JP2008274515A - 未離解片の低減方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 塗工紙、インクジェット用紙等の難離解性の紙を再生する際に、離解処理後に残存している未離解片やコート片を低減させ、欠陥の少ないパルプを得る。
【解決手段】 難離解性の紙を含む紙を再利用する工程において、難離解性の紙を含む古紙及び/または損紙を離解処理した後、得られた未離解片を含むパルプ懸濁液中にキャビテーションによって気泡を発生させ、該気泡を該未離解片に接触させて処理することにより未離解片を低減する。
【選択図】 なし

Description

本発明は離解が困難である紙の再利用方法に関する。
近年、紙に対する要求特性が多様化しており、その要望に対して紙の高品質化が進み、紙への湿潤紙力剤の増配や樹脂含浸、表面加工等が施されるようになって来ている。紙の高品質化に伴い、その回収、再生に際して離解が著しく困難になり、未離解片やコート片に由来する欠陥の多いパルプとなる問題が発生している。なお、本発明において離解とは、紙あるいはブロークと呼ばれる損紙などを解きほぐしスラリー(薄いかゆ状のパルプ)にすることをいう。
また、省資源、省エネルギー、公害防止の立場から、今後、紙の再利用は促進されるが、難離解性の紙(湿潤紙力増強紙、樹脂含浸紙、塗工紙等)を再利用することが課題となる。
従来、難離解性の紙の回収再生には、一般的に機械的処理(特許文献1〜4)が行われてきた。また、機械的処理の際に離解を促進させる目的で加熱処理あるいは薬剤添加を行う。薬剤として例えば、スルファミン酸、塩酸、硫酸、リン酸、硫酸アルミニウムなどの酸類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ類、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素などの酸化剤又は前記薬剤類を適宜組合せたり、更に界面活性剤を配合した離解促進剤を脱樹脂剤、樹脂分解剤として使用することも行われている。また、特開2005−281906号公報(特許文献6)にはリン酸エステル化合物を離解促進剤として使用することが提案されている。
しかし、上記の難離解性の紙を含む紙において、従来の機械的処理だけでは、未離解物を含まない製紙用原料に適したパルプを回収することが非常に困難である。また、加熱処理又は離解を促進させる薬剤を添加し、機械的処理と併用して離解する方法も離解促進効果の点ではまだ不十分であり、さらにこれらの薬剤を多量に使用すると排水に溶け込んで環境汚染の問題を引き起こすなどの新たな問題が生じる可能性がある。本発明は、これらの問題を解決するために難離解性の紙を容易に離解することが出来て、製紙用原料として再利用する新規で効率的な離解方法を提供するものである。
特許第3297620号公報 特開平8-209571号公報 特開平6-41893号公報 特開2004-169195号公報 特開2005-281906号公報
難離解性の紙を含む離解した原料を製造した紙において、欠陥(未離解片、コート片等)が多く、製紙用原料に適したパルプを回収することが非常に困難であり、薬剤添加では回 収コスト増加、排水悪化などの問題がある。本発明は、これらの問題を解決するために難離解性の紙を離解処理後に残存している未離解片を容易に離解することができ、製紙用原料として再利用を図る新規で効率的な方法を提供するものである。
本発明者らは鋭意検討した結果、難離解性の紙を含む紙を再利用する工程において、難離解性紙を含む古紙及び/または損紙を離解処理した後、得られたパルプ懸濁液中にキャビテーションによって気泡を発生させ、該気泡をパルプ繊維を含む未離解片に接触させて処理することによって、顕著に未離解片を低減できることを見出し本発明を完成するに至った。
本発明によれば、難離解性の紙を含む紙を再利用する工程において、積極的にキャビテーションを導入することで、欠陥の少ないパルプを得ることができる。
以下、本発明の実施形態に係る難離解性の紙を再利用する方法について説明する。
本発明の対象とする難離解性の紙としては、内添薬品あるいは外添薬品として、澱粉、改質澱粉、ラテックス、ポリアクリルアミド等の高分子紙力剤、ポリアミン・エピクロルヒドリン系樹脂等の湿潤紙力剤などを含む紙である。さらに詳細には、新聞用紙、上質紙、更紙などの非塗工紙、塗工紙、グラビア用紙、情報用紙、インクジェット用紙などの顔料を塗工した紙、ミルクカートン等の食品・衛生・包装用紙等が挙げられるが、Tappi標準離解機で水と共に20分離解した場合に80メッシュ上に未離解片が残るものであればこれらに限られるものではない。
新聞用紙、上質紙、更紙などの非塗工紙は、パルプとして化学パルプ、機械パルプ、脱墨パルプ、及び非木材繊維を目標品質に応じて適宜配合して用いる。また、填料として、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、クレー、焼成カオリン、デラミネートカオリン、シリカ、炭酸マグネシウム等の無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂等の有機填料を単独または2種類以上組み合わせて適宜配合させて用いる。更に製紙用内添助剤として紙力向上剤の他に、内添サイズ剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤等が必要に応じて適宜添加された混合原料をツインワイヤー方式、オントップ長網方式、長網方式等の抄紙機を用いて製造された紙が挙げられる。必要に応じて澱粉やサイズ剤などをゲートロールコーターやコンベンショナルサイズプレス(2ロール、ポンド)などの塗工設備を用いてクリアコートと呼ばれる透明な被覆層を付与しているものである。特に離解性に問題がある湿潤紙力剤を含有した非塗工紙についても本発明を適用することにより未離解片を低減できる。
顔料を塗工した紙の中でも特にインクジェット用紙は耐水性が高く、難離解性である。
インクジェット用紙は、マット系インクジェット用紙、キャストコートインクジェット用紙が代表的なものであり、以下に説明する。
マット系インクジェット用紙は顔料と接着剤とを主成分とする塗工液を支持体上に塗工して塗工層を設け、塗工層表面がマット調であり、染料インク及び顔料インクのインクジェットプリンターに適した用紙である。特徴として十分なインク吸収性と発色性を兼ね備えることが必要となる。塗工層の顔料はシリカやアルミナ等を主成分として主に用いられ、接着剤としてポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル、ラテックス等が用いられる。塗工方法は各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター等の一般的な塗工装置により製造される。
キャストコートインクジェット用紙は、顔料と接着剤とを主成分とする塗工液を支持体上に塗工して塗工層を設け、塗工層をキャストドラムに圧着して光沢仕上げする方法で製造するインクジェット用紙である。塗工層の顔料はマット系インクジェット用紙と同様にシリカやアルミナ等を主成分として主に用いられ、接着剤としてポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル、ラテックス等が用いられる。上記の製造方法であるキャストコート法としては、(1)塗工層が湿潤状態にある間に、鏡面仕上げした加熱ドラムに塗工層を圧着して乾燥するウェットキャスト法(直接法)、(2)湿潤状態の塗工層を一旦乾燥又は半乾燥した後に再湿潤液により膨潤可塑化させ、鏡面仕上げした加熱ドラムに塗工層を圧着し乾燥するリウェット法、(3)湿潤状態の塗工層を凝固処理によりゲル状態にして、鏡面仕上げした加熱ドラムに塗工層を圧着し乾燥するゲル化キャスト法(凝固法)、の3つの方法がある。各方法の原理は、湿潤状態の塗工層を鏡面仕上げの面(キャストドラム)に押し当てて、塗工層表面に光沢を付与するという点では同一である。
また、一般にブロークと呼ばれる紙を製造する過程において発生する製品とならない紙、いわゆる損紙には、ドライヤーで乾燥した後のドライブロークと脱水時に発生するウェットブロークがある。ドライブロークのうちに、塗工したものをコートブロークと呼ぶ。ウェットブロークは比較的簡単に解繊することができるため、離解時に問題を生じない。一方、ドライブロークには、糊化して乾固した澱粉や熱溶融したラテックス、化学反応によって繊維に結合した湿潤紙力剤あるいは乾燥紙力剤などが含まれるため、離解性が非常に悪く、未離解片が多くなる。そこで、パルパーで離解した後、トップファイナーやディスクリファイナー等の機械的解繊装置を用いて処理して利用する。必要に応じて、解繊装置の後にスクリーンやクリーナー等の異物除去装置を組み合わせて粗大な異物を除去する、または、古紙とともに古紙の再生工程にて処理を行っている。本発明では、これらのブロークを離解処理した後に残存している未離解片も対象である。
本発明は、上述した難離解性の紙を離解処理し、パルプ懸濁液の状態にした後、残存する未離解片をキャビテーションによって発生した気泡を接触させて処理し、未離解片を低減する。適用できる離解処理後のパルプ懸濁液としては、具体的には古紙をパルパーで粗く解繊した後のスクリーン後や、損紙やブロークを回収パルパーで粗く解繊した後、及び、更にトップファイナー等の未離解片を分散させる装置で処理した後、に得られるパルプ懸濁液が挙げられる。更に必要に応じて水酸化ナトリウム、珪酸ソーダ、その他のアルカリ薬品、脱墨薬品、酸化性漂白剤、還元性漂白剤を加えることができる。更に、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加しても何ら問題はない。用いる離解装置あるいは処理条件については、特に制限はない。また、異物除去や高白色度化が必要ならば、上記工程に通常用いられている異物除去工程、あるいは漂白工程などを組み入れることも可能である。
通常の離解処理は機械的処理で行われる。具体的に機械的処理とは、パルパー、分散機(例えば、トップファイナーやプリファイナー等)、リファイナー(例えば、ディスクリファイナーやコニカルリファイナー等)等により回転軸を中心として金属または刃物と繊維を作用させるもの、あるいは繊維同士の摩擦によるものである。しかし、パルプ懸濁液中にキャビテーションによって気泡を発生させ、該気泡を該未離解片に接触させて処理するキャビテーション処理装置による離解処理を行うことにより、未離解片の個数が大幅に低減でき、再利用できるレベルとなる。特に、機械力による従来の離解装置による離解処理と本発明のキャビテーションによる離解処理とを組み合わせると、各々異なる機構によって離解が行われるため、繊維の特性を制御し、より望ましい紙質を得ることができる。さらには、湿潤紙力剤を含有した非塗工紙やインクジェット用紙などの特に離解性に問題がある紙を処理する場合には、リファイナーによる離解処理とキャビテーション処理を組み合わせると、未離解片の低減効果が高く、好ましい。パルパー、ディスク型分散機、リファイナー等の従来の機械的処理では、高速回転する金属製の刃物と刃物のエッジでの繊維塊の圧迫及びせん断と平坦部での圧縮などにより繊維全体に力を加えることで、未離解片の解繊と、パルプ繊維自体の内部フィブリル化及び外部フィブリル化を行う。これらの処理を効果的に行うためには、パルプ濃度を高くする必要があり、更にパルプ塊を圧縮するため、未離解片の解繊効果は低い。従って、未離解片の少ない見栄えの良いパルプを得るためには、過度の処理を行う必要があり、結果として、ろ水度の低下による抄紙機での脱水性の低下や、刃物のカッティング作用により繊維の短小化が進行し、パルプをシート化した際の強度が低下する。
一方、本発明のキャビテーション処理では、パルプ懸濁液を圧縮し高速でノズル先端より噴射することで、ノズル近傍での極めて高いせん断力と急激な減圧による懸濁液を構成する液体自体の膨張と同時に発生するキャビテーション気泡の崩壊エネルギーによって繊維塊を解繊し、繊維の表面に付着している薬品等の異物を弾き飛ばす。繊維に対して刃物等の物理的な接触がないことから、繊維の短小化等を引き起こすことが無く、上記のような複数の効果により効率よく未離解片の解繊を行うことができる。従って、ろ水度の低下による抄紙機での脱水性の低下や、繊維の短小化によるシート化した際の強度の低下が起こらない。
本発明におけるキャビテーションの発生手段としては、液体噴流による方法、超音波振動子を用いる方法、超音波振動子とホーン状の増幅器を用いる方法、レーザー照射による方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、液体噴流を用いる方法が、キャビテーション気泡の発生効率が高く、より強力な崩壊衝撃力を持つキャビテーション気泡雲を形成することが可能となるため未離解片に対する作用効果が大きい。上記の方法によって発生するキャビテーションは、従来の流体機械に自然発生的に生じる制御不能の害悪をもたらすキャビテーションと明らかに異なる。
本発明において、液体噴流を用いてキャビテーションを発生させる際に、未離解片を含むパルプ懸濁液に液体噴流として噴射させることによって未離解片と気泡を接触させることができる。また、液体噴流が噴流をなす流体は、流動状態であれば液体、気体、粉体やパルプ等の固体の何れでもよく、またそれらの混合物であってもよい。更に必要であれば上記の流体に、新たな流体として、別の流体を加えることができる。上記流体と新たな流体は、均一に混合して噴射してもよいが、別個に噴射してもよい。
液体噴流とは、液体または液体の中に固体粒子や気体が分散あるいは混在する流体の噴流のことをいう。ここで云う気体は、キャビテーションによる気泡を含んでいてもよい。
キャビテーションは液体が加速され、局所的な圧力がその液体の蒸気圧より低くなったときに発生するため、流速及び圧力が特に重要となる。このことから、キャビテーション状態を表わす基本的な無次元数、キャビテーション数(Cavitation Number)σは次の数式1のように定義される(加藤洋治編著、新版キャビテーション基礎と最近の進歩、槇書店、1999)。
Figure 2008274515

(p:一般流の圧力、U:一般流の流速、pv:流体の蒸気圧、ρ:流体の密度)
ここで、キャビテーション数が大きいということは、その流れ場がキャビテーションを発生し難い状態にあるということを示す。特にキャビテーション噴流のようなノズルあるいはオリフィス管を通してキャビテーションを発生させる場合は、ノズル上流側圧力p1、ノズル下流側圧力p2、試料水の飽和蒸気圧pvから、キャビテーション数σは下記式(2)のように書きかえることができ、キャビテーション噴流では、p1、p2、pv間の圧力差が大きく、p1≫p2≫pvとなることから、キャビテーション数σはさらに以下のように近似することができる(H. Soyama, J. Soc. Mat. Sci. Japan, 47(4), 381 1998)。
Figure 2008274515

本発明におけるキャビテーションの条件は、上述したキャビテーション数σが0.001以上0.5以下であることが望ましく、0.003以上0.2以下であることが好ましく、0.01以上0.1以下であることが特に好ましい。キャビテーション数σが0.001未満である場合、キャビテーション気泡が崩壊する時の周囲との圧力差が低いため効果が小さくなり、0.5より大である場合は、流れの圧力差が低くキャビテーションが発生し難くなる。
また、ノズルまたはオフィリス管を通じて噴射液を噴射してキャビテーションを発生させる際には、噴射液の圧力(上流側圧力)は0.01MPa以上30MPa以下であることが望ましく、0.7MPa以上20MPa以下であることが好ましく、3MPa以上15MPa以下であることが特に好ましい。上流側圧力が0.01MPa未満では下流側圧力との間で圧力差を生じ難く作用効果は小さい。また、30MPaより高い場合、特殊なポンプ及び圧力容器を必要とし、消費エネルギーが大きくなることからコスト的に不利である。一方、容器内の圧力(下流側圧力)は静圧で0.05MPa以上0.3MPa以下が好ましい。また、容器内の圧力と噴射液の圧力との圧力比は0.001〜0.5の範囲が好ましい。
また、噴射液の噴流の速度は1m/秒以上200m/秒以下の範囲であることが望ましく、20m/秒以上100m/秒以下の範囲であることが好ましい。噴流の速度が1m/秒未満である場合、圧力低下が低く、キャビテーションが発生し難いため、その効果は弱い。一方、200m/秒より大きい場合、高圧を要し特別な装置が必要であり、コスト的に不利である。
本発明におけるキャビテーション発生場所としてはタンクなど任意の容器内もしくは配管内を選ぶことができるが、これらに限定するものではない。また、ワンパスで処理することも可能であるが、必要回数だけ循環することによって更に効果を増大できる。さらに複数の発生手段を用いて並列で、あるいは順列で処理することができる。
キャビテーションを発生させるための噴射は、大気開放の容器の中でなされても良いが、キャビテーションをコントロールするために圧力容器の中でなされるのが好ましい。
本発明におけるキャビテーション発生場所としてはタンクなど任意の容器内もしくは配管内を選ぶことができるが、これらに限定するものではない。また、ワンパスで処理することも可能であるが、必要回数だけ循環することによって更に離解効果を増大できる。
液体噴射によってキャビテーションを発生させる際の処理対象のパルプ懸濁液の固形分濃度は10重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜5.0重量%の範囲で処理することが気泡の発生効率の点から好ましい。被噴射液の固形分濃度が10重量%以上30重量%以下である場合は、噴射液濃度を10重量%以下にすることによって作用効果を得ることができる。また、パルプ懸濁液のpHがアルカリ条件である方が繊維の膨潤性がよく、OH活性ラジカルの生成量が増加することから望ましい。
本発明では、液体の噴射圧力を高めることで、噴射液の流速が増大し、これに伴って圧力が低下し、より強力なキャビテーションが発生する。更に被噴射液を収める容器を加圧することで、キャビテーション気泡が崩壊する領域の圧力が高くなり、気泡と周囲の圧力差が大きくなるため気泡は激しく崩壊し衝撃力も大となる。キャビテーションは液体中の気体の量に影響され、気体が多過ぎる場合は気泡同士の衝突と合一が起こるため崩壊衝撃力が他の気泡に吸収されるクッション効果を生じるため衝撃力が弱まる。従って、溶存気体と蒸気圧の影響を受けるため、その処理温度は0℃以上70℃以下であることが好ましく、特に10℃以上60℃以下であることが好ましい。一般には、融点と沸点の中間点で衝撃力が最大となると考えられることから、水溶液の場合、50℃前後が好適であるが、それ以下の温度であっても、蒸気圧の影響を受けないため、上記の範囲であれば高い効果が得られる。
本発明においては、界面活性剤を添加することでキャビテーションを発生させるために必要なエネルギーを低減することができる。使用する界面活性剤としては、公知または新規の界面活性剤、例えば、脂肪酸塩、高級アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸などのアルキレンオキシド付加物などの非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらの単一成分からなるものでも2種以上の成分の混合物でも良い。添加量は噴射液及び/または被噴射液の表面張力を低下させるために必要な量であればよい。
上記工程を経て製造されたパルプは未離解片が顕著に低減されているので、このパルプを用いて欠陥のない紙を製造することができる。
本発明により製造したパルプを原料として紙を製造する際には、公知の抄紙機を使用することができるが、その抄紙条件は特に規定されるものではない。抄紙機としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等が使用される。なお、多層紙や板紙を製造するには、円網式抄紙機が使用される。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
<実験1 非塗工紙の処理>
[実施例1]
難離解性の紙として新聞用紙(難離解性の非塗工紙、湿潤紙力剤を対パルプ0.1重量%配合)を低濃度パルパー(相川鉄工製 ADP-5)で離解した。
このパルプスラリーをキャビテーション処理装置で、上流圧7MPa、下流圧0.3MPaにて1パス処理した。キャビテーション処理後の試料絶乾重量約1kgについて、希釈した後、6カット(0.15mmスリット)フラットスクリーンを用いて製紙原料から異物を分離した。6カット残さをろ紙に回収し絶乾重量を求め、6カット処理に供試した重量で割ることにより残さ率を得た結果を表1に示した。
・低濃度パルパー処理条件:濃度5.3%、温度50℃、ローター回転周速15m/s、離解時間50分
・キャビテーション処理条件:濃度3.2%、温度23℃、上流圧7MPa、下流圧0.3MPa
[比較例1]
上記のキャビテーション処理を行わずに低濃度パルパーによる処理のみを行った以外は実施例1と同様にして評価した。
[比較例2]
上記の低濃度パルパー処理の後、キャビテーション処理をトップファイナー(相川鉄工製 B-60型トップファイナー)処理に変更した以外は実施例1と同様にして評価した。
・トップファイナー処理条件:スリット幅0.8mm、刃間隔0.6mm、濃度5%、負荷50kw、流量27.0m/hr
[比較例3]
上記の低濃度パルパー処理の後、キャビテーション処理をダブルディスクリファイナー(相川鉄工製 AWN20-250型ダブルディスクリファイナー)処理に変更した以外は実施例1と同様にして評価した。
・ダブルディスクリファイナー処理条件:プレート(刃巾2.5mm、溝巾5mm、高さ5.5mm、ダム付き)、濃度5.1%、温度35℃、負荷181kw、流量28.4m/hr
Figure 2008274515
比較例の処理設備で得られる6カット残さ率に対して、実施例の残さ率は極めて少なく、良好な見た目と強度、均一性を持つパルプを得ると共に、系内から除去される残さ量が少なくなり収率が向上する。
<実験2 塗工紙の処理>
[実施例2]
難離解性の紙として塗工紙(難離解性の塗工紙、乾燥紙力剤を対パルプ0.5重量%配合)を低濃度パルパー(旭製作所製)で離解した以外は実施例1と同様にして評価した結果を表2に示した。
・低濃度パルパー処理条件:濃度5.0%、温度50℃、離解時間60分
[比較例4]
上記のキャビテーション処理を行わずに低濃度パルパーによる処理のみを行った以外は実施例2と同様にして評価した。
Figure 2008274515
表2に示されるように塗工紙においても、本発明による未離解片の低減の効果が得られることを確認できた。
<実験3 樹脂含浸紙の処理>
[実施例3]
難離解性の紙としてポリアミドエピクロルヒドリン樹脂を含浸した樹脂含浸紙(樹脂の含有率5.5重量%)を低濃度パルパー(石川島産業機械製 ハイドラパルパー)で離解した。このパルプスラリーをキャビテーション処理装置で、上流圧21MPa、下流圧0.9MPaにて1パス処理した以外は実施例1と同様にして評価した結果を表3に示した。
・低濃度パルパー処理条件:濃度5.0%、温度50℃、水酸化ナトリウム1%添加、離解時間60分
[比較例5]
上記のキャビテーション処理を行わずに低濃度パルパーによる処理のみを行った以外は実施例3と同様にして評価した。
[比較例6]
上記の低濃度パルパー処理の後、キャビテーション処理をシングルディスクリファイナー(相川鉄工製 ラボリファイナーLR14型)処理に変更した以外は実施例3と同様にして評価した。
[比較例7]
上記の低濃度パルパー処理の後、キャビテーション処理の代わりにシングルディスクリファイナーの3回処理に変更した以外は実施例3と同様にして評価した。
Figure 2008274515
表3に示されるように、樹脂含浸紙の離解は極めて困難であり、比較例5〜7の既存の処理設備では多大なエネルギーを消費しても、6カット残さ量が多く、その利用は困難であった。一方、実施例3においては、1パス処理によって残さ率を極めて低くすることができ、樹脂含浸紙の再利用を可能とすることができた。
<実験4 紙製造時の損紙類>
[実施例4]
難離解性の紙として紙製造時の損紙類(ドライブローク、コートブロークを含む)を低濃度パルパー(相川鉄工製 ADP-5)で離解した。このパルプスラリーをキャビテーション処理装置で、上流圧7MPa、下流圧0.3MPaにて1パス処理した以外は実施例1と同様にして評価した結果を表4に示した。
[比較例8]
上記の低濃度パルパー処理の後、キャビテーション処理をトップファイナー(相川鉄工製 B-60型トップファイナー)処理に変更した以外は実施例4と同様にして評価した。
Figure 2008274515
表4に示されるように、損紙においても、本発明による未離解片の低減の効果が得られることを確認できた。
<実験5 インクジェット用紙の処理>
[実施例5]
難離解性の紙をキャストインクジェット用紙に変更し、低濃度パルパー(相川鉄工製 ADP-5)で離解した。このパルプスラリーをキャビテーション処理装置で、上流圧10MPa、下流圧0.4MPaにて1パス処理した実施例1と同様にしてキャビテーション処理し、キャビテーション処理前後の試料について、Tappi標準法に基づいて60g/mの手抄きシート10枚を作製した。これらの10枚の手抄きシートをナフテン酸コバルトで着色した後、光学顕微鏡を用いて発色した未離解片(異物)の個数及び大きさを測定し、結果を表5に示した。
・低濃度パルパー処理条件:濃度8.7%、温度50℃、ローター回転周速15m/s、チオ硫酸ナトリウム2%(有姿)添加、離解時間50分
[実施例6]
実施例5においてキャビテーション処理を3パス処理に変更し、処理後の試料について未離解片の個数及び大きさを測定し、結果を表5に示した。
[実施例7]
実施例5においてキャビテーション処理を5パス処理に変更し、キャビテーション処理後の試料について未離解片の個数及び大きさを測定し、結果を表5に示した。
[比較例9]
上記のキャビテーション処理を行わずに低濃度パルパー(相川鉄工製 ADP-5)による処理のみを行った以外は実施例5と同様にして評価した。
[比較例10]
上記の低濃度パルパー処理の後、キャビテーション処理をトップファイナー(相川鉄工製 B-60型トップファイナー)処理に変更した以外は実施例5と同様にして評価した。
・トップファイナー処理条件:スリット幅0.8mm、刃間隔0.6mm、濃度5%、負荷50kw、流量27.6m/hr
[比較例11]
上記の低濃度パルパー処理の後、キャビテーション処理をダブルディスクリファイナー(相川鉄工製 AWN20-250型ダブルディスクリファイナー)処理に変更した以外は実施例5と同様にして評価した。
・ダブルディスクリファイナー処理条件:プレート(刃巾2.5mm、溝巾5mm、高さ5.5mm、ダム付き)、濃度5.3%、温度33℃、負荷183kw、流量28.2m/hr
[比較例12]
上記の低濃度パルパー処理の後、キャビテーション処理の代わりにスクリーン(相川鉄工製 GFFH-400型グランフロースクリーン(GFFH))にて異物除去した以外は実施例5と同様にして評価した。
・スクリーン処理条件:スリット幅0.12mm、通過流速1m/s、濃度1.1%、流量91m/hr、テール率10%
[比較例13]
上記の低濃度パルパー処理の後、キャビテーション処理の代わりに低濃度クリーナー(相川鉄工製 CT15F型)にて異物除去した以外は実施例5と同様にして評価した。
・低濃度クリーナー処理条件:入口圧0.16MPa、出口圧0.04MPa、差圧0.12MPa、濃度1.1%、処理量25.8m/hr、テール率20%
[比較例14]
上記の低濃度パルパー処理の後、キャビテーション処理の代わりにリバースクリーナー(ブラッククローソン製 Xtreme 3インチ型)で異物除去処理した以外は実施例5とまったく同様にして評価した。
・リバースクリーナー処理条件:入口圧0.4MPa、出口圧0.015MPa、差圧0.39MPa、濃度1.24%、処理量75m/hr、テール率5.6%
[比較例15]
上記の低濃度パルパー処理の後、キャビテーション処理の代わりにトップファイナー(相川鉄工製 B-60型トップファイナー)で3回処理した以外は実施例5と同様にして評価した。
・トップファイナー処理条件(同処理を3回繰り返す):スリット幅0.8mm、刃間隔0.6mm、濃度5%、負荷50kw、流量27.4m/hr
[比較例16]
上記の低濃度パルパー処理の後、キャビテーション処理の代わりにトップファイナーで5回処理した以外は実施例5と同様にして評価した。
[比較例17]
上記の低濃度パルパー処理の後、キャビテーション処理の代わりにダブルディスクリファイナー(相川鉄工製 AWN20-250型ダブルディスクリファイナー)で3回処理した以外は実施例5と同様にして評価した。
・ダブルディスリファイナー処理条件:プレート(刃巾2.5mm、溝巾5mm、高さ5.5mm、ダム付き)、濃度5.3%、温度33℃、負荷183kw、流量28.2m/hr
Figure 2008274515
表5に示されるように、キャストインクジェット用紙においても、本発明による未離解片の低減の効果が得られることを確認できた。
<実験6 樹脂含浸ラミネート用原紙と圧着葉書用原紙を混合した紙の処理>
[実施例8]
難離解性の紙を、樹脂含浸ラミネート用原紙(パルプ成分としてLBKP 100重量%、湿潤紙力剤を対パルプ0.2重量%配合)と圧着葉書用原紙(パルプ成分としてLBKP95重量%、NBKP 5重量%、湿潤紙力剤を対パルプ0.7重量%配合)を重量比1:1で混合した紙に変更し、低濃度パルパー(相川鉄工製 ADP-5)及び離解機(相川鉄工社製 プリファイナー)で離解した。その後、ダブルディスクリファイナー(相川鉄工製 AWN20-250型ダブルディスクリファイナー)処理を行った。このパルプスラリーをキャビテーション処理装置で、上流圧18MPa、下流圧0.8MPaにて1パス処理した。キャビテーション処理後の試料絶乾重量約1kgについて、希釈した後、4カット(0.10mmスリット)フラットスクリーンを用いて製紙原料から異物を分離した。4カット残さをろ紙に回収し絶乾重量を測定した結果を表6に示した。
・低濃度パルパー処理条件:濃度5.5%、温度50℃、ローター回転周速15m/s、離解時間120分
・離解機処理条件:濃度3.5%、温度40℃、負荷27A、流量100m/hr
・ダブルディスクリファイナー処理条件:プレート(刃巾2.5mm、溝巾5mm、高さ5.5mm、ダム付き)、濃度3.1%、温度40℃、負荷73kw、流量89m/hr
[実施例9]
実施例8においてキャビテーション処理の上流圧を13MPa、下流圧を0.6MPaに変更し、処理後の試料について未離解片の絶乾重量を測定し、結果を表6に示した。
[実施例10]
実施例8においてダブルディスクリファイナー処理の負荷を187kw、流量103m/hrに変更し、キャビテーション処理の上流圧を8MPa、下流圧を0.3MPaとした処理後の試料について未離解片の絶乾重量を測定し、結果を表6に示した。
[比較例18]
実施例8においてキャビテーション処理を行わなかった以外は同様にして評価を行い、結果を表6に示した。
[比較例19]
実施例10においてキャビテーション処理を行わなかった以外は同様にして評価を行い、結果を表6に示した。
Figure 2008274515
表6に示されるように、樹脂含浸ラミネート用原紙及び圧着葉書用原紙を混合した難離解性の紙においても、本発明による未離解片の低減の効果が得られることを確認できた。
実施例で使用したキャビテーション噴流式洗浄装置の概略図である。
符号の説明
1:試料タンク
2:ノズル
3:キャビテーション噴流セル
4:プランジャポンプ
5:上流側圧力制御弁
6:下流側圧力制御弁
7:上流側圧力計
8:下流側圧力計
9:給水弁
10:循環弁
11:排水弁
12:温度センサー
13:ミキサー

Claims (9)

  1. 難離解性の紙を含む古紙及び/または損紙を再利用する工程において、難離解性の紙を含む古紙及び/または損紙を離解処理した後、得られた未離解片を含むパルプ懸濁液中にキャビテーションによって気泡を発生させ、該気泡を未離解片に接触させて処理することを特徴とする未離解片の低減方法。
  2. 未離解片を含むパルプ懸濁液中に液体噴流を用いてキャビテーションによる気泡を発生させ、該気泡を未離解片に接触させて処理することを特徴とする請求項1記載の未離解片の低減方法。
  3. 難離解性の紙が無機顔料を含有する塗工層を設けた塗工紙であることを特徴とする請求項1ないし2記載の未離解片の低減方法。
  4. 難離解性の紙が無機顔料としてシリカ及び/またはアルミナを含有する塗工層を設けた塗工インクジェット用紙であることを特徴とする請求項1ないし2記載の未離解片の低減方法。
  5. 難離解性の紙が無機顔料としてシリカ及び/またはアルミナを含有する塗工層を設けたキャストコートインクジェット用紙であることを特徴とする請求項1ないし2記載の未離解片の低減方法。
  6. 難離解性の紙が紙力向上剤を含有する非塗工紙であることを特徴とする請求項1ないし2記載の未離解片の低減方法。
  7. 難離解性の紙が紙製造時に発生するコートブロークを含む損紙類であることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の未離解片の低減方法。
  8. 離解処理がリファイナー処理であることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の未理解片の低減方法。
  9. 請求項1〜8いずれかに記載の原料を含んで製造されたことを特徴とする紙。
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