JP3652149B2 - 像加熱装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁(磁気)誘導加熱方式の像加熱装置、及び該像加熱装置を備えた画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、転写式電子写真プロセスを用いた画像形成装置は、像担持体としての電子写真感光体面に電子写真プロセスにて形成担持させた未定着トナー画像を記録材としての転写材に転写させ、転写材に転写させた未定着トナー画像を像加熱装置としての定着装置で永久固着画像として加熱定着させて、その転写材を画像形成物として出力する。トナーは樹脂、磁性体、着色料等からなる溶融定着性の顕画粉体である。
【0003】
定着装置としては従来より熱ローラ方式の装置が多用されている。この定着装置は、ハロゲンランプ等の熱源を内蔵させて所定の定着温度に加熱・温調した定着ローラ(熱ローラ)と加圧ローラとの、互いに圧接して回転するローラ対からなり、該ローラ対の圧接ニップ部(加熱ニップ部、定着ニップ部)に被加熱材としての、未定着トナー画像を形成担持させた記録材を導入して挟持搬送させることで未定着トナー画像を記録材面に熱と圧力で加熱定着する装置である。
【0004】
また、定着ローラを電磁誘導加熱方式で加熱するようにした定着装置も提案されている。これは、磁束(磁界)発生手段としての励磁コイルによる磁束で定着ローラ内面に設けた導電層(誘導発熱体)に渦電流を発生させジュール熱により発熱させて定着ローラを所定の定着温度に加熱・温調するものである。
【0005】
このような電磁誘導加熱方式の定着装置は、熱発生源(誘導発熱体)をトナーのごく近くに置くことができるので、従来のハロゲンランプを用いた熱ローラ方式の定着装置に比して、定着装置起動時に定着ローラ表面の温度が定着に適当な温度になるまでに要する時間を短くできるという特徴がある。また熱発生源からトナーヘの熱伝達経路が短く単純であるため熱効率が高いという特徴もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような電磁誘導加熱方式の定着装置においては、小サイズの記録材を連続して装置に通紙して多量に定着処理した時などに、定着ローラ表面の記録材の接触する所(通紙領域部)と、接触しない所(非通紙領域部)で大きな温度差が生じてしまうことがある(非通紙部昇温現象)。磁束発生手段を構成している励磁コイル・磁性体コアについて、高周波電流の通過による表皮効果等により、非通紙領域部に対応する励磁コイル端部自身が発熱したり、非通紙領域部に対応する磁性体コア端部のヒステリシス損による自己発熱のため蓄熱し、励磁コイルの巻線被覆に高価な耐熱樹脂が必要になったり、磁性体コアが固有のキューリー点を越え、磁性を失うといった問題が発生する。
そこで本発明の目的は、特に電磁誘導加熱方式の像加熱装置及び該像加熱装置を備えた画像形成装置について、像加熱装置の非通紙部昇温を防止あるいは緩和して非通紙部昇温に起因する上記のような問題点を解消することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は下記の構成を特徴とする像加熱装置及び画像形成装置である。
【0008】
(1)コイルと磁性体コアを有する磁束発生手段と、該磁束発生手段の磁束の作用により電磁誘導発熱する誘導発熱体を有し、加熱部に記録材を導入搬送させて該誘導発熱体の熱により記録材上の画像を加熱する像加熱装置において、
前記磁性体コアは、記録材の搬送可能最大幅よりも小さい幅の所定の記録材が搬送されたときの搬送領域と非搬送領域に対応して分割されており、前記搬送領域と前記非搬送領域の温度差を低減するように前記磁性体コアを移動させる移動手段を有することを像加熱装置。
【0013】
(2)前記誘導発熱体の前記非搬送領域温度が所定温度以上の場合、前記磁性体コアを前記搬送領域と前記非搬送領域の温度差を低減するように移動させることを特徴とする(1)に記載の像加熱装置。
(3)前記誘導発熱体は回転体であり、コイルと磁性体コアが前記誘導発熱体の内部にあることを特徴とする(1)または(2)に記載の像加熱装置。
【0014】
(4)前記誘導発熱体は回転体であり、コイルと磁性体コアが前記誘導発熱体の外部にあることを特徴とする(1)または(2)に記載の像加熱装置。
(5)前記磁性体コアは、前記移動手段により回動移動されることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の像加熱装置。
(6)前記磁性体コアは前記誘導発熱体側に磁束を導くよう対向配置されており、前記移動手段は前記磁性体コアの前記誘導発熱体対向面側と逆側に取り付けられていることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の像加熱装置。
【0020】
【発明の実施の形態】
〈第一の実施例〉(図1〜図3)
図1は本実施例における電磁誘導加熱方式の像加熱装置としての定着装置100の要部の途中部分省略・一部切欠きの縦断面模型図、図2は図1の(2)−(2)線に沿う拡大横断面模型図、図3は磁性体コアの分解斜視模型図である。
【0021】
この定着装置100は、定着用回転体としての電磁誘導加熱される定着ローラ1と、この定着ローラ1の下方に配置され、記録材Pを定着ローラ1に押しつける加圧用回転体としての弾性加圧ローラ2と、定着ローラ1の内空に挿入して配設した磁束発生手段としての励磁コイル3・磁性体コア5を主体とする。
【0022】
定着ローラ1は熱容量を低減した肉厚の薄い誘導発熱体製の円筒状ローラである。本例は、外径40[mm]、厚さ0.7[mm]の鉄製のシリンダである。これを芯金としてその表面の離型性を高めるために例えばPTFE10〜50[μm]や、PFA10〜50[μm]の層を設けてもよい。
【0023】
また定着ローラ1の他の材料(誘導発熱体)として、例えば磁性ステンレスのような磁性材料(磁性金属)といった、比較的透磁率μが高く、適当な抵抗率ρを持つ物を用いてもよい。さらに非磁性材料でも、金属などの導電性のある材料は材料を薄膜にする事などにより使用可能である。
【0024】
加圧ローラ2は、外径20[mm]の鉄製の芯金の外周に、厚さ5[mm]、ゴム硬度が20度(JIS−A[=JIS−K A型試験機使用])のシリコーンゴムの層と、定着ローラ1と同様に表面の離型性を高めるために例えばPTFE10〜50[μm]やPFA10〜50[μm]の層を設けた、外径30[mm]の弾性ローラである。
【0025】
定着ローラ1と加圧ローラ2は互いに上下に圧接させて装置筐体の側板11・11間にそれぞれ軸受12・12,13・13を介して回転自由に組み込んで両者間に所定幅の定着ニップ部(加熱ニップ部)Nを形成させてある。加圧ローラ2は定着ローラ1の回転軸方向にバネなどを用いた図示しない機構によって加圧されている。加圧ローラ2は約30[Kg重]で荷重されており、その場合圧接ニップ部Nのニップ幅は約6[mm]になる。しかし都合によっては荷重を変化させてニップ幅を変えてもよい。
【0026】
14は定着ローラ1の一端側に一体に冠着させた駆動ギアであり、定着ローラ1は不図示の駆動源の回転力を駆動ギア14を介して受けて図2において矢印の時計方向に所定の周速度で回転駆動される。加圧ローラ2は定着ニップ部Nにおける定着ローラ1との摩擦力で従動して回転する。
【0027】
励磁コイル3は、定着ローラ回転軸方向を長手とし、横断面外形形状が略半円形の横長ボビン4の半円胴面にボビン長手方向に電線を周回させて、外側形状を円筒状の定着ローラ1の内面に略対応させた横断面ほぼ半円状の横長舟形に巻回成形してなるものであり、円筒状定着ローラ1の内面の略下半面部に対応して位置する。
【0028】
励磁コイル3は高周波コンバーター23に接続されて100〜2000[W]の高周波電力が供給されるため、巻き線(電線)として細い線を複数本リッツにしたものを用いており、巻き線に伝熱した場合を考え、被覆には耐熱性の物を使用した。
【0029】
磁性体コア5は磁性体の横長板状部材5(a)・5(b)・5(c)を横断面略T字型に組み合わせてなり、上記励磁コイルボビン4の長手中央部に具備させた縦溝穴の中にT字型の縦部となる磁性体の横長板状部材5(b)・5(a)・5(b)を嵌入させ、また横部となる磁性体の横長板状部材5(c)・5(c)を励磁コイルボビン4の上面において、縦部となる磁性体の横長板状部材5(b)・5(a)・5(b)の両脇にそれぞれ位置させて配置してある。
【0030】
T字型磁性体コア5の縦部(b)・5(a)・5(b)の下面が定着ニップ部Nに対応位置する。磁性体コア5は励磁コイル3より発生した交流磁束を効率よく定着ローラ1を構成している誘導発熱体に導く役目をする。
【0031】
磁性体コア5の材料として高透磁率かつ低損失のものを用いる。パーマロイのような合金の場合は、コア内の渦電流損失が、高周波で大きくなるため積層構造にしてもよい。コアは磁気回路の効率を上げるためと磁気遮蔽のために用いている。本実施例では、トーキン製2500Bを用いる。
【0032】
励磁コイル3には高周波コンバーター23により10〜100[kHz]の交流電流が印加される。交流電流によって誘導された磁束は磁性体コア5の内部を外部に漏れることなく通り、突起部間で初めて磁性体コア外部に漏れ、定着ローラ1の導電層(誘導発熱体)を貫き渦電流が流れて定着ローラ1の導電層自体がジュール発熱することになる。
【0033】
上記の励磁コイル3・ボビン4・磁性体コア5は、定着ローラ回転軸方向を長手とする、円筒状定着ローラ1の内空を貫通する横長の耐熱製剛体支持ステイ6の下面側に固定して保持させてある。例えば、励磁コイル3・ボビン4・磁性体コア5・支持ステイ6のアセンブリを熱収縮チューブでおおって励磁コイル3・ボビン4・磁性体コア5を支持ステイ6に保持させたものである。支持ステイ6に対する励磁コイル3・ボビン4・磁性体コア5の固定保持手段はその他適宜である。
【0034】
6(a)・7・8・9・10は支持ステイ6の両端部側にそれぞれ具備させたコア移動手段を構成している、コア支持レバー、軸受部、ヒンジ軸、ばね(バネ)吊り板金、2方向変位ばねである。このコア移動手段6(a)・7・8・9・10については後述する。
【0035】
そして上記の励磁コイル3、ボビン4、磁性体コア5、支持ステイ6、コア移動手段6(a)・7・8・9・10等からなる磁束発生手段アセンブリを円筒状の定着ローラ1の内空に挿入し、支持ステイ6の長手両端部を装置筐体側の定置部材15・15に固定支持させてある。定着ローラ1の内空に挿入した磁束発生手段アセンブリは定着ローラ1の内面に対して非接触である。
【0036】
21は温度センサであり、この温度センサは定着ローラ1の表面に当接するように配置され、この温度センサ21の検出信号が制御回路22に入力する。制御回路22は温度センサ21から入力する検知温度情報に基づいて高周波コンバーター23を制御して励磁コイル3への電力供給を増減することで、定着ローラ1の表面温度を所定の一定温度になる様に自動制御する。
【0037】
24は記録材搬送ガイドであり、未定着のトナー画像tを担持して搬送される記録材Pを定着ローラ1と加圧ローラ2とのニップ部Nへ案内する位置に配置される。
【0038】
25は分離爪であり、定着ローラ1の表面に当接して配置され、記録材Pがニップ部N通過後に定着ローラ1に張り付いてしまった場合、強制的に分離してジャムを防止するためのものである。
【0039】
而して、励磁コイル3は高周波コンバーター23から供給される交流電流によって交番磁束を発生し、交番磁束は磁性体コア5に導かれて定着ニップ部Nに作用し、定着ニップ部Nにおいて定着ローラ1を構成している誘導発熱体に渦電流を発生させる。その渦電流は誘導発熱体の固有抵抗によってジュール熱を発生させる。即ち、励磁コイル3に交流電流を供給することで定着ローラ1が電磁誘導発熱状態になる。
【0040】
定着ローラ1の表面温度は、温度センサ21を含む制御回路22により高周波コンバーター23から励磁コイル3への電力供給が制御されることで所定の定着温度に温調制御される。定着ローラ1の発熱を増加させるためには交流電流の周波数或いは電流振幅を大きくすると良い。
【0041】
定着ローラ1が回転駆動され、これに伴い加圧ローラ2が従動回転し、高周波コンバーター23から励磁コイル3への交流電流の供給がなされて定着ローラ1は電磁誘導加熱されて、定着ローラ1の表面温度が所定に立ち上がり温調された状態において、定着ニップ部Nの回転定着ローラ1と加圧ローラ2との間に、被加熱材としての、未定着トナー像tを担持した記録材Pが導入されることで、記録材Pは定着ローラ1の表面に密着して定着ニップ部Nを通過していき、該定着ニップ部通過過程で、定着ローラ1の熱で記録材Pと未定着トナー像tが加熱されてトナー像の加熱定着がなされる。
【0042】
定着ニップ部Nを通った記録材Pは定着ニップ部Nの出口側で定着ローラ1から分離されて搬送される。
【0043】
本実施例においては、定着装置100に対する記録材Pの導入は中央基準でなされる。Aは大サイズ記録材(装置に通紙使用可能な最大サイズ記録材、例えば、A3サイズ紙縦送り)の通紙領域部、Bは小サイズ記録材(例えば、A4サイズ紙縦送り)の通紙領域部、C・Cは小サイズ記録材が通紙使用されたときに生じる非通紙領域部である。本実施例においては通紙が中央基準であるから小サイズ記録材が通紙使用されたときに生じる非通紙領域部C・Cは小サイズ記録材の通紙領域部Bの両側部に生じる。
【0044】
前述したように、この種の電磁誘導加熱方式の定着装置においては、小サイズの記録材を連続して装置に通紙して多量に定着処理した時などに、定着ローラ表面の記録材の接触する通紙領域部Bと、接触しない非通紙領域部C・Cで大きな温度差が生じてしまうことがある。磁束発生手段を構成している励磁コイル3・磁性体コア5について、高周波電流の通過による表皮効果等により、非通紙領域部C・Cに対応する励磁コイル端部自身が発熱したり、非通紙領域部C・Cに対応する磁性体コア端部のヒステリシス損による自己発熱のため蓄熱し、励磁コイルの巻線被覆に高価な耐熱樹脂が必要になったり、磁性体コアが固有のキューリー点を越え、磁性を失うといった問題が発生する。
【0045】
そこで本実施例においては、横断面略T字型の磁性体コア5のT字型の縦部となる横長板状部材はその長手において中央部コア5(a)と両端部側の端部コア5(b)・5(b)とに3分割してあり、両端部側の端部コア5(b)はそれぞれ上面を支持レバー6(a)の下面に耐熱性接着剤で接着して保持させてある。
【0046】
各支持レバー6(a)はそれぞれ支持ステイ6の上面に設けた軸受部7に軸受させたヒンジ軸8を中心に図1の実線示と2点鎖線示のように上下方向に回動移動自由であり、従ってこの支持レバー6(a)の回動移動に伴い、該支持レバーに接着保持させた端部コア5(b)も上下方向へ回動移動する。
【0047】
各支持レバー6(a)のヒンジ軸8側とは反対側に端部と、支持ステイ6の上面に耐熱性接着剤で接着して固定配設したばね吊り板金9とをそれぞれキートン製の2方向変位ばね(キートン製の全方位形状記憶合金(メモロアロイ MAT−100))10で連結した。各ばね10は200gf程度の力を発生するものを用い、不図示のストッパーで変位量を調整した。ばね吊り板金9はセラミックやプラスチックで作製しても良い。
【0048】
ばね10は雰囲気温度(雰囲気温度をばね自身が検知)によって伸縮するものであり、本実施例では端部コア5(b)が200℃以下である雰囲気温度のときは所定に伸びている状態にあり、これにより支持レバー6(a)は図1の実線示のように支持ステイ6に平行の回動姿勢に保持されて、端部コア5(b)が中央部コア5(a)に対して一連に連続して並んだ第1配列状態に保持される。
【0049】
端部コア5(b)が200℃を越える雰囲気温度になると、ばね10が縮み動作してコア支持レバー6(a)が引き上げられてヒンジ軸8を中心に2点鎖線示のように上方向に斜めに回動移動し、該支持レバーに接着保持させた端部コア5(b)も上方向へ斜めに回動移動して、中央部コア5(a)に対して上方向へ斜めに位置ずれした第2配列状態に保持される。端部コア5(b)はこの第2配列状態において第1配列状態時の位置に対して重なりが3/4程度に減少する。
【0050】
本実施例において、上記の中央部コア5(a)は小サイズ記録材の通紙領域部Bに略対応する長さ寸法としてあり、両端部側の端部コア5(b)・5(b)はそれぞれ非通紙領域部C・Cに略対応する長さ寸法(本例では50mm)としてある。
【0051】
而して、小サイズの記録材を連続して装置に通紙して多量に定着処理した時などに、定着ローラ表面の紙の接触する所(通紙部)と、接触しない所(非通紙部)で大きな温度差が生じてしまうことがある(非通紙部昇温)。
【0052】
さらに定着ローラの通紙部で温調すると、非通紙部である両端部が定着に適する温度を大きく越えてしまい、端部コア5(b)が200℃を越える雰囲気温度になると、ばね10が縮み動作してコア支持レバー6(a)が自動的に引き上げられてヒンジ軸8を中心に2点鎖線示のように上方向に斜めに回動移動し、即ち該コア支持レバー6(a)に接着保持させた端部コア5(b)が自動的に上方向へ斜めに回動移動して、中央部コア5(a)に対して上方向へ斜めに位置ずれした第2配列状態に保持され、端部コア5(b)はこの第2配列状態において第1配列状態時の位置に対して重なりが3/4程度に減少し、この端部コア5(b)が対応する定着ローラ部分(誘導発熱体部分)に対して磁束が減少するため、非通紙部昇温が回避され、その結果磁性体コアや励磁コイルの異常昇温も回避される。
【0053】
すなわち、コイル(直線電流)のまわりにできる磁界は距離に反比例する(H=@/d)ため、コイルと誘導発熱体の距離が離れると、誘導発熱体内の磁束密度も低下し、よって発熱量は低下する。またコイルとコアの距離が離れたときも、コイルのまわりにできる、コア及び誘導発熱体からなる磁気回路の効率が落ちて、発熱量は低下する。
【0054】
端部コア5(b)が200℃以下である雰囲気温度に降温すると、ばね10が伸び動作し、これにより支持レバー6(a)は図1の実線示のように支持ステイ6に平行の回動姿勢に自動的に復帰して、端部コア5(b)が中央部コア5(a)に対して一連に連続して並んだ第1配列状態に復帰・保持される。
【0055】
上記の昇温低減効果を検証するために、▲1▼.上記本実施例の定着装置即ち端部コア移動手段がある定着装置と、▲2▼.端部コア移動手段がない定着装置について、これをプリンタ(キャノン製GP55)に組みこんで、毎分30枚の速度で、小サイズ記録材としてのA4サイズ紙を縦送りで連続通紙して実験を行なった。
【0056】
温度は、磁性体コア、励磁コイルとも中央部に熱電対を貼り付け計測した。定着ローラの温調温度は190℃とした。温度の最高点は、通算で1000枚通紙時、経過時間にして40分から50分程度で飽和し、到達するので、この温度で比較した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
Figure 0003652149
すなわち、▲1▼の端部コア移動手段6(a)・7・8・9・10がある定着装置100を使用した場合は、高周波電流の通過による表皮効果等により、励磁コイル自身が発熱したり、コアのヒステリシス損による自己発熱のため過度の蓄熱が回避され、コイルの被覆に高価な耐熱樹脂が必要になったり、コアが固有のキューリー点を越え、磁性を失うことがなかった。▲2▼の移動手投なしでは、230℃を越えたため、高価な耐熱被覆が必要となる。
【0058】
〈第二の実施例〉(図4)
本実施例は、第一の実施例の定着装置100の端部コア移動手段6(a)・7・8・9・10において2方向変位ばね10に代えて、図4のように、トーキン製の1方向変位の収縮型ばね10Aと伸長型ばね10Bを2個使用したものである。
【0059】
その他の装置構成は第一の実施例の定着装置100と同様である。
【0060】
上記2個の1方向変位ばね10A・10Bはトーキン製の一方向形状記憶合金(メモロアロイ MAT−10)を用いた。ばねは200gf程度の力を発生するものを用い、不図示のストッパーで、変位量を調整した。
【0061】
本実施例の装置の場合も、端部コア5(b)が200℃以下である雰囲気温度のときはばね10Bの伸び動作により支持レバー6(a)は図1の実線示のように支持ステイ6に平行の回動姿勢に保持されて、端部コア5(b)が中央部コア5(a)に対して一連に連続して並んだ第1配列状態に保持される。
【0062】
端部コア5(b)が200℃を越える雰囲気温度になると、ばね10Aの縮み動作によりコア支持レバー6(a)が引き上げられてヒンジ軸8を中心に2点鎖線示のように上方向に斜めに回動移動し、該支持レバーに接着保持させた端部コア5(b)も上方向へ斜めに回動移動して、中央部コア5(a)に対して上方向へ斜めに位置ずれした第2配列状態に保持される。端部コア5(b)はこの第2配列状態において第1配列状態時の位置に対して重なりが3/4程度に減少して、この端部コア5(b)が対応する定着ローラ部分(誘導発熱体部分)に対して磁束が減少するため、非通紙部昇温、磁性体コアや励磁コイルの異常昇温が回避される。
【0063】
本実施例の定着装置の場合も、第一の実施例と同様の昇温低減効果の検証をして、端部コア移動手段のない定着装置との対比において第一の実施例の定着装置の表1の実験結果と同様の昇温低減効果が得られた。
【0064】
〈第三の実施例〉(図5)
本実施例は、第一の実施例の定着装置100の端部コア移動手段6(a)・7・8・9・10において、図5のように、ばね吊り板金9に青銅あるいはステンレスの厚さ0.5mmの板ばね16の基部を一体に結合させて支持させ、該板ばね16の先端部を定着ローラ1の端部側の内面に弾性的に接触させた状態にさせ、この板ばね16と、端部コア支持レバー6(a)のヒンジ軸8側とは反対側に端部とを、キートン製の2方向変位ばね(キートン製の全方位形状記憶合金(メモロアロイ MAT−100))10で連結したものである。
【0065】
本実施例の場合は、第一の実施例の定着装置100のように雰囲気温度をばね10自身が検知するのではなく、定着ローラ1の端部側内面に接したりん青銅あるいはステンレスの板ばね16を介して直接に定着ローラ端部の温度をばね10が検知して変位動作する。
【0066】
その他の装置構成は第一の実施例の定着装置100と同様である。
【0067】
本実施例の定着装置の場合も、第一の実施例と同様の昇温低減効果の検証をして、端部コア移動手段のない定着装置との対比において第一の実施例の定着装置の表1の実験結果と同様の昇温低減効果が得られた。
【0068】
〈第四の実施例〉(図6)
本実施例は端部コア移動手段としてバイメタル部材を使用したものである。即ち図6において17は細板状のバイメタル部材であり、このバイメタル部材17の下面に端部コア5(b)の上面を耐熱性接着剤で接着して保持させてある。そしてバイメタル部材17の基部側17aを支持ステイ6の上面に耐熱性接着剤で接着固定してある。
【0069】
その他の装置構成は第一の実施例の定着装置100と同様である。
【0070】
バイメタル部材17は雰囲気温度が、端部コア5(b)が200℃以下である雰囲気温度のときは支持ステイ6に平行の実線示の平な状態にあり、これにより端部コア5(b)が中央部コア5(a)に対して一連に連続して並んだ第1配列状態に保持される。
【0071】
端部コア5(b)が200℃を越える雰囲気温度になると、バイメタル部材17が2点鎖線示のように基部側を支点に上方向にそり返り動作し、これにより該バイメタル部材17に接着保持させた端部コア5(b)も上方向へ斜めに回動移動して、中央部コア5(a)に対して上方向へ斜めに位置ずれした第2配列状態に自動的に保持される。
【0072】
端部コア5(b)はこの第2配列状態において第1配列状態時の位置に対して重なりが3/4程度に減少し、この端部コア5(b)が対応する定着ローラ部分(誘導発熱体部分)に対して磁束が減少するため、非通紙部昇温、磁性体コアや励磁コイルの異常昇温が回避される。
【0073】
端部コア5(b)が200℃以下である雰囲気温度に降温すると、バイメタル部材17が支持ステイ6に平行の実線示の平な状態に戻ることで端部コア5(b)が中央部コア5(a)に対して一連に連続して並んだ第1配列状態に自動的に復帰・保持される。
【0074】
本実施例の定着装置の場合も、第一の実施例と同様の昇温低減効果の検証をして、端部コア移動手段のない定着装置との対比において第一の実施例の定着装置の表1の実験結果と同様の昇温低減効果が得られた。
【0075】
本実施例では、バイメタル部材を用いたが、部材17を同様に形状記憶合金で構成しても同様に効果が得られる。
【0076】
〈第五の実施例〉(図7)
図7は電磁誘導加熱方式の定着装置100の他の構成例の要部の模型図である。31はヒータホルダ、32はこのヒータホルダ31に下向きに固定保持させたヒータとしての鉄板等の誘導発熱体、33は上記の固定の誘導発熱体32の下面に対して摺動移動する耐熱性の定着フィルム、34は弾性加圧ローラである。弾性加圧ローラ34は定着フィルム33を挟んで上記の誘導発熱体32の下向き面に圧接して定着ニップ部(加熱ニップ部)Nを形成している。誘導発熱体32は励磁コイル3と磁性体コア5とからなる磁束発生手段からの発生磁束にて電磁誘導発熱する。
【0077】
そして、上記定着ニップ部Nの定着フィルム33と加圧ローラ34の間に未定着トナー画像tを担持した記録材Pが導入されて定着フィルム33と共に定着ニップ部Nを挟持搬送されることで、誘導発熱体32の熱を定着フィルム33を介して受けてトナー画像tが加熱加圧されて記録材P面に定着される。定着ニップ部Nを通った記録材Pは定着フィルム33の面から順次に分離されて排出搬送される。
【0078】
本発明はこのように誘導発熱体32が固定タイプの装置の場合でも適用できることは勿論である。
【0079】
〈第六の実施例〉(図8)
図8は、例えば第一の実施例の定着装置100を備えた画像形成装置の一例の概略構成模型図である。本例の画像形成装置は転写方式の電子写真装置である。
【0080】
41は矢印の時計方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動されるドラム型の電子写真感光体である。感光体41はその回転過程で帯電手段としての帯電ローラ42により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、ついでその一様帯電面に不図示の露光手段による画像露光Lを受ける。これにより回転する感光体41面に露光画像に対応した静電潜像が形成される。
【0081】
ついでその静電潜像は現像手段43によりトナー画像として正規現像または反転現像され、そのトナー画像が、感光体41と転写ローラ44との圧接部である転写ニップ部Tに不図示の給紙部から所定の制御タイミングで給送された記録材としての転写材Pに対して順次に転写されていく。
【0082】
そして転写ニップ部Tを通過した転写材Pは感光体41面から分離されて定着装置100へ導入され、トナー画像の定着処理を受けて排紙される。
【0083】
また転写材分離後の感光体41面はクリーニング装置45により転写残トナー等の残留付着物の除去を受けて繰り返して作像に供される。
【0084】
〈その他〉
1)磁束発生手段としての励磁コイル3・磁性体コア5は定着ローラ1の外側に配設することもできる。
【0085】
2)励磁コイル3はボビンなしにすることもできる。
【0086】
3)励磁コイル3は磁性体コア5に分割あるいは長手方向に渡って巻き線するなど任意の巻線形態にできる。
【0087】
4)磁性体コア5の断面形状は任意である。
【0088】
5)コア移動手段で移動させるコアは分割コアの全体であってもよいし、分割コアのうちの一部分であってもよい。
【0089】
6)記録材Pの通紙基準は片側基準にすることも勿論できる。
【0090】
7)本発明の像加熱装置は各実施例の定着装置に限らず、画像を担持した記録材を加熱して艶等の表面性を改質する装置、仮定着する装置等の像加熱装置、その他、被加熱材の加熱乾燥装置、加熱ラミネート装置など、広く被加熱材を加熱処理する手段・装置として使用できる。
【0091】
8)記録材Pに対する未定着トナー画像tの形成原理・プロセスに限定はなく任意である。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、電磁誘導加熱方式の像加熱装置において、搬送可能最大幅より小さい幅の通紙領域と非通紙領域の温度差を低減することができ、コイルの被覆に高価な耐熱樹脂が必要になったり、端部コアが固有のキューリー点を越え、磁性を失うといった問題を回避することができる。結果的には、消費電力の増加も回避できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第一の実施例の定着装置の、途中部分省略、一部切欠きの縦断面模型
【図2】 図1の(2)−(2)線に沿う拡大横断面図
【図3】 磁性体コアの分解斜視模型図
【図4】 第二の実施例の定着装置の一端部側の縦断面模型図
【図5】 第三の実施例の定着装置の一端部側の縦断面模型図
【図6】 第四の実施例の定着装置の一端部側の縦断面模型図
【図7】 第五の実施例の定着装置の要部の横断面図
【図8】 第六の実施例の画像形成装置の概略構成模型図
【符号の説明】
1・・電磁誘導発熱性の定着ローラ、2・・加圧ローラ、3・・励磁コイル、4・・コイルボビン、5(a〜c)・・磁性体コア、6・・支持ステイ、6(a)・・コア支持レバー、7・・軸受部、8・・ヒンジ軸、9・・ばね吊り板金、10・・2方向変位ばね(形状記憶合金)、10A・10B・・1方向変位ばね(形状記憶合金)、16・・板ばね、17・・バイメタル部材、21・・温度センサ、22・・高周波コンバーター、23・・制御回路、24・・記録材搬送ガイド、25・・分離爪、P・・記録材、t・・未定着トナー画像

Claims (6)

  1. コイルと磁性体コアを有する磁束発生手段と、該磁束発生手段の磁束の作用により電磁誘導発熱する誘導発熱体を有し、加熱部に記録材を導入搬送させて該誘導発熱体の熱により記録材上の画像を加熱する像加熱装置において、
    前記磁性体コアは、記録材の搬送可能最大幅よりも小さい幅の所定の記録材が搬送されたときの搬送領域と非搬送領域に対応して分割されており、前記搬送領域と前記非搬送領域の温度差を低減するように前記磁性体コアを移動させる移動手段を有することを像加熱装置。
  2. 記誘導発熱体の前記非搬送領域温度が所定温度以上の場合、前記磁性体コアを前記搬送領域と前記非搬送領域の温度差を低減するように移動させることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
  3. 前記誘導発熱体は回転体であり、コイルと磁性体コアが前記誘導発熱体の内部にあることを特徴とする請求項1または2に記載の像加熱装置。
  4. 前記誘導発熱体は回転体であり、コイルと磁性体コアが前記誘導発熱体の外部にあることを特徴とする請求項1または2に記載の像加熱装置。
  5. 前記磁性体コアは、前記移動手段により回動移動されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の像加熱装置。
  6. 前記磁性体コアは前記誘導発熱体側に磁束を導くよう対向配置されており、前記移動手段は前記磁性体コアの前記誘導発熱体対向面側と逆側に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の像加熱装置。
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