本発明は、生物発電装置を利用して、畜産廃棄物、し尿、食品廃棄物、汚泥などの有機性固形汚濁物質を含む廃水及び廃棄物などを処理する技術に関する。
有機性汚濁物質を含有する廃水の処理には、従来から好気性の生物処理法が多く用いられているが、この方法はエネルギー消費量が多く、かつ、難分解性有機物を多く含む余剰汚泥の処分が大きな問題になっている。これに対して、高濃度の有機性汚濁物質を含有する廃水や有機性汚泥の処理には、従来から嫌気性処理方式が多用されている。この方式は曝気動力が不要なのでエネルギー消費量が節約できること、余剰汚泥の発生量が少ないので処理費用が廉価であること、かつエネルギー資源として有用なメタンガスを回収できることなどの利点がある。
メタンは天然ガスの主成分であり、優れた燃料であるが、常温・常圧ではガス状のため貯蔵しておくには大型のガスタンクが必要であり、加圧や液化して減容化するには大型又は複雑な設備と多量のエネルギーを要する。また、有機性廃水・廃棄物の嫌気性処理によって得られたメタンをボイラー等で燃焼した場合、得られた熱エネルギーは、現状では、必ずしも有効利用されているとは言えない。一方、電力は様々な機器設備の動力に利用できるだけでなく、長距離の輸送も可能な、利便性に優れたエネルギー形態である。
メタンのような燃料から電力を生産するためには、従来から燃料の有する化学エネルギーから動力エネルギーを経て電気エネルギーへ変換するガスエンジンあるいはガスタービンが用いられているが、その効率は出力規模によって異なることが知られている。例えばガスエンジンにおいては、出力2MWの大型設備の場合、燃料の化学エネルギーから電気エネルギーへの変換効率は約40%であるのに対し、出力10kW程度の小型設備では20〜25%、ガスタービンにおいては100MWの設備では効率30〜35%、1MW級では25〜35%、出力30kWのマイクロガスタービンでは15〜30%である。このようにガスエンジンやガスタービンでは出力規模が小さい場合には電力変換効率が低い。また、設備の維持管理コストを加味すると、大型設備でなければ実質的にエネルギー回収が難しい。
近年、燃料の化学エネルギーを直接電力に変換する燃料電池の技術が進みつつある。最も実用化が進んでいる固体高分子型燃料電池(PEFC)は、1kWという小型設備でも電力変換効率が35〜40%と高く、分散型の発電設備として多方面での利用が期待されている。有機性廃水・廃棄物の嫌気性処理によるメタンのエネルギー回収効率は60〜70%程度であるので、燃料電池を用いたシステムでは20〜30%程度の電力回収効率が期待される。しかし、有機性廃水及び廃棄物の嫌気性処理で得られたバイオガスを原料とする場合には、PEFCでは発電の鍵となる触媒が硫化水素やアンモニアガスで被毒するため、バイオガスからこれらの不純物を1ppm以下に除去する必要がある。さらに、一酸化炭素によっても触媒が被毒するため、メタンを水素に改質する際に発生する一酸化炭素を改質ガス中から10ppm以下にまで除去する必要がある。
一方、微生物を利用して、アノード周辺の電子供与体からの電子を、アノードとカソードを回路として導通することでカソード周辺の電子受容体(主に溶存酸素)に供与して電流を得る方法が報告されている(特許文献1、2、及び3)。また、別の例では微生物に常に不十分な量の有機物を与えて微生物を飢餓状態に維持することによって効率良く電子を取り出す方法が提案されている(特許文献4)。さらに、別の例では酵素電極の製造方法として、酸化還元酵素の電子メディエータであるレドックス化合物を電極に固定化する方法が提案されている(特許文献5)。電子メディエータを利用する微生物電池技術として、含水有機性物質又はその分解物を基質として、基質と酸素との酸化還元反応を、嫌気性微生物による酸化反応と、酸素の還元反応に分離することによって発電を行う方法が提案されている(特許文献3及び非特許文献1〜3)。
しかし、これらの方法において用いられている電子メディエータの標準電極電位は、一般に微生物電池反応に用いられる嫌気性微生物の最終電子受容物質の標準電極電位と重ならず、有効な電位のカスケードを形成できないという問題がある。
硫黄還元菌を用いた微生物電池系において、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸(AQ-2,6-DS)をアノード区画に添加することにより電子伝達効率の向上を試みる提案がなされた(非特許文献2)。AQ-2,6-DSの標準電極電位は-0.185Vであり、硫黄還元酵素−電子メディエータ間で有効な電位のカスケードを形成するに適当な物質であると考えられる。しかし、提案されている系においては、AQ-2,6-DSは液相中に添加されただけで、アノード(酸化電極)に固定化されていないため、電極との反応性が低く、添加効果は24%の電流値増加に留まっている。また、連続的に発電する場合には、アノード区画内の基質液を更新する際に電子メディエータも一緒に系外に排出されてしまい、常に電子メディエータを添加し続けなければならない、という問題がある。なお、硫黄還元菌や酸化鉄(III)還元菌に属する微生物の少なくとも一部は、電子メディエータが存在しない環境下でも直接電極に電子を渡すことがある程度は可能であることから、電子メディエータを使用しない微生物電池の技術も提案されている(特許文献6)。しかしながらこの方法では、電子メディエータを系内に保持しなくて良いという長所はあるものの、微生物から電極への電子伝達が効率的には行えないため、電流密度を大きくすることができない。そのため、実用的な発電速度を得ることが難しいという問題があった。
特開2000−133327号公報
特開2000−133326号公報
特表2002−520032号公報
米国特許4652501号明細書
特開昭57-69667号公報
特許3022431号公報
特開2005−317520号公報
Roller et al., 1984, Journal of Chemical Technology and Biotechnology 34B: 3-12
Bond et al., 2002, SCIENCE 295: 483-485
Park et al., 2000, Biotechnology Letters 22: 1301-1304
池田篤治、平成16年、第31回ニューセラミックスセミナー講演要旨集
上記の実用的な発電速度を得る課題を解決するための手段として、本発明者らは、一方の電極をpH7における標準電極電位(E0’)が-0.13V〜-0.28Vの範囲内にある電子メディエータ固定化アノードとし、他方の電極をカソードとして、前記カソードとアノードとを電気的に接続して閉回路を形成し;前記アノードを嫌気性下で生育可能な微生物及び有機性物質を含む溶液又は懸濁液と接触させて、前記有機性物質を電子供与体とする微生物による酸化反応を進行させ;前記カソードと前記溶液又は懸濁液とを電解質膜を介して離隔して、前記カソードにおいて酸素を電子受容体とする還元反応を進行させ;こうして、生物反応系における酸化反応を促進して発電を行うことを特徴とする発電方法並びにかかる発電方法を実施するための装置を提供するに至った(特許文献7)。
このような生物発電方法及び装置において、嫌気性微生物に対する電子供与体として畜産廃棄物、し尿、食品廃棄物、汚泥などの有機性固形汚濁物質を含む廃水及び廃棄物(本明細書において、これらをまとめて「廃棄物」ともいう)を利用することにより、有機性廃水及び廃棄物の環境負荷を低減するとともに、何らエネルギー変換装置を介さず、またガスタンクや改質器などの周辺装置も不要で、有機性廃水及び廃棄物中の有機物の持つ化学エネルギーを、直接電力に変換することができるばかりでなく、有機性固形汚濁物質を含む廃棄物の浄化処理が可能となることを知見した。
本発明は、上述のような生物発電技術を用いて、効率的に有機性固形汚濁物質含有廃棄物の環境負荷を低減すると共に電気エネルギーを得ることができる処理方法及び装置を提供することを目的とする。
より具体的には、生物発電技術を利用する有機性固形汚濁物質含有廃棄物の処理に際して、有機性固形汚濁物質をより処理しやすい可溶化有機性物質に効率的に変換することができる処理方法及び装置を提供することを目的とする。
本発明は、生物発電装置を利用する有機性固形汚濁物質の処理技術に関し、特に有機性固形汚濁物質含有廃棄物の有機性物質と空気中の酸素との酸化還元反応を、嫌気性微生物による酸化反応と、酸素の還元反応とに分離することによって発電しながら、有機性物質を分解処理する有機性固形汚濁物質含有廃棄物の処理技術に関する。本発明は、特に生物発電装置へ供給する前に、有機性固形汚濁物質を可溶化有機性物質に変換することを特徴とする。
本発明によれば、嫌気性条件下で生育可能な微生物及びpH7における標準電極電位(E0’)が-0.13V〜-0.28Vの範囲内にある電子メディエータ固定化アノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備する生物発電装置を利用する有機性固形汚濁物質含有廃棄物の処理方法であって、有機性固形汚濁物質含有廃棄物中の有機性固形汚濁物質を可溶化させて、可溶化有機性物質を含む可溶化被処理液を形成する可溶化工程と;該可溶化被処理液を該生物発電装置の嫌気性域に供給し、該嫌気性域内での可溶化有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応と該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを進行させて、該可溶化被処理液の汚濁負荷の低減を行うとともに発電を行う微生物処理・発電工程と、を含むことを特徴とする有機性固形汚濁物質含有廃棄物の処理方法が提供される。
本発明の処理方法において処理することができる有機性固形汚濁物質含有廃棄物としては、固形状の有機物を含む廃水及び廃棄物であればよく、例えば食品加工工場廃水、コーヒー粕や廃ビール酵母、おからなどのような食品加工残渣、食品残渣(生ごみ)、廃紙、家畜糞尿、し尿、水処理設備からの余剰汚泥等がある。これらの有機性固形汚濁物質含有廃棄物をそのまま可溶化処理に供してもよいが、有機性固形汚濁物質含有廃棄物をあらかじめ固液分離し、分離液を生物発電装置の嫌気性域に供給するか又は低分子化処理し、固形分のみを可溶化処理に供してもよい。
本発明において用いることができる生物発電装置の嫌気性域内の嫌気性微生物としては、菌体外の物質へ電子伝達でき、電極に最終電子伝達が可能な微生物(以下、「電極活性な微生物」という)を利用することが望ましい。このようなアノードへの電極活性な微生物としては、硫黄S(0)還元菌、酸化鉄(III)Fe(III)還元菌、二酸化マンガンMnO2還元菌、脱塩素菌などが好ましく用いられる。このような微生物として、例えば、Desulfuromonas sp.、Desulfitobacterium sp.、Clostridium thiosulfatireducens sp.、Acidithiobacillus sp.、Geothrix sp.、Geobacter sp.、Shewanella putrefaciens sp.などが特に好ましく用いられる。特に、硫黄還元菌は、最終電子受容体である硫黄の標準電極電位が-0.28Vと非常に低いので、酸化鉄(III)還元菌よりも低い電位を有する電子メディエータに電子を伝達することができ、エネルギー的に有利である。このような硫黄還元活性を有する微生物として、例えば、Desulfuromonas sp.、Desulfitobacterium sp.、Clostridium thiosulfatireducens sp.、Acidithiobacillus sp.などが好ましく用いられる。
以上のような電極活性な微生物の多くは、グルコースのような単糖類や乳酸のような低分子有機酸を基質として利用することが知られている(非特許文献4)。
したがって、本処理方法は、有機性固形汚濁物質含有廃棄物に含まれる有機性固形汚濁物質を溶解性物質、懸濁性物質(サスペンション)又はスラリーなどの可溶化有機性物質にまで可溶化処理し、この可溶化有機性物質を含む被処理液(「可溶化被処理液」という)を生物発電装置の嫌気性域に供給し、可溶化有機性物質を電極活性な微生物の基質として作用させることを含む。本発明において「可溶化有機性物質」とは、媒体と容易に分離できない溶質をいい、溶液中の溶質ばかりでなく、分散液中の分散体、懸濁液中の懸濁物、スラリー中の微細固形物をも含む意味である。可溶化は、可溶化処理前後において被処理液の溶解性画分(10000回転/分、10分間の遠心分離操作により得た上澄液)のCODCr濃度の増加によって表すことができ、好ましくはCODCr濃度の増加が約20%以上となる場合に可溶化されたということができる。
本発明の処理方法において、可溶化処理は、有機性固形汚濁物質含有廃棄物を機械的破砕、物理的処理、熱処理、酸またはアルカリ処理、酸化処理、水熱電気分解処理の少なくとも一つの方法で行われることが好ましい。機械的破砕処理としては、ミルや石臼による粉砕又は超音波照射による粉砕などの方法を好ましく用いることができる。物理的処理としては、蒸煮や爆砕などの方法を好ましく用いることができる。熱処理としては、常圧雰囲気下で80℃〜300℃の範囲、好ましくは100℃〜300℃の範囲、最も好ましくは150℃〜250℃の範囲で、20分〜300分、好ましくは20分〜150分、最も好ましくは25分〜60分の加熱処理を用いることができる。水熱電気分解処理としては、100℃以上有機性固形汚濁物質含有廃棄物の臨界温度以下の温度において液相を維持する圧力下で、有機性固形汚濁物質含有廃棄物の化学的酸素要求量(COD)に相当する酸素を水の電気分解で発生させるために必要な電気量の半分以下の直流電流を印加する方法を用いることができる。他に、有機性固形汚濁物質の性質に応じて、酸・アルカリ処理、オゾン処理、次亜塩素酸処理、過酸化水素処理のような化学的処理を用いて溶媒への溶解性を向上させる方法を用いることができる。
機械的処理や物理的処理による場合には、有機性固形汚濁物質が微細化されて表面積が増大し、電極活性な微生物の菌体外酵素との接触が促進される。また、有機性固形汚濁物質として好気性生物処理槽等からの余剰汚泥を使用する場合には、機械的処理や物理的処理などの可溶化処理により余剰汚泥中の細胞が破壊され、細胞内部の溶解性物質(溶質)が被処理液(溶媒)中に溶解するようになるので、電極活性な微生物による分解作用を受けやすくなる。また、化学的処理あるいは熱処理による可溶化処理の場合には、有機性固形汚濁物質の溶解性が向上するばかりでなく、より低分子の物質に変換され得るので、電極活性な微生物による分解作用をより受けやすくなる。また、有機性固形汚濁物質含有廃棄物が下水汚泥等のようにポンプ輸送が可能な程度に流動性があり比較的均質な物質である場合には、亜臨界状態で電気分解を行う水熱電気分解処理(水熱電気分解方法及び装置、国際公開WO99/07641号パンフレット参照)を用いて可溶化処理することができる。水熱電気分解処理では、一般に有機性廃水等の熱処理で生じることが問題になっている難分解性の色度成分を分解することができると共に(特開2003−290740号公報参照)、難分解性の有機物をより低分子の有機酸に変換することができるので、処理水水質の向上を図ることができる。
また、本発明の処理方法においては、可溶化処理の後、可溶化被処理液を生物発電装置に供給する前に、嫌気性微生物の代謝反応を利用する生物処理又は酵素による分解反応を利用する酵素処理などを行って、可溶化被処理液中に含まれる高分子物質をより低分子の物質に変換してもよい。このような低分子化処理を行うことにより、生物発電装置の嫌気性域での嫌気性微生物による分解反応がより進行しやすくなり、処理効率及び発電効率が向上する。
また、本発明の処理方法においては、さらに、生物発電装置からの処理水を通常の水処理方法における好気性微生物処理に供することもできる。さらに、好気性微生物処理後の余剰汚泥の全量又は一部を可溶化工程に返送してもよい。さらに、生物発電装置からの処理水を例えば凝集沈殿、活性炭濾過、脱リン、脱窒、脱硫等の後処理に供してもよい。
本発明の処理方法において、可溶化被処理液は、嫌気性下で生育可能な微生物(電極活性な微生物)による微生物処理・発電工程に供される。微生物処理・発電工程において、生物発電装置の嫌気性域に供給された可溶化被処理液中の可溶化有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応と好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを進行させることにより、可溶化被処理液の汚濁負荷の低減を行うと共に発電を行う。微生物処理・発電工程では、嫌気性域に存在する電極活性な微生物の活性を維持することができる条件に可溶化被処理液を制御する。例えば、嫌気性域内での可溶化被処理液のpHの低下を抑制することによって、アノードでの還元型メディエータの酸化反応速度の低下を防ぎ、連続運転においても大きな電流密度を得ることができる。嫌気性域内のpHは10.5〜6.5の範囲に、より好ましくは9.5〜6.5の範囲に、最も好ましくは9.0〜7.5の範囲に維持されることが好ましい。pHを上記範囲内に維持するようにpHの低下を抑制することによって、アノードでの酸化反応速度が低下することを阻止することができる。また、微生物が有する酵素は中性付近が至適pHとなることが多く、アルカリ性が強すぎると微生物の還元反応が阻害されるおそれがある。本発明において生物発電装置の嫌気性域内のpH制御に用いることができるアルカリ性物質としては、水溶液がアルカリ性を示す物質であればよいが、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、及びそれらの水酸化物、強塩基−弱酸からなる塩類、アンモニア等を好ましく挙げることができる。また、水溶液のpHとしては中性〜弱アルカリ性を示すが、水溶液が緩衝作用を有するアルカリ度が強い物質も用いることができる。例としては、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩などを好ましく挙げることができる。また、アルカリ性物質として用いる際には、上記に示した物質を2種類以上同時に添加してもよい。また、生物発電装置の嫌気性域内で可溶化被処理液の温度は、10℃〜70℃の範囲、好ましくは20℃〜45℃の範囲、最も好ましくは25℃〜35℃の範囲に維持することが好ましい。
次に本発明の処理方法において利用する生物発電装置を本発明の処理装置とともに説明する。
本発明の処理装置は、有機性固形汚濁物質含有廃棄物中の有機性固形汚濁物質を可溶化させて、可溶化有機性物質を含む可溶化被処理液を形成する可溶化槽;及び嫌気性条件下で生育可能な微生物及びpH7における標準電極電位(E0’)が-0.13V〜-0.28Vの範囲内にある電子メディエータ固定化アノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備する生物発電装置;
を具備する。
可溶化槽は、ミルや石臼などの機械的粉砕装置、超音波照射装置、蒸煮装置、爆砕装置、水熱電気分解装置、加熱装置などの装置あるいは酸、アルカリ、オゾン、次亜塩素酸、過酸化水素などの化学物質供給機構及び撹拌装置を具備する容器でよい。
本発明で用いることができる生物発電装置は、電極活性な微生物及び電子メディエータ固定化アノードを含む嫌気性域と、カソードを含む好気性域と、嫌気性域及び好気性域を画定する隔膜と、を具備する。電子メディエータ固定化アノードは、電子メディエータを電極基材に固定化したものであり、pH7における標準電極電位(E0’)が-0.13V〜-0.28Vの範囲内にある。嫌気性域には可溶化被処理液を供給するための供給口が設けられている。嫌気性域に供給された可溶化被処理液中の可溶化有機性物質を基質として、嫌気性域内の電極活性な微生物が酸化反応を進行させ、一方、好気性域内では、カソードにおいて酸素を電子受容体とする還元反応を進行させる。こうして、生物反応系における酸化反応を促進して発電を行う生物発電装置である。
本発明で用いる生物発電装置のアノードを構成する電極基材としては、導電性を有する多孔質基材を好ましく挙げることができ、具体的には多孔質グラファイト、カーボンペーパー、グラファイトクロス、グラファイトフェルト、活性炭繊維、カーボンブラックの成型品、カーボンナノチューブの成型品、気相成長炭素繊維の成型品などを好ましく挙げることができる。
本発明で用いることができる生物発電装置において、電極基材に固定化する電子メディエータとしては、アントラキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、ベンゾキノン誘導体、イソアロキサジン誘導体からなる群より選択される物質が使用できる。より具体的には、アントラキノンカルボン酸類(AQC)、アミノアントラキノン類(AAQ)、ジアミノアントラキノン類(DAAQ)、アントラキノンスルホン酸類(AQS)、ジアミノアントラキノンスルホン酸類(DAAQS)、アントラキノンジスルホン酸類(AQDS)、ジアミノアントラキノンジスルホン酸類(DAAQ DS)、エチルアントラキノン類(EAQ)、メチルナフトキノン類(MNQ)、メチルアミノナフトキノン類(MANQ)、ブロモメチルアミノナフトキノン類(BrMANQ)、ジメチルナフトキノン類(DMNQ)、ジメチルアミノナフトキノン類(DMANQ)、ラパコール(LpQ)、ヒドロキシ(メチルブテニル)アミノナフトキノン類(ALpQ)、ナフトキノンスルホン酸類(NQS)、トリメチルアミノベンゾキノン類(TMABQ)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)およびこれらの誘導体、例えばアントラキノン-2-カルボン酸(AQ-2-C)、1-アミノアントラキノン(AAQ)、1,5-ジアミノアントラキノン(1,5-DAAQ)、アントラキノン-2-スルホン酸(AQ-2-S)、1,5-ジアミノアントラキノン-2-スルホン酸(1,5-DAAQ-2-S)、アントラキノン-2,6-ジスルホン酸(AQ-2,6-DS)、アントラキノン-2,7-ジスルホン酸(AQ-2,7-DS)、アントラキノン-1,5-ジスルホン酸(AQ-1,5-DS)、1,5-ジアミノアントラキノンジスルホン酸(1,5-DAAQDS)、2-エチルアントラキノン(2-EAQ)、2-メチル-1,4-ナフトキノン(2-M-1,4-NQ)、2-メチル-5-アミノ-1,4-ナフトキノン(2-M-5-A-1,4-NQ)、2-ブロモ-3-メチル-5-アミノ-1,4-ナフトキノン(2-Br-3-M-5-A-1,4-NQ)、2,3-ジメチル-1,4-ナフトキノン(2,3-DM-1,4-NQ)、2,3-ジメチル-5-アミノ-1,4-ナフトキノン(2,3-DM-5-A-1,4-NQ)、ラパコール(LpQ)、2-ヒドロキシ-3-(3-メチル-2-ブテニル)-5-アミノ-1,4-ナフトキノン(ALpQ)、1,2-ナフトキノン-4-スルホン酸(1,2-NQ-4-S)、2,3,5-トリメチルベンゾキノン(2,3,5-TMABQ)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)およびこれらの誘導体からなる群より選択される物質が好ましく用いられる。
これらの電子メディエータを電極基材に固定するには、電子メディエータの酸化還元能を阻害したり、電子メディエータの標準電極電位を大きく変動させてしまうことがないような固定化方法を用いることが好ましい。また、電子メディエータと電極基材との結合は、水環境中で安定であり容易に分解されない形態であることが望ましい。また、電子メディエータと電極基材とは導電性を有するような形態で結合されていることが望ましいが、電子メディエータと電極基材間の距離が200Å以内であれば、直接結合されていなくとも、電子がこの間の距離を移動することができるので導電性が維持される。さらに、電子メディエータ又は電極基材の何れか一方又は両者に官能基を導入して、電子メディエータを電極基材に固定化させてもよい。また、電解重合又は化学重合を利用して電子メディエータを重合化させてから電極基材に固定化させてもよく、電子メディエータを電極基材に固定化させてから重合化させてもよい。さらに、電極基材に導電性ファイバーを形成させ、導電性ファイバーに電子メディエータを固定化させてもよい。これらの条件を満たす固定化方法として、下記表-1及び表-2に示す結合方法が好ましく用いられる。
したがって、本発明において、電子メディエータを電極基材に固定化するには、使用する電極基材と電子メディエータとの組み合わせに応じて、表-1及び表-2に示す方法から適切な結合方法を選択することができる。
本発明で用いる発電装置においては、カソードの少なくとも一部を、構造体内に空隙を有する導電性の多孔質材料、網状又は繊維材料で構成し、その空隙中に水素イオンを含む水/空気/電子の界面、すなわち空気(酸素)と水素イオンと電子とを隣接させる場を構築することが好ましく、空気中の酸素および水面の水に接触する効率を高めて、空気中の酸素の還元反応(電極反応)を促進できる。例えば、微細孔を有する導電性の多孔質材料に樹脂バインダで導電性粒子(カーボン、不活性金属、金属酸化物など)を結着したものをカソードとして用いることで、毛細管現象及び表面の親水化等により水を効果的に吸い上げて、微細孔内部に水/空気の接触界面を形成させて、空気中の酸素と水とを効率良く接触させて酸素の還元反応を促進することができる。カソードとして用いることができる電極基材としては、多孔質グラファイト、カーボンペーパー、グラファイトクロス、グラファイトフェルト、活性炭繊維、カーボンブラックの成型品、カーボンナノチューブの成型品、気相成長炭素繊維の成型品などを好ましく挙げることができる。
さらに、カソードに白金族元素、銀、遷移金属元素から選ばれる少なくとも一種類を含有する合金あるいは化合物からなる触媒を担持させることが好ましく、空気中の酸素の還元反応(電極反応)を促進できる。白金族元素とは白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)またはイリジウム(Ir)を指し、いずれも電極触媒として有効である。また、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、チタン酸化物をドープした銀粉末を担持したもの、ファーネスブラック又はコロイド状グラファイトに銀を担持したもの、鉄(Fe)、コバルト(Co)、フタロシアニン、ヘミン、ペロブスカイト、Mn4N、金属ポルフィリン、MnO2、バナジン酸塩、またはY2O3-ZrO2複合酸化物を用いたものについても電極触媒として好ましく用いることができる。
本発明で用いる生物発電装置において、アノードとカソードとは電気的に接続されて閉回路を形成する。その一方で、可溶化有機性物質の還元能を無駄なく電気エネルギーとして取り出すためには、可溶化有機性物質が酸化剤(被還元物質)、即ち空気中の酸素と接触して還元能を消費させないように、可溶化有機性物質と空気中の酸素が接触しないように両者を隔離する必要がある。これらの条件を同時に満たすためには、カソードと電極活性な微生物及び可溶化有機性物質を含む溶液又は懸濁液とを隔膜、例えば固体高分子電解質膜で隔てることが望ましい。このような構造をとることにより、カソードは空気中の酸素と容易に接触することができ、また隔膜中に存在する水を介して水素イオンの受給または水酸化物イオンの排出を行うことができる。また、隔膜はできるだけ空気中の酸素を透過させないものがよい。
このような隔膜としては、親水性があり高い陽イオン交換能を有するスルホン酸基を有するフッ素樹脂系イオン交換膜(陽イオン交換膜)や、第4級アンモニウム塩を有する水酸化物イオン交換膜(陰イオン交換膜)などが好ましく用いられる。また、より安価な隔膜として主鎖部のみをフッ素化したフッ素樹脂系イオン交換膜や、芳香族炭化水素系膜も利用できる。このようなイオン交換膜としては、例えばIONICS製NEPTON CR61AZL-389、トクヤマ製NEOSEPTA CM-1または同CMB、旭硝子製Selemion CSV、IONICS製NEPTON AR103PZL、トクヤマ製NEOSEPTA AHA、旭硝子製Selemion ASVなどの市販製品を好ましく用いることができる。陽イオン交換膜は、カソードでの酸素の還元に必要な水素イオン及び水をアノードからカソードへ供給するために用いることができ、陰イオン交換膜は、水と酸素との反応から発生した水酸化物イオンをカソードからアノードへと供給するために用いることができる。
また、嫌気性域と好気性域とを隔離するために用いる隔膜としては、陰イオン交換膜を用いることもできる。具体的には、アンモニウムヒドロキシド基を有するヒドロキシドイオン交換膜を好ましく挙げることができる。このような陰イオン交換膜としては、例えば、IONICS製NEPTON AR103PZL-389、トクヤマ製NEOSEPTA ALE、旭硝子製Selemion ASVなどの市販製品を好ましく用いることができる。この場合、嫌気性域に存在する有機酸などの陰イオン性の有機性物質が隔膜を透過して好気性域に至る(いわゆるクロスフローの現象)と、そこで酸素の消費が行われて有機物が無駄に酸化されるとともに好気性域において好気性の微生物が増殖してカソードを汚染することになるので、用いる陰イオン交換膜は分子篩い効果を持ち、酢酸などの分子量60以上の陰イオンを透過しにくい性質を持っていることが望ましい。このような性質を持つ陰イオン交換膜としては例えばアストム製ネオセプタALE04-4 A-0006膜がある。
さらに、本発明で用いる生物発電装置に設けることができる隔膜としては、官能基を有しないMF(マイクロフィルタ)、UF(ウルトラフィルタ)膜やセラミック、焼結ガラスなどの多孔質濾材、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン製の織布等を用いることができる。これらの官能基を有しない隔膜は、孔径が5μm以下で、非加圧条件でガスを透過しないものが好ましく、例えば、Schweiz Seidengazefabrik製のPE-10膜、Flon Industry製のNY1-HD膜などの市販品を好ましく用いることができる。
本発明で用いる生物発電装置は、嫌気性域内の可溶化被処理液のpHを制御する機構を具備することが好ましい。このようなpH制御機構としては、可溶化被処理液のpHを測定するpH計と、pH計による測定結果に基づいてアルカリ性薬剤の供給を制御する制御機構と、アルカリ性薬剤を貯留するアルカリ性薬剤貯留槽と、を含む一般的なpH制御機構を使用することができる。嫌気性域内での可溶化被処理液のpHの低下を抑制することによって、アノードでの還元型メディエータの酸化反応速度の低下を防ぎ、連続運転においても大きな電流密度を得ることができる。嫌気性域内のpHは10.5〜6.5の範囲に、より好ましくは9.5〜6.5の範囲に、最も好ましくは9.0〜7.5の範囲に維持されることが好ましい。pHを上記範囲内に維持するようにpHの低下を抑制することによって、アノードでの酸化反応速度が低下することを阻止することができる。また、微生物が有する酵素は中性付近が至適pHとなることが多く、アルカリ性が強すぎると微生物の還元反応が阻害されるおそれがある。本発明の処理装置において、生物発電装置の嫌気性域内のpH制御に用いることができるアルカリ性物質としては、水溶液がアルカリ性を示す物質であればよいが、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、及びそれらの水酸化物、強塩基−弱酸からなる塩類、アンモニア等を好ましく挙げることができる。また、水溶液のpHとしては中性〜弱アルカリ性を示すが、水溶液が緩衝作用を有するアルカリ度が強い物質も用いることができる。例としては、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩などを好ましく挙げることができる。また、アルカリ性物質として用いる際には、上記に示した物質を2種類以上同時に添加してもよい。
また、本発明の処理装置においては、生物発電槽からの処理水をさらに処理する好気性微生物処理槽を設けてもよい。また、好気性微生物処理槽からの余剰汚泥を回収して、可溶化槽に返送する機構を設けてもよい。この場合には、好気性微生物処理槽から排出される余剰汚泥の全量または一部を可溶化工程に返送することにより、余剰汚泥中の難分解性有機物を可溶化し、生物発電装置の嫌気性反応槽における微生物反応の基質として分解処理することで、余剰汚泥の減量化を達成することもできる。
さらに、生物発電装置の処理水を受け入れる他の後処理設備、例えば凝集沈殿、活性炭濾過、脱リン、脱窒、脱硫等の処理設備を設けてもよい。
また、可溶化槽と生物発電装置との間に、可溶化被処理液中の有機性物質をさらに低分子化処理する低分子化槽を設けてもよい。
本発明によれば、生物発電装置に供給する廃水、廃液、し尿、食品廃棄物、汚泥などの有機性固形汚濁物質含有廃棄物を予め可溶化処理することによって、生物発電装置における酸化還元反応の効率を固め、簡易且つ効率的に有機性固形汚濁物質含有廃棄物の浄化処理を行いながら電気エネルギーを取り出すことができる。有機性固形汚濁物質含有廃棄物として水処理設備の好気性微生物処理槽からの余剰汚泥を使用する場合には、難分解性有機物を多量に含む余剰汚泥の減量化にも資することができる。
発明の実施の形態
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、本発明の有機性固形汚濁物質含有廃棄物の処理装置のフロー図である。図1において、本発明の処理装置は、可溶化槽3と、隔膜5cによって画定された嫌気性域5a及び好気性域5bを具備する生物発電装置5と、を含む。可溶化槽3と生物発電装置5との間には、可溶化被処理液を生物発電装置5に供給するための配管4及びポンプが接続されている。生物発電装置5の嫌気性域5aにはpH調整用薬剤貯留槽7及びpH制御装置8からの配管がそれぞれ接続されている。可溶化槽3には、有機性固形汚濁物質含有廃棄物1を貯留する原水貯留槽2が配管及びポンプを介して接続されている。可溶化槽3は、ミルや石臼などの機械的粉砕装置、超音波照射装置、蒸煮装置、爆砕装置、水熱電気分解装置、加熱装置などの装置あるいは酸、アルカリ、オゾン、次亜塩素酸、過酸化水素などの化学物質供給機構を具備する容器でよい。
図2は生物発電装置5の具体例を示す。例えば、図2に示す生物発電装置の一具体例は、電子メディエータを固定化した生物発電用アノード51を含む嫌気性域54、隔膜(電解質膜)52、および多孔質カソード53を含む好気性域55が三重の筒状体をなすことによって構成されている。筒状体の最内隔空間形態である嫌気性域54には電極活性な微生物(嫌気性)を含む溶液又は懸濁液を予め入れておく。嫌気性域54には、可溶化槽3からの可溶化有機性物質(「基質」ともいう)を含む可溶化被処理液を流す。筒状体の最外隔空間形態である好気性域55には分子状酸素を含む空気を存在させる。好気性域55には、分子状酸素を供給する手段(図示せず)が設けられている。好気性域55内に配置されている多孔質カソード53は、カソードの少なくとも一部が、構造体内に空隙を有する導電性の多孔質材料、網状又は繊維状材料によって形成されている。嫌気性域54と好気性域55とを隔離する隔膜52は、物質交換係数が大きな隔膜、たとえばDuPont社製のNafion(登録商標)、アストム社製ネオセプタ(登録商標)などの固体高分子電解質膜で構成されている。
嫌気性域54内では、可溶化有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応が進行し、好気性域55内では、酸素を電子受容体とする還元反応が進行する。こうして、アノード51とカソード53の間に電位差が生じる。この状態でアノード51とカソード53とを導線56によって電力利用機器に電気的に接続することにより電位差電流が流れ、一方、電解質膜52を介して嫌気性域54と好気性域55の間でイオンが移動することにより、閉回路が形成される。反応が進行するにつれて、嫌気性域54には水素イオンが発生し、嫌気性域の水溶液は酸性を呈する。一方、好気性域55には水酸化物イオンが発生して好気性域55内に発生する水はアルカリ性溶液となる。
発電ユニットを構成する筒状体の内径は、基質の流動性に応じ、数mmから数cm、場合によっては数十cmに設定することができる。図2に示すような発電ユニットは、適当な材料の支持層またはケーシングで保持することによりその物理的強度を増すことができる。この場合、筒状体を更に外殻で被包して外殻と筒状体との間の空間を空気室とし、空気室に空気を供給及び排出する手段を形成するようにしてもよい。
図2に示した実施形態においては、アノード51、隔膜52及びカソード53を円筒形とする3層構造を採用し、隔膜52を介してアノード51とカソード53とを配置している。このような構成とすることによって、アノード51及びカソード53の表面積を大きくし、アノード51が基質と効率良く接触して基質の動かないデッドゾーンをできるだけ小さくすることができるので、アノード51とカソード53との間でイオン交換が効率良く行われると同時に、アノード51とカソード53は電気的に絶縁され、可溶化有機性物質(基質)の電子が効率良くアノード51に受け渡されることになる。また、多孔質カソード53の空隙中に空気と水との接触界面を存在させた状態で空気と接触させることにより、空気中の酸素および水面の水に接触する効率を高めることができ、電極上での酸素の還元反応を効率良く進行させることができる。
図2に示すような三層筒状体の生物発電装置においては、用途に応じてアノードを含む嫌気性域を外側に、カソードを含む好気性域を内側に配置し、好気性域に空気を流通させる手段を配して該装置を基質液中に設置することで、発電運転を行うこともできる。また、この場合、筒状体を例えばU字型に形成し、両端を基質液の液面から出して、筒内部の空間に空気が流通できるようにしてもよい。このように好気性域を内筒とする構成の場合には、好気性域の内筒の内径を数mm程度またはそれ以下に小さくしても閉塞の生じる心配がない点が有利である。更に、三層筒状体において、内側の筒状体を多孔質カソードを含む好気性域、外側の筒状体をアノードを含む嫌気性域とすると、カソードに比較して外側のアノードの表面積を大きくすることができるので有利である。さらにアノードの表面積を広くするため、アノードの表面に凹凸や襞をもたせることも可能である。一方、カソード側の内径は、反応効率も関係するが、空気が容易に流通するだけの径があれば良く、閉塞の危険性がほとんどないため、内径を数mm程度またはそれ以下まで小さくすることが可能である。この場合、筒状体を更に外殻で被包して筒状体の外側空間を基質の流れる微生物反応室とし、微生物反応室に基質を供給及び排出する手段を配置することによって装置を構成することができる。
また、図2に示すような筒状形態又は他の形態の生物発電ユニットを複数個並べて、生物発電装置を構成することもできる。例えば、図3には、図2の生物発電ユニットを複数個並べた形態を示し、図7には平板状の生物発電ユニット(実験用生物発電装置)の形態を示す。
図3に示す生物発電装置においては、図2に示すようなアノード51の内筒、隔膜52及びカソード53の外筒から構成される三層筒状体(発電ユニット)が複数本、外殻によって形成される空気室57の中に配置されている。基質は、流入ポンプにより流入部59を介して複数配置された発電ユニットの内部54へ分配注入される。ここで酸化分解を受けた基質は、流出部60を介して反応容器の外へ出た後、処理液6として系外へ排出される。反応容器内に蓄積した微生物菌体及び汚泥は、経時的に余剰汚泥排出口63を開くことにより排出される。また、同じく排出口63より、水、不活性ガス、嫌気ガスを注入することにより反応容器内を逆洗、空洗することができる。反応容器内で嫌気性ガスが発生した場合は、排気口69から排出することができる。この嫌気性ガスを貯留して空洗に使用してもよい。
一方、多孔質カソード53に酸素を供給するため、ブロワを用いて空気導入口64から空気室57へ通気を行うことができる。ただし用途に応じて強制換気が必要でない場合には、空気室57を取り外して、各発電ユニットの外筒であるカソード53が外気に触れるように装置を構成してもよい。通気された空気は、空気室57内の発電ユニットの間の空間55を流れ、カソード53と接触した後に、排気口65から排出される。また、カソード53での還元反応により生成した水は、水蒸気として排気口65から排出されるか、凝縮水として凝縮水ドレイン66から排出される。
導線56は、アノードとの接続部67により複数の発電ユニットの内筒に、またカソード53との接続部68により複数の発電ユニットの外筒に電気的に接続される。この際、導線56は、周囲の環境と電気的に絶縁し、電気的短絡及び導線表面での酸化還元反応が起こらないようにすることが必要である。
なお、図3に示す装置についても、図2に関して上記に説明したのと同様に、カソードを内筒、アノードを外筒として各発電ユニットの筒状体を構成し、各筒状体内部空間へ空気を供給し、発電ユニットの筒状体の外側のアノードに基質を接触させるようにすることもできる。
カソードについては、いかに効率良く電極上での酸素の還元反応を進行させるかが課題となる。このためには、カソードの少なくとも一部を、構造体内に空隙を有する導電性の多孔質材料、網状又は繊維状材料によって形成して、このカソードの空隙中に空気と水との接触界面を存在させた状態で空気と接触させることにより、空気中の酸素および水面の水に接触する効率を高めることが好ましい。
図4に生物発電装置において採用することのできるカソードの構造の一例を断面図で示す。図4(A)は、隔膜52及びカソード53の構造の断面を示したものであり、図4(B)は、図4(A)を空気室側55から見た図である。また、図4では、隔膜52が陽イオン交換膜である場合の反応系を示す。図4に示すカソードは、多孔質のマトリックス20に、好ましくは白金族元素、銀、遷移金属元素から選ばれる少なくとも一種類を含有する合金あるいは化合物からなる触媒21を担持する構造を有し(図4(A))、空気室側55から見た場合網目状の構造を呈している(図4(B))。このような構成を取ることにより、カソード53が、水面または隔膜を経由する水を基材の親水性によって吸い上げつつ空気中の酸素と接触することができ、電極のミクロな構造中に空気ネットワーク22と水溶液ネットワーク23を持つことによって空気/水接触界面の面積を増大させ、空気中の酸素および水面の水に接触する効率を高めることができる。酸素と水素イオンが触媒21上で反応することにより、空気中の酸素の還元反応を促進することができる。
図4(C)に、生物発電装置において採用することのできるカソード構造の別の一例を示す。図4(C)においても、隔膜52が陽イオン交換膜である場合の反応系を示す。図4(C)に示すカソードは、隔膜52と同じ材料からなる溶液を、多孔質のマトリックス20の隔膜52との接合面側に塗布して乾燥させることによって、隔膜構造体の一部を多孔質マトリックス20の微細孔内部に浸入させたものである。このような構成を取ることにより、イオン交換および触媒の利用率を向上させ、空気中の酸素の還元反応を促進することができる。
次に、図1に示す処理装置での有機性固形汚濁物質含有廃棄物の処理方法を説明する。図1の処理装置では、有機性固形汚濁物質含有廃棄物1を原水貯留槽2に貯留しておき、送液ポンプを作動させて、有機性固形汚濁物質含有廃棄物1を可溶化槽3に送液する。可溶化槽3で、石臼やミルなどの機械的粉砕又は超音波粉砕による機械的可溶化処理、蒸煮又は爆砕による物理的可溶化処理、水熱電気分解による可溶化処理、酸、アルカリ、オゾン、次亜塩素酸、過酸化水素などの化学物質による可溶化処理のいずれかにより、有機性固形汚濁物質含有廃棄物1は可溶化有機性物質を含む可溶化被処理液に変換される。
次いで、可溶化処理液を送液ポンプによって生物発電装置5の嫌気性域5aに供給する。一方、生物発電装置5の好気性域5bには、相対湿度を100%に加湿した酸素又は酸素を含む空気を供給する。このとき、酸素又は酸素を含む空気をポンプやファンを用いて生物発電装置5の好気性域5bに流通させてもよく、あるいは熱対流を利用して流通させてもよい。
pH制御装置8によって測定された生物発電装置5の嫌気性域5a内の可溶化被処理液のpHに基づいて、pH調整用薬剤溶液貯留槽7からpH調整薬剤(酸、アルカリ、又はpH緩衝液)が生物発電装置5の嫌気性域5aに供給され、生物発電装置5の嫌気性域5a内液のpHを10.5〜6.5の範囲に維持する。嫌気性域5a内の可溶化被処理液の温度は、電極活性な微生物の活性を維持する温度、例えば10℃〜45℃に維持する。この条件にて、可溶化被処理液を嫌気性域5a内に24〜240の滞留時間で通液する。
その後、生物発電装置5の嫌気性域5aの排出口から処理液6を排出する。この処理液6は必要に応じて、種々の後処理(例えば、凝集沈殿、活性炭濾過、好気性微生物処理、脱リン、脱窒、脱硫等の処理)に供してもよい。
図5は、本発明の処理装置の別の実施形態を示すフロー図である。図1の処理装置と重複する構成の説明は省略する。
図5に示す処理装置は、可溶化槽3と生物発電装置5との間に、低分子化槽11をさらに具備する。低分子化槽11は、pH制御装置8a及び生物発電装置5の好気性域5bからアルカリ性溶液を回収して低分子化槽11に循環させる配管を含むpH制御機構を有する。好適には、好気性域5bに水供給用配管(図示せず)が接続されており、好気性域5b内で生成するアルカリ性溶液をアルカリ性溶液貯留槽10に溢流させて回収し、pH制御装置8aの低分子化槽11内の可溶化被処理液のpH測定信号による制御によってアルカリ性溶液貯留槽10から低分子化槽11へアルカリ性溶液を循環させる配管を具備し、pH調整薬剤貯留槽7は生物発電装置5の嫌気性域5aにのみアルカリ性溶液を供給するように構成されている。
図6は本発明の処理装置のまた別の実施形態を示すフロー図である。図1の処理装置と重複する構成の説明は省略する。
図6に示す処理装置は、生物発電装置5からの処理水6を受け入れて曝気処理する曝気槽12、曝気槽12で曝気処理された処理水を受け入れて二次処理水14と汚泥15とに固液分離する沈殿槽13と、沈殿槽13で沈殿した余剰汚泥15の一部を曝気槽12に循環させる配管16と、余剰汚泥15の一部を可溶化槽3に循環させる配管17と、を具備する。沈殿槽13で処理された二次処理水14及び余剰汚泥15は排出される。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこの実施例により制限されるものではない。
[実施例1](熱処理)
図7に示す実験用の生物発電装置5を用い、図1に示す本発明の処理装置(生物発電装置5の前段に可溶化槽3を導入した)による有機性固形汚濁物質含有廃棄物の処理(実施例1)と、図7に示す実験用の生物発電装置5のみによる有機性固形汚濁物質含有廃棄物の処理(対照)とにおける水処理・発電性能を比較した。
<生物発電装置>
生物発電装置5は、図7に示すように、嫌気性域となるアノード区画用の1辺の長さ200mm(内寸180mm)、厚さ50mm(内寸40mm)のセルフレーム37と、好気性域となるカソード区画用の1辺の長さ200mm、厚さ20mmのセルフレーム38とを隣接配置して積層構造体(発電ユニット)とした。セルフレーム38内部には、燃料電池用の空気極として一般的に用いられるカラム状の気体の流路が刻まれている。セルフレーム37とセルフレーム38との積層構造体内部に、アノード51、隔膜52及びカソード53を燃料電池において一般的に行われるホットプレス法(100℃〜200℃に加温しながら加圧)を用いて順に接着させ、セルフレーム37内部に嫌気性域5aを形成し、セルフレーム38内部に好気性域5bを形成した。また、図示していないが、アノード51及びカソード53を導線により電気的に接続して、電流量計(電力利用機器)を介して閉回路を形成した。
図7に示す生物発電装置の電流量計を含めた外部回路の抵抗は約1Ωであり、内部抵抗は50Ω程度であった。嫌気性域5aには、運転開始前に電極活性な微生物の集積培養体20mLを添加した。
以下、本実施例で用いたアノード、隔膜及びカソードを説明する。
<アノード>
アノード基材としてカーボンペーパー(Electrochem社EC-TP1-060)を用い、アノード基材に固定化する電子メディエータとしてアントラキノン-2,6-ジスルホン酸(AQ-2,6-DS)を用いた。
市販のAQ-2,6-DSをAQ-2,6-DSに対して1/2モルに相当する量のスルホランとオキシ塩化リンとを含むアセトニトリル溶液中70℃条件下で1時間反応させ、スルホン酸基を酸クロリド化した。これを氷冷しながら濾過して氷水で洗浄後乾燥させ、AQ-2,6-DSクロリドの粉末を得た。
一方、市販のVulcan XC-72R(Cabot)カーボンブラック10gに対して、スルファニル酸と亜硝酸塩10mmolを作用させ、ジアゾカップリング反応によってカーボンブラックへスルホン酸基を導入した。導入したスルホン酸基は、オキサリルクロリドを使用してスルホニルクロリドにした。さらにTHF(テトラヒドロフラン)溶媒中において1,3-プロパンジアミンを作用させ、カーボンブラック表面へアミノ基を導入した。得られたアミノ化カーボンブラックのアミノ基の導入密度を滴定によって求めたところ、500μmol/gであった。
得られたアミノ化カーボンブラック20g、上述したAQ-2,6-DSクロリド100mmol及び、トリエチルアミン8mLをDMF(ジメチルフォルムアミド)溶媒中において50℃で24時間反応させ、乾燥させた。これをNafion(登録商標)5%イソプロパノール溶液へ分散させ、カーボンペーパー(Electrochem社EC-TP1-060)へ塗布し、乾燥させた。
上記AQ-2,6-DS固定化アノードを用い、pH7の水溶液中において印加電位を-0.20V〜-0.15V(水素標準電極電位)まで20mV/秒の速度でシフトすることによって電流が生じたことから、該アノードの標準電極電位E0’は-0.20V〜-0.15Vの間にあるといえる。
<隔膜>
隔膜52として、陽イオン交換膜(Dupont製Nafion115:Dupont社登録商標)を使用した。
<カソード>
カソード53は、白金を担持したカーボンブラックとNafion(Dupont社登録商標)5%イソプロパノール液のスラリーをカーボンペーパー(Electrochem社EC-TP1-060)へ塗布し、乾燥させた触媒担持カーボンペーパー53aと、コレクター53bとの組み合わせとした。
<有機性固形汚濁物質含有廃棄物>
本実施例で有機性固形汚濁物質含有廃棄物として、下水処理場から採取した余剰汚泥を用いた。
<電極活性な微生物集積培養体>
クロボク土0.1gを植種源とし、130mL容のバイアル瓶にHandbook of Microbial Media (Atlasら1997, CRC Press)に記載されているDesulfuromonas培地(表-3)を100mL注入して、気相を窒素ガス置換したものに添加し、密閉して、28℃の温度条件下で振とう培養し、2週間後に菌液5mLを新しく調製したバイアル瓶に植え継ぐという操作を5回繰り返し、10週間後に得られた菌液を電極活性な微生物集積培養体とした。なお、植種元である土壌は特にクロボク土に限定するものではなく、ローム土やシルトであってもよい。
<処理試験>
実験系では、有機性固形汚濁物質含有廃棄物としての汚泥を可溶化槽3内で150℃、30分間の熱処理で可溶化した後、図7に示す生物発電装置5の嫌気性域5aに供給した。対照系では余剰汚泥をそのまま図7に示す生物発電装置5の嫌気性域5aに供給した。
生物発電装置5においては、運転開始から10日間は、微生物が嫌気性域(微生物反応室)内に付着するのを待つため通液を行わず、Handbook of Microbial Media (Atlasら1997, CRC Press)に記載されているDesulfuromonas培地(表-3)を嫌気性域5a(微生物反応室)側に充填して硫黄還元菌(電極活性な微生物)の優占化を促し(馴化期間)、運転の準備をしておいた。
可溶化槽3から可溶化被処理液を生物発電槽5の嫌気性域5aに送液した直後の10日間は、生物発電装置5での可溶化被処理液の滞留時間を30日間として生物発電装置の運転を行った(馴養期間)。生物発電装置運転開始60日後より嫌気性域5a内での低分子化被処理液の滞留時間を15日間とする通常運転にして、アノード、カソード間の電流量及び電圧を測定した。
本実施例では、馴化及び馴養期間中を含めて、常にカソード・アノード間は電気的に接続した状態とした。
実験系と対照系の生物発電装置流入液の固形物(TSS)濃度、揮発性固形物(VSS)濃度、全CODcr(T-CODcr)濃度、遠心分離(10000rpm、15分間)上澄液CODcr(S-CODcr)濃度(JIS K0102工業排水試験法1998準拠)及び、ろ液の有機酸濃度をHPLC(SHIMADZU)を用いて測定した結果を表-4に記す。
生物発電装置に可溶化被処理液(実験系)及び有機性固形汚泥物質含有廃棄物としての汚泥(対照系)を供給し、pH7.0程度に調整した嫌気性域5aを通過させた後、処理液排出口を通して処理液6を排出させた。好気性域5bでは、空気導入口64より相対湿度が100%になるよう調整した加湿空気を通気し、好気性域5bを通過させた後、排出口66より排気させた。好気性域5bにおいて発生した余剰のアルカリ性水溶液は、経時的に少量の水を通水して洗い落として回収した。
本装置の有効容積は、嫌気性域5a(微生物反応室)は1500mL、好気性域5b(空気反応室)は500mLであり、被処理液の滞留時間は15日間、空気の滞留時間は1分間となるように供給速度を調整した。電極の総表面積は、アノード、カソードともに300cm2とした。実験は30℃の恒温槽の中で行った。
実験系、対照系共に運転開始から約30日間(滞留時間の2倍程度)は電流密度および電圧が徐々に変化したが、実験系では電流密度3.5A/m2程度、電圧は0.5V程度で安定した。一方、対照系では電流密度は約1.2A/m2、電圧は0.3V程度で安定した。結果を表-5に示す。
[実施例2](機械的処理)
実施例1と同様に図7に示す実験用の発電装置を用い、図2に示す処理装置(生物発電装置5の前段に可溶化槽3及び低分子化槽11を設けた)を用いて処理した場合(実験系2)と、可溶化槽3を除いた図2に示す処理装置で処理した場合(対照系2)の水処理・発電性能を比較した。
<有機性固形汚濁物質含有廃棄物>
有機性固形汚濁物質含有廃棄物としてコーヒー粕を用いた。
実験系では、可溶化槽3においてコーヒー粕を石臼を用いて平均粒子径300μmに粉砕処理した。次いで、得られた粉砕物10gを水道水1Lに懸濁させてジャーファメンター(低分子化槽11)に投入し、生ごみを処理する2相式メタン発酵装置の酸発酵槽から採取した汚泥を植菌し、pH5.0〜6.0にて35℃、48時間にわたり、撹拌速度50rpmで低分子化した。対照系では、コーヒー粕10gを粉砕処理せずにそのまま水道水1Lに懸濁させた点を除いて、実験系と同様に低分子化処理して用いた。
実験系と対照系の生物発電装置流入液の固形物(SS)濃度、揮発性固形物(VSS)濃度、全CODcr(T-CODcr)濃度、遠心分離(10000rpm、15分間)上澄液CODcr(S-CODcr)濃度及び、濾液の有機酸濃度をHPLC(SHIMADZU)を用いて測定した結果を表-6に記す。
表-6より、可溶化処理を行った実験系1では、対照系1と比較して、上澄み液中のCODcr及び濾液中の有機酸の量が増加していることが分かる。このことから、可溶化処理により有機性固形汚濁物質が液体に分散もしくは溶解しやすくなったといえる。
生物発電装置に可溶化被処理液(実験系1)及び可溶化処理を行わなかった有機性固形汚泥物質含有廃棄物(対照系1)を供給し、pH7.0程度に調整した嫌気性域5aを通過させた後、処理液排出口を通して処理液6を排出させた。好気性域5bでは、空気導入口64より相対湿度が100%になるよう調整した加湿空気を通気し、好気性域5bを通過させた後、排出口66より排気させた。好気性域5bにおいて発生した余剰のアルカリ性水溶液は、経時的に少量の水を通水して洗い落として回収した。
本装置の有効容積は、嫌気性域5a(微生物反応室)は1500mL、好気性域5b(空気反応室)は500mLであり、被処理液の滞留時間は40日間、空気の滞留時間は1分間となるように供給速度を調整した。電極の総表面積は、アノード、カソードともに300cm2とした。実験は30℃の恒温槽の中で行った。
実験系、対照系共に運転開始から約20日間(滞留時間の2倍程度)は電流密度および電圧が徐々に変化したが、実験系では運転開始後約20日後以降、電流密度2.2A/m2程度、電圧は0.5V程度で安定した。一方、対照系では電流密度は約1.2A/m2、電圧は0.2V程度で安定した。結果を表-7に示す。
以上の結果より、本発明の処理方法は、水処理性能及び発電性能共に優れていることがわかる。
本発明の処理方法及び処理装置は、有機性固形汚濁物質含有廃棄物の環境負荷を低減させる廃液処理を効率的に行うと同時に電気エネルギーを発生させることができる。
図1は、本発明の固形汚濁物質含有廃棄物処理装置の構成の一実施形態を示すフロー図である。
図2は、本発明の固形汚濁物質含有廃棄物処理装置の生物発電装置の基本構成を示す概念図である。
図3は、図2の生物発電装置をユニットとして構成した生物発電装置の概念図である。
図4は、生物発電装置のカソード構造の一例を示す断面図である。
図5は、本発明の有機性固形汚濁物質含有廃棄物処理装置の構成の別の実施形態を示すフロー図である。
図6は、本発明の有機性固形汚濁物質含有廃棄物処理装置の構成の別の実施形態を示すフロー図である。
図7は、実施例で使用した実験用生物発電装置の概念図である。
符号の説明
1 有機性固形汚濁物質含有廃棄物
2 原水貯留槽
3 可溶化槽
4 可溶化被処理液(可溶化有機性物質)供給配管
5 生物発電装置
5a 嫌気性域
5b 好気性域
5c 隔膜
6 処理液
7 pH調整用薬剤溶液貯留槽
8、8a pH制御装置
10 アルカリ溶液回収槽
11 低分子化槽
12 曝気槽
13 沈殿槽
51 アノード(電子メディエータ固定化電極基材)
52 隔膜
53 カソード
53a 触媒担持カーボンペーパー
53b コレクター
54 嫌気性域(微生物室)
55 好気性域(空気室)
64 空気導入口
66 凝縮水ドレイン