JP2006256313A - インクジェット記録用紙 - Google Patents

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至誠 後藤
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Abstract

【課題】 印字した際の波うち(コックリング)を抑制するとともに、古紙としてリサイクルが可能で、かつ強度の高いインクジェット記録用紙を提供する。
【解決手段】 パルプの製造工程において、パルプ懸濁液中に、好ましくは液体噴流によってキャビテーションを生じさせ、それに伴って生じる気泡をパルプに接触させ、その気泡の崩壊時の衝撃力を利用して所望のろ水度に調整したパルプを、記録用紙に含有させる。
【選択図】 図2

Description

本発明はインクジェット記録用紙に関する。
インクジェット記録方式は、各種の方法により飛翔させたインクの微小液滴を、紙などの記録用紙に付着させて画像や文字を形成させる記録方式である。この記録方式は、高速化、フルカラー化が容易である上、記録時の騒音が低く、装置が低価格なこともあって、家庭ユーザー用として目覚しく普及している。
また、商業用途の分野において、従来、可変情報(公共料金やクレジットの請求書や領収書、配送用伝票、広告など)の印刷にはノンインパクト(NIP)印刷が用いられていたが、最近では、ラインヘッドを有する高速インクジェットプリンターによる印刷に置き換わり始めている。
インクジェット記録方式に用いる記録用紙は、顔料を含むインク受容層を設けないか又は極薄く設けた普通紙タイプと、顔料を含むインク受容層を充分な厚みで設けた塗工紙タイプとに大別される。ホームページ印刷やビジネスレポートには安価な普通紙タイプの記録用紙が用いられ、デジタルカメラ画像などの出力には高精細画像を再現できる塗工紙タイプの記録用紙が用いられている。
一方、近年のインクジェット記録装置の高精細化に伴い、記録用紙へのインクの吐出量が増加傾向にある。通常、インクは水を主成分とし、色材として水性染料または水性顔料を含有し、その他の成分として界面活性剤等を加えた組成であり、インクの吐出量の増加は記録用紙が吸収すべき水の量が増加することを意味する。従って、印字した際の記録用紙の波うち(コックリング)が従来よりも生じやすくなり、インクジェットプリンターの搬送時の擦れや外観の不良を招くことになる。このため、コックリングが生じ難いインクジェット記録用紙の要求が高まっている。
コックリングが低減されたインクジェット記録用紙としては、以下のものがある。(1)用紙の物性値(記録シートの透気度と密度の比、表面伸び率等)を規定した技術(特許文献1、2参照)、(2)基紙を硬化させるか又はフィルムや合成繊維との複合材料とする技術(特許文献3〜5参照)、(3)用紙のパルプ繊維同士の結合を阻害してコックリングを抑制する技術(特許文献6〜8参照)、が挙げられる。
特開平6−143796号公報 特開2005−280010号公報 特開平8−169174号公報 特開平8−258408号公報 特開2000−263927号公報 特開2002−103791号公報 特開2002−219858号公報 特開2004−66492号公報
しかしながら、上記(1)の技術の場合、物性値を規定するための具体的な生産管理が困難である。又、上記(2)の技術の場合、古紙にした時のリサイクルが困難になる。上記(3)の技術の場合、用紙の強度が著しく低下する等の欠点がある。
従って、本発明は、印字した際の波うち(コックリング)を抑制するとともに、古紙としてリサイクルが可能で、かつ強度の高いインクジェット記録用紙を提供することを目的とする。
本発明者らが検討した結果、基紙の原料としてキャビテーション処理したパルプを用いることで、印字した際の波うち(コックリング)を抑制できることが判明した。すなわち、本発明のインクジェット記録用紙は、キャビテーション処理を行ったパルプを含有する紙であることを特徴とする。
又、本発明のインクジェット記録用紙は、キャビテーション処理を行ったパルプを含有する紙の少なくとも一方の表面に、顔料と結着剤とを含むインク受容層を有することを特徴とする。
本発明のインクジェット記録用紙は、キャビテーション処理を行ったパルプを含有する紙の少なくとも一方の表面に水溶性高分子結合剤及び/又はカチオン性樹脂を付着してなることを特徴とする。
前記インクジェット記録用紙において、前記紙中の全パルプ中に、前記キャビテーション処理を行ったパルプを5〜100質量%の割合で含むことが好ましい。
前記キャビテーション処理を行ったパルプは、針葉樹及び/または広葉樹のクラフトパルプをキャビテーション処理したものであることが好ましい。
本発明によれば、印字した際の波うち(コックリング)を抑制するとともに、古紙としてリサイクルが可能で、かつ強度の高いインクジェット記録用紙が得られる。
以下、本発明の実施形態に係るインクジェット記録用紙について説明する。本発明の実施形態に係るインクジェット記録用紙はキャビテーション処理を行ったパルプを含有する紙からなるか、又はこの紙を含む構成になっている。以下、まず、前記紙について説明する。
(パルプ)
パルプとしては、針葉樹または広葉樹、非木材繊維などを原料とするものを用いることができる。より具体的には、クラフトパルプ等の化学パルプ、砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等の機械パルプ、あるいは古紙や繊維素からなるシート状の物質から製造された再生パルプ等が挙げられる。古紙としては、例えば、新聞、チラシ、更系雑誌、コート系雑誌、感熱・感圧紙、模造・色上質紙、コピー用紙、コンピューターアウトプット用紙、あるいはこれらの混合古紙を使用できる。更に、上記古紙にラミネート加工された紙やUV樹脂インキなどで印刷された禁忌品が混入したパルプも利用可能である。又、これらのパルプ又は古紙を単独または任意の割合で混合して使用することが可能である。
白色度、強度に関して高い品質の紙を得られるという点でキャビテーション処理に供するパルプが針葉樹または広葉樹のクラフトパルプであることが好ましい。
(キャビテーションによるパルプの処理)
本発明者らは、キャビテーションを用いて上記パルプの処理を行うことにより、コックリングを抑制できることを見出した。
ここで、紙表面の平滑性の向上や紙力の向上などを目的として、従来から、機械力を用いてパルプを叩解処理することでパルプ繊維の改質が行われている。この叩解処理によって、短小化したパルプ繊維や微細繊維が増加するために紙層が緻密となり紙の平滑性が向上するという効果が得られ、パルプ繊維表面のミクロフィブリルの毛羽立ちによって繊維間結合面積が増大し、紙力が向上するという効果が得られる。しかしながら、この叩解処理では、パルプ繊維自体のカッティングによる損傷が発生するため、紙層が緻密になる反面、紙の嵩が低下する(密度が大きくなる)という問題もある。
そこで、本発明者らは、嵩高でコックリングを低減できるパルプを得る方法について、鋭意研究を重ねた。その結果、キャビテーションによって気泡を発生させ、これをパルプ懸濁液に接触させて処理することで、発生する微細気泡の崩壊衝撃力によって、パルプ繊維表面のみに選択的に負荷を与えることを見出した。このようにすると、繊維の全体的な損傷を抑制し及び内部フィブリル化を抑制でき、かつ、繊維表面のみのフィブリル化を促進できる。キャビテーション処理したパルプは繊維損傷が少なく、繊維が剛直で嵩高であると共に繊維のカールが小さくなる。そのため、得られたシートの寸法安定性が良好となり、コックリングが低減すると共に、繊維の透明化が抑えられるために裏抜けも低減する。又、このパルプを用いて作製したシートは嵩高で強度が高い。
図1、図2は、後述する実施例1の条件によりキャビテーション処理を行ったパルプ繊維の電子顕微鏡写真を示す。図2から、キャビテーション処理を行ったパルプは、表層のみ繊維が剥離し、剥離した内側の繊維はほぐれずに元の形態を保っていることがわかる。
一方、図3、図4は従来の機械力を用いて同一のパルプ(LKP)を叩解した場合のパルプ繊維の電子顕微鏡写真を示す。図4から、従来のパルプは、表層だけでなく内側の繊維もほぐれ、繊維の表面が毛羽立っていることがわかる。
(キャビテーション)
キャビテーションは、参考文献(加藤洋治編著、新版キャビテーション 基礎と最近の進歩、槇書店、1999)に記載されているように、高速水中噴流等によって噴流まわりに圧力差が生じることにより、常温での飽和蒸気圧に比べて噴流まわりの液体の圧力が低くなった結果、液体が蒸発して直径が数百ミクロン程度の微細な気泡(キャビテーション気泡)を生じる現象のことである。このキャビテーション気泡が崩壊する際に数μmオーダーの局所的な領域に数GPaにおよぶ高衝撃圧を発生し、同時に断熱圧縮により数千℃に温度が上昇するといわれている。
一般に、ダブルディスクリファイナー等の通常使用されている叩解機によってパルプの叩解を進めると、ろ水度の低下に伴って、繊維長の低下、微細繊維分の増加、繊維の透明化、繊維のカールが生じ、作製したシートの寸法安定性が低下する。そのため、インクジェット記録にて印字した際のコックリングが増大したり、裏抜けが生じたりする。
一方、上記したようにパルプをキャビテーション処理すると、繊維表面のみのフィブリル化を促進できるため、これらの問題を解決できる。
近年、キャビテーションについて研究が急速に進み、キャビテーション噴流の流体力学的パラメーターを操作因子としてキャビテーションの発生領域や衝撃力まで高精度に制御できるようになった。その結果、気泡の崩壊衝撃力を制御することにより、その強力なエネルギーを有効活用することが期待されはじめている。従って、流体力学的パラメーターに基づく操作・調整を行うことでキャビテーションを高精度に制御することが可能となった。
キャビテーションの発生手段としては、ブレードや丸棒等を流体流れに直交するように配置した管に高圧で液体を流す方法、液体噴流による方法、超音波振動子を用いる方法、超音波振動子とホーン状の増幅器を用いる方法、レーザー照射による方法などが挙げられるが、これらに限定するものではない。特に、液体噴流を用いる方法は、キャビテーション気泡の発生効率が高く、より強力な崩壊衝撃力を持つキャビテーション気泡雲を形成し作用効果が大きくなるため好ましく用いられる。液体噴流を用いる方法により発生するキャビテーションは、従来のように流体機械(ポンプ等)で自然発生的に生じる制御不能の害をもたらすキャビテーションではなく、制御可能であり、そのエネルギーを有効利用することができる。
なお、液体噴流とは、液体又は液体の中に固体粒子や気体が分散あるいは混在する流体の噴流であり、パルプや無機物粒子のスラリーや気泡を含む液体噴流をいう。ここでいう気体は、キャビテーションによる気泡を含んでいてもよい。
キャビテーション気泡は液体が加速され、局所的な圧力がその液体の飽和蒸気圧より低くなったときに発生するため、流速及び圧力が特に重要となる。このことから、キャビテーションの状態を表わす基本的な無次元数、キャビテーション数(Cavitation Number)σは次のように定義される(上記参考文献)。
(p:一般流の圧力、U:一般流の流速、pv:流体の蒸気圧、ρ:密度)
ここで、キャビテーション数が大きいということは、その流れ場がキャビテーションを発生し難い状態にあるということを示す。特にキャビテーション噴流のようなノズルあるいはオリフィス管を通してキャビテーションを発生させる場合は、ノズル上流側圧力p1、ノズル下流側圧力p2、、試料水の飽和蒸気圧pvから、キャビテーション数σは下記式(2)のように書きかえることができ、キャビテーション噴流では、p1、p2、pv間の圧力差が大きく、p1≫p2≫pvとなることから、キャビテーション数σはさらに以下のように近似することができる(H. Soyama, J. Soc. Mat. Sci. Japan, 47(4), 381 1998)。
上述したキャビテーション数σが0.001以上0.5以下であることが望ましく、0.003以上0.2以下であることが好ましく、0.01以上0.1以下であることが特に好ましい。キャビテーション数σが0.001未満である場合、キャビテーション気泡が崩壊する時の周囲との圧力差が低いため効果が小さくなり、0.5より大である場合は、流れの圧力差が低くキャビテーションが発生し難くなる傾向にある。
また、ノズルまたはオリフィス管を通じて噴射液を噴射してキャビテーションを発生させる際には、噴射液の圧力(上流側圧力)は0.01MPa以上30MPa以下であることが望ましく、0.7MPa以上15MPa以下であることが好ましく、2MPa以上10MPa以下であることが特に好ましい。上流側圧力が0.01MPa未満では下流側圧力との間で圧力差を生じ難く作用効果は小さい傾向にある。また、30MPaより高い場合、特殊なポンプ及び圧力容器を必要とし、消費エネルギーが大きくなる傾向にあることからコスト的に不利である。一方、容器内の圧力(下流側圧力)は静圧で0.05Mpa以上0.3Mpa以下が好ましい。また、容器内の圧力と噴射液の圧力との圧力比は0.001〜0.5の範囲が好ましい。
また、噴射液の噴流の速度は1m/秒以上200m/秒以下の範囲であることが望ましく、20m/秒以上100m/秒以下の範囲であることが好ましい。噴流の速度が1m/秒未満である場合、圧力低下が低く、キャビテーションが発生し難いため、その効果は弱い。一方、200m/秒より大きい場合、高圧を要し特別な装置が必要であり、コスト的に不利である。
キャビテーション処理を行う場所は、タンクなど任意の容器内若しくは配管内を選ぶことができるが、これらに限定するものではない。また、1パスで処理することも可能であるが、必要回数だけ循環させることによって更に効果を増大できる。さらに複数の発生手段を用いて並列で、あるいは、順列(直列)で処理することができる。
キャビテーションを発生させるための噴流は、パルパーのような大気開放の容器の中でなされてもよいが、キャビテーションをコントロールするために圧力容器の中でなされるのが好ましい。
液体噴流によるキャビテーションの発生方法では、パルプ懸濁液に対して、噴射液体として、例えば、蒸留水、水道水、工業用水、製紙工程で回収される再用水、パルプ搾水、白水、パルプ懸濁液、アルコールなどを噴射することができるが、これらに限定するものではない。好ましくは、パルプ懸濁液自体を噴射することで、噴流周りに発生するキャビテーションによる作用効果に加え、高圧でオリフィスから噴射する際の流体力学的剪断力が得られるため、より大きな作用効果を発揮する。なお、噴射液体としてパルプ懸濁液を用いる場合、処理対象とする全量を循環させて処理することも可能である。
更に必要とあれば上記液体に、別の新たな液体を加えることができる。上記液体と新たな液体は、均一に混合して噴射しても良いが、別個に噴射しても良い。
液体の噴射圧力を高めることで、噴射液の流速が増大し、より強力なキャビテーションが発生する。更に被噴射液を収める容器を加圧することで、キャビテーション気泡が崩壊する領域の圧力が高くなり、気泡と周囲の圧力差が大きくなるため気泡は激しく崩壊し衝撃力も大となる。
ここで、噴射液とは、高圧でオリフィスから噴射する液体を指し、被噴射液とは容器内もしくは配管内に収容され、上記噴射液が当てられる液体を指す。
キャビテーションは液体中の気体の量に影響され、気体が多過ぎる場合は気泡同士の衝突と合一が起こるため崩壊衝撃力が他の気泡に吸収されるクッション効果を生じるため衝撃力が弱まる。従って、溶存気体と蒸気圧の影響を受けるため、その処理温度は融点以上沸点以下でなければならない。液体が水を媒質とする場合、好ましくは0〜80℃、更に好ましくは10℃〜60℃の範囲とすることで高い効果を得ることができる。一般には、融点と沸点の中間点で衝撃力が最大となると考えられることから、水溶液の場合、50℃前後が最適であるが、それ以下の温度であっても、蒸気圧の影響を受けないため、上記の範囲であれば高い効果が得られる。80℃よりも高い温度では、キャビテーションを発生するための圧力容器の耐圧性が著しく低下するため、容器の損壊を生じやすいため不適である。
本発明においては、界面活性剤などの液体の表面張力を低下させる物質を添加することで、キャビテーションを発生させるために必要なエネルギーを低減することができる。添加する物質としては、公知または新規の界面活性剤、例えば、脂肪酸塩、高級アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸などのアルキレンオキシド付加物などの非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、あるいは、有機溶剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの単一成分からなるものでも2種以上の成分の混合物でも良い。添加量は噴射液及び/または被噴射液の表面張力を低下させるために必要な量であればよい。また、添加場所としてはキャビテーションを発生させる場所よりも前の工程のいかなる場所でもよく、液体を循環させる場合は、キャビテーションを発生させる場所以降であっても構わない。
(キャビテーションによるパルプ処理の方法)
キャビテーションによって発生した気泡をパルプ懸濁液に接触させて処理することにより、所望の特性を有するパルプに調製することができる。ここで、基紙に用いる全パルプをキャビテーション処理して抄紙しても良いし、特定の割合や種類のパルプのみをキャビテーション処理し、残りのパルプは通常の叩解処理(機械処理)のみを行ったものを用いて抄紙しても良い。また、非木材繊維もキャビテーション処理して使用することもできる。
特に、基紙の全パルプ成分100質量部に対し、キャビテーション処理したパルプを5質量部以上配合することが好ましい。キャビテーション処理したパルプの配合量が5質量部未満であると、嵩高化や寸法安定性が充分に向上しない場合がある。キャビテーション処理せずに通常の(機械的な)叩解処理をしたパルプとしては、例えば、クラフトパルプやサルファイトパルプ等の化学パルプ;砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等の機械パルプ;古紙由来の再生パルプ等をあげることができる。
パルプのキャビテーション処理は、パルプ化工程及び調成工程のいかなる段階で行っても構わない。
また、機械的叩解処理を施した後にキャビテーション処理を行ってもよいし、機械的叩解処理を施す前に処理を行うことも可能である。機械的叩解処理は公知の叩解機を用いて行えばよい。叩解機については特に限定するものではなく、シングルディスクリファイナーやダブルディスクリファイナー等のリファイナーの他、ビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザーなど回転軸を中心として金属または刃物と繊維を作用させるもの、繊維同士の摩擦によるものが挙げられる。特に、機械的叩解処理とキャビテーション処理を組み合わせることで、2種の異なる機構によって叩解を行うこととなるので、パルプ繊維の叩解特性を制御し、より望ましい紙質を得ることができる。
なお、キャビテーション処理を行う前のパルプのろ水度は特に制限されない。
本発明において、液体噴流を用いてキャビテーションを発生させる場合、パルプ懸濁液を液体噴流として噴射させることによってパルプ懸濁液と気泡を接触させることができる。ここで、液体噴流とは、液体または液体の中に固体粒子や気体が分散、あるいは混在する流体の噴流であり、例えばパルプ繊維、繊維状物質、無機粒子のスラリー、及び気泡を含む。この気泡は、キャビテーションによる気泡でもよく、これと別途に加える気泡でも良い。更に必要とあれば、上記液体に別の液体を加えることができ、これらの液体を均一に混合して噴射しても良いが、別個に噴射しても良い。
液体噴流によってキャビテーションを発生させて処理する場合、処理対象であるパルプ懸濁液の固形分濃度は5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは0.1〜1.5質量%の範囲で処理すると、気泡の発生効率の点から好ましい。
また、キャビテーション処理時のパルプ懸濁液のpHは、好ましくはpH1〜13、より好ましくはpH3〜12、更に好ましくはpH4〜11である。pHが1未満であると装置の腐食などが問題となり、材質及び保守等の観点から不利である。一方、pHが13を超えると、パルプ繊維のアルカリ焼けが生じ、白色度が低下するので好ましくない。アルカリ条件である方がパルプ繊維の膨潤性がよく、OH活性ラジカルの生成量が増加することから望ましい。
(キャビテーション処理後のパルプ特性)
キャビテーション処理に針葉樹クラフトパルプを用いた場合、処理後のパルプのろ水度が300〜550ml(カナダ標準ろ水度:c.s.f.)であることが好ましい。又、キャビテーション処理に広葉樹クラフトパルプを用いた場合、処理後のパルプのろ水度が250〜500ml(c.s.f.)であることが好ましい。
キャビテーション処理に古紙パルプを用いた場合には、処理後のろ水度が150〜300ml(c.s.f.)であることが好ましい。
処理後の各パルプのろ水度を上記範囲に定めた理由は、ろ水度が上記範囲の下限未満である場合、得られたシートの寸法安定性が劣り、コックリングが劣る傾向にあり、一方、ろ水度が上記範囲の上限を超える場合、得られたシートの平滑性が劣る場合があるためである。
又、キャビテーション処理の有無のみが異なる同一種類のパルプを用い、同一条件で紙を抄紙した場合、キャビテーション処理したパルプより得られた紙は、キャビテーション処理を行わずに通常の機械処理によって、前記キャビテーション処理を行ったパルプと同一濾水度になるよう叩解したパルプのみを用いて得られた紙に比べ、紙の密度が1〜20%程度低下する。
ここで、通常の機械処理によって叩解したパルプとは、例えば、前述した化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を公知の叩解機等で叩解処理したものをいう。
基紙に用いるパルプのうち一部をキャビテーション処理した場合は、キャビテーション処理したパルプの含有割合に応じて、前記紙の密度の低下割合も変化するが、その場合もキャビテーション処理を行わないパルプを用いて抄紙した紙に比べ、紙の密度が1〜20%程度低下する。
(填料その他の成分)
裏抜けの程度をさらに改善させることやインク吸収容量を向上させることを目的とし、前記紙は填料を含有してもよい。填料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムのような白色無機顔料;スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂のような有機顔料;などが挙げられる。
又、前記紙は、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤などを本発明の所望の効果を損なわない範囲で、適宜含有してもよい。
(抄紙)
前記紙は、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、丸網抄紙機、ヤンキー抄紙機など公知の抄紙機にて製造されるが、抄紙条件は特に規定されるものではない。又、抄紙時のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでも良い。
前記紙は、1層紙でもよく、2層以上の多層紙であってもよい。多層紙の場合、キャビテーション処理したパルプを含む紙層が少なくとも1層存在すればよい。
<普通紙タイプのインクジェット記録用紙>
本発明の実施形態に係るインクジェット記録用紙は、1)キャビテーション処理を行ったパルプを含有する前記紙からなり、表面にインク受理層(塗工層)を全く設けないか又はほとんど設けない普通紙タイプのもの、2)該紙上に後述するインク受容層を有する塗工紙タイプのものに分けられる。
ここで、普通紙タイプのインクジェット記録用紙は、前記紙表面に塗工層を全く設けないか又はほとんど設けないため、紙の繊維が隠蔽されず、風合いが上質紙やPPC用紙と同様であるものをいう。例えば、この記録媒体の表面を光学顕微鏡で観察すると、紙の繊維を視認することができる。
なお、普通紙タイプのインクジェット記録用紙に塗工層を設ける場合の塗工量は、通常、片面あたり5g/m未満である。
(インクジェット記録用紙の表面への付着物)
本発明の普通紙タイプのインクジェット記録用紙は、前記紙の少なくとも一方の表面に、水溶性高分子結合剤又はカチオン性樹脂が付着していることが好ましく、水溶性高分子結合剤とカチオン性樹脂の両者が付着していることがより好ましい。
水溶性高分子結着剤が前記紙の表面に付着していると、用紙の内填填料や微細繊維分の脱落を防止することができる。また、カチオン性樹脂が用紙の表面に付着していると、アニオン性のインクジェット用インクで印字した際に印字物に耐水性を付与することができる。
水溶性高分子結着剤としては、例えば、酸化澱粉、燐酸エステル化澱粉、自家変性澱粉、カチオン化澱粉または各種変性澱粉、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、ハイドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコールまたはそれらの誘導体などをあげることができ、これらを単独使用し又は併用することができる。
カチオン性樹脂としては、例えば、ポリエチレンイミン4級アンモニウム塩誘導体;ポリアミンポリアミドエピハロヒドリン縮重合体;アンモニアと、モノアミンやポリアミン等のアミン類と、エピハロヒドリン類とを反応させてなる縮重合物(ジアルキルアミン・アンモニア・エピクロロヒドリン縮重合体等);ジシアンジアミド・ホルムアルデヒド樹脂;ジエチレントリアミン・ジシアンジアミド・アンモニウムクロライド重合物;ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物等の水に溶解した際にカチオン性を呈する樹脂が例示できる。これらのうち、特に、インクジェットインクの定着性が高く印字物の耐水性も良好になるエピハロヒドリン系樹脂が好ましい。
カチオン性エピハロヒドリン系樹脂とはポリアミンポリアミドエピハロヒドリン縮重合体;アンモニアと、モノアミンやポリアミン等のアミン類と、エピハロヒドリン類とを反応させてなる縮重合物(ジアルキルアミン・アンモニア・エピクロロヒドリン縮重合体等);ポリアミドエピハロヒドリン樹脂;ポリアミンエピハロヒドリン樹脂などがあげられる。
さらに上記カチオン性樹脂はカチオン化度が5meq/g以上であることが好ましい。カチオン化度が5meq/g未満の場合、耐水性が不充分となる場合がある。また、カチオン化度は10meq/g以下であることが好ましく、特に好ましい範囲は6meq/g以上7meq/g以下である。なお、カチオン化度の測定方法は、「コロイド滴定法」(千手諒一著、昭和44年南江堂出版)に従って行うことができる。
前記紙の表面に水溶性高分子結着剤及び/またはカチオン性樹脂を付着させる方法は特に制限されないが、水溶性高分子結着剤及び/またはカチオン性樹脂を含有する水溶液を、前記紙表面に外添(塗工、含浸)する方法を用いることが好ましい。外添による方法の場合、水溶性高分子結着剤とカチオン性樹脂が用紙の表面近傍に存在するため、これらの成分を前記紙に内添する場合と比較し、より少ない量で効果を得ることができる。
外添を行う方法としては、例えば2ロールサイズプレス、ゲートロールコーター、ロッドメータリングサイズプレス、ブレードメータリングサイズプレスの他、ブレードコーター、ロッドコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーターなど各種塗工機で前記紙表面に塗工することが可能である。特に、コストが低く、一工程で紙の両面を処理できる点から、抄紙機にオンマシンで設置されている2ロールサイズプレス、ゲートロールコーター、ロッドメータリングサイズプレス、ブレードメータリングサイズプレスなどを用いるのが望ましい。また、オフマシン工程で巻き取り紙などの紙に塗工する方法を用いてもよく、オンマシンとオフマシンを併用してもよい。
水溶性高分子結着剤及び/またはカチオン性樹脂を含む上記水溶液中には、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、例えば、表面サイズ剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤などを適宜配合することもできる。
表面サイズ剤としては、各種公知のサイズ剤を用いることができるが、特にカチオン性樹脂との相溶性及びサイズ性の発現効果から、カチオン性サイズ剤を用いることが好ましい。
カチオン性樹脂の乾燥付着量は、前記紙の両面に対し2〜10g/m2(片面あたり1〜5g/m2)とすることが好ましい。乾燥付着量が片面あたり1g/m2未満である少ないと充分な画像耐水性が得られ難い傾向にあり、乾燥付着量が片面あたり5g/m2を超えても効果が飽和し、コストの点からも好ましくない。
上記のようにして得られた普通紙タイプのインクジェット記録用紙の表面を、マシンカレンダー、ソフトカレンダー、スーパーカレンダー、ホットソフトニップカレンダーなどの公知のオンマシンタイプ及びオフマシンタイプのカレンダーで処理し、用紙表面の平滑性を調整することも可能である。
<塗工紙タイプのインクジェット記録用紙>
以下、本発明の実施形態に係る塗工タイプのインクジェット記録用紙について説明する。本発明の実施形態に係る塗工タイプのインクジェット記録用紙は、基紙となる前記紙上にインク受容層を有する。
(基紙)
基紙としては、上記した普通紙タイプのインクジェット記録用紙と同一のキャビテーション処理を行ったパルプを含有する前記紙を用いることができるので説明を省略する。また、塗工紙タイプのインクジェット記録用紙においても、基紙表面に上記した水溶性高分子結着剤及び/又はカチオン性樹脂を付着させたものを用いることもできる。
(塗工層(インク受容層))
塗工層は、インクジェット記録時のインク受容層となる。インク受容層は少なくとも顔料と結着剤とを含む。
(顔料)
顔料としては、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト等のアルミナやアルミナ水和物、合成シリカ、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、酸化亜鉛、石膏等が挙げられ、これらを単独で使用し又は併用することができる。発色性の観点からは、透明度が高い顔料である合成シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物を用いることが好ましい。
(結着剤)
インク受容層は結着剤として、ポリビニルアルコール;酸化澱粉、エステル化澱粉等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン;カゼイン;ゼラチン;大豆タンパク;スチレン−アクリル樹脂及びその誘導体;スチレン−ブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、塩化ビニルエマルジョン、ウレタンエマルジョン、尿素エマルジョン、アルキッドエマルジョン及びこれらの誘導体;等を単独で使用し、又は2種以上を混合して使用できる。
結着剤の配合量は、顔料100質量部に対して、5質量部〜50質量部であることが好ましいが、必要な塗工層強度が得られれば、特に限定されるものではない。
(インク受容層の塗工)
インク受容層は、上記顔料及び結着剤を含む塗工液を基紙上に塗布して形成することができる。塗工液には、必要に応じ、顔料分散剤、保水剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、着色剤、耐水化剤、湿潤剤、蛍光染料、紫外線吸収剤、カチオン性高分子電解質等を適宜添加することができる。
インク受容層の塗布量は、基紙の表面を覆い、かつ充分なインク吸収性が得られる範囲で任意に調整することができるが、発色性(記録濃度)及びインク吸収性を両立させる観点から、片面当たり、固形分換算で3〜30g/mであることが好ましく、特に、生産性をも加味すると5〜30g/mであることが好ましい。塗布量が30g/mを超えると、塗工層の脱落が生じやすくなる場合がある。
基紙上にインク受容層を設ける方法としては、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラッシュコーター、キスコーター、スクイズコーター、カーテンコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター等の公知の塗工機を用いた塗工する方法の中から適宜選択することができる。
<実施例>
以下に本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。又、以下の「部」、「%」は特に断らない限り質量部、質量%とし、水溶液等の場合は固形分に換算した値を示す。
<パルプAの調製>
市販広葉樹漂白クラフトパルプシートを低濃度パルパーで離解し、ろ水度666ml(c.s.f.))のパルプ懸濁液とした。このパルプ懸濁液を1.1%に調整後、図5に示す噴流式キャビテーション装置(ノズル径1.5mm)を用いてキャビテーション処理した。
図5において、試料タンク1内に図示しないパルプ懸濁液(濃度1.1%)が収容され、試料タンク1には温度センサー12とミキサー13が挿入されている。試料タンク1のパルプ懸濁液はプランジャポンプ4を介した所定の配管によりキャビテーション噴流セル3に噴射液として導入される。キャビテーション噴流セル3の下部にはノズル2が設けられ、より詳細には試料タンク1のパルプ懸濁液はノズル2から噴流セル3内に噴射される。さらに、試料タンク1の側部から噴流セル3に向かう配管に給水弁9、循環弁10が設けられ、試料タンク1内のパルプ懸濁液を噴流セル3内に被噴射液として供給される。
試料タンク1の側部からノズル2に向かう別の配管には上流側圧力制御弁5が介装されている。一方、噴流セル3の上部から試料タンク1に向かう別の配管には下流側圧力制御弁6が介装され、各弁5,6を調整することで、ノズル2へのパルプ懸濁液の噴射圧を調整可能になっている。又、ノズル2の入側には上流側圧力計7が設けられ、噴流セル3の上部には下流側圧力計8が設けられている。なお、噴流セル3の下部には排水弁が11が設けられている。
キャビテーション処理の条件は、噴射液の圧力(上流側圧力)を7MPa(噴流の流速70m/秒)、被噴射容器内の圧力(下流側圧力)を0.3MPaとし、処理時間を変化させて処理し、ろ水度を調整した。なお、噴流セル3内に噴射される噴射液及び被噴射液は、前述の濃度1.1質量%のパルプ懸濁液を使用し、キャビテーション処理した。得られたパルプのろ水度は400ml(c.s.f.)であった。
なお、ろ水度は、JIS P8121「パルプのろ水度試験方法」に準じ、カナダ標準ろ水度を測定した。
<パルプBの調製>
市販針葉樹漂白クラフトパルプシートを低濃度パルパーで離解し、ろ水度752ml(c.s.f.))のパルプ懸濁液とした。このパルプ懸濁液を1.1%に調整後、図1に示すキャビテーション噴流式洗浄装置(ノズル径1.5mm)を用いてキャビテーション処理した。キャビテーション処理の条件は、噴射液の圧力(上流側圧力)を7MPa(噴流の流速70m/秒)、被噴射容器内の圧力(下流側圧力)を0.3MPaとし、処理時間を変化させて処理し、ろ水度を調整した。なお、噴射液と被噴射液として濃度1.1質量%のパルプ懸濁液を使用し、キャビテーション処理した。得られたパルプのろ水度は、420ml(c.s.f.)であった。
<パルプCの調製>
市販針葉樹漂白クラフトパルプシートを低濃度パルパーで離解し、ろ水度666ml(c.s.f.))のパルプ懸濁液とした。このパルプ懸濁液を濃度10%に濃縮した後、PFIミルを用いて叩解し、パルプC(ろ水度400ml(c.s.f.))を得た。
なお、PFIミルはJIS−P8221−2「パルプ−こう解方法−第2部:PFIミル法」に規定される装置であり、ロールとハウジングのクリアランスを0.2mmとして使用した。
パルプA100質量部に対し、填料として軽質炭酸カルシウム12質量部、硫酸バンド1質量部、中性ロジンエマルジョンサイズ剤0.3質量部、カチオン化デンプン0.5質量部、及び歩留まり向上剤50ppmを添加し、実験用配向性抄紙機(熊谷理機工業製)にて周速800m/minとし、ISO15316「Pulps−Determination of zero-span tensile strength, wet or dry」に準じて測定される乾紙のゼロスパン引張り強度縦横比がT(縦)/Y(横)=1.8となる条件で抄紙した。
抄紙後、JIS P 8222「パルプ−試験用手すき紙の調整方法」で規定された条件でコーチング及びプレスを行った後、シリンダードライヤーにて乾燥し、坪量75g/m2の紙を得た。
さらに、試験用サイズプレスを用いて、サイズプレス液(7質量%酸化デンプン溶液、表面サイズ剤0.05質量%、及びポリアミン系カチオン性樹脂4質量%を配合したもの)を乾燥塗布量が両面で5g/m2となるようにして基紙両面に塗布、乾燥した。乾燥後、カレンダー処理を施して、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.5−2「紙及び板紙−平滑度及び透気度試験方法−第2部:王研法」で測定される表面平滑度が45秒になるように調整し、普通紙タイプのインクジェット記録用紙を得た。
パルプA100質量部の代わりに、パルプA50質量部と、パルプC50質量部を混合して用いたこと以外は実施例1と同様にして、普通紙タイプのインクジェット記録用紙を得た。
パルプA100質量部の代わりに、パルプB50質量部と、パルプC50質量部を混合して用いたこと以外は実施例1と同様にして、普通紙タイプのインクジェット記録用紙を得た。
パルプA100質量部の代わりに、パルプA5質量部と、パルプC95質量部を混合して用いたこと以外は実施例1と同様にして、普通紙タイプのインクジェット記録用紙を得た。
パルプA100質量部の代わりに、パルプA3質量部と、パルプC97質量部を混合して用いたこと以外は実施例1と同様にして、普通紙タイプのインクジェット記録用紙を得た。
サイズプレス液として、6質量%酸化デンプン溶液と、表面サイズ剤0.05質量%を配合したものを用い、乾燥塗布量を両面で4g/mとなるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、普通紙タイプのインクジェット記録用紙を得た。
実施例1で得られた普通紙タイプのインクジェット記録用紙(サイズプレスを行ったもの)を基紙とし、この片面にメイヤーバーを用いて以下の塗工液Iを乾燥塗布量5g/mとなるように塗工した。乾燥後、カレンダー処理を行い、表面平滑度が100秒となるように調整し、塗工タイプのインクジェット記録用紙を得た。
塗工液I:非晶質シリカ(ゲル法シリカ、平均粒径2.7μm、BET比表面積800m/g、細孔容積1.1ml/g、平均細孔直径5×10-9m(50Å)、加熱減量5.0%、強熱減量5.0%、pH6.0、見掛け比重0.24g/ml、吸油量185ml/100g)5質量部、焼成クレー(アンシレックス93、エンゲルハード社製)95質量部、ポリビニルアルコール(PVA−117、クラレ社製)25質量部、エチレン酢酸ビニルエマルジョン(リカボンドBE−7000、中央理化学工業社製)20質量部、カチオン性樹脂(DK6850、星光PMC社製)5質量部、カチオン性サイズ剤(ポリマロン360、荒川化学社製)5質量部、消泡剤(SNデフォーマー480、サンノプコ社製)0.5質量部、及び希釈水を混合し、固形分濃度20%のインク受容層用塗工液を得た。
実施例6で得られた普通紙タイプのインクジェット記録用紙(サイズプレスを行ったもの)の片面に、メイヤーバーを用いて以下の塗工液IIを乾燥塗布量15g/mとなるように塗工した。乾燥後、カレンダー処理を行い、表面平滑度が100秒となるように調整し、塗工タイプのインクジェット記録用紙を得た。
塗工液II:合成非晶質シリカ(ファインシールX−60:トクヤマ社製)80質量部、合成非晶質シリカ(ファインシールX−37B:トクヤマ社製)20質量部、ポリビニルアルコール(PVA117:クラレ社製)30質量部、エチレン酢酸ビニルエマルジョン5質量部、ポリアミン系カチオン性樹脂10質量部、消泡剤(SNデフォーマー480:サンノプコ社製)0.5質量部、および希釈水を混合し、固形分濃度15%の塗工液を調製した。
<比較例1>
パルプA100質量部の代わりに、パルプC100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、普通紙タイプのインクジェット記録用紙を得た。
<比較例2>
パルプA100質量部の代わりに、パルプC100質量部を用い、更に、抄紙の際に低密度化薬品(KB−110、花王社製)1部を添加したこと以外は実施例1と同様にして、普通紙タイプのインクジェット記録用紙を得た。
<比較例3>
パルプA100質量部の代わりに、パルプC100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして得た基紙の片面に、厚さ25μmのポリエチレンフィルムをアクリル樹脂系の接着剤を用いて貼り合わせて、インクジェット記録用紙を得た。
<比較例4>
比較例1で得られた記録用紙の片面に、実施例6と同様にして塗工液を塗工し、乾燥後にカレンダー処理を行い、表面平滑度が100秒となるように調整し、塗工タイプのインクジェット記録用紙を得た。
<評価>
1.コックリング
各インクジェット記録用紙のコックリングの程度を以下の方法で判定した。まず、インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、PM−G820)を用い、各インクジェット記録用紙に帯状の緑ベタ画像(幅15mm、長さ150mm、表計算ソフト(エクセル)を用いて画像を作成)を印字した。プリンターの印字モードは、「普通紙/きれい」モードとした。
印字後の記録用紙を目視評価し、コックリング(波打ち具合)を判定した。
○:波打ちが小さく、凹凸はほとんどみられない。
×:波打ちが大きく、凹凸が目立つ。
2.リサイクル性
各インクジェット記録用紙を、2cm×2cmの大きさに断裁後、JIS P 8220「パルプ−離解方法」に準拠した標準離解機を用い、試料固形分1.5%で5分間離解した際の離解状態を目視にて観察した。
○:完全に離解され、繊維がばらばらになっている。
×:未離解物が残っている。
3.強度
各インクジェット記録用紙の印字前の強度を、JIS P 8113「紙及び板紙−引張特性の試験方法」に準拠して測定し、以下のように評価した。ただし、a=(各インクジェット記録用紙引張強さ)/(比較例1のインクジェット記録用紙の引張強さ)ととする。
◎:a>1.01である。
○:0.99≦a≦1.01である。
×:a<0.99である。
4.インク吸収性
各インクジェット記録用紙に対し、インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製のPM−G820、「普通紙/きれい」モードで印字)を用いて緑ベタ帯を印字した。印字直後の印字部表面を目視観察し、以下の基準でインク吸収性を評価した。
○:インクが完全に吸収されており、印字部に濡れによる光沢はみられない。
△:一部インクが吸収されておらず、印字部に濡れによる光沢がみられるが、実用上問題ないレベルである。
×:インクが吸収されておらず、印字部に濡れによる光沢が広くみられ、実用上問題がある。
5.裏抜け
上記コックリングの判定に用いた記録用紙(印字後)を印字面の裏から目視し、インクの透け具合(裏抜け)を判定した。
◎:裏抜けが殆どなく、印字画像も見えない。
○:裏抜けが若干あるが、印字画像は見えない。
×:裏抜けがあり、印字画像が透けて見える。
得られた結果を表1に示す。
表1から明らかなように、普通紙タイプの実施例1〜6、及び塗工タイプの実施例7、8の場合、コックリングの程度が少なく、リサイクル性、強度、インク吸収性、裏抜け防止にも優れていた。特に、塗工タイプの実施例7、8の場合、他の実施例に比べて裏抜け防止が更に優れていた。
なお、紙中パルプ全体に対し、キャビテーション処理したパルプの配合割合が5質量%未満である実施例5の場合、他の実施例に比べて強度及びインク吸収性が若干低かったが実用上問題はなかった。
一方、キャビテーション処理を行わないパルプのみを用いた比較例1、4の場合、コックリングが顕著に生じた。
キャビテーション処理を行わないパルプを用い、低密度化薬品を用いてパルプ繊維同士の結合を阻害した比較例2の場合、コックリングの程度は少なかったが強度が低下し、裏抜けが顕著になった。
キャビテーション処理を行わないパルプを用い、フィルムを貼付した比較例3の場合、コックリングが少なかったもののリサイクル性が低く、さらに裏抜けが顕著に生じた。
キャビテーション処理を行ったパルプ繊維の電子顕微鏡写真を示す図である。 図1の部分拡大図である。 従来の機械的な叩解処理を行ったパルプ繊維の電子顕微鏡写真を示す図である。 図3の部分拡大図である。 キャビテーション噴流式洗浄装置の構成を示す概略図である。
符号の説明
1:試料タンク
2:ノズル
3:キャビテーション噴流セル
4:プランジャポンプ
5:上流側圧力制御弁
6:下流側圧力制御弁
7:上流側圧力計
8:下流側圧力計
9:給水弁
10:循環弁
11:排水弁
12:温度センサー
13:ミキサー

Claims (5)

  1. キャビテーション処理を行ったパルプを含有する紙であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
  2. キャビテーション処理を行ったパルプを含有する紙の少なくとも一方の表面に、顔料と結着剤とを含むインク受容層を有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
  3. キャビテーション処理を行ったパルプを含有する紙の少なくとも一方の表面に、水溶性高分子結合剤及び/又はカチオン性樹脂を付着してなることを特徴とするインクジェット記録用紙。
  4. 前記紙中の全パルプ中に、前記キャビテーション処理を行ったパルプを5〜100質量%の割合で含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
  5. 前記キャビテーション処理を行ったパルプは、針葉樹及び/または広葉樹のクラフトパルプをキャビテーション処理したものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
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