JP2006212917A - 光学フィルムの製造方法、光学フィルム、偏光板及び表示装置 - Google Patents

光学フィルムの製造方法、光学フィルム、偏光板及び表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、光学フィルムの製造において乾燥工程でマイクロ波を照射するフィルム乾燥を行うことにより、寸法安定性、コーナームラ(光漏れ)、平面性に優れ、かつ湿度変動時のリターデーション安定性を改善出来る光学フィルムの製造方法、その製造方法によって製造された光学フィルム、それを用いた偏光板及び表示装置を提供することにある。
【解決手段】 総アシル基の置換度が2.7以下であるセルロースの低級脂肪酸エステルを含有する光学フィルムの製造方法において、乾燥工程でマイクロ波を照射するフィルム乾燥を行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、光学フィルムの製造方法、その製造方法によって製造された光学フィルム、それを用いた偏光板及び表示装置に関し、より詳しくは、光学フィルムの製造において乾燥工程でマイクロ波を照射するフィルム乾燥を行うことにより、寸法安定性、コーナームラ(光漏れ)、平面性に優れ、かつ湿度変動時のリターデーション安定性を改善出来る光学フィルムの製造方法、その製造方法によって製造された光学フィルム、それを用いた偏光板及び表示装置に関する。
近年、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、時計や電卓等に使用される液晶ディスプレー、プラズマディスプレイ、有機ELは過酷な環境下で使用されることが多くなってきている。従って、これに使用する液晶ディスプレーの偏光板保護フィルム、位相差フィルム、プラズマディスプレイパネル用前面フィルター、有機ELパネル用前面フィルム等の光学フィルムについても、当然過酷な環境下でも特性が変化しないよう、例えば、高温または高湿下で物性的な劣化のないことや寸法安定性に優れていることなどの耐久性が要求されている。
一方、従来から液晶ディスプレーは、視野角が狭いことが問題とされ、視野角を拡大するため、様々な位相差フィルムを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
これら位相差フィルムは、液晶ディスプレーの表示性能(コントラスト、色味、階調)に強く影響する為、特に湿度が変化した時の寸法安定性や、リターデーションの安定性に優れていることが当然要求される。
最近では光学異方性を高める研究がなされ、リターデーション上昇剤として円盤状化合物を用いること(例えば、特許文献6参照。)や、棒状化合物を導入すること(例えば、特許文献7参照。)、或いはこれらのリターデーション上昇剤に加えて、エチレン性不飽和モノマーを特定量含有させ、重合させることにより熱等の歪みによる変動に対しても優れるという提案(例えば、特許文献8参照。)がされている。
これらの手段は、フィルムに対して高倍率な延伸処理操作をしなくても、所望のリターデーションが再現よく得られることもあり、湿度が変化した時の寸法安定性や光漏れ(コーナームラ、額縁ムラともいう)等の問題をある程度改善することが出来るが、未だその効果は十分ではなく、湿度が変化した時の表示品位の変動や光漏れ等の問題を十分に解決出来ていない。特に、17インチ以上の大型パネルに、上記の位相差フィルムを保護フィルムに用いた偏光板を装着したところ、湿度変動による表示品位の変動や光漏れが完全には無くならないことが判明した。
また、上記円盤状化合物や棒状化合物は湿度が変化した時にブリードアウトし易いという欠点も認められた。
更に、位相差フィルムは、液晶セルを光学的に補償する機能を有するのみでなく、保護フィルムとして使用環境の変化による平面性等の耐久性にも優れている必要がある。
特開平4−229828号公報 特開平4−258923号公報 特開平6−75116号公報 特開平6−174920号公報 特開平6−222213号公報 特開2001−166144号公報 特開2002−267847号公報 特開2004−26925号公報
従って本発明の目的は、光学フィルムの製造において乾燥工程でマイクロ波を照射するフィルム乾燥を行うことにより、寸法安定性、コーナームラ(光漏れ)、平面性に優れ、かつ湿度変動時のリターデーション安定性を改善出来る光学フィルムの製造方法、その製造方法によって製造された光学フィルム、それを用いた偏光板及び表示装置を提供することにある。
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
(請求項1)
総アシル基の置換度が2.7以下であるセルロースの低級脂肪酸エステルを含有する光学フィルムの製造方法において、乾燥工程でマイクロ波を照射するフィルム乾燥を行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
(請求項2)
総アシル基の置換度が2.7以下であるセルロースの低級脂肪酸エステルと反応性金属化合物の加水分解物または重縮合物、またはSiO2微粒子とを含有する光学フィルムの製造方法において、乾燥工程でマイクロ波を照射するフィルム乾燥を行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
(請求項3)
前記反応性金属化合物がSi、Ti、ZrまたはAlのアルコキシドであることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルムの製造方法。
(請求項4)
総アシル基の置換度が2.7以下であるセルロースの低級脂肪酸エステルと多価アルコールエステル系可塑剤とを含有する光学フィルムの製造方法において、乾燥工程でマイクロ波を照射するフィルム乾燥を行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
(請求項5)
総アシル基の置換度が2.7以下であるセルロースの低級脂肪酸エステルとクエン酸エステル系可塑剤またはポリエステル系可塑剤とを含有する光学フィルムの製造方法において、乾燥工程でマイクロ波を照射するフィルム乾燥を行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
(請求項6)
前記マイクロ波を照射するフィルム乾燥を延伸工程の後の乾燥工程で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
(請求項7)
前記マイクロ波を照射するフィルム乾燥の後に、更に熱風によるフィルム乾燥を行う乾燥工程を設けることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
(請求項8)
前記光学フィルムを構成する溶媒以外の添加剤材料の少なくとも1種を予めマイクロ波を照射することにより乾燥することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
(請求項9)
総アシル基の置換度が2.7以下であるセルロースの低級脂肪酸エステルを含有する光学フィルムの製造方法において、マイクロ波発生器、導波管、マイクロ波オーブン、反射板、及び電波吸収体を備えたマイクロ波照射装置で該光学フィルムの乾燥を連続的に行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
(請求項10)
前記マイクロ波照射装置がマイクロ波攪拌機構を備えることを特徴とする請求項9に記載の光学フィルムの製造方法。
(請求項11)
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法により製造されたことを特徴とする光学フィルム。
(請求項12)
請求項11に記載の光学フィルムを少なくとも一方の面に用いたことを特徴とする偏光板。
(請求項13)
請求項11に記載の光学フィルムまたは請求項12に記載の偏光板を用いたことを特徴とする表示装置。
本発明により、光学フィルムの製造において乾燥工程でマイクロ波を照射するフィルム乾燥を行うことにより、寸法安定性、コーナームラ(光漏れ)、平面性に優れ、かつ湿度変動時のリターデーション安定性を改善出来る光学フィルムの製造方法、その製造方法によって製造された光学フィルム、それを用いた偏光板及び表示装置を提供することが出来る。
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の光学フィルム(セルロースエステルフィルムとも言う)の製造方法は、総アシル基の置換度が2.7以下であるセルロースの低級脂肪酸エステルを含有する光学フィルムの製造方法において、乾燥工程でマイクロ波を照射するフィルム乾燥を行うことが特徴である。
即ち、本発明者は上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特別なリターデーション上昇剤を用いなくても、通常の延伸処理等によりリターデーションが発現し易い総アシル基の置換度が低いセルロースエステルを光学フィルムの材料として用い、かつ該光学フィルムの製造方法において、総アシル基の置換度が低いセルロースエステルの欠点である含水し易く通常の乾燥では水が飛びにくいことを乾燥工程でマイクロ波を照射するフィルム乾燥を行うことにより改善し、フィルム中の残存水分を除去する為に従来行われていた高温乾燥に起因する寸法安定性、平面性、リターデーション安定性の劣化を総合的に改善出来ることを見出し、本発明を成すに至った次第である。
また、リターデーション発現させ液晶パネルの視野角を拡大させるために適当な位相差板とするための延伸処理を行うとフィルム内に応力が残り寸法安定性が劣化し易い。この応力を緩和するために乾燥・熱処理温度を高くするとリタデーションが低下する弊害があるが、ここでマイクロ波乾燥を行うとフィルム中のセルロースの低級脂肪酸エステルポリマー分子はそのままの状態でフィルム中の水分のみ除去される為か、リターデーションは影響を受けず、しかも脱水されるのでポリマーが密な状態になり寸法安定性の改良効果が特に大きいことを見出した。
更に反応性金属化合物の加水分解物または重縮合物、特に二酸化ケイ素を含有させるとこれらとセルロースの低級脂肪酸エステルと相互作用が働き寸法安定性が増すが、一方で含水率が高くなる傾向にある。この場合にマイクロ波で乾燥を行うと効果的に脱水が行え、更に寸法安定性を改善することが出来る。
また、可塑剤によっては、特にクエン酸エステル系やポリエステル系の可塑剤の場合には可塑剤の添加によって含水率は低下するものの通常の乾燥ではポリマー中の水が抜けにくくなることがある。この場合にもマイクロ波乾燥を行うことでポリマー中の脱水が促進され寸法安定性の改善により大きな効果を得ることが出来る。
光学フィルムの製造においてマイクロ波を照射することは公知であり、例えば、特開2002−82225号公報請求項7に記載のフィルムの残留溶媒を規定し、その範囲内でマイクロ波照射を施しフィルムを巻き取る方法、特開2002−316331号公報に記載の塩化メチレンを用いないフィルムの製造において、ポリマーを溶媒に溶解または分散させたドープを流延ダイから流延支持体上に流延してフィルムを製造する際にマイクロ波を照射して該ドープを高濃度に作製する方法が開示されており、更に該公報の請求項26において該フィルムを乾燥する際にマイクロ波を照射することが述べられているが、本発明に係る総アシル基の置換度が2.7以下であるセルロースの低級脂肪酸エステルを含有する光学フィルムの製造方法についてはいずれも全く言及されておらず、また本発明の特徴である寸法安定性、コーナームラ(光漏れ)、平面性、及び湿度変動時のリターデーション安定性の改善効果については示唆されていない。
以下、本発明を各要素毎に詳細に説明する。
(マイクロ波照射)
本発明は、乾燥工程でマイクロ波を照射するフィルム乾燥を行うことが特徴であり、乾燥工程とは下に示すテンター搬送・乾燥工程及びロール搬送・乾燥工程を言う。
図1は本発明に係るフィルムの溶液流延製膜法の好ましい例を示す模式図である。図1(a)は流延後、ロール搬送・乾燥工程で乾燥する場合の模式図である。図1(b)は流延後、ロール搬送・乾燥工程で乾燥し、その後テンター搬送・乾燥工程で乾燥を行う場合の模式図である。図1(c)は流延後、テンター搬送・乾燥工程で乾燥し、その後ロール搬送・乾燥工程で乾燥を行う場合の模式図である。図1(d)は流延後、ロール搬送・乾燥工程で乾燥し、その後テンター搬送・乾燥工程で乾燥し、その後ロール搬送・乾燥工程で乾燥を行う場合の模式図である。
尚、本発明において、テンター搬送・乾燥工程及びロール搬送・乾燥工程を含む工程とは、支持体から剥離されたフィルムを乾燥して巻き取る迄の工程のどこかに、フィルムの乾燥伸縮率を調整するテンター搬送・乾燥工程及びロール搬送・乾燥工程を有する工程をいう。テンター搬送・乾燥工程とはテンター搬送装置で搬送しながら同時に乾燥を行い、乾燥伸縮率を調整する工程を言い、ロール搬送・乾燥工程とはロール搬送装置で搬送しながら同時に乾燥を行い、乾燥伸縮率を調整する工程をいう。
本発明では、後述するマイクロ波加熱装置を上記テンター搬送・乾燥工程、またはロール搬送・乾燥工程のいずれかに設置し乾燥を行うことが必要である。また、乾燥に当たっては従来通りの乾燥風による乾燥をマイクロ波による乾燥と併用してもよい。マイクロ波乾燥装置は、図1の5で示されるテンター搬送・乾燥工程、または8で示されるロール搬送・乾燥工程の各々の前後に接続して行ってもよいし、内部に設置して行ってもよい。
図1において、1はエンドレスで走行する支持体を示す。支持体としては鏡面帯状金属が使用されている。2はセルロースエステル樹脂を溶媒に溶解したドープを、支持体1に流延するダイスを示す。3は支持体1に流延されたドープが固化したフィルムを剥離する剥離点を示し、4は剥離されたフィルムを示す。5はテンター搬送・乾燥工程を示し、51は排気口を示し、52は乾燥風取り入れ口を示す。尚、排気口51と乾燥風取り入れ口52は逆であっても良い。6は張力カット手段を示す。張力カット手段としてはニップロール、サクションロール等が挙げられる。尚、張力カット手段は各工程間に設けても構わない。
8はロール搬送・乾燥工程を示し、81は乾燥箱を示し、82は排気口を示し、83は乾燥風取り入れ口を示す。尚、排気口82と乾燥風取り入れ口83は逆であっても良い。84は上部搬送用ロールを示し、85は下部搬送用ロールを示す。該搬送用ロール84、85は上下で一組で、複数組から構成されている。7は巻き取られたロール状のフィルムを示す。
図1(d)で示される工程において、テンター搬送・乾燥工程5の前のロール搬送・乾燥工程を第1ロール搬送・乾燥工程と呼び、テンター搬送・乾燥工程5の後のロール搬送・乾燥工程を第2ロール搬送・乾燥工程と呼ぶ。尚、図1(a)〜(d)では示されていない冷却工程を、巻き取る前に必要に応じて設けても良い。
本発明においては、上述したいずれの溶液流延製膜法による形態でセルロースエステルフィルムを製造しても構わない。
本発明に係るマイクロ波は、マグネトロン、クライストロンなどの装置により発生させることが出来る。マイクロ波発生装置は電源ユニットと発振ユニットが別体になっていても良いし、一体型でも良く、電源には高周波インバーター方式を用いることで効率をアップおよび小型軽量化することができる。発振器の冷却方式は空冷、水冷いずれでもかわまないが、水冷方式の方が冷却効率が高く、安定した出力を得ることができる。また、発振器にPLL(Phase Locked Loop)方式を用い、ソリッドステートアンプと組合せることでより高精度、高安定な出力を得ることもできる。
マイクロ波の周波数はフィルム中の水分を乾燥するために水分子に吸収され易い0.9〜20GHzが好ましいが、通常は電波法やマイクロ波電子管の制約により2.45GHzの周波数のマイクロ波発生装置が一般的である。但し、他の電子機器(例えば、通信装置)などへの影響がなければ0.915GHzの周波数のマイクロ波を用いることも出来る。
出力は乾燥するフィルムの厚みや幅、搬送速度に応じて調整する。単位時間(分)当たりにマイクロ波を照射出来る面積は搬送速度(m/分)によって決まり、搬送速度×光学フィルムの幅が単位時間(分)当たりにマイクロ波を照射出来る面積になる。40〜120μmの光学フィルムの場合はこの面積1m2当たりのマイクロ波の照射量が0.1〜50kW・分、更に0.2〜20kW・分であることが好ましい。
マイクロ波発生装置で発生させたマイクロ波は導波管を用いてマイクロ波オーブンに導くことが出来る。マイクロ波発生装置は必要に応じて複数個設置してもよい。
導波管の長さは特に制限されるものではないが、極端に長いとマイクロ波の効率が落ちたり整合が取りにくくなったりするので、各装置のレイアウト上無理のない範囲で短くすることが好ましい。また、直線状のもの以外に必要に応じてテーパー状のもの、曲線状のものを用いることができる。導波管の材質は電波を反射するものであれば特に制限されないが、加工等のやり易さから金属が好ましい。
マイクロ波発生装置とオーブンの間にはアイソレータや整合器、パワーモニターを設置し、パワーモニターでマイクロ波発生装置の出力をモニターしてフィードバックをかけることが好ましい。アイソレータは発振器とオーブンの間に挿入しオーブンからの反射電力を吸収して、発振器を安定に動作させるために使用する。アイソレーション能力は10dB以上、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio、電圧定在波比)は1以下であることがアイソレータの効率の点から好ましい。またその冷却方式は空冷、水冷いずれでもかまわない。
整合器は反射電力を極力小さくさせて、発振器から出たマイクロ波をオーブン内のフィルムに効率よく吸収させるために使用し、パワーモニタと併用することが好ましい。整合器を手動で調整することでマイクロ波加熱装置の整合をとることができるが、この操作を自動化しても良い。パワーモニタは発振器からオーブンに向かう入射電力、オーブンから戻ってくる反射電力を同時に測定できることが好ましい。
オーブン内はその中でフィルムを搬送出来るようにする。必要に応じてフィルムのサポートロールを設置する。
また、オーブン内でのマイクロ波の照射が均一になるようにマイクロ波攪拌装置、具体的にはスターラーファンなどを設置しても良い。更に、出入り口には必要に応じてマイクロ波の反射板や吸収板を設置することが好ましい。反射板を設けることでマイクロ波をより効率的に利用することができる。また、吸収板と併用することで外部へのマイクロ波の漏れをより効果的に防止することができる。形状、大きさはオーブンの形状に合わせて調整することが好ましい。また、オーブンのフィルム入口、出口にフィルムをニップするロールを反射板として併用することができる。このようにすることでマイクロ波の漏れ減少、反射効率のアップを行うことができる。
図2は本発明の好ましいマイクロ波乾燥装置の一例を示した模式図である。
搬送ロール106により連続的に搬送されてくるフィルム4をマイクロ波オーブン101内で、マイクロ波発生器102より発生したマイクロ波を導波管103を通し、フィルム面に当て乾燥する。その際マイクロ波の利用効率を上げる為に反射板104を設けること、また余分なマイクロ波を吸収する電波吸収体105を設けることが好ましい。
更にフィルム4の加熱を、より均一かつ効率良くマイクロ波照射により行う為に、撹拌翼107で撹拌しながらマイクロ波を照射すること、揮発成分を除去する為の排気口110を設けることが好ましい。
尚、図2には、マイクロ波発生装置102で発生したマイクロ波を導波管103を通してマイクロ波オーブン101に照射している実施形態を示したが、本発明はこの形態に限定されない。例えば、マイクロ波オーブン101とマイクロ波発生装置102とが一体として構成されている乾燥装置であれば、必ずしも導波管103は必要ではない。
図2に示したマイクロ波乾燥工程は、前述した従来の乾燥方法と併用することも可能である。この際には、従来の乾燥法とマイクロ波乾燥によるフィルムの加熱は、その順番はどちらでも良い。即ち、従来の乾燥法で乾燥した後にマイクロ波乾燥を行っても良いし、マイクロ波乾燥の後に従来の乾燥法で乾燥しても良い。更に、従来の乾燥法と同時にマイクロ波乾燥を行う方法であっても良い。特に、本発明の請求項6で示すようにマイクロ波を照射するフィルム乾燥を延伸(テンター)工程の後の乾燥工程で行うと、セルロースエステル分子が伸びた状態でマイクロ波による乾燥が行われる為、短時間で水分の除去が可能となり好ましい。マイクロ波による乾燥直後のセルロースエステルフィルム中の残存水分量は、本発明の効果を得る上で2質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.5質量%以下に乾燥することが好ましい。
いずれにしても通常乾燥とマイクロ波乾燥とを併用するする場合は、比較的低温度の乾燥風でよい為、高温乾燥する際によく見られる押され等の故障を防ぐことが出来る。また、同様に高温乾燥によるリターデーションの低下を防ぐことも可能になる為、目標とするリターデーションが得やすく、熱による変動も改善出来る。
図3に本発明に特に好ましいマイクロ波乾燥装置を組み込んだフィルム製膜装置の例を示す。
図2には、連続的に搬送されるフィルムにマイクロ波を照射する連続乾燥の態様を示したが、本発明に係るマイクロ波照射は、光学フィルムを構成する溶媒以外の添加剤材料の少なくとも1種を予めマイクロ波を照射することにより乾燥することも原材料からの水分の持ち込みを少なくする観点から好ましい。
光学フィルムの製造に用いる材料をマイクロ波で乾燥する場合に、マイクロ波乾燥装置としてはバッチ式、コンベア式いずれを用いても構わない。この材料の乾燥方法は固体材料に好適に用いることが出来る。マイクロ波の周波数は材料中の水分を乾燥するために水分子に吸収され易い周波数が選ばれ、0.9〜20GHzが好ましい。照射する時間、出力はマイクロ波照射装置の大きさや乾燥する材料の量によって調整する。出力は0.5〜10kW、照射時間は10秒〜10分が好ましく、一般的には材料1g当たり、出力×照射時間の積が1〜500kW・分、更に2〜100kW・分が好ましい。材料の種類によっては照射中に攪拌を行っても良い。乾燥を行った材料は密閉出来る容器内に保管し乾燥空気や窒素でパージを行って、使用する直前まで乾燥状態を維持出来るようにする。或いは、材料の投入経路の途中にコンベア式のマイクロ波照射装置を設置して、乾燥しながら材料の投入を行っても良い。
光学フィルムを構成する溶媒以外の添加剤材料とは、後述するセルロースエステル、可塑剤、紫外線吸収剤、安定剤の中で粉体状態のものを意味し、特にセルロースエステル、可塑剤、紫外線吸収剤に適用することが好ましい。上記添加剤材料108は、図4で示すコンベアベルト109を設置したコンベアオーブン式照射装置によりマイクロ波を照射乾燥出来る。
(セルロースエステル)
本発明に用いられるセルロースエステルは、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであり、特に炭素数が6以下の低級脂肪酸エステルであることが好ましい。例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートフタレート等や、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが出来る。上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは混合して用いることも出来る。
セルローストリアセテートの場合には、総アシル基置換度(アセチル基置換度)2.5〜2.7のものが好ましく用いられる。
セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルであることが好ましい。
式(I) 2.2≦X+Y≦2.7
式(II) 0≦X≦2.7
中でも1.8≦X≦2.6、0.1≦Y≦0.9のセルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度=X+Y)が好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することが出来る。
これらアシル基置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することが出来る。
本発明に用いられるセルロースエステルの分子量は、数平均分子量(Mn)で80000〜200000のものが用いられる。100000〜200000のものが更に好ましく、150000〜200000が特に好ましい。
また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、Mw/Mnは、1.4〜3.0の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.7〜2.2の範囲である。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することが出来る。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することが出来る。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが出来る。特に綿花リンター(以下、単にリンターとすることがある)、木材パルプから合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが好ましい。
また、これらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステルは、セルロース原料をアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて常法により反応させて得ることが出来る。
アセチルセルロースの場合、酢化率を上げようとすれば、酢化反応の時間を延長する必要がある。但し、反応時間を余り長くとると分解が同時に進行し、ポリマー鎖の切断やアセチル基の分解などが起こり、好ましくない結果をもたらす。従って、酢化度を上げ、分解をある程度抑えるためには反応時間はある範囲に設定することが必要である。反応時間で規定することは反応条件が様々であり、反応装置や設備その他の条件で大きく変わるので適切でない。ポリマーの分解は進むにつれ、分子量分布が広くなってゆくので、セルロースエステルの場合にも、分解の度合いは通常用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値で規定出来る。即ちセルローストリアセテートの酢化の過程で、余り長過ぎて分解が進み過ぎることがなく、かつ酢化には十分な時間酢化反応を行わせしめるための反応度合いの一つの指標として用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値を用いることが出来る。
セルロースエステルの製造法の一例を以下に示すと、セルロース原料として綿花リンター100質量部を解砕し、40質量部の酢酸を添加し、36℃で20分間前処理活性化をした。その後、硫酸8質量部、無水酢酸260質量部、酢酸350質量部を添加し、36℃で120分間エステル化を行った。24%酢酸マグネシウム水溶液11質量部で中和した後、63℃で35分間ケン化熟成し、アセチルセルロースを得た。これを10倍の酢酸水溶液(酢酸:水=1:1(質量比))を用いて、室温で160分間攪拌した後、濾過、乾燥させてアセチル置換度2.75の精製アセチルセルロースを得た。このアセチルセルロースはMnが92000、Mwが156000、Mw/Mnは1.7であった。同様にセルロースエステルのエステル化条件(温度、時間、攪拌)、加水分解条件を調整することによって置換度、Mw/Mn比の異なるセルロースエステルを合成することが出来る。
尚、合成されたセルロースエステルは、精製して低分子量成分を除去したり、未酢化または低酢化の成分を濾過で取り除くことも好ましく行われる。
また、混酸セルロースエステルの場合には、特開平10−45804号公報に記載の方法で反応して得ることが出来る。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することが出来る。
また、セルロースエステルは、セルロースエステル中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらは製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成することにより不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。鉄(Fe)成分については、1ppm以下であることが好ましい。カルシウム(Ca)成分については、地下水や河川の水等に多く含まれ、これが多いと硬水となり、飲料水としても不適当であるが、カルボン酸や、スルホン酸等の酸性成分と、また多くの配位子と配位化合物即ち、錯体を形成し易く、多くの不溶なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成する。
カルシウム(Ca)成分は60ppm以下、好ましくは0〜30ppmである。マグネシウム(Mg)成分については、やはり多過ぎると不溶分を生ずるため、0〜70ppmであることが好ましく、特に0〜20ppmであることが好ましい。鉄(Fe)分の含量、カルシウム(Ca)分含量、マグネシウム(Mg)分含量等の金属成分は、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行った後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析を行うことによって求めることが出来る。
(反応性金属化合物)
本発明では反応性金属化合物の加水分解物または重縮合物を用いることが、本発明の効果を得る上で好ましい。
本発明に係る反応性金属化合物としては、例えば金属アルコキシド、金属ジケトネート、金属アルキルアセトアセテート、金属イソシアネート、反応性の金属ハロゲン化物が挙げられ、好ましくは金属種がSi、Ti、ZrまたはAlの金属アルコキシドである。
このような加水分解物または重縮合可能な反応性金属化合物は、中心金属をM、その原子数をq、加水分解されない置換基をA、その置換基数をp、加水分解可能な置換基をB、その置換基数をrとすると、理想的には下記の式(1)のように反応が完結し、金属酸化物が得られる。
式(1) ApMqBr → ApMqOr/2
このように反応が完結したと仮定した、ApMqOr/2の質量を、無機物の含有量として算出する。
本発明では金属酸化物の含有量は、フィルムを500℃に加熱燃焼させた後の残渣に含まれる金属酸化物の質量をA、燃焼前のフィルムの質量をBとした時にA/B×100の式で表す。金属酸化物の質量は、セイコー電子工業(株)製SPS−4000を用いてICP−AES分析法(誘導結合プラズマ発行分光分析)により測定することが出来る。この際灰中に金属酸化物以外の成分(例えばリン等)が含まれている場合は公知の方法で灰中の金属酸化物量を測定することが出来る。
反応性金属化合物の重縮合物の含有量としては、光学フィルムの全質量に対して、0.1〜10質量%が好ましい。より好ましくは、0.5〜10質量%である。更に好ましくは0.5〜5質量%である。無機物の添加量が0.1質量%より少ないと光学フィルムの物性改良効果が認められなくなり、10質量%を越えると光学フィルムが脆くなり、製膜後の再溶解性が著しく低下し、生産性が低下する。
加水分解または重縮合可能な反応性金属化合物の重縮合物の平均分子量(重合度)としては、2000以下が望ましい。2000を超える場合は、製膜後のフィルムのヘイズが上昇し、物性改良効果を確認出来なくなる。
本発明の光学フィルム中の反応性金属化合物の重縮合物の平均分子量の測定は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定出来るので、これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比を計算することが出来る。測定条件は以下の通りである。
溶媒 :テトラヒドロフラン
カラム :TSK G2000(東ソ(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:40℃
試料濃度 :0.1質量%
検出器 :RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ :L6000(日立製作所(株)製)
流量 :1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500〜10000の8サンプルによる校正曲線を使用した。
本発明の光学フィルム中の反応性金属化合物の重縮合物の平均粒子径の測定は透過型電子顕微鏡観察、X線小角散乱測定により得ることが出来る。好ましいのはX線小角散乱測定により求める方法である。X線小角散乱法の詳細については例えばX線回折ハンドブック第3版(理学電機株式会社2000年発行)を参照することが出来る。よく知られているように試料中に電子密度の異なる領域が存在すると入射X線方向に散漫な散乱が観測される。この散乱は散乱角0〜5°程度の範囲に観測されるため、これらの散乱は小角散乱と呼ばれる。この散乱曲線に対し、Guinierプロット或いはFankuchen法を用いて重縮合物の平均粒子径を測定する。
本発明における光学フィルム中の反応性金属化合物重縮合物の好ましい平均粒子径は1〜200nmである。より好ましくは1〜100nm更に好ましくは1〜50nmで、1〜20nmが最も好ましい。本発明の重縮合物は従来の金属酸化物微粒子をセルロースエステル溶液中に分散して添加する方法に比べて凝集体を形成しにくく、小粒径の状態を安定に得られる点で優れている。このように液相法で調製した微粒子が光学フィルム中に含まれることが好ましい。
加水分解または重縮合可能な反応性金属化合物としては、p=0であるような、全てが加水分解可能な置換基で置換されていることが好ましいが、基材フィルムの透湿度を低減する観点から、加水分解されない置換基によって該金属1原子当たり1つまたは2つ、或いは3つ置換されている化合物が含まれていても良い。このような加水分解されない置換基を有する金属化合物の添加量としては、添加される金属化合物の50モル%以下が好ましい。また、上記添加量の範囲で2種以上の異なる種類の金属アルコキシドを併用しても良い。
このような加水分解されない置換基としては、置換または無置換のアルキル基、または置換または無置換のアリール基が好ましく、該アルキル基またはアリール基の置換基としては、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)、複素環基(例えばフラン、チオフェン、ピリジン等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、アシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルキルチオ基、グリシジル基、ビニル基、フッ素原子含有アルキル基またはフッ素原子含有アリール基等が挙げられる。
本発明に用いられる加水分解または重縮合が可能な反応性金属化合物としては、ケイ素化合物として、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシプロポキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトライソシアナートシラン等が挙げられる。
また加水分解されない置換基を有するケイ素化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、アセトキシトリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、メチルトリイソシアナートシラン、フェニルトリイソシアナートシラン、ビニルトリイソシアナートシラン、等が挙げられる。
また、これらの化合物が部分的に縮合した、多摩化学製シリケート40、シリケート45、シリケート48、Mシリケート51のような、数量体のケイ素化合物でもよい。
またチタン化合物としては、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタン−n−ブトキシド、テトラクロロチタン、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−エチルアセトアセテート)、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンアセチルアセトネート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー等が挙げられる。
またジルコニウム化合物としては、ジルコニウム−n−プロポキシド、ジルコニウム−n−ブトキシド、ジルコニウムトリ−n−ブトキシドアセチルアセトネート、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビスアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート、等が挙げられる。
またアルミニウム化合物としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム−n−ブトキシド、アルミニウム−s−ブトキシド、アルミニウム−ジs−ブトキシドエチルアセチルアセトナート、アルミニウム−t−ブトキシド、アルマトラン、アルミニウムフェノキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセトアセトナート等が挙げられる。
またその他の金属からなる化合物としては、例えば、バリウムイソプロポキシド、カルシウムエトキシド、銅エトキシド、マグネシウムエトキシド、マンガンメトキシド、ストロンチウムイソプロポキシド、錫エトキシド、亜鉛メトキシエトキシド、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、ビスマスt−ペントキシド、クロムイソプロポキシド、エルビウムメトキシエトキシド、ガリウムエトキシド、インジウムメトキシエトキシド、鉄エトキシド、ランタンイソプロポキシド、ネオジウムメトキシエトキシド、プラセオジムメトキシエトキシド、サマリウムイソプロポキシド、バナジウムトリイソブトキシドオキシド、イットリウムイソプロポキシド、テトラメトキシゲルマン、テトラエトキシゲルマン、テトライソプロポキシゲルマン、テトラ−n−ブトキシゲルマン、セリウム−t−ブトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウム−n−ブトキシド、テルルエトキシド、モリブデンエトキシド、ニオブエトキシド、ニオブ−n−ブトキシド、タンタルメトキシド、タンタルエトキシド、タンタル−n−ブトキシド、タングステン(V)エトキシド、タングステン(VI)エトキシド、タングステン(VI)フェノキシド等が挙げられる。
また、本発明に用いられる重縮合が可能な反応性金属化合物としては、分子種内に2つの金属原子を持つダブル金属アルコキシドと呼ばれる化合物でも良い。このようなダブル金属アルコキシドとしては、例えば、ゲレスト社製のアルミニウム銅アルコキシド、アルミニウムチタンアルコキシド、アルミニウムイットリウムアルコキシド、アルミニウムジルコニウムアルコキシド、バリウムチタンアルコキシド、バリウムイットリウムアルコキシド、バリウムジルコニウムアルコキシド、インジウム錫アルコキシド、リチウムニッケルアルコキシド、リチウムニオブアルコキシド、リチウムタンタルアルコキシド、マグネシウムアルミニウムアルコキシド、マグネシウムチタンアルコキシド、マグネシウムジルコニウムアルコキシド、ストロンチウムチタンアルコキシド、ストロンチウムジルコニウムアルコキシド等が挙げられるが、少なくとも、ケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウムのいずれかの金属が含まれているものが好ましい。
〈加水分解触媒〉
本発明の光学フィルムにおいて、無機化合物である加水分解または重縮合可能な反応性金属化合物は、水と触媒を加えて加水分解を起こさせて縮合反応を促進することが好ましい。
しかしフィルムのヘイズ、平面性、製膜速度、溶剤リサイクルなどの生産性の観点から、水分は後述するドープ濃度の0.01%以上2.0%以下の範囲内とすることが好ましい。また、疎水的な加水分解または重縮合可能な反応性金属化合物に水を添加する場合には、加水分解または重縮合可能な反応性金属化合物と水が混和し易いように、メタノール、エタノール、アセトニトリルのような親水性の有機溶媒も添加されていることが好ましい。また、セルロースエステルとドープに加水分解または重縮合可能な反応性金属化合物を混合する際に、ドープからセルロースエステルが析出しないよう、該セルロースエステルの良溶媒も添加されていることが好ましい。
反応性金属化合物を加水分解させる触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、トリフロロ酢酸、レブリン酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸等が用いられる。酸を添加しゾル・ゲル反応が進行した後に塩基を加え中和しても良い。塩基を加え中和する場合、乾燥工程前でのアルカリ金属の含有量が5000ppm未満である事が好ましい(ここでアルカリ金属とは、イオン状態のものを含む)。このような酸類の代りに、酸性のイオン交換樹脂、例えばアンバーリスト15(オルガノ製)、ルイス酸、例えばゲルマニウム、チタン、アルミニウム、アンチモン、錫などの金属の酢酸塩、その他の有機酸塩、ハロゲン化物、燐酸塩などを併用してもよい。
また触媒として、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなど、DBU(ジアザビシクロウンデセン−1)、DBN(ジアザビシクロノネン)などのビシクロ環系アミン、アンモニア、ホスフィン、アルカリ金属アルコキシド、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の塩基を用いることが出来る。
このような、酸またはアルカリ触媒の添加量としては特に制限はされないが、加水分解または重縮合可能な反応性金属化合物の量に対して1.0〜20質量%が好ましい。また、酸及び塩基の処理を複数回行っても良い。必要な加水分解を行った後、触媒を中和してもよいし揮発性の触媒は減圧で除去してもよいし、分液水洗等により除去しても良い。
尚、金属化合物の加水分解または重縮合は、塗布前の溶液状態で反応を完結させても良いし、フィルム状に流延してから反応を完結させても良いが塗布前に反応を完結させるのが良い。用途によって反応は完全に終了しなくても良いが、出来れば完結していた方が良い。加水分解または重縮合の反応状態はNMRにて確認することが出来る。反応性金属化合物としてシリコンアルコキシドを用いる場合は、シリコンアルコキシド或いはオルガノアルコキシシランを加水分解すると、OR基がOHに置換し、更に他のSi−OH或いはSi−ORと縮合する反応が起こるが、29Si−NMRスペクトルには、それぞれに対応するピークが現れる。具体的には、シリコンアルコキシド(Si(OR)4)は4つのOR基を持つが、これらが一つも縮合していない場合はQ0と呼ばれるピークが現れる。四つの内一つが縮合した時にはQ1、二つが縮合した時にはQ2のピークが現れる。
図5にSi(OC254(テトラエチルオルソシリケート:TEOS)及び、加水分解後の29Si−NMRスペクトルを示す。縦軸はシグナルの相対速度を、横軸は周波数を表している。周波数の間隔は用いた磁場の強さによって変わるので、試料と基準のTMSとの共鳴周波数の差を装置発信器の周波数に対するppmで示した値を横軸の単位として用いるのが一般的であり、これもそれに準じている。Si(OC254のSiによるピークQ0が見られるのに対し、加水分解後はピークQ0が消失し、Q1、Q2に帰属される様々なピークが現れた。これにより反応状態の確認を行うことが好ましい。
その他の好ましい系架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネートなどの芳香環を有するイソシアネート、n−ブチルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族系のイソシアネート、水素添加TDI、水素添加MDIなどの芳香環に水素添加したイソシアネートなどを挙げることが出来る。
(可塑剤)
本発明のセルロースエステルフィルムに用いることの出来る可塑剤としては特に限定されないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸系可塑剤等が使用出来るが、好ましくは、多価アルコールエステル可塑剤、ポリエステル可塑剤、クエン酸エステル可塑剤から選択される少なくとも1種の可塑剤を含有することが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に用いられる多価アルコールは次の一般式(1)で表される。
一般式(1) R1−(OH)n
但し、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることが出来る。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
本発明の多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることが出来る。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
Figure 2006212917
Figure 2006212917
Figure 2006212917
Figure 2006212917
本発明では、多価アルコールエステル系可塑剤は1〜12質量%含有することが好ましく、特に3〜11質量%含有することが好ましい。
クエン酸エステル系可塑剤としては、特に限定されずクエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられるが、下記一般式(2)で示されるクエン酸エステル化合物が好ましい。
Figure 2006212917
一般式(2)において、R1の脂肪族アシル基としては特に制限はないが、好ましくは炭素数1〜12であり、特に好ましくは炭素数1〜5である。具体的にはホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、パルミトイル、オレイル等を例示することが出来る。またR2のアルキル基としては特に制限はなく、また直鎖状、分岐を有するもののいずれでもよいが、好ましくは炭素数1〜24のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基が挙げられる。特に酢酸セルロースエステル系樹脂の可塑剤として好ましいものとしては、R1が水素原子であり、R2がメチル基またはエチル基であるもの、並びにR1がアセチル基であり、R2がメチル基またはエチル基であるものである。
〈R1が水素原子であるクエン酸エステル化合物の製法〉
本発明に用いられるクエン酸エステル化合物の内、R1が水素原子であるものは、公知の方法を応用して製造することが出来る。公知の方法としては、例えば英国特許公報931,781号に記載のフタル酸ハーフエステルとα−ハロゲン化酢酸アルキルエステルからフタリルグリコール酸エステルを製造する方法が挙げられる。具体的には、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウムまたはクエン酸(以下、これらをクエン酸原料と略す。)、好ましくはクエン酸三ナトリウムの1モルに対し、R2に対応するアルキルエステルであるα−モノハロゲン化酢酸アルキル、例えばモノクロル酢酸メチル、モノクロル酢酸エチル等を化学量論以上の量、好ましくは1〜10モル、更に好ましくは2〜5モルを反応させる。反応系に水分が存在すると目的化合物の収率が低下するので、原料は出来る限り無水和物を用いる。反応にはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等の鎖状若しくは環状脂肪族第3アミンを触媒として用いることが出来、中でもトリエチルアミンが好ましい。触媒の使用量は、クエン酸原料1モルに対し、0.01〜1.0モル、好ましくは0.2〜0.5モルの範囲である。反応温度は60〜150℃で1〜24時間反応させる。反応溶媒は特に必要ではないが、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン等を使用することが出来る。反応後は、例えば水を加えて副生物や触媒を除去し、油層を水洗したのち、蒸留により、未反応の原料化合物と分離し目的物を単離することが出来る。
〈R1が脂肪族アシル基であるクエン酸エステル化合物の製法〉
1が脂肪族アシル基であり、R2がアルキル基である本発明のクエン酸エステル化合物は前記のR1が水素原子であるクエン酸エステル化合物を用いて製造することが出来る。即ち該クエン酸エステル化合物1モルに対しR1の脂肪族アシル基に相当するハロゲン化アシル、例えば塩化ホルミル、塩化アセチル等を1〜10モル反応させる。触媒としては、塩基性のピリジン等を該クエン酸エステル化合物1モルに対し0.1〜2モルを用いることが出来る。反応は無溶媒でよく、温度80〜100℃にて1〜5時間行う。反応後、反応混合物に水及び水に不溶の有機溶媒、例えばトルエンを加えて目的物を有機溶媒に溶解させ、水層と有機溶媒層を分離し、有機溶媒層を水洗したのち、蒸留等の常法により目的物を単離することが出来る。
セルロース樹脂に添加されるクエン酸エステル化合物の量は、セルロース樹脂100質量部に対して5〜200質量部、特には10〜200質量部であることが好ましい。
またクエン酸エステル化合物のフィルム中の含有量は1〜30質量%が好ましく、特に2〜20質量%が好ましい。
ポリエステル系可塑剤は特に限定されないが、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有するポリエステル系可塑剤を用いることが出来る。好ましいポリエステル系可塑剤としては、下記一般式(3)で表させるポリエステル系可塑剤が好ましく用いられる。
一般式(3) B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはベンゼンモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは0以上の整数を表す。)
一般式(3)中、Bで示されるベンゼンモノカルボン酸残基とGで示されるアルキレングリコール残基またはオキシアルキレングリコール残基またはアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基またはアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られる。
本発明で使用されるポリエステル系可塑剤のベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することが出来る。
本発明に有用なポリエステル系可塑剤の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
また、本発明の芳香族末端エステルの炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用出来る。
本発明に有用な芳香族末端エステルの炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種または2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等がある。
本発明で使用されるエステル系可塑剤は、数平均分子量が、好ましくは250〜2000、より好ましくは300〜1500の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、水酸基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、水酸基価は15mgKOH/g以下のものが好適である。
以下、芳香族末端エステル系可塑剤の合成例を示す。
〈サンプルNo.1(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、アジピン酸365部(2.5モル)、1,2−プロピレングリコール418部(5.5モル)、安息香酸610部(5モル)及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.30部を一括して仕込み窒素気流中で撹拌下、還流凝縮器を付して過剰の1価アルコールを還流させながら、酸価が2以下になるまで130〜250℃で加熱を続け生成する水を連続的に除去した。次いで200〜230℃で1.33×104〜最終的に3.99×102Pa以下の減圧下、留出分を除去し、この後濾過して次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s);815
酸価 ;0.4
〈サンプルNo.2(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、アジピン酸365部(2.5モル)、安息香酸610部(5モル)、ジエチレングリコール583部(5.5モル)及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.45部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s);90
酸価 ;0.05
〈サンプルNo.3(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器にフタル酸410部(2.5モル)、安息香酸610部(5モル)、ジプロピレングリコール737部(5.5モル)及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.40部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステル系可塑剤を得た。
粘度(25℃、mPa・s);43400
酸価 ;0.2
以上の各種可塑剤のセルロースエステルフィルム中の総含有量は、固形分総量に対して5〜25質量%の範囲に調整される。
他の可塑剤として、グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることが出来る。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤も好ましく用いることが出来る。具体的には特開2002−265639号公報の段落番号[0015]〜[0020]記載の多価カルボン酸エステルを可塑剤の一つとして添加することが好ましい。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。但し、リン酸エステル系可塑剤は揮発し易い為に、本発明では実質的に含まれないことが好ましい。実質的に含まれないとは、1質量%以下の含有量であることを意味する。
(紫外線吸収剤)
本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては下記一般式(A)で示される化合物が好ましく用いられる。
Figure 2006212917
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5〜6員の複素環基を表し、R4とR5は閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。
以下に本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
また本発明に有用な紫外線吸収剤の一つであるベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式(B)で表される化合物が好ましく用いられる。
Figure 2006212917
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基または−CO(NH)n−1−D基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1または2を表す。
上記において、アルキル基としては例えば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシ基としては例えば、炭素数18までのアルコキシ基で、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基で例えばアリル基、2−ブテニル基などを表す。また、アルキル基、アルケニル基、フェニル基への置換分としてはハロゲン原子、例えばクロール、ブロム、フッ素原子など、ヒドロキシ基、フェニル基、(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子などを置換していてもよい)などが挙げられる。
以下に一般式(B)で表されるベンゾフェノン系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
UV−8 :2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−9 :2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−10:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−11:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
また、本発明のセルロースエステルフィルムの紫外線吸収剤として、1,3,5−トリアジン環を有する化合物を用いることも出来る。
中でも、特開2001−235621の一般式(I)で示されているトリアジン系化合物も本発明に係るセルロースエステルフィルムに好ましく用いられる。
本発明に係るセルロースエステルフィルムは紫外線吸収剤を2種以上を含有することが好ましい。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることが出来、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒或いはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、セルロースエステルフィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、セルロースエステルフィルムに対して0.5〜4.0質量%が好ましく、0.6〜2.0質量%が更に好ましい。
(微粒子)
本発明に係わるセルロースエステルフィルムには、微粒子を含有することが好ましい。
本発明に使用される微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に好ましくは二酸化珪素である。
微粒子の一次粒子の平均径は5〜50nmが好ましく、更に好ましいのは7〜20nmである。これらは主に粒径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されることが好ましい。セルロースエステルフィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.05〜1質量%であることが好ましく、特に0.1〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成のセルロースエステルフィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることが出来る。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがセルロースエステルフィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明で用いられるセルロースエステルフィルムにおいてはハードコート層の裏面側の動摩擦係数が1.0以下であることが好ましい。
(染料)
本発明に係る光学フィルムには、色味調整のため染料を添加することも出来る。例えば、フィルムの黄色味を抑えるために青色染料を添加してもよい。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。
アンスラキノン系染料は、アンスラキノンの1位から8位迄の任意の位置に任意の置換基を有することが出来る。好ましい置換基としてはアニリノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、または水素原子が挙げられる。特に特開2001−154017記載の青色染料、特にアントラキノン系染料を含有することが好ましい。
上記各種添加剤は製膜前のセルロースエステル含有溶液であるドープにバッチ添加してもよいし、添加剤溶解液を別途用意してインライン添加してもよい。特に微粒子は濾過材への負荷を減らすために、一部または全量をインライン添加することが好ましい。
添加剤溶解液をインライン添加する場合は、ドープとの混合性をよくするため、少量のセルロースエステルを溶解するのが好ましい。好ましいセルロースエステルの量は、溶剤100質量部に対して1〜10質量部で、より好ましくは、3〜5質量部である。
本発明においてインライン添加、混合を行うためには、例えば、スタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。
(光学フィルムの製造方法)
次に、本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。
本発明の光学フィルムの製造は、セルロースエステル及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に本発明に係るマイクロ波を照射して乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減出来て好ましいが、セルロースエステルの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
本発明のドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルの平均酢化度(アセチル基置換度)によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。
好ましい溶媒組成としては、メチレンクロライド80〜95質量%、エタノール5〜20質量%、或いは酢酸メチル60〜95質量%、エタノール5〜40質量%の組み合わせが挙げられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることも好ましい。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることが出来る。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱出来る。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
若しくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステルを溶解させることが出来る。
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースエステルフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことが出来るが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
ここで、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることが出来る。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速く出来るので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。支持体温度は使用する溶媒によって異なるが、0〜70℃が好ましく、5〜40℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
尚、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、前記したように本発明に係るマイクロ波乾燥装置でマイクロ波を照射する乾燥を行うことが特徴である。ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、最終的に残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
その際、前述したようにテンター方式やロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)でウェブを搬送させながら乾燥する方式を併用することが好ましい。これらウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、等で行うことが出来るが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。ウェブの乾燥工程における乾燥温度は40〜150℃で段階的に高くしていくことが好ましいが、本発明の効果を得る上では比較的低温での乾燥が好ましく、50〜130℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするために特に好ましい。
本発明の光学フィルムを位相差フィルムとして作製するためには、少なくとも一方向に対して1.1〜2倍延伸することが好ましく、金属支持体より剥離した直後のウェブの残留溶剤量の多いところで搬送方向(縦方向)に延伸し、更にウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向(横方向)に延伸(2軸延伸)を行うことが特に好ましい。
縦方向、横方向ともに好ましい延伸倍率は1.1〜2倍であり、1.1〜1.5倍が好ましく、特に好ましくは1.1〜1.3倍である。
縦方向と横方向の延伸倍率のいずれかが1.1倍未満では位相差フィルムとして必要なリターデーションの発現が不十分である。延伸倍率が1.1〜1.3倍以内であると平面性に優れ、ヘイズも低いため好ましい。
剥離直後に縦方向に延伸するために、剥離張力を210N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは220〜300N/mである。
本発明に係る光学フィルムの長さは1000〜6000mの長尺フィルムが好ましく用いられる。また、フィルム幅は1.4〜4mの範囲が好ましく、幅手両端部には膜厚に対して10〜25%の高さのナーリング部が設けられていることが好ましい。
〈物性〉
本発明に係る光学フィルムの透湿度は、40℃、90%RHで850g/m2・24h以下であり、好ましくは20〜800g/m2・24hであり、20〜750g/m2・24hであることが特に好ましい。透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に従い測定することが出来る。
本発明に係る光学フィルムは破断伸度は10〜80%であることが好ましく20〜50%であることが更に好ましい。
本発明に係る光学フィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。
本発明に係る光学フィルムのヘイズは1%未満であることが好ましく0〜0.1%であることが特に好ましい。
本発明に係る光学フィルムの60℃90%RH、500時間における質量変化は1%未満であることが好ましい。
本発明に係る光学フィルムの面内リターデーション値(Ro)が0〜300nmの範囲であることが好ましい。より好ましくは0〜150nmの範囲であリ、より好ましくは0〜100nmの範囲である。膜厚方向のリターデーション値(Rt)は、0〜400nmの範囲であることが好ましく、10〜200nmの範囲であることが好ましく、更に30〜150nmの範囲であることが好ましい。
リターデーション値(Ro)、(Rt)は以下の式によって求めることが出来る。
Ro=(nx−ny)×d
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
ここにおいて、dは位相差フィルムの厚み(nm)、屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう)、ny(フィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率)、nz(厚み方向におけるフィルムの屈折率)である。
尚、リターデーション値(Ro)、(Rt)は自動複屈折率計を用いて測定することが出来る。例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmで求めることが出来る。
また、遅相軸はフィルムの幅手方向±1°若しくは長尺方向±1°にあることが好ましい。
(活性線硬化性樹脂層)
本発明の光学フィルムは、位相差フィルムとして好適ではあるが、セルロースエステルの置換度、添加剤量、延伸倍率等を調整することで上記位相差機能を付与せずに、偏光板の保護フィルムとして用いることも出来る。その際は、偏光板表面の耐傷性を向上させる為に活性線硬化性樹脂層を塗設しハードコートフィルムとすることが好ましく、更に反射防止層を積層し反射防止層付きハードコートフィルムとすることが特に好ましい。
活性線硬化性樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させてハードコート層が形成される。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る。例えば、特開昭59−151110号に記載のものを用いることが出来る。
例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることが出来、特開昭59−151112号に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることが出来、特開平1−105738号に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
これら紫外線硬化性樹脂の光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。光増感剤と共に使用してもよい。上記光反応開始剤も光増感剤として使用出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光反応開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることが出来る。
本発明において使用し得る紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用出来る。
また、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
これらの活性線硬化樹脂層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法で塗設することが出来る。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化皮膜層を形成する為の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は好ましくは、5〜150mJ/cm2であり、特に好ましくは20〜100mJ/cm2である。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、若しくは2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性が優れたフィルムを得ることが出来る。
紫外線硬化樹脂層組成物塗布液の有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、或いはこれらを混合し利用出来る。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
また、紫外線硬化樹脂層組成物塗布液には、特にシリコン化合物を添加することが好ましい。例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどが好ましく添加される。ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば、1,000〜100,000、好ましくは、2,000〜50,000が適当であり、数平均分子量が1,000未満では、塗膜の乾燥性が低下し、逆に、数平均分子量が100,000を越えると、塗膜表面にブリードアウトしにくくなる傾向にある。
シリコン化合物の市販品としては、DKQ8−779(ダウコーニング社製商品名)、SF3771、SF8410、SF8411、SF8419、SF8421、SF8428、SH200、SH510、SH1107、SH3749、SH3771、BX16−034、SH3746、SH3749、SH8400、SH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、BY−16−837、BY−16−839、BY−16−869、BY−16−870、BY−16−004、BY−16−891、BY−16−872、BY−16−874、BY22−008M、BY22−012M、FS−1265(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社製商品名)、KF−101、KF−100T、KF351、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、シリコーンX−22−945、X22−160AS(以上、信越化学工業社製商品名)、XF3940、XF3949(以上、東芝シリコーン社製商品名)、ディスパロンLS−009(楠本化成社製)、グラノール410(共栄社油脂化学工業(株)製)、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(GE東芝シリコーン製)、BYK−306、BYK−330、BYK−307、BYK−341、BYK−344、BYK−361(ビックケミ−ジャパン社製)日本ユニカー(株)製のLシリーズ(例えばL7001、L−7006、L−7604、L−9000)、Yシリーズ、FZシリーズ(FZ−2203、FZ−2206、FZ−2207)等が挙げられ、好ましく用いられる。
これらの成分は基材や下層への塗布性を高める。積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、前述のものを用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚として0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。また、ドライ膜厚としては0.1〜20μm、好ましくは1〜10μmである。
より好ましくは、セルロースエステルフィルムの膜厚が10〜80μmであり、層の膜厚(H)とセルロースエステルフィルムの膜厚(d)の比率(d/H)が4〜10である時、平面性と同時に硬度、耐傷性にも優れる。これはセルロースエステルの膜厚に比べハードコート層が薄い場合、硬度、耐傷性に劣り、セルロースエステルの膜厚に比べ、ハードコート層が厚い場合、平面性が劣化することによる。
紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥中または後に、紫外線を照射するのがよく、前記の5〜150mJ/cm2という活性線の照射量を得る為の照射時間としては、0.1秒〜5分程度がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から0.1〜10秒がより好ましい。
また、これら活性線照射部の照度は50〜150mW/m2であることが好ましい。
こうして得た硬化樹脂層に、ブロッキングを防止する為、また対擦り傷性等を高める為、或いは防眩性や光拡散性を持たせる為また屈折率を調整する為に無機化合物或いは有機化合物の微粒子を加えることも出来る。
ハードコート層に使用される無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムなどが好ましく用いられる。
また有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、或いはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物に加えることが出来る。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)が挙げられる。
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005〜5μmが好ましく0.01〜1μmであることが特に好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
紫外線硬化樹脂層は、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が1〜50nmのクリアハードコート層であるか、若しくはRaが0.1〜1μm程度の防眩層であることが好ましい。中心線平均粗さ(Ra)は光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えばWYKO社製RST/PLUSを用いて測定することが出来る。
〈バックコート層〉
上記ハードコートフィルムのハードコート層を設けた側と反対側の面にはバックコート層を設けることが好ましい。バックコート層は、塗布やCVDなどによって、ハードコート層やその他の層を設けることで生じるカールを矯正する為に設けられる。即ち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることが出来る。尚、バックコート層は好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設され、その場合、バックコート層塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせる為に微粒子が添加されることが好ましい。
バックコート層に添加される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。微粒子は珪素を含むものがヘイズが低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
これらの微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。ポリマー微粒子の例として、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることが出来る。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがヘイズを低く保ちながら、ブロッキング防止効果が大きい為特に好ましく用いられる。本発明で用いられるハードコートフィルムは、ハードコート層の裏面側の動摩擦係数が0.9以下、特に0.1〜0.9であることが好ましい。
バックコート層に含まれる微粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%好ましくは0.1〜10質量%であることが好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1%以下であることが好ましく0.5%以下であることが好ましく、特に0.0〜0.1%であることが好ましい。
バックコート層は、具体的にはセルロースエステルフィルムを溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒を含む組成物を塗布することによって行われる。用いる溶媒としては、溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合物の他更に溶解させない溶媒を含む場合もあり、これらを透明樹脂フィルムのカール度合いや樹脂の種類によって適宜の割合で混合した組成物及び塗布量を用いて行う。
カール防止機能を強めたい場合は、用いる溶媒組成を溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合比率を大きくし、溶解させない溶媒の比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は好ましくは(溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒):(溶解させない溶媒)=10:0〜1:9で用いられる。このような混合組成物に含まれる、透明樹脂フィルムを溶解または膨潤させる溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルムなどがある。溶解させない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール或いは炭化水素類(トルエン、キシレン、シクロヘキサノール)などがある。
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター等を用いて透明樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであることが好ましい。バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体或いは共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。例えば、アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン(株)製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマーなどが市販されており、この中から好ましいモノを適宜選択することも出来る。
特に好ましくはジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロース系樹脂層である。
バックコート層を塗設する順番はセルロースエステルフィルムの、バックコート層とは反対側の層(クリアハードコート層或いはその他の例えば帯電防止層等の層)を塗設する前でも後でも構わないが、バックコート層がブロッキング防止層を兼ねる場合は先に塗設することが望ましい。或いはハードコート層の塗設の前後に2回以上に分けてバックコート層を塗布することも出来る。
(反射防止層)
上記ハードコートフィルムは、塗布或いは、プラズマCVD法、大気圧プラズマ処理法等によって金属化合物層の薄膜を均一に形成するのに適しており、特に塗布によって反射防止層を形成することが好ましい。
次いで、これらハードコート層上に形成する反射防止層について説明する。
本発明に用いることの出来る反射防止層の構成例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/中屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層//帯電防止層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
帯電防止層/セルロースエステルフィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
セルロースエステルフィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
本発明はハードコート層上に上記のように反射防止層を積層し反射防止フィルムとすることが出来る。
また、光学干渉により反射率を低減出来るものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。例えば最表層に防汚層を設けても良いし、その他機能層を適宜設けても良い。
(中屈折率層、高屈折率層)
中屈折率層、高屈折率層は所定の屈折率層が得られれば構成成分に特に制限はないが、屈折率の高い金属酸化物微粒子、バインダ等よりなることが好ましい。その他に添加剤を含有しても良い。中屈折率層の屈折率は1.55〜1.75であることが好ましく、高屈折率層の屈折率は1.75〜2.20であることが好ましい。
〈金属酸化物微粒子〉
金属酸化物微粒子は特に限定されないが、例えば、二酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、五酸化アンチモン、酸化インジウム−スズ(ITO)、酸化鉄、等を主成分として用いることが出来る。また、これらの混合物でもよい。二酸化チタンを用いる場合は二酸化チタンをコアとし、シェルとしてアルミナ、シリカ、ジルコニア、ATO、ITO、五酸化アンチモン等で被覆させたコア/シェル構造を持った金属酸化物粒子を用いることが光触媒活性の抑制の点で好ましい。
金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であることが好ましく、1.90〜2.50であることが更に好ましい。金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径は5nm〜200nmであるが、10〜150nmであることが更に好ましい。粒径が小さ過ぎると金属酸化物微粒子が凝集し易くなり、分散性が劣化する。粒径が大き過ぎるとヘイズが上昇し好ましくない。無機微粒子の形状は、米粒状、針状、球形状、立方体状、紡錘形状或いは不定形状であることが好ましい。
金属酸化物微粒子は有機化合物により表面処理してもよい。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。この中でも後述するシランカップリング剤が最も好ましい。二種以上の表面処理を組み合わせてもよい。
金属酸化物の種類、添加比率を適切に選択することによって、所望の屈折率を有する高屈折率層、中屈折率層を得ることが出来る。
〈バインダ〉
バインダは塗膜の成膜性や物理特性の向上のために添加される。バインダとしては例えば、前述の電離放射線硬化型樹脂、アクリルアミド誘導体、多官能アクリレート、アクリル樹脂またはメタクリル樹脂などを用いることが出来る。
(金属化合物、シランカップリング剤)
その他の添加剤として金属化合物、シランカップリング剤などを添加しても良い。金属化合物、シランカップリング剤はバインダとして用いることも出来る。
金属化合物としては下記式(C)で表される化合物またはそのキレート化合物を用いることが出来る。
式(C):AnMBx−n
式中、Mは金属原子、Aは加水分解可能な官能基または加水分解可能な官能基を有する炭化水素基、Bは金属原子Mに共有結合またはイオン結合した原子団を表す。xは金属原子Mの原子価、nは2以上でx以下の整数を表す。
加水分解可能な官能基Aとしては、例えば、アルコキシル基、クロル原子等のハロゲン、エステル基、アミド基等が挙げられる。上記式(C)に属する金属化合物には、金属原子に直接結合したアルコキシル基を2個以上有するアルコキシド、または、そのキレート化合物が含まれる。好ましい金属化合物としては、屈折率や塗膜強度の補強効果、取り扱い易、材料コスト等の観点から、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、ケイ素アルコキシドまたはそれらのキレート化合物を挙げることが出来る。チタンアルコキシドは反応速度が速くて屈折率が高く、取り扱いも容易であるが、光触媒作用があるため大量に添加すると耐光性が劣化する。ジルコニウムアルコキシドは屈折率が高いが白濁し易いため、塗布する際の露点管理等に注意しなければならない。ケイ素アルコキシドは反応速度が遅く、屈折率も低いが、取り扱いが容易で耐光性に優れる。シランカップリング剤は無機微粒子と有機ポリマーの両方と反応することが出来るため、強靱な塗膜を作ることが出来る。また、チタンアルコキシドは紫外線硬化樹脂、金属アルコキシドの反応を促進する効果があるため、少量添加するだけでも塗膜の物理的特性を向上させることが出来る。
チタンアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン等が挙げられる。
ジルコニウムアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−iso−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム等が挙げられる。
ケイ素アルコキシド及びシランカップリング剤は下記式(D)で表される化合物である。
式(D):RmSi(OR′)n
式中、Rはアルキル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基)、または、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミド基、スルホニル基、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基等の反応性基を表し、R′はアルキル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基)を表し、m+nは4である。
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
遊離の金属化合物に配位させてキレート化合物を形成するのに好ましいキレート化剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等であって分子量1万以下のものを挙げることが出来る。これらのキレート化剤を用いることにより、水分の混入等に対しても安定で、塗膜の補強効果にも優れるキレート化合物を形成出来る。
金属化合物の添加量は、中屈折率組成物では金属酸化物に換算して5質量%未満であることが好ましく、高屈折率組成物では金属酸化物に換算して20質量%未満であることが好ましい。
(低屈折率層形成用塗布液)
反射防止層に用いられる低屈折率層は、中空微粒子を含有することが好ましく、その他に珪素アルコキシド、シランカップリング剤、硬化剤等を含有することが更に好ましい。
〈中空微粒子〉
低屈折率層には下記の中空微粒子が含有されることが好ましい。
ここでいう中空微粒子は、(1)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、または(2)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体または多孔質物質で充填された空洞粒子である。尚、低屈折率層用塗布液には(1)複合粒子または(2)空洞粒子のいずれかが含まれていればよく、また双方が含まれていてもよい。
尚、空洞粒子は、内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体または多孔質物質等の内容物で充填されている。このような無機微粒子の平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあることが望ましい。使用される無機微粒子は、形成される透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、形成される低屈折率層等の透明被膜の膜厚の2/3〜1/10の範囲にあることが望ましい。これらの無機微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)が好ましい。
複合粒子の被覆層の厚さまたは空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあることが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することが出来ないことがあり、低屈折率の効果が十分得られないことがある。また、被覆層の厚さが20nmを越えると、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率の効果が十分得られなくなることがある。また空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持出来ないことがあり、また厚さが20nmを越えても、低屈折率の効果が十分に現れないことがある。
前記複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。また複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁には、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P23、Sb23、MoO3、ZnO2、WO3などが挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgFなどからなるものが挙げられる。この内特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P23、Sb23、MoO3、ZnO2、WO3等との1種または2種以上を挙げることが出来る。このような多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOX)で表した時のモル比MOX/SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても導電性を発現しない。また、多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が小さく、かつ屈折率の低い粒子を得られないことがある。
このような多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。
尚、このような多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることが出来る。また、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質等が挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒等が含まれていてもよい。また多孔質物質としては、前記多孔質粒子で例示した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
このような無機微粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。具体的に、複合粒子が、シリカ、シリカ以外の無機化合物とからなる場合、以下の第1〜第3工程から無機化合物粒子は製造される。
第1工程:多孔質粒子前駆体の調製
第1工程では、予め、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料のアルカリ水溶液を個別に調製するか、または、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料との混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とする複合酸化物の複合割合に応じて、pH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加して多孔質粒子前駆体を調製する。
シリカ原料としては、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機塩基のケイ酸塩を用いる。アルカリ金属のケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)やケイ酸カリウムが用いられる。有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を挙げることが出来る。尚、アンモニウムのケイ酸塩または有機塩基のケイ酸塩には、ケイ酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物等を添加したアルカリ性溶液も含まれる。
また、シリカ以外の無機化合物の原料は、アルカリ可溶の前記導電性化合物が用いられる。
これらの水溶液の添加と同時に混合水溶液のpH値は変化するが、このpH値を所定の範囲に制御するような操作は特に必要ない。水溶液は、最終的に、無機酸化物の種類及びその混合割合によって定まるpH値となる。このときの水溶液の添加速度にはとくに制限はない。また、複合酸化物粒子の製造に際して、シード粒子の分散液を出発原料と使用することも可能である。当該シード粒子としては、特に制限はないが、SiO2、Al23、TiO2またはZrO2等の無機酸化物またはこれらの複合酸化物の微粒子が用いられ、通常、これらのゾルを用いることが出来る。更に前記の製造方法によって得られた多孔質粒子前駆体分散液をシード粒子分散液としてもよい。シード粒子分散液を使用する場合、シード粒子分散液のpHを10以上に調整したのち、該シード粒子分散液中に前記化合物の水溶液を、上記したアルカリ水溶液中に攪拌しながら添加する。この場合も、必ずしも分散液のpH制御を行う必要はない。このようにして、シード粒子を用いると、調製する多孔質粒子の粒径コントロールが容易であり、粒度の揃ったものを得ることが出来る。
上記したシリカ原料及び無機化合物原料はアルカリ側で高い溶解度を有する。しかしながら、この溶解度の大きいpH領域で両者を混合すると、ケイ酸イオン及びアルミン酸イオン等のオキソ酸イオンの溶解度が低下し、これらの複合物が析出して微粒子に成長したり、或いは、シード粒子上に析出して粒子成長が起こる。従って、微粒子の析出、成長に際して、従来法のようなpH制御は必ずしも行う必要がない。
第1工程におけるシリカとシリカ以外の無機化合物との複合割合は、シリカに対する無機化合物を酸化物(MOx)に換算し、MOx/SiO2のモル比が、0.05〜2.0、好ましくは0.2〜2.0の範囲内にあることが望ましい。この範囲内において、シリカの割合が少なくなる程、多孔質粒子の細孔容積が増大する。しかしながら、モル比が2.0を越えても、多孔質粒子の細孔の容積は殆ど増加しない。他方、モル比が0.05未満の場合は、細孔容積が小さくなる。空洞粒子を調製する場合、MOx/SiO2のモル比は、0.25〜2.0の範囲内にあることが望ましい。
第2工程:多孔質粒子からのシリカ以外の無機化合物の除去
第2工程では、前記第1工程で得られた多孔質粒子前駆体から、シリカ以外の無機化合物(珪素と酸素以外の元素)の少なくとも一部を選択的に除去する。具体的な除去方法としては、多孔質粒子前駆体中の無機化合物を鉱酸や有機酸を用いて溶解除去したり、或いは、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する。
尚、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体は、珪素と無機化合物構成元素が酸素を介して結合した網目構造の粒子である。このように多孔質粒子前駆体から無機化合物(珪素と酸素以外の元素)を除去することにより、一層多孔質で細孔容積の大きい多孔質粒子が得られる。また、多孔質粒子前駆体から無機酸化物(珪素と酸素以外の元素)を除去する量を多くすれば、空洞粒子を調製することが出来る。
また、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去するに先立って、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体分散液に、シリカのアルカリ金属塩を脱アルカリして得られるケイ酸液或いは加水分解性の有機珪素化合物を添加してシリカ保護膜を形成することが好ましい。シリカ保護膜の厚さは0.5〜15nmの厚さであればよい。尚シリカ保護膜を形成しても、この工程での保護膜は多孔質であり厚さが薄いので、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することは可能である。
このようなシリカ保護膜を形成することによって、粒子形状を保持したまま、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することが出来る。また、後述するシリカ被覆層を形成する際に、多孔質粒子の細孔が被覆層によって閉塞されてしまうことがなく、このため細孔容積を低下させることなく後述するシリカ被覆層を形成することが出来る。尚、除去する無機化合物の量が少ない場合は粒子が壊れることがないので必ずしも保護膜を形成する必要はない。
また空洞粒子を調製する場合は、このシリカ保護膜を形成しておくことが望ましい。空洞粒子を調製する際には、無機化合物を除去すると、シリカ保護膜と、該シリカ保護膜内の溶媒、未溶解の多孔質固形分とからなる空洞粒子の前駆体が得られ、該空洞粒子の前駆体に後述の被覆層を形成すると、形成された被覆層が、粒子壁となり空洞粒子が形成される。
上記シリカ保護膜形成のために添加するシリカ源の量は、粒子形状を保持出来る範囲で少ないことが好ましい。シリカ源の量が多過ぎると、シリカ保護膜が厚くなり過ぎるので、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去することが困難となることがある。シリカ保護膜形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、一般式RnSi(OR′)4-n〔R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2または3〕で表されるアルコキシシランを用いることが出来る。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子の分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を無機酸化物粒子の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることが出来る。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることが出来る。
多孔質粒子前駆体の分散媒が、水単独、または有機溶媒に対する水の比率が高い場合には、ケイ酸液を用いてシリカ保護膜を形成することも可能である。ケイ酸液を用いる場合には、分散液中にケイ酸液を所定量添加し、同時にアルカリを加えてケイ酸液を多孔質粒子表面に沈着させる。尚、ケイ酸液と上記アルコキシシランを併用してシリカ保護膜を作製してもよい。
第3工程:シリカ被覆層の形成
第3工程では、第2工程で調製した多孔質粒子分散液(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体分散液)に加水分解性の有機珪素化合物またはケイ酸液等を加えることにより、粒子の表面を加水分解性有機珪素化合物またはケイ酸液等の重合物で被覆してシリカ被覆層を形成する。
シリカ被覆層形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、前記したような一般式RnSi(OR′)4-n〔R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2または3〕で表されるアルコキシシランを用いることが出来る。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることが出来る。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることが出来る。
多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の分散媒が水単独、または有機溶媒との混合溶媒であって、有機溶媒に対する水の比率が高い混合溶媒の場合には、ケイ酸液を用いて被覆層を形成してもよい。ケイ酸液とは、水ガラス等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液をイオン交換処理して脱アルカリしたケイ酸の低重合物の水溶液である。
ケイ酸液は、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中に添加され、同時にアルカリを加えてケイ酸低重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)表面に沈着させる。尚、ケイ酸液を上記アルコキシシランと併用して被覆層形成用に使用してもよい。被覆層形成用に使用される有機珪素化合物またはケイ酸液の添加量は、コロイド粒子の表面を十分被覆出来る程度であればよく、最終的に得られるシリカ被覆層の厚さが1〜20nmとなるように量で、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中で添加される。また前記シリカ保護膜を形成した場合はシリカ保護膜とシリカ被覆層の合計の厚さが1〜20nmの範囲となるような量で、有機珪素化合物またはケイ酸液は添加される。
次いで、被覆層が形成された粒子の分散液を加熱処理する。加熱処理によって、多孔質粒子の場合は、多孔質粒子表面を被覆したシリカ被覆層が緻密化し、多孔質粒子がシリカ被覆層によって被覆された複合粒子の分散液が得られる。また空洞粒子前駆体の場合、形成された被覆層が緻密化して空洞粒子壁となり、内部が溶媒、気体または多孔質固形分で充填された空洞を有する空洞粒子の分散液が得られる。
このときの加熱処理温度は、シリカ被覆層の微細孔を閉塞出来る程度であれば特に制限はなく、80〜300℃の範囲が好ましい。加熱処理温度が80℃未満ではシリカ被覆層の微細孔を完全に閉塞して緻密化出来ないことがあり、また処理時間に長時間を要してしまうことがある。また加熱処理温度が300℃を越えて長時間処理すると緻密な粒子となることがあり、低屈折率の効果が得られないことがある。
このようにして得られた無機微粒子の屈折率は、1.44未満と低い。このような無機微粒子は、多孔質粒子内部の多孔性が保持されているか、内部が空洞であるので、屈折率が低くなるものと推察される。
本発明に用いられる低屈折率層には中空微粒子の他に、アルコキシ珪素化合物の加水分解物及びそれに続く縮合反応により形成される縮合物を含むことが好ましい。特に、下記一般式(E)及び/または(F)で表されるアルコキシ珪素化合物またはその加水分解物を調整したSiO2ゾルを含有することが好ましい。
一般式(E) R1−Si(OR2)3
一般式(F) Si(OR2)4
(式中、R1はメチル基、エチル基、ビニル基、またはアクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基若しくはエポキシ基を含む有機基を、R2はメチル基またはエチル基を示す)
珪素アルコキシド、シランカップリング剤の加水分解は、珪素アルコキシド、シランカップリング剤を適当な溶媒中に溶解して行う。使用する溶媒としては、例えば、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールブタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、或いはこれらの混合物が挙げられる。
上記珪素アルコキシドまたはシランカップリング剤を溶媒に溶解した溶液に、加水分解に必要な量より若干多い量の水を加え、15〜35℃、好ましくは20℃〜30℃の温度で1〜48時間、好ましくは3〜36時間攪拌を行う。
上記加水分解においては、触媒を用いることが好ましく、このような触媒としては塩酸、硝酸、硫酸または酢酸などの酸が好ましく用いられる。これらの酸は0.001N〜20.0N、好ましくは0.005〜5.0N程度の水溶液にして用いる。該触媒水溶液中の水分は加水分解用の水分とすることが出来る。
アルコキシ珪素化合物を所定の時間加水分解反応させ、調製されたアルコキシ珪素加水分解液を溶剤で希釈し、必要な他の添加剤等を混合して、低屈折率層用塗布液を調製し、これを基材例えばフィルム上に塗布、乾燥することで低屈折率層を基材上に形成することが出来る。
〈アルコキシ珪素化合物〉
本発明において低屈折率層塗布液の調製に用いられるアルコキシ珪素化合物(以後アルコキシシランともいう)としては、下記一般式(G)で表されるものが好ましい。
一般式(G) R4−nSi(OR′)n
前記一般式中、R′はアルキル基であり、Rは水素原子または1価の置換基を表し、nは3または4を表す。
R′で表されるアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の基が挙げられ、置換基を有していてもよく、置換基としてはアルコキシシランとしての性質を示すものであれば特に制限はなく、例えば、フッ素などのハロゲン原子、アルコキシ基等により置換されていてもよいが、より好ましくは非置換のアルキル基であり、特にメチル基、エチル基が好ましい。
Rで表される1価の置換基としては特に制限されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、芳香族複素環基、シリル基等が挙げられる。中でも好ましいのは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基である。また、これらは更に置換されていてもよい。Rの置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、ヒドロキシル基、アセトキシ基等が挙げられる。
前記一般式で表されるアルコキシシランの好ましい例として、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシプロポキシ)シラン、
また、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、n−へキシルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アセトキシトリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、更に、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
また、これらの化合物が部分的に縮合した多摩化学製シリケート40、シリケート45、シリケート48、Mシリケート51のような数量体のケイ素化合物でもよい。
前記アルコキシシランは、加水分解重縮合が可能な珪素アルコキシド基を有しているため、これらのアルコキシシランを加水分解、縮合によって、架橋して、高分子化合物のネットワーク構造が形成され、これを低屈折率層塗布液として用い、基材上に塗布して、乾燥させることで均一な酸化珪素を含有する層が基材上に形成される。
加水分解反応は、公知の方法により行うことが出来、疎水的なアルコキシシランと水が混和し易いように、所定量の水とメタノール、エタノール、アセトニトリルのような親水性の有機溶媒を共存させ溶解・混合したのち、加水分解触媒を添加して、アルコキシシランを加水分解、縮合させる。通常、10℃〜100℃で加水分解、縮合反応させることで、ヒドロキシル基を2個以上有する液状のシリケートオリゴマーが生成し加水分解液が形成される。加水分解の程度は、使用する水の量により適宜調節することが出来る。
本発明においては、アルコキシシランに水と共に添加する溶媒としては、メタノール、エタノールが安価であること、得られる被膜の特性が優れ硬度が良好であることから好ましい。イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、オクタノール等も用いることが出来るが、得られた被膜の硬度が低くなる傾向にある。溶媒量は加水分解前のテトラアルコキシシラン100質量部に対して50〜400質量部、好ましくは100〜250質量部である。
このようにして加水分解液を調製し、これを溶剤によって希釈し、必要に応じて添加剤を添加して、低屈折率層塗布液を形成するに必要な成分と混合し、低屈折率層塗布液とする。
〈加水分解触媒〉
加水分解触媒としては、酸、アルカリ、有機金属、金属アルコキシド等を挙げることが出来るが、本発明においては硫酸、塩酸、硝酸、次亜塩素酸、ホウ酸等の無機酸或いは有機酸が好ましく、特に硝酸、酢酸などのカルボン酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メチルスルホン酸等が好ましく、これらの内特に硝酸、酢酸、クエン酸または酒石酸等が好ましく用いられる。上記クエン酸や酒石酸の他に、レブリン酸、ギ酸、プロピオン酸、リンゴ酸、コハク酸、メチルコハク酸、フマル酸、オキサロ酢酸、ピルビン酸、2−オキソグルタル酸、グリコール酸、D−グリセリン酸、D−グルコン酸、マロン酸、マレイン酸、シュウ酸、イソクエン酸、乳酸等も好ましく用いられる。
この中で、乾燥時に酸が揮発して、膜中に残らないものが好ましく、沸点が低いものがよい。従って、酢酸、硝酸が特に好ましい。
添加量は、用いるアルコキシ珪素化合物(例えばテトラアルコキシシラン)100質量部に対して0.001〜10質量部、好ましくは0.005〜5質量部がよい。また、水の添加量については部分加水分解物が理論上100%加水分解し得る量以上であればよく、100〜300%相当量、好ましくは100〜200%相当量を添加するのがよい。
上記アルコキシシランを加水分解する際には、下記無機微粒子を混合することが好ましい。
加水分解を開始してから所定の時間加水分解液を放置して加水分解の進行が所定の程度に達した後用いる。放置する時間は、上述の加水分解そして縮合による架橋が所望の膜特性を得るのに十分な程度進行する時間である。具体的には用いる酸触媒の種類にもよるが、例えば、酢酸では室温で15時間以上、硝酸では2時間以上が好ましい。熟成温度は熟成時間に影響を与え、一般に高温では熟成が早く進むが、100℃以上に加熱するとゲル化が起こるので、20〜60℃の加熱、保温が適切である。
このようにして加水分解、縮合により形成したシリケートオリゴマー溶液に下記無機微粒子、添加剤を加え、必要な希釈を行って、低屈折率層塗布液を調製し、これを後述する基材フィルム上に塗布して、乾燥することで、低屈折率層として優れた酸化珪素膜を含有する層を形成することが出来る。
また、本発明においては、上記のアルコキシシランの他に、例えばエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基等の官能基を有するシラン化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマー)等により変性した変性物であってもよく、単独で使用または併用することも可能である。
〈フッ素化合物〉
本発明に係る低屈折率層は中空微粒子とフッ素化合物を含有することも好ましく、バインダーマトリックスとして、熱または電離放射線により架橋する含フッ素樹脂(以下、「架橋前の含フッ素樹脂」ともいう)を含む。該含フッ素樹脂を含むことにより良好な防汚性反射防止フィルムを提供することが出来る。
架橋前の含フッ素樹脂としては、含フッ素ビニルモノマーと架橋性基付与のためのモノマーから形成される含フッ素共重合体を好ましく挙げることが出来る。上記含フッ素ビニルモノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えば、ビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。架橋性基付与のためのモノマーとしては、グリシジルメタクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルグリシジルエーテル等のように分子内に予め架橋性官能基を有するビニルモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有するビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル等)が挙げられる。後者は共重合の後、ポリマー中の官能基と反応する基ともう1つ以上の反応性基を持つ化合物を加えることにより、架橋構造を導入出来ることが特開平10−25388号、同10−147739号に記載されている。架橋性基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロール及び活性メチレン基等が挙げられる。含フッ素共重合体が、加熱により反応する架橋基、若しくは、エチレン性不飽和基と熱ラジカル発生剤若しくはエポキシ基と熱酸発生剤等の相み合わせにより、加熱により架橋する場合、熱硬化型であり、エチレン性不飽和基と光ラジカル発生剤若しくは、エポキシ基と光酸発生剤等の組み合わせにより、光(好ましくは紫外線、電子ビーム等)の照射により架橋する場合、電離放射線硬化型である。
また上記モノマー加えて、含フッ素ビニルモノマー及び架橋性基付与のためのモノマー以外のモノマーを併用して形成された含フッ素共重合体を架橋前の含フッ素樹脂として用いてもよい。併用可能なモノマーには特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロニトリル誘導体等を挙げることが出来る。また、含フッ素共重合体中に、滑り性、防汚性付与のため、ポリオルガノシロキサン骨格や、パーフルオロポリエーテル骨格を導入することも好ましい。これは、例えば末端にアクリル基、メタクリル基、ビニルエーテル基、スチリル基等を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルと上記のモノマーとの重合、末端にラジカル発生基を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルによる上記モノマーの重合、官能基を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルと、含フッ素共重合体との反応等によって得られる。
架橋前の含フッ素共重合体を形成するために用いられる上記各モノマーの使用割合は、含フッ素ビニルモノマーが好ましくは20〜70モル%、より好ましくは40〜70モル%、架橋性基付与のためのモノマーが好ましくは1〜20モル%、より好ましくは5〜20モル%、併用されるその他のモノマーが好ましくは10〜70モル%、より好ましくは10〜50モル%の割合である。
含フッ素共重合体は、これらモノマーをラジカル重合開始剤の存在下で、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合法等の手段により重合することにより得ることが出来る。
架橋前の含フッ素樹脂は、市販されており使用することが出来る。市販されている架橋前の含フッ素樹脂の例としては、サイトップ(旭硝子製)、テフロン(登録商標)AF(デュポン製)、ポリフッ化ビニリデン、ルミフロン(旭硝子製)、オプスター(JSR製)等が挙げられる。
架橋した含フッ素樹脂を構成成分とする低屈折率層は、動摩擦係数が0.03〜0.15の範囲、水に対する接触角が90〜120度の範囲にあることが好ましい。
〈添加剤〉
低屈折率層塗布液には更に必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤などの添加剤を含有させても良い。シランカップリング剤は前記式(D)で表される化合物である。
具体的には、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
硬化剤としては、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム等の有機酸金属塩が挙げられ、特に酢酸ナトリウムが好ましい。珪素アルコキシシラン加水分解溶液に対する添加量は、加水分解溶液中に存在する固形分100質量部に対して0.1〜1質量部程度の範囲が好ましい。
また、本発明の各層の塗布液には各種のレベリング剤、界面活性剤、シリコーンオイル等の低表面張力物質を添加することが好ましい。
これらの成分は基材や下層への塗布性を高める。積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。これらの成分は添加量が多過ぎると塗布時にハジキの原因となるため、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
〈溶媒〉
低屈折率層を塗設する際の塗布液に使用する溶媒は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセルソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、水等が挙げられ、それらを単独または2種以上混合して使用することが出来る。
〈塗布方法〉
低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層塗布液などの塗布方法としては、ディッピング、スピンコート、ナイフコート、バーコート、エアードクターコート、ブレードコート、スクイズコート、リバースロールコート、グラビアロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ダイコート等の公知の塗布方法または公知のインクジェット法を用いることが出来、連続塗布または薄膜塗布が可能な塗布方法が好ましく用いられる。塗布量はウェット膜厚で0.1〜30μmが適当で、好ましくは0.5〜15μmである。塗布速度は10〜80m/minが好ましい。
本発明の組成物を基材に塗布する際、塗布液中の固形分濃度や塗布量を調整することにより、層の膜厚及び塗布均一性等をコントロールすることが出来る。また、組成物の塗布性を向上させるために、塗布液中に微量の界面活性剤等を添加してもよい。
(偏光板)
本発明の偏光板について述べる。
偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明により適切な延伸処理を行い、リターデーションを付与し位相差フィルムとした光学フィルム(以下、位相差フィルムとも言う)の裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理した位相差フィルムを、延伸したポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面にも該位相差フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよいが、前記反射防止層付きハードコートフィルムを貼合することが好ましい。本発明の位相差フィルムと組み合わせて使用することによって、視認性、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることが出来る。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光膜の面上に、本発明の光学フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
従来の光学フィルムを使用した偏光板は平面性に劣り、反射像を見ると細かい波打ち状のムラが認められ、60℃、90%RHの条件での耐久性試験により、波打ち状のムラが増大したが、これに対して本発明の光学フィルムを用いた偏光板は、平面性に優れ、60℃、90%RHの条件での耐久性試験によっても波打ち状のムラが増加することはなかった。
また、本発明の光学フィルムを用いて作製した偏光板は、柔軟性に優れ断裁する際に端部が割れて切り屑が発生することが少なく、切り屑による故障の発生も低減され、加工適性にも優れていた。
〈液晶表示装置〉
本発明の偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた本発明の液晶表示装置を作製することが出来る。本発明の光学フィルムは反射型、透過型、半透過型LCD或いはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(MVA型、PVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。画面が17型以上、特に画面が30型以上の大画面の液晶表示装置では、本発明の効果以外にも、色ムラや波打ちムラによって蛍光灯の反射像が歪んで見えていたものが、鏡の反射のように歪みがないため、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
《光学フィルムの作製》
〈微粒子分散液〉
微粒子(AEROSIL R972V(日本アエロジル製)) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
〈微粒子添加液〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクにセルローストリアセテートを添加し、加熱して完全に溶解させた後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。濾過後のセルロースエステル溶液を十分に攪拌しながら、ここに微粒子分散液をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
セルローストリアセテート(アセチル置換度2.7) 4質量部
微粒子分散液 11質量部
(ドープ1の作製)
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度1.90、プロピオニル置換度0.75) 100質量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート 5.55質量部
アセチルトリブチルシトレート 5.55質量部
チヌビン326(チバスペシャリティケミカルズ製) 0.33質量部
チヌビン109(チバスペシャリティケミカルズ製) 0.56質量部
チヌビン171(チバスペシャリティケミカルズ製) 0.56質量部
メチレンクロライド 460質量部
エタノール 40質量部
加圧密閉溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧密閉溶解タンクにセルロースアセテートプロピオネートを攪拌しながら投入した。これを40℃まで加熱し攪拌しながら完全に溶解し更に可塑剤及び紫外線吸収剤を添加、溶解させた。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープ1を作製した。
(ドープ2の作製)
ドープ1の作製においてセルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度1.90、プロピオニル置換度0.75)をセルローストリアセテート(アセチル置換度2.7)に変えた以外はドープ1の作製と同様にしてドープ2を作製した。
(ドープ3の作製)
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度1.90、プロピオニル置換度0.75) 100質量部
トリフェニルフォスフェート 7.90質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 1.87質量部
チヌビン326(チバスペシャリティケミカルズ製) 0.33質量部
チヌビン109(チバスペシャリティケミカルズ製) 0.56質量部
チヌビン171(チバスペシャリティケミカルズ製) 0.56質量部
メチレンクロライド 460質量部
エタノール 40質量部
加圧密閉溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧密閉溶解タンクにセルロースアセテートプロピオネートを攪拌しながら投入した。これを40℃まで加熱し攪拌しながら完全に溶解し更に可塑剤及び紫外線吸収剤を添加、溶解させた。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープ3を作製した。
(ドープ4の作製)
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度1.90、プロピオニル置換度0.75) 100質量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート 5.55質量部
アセチルトリブチルシトレート 5.55質量部
チヌビン326(チバスペシャリティケミカルズ製) 0.33質量部
チヌビン109(チバスペシャリティケミカルズ製) 0.56質量部
チヌビン171(チバスペシャリティケミカルズ製) 0.56質量部
メチレンクロライド 460質量部
エタノール 30.8質量部
加圧密閉溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧密閉溶解タンクにセルロースアセテートプロピオネートを攪拌しながら投入した。これを40℃まで加熱し攪拌しながら完全に溶解し更に可塑剤及び紫外線吸収剤を添加、溶解させ主ドープとした。
次いで、下記組成物を室温で混合し3時間攪拌して加水分解重縮合物溶液を調整した。加水分解重縮合物の分子量は900であった。
水 0.7質量部
エタノール 1.7質量部
テトラエトキシシラン 5.9質量部
アンバーライトIRC76(オルガノ株式会社製) 0.9質量部
加水分解重縮合物溶液をメチクロライド10.8質量部で希釈し、主ドープを十分に攪拌しながら加水分解重縮合物溶液とメチクロライドの混合液を上記主ドープにゆっくりと添加し、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープ4を作製した。
(ドープ5の作製)
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度1.90、プロピオニル置換度0.75) 100質量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート 5.55質量部
アセチルトリブチルシトレート 5.55質量部
チヌビン326(チバスペシャリティケミカルズ製) 0.33質量部
チヌビン109(チバスペシャリティケミカルズ製) 0.56質量部
チヌビン171(チバスペシャリティケミカルズ製) 0.56質量部
メチレンクロライド 460質量部
エタノール 20質量部
加圧密閉溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧密閉溶解タンクにセルロースアセテートプロピオネートを攪拌しながら投入した。これを40℃まで加熱し攪拌しながら完全に溶解し更に可塑剤及び紫外線吸収剤を添加、溶解させた。
SiO2微粒子分散物 OSCAL1432(触媒化成工業製、固形分濃度30%)
1.7質量部(対酢綿0.5%添加)
エタノール 20質量部
SiO2微粒子分散物にエタノールをゆっくり加え、微粒子分散物の希釈液を作製した。この微粒子分散物希釈液を前記のセルロースアセテートプロピオネートの溶解物に攪拌しながらゆっくり添加して、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープ5を作製した。
(ドープ6の作製)
ドープ1の作製においてセルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度1.90、プロピオニル置換度0.75)をセルローストリアセテート(アセチル置換度2.92)に変えた以外はドープ1の作製と同様にしてドープ6を作製した。
(ドープ7の作製)
ドープ1の作製においてセルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度1.90、プロピオニル置換度0.75)をセルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度2.0、プロピオニル置換度0.9)に変えた以外はドープ1の作製と同様にしてドープ7を作製した。
(ドープ8の作製)
ドープ1の作製においてセルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度1.90、プロピオニル置換度0.75)をセルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度1.74、プロピオニル置換度0.76)に変えた以外はドープ1の作製と同様にしてドープ8を作製した。
(ドープ9の作製)
ドープ1の作製においてセルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度1.90、プロピオニル置換度0.75)をセルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度1.65、プロピオニル置換度0.55)に、アセチルトリブチルシトレート5.55質量部を芳香族末端エステル系可塑剤サンプルNo.3の同量に変えた以外はドープ1の作製と同様にしてドープ9を作製した。
(ドープ10の作製)
ドープ1の作製においてセルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度1.90、プロピオニル置換度0.75)をセルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度1.5、プロピオニル置換度0.6)に変えた以外はドープ1の作製と同様にしてドープ10を作製した。
(ドープ11の作製)
図4で示される市販のマイクロ波乾燥装置を使用して材料の乾燥を行った。
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度1.90、プロピオニル置換度0.75)1kgを熱ガラス容器に入れバッチ式マイクロ波加熱装置(1.5kWマイクロ波発振器×2台、公称出力3kW、オーブン寸法1000W×700D×800H(mm))に入れ30分間乾燥を行った。乾燥処理を行ったセルロースアセテートプロピオネートはドープ溶解に使用する直前までデシケーター中で保存した。
このセルローストアセテートプロピオネートを用いて、ドープ1の作製と同様にしてドープ11を作製した。
(光学フィルム1〜36の作製)
前記ドープ2液を40℃に保ち、ドープ液100質量部と微粒子分散液2質量部になるように加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer SWJ)で十分混合し、2つのドラムに張られた回転する長さ60m幅2mで40℃に保温されたステンレスベルト上に幅1.5mで均一に流延した。流延からロール巻き取りまでのフィルム搬送速度は12m/minに設定した。剥離可能な状態である剥離残留溶媒率が80%まで乾燥した後、ステンレスベルト上から張力170N/mで剥離した。その後、テンター搬送・乾燥機でテンタークリップでフィルム幅手方向に表1記載の倍率の延伸を行った。更にロール搬送・乾燥機で多数のロールにより搬送張力130N/mで搬送させながら表1記載の温度で10分間乾燥後、下記マイクロ波照射装置でマイクロ波を照射して乾燥を行いスリットして幅1.4m、膜厚80μmの光学フィルム1を得た。
(マイクロ波照射装置(図2、3参照))
2.45GHzのマイクロ波を5kWのマイクロ波発生装置(マグネトロン)10台で発生させ、導波管を通じてマイクロ波オーブンに導いた。マイクロ波オーブンの中は図2で示すようにフィルム搬送出来るようにし、フィルムの出入り口にはマイクロ波の反射板及び吸収板を設置し、更にオーブンの上部にマイクロ波攪拌装置を設置した。このマイクロ波オーブンはフィルム入口から出口まで6mのオーブンとした。また、マイクロ波発生装置とオーブンの間の導波管にアイソレーター、パワーモニター及び整合器を設置し、このパワーモニターで検出される出力に応じてマイクロ波発生装置の出力を表1の値に調整した。このマイクロ波照射装置は製膜工程中、図3で示す位置に設置した。
光学フィルム1と同様にして、表1に記載のようにドープ液種類、延伸倍率、乾燥温度、マイクロ波照射条件を各々変更して、光学フィルム2〜36を得た。
《評価》
得られた光学フィルム1〜36を用いて下記の評価を行った。
(寸法安定性)
光学フィルム試料表面の2箇所(TD方向、幅手方向に)に十文字型の印を付し、熱処理(条件:80℃,90%RH,200時間)を施し、工場顕微鏡で印間の距離を測定した。
熱処理前の距離をa1とし、熱処理後の距離をa2として、下記式で寸法変化率を算出した。
寸法変化率=(a1−a2)/a1
(平面性;目視評価)
幅90cm、長さ100cmの大きさに各試料を切り出し、50W蛍光灯を5本並べて試料台に45°の角度から照らせるように高さ1.5mの高さに固定し、試料台の上に各フィルム試料を置き、フィルム表面に反射して見える凹凸を目で見て、次のように判定した。この方法によって「つれ」及び「しわ」の判定が出来る。
◎:蛍光灯が5本とも真っすぐに見えた
○:蛍光灯が少し曲がって見えるところがある
△:蛍光灯が全体的に少し曲がって見える
×:蛍光灯が大きくうねって見える
(Ro、Rtの測定)
アッベ屈折率計(4T)を用いて光学フィルムの平均屈折率を測定した。また、市販のマイクロメーターを用いてフィルムの厚さを測定した。
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下24時間放置したフィルムにおいて、同環境下、波長が590nmにおけるフィルムのリターデーション測定を行った。上述の平均屈折率と膜厚を下記式に入力し、面内リターデーション(Ro)及び厚み方向のリターデーション(Rt)の値を得た。
式(i) Ro=(nx−ny)×d
式(ii) Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、nx、ny、nzはそれぞれ屈折率楕円体の主軸x、y、z方向の屈折率を表し、かつ、nx、nyはフィルム面内方向の屈折率を、nzはフィルムの厚み方向の屈折率を表す。また、nx≧nyであり、dはフィルムの厚み(nm)を表す。)
(湿度変化に対するリターデーション値変動)
上記リターデーション値測定法を用いて、下記Rt(a)変動を求めた。
Rt(a)変動は、Rt(b)は23℃、20%RHにて5時間調湿した後、同環境で測定したRt値を測定しこれをRt(b)とし、Rt(c)は同じフィルムを続けて23℃、80%RHにて5時間調湿した後、同環境で測定したRt値を求めこれをRt(c)とし、下記の式よりRt(a)を求めた。
Rt(a)=|Rt(b)−Rt(c)|
更に調湿後の試料を再度23℃55%RHの環境にて測定を行い、この変動が可逆変動であることを確認した。
(反射防止層付きハードコートフィルムの作製)
光学フィルム1を用いて、その表面上に下記ハードコート層を設けた。
《ハードコート層の形成》
(ハードコート層塗布組成物)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(2量体以上の成分を2割程度含む)
108質量部
イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 2質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 180質量部
酢酸エチル 120質量部
上記ハードコート層塗布組成物を押出しコートし、次いで80℃に設定された乾燥部で30分間乾燥した後、紫外線を150mJ/cm2照射して塗布層を硬化させ、厚さ5μmのハードコート層(屈折率1.55)を形成し、ハードコートフィルムを作製した。
次いで、下記反射防止層を塗設し、反射防止層付きハードコートフィルムを作製した。
《多層反射防止層の形成》
(中屈折率層塗布組成物)
テトラ(n)ブトキシチタン 250質量部
末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製L−9000)
0.48質量部
アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBE903)
22質量部
UV硬化性エポキシ樹脂(旭電化社製KR500) 21質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 4900質量部
イソプロピルアルコール 4840質量部
(高屈折率層塗布組成物)
テトラ(n)ブトキシチタン 310質量部
末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製L−9000)
0.4質量部
アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBE903)
4.8質量部
UV硬化性エポキシ樹脂(旭電化社製KR500) 4.6質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 4900質量部
イソプロピルアルコール 4800質量部
(低屈折率層塗布組成物)
下記シリカ系微粒子P−1 35質量部
フッ素含有樹脂オプスターJM5010(JSR(株)製) 64.5質量部
FZ−2222(日本ユニカー製、10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液) 0.5質量部
イソプロピルアルコー−ル 500質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 300質量部
メチルエチルケトン(MEK) 100質量部
〈シリカ系微粒子P−1の調製〉
平均粒径5nm、SiO2濃度20質量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として0.98質量%のケイ酸ナトリウム水溶液9000gとAl23として1.02質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のSiO2・Al23核粒子分散液を調製した。(工程(a))
この核粒子分散液500gに純水1700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2濃度3.5質量%)3000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。(工程(b))
次いで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1125gを加え、更に濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO2・Al23多孔質粒子の分散液を調製した(工程(c))。上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750g及び28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO228質量%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。次いで、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P−1)の分散液を調製した。
この中空シリカ系微粒子の第1シリカ被覆層の厚さは3nm、平均粒径は47nm、MOx/SiO2(モル比)は0.0017、屈折率は1.28であった。ここで、平均粒径は動的光散乱法により測定した。
上記ハードコートフィルム上に、中屈折率層、高項屈折率層、低屈折率層の順番でハードコート層の上に、ダイを用いて塗布し、120℃で乾燥した後、ハードコート層形成時と同様の条件で紫外線照射を行い各反射防止層を硬化させ、多層反射防止層を形成した。形成される層の膜厚をオンラインで測定しながら流量条件を制御した。この様にして、中屈折層(厚さ:75nm)、高屈折層(厚さ:70nm)、低屈折率層(厚さ:93nm)を形成し、多層反射防止層を有する反射防止層付きハードコートフィルムを作製した。
各層の屈折率と膜厚は、各層を単独で塗工したサンプルについて、分光光度計の分光反射率の測定結果から求める。分光光度計はU−4000型(日立製作所製)を用いて、サンプルの裏面を粗面化した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行い、裏面の光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400〜700nm)の反射率測定を行う。出来上がった各層単独の屈折率は中屈折率層1.65、高屈折率層1.90、低屈折率層1.37であった。
《偏光板の作製》
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムをヨウ素1kg、ヨウ化カリウム2kg、ホウ酸4kgを含む水溶液100kgに浸漬し50℃で4倍に延伸し、幅1.4mの偏光膜を作製した。
上記作製した反射防止層付きハードコートフィルム及び作製した光学フィルム1〜36を2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に60℃で1分間浸漬しケン化処理した。反射防止層付きハードコートフィルムの反射防止層はポリエステル製の保護フィルム(膜厚40μm)を張り付けてアルカリから保護した。
偏光膜の片面に上記ケン化処理した反射防止層付きハードコートフィルムの反射防止層とは反対の面に、ポリビニルアルコール重合体(クラレ社製:PVA203、ケン化度86.5〜89.5%、平均重合度300)の10%水溶液を滴下して積層し、また、偏光膜の反対面に光学フィルム1〜36にも同様にポリビニルアルコール重合体の10%水溶液を滴下し、同様に積層した。
上記3層の積層フィルムを、PVA水溶液が乾燥しない内にロール トゥ ロールで圧着し、70℃の乾燥ゾーンを通過させ乾燥した後、巻き取った。その後、偏光板を打ち抜き、偏光板1〜36を得た。
これらの偏光板1〜36を用いて、シャープ製液晶パネルLL−T1620との組み合わせで、該液晶パネルに予め貼合されていた偏光板を剥がし、液晶セルの両面に偏光板の透過軸が、予め貼合されていた偏光板の透過軸と同じ方向になるように粘着剤を介して偏光板を貼合して、液晶表示装置1〜36を作製した。
《評価》
(コーナームラ)
作製した液晶表示装置を60℃、90%RHにて1500時間保管した後、液晶表示装置を点灯して、6時間後に黒表示での周辺の光漏れ(コーナームラ)の有無を確認した。
◎:周辺の光漏れは全く認められない
○:周辺の光漏れは殆ど気にならない
△:周辺の光漏れが認められる
×:周辺の光漏れが著しい
以上の評価結果を表1に示す。
Figure 2006212917
表1より、総アシル基の置換度が2.7以下であるセルロースエステルを用い、乾燥工程でマイクロ波を照射した本発明の光学フィルムは、寸法安定性、平面性、湿度変化に対するリターデーション値変動が比較例に対し優れていることが分かる。特に、延伸処理後の乾燥工程でマイクロ波を照射した光学フィルムは、十分なリターデーション値を有しながら、かつ上記特性が優れている位相差フィルムであることが分かる。
また、セルロースエステルとしてセルロースアセテートプロピオネートを用いることや、本発明に係る可塑剤、反応性金属化合物の加水分解重縮合物、SiO2微粒子を用いること等は本発明の効果を高めることが分かる。
また、原材料であるセルロースアセテートプロピオネートをマイクロ波照射し作製したドープ11を用いた光学フィルム35は寸法安定性が更に良好になることが分かる。
更に、表1より本発明の光学フィルムを用いた偏光板、それを用いた液晶表示装置はコーナームラが比較例に対して改善されていることが明らかである。
フィルムの溶液流延製膜法の好ましい例を示す模式図である。 本発明の好ましいマイクロ波加熱装置の模式図である。 マイクロ波乾燥装置を組み込んだフィルム製膜装置の例である。 コンベアオーブン式マイクロ波照射装置の模式図である。 シリカアルコキシドの加水分解前後の29Si−NMRスペクトルを表す図である。
符号の説明
1 鏡面帯状金属流延支持体
2 ダイス
3 フィルム剥離点
4 剥離されたフィルム
5 テンター搬送・乾燥工程
6 張力カット手段
7 巻き取られたロール状のフィルム
8 ロール搬送・乾燥工程
10 流延部
11 乾燥室
12 流延ダイ
13 ドラム
20 テンター式乾燥機
21 乾燥部
22 保持部
30 ローラー乾燥ゾーン
32 搬送ロール
40 巻き芯
51、82 排気口
52、83 乾燥風取り入れ口
81 乾燥箱
84 上部搬送用ロール
85 下部搬送用ロール
100 マイクロ波乾燥装置
101 イクロ波オーブン
102 マイクロ波発生器
103 導波管
104 反射板
105 電波吸収体
106 搬送ロール
107 撹拌翼
108 添加剤材料
109 ベルトコンベア
110 排気口

Claims (13)

  1. 総アシル基の置換度が2.7以下であるセルロースの低級脂肪酸エステルを含有する光学フィルムの製造方法において、乾燥工程でマイクロ波を照射するフィルム乾燥を行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  2. 総アシル基の置換度が2.7以下であるセルロースの低級脂肪酸エステルと反応性金属化合物の加水分解物または重縮合物、またはSiO2微粒子とを含有する光学フィルムの製造方法において、乾燥工程でマイクロ波を照射するフィルム乾燥を行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  3. 前記反応性金属化合物がSi、Ti、ZrまたはAlのアルコキシドであることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 総アシル基の置換度が2.7以下であるセルロースの低級脂肪酸エステルと多価アルコールエステル系可塑剤とを含有する光学フィルムの製造方法において、乾燥工程でマイクロ波を照射するフィルム乾燥を行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  5. 総アシル基の置換度が2.7以下であるセルロースの低級脂肪酸エステルとクエン酸エステル系可塑剤またはポリエステル系可塑剤とを含有する光学フィルムの製造方法において、乾燥工程でマイクロ波を照射するフィルム乾燥を行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  6. 前記マイクロ波を照射するフィルム乾燥を延伸工程の後の乾燥工程で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  7. 前記マイクロ波を照射するフィルム乾燥の後に、更に熱風によるフィルム乾燥を行う乾燥工程を設けることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  8. 前記光学フィルムを構成する溶媒以外の添加剤材料の少なくとも1種を予めマイクロ波を照射することにより乾燥することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  9. 総アシル基の置換度が2.7以下であるセルロースの低級脂肪酸エステルを含有する光学フィルムの製造方法において、マイクロ波発生器、導波管、マイクロ波オーブン、反射板、及び電波吸収体を備えたマイクロ波照射装置で該光学フィルムの乾燥を連続的に行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  10. 前記マイクロ波照射装置がマイクロ波攪拌機構を備えることを特徴とする請求項9に記載の光学フィルムの製造方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法により製造されたことを特徴とする光学フィルム。
  12. 請求項11に記載の光学フィルムを少なくとも一方の面に用いたことを特徴とする偏光板。
  13. 請求項11に記載の光学フィルムまたは請求項12に記載の偏光板を用いたことを特徴とする表示装置。
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