本発明は、電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の画像形成装置に用いて有用な定着装置に関し、特に電磁誘導加熱方式の加熱手段を用いて記録媒体上に未定着画像を加熱定着させる定着装置に関する。
電磁誘導加熱(IH;induction heating)方式の定着装置は、発熱体に磁場生成手段により生成した磁場を作用させて渦電流を発生させ、この渦電流による前記発熱体のジュール発熱により、転写紙及びOHPシートなどの記録媒体上の未定着画像を加熱定着する定着装置である。
この電磁誘導加熱方式の定着装置は、ハロゲンランプを熱源とする熱ローラ方式の定着装置と比較して発熱効率が高く定着速度を速くすることができるという利点を有している。
また、前記発熱体として肉厚の薄いスリーブもしくは無端状ベルトなどからなる薄肉の発熱体を用いた定着装置は、発熱体の熱容量が小さくこの発熱体を短時間で発熱させることができるので、所定の定着温度に発熱するまでの立ち上がり応答性を著しく向上させることができる。
反面、このような熱容量の小さい発熱体を用いた定着装置は、記録媒体が通紙されるだけでも発熱体の熱が奪われて通紙領域の温度が低下してしまう。そこで、この種の定着装置では、その通紙領域の温度が所定の定着温度に維持されるように発熱体を適時加熱している。
このため、この熱容量の小さい発熱体を用いた定着装置では、サイズが小さい記録媒体が連続的に通紙されると、発熱体が加熱され続けられてその非通紙領域の温度が通紙領域の温度よりも異常に高くなる現象、つまり非通紙領域の過昇温現象が発生する。
従来、このような非通紙領域の過昇温現象を解消する技術として、発熱体を電磁誘導発熱させる磁束発生手段により生成された磁束のうち、前記発熱体の非通紙領域に作用する磁束のみを、発熱体の発熱幅方向に移動可能な磁束吸収部材により吸収するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、前記非通紙領域の過昇温現象を解消する他の技術として、発熱体を電磁誘導発熱させる磁束発生手段の第1磁性体コアの背後に、非通紙領域に対応する第2磁性体コアを配置し、第1磁性体コアと第2磁性体コアとのギャップを変化させて発熱体の長手方向の温度分布を変えるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
図1は、特許文献1に開示された定着装置の実施例の概略斜視図である。図1に示すように、この定着装置は、コイルアセンブリ10、金属スリーブ11、ホルダ12、加圧ローラ13、磁束遮蔽板31及び変位手段40などを備えている。
図1において、コイルアセンブリ10は、高周波磁界を生じる。金属スリーブ11は、コイルアセンブリ10の誘導コイル18により誘導電流を誘起されて加熱され記録材14を搬送する方向に回転する。コイルアセンブリ10は、ホルダ12の内部に保持されている。ホルダ12は、図示しない定着ユニットフレームに固定され非回転となっている。加圧ローラ13は、金属スリーブ11に圧接してニップ部を形成しつつ記録材14を搬送する方向に回転する。このニップ部により記録材14が挟持搬送されることにより、記録材14上の未定着画像が発熱した金属スリーブ11により記録材14に加熱定着される。
磁束遮蔽板31は、図1に示すように、誘導コイル18の主として上半分を覆う円弧曲面を呈しており、変位手段40によりコイルアセンブリ10とホルダ12との両端部の隙間に対して進退される。変位手段40は、磁束遮蔽板31に連結されるワイヤ33と、ワイヤ33が懸架される一対のプーリ36と、一方のプーリ36を回転駆動するモータ34とを有している。
磁束遮蔽板31は、変位手段40により、記録材14のサイズが最大サイズの場合には図1に実線で示す位置に退避するように移動される。一方、磁束遮蔽板31は、記録材14のサイズが小サイズの場合には図1に鎖線で示す位置に進出するように移動される。これにより、誘導コイル18から金属スリーブ11の非通紙領域へ届く磁束が遮蔽され非通紙領域の過昇温が抑制される。
図2は、特許文献2に開示された定着装置の実施例の概略断面図である。図2に示すように、この定着装置は、加熱アセンブリ51、ホルダ52、コア保持回動部材53、励磁コイル54、第1コア55、第2コア56、定着ローラ57及び加圧ローラ58などを備えている。
図2において、加熱アセンブリ51は、ホルダ52、コア保持回動部材53、励磁コイル54、第1コア55及び第2コア56からなり磁束を発生する。定着ローラ57は、加熱アセンブリ51から発生する磁束の作用により誘導発熱され記録材59を搬送する方向に回転する。
加圧ローラ58は、定着ローラ57に圧接してニップ部を形成しつつ記録材59を搬送する方向に回転する。このニップ部により記録材59が挟持搬送されることにより、記録材59上の未定着画像が発熱した定着ローラ57により記録材59に加熱定着される。
第1コア55は、定着ローラ57の最大通紙領域の幅と同じ幅を有している。一方、第2コア56は、記録材59のサイズが最大サイズの場合には図2Aに示すように、第1コア55に近接した位置に移動される。また、第2コア56は、記録材59のサイズが小サイズの場合には図2Bに示すように、コア保持回動部材53が180°回転して第1コア55から離間した位置に移動される。これにより、第2コア56に対応する定着ローラ57の非通紙領域の発熱が抑えられる。
特開平10−74009号公報 特開2003−123961号公報
しかしながら、前者の定着装置は、磁束遮蔽板31を変位手段40によりコイルアセンブリ10とホルダ12との両端部の隙間に対して進退させる構成であるため、図1に示すように、変位手段40の一対のプーリ36がホルダ12の両端部から大きく突出し定着装置本体が大型化してしまう不具合がある。
さらに、前者の定着装置は、図1に示すように金属スリーブ11と誘導コイル18の間に磁束遮蔽板31を配置する構成である。誘導加熱方式を用いる定着装置では、誘導コイル18と金属スリーブ11の間の隙間を例えば1mm程度に狭く保って、磁気的な結合を高める必要がある。磁束遮蔽板31はその狭い隙間に挿入するため、厚みを薄くする必要がある。つまり、磁束遮蔽板31は十分な厚みがとれないため電気抵抗が高くなり、自ら発熱しやすくなるという問題がある。磁束遮蔽板31に通孔35を形成することで、渦電流による発熱を抑えることができるが、これにより磁束が金属スリーブ11に届いて金属スリーブの非通紙領域が発熱する。この結果、小サイズの記録材14が連続的に通紙されると、金属スリーブ11の非通紙領域に熱が蓄積し、過昇温を抑制できないという問題がある。
また、後者の定着装置は、図2A、図2Bに示すように、コア保持回動部材53の回転により第2コア56が第1コア55に対して変位しても第1コア55と定着ローラ57との間隔が変化しないため、定着ローラ57の通紙領域と非通紙領域との磁気的ギャップが一定である。
このため、この定着装置は、第1コア55に対応する通紙領域の端部から第2コア56に対応する非通紙領域の端部への磁束の回り込みが発生し、定着ローラ57の非通紙領域における磁束の抑制効果が低くなってしまう。この結果、この定着装置では、小サイズの記録材59が連続的に通紙されると、定着ローラ57の非通紙領域に熱が蓄積し、過昇温を効果的に抑制することができないという問題がある。
また、この定着装置では、コア保持回動部材53に1つの記録材サイズに対応した第2コア56しか保持できないため、定着ローラ57の通紙領域幅を最大サイズと小サイズとの2種類の記録材の紙幅にしか対応させることができない。
本発明の目的は、発熱体の通紙領域から非通紙領域への磁束の回り込みによる非通紙領域の過昇温を防止することができる小型な定着装置を提供することである。
本発明の定着装置は、磁束を発生する磁束発生手段と、前記磁束により誘導加熱される発熱体と、前記発熱体に対向して配置されて前記磁束発生手段と前記発熱体との間の磁束の経路を形成する磁路形成体と、前記磁路形成体に配設されかつ前記磁路形成体と前記発熱体との間の前記発熱体の非通紙領域に対応する磁束の経路の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽位置に臨むことにより前記非通紙領域に対応する前記磁路形成体と前記発熱体との磁気的な結合を抑制する磁気抑制体と、回転により前記遮蔽位置と前記遮蔽位置から退避した退避位置とに前記磁気抑制体を臨ませる回転手段と、を具備する。
本発明によれば、発熱体の通紙領域から非通紙領域への磁束の回り込みによる非通紙領域の過昇温を防止することができる小型な定着装置を提供することができる。
従来の定着装置の構成を示す概略斜視図
従来の他の定着装置の要部の構成を示す概略断面図
当該定着装置の動作態様を示す概略断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置の全体構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の基本的な構成を示す断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置のセンターコアに磁気抑制体としての切欠部を形成した構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の磁気抑制体としての切欠部を回転させる回転手段の構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の磁気抑制体としての切欠部を退避位置に回転させた状態を示す概略断面図
本発明の実施の形態2に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態2に係る定着装置のセンタアーコアに磁気抑制体としての磁気遮蔽部材を配設した構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態2に係る定着装置の磁気抑制体としての磁気遮蔽部材を回転させる回転手段の構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態2に係る定着装置の磁気抑制体としての磁気遮蔽部材を退避位置に回転させた状態を示す概略断面図
本発明の実施の形態3に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態3に係る定着装置の磁気抑制体としての切欠部を退避位置に回転させた状態を示す概略断面図
本発明の実施の形態4に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態4に係る定着装置のセンタアーコアの構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態4に係る定着装置の矩形状のセンタアーコアの構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態4に係る定着装置のクロス状のセンタアーコアの構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態4に係る定着装置のクロス状のセンタアーコアの段付部に磁気遮蔽部材を埋め込んだ構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態5に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態5に係る定着装置の要部の動作態様を示す概略断面図
本発明の実施の形態6に係る定着装置の構成を示す概略断面図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一の構成または機能を有する構成要素及び相当部分には、同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図3は、本発明の実施の形態1に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。
図3に示すように、画像形成装置100は、電子写真感光体(以下、「感光ドラム」と称する)101、帯電器102、レーザービームスキャナ103、現像器105、給紙装置107、定着装置200及びクリーニング装置113などを具備している。
図3において、感光ドラム101は、矢印の方向に所定の周速度で回転駆動されながら、その表面が帯電器102によってマイナスの所定の暗電位V0に一様に帯電される。
レーザービームスキャナ103は、図示しない画像読取装置やコンピュータ等のホスト装置から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービーム104を出力し、一様に帯電された感光ドラム101の表面をレーザービーム104によって走査露光する。これにより、感光ドラム101の露光部分の電位絶対値が低下して明電位VLとなり、感光ドラム101の表面に静電潜像が形成される。
現像器105は、回転駆動される現像ローラ106を備えている。現像ローラ106は、感光ドラム101と対向して配置されており、その外周面にはトナーの薄層が形成される。また、現像ローラ106には、その絶対値が感光ドラム101の暗電位V0よりも小さく、明電位VLよりも大きい現像バイアス電圧が印加されている。
これにより、現像ローラ106上のマイナスに帯電したトナーが感光ドラム101の表面の明電位VLの部分にのみ付着し、感光ドラム101の表面に形成された静電潜像が反転現像されて顕像化されて、感光ドラム101上に未定着トナー像111が形成される。
一方、給紙装置107は、給紙ローラ108により所定のタイミングで記録媒体としての記録紙109を一枚ずつ給送する。給紙装置107から給送された記録紙109は、一対のレジストローラ110を経て、感光ドラム101と転写ローラ112とのニップ部に、感光ドラム101の回転と同期した適切なタイミングで送られる。これにより、感光ドラム101上の未定着トナー像111が、転写バイアスが印加された転写ローラ112により記録紙109に転写される。
このようにして未定着トナー像111が形成担持された記録紙109は、記録紙ガイド114により案内されて感光ドラム101から分離された後、定着装置200の定着部位に向けて搬送される。定着装置200は、その定着部位に搬送された記録紙109に未定着トナー像111を加熱定着する。
未定着トナー像111が加熱定着された記録紙109は、定着装置200を通過した後、画像形成装置100の外部に配設された排紙トレイ116上に排出される。
一方、記録紙109が分離された後の感光ドラム101は、その表面の転写残トナー等の残留物がクリーニング装置113によって除去され、繰り返し次の画像形成に供される。
次に、図3に示した画像形成装置100の定着装置について説明する。図4は、この定着装置の構成を示す断面図である。図4に示すように、この定着装置200は、定着ベルト210、ベルト支持部材としての支持ローラ220、電磁誘導加熱手段としての励磁装置230、定着ローラ240及びベルト回転手段としての加圧ローラ250などを具備している。
図4において、定着ベルト210は、支持ローラ220と定着ローラ240とに懸架されている。支持ローラ220は、定着装置200の本体側板201の上部側に回転自在に軸支されている。定着ローラ240は、本体側板201に短軸202により揺動自在に取り付けられた揺動板203に回転自在に軸支されている。加圧ローラ250は、定着装置200の本体側板201の下部側に回転自在に軸支されている。
揺動板203は、コイルバネ204の緊縮習性により、短軸202を中心として時計方向に揺動する。定着ローラ240は、この揺動板203の揺動に伴って変位し、その変位により定着ベルト210を挟んで加圧ローラ250に圧接している。支持ローラ220は図示されないバネにより定着ローラ240と反対側に付勢され、これにより定着ベルト210には所定の張力が付与されている。
加圧ローラ250は、図示しない駆動源により矢印方向に回転駆動される。定着ローラ240は、加圧ローラ250の回転により定着ベルト210を挟持しながら従動回転する。これにより、定着ベルト210が、定着ローラ240と加圧ローラ250とに挟持されて矢印方向に回転される。この定着ベルト210の挟持回転により、定着ベルト210と加圧ローラ250との間に未定着トナー像111を記録紙109上に加熱定着するためのニップ部が形成される。
励磁装置230は、前記IH方式の電磁誘導加熱手段からなり、図4に示すように、定着ベルト210の支持ローラ220に懸架された部位の外周面に沿って配設した磁気発生手段としての励磁コイル231と、励磁コイル231を覆うフェライトで構成したコア232とを備えている。励磁コイル231は、通紙幅方向に延伸し定着ベルト210の両端で折り返して巻回される。また、支持ローラ220の内部には定着ベルト210及び支持ローラ220を挟んで励磁コイル231と対向する対向コア233を備えている。
励磁コイル231は、細い線を束ねたリッツ線を用いて形成されており、支持ローラ220に懸架された定着ベルト210の外周面を覆うように、断面形状が半円形に形成されている。励磁コイル231には、図示しない励磁回路から駆動周波数が25kHzの励磁電流が印加される。これより、コア232と対向コア233との間に交流磁界が発生し、定着ベルト210の導電層に渦電流が発生して定着ベルト210が発熱する。なお、本例では、定着ベルト210が発熱する構成であるが、支持ローラ220を発熱させ、この支持ローラ220の熱を定着ベルト210に伝導する構成としてもよい。
コア232は、励磁コイル231の中心と背面の一部に設けられている。コア232及び対向コア233の材料としては、フェライトの他、パーマロイ等の高透磁率の材料を用いることができる。
この定着装置200は、図4に示すように、未定着トナー像111が転写された記録紙109を、未定着トナー像111の担持面を定着ベルト210に接触させるように矢印方向から搬送することにより、記録紙109上に未定着トナー像111を加熱定着することができる。
なお、支持ローラ220との接触部を通り過ぎた部分の定着ベルト210の裏面には、サーミスタからなる温度センサ260が接触するように設けられている。この温度センサ260により定着ベルト210の温度が検出される。温度センサ260の出力は、図示しない制御装置に与えられている。制御装置は、温度センサ260の出力に基づいて、最適な画像定着温度となるように、前記励磁回路を介して励磁コイル231に供給する電力を制御し、これにより定着ベルト210の発熱量を制御している。
また、記録紙109の搬送方向下流側の、定着ベルト210の定着ローラ240に懸架された部分には、加熱定着を終えた記録紙109を排紙トレイ116に向けてガイドする排紙ガイド270が設けられている。
さらに、励磁装置230には、励磁コイル231及びコア232と一体に、保持部材としてのコイルガイド234が設けられている。このコイルガイド234は、PEEK材やPPSなどの耐熱温度の高い樹脂で構成されている。このコイルガイド234は、定着ベルト210から放射される熱が定着ベルト210と励磁コイル231との間の空間に籠もって、励磁コイル231が損傷を受けるのを回避することができる。
なお、図4に示したコア232は、その断面形状が半円形になっているが、このコア232は必ずしも励磁コイル231の形状に沿った形状とする必要はなく、その断面形状は、例えば、略Πの字状であってもよい。
定着ベルト210は、基材がガラス転移点360(℃)のポリイミド樹脂中に銀粉を分散して導電層を形成した、直径50mm、厚さ50μmの薄肉の無端状ベルトで構成されている。前記導電層は、厚さ10μm銀層を2〜3積層した構成としてもよい。また、さらに、この定着ベルト210の表面には、離型性を付与するために、フッ素樹脂からなる厚さ5μmの離型層(図示せず)を被覆してもよい。定着ベルト210の基材のガラス転移点は、200(℃)〜500(℃)の範囲であることが望ましい。さらに、定着ベルト210の表面の離型層としては、PTFE、PFA、FEP、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の離型性の良好な樹脂やゴムを単独であるいは混合して用いてもよい。
なお、定着ベルト210の基材の材料としては、上述のポリイミド樹脂の他、フッ素樹脂等の耐熱性を有する樹脂、電鋳によるニッケル薄板及びステンレス薄板等の金属を用いることもできる。例えば、この定着ベルト210は、厚さ40μmのSUS430(磁性)又はSUS304(非磁性)の表面に、厚さ10μmの銅メッキを施した構成のものであってもよい。
また、定着ベルト210は、モノクロ画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合には離型性のみを確保すればよいが、この定着ベルト210をカラー画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合には厚いゴム層を形成して弾性を付与することが望ましい。また、定着ベルト210の熱容量は、60J/K以下であるのが好ましく、さらに好ましくは、40J/K以下である。
支持ローラ220は、直径が20mm、長さが320mm、厚みが0.2mmの円筒状の金属ローラからなる。なお、支持ローラ220の材料としては、鉄及びニッケル等の磁性を有する金属を用いるのが好ましい。
図4に示すように、励磁コイル231に対向して対向コア233を用いる場合は、支持ローラ220は固有抵抗が50μΩcm以上である非磁性のステンレス材を用いることが好ましい。ちなみに、非磁性のステンレス材であるSUS304で構成した支持ローラ220は、固有抵抗が72μΩcmと高くかつ非磁性であるので支持ローラ220を透過する磁束があまり遮蔽されず、例えば0.2mmの肉厚のものでは支持ローラ220の発熱が極めて小さくなるので、定着ベルト210が有効に発熱する。また、SUS304で構成した支持ローラ220は、機械的強度も高いので0.04mmの肉厚に薄肉化して熱容量をさらに小さくすることができる。
定着ローラ240は、表面が低硬度(ここでは、JISA30度)、直径30mmの低熱伝導性の弾力性を有する発泡体であるシリコーンゴムによって構成されている。
加圧ローラ250は、硬度JISA65度のシリコーンゴムによって構成されている。この加圧ローラ250の材料としては、フッ素ゴム、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂や他のゴムを用いてもよい。また、加圧ローラ250の表面には、耐摩耗性や離型性を高めるために、PFA、PTFE、FEP等の樹脂あるいはゴムを、単独あるいは混合して被覆することが望ましい。また、加圧ローラ250は、熱伝導性の小さい材料によって構成されることが望ましい。
次に、本実施の形態1に係る定着装置の構成についてさらに詳細に説明する。図5は、本実施の形態1に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。図5に示すように、この定着装置300は、磁性材料で構成される前記発熱体としての発熱ローラ310、前記磁束発生手段としての励磁コイル331、励磁コイル331を覆うアーチコア332、アーチコア332と発熱ローラ310との間の磁束の経路を形成する前記磁路形成体としてのセンターコア333及びサイドコア334などを具備している。
図5及び図6において、センターコア333は、発熱ローラ310の回転軸方向に平行なフェライトなどの強磁性体からなる円柱状の回転体で構成され、励磁コイル331の巻回中心に配置される。このセンターコア333には、その発熱ローラ310の非通紙領域に対向する対向面に、前記磁気抑制体としての2つの切欠部333a,333bが形成されている。これらの切欠部333a,333bは、センターコア333を挟んで互いに向き合うように位置している。
また、切欠部333a,333bは、記録紙109の通紙基準に応じてセンターコア333への形成位置が決められている。ここでは、記録紙109の通紙基準をセンター基準とし、切欠部333a,333bがセンターコア333の両端部に形成されている。
また、センターコア333の長さは、発熱ローラ310の最大通紙領域幅であるB4サイズの記録紙の幅よりも大きく形成されている。ここでは、図6に示すように、センターコア333の長さが、A3サイズの記録紙の幅に対応するように構成されている。また、切欠部333aは、発熱ローラ310と加圧ローラ250とのニップ部にA4サイズの記録紙を通紙した場合における発熱ローラ310の非通紙領域幅に対応した長さを有している。さらに、切欠部333bは、発熱ローラ310と加圧ローラ250とのニップ部にB4サイズの記録紙を通紙した場合における発熱ローラ310の非通紙領域幅に対応した長さを有している。
図7は、センターコア333の切欠部333a,333bを回転させる回転手段500を示す概略斜視図である。この回転手段500は、図7に示すように、センターコア333の支軸に設けた小歯車501、小歯車501に噛み合う大歯車502、大歯車502を軸支して回転するステッピングモータ503などで構成されている。
図7において、ステッピングモータ503がオン(通電)状態になると、その支軸の回転により大歯車502が回転して小歯車501が従動回転する。この小歯車501の従動回転により、センターコア333の支軸が回転して、切欠部333a,333bのうちの通紙される記録紙サイズの非通紙領域幅に対応した長さの所定の切欠部が、図8に示す退避位置から図5に示す遮蔽位置に回転する。
ここでは、図5に示すように、切欠部333bが、その退避位置から遮蔽位置に回転する。このようにして、切欠部333bがその退避位置から遮蔽位置に回転することにより、B4サイズの記録紙を通紙した場合の発熱ローラ310の非通紙領域に対応するセンターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合が切欠部333bにより抑制される。
また、切欠部333aが、回転手段500によりその退避位置から遮蔽位置に回転すると、A4サイズの記録紙を通紙した場合の発熱ローラ310の非通紙領域に対応するセンターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合が切欠部333aにより抑制される。
このように、この定着装置300は、回転手段500により各切欠部333a,333bを、その退避位置から遮蔽位置に回転して、センターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合力を制御している。
すなわち、この定着装置300では、センターコア333の回転により、磁気抑制体である各切欠部333a,333bが、図5に示す前記遮蔽位置に臨んだ状態と、図8に示す前記退避位置に臨んだ状態とで、前記非通紙領域に対応する部位の発熱ローラ310とセンターコア333との間隔が変化する。
この非通紙領域に対応する部位の発熱ローラ310とセンターコア333との間隔は、図5に示すように、各切欠部333a,333bが、前記遮蔽位置に臨んだ状態では広くなり、図8に示すように、各切欠部333a,333bが、前記退避位置に臨んだ状態では狭くなる。
また、センターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合度は、センターコア333と発熱ローラ310との間隔が狭くなると強くなり、センターコア333と発熱ローラ310との間隔が広くなると弱くなる。
従って、この定着装置300では、回転手段500によりセンターコア333を回転して切欠部333a,333bを前記遮蔽位置に臨ませることにより、センターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合度を弱めて発熱ローラ310の非通紙領域の過昇温を抑制することができる。
また、この定着装置300においては、センターコア333を回転させるだけで、センターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合度の強弱の切り替えを行うことができるので、発熱ローラ333の通紙領域幅を、図6に示したように、A4サイズとB4サイズとの2種類のサイズの記録紙の紙幅に容易に対応させることができる。
さらに、この定着装置300では、前記磁気抑制体をセンターコア333に形成した切欠部333a,333bで構成しているので、前記磁気抑制体を別部材として用意する必要がなく、その構成の簡素化及び低廉化を実現できる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る定着装置の特徴部の構成について説明する。図9は、本実施の形態2に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。図9に示すように、この定着装置700は、前記磁気抑制体を磁気遮蔽部材701a,701bで構成したものであり、その他の構成は、実施の形態1に係る定着装置300と同様である。
前記磁気抑制体としての磁気遮蔽部材701a,701bは、発熱ローラ310の非通紙領域に対応するセンターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合を遮断することができる素材、例えば、銅もしくはアルミなどの安価な低透磁率の電気導体で形成される。この磁気遮蔽部材701a,701bは、図9及び図10に示すように、発熱ローラ310の非通紙領域に対向するセンターコア333の周面に、互いに向き合うように配設されている。
また、本実施の形態2に係る定着装置700は、実施の形態1に係る定着装置300と同様、記録紙109の通紙基準がセンター基準になっており、磁気遮蔽部材701a,701bがセンターコア333の両端部に形成されている。
ここで、センターコア333は、発熱ローラ310の最大通紙領域幅であるB4サイズの記録紙の幅よりも大きく形成されている。ここでは、図10に示すように、センターコア333の長さが、A3サイズの記録紙の幅に対応するように構成されている。また、磁気遮蔽部材701aは、発熱ローラ310と加圧ローラ250とのニップ部にA4サイズの記録紙を通紙した場合における発熱ローラ310の非通紙領域幅に対応した長さを有している。さらに、磁気遮蔽部材701bは、発熱ローラ310と加圧ローラ250とのニップ部にB4サイズの記録紙を通紙した場合における発熱ローラ310の非通紙領域幅に対応した長さを有している。
また、磁気遮蔽部材701a,701bは、図11に示す回転手段900により、センターコア333と共に回転される。この回転手段900は、図7に示した回転手段500と同様、センターコア333の支軸に設けた小歯車901、小歯車901に噛み合う大歯車902、大歯車902を軸支して回転するステッピングモータ903などで構成されている。
図11において、ステッピングモータ903がオン(通電)状態になると、その支軸の回転により大歯車902が回転して小歯車901が従動回転する。この小歯車901の従動回転により、センターコア333の支軸が回転して、磁気遮蔽部材701a,701bのうちの通紙される記録紙サイズの非通紙領域幅に対応した長さの所定の磁気遮蔽部材が、図12に示す退避位置から図9に示す遮蔽位置に回転する。
ここでは、図9に示すように、磁気遮蔽部材701bが、その退避位置から遮蔽位置に回転する。このようにして、磁気遮蔽部材701bがその退避位置から遮蔽位置に回転することにより、B4サイズの記録紙を通紙した場合の発熱ローラ310の非通紙領域に対応するセンターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合が磁気遮蔽部材701bにより抑制される。
また、磁気遮蔽部材701aが、回転手段900によりその退避位置から遮蔽位置に回転すると、A4サイズの記録紙を通紙した場合の発熱ローラ310の非通紙領域に対応するセンターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合が磁気遮蔽部材701aにより抑制される。
このように、この定着装置700は、回転手段900により各磁気遮蔽部材701a,701bを、その退避位置から遮蔽位置に回転して、センターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合を遮断したり促進したりしている。
すなわち、この定着装置700では、センターコア333の回転により、磁気抑制体である各磁気遮蔽部材701a,701bが、図9に示す前記遮蔽位置に臨んだ状態で、前記非通紙領域に対応する部位の発熱ローラ310とセンターコア333との磁気的な結合が遮断される。
このように、この定着装置700では、回転手段900によりセンターコア333を回転して各磁気遮蔽部材701a,701bを前記遮蔽位置に臨ませることにより、センターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合が遮断されるので、発熱ローラ310の非通紙領域の過昇温を抑制することができる。
また、この定着装置700においては、実施の形態1に係る定着装置300と同様、センターコア333を回転させるだけで、センターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合を遮断したり促進したりできるので、発熱ローラ333の通紙領域幅を、図10に示したように、A4サイズとB4サイズとの2種類のサイズの記録紙の紙幅に容易に対応させることができる。
さらに、この定着装置700では、前記磁気抑制体をセンターコア333に配設した磁気遮蔽部材701a,701bで構成しているので、前記磁気抑制体を別部材として用意する必要がなく、その構成の簡素化及び低廉化を実現できる。
また、この定着装置700は、磁気遮蔽部材701a,701bを励磁コイル331の巻回中心に配置する構成であるので、磁気遮蔽部材701a,701bの厚みを薄くする必要性を無くすことができ、例えば1mm程度に厚さを増すことが可能になる。これにより、磁気遮蔽部材701a,701bは電気抵抗が小さくなるので、磁気遮蔽部材701a,701bの発熱は抑えられる。また、磁気遮蔽体301は、熱伝導率及び比熱が高いフェライト等の材料で構成されるセンターコア333に配設されているので、磁気遮蔽部材701a,701bで生じた熱はセンターコア333に伝導して拡散し、磁気遮蔽部材701a,701bの過度な温度上昇を抑えられる。また、磁気遮蔽部材701a,701bは厚みを増すことにより電気抵抗が小さくなり、渦電流が流れやすくなる。これにより、反発磁界が強まって磁束をより効果的に遮蔽することができる。さらに、磁気遮蔽部材701a,701bは通孔35を必要としないので、図1の磁束遮蔽板31に比べて磁束をより効果的に遮蔽できる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る定着装置の構成について説明する。図13は、本実施の形態3に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。図13に示すように、この定着装置1100は、励磁コイル331を覆うアーチコア332のセンターコア333を挟んで発熱ローラ310と対向する側に、センターコア333を迂回するように磁束の経路を形成する迂回経路部332aを形成したものである。なお、この定着装置1100のその他の構成は、実施の形態2に係る定着装置700と同様である。
この定着装置1100は、センターコア333に形成された磁気抑制体としての磁気遮蔽部材701a,701bにより磁気的な結合度が規制される磁束の経路の他に、アーチコア332の迂回経路部332aにより新たな磁束の経路が形成される。
このように、この定着装置1100は、迂回経路部332aにより新たな磁束の経路を確保することができるので、発熱ローラ310の過昇温を起こさずに通紙できる通紙領域サイズの数を増やすことができる。
つまり、この定着装置1100では、磁路600の閉ループのうち、センターコア333と発熱ローラ310との間の磁束が集中している部位を、センターコア333の磁気遮蔽部材701a,701bにより遮蔽している。従って、この定着装置1100においては、発熱ローラ310の非通紙領域に対応するセンターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合を効率よく抑制することができ、前記磁気抑制体である磁気遮蔽部材701a,701bの回転方向の幅を小さく構成することができ、図13に示すように、センターコア333に2つの磁気遮蔽部材701a,701bを形成することができる。
従って、この定着装置1100においては、その発熱ローラ310の通紙領域を、センターコア333に形成した2つの磁気遮蔽部材701a,701bにより規制される2種類のサイズの記録紙と、図14に示すように、アーチコア332の迂回経路部332aを通る新たな磁束の経路に対応した3種類目のサイズの記録紙とに対応させることが可能になる。この実施の形態では、図10におけるA4,B4のサイズの他にA3のサイズにも対応させることができる。
また、この定着装置1100は、磁気遮蔽部材701a,701bを励磁コイル331の巻回中心に配置する構成であるので、磁気遮蔽部材701a,701bの厚みを薄くする必要性を無くすことができ、例えば1mm程度に厚さを増すことが可能になる。これにより、磁気遮蔽部材701a,701bは電気抵抗が小さくなるので、磁気遮蔽部材701a,701bの発熱は抑えられる。また、磁気遮蔽体301は、熱伝導率及び比熱が高いフェライト等の材料で構成されるセンターコア333に配設されているので、磁気遮蔽部材701a,701bで生じた熱はセンターコア333に伝導して拡散し、磁気遮蔽部材701a,701bの過度な温度上昇を抑えられる。また、磁気遮蔽部材701a,701bは厚みを増すことにより電気抵抗が小さくなり、渦電流が流れやすくなる。これにより、反発磁界が強まって磁束をより効果的に遮蔽することができる。さらに、磁気遮蔽部材701a,701bは通孔35を必要としないので、図1の磁束遮蔽板31に比べて磁束をより効果的に遮蔽できる。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4に係る定着装置の構成について説明する。図15は、本実施の形態4に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。図15及び図16に示すように、この定着装置1300は、前記磁気抑制体を段付部1333a、1333bで構成したものであり、その他の構成は、実施の形態1に係る定着装置300と同様である。
この定着装置1300のセンターコア1333は、矩形状の柱体で構成されている。また、前記磁気抑制体としての段付部1333a、1333bは、図16に示すように、発熱ローラ310の非通紙領域に対向するセンターコア1333の両端部の下半分に形成されている。これにより、図15に示すように、段付部1333a、1333bが形成されていない側のセンターコア1333の対向面の回転方向の幅W1は、段付部1333a、1333bが形成されている側のセンターコア333の対向面の回転方向の幅W2よりも大きくなる。
すなわち、この定着装置1300においては、センターコア1333の回転により、その磁気抑制体である段付部1333a、1333bが発熱ローラ310に対向する対向位置に臨んだ状態と、段付部1333a、1333bが発熱ローラ310から退避する退避位置に臨んだ状態とで、発熱ローラ310の非通紙領域に対向するセンターコア1333の対向面の回転方向の幅が変化する。
この発熱ローラ310の非通紙領域に対向するセンターコア1333の対向面の回転方向の幅は、段付部1333a、1333bが前記退避位置に臨んだ状態では広い幅W1となり、段付部1333a、1333bが前記対向位置に臨んだ状態では狭い幅W2となる。また、発熱ローラ310とセンターコア1333との磁気的な結合力は、センターコア1333の対向面の回転方向の幅が広くなると強くなり、発熱ローラ310の非通紙領域に対向するセンターコア1333の対向面の回転方向の幅が狭くなると弱くなる。
従って、この定着装置1300によれば、回転手段500(又は900)によりセンターコア1333を回転して、段付部1333a、1333bを前記対向位置に臨ませることにより、発熱ローラ310とセンターコア1333との磁気的な結合度を弱めて、発熱ローラ310の非通紙領域の過昇温を抑制することができる。
また、この定着装置1300においては、センターコア1333を回転させるだけで、発熱ローラ310とセンターコア1333との磁気的な結合度の強弱の切り替えを行うことができるので、発熱ローラ310の通紙領域幅を複数種類のサイズの記録紙の紙幅に容易に対応させることができる。
また、この定着装置1300は、前記磁気抑制体を別部材として用意する必要がないので、構成の簡素化及び低廉化を実現できる。このように、この定着装置1300によれば、複数種類のサイズの記録紙の通紙時における発熱ローラ310の非通紙領域の過昇温を容易に防止することができる。
なお、この定着装置1300におけるセンターコア1333の形状としては、図16に示した矩形状以外に、図17Bに示すような4種の段付部1333a,1333b,1333cが形成されたクロス状であってもよい。
また、図17A,Cに示すように、センターコア1333の段付部には、銅又はアルミからなる磁気遮蔽部材1501a,1501b,1501cを埋め込んだ構成であってもよい。
(実施の形態5)
次に、実施の形態5に係る定着装置について説明する。図18は、本実施の形態5に係る定着装置の概略断面図である。図18に示すように、この定着装置1600は、前記磁路形成体としてのセンターコア1633に、プーリ1601により回転される無端ベルト1602を懸架し、この無端ベルト1602の周面に、前記磁気抑制体としての所定幅の磁気遮蔽層1603を形成したものである。
この定着装置1600においては、プーリ1601により無端ベルト1602を回転して、この無端ベルト1602の周面の磁気遮蔽層1603により、図19に示すように、発熱ローラ310の非通紙領域に対応するセンターコア1633の部位を覆い隠す。
これにより、無端ベルト1602の磁気遮蔽層1603により覆い隠された前記非通紙領域に対応するセンターコア1633と発熱ローラ310との磁気的な結合度が抑制されて、発熱ローラ310の非通紙領域の過昇温が抑制される。
また、この定着装置1600においては、無端ベルト1602を長くすることにより、前記磁気抑制体としての磁気遮蔽層1603を数多く設けることができるので、前記発熱体をより多くの通紙サイズ(加熱幅)に対応した構成とすることができる。
(実施の形態6)
次に、実施の形態6に係る定着装置の構成について説明する。図20は、本実施の形態6に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。図20に示すように、この定着装置1800は、アーチコア332と励磁コイル331との間に漏洩磁気遮蔽体1801を配設して構成したものであり、その他の構成は、実施の形態3に係る定着装置1100と同様である。
前記磁気抑制体としての磁気遮蔽部材701bは、センターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合を遮断しているため、発熱ローラ310の非通紙領域の過昇温は抑制される。しかし、アーチコア332から励磁コイル331を貫いて発熱ローラ310に達する若干の漏洩磁束が生じる。この漏洩磁束を漏洩磁気遮蔽体1801が遮蔽するので、非通紙領域の過昇温は効果的に抑制される。
なお、漏洩磁気遮蔽体1801は励磁コイル331の巻回部位の幅よりも狭くする方が好ましい。このようにすれば、発熱ローラ310の最大通紙領域幅を加熱する場合において、漏洩磁気遮蔽体1801は、図14に示す磁路600の閉ループに影響を与えないので温度ムラは生じない。
ところで、前記各実施の形態に係る定着装置においては、その発熱体として発熱ローラ310を用いているが、この発熱体は、図4に示した発熱ベルト210であってもよい。
また、前記各実施の形態に係る定着装置においては、前記磁気抑制体が配設される前記磁路形成体をセンターコア333(又は1333)としたが、前記磁気抑制体を配設する磁路形成体は、アーチコア332の磁路を横断する励磁コイル331の側部に配置したサイドコア334であってもよい。この構成によれば、発熱ローラ310の非通紙領域に対応するサイドコア334と発熱ローラ310との磁気的な結合度の強弱を切り換えることができる。
また、前記各実施の形態に係る定着装置は、磁束発生手段としての励磁コイル331及びセンターコア333などを、発熱ローラ310の外側に配置した構成となっている。このような構成の定着装置は、前記磁路形成体としてのセンターコア333及びその回転手段500を配設する空間に余裕があり、装置本体の設計の自由度が向上される。また、この構成の定着装置は、磁気遮蔽部材701a,701bが発熱ローラ310の外側に配置されているので、磁気遮蔽部材701a,701bに生じた熱は、周囲の空気の自然対流により放熱しやすい。また、送風ファンによる強制対流による冷却も容易である。
なお、前記各実施の形態に係る定着装置は、磁束発生手段としての励磁コイル331及びセンターコア333などを、発熱ローラ310の外側に配置しているので、消耗品である発熱ローラ310等の部品の交換やメンテナンスの作業効率が良好である。
本明細書は、2003年10月17日出願の特願2003−358023に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
以上説明したように、本発明に係る定着装置は、小型に構成でき、かつ発熱体の通紙領域から非通紙領域への磁束の回り込みによる非通紙領域の過昇温を防止することができるので、電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の定着装置として有用である。
本発明は、電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の画像形成装置に用いて有用な定着装置に関し、特に電磁誘導加熱方式の加熱手段を用いて記録媒体上に未定着画像を加熱定着させる定着装置に関する。
電磁誘導加熱(IH;induction heating)方式の定着装置は、発熱体に磁場生成手段により生成した磁場を作用させて渦電流を発生させ、この渦電流による前記発熱体のジュール発熱により、転写紙及びOHPシートなどの記録媒体上の未定着画像を加熱定着する定着装置である。
この電磁誘導加熱方式の定着装置は、ハロゲンランプを熱源とする熱ローラ方式の定着装置と比較して発熱効率が高く定着速度を速くすることができるという利点を有している。
また、前記発熱体として肉厚の薄いスリーブもしくは無端状ベルトなどからなる薄肉の発熱体を用いた定着装置は、発熱体の熱容量が小さくこの発熱体を短時間で発熱させることができるので、所定の定着温度に発熱するまでの立ち上がり応答性を著しく向上させることができる。
反面、このような熱容量の小さい発熱体を用いた定着装置は、記録媒体が通紙されるだけでも発熱体の熱が奪われて通紙領域の温度が低下してしまう。そこで、この種の定着装置では、その通紙領域の温度が所定の定着温度に維持されるように発熱体を適時加熱している。
このため、この熱容量の小さい発熱体を用いた定着装置では、サイズが小さい記録媒体が連続的に通紙されると、発熱体が加熱され続けられてその非通紙領域の温度が通紙領域の温度よりも異常に高くなる現象、つまり非通紙領域の過昇温現象が発生する。
従来、このような非通紙領域の過昇温現象を解消する技術として、発熱体を電磁誘導発熱させる磁束発生手段により生成された磁束のうち、前記発熱体の非通紙領域に作用する磁束のみを、発熱体の発熱幅方向に移動可能な磁束吸収部材により吸収するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、前記非通紙領域の過昇温現象を解消する他の技術として、発熱体を電磁誘導発熱させる磁束発生手段の第1磁性体コアの背後に、非通紙領域に対応する第2磁性体コアを配置し、第1磁性体コアと第2磁性体コアとのギャップを変化させて発熱体の長手方向の温度分布を変えるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
図1は、特許文献1に開示された定着装置の実施例の概略斜視図である。図1に示すように、この定着装置は、コイルアセンブリ10、金属スリーブ11、ホルダ12、加圧ローラ13、磁束遮蔽板31及び変位手段40などを備えている。
図1において、コイルアセンブリ10は、高周波磁界を生じる。金属スリーブ11は、コイルアセンブリ10の誘導コイル18により誘導電流を誘起されて加熱され記録材14を搬送する方向に回転する。コイルアセンブリ10は、ホルダ12の内部に保持されている。ホルダ12は、図示しない定着ユニットフレームに固定され非回転となっている。加
圧ローラ13は、金属スリーブ11に圧接してニップ部を形成しつつ記録材14を搬送する方向に回転する。このニップ部により記録材14が挟持搬送されることにより、記録材14上の未定着画像が発熱した金属スリーブ11により記録材14に加熱定着される。
磁束遮蔽板31は、図1に示すように、誘導コイル18の主として上半分を覆う円弧曲面を呈しており、変位手段40によりコイルアセンブリ10とホルダ12との両端部の隙間に対して進退される。変位手段40は、磁束遮蔽板31に連結されるワイヤ33と、ワイヤ33が懸架される一対のプーリ36と、一方のプーリ36を回転駆動するモータ34とを有している。
磁束遮蔽板31は、変位手段40により、記録材14のサイズが最大サイズの場合には図1に実線で示す位置に退避するように移動される。一方、磁束遮蔽板31は、記録材14のサイズが小サイズの場合には図1に鎖線で示す位置に進出するように移動される。これにより、誘導コイル18から金属スリーブ11の非通紙領域へ届く磁束が遮蔽され非通紙領域の過昇温が抑制される。
図2は、特許文献2に開示された定着装置の実施例の概略断面図である。図2に示すように、この定着装置は、加熱アセンブリ51、ホルダ52、コア保持回動部材53、励磁コイル54、第1コア55、第2コア56、定着ローラ57及び加圧ローラ58などを備えている。
図2において、加熱アセンブリ51は、ホルダ52、コア保持回動部材53、励磁コイル54、第1コア55及び第2コア56からなり磁束を発生する。定着ローラ57は、加熱アセンブリ51から発生する磁束の作用により誘導発熱され記録材59を搬送する方向に回転する。
加圧ローラ58は、定着ローラ57に圧接してニップ部を形成しつつ記録材59を搬送する方向に回転する。このニップ部により記録材59が挟持搬送されることにより、記録材59上の未定着画像が発熱した定着ローラ57により記録材59に加熱定着される。
第1コア55は、定着ローラ57の最大通紙領域の幅と同じ幅を有している。一方、第2コア56は、記録材59のサイズが最大サイズの場合には図2Aに示すように、第1コア55に近接した位置に移動される。また、第2コア56は、記録材59のサイズが小サイズの場合には図2Bに示すように、コア保持回動部材53が180°回転して第1コア55から離間した位置に移動される。これにより、第2コア56に対応する定着ローラ57の非通紙領域の発熱が抑えられる。
特開平10−74009号公報
特開2003−123961号公報
しかしながら、前者の定着装置は、磁束遮蔽板31を変位手段40によりコイルアセンブリ10とホルダ12との両端部の隙間に対して進退させる構成であるため、図1に示すように、変位手段40の一対のプーリ36がホルダ12の両端部から大きく突出し定着装置本体が大型化してしまう不具合がある。
さらに、前者の定着装置は、図1に示すように金属スリーブ11と誘導コイル18の間に磁束遮蔽板31を配置する構成である。誘導加熱方式を用いる定着装置では、誘導コイ
ル18と金属スリーブ11の間の隙間を例えば1mm程度に狭く保って、磁気的な結合を高める必要がある。磁束遮蔽板31はその狭い隙間に挿入するため、厚みを薄くする必要がある。つまり、磁束遮蔽板31は十分な厚みがとれないため電気抵抗が高くなり、自ら発熱しやすくなるという問題がある。磁束遮蔽板31に通孔35を形成することで、渦電流による発熱を抑えることができるが、これにより磁束が金属スリーブ11に届いて金属スリーブの非通紙領域が発熱する。この結果、小サイズの記録材14が連続的に通紙されると、金属スリーブ11の非通紙領域に熱が蓄積し、過昇温を抑制できないという問題がある。
また、後者の定着装置は、図2A、図2Bに示すように、コア保持回動部材53の回転により第2コア56が第1コア55に対して変位しても第1コア55と定着ローラ57との間隔が変化しないため、定着ローラ57の通紙領域と非通紙領域との磁気的ギャップが一定である。
このため、この定着装置は、第1コア55に対応する通紙領域の端部から第2コア56に対応する非通紙領域の端部への磁束の回り込みが発生し、定着ローラ57の非通紙領域における磁束の抑制効果が低くなってしまう。この結果、この定着装置では、小サイズの記録材59が連続的に通紙されると、定着ローラ57の非通紙領域に熱が蓄積し、過昇温を効果的に抑制することができないという問題がある。
また、この定着装置では、コア保持回動部材53に1つの記録材サイズに対応した第2コア56しか保持できないため、定着ローラ57の通紙領域幅を最大サイズと小サイズとの2種類の記録材の紙幅にしか対応させることができない。
本発明の目的は、発熱体の通紙領域から非通紙領域への磁束の回り込みによる非通紙領域の過昇温を防止することができる小型な定着装置を提供することである。
本発明の定着装置は、磁束を発生する磁束発生手段と、前記磁束により誘導加熱される発熱体と、前記発熱体に対向して配置されて前記磁束発生手段と前記発熱体との間の磁束の経路を形成する磁路形成体と、前記磁路形成体に配設されかつ前記磁路形成体と前記発熱体との間の前記発熱体の非通紙領域に対応する磁束の経路の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽位置に臨むことにより前記非通紙領域に対応する前記磁路形成体と前記発熱体との磁気的な結合を抑制する磁気抑制体と、回転により前記遮蔽位置と前記遮蔽位置から退避した退避位置とに前記磁気抑制体を臨ませる回転手段と、を具備する。
本発明によれば、発熱体の通紙領域から非通紙領域への磁束の回り込みによる非通紙領域の過昇温を防止することができる小型な定着装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一の構成または機能を有する構成要素及び相当部分には、同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図3は、本発明の実施の形態1に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。
図3に示すように、画像形成装置100は、電子写真感光体(以下、「感光ドラム」と称する)101、帯電器102、レーザービームスキャナ103、現像器105、給紙装置107、定着装置200及びクリーニング装置113などを具備している。
図3において、感光ドラム101は、矢印の方向に所定の周速度で回転駆動されながら、その表面が帯電器102によってマイナスの所定の暗電位V0に一様に帯電される。
レーザービームスキャナ103は、図示しない画像読取装置やコンピュータ等のホスト装置から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービーム104を出力し、一様に帯電された感光ドラム101の表面をレーザービーム104によって走査露光する。これにより、感光ドラム101の露光部分の電位絶対値が低下して明電位VLとなり、感光ドラム101の表面に静電潜像が形成される。
現像器105は、回転駆動される現像ローラ106を備えている。現像ローラ106は
、感光ドラム101と対向して配置されており、その外周面にはトナーの薄層が形成される。また、現像ローラ106には、その絶対値が感光ドラム101の暗電位V0よりも小さく、明電位VLよりも大きい現像バイアス電圧が印加されている。
これにより、現像ローラ106上のマイナスに帯電したトナーが感光ドラム101の表面の明電位VLの部分にのみ付着し、感光ドラム101の表面に形成された静電潜像が反転現像されて顕像化されて、感光ドラム101上に未定着トナー像111が形成される。
一方、給紙装置107は、給紙ローラ108により所定のタイミングで記録媒体としての記録紙109を一枚ずつ給送する。給紙装置107から給送された記録紙109は、一対のレジストローラ110を経て、感光ドラム101と転写ローラ112とのニップ部に、感光ドラム101の回転と同期した適切なタイミングで送られる。これにより、感光ドラム101上の未定着トナー像111が、転写バイアスが印加された転写ローラ112により記録紙109に転写される。
このようにして未定着トナー像111が形成担持された記録紙109は、記録紙ガイド114により案内されて感光ドラム101から分離された後、定着装置200の定着部位に向けて搬送される。定着装置200は、その定着部位に搬送された記録紙109に未定着トナー像111を加熱定着する。
未定着トナー像111が加熱定着された記録紙109は、定着装置200を通過した後、画像形成装置100の外部に配設された排紙トレイ116上に排出される。
一方、記録紙109が分離された後の感光ドラム101は、その表面の転写残トナー等の残留物がクリーニング装置113によって除去され、繰り返し次の画像形成に供される。
次に、図3に示した画像形成装置100の定着装置について説明する。図4は、この定着装置の構成を示す断面図である。図4に示すように、この定着装置200は、定着ベルト210、ベルト支持部材としての支持ローラ220、電磁誘導加熱手段としての励磁装置230、定着ローラ240及びベルト回転手段としての加圧ローラ250などを具備している。
図4において、定着ベルト210は、支持ローラ220と定着ローラ240とに懸架されている。支持ローラ220は、定着装置200の本体側板201の上部側に回転自在に軸支されている。定着ローラ240は、本体側板201に短軸202により揺動自在に取り付けられた揺動板203に回転自在に軸支されている。加圧ローラ250は、定着装置200の本体側板201の下部側に回転自在に軸支されている。
揺動板203は、コイルバネ204の緊縮習性により、短軸202を中心として時計方向に揺動する。定着ローラ240は、この揺動板203の揺動に伴って変位し、その変位により定着ベルト210を挟んで加圧ローラ250に圧接している。支持ローラ220は図示されないバネにより定着ローラ240と反対側に付勢され、これにより定着ベルト210には所定の張力が付与されている。
加圧ローラ250は、図示しない駆動源により矢印方向に回転駆動される。定着ローラ240は、加圧ローラ250の回転により定着ベルト210を挟持しながら従動回転する。これにより、定着ベルト210が、定着ローラ240と加圧ローラ250とに挟持されて矢印方向に回転される。この定着ベルト210の挟持回転により、定着ベルト210と加圧ローラ250との間に未定着トナー像111を記録紙109上に加熱定着するための
ニップ部が形成される。
励磁装置230は、前記IH方式の電磁誘導加熱手段からなり、図4に示すように、定着ベルト210の支持ローラ220に懸架された部位の外周面に沿って配設した磁気発生手段としての励磁コイル231と、励磁コイル231を覆うフェライトで構成したコア232とを備えている。励磁コイル231は、通紙幅方向に延伸し定着ベルト210の両端で折り返して巻回される。また、支持ローラ220の内部には定着ベルト210及び支持ローラ220を挟んで励磁コイル231と対向する対向コア233を備えている。
励磁コイル231は、細い線を束ねたリッツ線を用いて形成されており、支持ローラ220に懸架された定着ベルト210の外周面を覆うように、断面形状が半円形に形成されている。励磁コイル231には、図示しない励磁回路から駆動周波数が25kHzの励磁電流が印加される。これより、コア232と対向コア233との間に交流磁界が発生し、定着ベルト210の導電層に渦電流が発生して定着ベルト210が発熱する。なお、本例では、定着ベルト210が発熱する構成であるが、支持ローラ220を発熱させ、この支持ローラ220の熱を定着ベルト210に伝導する構成としてもよい。
コア232は、励磁コイル231の中心と背面の一部に設けられている。コア232及び対向コア233の材料としては、フェライトの他、パーマロイ等の高透磁率の材料を用いることができる。
この定着装置200は、図4に示すように、未定着トナー像111が転写された記録紙109を、未定着トナー像111の担持面を定着ベルト210に接触させるように矢印方向から搬送することにより、記録紙109上に未定着トナー像111を加熱定着することができる。
なお、支持ローラ220との接触部を通り過ぎた部分の定着ベルト210の裏面には、サーミスタからなる温度センサ260が接触するように設けられている。この温度センサ260により定着ベルト210の温度が検出される。温度センサ260の出力は、図示しない制御装置に与えられている。制御装置は、温度センサ260の出力に基づいて、最適な画像定着温度となるように、前記励磁回路を介して励磁コイル231に供給する電力を制御し、これにより定着ベルト210の発熱量を制御している。
また、記録紙109の搬送方向下流側の、定着ベルト210の定着ローラ240に懸架された部分には、加熱定着を終えた記録紙109を排紙トレイ116に向けてガイドする排紙ガイド270が設けられている。
さらに、励磁装置230には、励磁コイル231及びコア232と一体に、保持部材としてのコイルガイド234が設けられている。このコイルガイド234は、PEEK材やPPSなどの耐熱温度の高い樹脂で構成されている。このコイルガイド234は、定着ベルト210から放射される熱が定着ベルト210と励磁コイル231との間の空間に籠もって、励磁コイル231が損傷を受けるのを回避することができる。
なお、図4に示したコア232は、その断面形状が半円形になっているが、このコア232は必ずしも励磁コイル231の形状に沿った形状とする必要はなく、その断面形状は、例えば、略Πの字状であってもよい。
定着ベルト210は、基材がガラス転移点360(℃)のポリイミド樹脂中に銀粉を分散して導電層を形成した、直径50mm、厚さ50μmの薄肉の無端状ベルトで構成されている。前記導電層は、厚さ10μm銀層を2〜3積層した構成としてもよい。また、さ
らに、この定着ベルト210の表面には、離型性を付与するために、フッ素樹脂からなる厚さ5μmの離型層(図示せず)を被覆してもよい。定着ベルト210の基材のガラス転移点は、200(℃)〜500(℃)の範囲であることが望ましい。さらに、定着ベルト210の表面の離型層としては、PTFE、PFA、FEP、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の離型性の良好な樹脂やゴムを単独であるいは混合して用いてもよい。
なお、定着ベルト210の基材の材料としては、上述のポリイミド樹脂の他、フッ素樹脂等の耐熱性を有する樹脂、電鋳によるニッケル薄板及びステンレス薄板等の金属を用いることもできる。例えば、この定着ベルト210は、厚さ40μmのSUS430(磁性)又はSUS304(非磁性)の表面に、厚さ10μmの銅メッキを施した構成のものであってもよい。
また、定着ベルト210は、モノクロ画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合には離型性のみを確保すればよいが、この定着ベルト210をカラー画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合には厚いゴム層を形成して弾性を付与することが望ましい。また、定着ベルト210の熱容量は、60J/K以下であるのが好ましく、さらに好ましくは、40J/K以下である。
支持ローラ220は、直径が20mm、長さが320mm、厚みが0.2mmの円筒状の金属ローラからなる。なお、支持ローラ220の材料としては、鉄及びニッケル等の磁性を有する金属を用いるのが好ましい。
図4に示すように、励磁コイル231に対向して対向コア233を用いる場合は、支持ローラ220は固有抵抗が50μΩcm以上である非磁性のステンレス材を用いることが好ましい。ちなみに、非磁性のステンレス材であるSUS304で構成した支持ローラ220は、固有抵抗が72μΩcmと高くかつ非磁性であるので支持ローラ220を透過する磁束があまり遮蔽されず、例えば0.2mmの肉厚のものでは支持ローラ220の発熱が極めて小さくなるので、定着ベルト210が有効に発熱する。また、SUS304で構成した支持ローラ220は、機械的強度も高いので0.04mmの肉厚に薄肉化して熱容量をさらに小さくすることができる。
定着ローラ240は、表面が低硬度(ここでは、JISA30度)、直径30mmの低熱伝導性の弾力性を有する発泡体であるシリコーンゴムによって構成されている。
加圧ローラ250は、硬度JISA65度のシリコーンゴムによって構成されている。この加圧ローラ250の材料としては、フッ素ゴム、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂や他のゴムを用いてもよい。また、加圧ローラ250の表面には、耐摩耗性や離型性を高めるために、PFA、PTFE、FEP等の樹脂あるいはゴムを、単独あるいは混合して被覆することが望ましい。また、加圧ローラ250は、熱伝導性の小さい材料によって構成されることが望ましい。
次に、本実施の形態1に係る定着装置の構成についてさらに詳細に説明する。図5は、本実施の形態1に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。図5に示すように、この定着装置300は、磁性材料で構成される前記発熱体としての発熱ローラ310、前記磁束発生手段としての励磁コイル331、励磁コイル331を覆うアーチコア332、アーチコア332と発熱ローラ310との間の磁束の経路を形成する前記磁路形成体としてのセンターコア333及びサイドコア334などを具備している。
図5及び図6において、センターコア333は、発熱ローラ310の回転軸方向に平行なフェライトなどの強磁性体からなる円柱状の回転体で構成され、励磁コイル331の巻
回中心に配置される。このセンターコア333には、その発熱ローラ310の非通紙領域に対向する対向面に、前記磁気抑制体としての2つの切欠部333a,333bが形成されている。これらの切欠部333a,333bは、センターコア333を挟んで互いに向き合うように位置している。
また、切欠部333a,333bは、記録紙109の通紙基準に応じてセンターコア333への形成位置が決められている。ここでは、記録紙109の通紙基準をセンター基準とし、切欠部333a,333bがセンターコア333の両端部に形成されている。
また、センターコア333の長さは、発熱ローラ310の最大通紙領域幅であるB4サイズの記録紙の幅よりも大きく形成されている。ここでは、図6に示すように、センターコア333の長さが、A3サイズの記録紙の幅に対応するように構成されている。また、切欠部333aは、発熱ローラ310と加圧ローラ250とのニップ部にA4サイズの記録紙を通紙した場合における発熱ローラ310の非通紙領域幅に対応した長さを有している。さらに、切欠部333bは、発熱ローラ310と加圧ローラ250とのニップ部にB4サイズの記録紙を通紙した場合における発熱ローラ310の非通紙領域幅に対応した長さを有している。
図7は、センターコア333の切欠部333a,333bを回転させる回転手段500を示す概略斜視図である。この回転手段500は、図7に示すように、センターコア333の支軸に設けた小歯車501、小歯車501に噛み合う大歯車502、大歯車502を軸支して回転するステッピングモータ503などで構成されている。
図7において、ステッピングモータ503がオン(通電)状態になると、その支軸の回転により大歯車502が回転して小歯車501が従動回転する。この小歯車501の従動回転により、センターコア333の支軸が回転して、切欠部333a,333bのうちの通紙される記録紙サイズの非通紙領域幅に対応した長さの所定の切欠部が、図8に示す退避位置から図5に示す遮蔽位置に回転する。
ここでは、図5に示すように、切欠部333bが、その退避位置から遮蔽位置に回転する。このようにして、切欠部333bがその退避位置から遮蔽位置に回転することにより、B4サイズの記録紙を通紙した場合の発熱ローラ310の非通紙領域に対応するセンターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合が切欠部333bにより抑制される。
また、切欠部333aが、回転手段500によりその退避位置から遮蔽位置に回転すると、A4サイズの記録紙を通紙した場合の発熱ローラ310の非通紙領域に対応するセンターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合が切欠部333aにより抑制される。
このように、この定着装置300は、回転手段500により各切欠部333a,333bを、その退避位置から遮蔽位置に回転して、センターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合力を制御している。
すなわち、この定着装置300では、センターコア333の回転により、磁気抑制体である各切欠部333a,333bが、図5に示す前記遮蔽位置に臨んだ状態と、図8に示す前記退避位置に臨んだ状態とで、前記非通紙領域に対応する部位の発熱ローラ310とセンターコア333との間隔が変化する。
この非通紙領域に対応する部位の発熱ローラ310とセンターコア333との間隔は、図5に示すように、各切欠部333a,333bが、前記遮蔽位置に臨んだ状態では広く
なり、図8に示すように、各切欠部333a,333bが、前記退避位置に臨んだ状態では狭くなる。
また、センターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合度は、センターコア333と発熱ローラ310との間隔が狭くなると強くなり、センターコア333と発熱ローラ310との間隔が広くなると弱くなる。
従って、この定着装置300では、回転手段500によりセンターコア333を回転して切欠部333a,333bを前記遮蔽位置に臨ませることにより、センターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合度を弱めて発熱ローラ310の非通紙領域の過昇温を抑制することができる。
また、この定着装置300においては、センターコア333を回転させるだけで、センターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合度の強弱の切り替えを行うことができるので、発熱ローラ333の通紙領域幅を、図6に示したように、A4サイズとB4サイズとの2種類のサイズの記録紙の紙幅に容易に対応させることができる。
さらに、この定着装置300では、前記磁気抑制体をセンターコア333に形成した切欠部333a,333bで構成しているので、前記磁気抑制体を別部材として用意する必要がなく、その構成の簡素化及び低廉化を実現できる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る定着装置の特徴部の構成について説明する。図9は、本実施の形態2に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。図9に示すように、この定着装置700は、前記磁気抑制体を磁気遮蔽部材701a,701bで構成したものであり、その他の構成は、実施の形態1に係る定着装置300と同様である。
前記磁気抑制体としての磁気遮蔽部材701a,701bは、発熱ローラ310の非通紙領域に対応するセンターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合を遮断することができる素材、例えば、銅もしくはアルミなどの安価な低透磁率の電気導体で形成される。この磁気遮蔽部材701a,701bは、図9及び図10に示すように、発熱ローラ310の非通紙領域に対向するセンターコア333の周面に、互いに向き合うように配設されている。
また、本実施の形態2に係る定着装置700は、実施の形態1に係る定着装置300と同様、記録紙109の通紙基準がセンター基準になっており、磁気遮蔽部材701a,701bがセンターコア333の両端部に形成されている。
ここで、センターコア333は、発熱ローラ310の最大通紙領域幅であるB4サイズの記録紙の幅よりも大きく形成されている。ここでは、図10に示すように、センターコア333の長さが、A3サイズの記録紙の幅に対応するように構成されている。また、磁気遮蔽部材701aは、発熱ローラ310と加圧ローラ250とのニップ部にA4サイズの記録紙を通紙した場合における発熱ローラ310の非通紙領域幅に対応した長さを有している。さらに、磁気遮蔽部材701bは、発熱ローラ310と加圧ローラ250とのニップ部にB4サイズの記録紙を通紙した場合における発熱ローラ310の非通紙領域幅に対応した長さを有している。
また、磁気遮蔽部材701a,701bは、図11に示す回転手段900により、センターコア333と共に回転される。この回転手段900は、図7に示した回転手段500と同様、センターコア333の支軸に設けた小歯車901、小歯車901に噛み合う大歯
車902、大歯車902を軸支して回転するステッピングモータ903などで構成されている。
図11において、ステッピングモータ903がオン(通電)状態になると、その支軸の回転により大歯車902が回転して小歯車901が従動回転する。この小歯車901の従動回転により、センターコア333の支軸が回転して、磁気遮蔽部材701a,701bのうちの通紙される記録紙サイズの非通紙領域幅に対応した長さの所定の磁気遮蔽部材が、図12に示す退避位置から図9に示す遮蔽位置に回転する。
ここでは、図9に示すように、磁気遮蔽部材701bが、その退避位置から遮蔽位置に回転する。このようにして、磁気遮蔽部材701bがその退避位置から遮蔽位置に回転することにより、B4サイズの記録紙を通紙した場合の発熱ローラ310の非通紙領域に対応するセンターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合が磁気遮蔽部材701bにより抑制される。
また、磁気遮蔽部材701aが、回転手段900によりその退避位置から遮蔽位置に回転すると、A4サイズの記録紙を通紙した場合の発熱ローラ310の非通紙領域に対応するセンターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合が磁気遮蔽部材701aにより抑制される。
このように、この定着装置700は、回転手段900により各磁気遮蔽部材701a,701bを、その退避位置から遮蔽位置に回転して、センターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合を遮断したり促進したりしている。
すなわち、この定着装置700では、センターコア333の回転により、磁気抑制体である各磁気遮蔽部材701a,701bが、図9に示す前記遮蔽位置に臨んだ状態で、前記非通紙領域に対応する部位の発熱ローラ310とセンターコア333との磁気的な結合が遮断される。
このように、この定着装置700では、回転手段900によりセンターコア333を回転して各磁気遮蔽部材701a,701bを前記遮蔽位置に臨ませることにより、センターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合が遮断されるので、発熱ローラ310の非通紙領域の過昇温を抑制することができる。
また、この定着装置700においては、実施の形態1に係る定着装置300と同様、センターコア333を回転させるだけで、センターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合を遮断したり促進したりできるので、発熱ローラ333の通紙領域幅を、図10に示したように、A4サイズとB4サイズとの2種類のサイズの記録紙の紙幅に容易に対応させることができる。
さらに、この定着装置700では、前記磁気抑制体をセンターコア333に配設した磁気遮蔽部材701a,701bで構成しているので、前記磁気抑制体を別部材として用意する必要がなく、その構成の簡素化及び低廉化を実現できる。
また、この定着装置700は、磁気遮蔽部材701a,701bを励磁コイル331の巻回中心に配置する構成であるので、磁気遮蔽部材701a,701bの厚みを薄くする必要性を無くすことができ、例えば1mm程度に厚さを増すことが可能になる。これにより、磁気遮蔽部材701a,701bは電気抵抗が小さくなるので、磁気遮蔽部材701a,701bの発熱は抑えられる。また、磁気遮蔽体301は、熱伝導率及び比熱が高いフェライト等の材料で構成されるセンターコア333に配設されているので、磁気遮蔽部
材701a,701bで生じた熱はセンターコア333に伝導して拡散し、磁気遮蔽部材701a,701bの過度な温度上昇を抑えられる。また、磁気遮蔽部材701a,701bは厚みを増すことにより電気抵抗が小さくなり、渦電流が流れやすくなる。これにより、反発磁界が強まって磁束をより効果的に遮蔽することができる。さらに、磁気遮蔽部材701a,701bは通孔35を必要としないので、図1の磁束遮蔽板31に比べて磁束をより効果的に遮蔽できる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る定着装置の構成について説明する。図13は、本実施の形態3に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。図13に示すように、この定着装置1100は、励磁コイル331を覆うアーチコア332のセンターコア333を挟んで発熱ローラ310と対向する側に、センターコア333を迂回するように磁束の経路を形成する迂回経路部332aを形成したものである。なお、この定着装置1100のその他の構成は、実施の形態2に係る定着装置700と同様である。
この定着装置1100は、センターコア333に形成された磁気抑制体としての磁気遮蔽部材701a,701bにより磁気的な結合度が規制される磁束の経路の他に、アーチコア332の迂回経路部332aにより新たな磁束の経路が形成される。
このように、この定着装置1100は、迂回経路部332aにより新たな磁束の経路を確保することができるので、発熱ローラ310の過昇温を起こさずに通紙できる通紙領域サイズの数を増やすことができる。
つまり、この定着装置1100では、磁路600の閉ループのうち、センターコア333と発熱ローラ310との間の磁束が集中している部位を、センターコア333の磁気遮蔽部材701a,701bにより遮蔽している。従って、この定着装置1100においては、発熱ローラ310の非通紙領域に対応するセンターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合を効率よく抑制することができ、前記磁気抑制体である磁気遮蔽部材701a,701bの回転方向の幅を小さく構成することができ、図13に示すように、センターコア333に2つの磁気遮蔽部材701a,701bを形成することができる。
従って、この定着装置1100においては、その発熱ローラ310の通紙領域を、センターコア333に形成した2つの磁気遮蔽部材701a,701bにより規制される2種類のサイズの記録紙と、図14に示すように、アーチコア332の迂回経路部332aを通る新たな磁束の経路に対応した3種類目のサイズの記録紙とに対応させることが可能になる。この実施の形態では、図10におけるA4,B4のサイズの他にA3のサイズにも対応させることができる。
また、この定着装置1100は、磁気遮蔽部材701a,701bを励磁コイル331の巻回中心に配置する構成であるので、磁気遮蔽部材701a,701bの厚みを薄くする必要性を無くすことができ、例えば1mm程度に厚さを増すことが可能になる。これにより、磁気遮蔽部材701a,701bは電気抵抗が小さくなるので、磁気遮蔽部材701a,701bの発熱は抑えられる。また、磁気遮蔽体301は、熱伝導率及び比熱が高いフェライト等の材料で構成されるセンターコア333に配設されているので、磁気遮蔽部材701a,701bで生じた熱はセンターコア333に伝導して拡散し、磁気遮蔽部材701a,701bの過度な温度上昇を抑えられる。また、磁気遮蔽部材701a,701bは厚みを増すことにより電気抵抗が小さくなり、渦電流が流れやすくなる。これにより、反発磁界が強まって磁束をより効果的に遮蔽することができる。さらに、磁気遮蔽部材701a,701bは通孔35を必要としないので、図1の磁束遮蔽板31に比べて磁束をより効果的に遮蔽できる。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4に係る定着装置の構成について説明する。図15は、本実施の形態4に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。図15及び図16に示すように、この定着装置1300は、前記磁気抑制体を段付部1333a、1333bで構成したものであり、その他の構成は、実施の形態1に係る定着装置300と同様である。
この定着装置1300のセンターコア1333は、矩形状の柱体で構成されている。また、前記磁気抑制体としての段付部1333a、1333bは、図16に示すように、発熱ローラ310の非通紙領域に対向するセンターコア1333の両端部の下半分に形成されている。これにより、図15に示すように、段付部1333a、1333bが形成されていない側のセンターコア1333の対向面の回転方向の幅W1は、段付部1333a、1333bが形成されている側のセンターコア333の対向面の回転方向の幅W2よりも大きくなる。
すなわち、この定着装置1300においては、センターコア1333の回転により、その磁気抑制体である段付部1333a、1333bが発熱ローラ310に対向する対向位置に臨んだ状態と、段付部1333a、1333bが発熱ローラ310から退避する退避位置に臨んだ状態とで、発熱ローラ310の非通紙領域に対向するセンターコア1333の対向面の回転方向の幅が変化する。
この発熱ローラ310の非通紙領域に対向するセンターコア1333の対向面の回転方向の幅は、段付部1333a、1333bが前記退避位置に臨んだ状態では広い幅W1となり、段付部1333a、1333bが前記対向位置に臨んだ状態では狭い幅W2となる。また、発熱ローラ310とセンターコア1333との磁気的な結合力は、センターコア1333の対向面の回転方向の幅が広くなると強くなり、発熱ローラ310の非通紙領域に対向するセンターコア1333の対向面の回転方向の幅が狭くなると弱くなる。
従って、この定着装置1300によれば、回転手段500(又は900)によりセンターコア1333を回転して、段付部1333a、1333bを前記対向位置に臨ませることにより、発熱ローラ310とセンターコア1333との磁気的な結合度を弱めて、発熱ローラ310の非通紙領域の過昇温を抑制することができる。
また、この定着装置1300においては、センターコア1333を回転させるだけで、発熱ローラ310とセンターコア1333との磁気的な結合度の強弱の切り替えを行うことができるので、発熱ローラ310の通紙領域幅を複数種類のサイズの記録紙の紙幅に容易に対応させることができる。
また、この定着装置1300は、前記磁気抑制体を別部材として用意する必要がないので、構成の簡素化及び低廉化を実現できる。このように、この定着装置1300によれば、複数種類のサイズの記録紙の通紙時における発熱ローラ310の非通紙領域の過昇温を容易に防止することができる。
なお、この定着装置1300におけるセンターコア1333の形状としては、図16に示した矩形状以外に、図17Bに示すような4種の段付部1333a,1333b,1333cが形成されたクロス状であってもよい。
また、図17A,Cに示すように、センターコア1333の段付部には、銅又はアルミからなる磁気遮蔽部材1501a,1501b,1501cを埋め込んだ構成であってもよい。
(実施の形態5)
次に、実施の形態5に係る定着装置について説明する。図18は、本実施の形態5に係る定着装置の概略断面図である。図18に示すように、この定着装置1600は、前記磁路形成体としてのセンターコア1633に、プーリ1601により回転される無端ベルト1602を懸架し、この無端ベルト1602の周面に、前記磁気抑制体としての所定幅の磁気遮蔽層1603を形成したものである。
この定着装置1600においては、プーリ1601により無端ベルト1602を回転して、この無端ベルト1602の周面の磁気遮蔽層1603により、図19に示すように、発熱ローラ310の非通紙領域に対応するセンターコア1633の部位を覆い隠す。
これにより、無端ベルト1602の磁気遮蔽層1603により覆い隠された前記非通紙領域に対応するセンターコア1633と発熱ローラ310との磁気的な結合度が抑制されて、発熱ローラ310の非通紙領域の過昇温が抑制される。
また、この定着装置1600においては、無端ベルト1602を長くすることにより、前記磁気抑制体としての磁気遮蔽層1603を数多く設けることができるので、前記発熱体をより多くの通紙サイズ(加熱幅)に対応した構成とすることができる。
(実施の形態6)
次に、実施の形態6に係る定着装置の構成について説明する。図20は、本実施の形態6に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。図20に示すように、この定着装置1800は、アーチコア332と励磁コイル331との間に漏洩磁気遮蔽体1801を配設して構成したものであり、その他の構成は、実施の形態3に係る定着装置1100と同様である。
前記磁気抑制体としての磁気遮蔽部材701bは、センターコア333と発熱ローラ310との磁気的な結合を遮断しているため、発熱ローラ310の非通紙領域の過昇温は抑制される。しかし、アーチコア332から励磁コイル331を貫いて発熱ローラ310に達する若干の漏洩磁束が生じる。この漏洩磁束を漏洩磁気遮蔽体1801が遮蔽するので、非通紙領域の過昇温は効果的に抑制される。
なお、漏洩磁気遮蔽体1801は励磁コイル331の巻回部位の幅よりも狭くする方が好ましい。このようにすれば、発熱ローラ310の最大通紙領域幅を加熱する場合において、漏洩磁気遮蔽体1801は、図14に示す磁路600の閉ループに影響を与えないので温度ムラは生じない。
ところで、前記各実施の形態に係る定着装置においては、その発熱体として発熱ローラ310を用いているが、この発熱体は、図4に示した発熱ベルト210であってもよい。
また、前記各実施の形態に係る定着装置においては、前記磁気抑制体が配設される前記磁路形成体をセンターコア333(又は1333)としたが、前記磁気抑制体を配設する磁路形成体は、アーチコア332の磁路を横断する励磁コイル331の側部に配置したサイドコア334であってもよい。この構成によれば、発熱ローラ310の非通紙領域に対応するサイドコア334と発熱ローラ310との磁気的な結合度の強弱を切り換えることができる。
また、前記各実施の形態に係る定着装置は、磁束発生手段としての励磁コイル331及びセンターコア333などを、発熱ローラ310の外側に配置した構成となっている。こ
のような構成の定着装置は、前記磁路形成体としてのセンターコア333及びその回転手段500を配設する空間に余裕があり、装置本体の設計の自由度が向上される。また、この構成の定着装置は、磁気遮蔽部材701a,701bが発熱ローラ310の外側に配置されているので、磁気遮蔽部材701a,701bに生じた熱は、周囲の空気の自然対流により放熱しやすい。また、送風ファンによる強制対流による冷却も容易である。
なお、前記各実施の形態に係る定着装置は、磁束発生手段としての励磁コイル331及びセンターコア333などを、発熱ローラ310の外側に配置しているので、消耗品である発熱ローラ310等の部品の交換やメンテナンスの作業効率が良好である。
本明細書は、2003年10月17日出願の特願2003−358023に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
以上説明したように、本発明に係る定着装置は、小型に構成でき、かつ発熱体の通紙領域から非通紙領域への磁束の回り込みによる非通紙領域の過昇温を防止することができるので、電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の定着装置として有用である。
従来の定着装置の構成を示す概略斜視図
従来の他の定着装置の要部の構成を示す概略断面図
当該定着装置の動作態様を示す概略断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置の全体構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の基本的な構成を示す断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置のセンターコアに磁気抑制体としての切欠部を形成した構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の磁気抑制体としての切欠部を回転させる回転手段の構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の磁気抑制体としての切欠部を退避位置に回転させた状態を示す概略断面図
本発明の実施の形態2に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態2に係る定着装置のセンタアーコアに磁気抑制体としての磁気遮蔽部材を配設した構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態2に係る定着装置の磁気抑制体としての磁気遮蔽部材を回転させる回転手段の構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態2に係る定着装置の磁気抑制体としての磁気遮蔽部材を退避位置に回転させた状態を示す概略断面図
本発明の実施の形態3に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態3に係る定着装置の磁気抑制体としての切欠部を退避位置に回転させた状態を示す概略断面図
本発明の実施の形態4に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態4に係る定着装置のセンタアーコアの構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態4に係る定着装置の矩形状のセンタアーコアの構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態4に係る定着装置のクロス状のセンタアーコアの構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態4に係る定着装置のクロス状のセンタアーコアの段付部に磁気遮蔽部材を埋め込んだ構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態5に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態5に係る定着装置の要部の動作態様を示す概略断面図
本発明の実施の形態6に係る定着装置の構成を示す概略断面図