JPWO2009063902A1 - 非水二次電池用電極およびそれを用いた非水二次電池、並びに電極の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
形態1のポリアミドイミドは、下記式(1)で表されるアラミド構造単位と、下記式(2)で表されるアミドイミド構造単位とを有し、前記アラミド構造単位と前記アミドイミド構造単位との合計を100モル%としたときに、前記アラミド構造単位が18〜55モル%であるアラミド−アミドイミド共重合体である。
形態2のポリアミドイミドは、下記式(5)で表されるアラミド構造単位と、下記式(6)で表されるアミドイミド構造単位とを有し、前記アラミド構造単位と前記アミドイミド構造単位との合計を100モル%としたとき、前記アラミド構造単位が18〜80モル%であるアラミド−アミドイミド共重合体である。
形態3のポリアミドイミドは、下記式(9)で表される構造単位と、下記式(10)で表される構造単位とを有し、前記両構造単位の合計を100モル%としたときに、下記式(9)で表される構造単位が60〜80モル%であるポリアミドイミドである。
負極活物質であるSiO粒子(平均粒径5.0μm)を沸騰床反応器中で約1000℃に加熱し、加熱されたSiO粒子にメタンと窒素ガスからなる25℃の混合ガスを接触させ、1000℃で60分間CVD処理を行った。このようにして前記混合ガスが熱分解して生じた炭素(以下「CVD炭素」ともいう。)をSiO粒子に堆積させて被覆層を形成し、負極材料を得た。
Liと反応しない絶縁性材料としてα−アルミナ(平均粒径1μm)96質量%(スラリー中の固形分の全量に対する質量割合、以下同じ。)と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)4質量%と、脱水NMPとを混合してコート層形成用スラリーを調製した。
SiO(平均粒径1μm)200gと、黒鉛(平均粒径3μm)60gと、バインダのポリエチレン樹脂粒子30gを4Lのステンレス鋼製の容器に入れ、更にステンレス鋼製のボールを入れて振動ミルにて3時間混合、粉砕、造粒を行った。その結果、平均粒径20μmの複合粒子(SiOと黒鉛の複合粒子)を作製できた。続いて、前記複合粒子を沸騰床反応器中で約950℃に加熱し、加熱された複合粒子にトルエンと窒素ガスとからなる25℃の混合ガスを接触させ、950℃で60分間CVD処理を行った。このようにして、前記混合ガスが熱分解して生じた炭素を前記複合粒子に堆積させて被覆層を形成し、負極材料を得た。
負極活物質をSiOからSiに変更した以外は、実施例3と同様にして負極を作製した。さらに、この負極を用いた以外は、実施例3と同様にして非水二次電池を作製した。
負極活物質であるSiO(平均粒径1μm)と、繊維状炭素(平均長さ2μm、平均直径0.08μm)と、ポリビニルピロリドン10gとを、エタノール1L中にて混合し、これらを更に湿式のジェットミルにて混合してスラリーを得た。このスラリーの調製に用いたSiOと繊維状炭素(CF)との総質量は100gとし、質量比は、SiO:CF=80:20とした。次に、前記スラリーを用いてスプレードライ法(雰囲気温度:200℃)にてSiOとCFの複合粒子を作製した。複合粒子の平均粒径は10μmであった。続いて、前記複合粒子を沸騰床反応器中で約1000℃に加熱し、加熱された複合粒子にベンゼンと窒素ガスとからなる25℃の混合ガスを接触させ、1000℃で60分間CVD処理を行った。このようにして,前記混合ガスが熱分解して生じた炭素(CVD炭素)を複合粒子に堆積させて被覆層を形成し、負極材料を得た。
負極活物質であるSiO(平均粒径1μm)と黒鉛(平均粒径2μm)を含むスラリーを用い、実施例5と同様にして、SiOと黒鉛との複合粒子を作製した。前記スラリーにおけるSiOと黒鉛の質量比は90:10であり、前記複合粒子の平均粒径は15μmであった。次いで、実施例5と同様にして、炭素を複合粒子に堆積させて被覆層を形成し、炭素被覆層を有する複合粒子とした。さらに、この複合粒子100gと、フェノール樹脂40gとをエタノール1L中に分散し、その分散液を噴霧し乾燥して(雰囲気温度200℃)、炭素被覆層を有する複合粒子の表面を、さらにフェノール樹脂にてコーティングした。次いで、前記複合粒子を1000℃で焼成して、前記炭素被覆層の上に難黒鉛化炭素を含む材料層を形成し、負極材料とした。
負極合剤中のバインダをポリイミドに変更し、負極合剤層の熱処理温度を220℃とした以外は実施例1と同様にして、負極を作製した。さらに、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
負極合剤中のバインダをポリフッ化ビニリデン(PVDF)に変更した以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。さらに、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
【発明の名称】非水二次電池用電極およびそれを用いた非水二次電池、並びに電極の製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、高容量で、充放電サイクル特性の良好な非水二次電池用電極およびそれを用いた非水二次電池、並びに電極の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非水二次電池は高電圧・高容量であることから、その発展に対して大きな期待が寄せられている。非水二次電池の負極材料(負極活物質)には、Li(リチウム)やLi合金の他、Liイオンを挿入および脱離可能な、天然または人造の黒鉛系炭素材料などが適用されている。
【0003】
ところが、最近では、小型化および多機能化した携帯機器用の電池について更なる高容量化が望まれており、これを受けて、低結晶性炭素、Si(シリコン)、Sn(錫)などのように、より多くのLiを収容可能な材料が負極材料(以下、「高容量負極材料」ともいう。)として注目を集めている。
【0004】
こうした非水二次電池用の高容量負極材料の一つとして、Siの超微粒子がSiO2中に分散した構造を持つSiOxが注目されている(例えば、特許文献1〜3)。この材料を負極活物質として用いると、Liと反応するSiが超微粒子であるために充放電がスムーズに行われる一方で、前記構造を有するSiOx粒子自体は表面積が小さいため、負極合剤層を形成するための塗料とした際の塗料性や負極合剤層の集電体に対する接着性も良好である。
【0005】
しかしながら、前記SiOxは、充放電時の膨張・収縮が大きく、そのため、活物質の脱落や、導電助剤との接触不良が生じやすいことから、電池の充放電サイクル特性が低くなりがちである。このようなことから、SiOxを負極材料に用いた非水二次電池では、その充放電サイクル特性の向上が課題とされていた。
【0006】
これに対し、特許文献4には、負極のバインダとしてポリイミドを用い、非酸化性雰囲気下で、200〜500℃の温度で焼結処理を行うことにより、集電体と活物質層との密着性を向上させて、活物質の脱落や集電性の低下を防ぎ、SiまたはSi合金を活物質とする非水二次電池の充放電サイクル特性を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−47404号公報
【特許文献2】特開2005−259697号公報
【特許文献3】特開2007−242590号公報
【特許文献4】特開2004−235057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献4の技術では、高温で負極に焼結処理を施すため、非酸化性雰囲気のような特別の環境下で処理を行う必要があり、また、集電体が軟化するなどの問題を生じる虞があった。
【0009】
このようなことから、前述の高容量負極材料のように、電池使用時の大きな体積変化を伴う活物質を使用する場合でも、良好な特性を引き出し得る電極を製造する技術の開発が求められている。
【0010】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、充電および放電において、活物質の膨張および収縮の応力に耐え得る合剤層を備えた電極を、簡易な方法により形成し、さらに、前記電極を備えた高容量で充放電サイクル特性が良好な非水二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の非水二次電池用電極は、合剤層と、前記合剤層の表面に形成された多孔質層とを含む非水二次電池用電極であって、前記合剤層は、組成式SiOxで表され、前記組成式中のxが0.5≦x≦1.5である電極材料と、導電性材料と、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドよりなる群から選択される少なくとも1種のバインダとを含み、前記多孔質層は、Liと反応しない絶縁性材料を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の非水二次電池は、正極、負極および非水電解質を含む非水二次電池であって、前記負極は、上記本発明の非水二次電池用電極であることを特徴とする。
【0013】
本発明の電極の製造方法は、電極材料と、導電性材料と、ポリアミドイミドとを含む合剤含有スラリーを集電体の表面に塗布し、乾燥させて塗膜を形成する工程と、前記塗膜を圧縮成形して合剤層を形成する工程と、前記合剤層を、100℃以上200℃以下の温度で熱処理する工程とを含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の非水二次電池用電極の一例を示す電極の断面模式図である。
【図2】図2は、本発明の非水二次電池用電極の一例を示す電極の要部断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】図3Aは、本発明の非水二次電池の平面概略図であり、図3Bは、本発明の非水二次電池の断面概略図である。
【図4】図4は、本発明の非水二次電池の外観概略図である。
【図5】図5は、実施例2、実施例7および比較例1の非水二次電池の充放電サイクル特性を示すグラフである。
【図6】図6Aは、実施例2の1サイクル後の非水二次電池における横断面のX線CT画像であり、図6Bは、実施例7の1サイクル後の非水二次電池における横断面のX線CT画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の電極に含まれるSiOxは、その主要部が酸化物で構成され、導電性が低いため、これを負極活物質として使用する場合には、粒子表面を導電性材料で被覆したり、導電助剤となる導電性材料と均一に混合するなどして、負極合剤層に導電性材料を含有させ、負極合剤層内で良好な導電ネットワークを形成する必要がある。しかし、SiOxは充放電による体積変化が大きいため、電池の充放電を繰り返すと、SiOxと導電性材料との接触が悪くなり、これにより電池の容量が低下していく問題がある。負極合剤層中の導電性材料量が多くてSiOx量が比較的少ない場合には、SiOxの体積変化による影響は小さいが、負極合剤層中のSiOx量が多くなると、前述の問題が顕著に発現するようになる。
【0016】
そこで、本発明では、負極合剤層に、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドよりなる群から選択される少なくとも1種のバインダを使用することにより、電池の充放電サイクル特性を向上させている。これは、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドは、負極合剤層中において、SiOxと導電性材料とをより強固に接着できることから、充放電によってSiOxの体積変化が生じても、SiOxと導電性材料との接触が良好に維持できるためと考えられる。
【0017】
特に、ポリアミドイミドをバインダに使用する場合、例えばポリイミドをバインダとして使用する電極とは異なり、その製造過程において、高温での熱処理を回避しつつ、バインダによる前述の作用を良好に発揮させることができる。そのため、ポリアミドイミドをバインダとして用いた本発明の電極の製造方法によれば、活物質の膨張および収縮の応力に対する耐性に優れた電極を、簡易に製造することができる。
【0018】
一方で、負極合剤層のバインダとして、ポリアミド、ポリアミドイミドまたはポリアミドを使用した場合であっても、電池の形状や電極の製造条件によっては、負極全体が、SiOxの体積変化による応力に耐えられず、電池内で湾曲し、電池の膨れが生じる場合があり、特に電池の幅に対してその厚みの小さな角形の電池の場合に、その問題が発生しやすい。
【0019】
しかしながら、合剤層の表面に、Liと反応しない絶縁性材料を含有する多孔質層(以下、「コート層」という場合がある。)を有する電極を使用することにより、充放電時におけるSiOxの体積変化に伴う電極の湾曲や、電極体(負極、正極およびセパレータが積層された積層体)の厚み方向の膨れを効果的に抑制することができるため、電池の膨れの発生を防止できる。
【0020】
本発明によれば、充放電に伴う電極の湾曲を抑制して、これによる電池膨れの発生を防ぎ、高容量で、充放電サイクル特性が良好な非水二次電池を提供することができる。
【0021】
以下、本発明の非水二次電池用電極を負極として用いる非水二次電池について説明する。本発明の非水二次電池には、負極材料となるSiOxと、導電性材料と、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドのうちの少なくとも1種のバインダとを含有する合剤層、並びに電極の強度を向上させるためのコート層を積層してなる電極を用いる。
【0022】
図1は、本発明の非水二次電池用電極の一例を示す電極の断面模式図であり、図2は、本発明の非水二次電池用電極の一例を示す電極の要部断面の走査型電子顕微鏡写真である。本発明の非水二次電池用電極(負極)1は、SiOxと、導電性材料と、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドのうちの少なくとも1種のバインダとを含有する合剤層3上に、負極1の強度を向上させるためのコート層2を積層した形で構成されている。なお、4は集電体である。
【0023】
負極材料に使用するSi(シリコン)とO(酸素)を構成元素に含むSiOx(ただし、Siに対するOの原子比xは、0.5≦x≦1.5である)は、Siの微結晶または非晶質相を含んでいてもよく、この場合、SiとOの原子比は、Siの微結晶または非晶質相のSiを含めた比率となる。
【0024】
すなわち、前述の負極材料SiOxには、非晶質のSiO2マトリックス中に、Si(例えば、微結晶Si)が分散した構造のものが含まれ、この非晶質のSiO2と、その中に分散しているSiを合わせて、原子比xが0.5≦x≦1.5を満足していればよい。例えば、非晶質のSiO2マトリックス中に、Siが分散した構造で、SiO2とSiのモル比が1:1の化合物の場合、x=1であるので、組成式としてはSiOで表記される。このような組成物の場合、例えば、X線回折分析では、Si(微結晶Si)の存在に起因するピークが観察されない場合もあるが、透過型電子顕微鏡で観察すると、微細なSiの存在が確認できる。また、SiO2は、その微粒子が複合した複合粒子であってもよい。
【0025】
前記導電性材料としては、例えば、黒鉛、低結晶性炭素、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維などの炭素材料が好ましいものとして挙げられる。
【0026】
そして、前記SiOxは、炭素材料などの導電性材料と複合化した複合体であることが好ましく、例えば、SiOxの表面が導電性材料(炭素材料など)で被覆されていることが望ましい。前述の通り、SiOxは導電性が乏しいため、これを負極活物質として用いる際には、良好な電池特性確保の観点から、導電性材料(導電助剤)を使用し、負極内におけるSiOxと導電性材料との混合・分散を良好にして、優れた導電ネットワークを形成する必要がある。SiOxを導電性材料と複合化した複合体であれば、例えば、単にSiOxと導電性材料とを混合して得られた材料を用いた場合よりも、負極における導電ネットワークが良好に形成される。
【0027】
SiOxと導電性材料との複合体としては、前記SiOxの表面を導電性材料(好ましくは炭素材料)で被覆したものの他、SiOxと導電性材料(好ましくは炭素材料)との造粒体などが挙げられる。
【0028】
また、前述のSiOxの表面を導電性材料(好ましくは炭素材料)で複合化した複合体を、更に別の導電性材料(好ましくは炭素材料)で複合化することもできる。このような材料としては、導電性材料で表面が被覆されたSiOxを、別の導電性材料と共に造粒した複合造粒体などが挙げられる。また、SiOxと導電性材料(好ましくは炭素材料)との造粒体である複合体の表面を、更に別の導電性材料(好ましくは炭素材料)で被覆した複合造粒体も、好ましく用いることができる。このような複合造粒体を用いることにより、負極における導電ネットワークをより好適なものとすることができ、より高容量で、電池特性(例えば、充放電サイクル特性)に優れた非水二次電池の実現が可能となる。上記複合造粒体は、その内部でSiOxと導電性材料が均一に分散した状態であれば、重負荷放電特性などの電池特性を一層向上させることができるので好ましい。
【0029】
前記導電性材料の詳細としては、繊維状またはコイル状の炭素材料、繊維状またはコイル状の金属、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラックを含む)、人造黒鉛、易黒鉛化炭素および難黒鉛化炭素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の材料が好ましい。繊維状またはコイル状の炭素材料や、繊維状またコイル状の金属は、導電ネットワークを形成し易く、かつ表面積の大きい点において好ましい。カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラックを含む)、人造黒鉛、易黒鉛化炭素および難黒鉛化炭素は、高い電気伝導性、高い保液性を有しており、さらに、電池の充放電によりSiOx粒子が膨張収縮しても、その粒子との接触を保持し易い性質を有している点において好ましい。
【0030】
前記例示の導電性材料の中でも、SiOxとの複合体が造粒体である場合に用いるものとしては、繊維状の炭素材料が特に好ましい。繊維状の炭素材料は、その形状が細い糸状であり柔軟性が高いために電池の充放電に伴うSiOxの膨張収縮に追従でき、また、嵩密度が大きいために、SiOx粒子と多くの接合点を持つことができるからである。繊維状の炭素材料としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブなどが挙げられ、これらの何れを用いてもよい。
【0031】
繊維状の炭素材料や繊維状の金属は、例えば、気相法にてSiOx粒子の表面に形成することもできる。
【0032】
SiOxの比抵抗値は、通常、103〜107kΩcmであるのに対して、前記例示の導電性材料の比抵抗値は、通常、10-5〜10kΩcmである。
【0033】
また、本発明に係る前記負極材料は、その粒子表面を覆う負極材料層(難黒鉛化炭素を含む材料層)を更に有していてもよい。
【0034】
本発明に係る前記負極材料が、SiOxと導電性材料との複合体の場合、SiOxと導電性材料との比率は、導電性材料との複合化による作用を良好に発揮させる観点から、SiOx:100質量部に対して、導電性材料が、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。また、前記負極材料において、SiOxと複合化する導電性材料の比率が多すぎると、負極合剤層中のSiOx量の低下に繋がり、高容量化の効果が小さくなる虞があることから、SiOx:100質量部に対して、導電性材料は、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。
【0035】
本発明に係る前記負極材料は、例えば下記の方法によって作製することができる。
【0036】
先ず、SiOx自体を複合化する場合の作製方法について説明する。SiOxが分散媒に分散した分散液を用意し、それを噴霧し乾燥して、複数のSiOx粒子を含むSiOx複合粒子を作製する。分散媒としては、例えば、エタノールなどを用いることができる。分散液の噴霧は、通常、50〜300℃の雰囲気内で行うことが適当である。前記の方法以外にも、振動型や遊星型のボールミルやロッドミルなどを用いた機械的な方法による造粒方法においても、同様のSiOx複合粒子を作製することができる。
【0037】
SiOxと、SiOxよりも比抵抗値の小さい導電性材料との造粒体を作製する場合には、SiOxが分散媒に分散した分散液中に前記導電性材料を添加し、この分散液を用いて、SiOxを複合化する場合と同様の手法によって複合粒子(造粒体)とすればよい。また、前記と同様の機械的な方法による造粒方法によっても、SiOxと導電性材料との造粒体を作製することができる。
【0038】
次に、SiOx粒子(SiOx複合粒子、またはSiOxと導電性材料との造粒体)の表面を導電性材料で被覆して複合体とする場合には、例えば、SiOx粒子と炭化水素系ガスとを気相中にて加熱して、炭化水素系ガスの熱分解により生じた炭素を、SiOx粒子の表面上に堆積させる。このように、気相成長(CVD)法によれば、炭化水素系ガスがSiOx粒子の隅々にまで行き渡り、SiOx粒子の表面や表面の空孔内に、導電性材料を含む薄くて均一な皮膜(例えば、炭素材料被覆層)を形成できることから、少量の導電性材料によってSiOx粒子に均一性よく導電性を付与できる。
【0039】
炭素材料で被覆されたSiOxの製造において、気相成長(CVD)法の処理温度(雰囲気温度)については、炭化水素系ガスの種類によっても異なるが、通常、600〜1200℃が適当であり、中でも、700℃以上であることが好ましく、800℃以上であることが更に好ましい。処理温度が高い方が不純物の残存が少なく、かつ導電性の高い炭素を含む被覆層を形成できるからである。
【0040】
炭化水素系ガスの液体ソースとしては、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレンなどを用いることができるが、取り扱い易いトルエンが特に好ましい。これらを気化させる(例えば、窒素ガスでバブリングする)ことにより炭化水素系ガスを得ることができる。また、メタンガスやアセチレンガスなどを用いることもできる。
【0041】
また、気相成長(CVD)法にてSiOx粒子(SiOx複合粒子、またはSiOxと導電性材料との造粒体)の表面を炭素材料で覆った後に、石油系ピッチ、石炭系のピッチ、熱硬化性樹脂、およびナフタレンスルホン酸塩とアルデヒド類との縮合物よりなる群から選択される少なくとも1種の有機化合物を、炭素材料を含む被覆層に付着させた後、前記有機化合物が付着した粒子を焼成してもよい。
【0042】
具体的には、炭素材料で被覆されたSiOx粒子(SiOx複合粒子、またはSiOxと導電性材料との造粒体)と、前記有機化合物とが分散媒に分散した分散液を用意し、この分散液を噴霧し乾燥して、有機化合物によって被覆された粒子を形成し、その有機化合物によって被覆された粒子を焼成する。
【0043】
前記ピッチとしては等方性ピッチを、熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、フラン樹脂、フルフラール樹脂などを用いることができる。ナフタレンスルホン酸塩とアルデヒド類との縮合物としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物を用いることができる。
【0044】
炭素材料で被覆されたSiOx粒子と前記有機化合物とを分散させるための分散媒としては、例えば、水、アルコール類(エタノールなど)を用いることができる。分散液の噴霧は、通常、50〜300℃の雰囲気内で行うことが適当である。焼成温度は、通常、600〜1200℃が適当であるが、中でも700℃以上が好ましく、800℃以上であることが更に好ましい。処理温度が高い方が不純物の残存が少なく、かつ導電性の高い良質な炭素材料を含む被覆層を形成できるからである。ただし、処理温度はSiOxの融点以下であることを要する。
【0045】
本発明の電極を構成する合剤層は、前記負極材料(SiOxまたはSiOxと導電性材料との複合体)と、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドのうちの少なくとも1種を含むバインダなどとを含む混合物(電極合剤)に、適当な溶媒(分散媒)を加えて十分に混練して得たスラリー(塗料組成物)を、集電体に塗布し、乾燥などにより溶媒(分散媒)を除去して、所定の厚みおよび密度で形成することができる。電極の合剤層は、前記以外の方法で形成しても構わない。
【0046】
ポリイミドとしては、各種ポリイミドが挙げられ、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミドの何れも使用することができる。また、熱硬化性ポリイミドの場合には、縮合型のポリイミド、付加型のポリイミドの何れであってもよい。より具体的には、例えば、東レ社製の"セミコファイン(商品名)"、日立化成デュポンマイクロシステムズ社製の"PIXシリーズ(商品名)"、日立化成社製の"HCIシリーズ(商品名)"、宇部興産社製の"U−ワニス(商品名)"などの市販品を使用することができる。電子の移動性が良好であるなどの理由から、分子鎖中に芳香環を有するもの、すなわち芳香族ポリイミドがより好ましい。ポリイミドは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
ポリイミドは、溶剤に対する溶解性が低いために、一般に、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を含む溶液を用いて合剤含有スラリーを調製し、これを集電体表面などに塗布した後に、イミド化処理を行ってポリイミドを形成する方法が用いられる。そのため、ポリイミドをバインダに用いる場合には、合剤層の形成過程において、比較的高温での処理(前記イミド化処理)が必要になる。
【0048】
これに対し、ポリアミドイミドでは、アミック酸部分を含む前駆体ではなく、イミド化が殆どまたは完全に完了した状態で溶液を調製することが可能であるため、これをバインダに用いた場合には、イミド化処理に要求されるような高温での熱処理を施すことなく電極合剤層を形成できる。そのため、ポリアミドイミドをバインダとして用いた本発明の電極の製造方法によれば、活物質の体積変化に対する耐性の高い電極を、簡易な方法で製造することができる。
【0049】
ポリアミドイミドとしては、各種ポリアミドイミドを用いることができるが、下記形態1〜3に示すように分子鎖中に芳香環を有するものが好ましく用いられる。
【0050】
(形態1)
形態1のポリアミドイミドは、下記式(1)で表されるアラミド構造単位と、下記式(2)で表されるアミドイミド構造単位とを有し、前記アラミド構造単位と前記アミドイミド構造単位との合計を100モル%としたときに、前記アラミド構造単位が18〜55モル%であるアラミド−アミドイミド共重合体である。
【0051】
【化1】
【0052】
【化2】
【0053】
前記式(1)中、Ar1は、m−フェニレン基またはp−フェニレン基である。また、前記式(2)中、Ar2は、1つの芳香環を有する3価の芳香族残基である。更に、前記式(1)中のR1および前記式(2)中のR2は、下記式(3)で示される構造単位または下記式(4)で示される構造単位であり、かつR1とR2とを合計したとき、下記式(3)で示される構造単位と、下記式(4)で示される構造単位とのモル比が、55:45〜85:15である。
【0054】
【化3】
【0055】
【化4】
【0056】
(形態2)
形態2のポリアミドイミドは、下記式(5)で表されるアラミド構造単位と、下記式(6)で表されるアミドイミド構造単位とを有し、前記アラミド構造単位と前記アミドイミド構造単位との合計を100モル%としたとき、前記アラミド構造単位が18〜80モル%であるアラミド−アミドイミド共重合体である。
【0057】
【化5】
【0058】
【化6】
【0059】
前記式(5)中、Ar3は、m−フェニレン基またはp−フェニレン基である。また、前記式(6)中、Ar4は、1つの芳香環を有する3価の芳香族残基である。更に、前記式(5)中のR3および前記式(6)中のR4は、下記式(7)で示される構造単位または下記式(8)で示される構造単位であり、かつR3およびR4は、いずれも下記式(7)で表される構造単位を60モル%以上含有している。なお、R3とR4とを合計したとき、下記式(7)で示される構造単位と、下記式(8)で示される構造単位とのモル比は、60:40〜80:20であることが好ましい。
【0060】
【化7】
【0061】
【化8】
【0062】
(形態3)
形態3のポリアミドイミドは、下記式(9)で表される構造単位と、下記式(10)で表される構造単位とを有し、前記両構造単位の合計を100モル%としたときに、下記式(9)で表される構造単位が60〜80モル%であるポリアミドイミドである。
【0063】
【化9】
【0064】
【化10】
【0065】
前記形態3のポリアミドイミドにおいては、イミド化が完全に完了しておらず、一部が下記式(11)で示されるポリアミック酸の状態で留まっていることが好ましい。この場合には、合剤層内の各構成成分同士や、合剤層と集電体との接着性が更に向上する。この場合、ポリアミック酸の状態で留まっている部分は、例えば、特開2007−246680号公報に記載の方法により測定されるポリアミドイミド中の残存カルボキシル基量で評価でき、かかる残存カルボキシル基量が、0.05〜0.40mmolであることが好ましい。
【0066】
【化11】
【0067】
前記式(11)中、R5は、前記式(3)で表される構造単位または前記式(4)で表される構造単位である。
【0068】
本発明の電極の製造方法において、より均一性の高い合剤含有スラリーを得るには、ポリアミドイミドは、予め溶剤に溶解した溶液で合剤含有スラリーの調製に供することが好ましい。
【0069】
ポリアミドイミドの溶液に使用する溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クレゾールなどの非プロトン性極性溶剤が好ましい。
【0070】
前記形態1および前記形態2のポリアミドイミド(アラミド−アミドイミド共重合体)は、例えば、酸クロリド法を用いることにより合成することができる。具体的には、テレフタル酸クロリドあるいはイソフタル酸クロリドと、前記式(1)および前記式(2)で表される構造単位におけるRを構成するジアミンとを有機溶媒中に溶解させ、テレフタル酸クロリドとイソフタル酸クロリドの合計量100モル%に対して100.01〜105モル%の前記ジアミンを反応させ、前記式(1)のアラミド構造単位を有するアミノ末端アラミド重合体を合成し、次いで、残りのジアミンを添加した後にトリカルボン酸クロリド無水物を反応させ、前記式(2)のアミドイミド構造単位を有する共重合体を合成する方法を用いることができる。
【0071】
また、前記形態3のポリアミドイミドについても、例えば、酸クロリド法を用いることにより合成することができる。具体的には、4,4'−ジアミノジフェニルエーテルおよびm−フェニレンジアミンを含む原料を酸クロリド法により反応させ、150℃以上250℃以下の温度、30torr未満の圧力で閉環イミド化することにより得ることができる。
【0072】
前記形態1〜3のポリアミドイミドは、例えば、溶媒に溶解した溶液の状態で、東レ株式会社や宇部興産株式会社より入手することもできる。
【0073】
また、ポリアミドイミドとして、日立化成社製の"HPCシリーズ(商品名)"、東洋紡績社製の"バイロマックス(商品名)"などの市販品(溶媒に溶解した溶液)を使用することもできる。
【0074】
ポリアミドイミドは、前記例示のものを1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
ポリアミドとしては、例えば、ナイロン66、ナイロン6、芳香族ポリアミド(ナイロンMXD6など)などの各種ポリアミドが使用できる。ポリアミドにおいても、ポリイミドなどと同じ理由から、分子鎖中に芳香環を有するもの、すなわち芳香族ポリアミドがより好ましい。ポリアミドは、1種のみを使用してもよく、2種以上のポリアミドを併用してもよい。
【0076】
合剤層に用いるバインダには、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドの少なくとも1種を使用すればよいが、これらの2種以上を併用してもよい。
【0077】
また、合剤層には、ポリイミド、ポリアミドイミドまたはポリアミドと共に、これら以外のバインダを併用してもよい。ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド以外のバインダとしては、通常、でんぷん、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロースなどの多糖類やそれらの変成体;ポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂やそれらの変成体;エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ポリブタジエン、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシドなどのゴム状弾性を有するポリマーやそれらの変成体;などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0078】
前記合剤層には、さらに導電助剤として導電性材料を添加してもよい。このような導電性材料としては、非水二次電池内において化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば特に限定されない。通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人工黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、金属粉(銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの粉末)、金属繊維、ポリフェニレン誘導体(特開昭59−20971号公報に記載のもの)などの材料を、1種または2種以上用いることができる。
【0079】
合剤層のバインダとして前記ポリアミドイミドを用いる場合は、合剤含有スラリーを集電体の表面に塗布し、乾燥させて塗膜を形成し、前記塗膜を圧縮成形して合剤層を形成した後、前記合剤層を、100℃以上200℃以下の温度で熱処理することにより電極を作製することができる。合剤含有スラリーの調製に当たっては、電極材料、導電性材料およびポリアミドイミドを含む固形分を溶剤に分散させてスラリーを形成すればよく、必要に応じて、前記固形分を予め混合してから溶剤に分散させてもよい。なお、ポリアミドイミドは、溶剤に溶解した溶液の状態で使用することが好ましい。
【0080】
合剤含有スラリーに用いる溶剤としては、ポリアミドイミドを溶液とする際に好適なものとして先に例示した各種非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。
【0081】
合剤含有スラリーを集電体の表面に塗布する方法には特に制限はなく、従来の各種塗工装置を用いた塗布方法(例えば、転写法、ドクターブレード法、バーコート法など)が採用できる。
【0082】
また、乾燥条件についても特に制限はなく、例えば、使用する溶剤の沸点より高く、且つ合剤成分の劣化が生じない温度、例えば70〜150℃で、ある程度の乾燥が可能な時間を適宜選択すればよい。また、減圧下(真空下など)で乾燥することで、乾燥時間を短縮したり、乾燥温度を下げたりすることもできる。本発明の電極の製造方法では、電極を熱処理する工程があり、その際にも溶剤を除去することができるため、前記乾燥工程で溶剤が多少残留してもよい。
【0083】
次に、前述のようにして集電体の表面に形成した塗膜を圧縮成形して、厚みなどを調整し、合剤層を形成する。圧縮成形の方法については、特に制限はなく、従来の方法(プレス成形法など)が採用できる。また、圧縮成形の条件についても特に制限はなく、合剤層や集電体を破壊しない程度で、合剤層を良好に成形できる圧力や温度を選択すればよい。例えば、ロールプレス機により、室温から100℃の温度で、980〜9800Nの線圧で圧縮成形を行うことができる。
【0084】
次に、圧縮成形して合剤層を形成した電極に、熱処理を施す。前記熱処理には、例えば、真空中などの減圧下での処理が可能な恒温槽や電気炉などを用いることができる。
【0085】
熱処理の温度は、200℃以下で行うのが望ましい。本発明では、ポリアミドイミドを使用する場合は、ポリイミドと異なり、合剤層を形成した後に高温でイミド化処理する必要がない。そのため、熱処理工程を温和な条件で実施することができ、また、この熱処理工程における集電体や合剤層の構成成分の劣化を抑制することが可能となる。熱処理の温度は、200℃未満であるのがより好ましく、190℃以下であることが最も好ましい。また、熱処理による効果を十分に確保する観点から、熱処理温度は、100℃以上であり、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることが最も好ましい。
【0086】
また、熱処理時間については、合剤層の成分構成などにより変動し得るが、例えば、1〜50時間であることが好ましい。
【0087】
合剤層においては、電池の容量を高める観点から、前記負極材料(SiOxまたはSiOxと導電性材料との複合体)の含有量が、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。ただし、合剤層中における前記負極材料の量が多すぎると、例えばバインダの量が少なくなって、SiOxの体積変化による問題を回避する作用が小さくなる虞があることから、前記負極材料の含有量は、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましい。
【0088】
また、合剤層中におけるバインダの含有量は、バインダの使用による作用をより有効に発揮させる観点から、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。ただし、合剤層中におけるバインダの量が多すぎると、例えば前記負極材料の量が少なくなって、高容量化の効果が小さくなる虞があることから、バインダの含有量は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0089】
合剤層のバインダとして、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミド以外のバインダを併用する場合には、合剤層中のポリイミド、ポリアミドイミドまたはポリアミドの含有量を、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上としつつ、前記の好適なバインダ量を満足するように調整することが望ましい。合剤層中におけるポリイミド、ポリアミドイミドまたはポリアミドの量を前記のようにすることで、これらの使用による作用をより有効に発揮させることができるようになる。
【0090】
更に、合剤層においては、電池をより高容量化する観点から、導電性材料(SiOxとの複合体に含まれている導電性材料、および必要に応じてSiOxとの複合体としてではなく、単独で使用される導電性材料)の合計量が、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。また、合剤層において導電ネットワークを良好に形成する観点からは、合剤層中における導電性材料の合計量が、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
【0091】
また、合剤層の厚みは、例えば、10〜100μmであることが好ましい。
【0092】
本発明の電極の製造方法は、上記負極材料を有する電極の製造方法に限定されるものではなく、膨張・収縮に伴う問題を生じやすい他の負極材料や正極材料、例えば、Sn、Sn合金、Sn酸化物、炭素材料、リチウムチタン酸化物などを有する電極の製造方法にも適用可能であり、また、二次電池だけでなく一次電池にも適用可能である。
【0093】
本発明の電極においては、電極自体の曲げ強さや引っ張り強さを向上させ、充放電に伴う前記負極材料の大きな膨張収縮に起因する電極の膨張や湾曲を効果的に防止するため、合剤層の表面にコート層を形成するのが望ましい。
【0094】
前記コート層は、Liと反応しない絶縁性材料を含有し、非水電解質(電解液)が通過可能な程度の細孔を備えた多孔質層である。
【0095】
コート層を構成するためのLiと反応しない絶縁性材料としては、各種の無機微粒子や有機微粒子が挙げられる。無機微粒子としては、金属元素または非金属元素のカルコゲナイト(酸化物、硫化物など)、窒化物、炭化物、ケイ化物などが好ましい。
【0096】
前述の金属元素または非金属元素のカルコゲナイトとしては、酸化物が好ましく、還元され難い酸化物がより好ましい。このような酸化物としては、例えば、Al2O3、AlOOHに代表されるベーマイト、MgO、CaO、SrO、BaO、ZrO2、ZnO、B2O3、Ga2O3、In2O3、SiO2、As4O6、Sb2O5などが挙げられる。これらの中でも、Al2O3、AlOOHに代表されるベーマイト、ZnO、Ga2O3、SiO2、ZrO2が特に好ましい。また、これらの酸化物は、単独のものであっても、複合酸化物であっても構わない。
【0097】
Liと反応しない絶縁性材料としては、酸化アルミニウム(Al2O3、AlOOHに代表されるベーマイト)が特に好ましい。これらは絶縁性が高く且つ化学的に安定だからである。
【0098】
前記金属元素または非金属元素の窒化物としては、窒化アルミニウム(AlN)やBNが、金属元素または非金属元素の炭化物やケイ化物としては、SiCが挙げられ、これらは絶縁性が高く且つ化学的に安定である点で好ましい。
【0099】
コート層を構成するためのLiと反応しない絶縁性材料のうち、有機微粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂の微粒子や、ラテックスの架橋体など、例えば、300℃以下の温度で流動するなどして膜状となったり、分解したりしないものが好ましい。
【0100】
Liと反応しない絶縁性材料の粒径は、例えば、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上であって、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。上記粒径は、後述するレーザー回折式粒度分布測定法により測定することができる。
【0101】
Liと反応しない絶縁性材料の平均粒径は、0.2μm以上5μm以下であるのが好ましい。
【0102】
コート層には電子伝導性材料を含んでもよい。電子伝導性材料はコート層の必須成分ではないが、後述するように、負極に係るSiOxに予めLiを導入する場合には、電子伝導性材料をコート層に含有させる。
【0103】
コート層に使用可能な電子伝導性材料としては、例えば、炭素粒子、炭素繊維などの炭素材料;金属粒子、金属繊維などの金属材料;金属酸化物;などが挙げられる。これらの中でも、Liとの反応性が低い炭素粒子や金属粒子が好ましい。
【0104】
前記炭素材料としては、例えば、電池を構成する電極において、導電助剤として用いられている炭素材料を用いることができる。具体的には、カーボンブラック(サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなど)、黒鉛(燐片状黒鉛、土状黒鉛などの天然黒鉛や、人造黒鉛)などの炭素粒子や、炭素繊維が挙げられる。
【0105】
前記炭素材料の中でも、カーボンブラックと黒鉛を併用することが、後述のバインダとの分散性の観点から特に好ましい。また、カーボンブラックとしては、ケッチェンブラックやアセチレンブラックが特に好ましい。
【0106】
前記炭素粒子の粒径は、例えば、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上であって、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
【0107】
コート層を構成する電子伝導性材料のうち、金属粒子や金属繊維としては、Liとの反応性が低く合金を形成し難い金属元素で構成されているものが好ましい。金属粒子や金属繊維を構成する具体的な金属元素としては、例えば、Ti、Fe、Ni、Cu、Mo、Ta、Wなどが挙げられる。
【0108】
前記金属粒子の場合には、その形状に特に制限はなく、塊状、針状、柱状、板状など、いずれの形状であってもよい。また、金属粒子や金属繊維は、その表面があまり酸化されていないものが好ましく、過度に酸化されているものについては、予め還元雰囲気中で熱処理するなどした後に、コート層形成に供することが望ましい。それは、表面が酸化されていると電子伝導性が低下し、十分な導電性が得られなくなるからである。
【0109】
前記金属粒子の粒径としては、例えば、好ましくは0.02μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
【0110】
コート層を形成するにあたっては、前述のLiと反応しない絶縁性材料を結着する目的で、バインダを用いることが好ましい。バインダとしては、例えば、合剤層に用いるバインダとして例示した各種材料を用いることができる。コート層のバインダに、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドのうちの少なくとも1種以上を使用した場合には、合剤層とコート層との接着性が向上する。
【0111】
コート層の形成にバインダを用いる場合、コート層中のバインダの含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上であって、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0112】
また、コート層に電子伝導性材料を含有させる場合には、Liと反応しない絶縁性材料と、電子伝導性材料との合計を100質量%としたとき、電子伝導性材料の比率は、例えば、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは5質量%以上であって、96質量%以下、より好ましくは95質量%以下であり、言い換えれば、Liと反応しない絶縁性材料の比率は、例えば、好ましくは4質量%以上、より好ましくは5質量%以上であって、97.5質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0113】
コート層の厚みは、例えば、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、最も好ましくは3μm以上であって、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、最も好ましくは5μm以下である。コート層がこのような厚みであれば、合剤層の膨張や湾曲をより効率的に抑制でき、電池の高容量化と電池特性の向上をより確実に達成することができる。すなわち、コート層の厚みが、例えば、合剤層の表面粗さに対して薄くなりすぎると、ピンホールなしに合剤層の全面を覆うことが困難となり、コート層を形成することによる効果が小さくなる虞があり、一方、コート層が厚すぎると、電池の容量低下に繋がるので、できる限り薄く形成することが好ましい。
【0114】
コート層を設けることで、電極と非水電解質との親和性が向上するため、非水電解質の電池への導入が容易となる効果もある。
【0115】
コート層は、例えば、前述のLiと反応しない絶縁性材料や、必要に応じて使用される電子伝導性材料およびバインダなどを含む混合物に、適当な溶媒(分散媒)を加えて十分に混練して得たスラリー(塗料組成物)を、合剤層の表面に塗布し、乾燥などにより溶媒(分散媒)を除去して、所定の厚みで形成することができる。コート層は、前記以外の方法で形成しても構わない。例えば、合剤層形成用スラリーを集電体表面に塗布した後、この塗膜が完全に乾燥する前に、コート層形成用スラリーを塗布し、乾燥して、合剤層とコート層を同時に形成してもよい。更に、前述のような合剤層形成用スラリーと、コート層形成用スラリーとを、順次塗布する逐次方式で塗布してもよい。
【0116】
一方、負極材料に係るSiOxは不可逆容量が比較的大きく、充電される容量に比べ放電可能な容量が少なくなるため、本発明に係る電極においては、予め負極材料にLiを導入しておくことも好ましく、この場合には更なる高容量化が可能となる。
【0117】
負極材料へのLiの導入方法としては、例えば、電子伝導性材料を含有するコート層の合剤層側とは反対側の表面にLi含有層を形成しておき、このLi含有層から合剤層内のSiOxへLiを導入する方法が好ましい。
【0118】
SiOxにLiを導入する場合、合剤層全体に均一にLiが導入されないと、SiOxの体積変化によって電極の湾曲を生じやすくなる。しかし、合剤層の表面にコート層を形成することにより、SiOxとLiとの反応を制御することができ、Liの導入に伴う電極の湾曲などを抑制することができる。
【0119】
電極にLiを導入するためのLi含有層は、抵抗加熱やスパッタリングなどの一般的な気相法(気相堆積法)で形成したもの(すなわち、蒸着膜)であることが好ましい。気相法により、蒸着膜としてコート層の表面に直接Li含有層を形成する方法であれば、コート層の全面にわたって均一な層を、所望の厚みで形成することが容易であるため、Liを、SiOxの不可逆容量分に対して過不足なく導入することができる。
【0120】
気相法によってLi含有層を形成する場合には、真空チャンバ内で蒸着源と、電極のコート層とを対向させ、所定の厚みの層になるまで蒸着すればよい。
【0121】
Li含有層は、Liのみで構成されていてもよく、例えば、Li−Al、Li−Al−Mn、Li−Al−Mg、Li−Al−Sn、Li−Al−In、Li−Al−CdなどのLi合金により構成されていてもよい。Li含有層がLi合金で構成されている場合には、Li含有層中におけるLiの含有比率は、例えば、50〜90mol%であることが好ましい。
【0122】
Li含有層の厚みは、例えば、0.5μm以上が好ましく、より好ましくは2μm以上、最も好ましくは4μm以上であって、10μm以下が好ましく、より好ましくは8μm以下である。Li含有層をこのような厚みで形成することで、Liを、SiOxの不可逆容量分に対して、より過不足なく導入することができる。すなわち、Li含有層が薄すぎると、合剤層に存在するSiOx量に対するLi量が少なくなって、容量向上の効果が小さくなることがある。また、Li含有層が厚すぎると、Li量が過剰となる虞があり、また、蒸着量が多くなるため生産性も低下する。
【0123】
本発明に係る電池における正極には、正極材料(正極活物質)として、Li含有遷移金属酸化物を使用することができる。Li遷移金属酸化物の具体例としては、例えば、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-yO2、LixCoyM1-yO2、LixNi1-yMyO2、LixMnyNizCo1-y-zO2、LixMn2O4、LixMn2-yMyO4(前記の各構造式中、Mは、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ti、GeおよびCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素であり、0≦x≦1.1、0<y<1.0、2.0<z<1.0である。)などが挙げられる。
【0124】
正極は、前記の正極材料と導電助剤とバインダとを含む混合物(正極合剤)に、適当な溶媒(分散媒)を加えて十分に混練して得たペースト状やスラリー状の正極合剤含有組成物を、集電体に塗布し、所定の厚みおよび密度を有する合剤層を形成することによって得ることができる。正極は、前記の製法により得られたものに限られず、他の製法で製造したものであってもよい。
【0125】
正極に係るバインダとしては、負極に用いるものとして例示した前述の各バインダを用いることができる。また、正極に係る導電助剤についても、負極に用いるものとして例示した前記の各導電助剤を使用できる。
【0126】
前記正極に係る合剤層においては、正極材料(正極活物質)の含有量が、例えば、79.5〜99質量%であり、バインダの含有量が、例えば、0.5〜20質量%であり、導電助剤の含有量が、例えば、0.5〜20質量%であることが好ましい。
【0127】
本発明に係る電池で用いる非水電解質としては、下記の溶媒中に下記の無機イオン塩を溶解させることによって調製した電解液が挙げられる。
【0128】
溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトンなどの非プロトン性有機溶媒を、1種または2種以上用いることができる。
【0129】
無機イオン塩としては、Li塩、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸Li、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランLi、四フェニルホウ酸Liなどを、1種または2種以上用いることができる。
【0130】
前記溶媒中に前記無機イオン塩が溶解された電解液の中でも、1,2−ジメトキシエタン,ジエチルカーボネートおよびメチルエチルカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種と、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートとを含む溶媒に、LiClO4、LiBF4、LiPF6およびLiCF3SO3よりなる群から選ばれる少なくとも1種の無機イオン塩を溶解した電解液が好ましい。電解液中の無機イオン塩の濃度は、例えば、0.2〜3.0mol/dm3が適当である。
【0131】
本発明の非水二次電池は、前述の正極、負極および非水電解質などを用いて電池を組み立てることにより得ることができる。
【0132】
本発明の非水二次電池は、前述の負極、正極および非水電解質を備えていればよく、その他の構成要素や構造については特に制限は無く、従来の非水二次電池で採用されている各種構成要素、構造を適用することができる。
【0133】
例えば、セパレータとしては、強度が十分で且つ電解液を多く保持できるものがよく、そのような観点から、厚さが10〜50μmで開口率が30〜70%の、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはエチレン−プロピレン共重合体を含む微多孔フィルムや不織布などが好ましい。
【0134】
また、本発明の非水二次電池では、その形状などについても特に制限はない。例えば、コイン形、ボタン形、シート形、積層形、円筒形、偏平形、角形、電気自動車などに用いる大型のものなど、いずれであってもよい。
【0135】
また、非水二次電池に正極、負極およびセパレータを導入するにあたっては、電池の形態に応じて、複数の正極と複数の負極とをセパレータを介して積層した積層構造の電極体や、正極と負極とをセパレータを介して積層し、更にこれを渦巻状に巻回した巻回構造の電極体として使用することもできる。
【0136】
本発明の非水二次電池は、高容量であり且つ充放電サイクル特性を始めとする各種電池特性が良好であり、これらの特性を生かして、小型で多機能な携帯機器の電源を始めとして、従来の非水二次電池が適用されている各種用途に好ましく用いることができる。
【0137】
以下、本発明の非水二次電池の一例を図面に基づき説明する。図3Aは、本発明の非水二次電池の平面概略図であり、図3Bは、本発明の非水二次電池の断面概略図である。また、図4は、本発明の非水二次電池の外観概略図である。
【0138】
図3A、Bおよび図4に示す電池について説明すると、負極11と正極12は本発明のセパレータ13を介して渦巻状に巻回され、更に扁平状になるように加圧されて巻回電極体15を形成し、角筒形の外装缶26に非水電解液と共に収容されている。ただし、図3Bでは、煩雑化を避けるため、負極11や正極12の集電体である金属箔や非水電解液などは図示しておらず、巻回電極体15の中央部およびセパレータ13には断面を示すハッチングを表示していない。
【0139】
外装缶26はアルミニウム合金製で、電池の外装体を構成するものであり、この外装缶26は正極端子を兼ねている。そして、外装缶26の底部にはポリエチレンシートからなる絶縁体14が配置され、負極11、正極12およびセパレータ13からなる巻回電極体15からは、負極11および正極12のそれぞれ一端に接続された負極リード部17と正極リード部16が引き出されている。また、外装缶26の開口部を封口するアルミニウム合金製の封口用の蓋板18には、ポリプロピレン製の絶縁パッキング19を介してステンレス鋼製の端子21が取り付けられ、この端子21には絶縁体22を介してステンレス鋼製のリード板23が取り付けられている。
【0140】
この蓋板18は外装缶26の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、外装缶26の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。また、蓋板18には非水電解液注入口24が設けられており、この非水電解液注入口24には、封止部材が挿入された状態で、例えばレーザー溶接などにより溶接封止されて、電池の密閉性が確保されている。図3A、Bおよび図4では、便宜上、非水電解液注入口24は、非水電解液注入口自体と封止部材とを含めて表示している。更に、蓋板18には、電池の温度上昇などにより内圧が上昇した際に、内部のガスを外部に排出する機構として、開裂ベント25が設けられている。
【0141】
図3A、Bおよび図4に示した非水二次電池では、正極リード部16を蓋板18に直接溶接することによって外装缶26と蓋板18とが正極端子として機能し、負極リード部17をリード板23に溶接し、そのリード板23を介して負極リード部17と端子21とを導通させることによって端子21が負極端子として機能するようになっているが、外装缶26の材質などによっては、その正負が逆になる場合もある。
【実施例】
【0142】
次に、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではない。以下の実施例において、複合粒子、α−アルミナ、および黒鉛の平均粒径は、マイクロトラック社製の"MICROTRAC HRA(Model:9320−X100)"を用いて、レーザー回折式粒度分布測定法により測定した体積平均値である。
【0143】
(実施例1)
負極活物質であるSiO粒子(平均粒径5.0μm)を沸騰床反応器中で約1000℃に加熱し、加熱されたSiO粒子にメタンと窒素ガスからなる25℃の混合ガスを接触させ、1000℃で60分間CVD処理を行った。このようにして前記混合ガスが熱分解して生じた炭素(以下「CVD炭素」ともいう。)をSiO粒子に堆積させて被覆層を形成し、負極材料を得た。
【0144】
被覆層形成前後の質量変化から前記負極材料の組成を算出したところ、SiO:CVD炭素=85:15(質量比)であった。
【0145】
次に、前記負極材料を用いて、負極前駆体シートを作製した。前記負極材料80質量%(スラリー中の固形分の全量に対する質量割合、以下同じ。)と、黒鉛10質量%と、導電助剤としてケッチェンブラック(平均粒径0.05μm)2質量%と、バインダとしてポリアミドイミド8質量%と、脱水N−メチルピロリドン(NMP)とを混合して負極合剤含有スラリーを調製した。
【0146】
続いて、ブレードコーターを用いて、前記の負極合剤含有スラリーを厚みが8μmの銅箔からなる集電体の両面に塗布し、100℃で乾燥した後ローラープレス機により圧縮成形して、集電体の両面に、厚みが35μmの負極合剤層をそれぞれ形成して積層体を作製した。
【0147】
前記積層体について、更に遠赤外線ヒーターを用いて160℃で15時間熱処理を施し、幅37mm、長さ460mmに裁断して短冊状の負極を得た。熱処理後の負極では、負極合剤層と集電体との接着性は強固であり、裁断や折り曲げによっても、負極合剤層が集電体から剥離することはなかった。
【0148】
また、正極を以下のようにして作製した。まず、正極材料としてLiCoO2を96質量%(スラリー中の固形分の全量に対する質量割合、以下同じ。)と、導電助剤としてケッチェンブラック(平均粒径0.05μm)2質量%と、バインダとしてPVDF2質量%と、脱水NMPとを混合して得た正極合剤含有スラリーを、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、乾燥後プレスして、集電体の両面に、厚みが85μmの正極合剤層をそれぞれ形成して積層体を作製した。前記積層体を幅36mm、長さ460mmに裁断して短冊状の正極を得た。
【0149】
次に、負極、微孔性ポリエチレンフィルム製のセパレータ、正極を、ロール状に巻回した後、端子を溶接して厚み4mm、幅34mm、高さ43mm(463443型)のアルミニウム製の正極缶に挿入し、蓋を溶接して取り付けた。その後、蓋の注液口よりEC:DEC=3:7(体積比)の溶媒に1molのLiPF6を溶解させて調製した電解液(非水電解質)2.5gを正極缶内に注入し、密閉して角形非水二次電池を得た。
【0150】
(実施例2)
Liと反応しない絶縁性材料としてα−アルミナ(平均粒径1μm)96質量%(スラリー中の固形分の全量に対する質量割合、以下同じ。)と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)4質量%と、脱水NMPとを混合してコート層形成用スラリーを調製した。
【0151】
ブレードコーターを用いて、前記実施例1の負極合剤含有スラリーを下層、コート層形成用スラリーを上層として、厚みが8μmの銅箔からなる集電体の両面に塗布した。次いで、100℃で乾燥した後、ローラープレス機により圧縮成形して、集電体の両面に、厚みが35μmの負極合剤層と厚みが5μmのコート層との積層体をそれぞれ形成した。次いで、前記積層体を形成した集電体を、真空中100℃で15時間乾燥させた。
【0152】
前記積層体について、更に遠赤外線ヒーターを用いて160℃で15時間熱処理を施した。熱処理後の前記積層体では、負極合剤層と集電体との接着性、および負極合剤層とコート層との接着性は強固であり、裁断や折り曲げによっても、負極合剤層が集電体から剥離することはなく、またコート層が負極合剤層から剥離することもなかった。以下、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
【0153】
(実施例3)
SiO(平均粒径1μm)200gと、黒鉛(平均粒径3μm)60gと、バインダのポリエチレン樹脂粒子30gを4Lのステンレス鋼製の容器に入れ、更にステンレス鋼製のボールを入れて振動ミルにて3時間混合、粉砕、造粒を行った。その結果、平均粒径20μmの複合粒子(SiOと黒鉛の複合粒子)を作製できた。続いて、前記複合粒子を沸騰床反応器中で約950℃に加熱し、加熱された複合粒子にトルエンと窒素ガスとからなる25℃の混合ガスを接触させ、950℃で60分間CVD処理を行った。このようにして、前記混合ガスが熱分解して生じた炭素を前記複合粒子に堆積させて被覆層を形成し、負極材料を得た。
【0154】
被覆層形成前後の質量変化から、負極材料の組成を算出したところ、SiO:黒鉛:CVD炭素=60:25:15(質量比)であった。
【0155】
次に、前記負極材料90質量%(スラリー中の固形分の全量に対する質量割合、以下同じ。)と、導電助剤としてケッチェンブラック(平均粒径0.05μm)2質量%と、バインダとしてポリアミドイミド8質量%と、脱水NMPとを混合して負極合剤含有スラリーを調製した。この負極合剤含有スラリーを、負極合剤層の形成に用いた以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。さらに、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
【0156】
(実施例4)
負極活物質をSiOからSiに変更した以外は、実施例3と同様にして負極を作製した。さらに、この負極を用いた以外は、実施例3と同様にして非水二次電池を作製した。
【0157】
(実施例5)
負極活物質であるSiO(平均粒径1μm)と、繊維状炭素(平均長さ2μm、平均直径0.08μm)と、ポリビニルピロリドン10gとを、エタノール1L中にて混合し、これらを更に湿式のジェットミルにて混合してスラリーを得た。このスラリーの調製に用いたSiOと繊維状炭素(CF)との総質量は100gとし、質量比は、SiO:CF=80:20とした。次に、前記スラリーを用いてスプレードライ法(雰囲気温度:200℃)にてSiOとCFの複合粒子を作製した。複合粒子の平均粒径は10μmであった。続いて、前記複合粒子を沸騰床反応器中で約1000℃に加熱し、加熱された複合粒子にベンゼンと窒素ガスとからなる25℃の混合ガスを接触させ、1000℃で60分間CVD処理を行った。このようにして,前記混合ガスが熱分解して生じた炭素(CVD炭素)を複合粒子に堆積させて被覆層を形成し、負極材料を得た。
【0158】
被覆層形成前後の質量変化から前記負極材料の組成を算出したところ、SiO:CF:CVD炭素=68:17:15(質量比)であった。
【0159】
次に、前記負極材料90質量%(スラリー中の固形分の全量に対する質量割合、以下同じ。)と、導電助剤としてケッチェンブラック(平均粒径0.05μm)2質量%と、バインダとしてポリアミドイミド8質量%と、脱水NMPとを混合して負極合剤含有スラリーを調製した。この負極合剤含有スラリーを負極合剤層の形成に用いた以外は、実施例2と同様にして負極を作製した。さらに、この負極を用いた以外は、実施例2と同様にして非水二次電池を作製した。
【0160】
(実施例6)
負極活物質であるSiO(平均粒径1μm)と黒鉛(平均粒径2μm)を含むスラリーを用い、実施例5と同様にして、SiOと黒鉛との複合粒子を作製した。前記スラリーにおけるSiOと黒鉛の質量比は90:10であり、前記複合粒子の平均粒径は15μmであった。次いで、実施例5と同様にして、炭素を複合粒子に堆積させて被覆層を形成し、炭素被覆層を有する複合粒子とした。さらに、この複合粒子100gと、フェノール樹脂40gとをエタノール1L中に分散し、その分散液を噴霧し乾燥して(雰囲気温度200℃)、炭素被覆層を有する複合粒子の表面を、さらにフェノール樹脂にてコーティングした。次いで、前記複合粒子を1000℃で焼成して、前記炭素被覆層の上に難黒鉛化炭素を含む材料層を形成し、負極材料とした。
【0161】
前記各工程での材料の質量変化から、前記負極材料の組成を算出したところ、SiO:黒鉛:CVD炭素:難黒鉛化炭素=63:7:15:15(質量比)であった。
【0162】
次に、前記負極材料90質量%(スラリー中の固形分の全量に対する質量割合、以下同じ。)と、導電助剤としてケッチェンブラック(平均粒径0.05μm)2質量%と、バインダとしてポリアミドイミド8質量%と、脱水NMPとを混合して負極合剤含有スラリーを調製した。この負極合剤含有スラリーを負極合剤層の形成に用いた以外は、実施例2と同様にして負極を作製した。さらに、この負極を用いた以外は、実施例2と同様にして非水二次電池を作製した。
【0163】
(実施例7)
負極合剤中のバインダをポリイミドに変更し、負極合剤層の熱処理温度を220℃とした以外は実施例1と同様にして、負極を作製した。さらに、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
【0164】
(比較例1)
負極合剤中のバインダをポリフッ化ビニリデン(PVDF)に変更した以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。さらに、この負極を用いた以外は、実施例1と同様にして非水二次電池を作製した。
【0165】
前記の実施例1〜7および比較例1の電池について、充電時の厚みの変化、放電容量、および充放電サイクルでの容量維持率から電池の評価を行った。
【0166】
電池の充電は、定電流−定電圧充電(定電流充電での電流値:400mA、定電圧充電での電圧:4.2V)とし、定電圧充電での電流値が40mAに低下した時点で充電を終了した。
【0167】
放電は、定電流放電(電流値:400mA)とし、放電終止電圧は2.5Vとした。前記の充電と放電の一連の操作を1サイクルとし、2サイクル目の放電容量を電池の放電容量とした。また、2サイクル目の放電容量に対する、200サイクル目の放電容量の割合を容量維持率とした。
【0168】
また、前記充電条件で電池を充電し、1サイクル目の充電終了後の各電池の厚みを測定し、充電前の厚み(4mm)との差から、充電による電池の厚みの変化を求めた。
【0169】
それぞれの測定結果を表1に示す。また、実施例2、実施例7および比較例1の非水二次電池における、充放電サイクルでの放電容量の変化を図5に示す。さらに、実施例2の1サイクル後の非水二次電池における横断面のX線CT(Computed Tomography)画像を図6Aに示し、実施例7の1サイクル後の非水二次電池における横断面のX線CT画像を図6Bに示す。
【0170】
図5のグラフでは、横軸には充放電サイクル数を、縦軸には各サイクルでの放電容量を、充放電2サイクル目の放電容量を100としたときの相対値としてそれぞれ示している。
【0171】
【表1】
【0172】
表1および図5に示すように、実施例1〜7の非水二次電池は高容量であり、また、比較例1の非水二次電池よりも、電池厚みの変化量が少なく、充放電が繰り返された後の容量維持率も高く、電池特性が優れていることが確認できる。また、図6A、Bから明らかなように、負極にコート層を設けなかった実施例7の電池に比べ、コート層を設けた実施例2の電池では、電極体の変形が抑制されていた。また、前述したポリアミドイミドをバインダとすることにより、200℃以下の低温での熱処理でも、負極合剤層の強度を高めることができ、優れた特性の電池を構成することができた。
【0173】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0174】
以上のように、本発明によれば、充放電に伴う電極の湾曲を抑制して、これによる電池の膨れの発生を防ぎ、高容量で、充放電サイクル特性が良好な非水二次電池を提供することができる。本発明の非水二次電池は、小型で多機能な携帯機器の電源を始めとして、従来の非水二次電池が適用されている各種用途に好ましく用いることができる。
【0175】
【符号の説明】
11 負極
12 正極
13 セパレータ
14 絶縁体
15 巻回電極体
16 正極リード部
17 負極リード部
18 蓋板
19 絶縁パッキング
21 端子
22 絶縁体
23 リード板
24 非水電解液注入口
25 開裂ベント
26 外装缶
Claims (20)
- 合剤層と、前記合剤層の表面に形成された多孔質層とを含む非水二次電池用電極であって、
前記合剤層は、
組成式SiOxで表され、前記組成式中のxが0.5≦x≦1.5である電極材料と、
導電性材料と、
ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドよりなる群から選択される少なくとも1種のバインダとを含み、
前記多孔質層は、Liと反応しない絶縁性材料を含むことを特徴とする非水二次電池用電極。 - 前記バインダが、その分子鎖中に芳香環を有する請求項1に記載の非水二次電池用電極。
- 前記導電性材料が、炭素材料である請求項1に記載の非水二次電池用電極。
- 前記電極材料と前記導電性材料とが、複合体を形成している請求項1に記載の非水二次電池用電極。
- 前記電極材料の表面が、前記導電性材料で被覆されている請求項4に記載の非水二次電池用電極。
- 前記電極材料と前記導電性材料とが造粒体を形成している請求項4に記載の非水二次電池用電極。
- 前記複合体の表面が、更に別の導電性材料で複合化されている請求項4に記載の非水二次電池用電極。
- 前記多孔質層の厚みが、1〜10μmである請求項1に記載の非水二次電池用電極。
- 前記絶縁性材料が、アルミニウム酸化物である請求項1に記載の非水二次電池用電極。
- 前記多孔質層が、バインダをさらに含む請求項1に記載の非水二次電池用電極。
- 前記バインダが、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリアミドよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項10に記載の非水二次電池用電極。
- 電極材料と、導電性材料と、ポリアミドイミドとを含む合剤含有スラリーを集電体の表面に塗布し、乾燥させて塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を圧縮成形して合剤層を形成する工程と、
前記合剤層を、100℃以上200℃以下の温度で熱処理する工程とを含むことを特徴とする電極の製造方法。 - 前記電極材料が、組成式SiOxで表され、前記組成式中のxが0.5≦x≦1.5である電極材料を含む請求項12に記載の電極の製造方法。
- 前記導電性材料が、炭素材料である請求項12に記載の電極の製造方法。
- 前記合剤層の表面に、Liと反応しない絶縁性材料を含む多孔質層を形成する工程をさらに含む請求項12に記載の電極の製造方法。
- 前記多孔質層が、バインダをさらに含む請求項15に記載の電極の製造方法。
- 前記絶縁性材料が、アルミニウム酸化物である請求項15に記載の電極の製造方法。
- 前記多孔質層の厚みが、1〜10μmである請求項15に記載の電極の製造方法。
- 前記熱処理を減圧下で行う請求項12に記載の電極の製造方法。
- 正極、負極および非水電解質を含む非水二次電池であって、
前記負極は、請求項1〜11のいずれかに記載の非水二次電池用電極であることを特徴とする非水二次電池。
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