工程(A)で用いる(メタ)アクリル酸として再利用する際に、別途新たな(メタ)アクリル酸を追加使用してもよい。別途新たな(メタ)アクリル酸を追加使用する場合、回収した(メタ)アクリル酸と新たな(メタ)アクリル酸との比率は、回収した(メタ)アクリル酸100質量%に対し、新たな(メタ)アクリル酸を1〜99質量%混合させることが好ましい。
前記工程(C1)において回収した(メタ)アクリル酸に(メタ)アクリル酸無水物が含まれる場合があるが、そのまま前記工程(A)で用いる(メタ)アクリル酸として使用可能である。必要により、(メタ)アクリル酸無水物含有量に相当する(メタ)アクリル酸の仕込み量又は前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物の仕込み量を加減してもよい。
また、回収した(メタ)アクリル酸に含まれる微量の、前記工程(B)の反応で副生する前記アルコールと前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物との反応生成物、(メタ)アクリル酸エステルおよび前記アルコールを、蒸留や吸着剤処理、洗浄、晶析など既知の方法によって精製して、さらにその含有量を低減させてもよい。
なお、前記工程(A)〜(C)および回収(メタ)アクリル酸の使用は、1回でも複数回繰り返してもよい。
[(メタ)アクリル酸無水物の保存方法]
本発明の(メタ)アクリル酸無水物の保存方法は、(メタ)アクリル酸無水物1モルに対して0.3〜2モルとなる量の(メタ)アクリル酸を共存させることを特徴とする。
なお、本発明において保存とは、他の原料との反応に使用するための(メタ)アクリル酸無水物混合物の形態で、貯蔵容器や反応容器内で保持することとする。例えば、未精製の(メタ)アクリル酸無水物とアルコールを反応させて(メタ)アクリル酸エステルを製造する場合における未精製品を貯蔵容器や反応容器内で保持する状態などが挙げられる。したがって、(メタ)アクリル酸無水物製造時や(メタ)アクリル酸無水物精製時、仕込み時などの組成が大きく変化する状態は、保存には含めない。貯蔵容器は、工場などで使用される貯蔵タンク、ドラム缶、ローリーなどいかなる形態でもよい。
本発明の(メタ)アクリル酸無水物の保存方法においては、反応液中の(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸のモル比を0.3〜2の範囲に調整する。前記モル比を0.3以上とすることにより、(メタ)アクリル酸無水物の安定性が向上する。また、前記モル比が大きいほど(メタ)アクリル酸無水物の安定性がより向上するため、0.5以上が好ましい。一方、(メタ)アクリル酸が多いほど貯蔵時に容量の大きな容器が必要になること、得られた反応液を無水(メタ)アクリル酸原料としてアルコールと反応させて当該アルコールの(メタ)アクリル酸エステルを製造させる際に反応器が大きくなること、得られた(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とを分離するための負荷が増大することなどの理由により、前記モル比は2以下とする。前記モル比は1以下が好ましく、0.8以下がより好ましい。
前記モル比を満たすための(メタ)アクリル酸量の調整は、不足分の(メタ)アクリル酸を添加しても良いし、(メタ)アクリル酸無水物を製造する際、所望の組成になるように反応条件、蒸留条件を制御してもよい。
本発明における保存方法における保存温度は、−30〜120℃の範囲が好ましい。(メタ)アクリル酸無水物又は(メタ)アクリル酸の凝固点(融点)の点から保存温度は0℃以上がより好ましく、10℃以上がさらに好ましい。一方、重合や副反応を抑制する点から、保存温度は100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい。
(メタ)アクリル酸無水物は、本発明の製造方法において、反応終了時の触媒が存在した反応液でも、洗浄又は蒸留精製したものでも良い。洗浄又は蒸留精製したものは、(メタ)アクリル酸がほとんど含有されておらず、安定性が著しく低下する。そのような組成の(メタ)アクリル酸無水物に対し、本発明の保存方法は非常に有効である。
本発明における保存方法では、(メタ)アクリル酸無水物に含まれる金属化合物の種類及び量が、保存安定性の大きな要因となる。保存時の好ましくない副反応生成物が少ないことから、前記金属化合物はPaulingの電気陰性度が1.0以上の金属の化合物であることが好ましく、1.5以上の金属の化合物であることがより好ましい。前記金属化合物は、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、インジウムから選択される1種以上の金属の化合物であることがさらに好ましい。中でも、コバルト、ニッケル、インジウムの化合物が最適である。金属化合物は単独で存在していてもよいし2種以上存在していてもよい。金属化合物は、通常、硫酸塩、塩化物、硝酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩などの無機酸との塩;酢酸塩や(メタ)アクリル酸塩、スルホン酸塩などの有機酸塩;アセチルアセトナート、シクロペンタジエニル錯体などの錯塩が溶解した形で存在する。
金属化合物の含有量は、(メタ)アクリル酸無水物に対し0.005倍モル以下であることが保存安定性の観点から好ましい。同様の理由で、金属化合物の含有量は(メタ)アクリル酸無水物に対して0.001倍モル以下がより好ましく、0.0005倍モル以下がさらに好ましい。未精製のままでも反応試剤として十分使用できることから、0.0001倍モル以下が特に好ましい。副反応を低減できる点から、金属化合物の含有量は(メタ)アクリル酸無水物に対し0.000001倍モル以上が好ましく、0.000005倍モル以上がより好ましく、0.00001倍モル以上がさらに好ましい。
本発明においては、(メタ)アクリル酸無水物の保存に際しても重合防止剤を使用することができる。重合防止剤は(メタ)アクリル酸無水物製造時の反応や蒸留の段階で添加したものでも良いし、保存時に別途保存容器中に導入してもよい。使用する重合防止剤は、前述した酸無水物及び(メタ)アクリル酸に対して不活性な重合防止剤が好ましい。
使用できる重合防止剤の例としては、工程(A)で使用する重合防止剤と同様のものが挙げられる。これらの重合防止剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合防止剤の添加量は、その種類や条件により影響されるが、保存液重量に対して0.01〜10000ppmの範囲が好ましい。また、酸素を含む気体をバブリングさせることにより、重合防止効果が向上する場合がある。
溶媒が存在すると、溶媒に含まれる不純物や安定剤、(メタ)アクリル酸無水物と溶媒との反応物の生成等により純度が低下するため、保存は無溶媒で行うことが好ましい。装置を洗浄した際に残留した溶媒などが混入する場合があるが、反応液に対して10質量%以下であれば問題ない。
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例において、分析及び定量はガスクロマトグラフィー(カラム:J&B Scientific社製 「DB−5」 長さ30m×内径0.53mm 膜厚3μm、インジェクション温度:200℃、ディテクター温度:250℃、カラム温度及び時間:60℃1分 10℃/分で昇温 250℃で保持)により行った。
(実施例1)
精留塔(内径35mm、理論段数10段)、攪拌羽根、温度計、エアー吹き込み管を付した3Lの5つ口フラスコに、無水酢酸918g(9.0mol)、メタクリル酸1705g(19.8mol)、触媒として酢酸ニッケル4水和物22.5mg(0.00009mol)及び重合防止剤としてフェノチアジン2.6gをフラスコ内に仕込んだ。フラスコの内液をエアーバブリング及び攪拌しながら、フラスコをオイルバスで加熱した。内温が80℃に達した後、1時間保持して反応液の組成が平衡に達するようにした。さらに30分後、エアーバブリングした状態で真空ポンプを起動させ、減圧を開始した。反応液の温度70℃、フラスコ内の圧力6.4kPaで全還流状態とした。その後、還流比1.5で塔頂から溜出液を抜き出し、この時点を反応開始とした。8時間後に還流比を2.0に変えて、24時間かけて反応を行った。この間、塔内における重合防止のため、フェノチアジン192mgを溶解させたメタクリル酸96gを精留塔の上部に供給した。このメタクリル酸は、精留塔内を下降して、フラスコ内に導入される。反応液の温度を徐々に83℃まで上げ、フラスコ内の圧力を徐々に2.1kPaに下げて行き、酢酸が主成分の溜出液を精留塔の塔頂から抜き出した。溜出液は15℃に冷却した冷却管及び液体窒素につけたトラップで回収した。反応終了後、反応液を冷却した。
反応時に、釜内の反応液及び溜出液の組成をガスクロマトグラフィーで分析し、メタクリル酸無水物、混合酸無水物、無水酢酸、酢酸、メタクリル酸の定量を行った。
反応終了時の反応液の重量は1409gであり、組成はメタクリル酸無水物80.6質量%、混合酸無水物0質量%、無水酢酸0質量%、酢酸0質量%、メタクリル酸13.8質量%であり、無水酢酸基準(反応終了時のメタクリル酸無水物のモル数を、仕込んだ無水酢酸のモル数で除したものに100を乗じて算出)のメタクリル酸無水物収率は81.9%であった。このときメタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比は0.31であった。
溜出液の重量は1305gであり、組成はメタクリル酸無水物0.3質量%、混合酸無水物2.6質量%、無水酢酸8.6質量%、酢酸70.4質量%、メタクリル酸17.6質量%であった。
定量結果より、反応液及び溜出液中のメタクリル酸無水物、混合酸無水物、無水酢酸のモル数の合計を算出した。この値をフラスコに仕込んだ無水酢酸のモル数の合計で割った結果を無水物バランスとした。このときの無水物バランスは0.974であった。1から無水物バランスを引いた値に100を乗じ、百分率で表したものを副反応率とした。表1に無水物バランスと副反応率、メタクリル酸無水物に対するマイケル付加物と思われる化合物のガスクロマトグラフィー面積比を示す。
(実施例2〜8)
触媒の種類と触媒量を表1に示すものに変えた以外は実施例1と同様に反応を実施した。表1にメタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比、無水物バランス、副反応率、メタクリル酸無水物に対するマイケル付加物と思われる化合物のガスクロマトグラフィー面積比を示す。
(実施例9)
メタクリル酸の仕込み量を1858g(21.6mol)に変えた以外は実施例1と同様に反応を実施した。表1にメタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比、無水物バランス、副反応率、メタクリル酸無水物に対するマイケル付加物と思われる化合物のガスクロマトグラフィー面積比を示す。
(参考例1)
3Lの5つ口フラスコに滴下ロートを取り付け、反応開始12時間後に蒸留精製したメタクリル酸無水物462g(3.0mol)を供給した以外は、実施例1と同じ条件で反応を実施した。このメタクリル酸は、精留塔内を下降して、フラスコ内に導入される。
反応終了時の反応液の重量は1867gであり、組成はメタクリル酸無水物82.8質量%、混合酸無水物0.2質量%、無水酢酸0質量%、酢酸0質量%、メタクリル酸10.8質量%であった。このときメタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比は0.23であった。
溜出液の重量は1308gであり、組成はメタクリル酸無水物0.7質量%、混合酸無水物2.6質量%、無水酢酸8.5質量%、酢酸70.4質量%、メタクリル酸17.3質量%であった。このときの無水物バランスは0.956であった。1から無水物バランスを引いた値に100を乗じ、百分率で表したものを副反応率とした。表1にメタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比、無水物バランス、副反応率、メタクリル酸無水物に対するマイケル付加物と思われる化合物のガスクロマトグラフィー面積比を示す。
(比較例1)
触媒と触媒の量を表1に示すものに変えた以外は参考例1と同様に反応を実施した。表1にメタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比、無水物バランス、副反応率、メタクリル酸無水物に対するマイケル付加物と思われる化合物のガスクロマトグラフィー面積比を示す。
(比較例2)
12理論段の分離効率を有する量の充填材(ヘリパックNo.2)を充填した精留塔(内径30mm)、攪拌羽根、温度計、エアー吹き込み管を付した1Lの5つ口フラスコに、無水酢酸71.5g(0.7mol)、メタクリル酸172.2g(2.0mol)、触媒として酢酸ナトリウム1.72g(メタクリル酸に対して1質量%)及び重合防止剤としてBHT0.04gをフラスコ内に仕込んだ。フラスコの内液をエアーバブリング及び攪拌しながら、フラスコをオイルバスで加熱した。内温が80℃に達した後、1時間保持して反応液の組成が平衡に達するようにした後、エアーバブリングした状態で真空ポンプを起動させ、減圧を開始した。さらに減圧を行い、反応液の温度80℃で全還流状態とした。その後、還流比4で塔頂から溜出液を抜き出し、この時点を反応開始とした。蒸気の量が一定になるように4.0kPaまで減圧を行い、7時間後に反応を終了した。この間、塔内における重合防止のため、5%のTopanol A及び5%のHQを溶解させた酢酸14mlを精留塔の上部に供給した。酢酸が主成分の溜出液を精留塔の塔頂から抜き出し、15℃に冷却した冷却管及び液体窒素につけたトラップで回収した。反応終了後、反応液を冷却した。
反応時に、釜内の反応液及び溜出液の組成をガスクロマトグラフィーで分析し、メタクリル酸無水物、混合酸無水物、無水酢酸、酢酸、メタクリル酸の定量を行った。
反応終了時の反応液の重量は121.4gであり、組成はメタクリル酸無水物80.1質量%、混合酸無水物1.7質量%、無水酢酸0.1質量%、酢酸0.6質量%、メタクリル酸9.8質量%であった。ガスクマトグラフィでの分析では、メタクリル酸無水物に酢酸やメタクリル酸が一つまたは二つマイケル付加した化合物と思われるピークが多数検出された。
無水酢酸基準(反応終了時のメタクリル酸無水物のモル数を、仕込んだ無水酢酸のモル数で除したものに100を乗じて算出)のメタクリル酸無水物収率は90.1%であった。このときメタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比は0.22であった。
溜出液の重量は128.5gであり、組成はメタクリル酸無水物0.1質量%、混合酸無水物0.2質量%、無水酢酸0.9質量%、酢酸70.0質量%、メタクリル酸28.5質量%であった。
定量結果より、反応液及び溜出液中のメタクリル酸無水物、混合酸無水物、無水酢酸のモル数の合計を算出した。この値をフラスコに仕込んだ無水酢酸のモル数の合計で割った結果を無水物バランスとした。このときの無水物バランスは0.946であった。1から無水物バランスを引いた値に100を乗じ、百分率で表したものを副反応率とした。表1にメタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比、無水物バランス、副反応率、メタクリル酸無水物に対するマイケル付加物と思われる化合物のガスクロマトグラフィー面積比を示す。
Figure 2010016493
(実施例10)
耐圧密閉容器に蒸留精製したメタクリル酸無水物30.8g(0.2mol)を入れ、さらにメタクリル酸5.2g(0.06mol)及びフェノチアジン30mgを入れた。容器を密閉し遮光下、80℃、24時間加熱攪拌した。冷却後、反応液をガスクロマトグラフィーで定量分析した。その結果、反応液中に残存したメタクリル酸無水物は、加熱前の84.9%であった(残存率とする)。100%から残存率を引いた値を副生物生成率とした。残存率を図1に示し、表2に加熱処理前のメタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比、残存率、副生物生成率、メタクリル酸無水物に対するマイケル付加物と思われる化合物のガスクロマトグラフィー面積比を示す。
(比較例3)
耐圧密閉容器に蒸留精製したメタクリル酸無水物30.8g(0.2mol)及びフェノチアジン30mgを入れた。容器を密閉し遮光下、80℃、24時間加熱攪拌した。冷却後、反応液をガスクロマトグラフィーで定量分析した。その結果、反応液中に残存したメタクリル酸無水物の含有量は、加熱前の80.4%であった(残存率とする)。100%から残存率を引いた値を副生物生成率とした。残存率を図1に示し、表2に加熱処理前のメタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比、残存率、副生物生成率、メタクリル酸無水物に対するマイケル付加物と思われる化合物のガスクロマトグラフィー面積比を示す。また、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果の各化合物(メタクリル酸及びメタクリル酸無水物以外はリテンションタイムで示す)の面積百分率を表3に示す。
(比較例4)
メタクリル酸量をメタクリル酸無水物1モルに対し0.1モルの比になる量に変更した以外は実施例10と同様に行った。結果を図1及び表2に示す。
(実施例11〜14)
メタクリル酸量をメタクリル酸無水物1モルに対し0.5モル(実施例11)、0.8モル(実施例12)、1.0モル(実施例13)、2.0モル(実施例14)の比になる量に変更した以外は実施例10と同様に行った。結果を図1及び表2に示す。また、実施例13について、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果の各化合物(メタクリル酸及びメタクリル酸無水物以外はリテンションタイムで示す)の面積百分率を表3に示す。表3より、生成している不純物がまったく異なることが分かる。
(参考例2)
メタクリル酸量をメタクリル酸無水物1モルに対し3.0モルの比になる量に変更した以外は実施例10と同様に行った。結果を図1及び表2に示す。
図1より、メタクリル酸無水物に対しメタクリル酸をモル比で0.3以上添加することにより、加熱後のメタクリル酸無水物の残存率が向上することがわかる。また、メタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比を増加させるにつれ、メタクリル酸無水物の残存率がさらに向上していることから、メタクリル酸無水物に対しメタクリル酸をモル比で0.3以上添加することにより、メタクリル酸無水物の保存において有効な効果が得られることがわかる。モル比が2を超えると、残存率の向上が少なく、モル比が2までで十分であることが分かる。
Figure 2010016493
Figure 2010016493
(実施例15)
酢酸ニッケル四水和物を0.002mmol加えた以外は実施例13と同様に行った。表4に加熱処理前のメタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比、残存率、副生物生成率、メタクリル酸無水物に対するマイケル付加物と思われる化合物のガスクロマトグラフィー面積比を示す。
(実施例16)
酢酸ニッケル四水和物を0.02mmolに変更した以外は実施例15と同様に行った。表4に加熱処理前のメタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比、残存率、副生物生成率、メタクリル酸無水物に対するマイケル付加物と思われる化合物のガスクロマトグラフィー面積比を示す。
(実施例17)
酢酸ニッケル四水和物を酢酸コバルト四水和物0.002mmolに変更した以外は実施例15と同様に行った。表4に加熱処理前のメタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比、残存率、副生物生成率、メタクリル酸無水物に対するマイケル付加物と思われる化合物のガスクロマトグラフィー面積比を示す。
(実施例18)
酢酸ニッケル四水和物を酢酸インジウム0.002mmolに変更した以外は実施例15と同様に行った。表4に加熱処理前のメタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比、残存率、副生物生成率、メタクリル酸無水物に対するマイケル付加物と思われる化合物のガスクロマトグラフィー面積比を示す。
(参考例3)
酢酸ニッケル四水和物を炭酸ナトリウム0.002mmolに変更した以外は実施例15と同様に行った。表4に加熱処理前のメタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比、残存率、副生物生成率、メタクリル酸無水物に対するマイケル付加物と思われる化合物のガスクロマトグラフィー面積比を示す。
(参考例4)
酢酸ニッケル四水和物を炭酸ナトリウム0.02mmolに変更した以外は実施例15と同様に行った。表4に加熱処理前のメタクリル酸無水物に対するメタクリル酸のモル比、残存率、副生物生成率、メタクリル酸無水物に対するマイケル付加物と思われる化合物のガスクロマトグラフィー面積比を示す。
Figure 2010016493
(実施例19)
(工程(A))
精留塔(内径35mm、理論段数10段)、攪拌羽根、温度計、エアー吹き込み管を付した3Lの5つ口フラスコに、無水酢酸918g(9.0mol)、メタクリル酸1705g(19.8mol)、触媒として酢酸ニッケル4水和物22.5mg(0.00009mol)及び重合防止剤としてフェノチアジン2.6gをフラスコ内に仕込んだ。フラスコの内液をエアーバブリング及び攪拌しながら、フラスコをオイルバスで加熱した。内温が80℃に達した後、1時間保持して反応液の組成が平衡に達するようにした。さらに30分後、エアーバブリングした状態で真空ポンプを起動させて減圧を開始した。反応液の温度70℃、フラスコ内の圧力6.4kPaで全還流状態とした。その後、還流比1.5で塔頂から溜出液を抜き出し、この時点を反応開始とした。8時間後に還流比を2.0に変えて、24時間かけて反応を行った。この間、精留塔における重合の防止のため、フェノチアジン192mgを溶解させたメタクリル酸96gを精留塔の上部に供給した。反応液の温度を徐々に83℃まで上げ、フラスコ内の圧力を徐々に2.1kPaに下げて行き、酢酸が主成分の溜出液を精留塔の塔頂から抜き出した。溜出液は15℃に冷却した冷却管及び液体窒素につけたトラップで回収した。反応終了後、反応液を冷却した。
反応終了時の反応液の重量は1409gであり、組成はメタクリル酸無水物80.6質量%、混合酸無水物0.1質量%、無水酢酸0質量%、酢酸0質量%、メタクリル酸13.8質量%であり、無水酢酸基準(反応終了時のメタクリル酸無水物のモル数を仕込んだ無水酢酸のモル数で除したものに100を乗じて算出)のメタクリル酸無水物収率は81.9%であった。
(工程(B))
前記反応液の入った3Lフラスコにフェノール696g(7.4mol)と98質量%硫酸35g(0.35mol)を加え、エアーバブリングした状態で80℃に加熱後8時間反応させたところ、メタクリル酸無水物が完全に消失した。このときのメタクリル酸無水物基準のフェニルメタクリレートの収率(反応終了時のフェニルメタクリレートのモル数をメタクリル酸無水物のモル数で除したものに100を乗じて算出)は99.1%であり、含有されるメタクリル酸は823gであった。
(工程(C1))
エアーバブリングした状態で真空ポンプを起動させて減圧を開始した。反応液の温度80℃、フラスコ内の圧力2.1kPaで全還流状態とした。その後、還流比1.5で塔頂から溜出液を抜き出した。溜出液は15℃に冷却した冷却管及び液体窒素につけたトラップで回収した。圧力はそのままで115℃まで昇温し、溜出液が777g出たところで回収を終了した。この間、精留塔における重合の防止のためフェノチアジン64mgを溶解させたメタクリル酸32gを精留塔の上部に供給した。このときの溜出液の組成はメタクリル酸99.2質量%、フェニルメタクリレート0.1質量%、フェノール0.6質量%であり、メタクリル酸の回収率(溜出液中のメタクリル酸のモル数を反応液中のメタクリル酸のモル数で除したものに100を乗じて算出)は90.1%であった。
(工程(C2))
反応液をフラスコから取り出し、ヘキサン2Lに溶解して、純水2Lで2回洗浄した。7質量%の炭酸ナトリウム水溶液2Lで2回洗浄した後、1質量%の水酸化ナトリウム水溶液2Lで1回洗浄し、純水2Lで2回洗浄した。ヘキサン溶液をエバポレーターで濃縮し、温度70〜120℃、圧力300〜400Paで単蒸留を行った。全溜分を回収した結果、純度99.7質量%のフェニルメタクリレートを1010g(6.2mol)得た。このときの酢酸フェニル含有量は0.01質量%以下(検出限界以下)であった。
(回収メタクリル酸の使用)
回収したメタクリル酸を含む溜出液770gに、新たにメタクリル酸942gを加えたものをメタクリル酸原料に使用して、新たなフェニルメタクリレート製造のための工程(A)〜(C2)を再度繰り返した。
新たなフェニルメタクリレート製造のための工程(C1)では、メタクリル酸の回収率は90.5%、組成はメタクリル酸99.2質量%、フェニルメタクリレート0.1質量%、フェノール0.6質量%であった。新たなフェニルメタクリレート製造のための工程(c2)で得られたフェニルメタクリレートは1008g(6.2mol)であり、純度は99.9質量%、酢酸フェニル含有量は0.01質量%以下(検出限界以下)であった。
(実施例20)
工程(B)の操作で触媒を炭酸ナトリウムに変え、フェノールの量を668g(7.1mol)にした以外は実施例19と同様に反応を実施した。その結果、工程(B)でのフェニルメタクリレートの収率は94.7%であった。
工程(C1)で、途中で反応液の粘性が増大したため、メタクリル酸の回収率は、86.9%であり、組成はメタクリル酸99.1質量%、フェニルメタクリレート0.1質量%、フェノール0.7質量%であった。
工程(C2)では、純度99.7質量%のフェニルメタクリレートを970g(6.0mol)得た。このときの酢酸フェニル含有量は0.01質量%以下(検出限界以下)であった。
新たなフェニルメタクリレート製造のための工程(C1)でメタクリル酸の回収率は47.5%、組成はメタクリル酸99.0質量%、フェニルメタクリレート0.1質量%、フェノール0.7質量%であった。
新たなフェニルメタクリレート製造のための工程(C2)で得られたフェニルメタクリレートは961(5.9mol)であり、純度は99.8質量%、酢酸フェニルの含有量は0.01質量%以下であった。
(実施例21)
工程(B)において、フェノールの量を706g(7.5mol)にして、溜出メタクリル酸中のフェニルメタクリレートの含有量0.1質量%、フェノールの含有量2.5質量%になるようにした以外は実施例19と同様に操作及び反応を行った。
新たなフェニルメタクリレート製造のための工程(C2)で得られたフェニルメタクリレートは1003g(6.2mol)であり、純度は99.6質量%、酢酸フェニルの含有量は0.2質量%であった。
(比較例5)
工程(B)において、フェノールの量を715g(7.6mol)にして、溜出メタクリル酸中のフェニルメタクリレートの含有量0.1質量%、フェノールの含有量3.8質量%になるようにした以外は実施例19と同様に操作及び反応を行った。
新たなフェニルメタクリレート製造のための工程(C2)で得られたフェニルメタクリレートは1001g(6.2mol)であり、純度は99.0質量%、酢酸フェニルの含有量は0.8質量%であった。
本発明の製造方法によれば高収率で(メタ)アクリル酸無水物の製造が可能になる。また、本発明の方法で(メタ)アクリル酸無水物とアルコール類を反応させることにより、高収率かつ高純度な(メタ)アクリル酸エステルを製造することが可能である。さらに本発明の保存方法によれば(メタ)アクリル酸無水物の保存時の分解を抑制することができる。

Claims (15)

  1. 下記一般式(1)で表される脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とを反応させて、副生する脂肪酸を抜き出しながら(メタ)アクリル酸無水物を製造する(メタ)アクリル酸無水物の製造方法であって、
    反応液中の(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸のモル比が0.3以上になるように調整しながら反応を行う(メタ)アクリル酸無水物の製造方法。
    Figure 2010016493
    (式(1)において、Rは直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基又はアルケニル基、Rは直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
  2. 反応液中の(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸のモル比が0.3以上になるように調整する方法が、(メタ)アクリル酸を反応液中に供給することである請求項1記載の(メタ)アクリル酸無水物の製造方法。
  3. 反応液中の(メタ)アクリル酸無水物に対する(メタ)アクリル酸のモル比が、反応終了時に0.3〜2となるように調整しながら反応を行う請求項1記載の(メタ)アクリル酸無水物の製造方法。
  4. 反応終了時の反応液中の(メタ)アクリル酸無水物に対する前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物のモル比が0.01以下である請求項3記載の(メタ)アクリル酸無水物の製造方法。
  5. Paulingの電気陰性度1.0以上の金属を含む化合物からなる触媒の存在下で、前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とを反応させる請求項1記載の(メタ)アクリル酸無水物の製造方法。
  6. 以下の一連の工程(A)〜工程(C)を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法であって、一連の工程(A)〜工程(C)を行って(メタ)アクリル酸エステルを製造した後に、次の一連の工程(A)〜工程(C)を行う際に、工程(A)において、前の一連の工程中の工程(C1)で回収した(メタ)アクリル酸を用いることを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
    (A)請求項1に記載の方法で(メタ)アクリル酸無水物を製造する工程、
    (B)アルコールと前記工程(A)の反応で得られる(メタ)アクリル酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸エステルを製造する工程、
    (C)前記工程(B)で得られた未精製の(メタ)アクリル酸エステルを精製して(メタ)アクリル酸エステルを得る工程であって、下記の工程(C1)と工程(C2)を含む工程、
    (C1)前記工程(B)の反応で副生する(メタ)アクリル酸を、前記工程(B)の反応で副生する前記アルコールと前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物との反応生成物、(メタ)アクリル酸エステルおよび前記アルコールの合計の含有量が留出物中3質量%以下になるように、蒸留によって回収する工程、
    (C2)前記工程(C1)において留出しなかった反応液を精製して、(メタ)アクリル酸エステルを得る工程。
  7. 前記工程(B)において、触媒として硫酸系触媒を使用する請求項6記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
  8. 下記一般式(1)で表される脂肪酸無水物と(メタ)アクリル酸とを反応させて、副生する脂肪酸を抜き出しながら(メタ)アクリル酸無水物を製造する(メタ)アクリル酸無水物の製造方法であって、
    Paulingの電気陰性度1.0以上の金属を含む化合物からなる触媒の存在下で反応を行うことを特徴とする(メタ)アクリル酸無水物の製造方法。
    Figure 2010016493
    (式(1)において、Rは直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基又はアルケニル基、Rは直鎖又は分岐状の炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
  9. Paulingの電気陰性度1.0以上の金属が、ニッケル、コバルトおよびインジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項8記載の(メタ)アクリル酸無水物の製造方法。
  10. 以下の一連の工程(A’)〜工程(C)を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法であって、一連の工程(A’)〜工程(C)を行って(メタ)アクリル酸エステルを製造した後に、次の一連の工程(A’)〜工程(C)を行う際に、工程(A’)において、前の一連の工程中の工程(C1)で回収した(メタ)アクリル酸を用いることを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
    (A’)請求項8記載の方法で(メタ)アクリル酸無水物を製造する工程、
    (B)アルコールと前記工程(A’)の反応で得られる(メタ)アクリル酸無水物とを反応させて(メタ)アクリル酸エステルを製造する工程、
    (C)前記工程(B)で得られた未精製の(メタ)アクリル酸エステルを精製して(メタ)アクリル酸エステルを得る工程であって、下記の工程(C1)と工程(C2)を含む工程、
    (C1)前記工程(B)の反応で副生する(メタ)アクリル酸を、前記工程(B)の反応で副生する前記アルコールと前記一般式(1)で表される脂肪酸無水物との反応生成物、(メタ)アクリル酸エステルおよび前記アルコールの合計の含有量が留出物中3質量%以下になるように、蒸留によって回収する工程、
    (C2)前記工程(C1)において留出しなかった反応液を精製して、(メタ)アクリル酸エステルを得る工程。
  11. 前記工程(B)において、触媒として硫酸系触媒を使用する請求項10記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
  12. (メタ)アクリル酸無水物1モルに対して0.3〜2モルとなる量の(メタ)アクリル酸を共存させる(メタ)アクリル酸無水物の保存方法。
  13. Paulingの電気陰性度1.0以上の金属を含む化合物の存在下で(メタ)アクリル酸無水物を保存する請求項12記載の方法。
  14. Paulingの電気陰性度1.0以上の金属が、ニッケル、コバルトおよびインジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項13記載の方法。
  15. (メタ)アクリル酸無水物を、溶媒の非存在下に保存する請求項12記載の方法。
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