JP2006257623A - 積層シート - Google Patents

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Abstract

【課題】
印刷時の用紙搬送性、および保管時の安定性に優れるとともに、インキ等の裏移りが改善された積層シートの提供。
【解決手段】
基材の片面または両面に1以上の熱可塑性樹脂層を有する積層シートであって、前記基材が、パルプ懸濁液中にキャビテーションを発生させ、発生した気泡をパルプ懸濁液に接触させたパルプを含有する紙である積層シート。

Description

本発明は、基材上に熱可塑性樹脂層を設けた耐水性を有する積層シートに関する。
現在、積層シートとしては、紙基材等に無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂をラミネートした複合紙タイプのもの、熱可塑性樹脂に無機充填剤や発泡剤を練り込んで延伸した合成紙タイプのものが知られ、ポスター、ラベル、配送伝票、冷凍・冷蔵食品の包装、コンビニエンスストアーやスーパーマーケットにおける商品のPOP(Point Of Purchase)等、耐水性が要求される各種分野で用いられており、オフセット印刷や電子写真印刷方式のレーザービームプリンター(LBP)等によって印刷されて使用されることが多い。特に、複合紙タイプのものは合成紙タイプに比べて折れ適性が優れるなどから、ガイドブック、地図等の用途にも適している。このような複合紙タイプの積層シートは、例えば特許文献1(特許第2763011号公報)に記載されているように、紙基材の片面または両面に熱溶融押出しラミネ−ション法や共押出しラミネーション法によって熱可塑性樹脂を積層することにより製造される。
但し、表面に熱可塑性樹脂層を有する積層シートの場合、紙からなる一般の印刷用紙に比べてインキ乾燥性に劣るため、これを改善する方法の1つとして、シート表面にバインダーと無機顔料を含有する塗工層を設け、これにインキを吸収させるインキ受理層とすることが知られている。例えば、特許文献2(特開2004−223882号公報)には、積層シートの熱可塑性樹脂層表面に、スチレンーブタジエン系ラテックスからなるインキ受理層を設けることが記載されている。
特許第2763011号公報 特開2004−223882号公報
上記のように、インキ受理層を設けることにより、インキ乾燥性を一般印刷用紙に近づけることができるが、しかし、印刷用紙は紙の上にインキ受理層を有し紙もインキを吸収できるのに比べて、熱可塑性樹脂層表面にインキ受理層を有する積層シートは依然としてインキ乾燥性に関して不利である。また、大量に連続印刷する場合は、インキが乾燥していないうちに次のシートが排紙されて上に積み重ねられていくために、積み重なったシートの重みも加わって、下側になるシート表面のインキとそれに接触する上側のシート裏面の密着度が高まり、インキの裏移りが発生しやすい。また、印刷後にシートを一枚ずつ捌こうとすると、印刷面からインキが剥離するなどの問題が起こる。そのため、従来はこまめに板取りを行う(印刷中に足下駄付きの仕切り板をはさみ重なる量を調整)などが必要であり、生産性の向上を図ることが難しかった。
電子写真印刷方式に用いられる場合は、潜像トナーを記録シートに転写した後、記録シートを約200℃の熱ロール間に通して熱融着し固定するため、記録シートとして紙を用いた場合には、溶融したトナーが紙繊維間の空隙に沈み込むことで良好な定着性が得られるのに対し、表面に熱可塑性樹脂を有する積層シートは紙表面に比較して凹凸が少なく、トナー定着性に劣る。そのため、レーザービームプリンター等から排紙された印刷済み記録シート上に、その熱が冷め切らずトナーが固定していないうちに次の記録シートが排紙されて積み重ねられると、積み重なった記録シート内部は高温状態が維持され、さらに記録シート自体の重みも加わって、下側になる記録シート表面のトナーとそれに接触する上側の記録シート裏面の密着度が高まり、融着を起こすトナー裏移り(トナーブロッキング)が発生しやすい。そして、印刷後に記録シートを一枚ずつ捌こうとすると、印刷面からトナーが剥離する問題が生じる。
一方、近年、省資源あるいは環境保護といった観点から古紙の再生利用が進められており、再生パルプを製造する技術も様々に提案されている。しかし、再生パルプを含有する再生紙は白色度や紙力、寸法安定性に劣るものが多く、積層シートの基材として満足のいくものは得られていない。積層シートの紙基材に関しては、再生紙に限らず引っ張り強さや曲げ剛度など紙力(強度)が弱いと、印刷時の重送や用紙が不揃いになるなど用紙搬送性が低下する一因となったり、紙基材の寸法安定性が悪いと、ラミネート加工時の熱によるカールや、多湿な環境下に置かれた場合に紙基材だけが伸縮して熱可塑性樹脂層は伸縮せず、用紙の波打ちなどが起こりやすい。
特に、最近は、ガイドブックや地図等の用途において携帯のために軽量なものが望まれており、積層シートが軽量になれば、上記した連続印刷時のインキやトナーの裏移り等の問題も軽減されると考えられる。しかし、熱可塑性樹脂層を薄くするとインキ乾燥性等が悪化し、そこで、熱可塑性樹脂層ではなく紙基材を薄くすることが考えられるが、紙は薄いほど紙力に劣る傾向があり、上記の問題が懸念されるため薄い紙を用いることには限界があった。
このように、積層シートの基材としては、薄く軽量でありながら十分な紙力を有する紙が必要であり、本発明はかかる観点を踏まえ、印刷時の用紙搬送性、および保管時の安定性に優れるとともに、インキ等の裏移りが改善された積層シートを提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究の結果、キャビテーション処理されたパルプを含有する紙を基材として用いることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明の主な構成は次のとおりである。
(1) 基材の片面または両面に1以上の熱可塑性樹脂層を有する積層シートであって、前記基材が、パルプ懸濁液中にキャビテーションを発生させ、発生した気泡をパルプ懸濁液に接触させたパルプを含有する紙であることを特徴とする積層シート。
(2) 前記パルプが、パルプ懸濁液中にキャビテーションを発生させ、発生した気泡をパルプ懸濁液に接触させて、所望の濾水度に調整したパルプであることを特徴とする(1)記載の積層シート。
(3) 前記パルプが、パルプ懸濁液中にキャビテーションを発生させ、発生した気泡をパルプ懸濁液に接触させて、パルプ繊維および灰分に付着している汚染物質を除去した再生パルプであることを特徴とする(1)または(2)記載の積層シート。
(4) キャビテーションが、液体噴流を用いて発生させたものであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の積層シート。
(5) 液体噴流が、パルプ懸濁液を噴射したものであることを特徴とする(4)記載の積層シート。
(6)少なくとも一方の面の熱可塑性樹脂層上に、バインダーを含有する塗工層が設けられたことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の積層シート。
(1)キャビテーション処理されたパルプを含有することにより、嵩高で引っ張り強さ、剛度等の紙力に優れる紙を得ることができるため、これを基材とした積層シートは、軽量でありながら強度が維持されて、印刷時の用紙搬送性、保管時の用紙安定性に優れるとともに、インキ等の裏移りが改善される。
(2)キャビテーション処理された再生パルプとすることにより、古紙を原料とした場合でも紙力に優れる嵩高な紙を得ることができるため、これを基材とした積層シートは、印刷時の用紙搬送性、保管時の用紙安定性に優れるとともに、インキ等の裏移りが改善される。
本発明は、基材の片面または両面に1以上の熱可塑性樹脂層を有する積層シートであって、一般印刷用、電子写真印刷用など様々な用途に使用可能であるが、さらにインクジェット記録シート、感熱記録シート、感圧記録シート、熱転写シート等の情報記録用紙や加工用紙などの支持体としても幅広く用いることができる。
本発明において基材として用いられる紙は、第一に、キャビテーションによって発生した気泡をパルプ懸濁液に接触させたパルプを含有する紙である。すなわち、パルプを製造する工程において、キャビテーションによって発生する気泡をパルプ懸濁液中に導入し、微細な気泡の崩壊時の衝撃力によってパルプ繊維の短小化などの損傷を抑えながら所望の濾水度に調整することにより得られる、嵩高なパルプを含有するものである。また、第二に、キャビテーションによって発生した気泡をパルプ懸濁液に接触させて、パルプ繊維および灰分に付着している汚染物質を除去した再生パルプを含有する紙である。すなわち、古紙を再生する工程において、キャビテーションによって発生する気泡をパルプ懸濁液中に導入し、微細な気泡の崩壊時の衝撃力によってパルプ繊維および灰分に付着しているインキ等の汚染物質を剥離・微細化して得られる、再生パルプを含有するものである。また、これらの紙を原紙として、その上に塗工層を設けた塗工紙等も使用することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
1.キャビテーション処理
[背景]
近年、省資源あるいは地球規模での環境保護といった観点から、古紙の再生利用が強く求められており、利用範囲を拡大することが極めて重要な問題となっている。一方で、従来の再生パルプの用途は新聞・雑誌用の紙であることが多かったが、様々な用途へ展開すべく、古紙をより高度に処理し、高白色度で残インキの少ない再生パルプを製造することが求められている。
古紙の再生方法は、一般的にパルプ繊維からインキを剥離する工程と、剥離されたインキを除去する工程からなる。より具体的には、パルパーにおいて、流体力学的せん断力またはパルプ繊維同士の摩擦力によって、パルプ繊維からのインキの剥離と微細化を促進し、続いてフローテーションおよび/または洗浄によりインキの除去を行なう方法が主流である。この過程において、必要に応じて水酸化ナトリウム、珪酸ソーダ、酸化性漂白剤および/または還元性漂白剤、脱墨剤などの脱墨薬品を添加し、アルカリ性pH値で古紙の処理を行うことが一般的である。古紙をより高度に処理する場合、上記処理で除去できなかったパルプ繊維上に残存するインキを剥離するため、例えば、インキ剥離工程またはインキ除去工程後に、更に機械力によってインキの剥離・微細化を促進する方法、および、その後にインキ除去を行う方法などが採用されている。
しかしながら、古紙の多様化に伴い、経時劣化し酸化重合の進んだオフセットインキやパルプ繊維に熱融着したトナーインキ、印刷時の処理により硬化したUV樹脂インキ等の混入が増加しており、上記の古紙再生方法では、剥離力が不十分であり、未剥離インキが残存し完成パルプ品質が著しく低下することが問題となっている。この対策として、より大きな機械的負荷やより高温での処理を行う方法、または、より多くのアルカリや脱墨剤などの薬品を添加する方法が採用されているが、機械的負荷の増大により、パルプ繊維自体の短小化や微細繊維の増加、パルプ繊維のねじれなどによる紙力や寸法安定性の低下、紙のカール増大、高温による蒸気代や薬品費の増加による再生パルプのコストアップなどが問題となっていた。
また、機械力によるインキ剥離工程とフローテーションおよび/または洗浄からなるインキ除去工程を、目的とするパルプ品質が得られるまで複数回数繰り返して行う方法もあるが、極めて大きな設備投資が必要であり、且つ、排水負荷の増大を招くことから、コスト面、エネルギー面および環境面からデメリットが大きく導入は進んでいない。このため、特にトナー印刷物やUV樹脂インキ印刷物などは、板紙や家庭紙にしか使用されておらず、印刷用紙や情報用紙、新聞印刷用紙などの紙向けの古紙原料として積極的に用いられることがなかった。
更に古紙利用率の向上に伴い、パルプ繊維自体のリサイクル回数が増え、岡山らの報告(岡山隆之、第7回パルプ基礎講座 古紙パルプ(その2)、紙パルプ技術協会編、p101−111、2002)にあるようにパルプ繊維の損傷が激しくなっている。パルプ繊維は熱乾燥によって水素結合形成能が著しく低下することが知られており、一度乾燥された古紙を再生する際には、これを補うためにリファイナーなどで叩解しパルプ繊維を毛羽立たせることによって水素結合形成能を向上させる必要がある。しかしながら、この過程において、パルプ繊維の内部構造は著しく損傷し、層状又は環状にひび割れたような構造となる。このような状態になったパルプ繊維は、古紙の再生過程における機械力による繊維同士の擦れや攪拌羽根などとの接触により、容易に切断され、パルプ繊維の短小化などを促進するものと考えられている。このように従来の技術では、多様化する古紙から高品質のパルプを製造するためには、パルプ繊維の損傷の増大、またはエネルギー消費量増大、排水処理費増大等のコストアップが避けられなかった。
一方、上記のような古紙から再生パルプを製造する場合に限らず、紙表面の平滑性の向上や紙力の向上などを目的として、従来から、機械力を用いてパルプを叩解処理することでパルプ繊維の改質が行われてきた。この叩解処理によって、短小化したパルプ繊維や微細繊維が増加するために紙層が緻密となり紙の平滑性が向上するという効果が得られ、パルプ繊維表面のミクロフィブリルの毛羽立ちによって繊維間結合面積が増大し、紙力が向上するという効果が得られる。しかしながら、この叩解処理では、パルプ繊維自体のカッティングによる損傷が発生するため、パルプ繊維長の低下による紙力の低下を生じていた。また、紙層が緻密になる反面、紙の嵩が低下する(密度が大きくなる)という問題もあった。また、一般に、ダブルディスクリファイナー等の通常使用されている叩解機によってパルプの叩解を進めると、濾水度の低下に伴って繊維長の低下、微細繊維分の増加、カールの増大といった変化が生じ、さらに作成した紙(シート)は密度が上昇しやすい。
このように従来の脱墨パルプ製造技術やパルプ叩解技術では、パルプ繊維全体に機械的負荷がかかるため、パルプ品質を向上させるためにはパルプ繊維の損傷や添加薬品費のコストアップ等が避けられなかった。
これに対し、本発明では、パルプ繊維自体の嵩が機械的叩解処理時に最も低下することに着目し、パルプ繊維表面に対し選択的に負荷を与えて繊維の損傷と内部フィブリル化の進行を抑え、パルプ繊維の嵩を低下させずに濾水度を調整することによって、嵩高なパルプを得ることができる。すなわち、本発明では、パルプ懸濁液中にキャビテーションを積極的に発生させて処理することにより、発生する微細気泡の崩壊衝撃力によってパルプ繊維の外部フィブリル化を促進する一方、内部フィブリル化を抑制して濾水度を調整するものであり、従来の機械的方法で叩解処理したパルプと同等の濾水度で比較すると、より嵩高でありながら強度の強いパルプを得ることができる。
また、本発明では、再生パルプの製造において、大部分のインキがパルプ繊維および/または塗工層表面に付着していることに着目し、従来のパルプ繊維全体に対して負荷を与えるインキ剥離方法ではなく、パルプ繊維表面に対して選択的に負荷を与えてインキを剥離することにより、パルプ繊維自体への損傷が抑えられ、パルプ繊維表面に付着しているインキの剥離・微細化が促進され、高白色度で残インキの少ない高品質の再生パルプを得ることができる。
[パルプ]
キャビテーション処理の対象とするパルプは、木材または非木材繊維などを原料とする。具体的には、針葉樹、広葉樹などを用いた化学パルプ(針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)または未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP))、未晒クラフトパルプ(LUKP)等)、機械パルプ(グラウンドウッドパルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等)、脱墨パルプ(DIP)等が挙げられ、これらを単独または任意の割合で混合して使用される。なお、本発明では脱墨パルプ(DIP)を再生パルプと記述する。再生パルプの原料としては、例えば、新聞、チラシ、更紙系雑誌、コート系雑誌、感熱記録紙、感圧記録紙、模造紙、色上質紙、電子写真用転写紙、コンピューターアウトプット用紙、あるいはこれらの混合古紙等が挙げられる。本発明では、全ての種類のパルプをキャビテーション処理して配合し抄紙しても良いし、特定の種類のパルプのみをキャビテーション処理して配合し抄紙しても良いし、特定の種類のパルプの一部をキャビテーション処理して配合し抄紙しても良い。また、非木材繊維もキャビテーション処理して使用することもできる。
特に、後述するようにクラフトパルプの叩解処理時に適用した場合、従来の叩解処理で得られるパルプとは異なった特性を有する。また、パルプ以外の化学繊維などの長軸と短軸の比が大きい繊維状物質との混合物にも適用できる。例えば、本発明による叩解処理をクラフトパルプに対して適用した場合、パルプの濾水度の低下に伴う保水度の低下は、通常の叩解処理よりも緩やかである。この現象は、キャビテーション処理によってパルプ繊維の内部フィブリル化より外部フィブリル化が進行したことを示すものである。従って、従来の叩解処理で得られたパルプと同一の濾水度で比較すると、嵩高でありながら紙力の強い紙シートが得られる。
また、再生パルプの製造においては、キャビテーション処理により脱墨作用とともに濾水度調整作用も得られる。従って、脱墨処理時にキャビテーション処理を行う場合、叩解処理は省いてもよいし、通常の叩解処理またはキャビテーションによる叩解処理を行ってもよい。
[キャビテーションとは]
キャビテーションとは、流体の持つ速度エネルギーの増大に伴い、圧力が低下し液体の飽和蒸気圧まで圧力が減少した結果、液体が気泡になる現象であり、加藤の成書(加藤洋治編著、新版キャビテーション 基礎と最近の進歩、槇書店、1999年)にあるように、キャビテーション気泡の崩壊時に数μmオーダーの局所的な領域に数Gpaにおよぶ高衝撃圧を発生し、また、気泡崩壊時に断熱圧縮により数千℃に温度が上昇する。その結果、キャビテーションは流体機械に損傷、振動、性能低下などの害悪をもたらす面があり、解決すべき技術課題とされてきた。近年、キャビテーションについて研究が急速に進み、キャビテーション噴流の流体力学的パラメーターを操作因子としてキャビテーションの発生領域や衝撃力まで高精度に制御できるようになった。その結果、気泡の崩壊衝撃力を制御することにより、その強力なエネルギーを有効活用されることが期待されはじめている。従って、流体力学的パラメーターに基づく操作・調整を行うことでキャビテーションを高精度に制御することが可能となった。これは技術的作用効果の安定性を保持することが可能であることを示しており、従来のように流体機械で自然発生的に生じる制御不能の害悪をもたらすキャビテーションではなく、制御されたキャビテーションによって発生する気泡を積極的にパルプ懸濁液に導入し、そのエネルギーを有効利用することが特徴である。
なお、ウクライナの論文(R.A. SoloИitsyИ et al., Bum Prom-st’, 1987(6), 22、 R.A. SoloИitsyИ et al., Bum Prom-st’, 1987(1), 25、 R.A. SoloИitsyИ et al., Bum Prom-st’, 1986(7), 241〜243)では、板紙古紙などについて、パルプ噴流と回転構造を持つ障害物によってキャビテーションを利用した叩解を行っているが、その効果は内部フィブリル化を促進し、繊維の引張り強度などを向上させている。従って、得られる効果はパルプ繊維の柔軟化による伸び率の向上に起因しており、結果としてこの方法では嵩高なパルプを得ることはできないことから、本発明とこれらの技術とは、利用する作用領域が異なり、効果も異なっているため本質的に相違する技術である。
[キャビテーションの発生方法]
本発明におけるキャビテーションの発生手段としては、液体噴流による方法、超音波振動子を用いる方法、超音波振動子とホーン状の増幅器を用いる方法、レーザー照射による方法などが挙げられるが、これらに限定するものではない。好ましくは、液体噴流を用いる方法が、キャビテーション気泡の発生効率が高く、より強力な崩壊衝撃力を持つキャビテーション気泡雲を形成するため、インキ等の汚染物質に対する作用効果も大きい。上記の方法によって発生するキャビテーションは、従来の流体機械に自然発生的に生じる制御不能の害をもたらすキャビテーションとは明らかに異なるものである。
液体噴流とは、液体または液体の中に固体粒子や気体が分散あるいは混在する流体の噴流であり、パルプや無機物粒子のスラリーや気泡を含む液体噴流をいう。ここでいう気体は、キャビテーションによる気泡を含んでいてもよい。
キャビテーションは液体が加速され、局所的な圧力がその液体の蒸気圧より低くなったときに発生するため、流速および圧力が特に重要となる。このことから、キャビテーション状態を表わす基本的な無次元数、キャビテーション数(Cavitation Number)σは次のように定義される(加藤洋治編著、新版キャビテーション基礎と最近の進歩、槇書店、1999)。
(p:一般流の圧力、U:一般流の流速、pv:流体の蒸気圧、ρ:密度)

ここで、キャビテーション数が大きいということは、その流れ場がキャビテーションを発生し難い状態にあるということを示す。特にキャビテーション噴流のようなノズルあるいはオリフィス管を通してキャビテーションを発生させる場合は、ノズル上流側圧力p1、ノズル下流側圧力p2、、試料水の飽和蒸気圧pvから、キャビテーション数σは下記式(2)のように書きかえることができ、キャビテーション噴流では、p1、p2、pv間の圧力差が大きく、p1≫p2≫pvとなることから、キャビテーション数σはさらに以下のように近似することができる(H. Soyama, J. Soc. Mat. Sci. Japan, 47(4), 381 1998)。

本発明におけるキャビテーションの条件は、上述したキャビテーション数σが0.001以上0.5以下であることが望ましく、0.003以上0.2以下であることが好ましく、0.01以上0.1以下であることが特に好ましい。キャビテーション数σが0.001未満である場合、キャビテーション気泡が崩壊する時の周囲との圧力差が低いため効果が小さくなり、0.5より大である場合は、流れの圧力差が低くキャビテーションが発生し難くなる。
また、ノズルまたはオフィリス管を通じて噴射液を噴射してキャビテーションを発生させる際には、噴射液の圧力(上流側圧力)は0.01MPa以上30MPa以下であることが望ましく、0.7MPa以上15MPa以下であることが好ましく、2MPa以上10MPa以下であることが特に好ましい。上流側圧力が0.01MPa未満では下流側圧力との間で圧力差を生じ難く作用効果は小さい。また、30MPaより高い場合、特殊なポンプおよび圧力容器を必要とし、消費エネルギーが大きくなることからコスト的に不利である。一方、容器内の圧力(下流側圧力)は静圧で0.05Mpa以上0.3Mpa以下が好ましい。また、容器内の圧力と噴射液の圧力との圧力比は0.001〜0.5の範囲が好ましい。
また、噴射液の噴流の速度は1m/秒以上200m/秒以下の範囲であることが望ましく、20m/秒以上100m/秒以下の範囲であることが好ましい。噴流の速度が1m/秒未満である場合、圧力低下が低く、キャビテーションが発生し難くいため、その効果は弱い。一方、200m/秒より大きい場合、高圧を要し特別な装置が必要であり、コスト的に不利である。
本発明におけるキャビテーション処理は、タンクなど任意の容器内若しくは配管内を選ぶことができるが、これらに限定するものではない。また、ワンパスで処理することも可能であるが、必要回数だけ循環させることによって更に効果を増大できる。さらに複数の発生手段を用いて並列で、あるいは、順列で処理することができる。
キャビテーションを発生させるための噴流は、パルパーのような大気開放の容器の中でなされてもよいが、キャビテーションをコントロールするために圧力容器の中でなされるのが好ましい。
本発明における液体噴流によるキャビテーションの発生方法では、パルプ懸濁液に対して、噴射液体として、例えば、蒸留水、水道水、工業用水、製紙工程で回収される再用水、パルプ搾水、白水、パルプ懸濁液、アルコールなどを噴射することができるが、これらに限定するものではない。好ましくは、パルプ懸濁液自体を噴射することで、噴流周りに発生するキャビテーションによる作用効果に加え、高圧でノズルやオリフィスから噴射する際の流体力学的剪断力が得られるため、より大きな作用効果を発揮する。なお、噴射液体としてパルプ懸濁液を用いる場合、処理対象とする全量を循環させて処理することも可能である。
パルプ懸濁液を噴射する場合、ノズルの径は、狭すぎるとパルプ繊維が詰まりやすく、また低濃度での処理を必要として単位原料の処理時間がかかったり、広すぎるとキャビテーションの発生効率が低下し所望の改質を行えなくなるおそれがあるため、内径0.5mm〜5.0mm程度が好ましい。なおノズルの内形状は円形に限られない。
液体噴流によってキャビテーションを発生させて処理する場合、処理対象であるパルプ懸濁液の固形分濃度は5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは0.1〜1.5重量%の範囲で処理することが気泡の発生効率の点から好ましい。
また、処理時のパルプ懸濁液のpHは、好ましくはpH1〜13、より好ましくはpH3〜12、更に好ましくはpH4〜11である。pHが1未満であると装置の腐食などが問題となり、材質および保守等の観点から不利である。一方、pHが13を超えると、パルプ繊維のアルカリ焼けが生じ、白色度が低下するので好ましくない。アルカリ条件である方がパルプ繊維の膨潤性がよく、OH活性ラジカルの生成量が増加することから望ましい。
本発明では、液体の噴射圧力を高めることで、噴射液の流速が増大し、より強力なキャビテーションが発生する。更に被噴射液を収める容器を加圧することで、キャビテーション気泡が崩壊する領域の圧力が高くなり、気泡と周囲の圧力差が大きくなるため気泡は激しく崩壊し衝撃力も大となる。ここで、噴射液とは、高圧でノズルあるいはオリフィスから噴射する液体を指し、被噴射液とは容器内もしくは配管内で噴射される液体を指す。キャビテーションは液体中の気体の量に影響され、気体が多過ぎる場合は気泡同士の衝突と合一が起こるため崩壊衝撃力が他の気泡に吸収されるクッション効果を生じ衝撃力が弱まる。従って、溶存気体と蒸気圧の影響を受けるため、その処理温度は融点以上沸点以下でなければならない。液体が水を媒質とする場合、好ましくは0〜80℃、更に好ましくは10℃〜60℃の範囲とすることで高い効果を得ることができる。一般には、融点と沸点の中間点で衝撃力が最大となると考えられることから、水溶液の場合、50℃前後が最適であるが、それ以下の温度であっても、蒸気圧の影響を受けないため、上記の範囲であれば高い効果が得られる。80℃よりも高い温度では、キャビテーションを発生するための圧力容器の耐圧性が著しく低下するため、容器の損壊を生じやすいため不適である。
本発明においては、界面活性剤などの液体の表面張力を低下させる物質を添加することで、キャビテーションを発生させるために必要なエネルギーを低減することができる。添加する物質としては、公知または新規の界面活性剤、例えば、脂肪酸塩、高級アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸などのアルキレンオキシド付加物などの非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、あるいは、有機溶剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの単一成分からなるものでも2種以上の成分の混合物でも良い。添加量は噴射液および/または被噴射液の表面張力を低下させるために必要な量であればよい。また、添加場所としてはキャビテーションを発生させる場所よりも前の工程のいかなる場所でもよく、液体を循環させる場合は、キャビテーションを発生させる場所以降であっても構わない。
2.キャビテーション処理されたパルプの製造
本発明においてキャビテーション処理は、パルプの製造工程のうち叩解処理工程、また、再生パルプの製造の場合は脱墨処理工程においても適用することができる。
[叩解処理]
パルプ懸濁液中にキャビテーションを発生させることにより、該パルプを所望の濾水度に調製するパルプの叩解処理方法について、本出願人は既に出願している(特願2006-33114号)。本発明は、この叩解処理方法で調整したパルプを配合した紙を基材として用いる。なお、本発明において濾水度(カナダ標準濾水度)は、所望の品質に応じて適宜設定すればよく、限定されるものではないが、広葉樹クラフトパルプで200〜600ml、針葉樹クラフトパルプで200〜600ml、機械パルプで50〜300ml、再生パルプで50〜400ml程度である。
本発明によれば、キャビテーションによって気泡を発生させ、これをパルプ懸濁液に接触させて処理することで、発生する微細気泡の崩壊衝撃力によって、パルプ繊維自体の嵩を損なわずに濾水度を調整でき、このパルプを用いて抄造した紙は、従来の機械力を用いた叩解により濾水度を調整したパルプを使用して抄造した紙に比較して、嵩高で密度が抑えられ、軽量でありながら紙力の低下が少なく、平滑性、透気抵抗度等にも優れるという効果を有する。また、嵩高すなわち繊維間結合が小さくなっていることにより、熱や湿度による繊維の伸縮が相互に影響しにくく、紙の寸法安定性に優れるものと考えられる。
本発明において、キャビテーションによって発生した気泡を接触させる対象パルプは、前記した木材または非木材繊維などを原料とするパルプであり、古紙を原料とし通常の脱墨処理を行った再生パルプ、あるいは、後述するキャビテーションによって発生した気泡を古紙パルプ懸濁液に接触させてパルプ繊維および灰分に付着している汚染物質を除去した再生パルプも、叩解処理の対象とすることができる。
化学パルプと機械パルプの場合、キャビテーションで発生した気泡によりパルプを叩解する場所は、パルプ化工程および調成工程のいかなる場所でも良いが、繊維状物質が解繊されてパルプとなった時点で適用することが好ましい。再生パルプの場合、キャビテーションで発生した気泡により叩解する場所は、脱墨工程後から調成工程の間である。
また、機械力による従来の叩解とキャビテーションによる叩解を組み合わせることで、2種の異なる機構によって叩解を行うため、パルプ繊維の叩解特性を制御し、より望ましい紙質を得ることができる。この場合、機械力による叩解とキャビテーションによる叩解の順序は問わない。
本発明で用いられる紙は、キャビテーションによって発生した気泡を、これらの原料パルプ懸濁液の少なくとも1種類に接触させて、所望の濾水度に調製したパルプを含有させた紙である。全ての種類のパルプを処理して抄紙することも可能である。
キャビテーションによって発生した気泡により所望の濾水度に調製したパルプの全パルプに対する配合率は特に限定は無いが、配合率が高いほど、嵩高であり、かつ強度や紙腰の低下が少ない紙が得られる。その観点から、5〜100固形分重量%が好ましく、10〜100固形分重量%がより好ましい。
[脱墨処理]
古紙を再生する工程において、キャビテーションによって発生した気泡を、古紙パルプ懸濁液に接触させて、パルプ繊維および灰分に付着している汚染物質を剥離した再生パルプの製造方法について、本出願人は既に出願している(国際公開WO 2005/12632号公報)。
本発明は紙の原料として、前記した各種古紙を使用できるが、特に夏場などに経時劣化した新聞古紙や更紙系雑誌、トナー印刷物などを含むオフィス古紙などを上記古紙と同時にあるいは別々に処理する場合に特に優れた効果を発揮する。さらに、上記古紙にラミネート加工された紙やUV樹脂インキなどで印刷された紙などの禁忌品が混入している場合に特に優れた効果を発揮する。禁忌品とは、古紙再生促進センターが定義(財団法人古紙再生促進センター編、古紙ハンドブック1999、p.4)するA類、B類全般を指す。オフィス古紙としては、古紙再生促進センターが定義(古紙ハンドブック1999、p.3)する上質系オフィス古紙全般を指すが、事業所および家庭から古紙または紙ゴミとして回収される古紙であれば、これらに限定するものではない。古紙に含まれるトナー以外のインキとしては公知の印刷インキ(日本印刷学会編、“印刷工学便覧”、技報堂、p.606、1983)、ノンインパクトプリンティングインキ(“最新・特殊機能インキ”、シーエムシー、p.1、1990)等が挙げられる。新聞や更紙系雑誌に用いられる非加熱の浸透乾燥方式のオフセットインキとしては公知の新聞・更紙用オフセットインキ(後藤朋之、日本印刷学会誌、38(5)、7、(2001)など)が挙げられるが、これらに限定するものではない。本発明は特にこのような複数のインキによって印刷された古紙を処理する場合に好適である。
前記の各種の古紙に含有されているパルプであれば、本発明の対象パルプとして使用することができる。また、含有されているパルプ繊維と灰分の比率については特に制限はない。灰分とは無機粒子全般を指し、紙の製造時に内添された填料、もしくは塗工された顔料等、紙を灰化した際に残存する物質であり、例えば、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、非晶質シリカ、二酸化チタン、硫酸カルシウム等が挙げられる。
古紙を再生する工程でキャビテーション気泡を発生させ、これをパルプ懸濁液に接触させてパルプ繊維および灰分に付着している汚染物質を剥離し、剥離した汚染物質を除去することにより、損傷の少ない高品質の再生パルプが得られるが、この汚染物質とは、パルプ繊維および灰分に付着している異物を指し、例えば、前記のインキに加えて、蛍光染料や一般の染料、塗料や天然または合成の高分子物質等の塗工層残渣、ラミネート等の加工層残渣、接着剤および粘着剤、サイズ剤等が挙げられる。更に紙を抄造する際に内添する歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤、内添サイズ剤、染料等の抄紙用内添薬剤等が挙げられる。この中でも、インキが主要な汚染物質である。
本発明では高濃度パルパー、ニーダー等の機械力を伴うインキ剥離工程と、フローテーションおよび/または洗浄法によるインキ除去工程からなる、古紙を再生するために用いられる脱墨工程のいかなる場所にもキャビテーション処理を適用できる。また、高濃度パルパー、ニーダー等の機械力を伴う従来のインキ剥離工程に代えて、キャビテーション処理を行っても良い。具体的には、以下の2通りの方法が挙げられる。
a)従来の機械力を伴うインキ剥離工程に代えて、キャビテーション処理を行う場合。この場合の脱墨工程は、次の構成となる。:キャビテーション処理+(フローテーションおよび/または洗浄法)
b)インキ剥離を従来の機械力とキャビテーションの組み合わせで行う場合。この場合の脱墨工程は、次の構成となる。:(機械力+キャビテーション処理)+(フローテーションおよび/または洗浄法)
機械力によってインキを剥離する装置としては、タブ式またはドラム式パルパーやニーダー、マイカプロセッサー、ディスパーザーなどやCarreらの文献(B. Carre, Y. Vernacand G. Galland, Pulp and Paper Canada, 99(9), 46 (1998))に示される各種離解、混錬、分散技術に基づく装置が挙げられる。特に、前記bのように、機械力によるインキ剥離装置とキャビテーション処理を組み合わせることで、2種の異なる機構によってインキ剥離を行うため、より作用効果が大きくなる。更に必要に応じて水酸化ナトリウム、珪酸ソーダ、その他のアルカリ薬品、脱墨剤、酸化性漂白剤、還元性漂白剤を加えることができる。用いるインキ剥離装置およびインキ除去装置、或いは処理条件については、特に制限はない。また、異物除去や高白色度化が必要ならば、上記脱墨工程に通常用いられている異物除去工程又は漂白工程などを組み入れることができる。
既存の古紙を再生する工程にキャビテーション処理を適用することにより、従来の脱墨技術では困難な、比較的低濃度、低温でのダートの剥離・微細化に効果を発揮する。従って、キャビテーション処理を用いることで、パルプを過度に脱水し高濃度化することなく高品質のパルプを製造でき、紙力や寸法安定性の低下のない紙を得ることができる。
また、キャビテーション処理ではパルプ繊維からインキを剥離するに際して、特に脱墨薬品を使用しなくともインキを剥離することができる。従来の脱墨工程で使用されるニーダーのような機械的インキ剥離方法では、パルプ繊維を高濃度で擦り合わせるため、インキの剥離と同時にパルプ繊維内部へのインキの擦り込みが生じるため、残存インキ量が減少しても白色度が向上しないという現象を生じるが、本発明による方法では、低濃度でインキの剥離・分散を促進するため、パルプ繊維内部への擦り込みが発生し難く、白色度の高いパルプが得られる。本発明では、積層シートがポスター等の用途に使用される場合、白さや光沢といった外観性が重視されるため、パルプひいては紙基材の白色度が高くなるほど望ましい。
本発明では、キャビテーションを発生する工程と、それ以降に続くフローテーションおよび/または洗浄からなるインキ除去工程を適宜組み合わせることで、剥離したインキ等が効果的に除去されることから、より白色度の高い高品質のパルプを得ることができる。更に、複数のインキ剥離工程とインキ除去工程と本発明を組み合わせることでより良い効果を得ることができる。フローテーション、洗浄装置としては、公知または新規の繊維から汚染物質の分離を目的としたいかなる装置を用いてもよい。
本発明で用いられる紙において、キャビテーション処理によりパルプ繊維および灰分に付着している汚染物質を剥離・除去した再生パルプの配合率は、全パルプ原料中、50〜100固形分重量%が好ましい。50固形分重量%未満では、得られる紙の白色度の向上効果が十分ではなくなる。他の原料パルプとしては、化学パルプ(針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)または未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP))または未晒クラフトパルプ(LUKP)等)、機械パルプ(グラウンドウッドパルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等)、非木材繊維を、紙の要求される品質に応じて適宜配合することができる。
本発明によれば、古紙を再生する工程において、キャビテーションによって発生した気泡を古紙パルプ懸濁液に接触させて、パルプ繊維および灰分に付着している汚染物質を剥離・除去した再生パルプとすることにより、酸性抄紙法、中性抄紙法、アルカリ性抄紙法の別なく、従来技術で得られる再生パルプを含有させた紙に比較して、高白色度で残インキが少ない紙が得られるという効果がある。
[作用]
本発明において、パルプ繊維に対して内部フィブリル化が抑制され外部フィブリル化が促進される理由、また、パルプ繊維表面に局所的な負荷が導入されインキが剥離される理由としては、次のような理由が考えられる。
キャビテーションにより生じる微細な気泡の崩壊時には、前述したように数μmオーダーの局所的な領域に強力なエネルギーが発生する。従って、微細な気泡または気泡雲が繊維表面あるいは近傍で崩壊する場合、その衝撃力は直接あるいは液体を介してパルプ繊維表面に到達し、パルプ繊維を構成するセルロースの非晶領域に吸収されることにより、外部フィブリル化とパルプ繊維の膨潤を促すと考えられる。また、同時に、パルプ繊維表面にインキ等の異物が付着している場合は、異物を剥離させるものと考えられる。気泡はパルプ繊維に対して非常に小さく、その衝撃力はパルプ繊維全体を損傷させる程大きくない。更に、パルプ繊維は液体中に分散しており固定されていないため、気泡雲の連続崩壊のような極めて大きな衝撃力であっても、過剰のエネルギーをパルプ繊維自体の運動エネルギーとして吸収する。従って、本発明による方法は、機械的作用による叩解処理方法やインキ剥離方法に比べてパルプ繊維の短小化などの損傷を抑えることができ、内部フィブリル化を抑えることができると考えられる。
3.紙の製造方法
[紙]
本発明の積層シートの基材として用いられる紙は、上記のキャビテーション処理されたパルプまたは再生パルプを用いて製造される。
本発明で用いられる紙は、抄紙pHが酸性領域で抄紙される酸性紙、抄紙pHが疑似中性領域で抄紙される疑似中性紙、抄紙pHが中性領域で抄紙される中性紙、抄紙pHがアルカリ性領域で抄紙されるアルカリ性紙のいずれでもよい。また、酸性領域で抄紙された酸性原紙の表面にアルカリ性薬剤を塗布した中性紙も可能である。
本発明で用いられる紙は填料無配合でも、配合しても良いが、不透明度を高める観点から、填料を配合することが好ましい。填料を配合する場合、填料としては酸性抄紙、中性抄紙あるいはアルカリ性抄紙において一般に使用されている填料が使用でき、特に限定されるものではない。例えば、疑似中性抄紙、中性抄紙、アルカリ性抄紙では、クレー、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料が単独でまたは適宜2種類以上を組み合わせて使用される。また酸性抄紙では、前記中性抄紙で使用する填料から、酸溶解性のものを除いた填料が使用され、その単独または適宜2種類以上を組み合わせて使用される。尚、酸性抄紙では非晶質シリカや二酸化チタンが従来から多用され、本発明の紙でもこれらの填料を使用することが出来る。
本発明で用いられる紙の製造において、各種の内添サイズ剤を配合しても良い。また、従来から使用されている各種のノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留まり向上剤、濾水度向上剤、紙力向上剤等の製紙用内添助剤が必要に応じて適宜選択して使用される。
また、例えば、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダや、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム等の塩基性アルミニウム化合物や、水に易分解性のアルミナゾル等の水溶性アルミニウム化合物、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等の多価金属化合物、シリカゾル等が内添されてもよい。
その他製紙用助剤として各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド、ポリアミン樹脂、ポリアミン、ポリエチレンイミン、植物ガム、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー粒子分散物およびこれらの誘導体あるいは変性物等の各種化合物を使用できる。
更に、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添剤を用途に応じて適宜添加することもできる。
抄紙機の型式は特に限定は無く、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網式抄紙機、ギャップフォーマー、ハイブリッドフォーマー(オントップフォーマー)等の公用の抄紙機で抄紙することができる。プレス線圧は通常の操業範囲内で用いられる。キャレンダーは通常の操業範囲内の線圧で用いられるが、紙を嵩高にする観点から、紙の平滑性を維持できる範囲でなるべく低線圧またはバイパスが好ましく、また、通常のキャレンダーよりもソフトキャレンダーが好ましい。
本発明で用いられる紙は、全く塗工処理をしていないか、あるいは顔料を含まない表面処理剤を塗工してもよい。また、表面強度やサイズ性の向上の目的で、水溶性高分子を主成分とする表面処理剤を塗工してもよい。水溶性高分子としては、澱粉、酸化澱粉、加工澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の表面処理剤として通常使用されるものを単独、あるいはこれらの混合物を使用することができる。また、表面処理剤の中には、水溶性高分子の他に耐水化、表面強度向上を目的とした紙力増強剤やサイズ性付与を目的とした外添サイズ剤を添加することができる。表面処理剤の塗布量としては、表面処理剤は、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ブレードメタリングコーター、ロッドメタリングコーター等の塗工機によって塗布することができるが、ゲートロールコーターのような被膜転写方式の塗工機を使用する方が表面処理剤が紙表面に留まり、密度の増加が少なくなるので好ましい。表面処理剤の塗布量としては、片面当たり0.1g/m以上3g/m以下が好ましい。
また、本発明で用いられる紙は、1層の紙の他、2層以上の多層紙であってもよい。多層紙において、キャビテーション処理したパルプは少なくとも1層に存在すればよい。
本発明で用いられる紙は、嵩高すなわち低密度化していることにより空隙が増え、厚さは同じでも軽量化されている。例えば、電子写真印刷方式の場合、熱ロールにより加熱された熱は、排出時に表面から放熱される分と紙の内部に蓄熱される分とがある。印刷後の紙表面温度は、放熱により急激に低下するが、高速で大量に印刷された場合には、内部に蓄えられた熱が表面側に移行して、表面温度を再上昇させることとなり、トナー裏移り(トナーブロッキングと呼ばれることもある。)が発生する危険が高くなる。さらに、熱可塑性樹脂層は紙に比べて放熱が遅いので、紙内部に熱が多く蓄えられることになり、一層トナー裏移りの危険が高くなっている。これに対し、嵩高な紙の場合は、存在している多くの空隙による断熱性能と低密度によって蓄熱性能が小さいため、熱ロールで加熱された熱は表面から放熱されると共に、嵩高性による断熱作用と低蓄熱力により、内部に蓄熱することなく記録シートが堆積される。その結果、トナー裏移りの発生が防止されることとなる。また、堆積後には、嵩高紙の中央部が断熱層となっているので、他面側から熱が伝導することが抑えられて、他面側から印字側への熱の影響を抑えることができる。このように、基材として嵩高な紙を用いることにより、放熱性が悪い熱可塑性樹脂層を設けた積層シートであっても温度上昇が抑えられ、結果として用紙の温度上昇も抑えられて、トナー裏移りが良化すると考えられる。
[塗工紙]
さらに、本発明の積層シートの基材としては、上記で得られた紙を原紙として、その上に顔料と接着剤とを含む塗工層を設けた塗工紙も使用することができる。
積層シートの基材となる紙は、植物繊維等が複雑に絡み合って構成しているため、その表面には微小な凹凸が無数に存在する。従って、後述するように押出しラミネーション法や共押出しラミネーション法によりこの基材に熱可塑性樹脂を積層する場合、基材表面に薄い膜状に押出された溶融樹脂は、その表面の凹凸に追従して積層されることとなる。このような凹凸は、基材と溶融樹脂とを押圧して圧着する際に、溶融樹脂と接し、これを圧するクーリングロールとして、周面を高平滑とした鏡面仕上げのものを用い、この表面性状を樹脂表面に転写することで凸部についてはある程度矯正されるが、それでもなお矯正しきれない凹部が残り、これが積層シート表面の微小な窪みとなって光沢性や美麗性など外観を損なう原因となる。これに対し、本発明では、キャビテーション処理されたパルプを含有する紙とすることにより、平滑性の高い紙基材が得られるが、さらに高光沢な積層シートを得る場合には、より平滑な塗工紙を用いることが好ましい。塗工紙の種類としてはアート紙、微塗工紙、キャストコート紙、白板紙等が挙げられるが、特にキャストコート紙が好ましい。なお、ここでいう光沢性とは、ISO (8254−1)75度光沢度が80%以上であり、美麗性とは、JIS K-7105に準じた測定法による写像性が50%以上であることをいう。
塗工層に用いる顔料としては、塗工紙用に従来から用いられている、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料、プラスチックピグメントなどの有機顔料であり、これらの顔料は必要に応じて1種以上を適宜選択して使用することが出来る。
塗工層に用いる接着剤(バインダー)は、塗工紙用に従来から用いられている、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類;酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等の通常の塗工紙用接着剤1種類以上を適宜選択して使用される。
これらの接着剤は顔料100重量部当たり5〜50重量部程度の範囲で使用される。表面強度をより良好にするためには、スチレン・ブタジエン系の共重合体ラテックスを10〜25重量部含有することが好ましい。また、柔軟性の点から澱粉は5重量部以下が好ましい。また、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤等、通常の塗工紙用顔料に配合される各種助剤が適宜使用される。
塗工層は、原紙の片面あるいは両面に、単層はあるいは二層以上設けてもよい。塗工層のトータルの塗工量は、好ましくは片面当たり5〜30g/m、より好ましくは8〜20g/mである。また、アンダー塗工層を設ける場合の塗工量は、好ましくは2〜8g/mである。
塗工組成物を原紙に塗工するための方法としては、2ロールサイズプレスコーターや、ゲートロールコーター、およびブレードメタリングサイズプレスコーター、およびロッドメタリングサイズプレスコーター、シムサイザー等のフィルム転写型ロールコーターや、フラデッドニップ/ブレードコーター、ジェットファウンテン/ブレードコーター、ショートドウェルタイムアプリケート式コーターの他、ブレードの替わりにグルーブドロッド、プレーンロッド等を用いたロッドメタリングコーターや、カーテンコーター、ダイコーター等の公知のコーターにより塗工することができる。アンダー塗工液を塗工する場合、原紙に適度にしみこませるために、ゲートロールコーターなどのフィルムトランスファー方式が好ましい。
また、平滑性向上および印刷品質向上等のため、上述の手法で得られた塗工紙を、表面処理することができる。表面処理方法としては弾性ロールにコットンロールを用いたスーパーカレンダーや、弾性ロールに合成樹脂ロールを用いたソフトニップカレンダー等、公知の表面処理装置を用いることができる。
また特に、キャストコート紙は、湿潤状態にあるコート層を加熱した鏡面の金属ドラムに押し当てて乾燥させ、平滑な表面を得た紙であり、表面平滑性を向上させることができる基材である。キャストコート紙は、次のような製法により製造することができる。塗工液が塗工された紙は、乾燥設備を通らず、塗工面側をキャストドラムに押し当てられる。キャストドラムに押し当てられると、塗工液中の水分は紙の裏側から蒸発する。一方、キャストドラムは鏡面ドラムからなっており、キャストドラムに押し当てられた側の面(塗工面)は、高い光沢を有するようになる。このようにして製造される直接法の他に塗工面の塗液を凝固液でゲル化させた後にキャストドラムに押し当てる凝固法、一度乾燥させた塗工面を再度湿潤させた後にキャストドラムに押し当てるリウェット法があり、いずれの製法で得られたキャストコート紙でも本発明の基材として使用可能である。
中でも、顔料として0.4〜4.2μmの範囲にある粒子が体積基準で65%以上含まれる粒度分布を有するカオリンと接着剤を主成分とするコート層用の塗料組成物を用い、かつ、湿潤状態にあるコート層を加熱された鏡面仕上げ面に圧接、乾燥して仕上げる、リウエット法により製造されるキャストコート紙とすると、光沢性や美麗性に優れた積層シートが得られ望ましい。
前記カオリンは無機顔料100重量部当たり50重量部以上、好ましくは60重量部以上、さらに好ましくは70重量部以上含有される。粒度分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定器(マルバーン(株)製、機器名:マスターサイザーS)を用いて、粒子の体積粒度分布を測定し、0.4〜4.2μmの範囲に該当する粒子のパーセントを算出したものである。また、さらにプラスチックピグメントを含有することが好ましく、含有量は好ましくは無機顔料100重量部に対して5〜50重量部であり、より好ましくは10〜45重量部、更に好ましくは20〜45重量部含有することである。前記プラスチックピグメントは、密実型、中空型、又は、コア/シェル構造を持つプラスチックピグメント等を必要に応じて、単独、又は2種類以上混合して使用することができる。接着剤(バインダー)は、特に限定されるものではなく、コート紙用に従来から用いられているものが適宜使用される。接着剤は無機顔料100重量部あたり5〜50重量部、より好ましくは5〜30重量部程度の範囲で使用される。その他、必要に応じて前記以外のカオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト等の無機顔料や各種添加剤を含有することができる。
4.熱可塑性樹脂層
本発明の積層シートは、上記のキャビテーション処理されたパルプまたは再生パルプを含有する紙、またはこの紙を原紙としてその上に塗工層を設けた塗工紙を基材として、基材の片面または両面に熱可塑性樹脂層を有するものである。
熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状密度ポリエチレン(LLDPE)ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレンといったポリオレフィン系樹脂を始めとし、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等を使用することができる。これら熱可塑性樹脂は単一の樹脂を単層で使用しても、複数の樹脂を複層で使用しても良い。また、異なる樹脂を混合して用いてもよい。以下、詳しく説明する。
[最外層]
本発明の積層シートを電子写真印刷方式に用いる場合には、その機構上、トナーを用紙に加熱融着させることから熱可塑性樹脂が変形することを防ぐため、少なくとも最表層が融点180℃以上の熱可塑性樹脂からなることが好ましい。このような高融点の熱可塑性樹脂層であることにより、熱ロールへの融着を防止でき、また記録の前後での表面性悪化を防止することができる。融点が180℃以上の熱可塑性樹脂としては、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル)等が好ましい。中でもポリメチルペンテンが好ましい。ポリメチルペンテンは、4-メチルペンテン-1を主原料とする、結晶性のオレフィン系ポリマーであり、融点が220〜240℃で耐熱性に優れた樹脂である。
[中間層]
上記の最外層を形成する熱可塑性樹脂と基材、あるいは熱可塑性樹脂層を2以上設けたとき樹脂層間の密着性が不良な場合には、基材に予め接着層を塗工又は積層することも可能であり、また最外層あるいは他の層に使用する熱可塑性樹脂と接着性樹脂を共押出しラミネーションすることも可能である。接着性樹脂も熱可塑性樹脂の一種であり、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等が使用される。
特に、最外層に融点が180℃以上の熱可塑性樹脂を用いる場合には、その直下に、基材あるいは最外層とその下に積層される熱可塑性樹脂層等との密着性を高めるために、中間層として接着性を有する熱可塑性樹脂を積層することが好ましい。中間層としては、最外層および基材あるいは最外層の下に位置する熱可塑性樹脂層の双方への接着性が良好なものを選択する。特に上記のポリメチルペンテン樹脂は、本来離型性を有するものであるため、このようなポリメチルペンテン樹脂に対しても強固な接着性を発揮する必要がある。なお、ポリメチルペンテン樹脂は、上質紙との密着性は良いが、コート紙や他の樹脂層とは密着性が悪いので、このような接着性樹脂からなる層を介在させることが好ましい。
接着性を有する樹脂としては、変性ポリオレフィン、アイオノマー、あるいはこれらと融点180℃以上の熱可塑性樹脂との混合物からなる樹脂組成物等を挙げることができる。また、同じ種類あるいは異なる種類を選び1層又は2層以上積層してもよい。
変性ポリオレフィンとしては、炭素原子数2〜20のα-オレフィンの単独重合体あるいは共重合体を極性基およびエチレン性二重結合を有するモノマーでグラフト変性した変性物を使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明では特に、ポリメチルペンテン樹脂との接着性が良好なことから、無水マレイン酸変性ポリエチレンが好ましく用いられる。
アイオノマーは、イオン含有高分子で、特に金属イオンあるいは第4級アンモニウムにより部分的にあるいは完全に中和された高分子であり、特にエチレン系高分子鎖に少量の(メタ)アクリル酸をグラフトし、その(メタ)アクリル酸の一部を、Na+、K+、Zn++、Mg++などで中和したものが好ましく使用できる。中でもZnを有すると光沢性が良好で好ましい。
また、上記の変性ポリオレフィン又はアイオノマーと、融点180℃以上の熱可塑性樹脂との混合物からなる樹脂組成物としては、変性ポリオレフィンと融点180℃以上の熱可塑性樹脂、又はアイオノマーと融点180℃以上の熱可塑性樹脂とを共押出ししたり、混合後に押出しして使用することができる。
[基材側層]
熱可塑性樹脂層と基材との密着性を高めるために、基材に接する層として、シングルサイト系触媒で合成された直鎖状低密度ポリエチレン(SS−LLDPE)層を設けることが好ましい。特に、基材としてコート紙を用いた場合に有効である。SS−LLDPEは、活性点が均一なシングルサイト系触媒により合成されるため、汎用されるチーグラー触媒を用いて合成された直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と比べ、シャープな分子量分布を示す。シングルサイト系触媒の代表的なものとしては、メタロセン系触媒を挙げることができる。これは、2個のシクロペンタジエン環に、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン又はタングステン等の遷移金属原子が、サンドイッチ状に挟まれた構造を有する触媒である。なお、シングルサイト系触媒を用いたLLDPEの合成は、気相法、高圧法、溶液法のいずれの方法で行っても構わない。
[その他の熱可塑性樹脂層]
さらに本発明では、上記した熱可塑性樹脂層の他に、熱可塑性樹脂層を適宜設けてもよい。このような層を形成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン等、ラミネート加工可能な樹脂を挙げることができる。
[添加剤]
各熱可塑性樹脂層には、不透明性などを持たせるため、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無機填料を配合させることが出来る。ただし、無機填料の配合は表面性を悪化させる原因にもなるため、配合量は25重量%以下、好ましくは15重量%以下が好ましい。さらに、本発明の目的を害さない限り、帯電防止剤、対ブロッキング剤(アクリルビーズ、ガラスビーズ、シリカ)等の添加剤を添加してもよい。
[積層方法]
本発明の積層シートは、これらの樹脂を、基材上に押出しラミネーション、共押出しラミネーション、ドライラミネーション、ウェットラミネーション等、公知の方法を用いて積層することにより製造できる。
熱可塑性樹脂層の厚みとしては、樹脂層全体として片面5μm以上好ましくは10〜40μm程度が好ましい。これら樹脂層の厚みが薄すぎる場合、基材との密着性やラミネート加工適性が得られにくく、一方、樹脂層の厚みが大きすぎる場合、コストが上昇するのみならず、基材の厚みに対して樹脂層が厚くなりすぎ、折れ性やカッティング性(引き裂き性)が悪化する。電子写真印刷方式に用いる場合は、最外層が2〜30μm、好ましくは10〜20μmである。最外層が薄すぎると、熱可塑性樹脂層が1層の場合は基材との接着性が不足したり、2層以上の場合は耐熱性が不足し、熱ロール部分で紙詰まりが発生した際に熱ロールに融着するトラブルが発生しやすくなる。一方、厚さが30μm程度あれば本発明の効果は十分に達成できるため、これを超える厚さとしてもよいが経済的に引き合わない。
[他面の構成]
本発明では、シートの一方の表面が熱可塑性樹脂層であれば、シートの他方は基材が露出していても、熱可塑性樹脂層が積層されていても、どちらでも構わない。シートの両方の最外層として熱可塑性樹脂層を有する場合には、これらの層が、それぞれ異なる種類・組成の熱可塑性樹脂で形成されていても構わない。かかる基材と最外層の熱可塑性樹脂層との間に他の層が存在していても構わない。また、熱可塑性樹脂層にコロナ放電処理等の表面処理を施すこともできる。電子写真印刷方式に用いる場合、積層シートはその記録面側を熱ロールに接触させながら熱ロールとニップロールとの間を通過するため、ニップロールもまた熱ロールの影響を受けて同程度に高温になっている。そのため、非記録面側も同様に、最外層が融点180℃以上の熱可塑性樹脂からなることが望ましい。
5.インキ受理層、トナー定着層
本発明においては、上記積層シートの少なくとも一方の熱可塑性樹脂層表面に、無機顔料とバインダーを主成分とするインキ受理層を設けることで、インキ乾燥性を向上させることができる。また、電子写真印刷方式に用いる場合、バインダーを主成分とするトナー定着層を設けることで、トナー定着性を向上させることができる。
[インキ受理層]
本発明において用いられる無機顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、カオリン、焼成カオリン、シリカ等があるが、これらに限定されるものではない。
バインダーとしては、塗工紙分野等で一般的に使用されている種類のものを適宜使用できる。例えば、スチレン重合体、スチレン−ブタジエン系共重合体、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などやその誘導体等、また、ソープフリーで製造されたアクリル系、スチレン−アクリル系の重合体または共重合体等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
無機顔料とバインダーとの混合比率は、バインダーの比率が多すぎると、インキ乾燥性の悪化やインキ受理層がベタつく原因となり、また、バインダーの比率が少なすぎると、インキ受理層の強度が弱くなり粉落ちなどの原因となることがあるため、95:5〜5:95が好ましい。特に好ましくは、80:20〜20:80である。
上記無機顔料とバインダー、そして必要に応じて帯電防止剤、滑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を水系で分散させ、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、ダイコーター等を用いて、熱可塑性樹脂層の表面に塗工することにより設けることができる。塗工量は、インキ乾燥性と経済性の観点から0.3〜10g/m(乾燥重量、以下同じ。)が好ましい。
[トナー定着層]
バインダーは、トナー定着性や筆記性に加え積層されている熱可塑性樹脂層との接着性等を考慮して選択する。例えば、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、各種アクリル酸、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等をモノマー成分とする単独重合体、共重合体および/又はこれらの変性物を、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等と混合して、あるいは混合せずに用いることができる。
特に、80℃以上のガラス転移温度を有する親水性高分子物質(A)と、50℃以下のガラス転移温度を有する親水性高分子物質(B)など、Tgの異なる2種類の親水性高分子物質が好ましく用いられる。80℃は印刷後排出時のシート温度に近く、50℃は塗工層の成膜性を良好に保てる温度である。より好ましくは、(A)は印刷シートの排出温度より高い90℃以上、(B)は成膜温度より低い40℃以下が好ましい。この場合、塗工層の造膜時には、低Tg親水性高分子物質の中に、高Tg親水性高分子物質が溶融せずに粒子形状を維持した状態で存在する、いわゆる海島構造が形成されて存在し、LBP印刷時などには200℃近くのロールでトナーを定着させるため、高Tg親水性高分子物質も溶融状態となり、塗工層とトナーとの密着性が非常に高まって良好なトナー定着性が得られる。トナー定着後、高Tg親水性高分子物質は速やかにガラス状態になるので、その粒子間空隙に入り込んだトナーによるアンカー効果によっても、トナー定着性が向上すると考えられる。同様に、トナー定着後にガラス状態となった高Tg親水性高分子物質の存在は、定着ロール等の高温部の搬送ロールからの剥離性が高く、搬送性も向上する。
親水性の高分子物質は、親水性官能基を有するエマルジョンであることが好ましい。ここでいう親水性とは、水、又は水と少量の有機溶剤から成る媒体中で樹脂が分散又は溶解し、安定化していることを意味する。これら樹脂は、塗工液中では粒子となって分散している、又は溶解しているが、塗工し乾燥した際に造膜し塗工層を形成する。
親水性高分子物質としては、スチレン、ブタジエン、各種アクリル酸、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化ビニル等をモノマー成分とする単独重合体、共重合体および/又はこれらの変性物と、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を混合して、あるいは混合せず各々単独で使用することが挙げられる。これらの親水性高分子物質は、例えば乳化重合やソープフリー乳化重合、懸濁重合といった従来公知の重合方法により製造され、重量平均分子量は10万以上の高分子であることが望ましい。中でも、アクリル系ポリマーがトナー定着性の理由から好ましい。アクリル系ポリマーとしては、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。(A)と(B)ともアクリル系ポリマーであることが望ましく、特に、80℃以上のガラス転移温度を有するコア部と50℃以下のガラス転移温度を有するシェル部とからなる、コアシェル構造を有するアクリル系ポリマーは、1つの物質で2つの性能を発揮するため、作業性も良好となり好ましく用いられる。このようなコアシェル構造を有するアクリル系ポリマーは、例えば、特開2001−323004号公報等に記載された方法によって製造される。この場合、シェル部は、コアを被覆する膜として形成されているのではなく、コアの周囲に保護コロイドのように存在するものとなっていると考えられる。
親水性高分子物質の使用割合としては、(A)/(B)=80/20〜30/70が好ましい。(A)が多すぎると成膜性、トナー定着性に劣り、(B)が多すぎると搬送性が悪くなる。従って、両者のバランスが重要であり、より好ましくは、(A)/(B)=65/35〜45/55である。
トナー定着層には、用紙搬送性の点から顔料は含有しないことが望ましいが、光沢を抑えたマットな面調を付与する場合など、前記した無機顔料を使用することができる。但し、無機顔料を添加するとかぶり(白紙部分へトナーが飛散し地汚れを起こした状態)が発生しやすくなるため、無機顔料の平均粒径は2.5μm以下とし、表面平滑度が200秒以上、表面抵抗率が5×10〜1×1011となるようにトナー定着層を設けることにより、トナー定着性、かぶり現象の抑制、鉛筆およびボールペン等での筆記性が良好な積層シートを得ることができる。無機填料とバインダーとの配合比率は、筆記性の観点から8:2〜2:8が好ましい。バインダーの配合比率が少ないと効果が小さく、バインダーの配合比率が多すぎると、無機填料の多くがバインダー中に埋没してその機能を果たさなくなる。
また、トナー定着層には、平均分子量60〜90万の高分子シリコーン、中でもポリアルキルシロキサンを添加することにより、トナーの定着性、熱ロールとの剥離性等を高めることができる。添加量は、バインダーに対し固形分割合で5重量%以下程度である。
トナー定着層の塗工量は特に制限されないが、上記の各種コーター等によって、0.5〜7.5g/m(乾燥重量)、好ましくは1〜5g/m(乾燥重量)塗工される。
(実施例)
以下に具体例を挙げて本発明をより詳細に示すが、本発明はかかる例に限定されるものではない。また、特にことわらない限り、部または%は重量部または重量%を示す。
また、本発明におけるキャビテーション処理に関し、図1に基づいて説明する。図1は、キャビテーション噴流式洗浄装置の概略図を示し、試料タンク1内には、図示しないパルプ懸濁液が収容され、試料タンク1には温度センサー12とミキサー13が挿入されている。試料タンク1のパルプ懸濁液はプランジャポンプ4を介した所定の配管によりキャビテーション噴流セル3に噴射液として導入される。キャビテーション噴流セル3の下部にはノズル2が設けられ、より詳細には試料タンク1のパルプ懸濁液はノズル2から噴流セル3内に噴射される。さらに、試料タンク1の側部から噴流セル3に向かう配管に給水弁9、循環弁10が設けられ、試料タンク1内のパルプ懸濁液を噴流セル3内に被噴射液として供給する。
試料タンク1の側部からノズル2に向かう別の配管には、上流側圧力制御弁5が介装されている。一方、噴流セル3の上部から試料タンク1に向かう別の配管には下流側圧力制御弁6が介装され、各弁5,6を調整することで、ノズル2へのパルプ懸濁液の噴射圧を調整可能になっている。又、ノズル2の入側には上流側圧力計7が設けられ、噴流セル3の上部には下流側圧力計8が設けられている。なお、噴流セル3の下部には排水弁11が設けられている。
<A.キャビテーション処理した化学パルプを含有する紙の製造>
[製造例1〜4]
市販広葉樹漂白クラフトパルプシートを低濃度パルパーで離解し、原料A(濾水度CSF666ml)とした。原料Aを濃度1.1重量%に調整後、図1に示されるキャビテーション噴流式洗浄装置(ノズル径1.5mm)を用いて、噴射液の圧力(上流側圧力)を7MPa(噴流の流速70m/秒)、被噴射容器内の圧力(下流側圧力)を0.3MPaとして、処理時間を変化させて処理し、濾水度を調整した。なお、噴流セル3内に噴射される噴射液および被噴射液として上記した濃度1.1重量%のパルプ懸濁液を使用し、キャビテーション処理した。
処理後のパルプについて、保水度、およびカナダ標準濾水度(CSF)を測定した。結果を表1に示す。
・保水度:J.TAPPI No.26に従った。
・カナダ標準濾水度(CSF):JIS P 8121:1995に従った。
続いて、処理後のパルプを用いてJIS P 8209に基づいて手抄きシートを作製した。手抄きシートの厚さ、坪量を下記の方法で測定し、これを元に密度および嵩を算出した。さらに、裂断長および引張破断伸び、比引裂強さ、比破裂強さ、白色度および色相、不透明度、比散乱係数、吸収係数を下記の方法で測定した。結果を表2〜3に示す。
・厚さ:JIS P 8118:1998に従った。
・坪量:JIS P 8124:1998(ISO 536:1995)に従った。
・密度および嵩:手抄きシートの厚さ、坪量の測定値より算出した。
・裂断長および引張破断伸び:JIS P 8113:1998に従った。
・比引裂強さ:JIS P 8116:2000に従った。
・比破裂強さ:JIS P 8112:1994に従った。
・白色度および色相:JIS P 8148に準じて、色差計(村上色彩製)で測定した。
・不透明度:JIS P 8149:2000に従った。
・比散乱係数、吸収係数:TAPPI T425om-91に準拠して色差計(村上色彩製)で測定した。
[比較製造例1〜5]
原料Aについて、PFIミルを用いて、濃度10%、クリアランス0.2mmで、カウント数を変化させて叩解し、濾水度を調整した。叩解後のパルプについて保水度、カナダ標準濾水度を測定した結果を表1に示す。さらに、製造例1と同様にして手抄きシートを作成し、同様の項目について測定を行った。結果を表2〜3に示す。
表1に示されるように、ほぼ同一濾水度で比較すると、製造例は比較製造例に比べて保水度が低くなっていることがわかる。保水度は内部フィブリル化の指標として使うことが可能であり、同一濾水度で保水度が低いということは、外部フィブリル化が進んでいることを示唆している。
また、表2に示されるように、製造例は未処理(比較製造例1)に対して、密度の上昇が小さく裂断長、比引裂、比破裂を向上することができた。機械的な叩解処理である比較製造例2〜5では、紙力を向上できるものの著しく密度が上昇していた。
また、表3に示されるように、ほぼ同一濾水度の製造例4と比較製造例2では、製造例の方が白色度、不透明度が高めとなった。
従って、本発明では、外部フィブリル化を促進することでパルプ濾水度を低下させた、嵩の低下の少ないパルプを含有する紙が得られているといえる。
<B.キャビテーション処理した再生パルプを含有する紙の製造>
[製造例5〜7]
新聞古紙、チラシ古紙、コート系雑誌古紙、および更紙系雑誌古紙を40/30/15/15の重量比で配合された古紙に対して、水酸化ナトリウムを対パルプ1.0重量%となるように加え、水でパルプ濃度15重量%に調整した後、パルパーを用いて40℃で、6分間離解し原料Bとした。原料Bを濃度1.1重量%に調整後、図1に示されるキャビテーション噴流式洗浄装置(ノズル径1.5mm)を用いて、噴射液の圧力(上流側圧力)を7MPa(噴流の流速70m/秒)、被噴射容器内の圧力(下流側圧力)を0.3MPaとして、処理時間を変化させて処理した。なお、噴流セル3内に噴射される噴射液および被噴射液として上記した濃度1.1重量%のパルプ懸濁液を使用しキャビテーション処理した。
処理後のパルプについて、カナダ標準濾水度(CSF)を測定した。結果を表4に示す。
続いて、処理後のパルプを用いて製造例1と同様にして手抄きシートを作製し、比破裂強さを除く同様の項目、さらにクラークこわさについて測定を行った。結果を表5、6に示す。
・クラークこわさ:JIS P 8143:1996に従った。
[比較製造例6〜11]
原料Bについて、PFIミルを用いて、濃度10%、クリアランス0.2mmで、カウント数を変化させて叩解し、濾水度を調整した。叩解後のパルプについてカナダ標準濾水度を測定した。結果を表4に示す。さらに、製造例5と同様にして手抄きシート紙を作成し、同様の項目について測定を行った。結果を表5、6に示す。
表4、5に示されるように、ほぼ同一の濾水度で比較すると、製造例は比較製造例に比べて極めて低密度で嵩高であった。未処理(比較製造例6)に比べて紙力が向上しており、機械的処理(比較製造例7〜11)に比べて比引裂が向上していた。さらにクラークこわさが大きくなっており、剛度の高いシートとなっていた。
また、表6に示されるように、製造例では未処理(比較製造例6)、および、機械的処理(比較製造例7〜11)に比べて白色度が高くなっていた。一般に再生パルプの製造において、インキの存在下で機械的な脱墨や叩解・混練処理を行うと、インキの微粒子が繊維のルーメンや細孔に擦り込まれ白色度が低下する、いわゆるインキの擦り込み現象が知られている。製造例は白色度が高くなっていることから、インキの擦り込みを生じさせずに濾水度が低下したことがわかる。
従って、本発明では、インキの擦り込みを生じず、また、嵩の低下の少ないパルプを含有する紙が得られているといえる。
<C.再生パルプをキャビテーション処理したパルプを含有する紙の製造>
[製造例8〜10]
新聞系の完成再生パルプを原料Cとして、パルプ濃度3.6重量%に調整した後、製造例1と同様にキャビテーション噴流式洗浄装置を用いて、噴射液の圧力(上流側圧力)を7MPa(噴流の流速60m/秒)、被噴射容器内の圧力(下流側圧力)を0.1MPaとして、処理時間を変化させて処理し、濾水度を調整した。なお、噴流セル3内に噴射される噴射液および被噴射液として上記した濃度3.6重量%のパルプ懸濁液を使用しキャビテーション処理した。
処理後のパルプについて、カナダ標準濾水度、ファイバーラボ(メッツォ オートメーション社製)にて繊維長および繊維のカールを測定した。結果を表7に示す。
続いて、処理後のパルプを用いて製造例1と同様にして手抄きシートを作成し、製造例1と同様の項目、さらに平滑度、透気抵抗度、純曲げこわさを下記に従って測定した。結果を表8、9に示す。
また、手抄きシート上の夾雑物を画像解析装置(商品名:スペックスキャン2000、アポジーテクノロジー社製)を用いて測定し、φ100μmを超えるダート、およびφ250μmを超えるダートの各々の画分の総面積で求めた。結果を表7に示す。
・平滑度、透気抵抗度:Japan TAAPI 紙パルプ試験方法 No.5-2:2000に従い、王研式平滑度透気度試験器により測定した。
・純曲げこわさ:純曲げ特性試験器(商品名:JTC−911BT、エスエムテー社製)により、10cm×10cmに裁断した試験片について測定した。なお、純曲げこわさとは、クラークこわさが紙を自重で垂れ曲がらせて測定するのに対し、純曲げこわさは紙をある一定の曲率(カーブ)で曲げて測定されるものであり、いずれも値が大きいほど剛度が高いことを示す。
[比較製造例12〜15]
原料Cについて、PFIミルを用いて、濃度10%、クリアランス0.2mmで、カウント数を変化させて叩解し、濾水度を調整した。叩解後のパルプについて製造例8と同様の項目について測定を行った。結果を表7に示す。また、製造例1と同様にして手抄きシートを作成し、製造例8と同様の項目について測定を行った。結果を表8、9に示す。
表7に示されるように、製造例は比較製造例に比べて、ダート面積が減少したが、繊維の短小化が少なく、カールも増加せず、パルプ繊維の損傷が少なかった。また、表8、9に示されるように、製造例は比較製造例に比べて紙力が向上し、同時に平滑度、透気抵抗度も向上した。
<D.積層シートの作製>
上記の製造例および比較製造例で得られたシートを基材として、以下のように積層シートを作製した。
[実施例1、2]
予め溶融したポリプロピレン(MFR25g/10分、密度0.91g/cm)90重量部に酸化チタン10重量部を添加混合しておき、この酸化チタン含有ポリプロピレンと酸化チタン不含のポリプロピレン(ポリプロピレンのMFRおよび密度は、特に示さない限り、上記に同じ。)とを、基材として製造例5、10で得られたシートの両面に、酸化チタン不含ポリプロピレンが上質紙側に位置するように、Tダイを用いて押出温度290℃にて共押出しラミネートを行い、鏡面仕上げのクーリングロールで圧着して積層シートを作成し、次いで、この積層シートの両面にコロナ放電処理を行った。なお、このとき積層シートの両面に積層された酸化チタン含有ポリプロピレン層と酸化チタン不含ポリプロピレン層の厚さは、それぞれ10μmであった。
[比較例1、2]
製造例5、10で得られたシートの代わりに、比較製造例8、13で得られたシートを用いた以外は、実施例と同様にして積層シートを得た。

上記の実施例および比較例で得られた積層シートの物性を表10、表11に示す。
上記の物性から、印刷時の用紙搬送性、インキ等の裏移り性に関する積層シートの挙動は次のように考えられる。
・用紙搬送性
実施例と比較例とを比べると、同程度の紙厚を有する基材を用い、かつ実施例は積層シートとしての密度が低くなっていながら、実施例の方がクラークこわさ、純曲げこわさなど剛度が高い。このことから、キャビテーション処理したパルプを含有する紙を基材とした場合、用紙搬送性が良好になり、印刷スピードの高速化など作業性を向上させることができる。
・インキ裏移り性
実施例と比較例とを比べると、同程度の紙厚を有する基材を用い、かつ実施例は積層シートとしての厚みが厚くなっていながら、実施例の方が密度は低い。このことから、キャビテーション処理したパルプを含有する紙を基材とした場合、軽く嵩高な積層シートを得ることができ、インキ等の裏移りが改善されて印刷後により多く積み上げることが可能となり、作業性を向上させることができる。
製造例で使用したキャビテーション噴流式洗浄装置の概略図である。
符号の説明
1:試料タンク
2:ノズル
3:キャビテーション噴流セル
4:プランジャポンプ
5:上流側圧力制御弁
6:下流側圧力制御弁
7:上流側圧力計
8:下流側圧力計
9:給水弁
10:循環弁
11:排水弁
12:温度センサー
13:ミキサー

Claims (6)

  1. 基材の片面または両面に1以上の熱可塑性樹脂層を有する積層シートであって、前記基材が、パルプ懸濁液中にキャビテーションを発生させ、発生した気泡をパルプ懸濁液に接触させたパルプを含有する紙であることを特徴とする積層シート。
  2. 前記パルプが、パルプ懸濁液中にキャビテーションを発生させ、発生した気泡をパルプ懸濁液に接触させて、所望の濾水度に調整したパルプであることを特徴とする請求項1記載の積層シート。
  3. 前記パルプが、パルプ懸濁液中にキャビテーションを発生させ、発生した気泡をパルプ懸濁液に接触させて、パルプ繊維および灰分に付着している汚染物質を除去した再生パルプであることを特徴とする請求項1または2記載の積層シート。
  4. キャビテーションが、液体噴流を用いて発生させたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層シート。
  5. 液体噴流が、パルプ懸濁液を噴射したものであることを特徴とする請求項4記載の積層シート。
  6. 少なくとも一方の面の熱可塑性樹脂層上に、バインダーを含有する塗工層が設けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層シート。
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