JPWO2006098106A1 - 助手席用エアバッグ装置 - Google Patents

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Abstract

簡易な構成でありながら、インパネに加わる外力を十分に吸収可能な助手席用エアバッグ装置を提供することを課題とする。本発明に係る助手席用エアバッグ装置は、膨張展開可能な状態で収容されるエアバッグと、前記車両に対して固定され、前記エアバッグを収容するエアバッグ容器と、前記エアバッグ容器の上部を覆うカバーと、前記エアバッグを膨張展開させる膨張ガスを供給するガス供給部とを備えている。前記カバーは、前記インストルメントパネルと略面一となるカバー表面部と、当該カバー表面部から略垂直に前記エアバッグ容器方向内側に延びるカバー延長部とを有する。前記カバー延長部には、長穴状の係止穴が複数形成されている。そして、前記エアバッグ容器の側面には、当該側面からほぼ垂直に延び、前記係止穴に挿通してスライド可能な複数のフックが設けられている。

Description

本発明は、車両のインストルメントパネル(インパネ)の内部に配置され、助手席に着座する乗員を保護するエアバッグ装置に関する。
助手席用エアバッグ装置においては、折り畳まれたエアバッグが容器に収容され、容器上部には、エアバッグを被うようにカバーが取り付けられる。車両衝突時には、インフレータが作動してエアバッグが室内に向かって大きく展開し、乗員の保護が図られる。
インストルメントパネルについては、エアバッグが展開しない程度の低速時の衝突等において、乗員がぶつかったときの衝撃(インパネ衝撃)を吸収し得るように、凹陥変形する特性が法規で規定されている(インパネ衝撃規制)。
助手席用エアバッグ装置の容器は、インパネ衝撃規制を満たすように変形可能な特性が要求される一方で、展開しつつあるエアバッグに内側から押されても大きく変形しない強度も要求される。従って、単にインパネ衝撃規制をクリアするためにコンテナを脆弱にしたのでは、エアバッグ装置としては不適当となる。
特開平8−225049号公報には、前面が開放した箱形のコンテナ(容器)を、インフレータが取り付けられる後半部と、インパネ衝撃によって該後半部に対し後方へ移動可能に取り付けられた前半部とで構成したエアバッグ装置が示されている。インパネ衝撃によってインパネ及びリッド(カバー)が押圧されると、該コンテナの前半部が後方に移動するため、インパネの変形がコンテナの影響を受けないとされている。すなわち、コンテナが十分な耐エアバッグ展開衝撃強度を有し、しかも大きなインパネ衝撃が加えられたときには速やかに変形する助手席用エアバッグ装置を提供可能としている。
特開平8−225049号公報
しかしながら、特開平8−225049号公報に開示された発明では、エアバッグ容器を、インフレータが取り付けられた後半部と、インパネ衝撃によって該後半部に対し後方へ移動可能に取り付けられた前半部とに分けて構成するなど、構造が複雑になるという問題があった。
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でありながら、インパネに加わる外力を十分に吸収可能な助手席用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る助手席用エアバッグ装置は、膨張展開可能な状態で収容されるエアバッグと、前記車両に対して固定され、前記エアバッグを収容するエアバッグ容器と、前記エアバッグ容器の上部を覆うカバーと、前記エアバッグを膨張展開させる膨張ガスを供給するガス供給部とを備えている。前記カバーは、前記インストルメントパネルと略面一となるカバー表面部と、当該カバー表面部から略垂直に前記エアバッグ容器方向内側に延びるカバー延長部とを有する。前記カバー延長部には、長穴状の係止穴が複数形成されている。そして、前記エアバッグ容器の側面には、当該側面からほぼ垂直に延び、前記係止穴に挿通してスライド可能な複数のフックが設けられている。
ここで、「エアバッグ容器が車両に対して固定」とは、直接固定される場合の他、別部材を介して機械的に固定される場合も含む意味である。前記カバーは、少なくとも組み立て後の状態においてはインストルメントパネルの一部と見なすことができる。エアバッグ容器の側面に形成される複数のフックの外端部は、上方向又は下方向に屈曲した鍵状又はU字状とすることができる。カバー延長部に形成される係止穴は、例えば、長方形状や楕円状とすることができる。また、係止穴の数は特に限定されない。
好ましくは、前記係止穴の長さは、前記インストルメントパネルの衝撃吸収性能として要求される基準ストロークよりも大きくする。「要求される基準ストローク」とは、安全規格等を満足するためのストローク量である。すなわち、安全規格によってインパネで吸収されるべきエネルギー量(加速度)が規定されており、その吸収されるべきエネルギー量から、インパネの材質、強度、形状、その他保持部材の位置やその方法、形状まで周辺の全てのエネルギー吸収状況を加味し、逆算してインパネ自体が十分に残りのエネルギーを吸収するのに必要な変形ストローク量を求める。この求められた変形ストローク量の値を「基準ストローク量」とする。従って、この基準ストローク量は、車種によって異なることとなる。
エアバッグカバーは、ある程度弾性変形可能な樹脂で成形することができる。前記係止穴には内側を向く突出部を形成し、外力が加わらない状態では前記突出部によって前記フックの位置が規制され、一定以上の外力が加わった場合に前記フックが前記突出部を乗り越えてスライドが可能な構成を採ることが好ましい。一定以上の外力が加わり前記フックが前記突出部に当接したときに、係止穴が外側に向かって弾性的に広がり、又は突出部自体が破壊(塑性変形)することにより、フックが突出部を乗り越えて上方にスライドする。なお、係止穴内部に設けた突出部を含む他の衝撃吸収手段や、エアバッグ装置やその周辺部に衝撃吸収機能を設けた場合には、係止穴における衝撃吸収のストロークは、必要とされるストロークよりも短くてもよく、半分やそれ以下であってもよい。また、係止穴に形成された突出部は、一対又は単一とすることができる。
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例に係るエアバッグ装置の使用状態を示す模式図である。図2は、実施例に係るエアバッグ装置の要部の構成を示す斜視図である。図3は、実施例に係るエアバッグ装置の要部の構造を示す拡大斜視図(一部断面)である。本実施例に係る助手席用エアバッグ装置は、車両のインストルメントパネル(インパネ)10の内部に配置される助手席用エアバッグ装置であり、膨張展開可能な状態で収容されるエアバッグ20と、車両に対して固定され、エアバッグ20を収容するエアバッグ容器12と、エアバッグ容器12の上部を覆うカバー18と、エアバッグ20を膨張展開させる膨張ガスを供給するガス供給部としてのインフレータ14とを備えている。
カバー18は、インパネ10と略面一となる若干湾曲したカバー表面部18aと、当該カバー表面部18aから略垂直にエアバッグ容器12方向(内側)に延びるカバー延長部(脚部)18bとを有する。カバー延長部18bには、長穴状の係止穴22が複数形成されている。エアバッグ容器12の側面には、当該側面からほぼ垂直に延び、係止穴22に挿通してスライド可能な複数のフック16が設けられている。フック16の位置は、エアバッグ容器12外面の乗員Mに対して前後方向でなく、左右方向とすることも可能である。エアバッグ容器12とカバー18との間には、衝撃吸収のための一定の隙間が形成されている。エアバッグ容器12は、インフレータ14及び/又は他の部材を介して車両に対して固定されている。
本実施例においては、エアバッグ容器12は、矩形箱形に成形されているが、角部にアールを付ける等、他の形状とすることもできる。インフレータ14は、エアバッグ容器12の内部に収容する構造とすることもできる。エアバッグ20は、袋状に成形され、折り畳まれた状態でエアバッグ容器12の内部に収容される。エアバッグ容器12の上部は開放され、エアバッグ20が露出した状態となっているが、エアバッグ20の良好な膨張展開を妨げない何らかの弱い規制部材を配置することもできる。
図3に示すように、係止穴22の縦方向(ストローク方向)の長さHは、インパネの衝撃吸収性能として要求される基準ストロークよりも大きくする。例えば、エネルギー吸収時にインパネが変形するのに必要な変形ストローク量が50mmとした場合、それよりも大きな60mm程度とすることが出来る。係止穴22の幅はフック16の幅よりも若干大きく、フック16との相対的なストロークを阻害しない工夫がなされている。
上記のような構成のエアバッグ装置を組み立てる際には、先ず、図2に示すようにエアバッグ20を収容したエアバッグ容器12と、インパネ10とは分離しているカバー18とを用意する。次に、エアバッグ容器12をカバー18に対して取り付けるべく、延長部18bを幅方向に押し広げながらフック16を対応する係止穴22に入れる。その後、エアバッグ容器12と組み合わせられたカバー18を、インパネ10に対して取り付ける。
図4は、実施例に係るエアバッグ装置の動作を示す説明図であり、(A)がインパネ10に対して外力が加わってない状態、(B)がインパネ10に対して外力が加わっている状態を示す。(A)に示すように、インパネ10(カバー18)に対して外力が加わっていない正常な状態では、エアバッグ容器12のフック16がカバー延長部18bの係止穴22の下方に位置する。(B)に示すように、乗員Mがインパネ10(カバー18)に頭部をぶつける等して外力が加わると、カバー18が押し下げられ、エアバッグ容器12のフック16が係止穴22に沿って相対的に上昇する。このように、インパネ10(カバー18)自体の変形によって乗員Mへの衝撃力が緩和される。
図5は、本発明に係るエアバッグ装置の要部である係止穴の他の形状例を示す説明図である。図5の例では、カバー延長部18bに形成される係止穴122には、内側を向く突出部122cが形成され、当該突出部122cによって係止穴122が下側の第1エリア122aと上側の第2エリア122bとに区分される。そして、インパネ10に対して外力が加わらない状態では、当該突出部122cによってフック16が第1エリア122a内に位置するように規制される。これにより、エアバッグ容器12の車両への取付性向上を図れる他、ガタつきが軽減される等のメリットもある。一方、インパネ10に対して一定以上の外力が加わった場合には、フック16が当該突出部122cを超えてスライドし、上方の第2エリア122bに達する。すなわち、一定以上の外力が加わりフック16が突出部122cに当接したときに、係止穴122が外側に向かって弾性的に広がり、又は、突出部122cが破壊することにより、フック16が突出部122cを乗り越えて上方にスライドする。本例のように、係止穴122を2段構造とすることにより、初期の段階で大きなエネルギーを吸収し、衝撃力を更に小さくすることが可能となる。
係止穴122については、第1エリア122aを第2エリア122bよりも小さくすることが好ましい。例えば、第1エリア122aの高さをフック116の高さより若干大きい程度にすることができる。これにより、第2エリア122b内において十分なストローク長を確保しつつ、第1エリア内において初期の段階で衝撃を大きく吸収することが可能となる。突出部122cによって規制される係止穴122の最狭部の幅W0は、フック116の幅W1よりも小さく、具体的には、カバー18の吸収エネルギーを考慮して決定することが好ましい。なお、突出部122cは左右一対形成する他に、片側のみに形成する構成とすることも可能である。
図6は、本発明に係るエアバッグ装置の作用(荷重ストロークと衝撃力との関係)を示すグラフである。図中、(1)は係止穴の形状を略正方形とし、フックのストローク長を短くした比較例のデータ、(2)は図3等に示す実施例のデータ、(3)は図5に示す実施例のデータである。グラフから明らかなように、正方形(ストローク幅が狭い)係止穴を採用した場合には、乗員Mに対して一度に大きな衝撃力がかかる。(2)の場合には、インパネ10とエアバッグ容器12の相対的な移動(ストローク)によって、かなり衝撃力が緩和される。
(3)の場合には、ひょうたん状の係止穴122の作用により、フック16が突出部122cを乗り越える際に、一旦大きなエネルギー吸収が起こり、その後更に、第2エリア122bの範囲内でのインパネ10とエアバッグ容器12の相対的な移動よって、衝撃力が効果的に緩和される。
図7は、本発明に係るエアバッグ装置の要部であるフックの他の形状例を示す説明図である。エアバッグ容器12の側面に形成される複数のフックの外端部は、(A)に示すように上方向に屈曲した形状116を採用することも可能だが、(B)に示すように下方向に屈曲した形状216とすることが好ましい。(B)に示す形状を採用した場合、インパネ衝撃に対しては係止穴から外れるが、エアバッグの展開時には引っ掛かって外れ防止に効果を発揮するという利点がある。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲に示された技術的思想の範疇において変更可能なものである。
図1は、本発明の実施例に係るエアバッグ装置の使用状態を示す模式図である。 図2は、実施例に係るエアバッグ装置の要部の構成を示す斜視図である。 図3は、実施例に係るエアバッグ装置の要部の構造を示す拡大斜視図(一部断面)である。 図4は、実施例に係るエアバッグ装置の動作を示す説明図であり、(A)がインパネに対して外力が加わってない状態、(B)がインパネに対して外力が加わっている状態を示す。 図5は、本発明に係るエアバッグ装置の要部である係止穴の他の形状例を示す説明図である。 図6は、本発明に係るエアバッグ装置の作用(荷重ストロークと衝撃力との関係)を示すグラフである。 図7は、本発明に係るエアバッグ装置の要部であるフックの他の形状例を示す説明図である。
符号の説明
10 インパネ
12 エアバッグ容器
14 インフレータ
16,116,216 フック
18 カバー表面部
18b カバー延長部
20 エアバッグ
22,122 係止穴
122a 第1エリア
122b 第2エリア

Claims (4)

  1. 車両のインストルメントパネルの内部に配置される助手席用エアバッグ装置において、
    膨張展開可能な状態で収容されるエアバッグと、
    前記車両に対して固定され、前記エアバッグを収容するエアバッグ容器と、
    前記エアバッグ容器の上部を覆うカバーと、
    前記エアバッグを膨張展開させる膨張ガスを供給するガス供給部とを備え、
    前記カバーは、前記インストルメントパネルと略面一となるカバー表面部と、当該カバー表面部から略垂直に前記エアバッグ容器方向内側に延びるカバー延長部とを有し、
    前記カバー延長部には、長穴状の係止穴が複数形成され、
    前記エアバッグ容器の側面には、当該側面からほぼ垂直に延び、前記係止穴に挿通して相対的にスライド可能な複数のフックが設けられていることを特徴とするエアバッグ装置。
  2. 前記係止穴の長さは、前記インストルメントパネルの衝撃吸収性能として要求される基準ストロークよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
  3. 前記係止穴には内側を向く突出部が形成され、当該突出部によって前記係止穴が第1エリアと第2エリアに区分され、前記インストルメントパネルに対して外力が加わらない状態では当該突出部によって前記フックが前記第1エリア内に位置するように規制され、前記インストルメントパネルに対して一定以上の外力が加わった場合に当該規制が解除され、前記フックが当該突出部を超えてスライドし前記第2エリアに達する構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
  4. 前記突出部による前記フックの位置規制の解除は、当該突出部を含む前記係止穴の弾性変形又は塑性変形によって実現されることを特徴とする請求項3に記載のエアバッグ装置。
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