以下、本発明の一実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る露光装置100の概略構成が示されている。
この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置である。露光装置100は、照明系10、レチクルRが載置されるレチクルステージRST、投影光学系PL、ウエハWが搭載されるウエハステージWST、アライメント系AS、及び装置全体を統括制御する主制御装置20等を備えている。
前記照明系10は、回路パターン等が描かれたレチクルR上の所定の領域を照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。照明光ILにより照明されるレチクルR上の領域を、照明領域IARという。照明領域IARは、X軸方向に細長いスリット状(又は円弧状)の領域である。ここで、照明光ILとしては、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの遠紫外光、あるいはArFエキシマレーザ光(波長193nm)、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光などが用いられる。照明光ILとして、超高圧水銀ランプからの紫外域の輝線(g線、i線等)を用いることも可能である。照明系10は、例えば、特開2001−313250号公報及びこれに対応する米国特許出願公開第2003/0025890号明細書等に開示される照明系と同様に構成されている。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記米国特許出願公開明細書における記載を援用して本明細書の記載の一部とする。
前記レチクルステージRST上にはレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、リニアモータ等を駆動源とする不図示のレチクルステージ駆動部によって、照明系10の光軸(後述する投影光学系PLの光軸AXに一致)に垂直なXY平面内(Z軸回りの回転を含む)で微少駆動可能であるとともに、所定方向(ここでは図1における紙面内左右方向であるY軸方向とする)に、設定された走査速度で駆動可能となっている。
レチクルステージRSTには、レーザ光を反射する反射面を有する移動鏡15(実際には、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ直交する反射面をそれぞれ有するX移動鏡、Y移動鏡)が設けられている。レチクルステージRSTのステージ移動面内の位置(X位置、Y位置、θz方向(Z軸回りの回転方向)の回転量(ヨーイング量))は、その反射面にレーザ光を照射するレチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)16によって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時計測されている。レチクル干渉計16からのレチクルステージRSTの位置情報(ヨーイング量などの回転情報を含む)は、ステージ制御装置19及びこれを介して主制御装置20に供給される。ステージ制御装置19は、主制御装置20からの指示に応じて、供給されたレチクルステージRSTの位置情報に基づいて不図示のレチクルステージ駆動部を介してレチクルステージRSTを駆動制御し、レチクルステージRST上に保持されたレチクルRの位置を制御する。なお、移動鏡15に代えて、レチクルステージRSTの端面を鏡面加工して反射面(移動鏡の反射面に相当)を形成しても良い。
前記投影光学系PLは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置され、その光軸AXの方向がZ軸方向とされている。投影光学系PLとしては、例えば両側テレセントリックで所定の縮小倍率β(例えば1/5又は1/4)を有する屈折光学系が使用されている。このため、照明系10からの照明光ILによって照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、その第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(露光領域)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動するとともに、露光領域(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動することで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、レチクルR及び投影光学系PLによってウエハW上にパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
前記ウエハステージWSTは、投影光学系PLの図1における下方で、不図示のベース上に配置されている。このウエハステージWST上にウエハホルダ25が載置されている。このウエハホルダ25上にウエハWが例えば真空吸着等によって固定されている。
ウエハステージWSTは、図1のウエハステージ駆動部24により、X、Y、Z、θz(Z軸回りの回転方向)、θx(X軸回りの回転方向)、及びθy(Y軸回りの回転方向)の6自由度方向に駆動可能な単一のステージである。
ウエハステージWSTには、レーザ光を反射する反射面を有する移動鏡17(実際には、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ直交する反射面をそれぞれ有するX移動鏡、Y移動鏡)が設けられている。前記ウエハステージWSTの少なくとも5自由度の位置(X位置、Y位置、回転(ヨーイング(Z軸回りの回転であるθz回転)、ピッチング(X軸回りの回転であるθx回転)、ローリング(Y軸回りの回転であるθy回転))は、その反射面にレーザ光を照射する、外部に配置されたウエハレーザ干渉計(以下、「ウエハ干渉計」という)18によって、例えば、0.5〜1nm程度の分解能で常時計測されている。ステージ制御装置19は、主制御装置20からの指示に応じて、ウエハステージWSTの位置情報に基づいてウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTを駆動制御し、ウエハステージWST上に保持されたウエハWの位置を制御する。なお、移動鏡17に代えて、ウエハステージWSTの端面を鏡面加工して反射面(移動鏡の反射面に相当)を形成しても良い。
また、ウエハステージWST上のウエハWの近傍には、不図示の基準マーク板が固定されている。不図示の基準マーク板の表面は、ウエハWの表面とほぼ同じ高さに設定され、この表面には少なくとも一対のレチクルアライメント用基準マーク及びアライメント系ASのベースライン計測用の基準マーク等が形成されている。
前記アライメント系ASは、投影光学系PLの側面に配置された、オフアクシス方式のアライメントセンサである。このアライメント系ASとしては、例えばウエハ上のレジストを感光させないブロードバンドな検出光束を対象マークに照射し、その対象マークからの反射光により受光面に結像された対象マークの像と不図示の指標(アライメント系AS内に設けられた指標板上の指標パターン)の像とを撮像素子(CCD)等を用いて撮像し、それらの撮像信号を出力する画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系のセンサが用いられている。このアライメント系ASの撮像結果は、主制御装置20へ出力されている。
制御系は、図1中、主制御装置20及びこの配下にあるステージ制御装置19などによって主に構成されている。
主制御装置20は、CPU(中央演算処理装置)、メインメモリ等から成るいわゆるマイクロコンピュータ(又はワークステーション)を含み、装置全体を統括して制御する。このCPUはマルチタスクCPUであり、CPU上で動作するタスクには、定期的に起動するリアルタイムクロックタスクや、一連の露光動作を制御する露光動作タスクの他、後述するレチクルステージRSTの目標位置指令の補正処理を行う補正処理タスクなどがある。露光動作タスクは、例えば、一連の露光動作が適切に行われるように、ステージ制御装置19に対して露光開始等の指示を与えるとともに、露光動作に必要な情報をステージ制御装置19に送信する。また、露光動作タスクは、必要に応じて上記補正処理タスクなど、他のタスクを起動させる。
ステージ制御装置19には、レチクルステージRSTの位置及び速度を制御するためのフィードバック制御系としての位置−速度フィードバック制御系と、ウエハステージWSTの位置及び速度を制御するためのフィードバック制御系としての位置−速度フィードバック制御系とが構築されている。ステージ制御装置19における両ステージの位置−速度フィードバック制御系では、主制御装置20から送られる単位時間当たりの位置指令群(軌道指令)と、干渉計16、18から送られる位置情報との偏差に基づいてレチクルステージRST及びウエハステージWSTの駆動量を算出する。ステージ制御装置19は、算出された駆動量に基づいて、レチクルステージ駆動部及びウエハステージ駆動部24を介して、例えば、走査露光中のレチクルRとウエハWの同期走査や、ウエハWの移動(ステッピング)等を制御している。
さらに、本実施形態の露光装置100は、投影光学系PLの最良結像面に向けて複数のスリット像を形成するための光束を光軸AX方向に対して斜め方向より供給する不図示の照射系と、その光束のウエハWの表面での各反射光束を、それぞれスリットを介して受光する不図示の受光系とから成る斜入射方式の多点フォーカス検出系を備えている。この多点フォーカス検出系としては、例えば特開平6−283403号公報及びこれに対応する米国特許第5,448,332号明細書などに開示されるものと同様の構成のものが用いられ、この多点フォーカス検出系の出力が主制御装置20に供給されている。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及び対応米国特許明細書における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
ステージ制御装置19は、主制御装置20からの指示により、この多点フォーカス検出系からのウエハの位置情報に基づいて、ステージ制御装置19及びウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTをZ方向及び傾斜方向に駆動する。
≪補正マップ≫
本実施形態の露光装置100では、一連の露光工程に先立って、走査露光中のウエハステージWSTとレチクルステージRSTとの相対位置を補正するための補正マップを作成する。図2には、走査露光中のウエハステージWSTとレチクルステージRSTとの同期走査により、レチクルステージRSTに保持されたレチクルR上のパターン領域PAが、照明領域IARを通過する様子が模式的に示されている。
ここで、図2に示されるように、Y軸に平行なy軸を規定する。このy軸の原点は、走査露光中において露光が開始される時点でのレチクルステージRSTの位置(露光開始位置)となっている。図2に示されるy=y1、y2、…、yk、yd_numは、この補正マップにおけるサンプリング位置である。これらのサンプリング位置は、露光開始位置を原点として等間隔となっており、その間隔は、例えば1mmとなっている。
図2には、各サンプリング位置でのX軸方向、Y軸方向、θz方向の補正量が示されている。レチクルステージRSTの目標位置が、y=y1であったときの、X軸方向、Y軸方向、θz方向の補正量をそれぞれdx1、dy1、dθ1とする。同様に、y=y2であったときの、X軸方向、Y軸方向、θz方向の補正量をそれぞれdx2、dy2、dθ2とし、y=ykであったときの、X軸方向、Y軸方向、θz方向の補正量をそれぞれdxk、dyk、dθkとし、y=yd_numであったときの、X軸方向、Y軸方向、θz方向の補正量をそれぞれdxd_num、dyd_num、dθd_numとする。これら各サンプリング位置におけるX軸方向、Y軸方向、θz方向のレチクルステージRSTの位置の補正量を、各サンプリング位置に対応づけてまとめた補正量のベクトルのマップが、補正マップとなる。
<動的マップと静的マップ>
ところで、走査露光中に発生する両ステージWST、RSTの相対位置のずれ(相対位置ずれ)は、両ステージWST、RSTの静特性によるものと、動特性によるものとに分類することができる。
両ステージWST、RSTの相対位置の位置ずれの要因となる静特性としては、例えば、両ステージWST、RSTに備え付けられた移動鏡の表面の凹凸形状(移動鏡曲がり)が、代表例として挙げられる。干渉計16、18の計測点は、実際には移動鏡の面である。したがって、干渉計16、18の計測値は、その移動鏡の面が平面であって、移動鏡におけるそれらのレーザビームの到達位置とステージの位置との関係が常に一定であることを前提として両ステージWST、RSTの位置として計測されるものである。このため、移動鏡の面が微小に曲がっている場合には、その曲がりに伴って、両ステージWST、RSTの相対位置の実際のずれが生ずることとなる。
また、両ステージWST、RSTの動特性による位置ずれとしては、例えば、レチクルステージRSTの目標位置に対する追従遅れなどが代表例として挙げられる。両ステージWST、RSTの同期走査中においては、一方のステージに対し他方のステージが追従するようになるが、その制御系における追従誤差などにより、両ステージWST、RSTの相対位置ずれが生じるのである。
両ステージWST、RSTの静特性による相対位置ずれ量と、動特性による相対位置ずれ量とでは、その性質が異なる。例えば、両ステージWST、RSTの静特性による相対位置ずれ量は、両ステージWST、RSTの位置座標のみに依存するが、両ステージWST、RSTの動特性による相対位置ずれ量は、両ステージWST、RSTの位置座標のみならず、同期走査中の両ステージRST,WSTの速度(すなわちスキャン速度)やショット領域のY軸方向の長さ(すなわちショットサイズ)などの露光条件にも依存し、露光条件に応じて変化する。したがって、この両者については別々に扱った方が望ましく、本実施形態では、そのように扱う。
具体的には、本実施形態では、両ステージWST、RSTの相対位置を補正するための補正マップを、両ステージWST、RSTの静特性に関する補正マップRSと、動特性に関する補正マップRDとに分け、補正マップRS、RDを別々に用意しておく。そして、実際の走査露光中には、補正マップRSと補正マップRDとの和RCを実際の補正量として次式を用いて求め、求められた補正量で両ステージWST、RSTの相対位置を補正しつつ走査露光を行う。なお、以下では、補正マップRSを静的マップと呼び、補正マップRDを動的マップと呼ぶ。
ここで、動的マップの操作変数となっているyは、前述したとおり、露光開始からのレチクルステージRSTの移動距離である。このyは、前述した露光開始位置を原点とするY軸に平行なショット内座標軸である。また、静的マップの操作変数となっているy’は、レチクルステージRSTのY位置である。上記式(1)では、補正マップR
C(y)となっているが、この操作変数はy’でもよい。すなわち、補正マップR
D(y)とR
S(y’)とのいずれかを、y又はy’のいずれか一方に換算した後、上記式(1)の演算が行われる。
なお、上記式(1)では、位置y、y’を操作変数とし、その位置y、y’におけるステージの位置の補正量を説明変数とするような関数形式で補正マップRC(y)、RD(y)、RS(y’)を表記しているが、実際には、これらは、後述するように、パラメータを含まないノンパラメトリックな情報(すなわちマップ)である。
動的マップRD(y)は、前述のように、ショットサイズ等の露光条件に依存して変化する。したがって、両ステージWST,RSTの相対位置の制御を精度良く行うためには、露光装置に設定されている露光条件に適合する動的マップRD(y)を、両ステージWST、RSTの相対位置の補正に用いる必要がある。
動的マップRD(y)に影響を与える露光条件は多数存在し、それらは、離散的な設定状態しかとらないものと連続的な値をとりうるものとに分類される。
離散的な設定状態しかとらない露光条件には、例えば、スキャン方向や、走査露光開始前のX軸方向に関するステップ(Xステップ)方向、ウエハステージWSTの制御フェーズ(同期走査前後のステージの動作を規定したもの、例えば、Xステップが完全に終わってから同期走査を開始するなど、ステージの制御シーケンスをそのシーケンスに応じて場合わけした制御形態)などがある。通常、スキャン方向としては、+Y方向と−Y方向との2つであり、ステップ方向も、+X方向と−X方向との2つがあり、制御フェーズについては、一般的に、数種類のものがある。これらの露光条件については、それらの設定状態のすべての組み合わせの数が有限であり、各組み合わせ(例えば、スキャン方向+Y、ステップ方向+X、1つの制御フェーズの組合せ)についてそれぞれ動的マップRD(y)を作成し用意しておくことは可能である。
連続値をとりうる露光条件には、例えば、両ステージWST、RSTの走査速度(スキャン速度)、ステップピッチ、スキャンサイズなどがある。これらの露光条件は、露光対象となるウエハWの設計情報などに応じて様々な連続値をとりうる。この点を鑑みると、設定される可能性のある露光条件の設定値のすべての組み合わせに適合する動的マップRD(y)をすべて用意しておくのは極めて困難である。
そこで、本実施形態では、連続値をとりうる露光条件に関しては、その露光条件の設定状態の幾つかの代表例についてのみ、動的マップRD(y)を予め用意しておく。そして、露光装置100に実際に設定されている露光条件の設定値に対応する動的マップRD(y)が用意されていなかった場合には、予め用意されていた動的マップRD(y)を用いた補間を行うことにより、その設定値に対応する動的マップRD(y)を作成し、作成された動的マップRD(y)を用いて、両ステージWST、RSTの相対位置の補正を行うこととする。
以上のことから、補正マップの適用に際しては、複数の異なる露光条件を、離散的な設定状態しかとらない露光条件と、連続値をとる露光条件とに分類するのが望ましい。この分類においては、離散的な設定状態しかとらない露光条件のその設定状態を表す変数を非補間変数として定義し、連続値をとりうる露光条件のその設定状態(設定値)を表す変数を補間変数と定義する。
非補間変数とは、補間対象とならない変数を意味する。離散的な設定状態しかない露光条件については、その設定状態の組み合わせ各々について動的マップを1つずつ用意しておけばよい。なお、離散的な設定状態しかとらない露光条件に対応する非補間変数には、各設定状態が数値化された値が設定されるものとする。
また、補間変数とは、補間対象となる変数を意味する。補間変数に分類される露光条件については、そのとりうる連続値の範囲内で幾つかの代表的な値をピックアップし、ピックアップされた代表値の組み合わせそれぞれに対応する動的マップRD(y)を予め作成し、それらのマップの一群をマザーマップとして記憶しておく。そして、走査露光に先立って、主制御装置20は、マザーマップとして記憶された動的マップRD(y)の中から、露光条件の実際の設定値に近い条件の動的マップRD(y)を幾つか抽出し、抽出された動的マップRD(y)を用いた補間により、露光装置100における露光条件の実際の設定値に対応する動的マップRD(y)を作成する。そして、走査露光時には、主制御装置20は、作成された動的マップRD(y)を用いて、同期走査中の両ステージWST、RSTの相対位置の補正を行う。
ここで、補間変数を各要素とするベクトルを補間変数ベクトルをφとし、非補間変数を各要素とするベクトルを非補間変数ベクトルをΦとして定義する。これらのベクトルは、それぞれ次式のように表される。
上記式(2)では、補間変数ベクトルφの要素数、すなわち補間変数の数を全部でm個としている。この補間変数φ
1〜φ
mの中には、スキャン速度を表すφ
scan_velocity、スキャン長を表すφ
scan_lengthなどが含まれている。また、ここでは、非補間変数ベクトルΦの要素数、すなわち非補間変数の数を全部でn個としている。非補間変数Φ
1〜Φ
nには、スキャン方向を表すΦ
scan_direction、ウエハステージWSTの制御フェーズを表すΦ
Wstage_phaseなどが含まれている。
非補間変数Φ1〜Φnがとりうる設定状態の数をそれぞれM1〜Mnとすると、その組合せの総数は、次式で表される。
例えば、非補間変数を、スキャン方向Φ
scan_directionと、ウエハステージWSTの制御フェーズΦ
Wstage_phaseとの2つのみとする。スキャン方向Φ
scan_directionの設定状態については、+Y方向と、−Y方向の2つである。そして、ウエハステージWSTの制御フェーズΦ
Wstage_phaseの設定状態の数が4つであるとすると、M
ALLは、2×4=8となる。
補間変数φ1〜φmについてそれぞれ選択される代表値は、その補間変数の値がとりうる範囲内でほぼ均等に選択されるのが望ましい。また、補正マップの作成は、外挿(外分)によって作成するよりも、内挿(内分)による補間により作成するのがマップの信頼性の観点から望ましいため、補間変数の値がとりうる範囲の境界の値も代表値として選択するのが望ましい。また、主制御装置20等の演算能力(後述する補間処理を行うための演算能力)も考慮して、代表値の数を決定するのが望ましい。これらの観点から、例えば、スキャン速度としては、140、280、560mm/sなどが代表値として選択され、スキャン長としては、33、25、17mmなどが代表値として選択される。補間変数φ1〜φmについてそれぞれ選択された幾つかの代表値をそれぞれN1〜Nmとすると、N1〜Nmは、以下のようにまとめられる。
この場合、補間変数の代表値の組合せ数N
ALLは、次式で表される。
したがって、本実施形態では、予め用意すべき動的マップR
D(y)の数は、各非補間変数Φ
1〜Φ
nについてそれぞれN
ALL個となる。
この結果、非補間変数の設定値と、補間変数の代表値とのすべての組み合わせの総数は、MALL×NALLとなる。以下では、説明を簡単にするため、この総数MALL×NALLをまとめてMとする。すなわち、非補間変数の設定値と補間変数の代表値とのすべての組合せがM通り存在するとする。jを1〜Mまでの値をとる変数であるとすると、非補間変数の設定値と補間変数の代表値との1つの組み合わせにおける補間変数ベクトルφ、非補間変数ベクトルΦは、φj、Φj(j=1〜M)というように表現することができる。なお、i≠jのとき、φi≠φj又はΦi≠Φjである。この表現を用いれば、本実施形態では、M通りの補間変数と非補間変数との組合せ、すなわち(φ1,Φ1)〜(φM,ΦM)についての補正マップRD(y)を予め取得することになる。このように、動的マップRD(y)は、上述の露光条件、すなわちその設定状態を表す補間変数φj、非補間変数Φjに依存するので、動的マップをRD(y;φj,Φj)と表現することもできる。
ところで、前述したように、補正マップは、各サンプリング位置でのX軸、Y軸、θz軸方向に関するステージの位置の補正量のマップであるため、この動的マップRD(y;φj,Φj)は、実際には、次式で示されるように、X軸方向の補正量RXD(y;φj,Φj)、Y軸方向の補正量RYD(y;φj,Φj)、θz方向の補正量RZD(y;φj,Φj)を構成要素とするベクトルとなる。
ここで、X軸方向の補正量R
XD(y;φ
j,Φ
j)、Y軸方向の補正量R
YD(y;φ
j,Φ
j)、θz方向の補正量R
ZD(y;φ
j,Φ
j)は、それぞれ次式のようになる。
すなわち、この補正マップによれば、露光開始位置を原点とするレチクルステージRSTの位置座標がサンプリング位置y
k(k=1、2、3、…、d_num)であるときのレチクルステージRSTの目標位置の補正量は、(dx
k,dy
k,dθ
k)ということになる。なお、d_numはサンプル数である。
ここで、補正マップの作成方法について説明する。図3には、補正マップを作成する際の主制御装置20の処理アルゴリズムを示すフローチャートが示されている。図3に示されるように、まず、ステップ201において、補正マップの作成に用いられる計測用レチクルをレチクルRの代わりにレチクルステージRST上にロードして、いわゆる低速−高速重ね露光を行う。この低速−高速重ね露光については後述する。
図4(A)には、計測用レチクルのパターン領域PAの一例が示されている。図4(A)に示されるように、このパターン領域PAには、複数の2次元位置検出用のマークMkが、マトリクス状に配置されている。これらのマークMkは、同一Y(y)位置に少なくとも3つ配置されている。図4(A)には、X軸に平行で、X軸方向に並ぶ3つのマークMkのうち、中央のマークMkの中心を原点とするx軸が示されている。マークMkのY(y)軸方向に関する配置の間隔は、図2のサンプリング位置の間隔の約2倍(例えばサンプリング間隔1mmに対し2mm)程度となっているが、これには限られない。また、図4(A)では、マークMkは、ボックスマークとして示されているが、これには限られず、十字マークであってもよいし、X軸方向に並んだライン・アンド・スペース(L/S)パターンとY軸方向に並んだL/Sパターンとの組合せのマークであってもよい。要は、マークMkは、その2次元位置座標を検出可能な形状のマークとなっていればよく、その種類は問わない。
ステップ201では、両ステージWST,RSTの動特性がマークのMkの転写位置の位置ずれ量に影響しない程度の低い走査速度(低速)で、計測用レチクルのパターン(パターン領域PA内の各マークMk)をウエハW上に転写し、その後、その転写された各マークMkの像の上に重ねるように、露光条件としての補間変数φj(j=1〜M)の値、非補間変数Φj(j=1〜M)の値を露光装置100に設定した状態で、その露光条件として指定された走査速度(高速)で、走査露光を再度行う。なお、上述した低速のときの露光条件としては、スキャン速度が30mm/s、スキャン長最大、制御フェーズについてはウエハステージWSTが停止した状態から走査開始が設定される制御フェーズなどが、設定される。
なお、実際の低速−高速重ねでは、低速で転写されたマークMkの像と高速で転写されたマークMkの像とが重なることがないように、低速での転写時と高速での転写時とで、ウエハWの位置をXY平面内で若干ずらす(すなわち若干のオフセットをもたせる)ことになるが、本実施形態では、説明を簡単にするために、ウエハW内の同一位置に転写されるものとして説明する。また、ここでは、計測誤差を考慮して、同一の露光条件(すなわち、補間変数ベクトルφの要素(補間変数)φj、非補間変数ベクトルΦの要素(非補間変数)Φjが同じ値である条件)について、複数回の低速−高速重ね露光を行っておくのが望ましい。また、複数の露光条件について、上記の低速−高速重ね露光を行う。なお、この低速−高速重ね露光が行われたウエハWは、不図示のデベロッパで現像される。
図4(B)には、同一y位置での3つのマークMkに対応する、低速の走査露光で転写された転写像と高速の走査露光で転写された転写像との位置ずれの様子の一例が示されている。図4(B)においては、低速で転写された同一y位置の3つのマークMkの転写像が点線で示され、高速で転写された同じマークMkの転写像が実線で示されている。図4(B)においては、両ステージWST、RSTの動特性により発生する低速で転写されたマークMkの像の転写位置と、高速で転写されたマークMkの像の転写位置とのずれが強調して示されている。
図3に戻り、続くステップ203では、すべての低速時及び高速時のマークMkの転写像の位置ずれ量を、所定の計測装置(例えばアライメント系AS)で計測する。
続くサブルーチン205では、これらの同一y位置における3つのマーク像の位置ずれ量に基づいて、サンプリング位置yk(k=1〜d_num)におけるX軸方向の補正量dx1〜dxd_num、Y軸方向の補正量dy1〜dyd_num、θz方向の補正量dθ1〜dθd_numを求める。
このサブルーチン205では、まず、図5に示されるように、ステップ301において、上述の如く、同じ露光条件(補間変数φj、非補間変数Φjの値が同じである条件)の下で複数回の低速−高速重ねを行った場合に得られた計測結果を、同じ露光条件の計測結果のグループにグループ分けする。続いて、ステップ303において、同じグループ内の計測結果において、位置ずれ量の絶対値が予め設定された閾値を超えていたものについては、外れ値として計測結果から除外する。そして、ステップ305において、残った計測結果に含まれる同一マーク(同一バーニア)での位置ずれベクトルの平均ベクトルを算出する。
続いて、ステップ307において、同一Y位置における3つのマークに対応する位置ずれ量から、図4(B)に示される、低速と高速との間の位置ずれ量のベクトルを示すモデルとしての直線Y=ax+bの傾きaと切片bとを、例えば最小二乗法を用いて求める。そして、ステップ309において、求められた直線に基づいて、ショット領域の中心(ショットセンタ)を原点とするショット内座標Yiにおけるx軸方向の位置ずれ量MX(Yi)、y軸方向の位置ずれ量MY(Yi)、θz方向の位置ずれ量Mθ(Yi)を算出する。ここで、3つのマークMkに対応するX軸方向の位置ずれ量の平均値をMX(Yi)として求め、直線の切片bをy軸方向の位置ずれ量MY(Yi)とし、tan-1(a)を、θz方向の位置ずれ量Mθ(Yi)として求める。
続くステップ311では、これらの補正量の操作変数を、ショット中心を原点とするショット内座標のY位置であるYiから露光開始位置を原点とするショット内座標ykに変換する。
次のステップ313では、求められたx軸方向の補正量MX(yk)、y軸方向の補正量MY(yk)、θz方向の補正量Mθ(yk)に対するインバースフィルタを用いたデコンボリューションを行う。ウエハW上に転写されるマークMkの転写像は、計測用レチクル上のマークMkが照明領域IAR内を通過する間におけるウエハW上に投影されたマークMkの像のコンボリューションの結果である。したがって、レチクルステージRSTのあるサンプリング位置での補正量を精度良く得るためには、その位置ずれ量の計測結果に対してデコンボリューションを行い、各サンプリング位置での両ステージWST、RSTの相対位置の位置ずれ量を復元するのが望ましいのである。
ここで用いられるインバースフィルタについて説明する。まず、補正マップのサンプリング間隔をps[mm]であるとすると、kps=ykとし、上記ステップ311で得られた計測結果を、次式のように表現することができる。
一方、サンプリング間隔p
s[mm]、照明領域IARのスリット幅w[mm]に対応する移動平均フィルタは、周波数空間(χとする)では、次式で示されるSinc関数S
0(χ)になる。このフィルタが、マークMkの像の転写結果のコンボリューションに寄与するフィルタとなる。
これを、サンプリング周波数ω
sで標本化すると、次式が得られる。
上記コンボリューションに寄与するフィルタのインバースフィルタのサイズをサンプリング間隔単位で2α+1とする(αは整数)。上記式(11)の逆数を逆フーリエ変換すると、インバースフィルタを次式のように求めることができる。
なお、このインバースフィルタの両端を滑らかにするため、窓関数として、ハニング窓関数W(mp
s)を採用すると、インバースフィルタS
inv1(mp
s)が得られる。ハニング窓関数W(mp
s)及びインバースフィルタS
inv1(mp
s)は、次式で示される。
そこで、図5に戻り、ステップ313では、上記式(13)に示されるインバースフィルタを用いて、次式で示されるように、上記ステップ311で得られた計測結果R(kp
s)に対しデコンボリューションを行う。
ここで、R
d(kp
s)は、デコンボリューション後の計測結果である。
次のステップ315では、ショット内座標の各y位置ykにおけるx軸方向の補正量MX(yk)、y軸方向の補正量MY(yk)、θz方向の補正量Mθ(yk)に対し、レチクルステージRSTが十分に追従できる周波数以下の成分のみ補正することができるように、上記ステップ313で得られた計測結果に対し、追従可能な周波数付近の周波数をカットオフ周波数とするローパスフィルタをかける。このようなローパスフィルタとしては、例えば、移動平均フィルタや、Sinc関数などを用いた一般的なローパスフィルタなどを適用することができる。
続いて、ステップ317では、ローパスフィルタがかけられた後の各y位置ykにおけるx軸方向の補正量MX(yk)、y軸方向の補正量MY(yk)、θz方向の補正量Mθ(yk)を用いた補間により、サンプリング位置y1、y2、…、yd_numにおけるx軸方向の補正量dxk、y軸方向の補正量dyk、θz方向の補正量dθkを求める。補間の方法としては、所定次数の関数での補間法やSinc関数を用いた補間法など、様々な方法を適用することができる。ステップ317終了後は、サブルーチン205の処理を終了する。
図3に戻り、次のステップ211では、図4(A)に示されるパターンが、理想的に(その位置ずれ量を0とみなせる状態で)転写され形成された基準ウエハをウエハWの代わりに、ウエハステージWST上にロードし、その理想的なパターン像の上に重ね合わせるようにして、上述した低速の条件のスキャン速度、最長のスキャン長で重ね合わせ露光を行い、次のステップ213では、下地のマークMkと、重ね合わせ転写されたマークMkの像の位置ずれ量を計測する。次のステップ215では、上記ステップ213で計測された位置ずれ量に基づいて、静的マップRS(y’)を作成する。この作成の要領は、サブルーチン205における動的マップRD(y)の作成要領とほぼ同じである。
次のステップ217では、これまでに作成された(φ1、Φ1)〜(φM、ΦM)という露光条件の各組合せでの動的マップRD(y;φ1、Φ1)〜RD(y;φM、ΦM)と、静的マップRS(y’)とを格納する。格納された動的マップRD(y;φj、Φj)の一群は、マザーマップとしてそれぞれの補間変数、非補間変数(φ1、Φ1)〜(φM、ΦM)と対応付けされてデータベースに登録される。
<露光動作>
上述した補正マップの作成終了後、露光装置100において一連の露光動作が開始される。以下では、この露光動作について説明する。前述のように、この露光動作は、主制御装置20の露光動作タスクの制御により実行される。この露光動作タスクは、まず、露光対象となるウエハW上の回路パターン等の設計情報が含まれるプロセスプログラムデータファイルを、不図示の上位装置(露光装置100が稼動するプロセスを管理するホストコンピュータ)から取得し、露光に必要なレチクルRのロード、ウエハWのロード、各種アライメント、露光条件の設定などの準備処理を行う。そして、準備処理終了後、露光レシピに含まれる設定情報のうち、両ステージWST、RSTの駆動に必要なショットマップ(ショット配置)、ショット領域の露光順、ショットサイズ、ウエハステージWSTの制御フェーズなどに関する情報を読み出し、読み出された情報に基づいて、両ステージWST、RSTに対する目標位置指令群(すなわち両ステージWST、RSTの目標軌道)を作成する。そして、主制御装置20は、ステージ制御装置19に対し、露光開始を指示するとともに、次の露光対象となるショット領域に対する走査露光を行うための両ステージWST、RSTの目標位置指令のプロファイルデータをステージ制御装置19に送信する。
ステージ制御装置19は、受信した両ステージWST、RSTの目標位置指令のプロファイルデータに基づいて、両ステージWST、RSTのフィードバック制御系に対しサンプリング間隔毎に目標位置指令を入力することにより、両ステージWST、RSTの位置制御を行い、両ステージWST、RSTの同期走査を行う。また、これと同時に、照明系10による照明光ILの照射を開始して(可動レチクルブラインドを両ステージWST、RSTと同期させて)走査露光を行い、レチクルR上のパターンをウエハW上に転写する。
ところで、露光動作タスクは、この露光動作を開始するに当たり、上述の補正処理タスクを起動させる。図6には、主制御装置20における補正処理タスクの処理アルゴリズムを示すフローチャートが示されている。
図6に示されるように、まず、この補正処理タスクでは、露光動作タスクにおいて主制御装置20からステージ制御装置19に対し露光開始指示がなされるのに先立って、ステップ401→403→405→407→409の処理を行う。まず、ステップ401において、露光レシピに含まれる設計情報のうち、補間変数、非補間変数として設定された露光条件の設定値を取得し、ステップ403において、補正条件、すなわち補間変数ベクトルφ*、非補間変数ベクトルΦ*を設定する。そして、ステップ405において、露光動作タスクにおいて設定された最初のショット領域に対する走査露光を行う際の露光量を取得する。この露光量に基づいて、スキャン速度が決定される。
次のステップ407では、設定された補間変数ベクトルφ*、非補間変数ベクトルΦ*に基づいて、マザーマップの中から動的マップRD(y;φ*,Φ*)を抽出し、それらの集合を作成する。
ここで、マザーマップの中に、今回決定された露光条件(上記の補正条件に対応)に完全に適合する動的マップRD(y)が存在した場合には、その動的マップRD(y)のみを抽出し、それを後述する両ステージWST、RSTの相対位置補正に用いればよい。逆に、今回の露光条件に適合する動的マップRD(y)が存在しなかった場合には、マザーマップの中から、補間を行うためのその周辺の動的マップRD(y)を幾つか選び出し、その動的マップRD(y)の集合を作成する必要がある。
上記ステップ403において設定された補間変数ベクトルφ*、非補間変数ベクトルΦ*を次式で表す。
このように、補間変数ベクトルφ
*は、m次元のベクトルである。この補間変数ベクトルφ
*での動的マップR
D(y;φ
*,Φ
*)を補間により作成するためには、この補間変数ベクトルφ
*のベクトル空間であるm次元空間内における軸(ベクトルの各要素に対応する軸)方向に補間変数ベクトルφ
*を挟み込むような位置関係となる2つの補間変数ベクトルを軸ごとに選択する必要がある。したがって、ここで選択される補間変数ベクトル、すなわちマザーマップから選択される動的マップの数は、2
m個となる。
ここで、選択される動的マップ1つ1つに1〜2mまでの番号を付与する。今回の補間変数ベクトルφ*の近傍にあり、その動的マップ1〜2mにそれぞれ対応する補間変数ベクトルをφ[1]〜φ[2m]とすると、補間に用いる1〜2mまでの動的マップRD(y;φ[],Φ*)を求めるキーを、以下の表のようにまとめることができる。
すなわち、ここでは、非補間変数ベクトルΦがベクトルΦ
*と同一で、補間変数ベクト
ルφ
*の近傍にある2
m個の補間変数ベクトルΦ[1]〜Φ[2
m]に対応する動的マップ
R
D(y)をそれらのベクトルをキーとして、マザーマップから選択するようになる。
ここで、補間変数ベクトルφ*の近傍にある補間変数ベクトルφ[1]〜φ[2m]の選択方法について説明する。補間変数φl(l=1、2、…、m)の代表値の中で、補間変数ベクトルφ*の補間変数φlの値φl *を超えない最大のφlをφmin,lとし、φl *を下回らない最小のφlをφmax,lとすると、φmin,lを各要素とする補間変数ベクトルと、φmax,lを各要素とする補間変数ベクトルは、次式で表される。
なお、φ
min,l≠φ
max,lであることは勿論である。φ
max、φ
minはそれぞれ、選択される補間変数ベクトルφ[1]とφ[2
m]となる。以下では、便宜上、このφ
max、φ
minを、補間変数の両端とも呼ぶ。この場合、その他のφ[2]、…、φ[2
m-1]は、補間変数の両端とともに示せば次式で表される。
すなわち、φ[1]〜φ[2
m]に対応する動的マップR
D(y;φ[1],Φ
*)〜R
D(y;φ[2
m],Φ
*)がマザーマップの中から選択されるようになる。
次のステップ409では、選択された動的マップRD(y;φ[1],Φ*)〜RD(y;φ[2m],Φ*)を用いた補間により、補間変数ベクトルφ*に適合した補正マップを作成する。その補間式は、次式で表される。
ここで、上記ステップ409の補間について、より具体的に説明する。ここでは説明を簡単にするため、補間変数Φ
lを、スキャン速度とスキャン長の2つのみであるものとする。この場合、補間変数ベクトルφは、次式のように表されるものとする。
ここで、s、vは、スキャン長、スキャン速度である。この場合、動的マップが取得されている補間変数ベクトルφ
jを、次式で表すものとする。
ここで、スキャン長sの代表値の数が4つであり、スキャン速度vの代表値の数が4つであったとすると、動的マップが取得された補間変数ベクトルφ
jの総数は16ということになり、非補間変数Φ
jの組合せの総数に16を欠けたものが動的マップの総数となる。
図7には、この補間変数ベクトルφのベクトル空間が模式的に示されている。このベクトル空間では、横軸をスキャン長sとし、縦軸をスキャン速度vとして示されており、動的マップRD(y;φj、Φ*)が取得された補間変数ベクトルφjのポテンシャルを示す位置座標が白丸で示されている。
図6のステップ403で設定された補間変数であるスキャン長がs*であり、スキャン速度がv*であるとし、今回設定された補間変数ベクトルφ*=(s*,v*)のポテンシャルを示す位置座標が、図7中の黒丸で示されるものとすると、このベクトルの近傍にある4つ(22個)の補間変数ベクトル(動的マップが取得されている補間変数ベクトル)が、補間用の補間変数ベクトルφ[1]〜φ[4]として選択され、選択されたベクトルに対応する動的マップを用いた補間が行われる。
図7では、選択された4つの補間変数ベクトルφ[1]〜φ[4]に対応する点がグレイ表示されている。ここで、図7に示されるように、スキャン長の設定値s*が、線分s1〜s2をt:1−tに内分し、スキャン速度の設定値v*が、線分v1〜v2をw:1−wに内分する点であったとする。この場合、補正変数ベクトルφ*に対応する動的マップにおける補正量は、次式で得られる。
なお、この式(23)が上記式(20)に対応する。上記式(23)において、R(y)は、その補正マップ内のdx
k,dy
k,dθ
kのいずれかが代入されることとなる。
ところで、図8に示されるように、設定された補間変数ベクトルφ*が、代表値で仕切られる領域の境界線上にある場合を考える。この場合には、φ[1]とφ[2]とに関する係数はすべて0となるので、φ[3]に対応する動的マップと、φ[4]に対応する動的マップとで補間を行うことになる。
また、図9に示されるように、代表値の補間変数ベクトルφj(j=1〜2m(16))の点によって囲まれる領域の外側に、設定値の補間変数ベクトルφ*が存在する場合には、代表値の補間変数ベクトルΦ[1]〜Φ[2m]を用いた補間をすることができないので、その最も近傍の補間変数ベクトルをそのまま用いることができる。図9に示される例では、最も近い補間変数ベクトル(グレイ表示されている補間変数ベクトル)が選択されている。すなわち、ここでは、補間変数の設定範囲の端に対応する代表値において、補正マップにおける補正量を飽和させるようにする。
なお、図9に示される場合のように、代表値の補間変数ベクトルφj(j=1〜2m(16))の点によって囲まれる領域の外側に、設定値の補間変数ベクトルφ*が存在する場合には、設定値の補間変数ベクトルφ*での補正量を、16個の補間変数ベクトルΦ[1]〜Φ[2m]の補正マップに基づいて外分演算により求めるようにしてもよい。
この場合にどのような方法を選択するかは、補間変数の性質に応じて変更することができる。例えば、スキャン速度v<v0の領域に補間変数ベクトルφ*が設定されていた場合には、補正量を完全に0にするようにしてもよい。
図6に戻り、ステップ409終了後、次のステップ411では、全ショット領域に対する露光が終了したか否かを判断する。この判断は、ステージ制御装置19から最後の露光対象となるショット領域の露光完了通知が行われた時点で、肯定されるようになる。判断が肯定されれば補正処理タスクを終了し、否定されればステップ413に進む。
ステップ413では、次の露光対象となるショット領域の走査露光の際のレチクルステージRSTの目標位置指令のプロファイル(軌道指令)が露光動作タスクにより作成済みとなるまで待つ。この待ちの間、補正処理タスクでは、ステップ411で、全ショット領域に対する露光が完了したか否かを判断を繰り返し行い、その判断が肯定された場合には処理を終了する。
露光動作タスクにおいてレチクルステージRSTの目標位置指令のプロファイル(軌道指令)の作成が完了すると、ステップ413における判断が肯定され、ステップ415に進む。ステップ415では、次のショット領域に対する露光をするに際し露光量が変更されたか否かを判断する。
すなわち、場合によっては、各ショット領域の走査露光の間に、照明光ILの照射量を不図示のセンサ等で計測し、ショット領域における平均照射量を算出することがある。この場合、その平均照射量が目標値よりも少なかったときには、スキャン速度を現在の設定されている速度よりも低速に設定しなおし、平均照射量が目標値よりも多かったときには、スキャン速度をより高速に設定しなおす必要が生じる。このような場合には、ステップ415における判断が肯定され、ステップ405に戻る。すなわち、このような露光量の変更する必要があれば、変更された露光量に応じた露光条件での補正マップを改めて作成する必要があるため、ステップ405〜409の処理を再び行って、変更された露光条件に適合した補正マップを作成する。
ここで、露光量が変更されたとしても、そのために補間に用いる動的マップを変更する必要がない場合には、ステップ405に戻る必要はなく、ステップ409に戻り、補間演算を再実行するだけでもよい。
なお、ウエハの設計情報において、ショット領域毎に露光量が変更するように設定されている場合にもステップ415が肯定され、補正マップの再作成(更新)が行われる。
ステップ415で判断が否定された後に行われるステップ417では、静的マップの読み出しを行い、ステップ419では、レチクルステージRSTの目標軌道指令に、動的マップの補正量と静的マップの補正量とを加算して得られる補正量を加算する。ステップ419終了後は、再びステップ411に戻る。ステップ411に戻った後は、ステップ411において判断が肯定されるまで、ステップ411〜ステップ419の処理が繰り返される。
補正量が加算されたレチクルステージRSTの目標軌道指令は、露光動作タスクによりステージ制御装置19に送られる。ステージ制御装置19により、レチクルステージRSTの位置を制御しつつ、走査露光が行われる。
以上詳細に説明したように、本実施形態によると、主制御装置20が、同期走査中におけるレチクルRとウエハWとの投影光学系PLの光軸に直交する2次元面(XY面)内の相対位置ずれ量に関するノンパラメトリックな情報としての補正マップRCに基づいて、同期走査中のレチクルステージRST(レチクルR)とウエハステージWST(ウエハW)との相対位置を補正するので、モデル化誤差を考慮する必要がなくなる。この結果、レチクルステージRST(レチクルR)とウエハステージWST(ウエハW)との相対位置の補正における補正残差を低減し、両者の同期走査が可能となるので、転写形成されるショット領域のショットディストーションを低減し、高精度な露光を実現することが可能となる。
また、本実施形態によると、ノンパラメトリックな情報として、両ステージWST、RSTの同期走査の走査方向に関する各サンプル位置での相対位置ずれの補正量を含む補正マップを用いている。この補正マップは、予め計測された相対位置ずれ量に基づくものであり、モデル化などによりパラメトリック化されていない情報であり、この補正マップを用いて、両ステージWST、RSTの相対位置の補正を行うことにより、モデル化誤差のない制御を実現することが可能となる。
露光条件をパラメータとしない補正マップを用いて補正を行うには、露光条件に応じた複数の補正マップを用意する必要がある。したがって、補正マップの数は、多ければ多いほど、両ステージWST、RSTの相対位置の制御精度が向上するようになるが、補正マップの数は、装置内の記憶容量等を考慮して判断すればよい。
また、本実施形態によると、補正マップとして、露光条件に依存する相対位置ずれの補正量の動的な補正マップ(動的マップRD(y;φj、Φj))と、露光条件に依存しない相対位置ずれの補正量の静的な補正マップ(静的マップRS(y;φj、Φj))とを用いる。このように、補正マップを露光条件に依存するものとしないものとに分解すれば、露光条件に応じたフレキシブルな補正が可能となる。
例えば、走査露光中では、静的マップRS(y;φj、Φj)の補正量に、そのとき設定されていた露光条件に対応する動的マップRD(y;φj、Φj)の補正量をさらに加算して、両ステージWST、RSTの補正を行えば、どのような露光条件の下であっても、それらをパラメータとしない、ノンパラメトリックな両ステージWST、RSTの相対位置の補正が可能となる。すなわち、設定される可能性がある複数の異なる露光条件それぞれに対応する動的マップを複数用意しておき、設定された露光条件に対応する動的マップを用いたノンパラメトリックな補正が可能となる。
なお、本発明では、動的マップと静的マップとに分割することなく、複数の異なる露光条件それぞれに対応する補正マップを用意するようにしてもよいが、動的マップは、上述した低速−高速重ね露光の露光結果から容易に得られ、静的マップは、基準ウエハから容易に得られるため、本実施形態のように、補正マップを露光条件に依存するものとしないものとに分解すれば、補正マップの補正量の精度を高めることができる。
また、本実施形態によると、所定の露光条件に対応する動的マップがない場合には、動的マップが得られている複数の露光条件の中から、露光条件の近傍の複数の露光条件を選択する。続いて、選択された複数の露光条件での動的マップを用いた補間演算により、指定された露光条件での動的マップを作成する。そして、作成された動的マップを用いて、同期走査中の両ステージWST、RSTの相対位置を補正する。これにより、露光条件の中に連続値をとりうる露光条件があり、補正マップが取得されていない露光条件が設定されていたとしても、その露光条件に応じた両ステージの相対位置の高精度な補正を実現することが可能となる。
また、本実施形態では、補間演算は、連続した値をとる露光条件(すなわち補間変数)についてのみ行われ、離散的な設定状態しかとらない非補間変数については、行われない。このようにすれば、補間を行う露光条件の数を少なくして、補正演算に要する時間を短くすることができる。
また、本実施形態では、ショット領域毎に露光条件が変更されたか否かの判断を行い、露光条件が変更されていれば、変更後の露光条件に合わせて、補正マップを上述した補正などを行って作成し直す。これにより、露光条件がウエハWの複数のショット領域に対する露光中に変更されたとしても、その条件に合わせた高精度な補正を行うことが可能となる。
また、本実施形態では、走査露光におけるレチクルステージRSTの目標位置の補正に先だって、補正マップの作成を行う。具体的には、照明光ILに対し、複数の計測用パターンが形成されたレチクルRとウエハWとを複数の異なる露光条件の下で同期走査することにより、走査露光を行って、各露光条件での複数の計測用マークMkの転写結果を取得し、取得された転写結果に基づいて、各計測用マークMkの転写位置の位置ずれ量を検出し、検出された各計測用マークMkの転写位置の位置ずれ量に基づいて、各露光条件に対応するノンパラメトリックな補正マップを算出する。このため、実際の露光結果から計測された位置ずれ量に基づく補正マップを補正に用いることができるので、両ステージWST、RSTの高精度な補正を実現することが可能となる。
なお、本実施形態では、各露光条件について複数回の走査露光を行い、各マークの転写像の位置ずれ量の平均値に基づいて補正量を算出した。これにより、転写時に発生する偶然誤差や、計測装置における計測誤差に影響を受けない位置ずれ量を求めることが可能となる。また、露光結果に対しローパスフィルタをかけているので、滑らかな補正が可能となる。
また、本実施形態では、照明光ILが照射される照明領域IARのスキャン方向に関する幅に応じたインバースフィルタを用いて、各計測用のマークMkの転写位置の位置ずれ量をデコンボリューションし、デコンボリューションされた各計測用マークMkの転写位置の位置ずれ量に基づいて、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの投影光学系PLの光軸AXに直交する2次元XY位置座標の相対位置ずれ量に関するノンパラメトリックな情報を検出する。ウエハW上に転写形成されるマークMkの像は、レチクルR上のマークMkが照明領域IARを通過する間にウエハW上に投影される像のコンボリューションの結果であるため、その露光結果に対しデコンボリューションを行えば、両ステージWST、RSTの実際の相対位置の位置ずれを精度良く求め、高精度な補正を可能とする補正マップを取得することができる。
なお、高精度な補正を可能とする補正マップを高精度に取得する方法は、上述した方法には限られない。
図10には、上記実施形態におけるサブルーチン205の変形例であるサブルーチン205’のフローチャートが示されている。図10に示されるように、このサブルーチン205’では、ステップ501〜ステップ517において、図5のサブルーチン205のステップ301〜ステップ317と同じ処理(但し、ステップ313のデコンボリューションに対応するステップは含まれない)を行うので、これらのステップについては説明を省略する。
次のステップ519では、図3のステップ217と同様にしてステップ517で求められたサンプリング位置での補正量に基づいて、露光条件の代表値の組合せそれぞれについて動的マップを更新する。これまで求められた動的マップをRj(y;φj、Φj)とし、今回算出された位置ずれ量に基づく補正残差(追従残差)をEj(y;φj、Φj)とすると、補正マップRj(y;φj、Φj)は、さらに、補正残差だけ補正量が増加するように、次式を用いて更新される。
続くステップ521において、図3のステップ201と同様に、低速−高速重ね露光を行う。ただし、ここでは、高速での露光においては、保存している補正マップを用いてレチクルステージRSTの目標位置を補正しつつ露光を行う。
次のステップ523では、図3のステップ203と同様に、位置ずれ量の計測を行い、続くステップ525では、位置ずれ量の平均が、予め設定された閾値より小さいか否かを判断する。この判断が肯定されれば、サブルーチン205’を終了し、否定されればステップ501に戻る。
すなわち、このサブルーチン205’では、ウエハW上における各計測用のマークMkの転写位置の位置ずれ量が許容範囲内となるまで、ステップ501〜ステップ525が繰り返され、過去に得られた位置ずれ量を用いて各露光条件にそれぞれ対応する動的マップを更新し、更新された動的マップに基づいて記同期走査中の両ステージWST、RSTの相対位置を補正した状態で、走査露光を行う。このように、補正残差が許容範囲内となるまで動的マップを更新するようにすれば、動的マップの補正量を、補正残差がほぼ零となる補正量に追い込むことができ、前述のデコンボリューションを行う場合と同様に、補正残差を低減し、その補正精度を向上させることが可能となる。
なお、ステップ525における追い込みの終了判断条件は、位置ずれ量の指標値(この例では平均)と閾値との比較に限られない。追い込み回数を固定としてもよいし、位置ずれ量の指標値の変動が所定範囲内となったら追い込みを終了するようにしてもよい。また、静的マップの作成においても、同様に、補正残差が許容範囲内となるまで、低速−高速重ね露光を繰り返して静的マップを更新していけば、補正残差を低減することができるのは勿論である。
なお、上記実施形態では、作成する補正情報を、ノンパラメトリックな補正マップとしたため、補正情報をパラメトリックな補正関数とするよりも、補正量を追い込みやすくなっている。したがって、補正情報を補正マップとすれば、追い込み回数が少なくなり、補正情報の作成に要する時間を短縮することができる。
なお、上記実施形態のように、デコンボリューションによる方法を採用した方が、上記変形例の場合に比べて、補正マップの作成に要する時間を短縮することができ、スループットの面では有利となる。
なお、上記実施形態では、非補間変数の1つに、ウエハステージWSTの制御フェーズなどがあるとしたが、このような制御フェーズとしては、例えば、主として、以下の2つがあげられる。
(1)前ショット領域の走査露光後における減速に伴うウエハステージWSTの走査方向の速度が完全に零となってから、X軸方向(非走査方向)にウエハステージWSTがステップ移動し、そのステップ移動が完全に終了してから、次のショット領域の露光のためのウエハステージWSTの走査方向の加速を開始する制御フェーズ(これを制御フェーズ1とする)
(2)前ショット領域の走査露光後における減速に伴うウエハステージWSTの走査方向の速度が完全に零となる前に、X軸方向にウエハステージWSTがステップ移動し、そのステップ移動中にウエハステージWSTの走査方向に関する進行方向が反転し、次のショット領域に対する走査露光を開始する制御フェーズ(これを制御フェーズ2とする)
制御フェーズは、両ステージWST、RSTの走査露光中の動特性に多大な影響を与える。例えば、上記制御フェーズ1の場合には、スキャン速度等を変更しても、マークMkの像の位置ずれ量がほとんど変わらないが、上記制御フェーズ2の場合には、スキャン速度に応じて、マークMkの像の位置ずれ量が大きく変化するような場合もある。
このように、非補間変数の設定によっては、補間変数の中には、両ステージWST、RSTの動特性に対する感度が小さくなるようなものもある。このような場合、その補間変数を、補間変数ベクトルに含めないようにしてもよい。すなわち、非補間変数の設定如何によっては、補間変数の数を減らすことも可能である。このようにすれば、作成する補正マップの数を減らすことができるようになり、スループットに有利である。
なお、非補間変数としては、上述したようなものには限られない。例えば、ウエハWのレジストの厚みや材質など、プロセスに応じた非補間変数を設定することも可能である。また、露光対象のショット領域のXY位置を非補間変数又は補間変数として設定するようにしてもよい。非補間変数として設定する場合には、例えば、ウエハWを、幾つかの領域(例えば、中央部か、外周側か、+Y側か、−Y側か、+X側か、−X側か、など)に分割して、その値を設定することになる。
なお、上記実施形態では、静的マップの操作変数を、レチクルステージRSTのY位置としたが、これには限られず、その操作変数を、ウエハステージWSTのXY位置とするようにしてもよい。ウエハステージWSTに設けられた移動鏡曲がりの成分が、レチクルステージRSTのそれよりも、大きい場合には、このようにした方が望ましい。
また、上記実施形態では、動的マップの操作変数を、露光開始からのレチクルステージRSTの移動距離としたが、これには限られず、ショット領域の中心を原点とする変数を動的マップの操作変数とするようにしてもよい。
なお、上記実施形態では、両ステージWST、RSTの相対位置を補正するために、レチクルステージRSTの目標軌道指令を補正したが、本発明はこれには限られない。例えば、補正マップを用いて、干渉計16の計測値を補正するようにしてもよい。また、静的マップを用いて、ウエハステージWSTの位置を補正し、動的マップを用いて、レチクルステージRSTの位置を補正するようにしてもよいし、その逆であってもよい。要は、結果的に、両ステージWST、RSTの相対位置が、補正マップの補正量だけずれるようになっていればよい。
なお、上記実施形態では、アライメント系ASとしてが、オフアクシス方式のFIA系(結像式のアライメントセンサ)を用いる場合について説明したが、FIA系に限らず、アライメント系ASとしては、FIA系に限らず、コヒーレントな検出光を対象マークに照射し、その対象マークから発生する散乱光又は回折光を検出する、あるいはその対象マークから発生する2つの回折光(例えば同次数の回折光(±1次、±2次、……、±n次回折光)、あるいは同方向に回折する回折光)を干渉させて検出するアライメントセンサを単独であるいは適宜組み合わせて用いることができる。同次数の回折光を干渉させて検出する場合、次数毎に回折光を独立に検出し、少なくとも1つの次数での検出結果を用いるようにしてもよいし、波長が異なる複数のコヒーレントビームをアライメントマークに照射し、波長毎に各次数の回折光を干渉させて検出してもよい。また、アライメント系ASは、TTR(Through The Reticle)方式、TTL(Through The Lens)方式、またオフアクシス方式の何れの方式であっても構わない。
また、本発明は上記実施形態の如き、ステップ・アンド・スキャン方式の露光装置に限らず、プロキシミティ方式の露光装置(X線露光装置等)を始めとする各種の走査型露光装置にも全く同様に適用が可能である。例えば、プロキシミティ方式の走査型露光装置などの場合、投影光学系は存在しないが、制御装置が、同期走査中におけるマスクと物体との2次元面内の相対位置ずれ量に関するノンパラメトリックな情報に基づいて、マスクを保持するマスクステージと感応物体を保持する物体ステージとの駆動系を制御することにより、同期走査中のマスクと物体との相対位置を補正する構成を採用することは可能である。この場合、上記実施形態と同様に、モデル化誤差を考慮する必要がなくなり、これにより、マスクと物体との相対位置の補正における補正残差を低減することができ、両者の高精度な同期走査、ひいては高精度な露光を実現することが可能となる。
上記実施形態では、光源として、KrFエキシマレーザなどの遠紫外光源、ArFエキシマレーザ、F2レーザなどの真空紫外光源、紫外域の輝線(g線、i線等)を発する超高圧水銀ランプなどの他、YAGレーザ、あるいは半導体レーザその他の各種高調波発生装置を用いることもできる。例えば、真空紫外域の光を露光用照明光として用いる場合に、上記各光源から出力されるレーザ光に限らず、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(Er)(又はエルビウムとイッテルビウム(Yb)の両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を発生する高調波発生装置を用いることができる。
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、近年、70nm以下のパターンを露光するために、SORやプラズマレーザを光源として、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を発生させるとともに、その露光波長(例えば13.5nm)の下で設計されたオール反射縮小光学系、及び反射型マスクを用いたEUV露光装置の開発が行われている。この装置においては、円弧照明を用いてマスクとウエハを同期走査してスキャン露光する構成が考えられるので、かかる装置にも本発明を好適に適用することができる。この他、X線、又は電子線あるいはイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置に本発明を適用してもよい。
この他、例えば国際公開第99/49504号パンフレットなどに開示される、投影光学系PLとウエハWとの間に液体(例えば純水など)が満たされる液浸型露光装置などに本発明を適用してもよい。
また、本発明は、特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報(対応米国特許第6,341,007号、第6,400,441号、第6,549,269号及び第6,590,634号明細書)、特表2000−505958号公報(対応米国特許第5,969,441号明細書)あるいは米国特許第6,208,407号明細書などに開示されているようなウエハを保持するウエハステージを複数備えたマルチステージ型の露光装置にも適用できる。また、本発明は、特開2000−164504号公報(対応米国特許第6,897,963号明細書などに開示されているように、ウエハステージWSTとは別に計測ステージを備えた露光装置にも適用できる。この場合、照射量モニタ58や照度むらセンサ21Pを計測ステージに設けても良い。本国際出願で指定した指定国(又は選択した選択国)の国内法令が許す限りにおいて、上記各公報及び対応米国特許明細書における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系PLは、屈折系、反射屈折系、及び反射系のいずれでもよいし、縮小系、等倍系、及び拡大系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
なお、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(または位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、光反射性の基板上に所定の反射パターンを形成した光反射型マスクは勿論、これらのマスクに代えて、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターンまたは反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク)を用いてもよい。このような電子マスクは、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されている。
なお、上述の電子マスクとは、非発光型画像表示素子と自発光型画像表示素子との双方を含む概念である。ここで、非発光型画像表示素子は、空間光変調器(Spatial Light Modulator)とも呼ばれ、光の振幅、位相あるいは偏光の状態を空間的に変調する素子であり、透過型空間光変調器と反射型空間光変調器とに分けられる。透過型空間光変調器には、透過型液晶表示素子(LCD:Liquid Crystal Display)、エレクトロクロミックディスプレイ(ECD)等が含まれる。また、反射型空間光変調器には、DMD(Digital Mirror Device,またはDigital Micro-mirror Device)、反射ミラーアレイ、反射型液晶表示素子、電気泳動ディスプレイ(EPD:ElectroPhoretic Display)、電子ペーパ(又は電子インク)、光回折ライトバルブ(Grating Light Value)等が含まれる。
また、自発光型画像表示素子には、CRT(Cathode Ray Tube)、無機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)、プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)や、複数の発光点を有する固体光源チップ、チップを複数個アレイ状に配列した固体光源チップアレイ、または複数の発光点を1枚の基板に作り込んだ固体光源アレイ(例えばLED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ、LD(Laser Diode)ディスプレイ等)等が含まれる。なお、周知のプラズマディスプレイ(PDP)の各画素に設けられている蛍光物質を取り除くと、紫外域の光を発光する自発光型画像表示素子となる。
さらに、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
なお、本発明は、半導体製造用の露光装置に限らず、液晶表示素子などを含むディスプレイの製造に用いられる、デバイスパターンをガラスプレート上に転写する露光装置、薄膜磁気ヘッドの製造に用いられるデバイスパターンをセラミックウエハ上に転写する露光装置、及び撮像素子(CCDなど)、マイクロマシン、有機EL、DNAチップなどの製造に用いられる露光装置などにも適用することができる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。ここで、DUV(遠紫外)光やVUV(真空紫外)光などを用いる露光装置では一般的に透過型レチクルが用いられ、レチクル基板としては石英ガラス、フッ素がドープされた石英ガラス、螢石、フッ化マグネシウム、又は水晶などが用いられる。また、プロキシミティ方式のX線露光装置、又は電子線露光装置などでは透過型マスク(ステンシルマスク、メンブレンマスク)が用いられ、マスク基板としてはシリコンウエハなどが用いられる。
半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置100によりレチクルのパターンをウエハに転写するステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。