本発明は、調理容器などの被加熱物を加熱する加熱調理器に関し、特にトッププレート上にタッチキーを備えた加熱調理器に関する。
近年、鍋などの調理容器を、加熱コイルにより誘導加熱する誘導加熱調理器及びガスにより加熱するガス調理器などの加熱調理器が、一般家庭や業務用のキッチンなどで広く用いられている。これらの加熱調理器には、トッププレートの上面にタッチキーなどの操作部を備えているものがある(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許文献1の操作部は、1以上の静電容量式のタッチキーを有する。タッチキーは、トッププレートの上面と下面に設けられた一対のキー電極である。トッププレートの下面側のキー電極は、接触電極に電気的に接続されている。接触電極には、制御部に接続された導電性の接続部材の端部が接触されており、制御部は接続部材を介してキー電極に高周波信号を出力するとともに、キー電極に出力されている信号の大きさを測定している。タッチキーに使用者の指が触れると、キー電極の大地に対する静電容量の増加に対応して、キー電極に出力される高周波信号の大きさの低下が接触電極及び接続部材を介して制御部に伝達される(例えば、特許文献1の図4〜図6)。
特許文献2の加熱調理器は、トッププレート下方に平面状電極を銅箔で形成した操作回路基板を設け、タッチキーの接触範囲を確定するために、前記平面状電極の周囲に操作信号を検出する回路のコモン電位に接続されたシールド用の電極を設けている。これにより、平面状電極の外縁近傍に触れたとき、平面状電極とシールド用電極の近傍にともに触れることになるので平面状電極の電位が下がり、タッチキーが動作し易くなるようにしている。
特許文献3の加熱調理器は、安全性を向上させるために、操作部周辺の上に物が置かれているときは、加熱を開始しないようにしている。具体的には、物が上に置かれていることを検知するための周辺状態検知手段を操作部の近傍に設けている。周辺状態検知手段が周辺状態検知手段の上に物が置かれていることを検知すると、加熱を開始しないようにしている。
特開2003−303673号公報
特開平10−214677号公報
特開2006−207843号公報
特許文献1の加熱調理器において、制御部と電気接続するための接触電極は、触れたことを検知するためのキー電極と電気的に接続しているため、接触電極の上が押されたときであっても、すなわち、接触電極に対向するトッププレートの上面に使用者が触れたときであっても、タッチキーに触れたときと同様の信号が制御部に伝達されてしまう。そのため、タッチキーの範囲外にある接触電極に対向するトッププレートの上面が押されたときに、使用者が意図していない誤動作が生じるという問題があった。
特許文献2や特許文献3は、タッチキーの接触範囲を確定するために、タッチキーの外縁に触れたときにタッチキーの動作を受け付け易くすることや、安全性向上のためタッチキーの上に物が置かれたときに加熱を開始しないことを開示しているが、タッチキーと制御部とを電気的に接続する接触電極の上が押されたときに生じる誤動作を防ぐ手段を開示していない。そのため、特許文献2のシールド用の電極や特許文献3の周辺状態検知手段では、タッチキーの範囲外である接触電極に対向するトッププレート上に触れた場合の誤動作を適正に防ぐことはできない。よって、接触電極に対向するトッププレート上に触れたときには、タッチキーが使用者の意図しない信号を制御部に伝達してしまう場合がある。
このように、従来の加熱調理器では、使用者がタッチキーを操作しようと意図していないときにも、タッチキーが作動して、タッチキーに割り当てられた制御命令に基づく動作を実行してしまう場合があった。
本発明は、上記問題を解決するものであって、使用者がタッチキーを操作しようと意図していないときに、タッチキーに割り当てられた制御命令に基づく動作を実行してしまうことを防ぐ、加熱調理器を提供することを目的とする。特に、使用者が、接触電極などのタッチキーの範囲外に触れた場合に誤動作が起こることを防止する加熱調理器を提供することを目的とする。
本発明の加熱調理器は、被加熱物を加熱する加熱源と、機器上面に設けられたトッププレートと、トッププレートの下面に設けられたキー電極と、キー電極と電気的に接続するようにトッププレートの下面に設けられた接触電極とを含み、キー電極近傍のトッププレートに指で触れられることにより、割り当てられた制御命令を入力する電極部と、接触電極と接触された導電性の接続部材を介して接触電極と電気的に接続されて、電極部に高周波信号を加えると共に、電極部近傍に触れられたことを検知して、制御命令に基づき加熱源への通電を制御する制御部と、接触電極との間隔が使用者の指の幅より小さい間隔になるようにして、接触電極の周辺に設けられたキャンセル電極と、を備える。制御部は、別の導電性の接続部材を介してキャンセル電極と電気的に接続されてキャンセル電極に高周波信号を加え、キャンセル電極の近傍が触れられたことを検知しているときに、制御命令に基づいた動作を制限することを特徴とする。
キャンセル電極の近傍が触れられたことを検知しているときの制御命令に基づいた動作の制限とは、制御命令に基づく加熱源への通電を無効にすることを含んでもよい。
キャンセル電極の近傍が触れられたことを検知しているときの制御命令に基づいた動作の制限とは、キー電極の近傍に触れられたことを検出しにくくすることを含んでもよい。
制御部は、電極部の近傍が触れられている状態から触れられていない状態に変化したことを検知した後の所定時間以内にキャンセル電極の近傍が触れられていることを検知したとき、及び/又はキャンセル電極の近傍が触れられている状態から触れられていない状態に変化したことを検知した後の所定時間以内に電極部の近傍が触れられていることを検知したとき、電極部から伝達される制御命令に基づく加熱源への通電制御を無効にしてもよい。
制御部は、キャンセル電極の近傍が触れられている状態から触れられていない状態に変化したことを検知した後の所定時間以内はキー電極の近傍に触れられたことを検知しにくくしてもよい。
制御部は、キー電極の近傍が触れられたことを検知する基準となるキー入力検知基準値を有し、キャンセル電極近傍が触れられたことを検知したときは、キー入力検知基準値をキー電極の近傍に触れられたことを検知しにくい値に変更してもよい。
制御部は、キャンセル電極の近傍が触れられたことを検知する基準となるキャンセル入力検知基準値を有し、キー電極の近傍に触れられたことを検知したときは、キャンセル入力検知基準値をキャンセル電極が触れられたことを検知しにくい値に変更してもよい。
キャンセル電極は、トッププレートの手前側を開放して、キー電極と接触電極とを囲むように配置されることが好ましい。
上記加熱調理器は、キー電極の下方に設けられた光源をさらに有し、光源はキー電極の一部が切り抜かれることにより形成された切り抜き部に光を照射してもよい。
上記加熱調理器は、キャンセル電極の近傍が触れられたことの検知とキー電極の近傍が触れられたことの検知とが同時にされたときに、そのことを報知する報知部をさらに備えてもよい。
上記加熱調理器は、キャンセル電極の近傍が触れられたことを検知している状態が所定時間以上継続しているときに、そのことを報知する報知部をさらに備えてもよい。
上記制御部は、キー電極の近傍が第1の所定時間以上継続して触れられたことを検知したときに、制御命令に基づいて加熱源への通電を制御し、一つのキー電極の近傍に触れられてから第1の所定時間より長い第2の所定時間が経過する前に、他のキー電極の近傍が触れられたことを検知すると、一つのキー電極と他のキー電極の組み合わせに対応した制御命令に基づく加熱源への通電制御を無効にしてもよい。
本発明の加熱調理器によれば、タッチキーを構成するトッププレート下面のキー電極と電気的に接続される接触電極の周辺に、キャンセル電極を設けて、接触電極近傍のトッププレートの上面に指が触れたとき、キャンセル電極の近傍に指が近接したことを検知するようにしている。また、キャンセル電極近傍のトッププレート表面に対する指の接触状態に基づいて、タッチキーに割り当てられた制御命令に基づく加熱源の動作を制限している。これにより、使用者がタッチキーを操作しようと意図していないときに、タッチキーに割り当てられた制御命令に基づく動作を実行してしまうことを防ぐことができる。例えば、使用者の指がタッチキーの入力操作領域の範囲外に設けられた接触電極近傍に触れた場合に、誤って使用者の意図しない加熱動作が起こることを防止することができる。
本発明の実施形態1の加熱調理器の構成を示す側面図
本発明の実施形態1の加熱調理器の構成の一部を示す分解斜視図
本発明の実施形態1のキー電極、接触電極、及びキャンセル電極の形状を示す図
本発明の実施形態1の加熱調理器の動作を示すフローチャート
本発明の実施形態2の加熱調理器の全体の構成図
本発明の実施形態2のトッププレートの平面図
本発明の実施形態2のタッチキーとキャンセル電極の検知信号の波形図
本発明の実施形態2の加熱調理器のフローチャート
符号の説明
1 トッププレート
2 操作領域
3 電極部
3a キー電極
3b 接触電極
3c 操作電極
3d 領域表示枠
3e キー表示
4 被加熱物
5a キャンセル電極
5b キャンセル電極
6 接続部材
7 接続部材
8 制御部
8a 抵抗
8b コンデンサ
9 光源
10 加熱コイル
11 フレーム
12 報知部
13 タッチキー
14 加熱部
15 非塗装領域
20 機器上面
130 操作部
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
《実施形態1》
本発明の実施形態1の加熱調理器は、機器上面に設けられたトッププレート上の被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルを加熱源として備える誘導加熱調理器であり、使用者がタッチキーの操作範囲として表示される操作領域の範囲外に、特にタッチキーと制御部との電気接続を行うため、トッププレート下面に形成される接触電極に対向するトッププレート上に触れた場合に誤動作が起こることを防止する機能を有する。
1.1 誘導加熱調理器の構成
図1及び図2に、本発明の実施形態1の誘導加熱調理器の構成を示す。図1は誘導加熱調理器の全体構成の側面図であり、図2は誘導加熱調理器の構成の一部の分解斜視図である。
本実施形態の誘導加熱調理器は、鍋などの被加熱物4を載置するトッププレート1を機器上面に有する。トッププレート1は、ガラスなどの電気絶縁物からなり、光を透過する。トッププレート1の周囲には、金属製の枠体であるフレーム11が設けられている。フレーム11は、大地に接地された機器外筐体(図示せず)に接続され、同電位となっている。
機器外筐体内において、トッププレート1の下方には、被加熱物4を誘導加熱する加熱コイル10が設けられている。被加熱物4は、加熱コイル10に対応させて、トッププレート1の上面に載置される。加熱コイル10は、制御部8に接続されており、制御部8により通電制御される。
トッププレート1の上面には、被加熱物4の加熱制御を指示する制御命令を操作により入力するための操作領域2が設けられており、操作領域2に対向するトッププレート1の下面に、キー電極3aが設けられている。本実施形態において、静電容量式のタッチキー13は、操作領域2とキー電極3aとにより構成される。なお、操作領域2には、操作感度を高めるために電極を設けてもよい。タッチキー13は、使用者が操作し易いように、加熱コイル10より手前に、すなわち使用者側になるように配置される。本実施形態の誘導加熱調理器は、図2に示すように複数のタッチキー13a〜13c(まとめて、タッチキー13という)を備えており、各タッチキー13には、例えば、加熱の開始/停止や火力の上げ下げを制御する制御命令がそれぞれ割り当てられている。
導電性の接続部材6を接触させるための接触電極3bが、トッププレート1下面に設けられる。接触電極3bはキー電極3aに接続されており、キー電極3aと接触電極3bとは、電気的に導通している。以下、キー電極3aと接触電極3bとを合わせて、電極部3と呼ぶ。電極部3は、上方から見て加熱コイル10側の外縁が凸形状になるように導電性の印刷膜が設けられることにより、形成されている。接触電極3bは、その幅と長さがキー電極3aより短く、キー電極3aより奥側(使用者より加熱コイル10側)に突き出るように設けられる。導電性の接続部材6の一端が接触電極3bと接触し、他端が制御部8に接続されることにより、キー電極3aと制御部8とが電気的に接続される。
キー電極3aの下方に、キー電極3aを照射する光源9が設けられる。キー電極3aは、所定の幅の領域表示枠3dを有する。領域表示枠3dは、キー電極3a内で、キー電極3aの外縁の近傍を切り抜くことにより形成される。光源9からの光は、領域表示枠3dを通って、トッププレート1の上方に放射される。領域表示枠3dにより、タッチキー13の操作領域2が使用者に示される。領域表示枠3dは、完全な枠状に切り抜いても、その外側と内側の電極は容量で電気的に接続される。また、領域表示枠3dは、一部切り抜かない部分を設けて全体として枠状となるように切り抜いてもよい。電極部3と制御部8とを電気的に接続する接続部材6は、操作領域2の外側に設けられる。キー電極3aの下方に光源9が設けられているため、キー電極3aの下方から光を照射して、領域表示枠3dと文字や記号であるキー表示3eを操作領域2内で発光させて表示することができる。
制御部8は、商用電源に接続されており、整流器、スイッチング素子を含むインバータ回路、及びマイクロコンピュータを含む制御回路などにより構成される。制御部8は、接続部材6を介して、接触電極3b及びキー電極3aに例えば約300kHzの高周波信号を印加する発振部(図示せず。)を有する。高周波信号の周波数は10kHz以上で無線周波数帯域より低い周波数を用い、キー電極3aの近傍を指で触れることにより電極の静電容量の変化を測定できればよい。この発振部は、トランスなどで電源供給される。発振部の共通電位は、大地電位(例えば、接地される機器筐体)と、抵抗8a(例えば100Ω)及びコンデンサ8b(例えば1000pF)の直列回路を介して接続されて、発振部と大地との間のインピーダンスが確定される。なお、インピーダンスの設定方法はこれに限定されるものではなく、制御部8の構成により省略することもできる。使用者が指で操作領域2に触れると、使用者の指、トッププレート1、及び指で触れた操作領域2に対向するキー電極3aにより、コンデンサが形成され、大地に人体を通じて高周波信号がバイパスされる。これにより、キー電極3aと大地間の静電容量が指で触れてない場合に比べて大きくなる、すなわちキー電極3aと大地間のインピーダンスが指で触れてない場合に比べて小さくなるので、当該キー電極3aに出力される高周波信号の電圧が低下する。制御部8は、キー電極3aの電圧が所定の電圧以下に低下すると、タッチキー13が押されたと判断して、当該タッチキー13に割り当てられた制御命令に基づいて加熱コイル10への通電を制御する。例えば、タッチキー13に入力された制御命令に従って、加熱の開始、停止、火力の調節などを行う。
なお、本明細書において、タッチキー13、キー電極3a、接触電極3b及びキャンセル電極5aについて、「押し下げる」、「押す」、「操作する」の文言は、いずれも同様の意味で使用され、入力操作のために各電極に対向するトッププレート1の表面部分に触れることを意味するものである。また、キー電極3a、接触電極3b及びキャンセル電極5aについて用いる「近傍」の文言は、各電極に対向するトッププレート1の表面部分を意味するものである。
タッチキー13を構成するキー電極3aは、接触電極3bに接続されているため、接触電極3bに対向するトッププレート1の上面に使用者が触れた場合、操作領域2に触れた場合と同様に、キー電極3a及び接触電極3bを含む電極部3の電圧が下がり、制御部8は制御命令が入力されたと判断してしまう可能性がある。そこで、操作領域2の範囲外である、接触電極3bに対向するトッププレート1の上面に触れたときは、電極部3に割り当てられた制御命令に従って動作しないように制御するために、トッププレート1の下面で且つ接触電極3bの周囲にキャンセル電極5aが設けられている。制御部8とキャンセル電極5aとは、接続部材6とは別の導電性の接続部材7により、電気的に接続されている。
図3に、キャンセル電極5aと、電極部3を構成するキー電極3a及び接触電極3bの平面形状とを示す。キャンセル電極5aは、各キー電極3aに接続されている接触電極3bの周辺に、それらを囲むように設けられると共に、同一直線上に並べられたキー電極3aの群の両側及び加熱コイル10側を囲むように設けられる。接触電極3bとキャンセル電極5aとの間隔d1は、使用者の指がトッププレート1に触れたときの標準の大人の指とトッププレート1との接触部分の幅(約7〜10mm)より小さくなるように設けられている。これにより、接触電極3bの縁のトッププレート1の上面に触れたとき、同時にキャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面近傍にも触れるようにしている。また、キー電極3aの上部のトッププレート1の上面に明らかに触れていないと判断される位置で接触電極3bの上部のトッププレート1の上面に触れたときにキャンセル電極5aの上部または上部近傍に触れ、キャンセル電極5aに触れたと検知できるように接触電極3bの幅d2又は接触電極の長さd4と間隔d1とを設定することが好ましい。接触電極3bの幅d2、または長さd4を短くすればするほど接触電極3bの近傍に触れたとき、キャンセル電極5aが指の近接をより検知し易くなる。例えば、d1を2mmとし、d2を3mmと設定することができる。また、d1を2mmとし、d4を3mmとすることができる。少なくとも接触電極3bの外周部(キー電極3aとの接続部分を除く。)に対向するトッププレート1の上面に触れたとき、同時にキャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面にも触れるようにしているので、制御部8は接触電極3bの上部のトッププレート1の上面に触れられたことを検出して、使用者に違和感が生じないようにタッチキー13の動作を制御することができる。本実施形態においては、キー電極3aとキャンセル電極5aとの間隔についても、使用者の指とトッププレート1との接触部分の幅より小さくなるように設けられている。その間隔は、例えば2mmである。これにより、操作領域2の範囲を明確に設定することができる。なお、接触電極3bは、図3に示すようにキー電極3aの加熱コイル10側の辺の略中央部(幅d3の略中央部)に設ける必要はなく、左右に偏った位置に設けてもよい。
トッププレート1の下面に設けられるキー電極3a、接触電極3b、及びキャンセル電極5aは、銅やカーボンなどの導電性物質により形成されており、例えば、導電性塗料の塗布膜、スクリーン印刷膜、又は金属の蒸着膜により形成される。
制御部8は、キャンセル電極5aについても同様に、高周波電圧を印加して、キャンセル電極5aの電圧が所定の電圧以下に低下したことあるいは所定の電圧差以上の電圧低下を検知したときに、キャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面が押されたと判断する。制御部8は、キャンセル電極5aと接触電極3bに対向するトッププレート1の上面が同時に押されたことを検知すると、その接触電極3bに接続されているキー電極3aから伝達される制御命令に基づく動作を制限する。本実施形態においては、具体的には、制御命令に基づく加熱コイル10への通電を無効にすることにより、制御命令に基づく動作を制限する。
図1に示すように、本実施形態の誘導加熱調理器は、報知部12をさらに有する。報知部12は、キー電極部3aとキャンセル電極5aが同時に押されたことにより、制御命令が無効になった場合に、通常の報知形態と異なる報知形態でそのことを報知する。報知部12は、例えばブザー又は音声を発生する音声報知装置である。
1.2 誘導加熱調理器の動作
上記のように構成される本実施形態の誘導加熱調理器の動作について、以下に説明する。図4は、制御部8が実行する動作のフローチャートである。制御部8は、キャンセル電極5aが押されているかどうかを判定する(S101)。具体的には、キャンセル電極5aの電圧を検知し、キャンセル電極5aの電圧が所定の電圧より低いときに、キャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面が押されたと判断する。制御部8は、キャンセル電極5aの電圧を検知し、キャンセル電極5aの電圧がキャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面を押していないときの電圧よりも所定の電圧差以上低下したときに、キャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面が押されたと判断してもよい。
キャンセル電極5aが押されていた場合、制御命令が入力されたかどうかを判断する(S102)。具体的には、電極部3の電圧が所定の電圧より低いかどうかを判断し、電極部3の電圧が所定の電圧より低いときに、電極部3から制御命令が入力されたと判断する。制御部8は、電極部3の電圧を検知し、電極部3の電圧が電極部3に対向するトッププレート1の上面を押していないときの電圧よりも所定の電圧差以上低下したときに、電極部3に対向するトッププレート1の上面が押されたと判断してもよい。
キャンセル電極5aの押下と同時に電極部3から制御命令が入力されれば、その制御命令を無効にする(S103)。例えば、火力を上げるための制御命令が入力されている場合は、その制御命令に従って、火力を上げないように加熱コイル10を制御する。ステップ102において、キャンセル電極5aの押下と同時に入力されている制御命令がなければ、何もせずに、ステップ101に戻る。
ステップ101において、キャンセル電極5aが押されていない場合は、電極部3から制御命令が入力されたかどうかを判断する(S104)。制御命令が入力されていれば、その制御命令を有効にする(S105)。すなわち、制御部8は、その制御命令に従って、加熱コイル10を通電制御する。制御部8は、電極部3からの制御命令の入力操作が有効となっている状態が継続する時間を測定し、当該継続時間が所定時間(例えば0.1秒)に満たない場合に、その制御命令に従った加熱コイル10に対する通電制御の実行を禁止し、当該継続時間が所定以上となる場合に、その制御命令に従った加熱コイル10に対する通電制御の実行を行うようにしてもよい。なお、制御回路8は、ステップ104で、電極部3の電圧が所定の電圧より低いかどうかを判断し、電極部3の電圧が所定の電圧より低い状態が所定時間(例えば0.1秒)継続したときに、電極部3から制御命令が入力されたと判断してもよい。同様に、制御部8は、電極部3の電圧を検知し、電極部3の電圧が電極部3に対向するトッププレート1の上面を押していないときの電圧よりも所定の電圧差以上低下した状態が所定時間(例えば0.1秒)継続したときに、電極部3から制御命令が入力されたと判断してもよい。この場合には、ステップ102、103を削除し、ステップ101でキャンセル電極5aが押されている場合には、何もせずに、ステップ101に戻る。そして、ステップ105で制御命令を有効とした時点でその制御命令に従った加熱コイル10に対する通電制御の実行を行う。
以上のように、本実施形態の誘導加熱調理器は、制御部8がキャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面が押されていると判断していなければ、電極部3からの制御命令が入力されたときに、タッチキー13の操作領域2が操作されたと判断して、入力された制御命令に従って加熱コイル10を通電制御する。一方、制御部8がキャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面が押されていると判断している場合は、電極部3からの制御命令が入力されたとしても、タッチキー13の操作領域2が操作されていないと判断して、電極部3からの制御命令に従った加熱源の動作設定の変更を行わないで、加熱源の動作を以前のまま継続する。
1.3 まとめ
使用者は、機器上面に設けられたトッププレート1に被加熱物4を載置して、加熱調理を行うときに、キー電極3aに対向するトッププレート1の表面部分(以下、「キー電極の近傍」という。)に形成される操作領域2に触れることによって、制御命令を入力する。しかし、操作領域2以外である、接触電極3bと対向するトッププレート1の上面部分(以下、「接触電極の近傍」という。)に触れたときは操作領域2に触れたときと同様に、電極部3のインピーダンスが低下し、制御部8から加えられた高周波信号の電圧が触れない時に比べ下がるため、触れたと検知され、制御命令が制御部8に伝達されてしまう可能性がある。本実施形態によれば、接触電極3bとキャンセル電極5aとの間隔が標準の大人の指とトッププレート1との接触部分より小さくなる位置にキャンセル電極5aを設けているため、操作領域2の範囲外である、接触電極3bに対向するトッププレート1の上面と、キャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面と同時に指で触れるようにすることができる。同時に触れる部分を増加させるには、適宜間隔を狭くすればよい。なお、間隔は0.5mm以上とすることが好ましく、1mm以上とすることがさらに好ましい。印刷のばらつきや電極間相互の干渉を考慮して設定すればよい。同時に接触電極3bとキャンセル電極5aを指で触れると、接触電極3bとキャンセル電極5aの両方の大地に対するインピーダンスが小さくなり、高周波信号の電圧が下がるので、キャンセル電極5aの近傍に触れたと検知したとき、制御部8は使用者がタッチキー13を操作したものではないと判断することができる。よって、このような使用者が意図しないで電極部3の電圧が所定の電圧以下となる場合には、タッチキー13に割り当てられた制御命令に従った動作を行わないようにすることができる。このように制御することによって、本実施形態の誘導加熱調理器は、使用者がタッチキー13の操作領域2内に触れたと認識できる場合にのみ加熱コイル10への通電制御を行うようにしており、明らかにタッチキー13の操作領域2の範囲外に触れた場合に制御命令が入力されて制御動作が行われ、使用者に違和感を生じさせることを防止している。また、タッチキー13の操作領域2の範囲が明確化されるため、使用者は、タッチキー13の操作をし易くなる。
また、報知部12により、タッチキー13の操作が無効になったことを使用者に知らせることで、使用者がタッチキー13が故障していると誤認してしまうことを防止できる。
また、キャンセル電極5aをキー電極3aの周辺にも設けているため、いずれかの操作領域2に何らかの導電性物体が置かれたときは、対応するキー電極3aの近傍に設けられているキャンセル電極5に対向するトッププレート1の上面にも同じ物体が存在することが多い。よって、タッチキー13の操作領域2に手を触れた状態で調理器具などが置かれた場合や、鍋からのふきこぼれや水などが付着しそれを手で触れた場合、あるいは鍋からのふきこぼれなどを使用者が布巾などで拭いたときに操作領域2内に触れた場合は、キャンセル電極5aと同時に触れられたことが検知されたタッチキー13の操作を無効にするか、そのタッチキー13の操作を受付けにくくすることができる。これにより、使用者が意図しない動作をすることなく加熱を継続でき、安全性と使用者の利便性を向上できる。
操作領域2に対して指で操作する場合に、図1に示すように指先で接触し指全体が手前側に斜めに傾斜して位置することになるので手前側の方がトッププレート1により多く接触しかつ近接度合いが高くなる。しかし、本実施形態によれば、使用者側を開放してキャンセル電極5aを設けることによって、すなわち、キー電極3aの使用者側に、キャンセル電極5aを設けないことによって、タッチキー13の操作領域2を操作するときに誤ってキャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面に触れてしまうことを防止することができる。また、操作領域2は使用者が操作し易いように、トッププレート1の手前側(使用者側)に配置されているため、操作時にキャンセル電極5aに意図せず触れるあるいは近接することがない。
また、キャンセル電極5aを、使用者側を含んで操作領域2の全体を囲むように設けると、キャンセル電極5aが金属製のフレーム11に近すぎてしまう。フレーム11は、アースに接続されるため、キャンセル電極5aが金属製のフレーム11に近いと、キャンセル電極5aの電圧が下がったままとなってしまい、制御部8は、キャンセル電極5aが押されたままであると誤った判断をしてしまう。しかし、本実施形態によれば、キャンセル電極5aは、使用者側を開放して設けられているため、キャンセル電極5aの電圧がフレーム11に近づいて下がったままとなることはない。なお、キャンセル電極5aをキー電極3aの使用者側に設ける場合は、加熱コイル10側におけるキャンセル電極5aとキー電極3a間の距離よりも、使用者側におけるキャンセル電極5aとキー電極3a間の距離を大きくすることが好ましい。
1.4 変形例
なお、本実施形態においては、キャンセル電極5aは、使用者側を開放して、キー電極3aと接触電極3bとを囲むように設けていたが、少なくとも接触電極3bを囲むように設けていれば良い。少なくとも接触電極3bを囲むようにキャンセル電極5aを設けていれば、トッププレート1上のタッチキー13の操作領域2の範囲外に触れた場合の誤動作を防ぐことができる。
なお、本実施形態においては、キャンセル電極5aと電極部3とが同時に押されているときは、制御部8が電極部3から伝達される制御命令を無効になるようにしたが(図4のステップ103)、制御命令を無効にせずに、タッチキー13の利き具合をキャンセル電極5aと電極部3とが同時に押されていない場合に比べ、利きにくくなるように変更するようにしても良い。タッチキー13を利きにくくすることにより、制御命令に基づく動作が制限される。これにより、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
このとき、タッチキー13が押下されたかどうかを、電極部3aの電圧がキー押下検知レベルの基準となる所定の電圧(キー入力検知基準値)より小さくなったかどうかで判断する場合には、当該キー入力検知基準値となる所定の電圧をキャンセル電極5aの押下がされている場合には、されていない場合に比べて低くなるように変更する。例えば、キャンセル電極5aが押されていないときは、第1の所定の電圧と電極部3の電圧とを比較し、キャンセル電極5aが押されているときは、第1の所定の電圧より低い第2の所定の電圧と電極部3の電圧とを比較する。これにより、キャンセル電極5aが押されているときは、判断基準となる所定の電圧(キー入力検知基準値)が低い値になって、タッチキー13を利きにくくすることができる。
また、タッチキー13が押下されたかどうかを、電極部3aの電圧が、キャンセル電極5aの押下がされていない場合に比べて、キー押下検知レベルの基準となる所定の電圧低下量(キー入力検知基準値)以上に低下したかどうかで判断する場合には、当該キー入力検知基準値となる所定の電圧低下量をキャンセル電極5aの押下がされている場合にはされていない場合に比べて大きくするように変更する。例えば、キャンセル電極5aが押されていないときは、第1の所定の電圧低下量と電極部3の電圧の低下量とを比較し、キャンセル電極5aが押されているときは、第1の所定の電圧低下量より大きい第2の所定の電圧低下量と電極部3の電圧の低下量とを比較する。これにより、キャンセル電極5aが押されているときは、押されていない場合に比べて、電極部3の押下判断基準となる所定の電圧低下量(キー入力検知基準値)が大きい値になって、タッチキー13を利きにくくすることができる。
電極部3への出力電圧は、タッチキー13の操作領域2と使用者の指との接触部分の面積によって変化し、接触部分の面積が大きいほど、電極部3の電圧が下がる。よって、使用者が意図的にタッチキー13の操作領域2に触れているとき、すなわち、使用者の指とタッチキー13の操作領域2との接触部分の面積が大きいときは、電極部3の電圧が電圧値の低い第2の所定の電圧以下となる、または低下量の大きい第2の所定の電圧低下量以上になる。これにより、制御部8は、タッチキー13が意図的に押下されていると判断することができる。一方、使用者の指とタッチキー13の操作領域2との接触部分の面積が小さいときは、電極部3の電圧が電圧値の低い第2の所定の電圧以下に達しない。これにより、制御部8は、タッチキー13が意図的に押下されていないと判断することができる。このように、キャンセル電極5aの押下状態によって、キャンセル電極5aが押下状態にあるときは、キャンセル電極5aが押下状態にないときよりも、電極部3のキー入力検知基準値を受け付けにくくなるように変更することにより、タッチキー13を反応しにくくなるように変更し、操作領域2以外に触れたときに誤動作することを防いでも良い。
また、上記キー入力検知基準値の変更を、図4のステップ101とステップ102との間に行っても良い。すなわち、キャンセル電極5aが押下されたと判断されたときにキー入力検知基準値を変更して、タッチキー13が利きにくくなるようにする。それでもタッチキー13が押されていると判断したときに、押されたタッチキー13による制御命令を無効にしても良い。キャンセル電極5aとタッチキー13の押下が同時に行なわれて無効となると報知を行う場合において、当該報知をする機会を少なくすることができる。
また、同様に、キャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面が押下されているかどうか判断するためのキャンセル検知レベルとなる所定の電圧(キャンセル入力検知基準値)を、タッチキー13の状態に基づいて変更し、タッチキー13が押下されているときはタッチキー13が押下されていないときよりもキャンセル電極5aが利きにくくなるようにしても良い。キャンセル電極5aとタッチキー13の押下が同時に行なわれると報知を行う場合において、当該報知をする機会を少なくすることができる。
なお、本実施形態においては、キャンセル電極5aと接触電極3bとが同時に押下操作されていることを検知しているときに、すなわち、キャンセル電極5aと接触電極3bとに対向するトッププレート1の上面に同時に触れていることを検知しているときに、その接触電極3bに接続されるキー電極3aから伝達される制御命令を無効にするとして説明したが、同時に触れられているときに限らず、キャンセル電極5aと接触電極3bとが同時に触れられていないときにも制御命令を無効にしてもよい。具体的には、キャンセル電極5aが触れられている状態から触れられていない状態に変化したことを検知してから所定時間(例えば、0.5秒)以内に接触電極3bが触れられたことを検知する場合、及び/又は接触電極3bが触れられている状態から触れられていない状態に変化してから所定時間(例えば、0.5秒)以内にキャンセル電極5aが触れられたことを検知した場合であっても、キャンセル電極5aと接触電極3bとが同時に触れられているとみなして、その接触電極3bに接続されるキー電極3aから伝達される制御命令を無効にするか、又はキャンセル電極5aが触れられていない状態に切り替わった後の所定時間以内にそのキー電極3aの近傍に触れられたことを検知しにくくしても良い。これにより、同様の効果を得ることができる。
なお、キー電極3aと接触電極3bとを含む電極部3の外縁の形状は凸形状でなくても良い。例えば、長方形や正方形であっても良い。接続部材6と接触する接触電極3bの近傍にキャンセル電極5aが設けられていれば良い。また、接続部材6と接触する接触電極3bが図3に示すような位置より、さらに遠くに離して設けた場合すなわち図3のd4が長くなる場合には、接続部材6と接触する部分近傍の幅d2よりも、電極部3a側の電極部3aとの接続配線部分の幅を細くしてくびれた形状とすることにより、キャンセル電極5aの作用をより大きくすることが好ましい。
なお、タッチキー13に割り当てられた制御命令を示す記号や文字について、キー電極3aを切り抜いて、下方から光源9の光を照射して浮かび上がらせる構成に代えて、トッププレート1の上面または下面の操作領域2に記号や文字が印刷されていても良い。
なお、本実施形態においては、キー電極3aの下方に光源9を設けていたが、光源9はなくても良い。この場合であっても、接触電極3bをキー電極3aの後方側に設けることにより、キー電極3aを手前側に配置し易くすることができる。
なお、本実施形態においては、タッチキー13を構成するキー電極3aは、トッププレート1の下面に設けられていたが、トッププレート1の上面にもキー電極3aと対向する電極を設けても良い。同様に、キャンセル電極5aは下面に設けたが、トッププレート1の上面と下面の両方に設けられた一対の電極により、キャンセル電極5aを形成しても良い。
なお、トッププレート1は、ガラスの代わりに結晶化セラミックなどの光透過性の電気絶縁物により形成されても良い。
また、報知部12は、ブザーや音声報知装置に限らず、液晶などの表示装置、LEDなどの光源や、振動を発生する装置であっても良い。
なお、本実施形態の加熱調理器は、キー電極及びキャンセル電極に出力した高周波信号の出力電圧を検知してその電圧値あるいは電圧低下量を検知する静電容量式のタッチキーを用い、操作部に触れられたことを検知したが、他の方式の静電式タッチキーを用いて操作されたことを検知した場合でも本発明を適用できる。当該他の方式の静電式タッチキーの構成で同様にキャンセル電極に触れられたかどうかを検知すればよい。
また、本実施形態の加熱調理器は、電極部3と大地間のインピーダンスが、指で触れられていない場合に比べて低下すると、電極部3が指で触れられたと検知し、キャンセル電極5aと大地間のインピーダンスが、指で触れられていない場合に比べて低下すると、キャンセル電極5aが指で触れられたと検知する構成としたが、電極部3近傍に指で触れられたことを検知する構成と、キャンセル電極5a近傍に指で触れられたことを検知する構成とは、これに限定されない。例えば、電極部3近傍に制御部8のコモン電位に接続されたコモン電極を形成して、電極部3とコモン電極間の静電容量が増大したことを検知して電極部3が触れられたことを検知するようにしても良い。同様に、キャンセル電極5a近傍に制御部8のコモン電位に接続されたコモン電極を形成して、キャンセル電極5aとコモン電極間の容量が増大したことを検知してキャンセル電極5aが触れられたことを検知するようにしても良い。
本発明の加熱調理器は、接触電極などのキー電極と制御部との接続のために設けられた導電性接続部近傍のタッチキーの操作領域外に触れた場合に生じる誤動作を防ぐことができるため、本体上面に設けられた静電式タッチキーに入力される制御命令が接触電極を介して制御部に伝達される構成を有する加熱調理器に有用である。本実施形態においては、加熱源が加熱コイルである誘導加熱調理器について説明したが、本発明のタッチキーの構成及び制御は、機器上面にタッチキーを有する加熱コイル以外の加熱源を備えた加熱調理器にも適応できる。例えば、加熱源がガスバーナであるガス加熱調理器や、加熱源がハロゲンランプであるハロゲン調理器、加熱源がラジエントやシーズヒータなどのヒータ式調理器などにも適用できる。
《実施形態2》
本発明の実施形態2の誘導加熱調理器は、被加熱物を加熱中に、被加熱物からのふきこぼれなどを使用者が布巾などで拭いたときにタッチキーに触れた場合、タッチキーが押下されたと誤って判断して、誤動作することを防ぐ機能を有する。
2.1 誘導加熱調理器の構成
図5に本発明の実施形態2の誘導加熱調理器の構成を示す。図5において、図1と同一の構成要素については、同一の符合を付し、説明を省略する。本実施形態の誘導加熱調理器は、タッチキー13の電極の構成と、接触電極3bを有していないことと、光源9を有していないことが実施形態1と異なる。また、接触電極3bを有していないため、キャンセル電極5bの形状も、実施形態1のキャンセル電極5aと異なる。実施形態1と異なる構成について、具体的に以下に説明する。
本実施形態においては、操作電極3cがトッププレート1の上面に設けられ、その操作電極3cに対向するトッププレート1の下面にキー電極3aが設けられている。このようにトッププレート1の上面と下面に設けられた一対の電極3c、3aにより静電容量式のタッチキー13を構成している。操作電極3cは安定した操作感度を得るために設けているが省略することができる。その場合には操作領域がキー電極3aと対向するトッププレート上面に印刷表示される。トッププレート1の下面に設けられたキー電極3aは、図1の接続部材3bと同様、他端が制御部8に接続された導電性の接続部材(図示せず。)と直接接触し、制御部8に電気的に接続されている。なお、図1の接触電極3bの構成を採用して電気接続してもよい。
制御部8は、商用電源に接続されており、操作検出回路8cを有する。操作検出回路8cは、操作電極3cに対向するキー電極3aに高周波数の交流信号を印加する発振回路(図示せず)、操作電極3cに加えられた電圧を入力し整流する整流回路(図示せず)、整流回路の電圧を測定する電圧検出回路(図示せず)を含む。操作検出回路8cの共通電位は、大地に、抵抗8aとコンデンサ8bの直列回路を介して、接続されている。使用者の指がトッププレート1の上面に設けられた操作電極3cに触れると、電極3aから人体をバイパスして大地に流れる高周波電流の経路ができる。すなわち、電極3aと大地間のインピーダンスが低下する(容量値が大きくなる)。このため、キー電極3aと大地間のインピーダンスが低下し、キー電極3aに出力された交流信号の電圧が下がり、その電圧による信号が制御部8に伝送される。制御部8は、この信号を、操作検出回路8cにより直流電圧に変換してそのレベルの低下量を検出する。これにより、制御部8は、タッチキー13が触れられていない場合の検知電圧からの低下量が所定値以上となるとタッチキー13が押された(操作された)ことを検知して、押されたタッチキー13に割り当てられた制御命令を実行して加熱コイルへ10の通電を制御する。
制御部8は、タッチキー13が押されると、押された状態が継続する時間を測定し、測定時間が所定時間(第1の所定時間、例えば0.1秒)に達すると、割り当てられた制御命令を実行するように加熱コイル10への通電を制御する(図7(a))。例えば、制御部8は、加熱停止中に、切り/入りキー13cが押されたことを検知(図7(a)の時点t1)後、0.1秒経過すると(図7(a)の時点t3)、加熱コイル10の加熱動作を開始する。
図5に示すように、本実施形態の誘導加熱調理器は、トッププレート1の下面で且つタッチキー13の近傍にキャンセル電極5bを有する。制御部8の操作検出回路8cは、交流信号をキャンセル電極5bに出力している。使用者の指、使用者が手で持った状態でトッププレート1上に載置された調理器具、またはトッププレート1上にこぼれ接地電位であるフレーム11に触れた水などが、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1の上面に触れると、キャンセル電極5bへの出力電圧が下がる(図7(b)〜(d))。この電圧の低下量が所定以上になることを検知することにより、制御部8は、キャンセル電極5b近傍のトッププレート1上面が触れられたことを検知する。制御部8は、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1の上面とタッチキーの操作電極3cとが同時に触れられたことを検知すると、そのタッチキーの操作による加熱コイル10の通電状態を変更する制御命令を無効にする。キャンセル電極5bが押されたときの動作の詳細については、後述する。
タッチキー13を構成する操作電極3c、キー電極3aやキャンセル電極5bは、導電性塗料の塗布膜、スクリーン印刷膜、又は金属の蒸着膜等の導電性材料により形成される。操作電極3c、キー電極3aやキャンセル電極5bを、接続配線とともに銅箔で形成したフレキシブルプリント配線板を、粘着材によりトッププレート下面に貼付して形成し、制御部8に接続してもよい。操作電極3c、キー電極3a及びキャンセル電極5bを、印刷配線板に接続配線とともに銅箔で形成し、トッププレート1下面に押し当てて制御部8に接続するようにしてもよい。
図6に、図5に示す本実施形態の誘導加熱調理器の機器上面20に設けられたトッププレート1の平面図を示す。トッププレート1の上面あるいは下面に、被加熱物を載置する場所を示す加熱部14が表示されている。加熱部14は、下方に設けられた加熱コイルに対応する位置に、印刷膜を円形に形成することにより、表示される。図6においては、二つの加熱部14が設けられており、その加熱部14にそれぞれ対応するように操作部130が設けられている。
各操作部130は、複数のタッチキー13a〜13cにより構成される。タッチキー13a〜13cは、図5に示すタッチキー13の構成を有し、一対の電極3a、3cにより構成されている。複数のタッチキー13a〜13cには、例えば、加熱の開始/停止や火力の上げ下げを制御する制御命令がそれぞれ割り当てられている。操作部130は、使用者が操作し易いように、加熱部14より手前に、すなわち使用者側になるように配置される。
キャンセル電極5bは、操作部130にそれぞれ対応するように設けられており、トッププレートの手前側(使用者側)を開放して、操作部130の両側と加熱コイル10側(奥側)に、操作部130を囲むように配置され、上方から見てコの字状に形成される。
遮光塗料が塗装されていない非塗装領域であり且つ火力設定表示などの表示がなされる操作表示窓15が、操作部130及びキャンセル電極5bを含むように設けられている。操作表示窓15には、黒色の光透過性膜が印刷される。操作表示窓15を除いて、下方から光を透過させる必要のないトッププレート1の上面又は下面はトッププレート1の下方に配置されている加熱コイル10などが見えないように、着色塗料により塗装または印刷されている。
このように構成される誘導加熱調理器において、加熱コイル10が被加熱物4を加熱中に、布巾などでトッププレート1のキャンセル電極5bに対向する部分とキー電極3aに対向する部分が拭かれた場合に、キャンセル電極5bの電圧がキー電極3aと略同時に変化する。制御部8は、このキャンセル電極5bの電圧の変化が同時に起きたことを検知すると、キャンセル電極5bと同時に電圧変化が起きたと判断されたタッチキー13のキー電極3aに割り当てられた制御命令に従って、加熱コイル10の動作設定を変更しないように誘導加熱調理器を制御する。
また、加熱中にタッチキー13a〜13c上にまたがって、被加熱物4からのふきこぼれなどで水が付着した場合に布巾などでタッチキー13が拭かれた場合には、タッチキー13の、複数のキー電極3aの電圧が同時に変化する。そこで、本実施形態の誘導加熱調理器は、2つ以上のタッチキー13が同時に押されていると判断した場合についても、それらのタッチキー13に割り当てられた制御命令に従って動作しないように制御している。このような、誘導加熱調理器の動作について、図7及び図8を用いて、以下に説明する。
2.2 誘導加熱調理器の動作
図7(a)〜(d)は、制御部8の操作検出回路8cに含まれる整流回路の出力電圧変化を示す、タッチキーとキャンセル電極の検知信号の波形である。図7(a)〜(d)において、横軸は時間を示しており、タッチキーとキャンセル電極の縦軸は電圧の値を示している。制御命令の縦軸は、タッチキーに割り当てられた制御命令に基づいて、加熱コイル10への通電制御が変更されたか否か(制御命令が実行されたか無効にされたか)をHighとLowの状態によって模式的に示すものである。
図7(a)は、タッチキー13が押されたときに制御命令が実行されるタイミングを示している。操作検出回路8cは、タッチキー13が触れられていない場合の検知電圧からの低下量が所定値以上となると、タッチキー13が操作されたことを検知する(時点t1)。制御部8は、タッチキー13が操作されてから操作状態が継続している時間を測定し、その測定時間が第1の所定時間(例えば0.1秒)に達すると、押されたタッチキーに割り当てられている制御命令に従って、加熱コイル10の動作状態を変更するように制御する(時点t3)。例えば、加熱停止中に、切り/入りキー13cが押されたことを検知後、キャンセル電極5bが押されてなければ、切り/入りキー13cの押されたことを検知している状態が0.1秒継続すると、加熱コイル10の加熱動作を開始する。また、加熱動作中に、切り/入りキー13cが押されたことを検知後、押されたことを検知している状態が、0.1秒継続すると、加熱コイル10の加熱を停止させる。
図7(b)は、キャンセル電極5bが押されているときに、タッチキー13が押された場合に制御命令が無効になる場合を示している。すなわち、タッチキー13a〜13cのいずれかが押される前(時点t0)に、キャンセル電極5bが押され、当該タッチキーと同時にキャンセル電極5bが押される状態となる場合を示している。操作検出回路8cは、キャンセル電極5bの電圧の低下量が所定以上になることを検知すると、キャンセル電極5b近傍のトッププレート1上面が触れられたことを検知する(時点t0)。制御部8は、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1の上面が触れられたことを検知すると、キャンセル電極5bが押されたと検知したときの加熱コイル10の加熱動作を継続する。また、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1の上面が触れられている間、タッチキー13に入力された制御命令に基づく加熱コイル10への通電状態の変更ができないように制御する。よって、タッチキー13が押されたことが検知され(時点t1)、その後、当該タッチキーが押されたと検知してから押されたことを検知している状態が第1の所定時間(例えば、0.1秒)継続しても、制御部8は、当該タッチキーに割り当てられた制御命令を実行しない(時点t3)。
図7(c)は、キャンセル電極5bが押される前に、タッチキー13が押されて制御命令が実行されたときの状態を示している。制御部8は、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1の上面が触れられたことを検知すると(時点t5)、検知時の加熱コイル10の通電状態を継続するため、実行されている制御命令に基づく動作を継続させる(時点t5)。すなわち、タッチキー13a〜13cのいずれかが押されたことを検知してから第1の所定時間経過した後で、キャンセル電極5bが押され(時点t5)、当該タッチキーと同時にキャンセル電極5bが押される状態となる場合には、キャンセル電極5bと同時に押された状態となった当該タッチキーについて、キャンセル電極5bが押されたと検知したときの加熱コイル10の加熱動作を継続するとともに、同時に押された状態となった以降の当該タッチキーに割り当てられた制御命令の実行がされない。
図7(d)は、キャンセル電極5bが押されている状態で、タッチキー13が押され、その後、キャンセル電極5bが押されていない状態に戻った場合の波形を示している。タッチキー13が押された時点(時点t1)では、キャンセル電極5bが押された状態であるため、時点t1〜t2までの間は、タッチキー13が押されたとは判断されず、タッチキー13が押されて0.1秒経過しても、制御命令は実行されない(時点t3)。しかし、キャンセル電極5bが押されていない状態に戻ってから0.1秒が経過すると、制御命令は実行される(時点t4)。すなわち、タッチキー13a〜13cのいずれかが押されたことを判断し(時点t2)かつキャンセル電極5bが押されていない状態が第1の所定時間経過すると、当該タッチキー13a〜13cのいずれかに割り当てられた制御命令が実行される(時点t4)。
図7(a)〜(d)に示すように、制御命令が実行されるか、又は無効にされるかに関するフローを、図8を用いて説明する。図8は、制御部8が実行する動作のフローチャートである。図8のフローチャートについて、図7(a)〜(d)の検知信号波形を参照しながら、図6の左側に設けられた加熱部14により、被加熱物4を加熱している場合の動作を例として、説明する。
制御部8は、加熱中の加熱コイル10に対応したキャンセル電極5bが押されているかどうかを判定する(S201)。キャンセル電極5bが押されている(キャンセル電極5b近傍上部のトッププレート1上面に指で触れられている)場合(図7(b)時点t0以降、図7(c)時点t5以降、図7(d)時点t0〜t2)、加熱中の加熱コイル10に対応した操作部130を構成する複数のタッチキー13a〜13cの中で、押されたタッチキーがあるかどうかを判定する(S202)。キャンセル電極5bが押されていることを検知している場合(S201でYES)に、押されたタッチキーがあれば(S202でYES)(図7(b)及び(d)時点t1)、押されたタッチキーによる操作を無効にする(S203)(図7(b)及び(d)時点t3)。すなわち、押されたタッチキーに割り当てられている制御命令に従って、加熱コイル10の動作状態を変更しないように制御する。例えば、加熱中に加熱を停止するためのタッチキー13cが押された場合には、加熱を停止せず、加熱状態を継続する。また、火力を上げるためのタッチキー13bが押されたことを検知した場合は、タッチキー13bが押されたことに従って、火力を上げないように加熱コイル10を制御する。ステップ202において、キャンセル電極5bが押されていても、タッチキー13bが押されなければ、何もせずに、ステップ201に戻る。
以上のように、キャンセル電極5bが押されたことを検知すると、当該検知時の加熱源の制御状態を継続する。また、キャンセル電極5bが押されたことを検知していると、タッチキー13が押されたことを検知しても、当該タッチキーに割り当てられた制御命令は実行されない。また、タッチキー13のいずれかが押されたことを検知しかつキャンセル電極5bが押されていない状態が所定時間継続したときに、適正にタッチキー13のいずれかが操作されたと判断して当該タッチキー13に割り当てられた制御命令が実行される。なお、第1の所定時間を設けることは、誤動作を防止するために有効である。
ステップ201において、キャンセル電極5bが押されていない場合は、加熱中の加熱コイルに対応した操作部130を構成する複数のタッチキー13a〜13cのいずれかのタッチキーが押されたかどうかを判定する(S204)。タッチキー13a〜13cのいずれかが押された場合、別のタッチキーが同時に押されたかどうかを判定する(S205)。同時に押された別のタッチキーがあれば、押された全てのタッチキーによる操作を無効にし(S206)、別のキーが同時に押されていなければ、押されたタッチキーによる操作を有効にする(S207)。
2.3 まとめ
このように、本実施形態の誘導加熱調理器によれば、加熱コイル10が被加熱物4を加熱中に、キャンセル電極5bが押された場合、又は、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1の上面に使用者又は接地された部分が触れている何らかの物体がある場合、キャンセル電極5bと同時に押されたタッチキーの操作による加熱コイル10の加熱動作の変更を無効にしている。キャンセル電極5bはタッチキー13a〜13cの近傍に設けられているため、タッチキー13a〜13cのいずれかの上に何らかの物体が触れると、タッチキー13a〜13cの近傍に設けられているキャンセル電極5bの上方にも当該物体が同時に触れることが多い。よって、1つ以上のタッチキーの上面に手で触れられた調理器具が置かれた場合や、被加熱物4からのふきこぼれや水などがタッチキーと通常接地されるフレーム11に付着した場合、あるいは被加熱物4からのふきこぼれなどを使用者が布巾などで拭いた場合は、キャンセル電極5bにより、同時に押されたタッチキーの操作を無効にすることができる。これにより、使用者が意図しない動作をすることなく、加熱コイルへの通電制御の変動を防ぐことができる。例えば、意図しない加熱の開始、又は意図しない加熱の停止を防いで、加熱調理を継続させることができる。よって、安全性と使用者の利便性を向上できる。
また、本実施形態によれば、2つ以上のタッチキーが同時に押された場合についても、それらのタッチキーに従った操作を無効としている。これにより、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1の上面には触れずに、複数のタッチキー上に何らかの物体が触れて操作された場合、例えば調理器具が置かれた場合や、被加熱物4からのふきこぼれや水などが付着した場合、あるいは被加熱物4からのふきこぼれなどを使用者が布巾などで拭いた場合であっても、使用者が意図しない動作をすることなく加熱を継続することができる。これにより、安全性と利便性の向上を効果的に図ることができ、タッチキーによる操作性を向上させることができる。
また、使用者側(手前側)を開放して操作部130の周辺を囲むように、キャンセル電極5bを設ける、すなわち、操作部130の使用者側に、キャンセル電極5bを設けないことによって、操作部130を操作するときに誤ってキャンセル電極5bに触れてしまうことを防止することができる。操作部130に対して指で操作する場合に、指先で接触し指全体が手前側に斜めに傾斜して位置することになるので手前側の方がトッププレート1により多く接触しかつ近接度合いが高くなる。また、操作部130は使用者が操作し易いように、トッププレート1の使用者側に配置されているため、もし、キャンセル電極5bを、使用者側を含んで操作部130の全体を囲むように設けると、使用者が調理中に誤って触れてしまう可能性が高く、またキャンセル電極5bが金属製のフレーム11に近すぎてしまう。フレーム11は、機器本体やキッチンに接続されることにより、大地(アース)に接続されるため、キャンセル電極5bが金属製のフレーム11に近いと、キャンセル電極5bの電圧が下がったままとなってしまい、制御部8は、キャンセル電極5bが押されたままであると誤った判断をしてしまうおそれがある。しかし、本実施形態によれば、キャンセル電極5bは、使用者側を開放して設けられているため、操作時にキャンセル電極5bに意図せず触れるあるいは近接することがなく、また、キャンセル電極5bの電圧が下がったままとなることはない。したがって、キャンセル電極5bを操作部130の使用者側に設ける場合は、加熱コイル10側におけるキャンセル電極5bと操作部130間の距離よりも、使用者側におけるキャンセル電極5aと操作部130間の距離を大きくすることが好ましい。
2.4 変形例
なお、本実施形態においては、電極部3と大地間のインピーダンス、及びキャンセル電極5aと大地間のインピーダンスのいずれもが、指で触れられていない場合に比べて低下すると、電極部3とキャンセル電極5aが同時に指で触れられたと検知する構成としたが、同時に触れられたことを検知する構成はこれに限定されない。例えば、電極部3とキャンセル電極5a間の容量が増大したことにより電極部3とキャンセル電極5aが同時に触れられたことを検知してもよい。また、電極部3近傍に制御部8のコモン電位に接続されたコモン電極を形成して電極部3とコモン電位間の容量が増大したことを検知して、電極部3が触れられたことを検知するようにしても良い。同様に、キャンセル電極5a近傍に制御部8のコモン電位に接続されたコモン電極を形成してキャンセル電極5aとコモン電位間の容量が増大したことを検知して、キャンセル電極5bが触れられたことを検知するようにしても良い。
なお、本実施形態においては、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1の上面に何かが触れていると検知している間は、キャンセル電極5bと同時に押されているタッチキーの操作を無効にしたが、キャンセル電極5bと同時に押されているタッチキーだけでなく、操作部130を構成する全てのタッチキー13a〜13cの操作を無効にしても良い。これにより、誤動作を防ぎ、さらに安全性を向上させることができる。
また、本実施形態の誘導加熱調理器は、操作部130内において、同時に2つ以上のタッチキーが押された場合は、押されたタッチキーのみが無効になるように動作したが、操作部130を構成する全てのタッチキー13a〜13cの操作が無効になるようにしても良い。
また、本実施形態においては、キャンセル電極5bとタッチキーが同時に押されたときに、そのタッチキーによる操作を無効にするとして説明したが、同時に限らず、所定時間(第2の所定時間、例えば、0.5秒)以内に、キャンセル電極5bからタッチキー13又はタッチキー13からキャンセル電極5bという順で押された場合であっても、そのタッチキーによる操作を無効にしても良い。すなわち、制御部8は、キャンセル電極5b近傍のトッププレート1の部分が指で触れられたことを検知している状態から、キャンセル電極5b近傍のトッププレート1の部分が指で触れられていないことを検知した後、所定時間以内にタッチキー13a〜13cのいずれかに入力された制御命令に基づく加熱コイル10への通電状態の変更ができないように制御することで、同様の効果を得ることができる。
同様に、2つ以上のタッチキーが同時に押されたときに限らず、所定時間(第2の所定時間、例えば、0.5秒)以内に、あるタッチキーから別のタッチキーが押された場合であっても、そのタッチキーによる操作を無効にしても良い。例えば、複数のタッチキーのうちのいずれか1つが押されてから、第2の所定時間が経過する前に、別のタッチキーが押されると、最初に押されたタッチキーによる操作と後に押されたタッチキーによる操作のどちらも無効にする、又は押されたタッチキーを含む操作部を構成する全てのキーを無効にする。すなわち、最初に押されたタッチキーによる通電制御が既に行われていた場合には、既に行っている通電制御を停止するようにしても良い。例えば、制御部8が、タッチキーが第1の所定時間(例えば、0.1秒)押されたときに加熱コイル10の通電を制御する場合、第1の所定時間が第2の所定時間より短いときに、最初に押されたタッチキーに基づく通電制御が既に行われてしまう。この場合には、最初に押されたタッチキーに基づく通電制御を停止する。このようにすることで、被加熱物4からのふきこぼれや水などがトッププレートに付着し、それを使用者が布巾などで、隣り合うタッチキーが順番に押されるように拭いた場合であっても、タッチキーが動作してしまうことを防ぐことができる。これにより、使用者が意図しない動作をすることなく安全に加熱を継続でき、さらに使い勝手が向上する。
なお、あるタッチキーが押されなくなってから所定時間(第3の所定時間、例えば、0.4秒)以内に他のタッチキーが押されたときに、他のタッチキーによる操作を無効にしても同様の効果が得られる。なお、第3の所定時間は、上記第2の所定時間と同じ長さであってもよく、第2の所定時間より長くても短くてもよい。
なお、本実施形態においては、いずれか2つ以上のキーが同時に押されている場合に、キー操作が無効であるとしたが、いずれか2つ以上のキーは同一線上に並べられた隣り合うタッチキー(例えば、タッチキー13aとタッチキー13b)であっても良いし、隣り合わないタッチキー(例えば、タッチキー13aとタッチキー13c)であっても良い。
なお、図6においては、キャンセル電極5bは、使用者側を開放して、タッチキー13a〜13cを囲むように設けていたが、タッチキー13aと13cの横に配置された部分を削除して、加熱部14側だけに設けるようにしても良い。
なお、本実施形態においては、キャンセル電極5bは、トッププレート1の下面のみに設けられていたが、トッププレート1の上面と下面とに電極を設けることにより構成しても良い。また、トッププレート1の上面のみにキャンセル電極5bを設けても良い。同様に、タッチキー13は、トッププレート1の上面に形成された電極を削除しても良い。
また、キャンセル電極5bが配置されている位置を可視にしても良い。使用者にキャンセル電極5bの位置を認識させることにより、キャンセル電極5bが押されると、タッチキー13による操作が無効になることを認識し易くすることができる。
また、キャンセル電極5bが押されている状態が所定時間以上継続している場合に、報知部12により報知しても良い。これにより、タッチキー13による操作が無効であることを使用者に認識し易くすることで、使用者にとってより使いやすくなる。
なお、本実施形態において、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1上に触れたときとは、キャンセル電極5bの真上に触れたときだけでなく、キャンセル電極5bの外縁近傍を触れたときも含んでも良い。
なお、本実施形態においては、3つのタッチキー13a〜13cにより操作部130を構成しているが、操作部130を構成するタッチキーの数は任意である。例えば、キャンセル電極5bにより、タッチキー13の操作を無効にする誘導加熱調理器において、操作部130を構成するタッチキー13は、1つ以上であれば良い。
なお、キャンセル電極5bを設けない構成であっても、2つ以上のタッチキー13が同時に又は所定時間以内に押されることにより、タッチキー13による操作を無効にすることができる。
本実施形態においては、同じ構成を持つ加熱部14、操作部130、キャンセル電極5bを2つずつ有していたが、これらの数は単なる例であって、1つ以上であれば良い。
なお、本実施形態においては誘導加熱調理器について説明したが、本発明のタッチキーの構成及び制御については、タッチキーを有する他の加熱調理器にも適応できる。例えば、ガス加熱調理器や、ハロゲン調理器、ラジエント調理器などにも適用できる。
本発明は、何らかの要因でタッチキーが不用意に押された場合でも、使用者の意図しない動作を防止して、安全性および利便性を効果的に向上させることができるため、タッチキーを有する誘導加熱調理器に有用である。また、加熱源として加熱コイル以外の電気発熱体を使用した電気ヒータ加熱調理器や、ガスを熱源としたガス調理器に適用することができる。ガス調理器の場合には、トッププレートに穴を設けてガスバーナを配設することができる。
なお、実施形態1と実施形態2とを組み合わせても良い。例えば、実施形態2の図8に示す制御を実施形態1の構成と共に行っても良い。又は、実施形態2においても接触電極3bを有する構成とし、実施形態2のキャンセル電極5bを実施形態1のキャンセル電極5aと同一の形状としても良い。これにより、実施形態1と実施形態2により得られる両方の効果が得られる。よって、使用者がタッチキーを操作しようと意図していないときに、加熱コイル10への通電制御が行われてしまうことをできる限り防ぐことができる。
本発明の加熱調理器は、使用者がタッチキーを操作しようと意図していないときに、タッチキーに割り当てられた制御命令に基づく動作を実行してしまうことを防ぐことができるため、タッチキーを有する加熱調理器に有用である。
本発明は、調理容器などの被加熱物を加熱する加熱調理器に関し、特にトッププレート上にタッチキーを備えた加熱調理器に関する。
近年、鍋などの調理容器を、加熱コイルにより誘導加熱する誘導加熱調理器及びガスにより加熱するガス調理器などの加熱調理器が、一般家庭や業務用のキッチンなどで広く用いられている。これらの加熱調理器には、トッププレートの上面にタッチキーなどの操作部を備えているものがある(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許文献1の操作部は、1以上の静電容量式のタッチキーを有する。タッチキーは、トッププレートの上面と下面に設けられた一対のキー電極である。トッププレートの下面側のキー電極は、接触電極に電気的に接続されている。接触電極には、制御部に接続された導電性の接続部材の端部が接触されており、制御部は接続部材を介してキー電極に高周波信号を出力するとともに、キー電極に出力されている信号の大きさを測定している。タッチキーに使用者の指が触れると、キー電極の大地に対する静電容量の増加に対応して、キー電極に出力される高周波信号の大きさの低下が接触電極及び接続部材を介して制御部に伝達される(例えば、特許文献1の図4〜図6)。
特許文献2の加熱調理器は、トッププレート下方に平面状電極を銅箔で形成した操作回路基板を設け、タッチキーの接触範囲を確定するために、前記平面状電極の周囲に操作信号を検出する回路のコモン電位に接続されたシールド用の電極を設けている。これにより、平面状電極の外縁近傍に触れたとき、平面状電極とシールド用電極の近傍にともに触れることになるので平面状電極の電位が下がり、タッチキーが動作し易くなるようにしている。
特許文献3の加熱調理器は、安全性を向上させるために、操作部周辺の上に物が置かれているときは、加熱を開始しないようにしている。具体的には、物が上に置かれていることを検知するための周辺状態検知手段を操作部の近傍に設けている。周辺状態検知手段が周辺状態検知手段の上に物が置かれていることを検知すると、加熱を開始しないようにしている。
特開2003−303673号公報
特開平10−214677号公報
特開2006−207843号公報
特許文献1の加熱調理器において、制御部と電気接続するための接触電極は、触れたことを検知するためのキー電極と電気的に接続しているため、接触電極の上が押されたときであっても、すなわち、接触電極に対向するトッププレートの上面に使用者が触れたときであっても、タッチキーに触れたときと同様の信号が制御部に伝達されてしまう。そのため、タッチキーの範囲外にある接触電極に対向するトッププレートの上面が押されたときに、使用者が意図していない誤動作が生じるという問題があった。
特許文献2や特許文献3は、タッチキーの接触範囲を確定するために、タッチキーの外縁に触れたときにタッチキーの動作を受け付け易くすることや、安全性向上のためタッチキーの上に物が置かれたときに加熱を開始しないことを開示しているが、タッチキーと制御部とを電気的に接続する接触電極の上が押されたときに生じる誤動作を防ぐ手段を開示していない。そのため、特許文献2のシールド用の電極や特許文献3の周辺状態検知手段では、タッチキーの範囲外である接触電極に対向するトッププレート上に触れた場合の誤動作を適正に防ぐことはできない。よって、接触電極に対向するトッププレート上に触れたときには、タッチキーが使用者の意図しない信号を制御部に伝達してしまう場合がある。
このように、従来の加熱調理器では、使用者がタッチキーを操作しようと意図していないときにも、タッチキーが作動して、タッチキーに割り当てられた制御命令に基づく動作を実行してしまう場合があった。
本発明は、上記問題を解決するものであって、使用者がタッチキーを操作しようと意図していないときに、タッチキーに割り当てられた制御命令に基づく動作を実行してしまうことを防ぐ、加熱調理器を提供することを目的とする。特に、使用者が、接触電極などのタッチキーの範囲外に触れた場合に誤動作が起こることを防止する加熱調理器を提供することを目的とする。
本発明の加熱調理器は、被加熱物を加熱する加熱源と、機器上面に設けられたトッププレートと、トッププレートの下面に設けられたキー電極と、キー電極と電気的に接続するようにトッププレートの下面に設けられた接触電極とを含み、キー電極近傍のトッププレートに指で触れられることにより、割り当てられた制御命令を入力する電極部と、接触電極と接触された導電性の接続部材を介して接触電極と電気的に接続されて、電極部に高周波信号を加えると共に、電極部近傍に触れられたことを検知して、制御命令に基づき加熱源への通電を制御する制御部と、接触電極との間隔が使用者の指の幅より小さい間隔になるようにして、接触電極の周辺に設けられたキャンセル電極と、を備える。制御部は、別の導電性の接続部材を介してキャンセル電極と電気的に接続されてキャンセル電極に高周波信号を加え、キャンセル電極の近傍が触れられたことを検知しているときに、制御命令に基づいた動作を制限することを特徴とする。
キャンセル電極の近傍が触れられたことを検知しているときの制御命令に基づいた動作の制限とは、制御命令に基づく加熱源への通電を無効にすることを含んでもよい。
キャンセル電極の近傍が触れられたことを検知しているときの制御命令に基づいた動作の制限とは、キー電極の近傍に触れられたことを検出しにくくすることを含んでもよい。
制御部は、電極部の近傍が触れられている状態から触れられていない状態に変化したことを検知した後の所定時間以内にキャンセル電極の近傍が触れられていることを検知したとき、及び/又はキャンセル電極の近傍が触れられている状態から触れられていない状態に変化したことを検知した後の所定時間以内に電極部の近傍が触れられていることを検知したとき、電極部から伝達される制御命令に基づく加熱源への通電制御を無効にしてもよい。
制御部は、キャンセル電極の近傍が触れられている状態から触れられていない状態に変化したことを検知した後の所定時間以内はキー電極の近傍に触れられたことを検知しにくくしてもよい。
制御部は、キー電極の近傍が触れられたことを検知する基準となるキー入力検知基準値を有し、キャンセル電極近傍が触れられたことを検知したときは、キー入力検知基準値をキー電極の近傍に触れられたことを検知しにくい値に変更してもよい。
制御部は、キャンセル電極の近傍が触れられたことを検知する基準となるキャンセル入力検知基準値を有し、キー電極の近傍に触れられたことを検知したときは、キャンセル入力検知基準値をキャンセル電極が触れられたことを検知しにくい値に変更してもよい。
キャンセル電極は、トッププレートの手前側を開放して、キー電極と接触電極とを囲むように配置されることが好ましい。
上記加熱調理器は、キー電極の下方に設けられた光源をさらに有し、光源はキー電極の一部が切り抜かれることにより形成された切り抜き部に光を照射してもよい。
上記加熱調理器は、キャンセル電極の近傍が触れられたことの検知とキー電極の近傍が触れられたことの検知とが同時にされたときに、そのことを報知する報知部をさらに備えてもよい。
上記加熱調理器は、キャンセル電極の近傍が触れられたことを検知している状態が所定時間以上継続しているときに、そのことを報知する報知部をさらに備えてもよい。
上記制御部は、キー電極の近傍が第1の所定時間以上継続して触れられたことを検知したときに、制御命令に基づいて加熱源への通電を制御し、一つのキー電極の近傍に触れられてから第1の所定時間より長い第2の所定時間が経過する前に、他のキー電極の近傍が触れられたことを検知すると、一つのキー電極と他のキー電極の組み合わせに対応した制御命令に基づく加熱源への通電制御を無効にしてもよい。
本発明の加熱調理器によれば、タッチキーを構成するトッププレート下面のキー電極と電気的に接続される接触電極の周辺に、キャンセル電極を設けて、接触電極近傍のトッププレートの上面に指が触れたとき、キャンセル電極の近傍に指が近接したことを検知するようにしている。また、キャンセル電極近傍のトッププレート表面に対する指の接触状態に基づいて、タッチキーに割り当てられた制御命令に基づく加熱源の動作を制限している。これにより、使用者がタッチキーを操作しようと意図していないときに、タッチキーに割り当てられた制御命令に基づく動作を実行してしまうことを防ぐことができる。例えば、使用者の指がタッチキーの入力操作領域の範囲外に設けられた接触電極近傍に触れた場合に、誤って使用者の意図しない加熱動作が起こることを防止することができる。
本発明の実施形態1の加熱調理器の構成を示す側面図
本発明の実施形態1の加熱調理器の構成の一部を示す分解斜視図
本発明の実施形態1のキー電極、接触電極、及びキャンセル電極の形状を示す図
本発明の実施形態1の加熱調理器の動作を示すフローチャート
本発明の実施形態2の加熱調理器の全体の構成図
本発明の実施形態2のトッププレートの平面図
本発明の実施形態2のタッチキーとキャンセル電極の検知信号の波形図
本発明の実施形態2の加熱調理器のフローチャート
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
《実施形態1》
本発明の実施形態1の加熱調理器は、機器上面に設けられたトッププレート上の被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルを加熱源として備える誘導加熱調理器であり、使用者がタッチキーの操作範囲として表示される操作領域の範囲外に、特にタッチキーと制御部との電気接続を行うため、トッププレート下面に形成される接触電極に対向するトッププレート上に触れた場合に誤動作が起こることを防止する機能を有する。
1.1 誘導加熱調理器の構成
図1及び図2に、本発明の実施形態1の誘導加熱調理器の構成を示す。図1は誘導加熱調理器の全体構成の側面図であり、図2は誘導加熱調理器の構成の一部の分解斜視図である。
本実施形態の誘導加熱調理器は、鍋などの被加熱物4を載置するトッププレート1を機器上面に有する。トッププレート1は、ガラスなどの電気絶縁物からなり、光を透過する。トッププレート1の周囲には、金属製の枠体であるフレーム11が設けられている。フレーム11は、大地に接地された機器外筐体(図示せず)に接続され、同電位となっている。
機器外筐体内において、トッププレート1の下方には、被加熱物4を誘導加熱する加熱コイル10が設けられている。被加熱物4は、加熱コイル10に対応させて、トッププレート1の上面に載置される。加熱コイル10は、制御部8に接続されており、制御部8により通電制御される。
トッププレート1の上面には、被加熱物4の加熱制御を指示する制御命令を操作により入力するための操作領域2が設けられており、操作領域2に対向するトッププレート1の下面に、キー電極3aが設けられている。本実施形態において、静電容量式のタッチキー13は、操作領域2とキー電極3aとにより構成される。なお、操作領域2には、操作感度を高めるために電極を設けてもよい。タッチキー13は、使用者が操作し易いように、加熱コイル10より手前に、すなわち使用者側になるように配置される。本実施形態の誘導加熱調理器は、図2に示すように複数のタッチキー13a〜13c(まとめて、タッチキー13という)を備えており、各タッチキー13には、例えば、加熱の開始/停止や火力の上げ下げを制御する制御命令がそれぞれ割り当てられている。
導電性の接続部材6を接触させるための接触電極3bが、トッププレート1下面に設けられる。接触電極3bはキー電極3aに接続されており、キー電極3aと接触電極3bとは、電気的に導通している。以下、キー電極3aと接触電極3bとを合わせて、電極部3と呼ぶ。電極部3は、上方から見て加熱コイル10側の外縁が凸形状になるように導電性の印刷膜が設けられることにより、形成されている。接触電極3bは、その幅と長さがキー電極3aより短く、キー電極3aより奥側(使用者より加熱コイル10側)に突き出るように設けられる。導電性の接続部材6の一端が接触電極3bと接触し、他端が制御部8に接続されることにより、キー電極3aと制御部8とが電気的に接続される。
キー電極3aの下方に、キー電極3aを照射する光源9が設けられる。キー電極3aは、所定の幅の領域表示枠3dを有する。領域表示枠3dは、キー電極3a内で、キー電極3aの外縁の近傍を切り抜くことにより形成される。光源9からの光は、領域表示枠3dを通って、トッププレート1の上方に放射される。領域表示枠3dにより、タッチキー13の操作領域2が使用者に示される。領域表示枠3dは、完全な枠状に切り抜いても、その外側と内側の電極は容量で電気的に接続される。また、領域表示枠3dは、一部切り抜かない部分を設けて全体として枠状となるように切り抜いてもよい。電極部3と制御部8とを電気的に接続する接続部材6は、操作領域2の外側に設けられる。キー電極3aの下方に光源9が設けられているため、キー電極3aの下方から光を照射して、領域表示枠3dと文字や記号であるキー表示3eを操作領域2内で発光させて表示することができる。
制御部8は、商用電源に接続されており、整流器、スイッチング素子を含むインバータ回路、及びマイクロコンピュータを含む制御回路などにより構成される。制御部8は、接続部材6を介して、接触電極3b及びキー電極3aに例えば約300kHzの高周波信号を印加する発振部(図示せず。)を有する。高周波信号の周波数は10kHz以上で無線周波数帯域より低い周波数を用い、キー電極3aの近傍を指で触れることにより電極の静電容量の変化を測定できればよい。この発振部は、トランスなどで電源供給される。発振部の共通電位は、大地電位(例えば、接地される機器筐体)と、抵抗8a(例えば100Ω)及びコンデンサ8b(例えば1000pF)の直列回路を介して接続されて、発振部と大地との間のインピーダンスが確定される。なお、インピーダンスの設定方法はこれに限定されるものではなく、制御部8の構成により省略することもできる。使用者が指で操作領域2に触れると、使用者の指、トッププレート1、及び指で触れた操作領域2に対向するキー電極3aにより、コンデンサが形成され、大地に人体を通じて高周波信号がバイパスされる。これにより、キー電極3aと大地間の静電容量が指で触れてない場合に比べて大きくなる、すなわちキー電極3aと大地間のインピーダンスが指で触れてない場合に比べて小さくなるので、当該キー電極3aに出力される高周波信号の電圧が低下する。制御部8は、キー電極3aの電圧が所定の電圧以下に低下すると、タッチキー13が押されたと判断して、当該タッチキー13に割り当てられた制御命令に基づいて加熱コイル10への通電を制御する。例えば、タッチキー13に入力された制御命令に従って、加熱の開始、停止、火力の調節などを行う。
なお、本明細書において、タッチキー13、キー電極3a、接触電極3b及びキャンセル電極5aについて、「押し下げる」、「押す」、「操作する」の文言は、いずれも同様の意味で使用され、入力操作のために各電極に対向するトッププレート1の表面部分に触れることを意味するものである。また、キー電極3a、接触電極3b及びキャンセル電極5aについて用いる「近傍」の文言は、各電極に対向するトッププレート1の表面部分を意味するものである。
タッチキー13を構成するキー電極3aは、接触電極3bに接続されているため、接触電極3bに対向するトッププレート1の上面に使用者が触れた場合、操作領域2に触れた場合と同様に、キー電極3a及び接触電極3bを含む電極部3の電圧が下がり、制御部8は制御命令が入力されたと判断してしまう可能性がある。そこで、操作領域2の範囲外である、接触電極3bに対向するトッププレート1の上面に触れたときは、電極部3に割り当てられた制御命令に従って動作しないように制御するために、トッププレート1の下面で且つ接触電極3bの周囲にキャンセル電極5aが設けられている。制御部8とキャンセル電極5aとは、接続部材6とは別の導電性の接続部材7により、電気的に接続されている。
図3に、キャンセル電極5aと、電極部3を構成するキー電極3a及び接触電極3bの平面形状とを示す。キャンセル電極5aは、各キー電極3aに接続されている接触電極3bの周辺に、それらを囲むように設けられると共に、同一直線上に並べられたキー電極3aの群の両側及び加熱コイル10側を囲むように設けられる。接触電極3bとキャンセル電極5aとの間隔d1は、使用者の指がトッププレート1に触れたときの標準の大人の指とトッププレート1との接触部分の幅(約7〜10mm)より小さくなるように設けられている。これにより、接触電極3bの縁のトッププレート1の上面に触れたとき、同時にキャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面近傍にも触れるようにしている。また、キー電極3aの上部のトッププレート1の上面に明らかに触れていないと判断される位置で接触電極3bの上部のトッププレート1の上面に触れたときにキャンセル電極5aの上部または上部近傍に触れ、キャンセル電極5aに触れたと検知できるように接触電極3bの幅d2又は接触電極の長さd4と間隔d1とを設定することが好ましい。接触電極3bの幅d2、または長さd4を短くすればするほど接触電極3bの近傍に触れたとき、キャンセル電極5aが指の近接をより検知し易くなる。例えば、d1を2mmとし、d2を3mmと設定することができる。また、d1を2mmとし、d4を3mmとすることができる。少なくとも接触電極3bの外周部(キー電極3aとの接続部分を除く。)に対向するトッププレート1の上面に触れたとき、同時にキャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面にも触れるようにしているので、制御部8は接触電極3bの上部のトッププレート1の上面に触れられたことを検出して、使用者に違和感が生じないようにタッチキー13の動作を制御することができる。本実施形態においては、キー電極3aとキャンセル電極5aとの間隔についても、使用者の指とトッププレート1との接触部分の幅より小さくなるように設けられている。その間隔は、例えば2mmである。これにより、操作領域2の範囲を明確に設定することができる。なお、接触電極3bは、図3に示すようにキー電極3aの加熱コイル10側の辺の略中央部(幅d3の略中央部)に設ける必要はなく、左右に偏った位置に設けてもよい。
トッププレート1の下面に設けられるキー電極3a、接触電極3b、及びキャンセル電極5aは、銅やカーボンなどの導電性物質により形成されており、例えば、導電性塗料の塗布膜、スクリーン印刷膜、又は金属の蒸着膜により形成される。
制御部8は、キャンセル電極5aについても同様に、高周波電圧を印加して、キャンセル電極5aの電圧が所定の電圧以下に低下したことあるいは所定の電圧差以上の電圧低下を検知したときに、キャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面が押されたと判断する。制御部8は、キャンセル電極5aと接触電極3bに対向するトッププレート1の上面が同時に押されたことを検知すると、その接触電極3bに接続されているキー電極3aから伝達される制御命令に基づく動作を制限する。本実施形態においては、具体的には、制御命令に基づく加熱コイル10への通電を無効にすることにより、制御命令に基づく動作を制限する。
図1に示すように、本実施形態の誘導加熱調理器は、報知部12をさらに有する。報知部12は、キー電極部3aとキャンセル電極5aが同時に押されたことにより、制御命令が無効になった場合に、通常の報知形態と異なる報知形態でそのことを報知する。報知部12は、例えばブザー又は音声を発生する音声報知装置である。
1.2 誘導加熱調理器の動作
上記のように構成される本実施形態の誘導加熱調理器の動作について、以下に説明する。図4は、制御部8が実行する動作のフローチャートである。制御部8は、キャンセル電極5aが押されているかどうかを判定する(S101)。具体的には、キャンセル電極5aの電圧を検知し、キャンセル電極5aの電圧が所定の電圧より低いときに、キャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面が押されたと判断する。制御部8は、キャンセル電極5aの電圧を検知し、キャンセル電極5aの電圧がキャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面を押していないときの電圧よりも所定の電圧差以上低下したときに、キャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面が押されたと判断してもよい。
キャンセル電極5aが押されていた場合、制御命令が入力されたかどうかを判断する(S102)。具体的には、電極部3の電圧が所定の電圧より低いかどうかを判断し、電極部3の電圧が所定の電圧より低いときに、電極部3から制御命令が入力されたと判断する。制御部8は、電極部3の電圧を検知し、電極部3の電圧が電極部3に対向するトッププレート1の上面を押していないときの電圧よりも所定の電圧差以上低下したときに、電極部3に対向するトッププレート1の上面が押されたと判断してもよい。
キャンセル電極5aの押下と同時に電極部3から制御命令が入力されれば、その制御命令を無効にする(S103)。例えば、火力を上げるための制御命令が入力されている場合は、その制御命令に従って、火力を上げないように加熱コイル10を制御する。ステップ102において、キャンセル電極5aの押下と同時に入力されている制御命令がなければ、何もせずに、ステップ101に戻る。
ステップ101において、キャンセル電極5aが押されていない場合は、電極部3から制御命令が入力されたかどうかを判断する(S104)。制御命令が入力されていれば、その制御命令を有効にする(S105)。すなわち、制御部8は、その制御命令に従って、加熱コイル10を通電制御する。制御部8は、電極部3からの制御命令の入力操作が有効となっている状態が継続する時間を測定し、当該継続時間が所定時間(例えば0.1秒)に満たない場合に、その制御命令に従った加熱コイル10に対する通電制御の実行を禁止し、当該継続時間が所定以上となる場合に、その制御命令に従った加熱コイル10に対する通電制御の実行を行うようにしてもよい。なお、制御回路8は、ステップ104で、電極部3の電圧が所定の電圧より低いかどうかを判断し、電極部3の電圧が所定の電圧より低い状態が所定時間(例えば0.1秒)継続したときに、電極部3から制御命令が入力されたと判断してもよい。同様に、制御部8は、電極部3の電圧を検知し、電極部3の電圧が電極部3に対向するトッププレート1の上面を押していないときの電圧よりも所定の電圧差以上低下した状態が所定時間(例えば0.1秒)継続したときに、電極部3から制御命令が入力されたと判断してもよい。この場合には、ステップ102、103を削除し、ステップ101でキャンセル電極5aが押されている場合には、何もせずに、ステップ101に戻る。そして、ステップ105で制御命令を有効とした時点でその制御命令に従った加熱コイル10に対する通電制御の実行を行う。
以上のように、本実施形態の誘導加熱調理器は、制御部8がキャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面が押されていると判断していなければ、電極部3からの制御命令が入力されたときに、タッチキー13の操作領域2が操作されたと判断して、入力された制御命令に従って加熱コイル10を通電制御する。一方、制御部8がキャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面が押されていると判断している場合は、電極部3からの制御命令が入力されたとしても、タッチキー13の操作領域2が操作されていないと判断して、電極部3からの制御命令に従った加熱源の動作設定の変更を行わないで、加熱源の動作を以前のまま継続する。
1.3 まとめ
使用者は、機器上面に設けられたトッププレート1に被加熱物4を載置して、加熱調理を行うときに、キー電極3aに対向するトッププレート1の表面部分(以下、「キー電極の近傍」という。)に形成される操作領域2に触れることによって、制御命令を入力する。しかし、操作領域2以外である、接触電極3bと対向するトッププレート1の上面部分(以下、「接触電極の近傍」という。)に触れたときは操作領域2に触れたときと同様に、電極部3のインピーダンスが低下し、制御部8から加えられた高周波信号の電圧が触れない時に比べ下がるため、触れたと検知され、制御命令が制御部8に伝達されてしまう可能性がある。本実施形態によれば、接触電極3bとキャンセル電極5aとの間隔が標準の大人の指とトッププレート1との接触部分より小さくなる位置にキャンセル電極5aを設けているため、操作領域2の範囲外である、接触電極3bに対向するトッププレート1の上面と、キャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面と同時に指で触れるようにすることができる。同時に触れる部分を増加させるには、適宜間隔を狭くすればよい。なお、間隔は0.5mm以上とすることが好ましく、1mm以上とすることがさらに好ましい。印刷のばらつきや電極間相互の干渉を考慮して設定すればよい。同時に接触電極3bとキャンセル電極5aを指で触れると、接触電極3bとキャンセル電極5aの両方の大地に対するインピーダンスが小さくなり、高周波信号の電圧が下がるので、キャンセル電極5aの近傍に触れたと検知したとき、制御部8は使用者がタッチキー13を操作したものではないと判断することができる。よって、このような使用者が意図しないで電極部3の電圧が所定の電圧以下となる場合には、タッチキー13に割り当てられた制御命令に従った動作を行わないようにすることができる。このように制御することによって、本実施形態の誘導加熱調理器は、使用者がタッチキー13の操作領域2内に触れたと認識できる場合にのみ加熱コイル10への通電制御を行うようにしており、明らかにタッチキー13の操作領域2の範囲外に触れた場合に制御命令が入力されて制御動作が行われ、使用者に違和感を生じさせることを防止している。また、タッチキー13の操作領域2の範囲が明確化されるため、使用者は、タッチキー13の操作をし易くなる。
また、報知部12により、タッチキー13の操作が無効になったことを使用者に知らせることで、使用者がタッチキー13が故障していると誤認してしまうことを防止できる。
また、キャンセル電極5aをキー電極3aの周辺にも設けているため、いずれかの操作領域2に何らかの導電性物体が置かれたときは、対応するキー電極3aの近傍に設けられているキャンセル電極5に対向するトッププレート1の上面にも同じ物体が存在することが多い。よって、タッチキー13の操作領域2に手を触れた状態で調理器具などが置かれた場合や、鍋からのふきこぼれや水などが付着しそれを手で触れた場合、あるいは鍋からのふきこぼれなどを使用者が布巾などで拭いたときに操作領域2内に触れた場合は、キャンセル電極5aと同時に触れられたことが検知されたタッチキー13の操作を無効にするか、そのタッチキー13の操作を受付けにくくすることができる。これにより、使用者が意図しない動作をすることなく加熱を継続でき、安全性と使用者の利便性を向上できる。
操作領域2に対して指で操作する場合に、図1に示すように指先で接触し指全体が手前側に斜めに傾斜して位置することになるので手前側の方がトッププレート1により多く接触しかつ近接度合いが高くなる。しかし、本実施形態によれば、使用者側を開放してキャンセル電極5aを設けることによって、すなわち、キー電極3aの使用者側に、キャンセル電極5aを設けないことによって、タッチキー13の操作領域2を操作するときに誤ってキャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面に触れてしまうことを防止することができる。また、操作領域2は使用者が操作し易いように、トッププレート1の手前側(使用者側)に配置されているため、操作時にキャンセル電極5aに意図せず触れるあるいは近接することがない。
また、キャンセル電極5aを、使用者側を含んで操作領域2の全体を囲むように設けると、キャンセル電極5aが金属製のフレーム11に近すぎてしまう。フレーム11は、アースに接続されるため、キャンセル電極5aが金属製のフレーム11に近いと、キャンセル電極5aの電圧が下がったままとなってしまい、制御部8は、キャンセル電極5aが押されたままであると誤った判断をしてしまう。しかし、本実施形態によれば、キャンセル電極5aは、使用者側を開放して設けられているため、キャンセル電極5aの電圧がフレーム11に近づいて下がったままとなることはない。なお、キャンセル電極5aをキー電極3aの使用者側に設ける場合は、加熱コイル10側におけるキャンセル電極5aとキー電極3a間の距離よりも、使用者側におけるキャンセル電極5aとキー電極3a間の距離を大きくすることが好ましい。
1.4 変形例
なお、本実施形態においては、キャンセル電極5aは、使用者側を開放して、キー電極3aと接触電極3bとを囲むように設けていたが、少なくとも接触電極3bを囲むように設けていれば良い。少なくとも接触電極3bを囲むようにキャンセル電極5aを設けていれば、トッププレート1上のタッチキー13の操作領域2の範囲外に触れた場合の誤動作を防ぐことができる。
なお、本実施形態においては、キャンセル電極5aと電極部3とが同時に押されているときは、制御部8が電極部3から伝達される制御命令を無効になるようにしたが(図4のステップ103)、制御命令を無効にせずに、タッチキー13の利き具合をキャンセル電極5aと電極部3とが同時に押されていない場合に比べ、利きにくくなるように変更するようにしても良い。タッチキー13を利きにくくすることにより、制御命令に基づく動作が制限される。これにより、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
このとき、タッチキー13が押下されたかどうかを、電極部3aの電圧がキー押下検知レベルの基準となる所定の電圧(キー入力検知基準値)より小さくなったかどうかで判断する場合には、当該キー入力検知基準値となる所定の電圧をキャンセル電極5aの押下がされている場合には、されていない場合に比べて低くなるように変更する。例えば、キャンセル電極5aが押されていないときは、第1の所定の電圧と電極部3の電圧とを比較し、キャンセル電極5aが押されているときは、第1の所定の電圧より低い第2の所定の電圧と電極部3の電圧とを比較する。これにより、キャンセル電極5aが押されているときは、判断基準となる所定の電圧(キー入力検知基準値)が低い値になって、タッチキー13を利きにくくすることができる。
また、タッチキー13が押下されたかどうかを、電極部3aの電圧が、キャンセル電極5aの押下がされていない場合に比べて、キー押下検知レベルの基準となる所定の電圧低下量(キー入力検知基準値)以上に低下したかどうかで判断する場合には、当該キー入力検知基準値となる所定の電圧低下量をキャンセル電極5aの押下がされている場合にはされていない場合に比べて大きくするように変更する。例えば、キャンセル電極5aが押されていないときは、第1の所定の電圧低下量と電極部3の電圧の低下量とを比較し、キャンセル電極5aが押されているときは、第1の所定の電圧低下量より大きい第2の所定の電圧低下量と電極部3の電圧の低下量とを比較する。これにより、キャンセル電極5aが押されているときは、押されていない場合に比べて、電極部3の押下判断基準となる所定の電圧低下量(キー入力検知基準値)が大きい値になって、タッチキー13を利きにくくすることができる。
電極部3への出力電圧は、タッチキー13の操作領域2と使用者の指との接触部分の面積によって変化し、接触部分の面積が大きいほど、電極部3の電圧が下がる。よって、使用者が意図的にタッチキー13の操作領域2に触れているとき、すなわち、使用者の指とタッチキー13の操作領域2との接触部分の面積が大きいときは、電極部3の電圧が電圧値の低い第2の所定の電圧以下となる、または低下量の大きい第2の所定の電圧低下量以上になる。これにより、制御部8は、タッチキー13が意図的に押下されていると判断することができる。一方、使用者の指とタッチキー13の操作領域2との接触部分の面積が小さいときは、電極部3の電圧が電圧値の低い第2の所定の電圧以下に達しない。これにより、制御部8は、タッチキー13が意図的に押下されていないと判断することができる。このように、キャンセル電極5aの押下状態によって、キャンセル電極5aが押下状態にあるときは、キャンセル電極5aが押下状態にないときよりも、電極部3のキー入力検知基準値を受け付けにくくなるように変更することにより、タッチキー13を反応しにくくなるように変更し、操作領域2以外に触れたときに誤動作することを防いでも良い。
また、上記キー入力検知基準値の変更を、図4のステップ101とステップ102との間に行っても良い。すなわち、キャンセル電極5aが押下されたと判断されたときにキー入力検知基準値を変更して、タッチキー13が利きにくくなるようにする。それでもタッチキー13が押されていると判断したときに、押されたタッチキー13による制御命令を無効にしても良い。キャンセル電極5aとタッチキー13の押下が同時に行なわれて無効となると報知を行う場合において、当該報知をする機会を少なくすることができる。
また、同様に、キャンセル電極5aに対向するトッププレート1の上面が押下されているかどうか判断するためのキャンセル検知レベルとなる所定の電圧(キャンセル入力検知基準値)を、タッチキー13の状態に基づいて変更し、タッチキー13が押下されているときはタッチキー13が押下されていないときよりもキャンセル電極5aが利きにくくなるようにしても良い。キャンセル電極5aとタッチキー13の押下が同時に行なわれると報知を行う場合において、当該報知をする機会を少なくすることができる。
なお、本実施形態においては、キャンセル電極5aと接触電極3bとが同時に押下操作されていることを検知しているときに、すなわち、キャンセル電極5aと接触電極3bとに対向するトッププレート1の上面に同時に触れていることを検知しているときに、その接触電極3bに接続されるキー電極3aから伝達される制御命令を無効にするとして説明したが、同時に触れられているときに限らず、キャンセル電極5aと接触電極3bとが同時に触れられていないときにも制御命令を無効にしてもよい。具体的には、キャンセル電極5aが触れられている状態から触れられていない状態に変化したことを検知してから所定時間(例えば、0.5秒)以内に接触電極3bが触れられたことを検知する場合、及び/又は接触電極3bが触れられている状態から触れられていない状態に変化してから所定時間(例えば、0.5秒)以内にキャンセル電極5aが触れられたことを検知した場合であっても、キャンセル電極5aと接触電極3bとが同時に触れられているとみなして、その接触電極3bに接続されるキー電極3aから伝達される制御命令を無効にするか、又はキャンセル電極5aが触れられていない状態に切り替わった後の所定時間以内にそのキー電極3aの近傍に触れられたことを検知しにくくしても良い。これにより、同様の効果を得ることができる。
なお、キー電極3aと接触電極3bとを含む電極部3の外縁の形状は凸形状でなくても良い。例えば、長方形や正方形であっても良い。接続部材6と接触する接触電極3bの近傍にキャンセル電極5aが設けられていれば良い。また、接続部材6と接触する接触電極3bが図3に示すような位置より、さらに遠くに離して設けた場合すなわち図3のd4が長くなる場合には、接続部材6と接触する部分近傍の幅d2よりも、電極部3a側の電極部3aとの接続配線部分の幅を細くしてくびれた形状とすることにより、キャンセル電極5aの作用をより大きくすることが好ましい。
なお、タッチキー13に割り当てられた制御命令を示す記号や文字について、キー電極3aを切り抜いて、下方から光源9の光を照射して浮かび上がらせる構成に代えて、トッププレート1の上面または下面の操作領域2に記号や文字が印刷されていても良い。
なお、本実施形態においては、キー電極3aの下方に光源9を設けていたが、光源9はなくても良い。この場合であっても、接触電極3bをキー電極3aの後方側に設けることにより、キー電極3aを手前側に配置し易くすることができる。
なお、本実施形態においては、タッチキー13を構成するキー電極3aは、トッププレート1の下面に設けられていたが、トッププレート1の上面にもキー電極3aと対向する電極を設けても良い。同様に、キャンセル電極5aは下面に設けたが、トッププレート1の上面と下面の両方に設けられた一対の電極により、キャンセル電極5aを形成しても良い。
なお、トッププレート1は、ガラスの代わりに結晶化セラミックなどの光透過性の電気絶縁物により形成されても良い。
また、報知部12は、ブザーや音声報知装置に限らず、液晶などの表示装置、LEDなどの光源や、振動を発生する装置であっても良い。
なお、本実施形態の加熱調理器は、キー電極及びキャンセル電極に出力した高周波信号の出力電圧を検知してその電圧値あるいは電圧低下量を検知する静電容量式のタッチキーを用い、操作部に触れられたことを検知したが、他の方式の静電式タッチキーを用いて操作されたことを検知した場合でも本発明を適用できる。当該他の方式の静電式タッチキーの構成で同様にキャンセル電極に触れられたかどうかを検知すればよい。
また、本実施形態の加熱調理器は、電極部3と大地間のインピーダンスが、指で触れられていない場合に比べて低下すると、電極部3が指で触れられたと検知し、キャンセル電極5aと大地間のインピーダンスが、指で触れられていない場合に比べて低下すると、キャンセル電極5aが指で触れられたと検知する構成としたが、電極部3近傍に指で触れられたことを検知する構成と、キャンセル電極5a近傍に指で触れられたことを検知する構成とは、これに限定されない。例えば、電極部3近傍に制御部8のコモン電位に接続されたコモン電極を形成して、電極部3とコモン電極間の静電容量が増大したことを検知して電極部3が触れられたことを検知するようにしても良い。同様に、キャンセル電極5a近傍に制御部8のコモン電位に接続されたコモン電極を形成して、キャンセル電極5aとコモン電極間の容量が増大したことを検知してキャンセル電極5aが触れられたことを検知するようにしても良い。
本発明の加熱調理器は、接触電極などのキー電極と制御部との接続のために設けられた導電性接続部近傍のタッチキーの操作領域外に触れた場合に生じる誤動作を防ぐことができるため、本体上面に設けられた静電式タッチキーに入力される制御命令が接触電極を介して制御部に伝達される構成を有する加熱調理器に有用である。本実施形態においては、加熱源が加熱コイルである誘導加熱調理器について説明したが、本発明のタッチキーの構成及び制御は、機器上面にタッチキーを有する加熱コイル以外の加熱源を備えた加熱調理器にも適応できる。例えば、加熱源がガスバーナであるガス加熱調理器や、加熱源がハロゲンランプであるハロゲン調理器、加熱源がラジエントやシーズヒータなどのヒータ式調理器などにも適用できる。
《実施形態2》
本発明の実施形態2の誘導加熱調理器は、被加熱物を加熱中に、被加熱物からのふきこぼれなどを使用者が布巾などで拭いたときにタッチキーに触れた場合、タッチキーが押下されたと誤って判断して、誤動作することを防ぐ機能を有する。
2.1 誘導加熱調理器の構成
図5に本発明の実施形態2の誘導加熱調理器の構成を示す。図5において、図1と同一の構成要素については、同一の符合を付し、説明を省略する。本実施形態の誘導加熱調理器は、タッチキー13の電極の構成と、接触電極3bを有していないことと、光源9を有していないことが実施形態1と異なる。また、接触電極3bを有していないため、キャンセル電極5bの形状も、実施形態1のキャンセル電極5aと異なる。実施形態1と異なる構成について、具体的に以下に説明する。
本実施形態においては、操作電極3cがトッププレート1の上面に設けられ、その操作電極3cに対向するトッププレート1の下面にキー電極3aが設けられている。このようにトッププレート1の上面と下面に設けられた一対の電極3c、3aにより静電容量式のタッチキー13を構成している。操作電極3cは安定した操作感度を得るために設けているが省略することができる。その場合には操作領域がキー電極3aと対向するトッププレート上面に印刷表示される。トッププレート1の下面に設けられたキー電極3aは、図1の接続部材3bと同様、他端が制御部8に接続された導電性の接続部材(図示せず。)と直接接触し、制御部8に電気的に接続されている。なお、図1の接触電極3bの構成を採用して電気接続してもよい。
制御部8は、商用電源に接続されており、操作検出回路8cを有する。操作検出回路8cは、操作電極3cに対向するキー電極3aに高周波数の交流信号を印加する発振回路(図示せず)、操作電極3cに加えられた電圧を入力し整流する整流回路(図示せず)、整流回路の電圧を測定する電圧検出回路(図示せず)を含む。操作検出回路8cの共通電位は、大地に、抵抗8aとコンデンサ8bの直列回路を介して、接続されている。使用者の指がトッププレート1の上面に設けられた操作電極3cに触れると、電極3aから人体をバイパスして大地に流れる高周波電流の経路ができる。すなわち、電極3aと大地間のインピーダンスが低下する(容量値が大きくなる)。このため、キー電極3aと大地間のインピーダンスが低下し、キー電極3aに出力された交流信号の電圧が下がり、その電圧による信号が制御部8に伝送される。制御部8は、この信号を、操作検出回路8cにより直流電圧に変換してそのレベルの低下量を検出する。これにより、制御部8は、タッチキー13が触れられていない場合の検知電圧からの低下量が所定値以上となるとタッチキー13が押された(操作された)ことを検知して、押されたタッチキー13に割り当てられた制御命令を実行して加熱コイルへ10の通電を制御する。
制御部8は、タッチキー13が押されると、押された状態が継続する時間を測定し、測定時間が所定時間(第1の所定時間、例えば0.1秒)に達すると、割り当てられた制御命令を実行するように加熱コイル10への通電を制御する(図7(a))。例えば、制御部8は、加熱停止中に、切り/入りキー13cが押されたことを検知(図7(a)の時点t1)後、0.1秒経過すると(図7(a)の時点t3)、加熱コイル10の加熱動作を開始する。
図5に示すように、本実施形態の誘導加熱調理器は、トッププレート1の下面で且つタッチキー13の近傍にキャンセル電極5bを有する。制御部8の操作検出回路8cは、交流信号をキャンセル電極5bに出力している。使用者の指、使用者が手で持った状態でトッププレート1上に載置された調理器具、またはトッププレート1上にこぼれ接地電位であるフレーム11に触れた水などが、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1の上面に触れると、キャンセル電極5bへの出力電圧が下がる(図7(b)〜(d))。この電圧の低下量が所定以上になることを検知することにより、制御部8は、キャンセル電極5b近傍のトッププレート1上面が触れられたことを検知する。制御部8は、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1の上面とタッチキーの操作電極3cとが同時に触れられたことを検知すると、そのタッチキーの操作による加熱コイル10の通電状態を変更する制御命令を無効にする。キャンセル電極5bが押されたときの動作の詳細については、後述する。
タッチキー13を構成する操作電極3c、キー電極3aやキャンセル電極5bは、導電性塗料の塗布膜、スクリーン印刷膜、又は金属の蒸着膜等の導電性材料により形成される。操作電極3c、キー電極3aやキャンセル電極5bを、接続配線とともに銅箔で形成したフレキシブルプリント配線板を、粘着材によりトッププレート下面に貼付して形成し、制御部8に接続してもよい。操作電極3c、キー電極3a及びキャンセル電極5bを、印刷配線板に接続配線とともに銅箔で形成し、トッププレート1下面に押し当てて制御部8に接続するようにしてもよい。
図6に、図5に示す本実施形態の誘導加熱調理器の機器上面20に設けられたトッププレート1の平面図を示す。トッププレート1の上面あるいは下面に、被加熱物を載置する場所を示す加熱部14が表示されている。加熱部14は、下方に設けられた加熱コイルに対応する位置に、印刷膜を円形に形成することにより、表示される。図6においては、二つの加熱部14が設けられており、その加熱部14にそれぞれ対応するように操作部130が設けられている。
各操作部130は、複数のタッチキー13a〜13cにより構成される。タッチキー13a〜13cは、図5に示すタッチキー13の構成を有し、一対の電極3a、3cにより構成されている。複数のタッチキー13a〜13cには、例えば、加熱の開始/停止や火力の上げ下げを制御する制御命令がそれぞれ割り当てられている。操作部130は、使用者が操作し易いように、加熱部14より手前に、すなわち使用者側になるように配置される。
キャンセル電極5bは、操作部130にそれぞれ対応するように設けられており、トッププレートの手前側(使用者側)を開放して、操作部130の両側と加熱コイル10側(奥側)に、操作部130を囲むように配置され、上方から見てコの字状に形成される。
遮光塗料が塗装されていない非塗装領域であり且つ火力設定表示などの表示がなされる操作表示窓15が、操作部130及びキャンセル電極5bを含むように設けられている。操作表示窓15には、黒色の光透過性膜が印刷される。操作表示窓15を除いて、下方から光を透過させる必要のないトッププレート1の上面又は下面はトッププレート1の下方に配置されている加熱コイル10などが見えないように、着色塗料により塗装または印刷されている。
このように構成される誘導加熱調理器において、加熱コイル10が被加熱物4を加熱中に、布巾などでトッププレート1のキャンセル電極5bに対向する部分とキー電極3aに対向する部分が拭かれた場合に、キャンセル電極5bの電圧がキー電極3aと略同時に変化する。制御部8は、このキャンセル電極5bの電圧の変化が同時に起きたことを検知すると、キャンセル電極5bと同時に電圧変化が起きたと判断されたタッチキー13のキー電極3aに割り当てられた制御命令に従って、加熱コイル10の動作設定を変更しないように誘導加熱調理器を制御する。
また、加熱中にタッチキー13a〜13c上にまたがって、被加熱物4からのふきこぼれなどで水が付着した場合に布巾などでタッチキー13が拭かれた場合には、タッチキー13の、複数のキー電極3aの電圧が同時に変化する。そこで、本実施形態の誘導加熱調理器は、2つ以上のタッチキー13が同時に押されていると判断した場合についても、それらのタッチキー13に割り当てられた制御命令に従って動作しないように制御している。このような、誘導加熱調理器の動作について、図7及び図8を用いて、以下に説明する。
2.2 誘導加熱調理器の動作
図7(a)〜(d)は、制御部8の操作検出回路8cに含まれる整流回路の出力電圧変化を示す、タッチキーとキャンセル電極の検知信号の波形である。図7(a)〜(d)において、横軸は時間を示しており、タッチキーとキャンセル電極の縦軸は電圧の値を示している。制御命令の縦軸は、タッチキーに割り当てられた制御命令に基づいて、加熱コイル10への通電制御が変更されたか否か(制御命令が実行されたか無効にされたか)をHighとLowの状態によって模式的に示すものである。
図7(a)は、タッチキー13が押されたときに制御命令が実行されるタイミングを示している。操作検出回路8cは、タッチキー13が触れられていない場合の検知電圧からの低下量が所定値以上となると、タッチキー13が操作されたことを検知する(時点t1)。制御部8は、タッチキー13が操作されてから操作状態が継続している時間を測定し、その測定時間が第1の所定時間(例えば0.1秒)に達すると、押されたタッチキーに割り当てられている制御命令に従って、加熱コイル10の動作状態を変更するように制御する(時点t3)。例えば、加熱停止中に、切り/入りキー13cが押されたことを検知後、キャンセル電極5bが押されてなければ、切り/入りキー13cの押されたことを検知している状態が0.1秒継続すると、加熱コイル10の加熱動作を開始する。また、加熱動作中に、切り/入りキー13cが押されたことを検知後、押されたことを検知している状態が、0.1秒継続すると、加熱コイル10の加熱を停止させる。
図7(b)は、キャンセル電極5bが押されているときに、タッチキー13が押された場合に制御命令が無効になる場合を示している。すなわち、タッチキー13a〜13cのいずれかが押される前(時点t0)に、キャンセル電極5bが押され、当該タッチキーと同時にキャンセル電極5bが押される状態となる場合を示している。操作検出回路8cは、キャンセル電極5bの電圧の低下量が所定以上になることを検知すると、キャンセル電極5b近傍のトッププレート1上面が触れられたことを検知する(時点t0)。制御部8は、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1の上面が触れられたことを検知すると、キャンセル電極5bが押されたと検知したときの加熱コイル10の加熱動作を継続する。また、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1の上面が触れられている間、タッチキー13に入力された制御命令に基づく加熱コイル10への通電状態の変更ができないように制御する。よって、タッチキー13が押されたことが検知され(時点t1)、その後、当該タッチキーが押されたと検知してから押されたことを検知している状態が第1の所定時間(例えば、0.1秒)継続しても、制御部8は、当該タッチキーに割り当てられた制御命令を実行しない(時点t3)。
図7(c)は、キャンセル電極5bが押される前に、タッチキー13が押されて制御命令が実行されたときの状態を示している。制御部8は、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1の上面が触れられたことを検知すると(時点t5)、検知時の加熱コイル10の通電状態を継続するため、実行されている制御命令に基づく動作を継続させる(時点t5)。すなわち、タッチキー13a〜13cのいずれかが押されたことを検知してから第1の所定時間経過した後で、キャンセル電極5bが押され(時点t5)、当該タッチキーと同時にキャンセル電極5bが押される状態となる場合には、キャンセル電極5bと同時に押された状態となった当該タッチキーについて、キャンセル電極5bが押されたと検知したときの加熱コイル10の加熱動作を継続するとともに、同時に押された状態となった以降の当該タッチキーに割り当てられた制御命令の実行がされない。
図7(d)は、キャンセル電極5bが押されている状態で、タッチキー13が押され、その後、キャンセル電極5bが押されていない状態に戻った場合の波形を示している。タッチキー13が押された時点(時点t1)では、キャンセル電極5bが押された状態であるため、時点t1〜t2までの間は、タッチキー13が押されたとは判断されず、タッチキー13が押されて0.1秒経過しても、制御命令は実行されない(時点t3)。しかし、キャンセル電極5bが押されていない状態に戻ってから0.1秒が経過すると、制御命令は実行される(時点t4)。すなわち、タッチキー13a〜13cのいずれかが押されたことを判断し(時点t2)かつキャンセル電極5bが押されていない状態が第1の所定時間経過すると、当該タッチキー13a〜13cのいずれかに割り当てられた制御命令が実行される(時点t4)。
図7(a)〜(d)に示すように、制御命令が実行されるか、又は無効にされるかに関するフローを、図8を用いて説明する。図8は、制御部8が実行する動作のフローチャートである。図8のフローチャートについて、図7(a)〜(d)の検知信号波形を参照しながら、図6の左側に設けられた加熱部14により、被加熱物4を加熱している場合の動作を例として、説明する。
制御部8は、加熱中の加熱コイル10に対応したキャンセル電極5bが押されているかどうかを判定する(S201)。キャンセル電極5bが押されている(キャンセル電極5b近傍上部のトッププレート1上面に指で触れられている)場合(図7(b)時点t0以降、図7(c)時点t5以降、図7(d)時点t0〜t2)、加熱中の加熱コイル10に対応した操作部130を構成する複数のタッチキー13a〜13cの中で、押されたタッチキーがあるかどうかを判定する(S202)。キャンセル電極5bが押されていることを検知している場合(S201でYES)に、押されたタッチキーがあれば(S202でYES)(図7(b)及び(d)時点t1)、押されたタッチキーによる操作を無効にする(S203)(図7(b)及び(d)時点t3)。すなわち、押されたタッチキーに割り当てられている制御命令に従って、加熱コイル10の動作状態を変更しないように制御する。例えば、加熱中に加熱を停止するためのタッチキー13cが押された場合には、加熱を停止せず、加熱状態を継続する。また、火力を上げるためのタッチキー13bが押されたことを検知した場合は、タッチキー13bが押されたことに従って、火力を上げないように加熱コイル10を制御する。ステップ202において、キャンセル電極5bが押されていても、タッチキー13bが押されなければ、何もせずに、ステップ201に戻る。
以上のように、キャンセル電極5bが押されたことを検知すると、当該検知時の加熱源の制御状態を継続する。また、キャンセル電極5bが押されたことを検知していると、タッチキー13が押されたことを検知しても、当該タッチキーに割り当てられた制御命令は実行されない。また、タッチキー13のいずれかが押されたことを検知しかつキャンセル電極5bが押されていない状態が所定時間継続したときに、適正にタッチキー13のいずれかが操作されたと判断して当該タッチキー13に割り当てられた制御命令が実行される。なお、第1の所定時間を設けることは、誤動作を防止するために有効である。
ステップ201において、キャンセル電極5bが押されていない場合は、加熱中の加熱コイルに対応した操作部130を構成する複数のタッチキー13a〜13cのいずれかのタッチキーが押されたかどうかを判定する(S204)。タッチキー13a〜13cのいずれかが押された場合、別のタッチキーが同時に押されたかどうかを判定する(S205)。同時に押された別のタッチキーがあれば、押された全てのタッチキーによる操作を無効にし(S206)、別のキーが同時に押されていなければ、押されたタッチキーによる操作を有効にする(S207)。
2.3 まとめ
このように、本実施形態の誘導加熱調理器によれば、加熱コイル10が被加熱物4を加熱中に、キャンセル電極5bが押された場合、又は、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1の上面に使用者又は接地された部分が触れている何らかの物体がある場合、キャンセル電極5bと同時に押されたタッチキーの操作による加熱コイル10の加熱動作の変更を無効にしている。キャンセル電極5bはタッチキー13a〜13cの近傍に設けられているため、タッチキー13a〜13cのいずれかの上に何らかの物体が触れると、タッチキー13a〜13cの近傍に設けられているキャンセル電極5bの上方にも当該物体が同時に触れることが多い。よって、1つ以上のタッチキーの上面に手で触れられた調理器具が置かれた場合や、被加熱物4からのふきこぼれや水などがタッチキーと通常接地されるフレーム11に付着した場合、あるいは被加熱物4からのふきこぼれなどを使用者が布巾などで拭いた場合は、キャンセル電極5bにより、同時に押されたタッチキーの操作を無効にすることができる。これにより、使用者が意図しない動作をすることなく、加熱コイルへの通電制御の変動を防ぐことができる。例えば、意図しない加熱の開始、又は意図しない加熱の停止を防いで、加熱調理を継続させることができる。よって、安全性と使用者の利便性を向上できる。
また、本実施形態によれば、2つ以上のタッチキーが同時に押された場合についても、それらのタッチキーに従った操作を無効としている。これにより、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1の上面には触れずに、複数のタッチキー上に何らかの物体が触れて操作された場合、例えば調理器具が置かれた場合や、被加熱物4からのふきこぼれや水などが付着した場合、あるいは被加熱物4からのふきこぼれなどを使用者が布巾などで拭いた場合であっても、使用者が意図しない動作をすることなく加熱を継続することができる。これにより、安全性と利便性の向上を効果的に図ることができ、タッチキーによる操作性を向上させることができる。
また、使用者側(手前側)を開放して操作部130の周辺を囲むように、キャンセル電極5bを設ける、すなわち、操作部130の使用者側に、キャンセル電極5bを設けないことによって、操作部130を操作するときに誤ってキャンセル電極5bに触れてしまうことを防止することができる。操作部130に対して指で操作する場合に、指先で接触し指全体が手前側に斜めに傾斜して位置することになるので手前側の方がトッププレート1により多く接触しかつ近接度合いが高くなる。また、操作部130は使用者が操作し易いように、トッププレート1の使用者側に配置されているため、もし、キャンセル電極5bを、使用者側を含んで操作部130の全体を囲むように設けると、使用者が調理中に誤って触れてしまう可能性が高く、またキャンセル電極5bが金属製のフレーム11に近すぎてしまう。フレーム11は、機器本体やキッチンに接続されることにより、大地(アース)に接続されるため、キャンセル電極5bが金属製のフレーム11に近いと、キャンセル電極5bの電圧が下がったままとなってしまい、制御部8は、キャンセル電極5bが押されたままであると誤った判断をしてしまうおそれがある。しかし、本実施形態によれば、キャンセル電極5bは、使用者側を開放して設けられているため、操作時にキャンセル電極5bに意図せず触れるあるいは近接することがなく、また、キャンセル電極5bの電圧が下がったままとなることはない。したがって、キャンセル電極5bを操作部130の使用者側に設ける場合は、加熱コイル10側におけるキャンセル電極5bと操作部130間の距離よりも、使用者側におけるキャンセル電極5aと操作部130間の距離を大きくすることが好ましい。
2.4 変形例
なお、本実施形態においては、電極部3と大地間のインピーダンス、及びキャンセル電極5aと大地間のインピーダンスのいずれもが、指で触れられていない場合に比べて低下すると、電極部3とキャンセル電極5aが同時に指で触れられたと検知する構成としたが、同時に触れられたことを検知する構成はこれに限定されない。例えば、電極部3とキャンセル電極5a間の容量が増大したことにより電極部3とキャンセル電極5aが同時に触れられたことを検知してもよい。また、電極部3近傍に制御部8のコモン電位に接続されたコモン電極を形成して電極部3とコモン電位間の容量が増大したことを検知して、電極部3が触れられたことを検知するようにしても良い。同様に、キャンセル電極5a近傍に制御部8のコモン電位に接続されたコモン電極を形成してキャンセル電極5aとコモン電位間の容量が増大したことを検知して、キャンセル電極5bが触れられたことを検知するようにしても良い。
なお、本実施形態においては、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1の上面に何かが触れていると検知している間は、キャンセル電極5bと同時に押されているタッチキーの操作を無効にしたが、キャンセル電極5bと同時に押されているタッチキーだけでなく、操作部130を構成する全てのタッチキー13a〜13cの操作を無効にしても良い。これにより、誤動作を防ぎ、さらに安全性を向上させることができる。
また、本実施形態の誘導加熱調理器は、操作部130内において、同時に2つ以上のタッチキーが押された場合は、押されたタッチキーのみが無効になるように動作したが、操作部130を構成する全てのタッチキー13a〜13cの操作が無効になるようにしても良い。
また、本実施形態においては、キャンセル電極5bとタッチキーが同時に押されたときに、そのタッチキーによる操作を無効にするとして説明したが、同時に限らず、所定時間(第2の所定時間、例えば、0.5秒)以内に、キャンセル電極5bからタッチキー13又はタッチキー13からキャンセル電極5bという順で押された場合であっても、そのタッチキーによる操作を無効にしても良い。すなわち、制御部8は、キャンセル電極5b近傍のトッププレート1の部分が指で触れられたことを検知している状態から、キャンセル電極5b近傍のトッププレート1の部分が指で触れられていないことを検知した後、所定時間以内にタッチキー13a〜13cのいずれかに入力された制御命令に基づく加熱コイル10への通電状態の変更ができないように制御することで、同様の効果を得ることができる。
同様に、2つ以上のタッチキーが同時に押されたときに限らず、所定時間(第2の所定時間、例えば、0.5秒)以内に、あるタッチキーから別のタッチキーが押された場合であっても、そのタッチキーによる操作を無効にしても良い。例えば、複数のタッチキーのうちのいずれか1つが押されてから、第2の所定時間が経過する前に、別のタッチキーが押されると、最初に押されたタッチキーによる操作と後に押されたタッチキーによる操作のどちらも無効にする、又は押されたタッチキーを含む操作部を構成する全てのキーを無効にする。すなわち、最初に押されたタッチキーによる通電制御が既に行われていた場合には、既に行っている通電制御を停止するようにしても良い。例えば、制御部8が、タッチキーが第1の所定時間(例えば、0.1秒)押されたときに加熱コイル10の通電を制御する場合、第1の所定時間が第2の所定時間より短いときに、最初に押されたタッチキーに基づく通電制御が既に行われてしまう。この場合には、最初に押されたタッチキーに基づく通電制御を停止する。このようにすることで、被加熱物4からのふきこぼれや水などがトッププレートに付着し、それを使用者が布巾などで、隣り合うタッチキーが順番に押されるように拭いた場合であっても、タッチキーが動作してしまうことを防ぐことができる。これにより、使用者が意図しない動作をすることなく安全に加熱を継続でき、さらに使い勝手が向上する。
なお、あるタッチキーが押されなくなってから所定時間(第3の所定時間、例えば、0.4秒)以内に他のタッチキーが押されたときに、他のタッチキーによる操作を無効にしても同様の効果が得られる。なお、第3の所定時間は、上記第2の所定時間と同じ長さであってもよく、第2の所定時間より長くても短くてもよい。
なお、本実施形態においては、いずれか2つ以上のキーが同時に押されている場合に、キー操作が無効であるとしたが、いずれか2つ以上のキーは同一線上に並べられた隣り合うタッチキー(例えば、タッチキー13aとタッチキー13b)であっても良いし、隣り合わないタッチキー(例えば、タッチキー13aとタッチキー13c)であっても良い。
なお、図6においては、キャンセル電極5bは、使用者側を開放して、タッチキー13a〜13cを囲むように設けていたが、タッチキー13aと13cの横に配置された部分を削除して、加熱部14側だけに設けるようにしても良い。
なお、本実施形態においては、キャンセル電極5bは、トッププレート1の下面のみに設けられていたが、トッププレート1の上面と下面とに電極を設けることにより構成しても良い。また、トッププレート1の上面のみにキャンセル電極5bを設けても良い。同様に、タッチキー13は、トッププレート1の上面に形成された電極を削除しても良い。
また、キャンセル電極5bが配置されている位置を可視にしても良い。使用者にキャンセル電極5bの位置を認識させることにより、キャンセル電極5bが押されると、タッチキー13による操作が無効になることを認識し易くすることができる。
また、キャンセル電極5bが押されている状態が所定時間以上継続している場合に、報知部12により報知しても良い。これにより、タッチキー13による操作が無効であることを使用者に認識し易くすることで、使用者にとってより使いやすくなる。
なお、本実施形態において、キャンセル電極5bに対向するトッププレート1上に触れたときとは、キャンセル電極5bの真上に触れたときだけでなく、キャンセル電極5bの外縁近傍を触れたときも含んでも良い。
なお、本実施形態においては、3つのタッチキー13a〜13cにより操作部130を構成しているが、操作部130を構成するタッチキーの数は任意である。例えば、キャンセル電極5bにより、タッチキー13の操作を無効にする誘導加熱調理器において、操作部130を構成するタッチキー13は、1つ以上であれば良い。
なお、キャンセル電極5bを設けない構成であっても、2つ以上のタッチキー13が同時に又は所定時間以内に押されることにより、タッチキー13による操作を無効にすることができる。
本実施形態においては、同じ構成を持つ加熱部14、操作部130、キャンセル電極5bを2つずつ有していたが、これらの数は単なる例であって、1つ以上であれば良い。
なお、本実施形態においては誘導加熱調理器について説明したが、本発明のタッチキーの構成及び制御については、タッチキーを有する他の加熱調理器にも適応できる。例えば、ガス加熱調理器や、ハロゲン調理器、ラジエント調理器などにも適用できる。
本発明は、何らかの要因でタッチキーが不用意に押された場合でも、使用者の意図しない動作を防止して、安全性および利便性を効果的に向上させることができるため、タッチキーを有する誘導加熱調理器に有用である。また、加熱源として加熱コイル以外の電気発熱体を使用した電気ヒータ加熱調理器や、ガスを熱源としたガス調理器に適用することができる。ガス調理器の場合には、トッププレートに穴を設けてガスバーナを配設することができる。
なお、実施形態1と実施形態2とを組み合わせても良い。例えば、実施形態2の図8に示す制御を実施形態1の構成と共に行っても良い。又は、実施形態2においても接触電極3bを有する構成とし、実施形態2のキャンセル電極5bを実施形態1のキャンセル電極5aと同一の形状としても良い。これにより、実施形態1と実施形態2により得られる両方の効果が得られる。よって、使用者がタッチキーを操作しようと意図していないときに、加熱コイル10への通電制御が行われてしまうことをできる限り防ぐことができる。
本発明の加熱調理器は、使用者がタッチキーを操作しようと意図していないときに、タッチキーに割り当てられた制御命令に基づく動作を実行してしまうことを防ぐことができるため、タッチキーを有する加熱調理器に有用である。
1 トッププレート
2 操作領域
3 電極部
3a キー電極
3b 接触電極
3c 操作電極
3d 領域表示枠
3e キー表示
4 被加熱物
5a キャンセル電極
5b キャンセル電極
6 接続部材
7 接続部材
8 制御部
8a 抵抗
8b コンデンサ
9 光源
10 加熱コイル
11 フレーム
12 報知部
13 タッチキー
14 加熱部
15 非塗装領域
20 機器上面
130 操作部