JP2008139475A - 電磁誘導加熱方式の定着装置 - Google Patents

電磁誘導加熱方式の定着装置 Download PDF

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Abstract

【課題】様々な用紙幅の用紙に対応し,画像品質の低下および定着ローラの過昇温の抑制を両立した電磁誘導加熱方式の定着装置を提供すること。
【解決手段】定着装置には,励磁コイル31が定着ローラ1に沿って巻回されている。そして,励磁コイル31上に第1消磁コイル34が,さらにその第1消磁コイル34上には第2消磁コイル35がそれぞれ積み重ねられた状態で配置されている。さらに,第1消磁コイル34と第2消磁コイル35とでは,定着ローラ1の軸方向の外形寸法が異なっている。また,第2消磁コイル35の,定着ローラ1の周方向の開口幅は,第1消磁コイル34の開口幅よりも広い。
【選択図】 図8

Description

本発明は,トナー画像を記録媒体に加熱定着させる電磁誘導加熱方式の定着装置に関する。さらに詳細には,消磁コイルを励磁コイル上に積載し,加熱回転体の長手方向の温度調節を行う定着装置に関するものである。
近年,消費電力の低減,起動時間の短縮化の観点から,電磁誘導加熱方式の定着装置が提案されている。電磁誘導加熱方式の定着装置は,励磁コイル等を備えた磁束発生部を有し,その磁束発生部による磁界形成によって定着ローラ内の電磁誘導発熱層の発熱を促している。電磁誘導加熱方式の定着装置は,発熱層を直接加熱できるという特徴を有し,ハロゲンヒータと比較して定着部材の熱容量が小さい構成とすることが可能となる。これにより,高熱効率化や高速加熱化が図られる。
また,定着装置では,小サイズ紙の通紙時に発生する定着ローラの端部の過昇温に対応するため,用紙のサイズに合わせて部分的に定着ローラを加熱する。電磁誘導加熱方式の定着装置の場合,励磁コイルとは逆向きの磁界を形成する消磁コイルを励磁コイル上に積載し,消磁コイルの消磁効果により定着ローラの加熱領域を調節するもの(例えば,特許文献1,特許文献2)が開示されている。
特開2001−135470号公報 特開2001−60490号公報
しかしながら,前記した従来の電磁誘導加熱方式の定着装置には,次のような問題があった。すなわち,定着装置では様々な用紙幅の用紙に対応する必要がある。図13に,定着ローラ1と加圧ローラ2とのニップ部にて通紙される用紙のサイズと,励磁コイル31および消磁コイル34a,34bの配置例を示す。図13の定着装置では,用紙幅サイズCに合わせて消磁コイル34a,34bが配置されている。この消磁コイル34a,34bは,所定の領域(図13中の消磁領域)の発熱を抑制するのみであり,用紙のサイズに対応して消磁領域の幅を変化させることはできない。
そのため,例えば,用紙幅サイズBのように比較的大きいサイズの用紙を通紙する場合,非通紙領域の温度を耐熱性上限温度以下に抑えようとすると,図14に示すように,通紙領域内にて定着性下限温度を下回る領域が生じる。そのため,画像品質が低下してしまう。また,仮に通紙領域内の温度を優先した場合には,非通紙領域の温度を耐熱性上限温度以下に抑えることが困難である。そのため,定着ローラの劣化が懸念される。つまり,単一の消磁コイル34a,34bでは,画像品質の安定性と定着ローラの耐久性との両立が困難である。
また,図15に示すように,励磁コイル31上に第1消磁コイル36a,36b(以下,第1消磁コイル36aと第1消磁コイル36bとを合わせて「第1消磁コイル36」とする)と,第2消磁コイル37a,37b(以下,第2消磁コイル37aと第2消磁コイル37bとを合わせて「第2消磁コイル37」とする)とを定着ローラ1の軸方向に並べて載置し,複数の消磁領域に区画することも考えられる。
この場合,用紙幅サイズA以上の用紙の通紙では,第1消磁コイル36と第2消磁コイル37とをオフ状態とする。用紙幅サイズD以上用紙幅サイズA未満では,第1消磁コイル36のみをオン状態とし,第2消磁コイル37はオフ状態とする。用紙幅サイズD未満では,第1消磁コイル36と第2消磁コイル37とをともにオン状態とする。このように用紙サイズに合わせて各消磁コイルのオンオフ状態を切り換えることで,より多くの用紙サイズに対応することができる。
しかし,上記の形態では,第1消磁コイル36および第2消磁コイル37を並べて配置しているため,消磁領域の継ぎ目が生じる。そのため,その継ぎ目周辺での消磁効果が小さい。従って,用紙幅サイズC等の小サイズ紙を通紙する際(第1消磁コイル36および第2消磁コイル37をともにオン状態とする際),その継ぎ目周辺で過昇温が生じるおそれがある。そのため,定着ローラ1の過昇温を確実に抑制することができない。
本発明は,前記した従来の電磁誘導加熱方式の定着装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,様々な用紙幅の用紙に対応し,画像品質の低下および定着ローラの過昇温の抑制を両立した電磁誘導加熱方式の定着装置を提供することにある。
この課題の解決を目的としてなされた定着装置は,電磁誘導発熱する発熱層を備えた加熱回転体と,加熱回転体の軸方向に沿って前記加熱回転体に対向配置され,給電により磁束を発生させる磁束発生部とを有する電磁誘導加熱方式の定着装置であって,磁束発生部は,加熱回転体との間に磁界を形成する励磁コイルと,励磁コイル上に積載され,励磁コイルが形成した磁界を減少させる第1消磁コイルと,第1消磁コイル上に積載され,励磁コイルが形成した磁界を減少させる第2消磁コイルとを有し,第1消磁コイルと第2消磁コイルとは,加熱回転体の軸方向の外形寸法が異なることを特徴としている。
すなわち,本発明の定着装置は,電磁誘導加熱方式であり,加熱回転体の軸方向に沿って磁束発生部が対向配置されている。加熱回転体は,ローラ部材であってもベルト部材であってもよい。本発明の定着装置では,磁束発生部への電力供給によって磁束発生部と加熱回転体との間に磁界を発生させる。そして,その磁界の発生により加熱回転体の発熱層(電磁誘導発熱層)に渦電流が生じ,その発熱層が加熱される。
また,本定着装置の磁束発生部には,磁界を形成する励磁コイルと,その磁界を部分的に減少させる第1消磁コイルおよび第2消磁コイルとが積み重ねられて配置されている。さらに,両消磁コイルの加熱回転体軸方向の外形寸法が異なっている。すなわち,第1消磁コイルと第2消磁コイルとでは消磁領域の幅が異なる。そのため,用紙サイズに合わせて各消磁コイルのオンオフ状態を切り換えることで,より多くの用紙サイズに対応することができ,その結果として高速化を図ることができる。さらに,両消磁コイルは励磁コイル上に積み重ねられているため,消磁領域に継ぎ目が生じない。よって,加熱回転体の過昇温をムラなく抑制することができる。
また,第1消磁コイルの,加熱回転体の軸方向の外形寸法は,第2消磁コイルの,同方向の外形寸法よりも長いこととするとよりよい。すなわち,外形寸法が長い消磁コイルから順に下から積層する。これにより,両コイル間の密着安定性を向上させることができる。
また,第2消磁コイルの,加熱回転体周方向の開口幅は,第1消磁コイルの開口幅よりも広いこととするとよりよい。すなわち,開口幅を大きくするほど,隣接するコイルが形成する磁界の影響を受けにくい。そのため,第2消磁コイルは,第1消磁コイルと比較して,逆磁界を形成し易い。よって,励磁コイルから離れることによる消磁能力の低下を抑制することができる。
また,第2消磁コイルの巻き数は,第1消磁コイルの巻き数よりも多いこととするとよりよい。すなわち,上段に位置する第2消磁コイルは,その巻き数が下段の第1消磁コイルの巻き数よりも多いことから,第1消磁コイルよりも消磁能力が高い。よって,励磁コイルから離れることによる消磁能力の低下を抑制することができる。
本発明によれば,様々な用紙幅の用紙に対応し,画像品質の低下および定着ローラの過昇温の抑制を両立した電磁誘導加熱方式の定着装置が実現している。
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお,本実施の形態は,電子写真方式のプリンタに備えられた電磁誘導加熱方式の定着装置に本発明を適用したものである。
本形態の画像形成装置は,電子写真方式のレーザプリンタであり,図1に示すように光学系にレーザ発振器102と,ポリゴンミラー103と,反射ミラー104とが配置され,画像プロセス部に感光体ドラム101と,帯電器105と,現像器106と,転写器107と,クリーニングブレード108とが配置されている。また,搬送部に給紙ローラ109と,排紙ローラ115と,給紙センサ110と,排紙センサ114と,定着装置100等とが配置されている。
次に,上記のように構成されたレーザプリンタの動作を簡単に説明する。感光体ドラム101は図1中矢印方向に回転しており,帯電器105により表面を一様に帯電させられる。また,画像信号に基づいて,レーザ発振器102からレーザ光が変調発光される。このレーザ光は,ポリゴンミラー103により主走査方向に走査され,反射ミラー104により反射されて感光体ドラム101に入射する。これにより,感光体ドラム101上に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像器106により現像されてトナー像となる。トナー像は,感光体ドラム101に対向して配置された転写器107により,給紙ローラ109によって給紙された記録紙P上に転写される。その後,トナー像が転写された記録紙Pは,定着装置100において加熱され,その熱によりトナー像が溶融して記録紙P上に定着される。画像定着後,記録紙Pは,排紙ローラ115により装置外に排出される。以上の動作により,1枚分のプリントが行われる。
続いて,本形態の定着装置100の構成について説明する。図2は定着装置100を軸方向(正面)から見た概略構成図であり,図3は通紙方向上流側の側面から見た概略構成図であり,図4は図2の定着装置100を上面から見た概略構成図である。定着装置100は,電磁誘導加熱方式の定着装置であり,定着ローラ1と,加圧ローラ2と,磁束発生部3と,温度センサ41,42,43と,通電遮蔽部7と,分離爪8とを有している。Pは用紙を示している。
定着ローラ1と加圧ローラ2とは定着ローラ1の軸方向(以下,「ローラ軸方向」とする)に並行配置されている。加圧ローラ2は,モータ等の駆動機構により所定の速度で回転駆動される。また,加圧ローラ2は,バネ等の付勢部材によって定着ローラ1側に付勢されており,定着ローラ1との間でニップ部を形成している。さらに定着ローラ1は,加圧ローラ2との圧接摩擦力によって定着ローラ1の回転に従動回転するように設けられている。なお,定着ローラ1を回転駆動させて加圧ローラ2を従動回転させてもよい。
定着ローラ1は,図5に示すように,芯金11上に,断熱層12,電磁誘導発熱層13,弾性層14,および離型層15が順次積層されている。また,ローラ硬度は,例えばアスカーC硬度で30度〜90度の範囲内に設定される。
支持層としての芯金11は,厚さが4mm程度のアルミパイプである。なお,芯金11には,鉄やPPS(ポリフェニレンサルファイド)のような耐熱性樹脂を使用することも可能である。なお,芯金11が発熱するのを防ぐために電磁誘導加熱の影響が少ない非磁性材料を用いるのが好ましい。
断熱層12は,電磁誘導発熱層13を断熱保持するための層であり,耐熱性や弾性を有する部材(例えば,ゴム材や樹脂材)のスポンジ体が適用される。また,ゴム材や樹脂材のスポンジ体を用いると,電磁誘導発熱層13を断熱保持するとともに,電磁誘導発熱層13のたわみを許容し,ニップ幅を増やすことができる。そして,ローラ硬度を小さくし,排紙性および記録紙の分離性の向上を図ることができる。例えば,断熱層12にシリコンスポンジ材を適用する場合には,厚さが2mm〜15mm,望ましくは3mm〜10mmの範囲内に,また硬度がアスカーゴム硬度計で15度〜60度,望ましくは20度〜50度の範囲内にそれぞれ設定される。
また,断熱層12の代わりに,下層にソリッドゴム層,表層にスポンジゴム層の2層構造を用いると,耐久性の向上を図ることができる。このような構造を有するローラは,特に高荷重や高速回転のような比較的過酷な条件で使用される場合や,ニップ幅の確保のために断熱層12の厚みを厚く設定する場合や,柔らかいスポンジ層を使用する場合に,ゴムの破断を防ぐことができる。
電磁誘導発熱層13は,磁束発生部3による励磁によりジュール熱を発生させる層であり,厚さが10μm〜100μm,望ましくは20〜50μmの範囲内のニッケル電鋳ベルト層である。なお,電磁誘導発熱層13には,例えば磁性ステンレスのような磁性金属といった,高透磁率であり,適当な抵抗率を備えたものを使用してもよい。また,非磁性材料でも,金属などの導電性がある材料の薄膜であっても使用可能である。また,樹脂に発熱粒子を混入したものを使用してもよい。電磁誘導発熱層13に樹脂ベースのものを用いることによって分離性の向上を図ることが可能となる。
電磁誘導発熱層13には,後述する磁束発生部3による励磁により渦電流が流れる。電磁誘導発熱層13は,熱容量が小さく,芯金側に位置する断熱層12と接しているため,定着ローラ1の表層側に位置する弾性層14あるいは離型層15を迅速に加熱する。よって,定着ローラ1の表面温度を所望の温度に迅速に到達させることができ,通紙時に記録紙に熱が奪われたとしても必要な熱をすぐに供給することができる。
弾性層14は,記録紙と定着ローラ1表面との密着性を高めるための層であり,耐熱性や弾性を有する部材(例えば,ゴム材や樹脂材)が適用される。具体的には,定着温度での使用に耐えうるシリコンゴム,フッ素ゴム等の耐熱性エラストマーが使用可能である。なお,弾性層14に,熱伝導性や補強等を目的として各種充填剤を混入してもよい。熱伝導性粒子としては,ダイヤモンド,銀,銅,アルミニウム,大理石,ガラス等がある。この他,シリカ,アルミナ,酸化マグネシウム,窒化ホウ素,酸化ベリリウム等が使用可能である。
弾性層14の厚みは,10μm〜800μm,望ましくは100μm〜300μmの範囲内に設定される。なお,弾性層14の厚さが10μm未満であると厚み方向の弾力性を得ることが困難となる。一方,弾性層14の厚さが800μmを超えてしまうと,電磁誘導発熱層13からの熱が定着ローラ1の表面に達し難くなって熱効率が悪化する。
弾性層14の硬度は,JIS硬度で1度〜80度,望ましくは5度〜30度のシリコンゴムからなることが好ましい。この範囲内であれば,弾性層14の強度の低下,密着性の不良を抑制しつつ,トナーの定着性の不良を抑制できる。シリコンゴムとしては,1成分系,2成分系,または3成分系以上のシリコンゴム,LTV型,RTV型,またはHTV型のシリコンゴム,縮合型または付加型のシリコンゴム等が使用可能である。本形態では,JIS硬度が10度,厚さが200μmのシリコンゴム層とする。
離型層15は,表面の離型性を高めるための層であり,定着温度での使用に耐えられる材料が使用される。例えば,シリコンゴム,フッ素ゴム,PFA,PTFE,FEP,PFEP等のフッ素樹脂が使用される。離型層15の厚みは,5μm〜100μm,望ましくは10μm〜50μmがより好ましい。また,層間接着力を向上させるため,プライマ等による接着処理を行ってもよい。なお,離型層15中に,必要に応じて,導電材,耐磨耗材,良熱伝導材等を充填剤として添加してもよい。
加圧ローラ2は,図6に示すように,芯金21上に,シリコンスポンジ層22,および離型層25が順次積層されている。加圧ローラ2は,定着ローラ1に対して300N〜500Nの荷重で加圧され,ニップ部の幅は5mm〜15mmの範囲内となっている。なお,記録紙の種別等により荷重を変化させてもよい。
支持層としての芯金21は,厚さが3mm程度のアルミパイプである。なお,芯金21には,鉄やPPSのような耐熱性樹脂を使用することも可能である。なお,芯金21が発熱するのを防ぐために電磁誘導加熱の影響が少ない非磁性材料を用いるのが好ましい。シリコンスポンジ層22の厚さは,3mm〜10mmの範囲内で使用条件に合わせて設計される。なお,シリコンスポンジ層22の代わりにソリッドゴム層を用いることも可能であるが,定着ローラ1からニップ部を通して伝達される熱を逃さないように低熱伝導率の素材が望ましい。離型層25は,定着ローラ1と同様に表面の離型性を高めるための層であり,厚さが10μm〜50μmであり,定着温度での使用に耐えられる材料が使用される。例えば,シリコンゴム,フッ素ゴム,PFA,PTFE,FEP,PFEP等のフッ素樹脂が使用される。
また,シリコンスポンジ層22の代わりに,下層にソリッドゴム層,表層にスポンジゴム層の2層構造を用いると,耐久性の向上を図ることができる。このような構造を有するローラは,特に高荷重や高速回転のような比較的過酷な条件で使用される場合や,ニップ幅の確保のためにシリコンスポンジ層22の厚みを厚く設定する場合や,柔らかいスポンジ層を使用する場合に,ゴムの破断を防ぐことができる。
磁束発生部3は,励磁コイル31と,磁性体コア32と,コイルボビン33と,第1消磁コイル34a,34bと,第2消磁コイル35a,34bとを有している。磁束発生部3は,励磁コイル31への給電によって磁束を発生させ,定着ローラ1と対向する領域に磁界を形成するものである。励磁コイル31には,図7に示すように,高周波インバータ5(励磁回路)が接続されており,高周波インバータ5は制御回路6によって制御される。
また,磁束発生部3は,励磁コイル31の両端に積載された第1消磁コイル34a,34bないし第2消磁コイル35a,35bによって定着ローラ1の加熱範囲を調節する。第1消磁コイル34aと第1消磁コイル34bとは,図7に示したように,直列に接続されている(以下,第1消磁コイル34aと第1消磁コイル34bとを合わせて「第1消磁コイル34」とする)。また,第2消磁コイル35aと第2消磁コイル35bとは,直列に接続されている(以下,第2消磁コイル35aと第2消磁コイル35bとを合わせて「第2消磁コイル35」とする)。磁束発生部3の詳細については後述する。
温度センサ41,42,43は,定着ローラ1の表面温度を検出するためのものであり,定着ローラ1の外周上に配設される。また,温度センサ41は,ローラ軸方向上の略中央に配置されている。なお,温度センサ41は,ローラ軸方向上の位置が,定着装置100が規定する最小幅用紙が通紙される範囲内であればよい。また,温度センサ42は,ローラ軸方向上の端部に配置されている。なお,温度センサ42は,ローラ軸方向上の位置が,第1消磁コイル34aが配置されている範囲内であって第2消磁コイル35aが配置されていない範囲内であればよい。温度センサ43は,ローラ軸方向上の位置が,第2消磁コイル35aが配置されている範囲内であればよい。温度センサ41,42,43としては,例えばサーミスタが使用可能である。温度センサ41,42,43の各検出信号は,制御回路6に入力される。
制御回路6は,高周波インバータ5およびスイッチ51,52の制御(すなわち,磁界の制御)を行う。制御回路6は,用紙サイズ情報や温度センサ41,42,43の検出信号を基に高周波インバータ5を制御して励磁コイル31への電力供給を増減させる。すなわち,定着ローラ1の表面温度が一定となるように自動制御を行う。また,スイッチ51,52を制御して定着ローラ1の発熱領域を調節する。
通電遮蔽部7は,所定値以上の温度で回路を遮蔽し,励磁コイル31への電流を断つためのものであり,定着ローラ1の周囲に配置される。通電遮蔽部7により,定着ローラ1の表面温度が所定値以上となった際に発熱の動作を停止することができ,過昇温による定着ローラ1の劣化が抑制される。通電遮蔽部7としては,例えばサーモスタットや温度ヒューズが使用可能である。
続いて,本形態の定着装置100での定着動作について説明する。まず,ウォーミングアップ動作として,加圧ローラ2が回転駆動され,これに伴い定着ローラ1も従動回転する。そして,磁束発生部3の励磁コイル31に交流電流を印加することにより,所定の磁界が形成される。この磁束発生部3の発生磁束の作用により,定着ローラ1の電磁誘導発熱層が磁束発生部3と対向する位置で発熱する。そして,定着ローラ1の表面温度が所定温度となるように自動制御される。電磁誘導発熱層は,その熱容量が小さくかつ断熱層により断熱保持されているため,定着ローラ1の表層側に位置する弾性層あるいは離型層が迅速に加熱される。すなわち,定着ローラ1の表面は定着可能温度に迅速に達する。
ウォーミングアップ動作が終了した後,定着ローラ1と加圧ローラ2とのニップ部に,未定着のトナー像を担持した記録紙Pが搬送される(図2参照)。制御回路6は,各温度センサの情報を基に消磁コイル34,35の回路をオンオフし,磁界を制御する。これにより,定着ローラ1の所望の範囲が加熱される。記録紙Pが定着装置100まで達すると,記録紙P上のトナー像は定着ローラ1と対面する。ニップ部に導入された記録紙Pは,ニップ部を挟持搬送され,定着ローラ1からの熱で加熱される。これにより,未定着のトナー像が記録紙Pに溶融定着される。
ニップ部での定着処理を終えた記録紙Pは,定着ローラ1から分離されて搬出される。その際,定着ローラ1の表面に当接させて配置された分離爪8等により,記録紙Pが定着ローラ1の表面に貼り付いてしまっても強制的に分離される。これにより,定着装置100内でのジャムを防止する。
続いて,磁束発生部3の詳細について説明する。磁束発生部3は,図3に示したように,定着ローラ1の外側に位置するとともに,定着ローラ1に対向させて長手方向に沿って配設されている。
励磁コイル31は,ローラ軸方向に導線を巻きつけた構造を有している。また,励磁コイル31は,図7に示したように,高周波インバータ5に接続され,100W〜2000Wの高周波電力が供給される。そのため,細線を数十から数百本の範囲内で束ねてリッツ線にしたものを用いている。また,巻線に伝熱した場合を考慮し,耐熱性の樹脂で被覆している。
また,励磁コイル31には,高周波インバータ5により10kHz〜100kHzの交流電流が印加される。交流電流によって誘導された磁束は,フェライトコア32内を通り,さらに定着ローラ1の電磁誘導発熱層を通る。すなわち,定着ローラ1と磁束発生部3との間には磁界が形成される。そして,電磁誘導発熱層に渦電流が流れることにより,電磁誘導発熱層自体がジュール発熱する。これにより,定着ローラ1が加熱状態となる。
磁性体コア32は,横断面が略U字形状であり,図2あるいは図4に示したように,励磁コイル31および各消磁コイルを跨ぐように配置され,さらに定着ローラ1の長手方向に所定の間隔で複数配置されている。さらに,磁性体コア32は,発熱効率を高めるため,中央部に定着ローラ側に突出した部位を設けて略E字形状としてもよい。磁性体コア32の材料としては,高透磁率かつ低損失のもの(例えば,フェライト)を使用する。パーマロイのような合金の場合には,コア内の渦電流損失が高周波領域で大きくなるため積層構造にするとよい。
また,磁性体コア32は,磁気回路の高効率化と磁気遮蔽との両機能を備えている。なお,磁気遮蔽が十分にできる手段があれば空芯(コアなし)にしてもよい。また,コア材として樹脂材に磁性粉を混入させたものを用いると,形状の設計自由度が高くなる。
第1消磁コイル34a,34bおよび第2消磁コイル35a,35bは,図4に示すように,長手方向の両端部にそれぞれ導線を巻きつけた構造を有している。第1消磁コイル34a,34bと第2消磁コイル35a,35bとは,ローラ軸方向の外形寸法(ローラ軸方向の長さ)が異なる。そのため,励磁コイル31が形成した磁界を消滅させる範囲,すなわち消磁領域の幅が異なる。
具体的には,第1消磁コイル34a,34bは,図8に示すように,用紙幅サイズD未満の用紙に対応しており,励磁コイル31の両端部の領域に配置される。第2消磁コイル35a,35bは,用紙幅サイズD以上であって用紙幅サイズA未満の用紙に対応しており,同じく定着ローラ1の端部側に配置される。第2消磁コイル35a,35bは,ローラ軸方向上,第1消磁コイル34a,34bの消磁領域内に位置し,さらに外形寸法が第1消磁コイル34a,34bよりも狭い。
なお,本形態では,第1消磁コイル34条に第2消磁コイル35を積載しているため,ローラ軸方向に両コイル間の継ぎ目は生じない。よって,ローラ軸方向に消磁能力のムラがない。
また,本形態では,第2消磁コイル35a,35bの開口部における定着ローラ1の周方向の幅(図8中の幅X,以下,コイルの開口部の幅のうち,定着ローラ1の周方向の幅を「開口幅」とする。)が,第1消磁コイル35a,35bの開口幅と比較して大きい。
具体的に本形態では,第2消磁コイル35a,35bの開口幅が第1消磁コイル34a,34bの開口幅よりも2mm大きい。なお,第1消磁コイル34a,34bの開口幅は励磁コイル31の開口幅と等しい。消磁コイルは,多段構成とすると,上段になるほど,つまり励磁コイル31から離れるほど,消磁能力が低下してしまう。そこで,消磁能力の低下を抑制するために,上段に位置する第2消磁コイル35の開口幅を下段に位置する第1消磁コイル34の開口幅よりも大きくし,消磁能力の差を補う。
図9および図10は,励磁コイル31と第1消磁コイル34とを2層構造とした場合の数値解析による磁束線図を示している。図9は,第1消磁コイル34の開口幅と励磁コイル31の開口幅とが等しい場合であり,図10は,第1消磁コイル34の開口幅が励磁コイル31の開口幅よりも2mm大きい場合である。図9および図10の磁束線図に示すように,各コイルによって形成される磁界は,ローラ軸方向からみてコイルの端部が強い。図9のように,開口幅が狭いと,コイルの開口部を挟んで隣接対向するコイル(実際には同一のコイル)が形成する磁界の影響を互いに受け合うことになる。そして,その影響が強いほど消磁能力が低下する。そこで,上段に位置する消磁コイルの開口幅を広くする。これにより,その隣接するコイルからの磁束の影響を少なくし,消磁能力の低下を抑制する。数値解析結果においても,図10の第1消磁コイル34の方が図9よりも強い磁界が形成されていることがわかる。
なお,第2消磁コイル35の開口幅を広げることによりボビン33のサイズ増を招く場合には,第2消磁コイル35の線積率を高めるとよい。これにより,第2消磁コイル35の外径の増大を抑制できる。
第1消磁コイル34は,図7に示したように,スイッチ51を介して閉回路を構成している。また,消磁コイル35も,スイッチ52を介して閉回路を構成している。また,スイッチ51,52は,制御回路6によって適宜オンオフされる。消磁コイル34は,スイッチ51がオンされた場合,励磁コイル31からの磁束によって誘導逆起電力が発生し,励磁コイル31とは逆向きの磁界が形成され,消磁効果を発揮することになる。消磁コイル35も,スイッチ52がオンされた場合,消磁効果を発揮することになる。これにより,所定の領域におけるジュール熱の発生範囲が抑制される。
具体的に,用紙幅サイズA以上の大サイズ紙の通紙時(図8参照)は,スイッチ51,52をともにオフし,第1消磁コイル34および第2消磁コイル35を動作させない。用紙サイズD以上かつ用紙サイズA未満の比較的大きいサイズ紙の通紙時は,スイッチ51をオフして第1消磁コイル34を動作させず,スイッチ52をオンして第2消磁コイル35を動作させる。用紙幅サイズD未満の小サイズ紙の通紙時は,スイッチ51をオンして第1消磁コイル34を動作させ,スイッチ52をオフして第2消磁コイル35を動作させない。
また,制御回路6が温度センサ42,43の検知信号を基にスイッチ51,52をオンオフし,それぞれの領域の温度を調節することにより,様々な用紙幅サイズに対応可能となる。なお,温度センサは,第1消磁コイル34と第2消磁コイル35とが重ねられる領域へ配置され,1つの温度センサで両消磁コイルをオンオフ制御してもよい。
図11は,本形態の定着装置100における用紙サイズ別の定着ローラ1の温度分布を示している。本形態の定着装置100では,用紙幅サイズBの用紙を通紙したとしても,当該用紙の端部まで加熱することができるため,通紙領域内に非発熱領域が生じない。よって,温度の低下はなく,良好な画像品質が確保される。
一方,第2消磁コイル35の開口幅が第1消磁コイル34の開口幅と等しい場合,第2消磁コイル35の消磁能力によっては過昇温が生じる。すなわち,第2消磁コイル35による消磁効果が十分に発揮されていないことがある。本形態の定着装置100では,第2消磁コイル35の開口幅が第1消磁コイル34よりも大きい。そのため,第2消磁コイル35の消磁能力が補われ,用紙端部の温度上昇も許容範囲内となる。よって,定着ローラ1の劣化も生じない。
[応用例]
応用例にかかる定着装置200は,図12に示すように,励磁コイル31上に第1消磁コイル34,第2消磁コイル35を配置し,さらに上段の第2消磁コイル35の巻き数が下段の第1消磁コイル34よりも多い。すなわち,コイルの巻き数を増やして消磁能力を向上させる。第2消磁コイル35の配置スペースが問題となる場合には,撚り線数を低下させて巻き数を増やす。これにより,両コイルの消磁能力の差を補う。
なお,第2消磁コイル35の巻き数を増やすことによりボビン33のサイズ増を招く場合には,第2消磁コイル35の線積率を高めるとよい。これにより,第2消磁コイル35の高さの増大を抑制できる。
以上詳細に説明したように本形態の定着装置100は,励磁コイル31,第1消磁コイル34,第2消磁コイル35が積み重ねられた状態で配置されている。さらに,第1消磁コイル34と第2消磁コイル35とでは,ローラ軸方向の外形寸法が異なっている。すなわち,各消磁コイルの消磁領域の幅が異なっている。そのため,用紙サイズに合わせて各消磁コイルのオンオフ状態を切り換えることで,より多くの用紙サイズに対応することが可能になる。さらに,第1消磁コイル34と第2消磁コイル35とは励磁コイル31上に積み重ねられている。そのため,消磁領域に継ぎ目が生じることなく,定着ローラ1の温度ムラを抑制することができる。よって,様々な用紙幅の用紙に対応し,画像品質の低下および定着ローラの過昇温の抑制を両立した電磁誘導加熱方式の定着装置が実現している。
また,第2消磁コイル35の開口幅は,第1消磁コイル34の開口幅よりも広いこととしている。あるいは,第2消磁コイル35の巻き数を第1消磁コイル34よりも多くすることとしている。これにより,励磁コイル31から離れることによる消磁能力の差を補うことができる。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,実施の形態ではレーザプリンタに本発明を適用しているがこれに限るものではない。すなわち,複写機,スキャナ,FAXあるいはワードプロセッサ等であっても定着装置を備えるものであれば適用可能である。また,カラーに限らず,モノクロ画像専用のものであってもよい。また,タンデム方式であっても,4サイクル方式であってもよい。
また,実施の形態では,定着ローラを加熱するものであるが,これに限るものではない。例えば,磁束発生部によって加熱される定着ベルトを備え,その定着ベルトと加圧ローラとを対向配置したタイプであってもよい。
また,実施の形態の定着装置は,励磁コイル31と,第1消磁コイル34と,第2消磁コイル35との3層構造であるが,これに限るものではない。例えば,4層以上の構造であってもよい。
また,実施の形態の定着装置は,用紙搬送路がローラ軸方向の中心を基準としているため,各消磁コイルを両端部に配置しているが,端部を基準とするならば各消磁コイルを一方の端部のみに配置してもよい。
また,実施の形態の定着装置では,励磁コイル31,第1消磁コイル34および第2消磁コイル35は,外形寸法が広い順に下から積層されているがこれに限るものではない。すなわち,外形寸法が狭い順に積層してもよい。ただし,下段との密着安定性を確保する上で,上段になるに連れて外形寸法が短くなる構成が好ましい。
実施の形態にかかるプリンタの概略構成を示す図である。 実施の形態にかかる定着装置の概略構成を示す図(正面視)である。 実施の形態にかかる定着装置の概略構成を示す図(側面視)である。 実施の形態にかかる定着装置の概略構成を示す図(上面視)である。 定着ローラの概略構成を示す断面図である。 加圧ローラの概略構成を示す断面図である。 実施の形態にかかる定着装置の概略構成を示すブロック図である。 実施の形態にかかる消磁コイルの位置と通紙状態とを示す図である。 数値解析による定着装置(消磁コイルの開口幅=励磁コイルの開口幅)の磁束線図である。 数値解析による定着装置(消磁コイルの開口幅=励磁コイルの開口幅+2mm)の磁束線図である。 実施の形態にかかる用紙サイズ別の温度分布を示す図である。 応用例にかかる定着装置の概略構成を示す図(正面視)である。 従来の形態にかかる消磁コイルの位置と通紙状態とを示す図である。 従来の形態にかかる用紙サイズ別の温度分布を示す図である。 消磁コイルの位置と通紙状態とを示す図である。
符号の説明
1 定着ローラ(加熱回転体)
2 加圧ローラ
3 磁束発生部
31 励磁コイル
32 磁性体コア
33 コイルボビン
34a,34b 第1消磁コイル
35a,35b 第2消磁コイル
100 定着装置

Claims (4)

  1. 電磁誘導発熱する発熱層を備えた加熱回転体と,前記加熱回転体の軸方向に沿って前記加熱回転体に対向配置され,給電により磁束を発生させる磁束発生部とを有する電磁誘導加熱方式の定着装置において,
    前記磁束発生部は,
    前記加熱回転体との間に磁界を形成する励磁コイルと,
    前記励磁コイル上に積載され,前記励磁コイルが形成した磁界を減少させる第1消磁コイルと,
    前記第1消磁コイル上に積載され,前記励磁コイルが形成した磁界を減少させる第2消磁コイルとを有し,
    前記第1消磁コイルと前記第2消磁コイルとは,前記加熱回転体の軸方向の外形寸法が異なることを特徴とする定着装置。
  2. 請求項1に記載する電磁誘導加熱方式の定着装置において,
    前記第1消磁コイルの,前記加熱回転体の軸方向の外形寸法は,前記第2消磁コイルの,前記加熱回転体の軸方向の外形寸法よりも長いことを特徴とする定着装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載する電磁誘導加熱方式の定着装置において,
    前記第2消磁コイルの,前記加熱回転体の周方向の開口幅は,前記第1消磁コイルの開口幅よりも広いことを特徴とする定着装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する電磁誘導加熱方式の定着装置において,
    前記第2消磁コイルの巻き数は,前記第1消磁コイルの巻き数よりも多いことを特徴とする定着装置。
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