JP2004000837A - 有機性廃棄物の嫌気性処理方法及び処理システム - Google Patents
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Abstract
【課題】有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法であって、高いガス化率の得られる最適な方法を提供し、発酵残渣を低減し、転換メタンガスの硫化水素含有量を低減し、発電工程にそのまま利用可能で該工程廃熱を利用した効率のよい有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法を提供すること。
【解決手段】流入廃棄物若しくはその処理物を濃縮する工程と、該工程濃縮物を可溶化する可溶化工程と該工程可溶化物を嫌気性発酵してメタンガスを発生させる嫌気性発酵工程とを有してなる有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法であって、前記濃縮工程における濃縮後の固形物濃度を5%〜20%とし、前記可溶化工程は60℃〜90℃の温度で行う嫌気性熱処理とすることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】流入廃棄物若しくはその処理物を濃縮する工程と、該工程濃縮物を可溶化する可溶化工程と該工程可溶化物を嫌気性発酵してメタンガスを発生させる嫌気性発酵工程とを有してなる有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法であって、前記濃縮工程における濃縮後の固形物濃度を5%〜20%とし、前記可溶化工程は60℃〜90℃の温度で行う嫌気性熱処理とすることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術の分野】
本発明は有機性汚泥、厨芥などの高濃度有機性廃棄物の嫌気性処理技術に係り、特にガス化率を高めた、硫化水素発生の少ない、有機性廃棄物の嫌気性処理方法及び処理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、有機性汚泥、厨芥などの有機性廃棄物および、有機性廃水の再資源化ニーズが高まっている。再資源化の手段として嫌気性発酵技術を用いてバイオガス(主としてメタンガス)に転換してエネルギ回収することが行われているが、嫌気性発酵処理時間が長く且つ大きな処理空間が必要であった。この所謂嫌気性発酵処理の処理効率の悪さは、一つには、有機性固形物が高いままに、上向流性嫌気性汚泥処理装置や固定床式嫌気性汚泥処理装置を用いた処理工程に導入するときは、該固形物の物理的作用で工程が阻害され効率化が著しく低下した。更に、一つには、有機物の濃度自体が低く、徒に処理空間を要していたということがあった。
【0003】
このような状況下では所謂ガス化率(投入有機物に対する転換メタンガスの比率)が低く、自ずと発酵残渣(汚泥)が多く、更にこの残渣の処理問題が残される。また、転換されたメタンガスの品質において、硫化水素の含有量が多くそのまま例えば発電用燃料として用いられず、脱硫する必要があった。また、発生する硫化水素は、嫌気性発酵の反応を阻害するという問題もある。
【0004】
そこで、有機性固形物を含む有機性廃棄物を可溶化処理して固形物濃度を下げると同時に可溶性有機物の濃度を上げて嫌気性処理に付すことにより、嫌気性処理の効率を上げようとする試みは従来多くなされているが、未だ満足すべき技術は見出されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、流入廃棄物若しくはその処理物を濃縮する工程と、該工程濃縮物を可溶化する可溶化工程と該工程可溶化物を嫌気性発酵してメタンガスを発生させる嫌気性発酵工程とを有してなる有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法において、高いガス化率の得られる最適な方法を提供し、発酵残渣を低減し、転換メタンガスの硫化水素含有量を低減し、発電工程にそのまま利用可能で該工程廃熱を利用した効率のよい有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の有機性廃棄物の嫌気性処理方法は、流入廃棄物若しくはその処理物を濃縮する工程と、該工程濃縮物を可溶化する可溶化工程と該工程可溶化物を嫌気性発酵してメタンガスを発生させる嫌気性発酵工程とを有してなる有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法であって、前記濃縮工程における濃縮後の固形物濃度を5%〜20%とし、前記可溶化工程は60℃〜90℃の温度で行う嫌気性熱処理とすることを特徴とする。
【0007】
本発明は先ず適正な濃度を確保して、処理を施す事を前提とする。即ち前記した如く高濃度処理が経済性の原則であるが、極端な高濃度は廃棄物(廃液)の輸送など必要処理動力が急増し、特殊な処理機が必要となるなどで限界がある。本発明の対象とする有機固形物を含む有機性廃液では、5%に満たない濃度で処理する事は、空間容積当たりの実質廃棄物の処理量と生物反応を含めた反応速度の面から適当ではないことが解かった。そして、可溶化工程で固形物を液状化してメタン発酵が進行し易い原料系に変換するとき、固形物濃度を5%〜20%、嫌気性熱処理の温度を60℃〜90℃と、適切な条件に保つことで、有機性廃棄物中の増加した可溶化成分に対する硫酸イオンの比率が少ない原料系とすることができ、これを嫌気性メタン発酵すれば、メタン生成菌が増殖しやすく、その活性を高い状態で維持すること、且つ、硫酸還元菌が活発に活動することを抑制できるので、ガス発生率が高く、かつ、硫化水素の濃度の低い品質の高いメタンガスが得られる嫌気性発酵が可能なことを見出した。特にこの条件で嫌気性熱処理を行うと、廃棄固形物中の粗脂肪の可溶化成分への変化率が高く、硫酸濃度が低いので後工程のメタン発酵での脂肪、硫化水素による阻害効果を排除することや、このような条件で処理した可溶化物を原料系として嫌気性メタン発酵を行い、その発酵残渣を分析するとタンパク質成分が高いこと、また、メタン発酵槽中のメタン生成菌の活性が高いことが判明した。
即ち、60〜90℃の嫌気性熱処理による可溶化処理を施した有機性廃棄物中の窒素分や硫黄成分を含むタンパク質が分解された後、その窒素分や硫黄分の一部はメタン発酵の反応を担う微生物にとりこまれ、固定化されているということである。
また、硫化水素は、メタン発酵槽中の硫酸還元菌により、水素を利用して、水素と硫酸イオンもしくは有機酸(主として酢酸)と硫酸イオンから生成されるが、メタン生成菌は、水素と二酸化炭素あるいは酢酸を利用しメタンを生成することから、硫酸還元菌とメタン生成菌は競合関係にある。有機性廃棄物を可溶性成分の濃度に対し硫酸イオン濃度の割合が小さい状態にすること、および、阻害の効果のある脂肪を低濃度にすることにより、メタン生成菌を優先的に活性化させ、硫酸還元菌が活発な活動をしにくくし硫化水素の発生を抑制させていることがわかった。
これにより、100℃以上の高温処理による可溶化処理を行った有機性廃棄物、及び、可溶化処理を実施しない有機性廃棄物を嫌気性メタン発酵する系に比べ、60〜90℃の嫌気性熱処理による可溶化処理を施した有機性廃棄物を嫌気性メタン発酵する系は、アンモニア硫化水素、脂肪の阻害を受けにくいので、発酵が順調に進行し、ガス発生量が増加すること、さらに、硫化水素によるメタンガスの品質劣化を防いでいることも判明した。
【0008】
更に本発明の有機性廃棄物の嫌気性処理方法は、流入廃棄物を最初沈殿して初沈汚泥と廃水に分離し、該廃水を活性汚泥処理し、該処理水を最終沈殿して流出水と終沈汚泥に分離する活性汚泥処理工程を有し、該活性汚泥処理工程の初沈汚泥と終沈汚泥とを濃縮する工程と該工程濃縮物を可溶化する可溶化工程と該工程可溶化物を嫌気性発酵してメタンガスを発生させる嫌気性発酵工程とを有してなる有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法であって、前記濃縮工程における濃縮後の固形物濃度を5%〜20%とし、前記可溶化工程は60℃〜90℃の温度で行う嫌気性熱処理とすることを特徴とする。
【0009】
即ち、ここでは、廃棄物を活性汚泥処理工程に通して、その汚泥を濃縮・可溶化することを含む。
【0010】
更に本発明の有機性廃棄物の嫌気性処理方法は、流入廃棄物を最初沈殿して初沈汚泥と廃水に分離し、該廃水を活性汚泥処理し、該処理水を最終沈殿して流出水と終沈汚泥に分離する活性汚泥処理工程と、該活性汚泥処理工程の終沈汚泥を濃縮する第1の濃縮工程と、該工程濃縮物を可溶化する可溶化工程と、該初沈汚泥を別途濃縮して初沈汚泥濃縮物とする第2の濃縮工程と、該可溶化物と初沈汚泥濃縮物とを嫌気性発酵してメタンガスを発生させる嫌気性発酵工程とを有してなる有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法であって、前記濃縮工程における濃縮後の固形物濃度を5%〜20%とし、前記可溶化工程は60℃〜90℃の温度で行う嫌気性熱処理とすることを特徴とする。
【0011】
即ち、ここでも、廃棄物を活性汚泥処理工程に通して、その汚泥を濃縮・可溶化することを含む。
【0012】
更に本発明の有機性廃棄物の嫌気性処理方法は、前記可溶化工程の滞留時間を3日〜10日かけることを特徴とする。これも経験的知見であって、高温度で短時間より、3日〜10日の時間で完結する温度条件が適当である。
【0013】
更に本発明の有機性廃棄物の嫌気性処理方法は、前記嫌気性発酵工程の温度を30℃〜40℃で行うことが好ましい。
【0014】
更に本発明の有機性廃棄物の嫌気性処理方法は、前記嫌気性発酵工程により発生するメタンガスを燃料として稼働する発電工程を有し、該発電工程の廃熱を前記可溶化工程及び/若しくは嫌気性発酵工程の加熱源に利用することを特徴とする。これにより、省資源効果が一段と高まる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。但し本実施の形態に記載される製品の寸法、形状、材質、その相対配置等は特に特定的な記載がない限りは本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0016】
(実施例1)
図1は本発明の実施を試験した装置のフロー図である。不図示の装置で流入廃棄物を濃縮し固形分10%の高濃度有機性廃棄物21とし、これの一定量を高温嫌気性処理槽1に導入し各種温度・時間で嫌気性熱処理をし、可溶化の結果を測定する。該熱処理中に発生するメタンガスを主とする(バイオ)ガスは捕捉する。熱処理によって可溶化した熱処理後の有機性廃棄物を嫌気性メタン発酵槽2に導入して、36℃で720時間かけて嫌気性メタン発酵をし、本発明の主産出物であるメタンガスを主体とする(バイオ)ガスを捕捉し、前記熱処理工程で捕捉したガスと合体させて計量、分析する。嫌気性メタン発酵工程終了後、前記メタン醗酵槽2中の廃液及び発酵残渣を計量、分析する。
【0017】
表1に示した熱処理条件によって前記10%高濃度有機性廃棄物21を高温嫌気性処理槽1にて熱処理し、可溶化の度合いおよび、硫酸イオン濃度を調べた。(熱処理反応終了後の溶解性有機物のCOD)÷(投入有機物のCOD)の値を可溶化率とし、その値を求めた。また、参考値として可溶化率/硫酸イオンの比を求めた、可溶化率/硫酸イオンの比が大きく、且つ、可溶化率が大きい処理法が、メタン生成菌を優先的に増殖させ、硫酸還元菌の活性を抑制し、且つ、メタンガスの発生率も大きくなる原料となると考えた。
結果を表1に、また、可溶化率、硫酸イオン濃度と処理湿度の関係を図2に示した。
【0018】
【表1】
【0019】
硫酸イオンは100℃付近を越える処理では、生成速度が極端に早くなることがわかった。また、可溶化率は、100℃付近まではほぼ直線的に増加することがわかった。従って、処理速度は、可溶化率/硫酸イオンの比の値が大きく、可溶化率が高い、60℃から90℃がよいと考えられた。
また、1日間、及び5日間、80℃での嫌気性熱処理した高濃度有機性廃棄物、および、対照として170℃で1時間処理、無処理の高濃度有機性廃棄物の粗脂肪、粗繊維、粗タンパク質逃の分析結果を図3に示した。
特に80℃で7日間処理したものは、1日間処理したものおよび、170℃処理、無処理に比べ、メタン発酵の阻害効果要因とされる粗脂肪の分解率が高いことがわかる。また、処理時間を長くすることで、主にこの粗脂肪の分解が進行していることがわかった。
【0020】
次に、この熱処理条件で熱処理した処理物をそれぞれ前期条件(36℃/720時間)で嫌気性メタン発酵させる。そして、発酵後の発酵残渣を含む液相中のアンモニア濃度を測定する。また、発生ガスの硫化水素濃度を測定する。その結果を表2に掲げる。硫化水素濃度の測定値の熱処理条件における温度依存性を図4に示す。即ち、硫化水素の濃度は、熱処理条件60℃から90℃で、メタン発酵時に当該ガスの発生が最も低下することを見出した。この結果から、熱処理条件60℃から90℃の可溶化物では、可溶化率/硫酸イオンの比が大きいので、メタン生成菌が活動しやすく、逆に、硫酸還元菌の行う硫化水素の生成が抑制されるとともに、有機性廃棄物中の窒素、硫黄含有化合物が適当に固定されていて、順調に、メタン発酵が進行する特性をもっているものと考えられた。
【0021】
【表2】
【0022】
(実施例2)
図1のフロー図とと同様な装置にて、固形分濃度10%に濃縮した廃水処理汚泥を対象として、前熱処理条件として170℃/1時間、80℃1週間、無処理の3水準(運転番号#1、#2、#3)で連続メタン発酵試験を行った。運転番号#1、#2、#3の負荷を順次上昇させ、目標容積負荷3.0kg固形分/m3・日到達後2ヶ月間の試験を行った。前記実験(実施例1)同様に、熱処理にて脂質、蛋白質の可溶化が進んだ。また、メタン発酵槽内の汚泥を採取し、1週間おきに水素利用メタン生成活性、メタン生成活性を測定した。その値の試験期間中の平均値とその他の試験の結果を合わせて、表3に示す。ここでガス化率とは、(捕捉ガス重量/投入固形分重量)×100を言う。
【0023】
【表3】
【0024】
表3でガス化率に着眼すると、#2の80℃前処理汚泥のガスへの転換率が格段に高いことがわかる。また、硫化水素の発生は確認されなかった。即ち、80℃嫌気性生物処理を行い汚泥の脂肪分などを分解後にメタン発酵することで、ガス発生が増加し、発酵も安定化した。上澄み液のCOD値も少ないことから、有機酸の生成もほとんどなく、硫化水素も発生していない。これにより、ガスによる発電によるエネルギ回収量の増加、脱硫コストの低減が可能になる。
【0025】
更にメタン発酵汚泥の引き抜き汚泥の分析を行ったところ、表3下段の分解率を得た。また、メタン発酵残渣の組成を分析して、脱水汚泥100当たりの成分構成で図8に示した。ここでも、80℃の熱処理条件で発酵残渣が最も少なく、繊維の分解率が83%と極めて高かった。80℃の処理汚泥の発酵系で、170℃の処理汚泥の発酵系に比べ、蛋白質の分解率が低いのが目立つが、槽内で増殖した微生物に起因するものと考えられる。また、メタン生成活性に着目すると、80℃処理汚泥をメタン発酵した系が最も高いことがわかる。これは、発酵槽でメタン発酵の反応にかかわる微生物が増殖していることを裏付けている。また、メタン生成反応は、硫酸還元反応と競合することから、80℃処理汚泥をメタン発酵した系でこの値が最も高く、硫化水素が生成していないことは、先の論理を裏付けている。これにより硫化水素発生によるメタン発酵阻害が低減しガス化率の向上へ繋がった。
【0026】
(実施例3)
図5は本発明の一つの実施例におけるフロー図で、高濃度有機性廃棄物のメタン発酵工程を示す。不図示の濃縮工程で濃縮後の高濃度有機性廃棄物21は高温嫌気性処理槽1で熱処理されメタン発酵槽2に導入される。ここで廃棄物はメタン発酵しメタンガス22を発生する。メタンガス22は発電機4を稼働する燃料として利用され、電気エネルギが回収され、更にその廃熱23は前記高温嫌気性処理槽1での加熱源と、該メタン発酵槽2の加熱源に再利用される。メタン発酵槽2からの発酵残渣を含む液相は脱水機3で固液分離し、固相は発酵残渣24として、再度高温嫌気処理槽1に戻して残渣の低減を図り、残余26はコンポスト化、炭化などして再資源化を図る。液相は流出水25として廃棄放流する。
【0027】
本例では高濃度有機性廃棄物21が高温嫌気性処理槽1で可溶化され、微生物の利用し易い状態となり、メタン発酵槽2では大部分がバイオガスへと変換できる。バイオガス中の硫化水素濃度は低く、脱硫コストは小さくてすむ。このガスを発電に使用することにより、エネルギ回収を行うとともに、廃熱を高温嫌気性処理槽1およびメタン醗酵槽2に使用することにより、メタン発酵を使用した経済性の高い有機性廃棄物処理が可能となる。
【0028】
(実施例4)
図6は本発明の一つの実施例におけるフロー図で、廃水処理に適用した工程である。有機分を含む流入水27を最初沈殿池5に受ける。一部の固形分を沈殿させ、初沈汚泥30として分離する。沈降しなかった固形分、液相中の有機分は活性汚泥槽6で処理し、最終沈殿池7で沈殿させた終沈汚泥29は一部循環し残余31を引き抜き、初沈汚泥30とともに濃縮装置8にて濃縮し、脱水機9で最終的に固形分濃度を5%〜10%に調整する。それを高温生物処理槽11にて可溶化処理を施し、中温域(30〜40℃)に設定したメタン発酵槽2においてメタン発酵する。引き抜いたメタン発酵汚泥は脱水機3で脱水し、廃水28は最初沈殿池5に返送し、脱水汚泥32は前期同様再資源化する。
【0029】
本例では、初沈汚泥30、終沈汚泥29を高濃度にし、高温生物処理槽11で可溶化することにより、微生物の利用しやすい状態となり、メタン発酵槽2にて、大部分がバイオガスへと変換できる。バイオガス中の硫化水素濃度は低く、脱硫コストは小さくてすむ。このガスを発電に使用することにより、エネルギ回収を行うとともに、廃熱を高温生物処理槽11およびメタン醗酵槽2に使用することにより、メタン発酵を使用した経済性の高い有機性廃棄物処理が可能となる。
【0030】
(実施例5)
図7は本発明の一つの実施例におけるフロー図で、廃水処理に適用した工程の前記とは別の実施例を示す。実施例4と異なるのは、終沈汚泥を濃縮する濃縮工程とは別に、初沈汚泥を濃縮する第2の濃縮工程を設け、濃縮後可溶化された終沈汚泥可溶物と、初沈汚泥濃縮物とを合わせてメタン発酵させる点である。
図7において、有機分を含む流入水27を最初沈殿池5に受ける。一部の固形分を沈殿させ、初沈汚泥30として分離する。該初沈汚泥30は、第2の濃縮装置8aにて濃縮される。沈降しなかった固形分、液相中の有機分は活性汚泥槽6で処理し、最終沈殿池7で沈殿させた最沈汚泥29は一部循環し残余31を引き抜き、第1の濃縮装置8bにて濃縮し、脱水機3で更に脱水して固形分濃度を10%〜20%に調整する。それを高温生物処理槽11にて可溶化処理を施し、該高温生物処理槽11からの産出物を、濃縮された前記初沈汚泥30と合わせて中温域(30〜40℃)に設定したメタン発酵槽2においてメタン発酵する。引き抜いたメタン発酵汚泥は脱水機3で脱水し、排水28は最初沈殿池5に返送し、脱水汚泥32は前期同様再資源化する。
【0031】
ガス化率が低いといわれる、終沈汚泥のみを固形分10〜20%に濃縮して、高温生物処理槽で可溶化することにより脱水に必要な凝集剤が少なくてすみ、高温生物処理槽の加温に必要なエネルギも少なくてすむ。これにより、経済性の高いシステムとなる。
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により、高いガス化率が得られる最適な方法を提供し、発酵残渣を低減し、転換メタンガスの硫化水素含有量を低減し、発電工程にそのまま利用可能で該工程廃熱を利用した効率のよい有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施を試験した装置のフロー図
【図2】熱処理温度の可溶化変化率に及ぼす影響を示したグラフ
【図3】熱処理による有機性廃棄物の組成変化を示したグラフ
【図4】熱処理温度と嫌気性メタン発酵における硫化水素濃度との関係を示したグラフ
【図5】本発明の一つの実施例におけるフロー図
【図6】本発明の一つの実施例におけるフロー図
【図7】本発明の一つの実施例におけるフロー図
【図8】熱処理温度と嫌気性メタン発酵後の残渣の組成を示すグラフ
【符号の説明】
1 高温嫌気性処理槽
2 メタン発酵槽
3 脱水機
4 発電機
5 最初沈殿池
6 活性汚泥槽
7 最終沈殿池
8 濃縮装置
9 脱水機
11 高温生物処理槽
21 高濃度有機性廃棄物
22 メタンガス
23 廃熱
24 発酵残渣
25 流出水
27 流入水
28 廃水
29 終沈汚泥
【発明の属する技術の分野】
本発明は有機性汚泥、厨芥などの高濃度有機性廃棄物の嫌気性処理技術に係り、特にガス化率を高めた、硫化水素発生の少ない、有機性廃棄物の嫌気性処理方法及び処理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、有機性汚泥、厨芥などの有機性廃棄物および、有機性廃水の再資源化ニーズが高まっている。再資源化の手段として嫌気性発酵技術を用いてバイオガス(主としてメタンガス)に転換してエネルギ回収することが行われているが、嫌気性発酵処理時間が長く且つ大きな処理空間が必要であった。この所謂嫌気性発酵処理の処理効率の悪さは、一つには、有機性固形物が高いままに、上向流性嫌気性汚泥処理装置や固定床式嫌気性汚泥処理装置を用いた処理工程に導入するときは、該固形物の物理的作用で工程が阻害され効率化が著しく低下した。更に、一つには、有機物の濃度自体が低く、徒に処理空間を要していたということがあった。
【0003】
このような状況下では所謂ガス化率(投入有機物に対する転換メタンガスの比率)が低く、自ずと発酵残渣(汚泥)が多く、更にこの残渣の処理問題が残される。また、転換されたメタンガスの品質において、硫化水素の含有量が多くそのまま例えば発電用燃料として用いられず、脱硫する必要があった。また、発生する硫化水素は、嫌気性発酵の反応を阻害するという問題もある。
【0004】
そこで、有機性固形物を含む有機性廃棄物を可溶化処理して固形物濃度を下げると同時に可溶性有機物の濃度を上げて嫌気性処理に付すことにより、嫌気性処理の効率を上げようとする試みは従来多くなされているが、未だ満足すべき技術は見出されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、流入廃棄物若しくはその処理物を濃縮する工程と、該工程濃縮物を可溶化する可溶化工程と該工程可溶化物を嫌気性発酵してメタンガスを発生させる嫌気性発酵工程とを有してなる有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法において、高いガス化率の得られる最適な方法を提供し、発酵残渣を低減し、転換メタンガスの硫化水素含有量を低減し、発電工程にそのまま利用可能で該工程廃熱を利用した効率のよい有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の有機性廃棄物の嫌気性処理方法は、流入廃棄物若しくはその処理物を濃縮する工程と、該工程濃縮物を可溶化する可溶化工程と該工程可溶化物を嫌気性発酵してメタンガスを発生させる嫌気性発酵工程とを有してなる有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法であって、前記濃縮工程における濃縮後の固形物濃度を5%〜20%とし、前記可溶化工程は60℃〜90℃の温度で行う嫌気性熱処理とすることを特徴とする。
【0007】
本発明は先ず適正な濃度を確保して、処理を施す事を前提とする。即ち前記した如く高濃度処理が経済性の原則であるが、極端な高濃度は廃棄物(廃液)の輸送など必要処理動力が急増し、特殊な処理機が必要となるなどで限界がある。本発明の対象とする有機固形物を含む有機性廃液では、5%に満たない濃度で処理する事は、空間容積当たりの実質廃棄物の処理量と生物反応を含めた反応速度の面から適当ではないことが解かった。そして、可溶化工程で固形物を液状化してメタン発酵が進行し易い原料系に変換するとき、固形物濃度を5%〜20%、嫌気性熱処理の温度を60℃〜90℃と、適切な条件に保つことで、有機性廃棄物中の増加した可溶化成分に対する硫酸イオンの比率が少ない原料系とすることができ、これを嫌気性メタン発酵すれば、メタン生成菌が増殖しやすく、その活性を高い状態で維持すること、且つ、硫酸還元菌が活発に活動することを抑制できるので、ガス発生率が高く、かつ、硫化水素の濃度の低い品質の高いメタンガスが得られる嫌気性発酵が可能なことを見出した。特にこの条件で嫌気性熱処理を行うと、廃棄固形物中の粗脂肪の可溶化成分への変化率が高く、硫酸濃度が低いので後工程のメタン発酵での脂肪、硫化水素による阻害効果を排除することや、このような条件で処理した可溶化物を原料系として嫌気性メタン発酵を行い、その発酵残渣を分析するとタンパク質成分が高いこと、また、メタン発酵槽中のメタン生成菌の活性が高いことが判明した。
即ち、60〜90℃の嫌気性熱処理による可溶化処理を施した有機性廃棄物中の窒素分や硫黄成分を含むタンパク質が分解された後、その窒素分や硫黄分の一部はメタン発酵の反応を担う微生物にとりこまれ、固定化されているということである。
また、硫化水素は、メタン発酵槽中の硫酸還元菌により、水素を利用して、水素と硫酸イオンもしくは有機酸(主として酢酸)と硫酸イオンから生成されるが、メタン生成菌は、水素と二酸化炭素あるいは酢酸を利用しメタンを生成することから、硫酸還元菌とメタン生成菌は競合関係にある。有機性廃棄物を可溶性成分の濃度に対し硫酸イオン濃度の割合が小さい状態にすること、および、阻害の効果のある脂肪を低濃度にすることにより、メタン生成菌を優先的に活性化させ、硫酸還元菌が活発な活動をしにくくし硫化水素の発生を抑制させていることがわかった。
これにより、100℃以上の高温処理による可溶化処理を行った有機性廃棄物、及び、可溶化処理を実施しない有機性廃棄物を嫌気性メタン発酵する系に比べ、60〜90℃の嫌気性熱処理による可溶化処理を施した有機性廃棄物を嫌気性メタン発酵する系は、アンモニア硫化水素、脂肪の阻害を受けにくいので、発酵が順調に進行し、ガス発生量が増加すること、さらに、硫化水素によるメタンガスの品質劣化を防いでいることも判明した。
【0008】
更に本発明の有機性廃棄物の嫌気性処理方法は、流入廃棄物を最初沈殿して初沈汚泥と廃水に分離し、該廃水を活性汚泥処理し、該処理水を最終沈殿して流出水と終沈汚泥に分離する活性汚泥処理工程を有し、該活性汚泥処理工程の初沈汚泥と終沈汚泥とを濃縮する工程と該工程濃縮物を可溶化する可溶化工程と該工程可溶化物を嫌気性発酵してメタンガスを発生させる嫌気性発酵工程とを有してなる有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法であって、前記濃縮工程における濃縮後の固形物濃度を5%〜20%とし、前記可溶化工程は60℃〜90℃の温度で行う嫌気性熱処理とすることを特徴とする。
【0009】
即ち、ここでは、廃棄物を活性汚泥処理工程に通して、その汚泥を濃縮・可溶化することを含む。
【0010】
更に本発明の有機性廃棄物の嫌気性処理方法は、流入廃棄物を最初沈殿して初沈汚泥と廃水に分離し、該廃水を活性汚泥処理し、該処理水を最終沈殿して流出水と終沈汚泥に分離する活性汚泥処理工程と、該活性汚泥処理工程の終沈汚泥を濃縮する第1の濃縮工程と、該工程濃縮物を可溶化する可溶化工程と、該初沈汚泥を別途濃縮して初沈汚泥濃縮物とする第2の濃縮工程と、該可溶化物と初沈汚泥濃縮物とを嫌気性発酵してメタンガスを発生させる嫌気性発酵工程とを有してなる有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法であって、前記濃縮工程における濃縮後の固形物濃度を5%〜20%とし、前記可溶化工程は60℃〜90℃の温度で行う嫌気性熱処理とすることを特徴とする。
【0011】
即ち、ここでも、廃棄物を活性汚泥処理工程に通して、その汚泥を濃縮・可溶化することを含む。
【0012】
更に本発明の有機性廃棄物の嫌気性処理方法は、前記可溶化工程の滞留時間を3日〜10日かけることを特徴とする。これも経験的知見であって、高温度で短時間より、3日〜10日の時間で完結する温度条件が適当である。
【0013】
更に本発明の有機性廃棄物の嫌気性処理方法は、前記嫌気性発酵工程の温度を30℃〜40℃で行うことが好ましい。
【0014】
更に本発明の有機性廃棄物の嫌気性処理方法は、前記嫌気性発酵工程により発生するメタンガスを燃料として稼働する発電工程を有し、該発電工程の廃熱を前記可溶化工程及び/若しくは嫌気性発酵工程の加熱源に利用することを特徴とする。これにより、省資源効果が一段と高まる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。但し本実施の形態に記載される製品の寸法、形状、材質、その相対配置等は特に特定的な記載がない限りは本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0016】
(実施例1)
図1は本発明の実施を試験した装置のフロー図である。不図示の装置で流入廃棄物を濃縮し固形分10%の高濃度有機性廃棄物21とし、これの一定量を高温嫌気性処理槽1に導入し各種温度・時間で嫌気性熱処理をし、可溶化の結果を測定する。該熱処理中に発生するメタンガスを主とする(バイオ)ガスは捕捉する。熱処理によって可溶化した熱処理後の有機性廃棄物を嫌気性メタン発酵槽2に導入して、36℃で720時間かけて嫌気性メタン発酵をし、本発明の主産出物であるメタンガスを主体とする(バイオ)ガスを捕捉し、前記熱処理工程で捕捉したガスと合体させて計量、分析する。嫌気性メタン発酵工程終了後、前記メタン醗酵槽2中の廃液及び発酵残渣を計量、分析する。
【0017】
表1に示した熱処理条件によって前記10%高濃度有機性廃棄物21を高温嫌気性処理槽1にて熱処理し、可溶化の度合いおよび、硫酸イオン濃度を調べた。(熱処理反応終了後の溶解性有機物のCOD)÷(投入有機物のCOD)の値を可溶化率とし、その値を求めた。また、参考値として可溶化率/硫酸イオンの比を求めた、可溶化率/硫酸イオンの比が大きく、且つ、可溶化率が大きい処理法が、メタン生成菌を優先的に増殖させ、硫酸還元菌の活性を抑制し、且つ、メタンガスの発生率も大きくなる原料となると考えた。
結果を表1に、また、可溶化率、硫酸イオン濃度と処理湿度の関係を図2に示した。
【0018】
【表1】
【0019】
硫酸イオンは100℃付近を越える処理では、生成速度が極端に早くなることがわかった。また、可溶化率は、100℃付近まではほぼ直線的に増加することがわかった。従って、処理速度は、可溶化率/硫酸イオンの比の値が大きく、可溶化率が高い、60℃から90℃がよいと考えられた。
また、1日間、及び5日間、80℃での嫌気性熱処理した高濃度有機性廃棄物、および、対照として170℃で1時間処理、無処理の高濃度有機性廃棄物の粗脂肪、粗繊維、粗タンパク質逃の分析結果を図3に示した。
特に80℃で7日間処理したものは、1日間処理したものおよび、170℃処理、無処理に比べ、メタン発酵の阻害効果要因とされる粗脂肪の分解率が高いことがわかる。また、処理時間を長くすることで、主にこの粗脂肪の分解が進行していることがわかった。
【0020】
次に、この熱処理条件で熱処理した処理物をそれぞれ前期条件(36℃/720時間)で嫌気性メタン発酵させる。そして、発酵後の発酵残渣を含む液相中のアンモニア濃度を測定する。また、発生ガスの硫化水素濃度を測定する。その結果を表2に掲げる。硫化水素濃度の測定値の熱処理条件における温度依存性を図4に示す。即ち、硫化水素の濃度は、熱処理条件60℃から90℃で、メタン発酵時に当該ガスの発生が最も低下することを見出した。この結果から、熱処理条件60℃から90℃の可溶化物では、可溶化率/硫酸イオンの比が大きいので、メタン生成菌が活動しやすく、逆に、硫酸還元菌の行う硫化水素の生成が抑制されるとともに、有機性廃棄物中の窒素、硫黄含有化合物が適当に固定されていて、順調に、メタン発酵が進行する特性をもっているものと考えられた。
【0021】
【表2】
【0022】
(実施例2)
図1のフロー図とと同様な装置にて、固形分濃度10%に濃縮した廃水処理汚泥を対象として、前熱処理条件として170℃/1時間、80℃1週間、無処理の3水準(運転番号#1、#2、#3)で連続メタン発酵試験を行った。運転番号#1、#2、#3の負荷を順次上昇させ、目標容積負荷3.0kg固形分/m3・日到達後2ヶ月間の試験を行った。前記実験(実施例1)同様に、熱処理にて脂質、蛋白質の可溶化が進んだ。また、メタン発酵槽内の汚泥を採取し、1週間おきに水素利用メタン生成活性、メタン生成活性を測定した。その値の試験期間中の平均値とその他の試験の結果を合わせて、表3に示す。ここでガス化率とは、(捕捉ガス重量/投入固形分重量)×100を言う。
【0023】
【表3】
【0024】
表3でガス化率に着眼すると、#2の80℃前処理汚泥のガスへの転換率が格段に高いことがわかる。また、硫化水素の発生は確認されなかった。即ち、80℃嫌気性生物処理を行い汚泥の脂肪分などを分解後にメタン発酵することで、ガス発生が増加し、発酵も安定化した。上澄み液のCOD値も少ないことから、有機酸の生成もほとんどなく、硫化水素も発生していない。これにより、ガスによる発電によるエネルギ回収量の増加、脱硫コストの低減が可能になる。
【0025】
更にメタン発酵汚泥の引き抜き汚泥の分析を行ったところ、表3下段の分解率を得た。また、メタン発酵残渣の組成を分析して、脱水汚泥100当たりの成分構成で図8に示した。ここでも、80℃の熱処理条件で発酵残渣が最も少なく、繊維の分解率が83%と極めて高かった。80℃の処理汚泥の発酵系で、170℃の処理汚泥の発酵系に比べ、蛋白質の分解率が低いのが目立つが、槽内で増殖した微生物に起因するものと考えられる。また、メタン生成活性に着目すると、80℃処理汚泥をメタン発酵した系が最も高いことがわかる。これは、発酵槽でメタン発酵の反応にかかわる微生物が増殖していることを裏付けている。また、メタン生成反応は、硫酸還元反応と競合することから、80℃処理汚泥をメタン発酵した系でこの値が最も高く、硫化水素が生成していないことは、先の論理を裏付けている。これにより硫化水素発生によるメタン発酵阻害が低減しガス化率の向上へ繋がった。
【0026】
(実施例3)
図5は本発明の一つの実施例におけるフロー図で、高濃度有機性廃棄物のメタン発酵工程を示す。不図示の濃縮工程で濃縮後の高濃度有機性廃棄物21は高温嫌気性処理槽1で熱処理されメタン発酵槽2に導入される。ここで廃棄物はメタン発酵しメタンガス22を発生する。メタンガス22は発電機4を稼働する燃料として利用され、電気エネルギが回収され、更にその廃熱23は前記高温嫌気性処理槽1での加熱源と、該メタン発酵槽2の加熱源に再利用される。メタン発酵槽2からの発酵残渣を含む液相は脱水機3で固液分離し、固相は発酵残渣24として、再度高温嫌気処理槽1に戻して残渣の低減を図り、残余26はコンポスト化、炭化などして再資源化を図る。液相は流出水25として廃棄放流する。
【0027】
本例では高濃度有機性廃棄物21が高温嫌気性処理槽1で可溶化され、微生物の利用し易い状態となり、メタン発酵槽2では大部分がバイオガスへと変換できる。バイオガス中の硫化水素濃度は低く、脱硫コストは小さくてすむ。このガスを発電に使用することにより、エネルギ回収を行うとともに、廃熱を高温嫌気性処理槽1およびメタン醗酵槽2に使用することにより、メタン発酵を使用した経済性の高い有機性廃棄物処理が可能となる。
【0028】
(実施例4)
図6は本発明の一つの実施例におけるフロー図で、廃水処理に適用した工程である。有機分を含む流入水27を最初沈殿池5に受ける。一部の固形分を沈殿させ、初沈汚泥30として分離する。沈降しなかった固形分、液相中の有機分は活性汚泥槽6で処理し、最終沈殿池7で沈殿させた終沈汚泥29は一部循環し残余31を引き抜き、初沈汚泥30とともに濃縮装置8にて濃縮し、脱水機9で最終的に固形分濃度を5%〜10%に調整する。それを高温生物処理槽11にて可溶化処理を施し、中温域(30〜40℃)に設定したメタン発酵槽2においてメタン発酵する。引き抜いたメタン発酵汚泥は脱水機3で脱水し、廃水28は最初沈殿池5に返送し、脱水汚泥32は前期同様再資源化する。
【0029】
本例では、初沈汚泥30、終沈汚泥29を高濃度にし、高温生物処理槽11で可溶化することにより、微生物の利用しやすい状態となり、メタン発酵槽2にて、大部分がバイオガスへと変換できる。バイオガス中の硫化水素濃度は低く、脱硫コストは小さくてすむ。このガスを発電に使用することにより、エネルギ回収を行うとともに、廃熱を高温生物処理槽11およびメタン醗酵槽2に使用することにより、メタン発酵を使用した経済性の高い有機性廃棄物処理が可能となる。
【0030】
(実施例5)
図7は本発明の一つの実施例におけるフロー図で、廃水処理に適用した工程の前記とは別の実施例を示す。実施例4と異なるのは、終沈汚泥を濃縮する濃縮工程とは別に、初沈汚泥を濃縮する第2の濃縮工程を設け、濃縮後可溶化された終沈汚泥可溶物と、初沈汚泥濃縮物とを合わせてメタン発酵させる点である。
図7において、有機分を含む流入水27を最初沈殿池5に受ける。一部の固形分を沈殿させ、初沈汚泥30として分離する。該初沈汚泥30は、第2の濃縮装置8aにて濃縮される。沈降しなかった固形分、液相中の有機分は活性汚泥槽6で処理し、最終沈殿池7で沈殿させた最沈汚泥29は一部循環し残余31を引き抜き、第1の濃縮装置8bにて濃縮し、脱水機3で更に脱水して固形分濃度を10%〜20%に調整する。それを高温生物処理槽11にて可溶化処理を施し、該高温生物処理槽11からの産出物を、濃縮された前記初沈汚泥30と合わせて中温域(30〜40℃)に設定したメタン発酵槽2においてメタン発酵する。引き抜いたメタン発酵汚泥は脱水機3で脱水し、排水28は最初沈殿池5に返送し、脱水汚泥32は前期同様再資源化する。
【0031】
ガス化率が低いといわれる、終沈汚泥のみを固形分10〜20%に濃縮して、高温生物処理槽で可溶化することにより脱水に必要な凝集剤が少なくてすみ、高温生物処理槽の加温に必要なエネルギも少なくてすむ。これにより、経済性の高いシステムとなる。
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により、高いガス化率が得られる最適な方法を提供し、発酵残渣を低減し、転換メタンガスの硫化水素含有量を低減し、発電工程にそのまま利用可能で該工程廃熱を利用した効率のよい有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施を試験した装置のフロー図
【図2】熱処理温度の可溶化変化率に及ぼす影響を示したグラフ
【図3】熱処理による有機性廃棄物の組成変化を示したグラフ
【図4】熱処理温度と嫌気性メタン発酵における硫化水素濃度との関係を示したグラフ
【図5】本発明の一つの実施例におけるフロー図
【図6】本発明の一つの実施例におけるフロー図
【図7】本発明の一つの実施例におけるフロー図
【図8】熱処理温度と嫌気性メタン発酵後の残渣の組成を示すグラフ
【符号の説明】
1 高温嫌気性処理槽
2 メタン発酵槽
3 脱水機
4 発電機
5 最初沈殿池
6 活性汚泥槽
7 最終沈殿池
8 濃縮装置
9 脱水機
11 高温生物処理槽
21 高濃度有機性廃棄物
22 メタンガス
23 廃熱
24 発酵残渣
25 流出水
27 流入水
28 廃水
29 終沈汚泥
Claims (6)
- 流入廃棄物若しくはその処理物を濃縮する工程と、該工程濃縮物を可溶化する可溶化工程と該工程可溶化物を嫌気性発酵してメタンガスを発生させる嫌気性発酵工程とを有してなる有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法であって、前記濃縮工程における濃縮後の固形物濃度を5%〜20%とし、前記可溶化工程は60℃〜90℃の温度で行う嫌気性熱処理とすることを特徴とする、有機性廃棄物の嫌気性処理方法。
- 流入廃棄物を最初沈殿して初沈汚泥と廃水に分離し、該廃水を活性汚泥処理し、該処理水を最終沈殿して流出水と終沈汚泥に分離する活性汚泥処理工程を有し、該活性汚泥処理工程の初沈汚泥と終沈汚泥とを濃縮する工程と該工程濃縮物を可溶化する可溶化工程と該工程可溶化物を嫌気性発酵してメタンガスを発生させる嫌気性発酵工程とを有してなる有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法であって、前記濃縮工程における濃縮後の固形物濃度を5%〜20%とし、前記可溶化工程は60℃〜90℃の温度で行う嫌気性熱処理とすることを特徴とする、有機性廃棄物の嫌気性処理方法。
- 流入廃棄物を最初沈殿して初沈汚泥と廃水に分離し、該廃水を活性汚泥処理し、該処理水を最終沈殿して流出水と終沈汚泥に分離する活性汚泥処理工程と、該活性汚泥処理工程の終沈汚泥を濃縮する第1の濃縮工程と、該工程濃縮物を可溶化する可溶化工程と、該初沈汚泥を別途濃縮して初沈汚泥濃縮物とする第2の濃縮工程と、該可溶化物と初沈汚泥濃縮物とを嫌気性発酵してメタンガスを発生させる嫌気性発酵工程とを有してなる有機性廃棄物の高濃度嫌気性処理方法であって、前記濃縮工程における濃縮後の固形物濃度を5%〜20%とし、前記可溶化工程は60℃〜90℃の温度で行う嫌気性熱処理とすることを特徴とする、有機性廃棄物の嫌気性処理方法。
- 前記可溶化工程の滞留時間を3日〜10日かけることを特徴とする請求項1乃至3いずれかの項記載の有機性廃棄物の嫌気性処理方法。
- 前記嫌気性発酵工程の温度を30℃〜40℃で行うことを特徴とする請求項1乃至3いずれかの項記載の有機性廃棄物の嫌気性処理方法。
- 前記嫌気性発酵工程により発生するメタンガスを燃料として稼働する発電工程を有し、該発電工程の廃熱を前記可溶化工程及び/若しくは嫌気性発酵工程の加熱源に利用することを特徴とする請求項1乃至3いずれかの項記載の有機性廃棄物の嫌気性処理方法。
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