本発明の光学フィルムの製造方法は、透明基材フィルムの溶液流延製膜方法による光学フィルムの製造方法において、ウェブ中の残留溶媒が5〜400質量%である時に、少なくともマット剤を形成する微粒子(一次粒子)が凝集した二次粒子の平均粒経が25〜200nmの微粒子を含有する微粒子分散液をインクジェットヘッドを用いて液滴として、吐出し、ウェブの一方の面上に、着弾、付着させて、微細凸構造を形成し、かつ該微細凸構造の凸部の高さが0.01〜0.5μmである凸部を10000μm2当たり1〜10000個形成することを特徴とする。この、着弾・付着させることを本明細書では塗布という範疇に含めるものとする。
なお、本発明の光学フィルム、それを用いた偏光板及び表示装置は、上記製造方法の発明によって実現されたものである。
以下、本発明とその構成要素等について詳細な説明をする。
(微粒子分散液)
本発明に係る微粒子分散液は、インクジェット方式により微細な凸構造を形成する組成物を含有することを要するが、該組成物の成分としては、微粒子を必須とし、その他に、熱可塑性樹脂、活性光線硬化型樹脂、または熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。
〈微粒子〉
本発明に係る微粒子分散液は、平均粒経が25〜200nmの微粒子を含有することを特徴とする。当該平均粒径は、50〜150nmであることが好ましい。更には、80〜120nmであることがより好ましい。
なお、微粒子の平均粒径は、粒子の電子顕微鏡写真で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
本発明において、微粒子分散液中に含有せしめることの出来る微粒子としては、例えば、無機微粒子または有機微粒子を挙げることが出来る。
無機微粒子としては、例えば、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。これらは球状、平板状、無定形状等の形状の粒子が挙げられる。
二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R972CF、R974、R812、50、200、200V、300、R202、OX50、TT600、MOX170(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用出来る。
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用出来る。
また、有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂微粒子、アクリルスチレン系樹脂微粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子、シリコン系樹脂微粒子、ポリスチレン系樹脂微粒子、ポリカーボネート樹脂微粒子、ベンゾグアナミン系樹脂微粒子、メラミン系樹脂微粒子、ポリオレフィン系樹脂微粒子、ポリエステル系樹脂微粒子、ポリアミド系樹脂微粒子、ポリイミド系樹脂微粒子、またはポリ弗化エチレン系樹脂微粒子、セルロースエステル系樹脂等を挙げることが出来る。例えば、ポリメチルメタクリレート架橋粒子としてMS−300K、MS−300X(粒径0.1μm)、アクリル単分散粒子としてMP1451(いずれも綜研化学(株)製)が好ましく用いられる。
好ましくは微粒子分散液に含まれる樹脂と微粒子との屈折率差が±0.02以内である、また微粒子分散液に含まれる樹脂と基材フィルムとの屈折率差も±0.02以内であることが好ましい。
微粒子分散液に含まれる樹脂と微粒子の比率は、固形分全体の1〜99%が微粒子であることが好ましく、5〜95%が微粒子であることがさらに好ましい。
微粒子分散液はさらに希釈して用いることが好ましい。濃度はインクジェットヘッドの塗布の液量と塗布液粘度および必要密度によって適宜調整して使用することが出来るが、塗布密度は50〜500μm四方に1点程度であればよく、微粒子の2次粒経が本発明の範囲であれば、2次粒子は前記範囲に1〜20個ほどあればすべり性が確保できさらに最終的な表示装置の正面コントラストを高いまま維持することが出来る。ヘッドのノズル間隔にもよるが、希釈液は微粒子分散液を1000〜100万倍程度に希釈すればよい。
〈樹脂成分〉
本発明に係る微粒子分散液は、微粒子の他の成分として、熱可塑性樹脂、活性光線硬化型樹脂、または熱硬化性樹脂を含有しても良い。
始めに、本発明に用いられる熱可塑性樹脂について説明する。
本発明に係る熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、セルロースエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリエステル、ポリビニルアルコールなどが好ましい例として挙げられるがこれらのみに限定されるものではない。
本発明の微粒子分散液に用いることが出来る熱可塑性樹脂は、特にセルロースエステルを主成分とすることが好ましく、後述する透明基材フィルムに用いられるセルロースエステルが好ましく用いられる。即ち、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類が好ましく、特にセルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましい。総アシル基置換度2.0〜3.0のセルロースエステルが好ましく用いられる。透明基材フィルムにセルロースエステルを用いる場合は
、該セルロースエステルと同じか、それよりも低い置換度のセルロースエステルが好ましく用いられる。特に凸部形成面をアルカリケン化処理して偏光子を貼合する場合は該セルロースエステルが好ましく用いられる。セルロースエステルは後述する有機溶媒に溶解させ、微粒子分散液組成物として用いることが出来る。
次に、本発明に用いることが出来る活性光線硬化型樹脂について説明する。
活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、若しくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることが出来、特開昭59−151110号公報に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることが出来、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることが出来、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることが出来る。
これらの光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及び誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。光増感剤と共に使用してもよい。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。
本発明において使用し得る市販品の紫外線硬化樹脂としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHCX−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC700、RC750(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用出来る。
これらの活性線硬化樹脂は公知の方法で硬化することが出来るが、本発明の場合は塗布後第一ロールに接触する前に活性線照射処理を行うことが好ましい。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させるための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cm2である
紫外線硬化樹脂を含有する微粒子分散液に用いられる有機溶媒としては、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、或いはこれらを混合し利用出来る。例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5質量%〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
この他に、微粒子分散液にはフッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、或いはノニオン系界面活性剤等の界面活性剤を、0.01〜5.0%程度添加することが出来る。
次いで、本発明に用いることが出来る熱硬化性樹脂について説明する。
本発明で用いることの出来る熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリアミドイミドなどを挙げることが出来る。
不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、オルソフタル酸系樹脂、イソフタル酸系樹脂、テレフタル酸系樹脂、ビスフェノール系樹脂、プロピレングリコール−マレイン酸系樹脂、ジシクロペンタジエンないしその誘導体を不飽和ポリエステル組成に導入して低分子量化した、或いは被膜形成性のワックスコンパウンドを添加した低スチレン揮発性樹脂、熱可塑性樹脂(ポリ酢酸ビニル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、ポリスチレン、飽和ポリエステルなど)を添加した低収縮性樹脂、不飽和ポリエステルを直接Br2でブロム化する、或いはヘット酸、ジブロムネオペンチルグリコールを共重合するなどした反応性タイプ、塩素化パラフィン、テトラブロムビスフェノール等のハロゲン化物と三酸化アンチモン、燐化合物の組み合わせや水酸化アルミニウムなどを添加剤として用いる添加タイプの難燃性樹脂、ポリウレタンやシリコーンとハイブリッド化、またはIPN化した強靭性(高強度、高弾性率、高伸び率)の強靭性樹脂等がある。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ノボラックフェノール型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型を含むグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系、グリシジルエステル系、環式脂肪系、複素環式エポキシ系を含む特殊エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
ビニルエステル樹脂としては、例えば、普通エポキシ樹脂とメタクリル酸等の不飽和一塩基酸とを開環付加反応して得られるオリゴマーをスチレン等のモノマーに溶解した物である。また、分子末端や側鎖にビニル基を持ちビニルモノマーを含有する等の特殊タイプもある。グリシジルエーテル系エポキシ樹脂のビニルエステル樹脂としては、例えば、ビスフェノール系、ノボラック系、臭素化ビスフェノール系等があり、特殊ビニルエステル樹脂としてはビニルエステルウレタン系、イソシアヌル酸ビニル系、側鎖ビニルエステル系等がある。
フェノール樹脂は、フェノール類とフォルムアルデヒド類を原料として重縮合して得られ、レゾール型とノボラック型がある。
熱硬化性ポリイミド樹脂としては、例えば、マレイン酸系ポリイミド、例えばポリマレイミドアミン、ポリアミノビスマレイミド、ビスマレイミド・O,O′−ジアリルビスフェノール−A樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂等、またナジック酸変性ポリイミド、及びアセチレン末端ポリイミド等がある。
また、上述した活性光線硬化型樹脂の一部も、熱硬化性樹脂として用いることが出来る。
尚、本発明に係る熱硬化性樹脂を含有する微粒子分散液には、酸化防止剤や紫外線吸収剤を適宜用いてもよい。
本発明において、インクジェット方式により形成した凸部が熱硬化性樹脂を含む場合、加熱方法としては、微粒子分散液の液滴を透明基体上に着弾させた直後に、加熱処理を行うことが好ましい。
本発明でいう微粒子分散液の液滴を透明基体上に着弾させた直後とは、具体的には微粒子分散液の液滴が着弾と同時または5秒以内に加熱が開始されることが好ましく、予め透明基材の温度を上げておくことが出来る。例えば、透明基材をヒートロール上に巻き付けて、これに微粒子分散液の液滴を着弾させることが出来、より好ましくは着弾と同時または2.0秒の間である。また、ノズル部と加熱部の距離が接近し過ぎて、熱がヘッド部に伝達すると、ノズル部での硬化によりノズル詰まりを起こすため注意が必要である。また、必要に応じて加熱間隔が5.0秒を超えることによって、着弾した微粒子分散液の液滴の流動、変形させなだらかな凸構造を得ることも出来る。
上記加熱時のノズル部への熱の伝達を防止するため、本発明のインクジェット方式においては、加熱部をインクジェットヘッドのノズル部に直接作用させない位置に配置することが好ましい。
加熱方法としては、特に制限はないが、ヒートプレート、ヒートロール、サーマルヘッド、或いは着弾した微粒子分散液表面に熱風を吹き付ける等の方法を使用するのが好ましい。また、インクジェット出射部の透明支持体を挟んで反対側に設けるバックロールを、ヒートロールとして、連続的に加熱を施してもよい。加熱温度としては、使用する熱硬化性樹脂の種類により一概には規定出来ないが、透明基材への熱変形等の影響を与えない温度範囲であることが好ましく、30〜200℃が好ましく、更に50〜120℃が好ましく、特に好ましくは70〜100℃である。
本発明に係る微粒子分散液においては、組成物として、上述した熱可塑性樹脂、活性光線硬化型樹脂または熱硬化性樹脂のいずれも用いることが出来るが、好ましくは熱可塑性樹脂を用いることである。
本発明に係る上記微粒子分散液には、必要に応じて0〜99.9質量%の溶媒を含有させることが出来る。例えば、水系溶媒に前記熱可塑性樹脂成分、活性光線硬化型樹脂モノマー成分、或いは熱硬化性樹脂モノマー成分を溶解若しくは分散させてもよく、或いは有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒は低沸点のものでも高沸点のものでも適宜選択して用いることが出来、これらの溶媒の添加量や種類、組成は微粒子分散液の粘度を調整するため適宜調整することが好ましい。さらにインクジェット塗布の際にはこの微粒子分散液をさらに希釈して用いることが好ましい。
本発明に係る微粒子分散液で用いることが出来る溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジアセトンアルコール等のケトンアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセルソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、水等が挙げられ、それらを単独または2種以上混合して使用することが出来る。また、分子内にエーテル結合をもつものが特に好ましく、グリコールエーテル類も好ましく用いられる。
グリコールエーテル類としては、具体的には下記の溶媒が挙げられるが、特にこれらに限定されない。プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルAc、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルAc、エチレングリコールジエチルエーテル等を挙げることが出来る、尚Acはアセテートを表す。本発明に係る微粒子分散液においては、上記溶媒の中でも、沸点が100℃未満の溶媒が好ましく用いられる。これらの溶媒は、インクジェットヘッドから吐出された直後から揮発され、着弾後も所望の凸形状が維持される程度に速やかに揮発、乾燥されることが望ましい。或いは揮発性の異なる溶媒を混合してその比率を変更することで凸形状を制御することも出来る。
微粒子分散液に使用する溶媒は基材フィルムを溶解する溶媒と溶解しない溶媒とを混合して用いることが好ましく、混合比率は1:9〜9:1であることが好ましく、比率は適宜調整される
(微細凸構造の形成)
本発明に係る微細凸構造は、透明基材フィルムの溶液流延製膜方法による光学フィルムの製造方法において、ウェブ中の残留溶媒が5〜400質量%である時に、少なくとも平均粒経が25〜200nmの微粒子を含有する微粒子分散液をインクジェットヘッドを用いて液滴として、吐出し、ウェブの一方の面上に、着弾、付着させて、形成することを特徴とする。
尚、ここで言う微細凸構造とは層を形成してもよく、また層構造を有さず基材上に微粒子分散液の液滴による微細凸部が点在する状態でもよい。
本発明に係る上記ウェブ中の残留溶媒は、20〜300質量%であることが好ましい。更には、50〜150質量%であることが好ましい。ウェブの一方の面に微細凸構造を形成する際の該ウェブ周囲の雰囲気含有溶媒濃度は、50〜10000ppmであることを要する。雰囲気の溶媒濃度が低すぎると微粒子分散液(塗布液)のウェブに対するなじみが良くない場合があり、500〜8000ppm程度が好ましく、1000〜7000ppm程度がさらに好ましい
雰囲気の溶媒濃度の測定は、通常溶液流延の際にはエンクロージャー内で、塗布のヘッドから、透明基材(ウェブ)搬送方向に、30cm離れたところで雰囲気の空気を1000cm3集気を行い、ガスクロマトグラフ法で測定することが出来る。
本発明における微粒子含有溶液の付着(塗布)は透明基材フィルム(ウェブ)の一方の面をバックロールに当てた状態でもう一方の面に付着(塗布)を行うことが好ましく、該バックロールの直径は50mm〜1000mmが好ましく、95mm〜950mmがより好ましい。直径が小さくなるとウェブの曲がりが大きくなること、あるいは付着(塗布)面とインクジェットヘッドとの距離が安定する部分が狭くなり付着(塗布)が偏りを生じてしまうことやシワガ発生してしまうといった問題が発生してしまう。バックロールの直径が大きすぎると、設置場所の問題以外にも、バックロールの温度制御が煩雑になるため安定性の確保が困難になる。
付着(塗布)を行ってから付着(塗布)面を搬送ロールに接触させるまでの時間は短すぎると付着(塗布)部分がウェブとなじむ前に接触することから、剥れてしまうことがある。また時間が長すぎると乾燥が進んでしまい付着(塗布)部分が剥れてしまうことがある。従って、ウェブ上に微粒子分散液の付着(塗布)を行ってから、0.1〜240秒以内に該ウェブ面を搬送ロールに接触させることを要する。この時間は、好ましくは0.1秒〜150秒、より好ましくは0.1秒〜65秒の範囲である。
ウェブ上に微粒子分散液の付着(塗布)を行ってから、1〜300秒以内、好ましくは5〜200秒、より好ましくは5〜180秒以内に、該ウェブを搬送方向と直行する方向に1.05倍〜2.5倍の延伸処理することが本発明に係る課題解決の観点から好ましい。また、微粒子分散液が付着したウェブ面が最初に搬送ロールに接触してから0.5〜240秒以内に、該ウェブを搬送方向と直行する方向に1.05倍〜2.5倍の延伸処理を行うことが好ましい。なお、前記延伸処理の際の残留溶媒が0.5質量%〜100質量%であり、延伸処理前後の残留溶媒差が0.4質量%〜99質量%であることが好ましい。
インクジェット方式による上記微粒子分散液の液滴としては、1種類の微粒子分散液を用いてもよいが、2種以上の組成の異なる微粒子分散液の液滴を用いてもよく、或いは2種以上の粒径の異なる微粒子分散液液滴を用いてもよい。或いは、微粒子分散液の液滴中に微粒子を含有させることが好ましく、また微粒子分散液中の溶媒含有量や微粒子分散液の表面エネルギー、微粒子分散液付着面の表面エネルギー(接触角)を制御することも好ましく、これらにより本発明の目的効果がより一層発揮される。
また、本発明の光学フィルムは、透明基材フィルム上に上記で規定する該微細凸構造を直接形成する構成、或いは1層以上の予め設けられた機能性層を有する透明基材フィルム上に、本発明の該微細凸構造を設ける構成のいずれでもよい。
本発明に係る微細凸構造は、例えば、すべり性を向上する場合は凸部の数を増やす、または同じ数なら高さを高くする、凸部の傾斜をきつくするなどの調整が可能である。また、本発明によればフィルムの幅手方向で簡単に凸部の数を変更することも出来る。例えば、端部の凸部数を多く、フィルム中央を少なくすることや、その逆も可能である。或いはフィルムの長尺方向で凸部数を変更することも出来る。例えば押され変形やブロッキング故障が発生し易い巻きの中心部では凸部の数を増やしたり、凸部の高さを高くすることが出来、巻きの外側になるにつれて凸部の数や高さを変更していくといったことが可能になる。特にフィルム幅が1.4〜4mといった広幅になった場合、従来の方法では十分に対応出来なかったが、本発明によって著しく改良することが出来たのである。本発明によれば、フィルムに様々な加工を施した後に、適切なすべり性を追加で簡便に付与することが出来る点でも優れている。また、フィルムの品種に応じて凸部数を変更することも簡単であり、生産性も著しく向上する。このような制御が簡単に行える点でインクジェット方式は極めて優れている。
本発明で形成される凸部は、高さa(図1参照)が0.01〜0.5μmの凸部が10〜10000個/10000μm2であることを要する。1個以下ではブロッキング防止効果が不十分となる場合があり、10000個以上だとブロッキング防止効果は問題ないが、生産性が低下し、ヘイズが悪化する場合がある。好ましくは10〜10000個/10000μm2である。
また高さaが0.02〜0.3μmの凸部が10〜10000個/10000μm2であることが好ましく、0.02〜0.2μmの凸部が10〜1000個/10000μm2であることが更に好ましい。
また凸部の直径b(図1参照)は0.01〜1μmが好ましく、更に好ましくは0.01〜0.3μmである。凸部の高さaと直径bの関係はb/aが1〜100であることが好ましく、1.5〜30であることが更に好ましく、2〜10であることが特に好ましい。1未満では形成した凸部が剥がれ落ちて異物故障となることがあり、100を超えるとブロッキング防止性が不足したり、基材フィルムが変形し易くなる。
図1は、透明基材フィルム上に、インクジェット方式でブロッキング防止機能を有する微細凸構造を設けた一例を示す模式図である。
図1の(a)は、微細凸構造の斜視図であり、図1の(b)は断面図である。
図1の(b)において、透明基材フィルム1の上に、インクジェット方式により微粒子分散液の液滴3により形成された微細凸構造の一例を示してあるが、本発明で規定する凸部の高さaとは、下地である透明基材フィルム表面を底部として、凸構造の頂部までの高さ(μm)と定義し、同様に直径bは基材に接している凸部底の最大長と定義する。
表面の微細な凸部は、市販の触針式表面粗さ測定機或いは市販の光学干渉式表面粗さ測定機等によって測定することが出来る。例えば、光学干渉式表面粗さ測定機によって、約10000μm2の範囲(100μm×100μm)について2次元的に測定し、凸部を底部側より等高線のごとく色分けして表示する。
ここでフィルム面を基準とした高さaが0.01μm〜0.5μmである凸部の数をカウントし、10000μm2の面積当たりの数で示した。測定は、光学フィルムの該当箇所の任意の10点を測定してその平均値として求める。
本発明において、ブロッキング防止加工の為の凸構造の形状として、図1の(b)ではコニーデ型の凸部を着弾させた微粒子分散液の液滴によって形成された凸部の一例を示しているが、本発明は上記の形状の凸構造に限定されるものではない。
図1の(c)は予め設けられた機能性層の上に本発明のインクジェット方式による微細な凸構造を付与した模式図である。機能性層は特に限定されるものではなく、バックコート層、アンチカール層、帯電防止層、下引き層、光散乱層、接着層等が挙げられる。
図2は、他の微細凸構造の例を示す断面図である。
図2の(a)は、球体形状で着弾させた凸構造の一例であり、出射する微粒子分散液の液滴の粘度や、微粒子分散液吐出速度、微粒子分散液の液滴と微粒子分散液着弾面との接触角、インクジェットヘッドと基材との距離等を適宜調整することにより、この様な形状の凸構造を形成することが出来る。インクジェットヘッドと基材との距離は0.2〜100mmが好ましく、形成する凸の形状に応じて変更することが出来る。微粒子分散液の液滴と微粒子分散液着弾面との接触角は0〜180°の範囲で適宜調整される。好ましくは5〜120°である。また、微粒子分散液吐出速度を上げるなどにより吐出後の微粒子分散液の液滴を分裂させて微粒子分散液の液滴としてより微細な凸部を形成したり、吐出速度を抑制して大きめの凸部、或いは形状が整った凸部を形成することが出来る。インクジェット部のこれらの条件は、印刷用のインクジェットで用いられている条件を参考にして設定することが出来る。また、微粒子分散液吐出速度を上げて着弾の衝撃によって微粒子分散液液滴による凸部を潰すことも出来る。
微粒子分散液吐出速度は、微粒子分散液の液滴先端の速度V1をピエゾ式のインクジェット装置のピエゾ素子に印加する電圧を増減させることにより一般に0.1〜20m/sの範囲で制御出来る。好ましくは1〜20m/sの範囲である。更に、上記微粒子分散液液滴先端の速度V1の好ましい下限は5m/s、好ましい上限は12m/sである。微粒子分散液液滴後端の速度V2は微粒子分散液液滴先端の速度V1よりも小さく、一般には0.1〜10m/sである。上記微粒子分散液液滴後端の速度V2は、微粒子分散液液滴の分離状態、即ち、微粒子分散液の表面張力や粘度により決まる。
吐出時間tは、ピエゾ素子に印加する電圧の制御条件に応じて3μs〜1msに設定される。ピエゾ素子に印加する電圧の制御条件は、安定的に微粒子分散液液滴を吐出できるように、波形制御条件、微粒子分散液液滴の表面張力や粘度等に応じて設定される。
液滴は後述するように柱状に吐出され、基板に着弾するまでに分裂しない場合と分裂する場合とがある。分裂しない場合であって、着弾するまでに空中で球状の液滴になる場合は、着弾時の液滴先端速度と後端速度はほぼ同じとなる。柱状の液滴が球状になっていくので着弾時の液滴速度は吐出時の液滴先端速度や後端速度と厳密には異なるが、その差は液滴速度に対して小さい。一方、数個の液滴に分裂する場合には、吐出時の液滴先端速度が着弾時の先頭液滴の速度となり、吐出時の液滴後端速度が着弾時の最後尾の液滴の速度となると考えられる。尚、通常は、液滴先端速度が3m/s以下の場合には液滴は分裂しないことが多く、液滴先端速度が3〜20m/sの場合には液滴は分裂することが多い。
本発明のインクジェット方式による凸構造の形成方法は、従来のフィルム中にマット剤を添加する方式や微粒子を含むバックコート層を塗設する方式に比較し、任意の形状の凸構造を形成出来、特に幅手方向でも長尺方向でも異なる凸形状としたり、付着量を変更することが出来ることが、大きな特徴である。しかも、生産中に形成するパターンを変更出来るため様々な品種に迅速に対応可能である。また、反対側の面の加工に応じて追加するという自由度もある。
図2の(b)は、半円状の凸構造からなるブロッキング防止加工の一例を示す断面図である。
上記凸構造の配置として、上図の説明では凸部を間隔をあけて着弾させた一例を示しているが、図2の(c)に示すように、間隙を設けずに、着弾面全体を凸部で被覆した構成でもよい。本発明ではこのような凸部の大きさや形状を変化させて微細凸構造を異ならせることが出来る。
微粒子分散液液滴によって形成された凸部である3は、フィルムの法線方向から見た時に略円の形状であってもよいし、楕円形状であってもよい。例えば縦横比×1.01〜×10の比の楕円でもよい。微粒子分散液を付着させる際にフィルム側、若しくはインクジェットのヘッド部を高速で搬送させながら行うことで、楕円状の凸部を形成することが出来る。
図3は微粒子分散液の吐出角度、及び吐出方法を示す概略図である。
図3の(a)で示す、インクジェットヘッドから微粒子分散液をフィルムに向けて吐出する時の角度は、フィルムの法線方向を90°、微粒子分散液が付着したフィルムが搬送されていく方向を0°、フィルムが搬送されてくる方向を180°とすると、0°〜180°の範囲で設定することが出来る。好ましくは0°〜90°とすることで、微粒子分散液の飛翔速度とフィルムの搬送の相対速度の差が小さく出来、所望の凸形状が形成し易くなる為好ましい。更に好ましくは5°〜85°である。
図3の(b)はフィルム面に対し、種々な角度をつけたインクジェットヘッドを複数個配置し、連続的に微粒子分散液を吐出する方法を示している。その際、角度のみならずフィルム面からの高さも任意に変えることが可能である。
図3の(c)は、バックロールを抱かせて搬送しているフィルム面に、複数個のインクジェットヘッドをその周りに配置し、微粒子分散液液滴を吐出している状態を示している。このように、微粒子分散液液滴を着弾させるフィルム面は、平面、曲面どちらでも構わない。
次いで、本発明に係るインクジェット方式について説明する。
図4は、本発明に係るインクジェット方法に用いることの出来るインクジェットヘッドの一例を示す断面図である。
図4(a)はインクジェットヘッドの断面図であり、図4(b)は図4(a)のA−A線矢視拡大図である。図中、11は基板、12は圧電素子、13は流路板、13aは微粒子分散液流路、13bは壁部、14は共通液室構成部材、14aは共通液室、15は微粒子分散液供給パイプ、16はノズルプレート、16aはノズル、17は駆動用回路プリント板(PCB)、18はリード部、19は駆動電極、20は溝、21は保護板、22は流体抵抗、23、24は電極、25は上部隔壁、26はヒータ、27はヒータ電源、28は伝熱部材、10はインクジェットヘッドである。
集積化されたインクジェットヘッド10において、電極23、24を有する積層された圧電素子12は、流路13aに対応して、該流路13a方向に溝加工が施され、溝20と駆動圧電素子12bと非駆動圧電素子12aに区分される。溝20には充填剤が封入されている。溝加工が施された圧電素子12には、上部隔壁25を介して流路板13が接合される。即ち、前記上部隔壁25は、非駆動圧電素子12aと隣接する流路を隔てる壁部13bとで支持される。駆動圧電素子12bの幅は流路13aの幅よりも僅かに狭く、駆動用回路プリント板(PCB)上の駆動回路により選択された駆動圧電素子12bはパルス状信号電圧を印加すると、該駆動圧電素子12bは厚み方向に変化し、上部隔壁25を介して流路13aの容積が変化し、その結果ノズルプレート16のノズル16aより微粒子分散液液滴を吐出する。
流路板13上には、伝熱部材28を介してヒータ26がそれぞれ接着されている。伝熱部材28はノズル面にまわり込んで設けられている。伝熱部材28は、ヒータ26からの熱を効率良く流路板13に伝え、かつ、ヒータ26からの熱をノズル面近傍に運びノズル面近傍の空気を温めることを目的としており、従って、熱伝導率の良い材料が用いられる。例えば、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、ステンレス等の金属、或いは、SiC、BeO、AlN等のセラミックス等が好ましい材料として挙げられる。
圧電素子を駆動すると、流路の長手方向に垂直な方向に変位し、流路の容積が変化し、その容積変化によりノズルから微粒子分散液液滴となって噴射する。圧電素子には常時流路容積が縮小するように保持する信号を与え、選択された流路に対して流路容積を増大する向きに変位させた後、再び流路の容積が縮小する変位を与えるパルス信号を印加することにより、流路と対応するノズルより微粒子分散液が微粒子分散液液滴となって噴射する。
図5は、本発明で用いることの出来るインクジェットヘッド部、ノズルプレートの一例を示す概略図である。
図5において、図5の(a)はヘッド部の断面図、図5の(b)はノズルプレートの平面図である。図中、1は透明基材、31は微粒子分散液液滴、32はノズルである。ノズル32より噴射した微粒子分散液液滴31は透明基材1方向に飛翔して付着する。透明基材1上に着弾した微粒子分散液液滴は、乾燥によって凸部が形成される。
本発明においては、図5の(b)に記載のように、インクジェットヘッド部のノズルは、千鳥状に配置することが好ましく、また、透明基材1の搬送方向に並列に多段に設けることが好ましい。また、微粒子分散液吐出の際にインクジェットヘッド部に微細な振動を与え、微粒子分散液滴がランダムに透明基材上に着弾するようにすることが好ましい。これによって、干渉縞の発生を抑制することが出来る。微細な振動は、高周波電圧、音波、超音波などによって与えることが出来るが、特にこれらに限定されない。また、インクジェット法により出射された微粒子分散液滴31が移動してくる透明基材1の周辺空気によって乱されて偏ったり、意図しないムラとならないように空気の流れを制御して行われる。
インクジェットヘッドとしては特開2004−58505号公報記載の静電吐出型インクジェットヘッドを本発明のブロッキング防止加工に転用することも出来、特開2004−58532号公報記載の液体吐出ヘッド、特開2004−54271号公報記載のインクジェットパターニング装置を本発明のブロッキング防止加工に転用することも出来、特開2004−55520号公報記載の噴射ヘッドを転用することも出来、登録3,5000,636号公報号記載のインクジェットヘッドを転用することも出来、登録3,501,583号記載のインクジェット記録システムを本発明のブロッキング防止加工に転用することも出来る。
また、凸部を形成するための微粒子分散液を吐出する前に、テスト吐出を実施してヘッドの目詰まりの有無を確認することが好ましく、目詰まりが確認された場合、或いは生産開始時には、ヘッドクリーニングを実施することが好ましい。ヘッドクリーニングは使用する微粒子分散液で実施しても、溶媒を主体とするクリーニング液で実施してもよい。クリーニング液の溶媒は微粒子分散液に使用出来るものが好ましく用いられる。必要に応じて界面活性剤(ノニオン系、フッ素系、シリコン系等)を0.01〜1%程度含有させてもよい。
凸部を形成するための微粒子分散液吐出密度は、適宜調整することが好ましく、例えば、大きな凸部を形成するための微粒子分散液吐出密度に対して、小さな凸部を形成するための微粒子分散液吐出密度を大きくすることが好ましい。
生産中にヘッドの目詰まりが検出された場合は、そのヘッドへの微粒子分散液供給を停止することが好ましい。それによって形成する凸部にむらが生じないように、他のヘッドからの微粒子分散液吐出量を増やすことも好ましい。多段のインクジェットヘッドを使用している場合には、生産を継続しながら目詰まりしたインクジェットヘッドのヘッドクリーニングを行うことが好ましく、その場合、クリーニング液が被処理基材フィルムに付着しないように微粒子分散液吐出方向を切り替えるか、クリーニング液を受け止める別の部材に向けて吐出させることが好ましい。ヘッドクリーニング中は、別のインクジェットヘッドの微粒子分散液吐出量を増加させるか、予備のインクジェットヘッドを用いて生産を継続することが好ましい。
また、生産中にヘッドの目詰まりなど何らかの異常が確認された場合、フィルム基材の端部にインクジェットでマーキングを施すことが好ましい。マーキングは着色微粒子分散液で行うことが好ましく、異常個所を明確にすることで後でその部分を製品から取り除くことが容易になる。
本発明に用いられる微細凸構造の形成方法は、多ノズルから微粒子分散液小液滴を吐出して形成するインクジェット方式を用いることが好ましく、図6に、本発明で好ましく用いることの出来るインクジェット方式の一例を示す。
図6において、図6のa)は、インクジェットヘッド10を透明基材1の幅手方向に配置し、透明基材1を搬送しながらその表面に微細凸構造を形成する方法(ラインヘッド方式)であり、図6のb)はインクジェットヘッド10が副走査方向に移動しながらその表面に微細凸構造を形成する方法(フラットヘッド方式)であり、図6のc)はインクジェットヘッド10が、透明基材1上の幅手方向を走査しながらその表面に微細凸構造を形成する方法(キャプスタン方式)であり、いずれの方式も用いることが出来るが、本発明においては、生産性の観点からラインヘッド方式が好ましい。この様な方式のインクジェットヘッドを用いることで、透明基材上に任意の位置で、かつ任意のパターンの凸部を容易に形成することが出来る。その為従来のマット剤添加の方式と比べてインクジェットによる方法は自由度が高く優れている。
尚、図6のa)〜c)に記載の29は、微粒子分散液として後述の活性光線硬化型樹脂を用いる場合に使用する活性光線照射部である。微粒子分散液に熱可塑性樹脂を用いる場合は29は不用である。
また、本発明においては、図6のa)、b)、c)の透明基材の搬送方向の下流側に、別の活性光線照射部を設けてもよい。インクジェットヘッド部と活性光線照射部の間隔は0.1〜20m程度が好ましく適宜設定される。また、必要に応じて設置位置を変更或いは調整出来るようになっていることが好ましい。
本発明において、微細な凸部を形成するため、微粒子分散液液滴としては0.01〜100plが好ましく、0.1〜50plがより好ましく、0.1〜10plが特に好ましい。上記条件で微粒子分散液液滴を出射することにより、ヘイズにも優れる微細な凸部を有する光学フィルムを得ることが出来る。
本発明では、インクジェットヘッドから吐出される微粒子分散液を当該微粒子分散液の先端部に続いて微粒子分散液が延びた柱状の状態で前記インクジェットヘッドから分離しないうちに凸部形成面上に付着させてもよいが、好ましくは微粒子分散液がインクジェットヘッドから分離した後の微粒子分散液液滴として付着させることが好ましい。ヘッドから吐出された微粒子分散液液滴が分裂せずに凸部形成面上に付着させることが好ましく、或いは意図的に分裂するような吐出条件にすることで微小な微粒子分散液液滴とし、これを付着させることでより微細な凸部形成を行うことが好ましく、形成する凸部形状に応じて適宜調整することが出来る。
また、微粒子分散液液滴の粘度は、25mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であることが更に好ましい。着弾時の微粒子分散液粘度は吐出時の微粒子分散液粘度より高いことが好ましく、15mPa・s以上であることが好ましく、更に好ましくは25mPa・s以上である。着弾時の粘度が高いほどRaが大きな凸部を形成し易く、所望の凸部形状を形成するために粘度は適宜調整することが好ましい。
次いで、本発明に係る微細凸構造を形成するインクジェット方式で用いる微粒子分散液について説明する。
図7は、透明基材上にインクジェット方式により、粒径の大きな微粒子分散液液滴で微細凸構造71を形成した後、より粒径の小さな微粒子分散液液滴で、更に微細な凸構造72を形成した一例を表す模式図である。
図7の(a)は、比較的低粘度の微粒子分散液を用いて、コニーデ型の凸部71を設けた後、その表面及び未着弾部により微小の凸部72を設けた一例であり、図7の(b)は、微粒子分散液液滴と基材表面との接触角を制御し、球体状の凸部71′を設けた後、その表面及び未着弾部により微小の凸部72を設けた一例である。
この場合も粒径の大きな液滴で形成される凸部の高さ、直径及び形成個数は本発明の範囲内に制御する必要がある。
このようにして、凸構造を形成する微粒子分散液として粒径の異なる微粒子分散液液滴を用いて形成することにより、ブロッキング防止効果に優れる微細な凸部を形成することが出来る。各々の微粒子分散液液滴は、0.01〜100plが好ましく、0.1〜50plが更に好ましく、0.1〜10plが特に好ましい。2種以上の大きさの異なる微粒子分散液液滴を用いる場合、平均粒径が最も大きい粒径の微粒子分散液液滴に対し、平均粒径が最も小さな粒径の微粒子分散液液滴の容量としては、0.1〜80体積%、更に好ましくは1〜60体積%、特に好ましくは3〜50体積%であることが好ましい。また、3種以上の容量が異なる微粒子分散液液滴を組み合わせることがより好ましい態様である。
また、2種以上の微粒子分散液液滴を用いる場合、固形分濃度が異なる各微粒子分散液液滴を用いることが出来る。例えば、微小な液滴の固形分濃度を低く設定し、微粒子分散液が飛翔している間や着弾後に溶媒を揮発させることで、より微細な凸部を形成することが出来る。この様な各微粒子分散液液滴の固形分濃度を適宜調整することにより、微細な凸構造の形成や形状を容易に制御することが出来る。
更に、本発明においては、異なる容量の微粒子分散液滴を組み合わせて凸構造を形成する場合、大きな微粒子分散液液滴を透明基材上に着弾させた後、より微細な微粒子分散液液滴をその上に着弾させることが好ましい。
本発明における微細凸構造の他の好ましい例として、微粒子分散液液滴が微粒子を含有することも好ましい。
図8は、微粒子分散液液滴の中に微粒子を含有させた凸部の一例を示す断面図である。
次いで、本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。
図9は、溶液流延で透明基材を製造する工程に、インクジェット方式により微細凸構造を設ける工程を付加したフローを示す模式図である。
図9において、11はエンドレスで走行する支持体を示す。支持体としては鏡面帯状金属が使用されている。12は透明基材形成樹脂を溶媒に溶解したドープを、支持体11に流延するダイスを示す。13は支持体11に流延されたドープが固化したフィルムを剥離する剥離ロールを示し、14は剥離されたフィルムを示す。5はテンター搬送・乾燥工程を示し、51は排気口を示し、52は乾燥風取り入れ口を示す。尚、排気口51と乾燥風取り入れ口52は逆であっても良い。6は張力カット手段を示す。張力カット手段としてはニップロール、サクションロール等が挙げられる。尚、張力カット手段は各工程間に設けてもかまわない。
8はロール搬送・乾燥工程を示し、81は乾燥箱を示し、82は排気口を示し、83は乾燥風取り入れ口を示す。尚、排気口82と乾燥風取り入れ口83は逆であっても良い。84は上部搬送用ロールを示し、85は下部搬送用ロールを示す。該搬送用ロール84、85は上下で一組で、複数組から構成されている。7は巻き取られたロール状のフィルムを示す。
本発明に係る微粒子分散液液滴を出射するインクジェットヘッド部10は、ドープ流延部、剥離〜テンター部間、テンター〜乾燥部間、乾燥箱内のいずれの位置に設置してもよく、具体的には図中、10A〜Hの位置に設けることが出来る。その際、フィルム面の片側、両側のどちらにインクジェットヘッド部を設けてもよい。インクジェットヘッド部10の設置数に特に制限はなく一つでも複数でもよいが、好ましくは複数のインクジェットヘッド部を設置することである。
図10は、溶融流延で透明基材を製造する工程に、インクジェット方式により微細凸構造を設ける工程を付加したフローを示す模式図である。
図10において、21は溶融流延用のダイスであり、ここから後述する溶融されたポリマーが押し出されされ、製膜ロール22を通してフィルムFとなる。引き続きテンター搬送・乾燥工程5により延伸され、ロールを介して巻き取られロール状のフィルム7となる。
本発明に係る微粒子分散液液滴を出射するインクジェットヘッド部10は、図中、10I〜Kの位置に設けることが出来る。その際、フィルム面の片側、両側のどちらにインクジェットヘッド部を設けてもよい。インクジェットヘッド部10の設置数に特に制限はなく一つでも複数でもよいが、好ましくは複数のインクジェットヘッド部を設置することである。
図11は、透明基材上にインクジェット方式により微細凸構造を設ける別の工程のフローを示す模式図である。詳しくは、透明基材上に紫外線硬化樹脂層、反射防止層等の機能性層を塗布方式で塗設した後、インクジェット方式で裏面側に微細凸構造を形成するフローを示してある。
図11において、ロール501より繰り出された透明基材502は、搬送されて、第1コータステーションAで、第1コータ503により機能性層を塗設する。このとき、機能性層は単層構成でも、複数から構成されている層でもよい。機能性層を塗設した透明基材502は、次いで乾燥ゾーン505Aで乾燥が行われる。乾燥は、透明基材502の両面より、温湿度が制御された温風により乾燥が施される。
次いで、インクジェット方式を用いた微細凸構造を設ける第2コータステーションBに搬送される。インクジェット出射部509には、微粒子分散液供給タンク508が接続されており、そこから微粒子分散液液が供給される。インクジェット出射部509は、図5の(b)で示すような複数のインクジェットノズルを透明基材の幅全域に千鳥状に配置し、微粒子分散液液滴を機能性層上に出射して、その表面に凸構造を形成する。また、2種以上の微粒子分散液液滴を出射する場合には、2列以上配置したインクジェットノズルより、各々の微粒子分散液液滴を出射してもよいし、或いはランダムに任意のインクジェットノズルより微粒子分散液液滴を出射してもよい。また、インクジェット出射部を複数配置し、各々の微粒子分散液出射部より異なる微粒子分散液液滴を出射してもよい。本発明においては、0.01〜100pl、好ましくは0.01〜10plという微細な液滴を出射するため、微粒子分散液液滴の飛翔性に対し、外気の気流の影響を受け易くなるため、第2コータステーションB全体を、隔壁等で覆って気圧の乱れを防止することが好ましい。また、1pl以下の極めて微細な液滴を精度高く飛翔させるため、インクジェット出射部509と透明基材502或いはバックロール504B間に電圧を印加し、微粒子分散液液滴に電荷を与えて電気的に微粒子分散液液滴の飛翔安定性を補助する方法も好ましい。或いはフィルムの帯電によるムラが生じないように、全工程を通じてフィルムの搬送に伴う帯電を防止する為除電バーを設けるなどの除電対策を行うことが好ましい。また、着弾した微粒子分散液液滴の変形を防止するため、透明基材を冷却して着弾後の微粒子分散液液滴の流動を速やかに低下させる方法を用いることも好ましい。或いは、微粒子分散液液滴が出射後、着弾するまでの飛翔中に含有する溶媒を揮発させて、微粒子分散液液滴中の含有溶媒量が減少した状態で着弾させることが、より微細な凸構造を形成する上で好ましい。その為、微粒子分散液飛翔空間の温度を高くしたり、或いは気圧を、1気圧以下、例えば20〜100kPaに制御する方法も好ましい。例えば微粒子分散液液滴中の含有溶媒量を出射時の溶媒含有量に対して、1/100〜99/100となるように減少させて着弾させることが出来る。
また、着弾による衝撃によって凸部の形状が大きく変形したり、つぶれないようにゆるやかに着弾させることも好ましく、例えば微粒子分散液出射部と着弾部の距離を離したり、重力や電荷に逆らって出射して着弾の衝撃を柔らげることも好ましい。或いは、フィルムに向かって流れる気流中に微粒子分散液液滴を吐出し、この微粒子分散液液滴を有する空間にフィルムを配置することで、フィルム上に微粒子分散液液滴を付着させることも好ましい。
微粒子分散液液滴が熱硬化性樹脂を用いている場合には、バックロール504Bをヒートロールとして加熱する方法も好ましい。
着弾した微粒子分散液液滴により形成された凸構造が維持出来る程度に硬化処理を行った透明基材502は、乾燥ゾーン505Bで不要な有機溶媒等を蒸発させ硬化を完了させる。
本発明の微粒子分散液液滴を付着させてすべり性を付与する方法は、フィルム基材を1〜200m/min、好ましくは3〜150m/minで移送しながら形成することが好ましい。
微粒子分散液を着弾させる際の基材フィルムは帯電に斑がないことが好ましく、直前で徐電することが好ましく、或いは均一に帯電させてもよい。
また、微粒子分散液を着弾させて形成した凸部をヘイズ、透過鮮明度などの物性を測定し、所定の値であることを確認し、ずれや変動が確認された場合、その結果をフィードバックして微粒子分散液の吐出条件や硬化条件を変更して制御することが好ましい。測定は、全ての凸部を形成し樹脂を硬化させた後に行うことが好ましく、凸部形成の途中で行ってもよい。例えば、比較的大きな凹凸を形成した後とその後のより微細な凸部を形成した後の測定を行うことで、更に適切なフィードバック制御を行うことが出来る。
本発明では、上記で説明したインクジェット記録装置、画像形成方法に限定されることはなく、この他、特開平9−118024号公報記載の微粒子分散液吐出量測定方法及びその装置を流用することも好ましく、広い範囲で均一な凸部を形成することが出来る。また、特開平10−151748号公報記載のインクジェットヘッド及び反り調整方法を流用することも好ましい。特開2006−3511号、特開2006−36865号、特開2005−306022号、特開2001−260368号等公報に記載のインクジェット式記録ヘッドを用いる画像形成装置及び画像形成方法を流用することも好ましい。特開2003−136740号公報記載のインクジェットプリンタ及びインクジェット記録方法を流用することも好ましい。特開2003−154671号公報記載のクリーニング機構を備えたインクジェット記録装置を流用することも好ましい。特開2003−165232号、特開2003−182092号、特開2003−182093号、特開2003−182097号、特開2003−182098号、特開2003−182121号、特開2003−191478号、特開2003−191479号等公報などに記載されているインクジェット記録装置を流用することも好ましい。
更に、特開2003−191594号公報に記載の画像形成方法、インク、記録装置などを流用することが好ましく、特に選択的に微粒子分散液滴の吐出制御可能な複数のノズルを有する記録ヘッドで、活性光線照射により硬化する微粒子分散液を吐出する画像形成方法において、記録材料の種類によって、微粒子分散液着弾後の活性光線照射条件を変えることを特徴とする画像形成方法を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2003−211651号公報記載のインクジェット記録方法、インクジェット記録装置を本発明に流用することも好ましい。
或いは、特開2003−213183号公報記載の放射線硬化性インクジェット用インク及びインクジェット記録方法を本発明に流用することも好ましい。或いは特開2003−231267号公報記載のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2003−237061号公報記載の画像形成方法、インク、記録装置を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2003−251796号公報記載の画像形成方法を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2003−261799号公報記載の活性光線硬化型インク及びそれを用いたインクジェット記録方法を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2003−260790号公報記載の画像形成方法及び記録装置を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2003−276175号公報記載の画像形成方法、記録装置、インクを本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2003−276256号公報記載の画像形成方法、インク及び画像形成装置を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2003−277654号公報記載の画像形成方法、印刷物及び記録装置を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2003−292837号公報記載のインクジェット用インク、画像形成方法を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2003−305839号公報記載の画像形成方法、インク及び記録装置を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2003−312120号公報記載の画像形成方法、及び記録装置を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2003−313464号公報記載の画像形成方法、及び記録装置を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2003−327875号公報記載の画像形成方法、及び記録装置を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2004−9360号公報記載の活性光線硬化型インクジェット記録方法を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2004−25480号公報記載の画像形成方法及びそれに用いるインクジェット記録装置を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2004−34543号公報記載のインクジェットプリンタを本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2004−34545号公報記載のインクジェット記録方法、インク及びインクジェットプリンタを本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2004−51656号公報記載の画像形成方法、印刷物及び記録装置を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2004−51922号公報記載の活性光線硬化型インク、画像形成方法、記録装置を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2004−51923号公報記載の活性光線硬化型インク、画像形成方法、記録装置を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2004−51924号公報記載のインクジェット記録用インクの保存方法及び画像形成方法を本発明に流用することも好ましい。或いは、特開2004−37855号公報記載のインクジェット装置、インク吐出条件を本発明に流用することも好ましい。
(透明基材フィルム)
本発明においては光学フィルムの透明基材フィルムとして熱可塑性樹脂フィルムを用いることが好ましい。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、セルロースエステル、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリ乳酸系ポリマー、アクリル樹脂、ポリエステルなどが好ましい例として挙げられるがこれらのみに限定されるものではない。これらは溶液流延製膜で作製されたフィルムでも溶融流延で作製されたフィルムであっても好ましく用いられる。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂フィルムは、少なくとも、セルロースエステル、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、及びポリ乳酸から選ばれる高分子を含有することが好ましい。また、これらのフィルムは偏光板保護フィルム或いは位相差フィルムであることが好ましい。
なお、本発明においては、連続生産適性の観点から、透明基材フィルムの幅は、1.4m〜5mであり、巻き長さは2000m〜10000mであり、膜厚は5μm〜55μmであることが好ましい。
〈セルロースエステル〉
本発明に用いられるセルロースエステルの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0であることが好ましい。尚、本発明においては、セルロースエステルフィルムが、材料として、Mw/Mnの値が1.4〜3.0であるセルロースエステルを含有すればよいが、フィルムに含まれるセルロースエステル(好ましくはセルローストリアセテートまたはセルロースアセテートプロピオネート)全体のMw/Mnの値は1.4〜3.0の範囲であることがより好ましい。セルロースエステルの合成過程で1.4未満とすることは困難であり、ゲル濾過などによって分画することで分子量の揃ったセルロースエステルを得ることは出来る。しかしながらこの方法はコストが著しくかかる。また、3.0以下であると平面性が維持されやすく好ましい。尚、より好ましくは1.7〜2.2である。
本発明に用いられるセルロースエステルの分子量は、数平均分子量(Mn)で80000〜200000のものを用いることが好ましい。100000〜200000のものが更に好ましく、150000〜200000が特に好ましい。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することが出来る。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することが出来る。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に得ることが好ましい。
本発明に用いられるセルロースエステルは、炭素数2〜22程度の脂肪族カルボン酸エステルまたは芳香族カルボン酸エステル或いは脂肪族カルボン酸エステルと芳香族カルボン酸エステルの混合エステルが好ましく用いられ、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。具体的には、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートフタレート等や、特開平10−45804号公報、同8−231761号公報、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが出来る。上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは混合して用いることも出来る。
セルローストリアセテートの場合には、総アシル基置換度(アセチル基置換度)2.5から2.9のものが好ましく用いられる。
セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは、炭素原子数2〜22のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、炭素原子数3〜22のアシル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルである。
式(I) 2.5≦X+Y≦2.9
式(II) 0≦X≦2.5
中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦1.0のセルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度=X+Y)が好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することが出来る。
これらアシル基置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することが出来る。
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが出来る。特に綿花リンター(以下、単にリンターとすることがある)、木材パルプから合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが好ましい。
また、これらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステルは、セルロース原料をアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて常法により反応させて得ることが出来る。
アセチルセルロースの場合、酢化率を上げようとすれば、酢化反応の時間を延長する必要がある。但し、反応時間を余り長くとると分解が同時に進行し、ポリマー鎖の切断やアセチル基の分解などが起こり、好ましくない結果をもたらす。従って、酢化度を上げ、分解をある程度抑えるためには反応時間はある範囲に設定することが必要である。反応時間で規定することは反応条件が様々であり、反応装置や設備その他の条件で大きく変わるので適切でない。ポリマーの分解は進むにつれ、分子量分布が広くなってゆくので、セルロースエステルの場合にも、分解の度合いは通常用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値で規定出来る。即ちセルローストリアセテートの酢化の過程で、余り長過ぎて分解が進み過ぎることがなく、かつ酢化には十分な時間酢化反応を行わせしめるための反応度合いの一つの指標として用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値を用いることが出来る。
セルロースエステルの製造法の一例を以下に示すと、セルロース原料として綿化リンター100質量部を解砕し、40質量部の酢酸を添加し、36℃で20分間前処理活性化をした。その後、硫酸8質量部、無水酢酸260質量部、酢酸350質量部を添加し、36℃で120分間エステル化を行った。24%酢酸マグネシウム水溶液11質量部で中和した後、63℃で35分間ケン化熟成し、アセチルセルロースを得た。これを10倍の酢酸水溶液(酢酸:水=1:1(質量比))を用いて、室温で160分間攪拌した後、濾過、乾燥させてアセチル置換度2.75の精製アセチルセルロースを得た。このアセチルセルロースはMnが92000、Mwが156000、Mw/Mnは1.7であった。同様にセルロースエステルのエステル化条件(温度、時間、攪拌)、加水分解条件を調整することによって置換度、Mw/Mn比の異なるセルロースエステルを合成することが出来る。
尚、合成されたセルロースエステルは、精製して低分子量成分を除去したり、未酢化または低酢化度の成分を濾過で取り除くことも好ましく行われる。
また、混酸セルロースエステルの場合には、特開平10−45804号公報に記載の方法で得ることが出来る。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することが出来る。
また、セルロースエステルは、セルロースエステル中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらは製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成する事により不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。鉄(Fe)成分については、1ppm以下であることが好ましい。カルシウム(Ca)成分については、地下水や河川の水等に多く含まれ、これが多いと硬水となり、飲料水としても不適当であるが、カルボン酸や、スルホン酸等の酸性成分と、また多くの配位子と配位化合物即ち、錯体を形成し易く、多くの不溶なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成する。
カルシウム(Ca)成分は60ppm以下、好ましくは0〜30ppmである。マグネシウム(Mg)成分については、やはり多過ぎると不溶分を生ずるため、0〜70ppmであることが好ましく、特に0〜20ppmであることが好ましい。鉄(Fe)分の含量、カルシウム(Ca)分含量、マグネシウム(Mg)分含量等の金属成分は、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行った後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析を行うことによって求めることが出来る。
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムの屈折率は550nmで1.45〜1.60であるものが好ましく用いられる。フィルムの屈折率の測定方法は、アッベ屈折率計を使用し、日本工業規格JIS K 7105に基づき測定する。また後述する反射防止層の各層の屈折率は各層ごとに塗布した薄膜の5°正反射の反射スペクトルから算出する。セルロースエステルフィルムには可塑剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤等の添加剤を含有させることが出来る。
〈可塑剤〉
可塑剤は特に限定されないが、多価アルコールエステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル、クエン酸エステル、脂肪酸エステル、グリコレート系可塑剤、多価カルボン酸エステル等から選択される可塑剤を少なくとも1種含むことが好ましい。そのうち、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に用いられる多価アルコールは次の一般式(1)で表される。
一般式(1) R1−(OH)n
但し、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることが出来る。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
本発明の多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることが出来る。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることが出来る。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等
が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤も好ましく用いることが出来る。具体的には特開2002−265639号公報の段落番号[0015]〜[0020]記載の多価カルボン酸エステルを可塑剤の一つとして添加することが好ましい。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
セルロースエステルフィルム中の可塑剤の総含有量は、固形分総量に対し、5〜30質量%含有させることが好ましい。更に5〜20質量%が好ましく、6〜16質量%がより好ましく、特に好ましくは8〜13質量%である。また、2種の可塑剤の含有量は各々少なくとも1質量%以上であり、好ましくは各々2質量%以上含有することである。
〈紫外線吸収剤〉
本発明に係るセルロースエステルフィルムは紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下となるように添加されていることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
本発明に用いることができる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムには、微粒子を含有させることが出来る。
本発明の方法で凸部を形成することでフィルム中に添加する微粒子の量を少なくすることが出来る。これによって透明性に優れかつ取り扱い性にも優れたフィルムを提供することが出来る。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、架橋アクリル樹脂及び架橋ポリスチレン樹脂を挙げることが出来る。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがセルロースエステルフィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明で用いられるセルロースエステルフィルムにおいては活性線硬化樹脂層の裏面側の動摩擦係数が1.0以下であることが好ましく、0.1〜0.8であることが更に好ましい。また、活性線硬化樹脂層を設ける面の動摩擦係数が1.0以下であることが好ましい。
〈染料〉
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムには、色味調整のため染料を添加することも出来る。例えば、フィルムの黄色味を抑えるために青色染料を添加してもよい。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。
アンスラキノン系染料は、アンスラキノンの1位から8位迄の任意の位置に任意の置換基を有することが出来る。好ましい置換基としてはアニリノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、または水素原子が挙げられる。特に特開2001−154017号公報の段落番号[0034]〜[0037]記載の青色染料、特にアントラキノン系染料を含有することが好ましい。また、赤外吸収染料を含有することが好ましく、特に特開2001−154017号公報のチオピリリウムスクアリリウム染料、チオピリリウムクロコニウム染料、ピリリウムスクアリリウム染料、ピリリウムクロコニウム染料の内のいずれかであることが好ましい。具体的には該公報の一般式(1)若しくは一般式(2)で示されている赤外吸収染料を好ましく添加することが出来る。
各種添加剤は製膜前のセルロースエステル含有溶液であるドープにバッチ添加してもよいし、添加剤溶解液を別途用意してインライン添加してもよい。特に微粒子は濾過材への負荷を減らすために、一部または全量をインライン添加することが好ましい。
添加剤溶解液をインライン添加する場合は、ドープとの混合性をよくするため、少量のセルロースエステルを溶解するのが好ましい。好ましいセルロースエステルの量は、溶媒100質量部に対して1〜10質量部で、より好ましくは、3〜5質量部である。
本発明においてインライン添加、混合を行うためには、例えば、スタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。
〈セルロースエステルフィルムの製造方法〉
次に、本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの製造は、セルロースエステル及び添加剤を溶媒に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状若しくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減出来て好ましいが、セルロースエステルの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
本発明のドープで用いられる溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶媒と貧溶媒を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶媒が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。良溶媒と貧溶媒の混合比率の好ましい範囲は、良溶媒が70〜98質量%であり、貧溶媒が2〜30質量%である。良溶媒、貧溶媒とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶媒、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶媒と定義している。その為、セルロースエステルのアシル基置換度によっては、良溶媒、貧溶媒が変わり、例えばアセトンを溶媒として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶媒になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶媒となる。
本発明に用いられる良溶媒は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶媒は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることが出来る。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱出来る。溶媒の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースエステルを貧溶媒と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶媒を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶媒の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶媒を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶媒が沸騰しないように調整される。
若しくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステルを溶解させることが出来る。
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。この為絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースエステルフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことが出来るが、溶媒の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
ここで、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることが出来る。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶媒が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速く出来るので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
尚、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。本発明で言う残留溶媒とは前記処理によって蒸発する溶媒のことを言い、以下に限定されないが、具体的な例としてはメチレンクロライド、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、などの一般に言われている有機溶媒のことを指しているが、フィルムに性能を持たせるために添加した物質が蒸発などした場合には、これに含めることとする。
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
本発明の光学フィルム用のセルロースエステルフィルムを作製するためには、金属支持体より剥離した直後のウェブの残留溶媒量の多いところで搬送方向に延伸し(MD延伸)、更にウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向に延伸を行うことが好ましい。縦方向、横方向ともに好ましい延伸倍率は1.05〜1.3倍であり、1.05〜1.15倍が更に好ましい。縦方向及び横方向延伸により面積が1.12倍〜1.44倍となっていることが好ましく、1.15倍〜1.32倍となっていることが好ましい。これは縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率で求めることが出来る。
剥離直後に縦方向に延伸するために、剥離張力及びその後の搬送張力によって延伸することが好ましい。例えば剥離張力を210N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは220〜300N/mである。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことが出来るが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は30〜180℃で段階的に高くしていくことが好ましく、50〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするため更に好ましい。
セルロースエステルフィルムの膜厚の変動は幅方向、長手方向とも±3%以内が好ましく、更に好ましくは±2%以内であり、特に好ましくは±0.5%以内である。
本発明の光学フィルムは、幅1〜4mのものが好ましく用いられる。本発明によれば、特に幅1.4〜4mの広幅フィルムの取り扱い性を著しく改善することが出来る。
〈物性〉
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの透湿度は、40℃、90%RHで850g/m2・24h以下であり、好ましくは20〜800g/m2・24hであり、20〜750g/m2・24hであることが特に好ましい。透湿度はJIS Z0208に記載の方法に従い測定することが出来る。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは下記測定による破断伸度は10〜80%であることが好ましく20〜50%であることが更に好ましい。
(破断点伸度の測定)
任意の残留溶媒を含むフィルムを試料幅を10mm、長さ130mmに切り出し、23℃、55%RHで24時間保管した試料を、チャック間距離100mmにして引っ張り速度100mm/分で引っ張り試験を行い求めることが出来る。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの下記測定による可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。
(透過率の測定)
透過率Tは、分光高度計U−3400(日立製作所(株))を用い、各試料を350〜700nmの波長領域で10nmおきに求めた分光透過率τ(λ)から、380、400、500nmの透過率を算出することが出来る。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの下記測定によるヘイズは1%未満であることが好ましく、0.5%未満であることが更に好ましく、0〜0.1%であることが特に好ましい。可視光の透過率は90%以上が好ましく、より好ましく92%以上であり、更に94%以上であることが好ましい。
(ヘイズ値)
JIS K7105に従って、ヘイズメーター(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定し、透明性の指標とすることが出来る。
レターデーション値(Ro)(Rt)は以下の式によって求めることが出来る。
Ro=(nx−ny)×d
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
ここにおいて、dはフィルムの厚み(nm)、屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう)、ny(フィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率)、nz(厚み方向におけるフィルムの屈折率)である。
尚、レターデーション値(Ro)、(Rt)、遅相軸角度は自動複屈折率計を用いて測定することが出来る。例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmで求めることが出来る。
また、遅相軸はフィルムの幅手方向±1°若しくは長尺方向±1°にあることが好ましい。
本発明では、共流延または逐次流延若しくは塗布によって2層以上の多層構成とした熱可塑性樹脂フィルムを用いてもよい。
また、特開2000−352620号公報段落番号[0036]〜[0105]記載のセルロースエステルフィルムも好ましく用いることが出来る。或いは特開2004−29199号公報段落番号[0013]〜[0124]記載のセルロースエステルフィルムも好ましく用いられる。
本発明においては、市販のセルロースエステルフィルムを使用することも出来る。例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC8UY、LC4UX、KC4UY、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UX−H(コニカミノルタ(株)製)等のセルロースエステルフィルムが用いられる。
〈シクロオレフィンポリマー〉
本発明に用いられるシクロオレフィンポリマーは脂環式構造を含有する重合体樹脂からなるものである。
好ましいシクロオレフィンポリマーは、環状オレフィンを重合または共重合した樹脂である。環状オレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。これら環状オレフィンには置換基として極性基を有していてもよい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、エステル基、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基が好適である。
好ましいシクロオレフィンポリマーは、環状オレフィン以外の単量体を付加共重合したものであってもよい。付加共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのエチレンまたはα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン等が挙げられる。
環状オレフィンは、付加重合反応或いはメタセシス開環重合反応によって得られる。重合は触媒の存在下で行われる。付加重合用触媒として、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。開環重合用触媒として、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる重合触媒;或いは、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。重合温度、圧力等は特に限定されないが、通常−50℃〜100℃の重合温度、0〜490N/cm2の重合圧力で重合させる。
本発明に用いるシクロオレフィンポリマーは、環状オレフィンを重合または共重合させた後、水素添加反応させて、分子中の不飽和結合を飽和結合に変えたものであることが好ましい。水素添加反応は、公知の水素化触媒の存在下で、水素を吹き込んで行う。水素化触媒としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムの如き遷移金属化合物/アルキル金属化合物の組み合わせからなる均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金などの不均一系金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/けい藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/けい藻土、パラジウム/アルミナの如き金属触媒を担体に担持してなる不均一系固体担持触媒などが挙げられる。
或いは、シクロオレフィンポリマーとして、下記のノルボルネン系ポリマーも挙げられる。ノルボルネン系ポリマーは、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有していることが好ましく、その具体例としては、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報等に記載されたものが好ましく利用出来るが、これらに限定されるものではない。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
前記構造式(I)〜(IV)中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子または1価の有機基を表す。
また、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(V)または(VI)で表される化合物の少なくとも1種と、これと共重合可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体も好ましい。
前記構造式中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子または1価の有機基を表す。
ここで、上記A、B、C及びDは特に限定されないが、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、または、少なくとも2価の連結基を介して有機基が連結されてもよく、これらは同じであっても異なっていてもよい。また、AまたはBとCまたはDは単環または多環構造を形成してもよい。ここで、上記少なくとも2価の連結基とは、酸素原子、イオウ原子、窒素原子に代表されるヘテロ原子を含み、例えばエーテル、エステル、カルボニル、ウレタン、アミド、チオエーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記連結基を介し、上記有機基は更に置換されてもよい。
また、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが用いられる。これらの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
これらの、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを付加共重合する場合は、付加共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、質量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
合成したポリマーの分子鎖中に残留する不飽和結合を水素添加反応により飽和させる場合には、耐光劣化や耐候劣化性などの観点から、水素添加率を90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上とする。
この他、本発明で用いられるシクロオレフィンポリマーとしては、特開平5−2108号公報段落番号[0014]〜[0019]記載の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂、特開2001−277430号公報段落番号[0015]〜[0031]記載の熱可塑性ノルボルネン系ポリマー、特開2003−14901号公報段落番号[0008]〜[0045]記載の熱可塑性ノルボルネン系樹脂、特開2003−139950号公報段落番号[0014]〜[0028]記載のノルボルネン系樹脂組成物、特開2003−161832号公報段落番号[0029]〜[0037]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−195268号公報段落番号[0027]〜[0036]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−211589号公報段落番号[0009]〜[0023]脂環式構造含有重合体樹脂、特開2003−211588号公報段落番号[0008]〜[0024]記載のノルボルネン系重合体樹脂若しくはビニル脂環式炭化水素重合体樹脂などが挙げられる。
具体的には、日本ゼオン(株)製ゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製アートン、三井化学(株)製アペル(APL8008T、APL6509T、APL6013T、APL5014DP、APL6015T)などが好ましく用いられる。
本発明で使用されるシクロオレフィンポリマーの分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、5000〜500000、好ましくは8000〜200000、より好ましくは10000〜100000の範囲である時に、成形体の機械的強度、及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
また、シクロオレフィンポリマー100質量部に対して、低揮発性の酸化防止剤を0.01〜5質量部の割合で配合すると、成形加工時のポリマーの分解や着色を効果的に防止することが出来る。
酸化防止剤としては、20℃における蒸気圧が10-5Pa以下、特に好ましくは10-8Pa以下の酸化防止剤が望ましい。蒸気圧が10-5Paより高い酸化防止剤は、押出成形する場合に発泡したり、また、高温にさらされた時に成形品の表面から酸化防止剤が揮散するという問題が起こる。
本発明で使用出来る酸化防止剤としては、例えば、次のようなものを挙げることが出来、これらの内の一種または数種を組み合わせて用いてもよい。
ヒンタードフェノール系:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−α−メトキシ−p−ジメチル−フェノール、2,4−ジ−t−アミルフェノール、t−ブチル−m−クレゾール、4−t−ブチルフェノール、スチレン化フェノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、4,4′−ビスフェノール、4,4′−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−α−メチルシクロヘキシルフェノール)、4,4′−メチレン−ビス−(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1′−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルナフトール)、4,4′−ブチリデン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチル−メタ−クレゾール)、2,2′−チオ−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ジ−o−クレゾールスルフィド、2,2′−チオ−ビス−(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオ−ビス−(2,3−ジ−sec−アミルフェノール)、1,1′−チオ−ビス−(2−ナフトール)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルエーテル、1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリメチル−2,4,6,−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシジェニル)プロピオネート〕等。
アミノフェノール類:ノルマルブチル−p−アミノフェノール、ノルマルブチロイル−p−アミノフェノール、ノルマルペラゴノイル−p−アミノフェノール、ノルマルラウロイル−p−アミノフェノール、ノルマルステアロイル−p−アミノフェノール、2、6−ジ−t−ブチル−α−ジメチル、アミノ−p−クレゾール等。
ハイドロキノン系:ハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、ハイドロキノンメチルエーテル、ハイドロキノンモノベンジルエーテル等。
ホスファイト系トリホスファイト、トリス(3,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンフォスファナイト、2−エチルヘキシルオクチルホスファイト等。
その他:2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、ジカテコールボレート−ジ−o−トリルグアニジン塩、ニッケル−ジメチルジチオカーバメイト、ニッケル−ペンタメチレンンジチオカルバネート、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩等。
シクロオレフィンポリマーフィルムは、必要に応じて、プラスチックフィルムに一般的に配合することが出来る添加剤を含有していてもよい。そのような添加剤としては、熱安定剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、及び充填剤などが挙げられ、その含有量は本発明の目的を損ねない範囲で選択することが出来る。
シクロオレフィンポリマーフィルムは、その表面の濡れ張力が、好ましくは40mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上、更に好ましくは55mN/m以上である。表面の濡れ張力が上記範囲にあると、フィルムと偏光子との接着強度が向上する。表面の濡れ張力を調整するために、例えば、コロナ放電処理、オゾンの吹き付け、紫外線照射、火炎処理、化学薬品処理、その他公知の表面処理を施すことが出来る。
延伸前のシートは厚さが50〜500μm程度の厚さが必要であり、厚さムラは小さいほど好ましく、全面において±8%以内、好ましくは±6%以内、より好ましくは±4%以内である。
上記シクロオレフィンポリマーフィルムはセルロースエステルフィルムと同様に、シートを一軸方向に延伸することが出来、更にその方向と直交する方向に延伸する二軸延伸であってもよい。延伸するには前記テンター装置等を用いることが好ましい。
延伸倍率は1.1〜10倍、好ましくは1.3〜8倍である。
延伸は、通常、シートを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行われる。延伸温度が低過ぎると破断し、高過ぎると分子配向しない。
この様にして得たフィルムは、延伸により分子が配向されて、所望の大きさのリターデーションを持たせることが出来る。本発明において好ましいリターデーション値は、Rtが−400〜400nm、Roが1〜300nmである。
(ポリカーボネート系ポリマー)
ポリカーボネート系ポリマーを作製するのに用いられるポリカーボネート系樹脂としては種々があり、化学的性質及び物性の点から芳香族ポリカーボネートが好ましく、特にビスフェノールA系ポリカーボネートが好ましい。その中でも更に好ましくはビスフェノールAにベンゼン環、シクロヘキサン環、叉は脂肪族炭化水素基などを導入したビスフェノールA誘導体を用いたものが挙げられるが、特に中央炭素に対して非対称にこれらの基が導入された誘導体を用いて得られた、単位分子内の異方性を減少させた構造のポリカーボネートが好ましい。例えばビスフェノールAの中央炭素の2個のメチル基をベンゼン環に置き換えたもの、ビスフェノールAのそれぞれのベンゼン環の一の水素をメチル基やフェニル基などで中央炭素に対し非対称に置換したものを用いて得られるポリカーボネートが好ましい。
具体的には、4,4′−ジヒドロキシジフェニルアルカンまたはこれらのハロゲン置換体からホスゲン法またはエステル交換法によって得られるものであり、例えば4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルブタン等をあげることができる。
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂よりなる位相差フィルムはポリスチレン系樹脂あるいはメチルメタクリレート系樹脂あるいはセルロースアセテート系樹脂等の透明樹脂と混合して使用しても良いし、またセルロースアセテート系フィルムの少なくとも一方の面にポリカーボネート樹脂を積層してもよい。本発明において使用できるポリカーボネート系フィルムの作製方法は特に限定されるものではない。すなわち押出法によるフィルム、溶媒キャスト法によるフィルム、カレンダー法によるフィルムなどのいずれを使用してもよい。本発明においては1軸延伸あるいは2軸延伸のどちらかを使用し、セルロースエステルフィルムの好ましい製造法と同様な製造法により、本発明の弾性率εsと弾性率εfの式(1)の関係を満たし、かつ面内及び厚み方向の位相差値の範囲を満たすポリカーボネート系フィルムが得られる。
本発明において使用されるポリカーボネート系フィルムはガラス転移点(Tg)が110℃以上であって、吸水率(23℃水中、24時間の条件で測定した値)が0.3%以下のものを使用するのがよい。より好ましくはTgが120℃以上であって、吸水率が0.2%以下のものを使用するのがよい。
(ポリ乳酸系ポリマー)
本発明では、ポリ乳酸系ポリマーを用いた透明基材フィルムを用いることも出来る。ポリ乳酸系ポリマーとしては、ポリ乳酸、または乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体があげられる。ポリ乳酸系重合体は1種を単独で、または2種以上の混合物として用いられる。
乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸があげられる。乳酸としては、L−乳酸が好ましい。他のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等があげられる。なお、本発明において基材フィルムを構成するポリ乳酸系重合体は、重合成分が乳酸のみからなるポリ乳酸が最も好ましい。
ポリ乳酸系重合体の重合方法は、特に制限されず、たとえば、縮合重合法、開環重合法等の公知のいずれの方法を採用することができる。ポリ乳酸系重合体の重量平均分子量は、10000〜1000000程度であるのが好ましい。また、ポリ乳酸系重合体としては、さらには分子量増大のために、少量の鎖延長剤、例えばポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、酸無水物等の架橋剤を使用したものを用いてもよい。
ポリ乳酸系フィルムは、前記ポリ乳酸系重合体を主成分とするが、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の高分子材料が配合されていてもよい。他の高分子材料としては、ポリ乳酸 以外のポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、セルロース系材料、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド等があげられる。ただし、脂肪族ポリエステルは、ポリ乳酸系重合体に配合しない方が好ましい。脂肪族ポリエステルを配合すると、加温・加湿条件で保存された場合にポリ乳酸系フィルムに白濁が生じ易くなり本用途では好ましくない。
また、ポリ乳酸系フィルムには、成型加工性、フィルム物性を調整する目的で、可塑剤、滑剤、無機フィラー、紫外線吸収剤、帯電防止剤等の添加剤を添加することもできる。
ポリ乳酸系フィルムの製法は特に制限されない。たとえば、前記ポリ乳酸系重合体またはそれを主成分とする組成物を、溶融押出し法によりフィルム状に成形することができる。さらにポリ乳酸系フィルムは、ロール法、テンター法等により、一軸または二軸に延伸してもよい。延伸フィルムは強度に優れており好ましい。特に二軸延伸フィルムが好ましい。延伸倍率は特に制限されないが、5倍以内、さらには1.5〜5倍とするのが好ましい。
基材フィルムであるポリ乳酸系フィルムの厚さは、作業性(保護フィルムの取扱い性)の点から、一般に10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20〜200μmである。
〈ハードコート層〉
本発明は前記熱可塑性樹脂フィルムの微細凸構造を設けた面若しくは反対の面上にハードコート層を塗設することが好ましい。ハードコート層は、活性線硬化樹脂及び微粒子を含有するハードコート層であることが好ましい。
微粒子としては無機粒子及び有機粒子が挙げられる。本発明に使用することが出来る無機微粒子としては酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム或いはこれらの複合酸化物等を挙げることが出来る。
これらの内で、酸化珪素、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン或いはこれらの複合酸化物等が好ましく用いられる。
有機微粒子としては、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、シリコン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、更にポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ弗化エチレン系樹脂等が使用出来る。特に好ましくは導電性微粒子を含有することである。
粒径は5nm〜10μmの微粒子が用いられるが、5nm〜5μmの粒子が好ましい。特にハードコート層の平均膜厚よりも直径の大きな粒子は防眩性ハードコート層を形成するのに有用である。防眩性を持たせない場合は、好ましくは5nm〜1μmの粒子を含有することである。異なる組成、粒径、屈折率の微粒子を組み合わせて用いることも出来る。例えば、酸化珪素と酸化ジルコニウム或いは酸化珪素とITO微粒子を組み合わせて用いることが出来る。
活性線硬化樹脂とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。例えば、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させてハードコート層が形成される。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る。例えば、特開昭59−151110号公報に記載のものを用いることが出来る。
例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることが出来、特開昭59−151112号公報に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることが出来、特開平1−105738号公報に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
これら紫外線硬化性樹脂の光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。光増感剤と共に使用してもよい。上記光反応開始剤も光増感剤として使用出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。例えば、イルガキュア184、イルガキュア907(チバスペシャルティケミカルズ社製)などの市販品が好ましく用いられる。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光反応開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることが出来る。
本発明において使用し得る紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−51
52、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)、DPHA(日本化薬(株)製)等を適宜選択して利用出来る。
また、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
この他、屈折率調整のため、酸化ジルコニウム超微粒子分散物含有させたハードコート塗布液 デソライトZ−7041、デソライトZ−7042(JSR(株)製)なども単独で若しくは他の紫外線硬化樹脂などに添加混合して使用することが出来る。
本発明に用いられる活性線硬化性樹脂の硬化は、電子線または紫外線のような活性線照射によって硬化することが出来る。例えば、電子線硬化の場合にはコックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVのエネルギーを有する電子線等が使用され、紫外線硬化の場合には超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用出来る。
活性線硬化樹脂組成物と微粒子の割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜40質量部となるように配合することが望ましい。
本発明に用いられるハードコート層の屈折率は、1.5〜2.0であり、より好ましくは1.6〜1.8である。透明支持体として用いられるセルロースエステルフィルムの屈折率は約1.5である。ハードコート層の屈折率が小さ過ぎると反射防止性が低下する。更に、これが大き過ぎると、光学フィルムの反射光の色味が強くなり、好ましくない。本発明に用いられるハードコート層の屈折率は、低反射性フィルムを得るための光学設計上から屈折率が1.60〜1.70の範囲にあることが特に好ましい。ハードコート層の屈折率は前記添加する微粒子の屈折率や含有量によって調製することが出来る。
本発明に用いられるハードコート層の膜厚とは、断層電子顕微鏡写真で観察した時のハードコート層の樹脂部分の膜厚10ケ所の平均を本発明の膜厚としており、十分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、ハードコート層の膜厚は0.5μm〜10.0μmの範囲が好ましく、更に好ましくは、1.0μm〜5.0μmである。またハードコート層は2層以上から構成されていてもよい。
これらのハードコート層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法で塗設することが出来る。塗布量はウェット膜厚として0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、0.5J/cm2以下であり、好ましくは0.1J/cm2以下である。
活性線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒〜1分程度がよく、硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から0.1〜10秒がより好ましい。また、これら活性線照射部の照度は50〜150mW/m2であることが好ましい。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、若しくは2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性優れたフィルムを得ることが出来る。
ハードコート層の塗布液の有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、或いはこれらを混合し利用出来る。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
また、ハードコート層の塗布液には、特にシリコン化合物を添加することが好ましい。例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどが好ましく添加される。ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば、1000〜100000、好ましくは、2000〜50000が適当であり、数平均分子量が1000未満では、塗膜の乾燥性が低下し、逆に、数平均分子量が100000を越えると、塗膜表面にブリードアウトしにくくなる傾向にある。
シリコン化合物の市販品としては、DKQ8−779(ダウコーニング社製商品名)、SF3771、SF8410、SF8411、SF8419、SF8421、SF8428、SH200、SH510、SH1107、SH3749、SH3771、BX16−034、SH3746、SH3749、SH8400、SH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、BY−16−837、BY−16−839、BY−16−869、BY−16−870、BY−16−004、BY−16−891、BY−16−872、BY−16−874、BY22−008M、BY22−012M、FS−1265(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社製商品名)、KF−101、KF−100T、KF351、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、シリコーンX−22−945、X22−160AS(以上、信越化学工業社製商品名)、XF3940、XF3949(以上、東芝シリコーン社製商品名)、ディスパロンLS−009(楠本化成社製)、グラノール410(共栄社油脂化学工業(株)製)、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(GE東芝シリコーン製)、BYK−306、BYK−330、BYK−307、BYK−341、BYK−344、BYK−361(ビックケミ−ジャパン社製)日本ユニカー(株)製のLシリーズ(例えばL7001、L−7006、L−7604、L−9000)、Yシリーズ、FZシリーズ(FZ−2203、FZ−2206、FZ−2207)等が挙げられ、好ましく用いられる。
これらの成分は基材や下層への塗布性を高める。積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
(反射防止層)
本発明に係る光学フィルムはハードコート層上に、更に反射防止層を設けることができる。
本発明では反射防止層を設ける方法は特に限定されず、スパッタ、大気圧プラズマ処理、塗布などが挙げられるが、塗布により形成することが好ましい。
反射防止層を塗布により形成する方法としては、溶媒に溶解したバインダー樹脂中に金属酸化物の粉末を分散し、塗布乾燥する方法、架橋構造を有するポリマーをバインダー樹脂として用いる方法、エチレン性不飽和モノマーと光重合開始剤を含有させ、活性線を照射することにより層を形成する方法等の方法を挙げることが出来る。
本発明においては、ハードコート層を付与した透明基材フィルムの上に反射防止層を設け、該反射防止層の少なくとも一層が低屈折率層である。
好ましい光学フィルムの構成を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
ここでハードコート層、防眩層とは、前述の活性線硬化樹脂層を意味する。尚、ここでは本発明のブロッキング防止加工を施した面をバックコート層と表記した。
バックコート層/透明基材フィルム/クリアハードコート層/低屈折率層
バックコート層/透明基材フィルム/クリアハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/透明基材フィルム/クリアハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/透明基材フィルム/防眩層/低屈折率層
バックコート層/透明基材フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/透明基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
また、中屈折率層若しくは高屈折率層が帯電防止層を兼ねてもよい。
前記光学フィルムでは、最上層に低屈折率層を形成し、ハードコート層との間に高屈折率層の金属酸化物層を形成したり、更にハードコート層と高屈折率層との間に中屈折率層(金属酸化物の含有量或いは樹脂バインダーとの比率、金属の種類を変更して屈折率を調整した金属酸化物層)を設けることは、反射率の低減のために好ましい。
本発明の低屈折率層には中空微粒子が含有されることが好ましい。
ここでいう中空微粒子は、(I)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、または(II)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体または多孔質物質で充填された空洞粒子である。尚、低屈折率層には(I)複合粒子または(II)空洞粒子のいずれかが含まれていればよく、また双方が含まれていてもよい。
尚、空洞粒子は、内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体または多孔質物質などの内容物で充填されている。この様な無機微粒子の平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあることが望ましい。使用される無機微粒子の平均粒径は、形成される透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、形成される低屈折率層などの透明被膜の膜厚の2/3〜1/10の範囲にあることが望ましい。これらの無機微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)が好ましい。
複合粒子の被覆層の厚さまたは空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあることが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することが出来ないことがあり、後述する塗布液成分である重合度の低いケイ酸モノマー、オリゴマーなどが容易に複合粒子の内部に内部に進入して内部の多孔性が減少し、低屈折率の効果が十分得られないことがある。また、被覆層の厚さが20nmを越えると、前記ケイ酸モノマー、オリゴマーが内部に進入することはないが、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率の効果が十分得られなくなることがある。また空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持出来ないことがあり、また厚さが20nmを越えても、低屈折率の効果が十分に現れないことがある。
前記複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。また複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁には、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3などが挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgFなどからなるものが挙げられる。この内特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等との1種または2種以上を挙げることが出来る。この様な多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOX)で表した時のモル比MOX/SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても更に屈折率が低いものを得ることはない。また、多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が小さく、かつ屈折率の低い粒子を得られないことがある。
この様な多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。
尚、この様な多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることが出来る。また、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質などが挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒などが含まれていてもよい。また多孔質物質としては、前記多孔質粒子で例示した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
この様な無機微粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。具体的に、複合粒子が、シリカ、シリカ以外の無機化合物とからなる場合、以下の第1〜第3工程から無機化合物粒子は製造される。
〈偏光板〉
本発明に係る偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明の光学フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理した光学フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面にも該光学フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。反対面側に用いられる偏光板保護フィルムとしては、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2M、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UCR−1、KC8UCR−2、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UXW−H(コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。これらは同種のフィルムを偏光子の両面に用いて偏光板化することも出来、或いは異なる種類のフィルムを組み合わせて偏光板とすることも出来る。これらの偏光板は表示装置の表面若しくは裏面(バックライト側)に使用することが出来る。例えば、KC8UY/偏光子/KC12UR、KC8UX2M/偏光子/KC8UCR−3、KC8UXW−H/偏光子/KC8UCR4、KCUXW−H/偏光子/KCUCR−3等と組み合わせて用いることが出来る。本発明の光学フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは面内リターデーションRoが590nmで、20〜70nm、Rtが70〜400nmの位相差を有している光学補償フィルムであることが好ましい。これらは例えば、特開2002−71957号公報段落番号[0014]〜[0078]、特開2003−170492号公報段落番号[0064]〜[0252]記載の方法で作製することが出来る。
〈光学異方層〉
本発明においては、更にディスコチック液晶などの液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348号公報段落番号[0033]〜[0053]記載の方法で光学異方層を形成することが出来る。本発明の光学フィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることが出来る。
本発明において、光学異方層は前記透明基材上に直接または配向層を介して設けられる。光学異方層は、好ましくは液晶性ディスコティック化合物を有し、該液晶性ディスコティック化合物の光軸は、透明支持体の法線方向に対して傾斜角を形成する。この傾斜角は光学異方層の透明支持体側から表面側に向かうにつれ増加していることが好ましい。このように本発明において光学異方層は、ディスコティック(円盤状)構造単位を有する化合物からなる負の複屈折を有する層である。すなわち、光学異方層は、液晶性ディスコティック化合物の層であるか、または重合性ディスコティック化合物の硬化により得られるポリマー層である。本発明に適用できるディスコティック化合物としては、たとえば、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Phyics.Lett,A、78巻、82頁(1990年)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.Soc.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。ディスコティック化合物は、一般にこのような芳香環を有する分子を核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基などが側鎖としてその周りに放射状に置換した平板状構造を有しており、液晶性を示し、一般にディスコティック液晶と呼ばれるものを含む。但し、分子自身が負の一軸性を有し、一定の配向を付与できるものであれば上記記載に限定されるものではない。また本発明においては、ディスコティック構造単位を有する化合物には、上記化合物の他に、低分子ディスコティック液晶が熱や電離放射線などで架橋しうる官能基を有しており、熱または電離放射線照射によって高分子量化して液晶性を失ったものも含まれる。
光学異方層は、ディスコティック化合物および他の化合物を溶解した塗布液を配向層上に塗布、乾燥した後、ディスコティックネマティック相形成温度まで加熱し、その配向状態を維持しつつ冷却することにより形成することができる。また、ディスコティックネマティック相形成温度まで加熱した後、電離放射線照射により重合させてもよい。ディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度としては、好ましくは50〜300℃、より好ましくは70〜170℃が望ましい。
なお、光学異方層には、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー、高分子化合物など、ディスコティック化合物の配向を阻害しない限り必要に応じていかなる化合物を添加してもよい。重合性モノマーとしては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基およびビニルオキシ基を有するものが好ましく、ディスコティック化合物に対して1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%用いることができる。
高分子化合物としては、ディスコティック化合物との相溶性を有していればよく、好ましくはセルロースエステル、より好ましくはセルロースアセテートブチレートが望ましい。高分子化合物はディスコティック化合物に対し、0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%用いることができる。また、セルロースアセテートブチレートのアセチル化度は30〜80%が好ましく、ブチリル化度は30〜80%が好ましい。
本発明においては、記光学異方層が活性線硬化層であることが好ましい。
〈偏光子〉
偏光子としては、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸、染色したものが好ましく用いられる。特に、エチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。中でも熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。又、フィルムのTD方向に5cm離れた二点間の熱水切断温度の差が1℃以下であることが、色斑を低減させるうえでさらに好ましく、さらにフィルムのTD方向に1cm離れた二点間の熱水切断温度の差が0.5℃以下であることが、色斑を低減させるうえでさらに好ましい。
このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能および耐久性能に優れているうえに、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
本発明において用いられるエチレン変性ポリビニルアルコール(エチレン変性PVA)としては、エチレンとビニルエステル系モノマーとを共重合して得られたエチレン−ビニルエステル系重合体をけん化し、ビニルエステル単位をビニルアルコール単位としたものを用いることができる。このビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等を挙げることができ、これらのなかでも酢酸ビニルを用いるのが好ましい。
エチレン変性PVAにおけるエチレン単位の含有量(エチレンの共重合量)は、1〜4モル%であり、好ましくは1.5〜3モル%であり、より好ましくは2〜3モル%である。
エチレン単位の含有量がこの範囲にあると、偏光性能および耐久性能が向上し、色斑が低減されるため好ましい。
さらに、エチレン変性ポリビニルアルコールには、ビニルエステル系モノマーに下記のモノマーを共重合させることもできる。ビニルエステル系モノマーに共重合させる場合、好ましい範囲は15モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
このようなビニルエステル系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数3〜30のオレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステル;イタコン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド類を挙げることができる。
偏光子を構成するエチレン変性PVAの重合度は、偏光性能と耐久性の点から2000〜4000であり、2200〜3500が好ましく、2500〜3000が特に好ましい。重合度が2000より小さい場合には、偏光子の偏光性能や耐久性能が低下し、好ましくない。また、重合度が4000以下であることが偏光子の色斑が生じにくく好ましい。
エチレン変性PVAの重合度は、GPC測定から求めた重量平均重合度である。この重量平均重合度は、単分散PMMAを標品として移動相に20ミリモル/リットルのトリフルオロ酢酸ソーダを加えたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、40℃でGPC測定を行って求めた値である。
偏光子を構成するエチレン変性PVAのけん化度は、偏光子の偏光性能および耐久性の点から99.0〜99.99モル%であり、99.9〜99.99モル%がより好ましく、99.95〜99.99モル%が特に好ましい。
エチレン変性PVAフィルムを製造する方法としては特に限定されないが、流延製膜法および溶融押出製膜法が、良好なエチレン変性PVAフィルムを得る観点から好ましい。又、得られたエチレン変性PVAフィルムは、必要に応じて乾燥および熱処理が施される。
エチレン変性PVAフィルムを製造する際に使用されるエチレン変性PVAを溶解する溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、グリセリン、水などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらのなかでも、ジメチルスルホキシド、水、またはグリセリンと水の混合溶媒が好ましく使用される。
エチレン変性PVAフィルムを製造する際に使用されるエチレン変性PVA溶液または水を含むエチレン変性PVAにおけるエチレン変性PVAの割合はエチレン変性PVAの重合度に応じて変化するが、20〜70質量%が好ましく、25〜60質量%がより好ましく、30〜55質量%がさらに好ましく、35〜50質量%が最も好ましい。エチレン変性PVAの割合が70質量%を超えるとエチレン変性PVA溶液または水を含むエチレン変性PVAの粘度が高くなり過ぎて、フィルムの原液を調製する際に濾過や脱泡が困難となり、異物や欠点のないフィルムを得ることが困難となる。また、エチレン変性PVAの割合が20質量%より低いとエチレン変性PVA溶液または水を含むエチレン変性PVAの粘度が低くなり過ぎて、目的とする厚みを有するPVAフィルムを製造することが困難になる。また、このエチレン変性PVA溶液または水を含むエチレン変性PVAには、必要に応じて可塑剤、界面活性剤、二色性染料などを含有させてもよい。
エチレン変性PVAフィルムを製造する際に可塑剤として、多価アルコールを添加することが好ましい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも延伸性向上効果からジグリセリンやエチレングリコールやグリセリンが好ましく使用される。
多価アルコールの添加量としてはエチレン変性PVA100質量部に対し1〜30質量部が好ましく、3〜25質量部がさらに好ましく、5〜20質量部が最も好ましい。1質量部より少ないと、染色性や延伸性が低下する場合があり、30質量部より多いと、エチレン変性PVAフィルムが柔軟になりすぎて、取り扱い性が低下する場合がある。
エチレン変性PVAフィルムを製造する際には、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤の種類としては特に限定はないが、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、たとえば、ラウリン酸カリウムなどのカルボン酸型、オクチルサルフェートなどの硫酸エステル型、ドデシルベンゼンスルホネートなどのスルホン酸型のアニオン性界面活性剤が好ましい。ノニオン性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのアルキルフェニルエーテル型、ポリオキシエチレンラウレートなどのアルキルエステル型、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルなどのアルキルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミドなどのアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルなどのポリプロピレングリコールエーテル型、オレイン酸ジエタノールアミドなどのアルカノールアミド型、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルなどのアリルフェニルエーテル型などのノニオン性界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤の1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
界面活性剤の添加量としては、エチレン変性PVA100質量部に対して0.01〜1質量部が好ましく、0.02〜0.5質量部がさらに好ましい。0.01質量部より少ないと、製膜性や剥離性向上の効果が現れにくく、1質量部より多いと、界面活性剤がエチレン変性PVAフィルムの表面に溶出してブロッキングの原因になり、取り扱い性が低下する場合がある。
偏光子の作製に用いられる延伸前のエチレン変性PVAフィルムは厚みが10〜50μmであることが好ましく、20〜40μmであることがさらに好ましい。厚みが10μmより小さいと、フィルム強度が低すぎて均一な延伸が行いにくく、偏光子の色斑が発生しやすい。厚みが50μmを超えると、エチレン変性PVAフィルムを一軸延伸して偏光子を作製した際に端部のネックインによる厚み変化が発生し易くなり、偏光子の色斑が強調されやすいので好ましくない。
また、エチレン変性PVAフィルムから偏光子を製造するには、例えばエチレン変性PVAフィルムを染色、一軸延伸、固定処理、乾燥処理をし、さらに必要に応じて熱処理を行えばよく、染色、一軸延伸、固定処理の操作の順番に特に制限はない。また、一軸延伸を二回またはそれ以上行っても良い。
染色は、一軸延伸前、一軸延伸時、一軸延伸後のいずれでも可能である。染色に用いる染料としては、ヨウ素−ヨウ化カリウムや二色性染料などが、1種または2種以上の混合物で使用できる。通常染色は、PVAフィルムを上記染料を含有する溶液中に浸漬させることにより行うことが一般的であるが、PVAフィルムに混ぜて製膜するなど、その処理条件や処理方法は特に制限されるものではない。
一軸延伸は、湿式延伸法または乾熱延伸法が使用でき、ホウ酸水溶液などの温水中(前記染料を含有する溶液中や後記固定処理浴中でもよい)または吸水後のエチレン変性PVAフィルムを用いて空気中で行うことができる。延伸温度は、特に限定されず、エチレン変性PVAフィルムを温水中で延伸(湿式延伸)する場合は30〜90℃が好ましく、また乾熱延伸する場合は50〜180℃が好ましい。また一軸延伸の延伸倍率(多段の一軸延伸の場合には合計の延伸倍率)は、偏光子の偏光性能の点から4倍以上が好ましく、特に5倍以上が最も好ましい。延伸倍率の上限は特に制限はないが、8倍以下であると均一な延伸が得られやすいので好ましい。延伸後のフィルムの厚さは、5〜20μmが好ましく、5〜15μmがより好ましい。
エチレン変性PVAフィルムへの上記染料の吸着を強固にすることを目的に、固定処理を行うことが多い。固定処理に使用する処理浴には、通常、ホウ酸および/またはホウ素化合物が添加される。また、必要に応じて処理浴中にヨウ素化合物を添加してもよい。
得られた偏光子の乾燥処理は、30〜150℃で行うのが好ましく、50〜150℃で行うのがより好ましい。
以上のようにして得られた偏光子は、通常、その両面または片面に偏光板保護フィルムが貼合されて偏光板として使用される。貼合する際に用いられる接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤などを挙げることができるが、なかでもPVA系の接着剤が好ましく用いられる。
〈接着剤〉
本発明のポリエステルフィルム及びシクロオレフィン樹脂フィルムとポリビニルアルコール系偏光子とを貼り合わせるのに使用される接着剤としては、十分な接着性を持ち、透明で、偏光機能を阻害しないものであって水性のものが好ましく用いられ、例えば、ポリエステル系接着剤、ポリアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤などが挙げられる。特にウレタン樹脂系の接着剤が好ましい。
ウレタン樹脂としては、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、アクリル系ウレタン樹脂などが挙げられるが、なかでも、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂が好適である。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなることから、水系の接着剤として好適である。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂それ自体は公知であり、例えば、特開平7−97504号公報に、フェノール系樹脂を水性媒体中に分散させるための高分子分散剤の例として記載されている。このようなポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、例えば、以下の方法で製造することができる。
(1)親水性基含有化合物(A)、ポリエステルポリオール(B)及びポリイソシアネート(C)を反応させて得られた親水性基含有ポリウレタン樹脂を水中に乳化して、アイオノマー樹脂を得る方法;
(2)親水性基含有化合物(A)、ポリエステルポリオール(B)及びポリイソシアネート(C)を反応させて親水性基が導入された末端イソシアナト基含有ウレタンポリマーを水に分散させ、ポリアミンと反応させて、アイオノマー樹脂を得る方法など。
ここで用いる親水性基含有化合物(A)としては、例えば、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、スルホコハク酸、スルファニル酸、2,4−ジアミノトルエンスルホン酸のようなスルホン酸基含有化合物、2,2−ジメチロールプロピオン酸、ジヒドロキシマレイン酸、3,4−ジアミノ安息香酸のようなカルボン酸基含有化合物、ポリマー中に少なくとも1個の活性水素を有するポリオキシエチレングリコール又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオール(B)は、グリコール成分と酸成分との脱水縮合反応によって得られるポリエステルのほか、ε−カプロラクトンのような環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル、又はこれらの共重合ポリエステルであることができる。ポリエステルポリオールに用いるグリコール成分には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量 300〜6,000)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン及びそれらのアルキレンオキシド付加体などがある。また酸成分には、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、及びこれらジカルボン酸の無水物やエステル形成性誘導体、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体などがある。
なお、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、上記のポリエステルポリオールに加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の高分子量ポリオール成分や低分子量の活性水素含有化合物を併用したものであってもよい。高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオールなどが挙げられる。また低分子量の活性水素含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンの如きポリヒドロキシ化合物、エチレンジアミン、ピペラジンの如きジアミン化合物などが挙げられる。なかでも、低分子量の活性水素含有化合物を併用することは、好ましい形態である。
前記のポリイソシアネート(C)は、分子内にイソシアナト基を少なくとも2個有する化合物であって、具体的には例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
これら親水性基含有化合物(A)、ポリエステルポリオール(B)及びポリイソシアネート(C)の反応は、無溶媒下で行うこともできるが、有機溶媒中で行ってもさしつかえない。得られた樹脂は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような不揮発性塩基、トリエチルアミンやジメチルエタノールアミンのようなアミン類、又はアンモニアで中和し、そこに水を添加することにより、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂の水性分散液が得られる。
ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、反応に有機溶媒を用いるなどして有機溶媒を含有する状態で得られる場合には、その有機溶媒を蒸留などにより除去してから用いるのが有利である。このウレタン樹脂はアイオノマー型のため、水中で極めて微細でかつ安定なコロイドが形成でき、有機溶媒を含まない水系接着剤となる。
ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、重量平均分子量が5,000以上であることが好ましく、さらに好ましくは重量平均分子量が10,000以上300,000以下である。その重量平均分子量が5,000以下では、接着層の強度が充分に得られず、また、300,000より高いと、それを水分散液としたときの粘度が高くなり、取り扱いにくくなる。
かかるポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂が水中に分散した状態で、水系接着剤とされる。この水系接着剤の粘度は、2,000mPa・sec以下であるのが取り扱い上好ましく、さらには1,000mPa・sec以下、とりわけ500mPa・sec以下であるのが一層好ましい。粘度が低いほど接着剤の塗布が行いやすく、また、得られた偏光板の外観も良好なものとなる。この水系接着剤におけるポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂の固形分濃度は、粘度と接着強度の観点から、10〜70質量%の範囲が好ましく、とりわけ、20質量%以上、また50質量%以下であるのが好ましい。
ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂の水分散液にはさらに、ポリエチレングリコールやポリオキシエチレンなど、また界面活性剤などが添加されていてもよい。さらには、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール系樹脂などの水溶性樹脂が添加されていてもよい。
本発明で用いるのに好適な市販のポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂として、例えば、大日本インキ化学工業(株)から販売されている“ハイドラン AP−20”、“ハイドラン APX−101H”などが挙げられる。
本発明では、以上説明したようなウレタン樹脂、好ましくはポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂に加えて、オキセタン化合物及びエポキシ化合物を含有する水系接着剤を用いることができる。
接着性向上のため、コロナ放電処理、グロー放電処理、紫外線処理、火炎処理、大気圧ガス中放電プラズマ処理、薬液処理などの各種表面処理を必要に応じて施すことができる。さらに接着性向上の為、下引層を塗設してもよい。下引層としては偏光子との接着性に優れる親水性コロイド層が特に好ましい。
例えば、偏光板保護フィルムとして偏光子との接着性を向上させるために特開2000−356714号公報記載の方法等でプラズマ処理を行うことによって、接着性をさらに向上させることができる。
〈表示装置〉
本発明の偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた本発明の表示装置を作製することが出来る。本発明の光学フィルムは反射型、透過型、半透過型LCD或いはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。また、本発明の光学フィルムは反射防止層の反射光の色むらやぎらつきが著しく少なく、また、平面性に優れ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示装置にも好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、色むら、ぎらつきや波打ちむらが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
〈液晶表示装置〉
本発明に係る偏光板を、液晶セルの少なくとも一方の面に配置して貼合し、液晶表示装置を作製することが出来る。
上記のように作製した本発明に係る偏光板を液晶表示に使用した場合には、15型以上の大画面の液晶表示装置であっても、ムラを生じず、画面周辺部での白抜けなどもなく、安定した視野角特性が長期間維持され、かつ、正面コントラストも向上し、特にMVA(マルチドメインバーティカルアライメント)型液晶表示装置では顕著な効果が認められる。また、TN,STN,VA,OCB,HAN、IPS等の各種駆動方式を採用した液晶表示装置の画像特性を向上させることが出来る。