以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意研究を行った結果、連続搬送されている長尺フィルムを液体で濡らし、該長尺フィルムを弾性体で連続的に擦った後、該長尺フィルム表面の液体を除去する光学フィルムの処理方法において、該弾性体の表面の静摩擦係数が0.2以上0.9以下であることを特徴とする光学フィルムの処理方法により、長尺フィルム上に反射防止層等の機能性層を塗布する際に発生し易い横段むら、塗布筋などの塗布故障が改善されるという驚くべき効果を見出し、本発明を成すに至った次第である。本発明者らは、長尺フィルムを液体で濡らし、該長尺フィルムを弾性体で連続的に擦り、その後該長尺フィルム表面に付着した液体を除去する工程を通すことにより、該長尺フィルムの皺、つれ、歪み等を矯正することが出来、その結果、該長尺フィルムの平面性を向上し、ハードコート層等を介して反射防止層等の機能性層を塗布する際の塗布故障を改善出来ることを見出したものである。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の光学フィルムの処理方法、処理装置について、図1〜11を用いて説明する。但し、本発明はこれら例示する構成にのみ限定されるものではない。
図1は、本発明の弾性体により、連続的に搬送される長尺フィルムの一方の面を擦る装置の全体を示す模式図である。長尺フィルムFは予めスプレーノズル8により液体を噴射され被処理面が濡らされた状態でガイドローラ2によりガイドされ、駆動される弾性体1(弾性体ロール)により擦られる。駆動される弾性体1は液体槽3に貯溜された液体4により常に洗浄され、エアーノズル9により付着した液体は除去される。長尺フィルムFは弾性体により擦られた後、ガイドローラ2′により搬送され、サクションノズル7により付着した液体が吸引され除去される。更にエアーノズル6により余分な液体及び異物などはエアーを吹き付け除去される。
弾性体1の対向側にはエアーノズル5が配置され、エアーを吹き付けることで液体のフィルム裏まわりを防止する。また、エアーノズル5は空気圧を調整することで、長尺フィルムの弾性体への圧着度を制御することが出来、後述するように長尺フィルムの背面を空気圧を調整し加圧しながら前記弾性体で連続的に擦ることが出来る。前記加圧手段として前記エアーノズル5を使用しても、バックロール等を使用してもよいが、上述したように液体のフィルム裏まわりを防止する意味からも、エアーノズル5を用いることが好ましい。次いで長尺フィルムはドライヤー(図示していない)へ搬送され両面とも乾燥され、次工程である機能性層の塗布工程へ搬送される。
ガイドローラ2、2′は、長尺フィルムFの走行をガイドする。ここで、各ガイドローラ2、2′は、それぞれ所定の位置に配置されるが、この際重要なのが、長尺フィルムFが弾性体1に対して後述する所望のラップ角をもって接触するように配置することである。
弾性体1は、ガイドローラ2とガイドローラ2′との間に配置されており、図示しないモータに駆動されて回転する。この弾性体1は、下部が液体槽3内に配置された液体4に浸漬されている。長尺フィルムFは、この回転する弾性体1により連続的に擦られて、表面の皺、つれ、歪みが矯正される。
尚、弾性体1は下部が液体4に浸漬されていることが好ましく、回転することによりその表面が液体4に浸漬され、フィルム面を擦った際に付着する異物等の洗浄がなされる。このとき、弾性体の下部では、弾性体表面の汚れや付着物を除去するためにブレードやブラシや不織布などで擦って清浄化することも出来るし、また、図で示す超音波振動子10を用いることも出来る。本発明では、弾性体1の汚れ、異物の付着等を効果的に除去出来る為超音波振動子を用いることが好ましい。この超音波振動子10は、弾性体1の表面に超音波を放射し、転写した異物を脱落させる。尚、超音波振動子10は、放射した超音波を弾性体1の表面へと効率よく伝搬するために、弾性体1との間に液体4が保持されるよう配置する。又、複数の振動子を設けても良く、この場合、隣接する振動子からの超音波の重なりが一様になるよう、超音波振動子間の間隔を決定する必要がある。超音波振動子10の周波数は、10〜100000kHzまでを使用することが出来る。又、異なる周波数を発振する複数の振動子を組み合わせたり、周波数変調が可能な振動子を使用することも出来る。
振動子単位面積あたりの超音波出力は0.1W/cm2〜2W/cm2を使用することが出来る。超音波振動子10から弾性体1までの距離には定在波の存在から最適点が有り、以下の式の整数倍の距離にすることが望ましい。
λ=C/f
ここで、λは波長、Cは液中の超音波伝搬速度、fは周波数である。
超音波処理の時間は1〜100sec、10〜100000kHzの範囲内で行うことが好ましい。特に好ましくは40〜1500kHzである。
用いられる超音波振動子として、本多電子社製 WS−600−28N、WS−600−40N、WS600−75N、WS−600−100N、WS−1200−28N、WS−1200−40N、WS−1200−75N、WS−1200−100N、N60R−M、N30R−M、N60R−M、W−100−HFMKIIN、W−200−HFMKIIN、日本アレックス社製などが用いられる。
弾性体1は液体4に浸漬された後、回転により液体4から引き上げられ、弾性体表面に付着した液体を除去されるが、除去手段として不織布やブレードによる掻き落としでもよいが、エアーノズルによる掻き落としが特に好ましい。
図1ではエアーノズル9により、弾性体1に付着した液体は除去される。液体の除去率80〜100%で除去されることが好ましく、より好ましくは90〜100%である。
除去率=(弾性体表面から除去した液体の量/除去前に弾性体表面に付着していた液体の量)×100
上記エアーノズル、サクションノズルは、市販の装置を使用することが出来、例えば、大浩研熱(株)製:MXシリーズ、DX・DYシリーズ、DZ・DLZシリーズ、DN・DMシリーズ、DL・DLXシリーズ、CX・CLXシリーズ、LDN・LDLXシリーズ、DVシリーズ、バウノズル、RSシリーズ、RDシリーズ、Dシリーズ、NMシリーズ、スプレーイングシステムスジャパン(株)製:50750シリーズ、SJAシリーズ等が好ましく使用出来る。
エアーノズル、サクションノズルの好ましい取り付け仕様の一例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
〈エアーノズル〉
スリット幅:0.8mm(好ましくは0.2〜2mmの範囲)
スリット長:1600mm(フィルム幅による)
噴出し風速:100m/sec(好ましくは50〜300m/secの範囲)
フィルムとの距離:3mm(好ましくは2〜10mmの範囲)
〈サクションノズル〉
スリット幅:2mm(好ましくは0.2〜4mmの範囲)
スリット長:1600mm(フィルム幅による)
吸い込み風速:50m/sec(好ましくは20〜150m/secの範囲)
フィルムとの距離:3mm(好ましくは2〜10mmの範囲)
図2〜図6は本発明に係る別の装置の全体を示す模式図である。
図2ではエアーノズル8の替わりに塗布機18を用いた例、図3はフィルターで濾過された液を液体槽3の上部から戻す例、図4はエアーノズル8への液体供給を新液で行う例、図5は液体槽3に新液のみ供給し循環させない例、図6は弾性体1を液体槽3で洗浄させないで付着した液滴のみをエアーノズル9で飛ばす例を示してある。
図7(a)〜図7(e)はエアーノズル5または6の設置箇所とエアーの吹き出し方向を示した模式図である。図7(a)はフィルム進行方向にカウンターでエアーを吹き付けている様子を示し、図7(b)(c)はフィルム外側に向かってエアーを吹き付けている様子である。図7(d)、(e)は主にフィルムの被処理面とは反対側に設置されるエアーノズル5、6に適し、液体の裏まわりを防止することに効果が高い。
本発明では、フィルムの被処理表面を濡れた状態にして弾性体により擦るため、弾性体1の手前でフィルム表面への液体供給手段を設ける。液体供給手段としては、グラビアコーター、ワイヤーバー、スリットダイコーター、ディップコーターなどの塗布方式やインクジェット方式でも良いが、スプレーノズルなどを用いることが可能である。好ましくはスプレーノズルによる供給が望ましい。
液体に純水を用いた場合、グラビアコーター、ワイヤーバー、スリットダイコーター、ディップコーターなどの塗布方式によりフィルムに純粋を供給すると、純水を供給した直後にフィルム上の純水は大きな玉となり、搬送中にフィルム上から純水がこぼれてしまう。一方スプレーノズルによりフィルムに純水を供給した場合は、フィルム上の純水は細かい玉になり、搬送中にフィルム上からこぼれることはない。
本発明では、弾性体で擦られる前に被処理面のみが予め濡らされていることが必須である。図1の液体供給手段スプレーノズル8をガイドローラ2の前に配置し、オーバーフロー槽3′に貯溜された液体を配管で結ばれた紫外線殺菌装置11により殺菌し、更に濾過フィルター12で濾過し圧送ポンプ13を介してノズル8より噴射し長尺フィルムの被処理面を予め濡らすことが出来る。ここで使用される濾過フィルターは適宜選択出来るが、孔径0.1〜10μmのフィルターを単独若しくは適宜組み合わせて用いられる。また、濾過寿命や取り扱いの簡便性より、プリーツ折り込み型のカートリッジフィルターが有利に選定出来る。
また、濾過循環流量は、フィルム表面より持ち込まれる異物により液体槽内の異物数が経時と共に増加しないように設定する必要がある。液体中に浮遊する異物数の定量化には、野崎産業社製HIAC/ROYCO液体微粒子カウンターモデル4100が簡便に利用され、除去すべきサイズの粒子が運転時間とともに増加しないよう、フィルターの分画サイズや循環流量を調節することが出来る。また、液体槽内の液体は0.1〜10回/hrで新液に置換されることが異物数の増加を抑制する上で好ましい。
スプレーノズル8はフィルム幅手方向の長さを有する棒状のものを1台使用しても、短尺のものを複数台数使用してもよい。ノズルの開口径は特に制限はないが、05mm〜2mm程度であることが好ましく、送液液量は0.1L/分〜10L/分の範囲であることが好ましい。スプレーノズルを複数台使用する時は、幅手方向で流量分布が均一になるように調整することが好ましく、上記送液流量の範囲で各スプレーノズルを通過した液体の流量ばらつきが±1%以内に入ることが好ましい。
本発明におけるスプレーノズルの種類は特に制限はなく、フラットスプレーノズル、ソリッドスプレーノズル、フルコーンスプレーノズル、ホローコーンスプレーノズル、さらには二流体スプレーノズルなど公知のスプレーノズルが適用出来る。
スプレーノズルは市販のものを使用することが出来、例えば、スプレーイングシステムスジャパン(株)製:VeeJet、UniJet、FloodJet、1/8J1/4Jシリーズ、1/4JAUシリーズ、(株)いけうち製:VE・VEPシリーズ等が好ましく用いられる。
図8は、本発明において好ましく用いられるスプレーノズル装置の概略図である。図は一例でありこれに限られるものではない。
スプレーノズル8は、ノズル14をフィルムFの幅手方向に対し複数個有し、配管15より前述のオーバーフロー槽3′より引き抜かれた液体4が供給され噴霧される。噴霧された液体がフィルムの裏面に裏まわりしないように、邪魔板16を設けることが好ましい。フィルムの被処理面への液体の付き量は適宜変更することが可能であり、その場合、液滴径、流量、スプレーノズルの数、フィルムとスプレーノズルの距離、スプレー噴射角度、スプレー圧等を適宜設定して制御する。
液体の付き量は、1g/m2以上であることが好ましく、より好ましくは3g/m2以上100g/m2以下である。
液滴径の平均は10μm以上5000μm以下であることが好ましい。液滴径の測定方法は以下の通りである。
〈液滴径測定方法〉
液滴径測定条件は、液温20℃の水、室温20±2℃、湿度50±5%、ライン速度15m/minで搬送されているフィルムに向かってスプレーノズルより液体を噴射し、噴射後、フィルムをサンプリングし、図9で示す液滴径を顕微鏡にて測定する。
本発明に係るスプレーノズルの設置位置は、後述する長尺フィルムの被処理面が液体で濡れている時間が好ましくは2秒以上60秒以下である位置を勘案して設置される。フィルムの搬送速度により上記位置は変わるが、弾性体1によって擦られる時に、予め噴霧した液体の付き量、液滴径が保持されることが、本発明の効果を得る上で必要である。
本発明に係る弾性体1は、長尺フィルムFの搬送方向に対して順転しても逆転してもよいが、弾性体1と長尺フィルムFとの線速度の差の絶対値が5m/分以上に保たれるように直径と回転速度を設定することが好ましい。回転速度は1〜100rpmが好ましく、5〜60rpmがより好ましい。
本発明の処理を行う際の長尺フィルムFの搬送速度は通常5〜200m/分であり、好ましくは10〜100m/分である。
弾性体1はロール形状をとることが連続生産に適している。また、弾性体1は、天然ゴム、合成ゴム等の単一の素材により構成されていても、また金属ロールとゴム等の複合素材により構成されていてもよい。例えば、アルミ、鉄、銅、ステンレス等の金属ロールに、6−ナイロン、66−ナイロン、共重合体ナイロン等のポリアミドや、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニデリン、テフロン(登録商標)等のポリハロゲン化ビニルや、天然ゴム、ネオプレンゴム、ニトリルゴム、ノーデル、バイトンゴム、ハイパロン、ポリウレタン、レイヨン(登録
商標)、セルロース類等を金属ロールの表面上に0.5mm以上、好ましくは0.5〜100mm、特に好ましくは1.0〜50mmの厚みで被覆することが出来る。これらの弾性体の材質を選定する観点は、使用する液体によって軟化したり溶出したりしないことが好ましい。また、弾性体1のゴム硬度はJISK−6253に規定される方法でデュロメーターA型により測定され、15〜70であることが好ましく、20〜60であることがより好ましい。
本発明では弾性体表面の静摩擦係数が、0.2以上、0.9以下であることが必要である。より好ましくは0.3以上、0.8以下である。0.2未満では長尺フィルムを擦り、表面の皺、つれ、歪みを矯正する効果が弱く、0.9を超えると擦られる長尺フィルムを傷つけ、横段ムラが発生する為、好ましくない。
弾性体の静摩擦係数は以下の方法により測定することが出来る。
〈弾性体の静摩擦係数測定〉
図10に本発明に係る弾性体の静摩擦係数を測定する方法の一例を示す。
ヘイドン表面性試験機 TYPE:HEIDON−14D(新東科学株式会社製)を用い、ボール圧子(SUSφ6)法により被測定物(加硫ゴム成形体)の摩擦係数を測定した。図10に本試験の原理図を示す。
このヘイドン表面性試験機では、図10に示すように垂直荷重用分銅が支持部材を介してSUS製ボール上に取付られており、このSUS製ボールを弾性体から切り取った試験片上に垂直荷重用分銅(200g)の重さで押し付ける。そして、前記試験片を紙面に向かって右方向に移動させるときに生じる摩擦力を計測する。
該試験機でのその他の測定条件を以下に記す。
測定治具;ボール圧子(SUSφ6)
試料サイズ;試料サイズは特に限定はないが、移動距離50mm以上を確保出来るサイズが好ましい。
試験荷重;200g(垂直荷重用分銅)
試験速度;600mm/min
雰囲気;23℃±2、50%±10RH(空調範囲内結露無きこと)
通常のゴムでは静摩擦係数は1.0以上であるので、本発明に係る弾性体1は表面改質ゴムであることが好ましく、弾性体1を上記範囲の静摩擦係数にするには、特開平7−158632号公報記載のナトリウム−ナフタレン錯体で処理されたフッ素樹脂粉末が充填されたシリコーンゴム層を用いる方法、特開平9−85900号公報記載の超高分子量ポリオレフィン粉体の溶融体から形成された薄膜を用いる方法、特開平11−166060号公報記載の加硫ゴムにアルコキシシランの加水分解物の重縮合体を形成する方法、特開平11−199691号記載の官能基含有モノマーをゴムと加熱反応させる方法、特開2000−198864号記載のゴムとシリカを反応させる方法、特開2002−371151号公報記載のフッ素ゴム基材と官能基含有モノマーを加熱反応させる方法、特開2004−251373号公報記載のクロロブレン系のゴムを用いる方法等の開示されている方法を用いることが好ましいが、本発明では、特開2000−158842号公報記載のように、弾性体にゴムを用い、その表面に有機ハロゲン化合物処理を施すことにより調整する方法がより好ましい。
有機ハロゲン化合物処理により変性することの出来るゴムは、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、合成イソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体ゴム、天然ゴム等である。この目的において好ましい弾性体はアクリロニトリル・ブタジエンゴムである。これらゴムは通常加硫して使用され、加硫は当業界で用いられる通常の加硫方法によって行ってよい。
上記ゴム類を変性するために用いられる有機ハロゲン化合物としては、N−ブロモサクシンイミドのようなハロゲン化サクシンイミド、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸のようなイソシアヌル酸のハロゲン化物、ジクロロジメチルヒダントインのようなハロゲン化ヒダントインが例示出来る。好ましくはトリクロロイソシアヌル酸である。
有機ハロゲン化合物をゴム表面に作用させるには、有機溶媒に溶かして適当な濃度で使用するのが好ましい。この目的で使用するに適した溶媒は、この有機ハロゲン化合物と反応しないことが必要であり、使用出来る有機溶媒としては、例えばベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、塩化エチル、クロロホルムなどの塩素化炭化水素類等が挙げられる。ゴム表面を処理する場合の有機溶媒中の有機ハロゲン化合物の濃度は特に制限されるものではないが、通常2〜10質量%、好ましくは4〜6質量%である。2質量%より濃度が高いとゴムを変性する効率が良く、一方10質量%より低いとゴム表面への均一で効果的な塗布がし易くなり、また変性効果も十分であり、ゴムが硬化することもない。
有機ハロゲン化合物の溶液をゴムに作用させるには、両者を単に接触させるだけでよく、特別の方法を必要とせず、例えば、ゴムの表面にスプレーまたは刷毛で塗布することも出来るし、溶液中にゴムを浸漬してもよく、更にこすりつけてもよい。
また、弾性体1に対する長尺フィルムFのラップ角(弾性体1の長尺フィルムFに対す接触角)は、弾性体1の前後に配置されたガイドローラ2、2′の配置で決定される。ラップ角を大きくとることは、弾性体1上の長尺フィルムFの通過の処理時間を延長出来るため、より高い擦り効果が得られるが、シワ、擦りキズ、蛇行を起こさず安定に搬送するためには180度未満、好ましくは1度以上135度未満、更に好ましくは5度以上90度未満に設定する。また、弾性体1の直径を大きくすることでも同様に処理時間を延長出来るが、占有空間や価格の問題より直径2000mm未満、好ましくは50mm以上1000mm未満、更に100mm以上500mm未満であることが好ましい。
前記長尺フィルムが前記弾性体で擦られる時間は0.05秒以上3秒以下であることが好ましい。0.05秒未満では本発明の効果が得られにくく、3秒以下であると液膜の破断による擦り傷の発生等もなく十分な擦り効果が得られる。
弾性体1上の長尺フィルムFにかかる面圧は、前述のエアーノズル5による空気圧で制御出来るが、更にフィルム搬送系のテンションとロール径でも制御出来る。ロール径は上記処理時間とも関わるので、搬送系のテンションを制御することが好ましい。本発明の効果を得るには、面圧を高く保つことが好ましいが、あまり高く設定すると液体の液膜が破断し弾性体1と長尺フィルムFとが直接接触することで擦りキズが発生しやすくなる。通常は前記長尺フィルムが前記弾性体で擦られる際の面圧が500N/m2以上5000N/m2に設定することが好ましい。
面圧N/m2=(ライン張力N/フィルム幅m)/弾性体半径mで求められる。
また、スプレーノズル8、弾性体、サクションノズル7、及びエアーノズル6間の距離を調整することにより、長尺フィルム被処理面が液体で濡れている時間を制御することが出来、ウォーターマークの発生等を防止する観点から該被処理面が濡れている時間は2秒以上60秒以下であることが好ましい。長尺フィルムの被処理面が濡れている時間の起点は、予め長尺フィルム面を濡らす液体供給手段(例えばノズル8)における液体が噴射され長尺フィルム被処理面を濡らす時点が起点となる。濡れている時間の終点は、例えばサクションノズル7、及びエアーノズル6による長尺フィルムの被処理面に付着している液滴の95%以上が飛散または揮発した時点を指す。エアーノズル6から噴射されるエアーの温度は室温〜80℃であることが好ましく、40〜70℃であることがより好ましい。
液体4としては特に制限されるものではないが、長尺フィルムFに含まれる成分、或いはベース表面に塗工その他の方法で組み込まれた下引き層などを溶解/抽出しないものを選択することが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸メチル、トルエン、キシレンなどの有機溶媒或いは、フッ素系溶媒、酸やアルカリ、塩、界面活性剤、消泡剤等を含有する水或いは純水などが挙げられるが、最も好ましいのは純水である。
本発明では、前記液体4の温度は通常0〜100℃であるが、特に30℃以上100℃以下であることが好ましく、同時に前記弾性体の温度も30℃以上100℃以下であることが、本発明の効果を得る上で好ましい。液体4の温度調整は通常のヒーター方式で温水循環により行うことが好ましく、また弾性体の温度は、温水に適当な時間浸漬して暖めたり、弾性体内部に温水循環することにより調整することが好ましい。
搬送速度としては5m/min以上200m/min以下の範囲で適時設定することが出来る。
また本発明では皺、つれ、歪み等を更に精度よく矯正する為に、長尺フィルムの蛇行を防止する装置を付加することが好ましく、特開平6−8663号に記載のエッジポジションコントローラー(EPCと称することもある)や、センターポジションコントローラー(CPCと称することもある)等の蛇行修正装置が使用されることが好ましい。これらの装置は、フィルム耳端をエアーサーボセンサーや光センサーにて検知して、その情報に基づいて搬送方向を制御し、フィルムの耳端や幅方向の中央を一定の場所にとどめようとするもので、そのアクチュエーターとして、具体的には1〜2本のガイドロールや駆動付きフラットエキスパンダーロールをライン方向に対して、左右(又は上下)にふることで蛇行修正したり、フィルムの左右に小型の2本1組のピンチロールを設置(フィルムの表と裏に1本ずつ設置されていて、それがフィルムの両側にある)し、これにてフィルムを挟み引っ張り蛇行修正したりしている(クロスガイダー方式)。これらの装置の蛇行修正の原理は、フィルムが走行中に、例えば左にいこうとする時は前者の方式ではロールをフィルムが右にいくように傾ける方法をとり、後者の方法では右側の1組のピンチロールがニップされて、右に引っ張るというものである。
これら蛇行防止装置を本発明に係る弾性体を配置した位置を起点に、上流側または下流側の2〜30mの範囲内に設置することが好ましく、上流側及び下流側に各々少なくとも1台設置することがより好ましい。
本発明に係る光学フィルムは、上記の製造方法を経て得られることを特徴としており、本発明において、該光学フィルムは反射防止フィルムの支持体として用いられることが好ましい。
本発明の光学フィルムを用いた反射防止フィルムの特徴は、支持体上の少なくとも一方の面に、支持体側から高屈折層、低屈折層を順に積層した光学干渉層の積層体である(場合によっては他の層を追加することもあり得る。)。又、支持体と反射防止層との間にはハードコート層を設けることが好ましい。ハードコート層は後述の活性線硬化樹脂を用いて設けられる。
反射防止層は波長λの光に対して、高屈折層及び低屈折層の光学膜厚をλ/4に設定されることが好ましい。光学膜厚とは、層の屈折nと膜厚dとの積によって定義される量である。屈折率の高低はそこに含まれる金属、または化合物によってほぼ決まり、例えば、Tiは高く、Siは低く、Fを含有する化合物は更に低く、このような組み合わせによって屈折率が設定される。屈折率と膜厚は、分光反射率の測定により、計算し算出される。
ここで、金属化合物を含む溶液を支持体に塗工して膜を得る場合、この反射防止光学特性は上記のように物理的な膜厚のみによって決まる。
特に550nm近傍の反射光の色彩は膜厚が僅か数nmずれることで、赤紫と青紫の間で変化する。この色ムラはディスプレイからの透過光量が多い場合は殆ど目立たないが、光量が少ない場合またはディスプレイを消したとき顕著に色ムラが目立ち視認性が劣ることになる。また、膜厚のずれが大きい場合は、400〜700nmでの反射率を下げることが出来ず、所望の反射防止特性を得ることが困難となる。
〔長尺フィルム〕
本発明において使用する長尺フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、環状オレフィン樹脂フィルム等を挙げることが出来る。これらはメルトキャスト法若しくはソルベントキャスト法によって製膜されたものが好ましく用いられる。中でもセルロースエステルフィルムが本発明において好ましく、特に、少なくとも一方向に延伸したセルロースエステルフィルムが好ましい。セルロースエステルフィルムとしては、例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4UE,KC4FR−1,KC4FR−2(以上、コニカミノルタオプト(株)製)などが好ましく用いられる。長尺フィルムの膜厚としては10〜500μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜100μm、特に好ましくは、30〜70μmであり、長さは100〜10000m、好ましくは300〜5000mである。
本発明に好ましく用いられるセルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を挙げることがきる。またそれらから得られたセルロースエステルは、それぞれを単独でまたは任意の割合で混合使用することが出来るが、綿花リンターを50質量%以上使用することが好ましい。
セルロースエステルは、セルロース原料のアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて反応が行われる。アシル化剤が酸クロライド(CH3COCl、C2H5COCl、C3H7COCl)の場合には、触媒として
アミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には特開平10−45804号公報に記載の方法で合成することが出来る。セルロースエステルはアシル基がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度という。
例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している。
セルロースエステルフィルムに用いることが出来るセルロースエステルには特に限定はないが、総アシル基の置換度が2.40〜2.98であることが好ましく、アシル基のうちアセチル基の置換度が1.4以上がより好ましく用いられる。
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することが出来る。
セルロースエステルは、セルローストリアセテートやセルロースジアセテート等のセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基またはブチレート基が結合したセルロースエステルであることが好ましい。尚、ブチレートは、n−の他にiso−も含む。プロピオネート基の置換度が大きいセルロースアセテートプロピオネートは耐水性が優れる。
セルロースエステルの数平均分子量Mn(測定法は下記に記載)は、70000〜250000の範囲が、得られるフィルムの機械的強度が強く、かつ適度のドープ粘度となり好ましい。更に80000〜150000が好ましい。また、質量平均分子量Mwとの比(Mw/Mn)は1.0〜5.0のセルロースエステルが好ましく使用され、更に好ましくは1.5〜4.5である。
《セルロースエステルの数平均分子量の測定》
高速液体クロマトグラフィーにより下記条件で測定する。
溶媒 :アセトン
カラム :MPW×1(東ソー(株)製)
試料濃度 :0.2(質量/体積)%
流量 :1.0ml/分
試料注入量:300μL
標準試料 :ポリメチルメタクリレート(質量平均分子量188,200)
温度 :23℃
また、セルロースエステルを製造中に使用する、または使用材料に微量ながら混在しているセルロースエステル中の金属は出来るだけ少ない方が好ましく、Ca、Mg、Fe、Na等の金属の総含有量は100ppm以下が好ましい。
〔有機溶媒〕
セルロースエステルを溶解しセルロースエステル溶液またはドープ形成に有用な有機溶媒として、塩素系有機溶媒のメチレンクロライド(塩化メチレン)を挙げることが出来、セルロースエステル、特にセルローストリアセテートの溶解に適している。非塩素系有機溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来る。
これらの有機溶媒をセルローストリアセテートに対して使用する場合には、常温での溶解方法も使用可能であるが、高温溶解方法、冷却溶解方法、高圧溶解方法等の溶解方法を用いることにより不溶解物を少なくすることが出来るので好ましい。
セルローストリアセテート以外のセルロースエステルに対しては、メチレンクロライドを用いることも出来るが、メチレンクロライドを使用せずに、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用することが出来る。特に酢酸メチルが好ましい。本発明において、上記セルロースエステルに対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。これらはドープを金属支持体に流延後溶媒が蒸発をし始めアルコールの比率が多くなるとウェブがゲル化し、ウェブを丈夫にし金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることが出来る。
これらのうちドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、かつ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。これらの有機溶媒は単独ではセルロースエステルに対して溶解性を有していないので、貧溶媒という。
〔溶液流延製膜方法によるセルロースエステルフィルムの作製〕
支持体として使用するセルロースエステルフィルムの製膜方法について述べる。セルロースエステルフィルムは溶液流延製膜方法によ作製する。
(1)溶解工程:セルロースエステル(フレーク状の)に対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該セルロースエステル、ポリマーや添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程、またはセルロースエステル溶液にポリマー溶液や添加剤溶液を混合してドープを形成する工程である。セルロースエステルの溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号、同9−95557号または同9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることが出来るが、本発明においては、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
ドープ中のセルロースエステルの濃度は10〜35質量%が好ましい。溶解中または後のドープに添加剤を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
(2)流延工程:ドープを送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属ベルト、例えばステンレスベルト、または回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。ダイの口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。
(3)溶媒蒸発工程:ウェブ(金属支持体上にドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)を金属支持体上で加熱し金属支持体からウェブが剥離可能になるまで
溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または金属支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率がよく好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。裏面液体伝熱の場合は、ドープ使用有機溶媒の主溶媒または最も低い沸点を有する有機溶媒の沸点以下で加熱するのが好ましい。
(4)剥離工程:金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に金属支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることが出来る)としてゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。
本発明に係る光学フィルムの乾燥方法及び製造方法は、支持体として溶液流延製膜法によって製造されたセルロースエステルフィルムを用いる場合には、溶液流延製膜方法そのものには、特に制限はなく、当業界で一般に用いられている方法、例えば、米国特許第2,492,978号、同第2,739,070号、同第2,739,069号、同第2,492,977号、同第2,336,310号、同第2,367,603号、同第2,607,704号、英国特許第64,071号、同第735,892号、特公昭45−9074号、同49−4554号、同49−5614号、同60−27562号、同61−39890号、同62−4208号等に記載の方法を参考にすることが出来る。
溶液流延製膜法で用いるセルロースエステルのドープ液の調製に用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上併用してもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが、生産効率の点で好ましく、更に、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が30〜2質量%である。
良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独では膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルの平均酢化度によっては、良溶剤、貧溶剤の対象が変化し、例えば、アセトンを溶剤として用いるときには、セルロースエステルの結合酢酸量55%では良溶剤になり、結合酢酸量60%では貧溶剤となる。
本発明に用いられる良溶剤としては、特に限定されないが、例えば、セルローストリアセテートの場合は、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、酢酸メチル、また、セルロースアセテートプロピオネートの場合は、メチレンクロライド、アセトン、酢酸メチル等が挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。
上記のドープ液を調製する時のセルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることが出来るが、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止することが出来るためより好ましい。
また、セルロースエステルを貧溶剤と混合し、湿潤または膨潤させた後、更に良溶剤と
混合して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧容器の種類は、特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることが出来、加圧下で加熱、攪拌が出来ればよい。加圧容器には、そのほかに圧力計、温度計等の計器類を適宜配設する。加圧は、窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えば、ジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の常圧での沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高すぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃の範囲が更に好ましい。又、圧力は設定温度で、溶剤が沸騰しないように調整される。
セルロースエステルと溶剤のほかに必要な可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入してもよい。
溶解後は、冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器等で冷却し、これを製膜に供するが、このときの冷却温度は常温まで冷却してもよいが、沸点より5〜10℃低い温度まで冷却し、その温度のままキャスティングを行う方が、ドープ粘度を低減出来るためより好ましい。
アシル基の置換度の測定方法はASTM−817−96の規定に準じて測定することが出来る。
これらセルロースエステルは後述するように一般的に溶液流延製膜法と呼ばれる方法で製造(製膜)される。この方法は、無限に移送する無端の金属ベルト(例えばステンレスベルト)または回転する金属ドラム(例えば鋳鉄で表面をクロムメッキしたドラム)等の流延用金属支持体(以降、単に金属支持体ということもある)上に、加圧ダイからドープ(セルロースエステル溶液のこと)を流延(キャスティング)し、金属支持体上のウェブ(ドープ膜)を金属支持体から剥離し、乾燥させて製造するものである。
セルロースエステルフィルムには、画像表示装置として屋外に置かれた場合等の劣化防止の観点から下記記載の紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものを好ましく用いることが出来る。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されない。
本発明において、セルロースエステルフィルムの膜厚は10〜200μmが好ましく用いられるが、特に好ましいのは30〜70μmである。従来このような薄膜フィルムでは塗布むらが出やすかったは、本発明により70μm以下の薄膜フィルムでも安定した塗布性が期待出来る。
本発明においては、上記のような支持体面上に光学薄膜を設ける場合、平均膜厚に対する膜厚偏差を±8%になるように設けることが出来、より好ましくは±5%以内とすることが出来、特に±1%以内の均一に薄膜とすることが出来る。本発明の製造方法は、特に
1400mm以上の広幅の光学フィルムに適用したとき著しい効果を発揮する。適用が好ましい光学フィルム幅の上限は、膜厚精度の面からは特に限定されないが、製造コストの面から4000mm以下が好ましい。
本発明に係る光学フィルムは、マット剤をセルロースエステルフィルム中に含有させることによって、搬送や巻き取りをしやすくすることが出来る。
マット剤はできるだけ微粒子のものが好ましく、微粒子としては、例えば二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、またはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を挙げることが出来るが、特に架橋高分子微粒子が好ましい。本発明においては、これらに限定されない。
上記のうちでも二酸化珪素が動摩擦係数の調整するのに特に好ましく、またフィルムのヘイズを小さく出来るので好ましい。微粒子の一次粒子または二次粒子の平均粒径は0.01〜5.0μmの範囲で、その含有量はセルロースエステルに対して0.005〜0.5質量%が好ましい。
二酸化珪素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。
表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサン等があげられる。微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は20nm以下が好ましく、好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
これらの微粒子はセルロースエステルフィルム中では、セルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。
二酸化珪素の微粒子としては日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることが出来、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することが出来る。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えばアエロジル200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9〜0.1の範囲で使用出来る。酸化ジルコニウムとして、例えばアエロジルR976またはR811(日本アエロジル(株)製)等市販品も使用出来る。
有機物微粒子として、例えば、シリコーン樹脂として、トスパール103、105、108、120、145、3120、240(東芝シリコーン(株)製)等市販品も使用出来る。
本発明に好ましく用いられる微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍
率50万〜200万倍)で粒子を観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって、1次平均粒子径とした。
微粒子の、見掛比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましく、また、本発明のように固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。
1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/L以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることが出来る。本発明において、上記記載の見掛比重は二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出した。
見掛比重(g/L)=二酸化珪素質量(g)÷二酸化珪素の容積(L)
本発明に有用な微粒子の分散液を調製する方法とそれをドープに添加する方法としては、例えば以下に示すような三つの方法を挙げることが出来る。
《調製方法A》
有機溶媒と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
《調製方法B》
有機溶媒と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に有機溶媒に少量のセルロースエステルを加え撹拌溶解した液に微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とし、インラインミキサーでドープ液と十分混合する。ここで、下記の微粒子添加液の添加後、紫外線吸収剤を添加してもよい。
《調製方法C》
有機溶媒に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
《分散方法》
二酸化珪素微粒子を有機溶媒等と混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。
セルロースエステルに対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01〜0.5質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部が更に好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、セルロースエステルフィルムの動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方がヘイズが低く、凝集物も少ない点が優れている。
分散液に使用される有機溶媒は低級アルコール類が好ましく、低級アルコールとしては
、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等を挙げることが出来、好ましく用いることが出来る。低級アルコール以外の有機溶媒としては特に限定されないが、ドープ調製時に用いられる有機溶媒が好ましい。
分散機は通常の分散機が使用出来る。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散には後者がヘイズが低くなるので好ましい。メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミル等を挙げることが出来る。また、メディアレス分散機として、超音波型、遠心型、高圧型等があるが、本発明においては高圧型が好ましく、高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と有機溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態等特殊な条件を作り出す装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.8MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.6MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)またはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等がある。
本発明において、上記微粒子を含有させる際、セルロースエステルフィルムの厚さ方向に均一に分布していることが好ましいが、主に表面近傍に存在するように分布させることがより好ましく、例えば、一つのダイから共流延法により、2種以上のドープを同時に流延し、微粒子を含有するドープを表層側に配置させるようにすることが好ましい。このようにすることによって、ヘイズを少なくし、かつ、動摩擦係数を低めることが出来る。更に好ましくは3種のドープを使用して表層側の片側の層または両層に微粒子を含有するドープ配置にさせることが望ましい。
支持体の動摩擦係数を調整するため、裏面側に微粒子を含有するバックコート層を設けることも出来る。添加する微粒子の大きさや添加量、材質等によって動摩擦係数を調整することが出来る。
本発明に好ましく用いられる可塑剤としては、リン酸エステル系可塑剤、非リン酸エステル系可塑剤が好ましく用いられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
非リン酸エステル系可塑剤としては、フタル酸系エステル、多価アルコールエステル、多価カルボン酸エステル、クエン酸エステル、グリコール酸エステル、脂肪酸エステル、ピロメリット酸エステル、トリメリット酸エステル、ポリエステル等があげられる。
中でも多価アルコールエステル系可塑剤、フタル酸エステル、クエン酸エステル、脂肪酸エステル、グリコレート系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等が好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に用いられる多価アルコールは次の一般式(1)で表される。
一般式(1) R1−(OH)n
但し、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることが出来る。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
本発明の多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることが出来る。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることが出来る。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
ポリエステル系可塑剤は特に限定されないが、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有するポリエステル系可塑剤を好ましく用いることが出来る。好ましいポリエステル系可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(2)で表せる芳香族末端エステル系可塑剤が好ましい。
一般式(2) B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはベンゼンモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
一般式(2)中、Bで示されるベンゼンモノカルボン酸残基とGで示されるアルキレングリコール残基またはオキシアルキレングリコール残基またはアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基またはアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られる。
本発明で使用されるポリエステル系可塑剤のベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することが出来る。
ポリエステル系可塑剤の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースエステルとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
また、芳香族末端エステルの炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用出来る。
芳香族末端エステルの炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種または2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。
本発明で使用出来るポリエステル系可塑剤は、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、水酸基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、水酸基価は15mgKOH/g以下のものが好適である。
以下、芳香族末端エステル系可塑剤の合成例を示す。
〈サンプルNo.1(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器にフタル酸410部、安息香酸610部、ジプロピレングリコール737部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.40部を一括して仕込み窒素気流中で攪拌下、還流凝縮器を付して過剰の1価アルコールを還流させながら、酸価が2以下になるまで130〜250℃で加熱を続け生成する水を連続的に除去した。次いで200〜230℃で100〜最終的に4×102Pa以下の減圧下、留出分を除去し、この後濾過して次の性状を有する芳香族末端エステル系可塑剤を得た。
粘度(25℃、mPa・s);43400
酸価 ;0.2
〈サンプルNo.2(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、フタル酸410部、安息香酸610部、エチレングリコール341部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.35部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s);31000
酸価 ;0.1
〈サンプルNo.3(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、フタル酸410部、安息香酸610部、1,2−プロパンジオール418部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.35部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s);38000
酸価 ;0.05
〈サンプルNo.4(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、フタル酸410部、安息香酸610部、1,3−プロパンジオール418部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.35部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s);37000
酸価 ;0.05
以下に、芳香族末端エステル系可塑剤の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
これらの可塑剤は単独或いは2種以上混合して用いることが出来る。可塑剤の使用量は、セルロースエステルに対して1質量%未満ではフィルムの透湿度を低減させる効果が少ないため好ましくなく、20質量%を越えるとフィルムから可塑剤がブリードアウトし、フィルムの物性が劣化するため、1〜20質量%が好ましい。6〜16質量%が更に好ましく、特に好ましくは8〜13質量%である。
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤について説明する。
紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられ、特にこれらに限定されるものではなく、これ以外の紫外線吸収剤も用いられる。
具体例としては、例えば、以下の化合物を挙げられる。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−9:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−10:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−11:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に係る光学フィルムの紫外線吸収能としては、380nmの波長の光に対して透過率10%以下であることが好ましく、更に好ましくは、透過率6%未満、特に好ましくは透過率0〜4%未満である。
光学フィルムに用いられる紫外線吸収剤の含有量は、波長380nmの光の透過率の設定に従い、適切な添加量で用いられる。
また、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることが出来る。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオ
ネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
これらの酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれ、高湿高温の状態に液晶画像表示装置等がおかれた場合、セルロースエステルフィルムの劣化が起こる場合があり、例えば、セルロースエステルフィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりセルロースエステルフィルムが分解を遅らせたり、防いだりする役割を有するので前記セルロースエステルフィルム中に含有させるのが好ましい。
本発明の製造方法により多層の薄膜を積層する場合も各層のムラもなく、均一な光学フィルムを得ることが出来る。
このように、本発明においてはさまざまな機能を有する薄膜を形成した光学フィルムを提供することが出来る。
本発明は帯電防止層または導電性層として、金属酸化物微粒子や架橋カチオンポリマーのような導電性樹脂微粒子を塗設した膜厚0.1〜2μmの層を設けてもよい。
本発明の光学薄膜の製造方法で得られる光学フィルムは特に偏光板保護フィルムとして有用であり、これを用いて公知の方法で偏光板を作製することが出来る。これらの光学フィルムは薄膜の均一性が高いため、各種表示装置に好ましく用いることが出来、優れた表示性能を得ることが出来る。
本発明に係る光学フィルムには必要に応じて、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、導電層、光拡散層、易接着層、防汚層、易接着層、配向層、液晶層、光学異方層等を単独でまたは適宜組み合わせて設けることが出来る。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されることが好ましいが、特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムにはハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、偏光板をこの部分に用いることが特に好ましい。
(ハードコート層)
本発明に係る処理を行った長尺フィルムは、機能性層としてハードコート層が設けられていることが好ましい。
本発明の光学フィルムは、該ハードコート層上に、反射防止層(高屈折率層、低屈折率層等)が設けられ反射防止フィルムを構成することが好ましい。
ハードコート層としては、活性線硬化樹脂層が好ましく用いられる。
活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させてハードコート層が形成される。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る。例えば、特開昭59−151110号に記載のものを用いることが出来る。
例えば、ユニディック17−806(大日本インキ(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることが出来、特開昭59−151112号に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることが出来、特開平1−105738号に記載のものを用いることが出来る。
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
これら紫外線硬化性樹脂の光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。光増感剤と共に使用してもよい。上記光反応開始剤も光増感剤として使用出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光反応開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることが出来る。
本発明において使用し得る紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用出来る。
また、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
これらの活性線硬化樹脂層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法で塗設することが出来る。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化皮膜層を形成する為の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。これらの光源は空冷若しくは水冷方式のものが好ましく用いられる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は好ましくは、5〜500mJ/cm2であり、特に好ましくは20〜150mJ/cm2である。
また照射部には窒素パージにより酸素濃度を0.01%〜2%に低減することが好ましい。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、若しくは2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性が優れたフィルムを得ることが出来る。
紫外線硬化樹脂層組成物塗布液の有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、或いはこれらを混合し利用出来る。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜
4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
本発明は、前記の中でアクリレート系紫外線硬化樹脂と前記有機溶媒を含有するハードコート層塗布液を使用する場合に特に有効である。
また、紫外線硬化樹脂層組成物塗布液には、特にシリコン化合物を添加することが好ましい。例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどが好ましく添加される。ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば、1000〜100000、好ましくは、2000〜50000が適当であり、数平均分子量が1000未満では、塗膜の乾燥性が低下し、逆に、数平均分子量が100000を越えると、塗膜表面にブリードアウトしにくくなる傾向にある。
シリコン化合物の市販品としては、DKQ8−779(ダウコーニング社製商品名)、SF3771、SF8410、SF8411、SF8419、SF8421、SF8428、SH200、SH510、SH1107、SH3749、SH3771、BX16−034、SH3746、SH3749、SH8400、SH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、BY−16−837、BY−16−839、BY−16−869、BY−16−870、BY−16−004、BY−16−891、BY−16−872、BY−16−874、BY22−008M、BY22−012M、FS−1265(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン社製商品名)、KF−101、KF−100T、KF351、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、シリコーンX−22−945、X22−160AS(以上、信越化学工業社製商品名)、XF3940、XF3949(以上、東芝シリコーン社製商品名)、ディスパロンLS−009(楠本化成社製)、グラノール410(共栄社油脂化学工業(株)製)、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(GE東芝シリコーン製)、BYK−306、BYK−330、BYK−307、BYK−341、BYK−344、BYK−361(ビックケミ−ジャパン社製)日本ユニカー(株)製のLシリーズ(例えばL7001、L−7006、L−7604、L−9000)、Yシリーズ、FZシリーズ(FZ−2203、FZ−2206、FZ−2207)等が挙げられ、好ましく用いられる。
これらの成分は基材や下層への塗布性を高める。積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、前述のものを用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚として0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。また、ドライ膜厚としては0.1〜20μm、好ましくは1〜10μmである。
紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥中または後に、紫外線を照射するのがよく、前記の5〜150mJ/cm2という活性線の照射量を得る為の照射時間としては、0.1秒〜5分程度がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から0.1〜10秒がより好ましい。
また、これら活性線照射部の照度は50〜150mW/cm2であることが好ましい。
こうして得た硬化樹脂層に、ブロッキングを防止する為、また対擦り傷性等を高める為
、或いは防眩性や光拡散性を持たせる為また屈折率を調整する為に無機化合物或いは有機化合物の微粒子を加えることも出来る。
本発明に用いられるハードコート層に微粒子を添加することは好ましく、使用される無機微粒子としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。特に、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムなどが好ましく用いられる。
また有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、或いはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物に加えることが出来る。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)が挙げられる。
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005〜5μmが好ましく0.01〜1μmであることが特に好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
紫外線硬化樹脂層は、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が1〜50nmのクリアハードコート層であるか、若しくはRaが0.1〜1μm程度の防眩層であることが好ましい。中心線平均粗さ(Ra)は光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えばWYKO社製RST/PLUSを用いて測定することが出来る。
また、本発明に用いられるハードコート層には帯電防止剤を含有させることも好ましく、帯電防止剤としては、例えば、Sn、Ti、In、Al、Zn、Si、Mg、Ba、Mo、W及びVからなる群から選択される少なくとも一つの元素を主成分として含有し、かつ、体積抵抗率が107Ω・cm以下であるような導電性材料が好ましい。
前記帯電防止剤としては、上記の元素を有する金属酸化物、複合酸化物等が挙げられる。
金属酸化物の例としては、例えば、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V2O5等、或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、In2O3、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加、ま
たSnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種
原子の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。また、これらの導電性を有するこれら金属酸化物粉体の体積抵抗率は107Ω・cm以下、特に105Ω・cm以下である。
また、表面に凹凸が形成された鋳型ロール(エンボスロール)を用いたエンボス法により、凹凸を有する紫外線硬化樹脂層を設け、これを防眩層とすることも好ましい。
(反射防止層)
本発明の光学フィルムは、上記ハードコート層上に、機能性層として更に反射防止層を設けることが好ましい。特に中空微粒子を含有する低屈折率層であることが好ましい。
(低屈折率層)
本発明に用いられる低屈折率層は、中空微粒子を含有することが好ましく、その他に珪素アルコキシド、シランカップリング剤、硬化剤等を含有することがより好ましい。
〈中空微粒子〉
低屈折率層には下記の中空微粒子が含有されることが好ましい。
ここでいう中空微粒子は、(1)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、又は(2)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体又は多孔質物質で充填された空洞粒子である。尚、低屈折率層用塗布液には(1)複合粒子又は(2)空洞粒子のいずれかが含まれていればよく、また双方が含まれていてもよい。
尚、空洞粒子は、内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体又は多孔質物質等の内容物で充填されている。このような無機微粒子の平均粒子径が5〜300nm、好ましくは10〜200nmの範囲にあることが望ましい。使用される無機微粒子は、形成される透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、形成される低屈折率層等の透明被膜の膜厚の2/3〜1/10の範囲にあることが望ましい。これらの無機微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)が好ましい。
複合粒子の被覆層の厚さ又は空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmの範囲にあることが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することが出来ないことがあり、低屈折率の効果が十分得られないことがある。また、被覆層の厚さが20nmを越えると、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率の効果が十分得られなくなることがある。また空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持出来ないことがあり、また厚さが20nmを越えても、低屈折率の効果が十分に現れないことがある。
前記複合粒子の被覆層又は空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。また複合粒子の被覆層又は空洞粒子の粒子壁には、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3などが挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子
としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgFなどからなるものが挙げられる。このうち特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P2
O3、Sb2O3、MoO3、ZnO2、WO3等との1種又は2種以上を挙げることが出来る。このような多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化
物換算(MOX)で表した時のモル比MOX/SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても導電性を発現しない。また、多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が小さく、かつ屈折率の低い粒子を得られないことがある。
このような多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。
尚、このような多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることが出来る。また、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質等が挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒等が含まれていてもよい。また多孔質物質としては、前記多孔質粒子で例示した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
このような無機微粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。具体的に、複合粒子が、シリカ、シリカ以外の無機化合物とからなる場合、以下の第1〜第3工程から無機化合物粒子は製造される。
第1工程:多孔質粒子前駆体の調製
第1工程では、予め、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料のアルカリ水溶液を個別に調製するか、又は、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料との混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とする複合酸化物の複合割合に応じて、pH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加して多孔質粒子前駆体を調製する。
シリカ原料としては、アルカリ金属、アンモニウム又は有機塩基のケイ酸塩を用いる。アルカリ金属のケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)やケイ酸カリウムが用いられる。有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を挙げることが出来る。尚、アンモニウムのケイ酸塩又は有機塩基のケイ酸塩には、ケイ酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物等を添加したアルカリ性溶液も含まれる。
また、シリカ以外の無機化合物の原料は、アルカリ可溶の前記導電性化合物が用いられる。
これらの水溶液の添加と同時に混合水溶液のpH値は変化するが、このpH値を所定の範囲に制御するような操作は特に必要ない。水溶液は、最終的に、無機酸化物の種類及びその混合割合によって定まるpH値となる。このときの水溶液の添加速度にはとくに制限はない。また、複合酸化物粒子の製造に際して、シード粒子の分散液を出発原料と使用することも可能である。当該シード粒子としては、特に制限はないが、SiO2、Al2O3、TiO2又はZrO2等の無機酸化物又はこれらの複合酸化物の微粒子が用いられ、通常、これらのゾルを用いることが出来る。更に前記の製造方法によって得られた多孔質粒子前駆体分散液をシード粒子分散液としてもよい。シード粒子分散液を使用する場合、シード粒子分散液のpHを10以上に調整したのち、該シード粒子分散液中に前記化合物の水溶液を、上記したアルカリ水溶液中に攪拌しながら添加する。この場合も、必ずしも分散液のpH制御を行う必要はない。このようにして、シード粒子を用いると、調製する多孔質粒子の粒径コントロールが容易であり、粒度の揃ったものを得ることが出来る。
上記したシリカ原料及び無機化合物原料はアルカリ側で高い溶解度を有する。しかしながら、この溶解度の大きいpH領域で両者を混合すると、ケイ酸イオン及びアルミン酸イオン等のオキソ酸イオンの溶解度が低下し、これらの複合物が析出して微粒子に成長したり、或いは、シード粒子上に析出して粒子成長が起こる。従って、微粒子の析出、成長に際して、従来法のようなpH制御は必ずしも行う必要がない。
第1工程におけるシリカとシリカ以外の無機化合物との複合割合は、シリカに対する無機化合物を酸化物(MOx)に換算し、MOx/SiO2のモル比が、0.05〜2.0、好ましくは0.2〜2.0の範囲内にあることが望ましい。この範囲内において、シリカの割合が少なくなる程、多孔質粒子の細孔容積が増大する。しかしながら、モル比が2.0を越えても、多孔質粒子の細孔の容積は殆ど増加しない。他方、モル比が0.05未満の場合は、細孔容積が小さくなる。空洞粒子を調製する場合、MOx/SiO2のモル比は、0.25〜2.0の範囲内にあることが望ましい。
第2工程:多孔質粒子からのシリカ以外の無機化合物の除去
第2工程では、前記第1工程で得られた多孔質粒子前駆体から、シリカ以外の無機化合物(珪素と酸素以外の元素)の少なくとも一部を選択的に除去する。具体的な除去方法としては、多孔質粒子前駆体中の無機化合物を鉱酸や有機酸を用いて溶解除去したり、或いは、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する。
尚、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体は、珪素と無機化合物構成元素が酸素を介して結合した網目構造の粒子である。このように多孔質粒子前駆体から無機化合物(珪素と酸素以外の元素)を除去することにより、一層多孔質で細孔容積の大きい多孔質粒子が得られる。また、多孔質粒子前駆体から無機酸化物(珪素と酸素以外の元素)を除去する量を多くすれば、空洞粒子を調製することが出来る。
また、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去するに先立って、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体分散液に、シリカのアルカリ金属塩を脱アルカリして得られるケイ酸液或いは加水分解性の有機珪素化合物を添加してシリカ保護膜を形成することが好ましい。シリカ保護膜の厚さは0.5〜15nmの厚さであればよい。尚シリカ保護膜を形成しても、この工程での保護膜は多孔質であり厚さが薄いので、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することは可能である。
このようなシリカ保護膜を形成することによって、粒子形状を保持したまま、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することが出来る。また、後述するシリカ被覆層を形成する際に、多孔質粒子の細孔が被覆層によって閉塞されてしまうことがなく、このため細孔容積を低下させることなく後述するシリカ被覆層を形成することが出来る。尚、除去する無機化合物の量が少ない場合は粒子が壊れることがないので必ずしも保護膜を形成する必要はない。
また空洞粒子を調製する場合は、このシリカ保護膜を形成しておくことが望ましい。空洞粒子を調製する際には、無機化合物を除去すると、シリカ保護膜と、該シリカ保護膜内の溶媒、未溶解の多孔質固形分とからなる空洞粒子の前駆体が得られ、該空洞粒子の前駆体に後述の被覆層を形成すると、形成された被覆層が、粒子壁となり空洞粒子が形成される。
上記シリカ保護膜形成のために添加するシリカ源の量は、粒子形状を保持出来る範囲で少ないことが好ましい。シリカ源の量が多過ぎると、シリカ保護膜が厚くなり過ぎるので、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去することが困難となることがある。シリカ保護膜形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、一般式RnSi(OR′)4-n〔R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化
水素基、n=0、1、2又は3〕で表されるアルコキシシランを用いることが出来る。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリ又は酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子の分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を無機酸化物粒子の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることが出来る。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることが出来る。
多孔質粒子前駆体の分散媒が、水単独、又は有機溶媒に対する水の比率が高い場合には、ケイ酸液を用いてシリカ保護膜を形成することも可能である。ケイ酸液を用いる場合には、分散液中にケイ酸液を所定量添加し、同時にアルカリを加えてケイ酸液を多孔質粒子表面に沈着させる。尚、ケイ酸液と上記アルコキシシランを併用してシリカ保護膜を作製してもよい。
第3工程:シリカ被覆層の形成
第3工程では、第2工程で調製した多孔質粒子分散液(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体分散液)に加水分解性の有機珪素化合物又はケイ酸液等を加えることにより、粒子の表面を加水分解性有機珪素化合物又はケイ酸液等の重合物で被覆してシリカ被覆層を形成する。
シリカ被覆層形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、前記したような一般式RnSi(OR′)4-n〔R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2又は3〕で表されるアルコキシシランを用いることが出来る。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリ又は酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることが出来る。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることが出来る。
多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の分散媒が水単独、又は有機溶媒との混合溶媒であって、有機溶媒に対する水の比率が高い混合溶媒の場合には、ケイ酸液を用いて被覆層を形成してもよい。ケイ酸液とは、水ガラス等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液をイオン交換処理して脱アルカリしたケイ酸の低重合物の水溶液である。
ケイ酸液は、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中に添加され、同時にアルカリを加えてケイ酸低重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)表面に沈着させる。尚、ケイ酸液を上記アルコキシシランと併用して被覆層形成用に使用してもよい。被覆層形成用に使用される有機珪素化合物又はケイ酸液の添加量は、コロイド粒子の表面を十分被覆出来る程度であればよく、最終的に得られるシリカ被覆層の厚さが1〜20nmとなるように量で、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中で添加される。また前記シリカ保護膜を形成した場合はシリカ保護膜とシリカ被覆層の合計の厚さが1〜20nmの範囲となるような量で、有機珪素化合物又はケイ酸液は添加される。
次いで、被覆層が形成された粒子の分散液を加熱処理する。加熱処理によって、多孔質粒子の場合は、多孔質粒子表面を被覆したシリカ被覆層が緻密化し、多孔質粒子がシリカ被覆層によって被覆された複合粒子の分散液が得られる。また空洞粒子前駆体の場合、形成された被覆層が緻密化して空洞粒子壁となり、内部が溶媒、気体又は多孔質固形分で充填された空洞を有する空洞粒子の分散液が得られる。
このときの加熱処理温度は、シリカ被覆層の微細孔を閉塞出来る程度であれば特に制限はなく、80〜300℃の範囲が好ましい。加熱処理温度が80℃未満ではシリカ被覆層の微細孔を完全に閉塞して緻密化出来ないことがあり、また処理時間に長時間を要してしまうことがある。また加熱処理温度が300℃を越えて長時間処理すると緻密な粒子となることがあり、低屈折率の効果が得られないことがある。
このようにして得られた無機微粒子の屈折率は、1.44未満と低い。このような無機微粒子は、多孔質粒子内部の多孔性が保持されているか、内部が空洞であるので、屈折率が低くなるものと推察される。
本発明に用いられる低屈折率層には中空微粒子の他に、アルコキシ珪素化合物の加水分解物及びそれに続く縮合反応により形成される縮合物を含むことが好ましい。特に、下記一般式(3)及び/又は(4)で表されるアルコキシ珪素化合物又はその加水分解物を調整したSiO2ゾルを含有することが好ましい。
一般式(3) R1−Si(OR2)3
一般式(4) Si(OR2)4
(式中、R1はメチル基、エチル基、ビニル基、又はアクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基若しくはエポキシ基を含む有機基を、R2はメチル基又はエチル基を示す)
珪素アルコキシド、シランカップリング剤の加水分解は、珪素アルコキシド、シランカップリング剤を適当な溶媒中に溶解して行う。使用する溶媒としては、例えば、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールブタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、或いはこれらの混合物が挙げられる。
上記珪素アルコキシド又はシランカップリング剤を溶媒に溶解した溶液に、加水分解に必要な量より若干多い量の水を加え、15〜35℃、好ましくは20℃〜30℃の温度で1〜48時間、好ましくは3〜36時間攪拌を行う。
上記加水分解においては、触媒を用いることが好ましく、このような触媒としては塩酸、硝酸、硫酸又は酢酸などの酸が好ましく用いられる。これらの酸は0.001N〜20.0N、好ましくは0.005〜5.0N程度の水溶液にして用いる。該触媒水溶液中の水分は加水分解用の水分とすることが出来る。
アルコキシ珪素化合物を所定の時間加水分解反応させ、調製されたアルコキシ珪素加水分解液を溶剤で希釈し、必要な他の添加剤等を混合して、低屈折率層用塗布液を調製し、これを基材例えばフィルム上に塗布、乾燥することで低屈折率層を基材上に形成することが出来る。
〈アルコキシ珪素化合物〉
本発明において低屈折率層塗布液の調製に用いられるアルコキシ珪素化合物(以後アルコキシシランともいう)としては、下記一般式(5)で表されるものが好ましい。
一般式(5) R4−nSi(OR′)n
前記一般式中、R′はアルキル基であり、Rは水素原子又は1価の置換基を表し、nは3又は4を表す。
R′で表されるアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の基が挙げられ、置換基を有していてもよく、置換基としてはアルコキシシランとしての性質を示すものであれば特に制限はなく、例えば、フッ素などのハロゲン原子、アルコキシ基等により置換されていてもよいが、より好ましくは非置換のアルキル基であり、特にメチル基、エチル基が好ましい。
Rで表される1価の置換基としては特に制限されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、芳香族複素環基、シリル基等が挙げられる。中でも好ましいのは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基である。また、これらは更に置換されていてもよい。Rの置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、ヒドロキシル基、アセトキシ基等が挙げられる。
前記一般式で表されるアルコキシシランの好ましい例として、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシプロポキシ)シラン、
また、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、n−へキシルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アセトキシトリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、更に、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
また、これらの化合物が部分的に縮合した多摩化学製シリケート40、シリケート45、シリケート48、Mシリケート51のような数量体のケイ素化合物でもよい。
前記アルコキシシランは、加水分解重縮合が可能な珪素アルコキシド基を有しているため、これらのアルコキシシランを加水分解、縮合によって、架橋して、高分子化合物のネットワーク構造が形成され、これを低屈折率層塗布液として用い、基材上に塗布して、乾燥させることで均一な酸化珪素を含有する層が基材上に形成される。
加水分解反応は、公知の方法により行うことが出来、疎水的なアルコキシシランと水が混和しやすいように、所定量の水とメタノール、エタノール、アセトニトリルのような親水性の有機溶媒を共存させ溶解・混合したのち、加水分解触媒を添加して、アルコキシシランを加水分解、縮合させる。通常、10℃〜100℃で加水分解、縮合反応させることで、ヒドロキシル基を2個以上有する液状のシリケートオリゴマーが生成し加水分解液が形成される。加水分解の程度は、使用する水の量により適宜調節することが出来る。
本発明においては、アルコキシシランに水と共に添加する溶媒としては、メタノール、エタノールが安価であること、得られる被膜の特性が優れ硬度が良好であることから好ましい。イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、オクタノール等も用いることが出来るが、得られた被膜の硬度が低くなる傾向にある。溶媒量は加水分解前のテトラアルコキシシラン100質量部に対して50〜400質量部、好ましくは100〜250質量部である。
このようにして加水分解液を調製し、これを溶剤によって希釈し、必要に応じて添加剤を添加して、低屈折率層塗布液を形成するに必要な成分と混合し、低屈折率層塗布液とする。
〈加水分解触媒〉
加水分解触媒としては、酸、アルカリ、有機金属、金属アルコキシド等を挙げることが出来るが、本発明においては硫酸、塩酸、硝酸、次亜塩素酸、ホウ酸等の無機酸或いは有機酸が好ましく、特に硝酸、酢酸などのカルボン酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メチルスルホン酸等が好ましく、これらの内特に硝酸、酢酸、クエン酸又は酒石酸等が好ましく用いられる。上記クエン酸や酒石酸の他に、レブリン酸、ギ酸、プロピオン酸、リンゴ酸、コハク酸、メチルコハク酸、フマル酸、オキサロ酢酸、ピルビン酸、2−オキソグルタル酸、グリコール酸、D−グリセリン酸、D−グルコン酸、マロン酸、マレイン酸、シュウ酸、イソクエン酸、乳酸等も好ましく用いられる。
この中で、乾燥時に酸が揮発して、膜中に残らないものが好ましく、沸点が低いものがよい。従って、酢酸、硝酸が特に好ましい。
添加量は、用いるアルコキシ珪素化合物(例えばテトラアルコキシシラン)100質量部に対して0.001〜10質量部、好ましくは0.005〜5質量部がよい。また、水の添加量については部分加水分解物が理論上100%加水分解し得る量以上であればよく、100〜300%相当量、好ましくは100〜200%相当量を添加するのがよい。
上記アルコキシシランを加水分解する際には、下記無機微粒子を混合することが好ましい。
加水分解を開始してから所定の時間加水分解液を放置して加水分解の進行が所定の程度に達した後用いる。放置する時間は、上述の加水分解そして縮合による架橋が所望の膜特性を得るのに十分な程度進行する時間である。具体的には用いる酸触媒の種類にもよるが、例えば、酢酸では室温で15時間以上、硝酸では2時間以上が好ましい。熟成温度は熟成時間に影響を与え、一般に高温では熟成が早く進むが、100℃以上に加熱するとゲル化が起こるので、20〜60℃の加熱、保温が適切である。
このようにして加水分解、縮合により形成したシリケートオリゴマー溶液に上記中空微粒子、添加剤を加え、必要な希釈を行って、低屈折率層塗布液を調製し、これを前述したフィルム上に塗布して、乾燥することで、低屈折率層として優れた酸化珪素膜を含有する層を形成することが出来る。
また、本発明においては、上記のアルコキシシランの他に、例えばエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基等の官能基を有するシラン化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマー)等により変性した変性物であってもよく、単独で使用又は併用することも可能である。
〈フッ素化合物〉
本発明に用いられる低屈折率層は主成分としてフッ素化合物からなっていてもよく、特に中空微粒子とフッ素化合物を含有することも好ましい。バインダーマトリックスとして、熱又は電離放射線により架橋する含フッ素樹脂(以下、「架橋前の含フッ素樹脂」ともいう)を含むことが好ましい。該含フッ素樹脂を含むことにより良好な防汚性反射防止フィルムを提供することが出来る。
架橋前の含フッ素樹脂としては、含フッ素ビニルモノマーと架橋性基付与のためのモノマーから形成される含フッ素共重合体を好ましく挙げることが出来る。上記含フッ素ビニルモノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えば、ビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。架橋性基付与のためのモノマーとしては、グリシジルメタクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルグリシジルエーテル等のように分子内に予め架橋性官能基を有するビニルモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有するビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル等)が挙げられる。後者は共重合の後、ポリマー中の官能基と反応する基ともう1つ以上の反応性基を持つ化合物を加えることにより、架橋構造を導入出来ることが特開平10−25388号、同10−147739号に記載されている。架橋性基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロール及び活性メチレン基等が挙げられる。含フッ素共重合体が、加熱により反応する架橋基、若しくは、エチレン性不飽和基と熱ラジカル発生剤若しくはエポキシ基と熱酸発生剤等の相み合わせにより、加熱により架橋する場合、熱硬化型であり、エチレン性不飽和基と光ラジカル発生剤若しくは、エポキシ基と光酸発生剤等の組み合わせにより、光(好ましくは紫外線、電子ビーム等)の照射により架橋する場合、電離放射線硬化型である。
また上記モノマー加えて、含フッ素ビニルモノマー及び架橋性基付与のためのモノマー以外のモノマーを併用して形成された含フッ素共重合体を架橋前の含フッ素樹脂として用いてもよい。併用可能なモノマーには特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロニトリル誘導体等を挙げることが出来る。また、含フッ素共重合体中に、滑り性、防汚性付与のため、ポリオルガノシロキサン骨格や、パーフルオロポリエーテル骨格を導入することも好ましい。これは、例えば末端にアクリル基、メタクリル基、ビニルエーテル基、スチリル基等を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルと上記のモノマーとの重合、末端にラジカル発生基を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルによる上記モノマーの重合、官能基を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルと、含フッ素共重合体との反応等によって得られる。
架橋前の含フッ素共重合体を形成するために用いられる上記各モノマーの使用割合は、含フッ素ビニルモノマーが好ましくは20〜70モル%、より好ましくは40〜70モル%、架橋性基付与のためのモノマーが好ましくは1〜20モル%、より好ましくは5〜20モル%、併用されるその他のモノマーが好ましくは10〜70モル%、より好ましくは10〜50モル%の割合である。
含フッ素共重合体は、これらモノマーをラジカル重合開始剤の存在下で、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合法等の手段により重合することにより得ることが出来る。
架橋前の含フッ素樹脂は、市販されており使用することが出来る。市販されている架橋前の含フッ素樹脂の例としては、サイトップ(旭硝子製)、テフロン(登録商標)AF(デュポン製)、ポリフッ化ビニリデン、ルミフロン(旭硝子製)、オプスター(JSR製)等が挙げられる。
架橋した含フッ素樹脂を構成成分とする低屈折率層は、動摩擦係数が0.03〜0.15の範囲、水に対する接触角が90〜120度の範囲にあることが好ましい。
〈添加剤〉
低屈折率層塗布液には更に必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤などの添加剤を含有させても良い。シランカップリング剤は、具体的には、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
硬化剤としては、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム等の有機酸金属塩が挙げられ、特に酢酸ナトリウムが好ましい。珪素アルコキシシラン加水分解溶液に対する添加量は、加水分解溶液中に存在する固形分100質量部に対して0.1〜1質量部程度の範囲が好ましい。
また、本発明に用いられる低屈折率層の塗布液には各種のレベリング剤、界面活性剤、シリコーンオイル等の低表面張力物質を添加することが好ましい。
シリコーンオイルとしては、具体的な商品としては、日本ユニカー(株)社のL−45、L−9300、FZ−3704、FZ−3703、FZ−3720、FZ−3786、FZ−3501、FZ−3504、FZ−3508、FZ−3705、FZ−3707、FZ−3710、FZ−3750、FZ−3760、FZ−3785、FZ−3785、Y−7499、信越化学社のKF96L、KF96、KF96H、KF99、KF54、KF965、KF968、KF56、KF995、KF351、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、FL100等がある。
また、下記表1に記載の界面活性剤を使用することも好ましい。これらの界面活性剤は前記ハードコート層に用いることもできる。
これらの成分は基材や下層への塗布性を高める。積層体最表面層に添加した場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。これらの成分は添加量が多過ぎると塗布時にハジキの原因となるため、塗布液中の固
形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
〈有機溶媒〉
低屈折率層を塗設する際の塗布液に使用する溶媒は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセルソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等が挙げられ、それらを単独又は2種以上混合して使用することが出来、水を含有させても良い。
〈塗布方法〉
低屈折率層の塗布方法としては、ディッピング、スピンコート、ナイフコート、バーコート、エアードクターコート、ブレードコート、スクイズコート、リバースロールコート、グラビアロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ダイコート等の公知の塗布方法又は公知のインクジェット法を用いることが出来、連続塗布又は薄膜塗布が可能な塗布方法が好ましく用いられる。塗布量はウェット膜厚で0.1〜30μmが適当で、好ましくは0.5〜15μmである。塗布速度は10〜80m/minが好ましい。
本発明の組成物を基材に塗布する際、塗布液中の固形分濃度や塗布量を調整することにより、層の膜厚及び塗布均一性等をコントロールすることが出来る。
本発明では、更に下記中屈折率層、高屈折率層を設け、複数の層を有する反射防止層を形成することも好ましい。
本発明に用いることの出来る反射防止層の構成例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
長尺フィルム/ハードコート層/低屈折率層
長尺フィルム/ハードコート層/中屈折率層/低屈折率層
長尺フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
長尺フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
長尺フィルム/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
長尺フィルム/ハードコート層/帯電防止層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
帯電防止層/長尺フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
長尺フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
(中屈折率層、高屈折率層)
中屈折率層、高屈折率層は所定の屈折率層が得られれば構成成分に特に制限はないが、下記屈折率の高い金属酸化物微粒子、バインダ等よりなることが好ましい。その他に添加剤を含有しても良い。中屈折率層の屈折率は1.55〜1.75であることが好ましく、高屈折率層の屈折率は1.75〜2.20であることが好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の厚さは、5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。塗布は前記低屈折率層の塗布方法と同様にして行うことが出来る。
〈金属酸化物微粒子〉
金属酸化物微粒子は特に限定されないが、例えば、二酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化スズ(
ATO)、五酸化アンチモン、酸化インジウム−スズ(ITO)、酸化鉄、等を主成分として用いることが出来る。また、これらの混合物でもよい。二酸化チタンを用いる場合は二酸化チタンをコアとし、シェルとしてアルミナ、シリカ、ジルコニア、ATO、ITO、五酸化アンチモン等で被覆させたコア/シェル構造を持った金属酸化物粒子を用いることが光触媒活性の抑制の点で好ましい。
金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であることが好ましく、1.90〜2.50であることが更に好ましい。金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径は5nm〜200nmであるが、10〜150nmであることが更に好ましい。粒径が小さ過ぎると金属酸化物微粒子が凝集しやすくなり、分散性が劣化する。粒径が大き過ぎるとヘイズが上昇し好ましくない。無機微粒子の形状は、米粒状、針状、球形状、立方体状、紡錘形状或いは不定形状であることが好ましい。
金属酸化物微粒子は有機化合物により表面処理してもよい。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。この中でも後述するシランカップリング剤が最も好ましい。二種以上の表面処理を組み合わせてもよい。
金属酸化物の種類、添加比率を適切に選択することによって、所望の屈折率を有する高屈折率層、中屈折率層を得ることが出来る。
〈バインダ〉
バインダは塗膜の成膜性や物理特性の向上のために添加される。バインダとしては例えば、前述の電離放射線硬化型樹脂、アクリルアミド誘導体、多官能アクリレート、アクリル樹脂又はメタクリル樹脂などを用いることが出来る。
(金属化合物、シランカップリング剤)
その他の添加剤として金属化合物、シランカップリング剤などを添加しても良い。金属化合物、シランカップリング剤はバインダとして用いることも出来る。
金属化合物としては下記一般式式(6)で表される化合物又はそのキレート化合物を用いることが出来る。
一般式(6):AnMBx−n
式中、Mは金属原子、Aは加水分解可能な官能基又は加水分解可能な官能基を有する炭化水素基、Bは金属原子Mに共有結合又はイオン結合した原子団を表す。xは金属原子Mの原子価、nは2以上でx以下の整数を表す。
加水分解可能な官能基Aとしては、例えば、アルコキシル基、クロル原子等のハロゲン、エステル基、アミド基等が挙げられる。上記式(6)に属する金属化合物には、金属原子に直接結合したアルコキシル基を2個以上有するアルコキシド、又は、そのキレート化合物が含まれる。好ましい金属化合物としては、屈折率や塗膜強度の補強効果、取り扱い易さ、材料コスト等の観点から、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、ケイ素アルコキシド又はそれらのキレート化合物を挙げることが出来る。チタンアルコキシドは反応速度が速くて屈折率が高く、取り扱いも容易であるが、光触媒作用があるため大量に添加すると耐光性が劣化する。ジルコニウムアルコキシドは屈折率が高いが白濁し易いため、塗布する際の露点管理等に注意しなければならない。ケイ素アルコキシドは反応速度が遅く、屈折率も低いが、取り扱いが容易で耐光性に優れる。シランカップリング剤は無機微粒子と有機ポリマーの両方と反応することが出来るため、強靱な塗膜を作ることが出来る。また、チタンアルコキシドは紫外線硬化樹脂、金属アルコキシドの反応を促進する効果があるため、少量添加するだけでも塗膜の物理的特性を向上させることが出来る。
チタンアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン等が挙げられる。
ジルコニウムアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−iso−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム等が挙げられる。
ケイ素アルコキシド及びシランカップリング剤は下記一般式(7)で表される化合物である。
一般式(7):RmSi(OR′)n
式中、Rはアルキル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基)、又は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミド基、スルホニル基、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基等の反応性基を表し、R′はアルキル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基)を表し、m+nは4である。
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
遊離の金属化合物に配位させてキレート化合物を形成するのに好ましいキレート化剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等であって分子量1万以下のものを挙げることが出来る。これらのキレート化剤を用いることにより、水分の混入等に対しても安定で、塗膜の補強効果にも優れるキレート化合物を形成出来る。
金属化合物の添加量は、中屈折率組成物では金属酸化物に換算して5質量%未満であることが好ましく、高屈折率組成物では金属酸化物に換算して20質量%未満であることが好ましい。
中屈折率層と高屈折率層は、前記低屈折率層で記載している各種のレベリング剤、界面活性剤、シリコーンオイル等の低表面張力物質、有機溶媒、塗布方法を使用することが好ましい。
本発明の反射防止層は少なくとも1層が低表面張力物質と有機溶媒を含有する反射防止層塗布液を用いて前記塗布方法により形成する場合に特に有効であり、反射防止層の全層が低表面張力物質と有機溶媒を含有する反射防止層塗布液を用いて前記塗布方法により形成する場合に極めて有効である。
(偏光板)
本発明の光学フィルムは偏光板保護フィルムとして有用であり、該偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明の光学フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面には該光学フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、以上コニカミノルタオプト(株)製)も好ましく用いられる。本発明の光学フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは面内リターデーションRoが590nmで、30〜300nm、Rtが70〜400nmの位相差を有していることが好ましい。これらは例えば、特開2002−71957、特開2003−170492記載の方法で作製することが出来る。また、例えば特開2003−12859記載の方法で作製したリターデーション値Ro、Rtが、各々0nm≦Ro≦15nmであり、−15nm≦Rt≦15nmである偏光板保護フィルムを用いることも好ましい。或いは更にディスコチック液晶などの液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348記載の方法で光学異方性層を形成することが出来る。本発明の光学フィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることが出来る。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光膜の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に10〜20μmであることが好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。中でも熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。又、フィルムのTD方向に5cm離れた二点間の熱水切断温度の差が1℃以下であることが、色斑を低減させるうえで更に好ましく、更にフィルムのTD方向に1cm離れた二点間の熱水切断温度の差が0.5℃以下であることが、色斑を低減させるうえで更に好ましい。
このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光膜は、偏光性能および耐久性能に優れているうえに、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
以上のようにして得られた偏光膜は、通常、その両面または片面に偏光板保護フィルムが貼合されて偏光板として使用される。貼合する際に用いられる接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤などを挙げることが出来るが、中でもPVA系の接着剤が好ましく用いられる。
(表示装置)
本発明の光学フィルムが用いられた偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた表示装置を作製することが出来る。本発明の光学フィルムは反射型、透過型、半透過型LCD或いはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。また、本発明の光学フィルムは平面性に優れ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示装置にも好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜けなどもなく、その効果が長期間維持され、MVA型液晶表示装置では顕著な効果が認められる。特に、本発明の目的である色むら、ぎらつきや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
〈セルロースエステルフィルム1の作製〉
(二酸化珪素分散液A)
アエロジル972V(日本アエロジル(株)製) 12質量部
(一次粒子の平均径16nm、見掛け比重90g/リットル)
エタノール 88質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。分散後の液濁度は200ppmであった。二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液Aを作製した。
(インライン添加液Aの作製)
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 11質量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 5質量部
メチレンクロライド 100質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過した。
これに二酸化珪素分散希釈液Aを36質量部を撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.8)6質量部を撹拌しながら加えて、更に60分間撹拌した後、アドバンテック東洋(株)のポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1Nで濾過し、インライン添加液Aを調製した。
(ドープ液Aの調製)
セルロースエステル(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1、アセチル基置換度2.92)
100質量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート 5.0質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5.5質量部
メチレンクロライド 440質量部
エタノール 40質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液Aを調製した。
製膜ライン中で日本精線(株)製のファインメットNFでドープ液Aを濾過した。インライン添加液ライン中で、日本精線(株)製のファインメットNFでインライン添加液Aを濾過した。濾過したドープ液Aを100質量部に対し、濾過したインライン添加液Aを
3質量部の比率で加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、次いで、ベルト流延装置を用い、温度32℃、1.8m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルロースエステルのウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.65m幅にスリットし、その後、テンターでTD方向(フィルムの搬送方向と直交する方向)に1.05倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で、乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は20%であった。
その後、120℃、110℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1.4m幅にスリットし、フィルム両端に幅1cm、平均高さ8μmのナーリング加工を施し、巻き取り初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアに巻き取り、セルロースエステルフィルム1を得た。ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出される剥離直後のMD方向(フィルムの搬送方向と同一方向)の延伸倍率は1.07倍であった。セルロースエステルフィルム1の平均膜厚は60μm、巻数は3000mであった。
〈弾性体によりフィルム面を擦る処理〉
上記作製したセルロースエステルフィルム1を用いて、スプレーノズルによりフィルム面を液体で濡らし、弾性体によってフィルム面を擦る処理を下記仕様で行った。
図1に示すフィルム搬送装置を用い、表2で示す条件で、スプレーノズルによりフィルム面を液体で濡らし、弾性体1により長尺フィルムの一方の面を擦った。
以下、表2記載の条件、及び用いた装置の詳細について示す。
〈フィルム搬送速度〉
セルロースエステルフィルム1は15m/分で搬送した。
〈スプレーによる液滴の付き量〉
図8で示されるスプレーノズル装置を用い、以下の条件でフィルムに液滴(純水)を付着させた。
使用スプレーノズル:スプレーイングシステムジャパン Unijet
条件1.付量1g/m2、液滴径300μmの場合:スプレー圧力0.3MPaで流量100g/分、スプレー噴射角が90°となるスプレーノズルを幅手で2本使用し、搬送されている長尺フィルムとスプレーノズルとの距離を1000mmに設定した。
条件2.付量20g/m2、液滴径5μmの場合:スプレー圧力2MPaで流量250g/min、スプレー噴射角120°となるスプレーノズルを幅手で2本使用し、搬送されている長尺フィルムとスプレーノズルとの距離を400mmに設定した。
条件3.付量20g/m2、液滴径6000μmの場合:スプレー圧力0.05MPaで流量100g/min、スプレー噴射角50°となるスプレーノズルを幅手で5本使用し、搬送されている長尺フィルムとスプレーノズルとの距離を400mmに設定した。
条件4.付量120g/m2、液滴径300μmの場合:スプレー圧力1MPaで流量600g/min、スプレー噴射角90°となるスプレーノズルを幅手で5本使用し、搬送されている長尺フィルムとスプレーノズルとの距離を240mmに設定した。
条件5.付量50g/m2、液滴径300μmの場合:スプレー圧力0.3MPaで流量250g/min、スプレー噴射角90°となるスプレーノズルを幅手で5本使用し、搬送されている長尺フィルムとスプレーノズルとの距離を240mmに設定した。
条件6.付量70g/m2、液滴径300μmの場合:スプレー圧力0.3MPaで流量300g/min、スプレー噴射角90°となるスプレーノズルを幅手で5本使用し、搬送されている長尺フィルムとスプレーノズルとの距離を240mmに設定した。
条件7.付量20g/m2、液滴径1000μmの場合:スプレー圧力0.2MPaで流量100g/min、スプレー噴射角70°となるスプレーノズルを幅手で5本使用し、搬送されている長尺フィルムとスプレーノズルとの距離を300mmに設定した。
条件8.付量20g/m2、液滴径3000μmの場合:スプレー圧力0.1MPaで流量100g/min、スプレー噴射角60°となるスプレーノズルを幅手で5本使用し、搬送されている長尺フィルムとスプレーノズルとの距離を320mmに設定した。
条件9.付量3g/m2、液滴径300μmの場合:スプレー圧力0.3MPaで流量100g/min、スプレー噴射角90°となるスプレーノズル幅手で5本使用し、搬送されている長尺フィルムとスプレーノズルとの距離を900mmに設定した。
条件10.付量100g/m2、液滴径300μmの場合:スプレー圧力0.3MPaで流量500g/min、スプレー噴射角90°となるスプレーノズルを幅手で5本使用し、搬送されている長尺フィルムとスプレーノズルとの距離を270mmに設置した。
条件11.付量20g/m2、液滴径10μmの場合:スプレー圧力1.5MPaで流量250g/min、スプレー噴射角120°となるスプレーノズルを幅手で2本使用し、搬送されている長尺フィルムとスプレーノズルとの距離を390mmに設置した。
条件12.付量20g/m2、液滴径5000μmの場合:スプレー圧力0.15MP
aで流量100g/min、スプレー噴射角65°となるスプレーノズルを幅手で5本使用し、搬送されている長尺フィルムとスプレーノズルとの距離を300μmに設置した。
複数のスプレーノズルの流量分布は図11の装置を用い下記の方法で測定した。
(流量分布の測定)
図11で示すスプレーノズル下に幅手1300mmの水槽を設けた装置を使用する。水槽内部は27区画に分けられるように壁を設けている。端部の流量は少なくなる傾向がある為、邪魔板により端部まで均一な流量になるように設置した。各々のノズルにおいて水圧0.3MPa、流量0.13L/分/本の条件で10分間水を供給し、その後水槽内の各区画に貯まった水の質量を測定した。その結果、流量分布は±1%であった。
〈弾性体との接触時間:擦り時間〉
条件T1.弾性体との接触時間が、0.035秒の場合は弾性体径200mm、ラップ角5°に設定。
条件T2.弾性体との接触時間が、0.52秒の場合は弾性体径200mm、ラップ角75°に設定。
条件T3.弾性体との接触時間が、2.3秒の場合は弾性体径600mm、ラップ角110°に設定。
条件T4.弾性体との接触時間が、1秒の場合は弾性体径300mm、ラップ角100°に設定。
条件T5.弾性体との接触時間が0.14秒の場合は弾性体径200mm、ラップ角20°に設定。
条件T6.弾性体との接触時間が0.05秒の場合は弾性体径200mm、ラップ角7°に設定。
条件T7.弾性体との接触時間が3秒の場合は弾性体径800mm、ラップ角108°に設定。
〈弾性体とフィルムとの面圧〉
条件M1.弾性体径200mm、210N/m2の場合はライン張力29.4Nで実施
条件M2.弾性体径200mm、2100N/m2の場合はライン張力294Nで実施
条件M3.弾性体径200mm、5600N/m2の場合はライン張力784Nで実施
条件M4.弾性体径600mm、1867N/m2の場合はライン張力784Nで実施
条件M5.弾性体径300mm、2100N/m2の場合はライン張力441Nで実施
条件M6.弾性体径200mm、4200N/m2の場合はライン張力588Nで実施
条件M7.弾性体径200mm、700N/m2の場合はライン張力98Nで実施
条件M8.弾性体径800mm、2100N/m2の場合はライン張力1176Nで実施
条件M9.弾性体径200mm、500N/m2の場合はライン張力70Nで実施
条件M10.弾性体径200mm、5000N/m2の場合はライン張力700Nで実施
〈弾性体の仕様〉
用いた弾性体の仕様は以下の通りである。
弾性体の大きさ、材質:200mm、300mmまたは600mm、のアルミ製ローラに厚み5mmのアクリロニトリル・ブタジエンゴムを被覆
弾性体の硬度:ゴム硬度30(JIS−K−6253の方法によりデュロメーターA型を用いて測定)
弾性体の静摩擦係数変化:弾性体表面を石油ベンジンでよく洗浄した後、弾性体を回転させながら酢酸エチルエステルに溶解した5質量%のトリクロロイソシアヌル酸溶液をしみこませたウエスを弾性体に接触させて弾性体表面にトリクロロイソシアヌル酸溶液を塗布した。この弾性体を室温でそのまま乾燥し約0.5時間で溶媒を揮発して表面を乾燥させた。トリクロロイソシアヌル酸溶液の濃度を変えることにより弾性体の静摩擦係数を表2で示すように変化させた。尚、静摩擦係数は新東科学株式会社製の「ヘイドン表面性測定機14型」を使用して前記方法により測定した。
弾性体の駆動方向及び回転数:フィルム搬送方向に逆転の方向で回転、回転数10rpm
弾性体の温度:30℃
エアーノズル5を用いてフィルム裏面へのエアー供給を下記のように調整した。
スリット幅:0.8mm(好ましくは0.2〜2mmの範囲)
スリット長:1600mm(フィルム幅による)
噴出し風速:100m/sec(好ましくは50〜300m/secの範囲)
フィルムとの距離:3mm(好ましくは2〜10mmの範囲)
弾性体の洗浄は図1の超音波振動子を用いる方法で行い、超音波振動子(日本アレックス社製の特別仕様機種)をフィルムの幅方向に2台、フィルム搬送方向に4台並べて設置した。この振動子1台の大きさはフィルムの幅方向に50cm、搬送方向に30cmであり、100KHzの超音波を1000Wのパワーで出力した。
尚、該装置の上流側10m、及び下流側10mの位置のフィルム搬送経路に各々1台のエッジポジションコントローラー(EPC)を設置し、弾性体1上で擦られている長尺フィルムの位置を制御した。
上記作製したセルロースエステルフィルム1を用いて、スプレーノズル8による液体4(純水)のフィルム面への供給有無、液体の付き量、液滴径、弾性体1による擦り時間、フィルムの弾性体1への面圧、エアーノズル9の有無、エアーノズル5によるフィルム裏面の吹き付け有無、EPCの有無等を各々表2の様に変更し、処理済みセルロースエステルフィルムC−1〜C−40を作製した。
尚、比較例セルロースエステルフィルムC−3については図13の装置を、本発明のセルロースエステルフィルムC−36及び比較例セルロースエステルフィルムC−38、C−40については図12のディップ式装置を用いた。また、比較例セルロースエステルフィルムC−37、C−38では静摩擦係数が0.14と本発明の範囲より低い弾性体を使用し、比較例セルロースエステルフィルムC−39、C−40では静摩擦係数が1.0と本発明の範囲より高い弾性体を使用した。
(反射防止層付き光学フィルムの作製)
上記処理したセルロースエステルフィルムC−1〜C−40を用いて、下記手順により各々反射防止層付き光学フィルム(反射防止フィルム)を作製した。
反射防止層を構成する各層の屈折率は下記方法で測定した。
(屈折率)
各屈折率層の屈折率は、各層を単独で下記作製したハードコートフィルム上に塗設したサンプルについて、分光光度計の分光反射率の測定結果から求めた。分光光度計はU−4000型(日立製作所製)を用いて、サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率の測定を行った。
(金属酸化物微粒子の粒径)
使用する金属酸化物微粒子の粒径は電子顕微鏡観察(SEM)にて各々100個の微粒子を観察し、各微粒子に外接する円の直径を粒子径としてその平均値を粒径とした。
《ハードコート層の形成》
上記処理したセルロースエステルフィルムC−1〜C−40上に、下記のハードコート層用塗布液を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層塗布液を調製し、これをマイクログラビアコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm2で、照射量を0.1J/cm2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚7μmのハードコート層を形成しハードコートフィルムを作製した。
(ハードコート層塗布液)
下記材料を攪拌、混合しハードコート層塗布液とした。
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬製) 220質量部
イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 20質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 110質量部
酢酸エチル 110質量部
〈反射防止層付き偏光板保護フィルムの作製〉
上記作製したハードコートフィルム上に、下記のように高屈折率層、次いで、低屈折率層の順に反射防止層を塗設し、反射防止層付き光学フィルム1〜40を作製した。
(反射防止層の形成:高屈折率層)
ハードコートフィルム上に、下記高屈折率層塗布組成物を押出しコーターで塗布し、80℃で1分間乾燥させ、次いで紫外線を0.1J/cm2照射して硬化させ、更に100℃で1分熱硬化させ、厚さが78nmとなるように高屈折率層を設けた。
この高屈折率層の屈折率は1.62であった。
(高屈折率層塗布組成物)
金属酸化物微粒子のイソプロピルアルコール溶液(固形分20%、ITO粒子、粒径5nm) 55質量部
金属化合物:Ti(OBu)4(テトラ−n−ブトキシチタン) 1.3質量部
電離放射線硬化型樹脂:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 3.2質量部
光重合開始剤:イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
0.8質量部
直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー(FZ−2207、日本ユニカー(株)製)の10%プロピレングリコールモノメチルエーテル液 1.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 120質量部
イソプロピルアルコール 240質量部
メチルエチルケトン 40質量部
(反射防止層の形成:低屈折率層)
前記高屈折率層上に下記の低屈折率層塗布組成物を押出しコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥させた後、紫外線ランプにて紫外線を0.1J/cm2照射して硬化させ、耐熱性プラスチックコアに巻き長4000mで巻き取り、次いで80℃3日間の加熱処理を行い反射防止層付き光学フィルム1〜40を作製した。
尚、この低屈折率層の厚さ95nm、屈折率は1.37であった。
(低屈折率層塗布組成物の調製)
〈テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製〉
テトラエトキシシラン289gとエタノール553gを混和し、これに0.15%酢酸水溶液157gを添加し、25℃のウォーターバス中で30時間攪拌することで加水分解物Aを調製した。
テトラエトキシシラン加水分解物A 110質量部
中空シリカ系微粒子(下記P−2)分散液 30質量部
KBM503(シランカップリング剤、信越化学(株)製) 4質量部
直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー(FZ−2207、日本ユニカー(株)製)の10%プロピレングリコールモノメチルエーテル液 3質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 400質量部
イソプロピルアルコール 400質量部
〈中空シリカ系微粒子(P−2)分散液の調製〉
平均粒径5nm、SiO2濃度20質量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として0.98質量%のケイ酸ナトリウム水溶液9000gとAl2O3として1.02質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のSiO2・Al2O3核粒子分散液を調製した。(工程(a))
この核粒子分散液500gに純水1700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2濃度3.5質量%)3000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒
子の分散液を得た。(工程(b))
次いで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1125gを加え、更に濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO2・Al2O3多孔質粒子の分散液を
調製した(工程(c))。上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750g及び28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO228質量%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。次いで、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%の中空シリカ系微粒子(P−2)の分散液を調製した。
この中空シリカ系微粒子の第1シリカ被覆層の厚さは3nm、平均粒径は47nm、MOx/SiO2(モル比)は0.0017、屈折率は1.28であった。ここで、平均粒径は動的光散乱法により測定した。
以上のようにして作製した各反射防止層付き光学フィルムの詳細を、表2、表3に示す。なお、表2、表3に略称で記載した事項の詳細は、以下の通りである。
*A:弾性体1出側のエアーノズル9
*B:エアーノズル5によるフィルム裏面の吹き付け
*1:フィルムへの液体供給なし、弾性体による擦りなし
*2:図13に記載の装置を使用
*3:図12に記載の装置を使用
《評価》
得られた反射防止層付き光学フィルム1〜40を用いて下記の評価を実施した。
(反射防止層の縦筋故障耐性の評価)
上記反射防止層付き光学フィルム3000mを各々10本塗布し、それぞれの巻で1m2の試料を10箇所よりサンプリングし、サンプリングしたベースの反射防止層裏面を黒スプレーで黒く塗りつぶし、反射防止層面を3波長の蛍光灯にて目視評価し縦筋本数を評価した。
10本×1m2×10箇所=100m2=100サンプル評価
縦筋はフィルム搬送方向に発生する真っ直ぐな筋であり、筋の部分は他の部分と反射光の色目が異なって見える。
◎:縦筋発生なし
○:100サンプルあたり、1本の縦筋が発生
△:100サンプルあたり、2本以上、10本以下の縦筋が発生
×:100サンプルあたり、11本以上の縦筋が発生
(反射防止層の横段故障耐性の評価)
上記反射防止層付き光学フィルム3000mを各々10本塗布し、それぞれの巻で1m2の試料を10箇所よりサンプリングし、サンプリングしたベースの反射防止層裏面を黒スプレーで黒く塗りつぶし、反射防止層面を3波長の蛍光灯にて目視評価し、横段の発生を評価した。
10本×1m2×10箇所=100m2=100サンプル評価
横段はフィルム幅手方向に発生し、段々状に反射光の色目が異なる。段々のピッチは約1〜5mmである。
◎:発生なし
○:100サンプル中、1サンプルに横段発生
△:100サンプル中、2サンプル以上、10サンプル以下に横段発生
×:100サンプル中、11サンプル以上に横段発生
(異物故障耐性の評価)
塗膜の目視検査により直径100〜150μm未満若しくは直径150μm以上に見える突起状故障または窪み状故障を1m2あたりの個数でカウントした。
直径100μmの異物故障とは、塗膜の基準面に対して塗膜表面の厚み変化率が2μm(塗膜の厚み変化)/100μm(基準面上の距離)以上で、塗膜の厚みが0.5μm以上変化した突起状故障または窪み状部分の範囲を略円形として見たときの直径が100μmの故障であり、これは目視で100μmの大きさの異物故障としている。同様に前記の直径が150μmの故障を150μmの大きさの異物故障としている。実際の異物故障検査では、前記100μmの大きさの異物故障と150μmの大きさの異物故障見本を用意し、100μmの大きさの異物故障見本と150μmの大きさの異物故障見本の中間の大きさを有する異物故障を直径100〜150μmの異物数としてカウントした。同様に150μmの大きさの異物故障見本に対し、これ以上の大きさの異物故障を150μm以上の異物としてカウントした。
又、異物故障の突起状或いは窪み状故障の断面の様子は光干渉式の表面粗さ計等で観察することが出来る。
上記カウントした異物個数を以下に基準で評価した。
◎:100μm以上の異物は認められない
○:100μm以上、150μm未満の異物が僅かに認められる
△:100μm以上、150μm未満の異物が認められる
×:100μm以上、150μm未満の異物が認められ、更に150μm以上の異物も認められる
(皺耐性の評価)
上記各反射防止層付き光学フィルム10本を目視で観察し、皺の発生がないかを下記基準で評価した。
◎:10本とも皺の発生は全くない
○:1本以上、3本以下で、皺の発生が僅かに認められる
△:1本以上、3本以下で、皺の発生が明らかに認められる
×:4本以上で、皺の発生が明らかに認められる
(擦傷耐性の評価)
上記反射防止層付き光学フィルム3000mを各々10本塗布し、それぞれの巻で1m2の試料を10箇所よりサンプリングし、サンプリングしたベースの反射防止層裏面を黒スプレーで黒く塗りつぶし、反射防止層面をグリーンランプにて目視評価し、擦傷本数を評価した。
10本×1m2×10箇所=100m2=100サンプル評価
◎:擦傷発生なし
○:10サンプルあたり、1本以上、3本以下の擦傷が発生
△:10サンプルあたり、4本以上、10本以下の擦傷が発生
×:10サンプルあたり、11本以上の擦傷が発生
以上の評価結果を下記表4に示す。
表4に記載の結果より明らかなように、本発明の処理済みセルロースエステルフィルムC−4〜C−36用いた反射防止層付き光学フィルム4〜36は、縦筋故障耐性、横段故障耐性、異物故障耐性、皺耐性、擦傷耐性が、比較例に対し改善されていることが分かる。また、請求の範囲第2項〜第15項で示した好ましい処理方法に各々設定することにより、上記改善効果がより一層高くなることが分かった。
一方、表面を濡らすための水を供給しなかった比較例であるセルロースエステルフィルムC−1〜C−3を用いた反射防止層付き光学フィルム1〜3では、縦筋故障、横段故障、異物故障、皺、擦傷が発生し、光学フィルムとしては使用できなかった。また、表面を濡らすための水は供給したが、静摩擦係数が本発明の範囲外の弾性体を使用した比較例のセルロースエステルフィルムC−37〜C−40を用いた反射防止層付き光学フィルム37〜40では、水供給により縦筋故障耐性や擦傷耐性に改善がみられるも、横段故障や皺が発生し、光学フィルムとしては使用できなかった。
実施例2
実施例1の反射防止層付き光学フィルムNo.2及びNo.6の作製において、直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー(FZ−2207、日本ユニカー(株)製)の10%プロピレングリコールモノメチルエーテル液の替わりに、ビックケミー(株)製BYK330、BYK337、BYK346、BYK375の10%プロピレングリコールモノメチルエーテル液をハードコート層塗布液に1質量部、高屈折率塗布組成物に1.5質量部、低屈折率層塗布組成物に3質量部加えた以外は同様にして反射防止フィルムを作製し、縦筋故障耐性、横段故障耐性、皺耐性を評価したところ、評価が◎となり塗布性が更に改善されることが分かった。
実施例3
実施例1で作製した反射防止層付き光学フィルム1〜40を用いて、偏光板及び液晶表示装置を作製した。
〈偏光板の作製〉
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光膜と実施例1で作製した反射防止層付き光学フィルム1〜36、裏面側偏光板保護フィルムとしてセルロースエステルフィルムを貼り合わせて偏光板を作製した。裏面側の偏光板保護フィルムには位相差を有するセルロースエステルフィルム(コニカミノルタタックKC8UCR−5:コニカミノルタオプト(株)製)を用いてそれぞれ偏光板とした。
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化した反射防止層付き光学フィルムを得た。
工程2:前記偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理した反射防止層付き光学フィルムの上にのせて積層し配置した。
工程4:工程3で積層した前記作製した反射防止層付き光学フィルムと偏光膜と裏面側のセルロースエステルフィルムを圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光膜と反射防止層付き光学フィルム及び裏面側セルロースエステルフィルムとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板を作製した。反射防止層付き光学フィルム1〜40それぞれ用いて、偏光板1〜40を作製した。
《液晶表示装置の作製》
視野角測定を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
富士通製15型ディスプレイVL−150SDの予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板1〜36をそれぞれ液晶セルのガラス面に貼合した。
その際、偏光板の貼合の向きは、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置1〜36を各々作製した。
以上の様にして得られた液晶表示装置1〜40を用いて下記の評価を行った。
《評価》
《視認性の評価》
上記作製した各液晶表示装置について、60℃、90%RHの条件で100時間放置した後、23℃、55%RHに戻した。その結果、表示装置の表面を観察すると本発明の反射防止層付き光学フィルム4〜36を用いたものは、すべて○〜◎の評価であり、平面性に優れていたのに対し、比較の表示装置は×の評価であり、細かい波打ち状のむらが認められ、長時間見ていると目が疲れ易かった。
◎:表面に波打ち状のむらは全く認められない
○:表面に僅かに波打ち状のむらが認められる
△:表面に細かい波打ち状のむらがやや認められる
×:表面に細かい波打ち状のむらが認められる