JP2006256312A - インクジェット記録用紙 - Google Patents

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至誠 後藤
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洋路 辻
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Abstract

【課題】 白色度が高く、かつカールの発生を抑制して操業性や生産性に優れたインクジェット記録用紙を提供する。
【解決手段】 基紙上にインク受容層を形成し、該インク受容層を加熱した鏡面に圧着して光沢を付与してなるインクジェット記録用紙であって、基紙は炭酸カルシウムを填料として含有すると共にキャビテーション処理を行ったパルプを含有する。
【選択図】 図2

Description

本発明はインクジェット記録用紙に関し、特に、銀塩写真並の光沢感を有するインクジェット記録用紙に関する。
一般にインクジェット記録方式は、種々の機構によりインクの小滴を吐出し、記録用紙上に付着させてドットを形成し記録するものである。インクジェット記録方式は、ドットインパクトタイプの記録方式に比べ、騒音が少なく、フルカラー化が容易である上、高速印字が可能であるなどの利点がある。さらに最近では高解像度のデジタルビデオ、デジタルカメラ、スキャナーおよびパーソナルコンピューター等の普及により高精細の画像を取り扱う機会が多くなり、これらのハードコピーをインクジェットプリンターで出力する事が多くなっている。これに伴い、インクジェット記録用紙に対する要求特性が多様化し、特に銀塩写真並の光沢感を有する記録媒体や、高い色再現性を有する記録媒体に対する要望が高くなってきている。
インクジェット記録用紙に高い光沢を付与する方法として、インク受容層表面を平滑化して光沢を付与するキャストコート法がある。
キャストコート法は、顔料と結着剤とを主成分とする塗工液を基紙上に塗工してインク受容層となる塗工層を設け、湿潤し可塑状態の塗工層をキャストドラム(鏡面仕上げの面)に押し当て、光沢仕上げする方法である。
キャストコート法は一般的に(1)塗工層が湿潤状態にある間に鏡面仕上げした加熱ドラムに圧着して乾燥するウェットキャスト法(直接法)、(2)湿潤状態の塗工層を一旦(半)乾燥した後に再湿潤液により膨潤可塑化させ、鏡面仕上げした加熱ドラムに圧着し乾燥するリウェットキャスト法(再湿潤法)、(3)湿潤状態の塗工層を凝固処理によりゲル状態にして、鏡面仕上げした加熱ドラムに圧着し乾燥するゲル化キャスト法(凝固法)、の3種類に分けることができる。
これらは、何れも鏡面状のドラム表面を写し取ることによって、高光沢の塗工層表面を得るという点で共通している。
上記凝固法として、インク受容層にポリビニルアルコールを含有させ、ほう酸塩/ほう酸の混合溶液でポリビニルアルコールを凝固処理する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、高い色再現性を得るために、インクジェット記録用紙の白色度を向上させることが有効である。このような技術として、記録層中に蛍光増白剤を含有する技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。また、基紙を中性化し、填料として炭酸カルシウムを用いることが提案されている(例えば特許文献3参照)。
特開2002-283697号公報 特開2004-50532号公報 特開2004-230777号公報
しかしながら、インク受容層に蛍光増白剤を多量に配合すると、記録用紙の白色度は高くなるが、蛍光増白剤が増えるに従ってインク受容層の表面強度が低下し、さらに時間と共に退色し保存性が低下するという問題がある。
そこで、特許文献3に記載されているように、蛍光増白剤を多量に配合する代わりに、白色度の高い填料(上記炭酸カルシウム等)を基紙に配合することで白色度を向上させることができる。ここで、炭酸カルシウムを配合した基紙は中性を示す。
ところが、中性の基紙を用いてキャストコート法でインク受容層を設けると、乾燥後のカールが大きくなって生産性や操業性が低下することが判明した。この理由は、基紙が中性化すると透気抵抗度が著しく減少するため、塗工層をキャストドラム上で押し当てて乾燥し光沢仕上げをする際、乾燥が過度になって基紙の乾燥収縮が増大するためと考えられる。
従って、本発明の目的は、白色度が高く、かつ操業性や生産性に優れたインクジェット記録用紙を提供することにある。
本発明者らが検討した結果、基紙の原料としてキャビテーション処理したパルプを用いることで、炭酸カルシウムを填料に用いた場合でも基紙の透気抵抗度が適切となり、インクジェット記録用紙の乾燥収縮によるカールを抑制できることが判明した。すなわち、本発明のインクジェット記録用紙は、基紙上にインク受容層を形成し、該インク受容層を加熱した鏡面に圧着して光沢を付与してなるインクジェット記録用紙であって、前記基紙は炭酸カルシウムを填料として含有すると共にキャビテーション処理を行ったパルプを含有することを特徴とする。
前記基紙のpHが6〜8であることが好ましく、前記基紙の透気抵抗度が20〜1000秒であることが好ましい。
前記基紙の白色度が95%以上であることが好ましい。
本発明によれば、白色度が高く、かつカールの発生を抑制して操業性や生産性に優れたインクジェット記録用紙が得られる。
以下、本発明の実施形態に係るインクジェット記録用紙について説明する。本発明の実施形態に係るインクジェット記録用紙は、炭酸カルシウムを填料として含有すると共にキャビテーション処理を行ったパルプを含有する基紙を用い、キャストコート法で基紙上にインク受容層を形成したものである。
<基紙>
基紙はパルプと填料とを主成分として構成されるが、必要に応じて表面に塗工層が設けられてもよい。パルプとしては、化学パルプ(針葉樹の晒または未晒クラフトパルプ、広葉樹の晒または未晒クラフトパルプ等)、機械パルプ(グランドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等)、脱墨パルプ、非木材パルプ(ケナフ繊維)等を単独または任意の割合で混合して使用することが可能である。
(キャビテーションによるパルプの処理)
本発明者らは、キャビテーションを用いて上記パルプの処理を行うことにより、後述する炭酸カルシウムを填料に用いても、基紙の透気抵抗度が増加することを見出した。この理由は明らかではないが、次のように考えられる。
すなわち、キャビテーションにより発生する気泡によってパルプを処理する場合、繊維そのものの破壊(繊維の断裂等)は生じず、繊維表面のフィブリル化が選択的に行われるため、基紙表層部と内部において繊維結合状態に差が生じる。これにより、キャビテーション処理を行ったパルプから得られる基紙は、基紙内部に比べ基紙表面部分が密となり、基紙表面の空隙が少なくなる。
一方、従来からの機械力を用いたパルプ叩解処理においては、繊維自体の破壊が生じるため、上記した基紙表層部と内部との間に繊維結合状態の差は生じにくく、表面の空隙は基紙内部と同程度となる。従って、紙の密度が同一である場合に、キャビテーション処理を行ったパルプを含有する紙の方が、機械力により叩解処理を行ったパルプのみからなる紙と比較して、透気抵抗度が高くなると考えられる。
そこで、本発明者らは、パルプ繊維表面に対して選択的に負荷を与えて繊維の損傷と内部フィブリル化の進行を抑えて、パルプ繊維の嵩を低下させずに濾水度を調整することによって嵩高で透気抵抗度の高いパルプを得る方法について、鋭意研究を重ねた。その結果、キャビテーションによって気泡を発生させ、これをパルプ懸濁液に接触させて処理することで、発生する微細気泡の崩壊衝撃力によって、パルプ繊維自体の嵩を損なわずに濾水度を調整できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
図1、図2は、後述する実施例1の条件によりキャビテーション処理を行ったパルプ繊維の電子顕微鏡写真を示す。図2から、キャビテーション処理を行ったパルプは、表層のみ繊維が剥離し、剥離した内側の繊維はほぐれずに元の形態を保っていることがわかる。
一方、図3、図4は従来の機械力を用いて同一のパルプ(LKP)を叩解した場合のパルプ繊維の電子顕微鏡写真を示す。図4から、従来の方法で叩解したパルプは、表層だけでなく内側の繊維もほぐれ、繊維の表面が毛羽立っていることがわかる。
(キャビテーション)
キャビテーションは、参考文献(加藤洋治編著、新版キャビテーション 基礎と最近の進歩、槇書店、1999)に記載されているように、高速水中噴流等によって噴流まわりに圧力差が生じることにより、常温での飽和蒸気圧に比べ、噴流まわりの液体の圧力が低くなった結果、液体が蒸発して直径が数百ミクロン程度の微細な気泡(キャビテーション気泡)を生じる現象のことである。このキャビテーション気泡が崩壊する際に数μmオーダーの局所的な領域に数GPaにおよぶ高衝撃圧を発生し、同時に断熱圧縮により数千℃に温度が上昇するといわれている。
その結果、キャビテーションが発生した場合には流体機械等の機器に損傷、振動、性能低下などの害をもたらす面があり、解決すべき技術課題とされてきた。
近年、キャビテーションについて研究が急速に進み、キャビテーション噴流の流体力学的パラメーターを操作因子としてキャビテーションの発生領域や衝撃力まで高精度に制御できるようになった。その結果、気泡の崩壊衝撃力を制御することにより、その強力なエネルギーを有効活用することが期待されはじめている。従って、流体力学的パラメーターに基づく操作・調整を行うことでキャビテーションを高精度に制御することが可能となった。
キャビテーションの発生手段としては、ブレードや丸棒等を流体流れに直交するように配置した管に高圧で液体を流す方法、液体噴流による方法、超音波振動子を用いる方法、超音波振動子とホーン状の増幅器を用いる方法、レーザー照射による方法などが挙げられるが、これらに限定するものではない。特に、液体噴流を用いる方法は、キャビテーション気泡の発生効率が高く、より強力な崩壊衝撃力を持つキャビテーション気泡雲を形成し作用効果が大きくなるため好ましく用いられる。液体噴流を用いる方法により発生するキャビテーションは、従来のように流体機械(ポンプ等)で自然発生的に生じる制御不能の害をもたらすキャビテーションではなく、制御可能であり、そのエネルギーを有効利用することができる。
なお、液体噴流とは、液体又は液体の中に固体粒子や気体が分散あるいは混在する流体の噴流であり、パルプや無機物粒子のスラリーや気泡を含む液体噴流をいう。ここでいう気体は、キャビテーションによる気泡を含んでいてもよい。
キャビテーション気泡は液体が加速され、局所的な圧力がその液体の飽和蒸気圧より低くなったときに発生するため、流速及び圧力が特に重要となる。このことから、キャビテーションの状態を表わす基本的な無次元数、キャビテーション数(Cavitation Number)σは次のように定義される(上記参考文献)。
(p:一般流の圧力、U:一般流の流速、pv:流体の蒸気圧、ρ:密度)
ここで、キャビテーション数が大きいということは、その流れ場がキャビテーションを発生し難い状態にあるということを示す。特にキャビテーション噴流のようなノズルあるいはオリフィス管を通してキャビテーションを発生させる場合は、ノズル上流側圧力p1、ノズル下流側圧力p2、、試料水の飽和蒸気圧pvから、キャビテーション数σは下記式(2)のように書きかえることができ、キャビテーション噴流では、p1、p2、pv間の圧力差が大きく、p1≫p2≫pvとなることから、キャビテーション数σはさらに以下のように近似することができる(H. Soyama, J. Soc. Mat. Sci. Japan, 47(4), 381 1998)。
上述したキャビテーション数σが0.001以上0.5以下であることが望ましく、0.003以上0.2以下であることが好ましく、0.01以上0.1以下であることが特に好ましい。キャビテーション数σが0.001未満である場合、キャビテーション気泡が崩壊する時の周囲との圧力差が低いため効果が小さくなり、0.5より大である場合は、流れの圧力差が低くキャビテーションが発生し難くなる傾向にある。
また、ノズルまたはオリフィス管を通じて噴射液を噴射してキャビテーションを発生させる際には、噴射液の圧力(上流側圧力)は0.01MPa以上30MPa以下であることが望ましく、0.7MPa以上15MPa以下であることが好ましく、2MPa以上10MPa以下であることが特に好ましい。上流側圧力が0.01MPa未満では下流側圧力との間で圧力差を生じ難く作用効果は小さい傾向にある。また、30MPaより高い場合、特殊なポンプ及び圧力容器を必要とし、消費エネルギーが大きくなる傾向にあることからコスト的に不利である。一方、容器内の圧力(下流側圧力)は静圧で0.05Mpa以上0.3Mpa以下が好ましい。また、容器内の圧力と噴射液の圧力との圧力比は0.001〜0.5の範囲が好ましい。
また、噴射液の噴流の速度は1m/秒以上200m/秒以下の範囲であることが望ましく、20m/秒以上100m/秒以下の範囲であることが好ましい。噴流の速度が1m/秒未満である場合、圧力低下が低く、キャビテーションが発生し難くいため、その効果は弱い。一方、200m/秒より大きい場合、高圧を要し特別な装置が必要であり、コスト的に不利である。
キャビテーション処理を行う場所は、タンクなど任意の容器内若しくは配管内を選ぶことができるが、これらに限定するものではない。また、1パスで処理することも可能であるが、必要回数だけ循環させることによって更に効果を増大できる。さらに複数の発生手段を用いて並列で、あるいは、順列(直列)で処理することができる。
キャビテーションを発生させるための噴流は、大気開放の容器の中でなされてもよいが、キャビテーションをコントロールするために圧力容器の中でなされるのが好ましい。
液体噴流によるキャビテーションの発生方法では、パルプ懸濁液に対して、噴射液体として、例えば、蒸留水、水道水、工業用水、製紙工程で回収される再用水、パルプ搾水、白水、パルプ懸濁液、アルコールなどを噴射することができるが、これらに限定するものではない。好ましくは、パルプ懸濁液自体を噴射することで、噴流周りに発生するキャビテーションによる作用効果に加え、高圧でオリフィスから噴射する際の流体力学的剪断力が得られるため、より大きな作用効果を発揮する。なお、噴射液体としてパルプ懸濁液を用いる場合、処理対象とする全量を循環させて処理することも可能である。
更に必要とあれば上記液体に、別の新たな液体を加えることができる。上記液体と新たな液体は、均一に混合して噴射しても良いが、別個に噴射しても良い。
液体の噴射圧力を高めることで、噴射液の流速が増大し、より強力なキャビテーションが発生する。更に被噴射液を収める容器を加圧することで、キャビテーション気泡が崩壊する領域の圧力が高くなり、気泡と周囲の圧力差が大きくなるため気泡は激しく崩壊し衝撃力も大となる。ここで、噴射液とは、高圧でオリフィスから噴射する液体を指し、被噴射液とは容器内もしくは配管内に収容され、上記噴射液が当てられる液体を指す。キャビテーションは液体中の気体の量に影響され、気体が多過ぎる場合は気泡同士の衝突と合一が起こるため崩壊衝撃力が他の気泡に吸収されるクッション効果を生じるため衝撃力が弱まる。従って、溶存気体と蒸気圧の影響を受けるため、その処理温度は融点以上沸点以下でなければならない。液体が水を媒質とする場合、好ましくは0〜80℃、更に好ましくは10℃〜60℃の範囲とすることで高い効果を得ることができる。一般には、融点と沸点の中間点で衝撃力が最大となると考えられることから、水溶液の場合、50℃前後が最適であるが、それ以下の温度であっても、蒸気圧の影響を受けないため、上記の範囲であれば高い効果が得られる。80℃よりも高い温度では、キャビテーションを発生するための圧力容器の耐圧性が著しく低下するため、容器の損壊を生じやすいため不適である。
本発明においては、界面活性剤などの液体の表面張力を低下させる物質を添加することで、キャビテーションを発生させるために必要なエネルギーを低減することができる。添加する物質としては、公知または新規の界面活性剤、例えば、脂肪酸塩、高級アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸などのアルキレンオキシド付加物などの非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、あるいは、有機溶剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの単一成分からなるものでも2種以上の成分の混合物でも良い。添加量は噴射液及び/または被噴射液の表面張力を低下させるために必要な量であればよい。また、添加場所としてはキャビテーションを発生させる場所よりも前の工程のいかなる場所でもよく、液体を循環させる場合は、キャビテーションを発生させる場所以降であっても構わない。
(キャビテーションによるパルプ処理の方法)
キャビテーションによって発生した気泡をパルプ懸濁液に接触させて処理することにより、所望の濾水度のパルプに調製することができる。ここで、基紙に用いる全てのパルプをキャビテーション処理して抄紙しても良いし、特定の割合や種類のパルプのみをキャビテーション処理し、残りのパルプは通常の叩解処理(機械処理)したものを用いて抄紙しても良い。また、非木材繊維もキャビテーション処理して使用することもできる。
また、機械的叩解処理を施した後にキャビテーション処理を行ってもよいし、機械的叩解処理を施す前に処理を行うことも可能である。機械的叩解処理は公知の叩解機を用いて行えばよい。叩解機については特に限定するものではなく、シングルディスクリファイナーやダブルディスクリファイナー等のリファイナーの他、ビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザー等、回転軸を中心として金属または刃物と繊維を作用させるもの、又は繊維同士の摩擦によるものが挙げられる。特に、機械的叩解処理とキャビテーション処理を組み合わせた場合、2種の異なる機構によって叩解を行うため、パルプ繊維の叩解特性を制御し、より望ましい紙質を得ることができる。
なお、キャビテーション処理を行う前のパルプの叩解度は特に制限されない。
液体噴流によってキャビテーションを発生させて処理する場合、処理対象であるパルプ懸濁液の固形分濃度は5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは0.1〜1.5質量%の範囲で処理すると、気泡の発生効率の点から好ましい。
また、キャビテーション処理時のパルプ懸濁液のpHは、好ましくはpH1〜13、より好ましくはpH3〜12、更に好ましくはpH4〜11である。pHが1未満であると装置の腐食などが問題となり、材質及び保守等の観点から不利である。一方、pHが13を超えると、パルプ繊維のアルカリ焼けが生じ、白色度が低下するので好ましくない。アルカリ条件である方がパルプ繊維の膨潤性がよく、OH活性ラジカルの生成量が増加することから望ましい。
(キャビテーション処理したパルプを用いた基紙の特性)
キャビテーション処理の有無のみが異なる同一種類のパルプを用い、同一条件で基紙を抄紙した場合、キャビテーション処理したパルプを用いた基紙は、キャビテーション処理を行わずに通常の機械処理又は化学処理によって叩解したパルプのみを抄紙した基紙に比べ、基紙の透気抵抗度が50〜400%程度程度増加する。
ここで、通常の機械処理によって叩解したパルプとは、例えば特定種類のパルプについてJISに規格する機械パルプや化学パルプが挙げられる。又、その他のパルプについても、一般に行われる叩解処理したものでよい。
基紙に用いるパルプのうち一部をキャビテーション処理した場合は、キャビテーション処理したパルプの含有割合に応じて基紙の透気抵抗度の増加量も変化するが、その場合も基紙の透気抵抗度が50〜400%程度増加したものを、本発明に用いる基紙とみなすことができる。
基紙の透気抵抗度の増加率が50%未満であると、本発明の効果が生じず、キャビテーション処理する必要が生じない場合があり、増加率が400%を超えるとキャストドラム上での乾燥が不充分となり、塗工層の形成が不充分となったり、ドラム汚れなどの問題が生じる場合がある。
又、本発明においては、キャビテーション処理したパルプと、キャビテーション処理せずに公知の叩解機を用いて機械的な叩解処理を施したパルプとを混合して使用することもできる。この場合、キャビテーション処理したパルプの含有割合は、基紙中のパルプ全体の例えば20〜100質量%とすることができる。キャビテーション処理したパルプの含有割合が20質量%未満であると、上記した基紙の透気抵抗度の増加率が50%未満となる場合がある。
なお、透気抵抗度は、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.5−2 「紙及び板紙−平滑度及び透気度試験方法−第2部:王研法」に規定された試験法にて測定する。
(填料)
基紙の白色度を向上させるため、基紙は炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム)を填料として含有する。特に、不純物が少なく白色度が高い点から軽質炭酸カルシウムを用いることが好ましい。
炭酸カルシウムとしては、粒子径0.1〜10μm程度の微粒子を用いることが好ましい。炭酸カルシウムの粒子径が0.1μm未満であると、白色度は向上するが歩留まりが低下する傾向にある。一方、粒子径が10μmを超えると白色度が低下する傾向にある。なお、上記粒子径はレーザー回折法で平均粒子径を測定して求めることが可能である。
又、上記軽質炭酸カルシウムの形状としては、例えば紡錘形、針状、柱状、立方形、ロゼッタ型等いずれの形状のものを単独で使用し又は混合して使用することができる。
炭酸カルシウムは、基紙中に灰分として5〜30%配合されることが好ましく、10〜20%配合されることがより好ましい。炭酸カルシウムの紙中灰分が5%未満であると、充分な白色度が得られない場合がある。一方、灰分が30%を超えると、基紙の紙力が大幅に低下し、基紙の製造時やキャストコート時に断紙が発生し、生産性が低下することがある。なお、灰分は、JIS−P8251に規定する方法で試料(紙)を525±25℃の温度で燃焼させた後の灰分残留物の量を、試料の絶乾質量に対する百分率で表したものである。
また、本発明の効果を損なわない範囲で炭酸カルシウム以外の公知の填料、例えば水和珪酸、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、酸化チタン、合成樹脂填料等を併用することができる。
さらに、基紙の内添助剤として、サイズ剤、紙力増強剤、表面紙力剤、カチオン化剤、歩留まり向上剤、染料、蛍光増白剤等を内添(パルプスラリーに添加)することができる。サイズ剤としては、中性ロジンサイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)系サイズ剤、又はアルケニル無水コハク酸(ASA)系サイズ剤を好適に使用できる。また、紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン化澱粉、尿素/ホルマリン樹脂、及びメラミン/ホルマリン樹脂から選ばれるものを好適に使用できる。
基紙は、公知の抄紙機を用いて抄紙することができる。抄紙機としては、丸網式抄紙機、短網式抄紙機、長網式抄紙機、ツインワイヤー式抄紙機等の商業規模の抄紙機が挙げられ、これらを目的に応じて使用することが可能である。
(基紙のpH)
基紙は、pHが6〜10の中性紙であることが好ましい。更に好ましくは、基紙のpHが6〜8である。
基紙のpHが6未満であると、基紙上にキャスト塗工層(インク受容層)を設けてインクジェット記録用キャストコート紙を製造する際、インク受容層塗工液中の結着剤成分が基紙中に浸透しやすくなるため、インク受容層中の結着剤の割合が低下してインク発色性や光沢度が低下する場合がある。一方、基紙のpHが10を超えると、キャスト塗工層を形成する際、キャストドラムの汚れや、処理液と基紙との過剰反応による凝集沈着などが生じ、操業トラブルとなる場合がある。
なお、基紙のpHはJIS P 8133(紙、板紙、及びパルプ−水抽出液pHの測定方法)に準じて測定を行う。また、簡便に基紙のpHを測定する方法として、基紙を紙層間で裂いて基紙の内側を露出させ、その表面pHをJAPAN TAPPI紙パルプ試験方法 No.49−2:2000 紙−表面pH測定方法−第2部:指示薬法)を用いることもできる
<基紙の透気抵抗度>
上記基紙の透気抵抗度はキャストドラム上での乾燥収縮に影響を与え、キャストコート時のカール形状に影響する。このようなことから、基紙の透気抵抗度を20〜1000秒とすることが好ましい。さらに好ましくは、透気抵抗度は20〜100秒であり、特に好ましくは20秒〜60秒である。
透気抵抗度が20秒未満であると、キャストドラム上での乾燥収縮が大きくなり、カール調整が困難となり、操業性が低下する場合がある。
一方、透気抵抗度が1000秒を超えると、塗工層の乾燥性が著しく低下し、さらにはキャスト時に鏡面ドラムが汚れるため、生産性や操業性が低下する場合がある。
基紙の透気抵抗度は、パルプのキャビテーション処理を行うこと以外に、例えば填料である炭酸カルシウムの灰分、パルプの濾水度の調整によっても可能であるため、これらの処理とパルプのキャビテーション処理とを併用することも可能である。
(表面サイズ剤の塗工)
基紙におけるインク受容層側の表面に表面サイズ剤として、アルキルケテンダイマー、中性ロジンサイズ剤;アルケニル無水コハク酸(ASA)系サイズ剤;マレイン酸又はマレイン酸エステルと、オレフィンとの共重合体;マレイン酸又はマレイン酸エステルと、スチレンとの共重合体;アクリル酸、メタクリル酸エステル、及びアクリル酸エステルの群から選ばれる1種以上と、スチレンとの共重合体;アクリル酸エステル、アクリル酸、又はアクリル酸アミドをモノマー成分として重合させたアクリル系共重合体等の表面サイズ剤を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
又、上記表面サイズ剤とともに、表面紙力剤となる水溶性高分子を含有することが好ましい。水溶性高分子としては、例えば、澱粉、酵素変性澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉(ヒドロキシエチル化澱粉など)、ジアルデヒド化澱粉、リン酸エステル化澱粉、カチオン化澱粉などの澱粉類;完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類;カルボキシメチルセルロース類;アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド;等の各種の天然高分子又は合成高分子が挙げられる。これらの天然高分子又は合成高分子は、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
さらに本発明の効果を損なわない範囲で、保水剤、耐水化剤、pH調整剤、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、界面活性剤、導電剤等、一般にインクジェット記録用紙に使用される添加剤を併用してもよい。
<インク受容層>
インク受容層は顔料と結着剤とを含み、基紙上にキャストコート法で形成される。
(顔料)
本発明においては、光沢を低下させない範囲でインク受容層中に顔料を含有してもよい。顔料としては、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト等のアルミナやアルミナ水和物、合成シリカ、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、酸化亜鉛等が挙げられ、これらを単独で使用し又は併用することができる。発色性の観点からは、透明度が高い顔料である合成シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物を用いることが好ましい。
(結着剤)
インク受容層は結着剤としてポリビニルアルコールを含有する。ポリビニルアルコールを用いると、インク受容層の透明度が向上し、銀塩写真に近い光沢感が得られる。又、ポリビニルアルコールに加え、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化澱粉、エステル化澱粉等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン;カゼイン;ゼラチン;大豆タンパク;スチレン−アクリル樹脂及びその誘導体;スチレン−ブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、塩化ビニルエマルジョン、ウレタンエマルジョン、尿素エマルジョン、アルキッドエマルジョン及びこれらの誘導体;等を配合してもよい。
結着剤の配合量は、顔料100質量部に対して、5質量部〜30質量部であることが好ましいが、必要な塗工層強度が得られれば、特に限定されるものではない。
(インク受容層の塗工)
インク受容層は、上記顔料及び結着剤を含む塗工液を基紙上に塗布して形成することができる。塗工液には、必要に応じ、顔料分散剤、保水剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、着色剤、耐水化剤、湿潤剤、蛍光染料、紫外線吸収剤、カチオン性高分子電解質等を適宜添加することができる。
又、以下のキャストコートの際、鏡面仕上げの面から剥離し易くするため、塗工液には必要に応じて剥離剤を添加することができる。剥離剤の融点は90〜150℃であることが好ましく、特に95〜120℃であることが好ましい。上記の範囲においては剥離剤の融点が鏡面仕上げの金属表面温度とほぼ同等であるため、剥離剤としての能力が最大限に発揮される。剥離剤は上記特性を有していれば特に限定されるものではない。
インク受容層の塗工量は、基紙の表面を覆い、かつ充分なインク吸収性が得られる範囲で任意に調整することができるが、発色性(記録濃度)及びインク吸収性を両立させる観点から、片面当たり、固形分換算で5〜30g/mであることが好ましく、特に、生産性をも加味すると10〜25g/mであることが好ましい。塗工量が30g/mを超えると、鏡面ドラムからの剥離性が低下し、塗工層が鏡面ドラムに付着する場合がある。
基紙上にインク受容層を設ける方法としては、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラッシュコーター、キスコーター、スクイズコーター、カーテンコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター等の公知の塗工機を用いた塗工する方法の中から適宜選択することができる。
<凝固キャストコート法>
高い光沢を有するインクジェット記録用紙を得られるという点から、インク受容層は凝固キャストコート法により形成されることが好ましい。
キャストコート法は、上記塗工液を基紙上に塗工してインク受容層となる塗工層を設け、湿潤し可塑状態の塗工層をキャストドラム(鏡面仕上げの面)に押し当て、光沢仕上げする方法である。凝固キャストコート法は、湿潤状態の塗工層を凝固処理によりゲル状態にして、鏡面仕上げした加熱ドラムに圧着し乾燥する方法である。
凝固法を用いる場合、インク受容層用塗工液を基紙上に塗工し、その塗工層が湿潤状態にある間に結着剤を凝固(あるいは架橋)する作用を持つ処理液を塗布し、その後加熱した鏡面に塗工層を圧着し、光沢を付与する。
処理液を塗布する際のインク受容層は湿潤状態と乾燥状態のいずれであってもよいが、インク受容層が湿潤状態である間に処理液を塗布すると、鏡面ドラムの表面を写し取りやすく、インク受容層表面の微小な凹凸を少なくすることができるため、銀塩写真並の光沢感を得やすい。
(処理液)
本発明においては、結着剤としてポリビニルアルコールを用いることが好ましい。この場合、ポリビニルアルコールを凝固させる作用を持つ化合物として、ホウ酸とホウ酸塩とを含有する処理液を用いることができる。
ホウ酸とホウ酸塩とを併用する理由は以下の通りである。まず、ホウ酸塩を単独で処理液に用いると、ポリビニルアルコールの凝固が強くなり過ぎ、鏡面仕上げの面を充分に写し取ることができず、良好な光沢面を得ることが困難となる場合がある。この場合、処理液中のホウ酸塩濃度を低減してもポリビニルアルコールの凝固の強さは変化しないため、光沢は改善されない傾向にある。
一方、ホウ酸を単独で処理液に用いた場合、ポリビニルアルコールの凝固が柔らかくなり過ぎ、鏡面仕上げの面(ロール)に軟凝固の塗工層が付着し、良好な湿潤状態の塗工層を得ることが困難となる場合がある。この場合、処理液中のホウ酸濃度を高くするとポリビニルアルコールの凝固は強くなる傾向にある。しかし、ホウ酸の溶解度が低いためにホウ酸濃度をあまり高くすることはできず、所望の凝固強さが得られない傾向にある。
このようなことから、ホウ酸塩及びホウ酸を混合して用いることにより、適度な固さの凝固を得ることが容易となり、良好な光沢感を有するインクジェット記録用紙(キャストコート紙)を得ることができる。また、ホウ酸塩とホウ酸を混合した場合、ホウ酸単独の場合より水に対するホウ酸の溶解度が向上し、ポリビニルアルコールの凝固状態を調整しやすくなる。
ホウ酸塩としては例えば、ほう砂、オルトほう酸塩、二ほう酸塩、メタほう酸塩、五ほう酸塩、及び八ほう酸塩から選ばれる1種以上を用いることができるが、特に限定されるものではない。
処理液中のホウ酸塩及びホウ酸の濃度は必要に応じて適宜調整することができる。処理液中のホウ酸塩及びホウ酸の濃度が高くなるとポリビニルアルコールの凝固が強くなり、光沢が劣る傾向にある。また、ホウ酸塩及びホウ酸の濃度が高いと処理液中に析出しやすくなり、処理液の安定性が低下する傾向にある。
ホウ酸塩とホウ酸の好ましい配合割合は、ホウ酸塩とホウ酸とをNa247及びH3BO3に換算した質量比が(ホウ酸塩/ホウ酸)=0.25〜2である。
上記処理液には、必要に応じて上記塗工液に用いた剥離剤を添加することができる。又、処理液には、必要に応じて顔料分散剤、保水剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、着色剤、耐水化剤、湿潤剤、蛍光染料、紫外線吸収剤、カチオン性高分子電解質等を適宜添加することができる。
処理液を塗布する方法としては、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラッシュコーター、キスコーター、スクイズコーター、カーテンコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター等の公知の塗工機を用いた塗工する方法の中から適宜選択することができる。
<実施例>
以下に本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。又、実施例において示す「部」及び「%」は特に明示しない限り、質量部及び質量%を示す。
以下に示すキャビテーション処理後のパルプ100部に対し、軽質炭酸カルシウム20部、硫酸アルミニウム1.0部、AKD0.15部(星光PMC社製 AD1622)、及び歩留向上剤0.015部を添加し、抄紙機で抄紙し中性原紙を得た。この中性原紙の両面に、デンプンと、該デンプンに対して固形分で3.6%の表面サイズ剤AKD(星光PMC社製のSE2382)と、該デンプンに対して固形分で3.0%のスチレン系表面サイズ剤(荒川化学製 ポリマロン1341)とを含むサイズ液を2ロール方式で、片面あたり固形分で1.5g/mとなるよう塗工し、基紙を得た。
<キャビテーション処理パルプの調整>
市販広葉樹漂白クラフトパルプシートを低濃度パルパーで離解し、ろ水度666ml(c.s.f.))のパルプ懸濁液とした。このパルプ懸濁液を1.1質量%に調整後、図5に示す噴流式キャビテーション装置(ノズル径1.5mm)を用いてキャビテーション処理した。
図5において、試料タンク1内に図示しないパルプ懸濁液(濃度1.1%)が収容され、試料タンク1には温度センサー12とミキサー13が挿入されている。試料タンク1のパルプ懸濁液はプランジャポンプ4を介した所定の配管によりキャビテーション噴流セル3に噴射液として導入される。キャビテーション噴流セル3の下部にはノズル2が設けられ、より詳細には試料タンク1のパルプ懸濁液はノズル2から噴流セル3内に噴射される。さらに、試料タンク1の側部から噴流セル3に向かう配管に給水弁9、循環弁10が設けられ、試料タンク1内のパルプ懸濁液を噴流セル3内に被噴射液として供給される。
試料タンク1の側部からノズル2に向かう別の配管には上流側圧力制御弁5が介装されている。一方、噴流セル3の上部から試料タンク1に向かう別の配管には下流側圧力制御弁6が介装され、各弁5,6を調整することで、ノズル2へのパルプ懸濁液の噴射圧を調整可能になっている。又、ノズル2の入側には上流側圧力計7が設けられ、噴流セル3の上部には下流側圧力計8が設けられている。なお、噴流セル3の下部には排水弁が11が設けられている。
キャビテーション処理の条件は、噴射液の圧力(上流側圧力)を7MPa(噴流の流速70m/秒)、被噴射容器内の圧力(下流側圧力)を0.3MPaとし、処理時間を変化させて処理し、ろ水度を調整した。なお、噴流セル3内に噴射される噴射液及び被噴射液として上記した濃度1.1質量%のパルプ懸濁液を使用してキャビテーション処理した。得られたパルプのろ水度は、500ml(c.s.f.)であった。
なお、ろ水度は、JIS P8121「パルプのろ水度試験方法」に準じ、カナダ標準ろ水度を測定した。
この基紙に、塗工液Aをロールコーターで塗工量14g/mとなるように塗工し、塗工層が湿潤状態にある間に、凝固液Bを用いて凝固させ、次いでプレスロールを介して加熱された鏡面仕上げ面であるキャストドラムに塗工層を圧着して鏡面を写し取り乾燥させて、170g/mのインクジェット記録用紙を得た。
塗工液A:顔料として合成シリカ(ファインシールX−37:株式会社トクヤマ社製)100部を配合し、結着剤としてラテックス(LX438C:住友化学工業株式会社製の商品名)5部及びポリビニルアルコール(PVA117:株式会社クラレ社製の商品名)を配合し、サイズ剤(ポリマロン360:荒川化学工業株式会社製の商品名)5部を配合して濃度20%の水性塗工液を調製した。
凝固液B:ホウ砂とホウ酸とをNa247及びH3BO3に換算した質量比が(ホウ砂:ホウ酸)=1:1となるように含有する水溶液を調製した。水溶液中のホウ砂とホウ酸とを、Na247及びH3BO3に換算した時の合計濃度を11質量%とした。
上記したキャビテーション処理の時間を変更し、ろ水度420ml(c.s.f.)のパルプを得た。このパルプを用いたこと以外は実施例1と同様にして基紙及びインクジェット記録用紙を得た。
上記したキャビテーション処理の時間を変更し、ろ水度300ml(c.s.f.)のパルプを得た。このパルプを用いたこと以外は実施例1と同様にして基紙及びインクジェット記録用紙を得た。
<比較例1>
上記したキャビテーション処理を行わず、以下の叩解機を用いた叩解処理を行ったパルプを用いて基紙を作製したこと以外は実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
(叩解機を用いた叩解処理を行ったパルプの調製)
市販針葉樹漂白クラフトパルプシートを低濃度パルパーで離解し、ろ水度666ml(c.s.f.))のパルプ懸濁液とした。このパルプ懸濁液を濃度10%に濃縮した後、PFIミルを用いて叩解し、ろ水度300ml(c.s.f.)のパルプを得た。
なお、PFIミルはJIS P8221−2「パルプ−こう解方法−第2部:PFIミル法」に規定される装置であり、ロールとハウジングのクリアランスを0.2mmとして使用した。
<比較例2>
叩解度300mlの広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)からなるパルプ100部に対し、タルク6部、硫酸アルミニウム2.0部、ロジン系サイズ剤0.5部、及び歩留向上剤0.005部を添加したものを用いて抄紙機で抄紙した。この原紙の両面に、固形分で1.5g/mのデンプンと、該デンプンに対して固形分で3.0%のスチレン系表面サイズ剤(荒川化学製 ポリマロン1341)を塗布して基紙を作成したこと以外は、比較例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
<評価>
1.透気抵抗度
各実施例及び比較例のインクジェット記録用紙の透気抵抗度を、王研式透気度平滑度計(EYO-55S 旭精工株式会社)を用い、Japan Tappi No.5に従って測定した。
2.白色度
各実施例及び比較例のインクジェット記録用紙の白色度を、白色度計(CMS-35SPX、村上色彩株式会社製)を用い、ISO2470に従って測定した。
3.印字濃度、インク発色性
インクジェットプリンター(PM−970:セイコーエプソン株式会社製の商品名、染料インク使用)を用いて、各実施例及び比較例のインクジェット記録用紙に所定のカラーパターンを記録した。マクベス濃度計(グレタグ・マクベス社製)を用いて、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの合計の印字濃度を測定した。
各実施例及び比較例のインクジェット記録用紙の印字濃度に応じて、以下の基準でインク発色性を評価した。
〇:印字濃度が8以上のもの
×:印字濃度が8未満のもの
4.インク吸収性
各実施例及び比較例のインクジェット記録用紙に対し、インクジェットプリンター(PM−970:セイコーエプソン株式会社製の商品名、染料インク使用)を用いて、異なる色(イエロー、ブラック)のベタの四角パターンをそれぞれ隣接して印字し、その境界線のにじみを目視観察し、インク吸収性を以下の基準で評価した。評価が〇であれば実用上問題なく使用できる。
〇:境界線にじみがないもの
×:境界線にじみが見られたもの
5.カール特性
各実施例及び比較例のインクジェット記録用紙の枠先カール、製品カール、環境カールA〜C(標準条件、高温/高湿条件、低温/低湿条件の3種類の条件)を以下の基準で評価した。
(1)枠先カール
乾燥直後のインクジェット記録用紙をA4サイズ(297mm×210mm)に断裁した。断裁した紙を平面に静置した際の紙の4隅の高さを測定し、以下の基準に従い評価を行った(数値の−は、中心部の方が紙の4隅より高いことを示す)。
〇:キャスト塗工面(中心部)を基準としたカールの平均高さが-7〜-12mm
×:キャスト塗工面を基準としたカールの平均高さが-7mm以上、又は-12mm以下
(2)製品カール
乾燥直後のインクジェット記録用紙をA4サイズ:297mm×210mmに断裁した。断裁した紙を包装し、一日以上放置した後、開封した際の平面からの紙の4隅の高さを測定し、以下の基準に従い評価を行った。
〇:キャスト塗工面を基準としたカールの平均高さが+10〜-15mm
×:キャスト塗工面を基準としたカールの平均高さが+10mm以上、又は-15mm以下
(3−1)環境カール
乾燥直後のインクジェット記録用紙をA4サイズ:297mm×210mmに断裁した。以下のA〜Cの条件下で断裁した紙の4隅の高さを測定し、以下の基準で評価した。
〇:A〜C各評価の全てが○のもの
×:A〜C各評価のうち一つでも×があるもの
A(標準条件:断裁後の紙を温度23℃、湿度50%条件下で、24時間静置した際の紙の4隅の高さ)
〇:キャスト塗工面を基準としカールの平均高さが+10〜-15mm
×:キャスト塗工面を基準としカールの平均高さが+10mm以上、もしくは-15mm以下
(3−2)環境カールB(高温/高湿条件:断裁後の紙を温度30℃、湿度80%条件下で、4時間静置した際の紙の4隅の高さ)
〇:キャスト塗工面を基準としカールの平均高さが+10〜-15mm
×:キャスト塗工面を基準としカールの平均高さが+10mm以上、もしくは-15mm以下
(3−3)環境カールC(低温/低湿条件:断裁後の紙を温度15℃、湿度10%条件下で、4時間静置した際の紙の4隅の高さ)
〇:キャスト塗工面を基準としカールの平均高さが+10〜-15mm
×:キャスト塗工面を基準としカールの平均高さが+10mm以上、もしくは-15mm以下
得られた結果を表1に示す。
表1から明らかなように、各実施例の場合、白色度、インク発色性、及びカール特性に優れていた。
一方、キャビテーション処理を行わないパルプを抄紙した基紙を用いた比較例1の場合、白色度、インク発色性は優れていたものの、基紙の透気抵抗度が14秒と低く、カール特性が劣った。
填料に軽質炭酸カルシウムを含まない酸性紙を基紙に用いた比較例2の場合、基紙の透気抵抗度が56秒と高く、カール特性は優れていたが、白色度、インク発色性が劣った。
キャビテーション処理を行ったパルプ繊維の電子顕微鏡写真を示す図である。 図1の部分拡大図である。 従来の機械的な叩解処理を行ったパルプ繊維の電子顕微鏡写真を示す図である。 図3の部分拡大図である。 キャビテーション噴流式洗浄装置の構成を示す概略図である。
符号の説明
1:試料タンク
2:ノズル
3:キャビテーション噴流セル
4:プランジャポンプ
5:上流側圧力制御弁
6:下流側圧力制御弁
7:上流側圧力計
8:下流側圧力計
9:給水弁
10:循環弁
11:排水弁
12:温度センサー
13:ミキサー

Claims (4)

  1. 基紙上にインク受容層を形成し、該インク受容層を加熱した鏡面に圧着して光沢を付与してなるインクジェット記録用紙であって、前記基紙は炭酸カルシウムを填料として含有すると共にキャビテーション処理を行ったパルプを含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
  2. 前記基紙のpHが6〜8であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用紙。
  3. 前記基紙の透気抵抗度が20〜1000秒であることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録用紙。
  4. 前記基紙の白色度が95%以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
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