JP2007095470A - 生物発電用アノード及びその製造方法、並びに発電装置 - Google Patents

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Abstract

【解決課題】均一且つ高濃度に電子メディエータと化学結合する官能基を導入することにより、より簡易に製造できる生物発電用アノードの作製方法及び効率的に有機性物質から電気エネルギーを得る生物発電方法並びに生物発電用アノード及び生物発電装置を提供する。
【解決手段】本発明の生物発電装置は、アノード基材にラジカル及び官能基を介して電子伝達媒体(電子メディエーター)が固定化されている生物発電用アノード1を含む嫌気性域4、隔膜(電解質膜)2、および多孔質カソード3を含む好気性域5を具備する。嫌気性域4に嫌気性条件下で生育可能な微生物及び有機性物質を含む溶液又は懸濁液を流し、好気性域5には分子状酸素を含む空気を存在させる。嫌気性域4内では、有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応が進行し、好気性域5内では、酸素を電子受容体とする還元反応が進行し、アノード1とカソード3の間に電位差が生じる。
【選択図】図1

Description

本発明は、廃水、廃液、し尿、食品廃棄物、その他の有機性廃棄物、汚泥などの有機性物質またはその分解物を基質とし、その基質と酸素との酸化還元反応を、嫌気性微生物による酸化反応と、酸素の還元反応に分離することによって発電を行う技術に関する。
廃水、廃液、し尿、食品廃棄物、その他の有機性廃棄物、汚泥などの有機性物質またはその分解物(以下「含水有機性物質」という)を基質とし、その基質と酸素との酸化還元反応を、嫌気性微生物による酸化反応と、酸素の還元反応に分離することによって発電を行う、いわゆる生物電池の技術が提案されている(特許文献1、及び非特許文献1、2、3)。これらの生物電池において、基質を含む溶液もしくは懸濁液を含む区画(アノード区画)に人工もしくは天然の電子伝達媒介体(以下「電子メディエータ」という)を添加し、嫌気性微生物による酸化反応で発生した電子を電極へ伝達する方法がとられている。しかし、これらの方法において用いられている電子メディエータの標準電極電位は、一般に生物電池反応に用いられる嫌気性微生物の最終電子受容物質の標準電極電位と重ならず、有効な電位のカスケードを形成できないという問題がある。例えば、これまでに提案されている電子メディエータとその標準電極電位は、下記表1のとおりである。
Figure 2007095470
一方、一般的な生物電池反応に用いられる嫌気性微生物である硫黄還元菌、酸化鉄(III)還元菌の最終電子受容物質である硫黄及び鉄の標準電極電位は、下記表2のとおりである。
Figure 2007095470
表2より、硫黄還元菌の持つ電子伝達系の末端還元酵素(硫黄還元酵素)は、-0.28Vの標準電極電位を持つ物質を還元することができ、一方、酸化鉄(III)還元菌の持つ電子伝達系の末端還元酵素(酸化鉄(III)還元酵素)は、+0.20Vの標準電極電位を持つ物質を還元することができることがわかる。これらの末端還元酵素は微生物の外膜やペリプラズムに存在しており、菌体外の酸化鉄や0価の硫黄を還元できることから効率的な生物発電のために有効な触媒となり得る。ところが、これまで提案されている電子メディエータの標準電極電位は、表1に示すように、A〜Gの電子メディエータのいずれも鉄還元の標準電極電位よりも低いので、酸化鉄(III)還元酵素−電子メディエータ−アノード間で有効な電位のカスケードを形成できない。同様に、表1C〜Gの電子メディエータは硫黄還元の標準電極電位よりも低いので、硫黄還元酵素−電子メディエータ−アノード間で有効な電位のカスケードを形成できない。表1A及びBの電子メディエータは硫黄還元の標準電極電位よりも高いので、理論上は硫黄還元酵素による還元が可能であるが、電位差が0.3V以上もあり、生物学的な電子伝達が困難である可能性が高い。その上、発電効率を高めるためにはカソードの酸素還元反応に対してできるだけ大きな電位差を生じさせることが求められるが、電子メディエータの電位が高いので0.3V以上の電位差を損失してしまい、エネルギー損失が大きくなる。
そこで、硫黄還元菌を用いた生物電池系において、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸(AQ-2,6-DS)を嫌気性域に添加することにより電子伝達効率の向上を試みる提案がなされた(非特許文献2)。AQ-2,6-DSの標準電極電位は-0.185Vであり、硫黄還元酵素−電子メディエータ間で有効な電位のカスケードを形成するのに適当な物質であると考えられる。しかし、提案されている系においては、AQ-2,6-DSは液相中に添加されただけで、アノード(酸化電極)に担持されていないため、電極との反応性が低く、添加効果は24%の電流値増加に留まっている。また、連続的に発電する場合には、嫌気性域内の基質液を更新する際に電子メディエータも一緒に系外に排出されてしまい、常に電子メディエータを添加し続けなければならない、という問題がある。
また、非特許文献3においては、電子メディエータをアノード基材表面に固定化することにより、電子メディエータの繰り返し利用を試みている。しかしながら、この固定化方法には以下のような問題が認められる。
非特許文献3においては、電子メディエータとしてニュートラルレッドを用い、アノード基材としてグラファイトを用い、ニュートラルレッドの9位の第二級アミンと、グラファイト表面を酸化することにより導入したカルボキシ基と、をアミド結合させて、アノード基材(グラファイト)表面に電子メディエータ(ニュートラルレッド)を固定化することを試みている。
Figure 2007095470
しかし、この方法によると、ニュートラルレッドの標準電極電位が大幅に変動することが予想される。実際に、この試験系においてグラファイトに結合したニュートラルレッドのサイクリックボルタンメトリにおける電流値ピークは-0.42V付近に認められ、遊離の状態での-0.325Vより0.1V程度も低下することが認められる。一般に嫌気性微生物として生物電池反応に用いられる硫黄還元菌、酸化鉄(III)還元菌の最終電子受容物質である硫黄および酸化鉄(III)の標準電極電位はそれぞれ-0.28V、+0.20Vである。この変化により、微生物による該電子メディエータの利用が困難になるため、発電は現実的でないと考えられる。
電子メディエータを化学結合によってアノード基材に固定化する場合には、表面に電子メディエータが結合するための官能基を導入する必要がある。導入した官能基の一部は電子メディエータと化学的に結合されるが、結合に関与できなかった残存官能基は、アノード近傍の水素イオン濃度に大きな影響を与えると考えられるので、電子メディエータの固定化反応はそのような官能基が残存しないものとすることが必要である。
残存官能基が例えば-SO3H、-COOH、などの陽イオン交換基の場合、アノード近傍では水素イオン濃度が中性の場合と比較して非常に濃くなる。一方、残存官能基が例えば、-NH2、-NHR、-NR2、などの塩基性官能基、-NR3 +OH-などの陰イオン交換基の場合は、電極近傍での水素イオン濃度が中性の場合と比較して低濃度になる。
Figure 2007095470
このときの、平衡定数Kは以下のように表される。
Figure 2007095470
電子メディエータの酸化反応は式1で表されるように水素イオンが生成される反応であるため、アノード近傍が酸性であればアノードで酸化されにくく、逆にアルカリ性ならばアノードで酸化されやすくなると予想される。前記にあげた原理により、アノードに残存する官能基は電子メディエータの酸化還元反応速度に大きく影響することが考えられる。
アノード基材に固定化した電子メディエータが電子を1つのみやり取りできると仮定した場合、2.4μmol/cm2以上の電子メディエータを導入すると、実用的な発電レベルである0.1mA/cm2程度以上の電流密度を生じる生物電池を構築することができる。しかし、現在市販されている高性能イオン交換膜、例えば、DupontのNafion115(登録商標)を嫌気槽と好気槽の隔膜に使用したとしても、水素イオン輸送速度がアノードで発生、カソードで消費される速度に比較すると非常に遅い。そのため、カソード側では水分子が電離して生じる水素イオンが消費され、燃料電池において見られるのと同様にカソード側がアルカリ性となり、カソードの電位が低下する。銀触媒を用い、0.1mA/cm2程度の小電流が流れている状態でも、カソードの電位は+0.1V程度まで低下することが知られている。このことから、実用的な発電を行うことを目的とした場合、アノードの電位は+0.1Vよりもなるべく低い値であることが求められる。
従来の官能基を導入する方法は、ほとんどの場合、固体−溶液間の反応を必要とする。しかし、一般的に固体表面を均一に修飾するには、温度ムラ、濃度ムラに対して非常に注意を払う必要があり、均一系液体の反応系よりも反応装置が複雑化するといった問題があった。特にグラファイトなど、表面が化学的に安定な物質については、表面に均一に物質(または官能基)を導入することが難しい。例えば、熱硝酸、熱硫酸といった強力な酸化剤を使用してもグラファイト表面にカルボキシ基、ニトロ基、スルホ基などの官能基を十分な密度で導入することができなかった。また、硫酸酸性の液体中でグラファイトをアノードとして電解酸化させ、末端の六員環を開環させることによりグラファイト表面へカルボキシ基を導入する方法においては、表面を均一に反応させることが非常に難しく、ほとんど未反応の面や、アノード酸化過多により破壊された面ができてしまうといった問題があった。こうした問題を解決するために、固体−溶液間の反応工程を減少させる技術、アノード基材表面を効果的に化学修飾する技術が求められている。
一方、炭素固体表面に官能基を導入する技術としては、カーボンブラック(以下CB)への化学修飾が知られている。CBは黒色の微粉末で平均粒径がコロイド範囲1〜500nmであり、石墨質近似の結晶構造を有している。非特許文献4によればCBの表面官能基とポリマーの末端官能基とを脱水縮合剤により化学結合させ、液体の組成(純度)により電気抵抗が変化したとの報告がある。CBをインクとして使用するためには分散性を向上させる必要があり、それを目的としてCB表面を熱濃硝酸、熱濃硫酸、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤で酸化処理して親水性の官能基(-COOH、-OH等)をCB表面に導入する技術が特許文献3及び4に記載されている。さらに、特許文献5によれば、CB表面に導入する官能基をラジカル発生剤にあらかじめ導入しておき、このラジカル発生剤を利用するラジカル反応によって官能基をCBに固定化することで、CBに親水性または疎水性の機能性を持たせることができる。また、非特許文献5によると、N,N’-カルボキシルジイミダゾールまたはジシクロヘキシルカルボジイミドを使用して、両末端にヒドロキシ基またはアミノ基を持つポリマーをCB表面に存在するカルボキシ基に、それぞれエステル結合、アミド結合させ、溶媒への分散性を向上させたとの報告がある。しかしながら前記のCBの化学修飾はあくまで、溶媒又は水への分散性の向上を狙ったものであり、既に成形されたアノード基材に対して応用した例はなく、また、アノード基材への電子メディエータの固定化方法を改良するために使用するというアイデアはまったく述べられていない。
特表2002-520032号公報 特開平8-3498号公報 特開平11−92686 特開平11−256066 USP 5,571,311号明細書 Roller et al., 1984, Journal of Chemical Technology and Biotechnology 34B: 3-12 Bond et al., 2002, SCIENCE 295: 483-485 Park et al., 2000, Biotechnology Letters 22: 1301-1304 N. Tsubokawa et al., 2001 Sensors and Actuators B79: 92-97 N. Tsubokawa et al.,1995 Reactive&Functional Plymers 27 1995, 75−81
生物学的系における酸化反応を促進して発電を行う系において、嫌気性微生物とアノードの間で電子を伝達する為に適当な電位を持つ電子メディエータを、微生物の最終還元酵素−電子メディエータ−アノード間で有効な電位カスケードが形成されるようにアノードに固定化し、該固定化によって電子メディエータの活性を消失せず、かつ結果的に十分低いアノード電位を得られるような固定化工程を含む、有機性物質を利用する発電方法が求められている。
本発明の課題は、上記のような従来技術の問題点を解決し、より簡易な方法で均一に電子メディエータを固定化した生物発電用アノードを作製し、生物発電装置に利用することにより、効率的に有機性物質から電気エネルギーを得る方法を提供することにある。
本発明によれば、アノード基材と、該アノード基材表面に結合しているラジカル部位と、該ラジカル部位と結合している官能基部位と、該官能基部位と結合している電子メディエータと、を含む生物発電用アノード及びその製造方法並びに該生物発電用アノードを含む生物発電装置及び方法が提供される。
本発明の生物発電用アノードにおいて用いることができるアノード基材としては、電極として実質的な活性表面がグラファイトの化学構造に類似する六員環(ベンゼン環)構造を有するものであればよく、グラファイト、多孔質グラファイト、グラファイトフェルト、カーボンクロスからなる群より選択されるグラファイト類、及びカーボンクロス、活性炭繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、カーボンファイバ、フラーレン類、気相成長炭素繊維からなる群より選択される炭素系材料を含有する導電性成形体から選択される1種以上を好ましく挙げることができる。カーボンブラックなどの粉末を電極として使用するには、燃料電池の電極作製方法のように、ポリマーなどのマトリックスに分散させた後、成形し、乾燥させることで多孔質電極を得ることができる。マトリックスとしては、例えばNAFION(Dupont社、登録商標)などのイオン交換樹脂が最も好ましく、抵抗の小さな電極を作製することができる。また、TEFLON(Dupont社、登録商標)などの耐腐食性に優れたポリマーを使用すれば耐久性に優れた電極を作製することができる。カーボンブラックへの化学修飾は電極作製の工程のどの部分で実施されてもよいが、マトリックスへの分散性の向上、電極の腐食などを考慮すれば、あらかじめ化学修飾しておくことが好ましい。
本発明の生物発電用アノードにおいて用いることができるラジカル部位としては、
Figure 2007095470
(式中、Tは電子メディエータと結合可能な官能基を表す)
からなる群より選択される1種以上を好ましく挙げることができる。よって、本発明において、ラジカル部位が結合したアノード基材は、下記式で表すことができる。
Figure 2007095470
また、本発明の生物発電用アノードにおいて用いることができる官能基部位(T)としては、場合によって置換されていてもよい直鎖式、枝分れ式又は環式の炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン、−OR、−COR、−COOR、−OCOR、−COONa、−COOK、−COO-NR4 +、−CN、−SO3Na、−SO3K、−SO3H、−NR3+、−NR(COR)、−CONR2、−NO2、−OPO(OH)2、−PO(OH)2、−PO3HNa、−PO3Na2、−N=NR、−N2 +X-、−NR3 +X-(式中、Rは水素、炭素数が1〜20のアルキル基もしくはアリール基を示し、Xはハロゲン原子、無機酸又は有機酸のアニオンを示す)からなる群から選択される1種類又は複数種類の組み合わせを好ましく挙げることができる。
本発明の生物発電用アノードにおいて用いることができる電子メディエータとしては、以下に示す構造式を有する酸化還元物質:
Figure 2007095470
アントラキノンカルボン酸類(AQC)、アミノアントラキノン類(AAQ)、ジアミノアントラキノン類(DAAQ)、アントラキノンスルホン酸類(AQS)、ジアミノアントラキノンスルホン酸類(DAAQS)、アントラキノンジスルホン酸類(AQDS)、ジアミノアントラキノンジスルホン酸類(DAAQ DS)、メチルアントラキノン類(EAQ)、メチルナフトキノン類(MNQ)、メチルアミノナフトキノン類(MANQ)、ブロモメチルアミノナフトキノン類(BrMANQ)、ジメチルナフトキノン類(DMNQ)、ジメチルアミノナフトキノン類(DMANQ)、ラパコール(LpQ)、ヒドロキシ(メチルブテニル)アミノナフトキノン類(ALpQ)、ナフトキノンスルホン酸類(NQS)、トリメチルアミノベンゾキノン類(TMABQ)、メタニルイエロー、メチルオレンジ、フラビンモノヌクレオチド(FMN)およびこれらの誘導体からなる群より選ばれる1つ以上の酸化還元物質を好ましく挙げることができる。より好ましくは、アントラキノン-2-カルボン酸(AQC)、アントラキノン-2-スルホン酸(AQS)、アントラキノン-2,6-ジスルホン酸(AQ-2,6-DS)、アントラキノン-1,8-ジスルホン酸(AQ-1,8-DS)、アントラキノン-2,7-ジスルホン酸(AQ-2,7-DS)、アントラキノン-1,5-ジスルホン酸(AQ-1,5-DS)、2-アミノアントラキノン(AAQ)、2,6-ジアミノアントラキノン(DAAQ)、1,4-ジアミノ-2,3-ジクロロアントラキノン、1-アミノ-4-ブロモアントラキノン-2-スルホン酸、2-メチルアントラキノン、2-メチルナフトキノン、1-メチル-4-アミノナフトキノン、1-ブロモ-2-メチル-4-アミノナフトキノン、1,4-ジメチル-2-アミノナフトキノン、ナフトキノン-2-スルホン酸、2,3,5-トリメチル-6-アミノベンゾキノン、ラパコール(LpQ)、メタニルイエロー、メチルオレンジ、フラビンモノヌクレオチド(FMN)およびこれらの誘導体からなる群より選ばれる物質を挙げることができる。
本発明の生物発電用アノードにおいて、電子メディエータは、pH7におけるE0’が-0.13V〜-0.28Vの範囲にあることが好ましい。本発明の生物発電用アノードの電子メディエータのE0’は、サイクリックボルタンメトリもしくは電位シフト試験を用いて測定、評価することができる。さらに、アノードを化学修飾してE0’を目的の範囲内にすることも望ましい。例えば、本発明の生物発電用アノードの電位は、実用的な発電を行う場合に、+0.1Vよりもなるべく低い値であることが好ましい。このような電位レベルを達成するために、アノード基材に固定化されている電子メディエータにアミノ基を追加導入することによりアノード近傍の水素イオン濃度を減少させることができ、標準電極電位E0’を所望範囲まで低下させることができる。
以上のように、本発明の生物発電用アノードは、微生物から電子メディエータを介してアノードへの電子伝達が効率よく行われ、電子がアノードからカソードへ流れて酸素に受け渡されるような電気化学反応を円滑に進行させることができる標準電極電位(E0’)範囲である-0.13Vから-0.28Vの電子メディエータがアノード基材に対してラジカル結合及び官能基を介して均一に固定化されている。本発明の生物発電用アノードを生物電池及び生物発電方法に適用することにより、電気エネルギーを有効に取り出すことができる。
また、本発明によれば、アノード基材表面と化学結合するラジカル部位及び電子メディエータと化学結合する官能基部位又はその前駆体官能基部位を具備するラジカル発生剤とアノード基材とを反応させてアノード基材表面にラジカル部位及び官能基を導入する工程と、該アノード基材に導入された官能基部位に電子メディエータを反応させて、官能基部位に電子メディエータを化学結合させアノード基材に電子メディエータを導入する工程と、を含む、上述の生物発電用アノードを製造する方法が提供される。
本方法において、電子メディエータと化学結合する官能基部位のアノード基材への導入は、このような官能基部位を具備するラジカル発生剤を利用しても、あるいは、このような官能基部位に変換可能な前駆体官能基部位を具備するラジカル発生剤を利用してもよい。また、アノード基材に導入した官能基部位に対して、電子メディエータと化学結合する追加の官能基部位を有する他の化合物(スペーサー)を追加的に導入してもよい。電子メディエータと化学結合する官能基部位を具備するラジカル発生剤を利用する場合には、アノード基材とラジカル発生剤とに、例えば加熱又は光照射によりエネルギーを付与してフリーラジカルを発生させ、アノード基材表面とフリーラジカルとのラジカル反応を生じさせて、ラジカル発生剤のラジカル部位をアノード基材表面に結合させることにより、結果的に、必要な官能基をアノード基材表面に均一に高濃度で導入することができる。一方、前駆体官能基部位を具備するラジカル発生剤を利用する場合には、同様にラジカル部位をアノード基材に結合させた後、例えばカルボン酸クロリド化するなどして電子メディエータと化学結合しやすい官能基に変換させることにより、結果的に必要な官能基をアノード基材表面に均一に高濃度で導入することができる。さらに、スペーサーを利用する場合には、同様にラジカル発生剤との反応によってアノード基材にラジカル部位を導入した後、ラジカル部位導入アノード基材とスペーサーを反応させることにより、必要な官能基をアノード基材表面に均一に高濃度で導入することができる。
本方法において用いることができるラジカル発生剤は、
Figure 2007095470
(式中、Tは、場合によって置換されていてもよい直鎖式、枝分れ式又は環式の炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン、−OR、−COR、−COOR、−OCOR、−COONa、−COOK、−COO-NR4 +、−CN、−SO3Na、−SO3K、−SO3H、−NR3+、−NR(COR)、−CONR2、−NO2、−OPO(OH)2、−PO(OH)2、−PO3HNa、−PO3Na2、−N=NR、−N2 +X-、−NR3 +X-(式中、Rは水素、炭素数が1〜20のアルキル基もしくはアリール基又はポリエチレングリコール基又はポリシロキサン基を示し、Xはハロゲン原子、無機酸又は有機酸のアニオンを示す)からなる群から選択される1種類又は複数種類の組み合わせからなる前記電子メディエータと化学結合する官能基部位又は該官能基に変換可能な前駆体官能基部位を表す)
から選択されるラジカル部位及び電子メディエータと化学結合する官能基部位又は該官能基に変換することができる前駆体官能基部位を有する化合物である。特にアゾニトリル化合物、アジド化合物、次亜硝酸化合物、パーオキシジカーボネート化合物が望ましく、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4-メトキシフェニルアゾ-2-(メチルプロパンジニトリル)、4,4’-アゾビス-4-シアノペンタン酸、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス-2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル、ジ-tert-ブチル次亜硝酸、ジエチルパーオキシジカーボネート、和光純薬(株)から市販されている分子アゾ結合開始剤PSシリーズやVPEシリーズなどを好ましく挙げることができる。
アノード基材表面へのラジカル部位の導入は、アノード基材にラジカル発生剤を供給して加熱するか又は光照射することなどにより、ラジカル発生剤のラジカル部位を活性化させて、フリーラジカルを発生させ、このフリーラジカルをアノード基材表面の炭素原子にラジカル結合させることにより行うことができる。
次いで、ラジカル部位を介して官能基部位が導入されたアノード基材に、上述の電子メディエータを化学結合により固定化させる。電子メディエータをアノード基材に固定化するにあたっては、背景技術の項に述べたように、電子メディエータの酸化還元を阻害することや、電子メディエータの標準電極電位を大きく変えてしまうことがないような固定化方法をとる必要がある。また、電子メディエータとアノード基材とは導電性を持つような形で結合される必要がある。さらに、その結合は水環境中で安定であり、容易に分解されないような形態であることが望ましい。以上のような条件を満たす固定化方法を発明者らが鋭意検討した結果、以下の表-3に示すような化学結合方法が適当であることを見出した。
Figure 2007095470
実際に利用するアノード基材と電子メディエータの構造に対応して、表-3に列記した方法のうち、適当な化学修飾、結合方法を選択することができる。
例えばグラファイト(アノード基材)に2-アミノアントラキノン(AAQ)を固定化する場合、AAQはアミノ基を持つため、これを利用した結合方法が適当である。
具体例を挙げると、グラファイト(アノード基材)と4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)(ラジカル発生剤)とをN,N’-ジメチルホルムアミドの溶媒中において、70℃程度に加熱すると、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)から一次ラジカル(シアノペンタン酸ラジカル)が発生して、グラファイト表面へ結合する。
Figure 2007095470
このようにしてグラファイト表面へシアノペンタン酸ラジカルが付加することで結果的にシアノペンタン酸構造に含まれるカルボン酸(カルボキシ基)が導入される。次に導入されたカルボキシ基をジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)存在下でAAQと反応させると、グラファイト表面に導入されたカルボキシ基と、AAQのアミノ基とがアミド結合して、AAQ(電子メディエータ)をグラファイト(アノード基材)表面に固定化することができる。
Figure 2007095470
あるいは、同様に、ラジカル発生剤として4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)を用いて発生させたシアノペンタン酸ラジカルを結合させたグラファイトに対して、溶媒としてジクロロメタンを用い、触媒としてN,N’-ジメチルホルムアミドを用いて、オキサリルクロリドを反応させてカルボン酸クロリド(官能基)をグラファイト表面に導入する。次いで、このグラファイトにTHFを溶媒としてAAQを反応させることにより、AAQのアミノ基とグラファイト表面のカルボン酸クロリドがアミド結合を形成し、AAQ(電子メディエータ)をグラファイト(アノード基材)表面に対して安定に固定化することができる。
Figure 2007095470
また、グラファイトにアントラキノンカルボン酸(AQC)を固定化する場合には、次亜塩素酸ナトリウム溶液又は過酸化水素水を加熱して末端酸素ラジカルを発生させ、グラファイト表面へ結合させることで、ヒドロキシ基をグラファイト表面に導入することができる。次いで、このグラファイトにトリエチルアミン(TEA)の存在下でアントラキノンカルボン酸クロリドを反応させることにより、グラファイト表面のヒドロキシ基とアントラキノンカルボン酸クロリドとがエステル結合を形成し、AQC(電子メディエータ)をグラファイト(アノード基材)表面に対して安定に固定化することができる。
Figure 2007095470
また、グラファイトにAQC、AQS、AQ-2,6- DS、AQ-2,7- DS、AQ-1,5-DS、メタニルイエロー、メチルオレンジのような酸性官能基を有する電子メディエータを固定化する場合には、同様にラジカル発生剤として4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)を用いて発生させたシアノペンタン酸ラジカルを結合させたグラファイトに対して、溶媒としてジクロロメタンを用い、触媒としてN,N’-ジメチルホルムアミドを用いて、オキサリルクロリドを反応させてカルボン酸クロリド(官能基)をグラファイト表面に導入する。次いで、このグラファイト(アノード基材)に導入したカルボキシ基をオキサリルクロリドを用いてカルボン酸クロリド化し、アミノ基を2個以上含む化合物をスペーサーとして使用する。例えば、スペーサーとして1、3-プロパンジアミンを使用して、グラファイト(アノード基材)表面に導入されているカルボン酸クロリドと結合させて、グラファイト(アノード基材)表面へアミノ基を導入する。そこへ上述の酸性官能基を有する電子メディエータを溶媒中でDCCを作用させ、脱水縮合反応させることにより、グラファイト(アノード基材)表面のアミノ基と、電子メディエータの酸性官能基との間にアミド結合又はスルホンアミド結合を形成させて、電子メディエータをグラファイト(アノード基材)表面に固定化することができる。
Figure 2007095470
以上のように、ラジカル発生剤を利用して、予めアノード基材表面にラジカル結合を介して電子メディエータと化学結合する官能基を結合させることにより、温和な反応条件下でアノード基材表面に官能基を均一且つ高密度に導入することができ、未結合の官能基を残存させずに、電子メディエータをアノード基材に固定化することができ、固定化の調整も容易である。
また、本発明によれば、嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液、上述の生物発電用アノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域と、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備し、該アノード及び該カソードを電力利用機器に電気的に接続して閉回路を形成し、該嫌気性域内での有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応と該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用して発電する発電装置及び発電方法が提供される。
本発明においては、電子メディエータが固定化されたアノードを嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物及び有機性物質を含む溶液又は懸濁液と接触させて、有機性物質を電子供与体とする微生物による酸化反応を進行させる。このアノード側(嫌気性域)での反応、有機性物質を電子供与体とする微生物による酸化反応は、含水有機性物質中で嫌気性微生物(通性又は絶対嫌気性微生物)によって生化学的に触媒され、主に微生物の嫌気呼吸により、有機性物質由来の電子が微生物体内の電子伝達系を介して最終的にアノードに受け渡される。したがって、本発明に係る発電反応を効率よく進行させるためには、微生物の細胞膜内で電子伝達系を終結するものではなく、細胞外膜(細胞膜外)で電子を電極で捕捉しやすい、電極への最終電子伝達を触媒するような微生物(電極活性な微生物)を利用することが望ましい。このような電極活性な微生物としては、硫黄S(0)還元菌、酸化鉄(III)還元菌、二酸化マンガンMnO2還元菌、脱塩素菌などが好ましく用いられる。このような微生物として、例えばGeobacter metallireducens(ATCC 53774)、Desulfuromonas sp.、Desulfitobacterium sp.、Geobivrio thiophilus sp.、Clostridium thiosulfatireducens sp.、Acidithiobacillus sp.、Thermoterrabacterium ferrireducens sp.、Geothrix sp.、Geobacter sp.、Geoglobus sp.、Shewanella putrefaciens sp.などが特に好ましく用いられる。特に、硫黄還元菌は、最終電子受容体である硫黄の標準電極電位が-0.28Vと非常に低いので、酸化鉄(III)還元菌よりも低い電位を有する電子伝達媒体(電子メディエータ)に電子を伝達することができ、エネルギー的に有利である。このような硫黄還元活性を有する微生物として、例えば、Geobacter metallireducens(ATCC 53774)、Desulfuromonas sp.、Desulfitobacterium sp.、Geobivrio thiophilus sp.、Clostridium thiosulfatireducens sp.、Acidithiobacillus sp.などが好ましく用いられる。
これらの微生物は、含水有機性物質中において主要な微生物ではないことが多いため、本発明の方法を実施するにあたっては、最初に、アノード側(嫌気性域)にこれらの微生物を植菌し、アノード表面にこれらの微生物が主に付着している状態を形成しておくことが好ましい。これらの微生物が優先的に微生物反応室(嫌気性域)内で増殖するために、アノードに電子を渡すことによる呼吸反応(電極呼吸)が酸発酵やメタン発酵よりもエネルギー的に有利である場の面積を大きくすべきであり、具体的には嫌気性域内のアノード表面積をなるべく大きくすることが好ましい。また、アノード表面に微生物を付着させた後、嫌気性域(微生物反応室)内にこれらの微生物の増殖に適当な培地を供給することが望ましく、さらにアノードの電位を高く維持することにより、アノード表面でのこれらの微生物の増殖を促すことがより望ましい。これらの微生物(群)を前培養もしくは微生物反応室内で培養するための方法として、これらの微生物(群)の培地として報告されているスラリー状の硫黄、酸化鉄(III)、二酸化マンガンなどを電子受容体とする培地を好ましく用いることができ、例えばHandbook of Microbial Media (Atlasら1997, CRC Press)に記載されているAncylobacter/Spirosoma培地、Desulfuromonas培地、Fe(III) Lactate Nutrient培地などが好ましく用いられる。
本発明において用いる有機性物質の性状は、嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物が増殖するアノード周辺に分子状酸素を供給しないように液体状または懸濁液、あるいは固形分の間隙が水で飽和している状態であることが望ましい。アノード周辺での有機性物質の酸化反応は主に微生物による呼吸反応によって触媒されることから、アノード周辺内に投入される有機性物質は固形分の粒径が小さく、水中によく溶解または分散し、低分子であることが望ましく、また、微生物にとって易分解性の物質であることが望ましい。使用する有機性物質の種類によりこれらの条件が満たされない場合には、物理的、化学的または生物学的な前処理を行って有機性物質の微生物分解性を高めることができる。そのような方法としては、例えば、粉砕機による破砕、熱分解、超音波処理、オゾン処理、次亜塩素酸塩処理、過酸化水素処理、硫酸処理、微生物による加水分解、酸生成、低分子化処理が考えられる。これらの前処理に要するエネルギーは、前処理による主反応容器での発電エネルギーの向上とのバランスを考え、最適な前処理条件を選ぶことができる。
また、使用用途に応じて、経時的に上記流路を水洗または空洗して余剰の微生物菌体及び菌体外分泌物を除去することが望ましい。この際、空洗に使用する気体に酸素が含まれると、嫌気性域(微生物反応室)である反応容器中の嫌気性微生物に悪影響を及ぼす可能性があるため、不活性ガスまたは反応容器中で発生した嫌気性のガスを利用することが望ましい。
アノード側での微生物から電子メディエータおよびアノードへの電子伝達反応を促進するため、本発明の電子メディエータを固定化した生物発電用アノードはなるべく広い面積を持ち、効率よく微生物と接触することが望ましい。しかしながら、含水有機性物質を長期間にわたって連続的に処理する装置に本発明の生物発電用アノードを用いる場合には、含水有機性物質中及びアノード表面において嫌気性微生物が連続的に増殖することから、あまりにも細密な3次元網目構造状、細いチューブ状または隙間の狭い積層板状の構造のアノードを用いると、微生物菌体による流路の閉塞、片流れ、デッドゾーンの形成等により含水有機性物質の分解及び発電効率が低下することが考えられる。このため、アノードの形態は、金網状、多孔質または表面に凹凸または襞がある一次構造であって、3次元網目状、チューブ状または積層板状の空間(含水有機性物質が流入してくる流路)を持つ2次構造を形成しており、かつ上記流路は処理対象となる含水有機性物質の流動性に応じて数mmから数cmの開度を持つことが望ましい。
本発明において、好気性域であるカソード側では、酸素を電子受容体とする還元反応が進行する。カソードの少なくとも一部を、構造体内に空隙を有する導電性の多孔質材料、網状又は繊維材料で構成し、その空隙中に水/空気の接触界面、すなわち空気(酸素)と水とを隣接させる場を構築することが好ましく、空気中の酸素および水面の水に接触する効率を高めて、空気中の酸素の還元反応(電極反応)を促進できる。例えば、微細孔を有する導電性の多孔質材料に樹脂バインダで導電性粒子(カーボン、不活性金属、金属酸化物など)を結着したものをカソードとして用いることで、毛細管現象及び表面の親水化等により水を効果的に吸い上げて、微細孔内部に水/空気の接触界面を形成させて、空気中の酸素と水とを効率良く接触させて酸素の還元反応を促進することができる。
さらに、カソードに白金族元素、銀、遷移金属元素から選ばれる少なくとも一種類を含有する合金あるいは化合物からなる触媒を担持することが好ましく、空気中の酸素の還元反応(電極反応)を促進することができる。白金族元素とは白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)またはイリジウム(Ir)を指し、いずれも電極触媒として有効である。また、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、チタン酸化物をドープした銀粉末を担持したもの、ファーネスブラック又はコロイド状グラファイトに銀を担持したもの、鉄(Fe)、コバルト(Co)、フタロシアニン、ヘミン、ペロブスカイト、Mn4N、金属ポルフィリン、MnO2、バナジン酸塩、またはY2O3-ZrO2複合酸化物を用いたものも電極触媒として好ましく用いることができる。カソード側の反応を促進するには、例えばテフロン(登録商標)をコーティングして撥水機能を持たせた多孔質なカーボンペーパーにおいて、白金微粒子を1mg(Pt)/1g(Carbon Black)以上担持させたカーボンブラックを陽イオン交換樹脂で固定化したものを好ましく用いることができる。この方法によって酸素とH+(水素イオン)が効率よく反応し、カソードの電位を高く維持することができる。
本発明において、アノードとカソードとは電力利用機器等に電気的に接続されて、両者間で電子交換を行って閉回路を形成する。その一方で、有機性物質の還元能を無駄なく電気エネルギーとして取り出すためには、有機性物質が酸化剤(被還元物質)、即ち空気中の酸素と接触して還元能を消費させないように、上記有機性物質と空気中の酸素が接触しないように両者を隔離することが好ましい。これらの条件を同時に満たすためには、カソードと嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物及び有機性物質を含む溶液又は懸濁液とを隔膜、例えば固体高分子隔膜で隔てることが望ましい。このような構造をとることにより、カソードは空気中の酸素と容易に接触することができ、また上記隔膜中に存在する水を介して水素イオンの受給または水酸化物イオンの排出を行うことができる。また、隔膜はできるだけ空気中の酸素を透過しないものがよく、アノード側、即ち有機性物質に酸素が浸透して有機性物質の還元能を低下させることを防ぐことが望ましい。
このような隔膜としては、親水性があり高い陽イオン交換能を有するスルホン酸基を有するフッ素樹脂系イオン交換膜(陽イオン交換膜)や、第4級アンモニウム塩を有する水酸化物イオン(陰イオン交換膜)などが好ましく用いられる。また、より安価な隔膜として主鎖部のみをフッ素化したフッ素樹脂系イオン交換膜や、芳香族炭化水素系膜も利用できる。このようなイオン交換膜としては、例えばIONICS製NEPTON CR61AZL-389、トクヤマ製NEOSEPTA CM-1または同CMB、旭硝子製Selemion CSV、IONICS製NEPTON AR103PZL、トクヤマ製NEOSEPTA AHA、旭硝子製Selemion ASVなどの市販製品を好ましく用いることができる。陽イオン交換膜は、カソードでの酸素の還元に必要な水素イオン及び水をアノードからカソードへ供給するために用いることができ、陰イオン交換膜は、水と酸素との反応から発生した水酸化物イオンをカソードからアノードへと供給するために用いることができる。
また、嫌気性域と好気性域とを隔離するために用いる隔膜としては、陰イオン交換膜を用いることもできる。具体的には、アンモニウムヒドロキシド基を有するヒドロキシドイオン交換膜を好ましく挙げることができる。このような陰イオン交換膜としては、例えば、IONICS製NEPTON AR103PZL-389、トクヤマ製NEOSEPTA ALE、旭硝子製Shelemion ASVなどの市販製品を好ましく用いることができる。この場合、嫌気性域に存在する有機酸などの陰イオン性の有機性物質が隔膜を透過して好気性域に至る(いわゆるクロスフローの現象)と、そこで酸素の消費が行われて有機物が無駄に酸化されるとともに好気性域において好気性の微生物が増殖してカソードを汚染することになるので、用いる陰イオン交換膜は分子篩い効果を持ち、酢酸などの分子量60以上の陰イオンを透過しにくい性質を持っていることが望ましい。このような性質を持つ陰イオン交換膜としては例えばアストム製ネオセプタALE04-4 A-0006膜がある。
さらに、本発明において用いることができる隔膜としては、官能基を有しないMF(マイクロフィルタ)、UF(ウルトラフィルタ)膜やセラミック、焼結ガラスなどの多孔質濾材、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン製の織布等を用いることができる。これらの官能基を有しない隔膜は、孔径が5μm以下で、非加圧条件でガスを透過しないものが好ましく、例えば、Schweiz Seidengazefabrik製のPE-10膜、Flon Industry製のNY1-HD膜などの市販品を好ましく用いることができる。
本発明の生物発電装置において、嫌気性域は、嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物の呼吸反応により、有機性物質由来の電子が微生物体内の電子伝達系を介して最終的にアノードに受け渡される微生物の酸化反応を進行させる微生物反応室でもあり、好気性域は、酸素を電子受容体とする還元反応を進行させる空気反応室でもある。本生物発電装置の嫌気性域には、嫌気性微生物とアノードの間で電子を伝達するために適切な電位を有する電子伝達媒体(電子メディエータ)が重合により固定化されているアノードを設けているので、微生物の最終還元酵素−電子伝達媒体−アノード間で有効な電位カスケードが形成される。
本生物発電装置において、嫌気性域(微生物反応室)と好気性域(空気反応室)を画定するための隔膜が陽イオン交換膜である場合、カソードにおいて水素イオンを利用する還元反応は、水素イオン濃度条件によっては本発明の発電に関与する全体の反応速度を制限する場合がある。すなわちアノードでの酸化反応が微生物によるものであるため、極端な酸性条件は微生物の活性を阻害するという理由で好ましくない可能性もある。また、水素イオン濃度が低濃度である場合、例えば、pH5以上の条件でアノード側において水素イオンが発生し、該水素イオンが拡散により陽イオン交換膜を透過してカソード側に供給されることとなる。このとき、カソード側における水素イオン濃度は10-5mol/L程度またはそれ以下と見積もられる。このように水素イオン濃度が低濃度条件になるとカソード側における酸素還元反応の速度が低下することとなり、また、アノード側の水素イオンが効率的にカソード側へと移動しないことも予想される。すなわち、このような場合には電池を形成する支持電解質としての電気抵抗(内部抵抗)が大きくなる可能性がある。一方、この反応系の利点は、常にアノード側からカソード側へと水および水素イオンの供給が行われるためにカソード側への水分の供給が充分に行われ、カソード側の酸素が膜を介してアノード側へ透過してアノード側の還元能を消費してしまう、いわゆるクロスフローの問題が生じにくいことである。
陽イオン交換膜を嫌気性域と好気性域の間の隔膜として用いた場合、カソード側の反応においては、空気中の酸素を消費して水が発生する。このため常に換気を行って酸素を補給するとともに、水分を除いてカソードが過度に濡れるのを防ぐ必要がある。ただし、このとき供給する空気の湿度及び流量によってカソード側の保水量が変化するため、乾燥−加湿の制御は適宜行うことが望ましい。空気の供給及び排出による換気の方法としては、開放系で自然に対流置換させる方法、カソードの周囲を外殻で被包して空気室を設けて、空気室内を通風機により強制換気する方法、同じく空気室を設けて、酸化還元反応により生じる熱で空気室内を暖め、対流を生じさせて空気と水蒸気を上昇させて換気する方法が考えられ、本発明の装置を設置する場所、規模等の条件に合わせて換気方法を採用することが好ましい。
一方、陰イオン交換膜を嫌気性域と好気性域の間の隔膜として用いた場合、すなわち、好気性域において水と酸素から水酸化物イオンを発生させる反応系を採用した場合には、好気性域は嫌気性域と比較して水の保持量が非常に小さいため、アノードでの水素イオン発生量と等モルの水酸化物イオンをカソードにおいて発生させれば、カソード側のpH、すなわち水酸化物イオン濃度を非常に高くすることができる。高濃度の水酸化物イオンは効率良く陰イオン交換膜を透過するので、支持電解質の電気抵抗(内部抵抗)を小さくすることができる。一方、この反応系は、常にカソード側からアノード側へのイオン移動が行われるためにカソード側への水供給が難しくなること、および上記イオン移動に伴ってカソード側の酸素が膜を介してアノード側へ透過してアノード側の還元能を消費してしまう、上述したクロスフローの問題が生じる可能性が有るという課題がある。
さらに、カソード側の反応においては、酸素とカソード表面の水が消費され、水酸化物イオンが発生する。このため、常に換気を行って酸素を補給するとともに、水分を補給してカソードが乾燥するのを防ぐ必要がある場合がある。特に、換気空気が乾燥している場合、アノード側からの浸透による水供給速度がカソードでの蒸発および還元反応による水消費速度を下回る場合には、該換気空気を加湿するか、水蒸気を添加することによりカソードへ水分を供給することが望ましい。
以上のように、嫌気性域と好気性域の間の隔膜として利用される陽イオン交換膜および陰イオン交換膜は、発電反応に関与する反応系を大きく変える効果を持ち、それぞれ長所と改善すべき課題を持つので、どちらを採用するかは装置の構造や用途、含水有機性物質の性質に応じて判断すべきである。
また、水素イオンまたは水酸化物イオンの移動効率を高めるためには、カソードと上記隔膜との間の距離はなるべく短いほうが良く、装置構造上可能であれば両者は接合していることが望ましい。特に、隔膜の一部がカソード電極の多孔質構造内部の空隙内に網目状に侵入して結合していると、多孔質構造中に含まれる空気と隔膜に含まれる水とで形成される水/空気接触界面の面積が飛躍的に増大するので、空気中の酸素を還元する反応効率が増大して発電性能を高めることができる。
同様に、水素イオンまたは水酸化物イオンの移動を容易にし、電解液系の電気抵抗を小さくするために、アノードと上記隔膜との距離もなるべく短くすることが望ましく、アノードと隔膜とが接触もしくは接合していることが好ましい。但し、この場合には、含水有機性物質が隔膜と接触してその中の水が隔膜に吸収されるようにするために、アノードは透水性を有する形態、例えば多孔質材料や網状材料で構成したり、或いは通水孔を有する形態、例えば格子状若しくは櫛状の形態とすることが必要である。また、アノードと隔膜とを接触させて配置することが装置の構造上困難な場合は、例えば、撹拌または循環水流を生じさせてアノードと隔膜との間を循環する水流を作るようにし、水素イオンまたは水酸化物イオンの移動を容易にすることが望ましい。
また、本発明の生物発電装置においては、有機性物質の電子を効率よくアノードに受け渡すことができるように、アノードの表面積を大きくすることが好ましい。また、アノードが有機性物質と効率よく接触し、アノードとカソードとの間でイオン交換が効率よく行われると同時にアノードとカソードとが電気的には絶縁していることが好ましい。そこで微生物反応室及び酸素反応室を内部に画定する反応容器の形態は、例えばアノードを筒型、例えば円筒形としてその中を有機性物質が流れる構造として、アノードとカソードとを隔膜を挟む3層状構造とすることが好ましい。また、含水有機性物質や増殖した微生物菌体が滞留するようなデッドゾーンを形成しないように考慮すべきである。このための一つの手法として、有機性物質とアノードとの接触効率を上げるために、撹拌装置もしくは循環水流発生装置を反応容器内部に設けることが好ましい。また、反応容器を気密な構造とする場合は、嫌気性ガスが容器内に蓄積して有効容積が低下することを防止するため、なんらかのガス抜きの機構を備えることが望ましい。この嫌気性ガスは流路を空洗する方法に利用することもできる。また、嫌気性域に嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物及び有機物質を含む溶液又は懸濁液の供給機構及び排出機構を設け、好気性域に酸素又は空気の供給機構及び排出機構を設けることも好ましい。
好ましい実施形態の説明
以下、添付図面を参照しながら、本発明による発電装置をより具体的に説明する。以下の記載は、本発明の技術思想を具現化する幾つかの具体的形態を説明するもので、本発明はこの記載に限定されるものではない。
図1は本発明の一態様に係る生物発電ユニットの具体例である。例えば、図1に示す本発明の生物発電装置の一具体例は、アノード基材にラジカル及び官能基を介して電子伝達媒体(電子メディエーター)が固定化されている生物発電用アノード1を含む嫌気性域4、隔膜(電解質膜)2、および多孔質カソード3を含む好気性域5が三重の筒状体をなすことによって構成される。筒状体の最内隔空間形態である嫌気性域4に嫌気性条件下で生育可能な微生物及び有機性物質(「基質」ともいう)を含む溶液又は懸濁液を流し、筒状体の最外隔空間形態である好気性域5には分子状酸素を含む空気を存在させる。好気性域5には、分子状酸素を供給する手段(図示せず)が設けられている。好気性域5内に配置されている多孔質カソードは、カソードの少なくとも一部が、構造体内に空隙を有する導電性の多孔質材料、網状又は繊維状材料によって形成されている。嫌気性域4と好気性域5とを隔離する隔膜2は、物質交換係数が大きな隔膜、たとえばDuPont社製のNafion(登録商標)、アストム社製ネオセプタ(登録商標)などの固体高分子電解質膜で構成されている。
嫌気性域4内では、有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応が進行し、好気性域5内では、酸素を電子受容体とする還元反応が進行する。こうして、アノード1とカソード3の間に電位差が生じる。この状態でアノード1とカソード3とを導線6によって電力利用機器に電気的に接続することにより電位差電流が流れ、一方、電解質膜2を介して嫌気性域4と好気性域5の間でイオンが移動することにより、閉回路が形成される。反応が進行するにつれて、嫌気性域4には水素イオンが発生し、嫌気性域の水溶液は酸性を呈する。一方、好気性域5には水酸化物イオンが発生して好気性域5内に発生する水はアルカリ性溶液となる。
好気性域5内に発生するアルカリ性水溶液を適宜回収して嫌気性域4内へ注入する流路(図示せず)を設けてもよい。この流路を通してアルカリ性水溶液を好気性域5から嫌気性域4に循環させることにより、嫌気性域4の水素イオン濃度が極端に上昇して微生物の呼吸活性を阻害したり、導入した塩基性官能基の中和能力を越えてしまったりするのを防ぐことができる。
発電ユニットを構成する筒状体の内径は、基質の流動性に応じ、数mmから数cm、場合によっては数十cmに設定することができる。図1に示すような発電ユニットは、適当な材料の支持層またはケーシングで保持することによりその物理的強度を増すことができる。この場合、筒状体を更に外殻で被包して外殻と筒状体との間の空間を空気室とし、空気室に空気を供給及び排出する手段を形成するようにしてもよい。
図示した実施形態においては、アノード1、隔膜2及びカソード3を円筒形とする3層構造を採用し、隔膜2を介してアノード1とカソード3とを配置している。このような構成とすることによって、アノード1及びカソード3の表面積を大きくし、アノード1が基質と効率良く接触して基質の動かないデッドゾーンをできるだけ小さくすることができるので、アノード1とカソード3との間でイオン交換が効率良く行われると同時に、アノード1とカソード3は電気的に絶縁され、有機性物質(基質)の電子が効率良くアノード1に受け渡されることになる。また、多孔質カソード3の空隙中に空気と水との接触界面を存在させた状態で空気と接触させることにより、空気中の酸素および水面の水に接触する効率を高めることができ、電極上での酸素の還元反応を効率良く進行させることができる。
図1に示すような三層筒状体の本発明に係る生物発電装置においては、用途に応じてアノードを含む嫌気性域を外側に、カソードを含む好気性域を内側に配置し、好気性域に空気を流通させる手段を配して該装置を基質液中に設置することで、発電運転を行うこともできる。また、この場合、筒状体を例えばU字型に形成し、両端を基質液の液面から出して、筒内部の空間に空気が流通できるようにしてもよい。このように好気性域を内筒とする構成の場合には、好気性域の内筒の内径を数mm程度またはそれ以下に小さくしても閉塞の生じる心配がない点が有利である。更に、三層筒状体において、内側の筒状体を多孔質カソードを含む好気性域、外側の筒状体をアノードを含む嫌気性域とすると、カソードに比較して外側のアノードの表面積を大きくすることができるので有利である。さらにアノードの表面積を広くするため、アノードの表面に凹凸や襞をもたせることも可能である。一方、カソード側の内径は、反応効率も関係するが、空気が容易に流通するだけの径があれば良く、閉塞の危険性がほとんどないため、内径を数mm程度またはそれ以下まで小さくすることが可能である。この場合、筒状体を更に外殻で被包して筒状体の外側空間を基質の流れる微生物反応室とし、微生物反応室に基質を供給及び排出する手段を配置することによって装置を構成することができる。
また、図1に示すような筒状形態又は他の形態の生物発電ユニットを複数個並べて生物発電装置を構成することもできる。例えば、図2には、図1の生物発電ユニットを複数個並べた形態を示し、図4には平板状の生物発電ユニットの形態を示す。
図2に示す生物発電装置においては、図1に示すようなアノードの内筒1、隔膜2及びカソードの外筒3から構成される三層筒状体(発電ユニット)50が複数本、外殻によって形成される空気室7の中に配置されている。基質は、流入ポンプ8により流入部9を介して複数配置された発電ユニット50の内部4へ分配注入される。ここで酸化分解を受けた基質は、流出部10を介して反応容器の外へ出た後、処理済み基質11として系外へ排出される。また、基質の一部は循環ポンプ12により再び流入部9へ戻される。この循環流によってアノード1と基質の接触が促進される。反応容器内に蓄積した微生物菌体及び汚泥は、経時的に余剰汚泥排出口13を開くことにより排出される。また、同じく13より、水、不活性ガス、嫌気ガスを注入することにより反応容器内を逆洗、空洗することができる。反応容器内で嫌気性ガスが発生した場合は、排気口19から排出することができる。この嫌気性ガスを貯留して空洗に使用してもよいことは上述したとおりである。
一方、多孔質カソード3に酸素を供給するため、ブロワ14を用いて空気室7へ通気を行うことができる。ただし用途に応じて強制換気が必要でない場合には、空気室7を取り外して、各発電ユニット50の外筒であるカソード3が外気に触れるように装置を構成してもよい。通気された空気は、空気室7内の発電ユニットの間の空間5を流れ、カソード3と接触した後に、排気口15から排出される。また、カソードでの還元反応により生成した水は、水蒸気として排気口15から排出されるか、凝縮水として凝縮水ドレイン16から排出される。
導線6は、アノードとの接続部17により複数の発電ユニット50の内筒1に、またカソードとの接続部18により複数の発電ユニット50の外筒3に電気的に接続される。この際、導線6は、周囲の環境と電気的に絶縁し、電気的短絡及び導線表面での酸化還元反応が起こらないようにすることが必要である。
なお、図2に示す装置についても、図1に関して上記に説明したのと同様に、カソードを内筒、アノードを外筒として各発電ユニットの筒状体50を構成し、各筒状体50内部空間へ空気を供給し、発電ユニット50の筒状体の外側のアノードに基質を接触させるようにすることもできる。
カソードについては、いかに効率良く電極上での酸素の還元反応を進行させるかが課題となる。このためには、カソードの少なくとも一部を、構造体内に空隙を有する導電性の多孔質材料、網状又は繊維状材料によって形成して、このカソードの空隙中に空気と水との接触界面を存在させた状態で空気と接触させることにより、空気中の酸素および水面の水に接触する効率を高めることが好ましい。
図3に本発明の生物発電装置において採用することのできるカソードの構造の一例を断面図で示す。図3(A)は、隔膜2及びカソード3の構造の断面を示したものであり、図3(B)は、図3(A)を空気室側5から見た図である。また、図3では、隔膜2が陽イオン交換膜である場合の反応系を示す。図3に示すカソードは、多孔質のマトリックス20に、好ましくは白金族元素、銀、遷移金属元素から選ばれる少なくとも一種類を含有する合金あるいは化合物からなる触媒21を担持する構造を有し(図3−A)、空気室側5から見た場合網目状の構造を呈している(図3−B)。このような構成を取ることにより、カソードが、水面または隔膜を経由する水を基材の親水性によって吸い上げつつ空気中の酸素と接触することができ、電極のミクロな構造中に空気ネットワーク22と水溶液ネットワーク23を持つことによって空気/水接触界面の面積を増大させ、空気中の酸素および水面の水に接触する効率を高めることができる。酸素と水素イオンが触媒21上で反応することにより、空気中の酸素の還元反応を促進することができる。
図3(C)に、本発明の生物発電装置において採用することのできるカソード構造の別の一例を示す。図3(C)においても、隔膜2が陽イオン交換膜である場合の反応系を示す。図3(C)に示すカソードは、隔膜2と同じ材料からなる溶液を、多孔質のマトリックス20の隔膜2との接合面側に塗布して乾燥させることによって、隔膜構造体の一部を多孔質マトリックス20の微細孔内部に浸入させたものである。このような構成を取ることにより、イオン交換および触媒の利用率を向上させ、空気中の酸素の還元反応を促進することができる。
以下、実施例により本発明を詳述するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
以下の実施例において、本発明の生物発電用アノードの発電性能を検証するため、図4に示す実験用の発電装置を使用した。発電ユニットは110mm×110mm×25mmのポリ塩化ビニル製の3面セルフレーム37を2個並べて、その間にセルフレーム38を組み合わせた。フレーム38の壁厚は5mmとし、電解質膜32で画定される3個のセルの内寸は100mm×100mm×20mmとした。
3面セルフレーム37とセルフレーム38の間に、ガスケット(シリコーンゴム製、厚さ2mm)を介して陽イオン交換膜(Dupont Nafion115)である電解質膜32を設け、セルフレーム37内に嫌気性域35を、セルフレーム38内に好気性域36をそれぞれ形成した。嫌気性域35にはアノード31を位置づけ、好気性域36にはカソード33を位置づけた。アノードには導線(図示せず)を接続した。カソード33はNafion 117(Dupont)5wt%イソプロパノール溶液(Wako.Chem.)によって白金担持カーボンブラック33aが担持された撥水加工処理済カーボンペーパー3(Pt loading 1mg/cm2)(Electro Chem)を使用し、電解質膜32とホットプレスで圧着させた。更にカソード33に密着するように電子コレクターとして白金メッシュ(田中貴金属製)34を配置した。電子コレクター34と電解質膜32との間には、触媒粒子33a周囲に拡散層33bが存在するように構成した。電子コレクター34には導線(図示せず)を接続してアノード31に接続されている導線と接続し回路を形成した。回路には無抵抗電流計及び電圧計を接続した(図示せず)。セルフレーム37及び38には基質及び空気用の流路を設け、セルフレーム37には基質の注入口39及び排出口40を、セルフレーム38には空気の通気口41及び排気口42を設けた。本装置の有効容積は、嫌気性域35では190mL、好気性域36では199mLであり、基質の滞留時間は500分間、空気の滞留時間は0.5分間となるように供給及び排出速度を調整した。電極の有効表面積は、アノード60cm2、カソード60cm2とした。
嫌気性域35には、運転開始前に、嫌気バイアル瓶にGeobacter metallireducens(ATCC 53774)及び表-4に記載する培地を仕込み、30℃で10日間培養した菌液を10mL添加した。
Figure 2007095470
運転開始から2日間は、微生物が付着するのを待つため通液を行わなかった。その後8日間は滞留時間を2日間として馴致させ、運転開始10日後より滞留時間500分間での通常運転とし、そのときのアノード、カソード間の電流、電位差(電圧)、及び外部の回路抵抗を測定した。
[実施例1]
アノード基材として多孔質グラファイト板を用い、ラジカル発生剤として4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)を利用して、官能基としてカルボキシ基を導入した後、電子メディエータとしてアントラキノン-2-カルボン酸(AQ-2-C)を固定化して、本発明の生物発電用アノードを作製した。対照として、20wt%硫酸中で電解酸化してカルボキシ基を導入した後、電子メディエータとしてアントラキノン-2-カルボン酸(AQ-2-C)を固定化して、対照アノードを作製した。
アノード基材としての多孔質グラファイト板(50×50×5mm)(G-100、(株)東海カーボン)を、還流冷却管を付けた500mLのセパラブルフラスコ(反応容器)内へ入れ、純水200mL及びラジカル発生剤として4、4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)1.12g(4mmol)(Wako Chem.)を加えた。還流及び撹拌を行いながら、反応容器を窒素雰囲気下で加熱し、徐々に液温を70℃まで上昇させ、反応容器内の温度を70℃に保持した。セパラブルフラスコ内部には8時間毎に、ラジカル発生剤4mmolを2度にわたって投入し、合計12mmolのラジカル発生剤を純水に加えた。ラジカル発生剤溶液中で多孔質グラファイト板を24時間反応させたところ、発生したシアノペンタン酸ラジカルが多孔質グラファイト板の炭素原子と置換反応により結合して、官能基(カルボキシ基)が導入された多孔質グラファイト板を得た。この官能基導入多孔質グラファイト板を、その後、イソプロパノール、メタノール、純水で順次24時間ずつ洗浄した。
多孔質グラファイト板表面に導入された官能基(カルボキシ基)量を測定するために、弱酸−強塩基塩水溶液であるNaHCO3水溶液を用いて逆滴定を行った。ブランクとして未処理の多孔質グラファイト板を用いた。試料(官能基導入多孔質グラファイト板)及びブランクを、それぞれ5mmol/LのNaHCO3水溶液200mLに浸してスターラーで撹拌しながら12時間反応させた(強酸性官能基が存在すれば炭酸が溶液中から追い出されるため、フェノールフタレイン変色域(pH8.5程度)までに要するアルカリ(NaOH)量が増加する)。反応終了後、試料及びブランクの多孔質グラファイト板を取り出し、フェノールフタレイン-メタノール溶液(1g/L)0.2mLを加え、10mmol/LのNaOH水溶液で滴定した(終点はpH8.5)。この滴定結果を用いて、多孔質グラファイト板表面上のカルボキシ基の密度を次式に基づいて計算した。
Figure 2007095470
本実施例におけるカルボキシ基導入密度は53mmol/m2であった。
このカルボキシ基導入多孔質グラファイト板を十分に乾燥させた後、ジクロロメタンを溶媒としてオキサリルクロリドを作用させ、カルボキシ基をカルボン酸クロリドとした。これを更にテトラヒドロフランを溶媒として、1,5-ペンタンジアミン(Wako Chem.)を反応させて、カルボキシ基とアミド結合を形成させることにより、多孔質グラファイト板表面にアミノ基を導入した。このアミノ基を導入した多孔質グラファイト板に対して、電子メディエータとなる酸化還元物質前駆物質であるアントラキノン-2-カルボン酸クロリド(東京化成工業)
Figure 2007095470
をアミノ基+酸クロリド→アミド結合の形成反応により、アントラキノン-2-カルボン酸(AQ-2-C)をアミド結合により多孔質グラファイト表面に固定化して、本発明の生物発電用アノードA(以後、「被検アノードA」という)を得た。
対照アノードとして、20w%硫酸中で15mA/cm2の電流密度で電解酸化することによりカルボキシ基を14mmol/m2の密度で導入して、カルボキシ基導入多孔質グラファイト板を得た以外は、上記手順と同様にして、電子メディエータとしてアントラキノン-2-カルボン酸を固定化した対照多孔質グラファイト板(50×50×5mm)(G-100、(株)東海カーボン)を得て、対照アノードA1とした。
こうして作製した被検アノードA及び対照アノードA1をそれぞれ図4に示す発電装置におけるアノード35として用い、基質として表-5に示す培地組成1を有する0.25mol/Lのグルコース水溶液を用いて、発電試験を行った。
Figure 2007095470
試験結果を表-6に示す。発生した電位差(電圧)、内部抵抗には大きな違いは無かったが、発生電流は本発明の生物発電用アノードAが対照アノードA1よりも2倍以上大きかった。どちらの系においても、発生電流量及び電圧はその後1週間の連続運転中ほぼ安定していた。
Figure 2007095470
[実施例2]
アノード基材として多孔質グラファイト板を用い、ラジカル発生剤として2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を用いて、多孔質グラファイト板に官能基としてアミノ基を導入した後、電子メディエータとしてアントラキノン-2-カルボン酸を固定化して、本発明の生物発電用アノードを作製した。対照として、熱濃混酸でニトロ基を導入した後にハイドロサルファイトナトリウムで還元することによりアミノ基を導入し、電子メディエータとしてアントラキノン-2-カルボン酸を固定化して、対照アノードを作製した。
アノード基材としての多孔質グラファイト板(50×50×5mm)(G-100、(株)東海カーボン)を、還流冷却管を付けた500mLのセパラブルフラスコ(反応容器)内へ入れ、更に純水を200mL、ラジカル発生剤として2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(Aldrich)を1.08g(4mmol)加えた。これを窒素雰囲気下で加熱し、徐々に液温を上昇させて還流しながら撹拌し、さらにセパラブルフラスコ内部に8時間毎に上記のラジカル発生剤の水溶液4mmolを滴下ロートで2度にわたって添加し、合計12mmolのラジカル発生剤を使用した。このようにして、ラジカル発生剤溶液中で多孔質グラファイト板を24時間反応させ、発生した2-メチルプロピオンアミジンラジカルが多孔質グラファイト板表面の炭素原子と置換反応により結合することにより、官能基(アミノ基)が導入された多孔質グラファイト板を得た。その後、イソプロパノール、メタノール、純水で順次24時間ずつ洗浄した。この官能基導入多孔質グラファイト板表面の外観は均一にやや黒ずんでいたが、基材表面に目視できるような腐食は認められなかった。
次に、多孔質グラファイト板表面の官能基(アミノ基)の量を測定するために、硫酸水溶液中で水素イオンの消費量を測定する逆滴定を行った。ブランクとして未処理の多孔質グラファイト板を用いた。このアミノ基導入多孔質グラファイト板(試料)及びブランクをそれぞれ2.5mmol/L H2SO4水溶液200mLに浸してスターラーで撹拌しながら12時間反応させた。反応終了後、試料及びブランクの多孔質グラファイト板を取り出し、それぞれフェノールフタレイン-メタノール溶液(1g/L)0.2mLを加え、0.1mmol/L NaOH水溶液で滴定した(終点はpH8.5)。試料(官能基導入多孔質グラファイト板)表面上のアミノ基の密度は次式に基づいて計算した。
Figure 2007095470
その結果、試料のアミノ基導入密度は44mmol/m2であった。このアミノ基導入多孔質グラファイト板に対して、電子メディエータとなる酸化還元物質前駆物質であるアントラキノン-2-カルボン酸クロリド(東京化成工業)をアミノ基+酸クロリド→アミド結合の形成反応により、アントラキノン-2-カルボン酸(AQ-2-C)をアミド結合により固定化して、本発明の生物発電用アノード(被検アノードB)を得た。
対照として、アノード基材としての多孔質グラファイト板(50×50×5mm)(G-100、(株)東海カーボン)を濃硝酸と濃硫酸を体積比1:1で混合した混酸200mL中で150℃、4時間反応させて、多孔質グラファイト板表面にニトロ基を導入し、次に、ハイドロサルファイトナトリウムを4時間反応させてニトロ基をアミノ基へ変換させた。次に、アントラキノン-2-カルボン酸クロリドを作用させ、アントラキノン-2-カルボン酸をアミド結合によって固定化した対照アノードB1を作製した。このとき、多孔質グラファイト板には、腐食がやや認められた。
こうして作製した被検アノードB及び対照アノードB1をそれぞれ図4に示す発電装置におけるアノード35として用い、基質として表-7に示す培地組成2を有するDesulfuromonas培地組成を参考に作製したオリジナルの培地を用いて、発電試験を行った。
Figure 2007095470
試験結果を表-8に示す。発生した電位差(電圧)には大きな違いは無かったが、発生電流は被検アノードBが対照アノードB1よりも3倍以上大きかった。どちらの系においても、発生電流量及び電圧はその後1週間の連続運転中ほぼ安定していた。
Figure 2007095470
[実施例3]
ラジカル発生剤として2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を使用して多孔質グラファイト板へ官能基導入を行った場合についての再現性を以下の実験を3系列で行うことにより確認した。
アノード基材としての多孔質グラファイト板(50×50×5mm)(G-100、(株)東海カーボン)を、還流冷却管を付けた3つの500mLのセパラブルフラスコ(反応容器)内へそれぞれ一枚ずつ入れ、実施例2と同様な方法でアミノ基を導入し、導入されたアミノ基量(密度)を測定した。その結果、アミノ基導入密度はそれぞれ43mmol/m2、44mmol/m2、44mmol/m2であり、実験系列間のアミノ基密度に有意差は認められなかった。
以上のことからラジカル発生剤を使用して多孔質グラファイト基材へ官能基を導入した場合、非常に良好な再現性を示すことが確認できた。
図1は、本発明の発電装置の構成を示す概念図である。 図2は、本発明の発電装置の構成例を示す概念図である。 図3は、本発明の発電装置に用いることができるカソード電極の構造の一例を示す概念図であり、図3Aは断面図、図3Bは図3Aの空気室側から見た平面図である。図3Cはカソード電極構造の別の一例を示す断面図である。 図4は、実施例で用いた本発明の発電装置の構成を示す概念図である。
符号の説明
1:生物発電用アノード(電子メディエータ固定化多孔質グラファイト)
2:隔膜
3:カソード
4:内筒体内部
5:筒状体周囲の空間
6:導線
7:空気室
8:流入ポンプ
9:流入部
10:流出部
11:処理済み有機性物質排出部
12:循環ポンプ
13:余剰汚泥排出口
14:空気ブロワ
15:排気口
16:凝縮水ドレイン
17:アノードとの接続部
18:カソードとの接続部
19:排気口
20:多孔質マトリックス
21:触媒
22:空気ネットワーク
23:水溶液ネットワーク
31:アノード
32:電解質膜
33:カソード
33a:白金坦持カーボンブラック
33b:空気拡散層
34:白金メッシュ(電子コレクター)
35:嫌気性域(微生物反応室)
36:好気性域(空気反応室)
37:三面セルフレーム(嫌気性域:アノード側)
38:セルフレーム(好気性域:カソード側)
39:含水有機性物質注入口
40:分解廃液排出口
41:空気注入口(通気口)
42:空気排出口(排気口)

Claims (11)

  1. アノード基材と、該アノード基材表面に結合しているラジカル部位と、該ラジカル部位と結合している官能基部位と、該官能基部位と結合している電子メディエータと、を含む生物発電用アノード。
  2. 前記アノード基材は、グラファイト、多孔質グラファイト、グラファイトフェルト、グラファイトクロスからなる群より選択されるグラファイト類、及びカーボンクロス、活性炭繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、カーボンファイバー、フラーレン類、気相成長炭素繊維からなる群より選択される炭素系材料を含有する導電性成形体から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の生物発電用アノード。
  3. 前記ラジカル部位が結合しているアノード基材は、
    Figure 2007095470
    からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1又は2に記載の生物発電用アノード。
  4. 前記官能基部位は、場合によって置換されていてもよい直鎖式、枝分れ式又は環式の炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン、−OR、−COR、−COOR、−OCOR、−COONa、−COOK、−COO-NR4 +、−CN、−SO3Na、−SO3K、−SO3H、−NR3+、−NR(COR)、−CONR2、−NO2、−OPO(OH)2、−PO(OH)2、−PO3HNa、−PO3Na2、−N=NR、−N2 +X-、−NR3 +X-(式中、Rは水素、炭素数が1〜20のアルキル基又はアリール基、Xはハロゲン原子、無機酸又は有機酸のアニオンを示す)からなる群から選択される1種類又は複数種類の組み合わせからなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生物発電用アノード。
  5. 前記電子メディエータは、アントラキノンカルボン酸類(AQC)、アミノアントラキノン類(AAQ)、ジアミノアントラキノン類(DAAQ)、アントラキノンスルホン酸類(AQS)、ジアミノアントラキノンスルホン酸類(DAAQS)、アントラキノンジスルホン酸類(AQDS)、ジアミノアントラキノンジスルホン酸類(DAAQ DS)、メチルアントラキノン類(EAQ)、メチルナフトキノン類(MNQ)、メチルアミノナフトキノン類(MANQ)、ブロモメチルアミノナフトキノン類(BrMANQ)、ジメチルナフトキノン類(DMNQ)、ジメチルアミノナフトキノン類(DMANQ)、ラパコール(LpQ)、ヒドロキシ(メチルブテニル)アミノナフトキノン類(ALpQ)、ナフトキノンスルホン酸類(NQS)、トリメチルアミノベンゾキノン類(TMABQ)、メタニルイエロー、メチルオレンジ、フラビンモノヌクレオチド(FMN)およびこれらの誘導体からなる群より選ばれる1つ以上の酸化還元物質である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物発電用アノード。
  6. pH7における標準電極電位が-0.13V〜-0.28Vの範囲にある、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物発電用アノード。
  7. アノード基材表面と化学結合するラジカル部位及び電子メディエータと化学結合する官能基部位又は該官能基に変換可能な前駆体官能基部位を具備するラジカル発生剤と、アノード基材と、を反応させて、アノード基材表面にラジカル部位及び官能基部位を導入する工程と、
    該アノード基材に導入された官能基部位に電子メディエータを反応させて、官能基部位に電子メディエータを化学結合させて、アノード基材に電子メディエータを導入する工程と、
    を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の生物発電用アノードを製造する方法。
  8. 前記ラジカル発生剤は、
    Figure 2007095470
    (式中、Tは、場合によって置換されていてもよい直鎖式、枝分れ式又は環式の炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン、−OR、−COR、−COOR、−OCOR、−COONa、−COOK、−COO-NR4 +、−CN、−SO3Na、−SO3K、−SO3H、−NR3+、−NR(COR)、−CONR2、−NO2、−OPO(OH)2、−PO(OH)2、−PO3HNa、−PO3Na2、−N=NR、−N2 +X-、−NR3 +X-(式中、Rは水素、炭素数が1〜20のアルキル基もしくはアリール基又はポリエチレングリコール基又はポリシロキサン基を示し、Xはハロゲン原子、無機酸又は有機酸のアニオンを示す)からなる群から選択される1種類又は複数種類の組み合わせからなる前記電子メディエータと化学結合する官能基部位又は該官能基に変換可能な前駆体官能基部位を表す)
    から選択される、請求項7に記載の方法。
  9. 前記ラジカル発生剤は、アゾニトリル化合物、アジド化合物、次亜硝酸化合物、パーオキシジカーボネート化合物からなる群より選択される1種以上の化合物である、請求項7又は8に記載の方法。
  10. 嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液、請求項1〜6のいずれか1項に記載の生物発電用アノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域と、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備し、該アノード及び該カソードを電力利用機器に電気的に接続して閉回路を形成し、該嫌気性域内での有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応と該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用して発電する発電装置。
  11. 嫌気性雰囲気下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液、請求項1〜6のいずれか1項に記載の生物発電用アノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域と、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備し、該アノード及び該カソードを電力利用機器に電気的に接続して閉回路を形成し、該嫌気性域内での有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応と該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用して発電する発電方法。
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