図1には、本発明の一実施形態に係るリソグラフィシステム110の全体構成が概略的に示されている。
このリソグラフィシステム110は、N台の露光装置1001、1002、……、100N、重ね合わせ測定器120、集中情報サーバ130、ターミナルサーバ140及びホストコンピュータ150等を備えている。露光装置1001〜100N、重ね合わせ測定器120、集中情報サーバ130及びターミナルサーバ140は、ローカルエリアネットワーク(LAN)160を介して相互に接続されている。また、ホストコンピュータ150は、ターミナルサーバ140を介してLAN160に接続されている。すなわち、ハードウェア構成上では、露光装置100i(i=1〜N)、重ね合わせ測定器120、集中情報サーバ130、ターミナルサーバ140及びホストコンピュータ150の相互間の通信経路が確保されている。
露光装置1001〜100Nのそれぞれは、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆる「ステッパ」)であっても良いし、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(以下、「走査型露光装置」という)であっても良い。なお、以下の説明においては、露光装置1001〜100Nの全てが、投影像の歪み調整能力を有する走査型露光装置であるものとする。特に、露光装置1001は、ショット領域間の非線形誤差の補正機能(以下、「グリッド補正機能」とも呼ぶ)を有する走査型露光装置であるものとする。露光装置1001〜100Nの構成等については、後述する。
前記重ね合わせ測定器120は、例えば、連続的に処理される多数ロット(1ロットは例えば25枚)のウエハについて、各ロットの先頭の数枚のウエハ、あるいはパイロットウエハ(テストウエハ)について重ね合わせ誤差測定を実行する。
すなわち、上記のパイロットウエハなどは、プロセスに従って所定の露光装置により露光が行われ、既に一層以上のパターンが形成された状態で、次層(レイヤ)以降で使用される可能性がある露光装置、例えば各露光装置100iに投入され、それらの露光装置により実際にレチクルのパターン(このパターンには少なくともレジストレーション計測マーク(重ね合わせ誤差計測マーク)が含まれる)が転写され、その後に現像などの処理が行われて、重ね合わせ測定器120に投入される。そして、その重ね合わせ測定器120は、投入されたウエハ上に異なる層の露光の際に形成されたレジストレーション計測マーク像(例えばレジスト像)同士の重ね合わせ誤差(相対位置誤差)を計測し、更に所定の演算を行って重ね合わせ誤差情報(次層(レイヤ)以降で使用される可能性がある露光装置の重ね合わせ誤差情報)を算出する。すなわち、重ね合わせ測定器120は、このようにして各パイロットウエハの重ね合わせ誤差情報を測定する。
重ね合わせ測定器120の制御系(不図示)は、LAN160を介して、集中情報サーバ130との間で通信を行い、後述する重ね合わせ誤差データ等の所定のデータの授受を行う。また、この重ね合わせ測定器120は、LAN160及びターミナルサーバ140を介して、ホストコンピュータ150との間で通信を行う。さらに、重ね合わせ測定器120は、LAN160を介して露光装置1001〜100Nとの間で通信を行うことも可能である。
前記集中情報サーバ130は、大容量記憶装置とプロセッサとから構成される。大容量記憶装置には、ウエハのロットに関する露光履歴データを記憶している。露光履歴データには、重ね合わせ測定器120で事前に各ロットのウエハに対応するパイロットウエハなどについて計測された各露光装置100iの重ね合わせ誤差情報(以下、「ロットのウエハの重ね合わせ誤差情報」と呼ぶ)の他、各層の露光時における各露光装置100iの結像特性の調整(補正)パラメータなどが含まれている。
本実施形態では、各ロットのウエハについて特定の層間の露光時における重ね合わせ誤差データは、前述の如く、重ね合わせ測定器120によりパイロットウエハ(テストウエハ)又は各ロットの先頭の数枚のウエハについて計測された重ね合わせ誤差情報に基づいて重ね合わせ測定器120の制御系(あるいはその他のコンピュータ)によって算出され、集中情報サーバ130の大容量記憶装置に格納される。
前記ターミナルサーバ140は、LAN160における通信プロトコルとホストコンピュータ150の通信プロトコルとの相違を吸収するためのゲートウエイプロセッサとして構成される。このターミナルサーバ140の機能によって、ホストコンピュータ150と、LAN160に接続された各露光装置1001〜100N及び重ね合わせ測定器120との間の通信が可能となる。
前記ホストコンピュータ150は大型のコンピュータで構成され、本実施形態では、少なくともリソグラフィ工程を含むウエハ処理工程の統括制御を行っている。
図2には、グリッド補正機能を有する走査型露光装置である露光装置1001の概略構成が示されている。グリッド補正機能とは、ウエハ上に既に形成された複数のショット領域相互間の位置誤差に平行移動成分であってかつ非線形な誤差成分が含まれている場合に、これを補正する機能を意味する。
露光装置1001は、照明系10、マスクとしてのレチクルRを保持するレチクルステージRST、投影光学系PL、感光物体としてのウエハWが搭載される移動体としてのウエハステージWST、及び装置全体を統括制御する主制御系20等を備えている。
前記照明系10は、例えば特開2001−313250号公報及びこれに対応する米国特許出願公開第2003/0025890号などに開示されるように、光源、オプティカルインテグレータを含む照度均一化光学系、リレーレンズ、可変NDフィルタ、レチクルブラインド(マスキングブレードとも呼ばれる)、及びダイクロイックミラー等(いずれも不図示)を含んで構成されている。この照明系10では、回路パターン等が描かれたレチクルR上のレチクルブラインドで規定されたスリット状の照明領域を照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。
ここで、照明光ILとしては、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの遠紫外光、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、あるいはF2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光などが用いられる。照明光ILとして、超高圧水銀ランプからの紫外域の輝線(g線、i線等)を用いることも可能である。また、オプティカルインテグレータとしては、フライアイレンズ、ロッドインテグレータ(内面反射型インテグレータ)、あるいは回折光学素子等が用いられる。なお、照明系10として特開平6-349701号公報及びこれに対応する米国特許第5,534,970号などに開示される構成を採用しても良い。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記各公報及び対応する米国特許又は米国特許出願公開における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
前記レチクルステージRST上には、レチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動部(不図示)によって照明系10の光軸(後述する投影光学系PLの光軸AXに一致)に垂直なXY平面内で微少駆動可能であるとともに、所定の走査方向(ここでは図1における紙面内左右方向であるY軸方向とする)に指定された走査速度で駆動可能となっている。
レチクルステージRSTのステージ移動面内の位置は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)16によって、移動鏡15を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計16からのレチクルステージRSTの位置情報はステージ制御系19及びこれを介して主制御系20に供給される。ステージ制御系19では、主制御系20からの指示に応じ、レチクルステージRSTの位置情報に基づいてレチクルステージ駆動部(図示省略)を介してレチクルステージRSTを駆動制御する。
レチクルRの上方には、一対のレチクルアライメント系22(但し、図1における紙面奥側のレチクルアライメント系は不図示)が、配置されている。この一対のレチクルアライメント系22は、ここでは図示が省略されているが、照明光ILと同じ波長の照明光にて検出対象のマークを照明するための落射照明系と、その検出対象のマークの像を撮像するためのアライメント顕微鏡とをそれぞれ含んで構成されている。アライメント顕微鏡は結像光学系と撮像素子とを含んでおり、アライメント顕微鏡による撮像結果は主制御系20に供給されている。この場合、レチクルRからの検出光をレチクルアライメント系22に導くための不図示の偏向ミラーが移動自在に配置されており、露光シーケンスが開始されると、主制御系20からの指令により、不図示の駆動装置により偏向ミラーはそれぞれレチクルアライメント系22と一体的に照明光ILの光路外に退避される。
前記投影光学系PLは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置され、その光軸AXの方向がZ軸方向とされている。投影光学系PLとしては、例えば両側テレセントリックな縮小系が用いられている。この投影光学系PLの投影倍率は例えば1/4、1/5あるいは1/6等である。このため、照明系10からの照明光ILによってレチクルRが照明されると、このレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明光ILの照射領域(前述の照明領域)内のレチクルRの回路パターンの縮小像(部分像)が表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上に形成される。
投影光学系PLとしては、図2に6枚のレンズ素子13を用いて代表的に示されるように、複数枚、例えば10〜20枚程度の屈折光学素子(レンズ素子)13のみから成る屈折系が用いられている。この投影光学系PLを構成する複数枚のレンズ素子13のうち、物体面側(レチクルR側)の複数枚のレンズ素子は、不図示の駆動素子、例えばピエゾ素子などによって、Z軸方向(投影光学系PLの光軸方向)にシフト駆動、及びXY面に対する傾斜方向(すなわちX軸回りの回転方向(θx方向)及びY軸回りの回転方向(θy方向))に駆動可能な可動レンズとなっている。そして、結像特性補正コントローラ48が、主制御系20からの指示に基づき、各駆動素子に対する印加電圧を独立して調整することにより、各可動レンズが個別に駆動され、投影光学系PLの種々の結像特性(倍率、ディストーション、非点収差、コマ収差、像面湾曲など)が調整されるようになっている。なお、結像特性補正コントローラ48は、光源を制御して照明光ILの中心波長をシフトさせることができ、可動レンズの移動と同様に中心波長のシフトにより結像特性を調整可能となっている。
前記ウエハステージWSTは、投影光学系PLの図1における下方で、不図示のベース上に配置され、例えばリニアモータ等を含むウエハステージ駆動部24によってY軸方向及びこれに直交するX軸方向(図1における紙面直交方向)に所定ストロークで駆動されるとともに、Z軸方向、θx方向、θy方向及びθz方向(Z軸回りの回転方向)に微小駆動可能な構成となっている。このウエハステージWST上には、ウエハホルダ25が載置され、このウエハホルダ25上にウエハWが例えば真空吸着等によって固定されている。
ウエハステージWSTのXY平面内での位置は、その上面に設けられた移動鏡17を介して、ウエハレーザ干渉計システム18によって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。ここで、実際には、ウエハステージWST上には、走査方向(Y軸方向)に直交する反射面を有するY移動鏡と非走査方向(X軸方向)に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられ、これに対応してウエハレーザ干渉計もY移動鏡に垂直に干渉計ビームを照射するY干渉計と、X移動鏡に垂直に干渉計ビームを照射するX干渉計とが設けられているが、図1ではこれらが代表的に移動鏡17、ウエハレーザ干渉計システム18として示されている。すなわち、本実施形態では、ウエハステージWSTの移動位置を規定する静止座標系(直交座標系)が、ウエハレーザ干渉計システム18のY干渉計及びX干渉計の測長軸によって規定されている。以下においては、この静止座標系を「ステージ座標系」とも呼ぶ。なお、ウエハステージWSTの端面を鏡面加工して、前述した干渉計ビームの反射面(Y移動鏡、X移動鏡の反射面に相当)を形成しても良い。
ウエハステージWSTのステージ座標系上における位置情報(又は速度情報)はステージ制御系19及びこれを介して主制御系20に供給される。ステージ制御系19では、主制御系20の指示に応じ、ウエハステージWSTの上記位置情報(又は速度情報)に基づき、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTを制御する。
また、ウエハステージWST上のウエハWの近傍には、基準マーク板FMが固定されている。この基準マーク板FMの表面は、ウエハWの表面と同じ高さに設定され、この表面にはアライメント系のベースライン計測用の基準マーク及びレチクルアライメント用の基準マークその他の基準マークが形成されている。
投影光学系PLの側面には、オフアクシス方式のアライメント系ASが設けられている。このアライメント系ASとしては、ここでは、例えば特開平2−54103号公報及びこれに対応する米国特許第4,962,318号などに開示されているような(Field Image Alignment(FIA)系)のアライメントセンサが用いられている。このアライメント系ASは、所定の波長幅を有する照明光(例えば白色光)をウエハに照射し、ウエハ上のアライメントマークの像と、ウエハと共役な面内に配置された指標板上の指標マークの像とを、対物レンズ等によって、撮像素子(CCDカメラ等)の受光面上に結像して検出するものである。アライメント系ASはアライメントマーク(及び基準マーク板FM上の基準マーク)の撮像結果を、主制御系20へ向けて出力する。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
露光装置1001には、さらに、投影光学系PLの最良結像面に向けて複数のスリット像を形成するための結像光束を光軸AX方向に対して斜め方向より供給する不図示の照射光学系と、その結像光束のウエハWの表面での各反射光束をそれぞれスリットを介して受光する不図示の受光光学系とから成る斜入射方式の多点フォーカス検出系が、投影光学系PLを支える支持部(図示省略)に固定されている。この多点フォーカス検出系としては、例えば特開平6−283403号公報及びこれに対応する米国特許第5,448,332号などに開示されるものと同様の構成のものが用いられ、ステージ制御系19はこの多点フォーカス検出系からのウエハ位置情報に基づいてウエハステージWSTをウエハステージ駆動部24を介してZ軸方向及び傾斜方向(θx方向及びθy方向)に微小駆動して、ウエハWのフォーカス・レベリング制御を行う。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
主制御系20は、マイクロコンピュータ又はワークステーションを含んで構成され、装置の構成各部を統括して制御する。主制御系20は、前述したLAN160に接続されている。また、本実施形態では、主制御系20が備えるハードディスク等の記憶装置には、露光装置1001が使用する可能性があるショットマップデータとサンプルショット領域の選択との全ての組み合わせについて、各ショット領域の個別の基準位置(例えば設計位置)からの位置ずれ量の非線形成分を補正するための補正情報から成る補正マップがデータベースとして格納されている。前記補正マップは、後述する第2のグリッド補正機能で用いられる。また、主制御系20を構成するRAM等のメモリには、図3に示されるようなデータテーブルが格納されている。このデータテーブルの第1行目は、それぞれのタイトルが記憶された領域でデータの書き換えが行われない領域である。第2行目以下は、データが格納される領域で、データの書き換えが行われる領域である。このデータテーブルの第1列目、すなわち工程名nの領域は、ホストコンピュータ150から与えられる露光条件の設定プログラムであるプロセスプログラムに対応する工程名A,B、C、……が格納される領域である。本実施形態では、この工程名nの領域には、一連の露光処理で指定される可能性のある工程名A、B、C、……が予め格納されているものとする。このデータテーブルの第2列目は、対象ロットが工程名n(A,B、C、……)の処理が行われる何番目のロットであるかを示すパラメータMnの値が格納される領域であり、初期状態では全て1が設定されている。また、データテーブルの第3列目は、後述する第1のグリッド補正機能で用いられる補正マップの格納領域であり、初期状態では何も格納されていない。
なお、上記のデータベース(第2のグリッド補正機能で用いられる複数種類の補正マップから成る)の作成は、基準ウエハの作成並びに基準ウエハ上のマークの計測及びマーク計測結果に基づくデータベースの作成の手順で行われるが、その具体的な方法については、前述の米国特許出願公開第2002/0042664号明細書に詳細に開示されている。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び米国特許出願公開における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
その他の露光装置1002〜100Nも、主制御系のアルゴリズムの一部が異なる点、並びにハードディスク等の記憶装置に上記データベースが格納されていない点及びRAM等のメモリにデータテーブルが用意されていない点を除き、露光装置1001と同様に構成されている。
次に、本実施形態のリソグラフィシステム110によるウエハの露光処理について、図4〜図13に基づいて説明する。
図4には、リソグラフィシステム110を構成するホストコンピュータ150によるウエハの露光処理に関する処理アルゴリズムが概略的に示されている。
なお、図4に示される露光処理に関するアルゴリズムの実行の前提として、露光対象となるウエハWは、既に1層以上の露光が行われたものであり、また、ウエハWの露光履歴データなどは集中情報サーバ130に記憶されているものとする。また、集中情報サーバ130には、重ね合わせ計測器120で計測された露光対象のロットのウエハWと同一のプロセスを経たパイロットウエハの重ね合わせ誤差情報も格納されているものとする。
まず、ステップ202において、ホストコンピュータ150は、ロットのウエハの処理を開始すべき状況になるのを待つ。そして、ロットのウエハの処理を開始すべき状況になると、ホストコンピュータ150は、次のステップ204に進み、露光対象ロットのウエハの重ね合わせ誤差情報を、ターミナルサーバ140及びLAN160を介して集中情報サーバ130から読み出し、解析する。
次のステップ206において、ホストコンピュータ150は、上記の解析の結果、そのロットのウエハWでは、ショット間誤差は所定値を越える非線形成分を含むか否かを判断する。
ここで、ショット間誤差とは、ウエハW上に既に形成された複数のショット領域相互間の位置誤差に平行移動成分が含まれるような場合を意味する。従って、ウエハW上のショット領域相互間の位置誤差が、ウエハ熱膨張、ステージグリッドの号機間(露光装置間)差及びプロセスに起因する変形成分のいずれも殆ど含まない場合にのみ、ショット間誤差が無視できるが、通常は、上記のいずれかの変形成分を含むためショット間誤差は無視できない。
そして、ステップ206における判断が否定された場合、すなわちショット間誤差はあるが線形成分(ウエハ倍率誤差、ウエハ直交度誤差、ウエハ回転誤差等)のみが含まれる場合には、ステップ208に移行する。このステップ208では、ホストコンピュータ150は、露光装置1001〜100Nのうちから選択した1台の露光装置100j(ここでは、説明を簡略化するため、この露光装置100jは予め定められているものとする)の主制御系にEGA方式のウエハアライメント及び露光を指示する。このとき、ホストコンピュータ150は、露光装置100jの主制御系へ露光指示を行うとともに露光条件の設定指示情報に対応するプロセスプログラム(露光条件の設定ファイル)名を指定する。
この一方、上記ステップ206における判断が肯定された場合、ホストコンピュータ150は、ステップ210に移行して、グリッド補正機能を有する露光装置(本実施形態では露光装置1001)を選択して露光を指示する。このとき、ホストコンピュータ150は、露光条件の設定の指示も併せて行う。
いずれの場合も、その後、ステップ212に進んで、ロットのウエハの露光処理が終了するのを待つ。
そして、上記ステップ208又はステップ210で露光を指示した露光装置から露光終了の通知がなされると、そのロットについての処理が終了したものと判断して、ステップ202に戻り、ロットのウエハの処理を開始すべき状況になるのを待つ。
そして、ロットのウエハの処理を開始すべき状況になると、上記ステップ204以下の処理を繰り返す。
すなわち、このようにして、ホストコンピュータ150では、複数のロットのウエハに関する処理を繰り返す。
ところで、上記ステップ206の判断が否定された場合に、上記ステップ208においてホストコンピュータ150から露光指示を受けた露光装置100jの主制御系では、図5のフローチャートに示される処理アルゴリズムに従って処理を行う。
まず、ステップ302において、ホストコンピュータ150から上記ステップ208において指定されたプロセスプログラムファイルを選択して、これに従って露光条件の設定を行う。
次のステップ304では、不図示のレチクルローダを用いてレチクルステージRST上にレチクルRをロードする。
次のステップ306では、基準マーク板FMを用いながらレチクルアライメント及びアライメント系ASのベースライン計測を行う。なお、ベースラインの計測手法に関しては、例えば特開平7-176468号公報及びこれに対応する米国特許5,646,413号等に開示されている。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
レチクルアライメント及びアライメント系ASのベースライン計測が終了すると、ステップ308に進む。
ステップ308では、露光対象のウエハWがロット(1ロットは例えば25枚)内の何枚目であるかを示す(ロット内のウエハ番号を示す)不図示のカウンタのカウント値mを「1」に初期化(m←1)した後、ステップ310に進む。
次のステップ310では、不図示のウエハローダを用いて図2のウエハホルダ25上の露光処理済みのウエハ(便宜上「W’」と呼ぶ)と未露光のウエハWとを交換する。但し、ウエハホルダ25上にウエハW’のない場合は、未露光のウエハWをウエハホルダ25上に単にロードする。
次のステップ312では、そのウエハホルダ25上にロードされたウエハWのサーチアライメントを行う。具体的には、例えば、ウエハW中心に関してほぼ対称に周辺部に位置する少なくとも2つのサーチアライメントマーク(以下、「サーチマーク」と略述する)をアライメント系ASを用いて検出する。これらの2つのサーチマークの検出は、それぞれのサーチマークがアライメント系ASの検出視野内に位置するように、ウエハステージWSTを順次位置決めしつつ、かつアライメント系ASの倍率を低倍率に設定して行われる。そして、アライメント系ASの検出結果(アライメント系ASの指標中心と各サーチマークとの相対位置関係)と各サーチマーク検出時のウエハ干渉計システム18の計測値とに基づいて2つのサーチマークのステージ座標系上の位置座標を求める。しかる後、2つのマークの位置座標からウエハW残留回転誤差を算出し、この残留回転誤差がほぼ零となるようにウエハホルダ25を微小回転させる。これにより、ウエハWのサーチアライメントが終了する。
次のステップ314では、通常のEGA(例えば8点EGA)により、ウエハW上の全ショット領域の位置座標(位置情報の推定値)を算出する。より具体的には、前述と同様にアライメント系ASを用いて(但し、アライメント系ASの倍率を高倍率に設定して)、ウエハW上の予め選択された8つのショット領域(サンプルショット領域)に付設されたウエハマークを計測し、それらのサンプルショット領域のステージ座標系上における位置座標を求める。そして、その求めたサンプルショット領域の位置座標とそれぞれの設計上の位置座標とに基づいて例えば前述の米国特許第4,780,617号明細書に開示されるような最小自乗法を用いた統計演算(後述する式(2)のEGA演算)を行い、後述する式(1)の6つのパラメータa〜f(ウエハ上の各ショット領域の配列に関するローテーションθ、X軸,Y軸方向のスケーリングSx,Sy、直交度Ort及びX軸,Y軸方向のオフセットOx、Oyの6つのパラメータに対応)を算出するとともに、この算出結果とショット領域の設計上の位置座標とに基づいて、全ショット領域の位置座標(配列座標)を算出する。そして、その算出結果を内部メモリの所定領域に記憶した後、ステップ316に進む。
ここで、説明は前後するが、EGA方式で行われている統計処理方法について簡単に説明する。ウエハ上のh(hは、h≧3なる整数、例えばh=8)個の特定ショット領域(サンプルショット領域)の設計上の配列座標を(Xn、Yn)(n=1、2、……、h)とし、設計上の配列座標からのずれ(ΔXn、ΔYn)について次式(1)で示されるような線形モデルを仮定する。
さらに、h個のサンプルショット領域の各々の実際の配列座標の設計上の配列座標からのずれ(計測値)を(Δxn、Δyn)としたとき、このずれと上記線形モデルで仮定される設計上の配列座標からのずれとの残差の二乗和Eは次式(2)で表される。
そこで、この式を最小にするようなパラメータa、b、c、d、e、fを求めれば良い。EGA方式では、上記の如くして算出されたパラメータa〜fと設計上の配列座標とに基づいて、ウエハ上の全てのショット領域の配列座標(推定値)が算出されることになる。
次のステップ316では、前述した内部メモリ内の所定領域に記憶された全ショット領域の配列座標と、予め計測したベースライン量とに基づいて、ウエハW上の各ショット領域の露光のための加速開始位置(走査開始位置)にウエハWを順次ステッピングさせる動作と、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとを走査方向に同期移動させつつレチクルパターンをウエハ上に転写する動作とを、繰り返して、ステップ・アンド・スキャン方式による露光動作を行う。これにより、ロット先頭(ロット内の第1枚目)のウエハWに対する露光処理が終了する。この際に、ウエハW上に既に形成されたショット領域間の位置誤差(線形成分)に起因する重ね合わせ誤差が補正された高精度な露光が行われる。
次のステップ318では、前述したカウンタのカウント値m>24が成立するか否かを判断することにより、ロット内の全てのウエハの露光が終了したか否かを判断する。ここでは、m=1であるから、この判断は否定され、ステップ320に進んで、カウンタのカウント値mをインクリメント(m←m+1)した後、ステップ310に戻る。
ステップ310において、不図示のウエハローダを用いて図2のウエハホルダ25上の露光処理済みのロット先頭のウエハとロット内の第2枚目のウエハWとを交換する。その後、前述したステップ312〜316の処理を第2枚目のウエハWに対して繰り返す。
上記のようにして、ロット内の第2枚目のウエハWの露光が終了すると、ステップ318に進み、ロット内の全てのウエハの露光が終了したか否かを判断するが、ここにおける判断は否定され、ステップ320でカウンタのカウント値mをインクリメント(m←m+1)した後、以降、ロット内の全てのウエハの露光が終了するまで、上記ステップ310〜ステップ320のループの処理、判断が繰り返し行われる。
そして、ロット内の全てのウエハの露光が終了し、ステップ318の判断が肯定されると、ステップ322に移行して、LAN160及びターミナルサーバ140を介して露光終了をホストコンピュータ150に通知した後、一連の処理を終了する。
この一方、前述の図4のステップ206の判断が肯定された場合に、上記ステップ210においてホストコンピュータ150から露光指示を受けた露光装置1001の主制御系20では、図6のフローチャートで示される処理アルゴリズムに従って処理を行う。
すなわち、まず、ステップ402において、LAN160を介して集中情報サーバ130にその露光対象ロットを中心とする前後の複数ロットについての自装置に関するロットのウエハの重ね合わせ誤差情報を問い合わせる。そして、次のステップ404において、上記の問い合わせの回答として、集中情報サーバ130から入手した複数ロットについての重ね合わせ誤差情報に基づいて、連続するロット間の重ね合わせ誤差を所定の閾値と比較して重ね合わせ誤差が大きいか否かを判断し、この判断が肯定された場合には、第1のグリッド補正機能を用いて重ね合わせ誤差を補正して、露光を行うサブルーチン406に進む。
このサブルーチン406では、まず、図7のステップ412において、前述のステップ210において、ホストコンピュータ150から露光指示とともに与えられた露光条件の設定指示情報に対応するプロセスプログラムファイルから工程名nを取得する。
ここで、工程名nは、前述の図3のデータテーブル内に格納されている、一連の露光処理で指定される可能性のある工程名A、B、C、……のいずれかとなる。ここでは、工程名nとして、工程名Aを取得したものとする。
次のステップ414では、ステップ412で取得した工程名n(ここでは工程名A)に対応する、データテーブル内のパラメータMnの値(この場合「1」)を、ロットの順番を示すカウンタのカウント値Mに設定する(M←Mn(=1))。
次のステップ416では、カウント値Mが1であるか否か、すなわち、露光対象のロットが、取得した工程名n(この場合、工程名A)の処理が行われる最初のロットであるか否かを判断する。この場合、M=1であるからここでの判断は肯定され、ステップ418のマップ作成ありロット処理のサブルーチンに移行する。
このサブルーチン418では、図8のフローチャートに示される処理が行われる。前提として、ロット内のウエハ番号を示す不図示のカウンタのカウント値mは「1」に初期化されているものとする。
このサブルーチン418では、まず、サブルーチン432において所定の準備作業を行う。このサブルーチン432では、図示は省略されているが、前述の図5のステップ302、304、306と同様にして、露光条件の設定、レチクルRのロード、並びにレチクルアライメント及びアライメント系ASのベースライン計測が行われる。
次のステップ434では、不図示のウエハローダを用いて図1のウエハホルダ25上の露光処理済みのウエハ(便宜上「W’」と呼ぶ)と未露光のウエハWとを交換する。但し、ウエハホルダ25上にウエハW’のない場合は、未露光のウエハWをウエハホルダ25上に単にロードする。
次のステップ436では、そのウエハホルダ25上にロードされたウエハWのサーチアライメントを前述と同様にして行う。
次のステップ438では、前述したカウンタのカウント値mが、所定の値g以上であるか否かを判断することにより、ウエハホルダ25(ウエハステージWST)上のウエハWが、ロット内の第g枚目以降のウエハであるか否かを判断する。ここでは、所定の値gは2以上で25以下の任意の整数に予め設定される。以下においては、説明の便宜上から、g=2であるものとして説明を行う。この場合、ウエハWはロット先頭(第1枚目)のウエハであるから、初期設定によりm=1となっているので、ステップ438の判断は否定され、次のステップ440に進む。
ステップ440では、前述のサンプルショット領域の位置座標の計測と同様にしてウエハW上の全てのショット領域のステージ座標系上における位置座標を計測する。
次のステップ442では、上記ステップ440で計測したショット領域の位置座標とそれぞれの設計上の位置座標とに基づいて前述した式(2)のEGA演算を行い、前述した式(1)の6つのパラメータa〜fを算出するとともに、この算出結果とショット領域の設計上の位置座標とに基づいて、全ショット領域の位置座標(配列座標)を算出し、その算出結果、すなわちウエハW上の全ショット領域の位置座標(推定値)を内部メモリの所定領域に記憶する。
次のステップ444では、ウエハW上の全てのショット領域について、位置ずれ量の線形成分と非線形成分とを分離する。具体的には、上記ステップ442で算出した各ショット領域の位置座標(位置情報の推定値)とそれぞれの設計上の位置座標との差を位置ずれ量の線形成分として算出するとともに、前述したステップ440で実際に計測した全てのショット領域の位置座標(位置情報の実測値)とそれぞれの設計上の位置座標との差から前記線形成分を差し引いた残差を非線形成分として算出する。
次のステップ446では、上記ステップ444の処理中に算出した、全てのショット領域の個別の基準位置(設計上の位置)に対する位置ずれ量(実際に計測された各ショット領域の位置座標(位置情報の実測値)とそれぞれの設計上の位置座標との差)と、所定の評価関数とに基づいて、ウエハWの非線形歪みを評価し、この評価結果に基づいて補完関数(位置ずれ量(配列ずれ)の非線形成分を表現する関数)を決定する。
以下、このステップ446の処理について、図9及び図10を参照して詳述する。
上記のウエハWの非線形歪み、すなわち非線形成分の規則性及びその度合いを評価するための評価関数としては、例えば次式(3)で示される評価関数W1(s)が用いられる。
図9には、上式(3)の評価関数の意味内容を説明するためのウエハWの平面図が示されている。図9において、ウエハW上には複数の区画領域としてのショット領域SA(総ショット領域数N)がマトリクス状配置で形成されている。各ショット領域内に矢印で示されるベクトルrk(k=1、2、……、i、……N)は、各ショット領域の位置ずれ量(配列ずれ)を示すベクトルである。
上式(3)において、NはウエハW内のショット領域の総数を示し、kはそれぞれのショット領域のショット番号を示す。また、sは、図9に示される着目するショット領域SAkの中心を中心とする円の半径を示し、iは、着目するk番目のショット領域から半径sの円内に存在するショット領域のショット番号を示す。また、式(3)中のi∈sが付されたΣは、着目するk番目のショット領域SAkから半径sの円内に存在する全てのショット領域についての総和をとることを意味する。
いま、上式(3)の右辺のかっこ内部分の関数を次式(4)のように定義する。
上式(4)の関数fk(s)の意味するところは、着目するショット領域の位置ずれベクトルrk(第1ベクトル)と、その周囲(半径sの円内)のショット領域における位置ずれベクトルriが成す角度をθikとした場合のcosθikの平均値である。従って、この関数fk(s)の値が1ならば、半径sの円内の全てのショット領域における位置ずれベクトルは、全て同じ方向を向いていることになる。0ならば、半径sの円内の全てのショット領域における位置ずれベクトルはお互いに全くランダムな方向を向いているということになる。すなわち、関数fk(s)は、着目するショット領域の位置ずれベクトルrkとその周囲の複数のショット領域の各位置ずれベクトルriとの方向に関する相関を求めるための関数であり、これはウエハW上の部分領域について非線形歪みの規則性や程度を評価するための評価関数である。
上式(3)の評価関数W1(s)は、着目するショット領域SAkをショット領域SA1からSANに順次変更した際の関数fk(s)の加算平均に他ならない。
図10には、図9に示されるウエハWに対応する具体的な評価関数W1(s)の一例が示されている。この図10から明らかなように、評価関数W1(s)によると、sの値に応じてW1(s)の値が変化するので、経験則に頼ることなく、ウエハWの非線形歪みの規則性や程度を評価することができ、この評価結果を用いることにより、次のようにして、位置ずれ量(配列ずれ)の非線形成分を表現する補完関数を決定することができる。
まず、補完関数として、例えば次式(5)、(6)でそれぞれ示されるようなフーリエ級数展開された関数を定義する。
上式(5)において、Apq、Bpq、Cpq、Dpqは、フーリエ級数係数であり、また、δx(x,y)は、座標(x,y)のショット領域の位置ずれ量(配列ずれ)の非線形成分のX成分(補完値、すなわち補正値)を示す。また、Δx(x,y)は、前述したステップ444で算出された座標(x,y)のショット領域の位置ずれ量(配列ずれ)の非線形成分のX成分である。
同様に、上式(6)において、Apq’、Bpq’、Cpq’、Dpq’は、フーリエ級数係数であり、また、δy(x,y)は、座標(x,y)のショット領域の位置ずれ量(配列ずれ)の非線形成分のY成分(補完値、すなわち補正値)を示す。また、Δy(x,y)は、前述したステップ444で算出された座標(x,y)のショット領域の位置ずれ量(配列ずれ)の非線形成分のY成分である。また、式(5)、(6)において、DはウエハWの直径を示す。
上式(5)、(6)の関数では、ショット領域の位置ずれ量(配列ずれ)の変動がウエハの直径当たり何周期存在するかを決定するパラメータp、qの最大値pmax=P、qmax=Qの決定が重要である。
その理由は、次の通りである。すなわち、今、ウエハWの全ショット領域について得られたショット領域の配列ずれの非線形成分を上式(5)、(6)で展開することを考える。この場合において、ショット領域の位置ずれ量(配列ずれ)の変動がショット領域毎に生じているものとして、パラメータp、qの最大値pmax=P、qmax=Qを1周期がショットピッチとなる場合に相当する最大値にした場合に、いずれかのショット領域として、アライメント誤差が他のショット領域に比べて大きい所謂「跳びショット」が含まれている場合を考える。このような跳びショットは、ウエハマークの崩れ等に起因する計測エラー、又はウエハ裏面の異物等に起因する局所的な非線形歪みにより発生するものである。このような場合、その跳びショットの計測結果までも含んで補完関数で表現してしまうことになる。これを防ぐためには、P,Qを1周期がショットピッチとなる場合に相当する上述した最大値よりも小さな値にする必要がある。すなわち、跳びショットの計測結果などに起因する高周波成分は除去し、最適な低周波成分のみを補完関数で表現することが望ましい。
そこで、本実施形態では、前述した式(3)の評価関数W1(s)を用いて、パラメータp、qの最大値pmax=P、qmax=Qを決定することとした。このようにすると、仮に、跳びショットが存在したとしても、その跳びショットと周囲のショット領域との間には相関は殆どない。従って、その跳びショットの計測結果は、式(3)で示されるW1(s)の値を増加させる要因にはならないので、結果的に式(3)を用いることにより跳びショットの影響を低減あるいは除去することが可能になる。すなわち、図10において、例えばW1(s)>0.7であるような半径s内の領域を互いに相関がある領域とみなし、その領域を1つの補完値で表現することを考えると、図10より、そのようなsはs=3である。P,Qはこの値s=3、及びウエハの直径Dを用いて次のように書くことができる。
P=D/s=D/3,Q=D/s=D/3 ……(7)
これにより、最適なP,Qを決定することができ、これにより式(5)、(6)の補完関数を決定することができる。
図8に戻り、次のステップ448では、上述のようにして決定した式(5)、(6)の補完関数に、ステップ444で算出された座標(x,y)のショット領域の位置ずれ量(配列ずれ)の非線形成分のX成分Δx(x,y)、Y成分Δy(x,y)を、それぞれ代入して、演算を行うことにより、ウエハW上の全ショット領域の配列ずれの非線形成分のX成分(補完値、すなわち補正値)及びY成分(補完値、すなわち補正値)を算出し、これらの各ショット領域の配列ずれの非線形成分(X成分及びY成分)を、各ショット領域の補正値とする、補正情報としての補正マップを作成する。そして、この作成した補正マップを、前述のデータテーブルのステップ412で取得した工程名n(この場合工程名A)に対応するマップ格納領域に格納した後、ステップ452に進む。
ステップ452では、前述した内部メモリ内の所定領域に記憶された全ショット領域の配列座標と、データテーブルのステップ412で取得した工程名n(この場合工程名A)に対応するマップ格納領域に格納された補正マップ内のそれぞれのショット領域の位置ずれ量の非線形成分の補正値とに基づいて、各ショット領域について位置ずれ量(線形成分及び非線形線分)が補正された重ね合わせ補正位置を算出するとともに、その重ね合わせ補正位置のデータと、予め計測したベースラインとに基づいて、ウエハW上の各ショット領域の露光のための加速開始位置(走査開始位置)にウエハWを順次ステッピングさせる動作と、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとを走査方向に同期移動させつつレチクルパターンをウエハ上に転写する動作とを、繰り返して、ステップ・アンド・スキャン方式による露光動作を行う。これにより、ロット先頭(ロット内の第1枚目)のウエハWに対する露光処理が終了する。
次のステップ454では、前述したカウンタのカウント値m>24が成立するか否かを判断することにより、ロット内の全てのウエハの露光が終了したか否かを判断する。ここでは、m=1であるから、この判断は否定され、ステップ456に進んで、カウンタのカウント値mをインクリメント(m←m+1)した後、ステップ434に戻る。
ステップ434において、不図示のウエハローダを用いて図2のウエハホルダ25上の露光処理済みのロット先頭のウエハとロット内の第2枚目のウエハとを交換する。
次のステップ436では、前述と同様にして、ウエハホルダ25上にロードされたウエハW(この場合、ロット内の第2枚目のウエハ)のサーチアライメントを行う。
次のステップ438では、前述したカウンタのカウント値mが、所定の値g(=2)以上か否かを判断することにより、ウエハホルダ25(ウエハステージWST)上のウエハWが、ロット内の第g(=2)枚目以降のウエハであるか否かを判断する。この場合、ウエハWはロット内の第2枚目のウエハであるから、m=2となっているので、ステップ438の判断は肯定され、ステップ450に移行する。
ステップ450では、通常の8点EGAにより、ウエハW上の全ショット領域の位置座標を算出する。より具体的には、前述と同様にアライメント系ASを用いて、ウエハW上の予め選択された8つのショット領域(サンプルショット領域)に付設されたウエハマークを計測し、それらのサンプルショット領域のステージ座標系上における位置座標を求める。そして、その求めたサンプルショット領域の位置座標とそれぞれの設計上の位置座標とに基づいて前述した式(2)のEGA演算を行い、前述した式(1)の6つのパラメータを算出するとともに、この算出結果とショット領域の設計上の位置座標とに基づいて、全ショット領域の位置座標(配列座標)を算出する。そして、その算出結果を内部メモリの所定領域に記憶した後、ステップ452に進む。
ステップ452では、前述と同様にして、ステップ・アンド・スキャン方式により、ロット内の第2枚目のウエハWに対する露光処理が行われる。この際、各ショット領域の露光の際の走査開始位置(加速開始位置)へのウエハWのステッピングに際しては、内部メモリ内の所定領域に記憶された全ショット領域の配列座標と、前述のデータテーブル内の補正マップにおける各ショット領域の位置ずれ量の非線形成分の補正値とに基づいて、各ショット領域について位置ずれ量(線形成分及び非線形成分)が補正された重ね合わせ補正位置が算出される。
上記のようにして、ロット内の第2枚目のウエハWの露光が終了すると、ステップ454に進み、ロット内の全てのウエハの露光が終了したか否かを判断するが、ここにおける判断は否定され、ステップ456でカウント値mをインクリメントした後、ステップ434に戻って、以降、ロット内の全てのウエハの露光が終了するまで、上記ステップ434→436→438→450→452→454→456のループの処理、判断が繰り返し行われる。
そして、ロット内の全てのウエハの露光が終了し、ステップ454の判断が肯定されると、図8のサブルーチンの処理を終了し図7のサブルーチン406におけるステップ428にリターンする。
ステップ428では、カウンタのカウント値Mをインクリメントした後、ステップ430に進んで、ステップ412で取得した工程名n(ここでは工程名A)に対応する、データテーブル内のパラメータMnにカウント値Mを設定する。その後、サブルーチン406の処理を終了して図6のメインルーチンのステップ410に戻る。
ステップ410では、LAN160及びターミナルサーバ140を介してホストコンピュータ150に露光終了を通知した後、一連の処理を終了する。
上述した露光装置1001による、第1番目のロットのウエハに対して工程名Aの場合のステップ402、ステップ404、ステップ406及びステップ410の処理が行われている間、ホストコンピュータ150では、前述したように、図4のステップ212において露光終了を待っている。
そして、上記ステップ410における露光装置1001の主制御系20からの露光終了の通知を受けると、ホストコンピュータ150では、ステップ212の待ち状態が解除され、次ロット以降のウエハに対し、ステップ202以下の処理を繰り返し行うことになる。
上述のようなホストコンピュータ150による処理の繰り返しの過程で、所定時間後、あるロットのウエハに対して処理が開始され、ステップ202→204→206→210のルートで処理が進行し、このときステップ210で露光装置1001の主制御系20に対して露光指示とともに工程名Aに対応するプロセスプログラムが指定されたものとする。
上記の露光指示を受けると、露光装置1001の主制御系20により、図6のステップ402以下の処理が開始される。このとき、ステップ404の判断が肯定されると、ステップ406のサブルーチンに移行する。
このサブルーチン406では、図7のステップ412において、前述のステップ210において、ホストコンピュータ150から露光指示とともに与えられた露光条件の設定指示情報に対応するプロセスプログラムファイルから工程名Aを取得する。
次のステップ414では、ステップ412で取得した工程名Aに対応する、データテーブル内のパラメータMnの値(この場合「2」)を、ロットの順番を示すカウンタのカウント値Mに設定する(M←Mn(=2))。
次のステップ416では、カウント値Mが1であるか否か、すなわち、露光対象のロットが、取得した工程名n(この場合、工程名A)の処理が行われる最初のロットであるか否かを判断する。この場合、M=2であるからここでの判断は否定され、ステップ420に進む。
ステップ420では、カウント値MがK(Kは、予め定めた2以上の整数であり、ここでは一例としてK=4であるものとする)であるか否かを判断する。この場合、M=2であるから、ここでの判断は否定され、ステップ422のマップ更新なしロット処理のサブルーチンへ移行する。
このサブルーチン422では、図11のフローチャートに示される処理が行われる。
このサブルーチン422では、ステップ462〜474において、前述のステップ302〜314(図5参照)と同様の処理が行われる。この結果、ステップ474の処理が終了した状態では、ロット先頭のウエハWの全てのショット領域の配列座標(位置情報の推定値)が算出され内部メモリ内の所定領域に記憶される。
次のステップ476では、前述した内部メモリ内の所定領域に記憶された全ショット領域の配列座標(位置情報の推定値)と、その時点で前述のデータテーブルの工程名Aのマップ格納領域に格納されている補正マップと、予め計測したベースラインとに基づいて、ウエハW上の各ショット領域の露光のための加速開始位置(走査開始位置)にウエハWを順次ステッピングさせる動作と、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとを走査方向に同期移動させつつレチクルパターンをウエハ上に転写する動作とを、繰り返して、ステップ・アンド・スキャン方式による露光動作を行う。
すなわち、全ショット領域の配列座標(位置情報の推定値)は、前述のEGA演算から明らかなように各ショット領域の位置ずれ量の線形成分が補正された値であり、この推定値と補正マップから得られる各ショット領域の位置ずれ量の非線形線分の補正値とに基づいて、各ショット領域の位置ずれ量の線形成分及び非線形成分が補正された各ショット領域の位置座標が求められ、この位置座標とベースラインとに基づいて各ショット領域の中心のステージ座標系上における位置座標を求めることができ、この位置座標とショット領域の走査方向の長さ及び既知の加速開始位置から加速終了位置までの距離とに基づいて、ウエハW上の各ショット領域の露光のための加速開始位置が算出される。
従って、上述したロット先頭(ロット内の第1枚目)のウエハWに対する露光処理の際に、ウエハW上に既に形成されたショット領域間の位置誤差(線形成分及び非線形成分)に起因する重ね合わせ誤差が補正された高精度な露光が行われる。
次のステップ478では、前述したカウンタのカウント値m>24が成立するか否かを判断することにより、ロット内の全てのウエハの露光が終了したか否かを判断する。ここでは、m=1であるから、この判断は否定され、ステップ480に進んで、カウンタのカウント値mをインクリメント(m←m+1)し、以降、ロット内の全てのウエハの露光が終了するまで、上記ステップ470〜ステップ480のループの処理、判断が繰り返し行われる。
そして、ロット内の全てのウエハの露光が終了し、ステップ478の判断が肯定されると、サブルーチン422の処理を終了し、図7のステップ428にリターンする。
ステップ428では、カウンタのカウント値Mをインクリメントした後、ステップ430に進んで、ステップ412で取得した工程名n(ここでは工程名A)に対応する、データテーブル内のパラメータMnにカウント値Mを設定する。その後、サブルーチン406の処理を終了して図6のメインルーチンのステップ410に戻る。
ステップ410では、LAN160及びターミナルサーバ140を介してホストコンピュータ150に露光終了を通知した後、一連の処理を終了する。
ところで、露光装置1001の主制御系20では、その後、前述したホストコンピュータ150による処理(図4参照)の繰り返しの過程で、あるロットのウエハに対してステップ202→204→206→210のルートで処理が進行し、ステップ210で露光装置1001の主制御系20に対して露光指示とともに工程名Aに対応するプロセスプログラムが指定され、ステップ404における判断が肯定される度に、図7のサブルーチン406の処理において、ステップ412(工程名Aの取得)、ステップ414、ステップ416の処理を経て、ステップ420でM=K(=4)が成立するか否かを判断する。
そして、このステップ420における判断は、工程名Aの処理が行われる第3番目のロットが露光対象のロットとなり、Mn=3がステップ414でカウント値Mに設定されるサイクルでは否定され、その後サブルーチン422→ステップ428→ステップ430のルートで処理が行われる。
一方、ステップ420における判断は、工程名Aの処理が行われる第4番目のロットが露光対象のロットとなり、Mn=4がステップ414でカウント値Mに設定されるサイクルでは肯定され、ステップ424のマップ更新ありロット処理のサブルーチンに移行する。
このサブルーチン424では、図12のフローチャートに示される処理が行われる。前提として、ロット内のウエハ番号を示す不図示のカウンタのカウント値mは「1」に初期化されているものとする。
このサブルーチン424では、まず、サブルーチン482において所定の準備作業を行う。このサブルーチン482では、図示は省略されているが、前述の図5のステップ302、304、306と同様にして、露光条件の設定、レチクルRのロード、並びにレチクルアライメント及びアライメント系ASのベースライン計測が行われる。
次のステップ484では、不図示のウエハローダを用いて図1のウエハホルダ25上の露光処理済みのウエハ(便宜上「W’」と呼ぶ)と未露光のウエハWとを交換する。但し、ウエハホルダ25上にウエハW’のない場合は、未露光のウエハWをウエハホルダ25上に単にロードする。
次のステップ486では、そのウエハホルダ25上にロードされたウエハWのサーチアライメントを前述と同様にして行う。
次のステップ487では、前述と同様にアライメント系ASを用いて、ウエハW上の予め選択された8つのショット領域(サンプルショット領域)に付設されたウエハマークを計測し、それらのサンプルショット領域のステージ座標系上における位置座標を求める。
次のステップ488では、その求めたサンプルショット領域の位置座標とそれぞれの設計上の位置座標とに基づいて前述した式(2)のEGA演算を行い、前述した式(1)の6つのパラメータを算出するとともに、この算出結果とショット領域の設計上の位置座標とに基づいて、全ショット領域の位置座標(配列座標)を算出する。そして、その算出結果を内部メモリの所定領域に記憶した後、ステップ490に進む。
ステップ490では、前述したカウンタのカウント値mが、所定の値u以上であるか否かを判断することにより、ウエハホルダ25(ウエハステージWST)上のウエハWが、ロット内の第u枚目以降のウエハであるか否かを判断する。ここで、所定の値uは2以上で25以下の任意の整数に予め設定される。以下においては、説明の便宜上から、u=2であるものとして説明を行う。この場合、ウエハWはロット先頭(第1枚目)のウエハであるから、初期設定によりm=1となっているので、ステップ490の判断は否定され、次のステップ492に進む。
ステップ492では、補正マップの更新の簡易チェックのモードが第1モードに設定されているか否かを判断する。
本実施形態では、補正マップの更新の簡易チェックのモードとして、第1モードと第2モードとが、オペレータによる不図示の入出力装置を介した入力により選択的に設定できるようになっており、オペレータによりいずれかのモードが設定されているものとする。
ここで、第1モードとは、補正マップの更新の必要性についての簡易チェックを、EGA方式のウエハアライメントにおけるサンプルショット領域をそのまま計測ショット領域として行うモードであり、第2モードとは、上記の簡易チェックを、サンプルショット領域の他に少なくとも1つのショット領域を計測ショット領域として追加して行うモードである。ここでは、計測ショット領域として追加されるショット領域としては、ウエハ上の周辺ショット領域の中から選択されたサンプルショット領域以外の1又は2以上のショット領域が予め定められているものとする。
そして、ステップ492における判断が否定された場合、すなわち第2モードが設定されていた場合には、ステップ494に進んで、そのサンプルショット領域以外の予め定めた計測ショット領域の位置情報(実測値)を、前述のサンプルショット領域の位置座標の計測と同様にして計測した後、ステップ496に移行する。
この一方、上記ステップ492における判断が肯定された場合、すなわち第1モードが設定されていた場合には、直ちにステップ496に移行する。
ステップ496では、各計測ショット領域について、位置ずれ量及びその非線形成分並びに該非線形成分の変動量を算出する。具体的には、前述したステップ487(及びステップ494)で実際に計測した各計測ショット領域の位置座標(実測値)とその設計値との差を各計測ショット領域の位置ずれ量(個別の基準位置からの位置ずれ量)として算出する。また、上記の各計測ショット領域の位置座標(実測値)と上記ステップ488で算出した位置座標(推定値)との差を、各計測ショット領域の位置ずれ量の非線形成分として算出する。さらに、その算出した各計測ショット領域の位置ずれ量の非線形成分と前述のデータテーブル内の補正マップに含まれる各計測ショット領域の位置ずれ量の非線形成分の補正値(又は補正マップの作成の際に前述のステップ444の処理により得られた各計測ショット領域の位置ずれ量の非線形成分の値)との差を、位置ずれ量の非線形成分の変動量として算出する。
次のステップ498では、上記ステップ496で算出された各計測ショット領域の位置ずれ量の非線形成分の変動量を所定の閾値と比較することで、位置ずれ量の非線形成分の変動量が全ての計測ショット領域で閾値内であるか否かを判断する。なお、このステップ498では、上記処理に代えて、補正マップの作成の際に前述のステップ444の処理の過程で得られた各計測ショット領域の位置ずれ量と、上記ステップ496で算出した各計測ショット領域の位置ずれ量との差を各計測ショット領域の位置ずれ量の変動量として算出し、その変動量を所定の閾値と比較しても良い。
そして、上記ステップ498における判断が肯定された場合には、補正マップの更新は不要であると判断できるので、ステップ506に移行する。この場合において、後述のステップ506で使用される補正マップは、Mn=3までに使用されていた補正マップ(工程名nの処理が行われる第1番目のロットの際に算出された補正マップ)ということになる。
この一方、上記ステップ498における判断が否定された場合には、ステップ500、ステップ502及びステップ504の処理を順次行うことで、補正マップを更新した後、ステップ506に移行する。
すなわち、ステップ500では、各計測ショット領域について上記ステップ496で算出された位置ずれ量の非線形成分(又はその変動量)を所定の方法で評価し、その評価結果に基づいて追加すべき計測ショット領域を決定する。
ここで、このステップ500における評価方法としては、種々の手法を採用することができる。
a.例えば、上記ステップ498の比較の結果、各計測ショット領域の位置ずれ量の非線形成分の変動量が閾値を越えたか否かを評価基準とし、その評価の結果、閾値を越えた計測ショット領域を中心とする複数のショット領域を追加すべき新たな計測ショット領域として決定する。あるいは、上記ステップ496で算出された各計測ショット領域の位置ずれ量又はその非線形成分が閾値を、越えたか否かを評価基準とし、その評価の結果、閾値を越えた計測ショット領域を中心とする複数のショット領域を追加すべき新たな計測ショット領域として決定する。あるいは、各計測ショット領域を着目するショット領域とし、その位置ずれ量又はその非線形成分(若しくはそれらの変動量)のベクトルをrkとし、隣接する複数の計測ショット領域の位置ずれ量又はその非線形成分(若しくはそれらの変動量)のベクトルをriとしたときに、前述の式(4)の関数fk(s)を用いて算出したベクトルrkとベクトルをriとの方向に関する相関値がある値より小さくなる、計測ショット領域を中心とする複数のショット領域を追加すべき新たな計測ショット領域として決定する。これらの場合に、追加すべき新たな計測ショット領域の範囲を、前述した評価関数を用いて計算しても良い。
b.この他、ウエハW上の複数のショット領域を、ウエハの中心を原点とする直交二軸(X軸にほぼ平行なα軸とY軸にほぼ平行なβ軸)により第1象限から第4象限に属する4つのブロックに予めブロック化しておき、上記ステップ498における比較の結果、位置ずれ量の非線形成分の変動量(又は位置ずれ量の変動量)の大きさが閾値を越える計測ショット領域が属するブロックについてのみ、そのブロックに属する計測ショット領域以外のショット領域を新たな計測ショット領域として決定することとすることもできる。
c.この他、ウエハWの非線形歪みは、ウエハ周辺ほど大きくなるという経験的事実に鑑みて、更新前の補正マップ中のウエハW上の各ショット領域の位置ずれ量の非線形成分の補正値を用い、ウエハ中心のショット領域を着目するショット領域として前述の式(4)の評価関数fk(s)に基づき、ウエハ中心からの距離sが変化する方向に関して、ウエハW上の複数のショット領域を、複数ブロックにブロック化し、各計測区画領域の非線形成分(又はその変動量)の大きさが閾値を越える計測ショット領域が属するブロックについてのみ、そのブロックに属する計測ショット領域以外のショット領域を新たな計測ショット領域として決定することとすることもできる。
d.勿論、上記a.〜c.の方法に限らず、算出された各計測区画領域の前記位置ずれ量あるいはその非線形成分(又はそれらの変動量)の所定の基準に基づく評価結果、又は更新前の補正マップに含まれる各ショット領域の前記位置ずれ量あるいはその非線形成分(又はそれらの変動量)の所定の基準に基づく評価結果などに基づいて、複数のショット領域を追加すべき新たな計測ショット領域として決定することとすれば良い。
いずれにしても、次のステップ502では、上記ステップ500で決定した追加すべき新たな計測ショット領域それぞれの位置情報(ステージ座標系上における位置座標)を、前述のサンプルショット領域の位置座標の計測と同様にして計測する。
次のステップ504では、前述のデータテーブル内の工程名Aのマップ格納領域に格納されている補正マップを更新する。具体的には、上記ステップ502で計測した新たな計測ショット領域それぞれの位置座標(位置情報の実測値)とそれぞれの設計値との差(新たな計測ショット領域それぞれの個別の基準位置に対する位置ずれ量)と上記ステップ488で算出した各計測ショット領域の位置座標(位置情報の推定値)との差を、新たな計測ショット領域それぞれの位置ずれ量の非線形成分(X成分及びY成分)として算出する。そして、ここで算出した新たな計測ショット領域それぞれの位置ずれ量の非線形成分(X成分及びY成分)の値、及び上記ステップ496で算出した各計測ショット領域の位置ずれ量の非線形成分(X成分及びY成分)の値を、前述のステップ446で決定された補完関数に代入して、各計測ショット領域について、配列ずれの非線形成分(補正値)を算出する。
また、算出された各計測ショット領域の配列ずれの非線形成分(補正値)を用いて、補間演算により、ウエハW上の計測ショット領域以外のショット領域の配列ずれの非線形成分(補正値)を算出する。この補間演算としては、各ショット領域の中心位置毎に、その周囲に存在する複数の計測ショット領域についての配列ずれの非線形成分(補正値)に基づき、前述の米国特許出願公開第2002/0042664号明細書などに開示されるガウス分布を仮定した重み付け平均演算により、各ショット領域の中心位置の補正値を算出する方法を採用することができる。このとき、その重み付け平均演算の対象となる周囲に存在する複数の計測ショット領域の範囲を、前述した評価関数を用いて計算しても良い。あるいは、各ショット領域の中心位置毎に、評価関数を用いて計算した範囲内の計測ショット領域の補正値の単純平均を用いても良い。
そして、上述のようにして算出されたウエハW上の全てのショット領域についての補正値を用いて、前述のデータテーブルの工程名Aのマップ格納領域に格納されている補正マップ内の各ショット領域の補正値を上書きすることで、その補正マップを更新する。
ステップ506では、前述のステップ476と同様に、前述した内部メモリ内の所定領域に記憶された全ショット領域の配列座標(推定値)と、その時点で前述のデータテーブルの工程名Aのマップ格納領域に格納されている補正マップ(補正マップの更新が行われている場合には、最新の更新後の補正マップ)と、予め計測したベースラインとに基づいて、ウエハW上の各ショット領域の露光のための加速開始位置(走査開始位置)にウエハWを順次ステッピングさせる動作と、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとを走査方向に同期移動させつつレチクルパターンをウエハ上に転写する動作とを、繰り返して、ステップ・アンド・スキャン方式による露光動作を行う。この場合、ロット内の第m枚目(この場合、第1枚目)のウエハWに対し、ウエハW上に既に形成されたショット領域間の位置誤差(線形成分及び非線形成分)に起因する重ね合わせ誤差が補正された高精度な露光が行われる。
次のステップ508では、前述したカウンタのカウント値m>24が成立するか否かを判断することにより、ロット内の全てのウエハの露光が終了したか否かを判断する。ここでは、m=1であるから、この判断は否定され、ステップ510に進んで、カウンタのカウント値mをインクリメント(m←m+1)した後、ステップ484に戻る。
ステップ484において、不図示のウエハローダを用いて図2のウエハホルダ25上の露光処理済みのロット先頭のウエハとロット内の第2枚目のウエハWとを交換する。
次のステップ486では、前述と同様にして、ウエハホルダ25上にロードされたウエハW(この場合、ロット内の第2枚目のウエハ)のサーチアライメントを行う。
次のステップ487、488では、前述と同様に、通常の8点EGAにより、ウエハW上の全ショット領域の位置座標を算出し、その算出結果を内部メモリの所定領域に記憶する。
次のステップ490では、前述したカウンタのカウント値mが、所定の値u(=2)以上か否かを判断することにより、ウエハホルダ25(ウエハステージWST)上のウエハWが、ロット内の第u(=2)枚目以降のウエハであるか否かを判断する。この場合、ウエハWはロット内の第2枚目のウエハであるから、m=2となっているので、ステップ490の判断は肯定され、ステップ506にジャンプする。
次のステップ506では、ロット内の第m枚目(この場合、第2枚目)のウエハWに対し、前述と同様にして、ステップ・アンド・スキャン方式による露光動作が行われ、ウエハW上に既に形成されたショット領域間の位置誤差(線形成分及び非線形成分)に起因する重ね合わせ誤差が補正された高精度な露光が行われる。
上記のようにして、ロット内の第2枚目のウエハWの露光が終了すると、ステップ508に進み、ロット内の全てのウエハの露光が終了したか否かを判断するが、ここにおける判断は否定され、ステップ510でカウント値mをインクリメントした後、ステップ484に戻って、以降、ロット内の全てのウエハの露光が終了するまで、上記ステップ484→486→487→488→490→506→508→510のループの処理、判断が繰り返し行われる。
そして、ロット内の全てのウエハの露光が終了し、ステップ508の判断が肯定されると、図12のサブルーチンの処理を終了し図7のサブルーチン406におけるステップ426にリターンする。
ステップ426では、カウンタのカウント値Mを1に初期化した後(M←1)、ステップ428に進む。
ステップ428では、カウンタのカウント値Mをインクリメントした後、ステップ430に進んで、ステップ412で取得した工程名n(ここでは工程名A)に対応する、データテーブル内のパラメータMnにカウント値Mを設定する。その後、サブルーチン406の処理を終了して図6のメインルーチンのステップ410に戻る。
これまでの説明からわかるように、以後、ホストコンピュータ150から工程Aの露光処理が指示され、ステップ406の処理が実行される各ロットについて、(K−1)=3ロットに1回、ステップ424のマップ更新ありロット処理のサブルーチンが実行され、それ以外のロット(ステップ424のサブルーチンが実行されるロット間の(K−2)=2ロット)については、ステップ422のマップ更新なしロット処理のサブルーチンが実行される。
なお、K=2である場合には、ホストコンピュータ150から工程Aの露光処理が指示され、ステップ406の処理が実行される各ロットについては、第1番目のロットについて、ステップ418のマップ作成ありロット処理のサブルーチンが実行された後、第2番目以降の全てのロットについてステップ424のマップ更新ありロット処理のサブルーチンが繰り返し実行される。この場合、ステップ422のサブルーチンが実行されることはない。
この一方、前述したステップ404(図6参照)における判断が否定された場合、すなわち連続するロット間の重ね合わせ誤差を所定の閾値と比較して重ね合わせ誤差が大きいか否かを判断した結果、この判断が否定された場合には、第2のグリッド補正機能を用いて重ね合わせ誤差を補正して、露光を行うサブルーチン408に移行する。
このサブルーチン408では、露光装置1001の主制御系20により、露光対象のロットのウエハWに対して図13のフローチャートで示される処理アルゴリズムに従って処理が行われる。
このサブルーチン408では、まず、サブルーチン602において、前述したサブルーチン432と同様にして所定の準備作業を行う。すなわち、このサブルーチン602では、前述した図5のステップ302、304、306と同様にして、露光条件の設定、レチクルRのロード、並びにレチクルアライメント及びアライメント系ASのベースライン計測が行われる。
次のステップ604では、上記ステップ210(図4参照)においてホストコンピュータ150から露光指示とともに与えられた露光条件の設定指示情報に基づいて、上記の所定の準備作業中に選択したプロセスプログラムファイル内に含まれるショットマップデータ及びサンプルショット領域の選択情報などのショットデータに対応する補正マップを記憶装置内のデータベースから選択的に読み出して内部メモリに一時的に記憶する。
次のステップ608では、不図示のウエハローダを用いて図1のウエハホルダ25上の露光処理済みのウエハ(便宜上「W’」と呼ぶ)と未露光のウエハWとを交換する。但し、ウエハホルダ25上にウエハW’のない場合は、未露光のウエハWをウエハホルダ25上に単にロードする。
次のステップ610では、そのウエハホルダ25上にロードされたウエハWのサーチアライメントを前述と同様の手順で行う。
次のステップ612では、ショットマップデータ及びサンプルショット領域の選択情報などのショットデータに従って、EGA方式のウエハアライメントを前述と同様にして行い、ウエハW上の全ショット領域の位置座標を算出し、内部メモリの所定領域に記憶する。
次のステップ614では、前述した内部メモリ内の所定領域に記憶された全ショット領域の配列座標と、内部メモリ内に一時的に格納された補正マップ内のそれぞれのショット領域についての位置ずれ量の非線形成分の補正値(補正情報)とに基づいて、各ショット領域について位置ずれ量(線形成分及び非線形成分)が補正された重ね合わせ補正位置を算出するとともに、その重ね合わせ補正位置のデータと、予め計測したベースライン量とに基づいて、ウエハW上の各ショット領域に対する露光のための走査開始位置(加速開始位置)にウエハステージWST(ウエハW)を順次ステッピングさせる動作と、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとを走査方向に同期移動させつつレチクルパターンをウエハ上に転写する動作とを、繰り返して、ステップ・アンド・スキャン方式による露光動作を行う。これにより、ロット先頭(ロット内の第1枚目)のウエハWに対する露光処理が終了する。
次のステップ616では、予定枚数(例えば25枚)のウエハに対する露光が終了したか否かを判断し、この判断が否定された場合には、ステップ608に戻り、以後上記処理、判断を繰り返し行う。
このようにして、予定枚数のウエハWに対して露光が終了すると、ステップ616における判断が肯定され、図13のサブルーチン408の処理を終了し、図6のメインルーチンのステップ410にリターンして、LAN160及びターミナルサーバ140を介してホストコンピュータ150に露光終了を通知した後、一連の処理を終了する。
これまでの説明から明らかなように、露光装置1001では、アライメント系ASと、ウエハステージWSTの位置を計測するウエハレーザ干渉計システム18と、これらアライメント系ASの計測結果とその計測時のウエハレーザ干渉計システム18の計測値とに基づいてウエハ上の各ショット領域に付設されたアライメントマークのステージ座標系における位置座標を算出する主制御系20とによって、ウエハステージWST上に保持されたウエハ上の任意のショット領域の区画領域の位置情報の実測値を検出する検出系が構成されている。
また、主制御系20(より具体的にはCPU)とソフトウェアプログラムとによって、演算装置、判断装置、更新装置、制御装置、決定装置、算出装置及び評価装置が実現されている。すなわち、主制御系20が行うステップ488の処理によって上記検出系により検出された、ウエハ上の複数のサンプルショット領域の位置情報の実測値を用いて統計演算によりウエハ上の各ショット領域域々の所定点との位置合わせに用いられる位置情報の推定値を算出する演算装置が実現されている。また、主制御系20が行うステップ496、498の処理により、ウエハ上の複数のショット領域のうちのサンプルショット領域を少なくとも含む複数の計測ショット領域について、所定のインターバル(例えば(K−1)ロット(Kは2以上の整数)に1回の割合)で、前記検出系により検出された各計測ショット領域の位置情報の実測値と上記演算装置により算出された位置情報の推定値とに基づいて各計測ショット領域の個別の基準位置(設計上の位置)に対する位置ずれ量の非線形成分の変動量をそれぞれ算出し、その算出された各計測ショット領域の位置ずれ量の非線形成分の変動量の大きさに基づいてウエハ上の複数のショット領域各々の個別の基準位置(設計上の位置)に対する位置ずれ量の非線形成分を補正するための補正情報の更新の必要性の有無を、判断する判断装置が実現されている。
また、主制御系20が行うステップ500、502及び504の処理により、判断装置により更新の必要があると判断された場合に、前記補正情報を更新する処理を行う更新装置が実現されている。このうち特にステップ500の処理によりウエハ上の複数のショット領域のうち、前記計測区ショット領域を除く残りのショット領域の少なくとも一部のショット領域を新たな計測ショット領域として決定する決定装置が実現され、ステップ502、504の処理により、上記検出系により検出された、その新たな計測ショット領域の位置情報の実測値を含む全ての計測ショット領域の位置情報の実測値に基づいてウエハ上の複数のショット領域各々の前記位置ずれ量の非線形成分を、新たな補正情報として算出する算出装置が実現されている。また、主制御系20が行う、ステップ490〜ステップ500の処理により、ウエハ上の複数のショット領域のうちのサンプルショット領域を少なくとも含む複数の計測ショット領域について、所定のインターバル(例えば(K−1)ロット(Kは2以上の整数)に1回の割合)で、上述の検出系により検出された各ショット領域の位置情報の実測値と前記演算装置により算出された位置情報の推定値とに基づいて各計測ショット領域の個別の基準位置に対する位置ずれ量の非線形成分を評価し、その評価結果に基づいて追加すべき新たな計測ショット領域の個数及び配置の少なくとも一方や、補正マップを更新すべきか否かを決定する評価装置が実現されている。
さらに、主制御系20が行う、ステップ506の処理により、各ショット領域を露光する際に、各ショット領域の前記位置情報の推定値と最新の補正情報とに基づいて、ウエハステージWSTを介してウエハWの位置を制御する制御装置が実現されている。
しかしながら、本発明の露光装置がこれに限定されるものではないことは勿論である。すなわち、上記実施形態は一例に過ぎず、上記の主制御系20(より正確にはCPU)によるソフトウェアプログラムに従う処理によって実現した構成各部の少なくとも一部をハードウェアによって構成することとしても良い。
以上詳細に説明したように、本実施形態に係るリソグラフィシステム110によると、ホストコンピュータ150により、パイロットウエハ等の重ね合わせ誤差情報の解析の結果、ショット間誤差が非線形成分を多く含み、EGA方式のウエハアライメントのみで重ね合わせ誤差の補正が困難であると判断された場合に、露光装置1001に露光条件を指定して露光が指示される(図4のステップ204、206、210)。
そして、露光装置1001の主制御系20が、ロット間の重ね合わせ誤差が大きいと判断した場合には、図6のサブルーチン406の処理が実行される。
このサブルーチン406は、各ロットのウエハに対して、ホストコンピュータ150から露光装置1001に露光条件を指定して露光が指示され、露光装置1001の主制御系20が、ロット間の重ね合わせ誤差が大きいと判断する都度、実行される。
そして、このサブルーチン406では、図7のフローチャートで示されるように、同一工程名(上記の説明中では工程名A)の処理に関し、最初のロットのウエハについては、サブルーチン418の処理が実行され、第2番目〜K番目のロットのウエハについては、サブルーチン422の処理が(K−2)回連続して実行された後、サブルーチン424の処理が実行される。その後のロットのウエハについても、サブルーチン422の処理が(K−2)回連続して実行された後、サブルーチン424の処理が実行される。ここで、Kは2以上の整数であり、K=2の場合は、第2番目以降のロットについては、各ロットについてサブルーチン424の処理が実行される。
サブルーチン418の処理において、前述したような評価関数の導入によって、経験則に頼ることなく、明確な根拠に基づいて、ウエハWの非線形歪みを評価することができる。そして、その評価結果に基づいてウエハW上の各ショット領域の位置ずれ量(配列ずれ)の非線形成分の補正値から成る補正マップを作成することができ、この補正マップ内の補正値とEGAにより求めたショット領域の配列座標とに基づいて、各ショット領域の配列ずれ(線形成分のみならず非線形成分をも)が補正された重ね合せ補正位置を正確に求めることができる(図8のステップ440〜ステップ452)。従って、上記各ショット領域の重ね合せ補正位置に基づいて、ウエハW上の各ショット領域の露光のための加速開始位置(走査開始位置)にウエハWを順次ステッピングさせつつ、レチクルパターンをウエハW上の各ショット領域に転写することにより、ウエハW上の各ショット領域にレチクルパターンを非常に高精度に重ね合せることができる。
また、このサブルーチン418では、露光装置1001の主制御系20が、ロット内の第g枚目(第2枚目)以降のウエハWの露光に際しては、通常の8点EGAでの計測結果に基づいてウエハ上のショット領域の配列ずれの線形成分を補正するとともに、ショット領域の配列ずれの非線形成分については、その時点の補正マップ(そのロットの先頭ウエハの露光に先立って更新した補正マップ又はそれ以前に作成あるいは更新された補正マップ)をそのまま使用する(図8のステップ450、452)。
これは、同一ロット内のウエハについては、ショット領域の配列ずれ(位置ずれ量)は殆ど変化しないと考えられるので、このようにしても露光の際の重ね合わせ精度の低下は殆ど生じない反面、スループットの向上を図ることができるからである。
また、サブルーチン424において、図12に示されるように、露光装置1001の主制御系20によりウエハステージWSTを順次位置決めしつつ、アライメント系AS及びウエハレーザ干渉計システム18を用いて、ウエハステージWST上に保持されたウエハW上の複数のサンプルショット領域の位置座標(位置情報の実測値)が検出される(ステップ487)。また、主制御系20により、検出されたサンプルショット領域の位置座標を用いてEGA演算によりウエハW上の各ショット領域々の所定点(例えば、レチクルパターンの投影中心)との位置合わせに用いられる位置座標(位置情報の推定値)が算出される(ステップ488)。
また、主制御系20は、ウエハW上の複数の計測ショット領域について、(K−1)ロットに1回の割合で、計測した各計測ショット領域の位置情報の実測値と算出した位置情報の推定値とに基づいて各計測ショット領域の位置ずれ量及びその非線形成分並びに非線形成分の変動量をそれぞれ算出し(ステップ496)、その算出された各計測ショット領域の前記位置ずれ量の非線形成分(又はその変動量)の大きさに基づいてウエハW上の複数のショット領域各々の前記位置ずれ量の非線形成分を補正するための補正マップ(補正情報)の更新の必要性の有無を、判断する(ステップ498)。
すなわち、主制御系20(判断装置)は、(K−1)ロットに1回の割合で、ウエハW上の複数のショット領域の一部のショット領域(計測ショット領域)についての位置情報の実測値と、その実測値の全部又は一部から算出される計測ショット領域の位置情報の推定値とに基づいて得られる位置ずれ量の非線形成分(又はその変動量)をチェックすることで補正マップの更新の必要性の有無を判断している。このため、複数のショット領域の位置ずれ量の補正値を更新するために、ロット毎に少なくとも1回ウエハ上の全てのショット領域の位置情報の実測値を求め、その実測値を用いて複数のショット領域の位置ずれ量の補正値を算出していた従来技術に比べて、位置情報の計測の対象となるショット領域数及びその計測時間を確実に低減することが可能になる。
また、更新の必要があると判断した場合には、主制御系20(更新装置)は、補正情報を更新する処理を行う。すなわち、上記のチェックの結果、主制御系20により補正マップの更新の必要があると判断された場合には、補正情報の更新が行われる(ステップ500〜506)。
また、主制御系20(評価装置)は、ウエハW上の複数の計測ショット領域について、(K−1)ロットに1回の割合で、検出した各計測ショット領域の位置情報の実測値と算出した位置情報の推定値とに基づいて各計測ショット領域の位置ずれ量の非線形成分を評価し、その評価結果に基づいて追加すべき新たな計測ショット領域の個数及び配置を決定する(ステップ500)。すなわち、計測ショット領域の数が十分でない場合、各計測ショット領域の位置ずれ量の非線形成分の評価結果に基づいて計測ショット領域が追加されるので、ウエハ上の複数のショット領域の一部(複数のサンプルショット領域を含んでいれば足りる)を当初の計測ショット領域として定めることができる。従って、この点においても、前述した従来技術に比べて、位置情報の計測の対象となるショット領域数及びその計測時間を確実に低減することが可能になる。
また、主制御系20(評価装置)は、例えば、前記位置ずれ量の非線形成分が大きい計測ショット領域の周辺には、新たな計測ショット領域を多めに配置し、前記位置ずれ量の非線形成分が小さい計測ショット領域の周辺には、新たな計測ショット領域を配置しないなど、評価結果に応じて効率良く計測ショット領域の配置を定めることができる。
そして、主制御系20(更新装置)は、検出したその新たな計測ショット領域(効率的に配置された計測ショット領域)の位置情報の実測値を含む全ての計測ショット領域の位置情報の実測値に基づいて補完演算により得られるウエハW上の複数のショット領域各々の個別の基準位置に対する位置ずれ量の非線形成分を用いて、複数のショット領域各々の前記位置ずれ量の非線形成分に関する補正マップを更新する(ステップ504)。
そして、主制御系20(制御装置)は、ウエハW上の各ショット領域を露光する際に、各ショット領域の前記位置情報の推定値と最新の補正マップとに基づいて、ウエハW上の各ショット領域の位置ずれ量(線形成分及び非線形成分)を補正した重ね合わせ補正位置を算出し、その算出結果に基づいてウエハステージWSTを介してウエハWの位置を制御する。この結果、露光の際のウエハステージWSTの位置制御が精度良く行われる。
従って、複数ロット(1ロットは、例えば25枚)のウエハのそれぞれに対して連続的又は断続的に露光を行う際に、高スループットかつ重ね合わせ精度の良好な露光を行うことが可能となる。
また、サブルーチン424では、主制御系20が、ロット内の第u枚目(第2枚目)以降のウエハWの露光に際しては、補正マップの更新及びその必要性の有無の判断をも行うことなく、通常の8点EGAでの計測結果に基づいてウエハ上のショット領域の配列ずれの線形成分を補正するとともに、ショット領域の配列ずれの非線形成分については、その時点の補正マップ(そのロットの先頭ウエハの露光に先立って更新した補正マップ又はそれ以前に作成あるいは更新された補正マップ)をそのまま使用する(ステップ506)。
これは、前述と同様に、同一ロット内のウエハについては、ショット領域の配列ずれ(位置ずれ量)は殆ど変化しないと考えられるので、このようにしても露光の際の重ね合わせ精度の低下は殆ど生じない反面、スループットの向上を図ることができるからである。
また、サブルーチン422では、主制御系20が、ロット内の全てのウエハWの露光に際しては、通常の8点EGAでの計測結果に基づいてウエハ上のショット領域の配列ずれの線形成分を補正するとともに、ショット領域の配列ずれの非線形成分については、その時点の補正マップ(それ以前に作成あるいは更新された補正マップ)をそのまま使用する(ステップ476)。
この一方、露光装置1001の主制御系20が、ロット間の重ね合わせ誤差が小さいと判断した場合には、図6のサブルーチン408の処理が実行される。このサブルーチン408では、主制御系20が露光条件の1つとして指定されたショットマップデータ及びサンプルショット領域に対応する補正マップを選択する(図13のステップ604)。また、主制御系20は、ウエハ上の複数のサンプルショット領域(露光条件の1つとして指定された特定の少なくとも3つのショット領域)それぞれに対応して設けられた複数のウエハマークを検出して得られる各サンプルショット領域の実測位置情報に基づいて統計演算(EGA演算)により各ショット領域のレチクルパターンの投影位置との位置合わせに用いられる位置情報を求め、該位置情報と選択された補正マップとに基づいて、ウエハ上の各ショット領域を露光のための加速開始位置(露光基準位置)に移動した後、当該各ショット領域を走査露光する(ステップ612、614)。
すなわち、サブルーチン408では、上記の統計演算により得られる各ショット領域の個別の基準位置(設計値)からの位置ずれ量の線形成分を補正した各ショット領域のレチクルパターンの投影位置との位置合わせに用いられる位置情報を、選択した補正マップに含まれる対応する補正情報で補正した位置情報(すなわち、各ショット領域の個別の基準位置(設計値)からの位置ずれ量の線形成分及び非線形成分の両者を補正した位置情報)に基づいてウエハ上の各ショット領域が、露光のための加速開始位置に移動された後、当該各ショット領域の露光が行われる。従って、ウエハ上の各ショット領域は、位置ずれ量の線形成分のみならず非線形成分をも補正した位置に正確に移動された後露光が行われるので、重ね合わせ誤差の殆どない高精度な露光が可能となる。
このように、露光装置1001及びその露光方法によると、複数ロットのウエハのそれぞれに対して連続的又は断続的に露光を行う際に、高スループットかつ重ね合わせ精度を良好に維持した露光を行うことが可能となる。
これまでの説明から明らかなように、本実施形態のリソグラフィシステム110によると、露光装置相互間のステージのグリッド誤差などに起因する重ね合わせ誤差を非常に小さくすることが可能となる。特に、サブルーチン406の処理による場合には、ロット毎に変動するショット間誤差を精度良く補正することができ、また、サブルーチン408の処理による場合には、ショットマップの変更やサンプルショット領域の変更毎に変動するショット間誤差を精度良く補正することができる。
なお、上記実施形態では、複数ロットのウエハのそれぞれに対して連続的又は断続的に露光を行う際に、露光装置1001の主制御系20が、(K−1)=3ロットすなわち3×25=75枚のウエハ毎に、補正マップの更新の必要性の有無を判断し、その判断の結果更新が必要な場合に補正マップを更新する場合について説明したが、本発明がこれに限られるものではなく、所定時間(所定日数)毎に、補正マップの更新の必要性の有無の判断などを行っても良い。
また、上記実施形態では、露光装置1001が、ウエハW上の複数の計測ショット領域として複数のサンプルショット領域のみを指定する第1モードと、ウエハW上の複数の計測ショット領域として複数のサンプルショット領域及び残りのショット領域の少なくとも一部を指定する第2モードとが設定可能に構成されているものとした。しかし、本発明の露光装置が、これに限定されるものではなく、モードの選択は可能でなく、実質的に上記実施形態の第1モードと第2モードとの一方のみが設定されていても良い。すなわち、前述のステップ490→494→496、又はステップ490→496の処理の流れのみが設定されていても良い。
あるいは、上記ステップ492における判断が否定された場合に、上記ステップ496の処理に先立って、ステップ494の処理に代えて、各サンプルショット領域の位置ずれ量又はその非線形成分の大きさなどに基づき、上記実施形態のステップ500と同様にして新たな計測ショット領域を決定し、その新たな計測ショット領域の位置情報を計測するようにすることも可能である。
なお、上記実施形態では、主制御系20が、サブルーチン424のステップ500において、各計測ショット領域について位置ずれ量の非線形成分(又はその変動量)を評価し、その評価結果に基づいて新たな(追加すべき)計測ショット領域を決定するものとしたが、これに限らず、更新前の補正マップに含まれる各区画領域の前記位置ずれ量の非線形成分の評価結果に基づいて新たな計測ショット領域を決定するようにしても良い。
また、上記実施形態では、補正情報は、補正マップの形式で、RAM等のメモリ内のデータテーブルに格納されているものとしたが、これに限らず、補正情報は、補正関数の形式でメモリ内に記憶さていても良い。
なお、上記実施形態では、例えばサブルーチン418において、ロット内の第2枚目以降については、8点EGAを行うものとしたが、EGAの計測点数(アライメントマーク数(通常はサンプルショット領域数に対応)は、統計演算で求める未知パラメータ(上記実施形態では6つ)の数より多ければ、いくつでも良いことは勿論である。
なお、上記実施形態のサブルーチン418では、ロット先頭のウエハの露光に際して、全ショット領域のウエハマークの計測結果を用いてEGA演算により算出したショット配列座標と補完関数に基づいて算出した配列座標の非線形成分とに基づいて、各ショット領域を走査開始位置へ位置決めするものとしたが、これに限らず、ステップ440で計測した各ショット領域の位置ずれ量の実測値に基づいて、EGA演算を行うことなく、各ショット領域を走査開始位置へ位置決めすることとしても良い。
また、上記実施形態において、gが3以上の整数に設定されている場合には、ロット内の最初の(g−1)枚(複数枚)のウエハについては、ステップ440からステップ448までの処理が、繰り返し行われることとなるが、この際、ステップ448では、第2枚目から(g−1)枚目までのウエハについては、全ショット領域の配列ずれの非線形成分(補正値)を、例えばそれまでの各回の演算結果の平均値に基づいて求めることとすれば良い。勿論、第g枚目(g≧3)以降のウエハでも、第(g−1)枚目までの少なくとも2枚のウエハでそれぞれ算出される非線形成分(補正値)の平均値を用いるようにしても良い。
さらに、図8のステップ444では、ステップ440で計測した位置座標と設計上の位置座標とステップ442で算出した位置座標(推定値)とを用いて各ショット領域の位置ずれ量の線形成分と非線形成分とを分離したが、線形成分と非線形成分とを分離することなく、非線形成分のみを求めても良い。この場合には、ステップ440で計測した位置座標とステップ442で算出した位置座標との差を非線形成分とすれば良い。また、図5のステップ312、図8のステップ436、図11のステップ472、図12のステップ486及び図13のステップ610のサーチアライメントは、ウエハWの回転誤差が許容範囲内であるときなどは行わなくても良い。
また、上記実施形態では、グリッド補正機能を有する露光装置1001が、前述した第1のグリッド補正機能及び第2のグリッド補正機能の両者を有する場合について説明したが、これに限らず、露光装置は、第1のグリッド補正機能のみを有していても良い。
なお、上記実施形態では、サブルーチン418におけるロット先頭のウエハの位置ずれ量の線形成分の補正データを、全ショット領域をサンプルショット領域としたEGA演算により求めるものとしたが、これに限らず、ロット内の2枚目以降のウエハと同様に指定されたサンプルショット領域のマークの検出結果を用いたEGA演算により求めることとしても良い。
また、上記実施形態では、EGA方式のウエハアライメントを行うに際し、サンプルショット領域(全ショット領域又はその内の特定の複数のショット領域がサンプルショット領域として選択されている場合は、その選択された特定のショット領域)のアライメントマークの座標値を用いるものとしたが、例えばサンプルショット領域毎にその設計上の座標値に従ってウエハWを移動してレチクルR上のマーク、又はアライメント系ASの指標マークとの位置ずれ量を検出し、この位置ずれ量を用いて統計演算によってショット領域毎に設計上の座標値からの位置ずれ量を算出しても良いし、あるいはショット領域間のステップピッチの補正量を算出しても良い。
さらに、上記実施形態では、EGA方式を前提に説明を行ったが、EGA方式の代わりに重み付けEGA方式を用いても良いし、あるいはショット内多点EGA方式等を用いても良い。なお、重み付けEGA方式のウエハアライメントについては、例えば特開平5−304077号公報及びこれに対応する米国特許第5,525,808号などに詳細に開示されている。
すなわち、この重み付けEGA方式では、ウエハ上の複数のショット領域(区画領域)のうち、予め選択された少なくとも3つのサンプルショット領域の静止座標系上における位置座標を計測する。次いで、ウエハ上のショット領域毎に、当該ショット領域(その中心点)とサンプルショット領域(その中心点)の各々との間の距離に応じて、あるいはショット領域とウエハ上で予め規定された所定の着目点との間の距離(第1情報)と、当該着目点とサンプルショット領域の各々との間の距離(第2情報)とに応じて、サンプルショット領域の静止座標系上における位置座標の各々に重み付けを行い、かつこの重み付けされた複数の位置座標を用いて統計演算(最小二乗法、又は単純なる平均化処理等)を行うことにより、ウエハ上の複数のショット領域の各々の静止座標系上における位置座標を決定する。そして、決定された位置座標に基づいて、ウエハ上に配列された複数のショット領域の各々を、静止座標系内の所定の基準位置(例えば、レチクルパターンの転写位置)に対して位置合わせする。
このような重み付けEGA方式によると、局所的な配列誤差(非線形な歪み)が存在するウエハであっても、サンプルショット領域数が比較的少なくて済み、かつ計算量を抑えながら、所定の基準位置に対して全てのショット領域を高精度、高速にアライメントすることが可能である。
また、ショット内多点EGA方式は、例えば特開平6−349705号公報及びこれに対応する米国特許第6,278,957号などに開示されており、サンプルショット領域毎に複数のアライメントマークを検出してX、Y座標をそれぞれ複数個ずつ得るようにし、EGA方式で用いられるウエハの伸縮、回転等に対応するウエハパラメータの他に、ショット領域の回転誤差、直交度、及びスケーリングに対応するショットパラメータ(チップパラメータ)の少なくとも1つをパラメータとして含むモデル関数を用いて各ショット領域の位置情報、例えば座標値を算出するものである。
これを更に詳述すると、このショット内多点EGA方式は、基板上に配列された各ショット領域内の基準位置に対してそれぞれ設計上一定の相対位置関係で配置された複数個のアライメントマーク(1次元マーク、2次元マークのいずれでも良い)がそれぞれ形成され、これら基板上に存在するアライメントマークの中から所定数のアライメントマークであって、X位置情報の数とY位置情報の数との和が上記モデル関数に含まれるウエハパラメータ及びショットパラメータの総数より多く、かつ少なくとも同一のサンプルショット領域について同一方向に複数の位置情報が得られる所定数のアライメントマークの位置情報を計測する。そして、これらの位置情報を、上記モデル関数に代入し、最小自乗法等を用いて統計処理することにより、そのモデル関数に含まれるパラメータを算出し、このパラメータと、各ショット領域内の基準位置の設計上の位置情報及び基準位置に対するアライメントマークの設計上の相対位置情報から、各ショット領域の位置情報を算出するものである。
これらの場合も、位置情報として、アライメントマークの座標値を用いても良いが、アライメントマークに関する位置情報であって統計処理に適切な情報であれば、如何なる情報を用いて統計演算を行っても良い。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記米国特許第5,525,808号、米国特許第6,278,957号における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
この他、上記の評価関数を用いた評価結果により得られる半径sに基づいて、EGA方式、あるいは重み付けEGA方式、又はショット内多点EGA方式におけるEGA計測点数を適切に決定することもできる。
なお、上記実施形態では、マーク検出系として、オフアクシス方式のFIA系(結像式のアライメントセンサ)を用いる場合について説明したが、これに限らずいかなる方式のマーク検出系を用いても構わない。すなわち、TTR(Through The Reticle)方式、TTL(Through The Lens)方式、またオフアクシス方式の何れの方式であっても、更には検出方式がFIA系などで採用される結像方式(画像処理方式)以外、例えば回折光又は散乱光を検出する方式などであっても構わない。例えば、ウエハ上のアライメントマークにコヒーレントビームをほぼ垂直に照射し、当該マークから発生する同次数の回折光(±1次、±2次、……、±n次回折光)を干渉させて検出するアライメント系でも良い。この場合、次数毎に回折光を独立に検出し、少なくとも1つの次数での検出結果を用いるようにしても良いし、波長が異なる複数のコヒーレントビームをアライメントマークに照射し、波長毎に各次数の回折光を干渉させて検出しても良い。
また、本発明は上記実施形態の如き、ステップ・アンド・スキャン方式の露光装置に限らず、ステップ・アンド・リピート方式、又はプロキシミティ方式の露光装置(X線露光装置等)を始めとする各種方式の露光装置にも全く同様に適用が可能である。
上記実施形態では、光源として、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザなどの遠紫外光源や、F2レーザなどの真空紫外光源、紫外域の輝線(g線、i線等)を発する超高圧水銀ランプなどを用いることができる。この他、真空紫外域の光を露光用照明光として用いる場合に、上記各光源から出力されるレーザ光に限らず、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(Er)(又はエルビウムとイッテルビウム(Yb)の両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
更に、露光用照明光としてEUV光、X線、あるいは電子線やイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置に本発明を適用しても良い。この他、例えば国際公開WO99/49504号などに開示される、投影光学系PLとウエハとの間に液体が満たされる液浸型露光装置などにも本発明を適用しても良い。
なお、本発明は、半導体製造用の露光装置に限らず、液晶表示素子などを含むディスプレイの製造に用いられる、デバイスパターンをガラスプレート上に転写する露光装置、薄膜磁気ヘッドの製造に用いられるデバイスパターンをセラミックウエハ上に転写する露光装置、及び撮像素子(CCDなど)、マイクロマシン、有機EL、DNAチップなどの製造に用いられる露光装置などにも適用することができる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。ここで、DUV(遠紫外)光やVUV(真空紫外)光などを用いる露光装置では一般的に透過型レチクルが用いられ、レチクル基板としては石英ガラス、フッ素がドープされた石英ガラス、螢石、フッ化マグネシウム、又は水晶などが用いられる。また、プロキシミティ方式のX線露光装置、又は電子線露光装置などでは透過型マスク(ステンシルマスク、メンブレンマスク)が用いられ、マスク基板としてはシリコンウエハなどが用いられる。
《デバイス製造方法》
次に、上述した実施形態に係るリソグラフィシステム及びその露光方法をリソグラフィ工程で使用したデバイスの製造方法の実施形態について説明する。
図14には、デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートが示されている。図14に示されるように、まず、ステップ701(設計ステップ)において、デバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップ702(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。一方、ステップ703(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
次に、ステップ704(ウエハ処理ステップ)において、ステップ701〜ステップ703で用意したマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウエハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップ705(デバイス組立ステップ)において、ステップ704で処理されたウエハを用いてデバイス組立を行う。このステップ705には、ダイシング工程、ボンディング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。
最後に、ステップ706(検査ステップ)において、ステップ705で作製されたデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にデバイスが完成し、これが出荷される。
図15には、半導体デバイスの場合における、上記ステップ704の詳細なフロー例が示されている。図15において、ステップ711(酸化ステップ)においてはウエハの表面を酸化させる。ステップ712(CVDステップ)においてはウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ713(電極形成ステップ)においてはウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ714(イオン打込みステップ)においてはウエハにイオンを打ち込む。以上のステップ711〜ステップ714それぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップ715(レジスト形成ステップ)において、ウエハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップ716(露光ステップ)において、上で説明した露光装置及び露光方法によってマスクの回路パターンをウエハに転写する。次に、ステップ717(現像ステップ)においては露光されたウエハを現像し、ステップ718(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップ719(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。
これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
以上説明した本実施形態のデバイス製造方法を用いれば、露光工程(ステップ716)において、ロット毎のウエハの露光処理に際して、上記実施形態に係るリソグラフィシステム及びその露光方法が用いられるので、スループットを極力低下させることなく、レチクルパターンとウエハ上のショット領域との重ね合わせ精度の向上を図った高精度な露光が可能となる。この結果、スループットを低下させることなく、より微細な回路パターンを重ね合わせ精度良くウエハ上に転写することが可能になり、高集積度のマイクロデバイスの生産性(歩留まりを含む)を向上させることができる。特に、光源にF2レーザ光源等の真空紫外光源を用いる場合には、投影光学系の解像力の向上とあいまって、例えば最小線幅が0.1μm程度のであってもその生産性の向上が可能である。