JPWO2007037228A1 - 生物発電用アノード及びこれを利用する発電方法及び装置 - Google Patents

生物発電用アノード及びこれを利用する発電方法及び装置 Download PDF

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Abstract

アノードの活性化過電圧を低く抑えることによって、結果的に十分低いアノード電位を得て、含水有機性物質から効率的に電気エネルギーを得る方法及び装置を提供する。嫌気性条件下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液、電子メディエータ及びアノード1を含む嫌気性域4と、分子状酸素及びカソード3を含む好気性域5と、嫌気性域4及び好気性域5とを画定する隔膜2と、を具備し、アノード1及びカソード3を電力利用機器に電気的に接続して閉回路6を形成し、嫌気性域4内での有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応と好気性域5内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用する発電装置。アノード1は、表面の少なくとも一部が親水性ポリマー層で被覆された導電性基材を含み、該親水性ポリマー層には電子メディエータが化学的に結合されて導入されており、pH7における標準電極電位(E0')が-0.13V〜-0.28Vの範囲内にある。

Description

本発明は、廃水、廃液、し尿、食品廃棄物、その他の有機性廃棄物、汚泥などの有機性物質またはその分解物を基質とし、その基質と空気中の酸素との酸化還元反応を、嫌気性生物による酸化反応と、酸素の還元反応に分離することによって発電を行う生物発電技術に関する。
廃水、廃液、し尿、食品廃棄物、その他の有機性廃棄物または汚泥(以下、「含水有機性物質」とする)を分解して利用可能なエネルギーを取り出す方法として、メタン発酵を始めとする嫌気発酵法によってメタン等を生産して、これを用いて発電を行う方法や、生物の嫌気呼吸反応から直接電気を取り出す生物電池法などが考案されている。
しかしながら、メタン発酵を始めとする嫌気発酵法によりメタン、エタノール、水素などを生産し、これらを用いて発電を行う方法は、生物による物質生産過程と生産物を燃料とした発電過程の2段階のステップを必要とするため、エネルギー効率が悪く、装置も複雑になる問題がある。
一方、微生物を利用して、アノード周辺の電子供与体からの電子を、アノードとカソードを回路として導通することでカソード周辺の電子受容体(主に溶存酸素)に供与して電流を得る方法が報告されている(下記特許文献1、2、及び3)。これらの方法ではカソードを水中に設置するため、水中での溶存酸素の拡散速度が全体の反応の律速となる可能性が高い。すなわち、水中での溶存酸素の還元反応は水中での酸素の拡散速度に依存するため、無撹拌時の電極単位表面積当たりの電流量は過電圧に関わりなく20μA/cm2が最大値となる。これは空気中の酸素を用いた場合の値(過電圧200mVで約300mA/cm2)と比較して著しく小さいため、含水有機性物質の酸化及び発電の制限因子となることがわかる。
また、別の例では微生物に常に不十分な量の有機物を与えて、微生物を飢餓状態に維持することによって効率良く電子を取り出す方法が提案されており(特許文献4)、この文献中には、カソードとして酸素または空気極が使用できると記載されている。しかしながら当該文献中には、空気極を用いる場合の具体的な装置の構造などの記載および実施例はなく、問題を解決するための手段として当業者が実施できるようには開示されていない。
電子メディエータを利用する生物電池技術として、含水有機性物質又はその分解物を基質として、基質と酸素との酸化還元反応を、嫌気性微生物による酸化反応と、酸素の還元反応に分離することによって発電を行う方法が提案されている(特許文献3及び非特許文献1〜3)。しかし、これらの方法において用いられている電子メディエータの標準電極電位は、一般に生物電池反応に用いられる嫌気性微生物の最終電子受容物質の標準電極電位と重ならず、有効な電位のカスケードを形成できないという問題がある。例えば、これまでに提案されている電子メディエータとその標準電極電位は、下記表1のとおりである。
Figure 2007037228
一方、一般的な生物電池反応に用いられる嫌気性微生物である硫黄還元菌、酸化鉄(III)還元菌の最終電子受容物質である硫黄及び鉄の標準電極電位は、下記表2のとおりである。
Figure 2007037228
表2より、硫黄還元菌の持つ電子伝達系の末端還元酵素(硫黄還元酵素)は、-0.28Vの標準電極電位を持つ物質を還元することができ、一方、酸化鉄(III)還元菌の持つ電子伝達系の末端還元酵素(酸化鉄(III)還元酵素)は、+0.20Vの標準電極電位を持つ物質を還元することができることがわかる。これらの末端還元酵素は微生物の外膜やペリプラズムに存在しており、菌体外の酸化鉄や0価の硫黄を還元できることから効率的な生物発電のために有効な触媒となり得る。ところが、これまで提案されている電子メディエータの標準電極電位は、表1に示すように、A〜Gの電子メディエータのいずれも鉄還元の標準電極電位よりも低いので、酸化鉄(III)還元酵素−電子メディエータ−アノード間で有効な電位のカスケードを形成できない。同様に、表1C〜Gの電子メディエータは硫黄還元の標準電極電位よりも低いので、硫黄還元酵素−電子メディエータ−アノード間で有効な電位のカスケードを形成できない。表1A及びBの電子メディエータは硫黄還元の標準電極電位よりも高いので、理論上は硫黄還元酵素による還元が可能であるが、電位差が0.3V以上もあり、生物学的な電子伝達が困難である可能性が高い。その上、発電効率を高めるためにはカソードの酸素還元反応に対してできるだけ大きな電位差を生じさせることが求められるが、電子メディエータの電位が高いので0.3V以上の電位差を損失してしまい、エネルギー損失が大きくなる。
そこで、硫黄還元菌を用いた生物電池系において、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸(AQ-2,6-DS)を嫌気性域に添加することにより電子伝達効率の向上を試みる提案がなされた(非特許文献2)。AQ-2,6-DSの標準電極電位は-0.185Vであり、硫黄還元酵素−電子メディエータ間で有効な電位のカスケードを形成するのに適当な物質であると考えられる。しかし、提案されている系においては、AQ-2,6-DSは液相中に添加されただけで、アノード(酸化電極)に担持されていないため、電極との反応性が低く、添加効果は24%の電流値増加に留まっている。また、連続的に発電する場合には、嫌気性域内の基質液を更新する際に電子メディエータも一緒に系外に排出されてしまい、常に電子メディエータを添加し続けなければならない、という問題がある。
また、ニュートラルレッドをアノードにアミド結合を用いて担持する試みが提案されている(非特許文献3)。この提案によれば、グラファイト電極の酸化によりカルボキシ基を導入し、ジシクロヘキシルカルボジイミドの共存下でニュートラルレッドと反応させてアミド結合を形成する際、下記構造式:
Figure 2007037228
において、矢印で示す9位の第二級アミンにカルボキシ基が結合すると考えられる。ところが、グラファイトに結合したニュートラルレッドのサイクリックボルタンメトリにおける電流値ピークは、-0.42V付近に認められ、遊離の状態での標準電極電位-0.325Vよりも0.1V程度低下している。この変動により、生物による電子メディエータの利用がさらに困難になる。これは、9位の第二級アミンに化学修飾を施すことにより、ニュートラルレッドの標準電極電位が大幅に変動したためと考えられる。
一方、二次電池の負極材料として、ポリエチレンイミンなどの親水性ポリマーとハロキノンとを反応させ、ポリマーの構成単位にキノン単位を導入する方法が提案されている(特許文献5)。この方法では上記のキノン固定化ポリマーを白金板などの集電体上に滴下し、加熱乾燥することによって充放電可能な負極材を作製している。しかしながら、この特許に開示される方法で作製した電極を微生物電池のアノードに応用した場合、微生物の末端還元酵素は上記ポリマー層の表面近傍のキノンしか還元することができず、またポリマー層が疎水性を示す場合には還元反応そのものが困難であった。さらに、ポリマー層表面のキノンが還元されても、集電体である白金板との間には非導電性の物質であるポリマー層が存在しているため、電子を集電体まで移動させる必要があり、還元型キノンの酸化効率が悪く、活性化過電圧も大きくなる問題があった。さらに、上述したように微生物電池のアノードとして用いるためにはキノンを固定化後もポリマー層の親水性を維持する必要があるが、そのための方法・条件はなんら開示されていなかった。
このように、電子メディエータを用いた生物発電技術において、微生物の末端還元酵素−電子メディエータ−アノード間で有効な電位カスケードを形成し、活性化過電圧の低い導電性基材を利用し、かつ電子メディエータ固定化後も該固定化層の親水性を維持できるような技術が求められている。
特開2000−133327号公報 特開2000−133326号公報 特表2002−520032号公報 米国特許4652501号明細書 特開平6−56989号公報 特開2005−317520号公報 Roller et al., 1984, Journal of Chemical Technology and Biotechnology 34B: 3-12 Bond et al., 2002, SCIENCE 295: 483-485 Park et al., 2000, Biotechnology Letters 22: 1301-1304
本発明の課題は、上記のような従来技術の問題点を解決し、簡易な装置・方法により、効率的に生物発電ができる生物発電用のアノードを提供することにある。より具体的には、嫌気性生物の最終還元酵素−電子メディエータ−アノード間で有効な電位カスケードを形成することを可能として、結果的に十分低いアノード電位を得て、含水有機性物質から効率的に電気エネルギーを得ることができる生物発電用アノード、その製造方法、並びにこれを利用する発電方法及び装置を提供することにある。
上述したように、微生物の末端還元酵素−電子メディエータ−アノード間で有効な電位カスケードを形成するためには、電子メディエータの電位は硫黄還元の標準電極電位よりも高い-0.28V以上であることが望ましい。その一方、実用的な発電を行うことを目的とした場合には、カソードとの電位差をなるべく大きく取るために、アノードの電位はできるだけ低い値であることが必要であると考えられる。
これらの知見から、本発明者らは嫌気性微生物の最終電子受容物質の標準電極電位を指標として電子メディエータを選択し、さらにこれをアノード表面に固定化し、必要に応じてさらにアミノ基やスルホン酸基などで修飾を行うことにより、pH7におけるアノードの標準電極電位を-0.13V〜-0.28Vの範囲内で、なるべく-0.28Vに近い電位になるよう設定することを提案した(特許文献6)。この発明においては、アノード基材としてグラファイト、多孔質グラファイト、金、白金、または金属酸化物(TiO2など)を用い、これらにアミド結合、金または白金-イオウ結合またはシランカップリングによって電子メディエータを固定化する方法を提案している。
そして、この従来得ている知見に基づいてさらに研究を重ねたところ、電子メディエータと導電性基材との間に親水性ポリマー層を介在させることにより、上記目的を従来の発明よりもさらに効果的に達成しうることを知見した。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、本発明によれば、表面の少なくとも一部が親水性ポリマー層で被覆された導電性基材を含み、該親水性ポリマー層には電子メディエータが化学的に結合されて導入されており、pH7における標準電極電位(E0')が-0.13V〜-0.28Vの範囲内にあることを特徴とする生物発電用アノードが提供される。
また、本発明によれば、嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液、本発明の生物発電用アノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域と、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備し、該アノード及び該カソードを電力利用機器に電気的に接続して閉回路を形成し、該嫌気性域内での有機性物質を電子供与体とする酸化反応と該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用して発電する発電装置が提供される。
また、本発明によれば、嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液、本発明の生物発電用アノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域と、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備し、該アノード及び該カソードを電力利用機器に電気的に接続して閉回路を形成し、該嫌気性域内での有機性物質を電子供与体とする酸化反応と該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用して発電する発電方法が提供される。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の生物発電用アノードは、表面の少なくとも一部が親水性ポリマー層で被覆された導電性基材を含み、該親水性ポリマー層には電子メディエータが化学的に結合されて導入されており、pH7における標準電極電位(E0')が-0.13V〜-0.28Vの範囲内であり、好ましくは-0.15V〜-0.27Vの範囲内であることを特徴とする。
本発明において用いることができる導電性基材としては、生物発電装置において用いられる電極基材であって親水性ポリマーの付着・捕捉性が高い電極基材であることが好ましく、グラファイト、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ(CNT)、気相成長炭素繊維(VGCF)などの粉体素材を固結させたものや、アルミニウム、ニッケル、鉄、銅、金、白金などの金属、ステンレス鋼、モネル(スペシャルメタル社、登録商標)などのニッケル−銅合金、鉄−シリコン合金、カルシウム−シリコン合金、アルミニウム−亜鉛−シリコン合金、モリブデン−バナジウム合金などの合金を好ましく挙げることができる。特にグラファイト、カーボンブラック、フラーレン、CNT、VGCFなどの炭素六員環を含む導電性基材を用いた場合、その表面に低密度ではあるがカルボキシ基などの親水性の官能基が存在しているため、これを利用してアミド結合もしくは水素結合により親水性ポリマー層を導電性基材に対して固定化することができるので好ましい。また、カーボンブラック、フラーレン、CNT、VGCFは通常、粉体として供給されるため、電極基材として使用する場合は、押し固めて成形して焼成するか、石油または石炭ピッチを含浸させて焼成するか、ポリアミン(日本触媒製エポミン(登録商標)等のポリエチレンイミン、ポリアリルアミン)、ポリアミド(ポリアクリル酸)などの接着力のある樹脂をメタノールなどの溶媒で希釈したものと混合して接着成形するか、あるいはナフィオン(デュポン登録商標)溶液(デュポン社製5%ナフィオン117溶液)を含浸させて50kgf/cm2程度の圧力をかけながら170℃で固結させるなどの方法で成形することができる。
また、カーボンフェルト、カーボンクロス、カーボンペーパーなどの繊維状グラファイトを用いた成形品は、表面積が大きく、親水性ポリマーを含浸しやすいためにポリマー層の付着・捕捉性が高いのでより好ましい。
導電性基材の形状、大きさなどは特に制限されず、生物発電装置の寸法に依存して決定することができるが、厚みは0.001mm〜10mmとするのが好ましい。
親水性ポリマー層は、導電性基材表面の少なくとも一部を被覆する状態で形成されていればよい。親水性ポリマー層の厚みは200nm以下とするのが好ましく、50nm以下とするのが更に好ましい。200nmを超えると、性能が低下する場合があり、好ましくない。この性能が低下する原因は定かではないが、高分子である親水性ポリマーは導電性基材の表面で細密な網目状に重なり合って固定化されるため、微生物の末端還元酵素は網目状構造の内部には入ることができず、親水性ポリマー層表面近傍の電子メディエータしか還元することができないところ、親水性ポリマー層表面近傍の電子メディエータと導電性基材との間が200nmを超えて離れていると、電子メディエータから導電性基材へ向かって電子が効率的に移動することができず、電子メディエータが酸化型に戻りにくいために発電効率が低下すると考えられる。
本発明において親水性ポリマー層の構成成分として用いることができる親水性ポリマーは、アミノ基、イミノ基、カルボキシ基、スルホン酸基などの親水性の官能基を有するポリマーを好ましく挙げることができ、より好ましくはアミノ基、イミノ基、カルボキシ基及びスルホン酸基からなる群より選択されるいずれか1種類の官能基を構造中に含むポリマーを挙げることができる。具体的には、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリアクリル酸、又はポリメタクリル酸などが好ましい。また、ポリクロロメチルスチレンなどのハロゲン基をアミノ基、カルボキシ基もしくはスルホン酸基に変換した誘導体も好ましく用いることができる。また、親水性ポリマーは、平均分子量が1万以上であることが好ましく、より好ましくは平均分子量7万以上である。
本発明において用いることができる電子メディエータは、標準電極電位が-0.13V〜-0.28Vの範囲内にあるか、もしくはアノードに固定化された後にアノードとしての標準電極電位が上記範囲内にあり、酸化型、還元型何れの状態においても環境中で安定である物質(酸化還元物質)で、生物の呼吸を阻害せず、生物によって容易に還元され得るものを用いることができる。好ましくは、本発明において用いることができる電子メディエータとしては、アントラキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、ベンゾキノン誘導体、イソアロキサジン誘導体からなる群より選択される1種以上の酸化還元物質を挙げることができる。具体的には、アントラキノンカルボン酸類(AQC)、アミノアントラキノン類(AAQ)、ジアミノアントラキノン類(DAAQ)、アントラキノンスルホン酸類(AQS)、ジアミノアントラキノンスルホン酸類(DAAQS)、アントラキノンジスルホン酸類(AQDS)、ジアミノアントラキノンジスルホン酸類(DAAQ DS)、エチルアントラキノン類(EAQ)、メチルナフトキノン類(MNQ)、メチルアミノナフトキノン類(MANQ)、ブロモメチルアミノナフトキノン類(BrMANQ)、ジメチルナフトキノン類(DMNQ)、ジメチルアミノナフトキノン類(DMANQ)、ラパコール(LpQ)、ヒドロキシ(メチルブテニル)アミノナフトキノン類(ALpQ)、ナフトキノンスルホン酸類(NQS)、トリメチルベンゾキノン類(TMABQ)、フラビンモノヌクレオチドおよびこれらの誘導体からなる群より選ばれる1つ以上の酸化還元物質を挙げることができ、より具体的には、アントラキノン-2-カルボン酸(AQC)、1-アミノアントラキノン(AAQ)、1,5-ジアミノアントラキノン(DAAQ)、アントラキノン-2-スルホン酸(AQS)、1,5-ジアミノアントラキノン-2-スルホン酸(DAAQS)、アントラキノンジスルホン酸(AQDS)、1,5-ジアミノアントラキノンジスルホン酸(DAAQ DS)、2-エチルアントラキノン(EAQ)、2-メチル-1,4-ナフトキノン(MNQ)、2-メチル-5-アミノ-1,4-ナフトキノン(MANQ)、2-ブロモ-3-メチル-5-アミノ-1,4-ナフトキノン(BrMANQ)、2,3-ジメチル-1,4-ナフトキノン(DMNQ)、2,3-ジメチル-5-アミノ-1,4-ナフトキノン(DMANQ)、ラパコール(LpQ)、2-ヒドロキシ-3-(3-メチル-2-ブテニル)-5-アミノ-1,4-ナフトキノン(ALpQ)、1,2-ナフトキノン-4-スルホン酸(NQS)、2,3,5-トリメチルベンゾキノン(TMABQ)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)およびこれらの誘導体からなる群より選ばれる物質を好ましく用いることができる。本発明において電子メディエータとして好ましく用いることができる物質の構造式を下記に示す。
Figure 2007037228
また、親水性ポリマー層に導入された電子メディエータは、親水性官能基を有する物質であることが好ましい。電子メディエータ自身が親水性官能基を有することで、電子メディエータ固定化アノードとしての親水性が強くなり、生物発電用のアノードとしてより良好に機能する。電子メディエータが有する親水性官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、イミド基、スルホン酸基などを好ましく挙げることができる。
電子メディエータは、親水性ポリマー層を構成する親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位、すなわち、親水性ポリマー層を構成する親水性ポリマーを構成する各単位(ポリマーユニット)のうち親水性モノマーに起因する構成単位(ポリマーユニット)に対して、好ましくは30モル%以下、更に好ましくは1〜30モル%の導入率で導入されていることが好ましい。
ここでポリマーユニットとは、親水性ポリマーの分子構造のうち、原料である親水性モノマー1分子により構成される繰返し構造の最小単位を指す。ただし親水性ポリマーがコポリマーである場合は、繰返し構造の最小単位を更に原料である親水性モノマー分子1分子ごとに分割したものをポリマーユニットとして定義する。
電子メディエータの導入率が30モル%を超えると、親水性ポリマー層全体が疎水性になる結果、水の出入りが困難になり、キノン類などの電子メディエータの酸化還元反応に不可欠な水素イオンの供給および離脱も困難となり、生物発電用のアノードとして機能しなくなる場合がある。
ここで、電子メディエータの導入率は、導電性基材表面にポリマー層を形成させた時点で基材の重量増加を測定し、増加した重量から担持されているポリマー層に含まれる親水性ポリマー単位のモルを計算することにより求めることができる。
さらに、電子メディエータを導入した親水性ポリマー層の強度を向上させたい場合は、架橋剤(例えば、ジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、プロパンジアミンなどのジアミン類など)を用いて親水性ポリマー層を構成する親水性ポリマー間を架橋させても良い。この場合、親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位あたりの架橋度は0.01〜10モル%程度で充分であり、これ以上架橋度を上げると親水性ポリマー層の親水性が低下したり、親水性ポリマー層の網目構造が過度に緻密となり微生物の末端還元酵素などが接触しにくくなるため、生物発電用アノードとしての性能に悪影響を与える恐れがある。
本発明の生物発電用アノードにおける親水性ポリマーに対する電子メディエータの導入例を下記に示す。
Figure 2007037228
次に、本発明の生物発電用アノードの製造方法について説明する。
本発明の生物発電用アノードの製造方法は、導電性基材の表面の少なくとも一部が親水性ポリマーで被覆された親水性ポリマー被覆導電性基材を形成する親水性ポリマー被覆導電性基材形成工程と、該親水性ポリマー被覆導電性基材に電子メディエータを導入する電子メディエータ導入工程と、を含む。
親水性ポリマー被覆導電性基材形成工程は、(1)親水性ポリマーの濃度が50g/L以下であるポリマー溶液を導電性基材に滴下、塗布、吹き付けまたは浸漬させることにより親水性ポリマーを導電性基材に付着若しくは固定化する付着・固定化工程又は(2)導電性基材の官能基と親水性ポリマーの官能基とを結合させて、親水性ポリマーを導電性基材に固定化する固定化工程であることが好ましい。
電子メディエータ導入工程は、親水性ポリマー被覆導電性基材の親水性ポリマー層を構成する親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して、電子メディエータを30モル%以下の比率で反応させて、電子メディエータを導入することが好ましい。
以下、各工程を説明する。
<付着・固定化工程>
付着・固定化工程は、親水性ポリマーの接着力、コーティング力によって導電性基材に付着もしくは固定させて被覆させる工程である。具体的には、親水性ポリマーをメタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどの比較的極性の高い溶媒に溶解してポリマー溶液を得、これを導電性基材に塗布、滴下、吹き付けまたは浸漬させることによって付着させ、次いでこれを100〜200℃で乾燥または減圧乾燥させることによってポリマー層を形成することができる。また、上記ポリマー溶液を滴下する際に導電性基材を回転させることによって均一な層を得ることができる。
ポリマー溶液中の親水性ポリマー濃度は50g/L以下、望ましくは10g/L以下である。この範囲とすることにより、ポリマー溶液を導電性基材に塗布又は含浸させてから乾燥させて、生成した親水性ポリマー層の厚さが上述の好ましい層厚(200nm以下)となり、好ましい酸化還元活性を持つ生物発電用アノードが作製できる。
また、親水性ポリマーを導電性基材に付着させる場合は、ポリマー層の付着性を高めるために、用いるポリマーの平均分子量は好ましくは7万以上、より好ましくは10万以上のものが用いられる。また、同程度の平均分子量を持つポリマーを比較した場合、枝分かれ構造を持つポリマーは付着性が高く、より好ましく用いられる。
<固定化工程>
固定化工程は、導電性基材の表面に存在するカルボキシ基などの官能基と、親水性ポリマーの持つアミノ基、イミノ基またはカルボキシ基などの官能基との間でアミド結合または水素結合を形成させ、ポリマーを導電性基材上に単なる付着よりも強固に固定化することにより行うことができる。具体的には、アミノ基またはイミノ基を持つ親水性ポリマーをテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどの溶媒に溶解させ、ジシクロヘキシルカルボジイミド又はエチルジメチルアミノプロピルカルボジイミドの共存下で、導電性基材と数時間から数十時間反応させることにより、導電性基材の持つカルボキシ基またはスルホン酸基とアミド結合又はスルホンアミド結合を形成させることができる。また、カルボキシ基を持つ親水性ポリマーをメタノールなどの溶媒に溶解させ、導電性基材と数時間反応させることにより、導電性基材の持つカルボキシ基と水素結合を形成させてもよい。
この場合にも、親水性ポリマー層の層厚は200nm以下であることが好ましいため、ポリマー液中のポリマー濃度は50g/L以下、望ましくは10g/L以下になるように調製することが望ましい。また、アミノ基またはイミノ基を持つポリマー層の厚みが200nmを超えてしまう場合には、塩酸などを用いて余剰のポリマーを溶解、除去することができる。同様に、カルボキシ基またはスルホン酸基を持つポリマー層の厚みが200nmを超えてしまう場合には、水酸化ナトリウムなどを用いて余剰のポリマーを溶解、除去することができる。
このようなポリマー固定化法を用いる場合には、ポリマー層の安定性が単なる付着の場合よりも高いために、用いるポリマーの平均分子量は1万以上であれば良い。
<電子メディエータ導入工程>
本発明において、電子メディエータである酸化還元物質をポリマーに固定化させる方法としては、電子メディエータの酸化還元活性を阻害しないような方法を用いることが好ましい。また、ポリマーに固定化された電子メディエータは水環境中で安定であって、容易に分解、剥離しない性質及び形態であることが望ましい。具体的には、下記表-3に示す化学結合方法が適切である。
Figure 2007037228
したがって本発明において、電子メディエータを親水性ポリマー層に固定化するには、使用する親水性ポリマーに存在する官能基と電子メディエータに導入するか又は予め存在している官能基との組み合わせに応じて、表-3に示す方法から適切な結合方法を選択することができる。
例えば、親水性ポリマーとしてポリエチレンイミン(日本触媒製エポミン(登録商標)P-1000)を使用し、電子メディエータとしてAQC(アントラキノン−2−カルボン酸)を使用する場合には、AQCが有するカルボキシ基を利用した結合方法を好ましく選択することができる。具体的には、ポリエチレンイミン層を導電性基材表面に形成させた後、AQCをテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどの溶媒に溶解させた溶液中に浸漬し、ジシクロヘキシルカルボジイミド又はエチル(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩の共存下で、数時間から数十時間反応させることにより、ポリエチレンイミンのイミノ基とAQCのカルボキシ基との間でアミド結合が形成され、AQCを親水性ポリマー層に安定に固定化することができる。
また、上述の電子メディエータの好ましい範囲の導入率を達成するには、親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して0.01〜0.3倍モルの電子メディエータ(この場合AQC)を添加して上記の脱水縮合反応を行わせることにより、親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して電子メディエータが1〜30モル%導入されている生物発電用のアノードを作製することができる。
さらに、架橋を行うこともできる。架橋に際しては、架橋剤(例えば、ジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、プロパンジアミンなどのジアミン類など)を用いて常法に従って行うことができる。
また、同様に、親水性ポリマーとしてポリアリルアミンを使用し、電子メディエータとしてAQS、AQ-2,6-DS、AQ-2,7-DS、AQ-1,5-DS、メタニルイエロー、メチルオレンジのようなスルホン酸基を有する物質を固定化する場合には、これらのいずれかの電子メディエータのスルホン酸基を予めスルホニルクロリドとしておき、しかる後にテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの溶媒中でポリアリルアミンと反応させることによりスルホンアミド結合を形成させることができる。この場合には、電子メディエータを高導入率で導入しても親水性が保持され、後述する官能基導入工程が不要となるので、有用である。
Figure 2007037228
具体的には、電子メディエータに対し1/2モルに相当する量のスルホランと4倍モルに相当する量のオキシ塩化リンとを含むアセトニトリル溶媒中で、70℃条件下で1時間反応させ、スルホン酸基をスルホニルクロリドに変換する。これを濾過して氷水で洗浄後、乾燥させることにより、電子メディエータのスルホン酸基をスルホニルクロリド基に変換することができる。これを例えばテトラヒドロフラン溶媒中で上記アミノ基を持つポリマー単位に対し1〜30モル%となるような添加条件で接触させ、添加したスルホニルクロリドに対し5倍モルに相当する量のトリエチルアミンを共存させつつ室温で12時間程度反応させることにより、親水性ポリマーと電子メディエータとの間にスルホンアミド結合を形成させることができる。
この場合でも電子メディエータの導入率は30モル%以下とするのが好ましいが、電子メディエータとしてアントラキノンジスルホン酸のような複数の親水性官能基を持つ電子メディエータを導入する場合は、スルホンアミド結合により電子メディエータと親水性ポリマーとが結合した後も、上記複数の親水性官能基のうち1個はスルホンアミド結合によって使用されるものの、残りの親水性官能基は(架橋反応が起こらなければ)残存するため、親水性が維持される場合がある。このような場合は、ポリマー層を構成する親水性ポリマーの単位に対して、電子メディエータが30モル%以上となるように導入率を制御しても良い。
また、AQ-2,6-DS、AQ-2,7-DS、AQ-1,5-DSなどの複数のスルホン酸基を持つ電子メディエータを使用する場合は、親水性ポリマーを導電性基材に固定化してから電子メディエータと接触させないと、ポリマー分子間で電子メディエータを介した架橋反応が生じてしまい、ポリマーがさらに高分子化して導電性基材へ塗布することが困難になってしまうため、先に付着・固定化工程を行った後、電子メディエータ導入工程を行うのが好ましい。
また、親水性ポリマーとしてポリアクリル酸を使用し、電子メディエータとしてアミノアントラキノンやジアミノアントラキノンなどのアミノ基を有する物質を使用する場合には、アミノ基を利用した結合方法を好ましく選択することができる。具体的には、ポリアクリル酸層またはポリメタクリル酸層を導電性基材表面に形成させた後、電子メディエータのいずれかをテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどの溶媒に溶解させた溶液中に浸漬し、ジシクロヘキシルカルボジイミド又はエチルジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸の共存下で、数時間から数十時間反応させることにより、ポリアクリル酸のカルボキシ基と電子メディエータのアミノ基との間でアミド結合が形成され、電子メディエータをポリマー層に安定に固定化することができる。
この場合にも導入率は、30モル%以下とするのが好ましいが、電子メディエータとしてジアミノアントラキノンのような複数の親水性官能基を持つ電子メディエータを導入する場合は、アミド結合により電子メディエータと親水性ポリマーとが結合した後も、複数の親水性官能基のうち1個はアミド結合によって使用されるものの、残りの親水性官能基は(架橋反応が起こらなければ)残存するため、親水性が維持される場合がある。このような場合は、30モル%以上となるように導入率を制御しても良い。
また、1,5-ジアミノアントラキノンなどの複数のアミノ基を持つ電子メディエータを使用する場合は、ポリマーを導電性基材に固定化してから電子メディエータと接触させないと、ポリマー分子間で電子メディエータを介した架橋反応が生じてしまい、ポリマーがさらに高分子化して導電性基材へ塗布することが困難になってしまうため、付着・固定化工程を先に行うのが好ましい。
本発明の製造方法においては、電子メディエータ導入工程の後、さらに親水性の官能基を電子メディエータに導入する官能基導入工程を含むことが好ましい。
<官能基導入工程>
官能基導入工程は、作製した電子メディエータを固定化した親水性ポリマー層の親水性が充分でない場合に親水性を向上させるために行う任意の工程である。
この工程は、空気酸化、電解酸化、化学酸化またはスルホン化により行うことができる。具体的には、空気を供給しながら500℃程度に加熱したり、5%次亜塩素酸に接触させ140℃程度に加熱したり、10%クロロスルホン酸/ジクロロメタン液中で常温で24時間程度反応させたりすることにより親水性の官能基を導入することができる。
また、本発明の製造方法においては、親水性ポリマー被覆導電性基材形成工程の前に、導電性基材にカルボキシ基を導入する前処理工程を含むことも好ましい。
<前処理工程>
前処理工程は、導電性基材表面を予め空気酸化、電解酸化、化学酸化またはスルホン化して、親水性ポリマーが結合する官能基の密度を増加させることにより親水性ポリマーをより強固に固定化する工程である。
この時導入する官能基の密度は、導電性基材に直接電子メディエータを固定化する場合と比較して低くても良く、例えば基材の投影面積1cm2あたり0.01μmol以上あれば充分である。従って従来の導電性基材に直接電子メディエータを固定化する場合のように、強い電解酸化条件を与えたりラジカル発生剤を用いたりする必要は無く、空気を供給しながら500℃程度に加熱したり、5%次亜塩素酸に接触させ140℃程度に加熱したり、10%クロロスルホン酸/ジクロロメタン液中、常温で24時間程度反応させたりするなどの比較的温和な方法で目的の官能基導入密度を得ることができる。
さらに、本発明によれば、上述の生物発電用アノードを利用する生物発電装置も提供される。
本発明の生物発電装置は、嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液及び上述の生物発電用アノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域と、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備し、該アノード及び該カソードを電力利用機器に電気的に接続して閉回路を形成し、該嫌気性域内での有機性物質を電子供与体とする生物の酸化反応と該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用して発電する生物発電装置である。
これにより、温和な条件下で、高い電子メディエータ固定化密度を持ったアノードを作製するための方法を提供する。本方法により、簡易な方法で大型の生物発電用アノードを作製することができ、微生物電池の大型化や、アノード製作費のコストダウンに資することができる。
含水有機性物質を長期間にわたって連続的に処理する装置に本発明の生物発電用アノードを用いるが、この場合には、含水有機性物質中及びアノード表面において嫌気性微生物が連続的に増殖することから、あまりにも細密な3次元網目構造状、細いチューブ状または隙間の狭い積層板状の構造のアノードを用いると、微生物菌体による流路の閉塞、片流れ、デッドゾーンの形成等により含水有機性物質の分解及び発電効率が低下することが考えられる。このため、本発明の生物発電用アノードの形態は、金網状、多孔質または表面に凹凸または襞がある一次構造であって、3次元網目状、チューブ状または積層板状の空間(含水有機性物質が流入してくる流路)を持つ2次構造を形成しており、かつ上記流路は処理対象となる含水有機性物質の流動性に応じて数mmから数cmの開度を持つことが望ましい。
本発明において、好気性域であるカソード側では、酸素を電子受容体とする還元反応が進行する。カソードの少なくとも一部を、構造体内に空隙を有する導電性の多孔質材料、網状又は繊維材料で構成し、その空隙中に水/空気の接触界面、すなわち空気(酸素)と水とを隣接させる場を構築することが好ましく、空気中の酸素および水面の水に接触する効率を高めて、空気中の酸素の還元反応(電極反応)を促進できる。例えば、微細孔を有する導電性の多孔質材料に樹脂バインダで導電性粒子(カーボン、不活性金属、金属酸化物など)を結着したものをカソードとして用いることで、毛細管現象及び表面の親水化等により水を効果的に吸い上げて、微細孔内部に水/空気の接触界面を形成させて、空気中の酸素と水とを効率良く接触させて酸素の還元反応を促進することができる。
さらに、カソードに白金族元素、銀、遷移金属元素から選ばれる少なくとも一種類を含有する合金あるいは化合物からなる触媒を担持することが好ましく、空気中の酸素の還元反応(電極反応)を促進することができる。白金族元素とは白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)またはイリジウム(Ir)を指し、いずれも電極触媒として有効である。また、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、チタン酸化物をドープした銀粉末を担持したもの、ファーネスブラック又はコロイド状グラファイトに銀を担持したもの、鉄(Fe)、コバルト(Co)、フタロシアニン、ヘミン、ペロブスカイト、Mn4N、金属ポルフィリン、MnO2、バナジン酸塩、またはY2O3-ZrO2複合酸化物を用いたものも電極触媒として好ましく用いることができる。
本発明において、アノードとカソードとは電力利用機器等に電気的に接続されて、両者間で電子交換を行って閉回路を形成する。その一方で、有機性物質の還元能を無駄なく電気エネルギーとして取り出すためには、有機性物質が酸化剤(被還元物質)、即ち空気中の酸素と接触して還元能を消費させないように、上記有機性物質と空気中の酸素が接触しないように両者を隔離することが好ましい。これらの条件を同時に満たすためには、カソードと嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物及び有機性物質を含む溶液又は懸濁液とを隔膜、例えば固体高分子隔膜で隔てることが望ましい。このような構造をとることにより、カソードは空気中の酸素と容易に接触することができ、また上記隔膜中に存在する水を介して水素イオンの受給または水酸化物イオンの排出を行うことができる。また、隔膜はできるだけ空気中の酸素を透過しないものがよく、アノード側、即ち有機性物質に酸素が浸透して有機性物質の還元能を低下させることを防ぐことが望ましい。
このような隔膜としては、親水性があり高い陽イオン交換能を有するスルホン酸基を有するフッ素樹脂系イオン交換膜(陽イオン交換膜)や、第4級アンモニウム塩を有する水酸化物イオン(陰イオン交換膜)などが好ましく用いられる。また、より安価な隔膜として主鎖部のみをフッ素化したフッ素樹脂系イオン交換膜や、芳香族炭化水素系膜も利用できる。このようなイオン交換膜としては、例えばIONICS製NEPTON CR61AZL-389、トクヤマ製NEOSEPTA CM-1または同CMB、旭硝子製Selemion CSV、IONICS製NEPTON AR103PZL、トクヤマ製NEOSEPTA AHA、旭硝子製Selemion ASVなどの市販製品を好ましく用いることができる。陽イオン交換膜は、カソードでの酸素の還元に必要な水素イオン及び水をアノードからカソードへ供給するために用いることができ、陰イオン交換膜は、水と酸素との反応から発生した水酸化物イオンをカソードからアノードへと供給するために用いることができる。
また、嫌気性域と好気性域とを隔離するために用いる隔膜としては、陰イオン交換膜を用いることもできる。具体的には、アンモニウムヒドロキシド基を有するヒドロキシドイオン交換膜を好ましく挙げることができる。このような陰イオン交換膜としては、例えば、IONICS製NEPTON AR103PZL-389、トクヤマ製NEOSEPTA ALE、旭硝子製Selemion ASVなどの市販製品を好ましく用いることができる。この場合、嫌気性域に存在する有機酸などの陰イオン性の有機性物質が隔膜を透過して好気性域に至る(いわゆるクロスフローの現象)と、そこで酸素の消費が行われて有機物が無駄に酸化されるとともに好気性域において好気性の生物が増殖してカソードを汚染することになるので、用いる陰イオン交換膜は分子篩い効果を持ち、酢酸などの分子量60以上の陰イオンを透過しにくい性質を持っていることが望ましい。このような性質を持つ陰イオン交換膜としては例えばアストム製ネオセプタALE04-4 A-0006膜がある。
さらに、本発明において用いることができる隔膜としては、官能基を有しないMF(マイクロフィルタ)、UF(ウルトラフィルタ)膜やセラミック、焼結ガラスなどの多孔質濾材、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン製の織布等を用いることができる。これらの官能基を有しない隔膜は、孔径が5μm以下で、非加圧条件でガスを透過しないものが好ましく、例えば、Schweiz Seidengazefabrik製のPE-10膜、Flon Industry製のNY1-HD膜などの市販品を好ましく用いることができる。
本発明の生物発電装置において、嫌気性域は、嫌気性雰囲気下で生育可能な生物の呼吸反応により、有機性物質由来の電子が微生物体内の電子伝達系を介して最終的にアノードに受け渡される微生物の酸化反応を進行させる生物反応室でもあり、好気性域は、酸素を電子受容体とする還元反応を進行させる空気反応室でもある。本生物発電装置の嫌気性域には、嫌気性微生物とアノードの間で電子を伝達するために適切な電位を有する電子メディエータが固定化されているアノードを設けているので、生物の最終還元酵素−電子メディエータ−アノード間で有効な電位カスケードが形成される。また、該電子メディエータはアノード上の親水性ポリマーに固定化されているため、グラファイトなどに直接電子メディエータが固定化されている場合に比べアノードの作製が容易であり、大型の装置にも対応することができる。
本生物発電装置において、嫌気性域(生物反応室)と好気性域(空気反応室)を画定するための隔膜が陽イオン交換膜である場合、カソードにおいて水素イオンを利用する還元反応は、水素イオン濃度条件によっては本発明の発電に関与する全体の反応速度を制限する場合がある。すなわちアノードでの酸化反応が生物によるものであるため、極端な酸性条件は生物の活性を阻害するという理由で好ましくない可能性もある。また、水素イオン濃度が低濃度である場合、例えば、pH5以上の条件でアノード側において水素イオンが発生し、該水素イオンが拡散により陽イオン交換膜を透過してカソード側に供給されることとなる。このとき、カソード側における水素イオン濃度は10-5mol/L程度またはそれ以下と見積もられる。このように水素イオン濃度が低濃度条件になるとカソード側における酸素還元反応の速度が低下することとなり、また、アノード側の水素イオンが効率的にカソード側へと移動しないことも予想される。すなわち、このような場合には電池を形成する支持電解質としての電気抵抗(内部抵抗)が大きくなる可能性がある。一方、この反応系の利点は、常にアノード側からカソード側へと水および水素イオンの供給が行われるためにカソード側への水分の供給が充分に行われ、カソード側の酸素が膜を介してアノード側へ透過してアノード側の還元能を消費してしまう、いわゆるクロスフローの問題が生じにくいことである。
陽イオン交換膜を嫌気性域と好気性域の間の隔膜として用いた場合、カソード側の反応においては、空気中の酸素を消費して水が発生する。このため常に換気を行って酸素を補給するとともに、水分を除いてカソードが過度に濡れるのを防ぐ必要がある。ただし、このとき供給する空気の湿度及び流量によってカソード側の保水量が変化するため、乾燥−加湿の制御は適宜行うことが望ましい。空気の供給及び排出による換気の方法としては、開放系で自然に対流置換させる方法、カソードの周囲を外殻で被包して空気室を設けて、空気室内を通風機により強制換気する方法、同じく空気室を設けて、酸化還元反応により生じる熱で空気室内を暖め、対流を生じさせて空気と水蒸気を上昇させて換気する方法が考えられ、本発明の装置を設置する場所、規模等の条件に合わせて換気方法を採用することが好ましい。
一方、陰イオン交換膜を嫌気性域と好気性域の間の隔膜として用いた場合、すなわち、好気性域において水と酸素から水酸化物イオンを発生させる反応系を採用した場合には、好気性域は嫌気性域と比較して水の保持量が非常に小さいため、アノードでの水素イオン発生量と等モルの水酸化物イオンをカソードにおいて発生させれば、カソード側のpH、すなわち水酸化物イオン濃度を非常に高くすることができる。高濃度の水酸化物イオンは効率良く陰イオン交換膜を透過するので、支持電解質の電気抵抗(内部抵抗)を小さくすることができる。一方、この反応系は、常にカソード側からアノード側へのイオン移動が行われるためにカソード側への水供給が難しくなること、およびイオン移動に伴ってカソード側の酸素が膜を介してアノード側へ透過してアノード側の還元能を消費してしまう、上述したクロスフローの問題が生じる可能性が有るという課題がある。
さらに、カソード側の反応においては、酸素とカソード表面の水が消費され、水酸化物イオンが発生する。このため、常に換気を行って酸素を補給するとともに、水分を補給してカソードが乾燥するのを防ぐ必要がある場合がある。特に、換気空気が乾燥している場合、アノード側からの浸透による水供給速度がカソードでの蒸発および還元反応による水消費速度を下回る場合には、換気空気を加湿するか、水蒸気を添加することによりカソードへ水分を供給することが望ましい。
以上のように、嫌気性域と好気性域の間の隔膜として利用される陽イオン交換膜および陰イオン交換膜は、生物発電反応に関与する反応系を大きく変える効果を持ち、それぞれ長所と改善すべき課題を持つので、どちらを採用するかは装置の構造や用途、含水有機性物質の性質に応じて判断すべきである。
また、水素イオンまたは水酸化物イオンの移動効率を高めるためには、カソードと上記隔膜との間の距離はなるべく短いほうが良く、装置構造上可能であれば両者は接合していることが望ましい。特に、隔膜の一部がカソード電極の多孔質構造内部の空隙内に網目状に侵入して結合していると、多孔質構造中に含まれる空気と隔膜に含まれる水とで形成される水/空気接触界面の面積が飛躍的に増大するので、空気中の酸素を還元する反応効率が増大して生物発電性能を高めることができる。
同様に、水素イオンまたは水酸化物イオンの移動を容易にし、電解液系の電気抵抗を小さくするために、アノードと隔膜との距離もなるべく短くすることが望ましく、アノードと隔膜とが接触もしくは接合していることが好ましい。但し、この場合には、電子メディエータがアノード上で酸化型になる時に発生する水素イオンが隔膜に吸収されるようにするために、アノードは透水性を有する形態、例えば多孔質材料や網状材料で構成したり、或いは通水孔を有する形態、例えば格子状若しくは櫛状の形態とすることが必要である。また、アノードと隔膜とを接触させて配置することが装置の構造上困難な場合は、例えば、撹拌または循環水流を生じさせてアノードと隔膜との間を循環する水流を作るようにし、水素イオンまたは水酸化物イオンの移動を容易にすることが望ましい。
また、アノード内にイオン交換性の高分子を含浸させるか、またはアノード基材又は導電性ファイバーと陽イオン交換性繊維(スルホン酸グラフト繊維など)とを織り込むかまたは不織布として混合することにより、アノード側で発生する水素イオンを回収し、このイオン交換性高分子または繊維を何らかの方法で(例えば塩橋のようにイオン交換繊維または樹脂のパイプを介して)延長してカソードと結合することにより、アノード−カソード間で水素イオンの回路を形成することも好ましい。
また、本発明の生物発電装置においては、有機性物質の電子を効率よくアノードに受け渡すことができるように、アノードの表面積を大きくすることが好ましい。また、アノードが有機性物質と効率よく接触し、アノードとカソードとの間でイオン交換が効率よく行われると同時にアノードとカソードとが電気的には絶縁していることが好ましい。そこで生物反応室及び酸素反応室を内部に画定する反応容器の形態は、例えばアノードを筒型、例えば円筒形としてその中を有機性物質が流れる構造として、アノードとカソードとを隔膜を挟む3層状構造とすることが好ましい。また、含水有機性物質や増殖した生物が滞留するようなデッドゾーンを形成しないように考慮すべきである。このための一つの手法として、有機性物質とアノード電極との接触効率を上げるために、撹拌装置もしくは循環水流発生装置を反応容器内部に設けることが好ましい。また、反応容器を気密な構造とする場合は、嫌気性ガスが容器内に蓄積して有効容積が低下することを防止するため、なんらかのガス抜きの機構を備えることが望ましい。この嫌気性ガスは流路を空洗する方法に利用することもできる。また、嫌気性域に嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物及び有機物質を含む溶液又は懸濁液の供給機構及び排出機構を設け、好気性域に酸素又は空気の供給機構及び排出機構を設けることも好ましい。
本発明の生物発電方法は、嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液、上述の生物発電用アノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域と、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備し、該アノード及び該カソードを電力利用機器に電気的に接続して閉回路を形成し、該嫌気性域内での有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応と該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用して発電する生物発電方法である。
本発明においては、電子メディエータが固定化されたアノードを嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物及び有機性物質を含む溶液又は懸濁液と接触させて、有機性物質を電子供与体とする微生物による酸化反応を進行させる。このアノード側での反応、有機性物質を電子供与体とする微生物による酸化反応は、含水有機性物質中で嫌気性微生物(通性又は絶対嫌気性微生物)によって生化学的に触媒され、主に微生物の嫌気呼吸により、有機性物質由来の電子が微生物体内の電子伝達系を介して最終的にアノードに受け渡される。したがって、本発明に係る発電反応を効率よく進行させるためには、微生物の細胞膜内で電子伝達系を終結するものではなく、細胞外膜(細胞膜外)で電子をアノードで捕捉しやすい、アノードへの電子伝達を触媒するような微生物(「電極活性な微生物」)を利用することが望ましい。このようなアノードへの電子伝達を触媒する微生物としては、硫黄S(0)還元菌、酸化鉄(III)還元菌、二酸化マンガンMnO2還元菌、脱塩素菌などが好ましく用いられる。このような生物として、例えばDesulfuromonas sp.、Desulfitobacterium sp.、Geobivrio thiophilus sp.、Clostridium thiosulfatireducens sp.、Acidithiobacillus sp.、Thermoterrabacterium ferrireducens sp.、Geothrix sp.、Geobacter sp.、Geoglobus sp.、Shewanella putrefaciens sp.などが特に好ましく用いられる。特に、硫黄還元菌は、最終電子受容体である硫黄の標準電極電位が-0.28Vと非常に低いので、酸化鉄(III)還元菌よりも低い電位を有する電子メディエータに電子を伝達することができ、エネルギー的に有利である。このような硫黄還元活性を有する微生物として、例えば、Desulfuromonas sp.、Desulfitobacterium sp.、Geobivrio thiophilus sp.、Clostridium thiosulfatireducens sp.、Acidithiobacillus sp.などが好ましく用いられる。
これらの微生物は、含水有機性物質中において主要な微生物ではないことが多いため、本発明の方法を実施するにあたっては、最初に、アノード側にこれらの微生物を植菌し、アノード表面にこれらの微生物が主に付着している状態を形成しておくことが好ましい。これらの微生物が優先的に生物反応室内で増殖するために、アノードに電子を渡すことによる呼吸反応(電極呼吸)が酸発酵やメタン発酵よりもエネルギー的に有利である場の面積を大きくすべきであり、具体的には嫌気性域(微生物反応室)内のアノード表面積をなるべく大きくすることが好ましい。また、アノード表面に生物を付着させた後、嫌気性域(微生物反応室)内にこれらの微生物の増殖に適当な培地を供給することが望ましく、さらにアノードの電位をある程度高く維持することにより、アノード表面でのこれらの微生物の増殖を促すことがより望ましい。これらの微生物(群)を前培養もしくは生物反応室内で培養するための方法として、これらの微生物(群)の培地として報告されているスラリー状の硫黄、酸化鉄(III)、二酸化マンガンなどを電子受容体とする培地を好ましく用いることができ、例えばHandbook of Microbial Media (Atlasら1997, CRC Press)に記載されているAncylobacter/Spirosoma培地、Desulfuromonas培地、Fe(III) Lactate Nutrient培地などが好ましく用いられる。
本発明において用いる有機性物質の性状は、嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物が増殖するアノード周辺に分子状酸素を供給しないように液体状または懸濁液、あるいは固形分の間隙が水で飽和している状態であることが望ましい。アノード周辺での有機性物質の酸化反応は主に微生物による呼吸反応によって触媒されることから、アノード周辺内に投入される有機性物質は固形分の粒径が小さく、水中によく溶解または分散し、低分子であることが望ましく、また、微生物にとって易分解性の物質であることが望ましい。使用する有機性物質の種類によりこれらの条件が満たされない場合には、物理的、化学的または生物学的な前処理を行って有機性物質の生物分解性を高めることができる。そのような方法としては、例えば、粉砕機による破砕、熱分解、超音波処理、オゾン処理、次亜塩素酸塩処理、過酸化水素処理、硫酸処理、生物による加水分解、酸生成、低分子化処理が考えられる。これらの前処理に要するエネルギーは、前処理による主反応容器での発電エネルギーの向上とのバランスを考え、最適な前処理条件を選ぶことができる。
また、使用用途に応じて、経時的に上記流路を水洗または空洗して余剰の微生物菌体及び菌体外分泌物を除去することが望ましい。この際、空洗に使用する気体に酸素が含まれると、嫌気性域(微生物反応室)である反応容器中の嫌気性微生物に悪影響を及ぼす可能性があるため、不活性ガスまたは反応容器中で発生した嫌気性のガスを利用することが望ましい。
本発明の生物発電用アノードは、簡易な装置・方法により、効率的に生物発電ができる。より具体的には、嫌気性生物の最終還元酵素−電子メディエータ−アノード間で有効な電位カスケードを形成することを可能として、結果的に十分低いアノード電位を得て、含水有機性物質から効率的に電気エネルギーを得ることができる。
図1は、本発明の発電装置の構成を示す概念図である。 図2は、本発明の発電装置の構成例を示す概念図である。 図3は、本発明の発電装置に用いることができるカソード電極の構造の一例を示す概念図であり、図3Aは断面図、図3Bは図3Aの空気室側から見た平面図である。図3Cはカソード電極構造の別の一例を示す断面図である。 図4は、実施例で用いた本発明の発電装置の構成を示す概念図である。
符号の説明
1:生物発電用アノード
2:隔膜
3:カソード
4:内筒体内部
5:筒状体周囲の空間
6:導線
7:空気室
8:流入ポンプ
9:流入部
10:流出部
11:処理済み有機性物質排出部
12:循環ポンプ
13:余剰汚泥排出口
14:空気ブロワ
15:排気口
16:凝縮水ドレイン
17:アノードとの接続部
18:カソードとの接続部
19:排気口
20:多孔質マトリックス
21:触媒
22:空気ネットワーク
23:水溶液ネットワーク
24:セパレータ
25:セルフレーム(嫌気性域:アノード側)
26:セルフレーム(好気性域:カソード側)
27:含水有機性物質注入口
28:分解廃液排出口
29:空気注入口
30:空気排出口
31:嫌気性域(生物反応室)
32:好気性域(空気反応室)
好ましい実施の形態
以下、添付図面を参照しながら、本発明による発電装置をより具体的に説明する。以下の記載は、本発明の技術思想を具現化する幾つかの具体的形態を説明するもので、本発明はこの記載に限定されるものではない。
図1は本発明の一態様に係る生物発電ユニットの具体例である。例えば、図1に示す本発明の生物発電装置の一具体例は、電子メディエータが導電性ファイバーに固定化されているアノード1を含む嫌気性域4、隔膜(電解質膜)2、および多孔質カソード3を含む好気性域5が三重の筒状体をなすことによって構成される。筒状体の最内隔空間形態である嫌気性域4に嫌気性条件下で生育可能な微生物及び有機性物質(「基質」ともいう)を含む溶液又は懸濁液を流し、筒状体の最外隔空間形態である好気性域5には分子状酸素を含む空気を存在させる。好気性域5には、分子状酸素を供給する手段(図示せず)が設けられている。好気性域5内に配置されている多孔質カソードは、カソードの少なくとも一部が、構造体内に空隙を有する導電性の多孔質材料、網状又は繊維状材料によって形成されている。嫌気性域4と好気性域5とを隔離する隔膜2は、物質交換係数が大きな隔膜、たとえばDuPont社製のNafion(登録商標)、アストム社製ネオセプタ(登録商標)などの固体高分子電解質膜で構成されている。
嫌気性域4内では、有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応が進行し、好気性域5内では、酸素を電子受容体とする還元反応が進行する。こうして、アノード1とカソード3の間に電位差が生じる。この状態でアノード1とカソード3とを導線6によって電力利用機器に電気的に接続することにより電位差電流が流れ、一方、電解質膜2を介して嫌気性域4と好気性域5の間でイオンが移動することにより、閉回路が形成される。反応が進行するにつれて、嫌気性域4には水素イオンが発生し、嫌気性域の水溶液は酸性を呈する。一方、好気性域5には水酸化物イオンが発生して好気性域5内に発生する水はアルカリ性溶液となる。
好気性域5内に発生するアルカリ性水溶液を適宜回収して嫌気性域4内へ注入する流路(図示せず)を設けてもよい。この流路を通してアルカリ性水溶液を好気性域5から嫌気性域4に循環させることにより、嫌気性域4の水素イオン濃度が極端に上昇して生物の呼吸活性を阻害したり、導入した塩基性官能基の中和能力を越えてしまったりするのを防ぐことができる。
発電ユニットを構成する筒状体の内径は、基質の流動性に応じ、数mmから数cm、場合によっては数十cmに設定することができる。図1に示すような発電ユニットは、適当な材料の支持層またはケーシングで保持することによりその物理的強度を増すことができる。この場合、筒状体を更に外殻で被包して外殻と筒状体との間の空間を空気室とし、空気室に空気を供給及び排出する手段を形成するようにしてもよい。
図示した実施形態においては、アノード1、隔膜2及びカソード3を円筒形とする3層構造を採用し、隔膜2を介してアノード1とカソード3とを配置している。このような構成とすることによって、アノード1及びカソード3の表面積を大きくし、アノード1が基質と効率良く接触して基質の動かないデッドゾーンをできるだけ小さくすることができるので、アノード1とカソード3との間でイオン交換が効率良く行われると同時に、アノード1とカソード3は電気的に絶縁され、有機性物質(基質)の電子が効率良くアノード1に受け渡されることになる。また、多孔質カソード3の空隙中に空気と水との接触界面を存在させた状態で空気と接触させることにより、空気中の酸素および水面の水に接触する効率を高めることができ、電極上での酸素の還元反応を効率良く進行させることができる。
図1に示すような三層筒状体の本発明に係る生物発電装置においては、用途に応じてアノードを含む嫌気性域を外側に、カソードを含む好気性域を内側に配置し、好気性域に空気を流通させる手段を配して装置を基質液中に設置することで、発電運転を行うこともできる。また、この場合、筒状体を例えばU字型に形成し、両端を基質液の液面から出して、筒内部の空間に空気が流通できるようにしてもよい。このように好気性域を内筒とする構成の場合には、好気性域の内筒の内径を数mm程度またはそれ以下に小さくしても閉塞の生じる心配がない点が有利である。更に、三層筒状体において、内側の筒状体を多孔質カソードを含む好気性域、外側の筒状体をアノードを含む嫌気性域とすると、カソードに比較して外側のアノードの表面積を大きくすることができるので有利である。さらにアノードの表面積を広くするため、アノードの表面に凹凸や襞をもたせることも可能である。一方、カソード側の内径は、反応効率も関係するが、空気が容易に流通するだけの径があれば良く、閉塞の危険性がほとんどないため、内径を数mm程度またはそれ以下まで小さくすることが可能である。この場合、筒状体を更に外殻で被包して筒状体の外側空間を基質の流れる微生物反応室とし、生物反応室に基質を供給及び排出する手段を配置することによって装置を構成することができる。
また、図1に示すような筒状形態又は他の形態の生物発電ユニットを複数個並べて生物発電装置を構成することもできる。例えば、図2には、図1の生物発電ユニットを複数個並べた形態を示し、図4には平板状の生物発電ユニットを3個並べた形態を示す。
図2に示す生物発電装置においては、図1に示すようなアノードの内筒1、隔膜2及びカソードの外筒3から構成される三層筒状体(発電ユニット)50が複数本、外殻によって形成される空気室7の中に配置されている。基質は、流入ポンプ8により流入部9を介して複数配置された発電ユニット50の内部4へ分配注入される。ここで酸化分解を受けた基質は、流出部10を介して反応容器の外へ出た後、処理済み基質11として系外へ排出される。また、基質の一部は循環ポンプ12により再び流入部9へ戻される。この循環流によってアノード1と基質の接触が促進される。反応容器内に蓄積した生物菌体及び汚泥は、経時的に余剰汚泥排出口13を開くことにより排出される。また、同じく13より、水、不活性ガス、嫌気ガスを注入することにより反応容器内を逆洗、空洗することができる。反応容器内で嫌気性ガスが発生した場合は、排気口19から排出することができる。この嫌気性ガスを貯留して空洗に使用してもよいことは上述したとおりである。
一方、多孔質カソード3に酸素を供給するため、ブロワ14を用いて空気室7へ通気を行うことができる。ただし用途に応じて強制換気が必要でない場合には、空気室7を取り外して、各発電ユニット50の外筒であるカソード3が外気に触れるように装置を構成してもよい。通気された空気は、空気室7内の発電ユニットの間の空間5を流れ、カソード3と接触した後に、排気口15から排出される。また、カソードでの還元反応により生成した水は、水蒸気として排気口15から排出されるか、凝縮水として凝縮水ドレイン16から排出される。
導線6は、アノードとの接続部17により複数の発電ユニット50の内筒1に、またカソードとの接続部18により複数の発電ユニット50の外筒3に電気的に接続される。この際、導線6は、周囲の環境と電気的に絶縁し、電気的短絡及び導線表面での酸化還元反応が起こらないようにすることが必要である。
なお、図2に示す装置についても、図1に関して上記に説明したのと同様に、カソードを内筒、アノードを外筒として各発電ユニットの筒状体50を構成し、各筒状体50内部空間へ空気を供給し、発電ユニット50の筒状体の外側のアノードに基質を接触させるようにすることもできる。
カソードについては、いかに効率良く電極上での酸素の還元反応を進行させるかが課題となる。このためには、カソードの少なくとも一部を、構造体内に空隙を有する導電性の多孔質材料、網状又は繊維状材料によって形成して、このカソードの空隙中に空気と水との接触界面を存在させた状態で空気と接触させることにより、空気中の酸素および水面の水に接触する効率を高めることが好ましい。
図3に本発明の生物発電装置において採用することのできるカソードの構造の一例を断面図で示す。図3(A)は、隔膜2及びカソード3の構造の断面を示したものであり、図3(B)は、図3(A)を空気室側5から見た図である。また、図3では、隔膜2が陽イオン交換膜である場合の反応系を示す。図3に示すカソードは、多孔質のマトリックス20に、好ましくは白金族元素、銀、遷移金属元素から選ばれる少なくとも一種類を含有する合金あるいは化合物からなる触媒21を担持する構造を有し(図3(A))、空気室側5から見た場合網目状の構造を呈している(図3(B))。このような構成を取ることにより、カソードが、水面または隔膜を経由する水を基材の親水性によって吸い上げつつ空気中の酸素と接触することができ、電極のミクロな構造中に空気ネットワーク22と水溶液ネットワーク23を持つことによって空気/水接触界面の面積を増大させ、空気中の酸素および水面の水に接触する効率を高めることができる。酸素と水素イオンが触媒21上で反応することにより、空気中の酸素の還元反応を促進することができる。
図3(C)に、本発明の生物発電装置において採用することのできるカソード構造の別の一例を示す。図3(C)においても、隔膜2が陽イオン交換膜である場合の反応系を示す。図3(C)に示すカソードは、隔膜2と同じ材料からなる溶液を、多孔質のマトリックス20の隔膜2との接合面側に塗布して乾燥させることによって、隔膜構造体の一部を多孔質マトリックス20の微細孔内部に浸入させたものである。このような構成を取ることにより、イオン交換および触媒の利用率を向上させ、空気中の酸素の還元反応を促進することができる。
以下、実施例により本発明を詳述するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
以下の実施例及び比較例においては、生物発電用アノードを変えた以外は、図4に示す実験室用の生物発電装置を用いた。
図4に示す生物発電装置は、1辺の長さ100mm、厚さ10mmのセルフレーム2枚(25、26)を隣接配置し、セルフレームの両側に同寸のセパレーター24を2枚積層させてセパレーター24を両側面とする積層構造体とした。この積層構造体の内部に、アノード1、隔膜2として陽イオン交換膜(DuPont製Nafion)及びカソード3として白金を担持したカーボンペーパーをこの順番に接触配置し、ナフィオン溶液を用いてアノード1、隔膜2、カソード3の順に接着させ、一方のフレーム24とアノード1との間に嫌性域31を、他方のフレーム24とカソード3との間に好気性域32を形成した。この積層構造体を互い違いに3ユニット積層し、隣接するユニット間のフレーム24は共用させて、実験用の発電装置を構成した。3ユニット間の嫌気性域31、31’、31”には基質液流路27−28を、好気性域32、32’、32”には空気流路29−30を形成した。また、図示していないが、各アノード1及び各カソード3を導線により電気的に直列に接続して、電流量計及び可変抵抗器(電力利用機器)を介して閉回路を形成した。電流量計を含む回路の外部抵抗は、可変抵抗器を0Ωとした場合10Ω以下であった。本装置において3つの発電ユニットを合わせた有効容積は、嫌気性域(生物反応室)及び好気性域(空気反応室)ともに108mLであり、電極の総表面積は、アノード、カソードともに108cm2とした。
[実施例1、比較例1〜2]
実施例1において、アノード1の導電性基材であるカーボンフェルトには日本カーボン製カーボロン(登録商標)フェルトGF-20を用いた。親水性ポリマーには、和光純薬製ポリアクリル酸(分子量約100万)を用いた。電子メディエータは和光純薬製1−アミノアントラキノン(AAQ)を用いた。
実施例1において生物発電装置に装備したアノード(1)は、以下に述べる方法で作製した。ポリアクリル酸をメタノールに対し5g/Lの濃度になるように溶解させポリマー液を調製し、これにグラファイトフェルトを浸漬して30秒間振とうし、取り出して余分なポリマー液を落としてから100℃で24時間乾燥させ、親水性ポリマー層を形成した。この作業によるグラファイトフェルトの重量増加を測定し、比表面積計で測定したフェルトの表面積と固化した親水性ポリマーの比重0.8より上記親水性ポリマー層の厚みを計算したところ、平均20nmと推定された。
このようにして得られたポリマー被覆フェルトをジメチルホルムアミド中に浸漬し、緩やかに撹拌しながら親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して30モル%となるようにAAQを添加し、ジシクロヘキシルカルボジイミドの共存下で、室温で72時間反応させることにより、AAQのアミノ基とポリマーのカルボキシ基との間でアミド結合を形成させて親水性ポリマー層に電子メディエータを導入した。これをジメチルホルムアミド、次いでメタノールで洗浄してから乾燥させて得た生物発電用アノード(1)を生物発電装置のアノード1として用いた。
アノード(1)のポリアクリル酸のポリマー単位に対するAAQ単位の平均導入率は25モル%、電極の投影面積1cm2あたり10μmolであった。この値は、AAQを導入する前後で上記ポリマー層のアルカリ中和力を測定、比較し、アルカリ中和力の減少量から計算した。
また、アノード(1)を用い、pH7の水溶液中において印加電位を-0.28V〜-0.18V(水素標準電極電位)までシフトすることによって放電が行われたことから、アノード(1)の標準電極電位E0’は-0.28V〜-0.18Vの間にあるといえる。
比較例1
比較例1において、アノードの導電性基材であるカーボンフェルトには日本カーボン製カーボロン(登録商標)フェルトGF-20を用いた。親水性ポリマーには、和光純薬製ポリアクリル酸(分子量約100万)を用いた。電子メディエータは和光純薬製1−アミノアントラキノン(AAQ)を用いた。
比較例1において生物発電装置に装備した対照アノード(1)は以下に述べる方法で作製した。ポリアクリル酸をメタノールに対し300g/Lの濃度になるように溶解させポリマー液を調製し、これにグラファイトフェルトを浸漬して30秒間振とうし、取り出して余分なポリマー液を落としてから100℃で24時間乾燥させ、親水性ポリマー層を形成した。実施例1と同様の方法で親水性ポリマー層の厚みを計算したところ、平均3500nmと推定された。
このようにして得られた親水性ポリマー被覆フェルト(導電性基材)に実施例1と同様に親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して30モル%となる添加比率でAAQを導入、固定化し、比較例1における対照アノード(1)として用いた。
対照アノード(1)の親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対するAAQ単位の平均導入率は5モル%、電極の投影面積1cm2あたり350μmolであった。この対照アノード(1)を用い、pH7の水溶液中において印加電位を-0.28Vから-0.13V(水素標準電極電位)までシフトすることによって放電が行われたことから、対照アノード(1)の標準電極電位E0’は-0.28V〜-0.13Vの間にあると考えられる。
比較例2
比較例2において、アノード1の導電性基材であるカーボンフェルトには日本カーボン製カーボロン(登録商標)フェルトGF-20を用いた。親水性ポリマーには、和光純薬製ポリアクリル酸(分子量約100万)を用いた。電子メディエータは和光純薬製1−アミノアントラキノン(AAQ)を用いた。
比較例2において生物発電装置に装備した対照アノードは以下に述べる方法で作製した。ポリアクリル酸を実施例1と同様にメタノールに対し5g/Lの濃度になるように溶解させポリマー液を調製し、これにグラファイトフェルトを浸漬して30秒間振とうし、取り出して余分なポリマー液を落としてから100℃で24時間乾燥させ、親水性ポリマー層を形成した。実施例1と同様の方法で親水性ポリマー層の厚みを計算したところ、平均18nmと推定された。
このようにして得られた親水性ポリマー被覆フェルト(導電性基材)に親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して等モルとなる添加比率でAAQを導入、固定化し、比較例2における対照アノード(2)として用いた。
対照アノード(2)のポリアクリル酸のポリマー単位に対するAAQ単位の平均導入率は86モル%、電極の投影面積1cm2あたり34μmolであった。対照アノード(2)を用い、pH7の水溶液中において印加電位を-0.28Vから-0.13V(水素標準電極電位)までシフトすることによって放電が行われたことから、対照アノード(2)の標準電極電位E0’は-0.28V〜-0.13Vの間にあると考えられる。
<発電性能>
図4に示す実験室用の生物発電装置を用い、実施例1及び比較例1〜2で製作した生物発電用アノードの発電性能を比較した。
生物発電装置の嫌気性域31、31’、31”には、運転開始前に硫黄還元菌集積培養体を各1mL添加した。ここで用いた硫黄還元菌集積培養体は、クロボク土0.1gを植種源とし、130mL容のバイアル瓶にHandbook of Microbial Media (Atlasら1997, CRC Press)に記載されているDesulfuromonas培地(表-4)を100mL注入して、気相を窒素ガス置換したものに添加し、密閉して、28℃の温度条件下で振とう培養し、2週間後に菌液5mLを新しく調製したバイアル瓶に植え継ぐという操作を5回繰り返し、10週間後に得られた菌液を用いた。なお、植種元である土壌は特にクロボク土に限定するものではなく、ローム土やシルトであってもよい。
基質液として、含水有機性物質のモデルとして0.1mol/Lのグルコース水溶液に0.01g/Lのイーストエキストラクトを混合して調製した基質液を用いた。
運転開始から10日間は、生物が嫌気性域(生物反応室)内に付着するのを待つため通液を行わず、上記Desulfuromonas培地(表-4)を嫌気性域(生物反応室)側に充填して硫黄還元菌の優占化を促した。
Figure 2007037228
運転開始後10日目より、基質液の滞留時間を2日間として馴養運転を行い、運転開始後20日目より嫌気性域内での滞留時間を500分間とする通常運転にして、アノード、カソード間の電流量及び電圧を測定した。なお、好気性域への空気の供給は滞留時間0.5分間とした。
実施例1、比較例1および2においては、馴養運転期間中を含めて、常にカソード・アノード間は電気的に接続した状態とし、最大の電力量が得られるよう可変抵抗を調整した。試験結果を表-5に示す。
Figure 2007037228
測定期間中の平均発生電力は、ポリマー層厚が薄く、AAQ導入率が30モル%以下である場合(実施例1)の方が、ポリマー層が厚い場合(比較例1)に比べて、53倍の高い電力を発生したことがわかる。また、AAQ導入率が86モル%に達し、ポリマー層の親水性が低くなっている場合(比較例2)に比べると、14倍の高い電力を発生した。これらの結果より、ポリマー層厚が薄く、電子メディエータの導入率が30モル%以下に抑えられている親水性ポリマー被覆電極が生物発電用のアノードとして優れていることが認められた。
[実施例2〜3、比較例3]
図4に示す実験室用の生物発電装置を用い、発電性能及び親水性ポリマー層被覆アノードの安定性を比較した。実施例2〜4及び比較例3では、導電性基材(カーボンフェルト)に分子量7万のポリエチレンイミン(日本触媒製エポミン(登録商標)P-1000)水溶液を含浸させて親水性ポリマー層を形成させ、そこにアントラキノン-2-スルホン酸(AQS)を固定化してアノードとして用いた。AQSは以下の方法で予めスルホニルクロリド化したものを使用した。
AQS1モルに対し1/2モルに相当する量のスルホランと4倍モルに相当する量のオキシ塩化リンとを含むアセトニトリル溶媒中70℃で1時間反応させ、スルホン酸基をスルホニルクロリド化した。これを冷却後、濾過して氷水で洗浄後、乾燥させることにより、AQSクロリドの肌色粉末を得た。
実施例2において生物発電装置に装備したアノード(2)は、以下に述べる方法で作製した。ポリエチレンイミンを水に対し10g/Lの濃度になるように溶解して親水性ポリマー液を調製し、これに導電性基材としてのグラファイトフェルトを浸漬して30秒間振とうし、取り出して余分な親水性ポリマー液を落としてから100℃で24時間乾燥させ、親水性ポリマー層を形成した。この作業によるグラファイトフェルトの重量増加を測定し、比表面積計で測定したフェルトの表面積と固化したポリマーの比重1.2より親水性ポリマー層の厚みを計算したところ、平均23nmと推定された。
このようにして得られた親水性ポリマー被覆フェルト(導電性基材)をテトラヒドロフラン中に浸漬し、緩やかに撹拌しながら親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して30モル%となるように上記AQSクロリドを添加した。添加したAQSクロリドに対し5倍モルに相当する量のトリエチルアミンを共存させつつ室温で12時間程度反応させることにより、親水性ポリマーとAQSクロリドとの間にスルホンアミド結合を形成させて電子メディエータを導入した。これをメタノールで洗浄してから乾燥させて得た生物発電用アノード(2)を生物発電装置のアノード1として用いた。
アノード(2)の親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対するAQS単位の平均導入率は28モル%、電極の投影面積1cm2あたり13μmolであった。この値は、AQSを導入する前後で上記ポリマー層の酸中和力を測定、比較し、酸中和力の減少量から計算した。
また、アノード(2)を用い、pH7の水溶液中において印加電位を-0.28V〜-0.18V(水素標準電極電位)までシフトすることによって放電が行われたことから、アノード(2)の標準電極電位E0’は-0.28V〜-0.18Vの間にあるといえる。
実施例3において生物発電装置に装備したアノード(3)は、以下に述べる方法で作製した。ポリエチレンイミンを水に対し10g/Lの濃度になるように溶解して親水性ポリマー液を調製し、これに導電性基材としての上記グラファイトフェルトを浸漬して緩やかに撹拌しつつ、エチル(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を添加して72時間反応させ、グラファイトとポリエチレンイミンとの間にアミド結合を生成させた。グラファイトを取り出して余分な親水性ポリマー液を落としてから100℃で24時間乾燥させ、親水性ポリマー層を形成した。これを0.1mol/L水酸化ナトリウム液で洗浄してから以下の操作を行った。上記親水性ポリマー層の厚みは平均21nmと推定された。
このようにして得られた親水性ポリマー被覆フェルト(導電性基材)をテトラヒドロフラン中に浸漬し、実施例2と同様に親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して30モル%となるようにAQSクロリドを添加し、スルホンアミド結合を形成させて電子メディエータを導入した。これをメタノールで洗浄してから乾燥させて得た生物発電用アノード(3)を生物発電装置のアノード1として用いた。
アノード(3)の親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対するAQS単位の平均導入率は27モル%、電極の投影面積1cm2あたり12μmolであった。
また、アノード(3)を用い、pH7の水溶液中において印加電位を-0.28V〜-0.18V(水素標準電極電位)までシフトすることによって放電が行われたことから、アノード(3)の標準電極電位E0’は-0.28V〜-0.18Vの間にあるといえる。
実施例4において生物発電装置に装備したアノード(4)は、以下に述べる方法で作製した。ポリエチレンイミンを水に対し10g/Lの濃度になるように溶解して親水性ポリマー液を調製し、これに実施例2と同様の条件で導電性基材としてのグラファイトフェルトを浸漬させた。グラファイトを取り出して余分な親水性ポリマー液を落としてから100℃で24時間乾燥させ、親水性ポリマー層を形成した。親水性ポリマー層の厚みは平均23nmと推定された。
このようにして得られた親水性ポリマー被覆フェルト(導電性基材)をテトラヒドロフラン中に浸漬し、親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して等モルとなるように上記AQSクロリドを添加し、実施例3と同様の条件でスルホンアミド結合を形成させて電子メディエータを導入した。これをジクロロメタン溶媒中に浸漬し、クロロスルホン酸を10%(v/v)濃度になるよう添加して24時間反応させ、スルホン化を行った。これをイソプロパノールで24時間洗浄し、ついでエタノールで洗浄し、さらに水で洗浄することによりスルホニルクロリドをスルホン酸としてから乾燥させて得た生物発電用アノード(4)を生物発電装置のアノード1として用いた。
アノード(4)の親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対するAQS単位の平均導入率は83モル%、電極の投影面積1cm2あたり39μmolであった。
また、アノード(4)を用い、pH7の水溶液中において印加電位を-0.28V〜-0.13V(水素標準電極電位)までシフトすることによって放電が行われたことから、アノード(4)の標準電極電位E0’は-0.28V〜-0.13Vの間にあるといえる。
比較例3
比較例3において生物発電装置に装備した対照アノード(3)は、以下に述べる方法で作製した。実施例4と同じ方法で親水性ポリマー層を形成し、親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して等モルとなるようにAQSクロリドを添加し、実施例4と同様の条件でスルホンアミド結合を形成させた。これをそのまま比較例3における生物発電装置の対照アノード(3)として用いた。
対照アノード(3)のポリエチレンイミンにおける親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対するAQS単位の平均導入率は84モル%、電極の投影面積1cm2あたり39μmolであった。また、対照アノード(3)を用い、pH7の水溶液中において印加電位を-0.28V〜-0.13V(水素標準電極電位)までシフトすることによって放電が行われたことから、対照アノード(3)の標準電極電位E0’は-0.28V〜-0.13Vの間にあるといえる。
<発電性能>
実施例2〜4及び比較例3で得たアノードを用いて図4に示す生物発電装置で行った発電試験結果を表-6に示す。
Figure 2007037228
測定期間中の平均発生電力は、親水性ポリマー層厚が薄く、AQS導入率が30モル%以下である実施例2および3において、予め脱水縮合処理を行ったかどうかに関わり無くほぼ同じ値を示した。また、AQS導入率が83モル%と高い場合(実施例4)でも、AQS導入後にスルホン化処理を行ったことによってやや劣る程度の電力発生量を得ることができた。これに対して、AQS導入量が高い状態でそのままアノードとして使用した場合(比較例3)は、スルホン化処理を行った場合(実施例4)に比べて、電力量は1/9程度まで低下した。
これらの結果より、親水性ポリマー層厚が薄く、電子メディエータの導入率が30モル%以下に抑えられている親水性ポリマー層被覆電極が生物発電用のアノードとして優れていること、及び電子メディエータの導入率が高い場合でも、親水性基を導入することにより生物発電用のアノードとしての性能が回復することが認められた。
<アノードの安定性>
実施例2および実施例3の方法で作製したアノードをそれぞれ1mol/Lの塩酸水に浸漬して緩やかに撹拌しつつ30分間反応させたところ、実施例2のポリマーは90%以上が溶解してグラファイトから脱離してしまった。一方、実施例3で作製したアノードからは10%程度が脱離するに留まった。実施例3で作製したアノードのポリマー層はアミド結合によってグラファイトと化学的に結合しているため、酸による溶出が起こりにくかったと考えられる。したがって、実施例3の方法で作製したアノードは、実施例2の方法で作製したアノードよりも高い耐久性を有するといえる。
生物発電装置に装備したアノード(5)は、以下に述べる方法で作製した。ポリエチレンイミンを水に対し30g/Lの濃度になるように溶解して親水性ポリマー液を調製し、これに実施例2と同様の条件で導電性基材としてのグラファイトフェルトを浸漬させた。その後、グラファイトフェルトを取り出して余分な親水性ポリマー液を落としてから100℃で24時間乾燥させ、親水性ポリマー層を形成した。親水性ポリマー層の厚みは平均100nmと推定された。
このようにして得られた親水性ポリマー被覆フェルト(導電性基材)をテトラヒドロフラン中に浸漬し、親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して過剰量(100モル%以上)となるようにAQSクロリドを添加し、実施例3と同様の条件でスルホンアミド結合を形成させて電子メディエータを導入して得たアノード(5)を生物発電装置のアノード1として用いた。
アノード(5)の親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対するAQS単位の平均導入率は28モル%、電極の投影面積1cm2あたり57μmolであった。また、アノード(5)を用い、pH7の水溶液中において印加電位を-0.28V〜-0.13V(水素標準電極電位)までシフトすることによって電流が発生したことから、アノード(5)の標準電極電位E0’は-0.28V〜-0.13Vの間にあるといえる。
比較例4
比較例4において生物発電装置に装備した対照アノード(4)は、以下に述べる方法で作製した。ポリエチレンイミンを水に対し80g/Lの濃度になるように溶解して親水性ポリマー液を調整し、これに実施例2と同様の条件で導電性基材としてのグラファイトフェルトを浸漬させた。その後、グラファイトフェルトを取り出して余分な親水性ポリマー液を落としてから100℃で24時間乾燥させ、親水性ポリマー層を形成した。親水性ポリマー層の厚みは平均250nmと推定された。
このようにして得られた親水性ポリマー被覆フェルト(導電性基材)をテトラヒドロフラン中に浸漬し、親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して過剰量(100モル%以上)となるようにAQSクロリドを添加し、実施例3と同様の条件でスルホンアミド結合を形成させて電子メディエータを導入した。これを比較例4における生物発電装置のアノード1として用いた。
対照アノード(4)のポリエチレンイミンにおける親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対するAQS単位の平均導入率は23モル%、電極の投影面積1cm2あたり117μmolであった。また、対照アノード(4)を用い、pH7の水溶液中において印加電位を-0.28V〜-0.13V(水素標準電極電位)までシフトすることによって電流が発生したことから、対照アノード(4)の標準電極電位E0’は-0.28V〜-0.13Vの間にあるといえる。
<発電性能>
実施例5及び比較例4で得たアノードを用いて図4に示す生物発電装置で行った発電試験結果を表7に示す。
Figure 2007037228
発生した電位差(電圧)、発生電流ともに、ポリマー層厚100nmの場合(実施例5)の方が、ポリマー層厚250nmの場合(比較例4)に比べて高く、出力にして10倍あまりの高い電力を発生したことがわかる。
[実施例6、比較例5〜6]
図4に示す実験室用の生物発電装置を用い、電位の違うアノードによる発電性能を比較した。
導電性基材(グラファイトフェルト)に分子量7万のポリエチレンイミン(日本触媒製エポミン(登録商標)P-1000)水溶液を含浸させて親水性ポリマー層を形成させた。ポリエチレンイミンを水に対し10g/Lの濃度になるように溶解して親水性ポリマー液を調製し、これに導電性基材としてのグラファイトフェルトを浸漬して30秒間振とうし、その後、取り出して余分な親水性ポリマー液を落としてから100℃で24時間乾燥させ、親水性ポリマー層を形成した。この作業によるグラファイトフェルトの重量増加を測定し、比表面積計で測定したフェルトの表面積と固化したポリマーの比重1.2より親水性ポリマー層の厚みを計算したところ、平均25nmと推定された。
実施例6では、アノードとして、以下の方法で予めスルホニルクロリド化したアントラキノン-2、6-ジスルホン酸(AQDS、E0'=-185mV)を固定化させたアノード(6)を用いた。
AQDS1モルに対し1/2モルに相当する量のスルホランと4倍モルに相当する量のオキシ塩化リンとを含むアセトニトリル溶媒中70℃で1時間反応させ、スルホン酸基をスルホニルクロリド化した。これを冷却後、濾過して氷水で洗浄後、乾燥させることにより、AQDSクロリドの黄色粉末を得た。上述の方法で得られたポリエチレンイミン被覆フェルト(導電性基材)をテトラヒドロフラン中に浸漬し、緩やかに撹拌しながら親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して過剰量(100モル%以上)となるようにAQDSクロリドを添加した。添加したAQDSクロリドに対し5倍モルに相当する量のトリエチルアミンを共存させつつ室温で12時間程度反応させることにより、親水性ポリマーとAQDSクロリドとの間にスルホンアミド結合を形成させて電子メディエータを導入した。これをメタノールで洗浄してから乾燥させて得た生物発電用アノード(6)を生物発電装置のアノード1として用いた。
アノード(6)の親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対するAQDS単位の平均導入率は25モル%、電極の投影面積1cm2あたり13μmolであった。この値は、AQDSを導入する前後で上記ポリマー層の酸中和力を測定、比較し、酸中和力の減少量から計算した。
また、アノード(6)を用い、pH7の水溶液中において印加電位を-0.25V〜-0.15V(水素標準電極電位)までシフトすることによって電流が発生したことから、アノード(6)の標準電極電位E0’は-0.25V〜-0.15Vの間にあるといえる。
比較例5
比較例5では、インディゴカーミン(E0'=-125mV)を固定化した対照アノード(5)を用いた以外は、実施例6と同様にして発電性能を調べた。
インディゴカーミンは以下の方法で予めスルホニルクロリド化したものを使用した。
インディゴカーミン1モルに対し1/2モルに相当する量のスルホランと4倍モルに相当する量のオキシ塩化リンとを含むアセトニトリル溶媒中70℃で1時間反応させ、スルホン酸基をスルホニルクロリド化した。これを冷却後、濾過して氷水で洗浄後、乾燥させることにより、インディゴカーミンクロリドの青色粉末を得た。上述の方法で得られたポリエチレンイミン被覆フェルト(導電性基材)をテトラヒドロフラン中に浸漬し、緩やかに撹拌しながら親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して過剰量(100モル%以上)となるように上記インディゴカーミンクロリドを添加した。添加したインディゴカーミンクロリドに対し5倍モルに相当する量のトリエチルアミンを共存させつつ室温で12時間程度反応させることにより、親水性ポリマーとインディゴカーミンクロリドとの間にスルホンアミド結合を形成させて電子メディエータを導入した。これをメタノールで洗浄してから乾燥させて得た対照アノード(5)を生物発電装置のアノード1として用いた。
対照アノード(5)の親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対するインディゴカーミン単位の平均導入率は18モル%、電極の投影面積1cm2あたり9μmolであった。この値は、インディゴカーミンを導入する前後で上記ポリマー層の酸中和力を測定、比較し、酸中和力の減少量から計算した。
また、対照アノード(5)を用い、pH7の水溶液中において印加電位を-0.13V〜-0.10V(水素標準電極電位)までシフトすることによって電流が発生したことから、対照アノード(5)の標準電極電位E0’は-0.13V〜-0.10Vの間にあるといえる。
比較例6
比較例6では、5-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン(5-H-1,4-NQ、E0'=-3mV)を固定化した対照アノード(6)を用いた以外は、実施例6と同様にして発電性能を調べた。
5-H-1,4-NQは以下の方法で予めスルホニルクロリド化したものを使用した。
アルドリッチ社製の5-H-1,4-NQ 5gを20%(v/v)クロロスルホン酸/ジクロロメタン溶液100mLに溶解させ、濃硫酸2mLの共存下で室温で20時間反応させてスルホン酸クロリド基を導入した。
上述の方法で得られたポリエチレンイミン被覆フェルト(導電性基材)をテトラヒドロフラン中に浸漬し、緩やかに撹拌しながら親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して過剰量(100モル%以上)となるように上記5-H-1,4-NQスルホン酸クロリドを添加した。添加した5-H-1,4-NQスルホン酸クロリドに対し5倍モルに相当する量のトリエチルアミンを共存させつつ室温で12時間程度反応させることにより、親水性ポリマーと5-H-1,4-NQとの間にスルホンアミド結合を形成させて電子メディエータを導入した。これをメタノールで洗浄してから乾燥させて得た対照アノード(6)を生物発電装置のアノード1として用いた。
対照アノード(6)の親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対する5-H-1,4-NQ単位の平均導入率は23モル%、電極の投影面積1cm2あたり12μmolであった。この値は、5-H-1,4-NQを導入する前後で上記ポリマー層の酸中和力を測定、比較し、酸中和力の減少量から計算した。
また、対照アノード(6)を用い、pH7の水溶液中において印加電位を-0.10V〜+0.05V(水素標準電極電位)までシフトすることによって電流が発生したことから、対照アノード(6)の標準電極電位E0’は-0.10V〜+0.05Vの間にあるといえる。
[実施例7、比較例7]
導電性基材であるカーボンフェルトとして、日本カーボン製カーボロン(登録商標)フェルトGF-20を用いた。親水性ポリマーには、和光純薬製ポリアクリル酸(分子量約100万)を用いた。ポリアクリル酸をメタノールに対し5g/Lの濃度になるように溶解させ親水性ポリマー液を調製し、これにグラファイトフェルトを浸漬して30秒間振とうし、その後、取り出して余分なポリマー液を落としてから100℃で24時間乾燥させ、親水性ポリマー層を形成した。この作業によるグラファイトフェルトの重量増加を測定し、比表面積計で測定したフェルトの表面積と固化した親水性ポリマーの比重0.8より親水性ポリマー層の厚みを計算したところ、平均28nmと推定された。
実施例7では、アノードとして、以下の方法で2-メチル-5-アミノ-1,4-ナフトキノン(2-M-5-A-1,4-NQ)を固定化したアノード(7)を用いた。
上記の方法で得られたポリアクリル酸被覆フェルトをジメチルホルムアミド中に浸漬し、緩やかに撹拌しながら親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して過剰量(100モル%以上)となるように2-M-5-A-1,4-NQを添加し、ジシクロヘキシルカルボジイミドの共存下で、室温で72時間反応させることにより、2-M-5-A-1,4-NQのアミノ基とポリマーのカルボキシ基との間でアミド結合を形成させて親水性ポリマー層に電子メディエータを導入した。これをジメチルホルムアミド、次いでメタノールで洗浄してから乾燥させて得た生物発電用アノード(7)を生物発電装置のアノード1として用いた。
アノード(7)のポリアクリル酸のポリマー単位に対する2-M-5-A-1,4-NQ単位の平均導入率は25モル%、電極の投影面積1cm2あたり14μmolであった。この値は、2-M-5-A-1,4-NQを導入する前後でポリマー層のアルカリ中和力を測定、比較し、アルカリ中和力の減少量から計算した。
また、アノード(7)を用い、pH7の水溶液中において印加電位を-0.15V〜-0.13V(水素標準電極電位)までシフトすることによって電流が発生したことから、アノード(7)の標準電極電位E0’は-0.15V〜-0.13Vの間にあるといえる。
比較例7
比較例7では、アノードとしてニュートラルレッド(E0'=-325mV)を固定化した対照アノード(7)を用いた以外は実施例7と同様にして発電性能を調べた。
実施例7に記載の方法で得られたポリアクリル酸被覆フェルトをジメチルホルムアミド中に浸漬し、緩やかに撹拌しながらポリアクリル酸の構成親水性モノマー単位に対して過剰量(100モル%以上)となるようにニュートラルレッドを添加し、ジシクロヘキシルカルボジイミドの共存下で、室温で72時間反応させることにより、ニュートラルレッドのアミノ基とポリマーのカルボキシ基との間でアミド結合を形成させて親水性ポリマー層に電子メディエータを導入した。これをジメチルホルムアミド、次いでメタノールで洗浄してから乾燥させて得た対照アノード(7)を生物発電装置のアノード1として用いた。
対照アノード(7)のポリアクリル酸のポリマー単位に対するニュートラルレッド単位の平均導入率は28モル%、電極の投影面積1cm2あたり16μmolであった。この値は、ニュートラルレッドを導入する前後で上記ポリマー層のアルカリ中和力を測定、比較し、アルカリ中和力の減少量から計算した。
また、対照アノード(7)を用い、pH7の水溶液中において印加電位を-0.45V〜-0.28V(水素標準電極電位)までシフトすることによって電流が発生したことから、対照アノード(7)の標準電極電位E0’は-0.45V〜-0.28Vの間にあるといえる。
<発電性能>
実施例6及び7、比較例5〜7で得た各アノードを用いて図4に示す生物発電装置で行った発電試験結果を表8に示す。
Figure 2007037228
発生した電気出力より、アノードの標準電極電位(E0')が本発明の請求範囲である-0.13〜-0.28Vの範囲内にある場合(実施例6及び7)の方が、範囲外にある場合(比較例5〜7)に比べて高く、5〜120倍あまりの高い電力を発生したことがわかる。
また、実施例6と7とを比較すると実施例6のほうが実施例7に対して2.5倍あまり高い出力を示している。これは実施例6のアノード(6)が標準電極電位-0.25〜-0.15Vの範囲であるのに対して、実施例7のアノード(7)は-0.15〜-0.13Vと高めであるためと考えられる。このことから、pH7におけるアノードの標準電極電位を-0.13V〜-0.28Vの範囲内、好ましくは-0.15V〜-0.27Vの範囲内に設定することが発電性能上有利であることが示された。
以上説明したように、本発明により、簡易な装置、方法によって効率的に生物発電用のアノードを作製し、このアノードを用いる生物発電により、廃水、廃液、し尿、食品廃棄物、その他の有機性廃棄物、汚泥などの含水有機性物質またはその分解物を効率的に酸化分解し、電気エネルギーを得ることが可能である。本発明は、含水有機性物質の酸化分解、および還元電位を利用した発電方法として広く利用されることが期待される。

Claims (21)

  1. 表面の少なくとも一部が親水性ポリマー層で被覆された導電性基材を含み、該親水性ポリマー層には電子メディエータが化学的に結合されて導入されており、
    pH7における標準電極電位(E0')が-0.13V〜-0.28Vの範囲内にある生物発電用アノード。
  2. 前記親水性ポリマー層は、平均層厚が200ナノメートル以下である請求項1に記載の生物発電用アノード。
  3. 前記親水性ポリマー層を構成する親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して、電子メディエータが1〜30モル%導入されている請求項1または2に記載の生物発電用アノード。
  4. 前記親水性ポリマー層に導入された前記電子メディエータは、親水性の官能基を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の生物発電用アノード。
  5. 前記親水性ポリマー層を構成する親水性ポリマーが、アミノ基、イミノ基、カルボキシ基及びスルホン酸基からなる群から選択されるいずれか1種類の官能基を構造中に含むポリマーである請求項1〜4の何れか1項に記載の生物発電用アノード。
  6. 前記親水性ポリマーが、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸である請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物発電用アノード。
  7. 前記電子メディエータが、アントラキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、ベンゾキノン誘導体、イソアロキサンジン誘導体からなる群より選択される1種以上の酸化還元物質である請求項1〜6のいずれか1項に記載の生物発電用アノード。
  8. 前記電子メディエータは、アントラキノンカルボン酸類(AQC)、アミノアントラキノン類(AAQ)、ジアミノアントラキノン類(DAAQ)、アントラキノンスルホン酸類(AQS)、ジアミノアントラキノンスルホン酸類(DAAQS)、アントラキノンジスルホン酸類(AQDS)、ジアミノアントラキノンジスルホン酸類(DAAQ DS)、エチルアントラキノン類(EAQ)、メチルナフトキノン類(MNQ)、メチルアミノナフトキノン類(MANQ)、ブロモメチルアミノナフトキノン類(BrMANQ)、ジメチルナフトキノン類(DMNQ)、ジメチルアミノナフトキノン類(DMANQ)、ラパコール(LpQ)、ヒドロキシ(メチルブテニル)アミノナフトキノン類(ALpQ)、ナフトキノンスルホン酸類(NQS)、トリメチルアミノベンゾキノン類(TMABQ)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)およびこれらの誘導体からなる群より選ばれる1つ以上の酸化還元物質である請求項7に記載の生物発電用アノード。
  9. 前記導電性基材は、導電性を持つ炭素素材を少なくとも含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の生物発電用アノード。
  10. 前記導電性基材は、グラファイト、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ(CNT)、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンフェルト、カーボンクロス、カーボンペーパーよりなる群のうち少なくとも一つを含む請求項9に記載の生物発電用アノード。
  11. 前記導電性基材と親水性ポリマー層とが共有結合または水素結合によって結合している請求項9または10に記載の生物発電用アノード。
  12. 前記導電性基材は、アルミニウム、ニッケル、鉄、銅、金、白金、ステンレス鋼、鉄−シリコン合金、カルシウム−シリコン合金、アルミニウム−亜鉛−シリコン合金、モリブデン−バナジウム合金、ニッケル−銅合金から選択される請求項1〜8のいずれか1項に記載の生物発電用アノード。
  13. 前記親水性ポリマー層を構成する親水性ポリマーは、該親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して0.01〜10モル%の比率で相互に架橋している請求項1〜12のいずれか1項に記載の生物発電用アノード。
  14. 請求項1〜13の何れか1項に記載の生物発電用アノードの製造方法であって、
    導電性基材の表面の少なくとも一部が親水性ポリマーで被覆された親水性ポリマー被覆導電性基材を形成する親水性ポリマー被覆導電性基材形成工程と、
    該親水性ポリマー被覆導電性基材に電子メディエータを導入する電子メディエータ導入工程と、
    を含む生物発電用アノードの製造方法。
  15. 前記親水性ポリマー被覆導電性基材形成工程は、親水性ポリマーの濃度が50g/L以下であるポリマー溶液を導電性基材に滴下、塗布、吹き付けまたは浸漬させることにより親水性ポリマーを導電性基材に付着若しくは固定化する付着・固定化工程である請求項14に記載の生物発電用アノードの製造方法。
  16. 前記親水性ポリマー被覆導電性基材形成工程は、導電性基材の官能基と親水性ポリマーの官能基とを化学的に結合させて、親水性ポリマーを導電性基材に固定化する固定化工程である請求項14に記載の生物発電用アノードの製造方法。
  17. 前記電子メディエータ導入工程は、前記親水性ポリマー被覆導電性基材の親水性ポリマー層を構成する親水性ポリマーの構成親水性モノマー単位に対して、電子メディエータを30モル%以下の比率で反応させて電子メディエータを導入する請求項14〜16の何れか1項に記載の生物発電用アノードの製造方法。
  18. 前記電子メディエータ導入工程の後、前記電子メディエータに親水性官能基を導入する親水性官能基導入工程をさらに含む請求項14〜17の何れか1項に記載の生物発電用アノードの製造方法。
  19. 前記親水性ポリマー被覆導電性基材形成工程の前に、導電性基材にカルボキシ基を導入する前処理工程をさらに含む請求項14〜18の何れか1項に記載の生物発電用アノードの製造方法。
  20. 嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液、請求項1〜13のいずれか1項に記載の生物発電用アノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域と、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備し、該アノード及び該カソードを電力利用機器に電気的に接続して閉回路を形成し、該嫌気性域内での有機性物質を電子供与体とする酸化反応と該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用して発電する発電装置。
  21. 嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液、請求項1〜13のいずれか1項に記載の生物発電用アノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域と、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備し、該アノード及び該カソードを電力利用機器に電気的に接続して閉回路を形成し、該嫌気性域内での有機性物質を電子供与体とする酸化反応と該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用して発電する発電方法。
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