以下、本発明の一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る露光装置100の概略構成が示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置である。この露光装置100は、照明系10、マスクとしてのレチクルRを保持するレチクルステージRST、投影光学系PL、物体としてのウエハWが搭載されるウエハステージWST、アライメント検出系AS、及び装置全体を統括制御する主制御装置20等を備えている。
前記照明系10は、例えば特開2001−313250号公報及びこれに対応する米国特許出願公開第2003/0025890号等に開示されるように、光源、オプティカル・インテグレータを含む照度均一化光学系、リレーレンズ、可変NDフィルタ、可変視野絞り(レチクルブラインド又はマスキング・ブレードとも呼ばれる)、及びダイクロイックミラー等(いずれも不図示)を含んで構成されている。オプティカル・インテグレータとしては、フライアイレンズ、ロッドインテグレータ(内面反射型インテグレータ)、あるいは回折光学素子などが用いられる。本国際出願で指定した指定国又は選択した選択国の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及びこれに対応する米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
この照明系10では、回路パターン等が描かれたレチクルR上における、レチクルブラインドで規定されたスリット状の照明領域(X軸方向に細長い長方形状の照明領域)部分を照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとしては、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの遠紫外光、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、あるいはF2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光などが用いられる。照明光ILとして、超高圧水銀ランプからの紫外域の輝線(g線、i線等)を用いることも可能である。
前記レチクルステージRST上にはレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、リニアモータ、ボイスコイルモータ等を駆動源とする不図示のレチクルステージ駆動部によって、照明系10の光軸(後述する投影光学系PLの光軸AXに一致)に垂直なXY平面内で微少駆動可能であるとともに、所定の走査方向(ここでは図1における紙面内左右方向であるY軸方向とする)に指定された走査速度で駆動可能となっている。
レチクルステージRSTのステージ移動面内の位置はレチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」と略述する)16によって、移動鏡15を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。ここで、実際には、レチクルステージRST上にはY軸方向に直交する反射面を有する移動鏡とX軸方向に直交する反射面を有する移動鏡とが設けられ、これらの移動鏡に対応してレチクルY干渉計とレチクルX干渉計とが設けられているが、図1ではこれらが代表的に移動鏡15、レチクル干渉計16として示されている。なお、例えば、レチクルステージRSTの端面を鏡面加工して反射面(移動鏡15の反射面に相当)を形成しても良い。また、レチクルステージRSTの走査方向(本実施形態ではY軸方向)の位置検出に用いられるX軸方向に伸びた反射面の代わりに、少なくとも1つのコーナーキューブ型ミラー(例えばレトロリフレクタ)を用いても良い。ここで、レチクルY干渉計とレチクルX干渉計の少なくとも一方、例えばレチクルY干渉計は、測長軸を2軸有する2軸干渉計であり、このレチクルY干渉計の計測値に基づきレチクルステージRSTのY位置に加え、θz方向(Z軸回りの回転方向)の回転量(ヨーイング量)も計測できるようになっている。レチクル干渉計16からのレチクルステージRSTの位置情報(ヨーイング量などの回転情報を含む)はステージ制御装置19及びこれを介して主制御装置20に供給される。ステージ制御装置19では、主制御装置20からの指示に応じて、レチクルステージRSTの位置情報に基づいてレチクルステージ駆動部(不図示)を介してレチクルステージRSTを駆動制御する。
レチクルRの上方には、X軸方向に所定距離隔てて一対のレチクルアライメント検出系22(但し、図1においては紙面奥側のレチクルアライメント検出系22は不図示)が配置されている。各レチクルアライメント検出系22は、ここでは図示が省略されているが、それぞれ照明光ILと同じ波長の照明光にて検出対象のマークを照明するための落射照明系と、その検出対象のマークの像を撮像するための検出系とを含んで構成されている。検出系は結像光学系と撮像素子とを含んでおり、この検出系による撮像結果(すなわちレチクルアライメント検出系22によるマークの検出結果)は主制御装置20に供給されている。この場合、レチクルRからの検出光をレチクルアライメント検出系22に導くための不図示の偏向ミラーが移動自在に配置されており、露光シーケンスが開始されると、主制御装置20からの指令に基づいて不図示の駆動装置により偏向ミラーはそれぞれレチクルアライメント検出系22と一体的に照明光ILの光路外に退避される。
前記投影光学系PLは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置され、その光軸AXの方向がZ軸方向とされている。投影光学系PLとしては、両側テレセントリックで所定の縮小倍率(例えば1/5、又は1/4)を有する屈折光学系が使用されている。このため、照明系10からの照明光ILによってレチクルRの照明領域が照明されると、レチクルRの回路パターンの照明領域部分の縮小像(部分倒立像)が投影光学系PLを介してウエハW上の前記照明領域に共役な投影光学系の視野内の投影領域に投影され、ウエハW表面のレジスト層に転写される。
前記ウエハステージWSTは、投影光学系PLの図1における下方で、不図示のベース上に配置されている。このウエハステージWST上にウエハホルダ25が載置されている。このウエハホルダ25上にウエハWが例えば真空吸着等によって固定されている。
前記ウエハステージWSTは、投影光学系PLの図1における下方で、不図示のベース上に配置されている。このウエハステージWST上にウエハホルダ25が載置されている。このウエハホルダ25上にウエハWが例えば真空吸着等によって固定されている。このウエハステージWSTは、図1のウエハステージ駆動部24により、X、Y、Z、θz(Z軸回りの回転方向)、θx(X軸回りの回転方向)、及びθy(Y軸回りの回転方向)の6自由度方向に駆動可能な単一のステージである。なお、残りのθz方向については、ウエハステージWST(具体的には、ウエハホルダ25)を回転可能に構成しても良いし、このウエハステージWSTのヨーイング誤差をレチクルステージRST側の回転により補正することとしても良い。
前記ウエハステージWSTの側面には、ウエハレーザ干渉計(以下、「ウエハ干渉計」と略述する)18からのレーザビームを反射する移動鏡17が固定され、外部に配置されたウエハ干渉計18により、ウエハステージWSTのX方向、Y方向及びθz方向(Z軸回りの回転方向)の位置が例えば、0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。
ここで、ウエハステージWST上には、実際には、X軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とY軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡とが設けられている。また、これに対応して、ウエハ干渉計もX移動鏡、Y移動鏡にそれぞれレーザ光を照射してウエハステージWSTのX軸方向、Y軸方向の位置をそれぞれ計測するX軸干渉計、Y軸干渉計がそれぞれ設けられている。
本実施形態では、X軸及びY軸干渉計は測長軸を複数有する多軸干渉計で構成され、ウエハステージWSTのX、Y位置の他、回転(ヨーイング(Z軸回りの回転であるθz回転)、ピッチング(X軸回りの回転であるθx回転)、ローリング(Y軸回りの回転であるθy回転))も計測可能となっている。
このようにウエハ干渉計、及び移動鏡はそれぞれ複数設けられているが、図1ではこれらが代表的に移動鏡17、ウエハ干渉計18として示されている。また、例えば、ウエハステージWSTの端面を鏡面加工して反射面(移動鏡の反射面に相当)を形成しても良い。
また、ウエハステージWST上のウエハWの近傍には、基準マーク板FMが固定されている。この基準マーク板FMの表面は、ウエハWの表面と同じ高さに設定され、この表面には少なくとも一対のレチクルアライメント用基準マーク、及びアライメント検出系ASのベースライン計測用の基準マーク等が形成されている。
前記アライメント検出系ASは、投影光学系PLの側面に配置された、オフアクシス方式のアライメントセンサである。このアライメント検出系ASとしては、例えばウエハ上のレジストを感光させないブロードバンドな検出光束を対象マークに照射し、その対象マークからの反射光により受光面に結像された対象マークの像と不図示の指標の像とを撮像素子(CCD)等を用いて撮像し、それらの撮像信号を出力する画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系のセンサが用いられている。なお、FIA系に限らず、コヒーレントな検出光を対象マークに照射し、その対象マークから発生する散乱光又は回折光を検出する、あるいはその対象マークから発生する2つの回折光(例えば同次数)を干渉させて検出するアライメントセンサを単独であるいは適宜組み合わせて用いることは勿論可能である。このアライメント検出系ASの撮像結果が不図示のアライメント信号処理系を介して主制御装置20へ出力されている。
制御系は、図1中、主制御装置20及びこの配下にあるステージ制御装置19などによって主に構成される。主制御装置20は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等から成るいわゆるマイクロコンピュータ(又はワークステーション)を含んで構成され、装置全体を統括して制御する。
主制御装置20には、例えばキーボード,マウス等のポインティングデバイス等を含んで構成される入力装置、及びCRTディスプレイ(又は液晶ディスプレイ)等の表示装置(いずれも図示省略)、並びにCD(Compact Disc),DVD(Digital Versatile Disc),MO(Magneto-Optical disc)あるいはFD(Flexible Disc)等の情報記録媒体のドライブ装置46、ハードディスクから成る記憶装置47が、外付けで接続されている。ドライブ装置46にセットされた情報記録媒体(以下では、CDであるものとする)には、後述するフローチャートで示されるウエハアライメント及び露光動作時の処理アルゴリズムに対応するプログラム(以下、便宜上、「特定プログラム」と呼ぶ)、その他のプログラム、並びにこれらのプログラムに付属するデータベースなどが記録されている。
主制御装置20は、例えば露光動作が的確に行われるように、前述の特定プログラムに従った処理を実行し、例えばレチクルRとウエハWの同期走査、ウエハWのステッピング等を制御する。
具体的には、前記主制御装置20は、例えば走査露光時には、レチクルRがレチクルステージRSTを介して+Y方向(又は−Y方向)に速度VR=Vで走査されるのに同期して、ウエハステージWSTを介してウエハWが前述の照明領域に共役な投影領域に対して−Y方向(又は+Y方向)に速度VW=β・V(βはレチクルRからウエハWに対する投影倍率)で走査されるように、レチクル干渉計16、ウエハ干渉計18の計測値に基づいて不図示のレチクルステージ駆動部、ウエハステージ駆動部24をそれぞれ介してレチクルステージRST、ウエハステージWSTの位置及び速度をそれぞれ制御する。また、ステッピングの際には、主制御装置20ではウエハ干渉計18の計測値に基づいてウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTの位置を制御する。
さらに、本実施形態の露光装置100は、投影光学系PLの最良結像面に向けて複数のスリット像を形成するための結像光束を光軸AX方向に対して斜め方向より供給する不図示の照射系と、その結像光束のウエハWの表面での各反射光束を、それぞれスリットを介して受光する不図示の受光系とから成る斜入射方式の多点フォーカス検出系を備えている。この多点フォーカス検出系としては、例えば特開平6−283403号公報及びこれに対応する米国特許第5,448,332号などに開示されるものと同様の構成のものが用いられ、この多点フォーカス検出系の出力が主制御装置20に供給されている。主制御装置20では、この多点フォーカス検出系からのウエハ位置情報に基づいてステージ制御装置19及びウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTをZ方向及び傾斜方向に駆動する。本国際出願で指定した指定国又は選択した選択国の国内法令が許す限りにおいて、上記公報及びこれに対応する米国特許における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
次に、上述のようにして構成された本実施形態の露光装置100により、ウエハWに対して第2層目(セカンドレイヤ)以降の層の露光処理を行う際の動作について、図2のウエハの上面図及び上記特定プログラムに従って実行される、主制御装置20内のCPUの処理アルゴリズムを示す図3〜図5のフローチャートに沿って説明する。
前提として、ドライブ装置46にセットされたCD−ROM内の特定プログラム及びその他のプログラムは、記憶装置47にインストールされているものとする。さらに、そのうちのレチクルアライメント及びベースライン計測処理のプログラムが、主制御装置20内部のCPUによって記憶装置47から主制御装置20のメモリにロードされているものとする。
第2層目以降の層の露光対象であるウエハW上には、図2に示されるように、前層までの処理工程で複数(例えばN個)のショット領域SAP(P=1、2、…、N)が、隣接するショット領域間の100μm幅程度の間隔(ストリートライン)を置いて、マトリックス状の配置で形成されるとともに、各ショット領域SAPの四隅(ストリートライン上)に、2次元位置検出用のウエハアライメントマーク(ウエハマーク)MP,K(K=1,2,3,4)が形成されている。ショット領域SAPの配列によって規定される配列座標系の各軸をα軸(X軸に略平行な軸)、β軸(Y軸に略平行な軸)とし、α軸とX軸とが完全に一致し、β軸とY軸とが完全に一致したと仮定すると、ウエハマークMP,1、MP,2、MP,3、MP,4のX位置の平均値は、ショット領域SAP(の中心CP)のX座標に設計上一致し、ウエハマークMP,1、MP,2、MP,3、MP,4のY位置の平均値は、ショット領域SAP(の中心CP)のY座標に設計上一致するようになっている。すなわち、設計上は、各ウエハXマークMP,KのX位置とY位置とにより、ショット領域SAP(の中心CP)の位置座標を求めることができるようになっている。
この場合、ウエハマークMP,Kとしては、例えば互いに交差するX軸(α軸)方向及びY軸(β軸)方向に延びるラインによって形成される十字マークが用いられている。これらのマークとしては、十字マークでなく、ボックスマークであっても良いし、α軸方向をその配列方向とするライン・アンド・スペース・パターン(L/Sパターン)とβ軸方向をその配列方向とするL/Sパターンとの組合せのマークであっても良い。
なお、上述したようなウエハW上のショット領域などに関する情報(ショット数、ショットサイズ、配置、アライメントマークの配置、種類などに関するいわゆるショットマップデータ)は、リソグラフィシステムのホストコンピュータから記憶装置47にダウンロードされているものとする。
図3に示されるように、まず、ステップ301において、不図示のレチクルローダを介して、レチクルステージRST上にレチクルRをロードする。このレチクルロードが終了すると、ステップ303→ステップ305において、主制御装置20(より正確には、CPU)では、レチクルアライメント及びベースライン計測を前述のレチクルアライメント及びベースライン計測処理のプログラムに従って以下のようにして実行する。
すなわち、主制御装置20では、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWST上の基準マーク板FMを投影光学系PLの直下の所定位置(以下、便宜上「基準位置」と呼ぶ)に位置決めし、基準マーク板FM上の一対の第1基準マークと対応するレチクルR上の一対のレチクルアライメントマークとの相対位置を前述の一対のレチクルアライメント検出系22を用いて検出する。そして、主制御装置20では、レチクルアライメント検出系22の検出結果と、その検出時の干渉計16、18の計測値とをメモリに記憶する。次いで、主制御装置20では、ウエハステージWST及びレチクルステージRSTを、それぞれ所定距離だけY軸方向に沿って相互に逆向きに移動して、基準板FM上の別の一対の第1基準マークと対応するレチクルR上の別の一対のレチクルアライメントマークとの相対位置を前述の一対のレチクルアライメント検出系22を用いて検出する。そして、主制御装置20では、レチクルアライメント検出系22の検出結果と、その検出時の干渉計16、18の計測値とをメモリに記憶する。次いで、上記と同様にして、基準マーク板FM上の更に別の一対の第1基準マークと対応するレチクルアライメントマークとの相対位置関係を更に計測しても良い。
そして、主制御装置20では、このようにして得られた少なくとも2対の第1基準マークと対応するレチクルアライメントマークとの相対位置関係の情報と、それぞれの計測時の干渉計16、18の計測値とを用いて、干渉計16の測長軸で規定されるレチクルステージ座標系と干渉計18の測長軸で規定されるウエハステージ座標系(以下、「ステージ座標系」と略述する)との相対位置関係を求める。これにより、レチクルアライメントが終了する。
次いで、ステップ305において、ベースライン計測を行う。具体的には、ウエハステージWSTを前述の基準位置に戻し、その基準位置から所定量、例えばベースラインの設計値だけXY面内で移動して、アライメント検出系ASを用いて基準マーク板FM上の第2基準マークを検出する。主制御装置20では、このとき得られるアライメント検出系ASの検出中心と第2基準マークの相対位置関係の情報及び先にウエハステージWSTが基準位置に位置決めされた際に計測した一対の第1基準マークと対応する一対のレチクルアライメントマークと相対位置関係の情報と、それぞれの計測時のウエハ干渉計18の計測値とに基づいて、アライメント検出系ASのベースライン、すなわちレチクルパターンの投影中心とアライメント検出系ASの検出中心(指標中心)との距離(位置関係)を算出する。
このような一連の準備作業が終了すると、主制御装置20では、前述のレチクルアライメント及びベースライン計測処理のプログラムをメモリからアンロードするとともに、前述の特定プログラムを記憶装置47からメモリにロードする。以後、この特定プログラムに従って、ウエハロード、ウエハアライメント(ここではEGA方式のウエハアライメント)及びウエハW上の各ショット領域SAPに対する露光が行われる。
まず、ステップ307において、不図示のウエハローダを介して、ウエハWをウエハステージWST上のウエハホルダ25上にロードする。ここで、本実施形態では、ウエハWのロードに先立って、不図示のプリアライメント装置により、ウエハステージWSTの移動位置を規定するステージ座標系(XY座標系)と、ウエハW上のショット領域の配列により規定される座標系(図2のαβ座標系、以下、「ウエハ座標系」と略述する)とがある程度まで一致するように、ウエハステージWSTに対するウエハWの回転ずれと中心位置ずれが高精度に調整されるいわゆるプリアライメントが実施されており、ロード後にウエハWの回転ずれ及び中心位置ずれを調整するいわゆるサーチアライメントが不要となっているものとする。
次に、サブルーチン309において、ウエハアライメント処理を行う。このウエハアライメント処理では、ステージ座標系における、ウエハW上のショット領域の配列を推定し、その配列、すなわち全ショット領域の中心位置を算出する。なお、このウエハアライメント処理については、後で詳述する。
次いで、ステップ311では、ショット領域の配列番号を示すカウンタjに1をセットし、最初のショット領域を露光対象領域とする。
次に、ステップ313では、後述する図5のステップ526において算出された露光対象領域の配列座標(各ショット領域の中心位置)に基づいて、ウエハWの位置がウエハW上の露光対象領域を露光するための加速開始位置となるように、ステージ制御装置19、ウエハステージ駆動部24を介してウエハステージWSTを移動させるとともに、レチクルRの位置が加速開始位置となるようにステージ制御装置19、レチクルステージ駆動部(不図示)を介して、レチクルステージRSTを移動する。
ステップ315では、レチクルステージRSTとウエハステージWSTの相対走査を開始する。そして両ステージがそれぞれの目標走査速度に達し、等速同期状態に達すると、照明系10からの照明光ILによってレチクルRのパターン領域が照明され始め、走査露光が開始される。そして、レチクルRのパターン領域の異なる領域が照明光ILで逐次照明され、パターン領域全面に対する照明が完了することにより走査露光が終了する。これにより、レチクルRのパターンが投影光学系PLを介してウエハW上の露光対象領域に縮小転写される。
ステップ317では、カウンタ値jを参照し、全てのショット領域に露光が行われたか否かを判断する。ここでは、j=1、すなわち、最初のショット領域に対して露光が行なわれたのみであるので、ステップ317での判断は否定され、ステップ319に移行する。
ステップ319では、カウンタjの値をインクリメント(+1)して、次のショット領域を露光対象領域とし、ステップ313に戻る。
以下、ステップ317での判断が肯定されるまで、ステップ313→ステップ315→ステップ317→ステップ319の処理、判断が繰り返される。
ウエハW上の全てのショット領域へのパターンの転写が終了すると、ステップ317での判断が肯定され、ステップ321に移行する。
ステップ321では、不図示のウエハローダに対しウエハWのアンロードを指示する。これにより、ウエハWは、ウエハホルダ25上からアンロードされた後、不図示のウエハ搬送系により、露光装置100にインラインにて接続されている不図示のコータ・デベロッパに搬送される。
次のステップ323では、ロット内のすべてのウエハの露光が終了したか否か判断する。この判断が肯定されれば、露光処理を終了し、否定されればステップ307に戻る。ここでは、まだロット内の先頭(1枚目)のウエハWの露光が終了しただけなので、判断は否定され、ステップ307に戻る。
以降、図3のステップ323における判断が肯定されるまで、ステップ307(ウエハロード)→サブルーチン309(ウエハアライメント)→ステップ311〜ステップ319(露光)→ステップ321(ウエハアンロード)→ステップ323(ロット終了判断)のループ処理が、ロット内のウエハそれぞれを処理対象として順次実行される。ステップ323における判断が肯定されると、一連の露光処理を終了する。
すなわち、上記露光処理においては、ロット内のウエハに対し、ウエハステージWST上に順次ロードされたウエハを処理対象として、ウエハアライメント処理、露光処理が施される。
≪ウエハアライメント処理≫
次に、サブルーチン309のウエハアライメント処理について説明する。このウエハアライメント処理では、EGA方式を採用するが、ここでは、まず最初に、EGA方式について説明する。
図2に示されるウエハWに形成されたウエハマークMP,Kの実際の形成位置が、設計位置からずれる(すなわちショット領域SAPの形成位置が設計位置からずれる)のは、ウエハステージWSTの移動位置を規定するステージ座標系(X,Y)と、ウエハ座標系(α,β)との不整合が原因であり、かかる不整合が生じる主要因は、次の4つであると考えられる。
A.ウエハWの回転:これはステージ座標系(X,Y)に対するウエハ座標系(α,β)の残留回転誤差Θで表される。
B.ステージ座標系(X,Y)の直交度:これはX軸方向及びY軸方向のウエハステージWSTの送りが正確に直交していないことにより生じ、直交度誤差Wで表される。
C.ウエハ座標系(α,β)におけるα軸方向及びβ軸方向の線形伸縮(ウエハスケーリング):これはウエハWが加工プロセス等によって全体的に伸縮することである。この伸縮量はα軸方向及びβ軸方向についてそれぞれウエハスケーリングSX及びSYで表される。ただし、X軸方向のウエハスケーリングSXはウエハW上のα方向の2点間の距離の実測値と設計値との比、Y軸方向のウエハスケーリングSYはβ方向の2点間の実測値と設計値との比で表すものとする。
D.ウエハ座標系(α,β)のステージ座標系(X,Y)に対するオフセット:これはウエハWがウエハステージWSTに対して全体的に微小量だけずれることにより生じ、X軸方向及びY軸方向の並進成分(オフセット)OX,OYで表される。
上記のA.〜D.の誤差要因が加わった場合、ウエハ座標系(α,β)における設計上の位置(DX,DY)に転写されるはずのパターンは、実際には、次式によって求められるステージ座標系(X,Y)上の位置(EX,EY)に位置していると予想される。
一般に、直交度誤差W及び残留回転誤差Θは、微小量であるとみなし、上記式(1)の三角関数を1次近似で表した次式によって設計上の転写位置(DX,DY)と予想転写位置(EX,EY)とが関係付けられるようになる。
なお、X軸に対するウエハ座標系のα軸の回転成分をRxとし、Y軸に対するウエハ座標系のβ軸の回転成分をRyとする。そして、残留回転誤差Θを、そのままX軸に対する回転成分Rxに対応させ、直交度誤差Wを、Ry−Rxに対応させると、上記式(2)を、次式に変換することができる。
さらに、スケーリングSx、Syを1+Sx、1+Syと置き換え、Sx・Ry=Sy・Rx≒0のように近似すると、上記式(3)を、次式に変換することができる。
上記式(4)が、EGA方式における最も一般的な線形モデルのモデル式であり、このモデル式では、ウエハスケーリングSx,Sy、ウエハ回転Rx,Ry、オフセットOx,Oyが、モデル式の係数(いわゆる6つのEGAパラメータ)となる。
なお、実際の転写位置と設計位置とのずれの要因としては、上記のステージ座標系とウエハ座標系とのずれによる誤差要因以外にも様々な誤差要因があると考えられる。例えば、ショット領域SAP自体の誤差成分(例えば、投影光学系PLの投影倍率の誤差(これでショット領域の大きさが変わる)や、スキャン方向に対するレチクルステージRST上のパターン自体の回転誤差などを含む。以下「ショット内成分」と略述する)も含んでおり、その誤差成分の影響が無視できない場合もある。
上記ショット内成分は、ショット領域SAPの四隅に形成されたウエハマークMP,Kの位置により観測することができる。ショット領域SAP内の中心CPを原点とするショット内座標系を想定し、その座標系でのウエハマークMP,Kの設計上の位置を(mxP,K,myP,K)とし、上記ショット内成分の影響によるウエハマークMP,Kの予想転写位置を(mxP,K’,myP,K’)とすると、それらの関係は次式で示される。
ここで、sx、syは、ステージ座標系に対するショット内座標系のスケーリング成分(ショットスケーリング成分)を示し、rx、ryは、それぞれステージ座標系に対するショット内座標系の回転成分(ショット回転成分)を示す。
以上のことから、ステージ座標系におけるサンプルショットSAPの各ウエハマークMP,Kの予想位置(MXP,K’,MYP,K’)を、次式で表すことができる。
ここで、(DX
P,DY
P)は、ショット領域SA
Pの中心C
Pの設計座標である。
EGA方式では、ショット領域の設計上の位置(DXP,DYP)を、上記式(4)のモデル式の(DX,DY)に代入して、ショット領域の設計上の位置(EX,EY)を求め、その位置を、ステージ座標系におけるショット領域SAPの中心位置とみなすのであるが、そのためには、上記式(4)のモデル式における係数Sx、Sy、Rx、Ry、Ox、Oyの値を求めればよい。しかしながら、この係数Sx、Sy、Rx、Ry、Ox、Oyの値は、何点かのウエハマークMP,Kの実際の位置に基づいて算出されるようになるため、上記ショット内成分を考慮する必要がある。そこで、本実施形態では、これらの係数の値を求めるために、幾つかのショット領域SAi(i=1、2、…、n)に付設された何個(例えばh個)かのウエハマークMi,Kのステージ座標系における位置(MXi,K,MYi,K)を実測し、サンプルショットSAiの設計上の位置(DXi,DYi)と、h個の実測されたウエハマークのショット内座標系における設計上の位置(mxi,K,myi,K)とを用いて、上記式(6)に示されるショット成分をも考慮したモデル式に基づいて、統計的処理(例えば最小二乗法)を実行し、次式に示される評価関数Eの値が最小となるような、上記式(6)のモデル式における係数Sx、Sy、Rx、Ry、Ox、Oy、sx,sy、rx、ryの値を求める。なお、次式においては、計測される各ウエハマークMi,Kの実測位置をそれぞれ(MXg,MYg)(g=1、2、…h)とし、求められた係数Sx、Sy、Rx、Ry、Ox、Oy、sx,sy、rx、ryの値を上記式(6)に代入して求められた計測される各ウエハマークMi,Kの予想位置をそれぞれ(MXg’,MYg’)としている。
すなわち、この評価関数Eは、上記式(6)より求められる、計測される各ウエハマークM
i,Kの位置の予想位置(MX
g’,MY
g’)とその位置の実測値(MX
g,MY
g)との残差の二乗和を、ウエハマークM
i,Kのサンプル数hで割ったもの(すなわち残差の二乗和の平均)である。
なお、ここで、i≠P≠gであり、iは、順番(例えば計測経路順)に付与されたサンプルショットの番号であり、gは、実際に計測されるウエハマークの番号である。
ところで、EGA方式においては、ウエハマークMi,Kのサンプル数hは、多ければ多いほど、アライメント精度の観点からは望ましいが、逆に、ウエハマークMi,Kのサンプル数hが少なければ少ないほど、スループットの観点から望ましい。また、このウエハマークMi,Kのサンプル数hは、EGAのモデル式における、未知数(パラメータ)の数に制約を受ける。例えば、上記式(6)のモデル式の10個の係数(Sx、Sy、Rx、Ry、Ox、Oy、sx,sy、rx、ry)すべてを未知数(パラメータ)とする場合には、軸毎のパラメータ数がそれぞれ5個ずつとなるので、2次元位置検出用のウエハマークMi,Kのサンプル数hは、少なくとも6(=5+1)以上である必要がある(1次元位置検出用のウエハマークであれば、軸毎に6サンプル以上必要)が、上記式(6)のモデル式の係数のうち、例えばsx、sy、rx、ryを定数とすれば、そのモデル式の軸ごとのパラメータ数は3となり、2次元位置検出用のウエハマークMi,Kのサンプル数hは、4(=3+1)でもよい。すなわち、EGA方式においては、モデル式のパラメータ数が増えれば増えるほど、ウエハマークMi,Kのサンプル数hを増やさなければならないため、スループットの点で不利となる。そこで、本実施形態では、アライメント精度を低減させることなく、上記式(6)に示されるモデル式のパラメータをできるだけ少なくし(自由度を小さくし)、ウエハマークMi,Kのサンプル数hを可能な限り少なくするように、モデルのパラメータの自由度及びウエハマークMi,Kのサンプル数hの最適化を行う。なお、上述したウエハマークMi,Kのサンプル数hは、あくまで、計測されるマークのうち、例えば1直線上に配置された3つのマークが選ばれることがないように抽出された、パラメータの導出に有効な計測マークのサンプル数である。
なお、上記式(6)に示されるモデル式のパラメータの自由度及びサンプル数の最適化を実施するために、本実施形態においては、上記式(6)に示されるモデル式の係数に関し、経験的に得られている各係数の値の性質(属性)等から、各係数を次のように予め分類しておく。
本実施形態では、上記式(6)のモデル式の係数を以下のように分類する。
a.ウエハ毎に推定し、今回のサンプルショット(のウエハマーク)の計測値に基づいて必ず変更する、すなわちパラメータとする係数
b.ウエハ毎に推定し、今回のサンプルショット(のウエハマーク)の計測値に基づいて推定されるパラメータとするか、事前知識より得られる値(定数)とするかを判断する係数
c.ロット毎に推定し、今回のサンプルショット(のウエハマーク)の計測値に基づいて必ずパラメータとして変更するが、ロット内では、事前知識より得られる値(定数)を用いる係数
d.ロット毎に推定し、今回のサンプルショット(のウエハマーク)の計測値に基づいて推定されるパラメータとするか、事前知識より得られる値(定数)とするかを判断するが、ロット内では、事前知識より得られる値(定数)を用いる係数
e.原則として値を定数として固定し、必要に応じてパラメータとして推定し、値を変更する係数
ここで、事前知識とは、上記式(6)のモデル式の各係数の値に関する知識のことであり、例えば、シミュレーション、あるいは、過去に実際に求められたモデル式の係数の値のことである。ここでは、事前知識より得られる値は、過去に求められたモデル式の係数の値から予想される係数の値ということにする。なお、この事前知識における各係数のデフォルト値は、例えば、記憶装置47に記憶されているとしても良い。このデフォルト値としては、例えば、前回のロットにおける事前知識の値が用いられても良いし、設計値が用いられても良い(0でも良い)。
上記式(6)のモデル式の各係数の値の変動については、それぞれある程度異なった傾向が見られるので、その傾向に基づいて各係数を分類することができる。以下にその分類の一例を示す。例えば、ウエハのオフセット成分Ox,Oyや、回転成分Rx,Ryは、ウエハステージWSTにウエハがロードされる前に実施されるプリアライメントの結果のばらつきによりばらついたものとなるので、ウエハ毎に逐一推定するのが妥当であり、a.の係数として分類されるのが望ましい。また、ウエハスケーリングSx、Syは、ウエハよりも、露光装置の特性やプロセスに対する依存度が大きいため、同じプロセスを経て同じ露光装置で露光されてきた同一ロット内のウエハ間の変動量があまり大きくはないが、同一ロット内のウエハ間で値が多少変動することも考えられるので、b.の係数として分類するのが妥当である。また、ショット内成分の係数(sx、sy、rx、ry)の値については、基本的には変動しないものとみなした場合には、e.の係数に分類するのが望ましい。
なお、上記EGAのモデル式(式(6))の各係数の分類は、この分類例に限定されるものではなく、様々な分類パターンを採用することができる。例えば、ショット内成分の係数(sx、sy、rx、ry)をd.の係数として分類することもできる。しかし、ここでは、上記例の分類がなされたものとして話を進める。
なお、このようなモデルの係数の分類の指定は、すでに、オペレータによって、不図示の入力装置を介して行われており、その指定内容は、記憶装置47に格納されているものとする。
以下、ウエハアライメント処理を、図4、図5に示されるサブルーチン309のフローチャートに沿って説明する。なお、上述したように、このサブルーチン309は、処理対象のウエハが切り替わる毎に、そのウエハに対して1回実行されるようになる。したがって、以下の説明では、ロットの1枚目のウエハを処理対象としたときの処理の流れについてまず説明し、続いて2枚目、3枚目、…のウエハを順次処理対象としたときの処理の流れについて順番に説明していくこととする。
まず、ロットの1枚目のウエハを処理対象としたときの処理の流れの一例について説明する。図4のステップ402において、今回の処理対象であり、ウエハステージWST上にロードされたウエハWが、そのロットの先頭m(例えば5とする)枚目以内のウエハWであるか否かを判断する。その判断が肯定されれば、ステップ404に進み、否定されればステップ418に進む。ここでは、ウエハステージWST上にロードされたウエハWが、ロット先頭(1枚目)のウエハWであるので、判断が肯定されステップ404に進む。
ステップ404では、そのウエハWのサンプル情報を参照する。EGA処理では、前述のように、ウエハW上のショット領域SAPの中から、幾つかのショット領域をサンプルショットSAiとして選択し、そのサンプルショットSAiに付設されたウエハマークMi,Kの中から、計h個のウエハマークの位置(MXg、MYg)(g=1、2、…、h)を計測する。サンプル情報とは、この計測されるウエハマークの数及び配置に関する情報のことである。本実施形態では、モデル式のパラメータの最適化に伴い、サンプル数の最適化も行うが、この段階では、ロットの先頭のウエハWが処理対象であり、まだモデル式のパラメータの最適化が行われていないため、この時点での計測対象のウエハマークMi,kの数及び配置としては、上記式(6)のモデル式の各係数をすべてパラメータとした場合に、そのパラメータを求めるために必要とされる有効サンプル数を満たすような数および配置とする必要がある。具体的には、式(6)のモデル式の最大パラメータ自由度が軸ごとに5であるため、ここでのサンプル数は6以上である必要である。ここでは、このような有効サンプル数を満たすウエハマークMi,kの数及び配置が、記憶装置47に記憶されているものとし、ここでは、そのデフォルト設定されたサンプル情報を記憶装置47から取得し、メモリに保持してその情報を参照するものとする。なお、ここでは、デフォルトのサンプル情報として、サンプル数h=30が指定されているものとする。
次のステップ406では、そのサンプル情報にサンプルショットとして指定されているショット領域SAiに付設されたウエハマークMi,Kのうちのh個のウエハマークが、そのサンプル情報に指定されている計測順に基づいて、アライメント検出系ASの検出視野内に順次移動するようにウエハステージWSTをXY平面内で移動させつつ、そのウエハマークMi,Kをアライメント検出系ASに撮像させると同時に、そのときのウエハステージWSTの位置をウエハ干渉計18の計測値から求める。アライメント検出系ASからは、その撮像視野内のウエハマークMi,Kの位置情報が送られるので、そのウエハマークMi,Kの位置情報と、ウエハ干渉計18の計測値と、ベースラインとから、ステージ座標系におけるそのウエハマークMi,Kの位置の実測値を求めることができる。求められたウエハマークMi,Kの実測値は、メモリに保持される。このようにして、サンプル情報に指定されたサンプルショットSAiに付設されたh個のウエハマークMi,Kの位置の実測値(MXg,MYg)が取得される。
次のステップ408では、e.に分類された係数を事前知識により定められる定数とした上で、取得されたウエハマークの位置の実測値に基づいて、a.〜d.に分類された係数の値を算出する。まず、記憶装置47に記憶されている事前知識を参照し、e.に分類された係数の事前知識を得る。ここでは、まだロット内1枚目のウエハを処理対象としているため、e.に分類された係数の事前知識の値は0になっているものとする。すなわち、ここでは、上記式(6)のモデル式の係数に関し、sx=sy=rx=ry=0と設定したうえで、メモリに記憶された各ウエハマークMi,Kの位置の実測値(MXg、MYg)に基づいて、上記式(7)に示される評価関数を最小にする、すなわち次式を満たすパラメータSx、Sy、Rx、Ry、Ox、Oyの値を最小二乗法により求める。
次に、ステップ410では、求められたEGAパラメータを上記式(6)の係数として設定し、計測されたウエハマークM
i,Kのショット内座標系における設計位置(mx
i,K,my
i,K)を(mx
P,K,my
P,K)に代入し、サンプルショットSA
iの中心C
iの設計位置(DX
i,DY
i)を、(DX
P,DY
P)に代入して、予想されるウエハマークM
i,kの位置(MX
i,K’,MY
i,K’)を求める。そして、求められた位置(MX
i,K’,MY
i,K’)を(MX
g’,MY
g’)とし、ウエハマークの位置の実測値(MX
i,K,MY
i,K)を(MX
g,MY
g)として上記式(7)に代入して、その値(残差)を求める。
さらに、ステップ412では、上記モデル(a.〜d.に分類される係数をパラメータとし、e.に分類される係数を事前知識に基づく値(定数)とした統計モデルM(第1の回帰モデル)とする)のAIC(Akaike's Information Criterion)を算出する。
ここで、AICについて簡単に説明する。計測によってモデルMが得られたとき、これが真のモデルと一致するか否かの尺度となる、そのモデルに対する誤差を正規分布としたときの対数尤度を表す量として、カルバック・ライブラー情報量(KLI)がある。KLIのデータ数(ここでいうサンプルショットの数h)の、モデルを表現するパラメータ数の増加に伴う偏りを修正した推定値(の2倍)がAICである。統計モデルMのAICは、次式で表される。
ここで、logLは、統計モデルMに関する最大対数尤度であり、dは、統計モデルMのパラメータ(未知数)の数であり、Lは尤度であり、例えば、上記式(7)に示される評価関数Eにより、L=(1/E)が用いられる。すなわち、そのモデルでの評価関数(残差)の値が、小さくなればなるほど、その尤度Lは大きくなるので、そのモデルの妥当性が高くなり、結果的にAICの値は小さくなる。このAICの値が小さいければ小さいほど、そのモデルが尤もらしいということになる。また、2dの項は、パラメータの増加に対するペナルティの項であり、パラメータの数が増えれば増えるほどその項の値が大きくなる。すなわち、パラメータの自由度の増加に対し、一定以上の尤度の向上がないと、パラメータの自由度が大きいモデルが選択されなくなる。なお、AICは、赤池情報量規準の略称であるが、上記式(9)では、これを、該情報量規準の関数名としても用いている。
すなわち、AICをモデルの確からしさの指標とすれば、パラメータの自由度が大きいモデルが選択される傾向が抑制され、学習誤差である残差Eを小さくするモデルを選択するのではなく、汎化誤差を小さくするモデルを選択することができるようになるのである。
したがって、ステップ412では、上記式(7)に、今回算出された評価関数(残差)Eに応じたlogLの値と、未知パラメータ数dの値とを代入して、AIC(M)の値を算出する。なお、上記係数の分類例では、Sx、Sy、Rx、Ry、Ox、Oyをパラメータとし、sx、sy、rx、ryを事前知識に基づく値としているので、モデルMにおけるパラメータ数dは6となる。
次のステップ414では、上記式(6)のモデル式に基づくEGAの統計モデルを、a.c.に分類される係数をパラメータとし、b.、d.、e.に分類される係数を事前知識に基づく値(定数)とするモデルM’(第2の回帰モデル)としたときの評価関数(残差)Eの値を算出する。具体的には、上記式(6)の係数のうち、Sx、Sy、sx、sy、rx、ryの事前知識を記憶装置47から取得し、取得された事前知識によって定められる値を、式(6)に設定する。そして、上記ステップ406で計測されたh個のウエハマークの位置の実測値に基づいて、a.、c.に分類された係数の値を算出する。すなわち、各ウエハマークMi,Kの位置の実測値を上記式(6)に代入し、上記式(7)に示される評価関数Eを最小にするすなわち次式を満たすa.、c.に分類された係数(パラメータ)であるRx、Ry、Ox、Oyの値を最小二乗法により求める。
そして、上記ステップ406において計測されたウエハマークMi,Kのショット内座標系における設計位置(mxi,K,myi,K)を(mxP,K,myP,K)に代入し、サンプルショットSAiの中心Ciの設計位置(DXi,DYi)を、(DXP,DYP)に代入して、予想されるウエハマークMi,Kの位置(MXi,K’,MYi,K’)を求め、求められた位置(MXi,K’,MYi,K’)を(MXg’,MYg’)とし、ウエハマークの位置の実測値(MXi,K,MYi,K)を(MXg,MYg)として上記式(7)に代入して、その値(残差)を求める。
次のステップ416では、上記統計モデルM’のAIC(M’)の値を算出する。なお、上記分類例では、Rx、Ry、Ox、Oyをパラメータとし、Sx、Sy、sx、sy、rx、ryを事前知識に基づく値(定数)とするため、モデルM’のパラメータ数dは、4となる。
次いで、図5のステップ502において、ステップ412で求められたモデルMのAIC(M)の値と、ステップ416で求められたモデルM’のAIC(M’)との値を比較し、AIC(M’)<AIC(M)であるか否かを判断する。この判断が肯定されればステップ504に進み、判断が否定されればステップ510に進む。なお、ここでは、ロットの先頭(1枚目)のウエハWを処理対象としており、事前知識により値が定められた係数が、実際のウエハWに関する式(6)に示すモデル式の係数としてフィットする可能性が必ずしも大きいとはいえない。そこで、ここでは、AIC(M’)の値が、AIC(M)の値よりも大きく、判断が否定され、ステップ510に進むものとして話を進める。
ステップ510では、統計モデルMでの評価関数(残差)Eの値と所定値とを比較して、Eが所定値より小さいか否かを判断する。この判断が肯定されればステップ512に進み、この判断が否定されればステップ516に進む。ここでは、e.に分類される係数の事前知識の値(デフォルト値)が、処理対象となっているロットの先頭のウエハWにフィットしていないため、モデルMの評価関数(残差)Eの値が、所定値以上となって、判断が否定され、ステップ516に進むものとして話を進める。
ステップ516以降では、これまで、式(6)に示されるモデル式の係数すべてをパラメータとしたときの処理を行う。まず、ステップ516では、メモリに記憶されているサンプル情報を参照して、サンプルショットを追加計測する必要があるか否かを判断する。この判断が肯定されればステップ518に進み、否定されればステップ522に進む。ここでは、前述のように、ステップ404において取得され、メモリに記憶されたサンプル情報におけるデフォルトの有効サンプル数(h=30)が、a.〜e.に分類される係数をすべてのパラメータとしたときのそのパラメータの自由度(軸毎に5)よりも十分大きくなっているので、サンプルショットの追加計測を行う必要が特にないので判断は否定され、ステップ522に進む。
ステップ522では、a.〜e.に分類される係数をすべてパラメータとした上で、ステップ406で計測されたh個のウエハマークの位置の実測値に基づいて、a.〜e.に分類される係数の値を算出する。すなわち、各ウエハマークMi,Kの位置の実測値を上記式(6)に代入し、上記式(7)に示される評価関数Eを最小にするすなわち次式を満たすパラメータSx、Sy、Rx、Ry、Ox、Oy、sx、sy、rx、ryの値を最小二乗法により求める。
求められたa.〜e.に分類される係数(パラメータ)の値は、後述する露光処理に用いるために、メモリに保持される。そして、ステップ524において、b.〜e.に分類されるパラメータの値を、事前知識として、記憶装置47に格納する。
次に、ステップ526では、上記ステップ522で求められメモリ上に保持された係数の値を、上記式(4)の各係数の値として設定し、全ショット領域SAPの設計位置(DXP,DYP)を上記式(4)の(DX、DY)にそれぞれ代入して全ショット領域SAPの中心CPの位置(基準位置)(EXP,EXP)を算出し、その算出結果を記憶装置47に記憶する。ステップ526終了後、サブルーチン309を終了する。
次に、ロット内の2枚目のウエハWを処理対象としたときのサブルーチン309の処理の流れの一例について説明する。まず、図4のステップ402では、処理対象のウエハWがロットのm(=5)枚目以内であるか否かが判断される。ここではまだ2枚目なので、判断は肯定され、ステップ404に進む。
ステップ406では、メモリに記憶されているサンプル情報を参照し、そのサンプル情報に含まれるサンプルショットの数及び配置を把握する。メモリに記憶されているサンプル情報(サンプル数及びサンプルショットのウエハマークの配置、有効サンプル数)は、前回のサブルーチン309では、記憶装置47に記憶されたデフォルトのサンプル情報から更新されていないので、ここでもデフォルトのサンプル情報がそのまま参照される。
次に、ステップ408において、取得されたウエハマークMi,Kの位置の実測値に基づいて、前回のサブルーチン309と同様に、a.〜d.に分類される係数をパラメータとし、e.に分類された係数を事前知識により定められる定数とするモデルMにおける、a.〜d.に分類された係数(パラメータ)の値を、上記式(8)を条件式とする最小二乗法により算出し、ステップ410において、そのときの残差Eを算出し、ステップ412においてAIC(M)を算出する。この時点では、e.に分類された係数の事前知識として、前回のサブルーチン309のステップ524(図5参照)において記憶された係数の値、すなわちロットの先頭のウエハWでのEGA処理において求められた係数の値が、記憶装置47に記憶されており、ここでは、その事前知識としてのe.の係数の値をそのまま今回のe.の係数として用いることができる。
次のステップ414では、EGAの統計モデルを、a.、c.に分類される係数をパラメータとし、b.、d.、e.に分類される係数を事前知識により定められる値(定数)としたときの式(6)のモデル式のモデルM’として、上記式(10)を条件として、最小二乗法を行い、a.、c.に分類される係数を算出して、評価関数(残差)Eの値を算出し、ステップ416では、そのモデルM’でのAIC(M’)の値を算出する。この時点では、b.、d.、e.の係数の値の事前知識として、前回のサブルーチン309のステップ524(図5参照)において記憶装置47に記憶されたb.、d.、e.の係数の値、すなわちロットの先頭のウエハWでのEGA処理において求められたb.、d.、e.の係数の値が記憶装置47に記憶されており、ここでは、その事前知識としてのb.、d.、e.の係数の値をそのまま今回のb.、d.、e.の係数として用いることができる。
次に、図5のステップ502において、今回のステップ412で求められたモデルMのAIC(M)の値と、今回のステップ416で求められたモデルM’のAIC(M’)との値を比較し、AIC(M’)<AIC(M)であるか否かを判断する。ここでは、依然、AIC(M’)≧AIC(M)となって、判断が否定され、ステップ510に進むものとして話を進める。
ステップ510では、モデルMでの評価関数(残差)Eが、所定値より小さいか否かが判断される。ここでは、前回のサブルーチン309におけるロットの先頭のウエハWの処理において、そのロット内においては、値の変動がほとんどないと予想されているe.に分類される各係数が求められており、その係数がモデルMに用いられているので、残差Eの値が所定値より小さくなっていて、判断が肯定され、ステップ512に進むものとして話を進める。
次のステップ512では、モデルMを選択し、そのモデルMの係数の値を、今回のウエハWの露光処理のためにメモリに保持しておく。
次のステップ506では、今回の処理対象のウエハWが、ロット先頭m(=5)枚目以内であるか否かが判断される。ここでは、今回のウエハWがロット内2枚目なので、判断は肯定され、ステップ524→ステップ526に進む。ステップ524では、モデルMのb.〜e.の係数の値を記憶装置47に記憶する。そして、ステップ526では、全ショット領域SAPの中心位置の算出、記憶装置47への記憶が行われる。ステップ526終了後、サブルーチン309を終了する。
次に、ロット内の3枚目のウエハを処理対象としたときのサブルーチン309の処理の流れの一例について説明する。まず、図4のステップ402では、処理対象のウエハがロットのm(=5)枚目以内であるか否かが判断される。ここではまだ3枚目なので、判断は肯定され、ステップ404に進む。
ステップ404では、メモリ上のサンプル情報を参照する。このサンプル情報(サンプル数及びサンプルショットの配置)は、前回のサブルーチン309でも更新されていないので、ここでもデフォルトのサンプル情報がそのまま参照される。
次に、ステップ408において、e.に分類される係数を事前知識により定められる定数とするモデルを用いて、取得されたウエハマークの位置の実測値に基づいて、a.〜d.に分類される係数(パラメータ)の値を算出し、ステップ410において、そのときの残差Eを算出し、ステップ412においてAIC(M)を算出する。ここでも、事前知識として記憶装置47に記憶される、e.に分類される係数の値に基づいて、例えば前回と前々回の値の平均値をそのまま今回にe.に分類される係数の値として用いることができる。
次に、ステップ414では、EGAの統計モデルを、a.、c.に分類される係数をパラメータとし、b.、d.、e.に分類される係数を事前知識に基づく値としたときの式(6)のモデル式によって表現されるモデルM’として、最小二乗法によりa.、c.に分類される係数の値を算出して評価関数(残差)Eの値を算出し、ステップ416では、AIC(M’)の値を算出する。この時点では、b.、d.、e.に分類される係数の事前知識として、前回、前々回のサブルーチン309のステップ524(図5参照)において更新されたb.、d.、e.の係数の値が記憶装置47に記憶されており、ここでは、この事前知識のb.、d.、e.の係数の平均値を、今回のb.、d.、e.の係数の値として用いることができる。
次に、図5のステップ502において、今回のステップ412で求められたモデルMのAIC(M)の値と、今回のステップ416で求められたモデルM’のAIC(M’)との値を比較し、AIC(M’)<AIC(M)であるか否かを判断する。ここでは、b.、d.に分類される係数の事前知識に基づく値が、真のモデルの係数に収束してきて、判断が肯定され、ステップ504に進むものとして話を進める。
次のステップ504では、モデルM’の係数の値を、今回のウエハの露光処理のためにメモリに保持しておく。
次に、ステップ506では、今回の処理対象のウエハWが、ロットのm(=5)枚目以内であるか否かが判断される。ここでは、まだロットの3枚目なので、判断は肯定され、ステップ524に進む。ステップ524では、モデルM’のb.〜e.の係数の値を事前知識として記憶装置47に記憶する。そして、ステップ526では、全ショット領域SAPの中心位置の算出、記憶装置47への記憶が行われ、その後サブルーチン309の処理を終了する。
以降、サブルーチン309が実行される際には、処理対象のウエハがロットのm+1(=6)枚目のウエハとなるまで、すなわち、ステップ402において判断が否定されるまで、ステップ404〜ステップ416の処理が実行され、図5のステップ502が判断される。そして、処理対象のウエハWのショット領域の配列が、過去の処理対象のウエハWのショット領域の配列と同じ傾向を示している場合には、AIC(M’)<AIC(M)となり、判断が肯定され、ステップ504においてモデルM’の係数がメモリ上に保持され、ステップ506(条件判断は当然肯定)が実行され、その後ステップ524において、a.、c.の係数(パラメータ)の値と、b.、d.、e.の事前知識の基づく係数の値が、事前知識として記憶装置47に記憶され、さらにステップ526が実行されて、サブルーチン309を終了するが、処理対象のウエハのショット領域の配列が、過去の処理対象のウエハのショット領域の配列と異なる場合には、AIC(M’)≧AIC(M)となって判断が否定され、ステップ510に進む。そして、ステップ510においてモデルMの残差Eが所定値より小さい場合には、モデルMが最適モデルとして選択され、ステップ512において、モデルMの係数の値が保持され、ステップ524において事前知識として記憶装置47に格納されるが、モデルMの残差Eが所定値より大きい場合には、ステップ516(判断は否定)→ ステップ522が処理され、a.〜e.に分類される係数の値がパラメータとして求め直されてメモリに保持され、ステップ524において、その係数の値が事前知識として記憶装置47に記憶されるようになる。
このように、本実施形態では、ロットの先頭のm(=5)枚目までは、モデルの最適化に重点を置いた処理とし、モデルの係数の事前知識の値が、そのロットでの真のモデルの係数の値近傍に収束するまで、有効サンプル数をデフォルトの数(例えばh=30)に維持したままでEGAを行う。その処理中に、ほとんど値が変動しないe.に分類されたショット内成分の係数の値が、1枚目のウエハの処理の時に求められ、1枚目、2枚目、…とウエハが処理されていくうちに、b.〜d.に分類される係数の値の事前知識が、真のモデルの係数の値に収束するようになり、パラメータの自由度の小さいモデルM’が選択されるようになる。そして、4枚目以降のウエハの配列状態が、1〜3枚目のウエハの配列状態とほぼ同じであれば、そのウエハを処理する際のサブルーチン309では、常に、モデルM’が選択されるようになるが、4枚目以降のウエハの配列が、1〜3枚目のウエハの配列と若干異なっている場合には、モデルMが選択され、パラメータとなったモデルMのb.、d.、e.の係数が新たな事前知識として記憶装置47に累積記憶されていく。また、4枚目以降のウエハの配列が、1〜3枚目のウエハの配列と著しく異なっている場合には、b.〜e.の係数が求め直され、新たな事前知識として記憶装置47に累積記憶されていく。
そして、処理対象のウエハがロット内6枚目となると、サブルーチン309においては、ステップ402における判断が否定され、ステップ418に進む。ステップ418では、そのウエハWのサンプル情報を参照する。まだメモリに記憶されているサンプル情報は、デフォルトのままとなっているので、デフォルトのサンプル情報が取得される。
次のステップ420では、ステップ406と同様に、そのサンプル情報にサンプルショットとして指定されているショット領域SAiに付設されたウエハマークMi,Kのうち、計測対象となっているh個のウエハマークの位置が順次計測される。
次のステップ422では、モデルMを、a.、b.に分類される係数をパラメータとし、c.、d.、e.に分類される係数を事前知識により定められる定数としたモデルとし、取得されたウエハマークの位置の実測値に基づいて、最小二乗法を用いて、a.、b.に分類される係数の値を算出し、ステップ424では、求められた係数の値を改めて上記式(6)に代入し、ウエハマークの予想位置を求め、求められた予想位置と、ウエハマークの位置の実測値を上記式(7)の評価関数Eに代入して、その値(残差)を求める。さらに、ステップ426では、上記モデル(a.、b.に分類される係数をパラメータとし、c.、d.、e.に分類される係数を事前知識に基づく値とした統計モデルMとする)のAIC(M)を算出する。
次のステップ428では、EGAの統計モデルを、上記式(6)のモデル式のa.の係数をパラメータとし、b.〜e.の係数の値を事前知識に基づく値としたときのモデルM’でのパラメータの値を最小二乗法により求め、モデルM’での評価関数(残差)Eの値を算出する。
次に、ステップ430では、上記統計モデルM’のAIC(M’)の値を算出する。
以上述べたように、上記分類のように、ロット毎に推定、変更するパラメータ、すなわちc.d.に分類される係数がある場合には、モデルM、M’のパラメータの自由度は、ロット先頭m枚目までとそれ以降とでは、異なったものとなり、m+1枚目以降の方が、各モデルの自由度が小さくなるように設定されている。
次いで、図5のステップ502では、ステップ426で求められたモデルMのAIC(M)の値と、ステップ430で求められたモデルM’のAIC(M’)との値を比較し、AIC(M’)<AIC(M)であるか否かを判断する。ここで、処理対象のウエハの配列が、過去に処理されたウエハの配列とほぼ同一であれば、AIC(M’)<AIC(M)となって判断が肯定され、ステップ504に進み、モデルM’が選択され、その係数がメモリ上に保持される。
次のステップ506では、6枚目のウエハなので、判断が否定され、ステップ508に進む。ステップ508では、メモリ上のサンプル情報が更新される。ここまでくると、b.〜e.に分類される係数の事前知識の信頼性が増し、モデルM’が選択される状態に達したと判断することができるため、有効サンプル数(h=30)を、デフォルトの大きいサンプル数から、例えばa.に分類される係数だけをパラメータしたときに高精度なアライメント精度を十分確保できるような数まで小さくすることができる。例えば、この場合、a.に分類される係数が、ウエハのオフセット成分Ox、Oy、回転成分Rx、Ryであるとすると、軸毎のパラメータの自由度は、2となるので、有効サンプル数を軸毎に3(2次元マークであれば3つ、1次元マークであれば6つ)と設定することができる。ただし、ここでは、7枚目以降のウエハの配列が、過去のウエハの配列と異なっている場合も考えられ、本実施形態では、そのような場合に対処するため、モデルM’のAIC(M’)とともに、モデルMのAIC(M)も算出している。したがって、ここでは、多少の余裕を考慮して、有効サンプル数を、モデルMの軸毎のパラメータ数3に1を足し、軸毎に4以上(例えば16)とする。なお、ここでは、1〜30までの各有効サンプル数での計測すべきウエハマークの数及び配置が予め最尤推定され、記憶装置47に記憶されているものとし、有効サンプル数が更新された場合には、その自由度での情報(ウエハマークの数及び配置)が記憶装置47からメモリ上に読み出され、メモリ上のサンプル情報がその情報に更新されるものとする。
このように、(m+1)枚目以降のウエハWでは、処理対象のウエハWに関し、ステップ418〜ステップ430の処理が実行され、図5のステップ502が判断される。そして、処理対象のウエハのショット領域の配列が、過去の処理対象のウエハWのショット領域の配列と同じ傾向を示している場合には、AIC(M’)<AIC(M)となり判断が肯定され、ステップ504(モデルM’の選択)→ステップ506(条件判断は否定)→ステップ508が実行され、さらにサンプル情報を、モデルMのパラメータの自由度+1よりも小さくならないことを限度として有効サンプル数が小さくなるようにする。そして、ステップ524において、事前知識に基づくb.〜d.の係数の値が、事前知識として記憶装置47に記憶される。
一方、処理対象のウエハWのショット領域の配列が、過去の処理対象のウエハWのショット領域の配列と異なる場合には、AIC(M’)≧AIC(M)となり判断が否定され、ステップ510に進む。そして、ステップ510では、モデルMの残差が所定値より小さい場合には、モデルMが最適モデルとして選択され、ステップ508では、有効サンプル数を若干大きくするようにサンプル情報が更新され、ステップ524において、そのモデルMにおけるa.b.に分類される係数(パラメータ)の値が、新たな事前知識として他の係数(定数)の値とともに、記憶装置47に格納される(e.に分類される係数の値はもともと事前知識に基づく値)。一方、ステップ510において、モデルMの残差が所定値より大きい場合には、ステップ516〜ステップ524が処理され、a.〜e.に分類される係数の値がパラメータとして新たに求め直され、今回のウエハのモデルの係数としてメモリに保持され、b.〜e.に分類される係数の値が新たな事前知識として記憶装置47に記憶されるようになる。
なお、ステップ516〜ステップ522を処理する場合には、メモリ上のサンプル情報における有効サンプル数が、a.、b.の係数だけをパラメータとしたときのモデルのパラメータの自由度に若干の余裕を持たせた程度の小さいサンプル数となっているので、その有効サンプル数を、a.〜e.の係数をパラメータとしたときのモデルのパラメータの自由度に応じた大きい数に更新する必要がある。そこで、ステップ516における判断が肯定され、ステップ518において、a.〜e.の係数をパラメータとしたときのモデルのパラメータの自由度(軸毎に6以上)に応じた有効サンプル数(例えばデフォルトと同じ30)となるようにメモリ上のサンプル情報を更新する。
次のステップ520において、更新されたサンプル情報に基づいて、追加サンプルショットを計測する。そして、ステップ522において、今回計測されたウエハマークの位置の実測値に基づいてa.〜e.に分類された係数(パラメータ)の値を求め、ステップ524において、今回求められたa.〜e.に分類された係数が事前知識に反映される。さらに、ステップ526において、全ショット領域の基準位置の算出、記憶装置47への記憶が行われ、その後サブルーチン309の処理を終了する。
このように、図3のステップ323における判断が肯定されるまで、上述したようなサブルーチン309を含む、ステップ307〜ステップ323のループ処理が、ロット内のウエハそれぞれを処理対象として順次実行される。この間、サブルーチン309において、処理対象となるウエハの配列状態に応じて、適宜、モデルのパラメータ自由度及び有効サンプル数が、その都度、動的に最適化される。
なお、本実施形態において説明した1枚目、2枚目、3枚目のウエハを処理対象とするサブルーチン309の処理の流れは、あくまでも一例である。すなわち、そのウエハの配列が事前知識に良く従っているときには、1枚目のウエハを処理対象としたときでも、ステップ502、ステップ510における判断が肯定され、モデルM、M’が選択される場合もあるし、2枚目のウエハを処理対象としたときでも、ステップ502の判断が肯定されたり、ステップ510の判断が否定されたりする場合もあり、3枚目のウエハを処理対象としたときでも、ステップ502の判断が否定されたり、ステップ510の判断が否定されたりする場合もある。いずれの場合でも、本実施形態においては、ウエハを順次処理していくうちに事前知識が累積され、モデルのパラメータの自由度の最適化が実現されるようになる。
また、本実施形態では、m=5としたが、これは任意の値で良い。このmは、そのロットのモデルM’の係数の事前知識が十分得られるように設定されているのが望ましい。例えば、1回でそれらの事前知識が十分取得できるようになっているとすれば、m=1であっても良い。
また、本実施形態では、ロット内m枚目までは、有効サンプル数の最適化を行わないようにしたが、ステップ506の判断を省略して、ロット内m枚目以内でも、有効サンプル数を更新できるようにしても良い。
また、本実施形態では、サブルーチン309において、第1の回帰モデルとしてのモデルMの残差が所定値より小さいか否かを判断することにより、第1の回帰モデル(モデルM)と、上記式(6)のすべての係数をパラメータとする第3の回帰モデルのいずれを選択するかを決定したが、この判断を行わずに、第3の回帰モデルのAICも併せて算出し、モデルMのAICと比較し、その値が小さい方を選ぶようにしても良い。しかしながら、この場合には、ウエハマークの有効サンプル数を、パラメータの自由度が大きい第3の回帰モデルに応じた自由度とする必要があるため、サンプル数が大きくなる傾向があるので、やはり上記サブルーチン309のようにするのがより望ましい。
また、本実施形態では、事前知識として得られたその係数の過去の値の平均値を、その係数の代表値として設定したが、直前(又は直近の数枚)のウエハを処理したときの係数の値を代表値としてそのまま用いるようにしても良い。複数枚でのウエハを処理したときの係数の値を、今回の係数の値に反映する場合には、その係数の値をそれぞれ重み付けするようにしても良い。例えば、最近の事前知識の値に対する重みを最も重くしたり、残差が小さかったウエハでの事前知識の値に対する重みを最も重くしたりするようにしても良い。
これまでの説明から明らかなように、本実施形態では、主制御装置20の記憶装置47及びメモリにより、記憶装置が構成されている。また、本実施形態では、主制御装置20が、本発明の位置検出装置の選択装置、算出装置、更新装置、最適化装置、決定装置に対応している。すなわち、主制御装置20のCPUが行う、ステップ402〜ステップ430(図4)及びステップ502、ステップ504、ステップ510、ステップ512、ステップ522(図5)の処理によって選択装置の機能が実現され、ステップ526(図5)の処理によって算出装置の機能が実現され、ステップ506、ステップ508、ステップ516〜ステップ520、ステップ524(図5)の処理によって、更新装置の機能が実現されている。また、ステップ402〜ステップ430(図4)、ステップ502〜ステップ504、ステップ510、ステップ512、ステップ522、ステップ524(図5)の処理によって、最適化装置の機能が実現され、ステップ506、ステップ508、ステップ516、ステップ518、ステップ520(図5)の処理によって決定装置が実現されている。しかしながら、本発明がこれに限定されるものではないことは勿論である。
以上詳細に述べたように、本実施形態の位置検出方法によれば、パラメータの自由度が大きいモデルを選択する傾向が強くならないようにモデル推定の偏りが補正され、学習誤差に左右されず、汎化誤差を小さくできるモデルを最も尤もらしいモデルとして選択することができる規準であるAICを用い、パラメータの自由度がそれぞれ異なる幾つかの回帰モデル(モデルM、M’等)のAICに基づいて、ウエハW上の複数のショット領域SAPの配列に関する最も尤もらしい回帰モデルが選択される。これにより、真のモデルに最も近いモデルが選択されるようになるため、複数のショット領域SAPの中心位置の位置情報を精度良く算出することができる。
また、本実施形態によれば、複数のウエハWを順次検出対象とする際に、ウエハ毎にサブルーチン309のモデルのパラメータ及び有効サンプル数の最適化が繰り返し実行される。そして、サブルーチン309において、ウエハWのショット領域SAPの位置情報を順次検出する度に得られる複数のショット領域SAPに関する回帰モデル(上記式(6))の係数に関する事前知識と、ステージ座標系における、今回の位置情報の検出対象となるウエハWの複数のショット領域SAPのうちの幾つかのショット領域SAiに付設されたウエハマークMi,Kの位置情報の実測値(h個)とに基づいて、回帰モデルのパラメータの自由度に応じたAICに基づいて、回帰モデルのパラメータの自由度を最適化する。そして、最適化されたパラメータの自由度に基づいて、次回の位置情報の検出対象となるウエハWにおける各ショット領域SAPに付設されたウエハマークの実測値の有効サンプル数を決定する。このようにすれば、最適化されるパラメータの自由度に応じてウエハマークMi,Kの位置の実測値の有効サンプル数を増減することができるため、各ショット領域SAPの基準位置を短時間に、かつ精度良く検出することができる。
また、本実施形態の露光装置100によれば、元工程の複数のショット領域SAPの基準位置が高精度に検出されるため、短時間かつ高精度な重ね合わせ露光を実現することができる。
また、上記実施形態では、パラメータの自由度が異なるモデルの比較にAICを用いたが、他の規準、例えばベイジアン情報量規準(Bayesian Information Criterion:BIC)を用いるようにしても良い。上述した統計モデルMのBICは、次式で表される。
このように、BICは、ペナルティ項である第2項が、AICと異なる。すなわちAICは、第2項が2dであるのに対し、BICはd・lognとなっている。nは有効サンプル数である。したがって、BICは、AICよりもペナルティが大きくなるように設定されており、パラメータ数の多い統計モデルを選択する傾向が低減されるように設定されている。
なお、AIC、BICはともに、正則モデルにおいてサンプル数が十分大きいときに、母集団に対するモデルの汎化誤差、あるいは対数尤度に漸近するものとして導出されたものである。線形回帰モデルは、正則モデルであるため、これらの評価規範を用いることが妥当であるといえる。
ただし、上記実施形態においては、スループットとのかねあいから、回帰分析を行うためのサンプル数が小さいため、上記漸近論の適用が妥当であるとは必ずしもいえない。そこで、上記AIC及びBICを一般化したペナルティ付き対数尤度を次式のように定義し、これを最良とするモデルを選択するのがより好ましい。
ここで、PLはペナルティ付き対数尤度である。第1項の符号が、AIC及びBICと逆になっているのは、PLが、大きい方を良好であると評価する式であるためである。PLにおける第2項は、AICやBICと同じようにペナルティ項であり、β(model,n)=2とおけば、PLはAICとなり、β(model,n)=lognとおけば、BICとなる。βの値は、シミュレーション等によって決定することができるが、必要に応じて追加するパラメータの種類(すなわち、model)とサンプル数(すなわちn)に依存した関数とすることができる。例えばこのような関数の一例としては、パラメータの増大に対する残差の変化量の期待値を採用することができる。例えば、第1の回帰モデルと、第3の回帰モデルとを比較する場合には、e.に分類される係数を事前知識に基づく値としたときのモデルでの残差と、e.に分類される係数までもパラメータとしたときの残差との差分の期待値をとり、その値をβとするようにすればよい。このようにすれば、最もフィッティングするモデルでは、その残差がその前後のモデルのそれよりも極端に小さくなっており、上記差分の期待値が負側に極大になっていると考えられるため、PLの値が大きくなり、そのモデルが選択されやすくなるからである。なお、線形回帰モデルは正則であるが、これは、より大きい自由度のモデルを評価する際に、追加するパラメータの順番(優先順位)があらかじめ決定されている場合である。サンプル数が小さい問題はあるが、AIC,BICを使用することの妥当性を保証するために、上記実施形態では追加するパラメータの順番を予め決定している。追加するパラメータを自由に取り替えるような場合には、回帰モデルは非正則となり、AIC,BICの妥当性はなくなるが、ペナルティ付き対数尤度を用いる場合には、非正則性に見合ったβを使用すれば、パラメータの優先順位を特に指定する必要はない。
また、上記実施形態では、残差を上記式(7)で示される評価関数E、すなわち二乗誤差をサンプル数で除算したもので表現したが、本発明はこれに限定されない。例えば、残差が正規分布に従うとしたときの、サンプル数からパラメータの自由度を減算して得られる残差の分散の不偏推定値、あるいは二乗誤差そのものではない(二乗誤差自体は、サンプル数に応じて増減するので適当でない)、残差を表現するのに妥当なもののいずれでも良い。
また、上記実施形態では、1ロット内でのモデルパラメータの最適化について説明したが、同一プロセスを経た複数のロットにおいて、モデル式の係数の事前知識を共有することも可能である。例えば同一プロセスを経た複数のロットを処理する場合には、前回処理したロットに関するパラメータの事前知識を記憶装置47に記憶しておき、今回のロットのパラメータのデフォルトの事前知識として用いるようにすれば良い。
また、上記実施形態では、あるモデル(モデルM)を基準として、そのモデルよりパラメータの自由度が小さいモデルと、大きいモデルと3つのモデルの確からしさを比較することにより、最適なモデルを選択したが、本発明はこれに限定されるものではなく、4つ以上のモデルを比較するようにしても構わない。例えば、4つ以上のモデルについてそれぞれAICの値を算出し、値が最小のモデルを選択するようにすれば良い。
また、4つ以上のモデルが適用可能である場合には、上記実施形態と同様に、パラメータの自由度が最小のモデルをモデルM’とし、2番目に小さいモデルをモデルMとして、その他の複数のモデルを第3の回帰モデルとして、モデルの最適化を行っても良い。この場合には、第3の回帰モデルが複数存在するようになるため、ステップ510での判断が否定された場合には、その複数の第3の回帰モデルについてそれぞれAICの値を求め、その値が最小のモデルを選択すれば良い。
また、上記実施形態では、6点のEGAパラメータに加え、ショット成分をも考慮したモデル式についての最適化であったが、本発明はこのモデル式には限定されない。例えば、ショット領域の配列の1次成分だけでなく、2次以上の高次成分をも考慮したモデルを適用することもできる。このモデルでは、上記式(4)の(DX、DY)を次式の(DX’、DY’)に、置き換えたモデルとなる。
上記モデルでは、上記6つのEGAパラメータに加え、係数α
1、α
2、α
3、…、β
1、β
2、β
3…、が未知パラメータとなる。なお、このパラメータも、一般的にはロット内での変動が小さいと考えられるので、d.又はe.に分類されるのが望ましい。
したがって、高次成分も考慮する場合には、上記高次成分を含むモデルと、上記実施形態で使用されたショット内成分を考慮したモデルと、または高次成分と、ショット内成分との両方を含むモデルとをそれぞれ第3の回帰モデルとすることができる。
また、上記実施形態では、EGAの回帰モデルを上記式(6)に基づくモデルとしたが、上記式(4)に基づくものであっても構わない。この他、直交度誤差Wや残留回転誤差Θ等を係数とする上記式(2)に基づくモデルとしても構わない。この場合、残留回転誤差Θは、a.に分類されるのが望ましいが、直交度誤差Wは、元工程のレイヤをどの露光装置で露光したかに依存し、ロット内では変動が少ないと考えられるので、c.又はd.に分類されるのが妥当であると考えられる。
なお、この直交度誤差Wを係数とするモデルを選択した場合、事前知識に基づく値と、今回のウエハマークの計測により得られたパラメータの値が著しく異なる場合には、今回の処理対象のウエハの元工程のレイヤを露光した露光装置が、過去のウエハのそれとは異なっている可能性が高い。この場合には、上記高次成分や、ショット内成分についても大きく変化していることが考えられるため、それらの成分に関する係数を、無条件にパラメータとするようにしても良い。このように、係数によっては、その係数の変化が、他の係数の変化との関連性が深いものもあるため、その関連性を利用すれば、モデルのパラメータの最適化をさらに効率の良いものにすることができる。
また、上記実施形態では、事前知識として記憶装置47に記憶された係数の値の平均値を、その係数の値として設定したが、これには限定されず、過去に得られたその係数での幾つかパラメータの値の変化量(ローパス処理等で平滑化されているのが望ましい)などから、今回処理対象となっているウエハでの係数の値を予想するようにしても良い。
また、上記実施形態では、h個のウエハマークを全て用いて、EGAモデル式の係数を求めたが、h個のウエハマークのうち、その位置が、ショット配列モデルに対し著しくずれているみなせるものに対しては、そのマークの実測値を、サンプル結果からリジェクトするようにしても良い。しかしながら、リジェクト後でも、ウエハマークの有効サンプル数は、モデルのパラメータの自由度よりも大きくなければならないことはいうまでもない。実測値をリジェクトする方法としては、種々の方法を適用することができるが、上記AICを用いた方法も適用することができる。また、計測値を完全にリジェクトせずに、各計測値の正常値の分布を示す確率密度分布関数や異常値の分布を示す確率密度分布関数の線形結合から成る混合分布モデルを考慮して、各計測値の正常度、異常度を考慮しつつ、上記最適化を実行するようにしても良い。
まだ、上記実施形態では、モデルMとモデルM’とのいずれを選択するかは、上記規準(ペナルティ付き対数尤度)により判断した。この規準による判定は、統計的な妥当性に基づく判定であるといえるが、ウエハアライメントにおいて最も重要な点は、アライメント精度をできるだけ良好に、すなわち残差をできるだけ小さくするというのが最終目的である。そこで、例えば、モデルM’が選択された場合でも、そのモデルM’での評価関数Eの値に閾値を設定し、Eがその値よりも大きい場合には、さらに、サンプルショットのウエハマークの追加計測を行って、モデルMとモデルM’とを比較し直すようにしても良く、モデルMやモデルM’とは異なる新たなモデルを設定し、新たなモデルでのペナルティ付き対数尤度による評価、残差の判定を行うようにしても良い。
また、上記実施形態では、パラメータの自由度が異なるモデルの中から、各モデルのペナルティ付き対数尤度に基づいて、最適なモデルを選択したが、これには限定されず。モデルの各係数の値を、ペナルティ付き対数尤度の比によって重み付け平均して得られる値を、そのモデル式の係数の値として推定するようにしても良い。例えば、上記モデルMのある係数のパラメータの値とモデルM’でのその係数の事前知識に基づく値とを、AIC(M)とAIC(M’)との逆数の比で重み付け平均することにより得られる値を、その係数の値とすることができる。すなわち、この場合、この係数の値は、事前知識に基づく値を、今回のサンプルショットのウエハマークの計測値に基づいて修正したものとみなすことができる。また、この重み付け平均により求められた係数の値を用いたときのモデル式での残差Eをさらに求めて、そのモデルでのAICを算出し、モデルM’のAIC(M’)又はモデルMのAIC(M)と比較し、3つのモデルの中で最良なモデルを選択するようにしても良い。なお、上記重み付けを行う場合、ウエハ毎のパラメータの急峻な変化に対応するためには、パラメータの増加に対するペナルティの変化が小さい規準を用いるのが望ましい。その点では、BICよりもAICを用いる方が良い。
また、上記実施形態では、EGA方式のモデル式の係数をa.〜e.に分類したが、これには限られない。例えば、プロセス毎に推定、変更する係数、製品の種類毎に推定、変更する係数、または定期的に推定、変更する係数など、種々のカテゴリに分類することができる。また、同じカテゴリに分類されたパラメータ同士にも優先順位を設け、その順番で、徐々にパラメータの自由度を増減させるようにしても良い。また、EGA方式のモデル式の係数を特に分類せず、すべての係数に対し優先順位を付与し、その順番に従って、パラメータの自由度を増減させるようにしても良いことは勿論である。なお、この優先順位を定めるにあたっては、やはりその係数が高次成分のものまで含まれる場合には、高次になればなるほど優先順位を下げる(事前知識のものを用いやすいように設定する)のが望ましい。
また、本発明は、評価されるモデルのパラメータの自由度に応じた適切な有効サンプル数でサンプルショットのウエハマークを計測するものであるが、上記実施形態では、パラメータの自由度が異なる複数のモデルについて、それぞれのパラメータの自由度に応じた有効サンプル数に基づくサンプルショットのウエハマークの数及び配置が予め求められており、記憶装置47に記憶されているものとし、最も尤もらしいモデルが選択されると、そのモデルのパラメータの自由度に応じた適切な有効サンプル数を満たすサンプルショットのウエハマークの数及び配置に関する情報を記憶装置47から読み取って、その読み取った内容をメモリ上に書き込むことにより、メモリ上のサンプル情報を更新するものとした。
所定の有効サンプル数に基づくウエハマークの数及び配置に関する情報の作成方法としては、種々の方法を採用することが可能である。例えば、上記実施形態のように、図2に示されるようなウエハでは、ウエハマークは4N個存在する。この4N個のウエハマークの中から、h個のウエハマークを選ぶときの組合せは4NCh通りある。そこで、その組合せ各々について全ショット領域の重ね合わせ誤差の期待値及び標本分散を推定し、その推定値が良好(最小)であった組合せを、その有効サンプル数でのサンプルショットの数及び配置とするようにしても良い。なお、この全ショット領域の重ね合わせ誤差の期待値及び標本分散は、選択されたモデルでの各係数の最尤推定値を求める必要があるが、モデルの各係数の最尤推定値は、そのウエハマークの設計位置と、経験的に求められている、そのウエハマークでの設計位置と実測位置との差分の誤差分布の標準偏差とを用いて、最小二乗法での評価関数を最小とする条件式に基づいて作成される、いわゆる正規方程式から求めることができる。
上記実施形態では、露光動作を行う前に、サンプルショットの数及び配置を上記方法などで求めておくとしたが、上記露光動作中のサブルーチン309において、上記最尤推定方法を実施して、サンプルショットの数及び配置の最適化をリアルタイムに行うようにしても良い。
また、上記実施形態では、アライメント検出系ASとして、FIA方式のアライメントセンサを用いたが、前述したように、レーザ光をウエハW上の点列状のアライメントマークに照射し、そのマークにより回折又は散乱された光を用いてマーク位置を検出するLSA(Laser Step Alignment)方式のアライメントセンサや、そのアライメントセンサと上記FIA方式とを適宜組み合わせたアライメントセンサにも本発明を適用することは可能である。また、例えばコヒーレントな検出光を被検面のマークに照射し、そのマークから発生する2つの回折光(例えば同次数)を干渉させて検出するアライメントセンサを、単独で、あるいは上記FIA方式、LSA方式などと適宜組み合わせたアライメントセンサに本発明を適用することは勿論可能である。
なお、アライメント検出系はオン・アクシス方式(例えばTTL(Through The Lens)方式など)でも良い。また、アライメント検出系は、アライメント検出系の検出視野内にアライメントマークをほぼ静止させた状態でその検出を行うものに限られるものではなく、アライメント検出系から照射される検出光とアライメントマークとを相対移動させる方式であっても良い(例えば前述のLSA系や、ホモダインLIA系など)。かかる検出光とアライメントマークとを相対移動させる方式の場合には、その相対移動方向を、前述の各アライメントマークを検出する際のウエハステージWSTの移動方向と同一方向とすることが望ましい。
また、上記実施形態では、本発明がステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置に適用された場合について説明したが、本発明の適用範囲がこれに限定されないのは勿論である。すなわち、ステップ・アンド・リピート方式、ステップ・アンド・スティッチ方式、ミラープロジェクション・アライナー、及びフォトリピータなどにも好適に適用することができる。さらに、投影光学系PLは、屈折系、反射屈折系、及び反射系のいずれでもよいし、縮小系、等倍系、及び拡大系のいずれでも良い。この他、例えば国際公開WO99/49504号などに開示される、投影光学系PLとウエハとの間に液体が満たされる液浸型露光装置などにも本発明を適用しても良い。
さらに、本発明が適用される露光装置の光源は、KrFエキシマレーザやArFエキシマレーザ、F2レーザとしたが、他の真空紫外域のパルスレーザ光源であっても良い。この他、露光用照明光として、例えば、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
なお、複数のレンズから構成される照明光学系、投影光学系、並びにアライメント検出系ASを露光装置本体に組み込み、光学調整をするとともに、多数の機械部品からなるレチクルステージやウエハステージを露光装置本体に取り付けて配線や配管を接続し、更に総合調整(電気調整、動作確認等)をすることにより、上記実施形態の露光装置を製造することができる。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
なお、本発明は、半導体製造用の露光装置に限らず、液晶表示素子などを含むディスプレイの製造に用いられる、デバイスパターンをガラスプレート上に転写する露光装置、薄膜磁気ヘッドの製造に用いられるデバイスパターンをセラミックウエハ上に転写する露光装置、撮像素子(CCDなど)、有機EL、マイクロマシン及びDNAチップなどの製造に用いられる露光装置などにも適用することができる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用することができる。ここで、DUV(遠紫外)光やVUV(真空紫外)光などを用いる露光装置では一般的に透過型レチクルが用いられ、レチクル基板としては石英ガラス、フッ素がドープされた石英ガラス、ホタル石、フッ化マグネシウム、又は水晶などが用いられる。また、プロキシミティ方式のX線露光装置、又は電子線露光装置などでは透過型マスク(ステンシルマスク、メンブレンマスク)が用いられ、マスク基板としてはシリコンウエハなどが用いられる。
また、本発明に係る位置検出方法は、露光装置に限らず、物体に形成されている何らかの複数のマークの中から、幾つかのマークを選択して検出する必要がある装置であれば、適用が可能である。
《デバイス製造方法》
次に、上述した露光装置100をリソグラフィ工程で使用したデバイスの製造方法の実施形態について説明する。
図6には、デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートが示されている。図6に示されるように、まず、ステップ601(設計ステップ)において、デバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップ602(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。一方、ステップ603(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
次に、ステップ604(ウエハ処理ステップ)において、ステップ601〜ステップ603で用意したマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウエハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップ605(デバイス組立てステップ)において、ステップ604で処理されたウエハを用いてデバイス組立てを行う。このステップ605には、ダイシング工程、ボンディング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。
最後に、ステップ606(検査ステップ)において、ステップ605で作成されたデバイスの動作確認テスト、耐久テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にデバイスが完成し、これが出荷される。
図7には、半導体デバイスにおける、上記ステップ604の詳細なフロー例が示されている。図7において、ステップ611(酸化ステップ)においてはウエハの表面を酸化させる。ステップ612(CVDステップ)においてはウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ613(電極形成ステップ)においてはウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ614(イオン打ち込みステップ)においてはウエハにイオンを打ち込む。以上のステップ611〜ステップ614それぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップ615(レジスト形成ステップ)において、ウエハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップ616(露光ステップ)において、上記実施形態の露光装置100を用いてマスクの回路パターンをウエハに転写する。次に、ステップ617(現像ステップ)においては露光されたウエハを現像し、ステップ618(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップ619(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。
これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
以上説明した本実施形態のデバイス製造方法を用いれば、露光工程(ステップ616)において上記実施形態の位置検出方法が適用可能な露光装置100が用いられるので、高精度な露光を実現することができる。この結果、より高集積度のデバイスの生産することが可能になる。