JPWO2005012632A1 - 再生パルプの製造方法、パルプ繊維表面及び夾雑物の改質方法、並びにパルプ処理装置 - Google Patents
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Abstract
Description
また、従来、機械力を用いてパルプを叩解処理することにより、パルプ繊維をフィブリル化させ繊維表面のミクロフィブリルの毛羽立ちによって繊維間結合面積を増大させ、結合強度を向上させてパルプ繊維の改質を行っていた。しかしながら、このような方法では、パルプ繊維自体のカッティングによる損傷が発生するため、繊維長の低下による紙力の低下を生じていた。
このように従来の技術では、パルプ繊維全体に機械的負荷がかかるため、パルプ品質を向上させるためにはパルプ繊維の損傷または添加薬品費のコストアップが避けられなかった。
液体噴流とは、液体又は液体の中に固体粒子や気体が分散或いは混在する流体の噴流であり、パルプや無機物粒子のスラリーや気泡を含む液体噴流のことをいう。ここで云う気体は、キャビテーションによる気泡を含んでいてもよい。
さらにまた、本発明は、キャビテーションを用いたインキ剥離工程、それに続くフローテーション工程及び/又は洗浄法によるインキ除去工程からなる古紙を再生する工程のいずれか一つ以上の工程において、キャビテーションによって気泡を発生させ、これをパルプ懸濁液に接触させてパルプ繊維および無機粒子に付着している汚染物質を剥離させて分離することを特徴とする再生パルプの製造方法を提供するものである。ここで、前記の古紙を再生する工程が脱墨工程でよい。
本発明で、パルプ繊維表面に局所的な負荷が導入され、インキが剥離される理由としては、次のような理由が考えられる。キャビテーションにより生じる微細な気泡の崩壊時には、前述のとおり数μmオーダーの局所的な領域に強力なエネルギーが発生する。従って、微細な気泡または気泡雲がパルプ繊維表面或いは近傍で崩壊する場合、その衝撃力は直接或いは液体を介してパルプ繊維表面に到達し、パルプ繊維を構成するセルロースの非晶領域に吸収されることにより、外部フィブリル化とパルプ繊維の膨潤を促し、同時にパルプ繊維表面に付着しているインキ等の異物を剥離させるものと考えられる。気泡はパルプ繊維に対して非常に小さく、その衝撃力はパルプ繊維全体を損傷させる程大きくない。更に、パルプ繊維は液体中に分散しており固定されていないため、気泡雲の連続崩壊のような極めて大きな衝撃力であっても、過剰のエネルギーを繊維自体の運動エネルギーとして吸収する。従って、本発明による方法は、機械的作用によるインキ剥離方法に比べてパルプ繊維の短小化などの損傷を抑えることができると考えられる。
また、古紙の再生工程においては、気泡を利用した分離装置として、Doshiら(M.R.Doshi and J.M.Dyer,″Paper Recycling Challenge Vol.II−Deinking and Bleaching″,pp3,Doshi&Associates Inc.,1997)がまとめているように、フローテーターや加圧浮上装置がある。フローテーターは繊維とインキの混合物からのインキの選択的泡沫分離を行うものであり、加圧浮上装置は水中の懸濁物質を微細気泡で分離するものである。従って、何れの装置も予め分散している物質の分離を目的としており剥離・分散作用を持たないこと、物質を泡に付着して浮上し泡沫層として分離するため壊れ難い安定な泡が必要であることから、本発明とこれらの技術とは、利用する作用領域や機構が異なり、目的も異なっているため本質的に相違する技術である。
2:ノズル
3:キャビテーション噴流セル
4:プランジャポンプ
5:上流側圧力制御弁
6:下流側圧力制御弁
7:上流側圧力計
8:下流側圧力計
9:給水弁
10:循環弁
11:排水弁
12:温度センサー
13:ミキサー
ここで、キャビテーション数が大きいということは、その流れ場がキャビテーションを発生し難い状態にあるということを示す。特にキャビテーション噴流のようなノズルあるいはオリフィス管を通してキャビテーションを発生させる場合は、ノズル上流側圧力p1、ノズル下流側圧力p2、、試料水の飽和蒸気圧pvから、キャビテーション数σは下記式(2)のように書きかえることができ、キャビテーション噴流では、p1、p2、pv間の圧力差が大きく、p1≫p2≫pvとなることから、キャビテーション数σはさらに以下のように近似することができる(H.Soyama,J.Soc.Mat.Sci.Japan,47(4),381 1998)。
本発明は、原料として、新聞、チラシ、更紙系雑誌、コート紙系雑誌、感熱・感圧紙、模造・色上質紙、コピー用紙、コンピューターアウトプット用紙、或いはこれらの混合古紙に適用できるが、特に夏場などに経時劣化した新聞古紙や更紙系雑誌、トナー印刷物などを含むオフィス古紙などを上記古紙と同時に或いは別々に処理する場合に特に優れた効果を発揮する。さらに、上記古紙にラミネート加工された紙やUV樹脂インキなどで印刷された紙などの禁忌品が混入している場合に特に優れた効果を発揮する。禁忌品とは、古紙再生促進センターが定義(財団法人古紙再生促進センター編、古紙ハンドブック1999、p4)するA類、B類全般を指す。オフィス古紙としては、古紙再生促進センターが定義(古紙ハンドブック1999、p3)する上質系オフィス古紙全般を指すが、事業所および家庭から古紙または紙ゴミとして回収される古紙であれば、これらに限定するものではない。古紙に含まれるトナー以外のインキとしては公知の印刷インキ(日本印刷学会編、“印刷工学便覧”、技報堂、p606、1983)、ノンインパクトプリンティングインキ(“最新・特殊機能インキ”、シーエムシー、p1、1990)等が挙げられる。新聞や更系雑誌に用いられる非加熱の浸透乾燥方式のオフセットインキとしては公知の新聞・更紙用オフセットインキ(後藤朋之、日本印刷学会誌、38(5)、7、(2001)など)が挙げられるが、これらに限定するものではない。本発明は特にこのような複数のインキによって印刷された古紙を処理する場合に好適である。また、繊維と灰分の比率については特に制限はない。更に、古紙パルプに対しても本発明を適用し、より高品質のパルプを得ることができる。
本発明は、従来の高濃度パルパー等の機械力を伴うインキ剥離工程と、フローテーション及び/または洗浄法によるインキ除去工程からなる、古紙を再生するために用いられる脱墨工程のいかなる場所にも適用できる。また、上記工程内で発生する搾水などを含む工程白水、フローテーション後のリジェクト又は洗浄後の回収水などに対しても適用できる。
本発明におけるキャビテーションの発生手段としては、液体噴流による方法、超音波振動子を用いる方法、超音波振動子とホーン状の増幅器を用いる方法、レーザー照射による方法などが挙げられるが、これらに限定するものではない。好ましくは、液体噴流を用いる方法が、キャビテーション気泡の発生効率が高く、より強力な崩壊衝撃力を持つキャビテーション気泡雲を形成するためインキ等の汚染物質に対する作用効果が大きい。上記の方法によって発生するキャビテーションは、従来の流体機械に自然発生的に生じる制御不能の害悪をもたらすキャビテーションと明らかに異なる。本発明におけるパルプ繊維とは、上記の古紙に由来する繊維状の物質を指し、例えば、化学パルプや機械パルプ、古紙パルプなどのセルロース繊維が挙げられる。また、パルプ繊維以外の化学繊維やガラス繊維などにも適用できる。また、無機粒子とは紙の製造時に内添された填料、もしくは、塗工された顔料など紙を灰化した際に灰分として残存する物質である。例えば、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、二酸化チタン等が挙げられるが、これらに限定するものではない。汚染物質とは、パルプ繊維又は填料・顔料に付着している異物を指し、例えば上記のインキに加えて、蛍光染料や一般の染料、塗料や澱粉、高分子などの塗工層残さ、ラミネートなどの加工層残さ、接着剤及び粘着剤、サイズ剤、などが挙げられる。更に紙を製造する際に使用する歩留まり向上剤、ろ水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤などが挙げられるが、これらに限定するものではない。
本発明における流体(液体)噴流によるキャビテーションの発生方法では、パルプ懸濁液に対して、噴射液体として、例えば、蒸留水、水道水、工業用水、製紙工程で回収される再用水、パルプ搾水、白水、パルプ懸濁液、アルコールなどを噴射することができるが、これらに限定するものではない。好ましくは、パルプ懸濁液自体を噴射することで、噴流周りに発生するキャビテーションによる作用効果に加え、高圧でオリフィスから噴射する際の流体力学的せん断力による汚染物質の剥離効果が得られるため、より大きな作用効果を発揮する。さらに、ポンプや配管から受けるせん断力による剥離効果を得ることができる。
本発明におけるキャビテーション発生場所としてはタンクなど任意の容器内もしくは配管内を選ぶことができるが、これらに限定するものではない。また、ワンパスで処理することも可能であるが、必要回数だけ循環することによって更に剥離効果を増大できる。さらに複数の発生手段を用いて並列で、或いは、順列で処理することができる。キャビテーションを発生する被噴射液であるパルプ懸濁液の固形分濃度は3重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜1.5重量%の範囲で処理することが気泡の発生効率の点から好ましい。被噴射液の固形分濃度が3重量%より高く40重量%より低い場合は、噴射液濃度を3%以下にすることによって作用効果を得ることができる。また、被噴射液のpHがアルカリ条件である方がパルプ繊維の膨潤性がよく、剥離した汚染物質の再定着が起き難いこと、OH活性ラジカルの生成量が増加することから望ましい。
本発明における噴射液とは、高圧でオリフィスから噴射する液体を指し、被噴射液とは容器内もしくは配管内で噴射される液体を指す。
本発明では、キャビテーションを発生する工程と、それ以上に続くフローテーション及び/または洗浄からなるインキ除去工程を適宜組合わせることで、剥離したインキ等が効果的に除去されることから、より白色度の高い高品質のパルプを得ることができる。更に、複数のインキ剥離工程とインキ除去工程と本発明を組合わせることでより良い効果を得ることができる。フローテーションおよび洗浄装置としては、公知または新規の繊維から汚染物質の分離を目的としたいかなる装置を用いてもよい。
本発明では、液体の噴射圧力を高めることで、噴射液の流速が増大し、より強力なキャビテーションが発生する。更に被噴射液を収める容器を加圧することで、キャビテーション気泡が崩壊する領域の圧力が高くなり、気泡と周囲の圧力差が大きくなるため気泡は激しく崩壊し衝撃力も大となる。キャビテーションは液体中の気体の量に影響され、気体が多過ぎる場合は気泡同士の衝突と合一が起こるため崩壊衝撃力が他の気泡に吸収されるクッション効果を生じるため衝撃力が弱まる。従って、溶存気体と蒸気圧の影響を受けるため、その処理温度は融点以上沸点以下でなければならない。液体が水を媒質とする場合、好ましくは0〜80℃、更に好ましくは10℃〜60℃の範囲とすることで高い効果を得ることができる。一般には、融点と沸点の中間点で衝撃力が最大となると考えられることから、水溶液の場合、50℃前後が最適であるが、それ以下の温度であっても、蒸気圧の影響を受けないため、上記の範囲であれば高い効果が得られる。80℃よりも高い温度では、キャビテーションを発生するための圧力容器の耐圧性が著しく低下するため、容器の損壊を生じやすいため不適である。本発明においては、界面活性剤などの液体の表面張力を低下させる物質を添加することで、キャビテーションを発生させるために必要なエネルギーを低減することができる。添加する物質としては、公知または新規の界面活性剤、例えば、脂肪酸塩、高級アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸などのアルキレンオキシド付加物などの非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、および、有機溶剤、タンパク質、酵素、天然高分子、合成高分子などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの単一成分からなるものでも2種以上の成分の混合物でも良い。添加量は噴射液及び/または被噴射液の表面張力を低下させるために必要な量であればよい。また、添加場所としてはキャビテーションを発生させる場所よりも前の工程のいかなる場所でもよく、液体を循環させる場合は、キャビテーションを発生させる場所以降であっても構わない。
《脱墨試験1》
脱墨試験の試料として、印刷後1年半以上経過した劣化新聞古紙を2cm×2cmに細断した。古紙絶乾660gに対して水酸化ナトリウム1.0重量%を加え、水でパルプ濃度15重量%に調整した後、パルパーを用いて、40℃で、6分間離解し離解原料Aとした。離解した試料に水を加えて古紙濃度が3%になるように希釈し、任意の濃度に調整したパルプ懸濁液に、図6に示されるキャビテーション噴流式洗浄装置を用いて約1重量%のパルプ懸濁液を噴射し、一定時間処理した。得られた画分について、カナダ標準濾水度を測定し、処理後のパルプを150メッシュワイヤー上で十分に洗浄した。洗浄後のパルプについてTappi標準法に基づいて60g/m2の手抄きシート5枚を作製した。手抄きシートの白色度および色相をJIS P−8148の方法に準じて色差計(村上色彩製)で測定し、作製した。さらに残インキを測定するため、微細インキについて残インキ測定装置(カラータッチ:テクニダイン製)を用いてERIC(有効残インキ濃度)値として測定した。粗大インキについては夾雑物測定装置(スペックスキャン2000:アポジーテクノロジー製)を用いて、異なる5枚の手抄きシート上の0.05mm2以上のダートを画像処理にて測定し、その平均値から未剥離インキ面積を算出した。比較例として同時に原料Aについて、水で10%に希釈し、PFIミルを用いてクリアランス0.2mm、で一定カウント叩解した。叩解後のパルプについて上記と同様の操作によって手抄きシートを作製し、その白色度および残インキについて同様の測定を行った。実施例1〜8、及び比較例1〜4の結果を表1に示した。
原料Aに対して、キャビテーション噴流式洗浄装置にて、被噴射容器内の圧力(下流側圧力)を0.1MPaとして噴射液の圧力(上流側圧力)を3MPa(噴流の流速46m/秒)、5MPa(噴流の流速60m/秒)、7MPa(噴流の流速70m/秒)、9MPa(噴流の流速78m/秒)とし5分間処理した。処理後の試料について上述の方法に従い濾水度、ERIC値、未剥離インキ面積、白色度及びb値を測定した。
[実施例5〜8]
原料Aに対して、キャビテーション噴流式洗浄装置にて、被噴射容器内の圧力(下流側圧力)を0.3MPaとして噴射液の圧力(上流側圧力)を3MPa〜9MPaとし5分間処理した。処理後の試料について上述の方法に従い濾水度、ERIC値、未剥離インキ面積、白色度及びb値を測定した。
[比較例1]
原料Aを0.5%に希釈し、上述の方法に従い濾水度、ERIC値、未剥離インキ面積、白色度及びb値を測定した。
[比較例2〜4]
原料Aについて、PFIミルを用いてクリアランス0.2mmの条件で、3000〜7000カウント処理した。処理後の試料について上述の方法に従い濾水度、ERIC値、未剥離インキ面積、白色度及びb値を測定した。
表1に示されるように、実施例1〜4、実施例5〜8の結果から上流側圧力を増大させるにつれて、ERIC値、未剥離インキ面積は低下し、白色度は向上した。濾水度は低下したが、比較例2〜3のPFIミルによる処理に比べると、低下は緩やかであった。また、実施例1〜4と実施例5〜8を比較すると、上流側圧力と下流側圧力の差が大きい実施例1〜4の方が脱墨の効果は優れていた。
《脱墨試験2》
脱墨試験の試料として、標準パターンをコピー(GP605:キャノン製)したトナー印刷物を2cm×2cmに細断した。古紙絶乾660gに対して水酸化ナトリウム1.0重量%を加え、水でパルプ濃度15重量%に調整した後、パルパーを用いて、40℃で、6分間離解し離解原料Bとした。離解した試料に水を加えて古紙濃度が3%になるように希釈し、任意の濃度に調整後、脱墨試験1で使用したキャビテーション噴流式洗浄装置を用いて一定時間処理した。得られたパルプの一部について150メッシュワイヤー上で十分に洗浄した。洗浄後のパルプについてTappi標準法に基づいて60g/m2の手抄きシート5枚を作製した。得られたパルプの残分について、ボックスタイプのフローテーターを用いて2分間フローテーションを行った。フローテーター後のパルプについて、Tappi標準法に基づいて60g/m2の手抄きシート5枚を作製した。手抄きシート上の残存トナーについて画像解析装置(スペックスキャン2000:アポジーテクノロジー社)を用いて計測し、異なる5枚の手すきシート上の目視できる100μm以上の夾雑物の平均値をダート個数とした。同じにダートの平均粒径を算出した。
[実施例9〜10]
原料Bに対して、キャビテーション噴流式洗浄装置にて、噴射液の圧力(上流側圧力)を8MPa、被噴射容器の圧力(下流側圧力)を0.2MPaとして、5分間処理した。処理後の試料について上述の方法に従いダート個数及びダート平均粒径を測定した。
[比較例5〜8]
比較例として、原料Bを超音波洗浄機に取り5分間処理した。得られたパルプ及び未処理のパルプについて上記の処理を行い、洗浄後のパルプとフローテーション後のパルプについて手抄きシートを作製し、ダート個数を測定した。
《脱墨試験3》
工場Aより、実機DIP工程のニーダー前圧搾機の出口原料を用いて、脱墨試験1で使用したキャビテーション噴流式洗浄装置を用いてキャビテーション処理(上流側圧力7MPa、下流側圧力0.3MPa)を行い、実機ニーダー出口と比較した。未処理(圧搾機出口)、及びキャビテーション処理(キャビ処理)後、実機ニーダー後のパルプを150メッシュワイヤー上で十分に洗浄した後、ファイバーラボを用いて繊維長及びカールを測定した。更に手抄きシートを作製して0.05mm2以上のダート個数及びISO白色度を測定した。
脱墨試験3に関する実機フロー及び実施例フローのそれぞれのフローチャートを図7に示した。実施例11〜13、及び比較例9〜10の結果を表3に示した。
表3に示されるように、実施例11〜13においては、脱墨薬品を添加せずに低濃度、低温で粗大なダートを著しく低減できることが明らかである。更に、インキ剥離に優れ、漂白薬品を添加せずに完全洗浄白色度を向上することができた。加えて、高濃度、高温、薬品を添加している実機ニーダー処理後に比べて、繊維の短小化が小さく、カールが少なかった。従って、繊維の損傷を抑えて高品質なパルプを得ることができた。
《脱墨試験4》
UVコートで光沢加工した印刷物を高濃度パルパーで離解し、パルプスラリーを10カットフラットスクリーンとそれに続く6カットフラットスクリーン処理を行い、未離解片および粗大コート片を除去した。スクリーンを通過したパルプを更に篩分試験機にとり、24メッシュを通過したパルプを回収した。これを未処理パルプとして、脱墨試験1で使用したキャビテーション噴流式洗浄装置を用いてキャビテーション噴流処理、あるいはPFIミルを用いて処理を行い、それぞれ、未処理パルプのカナダ標準濾水度から約100ml低下させた。処理後のパルプを150メッシュワイヤー状で十分に洗浄し、剥離・微細化したダートを除去した後、手抄きシートを作製した。更に、処理後のパルプをボックス型のフローテーター(F/T)にて、2分間処理を行った後、手抄きシートを作製した。作製した手抄きシートのダートについて画像解析装置を用い、0.1mm2以上、及び0.2mm2以上の大きなダートの個数を比較した。実施例14、及び比較例11〜13の結果を表1に示した。
《脱墨試験5》
重量比で新聞/雑誌=70/30からなる古紙を高濃度パルパーで離解し、パルプ濃度が30%になるように脱水したパルプを未処理パルプとした。このパルプに脱墨剤を対固形分当り0.1%、0.06%添加したものと、脱墨剤を添加しないものについて、希釈した後に、脱墨試験1で使用したキャビテーション噴流式洗浄装置を用いてキャビテーション処理(上流側圧力7MPa、下流側圧力0.3MPa)を行った。比較として、脱墨剤を0.1%添加したものをラボ2軸ニーダーで処理した。処理前後のパルプを150メッシュワイヤー上で十分に洗浄した後、手抄きシートを作製し、残存インキ量をColor Touch2(テクニダイン社製)を用いてERIC値として測定し、更にISO白色度を測定した。繊維損傷の影響について、ファイバーラボ(メッツォ オートメーション製)を用いて繊維長及び繊維のカールを調べた。実施例15〜17、及び比較例14〜15の結果を表1に示した。
[実施例18]
図15に示した装置を用い、反応槽の入口圧(PI−1)を背圧弁で調節し、出口圧(PI−3)をCV−4で調節し、実験を実施した。PU−1はプランジャー型の定量ポンプの為、PI−1を変化させると自己循環(余水)量と容器を流れる流量の比率が変化する。処理強度一定での評価とする為に、適当な時間間隔でサンプルを抜き取り、一定量(40リットル)が容器を通過した時点での効果を評価した。
[実施例19]
背圧弁を調節して入り口圧を7MPaに設定し、CV−4を調節して出口圧を0.05MPaにする以外は実施例18と全て同一の条件で装置を運転した。0.05mm2以上のダートの減少率は69%であった。
[実施例20]
背圧弁を調節して入り口圧を7MPaに設定し、CV−4を調節して出口圧を0.3MPaにする以外は、実施例18と全て同一の条件で装置を運転した。0.05mm2以上のダートの減少率は79%であった。
[比較例16]
ポンプ、背圧弁通過の影響を確認するために、背圧弁を全開にし、吐出液がすべて余水として自己循環するようにして装置を運転した。0.05mm2以上のダートの減少率は40%であった。
Claims (24)
- 古紙を再生する工程において、キャビテーションによって気泡を発生させ、これをパルプ懸濁液に接触させてパルプ繊維および無機粒子に付着している汚染物質を剥離することを特徴とする再生パルプの製造方法。
- 流体噴流を用いてキャビテーションを発生させることを特徴とする請求項1記載の再生パルプの製造方法。
- パルプ懸濁液を流体噴流として噴射させることによってパルプ懸濁液と気泡を接触させることを特徴とする請求項2記載の再生パルプの製造方法。
- 前記汚染物質が、インキである請求項1〜3のいずれかに記載の再生パルプの製造方法。
- キャビテーションを用いたインキ剥離工程、それに続くフローテーション工程及び/又は洗浄法によるインキ除去工程からなる古紙を再生する工程のいずれか一つ以上の工程において、キャビテーションによって気泡を発生させ、これをパルプ懸濁液に接触させてパルプ繊維及び無機粒子に付着している汚染物質を剥離させて分離することを特徴とする再生パルプの製造方法。
- ノズルまたはオリフィス管を通じて噴射液を噴射してキャビテーションを発生させ、該噴射液の圧力(上流側圧力)が0.01MPa以上30MPa以下である請求項2〜6のいずれかに記載の再生パルプの製造方法。
- ノズルまたはオリフィス管を通じて噴射液を噴射してキャビテーションを発生させ、該噴射液の噴流の速度が1m/秒以上200m/秒以下である請求項2〜7のいずれかに記載の再生パルプの製造方法。
- 前記の古紙を再生する工程が脱墨工程であることを特徴とする請求項5記載の再生パルプの製造方法。
- 請求項1〜9のいずれかの方法によって製造されたパルプ、又は、当該パルプを用いた紙、若しくは塗被紙。
- 容器内のパルプ繊維からなる物質に対して加圧された噴射液を噴射し、前記噴射によりキャビテーションを発生させ、そのキャビテーション気泡の崩壊圧力を利用することにより、パルプ繊維に損傷を与えることなく、パルプ繊維表面及び夾雑物を改質し、又はパルプ繊維表面に付着した夾雑物を剥離する方法。
- 容器内のパルプ繊維からなる物質に対して、パルプ繊維素を含む水性スラリーを加圧された噴射液として噴射し、前記噴射によりキャビテーションを発生させ、そのキャビテーション気泡の崩壊圧力を利用することにより、繊維に損傷を与えることなく、パルプ繊維表面及び夾雑物を改質し、又はパルプ繊維表面に付着した夾雑物を剥離する方法。
- キャビテーションを発生させるための噴射液をノズルを通してパルプ繊維からなる物質を有する容器内に噴射し、該噴射液の圧力(ノズル上流側圧力)が0.5MPa以上30MPa以下で、かつパルプ繊維素を処理する容器内の圧力(ノズル下流側圧力)が0.05MPa以上0.3MPa以下で、さらに噴射液の圧力に対する容器内の圧力の比が0.001〜0.5であることを特徴とする請求項11〜12記載の方法。
- 容器内におけるパルプ繊維からなる物質の濃度が0.01〜20重量%である請求項11〜13記載の方法。
- 容器;容器内に存在するパルプ繊維からなる物質に対して加圧された噴射液を噴射するための、一つ以上のノズル;ノズルの上流に位置し、前記ノズルの噴射圧力を制御する圧力制御機構;及び前記圧力制御機構の上流に位置し、前記ノズルに噴射圧力を加圧するポンプからなる、パルプ処理装置。
- 前記容器は、密閉式、非密閉式、バッチ式又は連続式からなる群から選択される形態を有する請求項15記載のパルプ処理装置。
- 前記容器は、圧力を制御することが可能な密閉式容器であり、前記容器から適宜液体を排出しつつ、容器内の圧力を制御する機構を有している請求項16記載のパルプ処理装置。
- 前記容器は、前記ノズル以外の液体流入口を有する請求項17記載のパルプ処理装置。
- 前記ノズルが接合する前記容器の内壁がコーン状であり、これにより、パルプ懸濁液が動的渦流により均一に攪拌されることを特徴とする請求項15、16又は17のいずれかに記載のパルプ処理装置。
- 前記容器の液体排出口に接続した液体移送路の下流から分離手段を経て前記容器に液体を返送する液体移送路を設けたことを特徴とする請求項17〜19のいずれかに記載のパルプ処理装置。
- 液体排出口に接続した液体移送路は、2つ以上に枝分かれした液体移送路であり、その少なくとも一つの液体移送路を分離手段を経て前記容器の前記ノズルに接続し、液体を容器に再度、噴射できるようにしたことを特徴とする請求項17〜19のいずれかに記載のパルプ処理装置。
- 前記容器に流入する液体と排出される液体を同量に維持し、前記容器内に存在する液体レベルを一定に保つ機構を有することを特徴とする請求項16〜21のいずれかに記載のパルプ処理装置。
- 前記分離手段が、フローテーター、洗浄機、スクリーン又はクリーナのいずれかであることを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載のパルプ処理装置。
- 前記容器が、フローテーター、洗浄機、スクリーン又はクリーナのいずれかであることを特徴とする請求項14記載のパルプ処理装置。
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