≪第1の実施形態≫
本発明の第1の実施形態について説明する。図1には、本発明の第1の実施形態に係る露光方法を好適に実施可能な露光装置100の概略構成が示されている。露光装置100は、照明系10、レチクルステージRST、投影光学系PL、ウエハステージWST及び装置全体を統括制御する主制御装置20等を備えている。なお、露光装置100は、走査型露光装置である。
前記照明系10は、例えば特開2001−313250号公報(対応する米国特許出願公開第2003/0025890号明細書)などに開示されるように、回路パターン等が描かれたレチクルR上の一部をコヒーレントな照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。照明光ILが照射されるレチクルR上の領域は、スリット状に規定されており、この領域を以下では照明領域ともいう。
前記レチクルステージRST上には、レチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動部(不図示)によって照明系10の光軸(後述する投影光学系PLの光軸AXに一致)に垂直なXY平面内で微少駆動可能であるとともに、所定の走査方向(Y軸方向)に指定された走査速度で駆動可能となっている。レチクルステージRSTのステージ移動面内の位置は、レチクルレーザ干渉計(以下、レチクル干渉計という)16によって、移動鏡15を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計16からのレチクルステージRSTの位置情報はステージ制御装置19及びこれを介して主制御装置20に供給される。ステージ制御装置19では、主制御装置20からの指示に応じ、レチクルステージRSTの位置情報に基づいてレチクルステージ駆動部(図示省略)を介してレチクルステージRSTを駆動制御する。
前記投影光学系PLは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置され、その光軸AXの方向がZ軸方向とされている。投影光学系PLとしては、例えば両側テレセントリックな縮小系が用いられている。この投影光学系PLの投影倍率は例えば1/4、1/5あるいは1/8等である。投影光学系PLの種々の結像特性、例えば倍率、ディストーション、非点収差、コマ収差、像面湾曲などは、主制御装置20の制御の下で調整可能となっている。照明系10からの照明光ILによってレチクルRが照明されると、このレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明光の照射領域(前述の照明領域)内のレチクルRの回路パターンの縮小像(部分像)が表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上に形成される。
前記ウエハステージWSTは、投影光学系PLの図1における−Z側で、不図示のベース上に配置され、例えばリニアモータ等を含むウエハステージ駆動部24によってY軸方向及びこれに直交するX軸方向に所定ストロークで駆動されるとともに、Z軸方向、θx方向、θy方向及びθz方向(Z軸回りの回転方向)に微小駆動可能な構成となっている。このウエハステージWST上には、ウエハホルダ25が載置され、このウエハホルダ25上にウエハWが例えば真空吸着等によって固定されている。
ウエハステージWSTのXY平面内での位置は、その上面に設けられた移動鏡17を介して、ウエハレーザ干渉計(ウエハ干渉計)18によって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。すなわち、本実施形態では、ウエハステージWSTの移動位置を規定する静止座標系(直交座標系)が、ウエハ干渉計18の測長軸によって規定されている。以下においては、この静止座標系をステージ座標系とも呼ぶ。
ウエハステージWSTのステージ座標系上における位置情報(又は速度情報)はステージ制御装置19及びこれを介して主制御装置20に供給される。ステージ制御装置19では、主制御装置20の指示に応じ、ウエハステージWSTの上記位置情報(又は速度情報)に基づき、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTを制御する。
また、ウエハステージWST上のウエハWの近傍には、基準マーク板FMが固定されている。この基準マーク板FMの表面は、ウエハWの表面と同じ高さに設定され、この表面には後述するアライメント系のベースライン計測用の基準マーク及びレチクルアライメント用の基準マークその他の基準マークが形成されている。
また、投影光学系PLの側面には、オフアクシス方式のアライメント系ASが固定されている。このアライメント系ASとしては、ここでは、例えば特開平2−54103号公報(対応する米国特許第4,962,318号明細書)などに開示されているようなFIA(Field Image Alignment)系のアライメントセンサが用いられている。このアライメント系ASは、所定の波長幅を有する照明光(例えば白色光)をウエハWに照射し、ウエハW上のアライメントマークの像と、ウエハWと共役な面内に配置された指標板上の指標マークの像とを、対物レンズ等によって、撮像素子(CCDカメラ等)の受光面上に結像して検出するものである。アライメント系ASはアライメントマーク(及び基準マーク板FM上の基準マーク)の撮像結果を、主制御装置20へ向けて出力する。
露光装置100には、不図示の多点フォーカス検出系が、投影光学系PLを支える支持部(図示省略)に固定されている。この多点フォーカス検出系としては、例えば特開平6−283403号公報(対応する米国特許第5,448,332号明細書)などに開示されるものと同様の構成のものが用いられ、ステージ制御装置19はこの多点フォーカス検出系からのウエハ位置情報に基づいてウエハステージWSTをウエハステージ駆動部24を介してZ軸方向及び傾斜方向(θx方向及びθy方向)に微小駆動して、ウエハWのフォーカス・レベリング制御を行う。
主制御装置20は、マイクロコンピュータ又はワークステーションを含んで構成され、装置の構成各部を統括して制御する。この主制御装置20には、露光装置の動作を制御する各種プログラムを実行するCPUの他、そのプログラムや各種データを記憶する内部メモリや、記憶装置など(いずれも不図示)を備えている。
露光装置100は、半導体デバイスの製造工場内で他の露光装置とともに稼動している。したがって、露光装置100には、製造工場内で他の露光装置で複数のショット領域がすでに転写形成されたウエハがロードされ、そのウエハ上の複数のショット領域に対し、重ね合わせ露光を行う場合もある。露光装置100では、この重ね合わせ露光を精度良く行うためにいわゆるウエハアライメントを行っている。
<EGA方式のウエハアライメント>
このウエハアライメントとしては、例えば、いわゆるEGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)方式が採用されている。このEGA方式のウエハアライメントでは、次式が、ショット領域の位置座標の設計値からの補正量の算出に用いられる。
ここで、dx、dyは、ショット領域の位置座標の設計値からのX軸方向,Y軸方向の補正量であり、X、Yは、ウエハWの中心を原点とするウエハ座標系におけるショット領域の設計上の位置座標である。すなわち、上記式(1)は、ウエハの中心を原点とするウエハ座標系における各ショット領域の設計上の位置座標X、Yに関する多項式であり、その位置座標X、Yと、そのショット領域の位置座標の補正量(アライメント補正成分)dx、dyとの関係を表現するモデル式となっている。なお、本実施形態では、後述するサーチアライメントにより、ステージ座標系とウエハ座標系との回転がキャンセルされるようになるため、以下では、ステージ座標系と、ウエハ座標系を特に区別せず、すべてステージ座標系であるものとして説明する。なお、X軸方向のアライメント補正成分と、Y軸方向のアライメント補正成分とで形成されるベクトルを、以下では、アライメント補正ベクトルとも呼ぶ。
このモデル式(1)を用いれば、ウエハWのショット領域の位置座標X,Yから、そのショット領域の位置座標の補正量を求めることができる。ただし、この補正量を算出するためには、係数a0、a1、…、b0、b1、…を求める必要がある。EGA方式のアライメントでは、ウエハステージWST上に保持されたウエハW上のショット領域のうち、幾つかのショット領域(サンプルショット領域)に付設された位置計測用マーク(ウエハマーク)をアライメント系ASを用いて計測し、ステージ座標系におけるサンプルショット領域の位置座標の実測値を検出する。この計測を以下ではEGA計測ともいう。このEGA計測の後、そのサンプルショット領域の位置座標の設計値と実測値との差のデータに基づいて、最小二乗法等の統計演算を用いて、上記式(1)の係数a0、a1、…、b0、b1、…を求める。このような統計演算を以下ではEGA演算ともいう。
なお、上記式(1)の多項式の次数に特に制限はなく、1次式であっても、2次式であってもよい。本実施形態では、EGA方式で用いられる多項式としては、1次式、2次式、3次式のいずれかが選択されるものとする。用いる多項式の次数の情報は、上位装置であるコンピュータから送られる露光条件データファイル、いわゆる露光レシピに指定されている。また、サンプルショット領域の数(サンプル数)は、多項式の次数に応じて十分となるように決定される。なお、EGA方式のように、統計的なモデル式によってショット領域の位置座標を補正する場合には、補正後のショット領域の位置座標は、実測されたショット領域の位置座標との間にずれが生じる。以下では、このずれを、残差ベクトルと呼び、その成分を残差成分とも呼ぶ。
ところで、ウエハW上に形成されたショット領域の配列に関するデータをショットマップと呼ぶ、そして、そのショットマップにしたがって配列されたウエハW上にショット領域の中心を結んで形成される格子を、ウエハグリッドとも呼ぶ。ウエハグリッドは、設計上は、理想的な格子となっている。しかし、実際には、ステージ座標系の号機間の違い(いわゆるステージグリッドの違い)や、プロセスに起因するウエハWの変形などにより、若干の歪みを有するものとなる。プロセスに起因するウエハWの変形については、そのようなプロセスを経た後のウエハWを実際にウエハステージWSTにロードし、アライメント系ASを用いて計測しなければ検出することができない。したがって、プロセスに起因するウエハの変形によるウエハグリッドの非線形成分については、上述した2次、3次などの高次の多項式を用いたEGA方式のアライメントで対応することが必要となるが、ステージグリッドの違いにより生じるウエハグリッドの非線形成分については、事前に計測が可能である。そこで、露光装置100では、上記EGA方式のアライメント機能とは別個に、ステージグリッドの違いに対応する補正機能を有している。
このグリッド補正機能では、実際の露光を行う前に、重ね合わせ露光の基準となるウエハ(いわゆる基準ウエハ)を予め露光装置100に投入して、アライメント系ASを用いてその基準ウエハを観察してそのウエハグリッドを検出し、ステージグリッドの歪みを表す補正マップを作成する。そして、製品ウエハを露光装置100において実際に露光する場合には、重ね合わせ露光位置を、その補正マップに応じて補正するようになる。
このグリッド補正機能における補正マップの作成方法について説明する。図2には、この補正マップを作成する際の主制御装置20の処理を示すフローチャートが示されている。なお、前提として、基準ウエハのショットマップ、サンプルショット領域の組み合わせに関するデータとが、主制御装置20のメモリにすでにロードされているものとする。ここで、基準ウエハとしては、ウエハマークがそれぞれ付設された複数のショット領域が形成されているウエハであればよい。
まず、ステップ203において、ウエハ交換を行って、基準ウエハをロードし、ステップ205において、サーチアライメントを行って、ウエハステージWSTに保持された基準ウエハの残留回転誤差を除去する。この結果、基準ウエハのウエハグリッドとステージ座標系との回転誤差が解消される。なお、サーチアライメントは、具体的には、基準ウエハ上に形成された少なくとも2つのサーチマークをアライメント系で計測してその位置座標を検出し、ステージ座標系に対する基準ウエハとのオフセット成分や回転成分を検出するものである。このサーチアライメントについては、例えば、米国特許出願公開第2002/0042664号明細書等に詳細に開示されているので詳細な説明を省略する。
次のステップ207では、基準ウエハ上のすべてのショット領域に付設されたウエハマークをアライメント系ASを用いて計測し、ウエハマークの位置座標を検出する。そして、ステップ209では、カウンタ値nを1に初期化し、ステップ211では、n番目のサンプルショット領域の組み合わせを露光レシピから読み出す。
次のステップ213では、n番目のサンプルショット領域の組合せで、EGA演算を行って、上記式(1)の係数を算出する。ただし、ここでは、上記式(1)を、1次のモデル式、2次のモデル式、3次のモデル式とした場合についてそれぞれEGA演算を行い、1次のモデル式とした場合の0次、1次の係数、2次のモデル式とした場合の0次、1次、2次の係数、3次のモデル式とした場合の0次、1次、2次、3次の係数をそれぞれ算出する。すなわち、1次のモデル式を用いてEGA演算を行う場合には、上記式(1)の2次以上の係数を0とした上で最小二乗法などの統計演算を行って、1次以下の係数a0〜a2、b0〜b2を求める。そして、2次のモデル式を用いてEGA演算を行う場合には、上記式(1)の3次以上の係数を0とした上で最小二乗法などの統計演算を行って2次以下の係数a0〜a5、b0〜b5を求める。さらに、3次のモデル式を用いてEGA演算を行う場合には、上記式(1)の4次以上の係数を0とした上で最小二乗法などの統計演算を行って3次以下の係数a0〜a9、b0〜b9を求める。モデル式の次数が異なれば、係数の値は、当然異なるようになる。
次のステップ215では、1次〜3次それぞれのモデル式を採用した場合の全ショット領域それぞれのアライメント補正ベクトルを算出し、さらに残差ベクトルを算出する。そして、ステップ217では、全ショット領域の位置座標と、そのショット領域での残差ベクトルとの対応関係を示す補正マップを1次のモデル式、2次のモデル式、3次のモデル式についてそれぞれ作成する。これらの補正マップにおけるベクトルは、ショット領域の中心位置座標の実測値と、EGA演算で得られる1次〜3次のモデル式から求められるアライメント補正ベクトルで補正された位置座標とのずれを示す残差ベクトルである。したがって、このベクトルは、後述する、露光処理で行われる同じ次数で行われるEGA方式のウエハアライメントにおけるアライメント補正ベクトルとは、成分が干渉することのない、独立別個のベクトルとなる。
次のステップ219では、全てのサンプルショット領域の組合せについて、補正マップが作成されたか(n>nmaxとなったか)否かを判断する。ここで、nmaxは、サンプルショット領域の組合せの総数である。この判断が否定されれば、ステップ221に進み、カウンタ値nを1だけインクリメントし、ステップ211に戻る。以降、ステップ219において、判断が肯定されるまで、ステップ211〜ステップ221が繰り返され、すべてのサンプルショット領域の組合せで、1次のモデル式、2次のモデル式、3次のモデル式にそれぞれ対応する補正マップが作成される。
すべてのサンプルショット領域の組合せについて1次〜3次に対応する補正マップの作成が終了し、ステップ219における判断が肯定された後は、ステップ223に進む。ステップ223では、全てのサンプルショット領域の組合せ、1次〜3次のモデル式の各次の係数に対応する補正マップをその次数と対応づけて不図示の記憶装置に格納する。これにより、主制御装置20は、サンプルショット領域の組合せと次数とを指定すれば、その次数に対応する補正マップを、読み出すことができる。なお、ここでは、全ショット領域における位置座標についての設計値と上記ステップ207で計測された実測値の差を、ベクトルとする補正マップを、0次の補正マップとして作成し、記憶装置に格納しておく。このように、補正マップに含まれるベクトルを以下では、補正量ベクトルと呼ぶ。
本実施形態では、露光装置100において処理される可能性があるウエハWのショットマップにそれぞれ対応する幾つか基準ウエハに対して、図2のステップ203〜ステップ225を行って、最終的に、ショットマップ毎、サンプルショット領域の組合せ毎、モデル式の次数毎の補正マップを作成し、それらと対応づけて補正マップを不図示の記憶装置に格納する。
次に、本実施形態の露光装置100における露光処理について説明する。図3には、露光処理を行う際の主制御装置20の処理を示すフローチャートが示されている。なお、露光装置100には、レチクルRがレチクルステージRST上にロードされており、レチクルアライメント、ベースライン計測などの準備処理がすでに終了しているものとする。
まず、ステップ301において、上位装置のホストコンピュータから露光レシピを受信し、メモリに格納する。この露光レシピには、そのウエハWのショットマップ、サンプルショット領域の組合せ、EGA方式のアライメントにおけるモデル式の次数に関するデータが含まれている。
次のステップ303では、露光レシピに指定された、ウエハWのショットマップ、サンプルショット領域の組合せ、EGAのモデル式の次数に対応する補正マップを読み込む。例えば、露光レシピに指定されたEGAの次数が2次である場合には、上記ステップ213において、指定されたショットマップ、サンプルショット領域の組合せにおける2次のモデル式に対応する補正マップを読み込む。ここで、一層目の露光である場合には、0次の補正マップを読み込む。
次のステップ307では、ウエハ交換により、ウエハWをウエハステージWST上にロードし、ステップ309では、一層目の露光であるか否かを判断する。この判断が否定されればステップ311に進み、肯定されればステップ315に進む。
次のステップ311では、サーチアライメントを行う。サーチアライメントについては前述したとおりであるので、詳細な説明を省略する。次のステップ313では、ウエハアライメントを行う。具体的には、露光レシピに指定されたサンプルショット領域のウエハマークを計測対象として、アライメント系ASを用いてEGA計測を行い、露光レシピに指定されている次数(例えば2次)までのモデル式(上記式(1)参照)をモデル式として、EGA演算を行う。これにより、露光レシピに指定された次数までの上記式(1)の係数が決定され、すべてのショット領域の位置座標のアライメント補正ベクトル(dx,dy)が算出される。ここで、係数が決定された上記式(1)より求められるアライメント補正量ベクトル(dx、dy)を、F(X,Y)とする。
次のステップ315では、取得した補正マップの補正量ベクトルG(X,Y)を、EGAにより求められた補正量ベクトルF(X,Y)に加算して、各ショット領域の位置座標の補正量を算出する。ここで、一層目の露光である場合には、F(X,Y)=0となるので、ここでの加算結果は、G(X、Y)(0次の補正マップ)となる。
続くステップ317〜ステップ321は、ショット領域の形状を補正するショット形状補正に関する処理である。ここでは、ショット形状補正について説明する。
ショット形状補正では、ウエハグリッドに併せて、露光するショット領域の形状を補正する。ウエハW上のウエハグリッドは、プロセスに起因して変形するものであり、個々のショット領域も、このプロセスによって若干変形するが、その変形は、ウエハグリッドの変形に沿ったものになると考えられる。したがって、重ね合わせ精度の観点からすると、新たに転写するレチクルR上のパターンの像も、ウエハグリッドに沿った形で変形したショット領域の形に合わせて変形して転写するのが望ましい。
図4には、ショット形状補正を概略的に説明するための図が示されている。図4に示されるように、このショット領域SAは、ウエハグリッドに沿った形で変形している。このショット領域の変形は、そのショット領域付近におけるウエハグリッドの変動状態、すなわちdx、dyの変動状態に沿ったものとなる。ウエハグリッドの変動成分は、以下に示される互いに独立した4つの変動成分に分けることができ、各変動成分は、以下に示すショット領域の変形をもたらす。
(1)dxのX軸方向に関する変動成分
X軸方向の倍率の変化
(2)dxのY軸方向に関する変動成分
Y軸に対する回転
(3)dyのX軸方向に関する変動成分
Y軸方向の倍率の変化
(4)dyのY軸方向に関する変動成分
X軸に対する回転
そこで、本実施形態では、上記(1)〜(4)の変動成分を算出し、その変動成分に基づいて、ウエハW上のショット領域の変形を推定し、そのショット領域の変形にしたがって、走査露光中のパターンの像を変形させる。
ところで、ショット領域の変形を推定する方法には、大別して以下に示す2つの方法がある。
(A)上記式(1)をX、Yについて偏微分した値に従ってショット領域を変形する。
(B)ウエハグリッドを、1次のモデル式に近似して、そのモデル式の係数に従って、ショット領域を変形する。
以下では、(A)の推定方法によってショット領域の形状を補正する方法を、高次偏微分補正といい、(B)の推定方法によってショット領域の形状を補正する方法を、1次近似補正と呼ぶ。同じウエハグリッドであっても、(A)の方法を用いた場合と(B)の方法を用いた場合とでは、ショット領域の変形状態が異なったものとなる。
図5(A)、図5(B)には、高次偏微分補正と1次近似補正との違いの一例が概略的に示されている。ここで、説明を簡単にするために、ウエハグリッドにおけるY成分dy=b6・X3となっているとする。図5(A)には、高次偏微分補正により、補正された3つのショット領域が示されている。高次偏微分補正を行った場合、各ショット領域のY軸に対する回転は、dy=b6・X3の偏微分、dy’=3b6・X2に従うようになる。この場合、3つのショット領域のうち、中央のショット領域は、変形量が0となる。一方、図5(B)には、1次近似補正により、補正された3つのショット領域が示されている。1次近似補正では、改めて1次のモデル式でEGA方式のアライメントを行って、そのモデル式におけるY軸に対する回転に関係がある1次の係数を用いて、ショット形状を補正する。この1次近似補正を行った場合、図5(B)に示されるように、3つのショット領域のうち、中央のショット領域も1次変形しており、全体として、各ショット領域の変形は、均一になる。
図5(A)、図5(B)に示されるように、高次偏微分補正では、ショット領域の変形は、そのショット領域周辺のウエハグリッドに沿った局所的なものとなるのに対し、1次近似補正では、ウエハWのすべてのショット領域の変形が均一なものとなる。いずれの方法を選択するかは、露光レシピで指定可能となっている。これにより、ユーザが、いずれの方法を、製造する半導体の要求仕様に応じて適宜選択することができるようになる。
なお、ショット領域の回転は、レチクルステージRSTと、ウエハステージWSTの相対回転量の調整によって補正され、Y軸方向の倍率は、両ステージWST、RSTの相対速度の調整により補正され、X軸方向の倍率は、投影光学系PLの結像特性の調整により実現される。
図3に戻り、次のステップ317では、ショット形状補正として、1次近似補正を行うか否かを判断する。前述のとおり、1次近似補正を行うか、高次偏微分補正を行うかは、予め露光レシピに設定されているので、それを参照する。この判断が肯定されれば、ステップ319に進んで1次近似補正を行い、否定されればステップ321に進んで高次偏微分補正を行う。ここで、露光レシピに指定されたEGAの次数が1次であった場合には、改めて1次近似補正を行う必要はないので、判断はもちろん否定され、ステップ321に進むようになる。
ステップ319又はステップ321が実行された後のステップ322では、ウエハWに対し走査露光を行う。この走査露光において、各ショット領域の中心の位置座標は、上記ステップ315で算出された補正量だけ補正され、そのショット領域の形状は、上記ステップ319又はステップ321で補正されたものとなる。各ショット領域は、両ステージWST、RSTの交互スキャンによって転写されるようになるが、そのときのウエハステージWSTとレチクルステージRSTとの相対位置は、上記補正に伴って適宜変更されるようになる。走査露光完了後、ステップ324では、ロットのすべてのウエハWに対する露光が終了したか否かを判断する。この判断が否定されれば、ステップ307に戻る。以降、ステップ324において、判断が肯定されるまで、ステップ307〜ステップ324が繰り返される。
ステップ324で判断が肯定された後に実行されるステップ326では、最後のウエハをアンロードし、処理を終了する。
以上詳細に述べたように、本実施形態によれば、ウエハグリッドの成分のうち、露光装置に起因する所定次数以上の成分に関する情報を、複数の異なる次数で記憶しているので、そのウエハWが経たプロセスに起因する成分に関する情報の次数、すなわちEGA方式のアライメントに用いられたモデル式の次数に応じて、露光装置に起因する成分に関する情報を適宜選択して用いることができる。この結果、パターンの像とウエハWとの2次元平面内の相対位置の補正を過補正としないようにすることができる。
また、本実施形態によれば、重ね合わせ露光において、ウエハグリッドを考慮して、レチクルR上のパターンの像とウエハWとの相対位置を補正するとともに、レチクルR上のパターンの像形状をも補正する場合に、ウエハグリッドに相当する高次のモデル式の1次の項の係数で補正するか、そのウエハグリッドを1次のモデル式で近似したときにその1次の係数で補正するかを選択することができる。このようにすれば、ショット領域に重ね合わせて転写するパターンの像形状を、製造する製品の要求仕様に応じてウエハグリッドの局所的な成分に沿ったものとすることもできるし、全体的に均一なものとすることもできる。
≪第2の実施形態≫
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態における露光装置の構成等は、第1の実施形態と同じであり、補正マップの作成処理、及び露光処理が上記第1の実施形態と相違するのみである。以下、これらの相違点を中心として、説明する。
図6には、本実施形態に係る補正マップの作成の際の主制御装置20の処理のフローチャートが示されている。なお、前提として、露光装置100の露光対象となる可能性があるウエハのショットマップ、サンプルショット領域の組み合わせに関するデータとは、主制御装置20のメモリにロードされているものとする。
まず、ステップ403において、ウエハ交換を行い、基準ウエハをロードし、ステップ405において、サーチアライメントを行って、ウエハステージWSTに保持された基準ウエハの残留回転誤差を除去する。次のステップ407では、基準ウエハ上のすべてのショット領域に付設されたウエハマークをアライメント系ASを用いて計測し、ウエハマークの位置座標を検出する。
次のステップ409では、所定次数、例えば、ウエハグリッドを、3次の高次多項式関数に近似する。この高次多項式関数としては、上記式(1)に示されるEGAのモデル式と同じものが用いられる。ここでは、EGA演算と同様の演算が行われ、その多項式の係数が算出される。この高次多項式関数を、以下では補正関数と呼ぶ。
次のステップ411では、3次の高次多項式関数で近似した場合の残差ベクトルを算出する。そして、ステップ413では、ショット領域の設計上の位置座標と残差ベクトルとの関係を表す補正マップを作成する。そして、次のステップ415では、補正関数及び補正マップのデータが不図示の記憶装置に格納される。最後のステップ417では、基準ウエハがアンロードされる。
すなわち、本実施形態では、上記実施形態と異なり、基準ウエハをロードしたときの、各ショット領域の位置座標の設計値と実測値とのずれ、すなわちアライメント系ASで観測された基準ウエハのウエハグリッドが、そのまま補正情報として取得されるようになる。さらに、そのウエハグリッドの成分は、3次関数に対応する成分とその残差成分とに分離され、それぞれが補正関数と補正マップとに分けられて保存される。
ところで、本実施形態における、補正マップの作成処理では、ショットマップ毎、サンプルショット領域の組合せ毎に、モデル式の次数毎に補正マップを作成していないので、基準ウエハを、ショットマップ毎に備える必要がなく、作成に要する時間を、上記第1の実施形態よりも短縮することができる。
次に、本実施形態の露光装置100における露光処理について説明する。図7には、露光処理を行う際の主制御装置20の処理を示すフローチャートが示されている。なお、露光装置100には、レチクルRがレチクルステージRST上にロードされており、レチクルアライメント、ベースライン計測などの準備処理がすでに終了しているものとする。
まず、ステップ501において、上位装置のホストコンピュータから露光レシピを受信し、メモリに格納する。この露光レシピには、そのウエハWのショットマップ、サンプルショット領域、EGA方式のアライメントにおける多項式の次数に関するデータが含まれている。次のステップ503では、補正関数及び補正マップに関するデータを読み込む。
次のステップ505では、読み込まれた補正マップに含まれるベクトルを用いた補間演算により、露光対象となっているウエハWの各ショット領域の中心の位置座標での補正ベクトルを算出する。基準ウエハにおけるショットマップと、露光対象となっているウエハWのショットマップとは異なっており、互いのショット領域の中心の位置座標が異なっているため、補正マップにおける補正量ベクトルから、ウエハW上のショット領域の中心における補正ベクトルを求める必要があるのである。
本実施形態では、この補間方法として、ガウス分布を用いたガウシアン補間法を採用する。ガウシアン補間法では、次式に示されるガウス分布を用いる。
ここで、lは、中心からの距離であり、σ
2は分散である。図8(A)には、ガウス分布W(l)が示されている。
ここで、補正マップには、m個の補正量ベクトルが存在するものとする。さらに、位置座標(xi、yi)(i=1〜m)に対しそれぞれ補正量ベクトルを(dxi、dyi)とする。ガウシアン補間では、補正量ベクトルが存在する点(xi、yi)をガウス分布の原点としたときの、ウエハWの各ショット領域の設計上の中心位置座標(Xj、Yj)におけるガウス分布の値を、その補正量ベクトルの重みとする。すなわち、本実施形態では、ガウス分布に従う、補正量ベクトルの重み付け平均値を、ウエハW上のショット領域の中心(Xj、Yj)における補正量ベクトルとして算出する。ここで、ガウシアン補間では、上記式(2)のlは、次式で示されるようになる。
ウエハWのショットマップにおける各ショット領域のアライメント補正量ベクトルを、(DX
j、DY
j)とすると、この(DX
j、DY
j)は、次式のようになる。
この補間演算では、そのショット領域に近い位置での補正ベクトルの影響は強くなり、遠い位置での補正ベクトルの影響は小さくなるように設定されており、十分遠い位置の補正ベクトルの影響は0となる。なお、上記式(4)からもわかるように、本実施形態では、上記式(2)に示されるような正規化されたガウス分布を用いる必要はなく、次式で示されるガウス分布を用いるようにしてもよい。
ところで、上記式(4)を用いてガウシアン補間を行う場合には、σの値を予め決めておく必要がある。例えば、露光ショットマップのステップピッチを(SX,SY)とし、補正マップの計測ステップピッチを(Sx、Sy)とする。この場合には、σを次式のように定義する。
この式(6)は、半径±1σの円の範囲内に、アライメント補正量ベクトルが設けられている計測点と、露光点がともに少なくとも1点は存在するように定義されたものである。ただし、この定義は、ウエハの外周部における、補正マップにおける補正ベクトルが存在する最外周の点が、ウエハWのショット領域の中心座標より外側にあるという仮定が前提となっている。
もっとも、X軸方向と、Y軸方向とで、σの値を個別に設定することも可能である。それぞれのσを、σX、σYとする。この場合には、ガウス分布W(l)は次式のようになる。
また、一方のσを無限大とすることもできる。例えば、Y軸方向についてのみガウシアン補間を行う場合には、σ
X=∞とすることができる。この場合には、上記式(7)は次式のように表現することができる。
このように、ウエハWの状態などによっては、一軸のみの補間を行った方が望ましい場合もある。
以上述べたように、ステップ305では、補正マップの補正量ベクトルを用いたガウシアン補間により、ウエハWの各ショット領域における補正量ベクトルを求める。以下では、このようにして求められたウエハWの各ショット領域における補正量ベクトルをG(X,Y)とする。
なお、このステップ505では、補間方法として、SINC補間法を採用することもできる。SINC補間の演算式は、次式のようになる。
ここで、xは、X軸方向のグリッドの歪み幅であり、yは、Y軸方向のグリッドの歪み幅である。すなわち、(mx、ny)は、補正マップにおいて補正ベクトルが得られている位置座標である。f(mx、ny)は、X軸方向の位置ずれマップであり、g(mx、ny)は、Y軸方向の位置ずれマップである。U、Vは次式で示される。
上記式(9)、すなわちf(X,Y)、g(X,Y)に、ウエハWのショット領域の設計上の位置座標を代入すれば、そのショット領域での補正量ベクトルを求めることができる。
次のステップ507では、ウエハ交換により、ウエハWをウエハステージWST上にロードし、ステップ509では、一層目の露光であるか否かを判断する。この判断が否定されればステップ511に進み、肯定されればステップ514に進む。
次のステップ511では、サーチアライメントを行い、ステップ513では、ウエハアライメントを行う。具体的には、露光レシピに指定されたサンプルショット領域のウエハマークの位置座標をアライメント系ASを用いてEGA計測を行い、露光レシピに指定されている次数(ここでは2次とする)の多項式をEGAモデル式として、ウエハアライメントを行う。これにより、露光レシピに指定された次数までの上記式(1)の係数が決定され、すべてのショット領域の位置座標の補正量が算出される。ここで、上記式(1)から求められる補正量ベクトルを表す関数をF(X,Y)とする。
次のステップ514では、ウエハアライメントにより求められたウエハグリッドと、補正関数、補正マップとに含まれるウエハグリッドとの重複成分を除去する。上述したように、補正関数と補正マップとの合成成分は、基準ウエハをロードしたときのウエハグリッドに対応する。したがって、このウエハグリッドと、ウエハアライメントにより求められたウエハW上のウエハグリッドとには重複した成分が存在する。ここでは、その成分を、補正関数及び補正マップから除去する。
補正関数から、ウエハアライメントにより求められた成分を除去するのは容易である。すなわち、補正関数の各次の係数から、上記EGA方式のアライメントで求められた各次の係数の値をそれぞれ差し引けばよい。この除去工程により得られる補正ベクトルをG1(X,Y)とする。
補正マップについて、露光レシピで指定された次数のモデル式を用いてEGA演算を行って、そのモデル式の係数を求め、その残差成分を算出し、その残差成分の集合を、実際の補正に用いる補正マップとして作成する。この補正マップをG2(X、Y)とする。
次のステップ515では、取得した補正関数から得られる補正ベクトルG1(X、Y)と、補正マップから得られる補正ベクトルG2(X,Y)と、EGA方式のアライメントによる補正ベクトルF(X,Y)とを加算して、最終的な各ショット領域の位置座標の補正量ベクトルを求める。ここで、一層目の露光である場合には、F(X,Y)=0となるので、G1(X、Y)、G2(X,Y)は、記憶装置に格納されていた補正関数と補正マップとがそのまま用いられる。
次のステップ517〜ステップ526については、上記第1の実施形態の図3のステップ317〜ステップ324の処理と同じであるので、詳細な説明を省略する。ステップ526において、最後のウエハをアンロードした後、処理を終了する。
以上詳細に述べたように、本実施形態によれば、ウエハグリッドの成分のうち、露光装置に起因する非線形成分を、3次以下のパラメトリックな情報としての補正関数と、3次を超えるノンパラメトリックな情報としての補正マップに分けて検出し、プロセスに起因するウエハグリッドの非線形成分を検出する。そして、それらすべての非線形成分を考慮して、走査露光中におけるレチクルR上パターンの像とウエハWとの2次元平面内の相対位置の補正を行う。この結果、ウエハグリッドの成分のうち、装置に起因する非線形成分と、プロセスに起因する非線形成分との両方とを考慮した高精度な重ね合わせ露光を行うことができるようになる。
本実施形態では、補正関数の次数を3次とし、EGA方式のアライメントで用いられるモデル式を2次としたが、本発明はこれらの次数には制限されず、補正関数の次数は、2次であってもよいし、4次以上であってもよい。また、EGA方式のモデル式の次数も、2次以外であってもよい。
また、本実施形態によれば、ステップ514において、露光に先立って検出されたウエハグリッドの各種非線形成分のうち、互いに重複した成分を除去しているので、上記第1の実施形態と同様に、レチクルR上のパターンの像とウエハWとの2次元平面内の相対位置の補正を過補正としないようにすることができる。
なお、本実施形態では、補正マップの補間方法として、ガウシアン補間や、SINC補間法を用いた。そして、ガウシアン補間では、X軸、Y軸ごとに、補正マップの補正ベクトルの重みを調整できるようにしたので、ウエハWの状態又は要求仕様に応じた適切な補間が可能となっている。
なお、上述した補間方法の他に、リニア補間、スプライン補間、ラグランジェ補間、その他の補間方法を採用することも可能である。また、補間による方法のほか、例えば、次式に示されるように、補正マップの補正ベクトルを6次関数にフィッティングし、ショット領域の位置座標に対するその6次関数の値を、露光位置での補正ベクトルの各成分として用いるようにしてもよい。
なお、この6次関数を求めるためのデータ数としては、dx、dyのそれぞれに次式で示される数が必要となる。
なお、実質的には、7行7列以上のデータが必要となる。また、このようなフィッティングに用いられる関数の次数は、6次には限られない。
なお、本実施形態では、装置起因のウエハグリッドの非線形成分を補正関数と、補正マップとに分解しておき、EGA方式のウエハアライメントで用いられたモデル式の次数の成分を、その補正関数及び補正マップから除去したうえで、それぞれの補正成分を加算したが、本発明はこれには限られない。例えば、ステップ513のウエハアライメントにおけるEGA計測の際に、ステップ505の補間により求められた、各ショット領域の中心位置座標を、その補正量ベクトル分だけずらすようにしてもよい。このようにしても、EGA演算の結果から、ステップ505で求められた補正量の成分を除去することが可能である。
また、EGA計測の結果、すなわちサンプルショット領域の位置座標の計測結果から、ステップ505により求められたアライメント補正を差し引いた後、EGA演算を行うようにしてもよい。このようにしても、EGA演算の結果から、ステップ505で求められた補正量の成分を除去することが可能である。
また、本実施形態では、装置に起因するウエハグリッドの非線形成分を補正するために、補正関数と補正マップとを両方用いたが、いずれか一方であってもよい。
さらに、上記各実施形態では、ウエハアライメントの方式を、EGA方式とすることを前提に説明を行った。すなわち、ロードされるすべてのウエハWに対して、プロセスに起因するウエハグリッドの非線形成分を補正しようとする場合には、2次以上のモデル式に対応してEGA計測及びEGA演算を行った。しかしながら、プロセスによるウエハWの変形は、ロット内で同じような傾向にあることが多く、すべてのウエハWに対して、高次のモデル式をウエハアライメントに用いていたのでは、EGA計測のサンプル点数が多くなって、スループットの観点からすれば、望ましいことではない。そこで、例えば、ロット内先頭の所定枚数のウエハに対しては、高次のモデル式を用いたEGA計測及びEGA演算を行い、そのときに求められたプロセスに起因するウエハグリッドの非線形成分を、残りのウエハに対するウエハアライメントに反映するようにしてもよい。このような方法の詳細については、すでに米国出願公開第2002/0042664号明細書等に開示されているので、詳細な説明を省略する。
また、EGA方式の代わりに重み付けEGA方式を用いてもよいし、あるいはショット内多点EGA方式等を用いてもよい。なお、重み付けEGA方式のウエハアライメントについては、例えば特開平5−304077号公報(対応する米国特許第5,525,808号明細書)などに詳細に開示されており、ショット内多点EGA方式のウエハアライメントについては、例えば特開平6−349705号公報(対応する米国特許第6,278,957号明細書)などに開示されているので詳細な説明を省略する。
また、上記各実施形態では、マーク検出系として、オフアクシス方式のFIA系(結像式のアライメントセンサ)を用いる場合について説明したが、これに限らずいかなる方式のマーク検出系を用いても構わない。すなわち、TTR(Through The Reticle)方式、TTL(Through The Lens)方式、またオフアクシス方式の何れの方式であっても、更には検出方式がFIA系などで採用される結像方式(画像処理方式)以外、例えば回折光又は散乱光を検出する方式などであっても構わない。例えば、ウエハ上のアライメントマークにコヒーレントビームをほぼ垂直に照射し、当該マークから発生する同次数の回折光(±1次、±2次、……、±n次回折光)を干渉させて検出するアライメント系でもよい。この場合、次数毎に回折光を独立に検出し、少なくとも1つの次数での検出結果を用いるようにしてもよいし、波長が異なる複数のコヒーレントビームをアライメントマークに照射し、波長毎に各次数の回折光を干渉させて検出してもよい。
また、本発明は上記実施形態の如き、ステップ・アンド・スキャン方式の露光装置に限らず、ステップ・アンド・リピート方式、又はプロキシミティ方式の露光装置(X線露光装置等)を始めとする各種方式の露光装置にも全く同様に適用が可能である。
上記実施形態では、光源として、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザなどの遠紫外光源や、F2レーザなどの真空紫外光源、紫外域の輝線(g線、i線等)を発する超高圧水銀ランプなどを用いることができる。この他、真空紫外域の光を露光用照明光として用いる場合に、上記各光源から出力されるレーザ光に限らず、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(Er)(又はエルビウムとイッテルビウム(Yb)の両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いてもよい。
更に、露光用照明光としてEUV光、X線、あるいは電子線やイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置に本発明を適用してもよい。この他、例えば国際公開WO99/49504号などに開示される、投影光学系PLとウエハとの間に液体が満たされる液浸型露光装置などにも本発明を適用してもよい。また、露光装置は、例えば特開平10−214783号公報や国際公開WO98/40791号パンフレットなどに開示されているように、投影光学系を介してレチクルパターンの転写が行われる露光位置と、ウエハアライメント系によるマーク検出が行われる計測位置(アライメント位置)とにそれぞれウエハステージを配置して、露光動作と計測動作とをほぼ並行して実行可能なツイン・ウエハステージタイプでも良い。さらに、投影光学系PLは、屈折系、反射屈折系、及び反射系のいずれでもよいし、縮小系、等倍系、及び拡大系のいずれでも良い。
なお、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(または位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク、あるいは光反射性の基板上に所定の反射パターンを形成した光反射型マスクを用いたが、これらのマスクに代えて、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターンまたは反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスクを用いてもよい。このような電子マスクは、例えば米国特許第6,778,257号公報に開示されている。
なお、上述の電子マスクとは、非発光型画像表示素子と自発光型画像表示素子との双方を含む概念である。ここで、非発光型画像表示素子は、空間光変調器(Spatial Light Modulator)とも呼ばれ、光の振幅、位相あるいは偏光の状態を空間的に変調する素子であり、透過型空間光変調器と反射型空間光変調器とに分けられる。透過型空間光変調器には、透過型液晶表示素子(LCD:Liquid Crystral Display)、エレクトロクロミックディスプレイ(ECD)等が含まれる。また、反射型空間光変調器には、DMD(Digital Mirror Device,またはDigital Micro-mirror Device)、反射ミラーアレイ、反射型液晶表示素子、電気泳動ディスプレイ(EPD:Electro Phoretic Display)、電子ペーパ(又は電子インク)、光回折ライトバルブ(Grating Light Value)等が含まれる。
また、自発光型画像表示素子には、CRT(Cathod Ray Tube)、無機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、電界放出ディスプレイ(FED:Field
Emission Display)、プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)や、複数の発光点を有する固体光源チップ、チップを複数個アレイ状に配列した固体光源チップアレイ、または複数の発光点を1枚の基板に作り込んだ固体光源アレイ(例えばLED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ、LD(Laser Diode)ディスプレイ等)等が含まれる。なお、周知のプラズマディスプレイ(PDP)の各画素に設けられている蛍光物質を取り除くと、紫外域の光を発光する自発光型画像表示素子となる。
なお、本発明は、半導体製造用の露光装置に限らず、液晶表示素子などを含むディスプレイの製造に用いられる、デバイスパターンをガラスプレート上に転写する露光装置、薄膜磁気ヘッドの製造に用いられるデバイスパターンをセラミックウエハ上に転写する露光装置、及び撮像素子(CCDなど)、マイクロマシン、有機EL、DNAチップなどの製造に用いられる露光装置などにも適用することができる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。ここで、DUV(遠紫外)光やVUV(真空紫外)光などを用いる露光装置では一般的に透過型レチクルが用いられ、レチクル基板としては石英ガラス、フッ素がドープされた石英ガラス、螢石、フッ化マグネシウム、又は水晶などが用いられる。また、プロキシミティ方式のX線露光装置、又は電子線露光装置などでは透過型マスク(ステンシルマスク、メンブレンマスク)が用いられ、マスク基板としてはシリコンウエハなどが用いられる。
半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置100によりレチクルのパターンをウエハに転写するステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。
10…照明系、15…移動鏡、16…レチクル干渉計、17…移動鏡、18…ウエハ干渉計、19…ステージ制御装置、20…主制御装置、24…ウエハステージ駆動部、25…ウエハホルダ、100…露光装置、AS…アライメント系、AX…光軸、FM…基準マーク板、IL…照明光、PL…投影光学系、R…レチクル、RST…レチクルステージ、W…ウエハ、WST…ウエハステージ。