以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下に記載の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において種々の変形が可能である。
図1により、第1実施形態の画像形成装置としてのプリンター1の全体構造を説明する。図1は、本発明の第1実施形態のプリンター1の各構成要素の配置を説明するための図である。なお、以下の説明において、図1における上下方向を単に「垂直方向」と記す場合がある。
図1に示すように、第1実施形態のプリンター1は、装置本体Mを備える。装置本体Mは、画像情報に基づいてシート状の被転写材としての用紙Tに所定のトナー画像を形成する画像形成部GKと、用紙Tを画像形成部GKに給紙すると共にトナー画像が形成された用紙Tを排紙する給排紙部KHとを有する。
装置本体Mの外形は、筐体としてのケース体BDにより構成される。
図1に示すように、画像形成部GKは、像担持体(感光体)としての感光体ドラム2と、帯電部10と、露光ユニットとしてのレーザースキャナーユニット4と、現像器16と、トナーカートリッジ5と、トナー供給部6と、ドラムクリーニング部11と、除電器12と、転写部としての転写ローラー8と、定着装置9とを備える。
図1に示すように、給排紙部KHは、給紙カセット52と、手差し給紙部64と、用紙Tの搬送路Lと、レジストローラー対80と、排紙部50とを備える。
以下、画像形成部GK及び給排紙部KHの各構成について詳細に説明する。
まず、画像形成部GKについて説明する。
画像形成部GKにおいては、感光体ドラム2の表面に沿って順に、感光体ドラム2の回転方向の上流側から下流側に順に、帯電部10による帯電、レーザースキャナーユニット4による露光、現像器16による現像、転写ローラー8による転写、除電器12による除電、及びドラムクリーニング部11によるクリーニングが行われる。
感光体ドラム2は、円筒形状の部材からなり、感光体又は像担持体として機能する。感光体ドラム2は、搬送路Lにおける用紙Tの搬送方向に対して直交する方向に延びる回転軸を中心に、図1に示した矢印の方向に回転可能に配置される。感光体ドラム2の表面には、静電潜像が形成され得る。
帯電部10は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。帯電部10は、感光体ドラム2の表面を一様に負(マイナス極性)又は正(プラス極性)に帯電させる。
レーザースキャナーユニット4は、露光ユニットとして機能するものであり、感光体ドラム2の表面から離間して配置される。レーザースキャナーユニット4は、不図示のレーザー光源、ポリゴンミラー、ポリゴンミラー駆動用モータ等を有している。
レーザースキャナーユニット4は、PC(パーソナルコンピューター)等の外部機器から入力された画像情報に基づいて、感光体ドラム2の表面を走査露光する。レーザースキャナーユニット4により走査露光されることで、感光体ドラム2の表面の露光された部分の帯電電荷が除去される。これにより、感光体ドラム2の表面に静電潜像が形成される。
現像器16は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。現像器16は、感光体ドラム2に形成された静電潜像を単色(通常はブラック)のトナーを用いて現像して、単色のトナー画像を感光体ドラム2の表面に形成する。現像器16は、感光体ドラム2の表面に対向配置された現像ローラー17、トナー攪拌用の攪拌ローラー18等を有している。
トナーカートリッジ5は、現像器16に対応して設けられており、現像器16に対して供給されるトナーを収容する。
トナー供給部6は、トナーカートリッジ5及び現像器16に対応して設けられており、トナーカートリッジ5に収容されたトナーを現像器16に対して供給する。トナー供給部6と現像器16とは、不図示のトナー供給路により結ばれている。
転写ローラー8は、感光体ドラム2の表面に現像されたトナー画像を用紙Tに転写させる。転写ローラー8には、不図示の転写バイアス印加部により、感光体ドラム2に形成されたトナー画像を用紙Tに転写させるための転写バイアスが印加される。転写ローラー8は、感光体ドラム2に対して当接した状態で回転可能である。
感光体ドラム2と転写ローラー8との間で、搬送路Lを搬送される用紙Tが挟み込まれる。挟み込まれた用紙Tは、感光体ドラム2の表面に押し当てられる。感光体ドラム2と転写ローラー8との間で、転写ニップNが形成される。転写ニップNにおいて、感光体ドラム2に現像されたトナー画像が用紙Tに転写される。
除電器12は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。除電器12は、感光体ドラム2の表面に光を照射することにより、転写が行われた後の感光体ドラム2の表面を除電する(電荷を除去する)。
ドラムクリーニング部11は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。ドラムクリーニング部11は、感光体ドラム2の表面に残存したトナーや付着物を除去すると共に、除去されたトナー等を回収機構へ搬送して、回収させる。
定着装置9は、用紙Tに転写されたトナー画像を構成するトナーを溶融及び加圧して、用紙Tに定着させる。定着装置9は、電磁誘導を利用した電磁誘導加熱により発熱される加熱回転体9aと、加熱回転体9aに圧接される加圧回転体9bと、を備える。加熱回転体9aと加圧回転体9bとは、トナー画像が転写された用紙Tを搬送しながら挟み込んで加熱及び加圧する。このことにより、用紙Tに転写されたトナーは、溶融及び加圧され、用紙Tに定着される。定着装置9の詳細については後述する。
次に、給排紙部KHについて説明する。
図1に示すように、装置本体Mの下部には、用紙Tを収容する給紙カセット52が配置される。給紙カセット52は、装置本体Mの右側(図1の右側)から水平方向に引き出し可能である。給紙カセット52は、用紙Tが積層された状態で載置される載置板60を有する。載置板60に載置された用紙Tは、給紙カセット52の用紙送り出し側の端部(図1において右側の端部)に配置されるカセット給紙部51により搬送路Lに送り出される。カセット給紙部51は、載置板60上の用紙Tを取り出すための前送りコロ61と、用紙Tを1枚ずつ搬送路Lに送り出すための給紙ローラー対63とからなる重送防止機構を備える。
装置本体Mの右側(図1の右側)には、手差し給紙部64が設けられる。手差し給紙部64は、給紙カセット52にセットされる用紙Tとは異なる大きさや種類の用紙Tを装置本体Mに供給することを主目的として設けられる。手差し給紙部64は、閉状態において装置本体Mの前面の一部を構成する手差しトレイ65と、給紙コロ66とを備える。手差しトレイ65は、その下端が給紙コロ66の近傍の装置本体Mに回動自在(開閉自在)に取り付けられる。開状態の手差しトレイ65には、用紙Tが載置される。給紙コロ66は、開状態の手差しトレイ65に載置された用紙Tを手差し搬送路Laに給紙する。
装置本体Mの上部には、排紙部50が設けられる。排紙部50は、第3ローラー対53により用紙Tを装置本体Mの外部に排紙する。排紙部50の詳細については後述する。
用紙Tを搬送する搬送路Lは、カセット給紙部51から転写ニップNまでの第1搬送路L1と、転写ニップNから定着装置9までの第2搬送路L2と、定着装置9から排紙部50までの第3搬送路L3と、手差し給紙部64から供給される用紙を第1搬送路L1に合流させる手差し搬送路Laと、第3搬送路L3を下流側から上流側へ搬送する用紙を、表裏反転させて第1搬送路L1に戻す戻し搬送路Lbとを備える。
また、第1搬送路L1の途中には、第1合流部P1及び第2合流部P2が設けられている。第3搬送路L3の途中には、第1分岐部Q1が設けられている。第1合流部P1は、手差し搬送路Laが第1搬送路L1に合流する合流部である。第2合流部P2は、戻し搬送路Lbが第1搬送路L1に合流する合流部である。第1分岐部Q1は、戻し搬送路Lbが第3搬送路L3から分岐する分岐部で、第1ローラー対54a及び第2ローラー対54bを有する。第1ローラー対54aの一方のローラーと第2ローラー対54bの一方のローラーとは兼用される。
第1搬送路L1の途中(詳細には、第2合流部P2と転写ニップNとの間)には、用紙Tを検出するためのセンサ(不図示)と、用紙Tのスキュー(斜め給紙)補正や画像形成部GKにおけるトナー画像の形成と用紙Tの搬送のタイミングを合わせるためのレジストローラー対80とが配置される。センサは、用紙Tの搬送方向のレジストローラー対80の直前(搬送方向の上流側)に配置される。レジストローラー対80は、センサからの検出信号情報に基づいて上述の補正やタイミング調整をして用紙Tを搬送する。
戻し搬送路Lbは、用紙Tに両面印刷を行う際に、既に印刷されている面とは反対面(未印刷面)を感光体ドラム2に対向させるために設けられる搬送路である。戻し搬送路Lbによれば、第1分岐部Q1から第1ローラー対54aにより排紙部50側に搬送された用紙Tを表裏反転させて第2ローラー対54bにより第1搬送路L1に戻して、レジストローラー対80の上流側に搬送させることができる。戻し搬送路Lbにより表裏反転された用紙Tの未印刷面には、転写ニップNにおいてトナー画像が転写される。
第3搬送路L3の端部には、排紙部50が形成される。排紙部50は、装置本体Mの右側(図1において右側、手差し給紙部64側)に向けて開口している。排紙部50は、第3搬送路L3を搬送される用紙Tを第3ローラー対53によって装置本体Mの外部に排紙する。
排紙部50の開口側には、排紙集積部M1が形成される。排紙集積部M1は、装置本体Mの上面(外面)に設けられている。排紙集積部M1は、装置本体Mの上面が下方に窪んで形成された部分である。排紙集積部M1の底面は、装置本体Mにおける上面の一部を構成する。排紙集積部M1には、トナー画像が形成され排紙部50から排紙された用紙Tが積層して集積される。なお、各搬送路の所定位置には用紙検出用のセンサ(不図示)が配置される。
次に、本実施形態のプリンター1の特徴部分である定着装置9に係る構成について詳細に説明する。図2Aは、第1実施形態のプリンター1の定着装置9の各構成要素を説明するための断面図であって、サイドコア76が第1位置I1に配置された場合の断面図である。図2Bは、第1実施形態のプリンター1の定着装置9の各構成要素を説明するための断面図であって、サイドコア76が第2A位置I2Aに配置された場合の断面図である。図2Cは、第1実施形態のプリンター1の定着装置9の各構成要素を説明するための断面図であって、サイドコア76が第2B位置I2Bに配置された場合の断面図である。図3は、図2A、図2B及び図2Cに示す定着装置9を用紙Tの搬送方向D1から視た図である。図4Aは、第1実施形態のプリンター1のサイドコア76と第1磁束遮蔽部材78との位置関係を示す垂直方向の上方側から視た図であって、サイドコア76が第1位置I1に配置された場合の図である。図4Bは、第1実施形態のプリンター1のサイドコア76と第1磁束遮蔽部材78との位置関係を示す垂直方向の上方側から視た図であって、サイドコア76が第2A位置I2Aに配置された場合の図である。図4Cは、第1実施形態のプリンター1のサイドコア76と第1磁束遮蔽部材78との位置関係を示す垂直方向の上方側から視た図であって、サイドコア76が第2B位置I2Bに配置された場合の図である。
図2Aから図2Cに示すように、定着装置9は、加熱回転体9aと、加熱回転体9aに圧接(当接)される加圧回転体9bと、加熱ユニット70と、複数の温度センサ95と、を備える。
加熱回転体9aは、環状に形成される。環状の加熱回転体9aには、円筒状の加熱回転体9aが含まれる。加熱回転体9aは、第1周方向R1に回転可能である。詳細については後述するが、加熱回転体9aは、後述する加熱ユニット70を用いることで、電磁誘導を利用した電磁誘導加熱(IH;induction heating)により発熱される。
加熱回転体9aは、定着側ローラー92と、定着側ローラー92の外周面を覆うように配置される加熱回転ベルト93と、を備える。
定着側ローラー92について説明する。定着側ローラー92は、円筒状に形成される。定着側ローラー92は、第1周方向R1に直交する方向D2に延びるように形成される第1回転軸J1を中心に、第1周方向R1に回転可能である。定着側ローラー92は、第1回転軸J1方向に延びている。第1周方向R1に直交する直交方向D2は、用紙Tの搬送方向D1と直交する方向でもある。本実施形態においては、第1周方向R1に直交する直交方向D2を「用紙幅方向D2」ともいう。
定着側ローラー92は、定着側ローラー本体921と、第1回転軸J1と同軸の不図示の軸部材と、を有する。定着側ローラー本体921は、円筒状の金属部材と、金属部材の外周面に形成される弾性層と、を有する。なお、定着側ローラー92には、電磁誘導加熱により発熱された加熱回転ベルト93(後述)から熱が伝達され得る。
本実施形態においては、例えば、定着側ローラー本体921は、直径が27mm程度で厚さが2mm程度のアルミニウムやSUS(ステンレス鋼)等の非磁性体により構成された金属管の外周面に、厚さ9mm程度のシリコンスポンジゴム等からなる弾性層を設けることで構成される。
定着側ローラー92の軸部材(不図示)は、定着側ローラー本体921の両端部から第1回転軸J1方向の外側それぞれに突出している。定着側ローラー92の軸部材は、定着装置9のケースやその他の部材により回転可能に支持される。これにより、定着側ローラー92は、第1回転軸J1を中心に回転可能となっている。
加熱回転ベルト93について説明する。加熱回転ベルト93は、環状(無端ベルト状)である。加熱回転ベルト93は、第1周方向R1に回転可能であり、定着側ローラー92の外周面を覆うように定着側ローラー92の外周面に沿って配置される。加熱回転ベルト93の内周面には、定着側ローラー92の外周面が当接する。加熱回転ベルト93は、耐熱性を有する。
本実施形態においては、加熱回転ベルト93は、基材がニッケル等の強磁性材料により形成される。加熱回転ベルト93は、例えば、厚さが35μm程度のニッケル(強磁性材料)からなる金属ベルトの外周面に、厚さが0.3mm程度のシリコンゴムの弾性層を設け、更に、この弾性層の外周面に、肉厚が30μm程度のPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂製の耐熱性フィルムからなる離型層を設けることで構成される。
加熱回転ベルト93は、後述する加熱ユニット70の誘導コイル71により発生される磁束が通る領域に配置されると共に、その基材が強磁性材料により構成されることで、加熱ユニット70の誘導コイル71により発生される磁束の磁路を形成する。これは、強磁性材料で形成される加熱回転ベルト93の基材の透磁率が、周辺の空気部分や非磁性材料を主体として構成される定着側ローラー92の透磁率よりも高いためである。そして、誘導コイル71により発生される磁束は、磁路を形成する加熱回転ベルト93に沿って通過する(導かれる)。
加熱回転ベルト93には、後述する誘導コイル71により発生された加熱回転ベルト93を通過する磁束による電磁誘導によって渦電流(誘導電流)が発生する。加熱回転ベルト93には、渦電流が流れることで、加熱回転ベルト93が有する電気抵抗によりジュール熱が発生する。このように、加熱回転ベルト93は、後述する加熱ユニット70によって電磁誘導を利用した電磁誘導加熱(IH)により発熱される。
加圧回転体9bについて説明する。加圧回転体9bは、環状である。加圧回転体9bの環状には、円筒状が含まれる。加圧回転体9bは、第2周方向R2に回転可能であり、加熱回転体9aと定着ニップFを形成する。定着ニップFは、用紙Tを挟み込むと共に搬送する。
本実施形態においては、加圧回転体9bは、円筒状に形成され、加熱回転体9aの垂直方向下方側に定着側ローラー92に対向して配置される。加圧回転体9bは、用紙幅方向D2に延びる第2回転軸J2を中心に、第2周方向R2に回転可能に構成される。加圧回転体9bは、第2回転軸J2方向に延びている。
加圧回転体9bは、その外周面が、加熱回転ベルト93の外周面(外面)に当接するように配置される。具体的には、加圧回転体9bは、加熱回転ベルト93を介して定着側ローラー92を押圧するように配置される。そして、加圧回転体9bは、加熱回転ベルト93の一部を、定着側ローラー92との間に挟み込む。加圧回転体9bは、定着側ローラー92と加熱回転ベルト93の一部を挟み込んで、加熱回転ベルト93と定着ニップFを形成する。
加圧回転体9bは、加圧回転体本体941と、第2回転軸J2と同軸の不図示の軸部材と、を有する。加圧回転体本体941は、円筒状の金属部材と、金属部材の外周面に形成される弾性層と、弾性層の外周面に形成される離型層と、を有する。
本実施形態においては、例えば、加圧回転体9bは、直径が46mm程度のアルミニウムやSUS(ステンレス鋼)等の金属管の外周面に、厚さ2mm程度のシリコンゴム等からなる弾性層を設け、更に、この弾性層の表面に厚さ50μm程度のPFAやPTFE等のフッ素樹脂からなる離型層を設けることで構成される。
加圧回転体9bの軸部材(不図示)は、加圧回転体本体941の両端部から第2回転軸J2方向の外側それぞれに突出している。加圧回転体9bの軸部材は、定着装置9のケースやその他の部材により第2回転軸J2を中心に回転可能に支持される。
また、加圧回転体9bの軸部材には、加圧回転体9bを回転駆動させる回転駆動部(不図示)が接続される。この回転駆動部により、加圧回転体9bが第2周方向R2に所定速度で回転駆動されると共に、加圧回転体9bの回転に従動して、加圧回転体9bの外周面に当接する加熱回転ベルト93が第1周方向R1に回転される。加熱回転ベルト93が回転されることにより、加熱回転ベルト93の内周面に当接する定着側ローラー92は、加熱回転ベルト93の回転に従動して回転される。
定着ニップFに搬送される用紙Tは、定着装置9の通紙領域内を通過して搬送された場合に、トナー画像が定着される。「通紙領域」とは、用紙Tの搬送方向D1に直交する用紙幅方向D2において定着ニップFに搬送される用紙Tが加熱回転ベルト93と加圧回転体9bとに挟まれて通過する領域のことである。通紙領域は、加熱回転体9a及び加圧回転体9bの用紙幅方向D2の中央を基準として、当該プリンター1において使用可能な用紙Tの最大サイズ(最大幅)に対応して形成(設定)される。
詳細については後述するが、本発明に係る実施形態の定着装置は、用紙幅方向D2における異なる長さの用紙Tが定着ニップFに搬送される場合における通紙領域それぞれを設定することにより、用紙Tの各サイズに対応した通紙領域の外側の領域において、加熱回転ベルト93の温度が過度に上昇することを抑制することができる。
図3に示すように、本実施形態の定着装置9においては、用紙幅方向D2における最大長さ(最大幅)の用紙Tが定着ニップFに搬送される場合の通紙領域として、最大通紙領域901を設定する。例えば、加熱回転ベルト93の外周面及び加圧回転体9bの外周面には、A3サイズの用紙Tの短辺が用紙幅方向D2に平行な状態(A3サイズ縦)で、A3サイズの用紙Tが定着ニップFに搬送される場合に、A3サイズの用紙Tが接して通過する領域である最大通紙領域901が形成(設定)される。最大通紙領域901は、プリンター1ごとにそれぞれ設定される。
具体的には、加熱回転ベルト93の外周面には、図3に示すように、加熱回転体9aの最大通紙領域901として、加熱側最大通紙領域901aが形成(設定)される。
例えば、図3に示すように、加熱回転ベルト93の外周面には、用紙幅方向D2の長さが最大の用紙TとしてのA3サイズ縦の用紙Tが定着ニップFに搬送される場合において、A3サイズ縦の用紙Tが接して通過する加熱側最大通紙領域901a(最大通紙領域901)が形成(設定)される。
また、加圧回転体9bの外周面には、加熱回転ベルト93の加熱側最大通紙領域901aに対応して、加圧回転体9bの最大通紙領域901として、加圧側最大通紙領域901bが形成(設定)される。例えば、加圧回転体9bの外周面には、A3サイズ縦の用紙Tが定着ニップFに搬送される場合において、A3サイズ縦の用紙Tが接して通過する加圧側最大通紙領域901b(最大通紙領域901)が形成(設定)される。
用紙幅方向D2の長さが最大(最大幅)の用紙Tが加熱側最大通紙領域901aを通過する場合、用紙Tの用紙幅方向D2の外縁に対応する位置は、加熱側最大通紙領域901aの外縁である加熱側最大領域外縁901e、901eとなる。つまり、最大長さの用紙Tは、加熱側最大領域外縁901e、901eの内側の領域である加熱側最大通紙領域901aを搬送される。
なお、図3に示すように、用紙幅方向D2において加熱側最大領域外縁901e、901eに対応する位置を「最大領域外縁対応位置761e、761e」という。また、加熱側最大通紙領域901aにおける用紙幅方向D2に平行な方向の長さを、「最大通紙幅W1」という。加熱側最大通紙領域901aを通過して搬送される各サイズの用紙Tの用紙幅方向D2の長さは、各用紙Tにおける「通紙幅」である。
また、用紙Tが定着ニップFに搬送される場合に、通紙領域よりも外側の用紙Tが通過しない領域を「非通紙領域」ともいう。本実施形態においては、例えば、用紙幅方向D2の長さが最大の用紙Tが定着ニップFに搬送される場合の用紙Tが通過しない領域(最大通紙領域901の外側の領域)を「最大非通紙領域903」ともいう。
また、本実施形態の定着装置9においては、用紙幅方向D2の長さが最小(最小幅)の用紙Tが定着ニップFに搬送される場合の用紙Tが通過する通紙領域として、最小通紙領域902を設定する。例えば、加熱回転ベルト93の外周面及び加圧回転体9bの外周面には、A5サイズの用紙Tの短辺が用紙幅方向D2に平行な状態(A5サイズ縦)で、A5サイズの用紙Tが定着ニップFに搬送される場合に、A5サイズの用紙Tが接して通過する領域である最小通紙領域902が形成(設定)される。最小通紙領域902は、プリンター1ごとにそれぞれ設定される。
具体的には、加熱回転ベルト93の外周面には、加熱回転体9aの最小通紙領域902として、加熱側最小通紙領域902aが形成(設定)される。加圧回転体9bの外周面には、加熱回転ベルト93の加熱側最小通紙領域902aに対応して、加圧側最小通紙領域902bが形成(設定)される。
最小長さ(最小幅)の用紙Tが加熱側最小通紙領域902aを通過する場合、用紙Tの用紙幅方向D2おける外縁に対応する位置は、加熱側最小通紙領域902aの外縁である加熱側最小領域外縁902e、902eとなる。つまり、最小長さの用紙Tは、加熱側最小領域外縁902e、902eの内側の領域である加熱側最小通紙領域902aを搬送される。
なお、用紙幅方向D2において加熱側最小領域外縁902e、902eに対応する位置を「最小領域外縁対応位置762e、762e」という。また、加熱側最小通紙領域902aにおける用紙幅方向D2に平行な方向の長さを、「最小通紙幅W2」という。
また、本実施形態の定着装置9においては、用紙幅方向D2の長さが最大長さ(最大幅)よりも短く且つ最小長さ(最小幅)よりも長い長さである中間長さ(中間幅)の用紙Tが定着ニップFに搬送される場合における用紙Tが通過する通紙領域として、中間通紙領域904を設定する。例えば、加熱回転ベルト93の外周面及び加圧回転体9bの外周面には、A4サイズの用紙Tの短辺が用紙幅方向D2に平行な状態(A4サイズ縦)で、A4サイズの用紙Tが定着ニップFに搬送される場合に、A4サイズの用紙Tが接して通過す領域である中間通紙領域904が形成(設定)される。中間通紙領域904は、プリンター1ごとにそれぞれ設定される。
具体的には、加熱回転ベルト93の外周面には、加熱回転体9aの中間通紙領域904として、加熱側中間通紙領域904aが形成(設定)される。加圧回転体9bの外周面には、加熱回転ベルト93の加熱側中間通紙領域904aに対応して、加圧側中間通紙領域904bが形成(設定)される。
中間長さ(中間幅)の用紙Tが加熱側中間通紙領域904aを通過する場合、用紙Tの用紙幅方向D2の外縁に対応する位置は、加熱側中間通紙領域904aの外縁である加熱側中間領域外縁904e、904eとなる。つまり、最小長さの用紙Tは、加熱側中間領域外縁904e、904eの内側の領域である加熱側中間通紙領域904aを搬送される。
なお、用紙幅方向D2の加熱側中間領域外縁904e、904eに対応する位置を「中間領域外縁対応位置764e、764e」という。また、加熱側最小通紙領域902aの用紙幅方向D2に平行な方向の長さを、「中間通紙幅W4」という。
加熱ユニット70について説明する。図2Aから図3に示すように、加熱ユニット700は、誘導コイル71と、磁性体コア部72と、を備える。誘導コイル71は、加熱回転ベルト93の外周面(外面)から所定距離だけ離間すると共に、加熱回転ベルト93の外周面(外面)に沿って配置される。本実施形態では、あらかじめ巻き回した形状に形成した誘導コイル71を、その長手方向が用紙幅方向D2と平行になるように加熱ユニット70に配置している。誘導コイル71は、平面視(図2Aから図3における上方から視た場合)において、用紙幅方向D2に長い形状に線材を巻き回して誘導コイル71を形成してもよい。
誘導コイル71は、加熱回転ベルト93の加熱側最大通紙領域901a(最大通紙領域901)において電磁誘導加熱(IH)により所定の発熱量を発生させるため、用紙幅方向D2において加熱回転ベルト93の長さよりも長く形成される。
誘導コイル71は、誘導コイル71を構成する銅製のリッツ線の線材を用紙幅方向D2に延びるように配置すると共に加熱回転ベルト93の周方向に沿って並ぶように配置される。誘導コイル71は、加熱回転ベルト93の垂直方向の上方側の略半周の外周面に対向して配置される。
図2Aから図3に示すように、誘導コイル71は、第1回転軸J1方向(用紙幅方向D2)に延びる中央領域718を囲むように配置される。中央領域718は、加熱回転ベルト93の垂直方向の最も上方に位置する部分(搬送方向D1の略中央)の上方側において、誘導コイル71の線材が配置されない用紙幅方向D2(第1回転軸J1方向)に長い領域である。なお、本実施形態においては、中央領域718には、後述する上部コア75のセンターコア部73の垂直方向の下方側の部分が配置されている。
誘導コイル71が加熱ユニット70に配置された際に、以下のような配置になるように、誘導コイル71は形成されている。すなわち、誘導コイル71の内周縁(線材711Aが配されている部位)は、中央領域718を囲む。誘導コイル71を構成する線材は、用紙幅方向D2に延びる。また、誘導コイル71を構成する線材は、誘導コイル71の内周縁から加熱回転ベルト93の周方向に沿って並ぶ。誘導コイル71の外周縁(線材711Bが配されている部位)は、加熱回転ベルト93の外周面に対向する。
本実施形態においては、誘導コイル71は、耐熱性の樹脂材料により形成された支持部材(図示せず)の上に固定される。支持部材は、加熱回転ベルト93の垂直方向の上方側の外周面(外面)に沿うような半円筒形状に形成され、加熱回転ベルト93の外周面から所定距離だけ離間して配置される。
誘導コイル71は、不図示の誘導加熱用回路部に接続される。誘導コイル71には、誘導加熱用回路部から交流電流が印加される。誘導コイル71は、誘導加熱用回路部から交流電流が印加されることにより、加熱回転ベルト93を発熱させるための磁束を発生させる。
図2Aから図2Cに示すように、誘導コイル71は、基材が強磁性材料である加熱回転ベルト93及び磁性体コア部72(後述)が配置された領域を通るように、磁束を発生させる。これにより、誘導コイル71により発生された磁束は、加熱回転ベルト93及び磁性体コア部72(後述)により形成された磁束の経路である磁路に導かれる。
磁路は、誘導コイル71により発生された磁束が周回方向R3に周回するように、加熱回転ベルト93及び磁性体コア部72(後述)により形成される。周回方向R3とは、誘導コイル71の内周縁の内側と外周縁の外側とを通り誘導コイル71の線材の部分を囲むように周回する方向である。誘導コイル71により発生された磁束は、磁路を通過する。
誘導コイル71により発生された磁束は、誘導コイル71の内周縁の内側における線材が配置されない部分である中央領域718に対して、用紙Tの搬送方向D1の下流側及び上流側において互いに対称に周回方向R3に周回する2つの磁路を通過する2つの磁束を主体として構成される。
そして、用紙Tの搬送方向D1の下流側及び上流側に互いに対称に周回する2つの磁束は、上部コア75(後述)のセンターコア部73(後述)において合流する。誘導コイル71により発生された2つの磁束の方向は、用紙Tの搬送方向D1の下流側及び上流側に形成される2つの磁束が互いに対向する部分において、互いに同じ方向である。
誘導コイル71により発生される磁束は、誘導加熱用回路部(不図示)から交流電流が印加されるため、交流電流のプラス又はマイナスへの周期的な変動により、その大きさ及び方向が変化する。加熱回転ベルト93には、この磁束の変化により誘導電流(渦電流)が発生する。
磁性体コア部72は、図2Aから図2Cに示すように、周回方向R3に周回する磁路を形成する。磁性体コア部72は、誘導コイル71により発生される磁束が通る領域に配置されると共に、強磁性材料を主体として形成されるため、誘導コイル71により発生される磁束の経路である磁路を形成する。これは、強磁性材料を主体として形成される磁性体コア部72の透磁率が周辺の空気部分の透磁率よりも高いためである。そして、誘導コイル71により発生される磁束は、磁路を形成する磁性体コア部72を通過し、加熱回転ベルト93に導かれる。
また、磁性体コア部72は、誘導コイル71の内周縁の内側の線材が配置されない部分である中央領域718に対して対称に、用紙Tの搬送方向D1の上流側及び下流側に2つの磁路を形成する。
図2Aから図2Cに示すように、磁性体コア部72は、上部コア75と、複数の第3コア部としての複数対のサイドコア76と、磁束遮蔽部材としての一対の第1磁束遮蔽部材78、78と、を有する。上部コア75及びサイドコア76は、例えば、フェライト粉末を焼結して成形される強磁性材料からなる磁性体コアである。
上部コア75の詳細について説明する。上部コア75は、第2コア部としてのセンターコア部73と、複数の第1コア部としての複数対のアーチコア部74とにより一体的に形成される。
センターコア部73は、用紙幅方向D2に視た場合に、加熱回転体9aの垂直方向の上方側において、加熱回転体9aの用紙Tの搬送方向D1の略中央に配置される。
複数のアーチコア部74は、センターコア部73に対して、用紙Tの搬送方向D1の下流側及び上流側に対をなしてそれぞれ配置される。センターコア部73及び複数対のアーチコア部74、74は、用紙幅方向D2の所定位置において、磁路の周回方向R3に沿って連続して一体的に並んで形成される。
センターコア部73は、図2Aから図2Cに示すように、周回方向R3において、後述するアーチコア部74と加熱回転ベルト93との間の磁路を形成する。センターコア部73は、中央領域718の近傍(誘導コイル71の内周縁に配置される線材711Aの近傍)に配置される。具体的には、センターコア部73は、加熱回転ベルト93の用紙Tの搬送方向D1の中央において、加熱回転ベルト93に対して垂直方向の上方側に配置される。
センターコア部73は、用紙幅方向D2から視た場合に、垂直方向に長い略方形状に形成される。センターコア部73は、加熱回転ベルト93の外周面(外面)から所定距離だけ離間して加熱回転ベルト93の外周面に対向する。センターコア部73は、誘導コイル71の線材の部分を挟まずに加熱回転ベルト93の外周面に対向する面を有する。
また、センターコア部73の加熱回転ベルト93の外周面に対向する面と反対側の面は、垂直方向の上方側を向いて露出している。センターコア部73の用紙Tの搬送方向D1の下流側及び上流側の側面は、用紙幅方向D2の所定位置において、後述する複数対のアーチコア部74、74それぞれに連続している。
また、図3に示すように、センターコア部73は、用紙幅方向D2に長い略直方体形状である。センターコア部73は、用紙幅方向D2において、最大長さの用紙Tの最大通紙幅W1よりも長く形成される。
複数対のアーチコア部74、74それぞれは、センターコア部73の側面の上方側から用紙Tの搬送方向D1の上流側及び下流側それぞれに延びている。複数対のアーチコア部74、74それぞれは、図2Aから図2Cに示すように、周回方向R3において、誘導コイル71に対して加熱回転ベルト93とは反対側(誘導コイル71の外側)の磁路を形成する。複数対のアーチコア部74、74それぞれは、誘導コイル71により発生される磁束の外方側への漏れを低減して、磁束を加熱回転ベルト93に導くことができる。
複数対のアーチコア部74、74それぞれは、誘導コイル71の線材の部分を挟んで加熱回転ベルト93の外周面に対向して配置される。複数対のアーチコア部74、74は、用紙Tの搬送方向D1においてセンターコア部73を挟んでセンターコア部73に連続して、用紙Tの搬送方向D1の下流側及び上流側に対をなして配置される。複数対のアーチコア部74、74それぞれは、加熱回転ベルト93の周方向に沿うように延びるアーチ状に形成される。
複数対のアーチコア部74、74は、用紙Tの搬送方向D1においてセンターコア部73に対して、用紙Tの搬送方向D1の下流側及び上流側において対称の形状を有している。具体的には、アーチコア部74は、水平部742と、傾斜部743とを有する。水平部742は、用紙幅方向D2に視た場合に、センターコア部73の上方側から連続して搬送方向D1の下流側又は上流側に水平に所定距離だけ延びている。
傾斜部743は、図2Aから図2Cに示すように用紙幅方向D2に視た場合に、水平部742のセンターコア部73とは反対側から連続して用紙Tの搬送方向D1の下流側又は上流側に傾斜して直線状に延びるように形成される。傾斜部743は、誘導コイル71の搬送方向D1の下流側又は上流側の外周縁の外側近傍に向かうように延びている。
傾斜部743は、傾斜端部744を有する。傾斜端部744は、傾斜部743の搬送方向D1の下流側又は上流側の端部である。言い換えると、傾斜端部744は、複数のアーチコア部74のセンターコア部73と反対側の端部である。傾斜端部744の端縁には、傾斜端面744Aが形成される。傾斜端面744Aは、垂直方向の下方側に面していると共に、水平方向に平行に延びている。
また、複数対のアーチコア部74それぞれは、図3に示すように、用紙幅方向D2に所定距離だけ離間して配置される。複数対のアーチコア部74それぞれは、最大通紙領域901に対応する全域において、用紙幅方向D2に互いに所定間隔をあけて並んで配置される。複数対のアーチコア部74それぞれは、搬送方向D1に視た場合に、用紙幅方向D2において所定幅を有して構成される。
複数対のアーチコア部74それぞれが用紙幅方向D2に所定距離だけ離間して配置されることで、誘導コイル71により発生される磁束は、用紙幅方向D2の複数対のアーチコア部74それぞれの間の空気部分をほとんど通過せずに、複数対のアーチコア部74それぞれにより形成された複数の磁路を通過する。このように、複数対のアーチコア部74部それぞれは、用紙幅方向D2に離間して周回方向R3において周回する複数の磁路を形成する。
なお、用紙幅方向D2に離間して複数対のアーチコア部74それぞれを通った磁束は、センターコア部73又は後述するサイドコア76が用紙幅方向D2に長く構成されるため、センターコア部73又はサイドコア76により構成される磁路により用紙幅方向D2に均一化されるように分散又は合流された後に、加熱回転ベルト93に導かれる。
一対の第1磁束遮蔽部材78、78の詳細について説明する。図2Aから図2Cに示すように、一対の第1磁束遮蔽部材78、78は、加熱回転体9aを挟んで用紙Tの搬送方向D1の下流側及び上流側に対をなして配置される。一対の磁束遮蔽部材78、78それぞれは、複数対のアーチコア部74、74それぞれの傾斜端部744側であって、誘導コイル711の外周縁711Bの近傍に配置される。
一対の第1磁束遮蔽部材78、78それぞれは、用紙幅方向D2に長い略直方体形の平板状に形成される。一対の第1磁束遮蔽部材78、78それぞれは、用紙幅方向D2に視た場合に、用紙Tの搬送方向D1に長い略方形状である。
なお、以下の説明において、一対の第1磁束遮蔽部材78、78については、用紙Tの搬送方向D1において加熱回転体9aを挟んで上流側と下流側とで対称であるため、一方の第1磁束遮蔽部材78についてのみ説明する場合がある。他方の第1磁束遮蔽部材78については、一方の第1磁束遮蔽部材78の説明が適宜援用又は適用される。
第1磁束遮蔽部材78は、複数のアーチコア部74それぞれの傾斜端部744それぞれから垂直方向の下方側に所定距離だけ離間して配置される。第1磁束遮蔽部材78それぞれは、その上方側の面の一部がアーチコア部74の傾斜端面744Aに対向して配置される。
第1磁束遮蔽部材78の上方側の面とアーチコア部74の傾斜端面744Aとの間の距離は、後述する複数のサイドコア76それぞれを配置可能な距離である。詳細については後述するが、複数のサイドコア76それぞれは、第1磁束遮蔽部材78と複数のアーチコア部74との間に配置される場合には、アーチコア部74の傾斜端部744に当接又は近接する位置に配置される。
第1磁束遮蔽部材78は、誘導コイル711の線材の部分を挟まずに加熱回転ベルト93の外周面に対向する第1対向面781を有する。第1対向面781は、加熱回転ベルト93の外周面(外面)から離間距離K0だけ離間した位置に配置される。
第1磁束遮蔽部材78は、加熱回転ベルト93の外周面(外面)から離間距離K0だけ離間した位置から加熱回転ベルト93の外周面から離れる方向(搬送方向D1の下流側又は上流側)に向かって水平に延びている。第1磁束遮蔽部材78は、加熱回転ベルト93の外周面から離間距離K0だけ離間した位置からアーチコア部74の傾斜端部744の下方側を越えた位置まで延びている。
第1磁束遮蔽部材78は、非磁性体材料であり、且つ、導電率が高い部材により形成される。第1磁束遮蔽部材78としては、例えば、無酸素銅などが用いられる。
第1磁束遮蔽部材78は、第1磁束遮蔽部材78の表面(アーチコア74と対面する面)に垂直な磁束が貫通することによる誘導電流で、貫通した磁束に対して逆方向の磁束を発生させる。そして、第1磁束遮蔽部材78は、錯交磁束(垂直な貫通磁束)をキャンセルする磁束を発生させることで磁路を通過する磁束を低減させ又は遮蔽する。また、導電率が高い導電性部材を用いることで誘導電流によるジュール発熱を抑制し、効率よく磁束を低減させ又は遮蔽することができる。第1磁束遮蔽部材78が高い導電性を得るためには、例えば、固有抵抗の小さい材料を選定することや、第1磁束遮蔽部材78の厚みを厚くする等の方法が有効である。具体的には、第1磁束遮蔽部材78の板厚は、0.5mm以上が好ましい。
なお、第1磁束遮蔽部材78は、磁束を低減させる部材である。そのため、第1磁束遮蔽部材78を「第1磁束低減部材78」ともいう。
詳細については後述するが、第1磁束遮蔽部材78は、後述する複数のサイドコア76それぞれの第2対向面765が加熱回転ベルト93の外周面に近づく方向又は加熱回転ベルト93の外周面から離れる方向に移動することで、誘導コイル71が発生させた磁束を低減させ又は遮蔽することが可能である。
複数対のサイドコア76、76の詳細について説明する。複数対のサイドコア76、76は、加熱回転体9aを挟んで用紙Tの搬送方向D1の下流側及び上流側に対をなして配置される。複数対のサイドコア76、76それぞれは、一対の第1磁束遮蔽部材78、78それぞれの複数のアーチコア部74それぞれの傾斜端部744側である第1磁束遮蔽部材78の上面側に配置される。
複数対のサイドコア76、76それぞれは、用紙幅方向D2に長い略直方体形の平板状であり、用紙幅方向D2に視た場合に、搬送方向D1に長い略方形状である。
なお、以下の説明において、複数対のサイドコア76、76については、用紙Tの搬送方向D1において加熱回転体9aを挟んで上流側と下流側とで対称であるため、一方のサイドコア76についてのみ説明する場合がある。他方のサイドコア76については、一方のサイドコア76の説明が適宜援用又は適用される。
複数のサイドコア76それぞれは、加熱回転ベルト93の外周面(外面)から所定距離だけ離間して加熱回転ベルト93の外周面に対向して配置される。サイドコア76それぞれは、誘導コイル71の線材の部分を挟まずに加熱回転ベルト93の外周面に対向する第2対向面765(サイドコア76の加熱回転ベルト93側の端部)を有する。
詳細については後述するが、第2対向面765は、複数のサイドコア76それぞれが加熱回転ベルト93に近づく方向又は離れる方向に移動することにより、加熱回転ベルト93の外周面から第1距離K1又は第2距離K2だけ離間することが可能である。本実施形態では、複数のサイドコア76それぞれは、加熱回転ベルト93の外周面から第1距離K1又は第2距離K2だけ離間することを可能とした。しかしながら、実施形態に適合させて、複数のサイドコア76それぞれは、加熱回転ベルト93の外周面から第1距離K1又は第2距離K2の間の任意の距離だけ離間することを可能なように構成しても良い。
複数のサイドコア76それぞれは、加熱回転ベルト93の外周面(外面)から第1距離K1又は第2距離K2だけ離間した第2対向面765の位置から加熱回転ベルト93の外周面から離れる方向(用紙Tの搬送方向D1の下流側又は上流側)に向かって水平に延びている。複数のサイドコア76それぞれの搬送方向D1の長さは、第1磁束遮蔽部材78と略同じである。なお、複数のサイドコア76それぞれの用紙Tの搬送方向D1の長さは、加熱回転ベルト93の外周面(外面)から第1距離K1だけ離間した位置(後述の第1位置I1)に複数のサイドコア76それぞれが配置された際に、複数のサイドコア76それぞれが、第1磁束遮蔽部材78を覆うことが可能な大きさであれば良く、第1磁束遮蔽部材78の長さより大きくても良い。
図3から図4Cに示すように、複数のサイドコア76それぞれは、用紙幅方向D2に並んで配置される。複数のサイドコア76それぞれは、用紙幅方向D2において間隔が詰められた状態で並んで配置される。用紙幅方向D2に並んで配置された複数のサイドコア76の全体は、用紙幅方向D2において最大長さの用紙Tの最大通紙幅W1よりも長い範囲にわたっている。
複数のサイドコア76、76それぞれとは、第1サイドコア76A、一対の第2サイドコア76B、76B、一対の第3サイドコア76C、76C、一対の第4サイドコア76D、76Dである。複数のサイドコア76それぞれは、用紙幅方向D2の中央に配置される第1サイドコア76Aを中心として、第1サイドコア76Aから用紙幅方向D2の外側それぞれに向かって順に、第2サイドコア76B、第3サイドコア76C、第4サイドコ
ア76Dがそれぞれ配置される。第2サイドコア76B、第3サイドコア76C及び第4サイドコア76Dは、第1サイドコア76Aを中心として用紙幅方向D2の外側それぞれに対をなしている。
第1サイドコア76A、一対の第2サイドコア76B、76B、一対の第3サイドコア76C、76C及び一対の第4サイドコア76D、76Dそれぞれは、各サイズの用紙Tの通紙領域に対応して用紙幅方向D2において所定の長さを有する。
具体的には、図3に示すように、第1サイドコア76Aは、一方の最小領域外縁対応位置762eから他方の最小領域外縁対応位置762eにわたって配置される。一対の第2サイドコア76B、76Bそれぞれは、一方又は他方の最小領域外縁対応位置762eから第1サイドコア76Aと反対側(用紙幅方向D2の外側)の中間領域外縁対応位置764eにわたって配置される。
一対の第3サイドコア76C、76Cそれぞれは、一方又は他方の中間領域外縁対応位置764eから第1サイドコア76Aと反対側(用紙幅方向D2の外側)の最大領域外縁対応位置761eにわたって配置される。一対の第4サイドコア76D、76Dそれぞれは、一方又は他方の最大領域外縁対応位置761eから用紙幅方向D2の外側に延びている。
ここで、各サイズの用紙Tが定着ニップFに通紙される場合において、複数のサイドコア76の役割について説明する。詳細については後述するが、通紙領域の外側の領域(非通紙領域)に対応して配置される複数のサイドコア76のうちの所定のサイドコア76を移動させることにより誘導コイル71が発生させた磁束を低減させ又は遮蔽することができる。これにより、加熱回転ベルト93の非通紙領域の過度の温度の上昇を抑制することができる。
例えば、A5サイズ縦の用紙Tが定着ニップFに通紙される場合には、A5サイズ縦の用紙Tは、加熱回転ベルト93の加熱側最小通紙領域902aを通過する。加熱側最小通紙領域902aの外側の領域(非通紙領域)には、一対の第2サイドコア76B、76B、一対の第3サイドコア76C、76C及び一対の第4サイドコア76D、76Dが移動可能に配置されている。そのため、一対の第2サイドコア76B、76B、一対の第3サイドコア76C、76C及び一対の第4サイドコア76D、76Dを移動させることにより、加熱回転ベルト93の非通紙領域の過度の温度の上昇を抑制することができる。
また、例えば、A4サイズ縦の用紙Tが定着ニップFを通紙される場合には、A4サイズ縦の用紙Tは、加熱回転ベルト93の加熱側中間通紙領域904aを通過する。加熱側中間通紙領域904aの外側の領域(非通紙領域)には、一対の第3サイドコア76C、76C及び一対の第4サイドコア76D、76Dが移動可能に配置されている。そのため、一対の第3サイドコア76C、76C及び一対の第4サイドコア76D、76Dを移動させることにより、加熱回転ベルト93の非通紙領域の過度の温度の上昇を抑制することができる。
また、例えば、A3サイズ縦の用紙Tが定着ニップFを通紙される場合には、A3サイズ縦の用紙Tは、加熱回転ベルト93の加熱側最大通紙領域901aを通過する。加熱側最大通紙領域901aの外側の領域(非通紙領域)には、一対の第4サイドコア76D、76Dが移動可能に配置されている。そのため、一対の第4サイドコア76D、76Dを移動させることにより、加熱回転ベルト93の非通紙領域の過度の温度の上昇を抑制することができる。
また、複数のサイドコア76それぞれは、第1磁束遮蔽部材78のアーチコア部74の傾斜端部744側において、複数のサイドコア76それぞれの第2対向面765が加熱回転ベルト93の外周面に近づく方向又は加熱回転ベルト93の外周面から離れる方向に移動可能である。
具体的には、複数のサイドコア76それぞれは、複数のサイドコア76それぞれの第2対向面765が加熱回転ベルト93の外周面に近づく方向又は加熱回転ベルト93の外周面から離れる方向に移動することにより、第1位置I1と第2位置I2とに移動可能である。
複数のサイドコア76それぞれの第1位置I1は、図2Aに示すように、サイドコア76の第2対向面765が加熱回転ベルト93の外周面から離間距離K0以下の距離である第1距離K1だけ加熱回転ベルト93から離間して加熱回転ベルト93の外周面に対向する位置である。なお、前述のように、本実施形態では、複数のサイドコア76それぞれの用紙Tの搬送方向D1の長さは、第1磁束遮蔽部材78と略同じである。そのため、図2Aにおいて、第1距離K1は、離間距離K0と略等しくなっている。しかしながら、複数のサイドコア76それぞれの用紙Tの搬送方向D1の長さは、第1磁束遮蔽部材78より大きい場合には、第1距離K1は、離間距離K0より短くなる。
複数のサイドコア76それぞれの第2位置I2は、図2B、図2Cに示すように、サイドコア76の第2対向面765が加熱回転ベルト93の外周面から離間距離K0よりも長い距離である第2距離K2だけ離間して加熱回転ベルト93の外周面に対向する位置である。
サイドコア76が第1位置I1に位置する場合には、図2Aに示すように、サイドコア76の第2対向面765の搬送方向D1における位置は、第1磁束遮蔽部材78の第1対向面781と同じ位置又は第1磁束遮蔽部材78の第1対向面781よりも加熱回転ベルト93の外周面に近い位置である。
つまり、サイドコア76が第1位置I1に位置する場合には、垂直方向の上方側から視た場合に、第1磁束遮蔽部材78の傾斜端部744側の上面の全部を覆うように第1磁束遮蔽部材78に重なってサイドコア76は配置される。これにより、誘導コイル71により発生された磁束は、第1磁束遮蔽部材78を通過せずに、透磁率の高いサイドコア76に導かれる(図2A参照)。
一方、サイドコア76が第2位置I2に位置する場合には、図2B及び図2Cに示すように、サイドコア76の第2対向面765の位置は、第1磁束遮蔽部材78の第1対向面781よりも加熱回転ベルト93の外周面から遠い位置である。
つまり、サイドコア76が第2位置I2に位置する場合には、垂直方向の上方側から視た場合に、第1磁束遮蔽部材78の傾斜端部744側の上面のうちの一部又は全部に重ならないようにサイドコア76は配置される。
これにより、誘導コイル71により発生された磁束は、サイドコア76に導かれると共に第1磁束遮蔽部材78を通過する(図2B参照)、又は、サイドコア76には導かれずに第1磁束遮蔽部材78を通過する(図2C参照)。従って、サイドコア76が第2位置I2に位置する場合には、第1磁束遮蔽部材78は、誘導コイル71が発生させた磁束を低減させ又は遮蔽することができる。
ここで、複数のサイドコア76それぞれの第1位置I1は、複数のサイドコア76それぞれが磁路の一部を形成する磁路形成位置ともいえる。複数のサイドコア76それぞれの第2位置I2は、複数のサイドコア76それぞれが磁路の一部を形成する磁路形成位置である第2A位置I2Aに位置する場合と、複数のサイドコア76それぞれが磁路を形成しない磁路非形成位置である第2B位置I2Bに位置する場合とがある。
複数のサイドコア76それぞれの磁路形成位置とは、複数のサイドコア76それぞれが複数のアーチコア部74と第1磁束遮蔽部材78との間に配置されて磁路の一部を形成する位置である。また、複数のサイドコア76それぞれの磁路非形成位置とは、複数のサイドコア76それぞれが複数のアーチコア部74と第1磁束遮蔽部材78との間に配置されずに磁路の一部を形成しない位置である。
複数のサイドコア76それぞれが第2A位置I2Aに配置された場合には、図2Bに示すように、複数のサイドコア76の第2対向面765は、加熱回転ベルト93の外周面から第2A距離K2Aだけ離間している。また、複数のサイドコア76それぞれが第2B位置I2Bに配置された場合には、図2Cに示すように、複数のサイドコア76の第2対向面765は、加熱回転ベルト93の外周面から第2A距離K2Aよりも長い第2B距離K2Bだけ離間している。
また、複数のサイドコア76それぞれは、図2Aから図2C、及び図4Aから図4Cに示すように、後述するサイドコア移動部150により第1位置I1又は第2位置I2に移動可能に構成される。サイドコア移動部150は、複数のサイドコア76それぞれを別々に移動可能である。
サイドコア移動部150について説明する。サイドコア移動部150は、図2Aから図2Cに示すように、複数対のサイドコア76それぞれに対応する複数対のサイドコア支持板151と、1又は複数対の固定部材152と、複数対のカム回転軸部材153と、複数対の偏心カム154と、複数対の付勢部材155と、モータ等を有する駆動部158とを有する。複数対のサイドコア支持板151、1又は複数対の固定部材152及び複数対の偏心カム154は、耐熱性の樹脂材料により形成される。
複数対のサイドコア支持板151それぞれは、対応する複数対のサイドコア76それぞれを支持し、対応するサイドコア76を挟んで加熱回転体9aと反対側に配置される。
複数対のサイドコア支持板151それぞれは、用紙幅方向D2に視た場合に、垂直方向に長い板状にかつ対応するサイドコア76に対応する長さで用紙幅方向D2に延びている。
複数対のサイドコア支持板151それぞれは、垂直方向の下方側の下端が対応する複数対のサイドコア76それぞれの加熱回転ベルト93と反対側の端部に固定される。複数対のサイドコア支持板151それぞれは、垂直方向に長い姿勢を保持すると共に複数対のサイドコア76それぞれを支持した状態で、用紙Tの搬送方向D1の下流側から上流側に向かう水平方向、又は、用紙Tの搬送方向D1の上流側から下流側に向かう水平方向に沿って移動可能に構成される。
1又は複数対の固定部材152は、サイドコア支持板151の垂直方向の上方側において、サイドコア支持板151から用紙Tの搬送方向D1の上流側または下流側に所定距離だけ離間してサイドコア支持板151に対して加熱回転体9a側に対向して配置される。1又は複数対の固定部材152は、用紙幅方向D2に長い板状である。なお、1又は複数対の固定部材152は、用紙幅方向D2に長い1つの部材により構成されていてもよいし、複数対のサイドコア76それぞれに対応して複数の部材により構成されていてもよい。1又は複数対の固定部材152それぞれは、定着装置9のケースやその他の部材に固定される。
複数対の付勢部材155それぞれは、複数対のサイドコア支持板151それぞれと1又は複数対の固定部材152それぞれとの間に配置される。複数対の付勢部材155それぞれは、複数対のサイドコア支持板151それぞれを加熱回転体9aから離れる方向に付勢する。
複数対のカム回転軸部材153それぞれは、複数対のサイドコア支持板151それぞれに対して加熱回転体9aと反対側に離間して配置されており、用紙幅方向D2に長い。複数対のカム回転軸部材153それぞれは、用紙幅方向D2に平行な回転軸J3を中心に回転可能である。複数対のカム回転軸部材153それぞれは、定着装置9のケースやその他の部材に回転可能に支持される。
複数対の偏心カム154それぞれは、複数対のカム回転軸部材153それぞれに固定され、複数対のカム回転軸部材153それぞれからの距離が異なる複数のカム面を有する。複数対の偏心カム154それぞれのカム面は、対応する複数対のサイドコア支持板151の加熱回転体9aとは対向しない側の面に当接する。
複数対の偏心カム154それぞれのカム面は、複数対のサイドコア支持板151に当接した状態で、複数対のサイドコア支持板151それぞれを介して対応する付勢部材155により付勢される。
複数対の偏心カム154それぞれは、駆動部158が複数対のカム回転軸部材153それぞれを回転させることにより回転する。駆動部158は、複数対のカム回転軸部材153それぞれを別々に回転駆動可能である。複数対の偏心カム154それぞれは、駆動部158に回転されて複数対のサイドコア支持板151それぞれに当接されるカム面が変更されることにより、複数対のサイドコア支持板151それぞれの用紙Tの搬送方向D1における位置を変更する。駆動部158は、例えば、複数のモータにより構成されている。
このように、複数対のサイドコア76それぞれに対応する偏心カム154がカム回転軸部材153を介して駆動部158により回転されることにより、複数対のサイドコア76それぞれに対応するサイドコア支持板151は、加熱回転ベルト93の外周面に近づく方向又は加熱回転ベルト93の外周面から離れる方向に移動される。これにより、複数対のサイドコア支持板151それぞれに支持されるサイドコア76それぞれは、加熱回転ベルト93の外周面との距離が変更される。これにより、サイドコア移動部150は、駆動部158の駆動により複数対のサイドコア76それぞれを第1位置I1又は第2位置I2に移動させる。
用紙Tのサイズ(通紙幅)への対応は、各サイズの用紙Tに対応する非通紙領域に対応して配置される複数対のサイドコア76を第2位置I2に移動させることにより、非通紙領域において、誘導コイル71により発生される磁束を低減させ又は遮蔽することで実現される。これにより、加熱回転ベルト93の各サイズの用紙Tに対応する非通紙領域の温度が過度に上昇されることが抑制される。
また、用紙Tのサイズによっては、所定のサイドコア76の長さ及びその配置が、用紙Tが通紙される通紙領域と通紙領域の外側の領域とに対応していない場合がある。
具体的には、本実施形態においては、B4サイズ縦の用紙Tの通紙幅は、A4サイズ縦の用紙T(中間長さの用紙T)の中間通紙幅W4とA3サイズ縦の用紙T(最大長さの用紙T)の最大通紙幅W1との間の通紙幅となっている。そのため、B4サイズ縦の用紙Tが定着ニップFを通紙される場合には、通紙領域と通紙領域の外側の領域との境界は、一対の第3サイドコア76C、76Cの用紙幅方向D2の途中の部分に対応する。
この場合、図2B及び図4Bに示すように、一対の第3サイドコア76C、76Cを、垂直方向の上方側から視た場合に、第1磁束遮蔽部材78の傾斜端部744側の面のうちの一部が第3サイドコア76Cと重ならないように、一対の第3サイドコア76C、76Cを第2A位置I2Aに移動させることにより対応することができる。
そのため、一対の第3サイドコア76C、76Cが配置される領域に対応する加熱回転ベルト93の領域において、加熱回転ベルト93の温度を通紙する場合の温度と通紙しない場合の温度との間の温度になるように適宜調整することができる。これにより、一対の第3サイドコア76C、76Cが配置される領域に対応する加熱回転ベルト93の領域において、非通紙領域の加熱回転ベルト93の過度の温度上昇を低減することができると共に、通紙領域内の加熱回転ベルト93を発熱させることができる。
温度センサ95について説明する。温度センサ95は、加熱回転ベルト93の外周面の温度を検知する。本実施形態においては、図2Aから図2Cに示すように、温度センサ95は、用紙Tの搬送方向D1の上流側に配置された第1磁束遮蔽部材78の垂直方向下側の近傍において、加熱回転ベルト93の外周面に対向して非接触の状態で配置される。温度センサ95は、用紙幅方向D2において、加熱回転ベルト93の外周面の温度を複数箇所で検知可能なように所定間隔ごとに複数配置される。温度センサ95は、例えば、赤外線温度センサである。
次に、定着装置9の制御に係る構成について説明する。図2Aから図2C、及び図4Aから図4Cに示すように、プリンター1は、受け付け部101と、制御部110と、記憶部120とを有する。
受け付け部101は、用紙Tのサイズに関するサイズ情報を含む画像形成指示情報を受け付け可能である。画像形成指示情報には、プリンター1の操作部(図示せず)により受け付けられた用紙Tに関するサイズ情報及び用紙Tに関する印刷面情報や、PC(パーソナルコンピューター)等の外部機器から受け付けられた用紙Tに関するサイズ情報が含まれる。サイズ情報には、用紙Tのサイズの規格(縦方向の長さ及び横方向の長さ)や、用紙Tの搬送方向(縦方向又は横方向)に関する情報が含まれる。
制御部110は、駆動制御部としてのサイドコア移動制御部111を有する。サイドコア移動制御部111は、受け付け部101に受け付けられた用紙Tのサイズ情報に基づいて、複数対のサイドコア76のうちの用紙Tのサイズに対応する所定の位置に位置していないサイドコア76の第2対向面765が加熱回転ベルト93の外周面に近づく方向又は離れる方向に移動させて第1位置I1又は第2位置I2に移動させるようサイドコア移動部150を制御する。
本実施形態においては、サイドコア移動制御部111は、受け付け部101に受け付けられた用紙Tのサイズ情報に基づいて、サイドコア76が所定の位置に位置していない場合には、所定の位置に移動させるように制御する。
記憶部120は、各サイズの用紙Tの非通紙領域にどのサイドコア76が位置しているかを記憶する。また、記憶部120は、サイドコア移動部150の駆動部158の動作量に関する情報を記憶する。
例えば、垂直方向の上方側から視た場合に、サイドコア76を第1磁束遮蔽部材78の全部に重なるように位置させる場合や、サイドコア76を第1磁束遮蔽部材78の一部又は全部に重ならないように位置させる場合において、所定の基準位置からの偏心カム154を回転させるための回転角度や駆動部158を動作させるための動作量等を記憶する。
記憶部120は、記憶テーブル(不図示)を有する。記憶テーブルは、例えば、用紙Tの各サイズに対応して、移動させるサイドコア76及びその移動量を関連付けて記憶する。例えば、記憶テーブルは、用紙幅方向D2の長さが最大通紙幅W1を有するA3サイズ縦の用紙Tを通紙する場合において、A3サイズ縦の用紙Tの非通紙領域に対応して配置されるサイドコアが第4サイドコア76D、76Dであると記憶すると共に、第4サイドコア76D、76Dを第2B位置I2Bに移動させるための駆動部158の動作量を記憶する。
また、記憶テーブルは、用紙幅方向D2の長さが最小通紙幅W2を有するA5サイズ縦の用紙Tを通紙する場合において、A5サイズ縦の用紙Tの非通紙領域に対応して配置されるサイドコアが第4サイドコア76D、76D、第3サイドコア76C、76C及び第2サイドコア76B、76Bであると記憶すると共に、第4サイドコア76D、76D、第3サイドコア76C、76C及び第2サイドコア76B、76Bを第2B位置I2Bに移動させるための駆動部158の動作量を記憶する。
また、記憶テーブルは、用紙幅方向D2の長さが中間通紙幅W4を有するA4サイズ縦の用紙Tを通紙する場合において、A4サイズ縦の用紙Tの非通紙領域に対応して配置されるサイドコアが第4サイドコア76D、76D及び第3サイドコア76C、76Cであると記憶すると共に、第4サイドコア76D、76D及び第3サイドコア76C、76Cを第2B位置I2Bに移動させるための駆動部158の動作量を記憶する。
また、記憶テーブルは、用紙幅方向D2の長さが最大通紙幅W1と中間通紙幅W4との間の長さを有するB4サイズ縦の用紙Tを通紙する場合において、B4サイズ縦の用紙Tの非通紙領域に対応して配置されるサイドコアが第4サイドコア76D、76Dであり且つ通紙領域と非通紙領域との境界が一対の第3サイドコア76C、76Cの用紙幅方向D2の途中の部分に対応すること記憶すると共に、第4サイドコア76D、76Dを第2B位置I2Bに移動させるための駆動部158の動作量、及び、第3サイドコア76C、76Cを第2A位置I2Aに移動させるための駆動部158の動作量を記憶する。
次に、本実施形態の定着装置9を含むプリンター1の動作について図5を参照して説明する。
本実施形態において、プリンター1は、電源がONされると、電源部(図示せず)から帯電部10、レーザースキャナーユニット4、現像器16、転写ローラー8、プリンター制御部(図示せず)、定着装置9それぞれに電力が供給される。そして、プリンター制御部からの制御信号により帯電部10、レーザースキャナーユニット4、現像器16、転写ローラー8、定着装置9がそれぞれ制御される。
ステップST1において、受け付け部101は、プリンター1の電源がONの状態において、例えばプリンター1の外部に配置されている操作部(図示せず)が操作されたことに基づいて発生する画像形成指示情報を受け付ける。
具体的には、操作部により入力された画像形成指示情報には、用紙Tの種類(用紙Tのサイズ)に関するサイズ情報が含まれる。受け付け部101は、受け付けた画像形成指示情報をサイドコア移動制御部111に出力する。
ステップST2において、受け付け部101に受け付けられた用紙Tのサイズに関するサイズ情報に基づいて、各サイズの用紙Tが定着ニップFを搬送される場合の用紙Tの通紙領域の外側の領域(非通紙領域)に対応して配置されるサイドコア76に関して、サイドコア76が所定の位置に位置していない場合には、該当するサイドコア76それぞれを移動させる。
例えば、プリンター1が用紙幅方向D2の長さが中間通紙幅W4を有する中間サイズの用紙T(例えば、A4サイズ縦の用紙T)を印刷する印刷命令を受け付けた場合には、サイドコア移動制御部111は、受け付け部101に受け付けられた用紙Tのサイズ情報(用紙Tの用紙幅方向D2の長さの情報)に基づいて、記憶部120を参照してサイドコア移動部150を制御する。
これにより、図4Cに示すように、A4サイズ縦の用紙Tの非通紙領域に対応する一対の第4サイドコア76D、76D及び一対の第3サイドコア76C、76Cは、第2B位置I2Bを維持する又は第2B位置I2Bに移動される。また、通紙領域においては、第1サイドコア76A及び一対の第2サイドコア76B、76Bは、第1位置I1を維持する又は第1位置I1に移動される。
具体的には、記憶部120の記憶テーブルは、A4サイズ縦の用紙Tが定着ニップFを通紙される場合には、A4サイズ縦の用紙Tの非通紙領域に対応して配置されるサイドコアが第4サイドコア76D、76D及び第3サイドコア76C、76Cであると記憶すると共に、第4サイドコア76D、76D及び第3サイドコア76C、76Cを第2B位置I2Bに移動させるための駆動部158の動作量を記憶している。
そのため、サイドコア移動制御部111は、図2Cに示すように、A4サイズ縦の用紙Tの非通紙領域に対応して配置される第4サイドコア76D、76D及び第3サイドコア76C、76Cを、第2位置I2のうちの第1磁束遮蔽部材78に重ならない第2B位置I2Bに移動させるようにサイドコア移動部150を制御する。
これにより、A4サイズ縦の用紙Tの非通紙領域においては、第1磁束遮蔽部材78により磁束が低減され又は遮蔽される。また、A4サイズ縦の用紙Tの通紙領域においては、第1磁束遮蔽部材78は、誘導コイル71が発生させた磁束を低減せず又は遮蔽しない。
なお、プリンター1が用紙幅方向D2の長さが最大通紙幅W1を有する最大サイズの用紙T(例えば、A3サイズ縦の用紙T)を印刷する印刷命令を受け付けた場合や、用紙幅方向Dの長さが最小通紙幅W2を有する最小サイズの用紙T(例えば、A5サイズ縦の用紙T)を印刷する印刷命令を受け付けた場合においても、対応するサイドコア76が異なるのみであって中間通紙幅W4を有する中間サイズの用紙T(例えば、A4サイズ縦の用紙T)を印刷する印刷命令を受け付けた場合の制御と同様であるため、説明を省略する。また、以下の説明においても、通紙領域(最大通紙領域や最小通紙領域)を設定(形成)した場合においては、対応するサイドコア76が異なるのみであって中間サイズの用紙T(例えば、A4サイズ縦の用紙T)の用紙Tを定着ニップFに通紙する場合と同様の作用効果を有するため、中間サイズの用紙T(例えば、A4サイズ縦の用紙T)の説明を援用して説明を省略する。
また、プリンター1が用紙幅方向D2の長さが最大通紙幅W1と中間通紙幅W4との間の長さを有するB4サイズ縦の用紙Tを印刷する印刷命令を受け付けた場合には、サイドコア移動制御部111は、受け付け部101に受け付けられた用紙Tのサイズ情報(用紙Tの用紙幅方向D2の長さの情報)に基づいて、記憶部120を参照してサイドコア移動部150を制御する。
これにより、図4Bに示すように、B4サイズ縦の用紙Tの非通紙領域に対応する一対の第4サイドコア76D、76D及び一対の第3サイドコア76C、76Cは、第2位置I2を維持する又は第2位置I2に移動される。また、通紙領域においては、第1サイドコア76A及び第2サイドコア76B、76Bは、第1位置I1を維持する又は第1位置I1に移動される。
具体的には、記憶部120の記憶テーブルは、用紙幅方向D2の長さが最大通紙幅W1と中間通紙幅W4との間の長さを有するB4サイズ縦の用紙Tを通紙する場合において、B4サイズ縦の用紙Tの非通紙領域に対応して配置されるサイドコアが第4サイドコア76D、76Dであり且つ通紙領域と非通紙領域との境界が一対の第3サイドコア76C、76Cの用紙幅方向D2の途中の部分に対応すること記憶すると共に、第4サイドコア76D、76D及び第3サイドコア76C、76Cを第2位置I2に移動させるための駆動部158の動作量を記憶している。
そのため、サイドコア移動制御部111は、図2B及び図4Bに示すように、第3サイドコア76C、76Cを、第2位置I2のうちのサイドコア76が第1磁束遮蔽部材78の一部に重ならない第2A位置I2Aに移動させるようにサイドコア移動部150を制御する。また、サイドコア移動制御部111は、図2C及び図4Cに示すように、第3サイドコア76C、76Cよりも外側に配置される第4サイドコア76D、76Dを、第2位置I2のうちのサイドコア76が第1磁束遮蔽部材78に重ならない第2B位置I2Bに移動させるようにサイドコア移動部150を制御する。
これにより、B4サイズ縦の用紙Tの通紙領域と非通紙領域との境界の近傍においては、第1磁束遮蔽部材78により磁束が低減される。
ステップST3において、プリンター1は、印刷動作を開始する。
具体的には、本実施形態のプリンター1において、レジストローラー対80から送り出された用紙Tは、第1搬送路L1を通って感光体ドラム2と転写ローラー8との間の転写ニップNへ搬送される。このように用紙Tが感光体ドラム2へ向かって搬送されるとき、まず、帯電部10が、感光体ドラム2の表面全体を帯電させると共に、レーザースキャナーユニット4が、レーザー光源(図示せず)から感光体ドラム2へ向けてレーザー光を照射し、感光体ドラム2の表面に形成すべき画像に対応した静電潜像を形成する。
続けて、現像器16は、帯電したトナーを現像ローラー17により感光体ドラム2へ供給する。これにより、現像器16は、感光体ドラム2の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像して、トナー画像を感光体ドラム2の表面に形成する。続いて、転写ローラー8は、転写ニップNを通過する用紙Tに、感光体ドラム2の表面に形成されたトナー画像を転写する。
そして、トナー画像が転写された用紙Tは、第2搬送路L2を通って定着装置9へ向けて搬送される。具体的には、トナー画像が形成された用紙Tは、定着装置9の加熱回転ベルト93と加圧ローラー9bとにより形成される定着ニップFへ向けて搬送される。
ステップST4において、加熱回転ベルト93が回転される。具体的には、プリンター制御部(不図示)から出力された所定の制御信号を定着装置9が受信した場合、電源部から駆動制御部(不図示)への電力の供給が開始される。駆動制御部への電力の供給が開始されると、回転駆動部(不図示)により加圧ローラー9bが回転駆動される。加圧ローラー9bの回転駆動に伴って加熱回転ベルト93は、従動して回転される。そして、加熱回転ベルト93の回転により、定着側ローラー92は、従動して回転される。また、複数の温度センサ95は、加熱回転ベルト93の外周面の複数箇所の温度の検知を開始する。
ステップST5において、プリンター制御部(不図示)から出力された所定の制御信号を定着装置9が受信した場合、駆動制御部(不図示)への電力の供給と同時に、定着装置9は、発熱動作を開始する。具体的には、プリンター制御部はプリンター1の電源ON信号又は画像形成指示情報等を受信した場合、定着装置9は、誘導加熱用回路部(不図示)に対し、発熱動作を開始させる指示をする。例えば、定着装置9は、温度センサ95によって検知される加熱回転ベルト93の外周面の温度に基づいて、誘導加熱用回路部を制御する。
これにより、誘導コイル71には、誘導加熱用回路部(不図示)から交流電流が印加される。交流電流が印加された誘導コイル71は、加熱回転ベルト93を発熱させるための磁束を発生させる。誘導コイル71により発生される磁束は、誘導加熱用回路部から所定周波数の交流電流が誘導コイル71に印加されるため、その大きさ及び方向が変化する。
ここで、強磁性材料を主体として形成される加熱回転ベルト93及び磁性体コア部72により、誘導コイル71の内周縁の内側と外周縁の外側とをつなぐように周回方向R3に周回する磁路が形成される。そのため、誘導コイル71により発生された磁束は、加熱回転ベルト93及び磁性体コア部72により形成された磁路を通過する。
具体的には、例えば、A4サイズ縦(中間通紙幅W4)の用紙Tを定着ニップFに通紙する場合、通紙領域においては、第1サイドコア76A及び一対の第2サイドコア76B、76Bは、第1位置I1に位置している。また、非通紙領域においては、一対の第3サイドコア76C及び一対の第4サイドコア76D、76Dは、第2B位置I2Bに位置している。
そのため、サイドコア76が第1位置I1に位置される各サイズの用紙Tの通紙領域においては、図2Aに示すように、誘導加熱用回路部(不図示)により印加される交流電流がプラスの場合には、例えば、誘導コイル71によって発生された磁束は、加熱回転ベルト93の上方側の部分を通りサイドコア76へ導かれ、サイドコア76を通ってアーチコア部74へ導かれ、アーチコア部74を通ってセンターコア部73へ導かれる。そして、センターコア部73を通った磁束は、加熱回転ベルト93へ導かれる。
そして、用紙幅方向D2に離間して複数のアーチコア部74それぞれを通った磁束は、センターコア部73それぞれが用紙幅方向D2に所定長さに長く構成されるため、センターコア部73により構成される磁路によりセンターコア部の長さの分だけ用紙幅方向D2に均一化されるように分散又は合流された後に、加熱回転ベルト93に導かれる。
一方、誘導加熱用回路部により印加される交流電流がマイナスの場合には、例えば、誘導コイル71によって発生された磁束は、交流電流がプラスの場合の方向とは反対方向であって、加熱回転ベルト93の上方側の部分、センターコア部73、アーチコア部74及びサイドコア76を通り加熱回転ベルト93へ導かれる。
そして、磁路を通過する磁束の大きさと方向が変化することにより、加熱回転ベルト93の垂直方向の上方側の部分には、電磁誘導により渦電流(誘導電流)が発生する。加熱回転ベルト93には、渦電流が流れることで、加熱回転ベルト93が有する電気抵抗によりジュール熱が発生する。このように、加熱回転ベルト93は、サイドコア76が第1位置I1に位置される用紙Tの通紙領域において、電磁誘導を利用した電磁誘導加熱(IH)により発熱される。
ここで、センターコア部73とアーチコア部74とは、一体的に形成されている。そのため、本発明においては、センターコア部73とアーチコア部74とが離間して配置される場合と比べて、磁界(磁束)の結合度が強い。これにより、本発明は、センターコア部73とアーチコア部74とが離間して配置される場合と比べて、加熱回転ベルト93の発熱効率の低下を抑制することができる。また、加熱回転体の発熱効率の低下を抑制することができるため、誘導コイル711の径を大きく形成する必要性が低減されると共に加熱回転体を大きく形成する必要性が低減され、定着装置9の大型化を抑制することができる。
更に、サイドコア76は、アーチコア部74と第1磁束遮蔽部材78との間に配置されている場合に、アーチコア部74の傾斜端部744に当接又は近接して配置されている。そのため、サイドコア76とアーチコア部74との間の磁界(磁束)の結合度が強くなる。これにより、本発明は、サイドコア76とアーチコア部74とが離間して配置される場合と比べて、加熱回転ベルト93の発熱効率を向上させることができる。
一方、サイドコア76が第2B位置I2Bに位置される各サイズの用紙Tの非通紙領域においては、図2Cに示すように、第1磁束遮蔽部材78により誘導コイル711により発生された磁束が低減され又は遮蔽される。具体的には、アーチコア部74と加熱回転ベルト93との間において、誘導コイル71により発生された磁束は、第1磁束遮蔽部材78を通過する。これにより、図2Cに示すように、第1磁束遮蔽部材78は、その面に垂直な磁束が貫通することによる誘導電流で逆方向の磁束を発生させる。そして、第1磁束遮蔽部材78は、錯交磁束(垂直な貫通磁束)をキャンセルする磁束を発生させることで磁路を通過する誘導コイル71が発生させた磁束を低減させ又は遮蔽する。これにより、加熱回転ベルト93は、サイドコア76が第2位置I2に位置される場合の用紙幅方向D2の領域において、電磁誘導加熱(IH)による発熱が低減され又は抑制される。
なお、第1磁束遮蔽部材78は、サイドコア76が第2B位置I2Bにある場合において、アーチコア部74から離間して配置されている。そのため、アーチコア部74と加熱回転ベルト93との間において、磁界(磁束)の結合度は、サイドコア76がアーチコア部74に当接又は近接した位置に配置される場合と比べて低い。しかし、第1磁束遮蔽部材78は、磁束を低減させ又は遮蔽する部分であるため、磁界(磁束)の結合度に関しては問題にならない。
また、例えば、プリンター1が用紙幅方向D2の長さが最大通紙幅W1と中間通紙幅W4との間の長さを有する用紙T(例えば、B4サイズ縦の用紙T)を定着する場合において、サイドコア76は、第1磁束遮蔽部材78の約半分に重らない第2A位置I2Aに位置している。そのため、図2Bに示すように、誘導コイル71により発生された磁束は、サイドコア76に導かれると共に第1磁束遮蔽部材78を通過する。
これにより、サイドコア76が第1磁束遮蔽部材78の約半分に重らない第2A位置I2A(図2B参照)に位置する場合には、B4サイズ縦の用紙Tの通紙領域と非通紙領域との境界の近傍の加熱回転ベルト93の温度は、サイドコア76が第1磁束遮蔽部材78に全部が重なる場合(図2A参照)に比べて加熱回転ベルト93の発熱温度を低くすることができると共に、サイドコア76が第1磁束遮蔽部材78に全く重ならない場合(図2C参照)に比べて加熱回転ベルト93の温度を高くすることができる。従って、B4縦サイズの用紙Tにも対応して、通紙領域の外側の領域の加熱回転ベルト93の過度の温度上昇を低減することができると共に、通紙領域の内側の領域の加熱回転ベルト93を発熱させることができる。
ステップST6において、各サイズの用紙Tの非通紙領域において誘導コイル71が発生させた磁束が低減され又は遮蔽された状態で、加熱回転ベルト93は、定着ニップFにおいて所定の定着温度に加熱される。具体的には、加熱回転ベルト93の回転により、加熱回転ベルト93の電磁誘導加熱(IH)により発熱された部分は、定着装置9の加熱回転体9a(加熱回転ベルト93)と加圧ローラー9bとにより形成される定着ニップFに向けて順次移動される。また、加熱回転ベルト93に当接する定着側ローラー92及び加圧ローラー9bには、電磁誘導加熱により発熱された加熱回転ベルト93の熱が伝達される。
定着装置9は、定着ニップFにおいて、所定の温度になるように、温度センサ95に検知される加熱回転ベルト93の外周面の温度に基づいて、誘導加熱用回路部(不図示)を制御している。このように、定着装置9は、電磁誘導加熱により発熱された加熱回転ベルト93により、定着ニップFにおいて所定の温度になるように加熱される。
ここで、本実施形態においては、サイドコア76が移動することにより、加熱回転ベルト93は、第1磁束遮蔽部材78が用紙Tの各サイズに対応して、非通紙領域において過度に加熱されないように調整されている。
そのため、用紙Tの各サイズに対応して、用紙Tの非通紙領域において、加熱回転体9aの温度が過度に上昇することが抑制することができる。
ステップST7において、トナー画像が形成された用紙Tは、定着装置9の定着ニップFに導入される。そして、定着ニップFにおいて、トナーが溶融し、トナーが用紙Tに定着される。
本実施形態のプリンター1によれば、例えば、次のような効果が奏される。
本実施形態のプリンター1においては、加熱回転体9aと、加圧回転体9bと、誘導コイル71と、磁性体コア部72であって、加熱回転ベルト93の外周面に対向する複数のアーチコア部74(上部コア75)と、センターコア部73(上部コア75)と、1又は複数のアーチコア部74それぞれのセンターコア部73と反対の傾斜端部744側であって誘導コイル71の外周縁の近傍に複数のアーチコア部74それぞれの傾斜端部744から所定距離だけ離間して配置される第1磁束遮蔽部材78と、第1磁束遮蔽部材78の複数のアーチコア部74それぞれの傾斜端部744側に配置され、第2対向面765が加熱回転ベルト93の外周面から第1距離K1だけ離間して加熱回転ベルト93の外周面に対向する第1位置I1と、第2対向面765が加熱回転ベルト93の外周面から第1距離K1よりも長い距離である第2距離K2だけ離間して加熱回転ベルト9aの外周面に対向する第2位置I2と、にそれぞれ移動可能な複数のサイドコア76と、を有する磁性体コア部72と、を備える。
本実施形態のプリンター1は上記構成を有することにより、上述したように、加熱回転ベルト93の用紙Tの通紙領域の外側の領域の温度が過度に上昇されることを抑制することができる。
また、本実施形態のプリンター1においては、複数のサイドコア76それぞれは、用紙幅方向D2に並んで配置される。そのため、第1磁束遮蔽部材78を複数のサイドコア76それぞれに対応させて配置することで、複数のサイドコア76を第1位置I1又は第2位置I2に移動させるだけで、誘導コイル71が発生させた磁束を第1磁束遮蔽部材78により低減させ又は遮蔽することができる。これにより、簡易な構成により、用紙Tの通紙領域の外側の領域において、加熱回転ベルト93の温度が過度に上昇されることを抑制することができる。
また、複数のサイドコア76それぞれを各サイズの用紙Tに対応させて配置することができるため、各サイズの用紙Tに対応する通紙領域の外側において、加熱回転ベルト93の温度が過度に上昇されることを抑制することができる。
また、本実施形態のプリンター1においては、複数のサイドコア76それぞれは、複数のサイドコア76それぞれが複数のアーチコア部それぞれと第1磁束遮蔽部材78との間に配置された場合に、複数のアーチコア部74それぞれの傾斜端部744に当接又は近接しては位置される。そのため、サイドコア76とアーチコア部74との間の磁界(磁束)の結合度が強い。これにより、加熱回転ベルト93の発熱効率を向上させることができる。
また、本実施形態のプリンター1は、シート状の用紙Tに画像を形成する画像形成部GKと、画像形成部GKにより画像が形成される用紙Tのサイズに関する情報であるサイズ情報を含む画像形成指示情報を受け付け可能な受け付け部101と、受け付け部101に受け付けられた用紙Tのサイズ情報に基づいて、複数のサイドコア76のうちの所定のサイドコア76を第1位置I1又は第2位置I2に移動させるよう駆動部158を制御するサイドコア移動制御部111を有する定着装置9と、を備える。そのため、本発明のプリンター1は、各サイズの用紙Tに対応して、加熱回転ベルト93の用紙Tの通紙領域の外側の領域の温度が過度に上昇されることを抑制するように制御することができる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態については、主として、第1実施形態とは異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。第2実施形態において特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用又は援用される。
図6は、第2実施形態のプリンター1の定着装置9の各構成要素を説明するための断面図であって、複数のサイドコア76が第2B位置I2Bに配置された場合の断面図である。図7は、第2実施形態のプリンター1の複数のサイドコア76と複数の第2磁束遮蔽部材78Aとの位置関係を示す垂直方向の上方側から視た図であって、サイドコア76が第2B位置I2Bに配置された場合の図である。
第2実施形態においては、磁束遮蔽部材としての第2磁束遮蔽部材78Aを複数有すると共に、第2磁束遮蔽部材78Aそれぞれが環状に形成されている点において、第1実施形態の定着装置9とは異なる。
図6及び図7に示すように、第2実施形態の複数の第2磁束遮蔽部材78Aそれぞれは、アーチコア部74の傾斜端部744側の第1面783と、第1面783と反対側の第2面784と、第1面783と第2面784とを貫通する開口785と、を有する。
複数の第2磁束遮蔽部材78Aそれぞれは、複数対のサイドコア76それぞれに対応して環状に形成される。また、複数の開口785それぞれは、複数対のサイドコア76それぞれに対応して形成される。
複数の開口785それぞれは、環状(ループ状)の部材により外郭が構成される。複数の開口785それぞれは、アーチコア部74の傾斜端部744の下方側において第1面783と第2面784とを貫通する方向に開口している。これにより、複数の開口785それぞれは、第1面783と第2面784とを貫通する方向である垂直方向に磁束を通過させることができる。第2磁束遮蔽部材78Aとしては、第1実施形態の第1磁束遮蔽部材と同様に、非磁性体材料であり、且つ、導電率が高い導電部材により形成され、例えば、無酸素銅などが用いられる。
第2実施形態の第2磁束遮蔽部材78Aは、図6に示すように、サイドコア76が第2B位置I2Bに位置された場合に、磁束を遮蔽させ又は低減する。具体的には、サイドコア76が第2B位置I2Bに位置された場合において、そのサイドコア76に対応する第2磁束遮蔽部材78Aには、その開口785に垂直な磁束が貫通することにより環状(ループ状)の部分において周方向に誘導電流が生じる。そのため、そのサイドコア76に対応する第2磁束遮蔽部材78Aには、その開口785に垂直な磁束が貫通することによる誘導電流で、貫通した磁束に対して逆方向の磁束を発生させる。そして、第2磁束遮蔽部材78Aは、錯交磁束(垂直な貫通磁束)をキャンセルする磁束を発生させることで磁路を通過する誘導コイル71が発生させた磁束を低減させ又は遮蔽する。
第2実施形態のプリンター1の動作については、第1実施形態と同様であるため、第1実施形態のプリンター1の動作及び作用の説明を援用して説明を省略する。
第2実施形態のプリンター1によれば、第1実施形態で示した効果の他に、次のような効果が奏される。
第2実施形態のプリンター1においては、複数の第2磁束遮蔽部材78Aそれぞれは、環状(ループ状)に形成される。そのため、第1実施形態と同様の効果を有しつつ、第2磁束遮蔽部材78Aの材料に要するコストを低減することができる。
以上、好適な実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく種々の形態で実施することができる。
例えば、前述の実施形態においては、加熱回転体9aを、定着側ローラー92と、定着側ローラー92を覆うように配置された加熱回転ベルト93と、により構成しているが、これに制限されない。例えば、加熱回転体9aを、加熱側ローラーと、定着側ローラーと、加熱側ローラーと定着側ローラーとに掛け渡された加熱回転ベルトと、により構成してもよい。
また、前述の実施形態においては、センターコア部73は、アーチコア部74と一体的に形成されているが、これに制限されない。例えば、センターコア部73は、アーチコア部74と別体として形成され、センターコア部73がアーチコア部74と当接又は近接して配置されていてもよい。
また、前述の第1実施形態においては、第1磁束遮蔽部材78を1つの第1磁束遮蔽部材78により構成しているが、これに制限されない。例えば、第1磁束遮蔽部材78を2つ以上の複数の部材により構成してもよい。
また、前述の第1実施形態においては、第1磁束遮蔽部材78をサイドコア76に対応する領域を含めた領域に配置する構成としているが、これに制限されない。第1磁束遮蔽部材78は、誘導コイル71により発生される磁束を低減させ又は抑制させる領域に配置すればよく、例えば、サイドコア76に対応する領域に配置されない構成であってもよい。
また、前述の実施形態においては、用紙Tの搬送方向D1の上流側及び下流側に配置される一対のサイドコア76、76の両方を移動させる構成としているが、これに制限されない。サイドコア76は、一対のサイドコア76、76のうちの一方だけ移動される構成でもよい。
また、前述の実施形態においては、一対のサイドコア76、76それぞれは、用紙Tの搬送方向D1の上流側及び下流側において対になるように用紙幅方向D2の長さを同じ長さにより構成したが、これに制限されない。一対のサイドコア76、76それぞれは、対になるもの同士の用紙幅方向D2の長さが異なっていてもよい。
前述の第2実施形態においては、複数の第2磁束遮蔽部材78Aにより構成されるが、これに制限されない。第2磁束遮蔽部材78Aは、1つで構成されていてもよい。
また、前述の実施形態においては、用紙Tのサイズの例として、A3縦サイズの用紙Tや、A5縦サイズの用紙T等により説明したが、これに制限されない。用紙Tのサイズとしては、インチサイズでもよい。
本発明の画像形成装置の種類は、特に限定がなく、プリンター以外に、コピー機、ファクシミリ、又はこれらの複合機などであってもよい。
シート状の被転写材は、用紙に制限されず、例えば、フィルムシートであってもよい。