JP5186978B2 - インクジェット記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
(支持体)
本発明に使用される支持体は、シート状のものであればいずれのものを用いることが可能であるが、後述するキャストコート処理に好適である透気性を有するものが好ましい。例えば塗工紙、未塗工紙等の紙を、支持体に好適に用いることができる。紙の主成分はパルプと内添填料である。パルプとしては通常公知のパルプであればいずれのものを使用することができる。例えば、化学パルプとして広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、広葉樹未晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹未晒亜硫酸パルプ等、木材、綿、麻、じん皮等の繊維原料を化学的に処理して作製されたパルプなどを使用できる。また、木材やチップを機械的にパルプ化したグランドウッドパルプ、木材やチップに薬液を染み込ませた後に機械的にパルプ化したケミメカニカルパルプ、及び、チップをやや軟らかくなるまで蒸解した後にリファイナーでパルプ化したサーモメカニカルパルプ等も使用できる。また、古紙を原料とするパルプ、すなわち、製本、印刷工場、断裁所等において発生する裁落、損紙、幅落しした上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙;印刷やコピーが施された上質紙、上質コート紙等の上質印刷古紙;水性インク、油性インク、鉛筆などで筆記された古紙;印刷された上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙等のチラシを含む新聞古紙;中質紙、中質コート紙、更紙等の古紙等を離解して得られるパルプを使用することもできる。インクジェット用紙には高白色度で地合に優れるLBKPを使用することが好ましい。
支持体上に塗工する塗工層の浸透が多くなりすぎないよう、支持体のステキヒトサイズ度は5秒以上であることが好ましいが、50秒以上である場合は後述する塗工層の浸透を最小限に抑えることができるので、さらに好ましい。
本発明では、支持体上に顔料とバインダーを含有する塗工液を塗布して塗工層を設け、該塗工層の表面が湿潤状態にある間に塗工層を凝固させる処理液を塗布したの後に該塗工層を加熱した鏡面に圧接、乾燥する、いわゆるキャストコート法にてインク受理層を設ける。なおこのインク受理層が主にインクジェット画像を形成するインク受理層となり、表面に光沢を有する層となる。
本発明においてはキャストコート法で形成したインク受理層表面の面感を優れたものにするため、特定のカチオン性化合物をよりインク受理層表面に付与することが可能な凝固法を用いることが好ましい。以下、その詳細について説明を行う。
本発明においては、インク受理層を凝固キャストコート法により設け、これをインク受理層とするが、インク受理層の顔料は、無機や有機の微粒子を、例えば、塗工用顔料として通常用いられる、合成非晶質シリカとコロイダルシリカ、カオリン、水酸化アルミニウム、アルミナ、擬ベーマイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化チタンなどを単独、又は2種以上を混合して使用することができる。本発明において、記録媒体の光沢性付与と紙支持体の被覆、インクジェット印刷物の発色性の向上、およびインクの吸収性の向上のため、キャストコート法で設けるインク受理層の顔料にシリカ系の顔料(合成非晶質シリカとコロイダルシリカ)を使用することが好ましい。なお、インクの定着をコントロールするため、アニオン、カチオンの電気的反応を阻害する顔料の使用は好ましくない。すなわち水酸化アルミニウム、アルミナ、擬ベーマイトなどのアルミニウム系の顔料などが該当する。またシリカ表面をアルミニウムイオンなどでカチオン性を付与したシリカも存在するが、同様の理由で本発明の使用には好ましくない。
合成非晶質シリカは、その製造法により湿式法シリカと乾式法シリカ(気相法シリカ)に大別でき、本発明では湿式法シリカと乾式法シリカのいずれか一方を用いてもよく、両方を用いてもよい。
湿式法で製造された合成非晶質シリカ(以下、適宜「湿式法シリカ」という)は、顔料の透明性に関しては気相法シリカに劣るが、バインダーとしてポリビニルアルコールと併用した場合の塗料安定性に優れる。特に湿式法シリカは、気相法シリカに比べて液への分散性が良好であり、塗料濃度を高くすることが可能である。このため、インク受理層の顔料として湿式法シリカを用いると、インク受理層中の顔料比率が高くなり、インクを塗工層により吸収することができる。従って、インク溶媒の吸収性を向上できると共に染料インク色材を保持し、発色性(印字濃度)を向上できると考えられる。
湿式法シリカの好ましい二次粒子径は1〜8μmである。また、BET比表面積は100〜500m2/gであることが好ましい。なお湿式法シリカの配合量増加によってインク受理層のインク保持量は増加するが、インク受理層の透明性が低下するため、必ずしも印字濃度が向上するわけではない。そのため乾式法シリカと併用することが好ましい。
コロイダルシリカは、アルコキシシランを原料としてゾルゲル法により合成し、合成条件によって一次粒子径(BET法粒子径)や二次粒子径(動的光散乱法粒子径)をコントロールすることが好ましい。コロイダルシリカには、分散状態を顕微鏡で観察した一次粒子および二次粒子の形状から、球状、ピーナッツ状、鎖状、パールネックレス状、房状、不定形の凝集状態が存在し、一次粒子の大きさが等しい場合、これらの凝集状態の順に平均二次粒子径が大きくなる傾向にある。
インク受理層のバインダーとしては、層強度を確保できる従来公知のバインダーを使用することができる。インク受理層のバインダーの配合割合は、顔料に対して5〜50質量%であるのが好ましい。バインダーの配合割合が5質量%未満であるとインク受理層の強度が劣り、50質量%を超えるとインク吸収性に劣る場合がある。
特に、キャストコートの面感を得るため、凝固剤によって凝固しやすいポリビニルアルコールやカゼインをバインダーとして使用することが好ましく、ポリビニルアルコールを使用することがさらに好ましい。ポリビニルアルコールを用いると、インク受理層の透明度が向上し、写真調の光沢感が得られる。
又、ポリビニルアルコールに加え、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化澱粉、エステル化澱粉等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン;カゼイン;ゼラチン;大豆タンパク;スチレン−アクリル樹脂及びその誘導体;スチレン−ブタジエンラテックス、アクリルエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、塩化ビニルエマルジョン、ウレタンエマルジョン、尿素エマルジョン、アルキッドエマルジョン及びこれらの誘導体;等を配合してもよい。
また、インク受理層には、増粘剤、消泡剤、抑泡剤、顔料分散剤、離型剤、pH調整剤、表面サイズ剤、着色染料、着色顔料、蛍光染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定化剤、防腐剤、界面活性剤、湿潤紙力増強剤、保水剤等を、必要に応じて適宜添加してもよい。
インク受理層の塗工量は、片面当たり、固形分換算で3〜50g/m2であることが好ましいが、紙粉削減のためには塗工量が少ないことが好ましく5〜30g/m2であることがさらに好ましい。
本発明において、インク受理層の塗工量を多く必要とする場合には、インク受理層を多層にすることも可能である。又、インク吸収性の向上のため、支持体とインク受理層の間にアンダーコート層を設けてもよく、アンダーコート層はインク受理層と同一の構成でもよく、異なる構成でもよい。また、インク受理層を設けた面と反対の支持体面に、インク吸収性、筆記性、プリンター印字適性、その他各種機能を有するバックコート層をさらに設けてもよい。
本発明においては、インク受理層を凝固キャストコート法で形成することによって光沢を付与する。凝固キャストコート法は、例えば以下のようにして行う。まず、インク受理層となる塗工液を支持体に塗布する。次に、塗工液中の結着剤(特に水系結着剤)を凝固させる作用を有する凝固剤を含有する処理液を未乾燥の塗工層に塗布してゲル化させてから、加熱した鏡面仕上げ面に圧着、乾燥する。凝固キャストコート法は、銀塩写真に匹敵する面感、光沢をインク受理層に付与することが可能である。
凝固剤を含有する処理液を塗布する際に塗工層が乾燥状態であると鏡面ドラム表面を写し取ることが難しく、得られたインク受理層表面に微小な凹凸が多くなり、銀塩写真並の光沢感を得にくい。
本発明に用いる凝固剤は、湿潤状態の塗工層中の水系結着剤を凝固する作用を持つものであればよい。例えば、蟻酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩酸、硫酸等のカルシウム、亜鉛、マグネシウム等の各種の塩が凝固剤として用いられ、これらを水等に溶解した溶液を処理液として用いる。本願では、バインダーとしてポリビニルアルコールを好ましく用いるので、処理液としては、ホウ砂とホウ酸塩とを含有する液を用いることが好ましい。ホウ砂とホウ酸塩とを混合して用いることにより、凝固時の塗工層固さを適度なものとすることが容易となり、キャストコート層に良好な光沢感を付与できる。
ホウ酸とホウ酸塩とを併用する理由は以下の通りである。まず、ホウ酸塩を単独で凝固剤として用いると、ポリビニルアルコールの凝固が強くなり過ぎ、鏡面仕上げの面を充分に写し取ることができず、良好な光沢面を得ることが困難となる。この場合、処理液中のホウ酸塩濃度を低減してもポリビニルアルコールの凝固の強さは変化しないため、光沢は改善されない。
このようなことから、ホウ酸塩及びホウ酸を混合して用いることにより、適度な固さの凝固を得ることが容易となり、良好な光沢感を有するインクジェット記録用紙(キャストコート紙)を得ることができる。また、ホウ酸塩とホウ酸を混合した場合、ホウ酸単独の場合より水に対するホウ酸の溶解度が向上し、ポリビニルアルコールの凝固状態を調整しやすくなる。
ホウ酸塩としては例えば、ほう砂、オルトほう酸塩、二ほう酸塩、メタほう酸塩、五ほう酸塩、及び八ほう酸塩から選ばれる1種以上を用いることができるが、特に限定されるものではない。
本発明では、インクジェット印刷後の画像の色相の変化をいわゆるインク定着剤とよばれるカチオン性化合物によって制御する。以下、インクジェット定着剤について詳細に説明する。
本発明でいうカチオン性化合物とは、その水溶液又は水分散液がカチオン性である物質のことであり、例えばカチオン性高分子化合物をあげることができる。つまり一級アミン、二級アミン、三級アミン、四級アンモニウム塩、環状アミンおよびこれらの高分子を単量体としたものが挙げられる。具体的にはビニルイミン、アルキルアミン、アルキレンアミン、ビニルアミン、アリルアミン、脂環式アミン、ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ジアリルジアルキルアンモニウム塩、アクリルアミド、アミドアミン、アミジンなどのカチオン性高分子を単量体として使用する高分子化合物等が挙げられる。
また、処理液を塗工層表面に塗布する方法としてはロール、スプレー、カーテン方式等があげられるが、特に限定されない。
又、上記塗工液および/または処理液には、必要に応じて離型剤を添加することができる。離型剤の融点は90〜150℃であることが好ましく、特に95〜120℃であることが好ましい。上記の温度範囲においては、離型剤の融点が鏡面仕上げ面の温度とほぼ同等であるため、離型剤としての能力が最大限に発揮される。離型剤は上記特性を有していれば特に限定されるものではないが、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸若しくはその塩類、又はポリエチレンワックス、レシチンなどが好ましく、ポリエチレンワックスを用いることがさらに好ましい。
本発明のインクジェット用記録用紙に使用されるインクとしては、像を形成するための色素と、該色素を溶解または分散する液媒体とを必須成分とし、必要に応じて各種分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、比抵抗調整剤、防かび剤、記録剤の溶解または分散安定化剤等を添加して調整したものが挙げられる。
インクに使用される色素(記録剤)としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食用色素、分散染料、油性染料、及び各種顔料等があげられるが、従来公知のものを特に制限なく使用することができる。色素の含有量は、液媒体成分の種類、インクに要求される特性などに応じて決定されるが、従来のインク中と同様に、液媒体の0.1〜20質量%程度の割合になるように色素を含有させてよい。
<支持体の作製>
叩解度350mlの広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)100部からなるパルプスラリ−に対し、炭酸カルシウム10部、硫酸アルミニウム1.0部、合成サイズ剤0.15部、及び歩留向上剤0.02部を添加し、抄紙機で抄紙した。抄紙の際、5%のデンプンと0.2%の表面サイズ剤(AKD)溶液を紙の両面に片面当り固形分で2.5g/m2となるように塗布し、坪量170g/m2の支持体を得た。支持体のステキヒトサイズ度は200secであった。
<インク受理層の塗工>
支持体の片面に、バーコーターを用いて以下の塗工液Aを塗工(固形分塗工量12g/m2)し、塗工層が湿潤状態にある間に、以下の処理液を塗工層に塗布(湿潤塗布量約3g/m2)して塗工層を凝固させた。次いで、プレスロールを介して加熱された鏡面仕上げ面に塗工層を圧着して鏡面を写し取り、185g/m2インクジェット記録媒体を得た。
処理液の、カチオン性化合物1の配合量を3%に。カチオン性化合物2の配合量を1%に変更したこと以外は、実施例1とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
処理液の、カチオン性化合物1の配合量を2%に。カチオン性化合物2の配合量を2%に変更したこと以外は、実施例1とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
処理液の、カチオン性化合物1の配合量を1%に。カチオン性化合物2の配合量を1%に変更したこと以外は、実施例1とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
処理液の、カチオン性化合物1をポリエチレンイミン系高分子(日本触媒製の商品名エポミンP1000、カチオン化度8.5meq/g)に変更して4%配合し、カチオン性化合物2を配合しなかったこと以外は、実施例1とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
<比較例2>
処理液の、カチオン性化合物1をポリアリルアミン系高分子(日東紡製の商品名PAA−HCl−05、カチオン化度10.7meq/g)に変更して4%配合し、カチオン性化合物2を配合しなかったこと以外は、実施例1とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
<比較例3>
処理液の、カチオン性化合物1をポリアミン系高分子(星光PMC製の商品名DK6860、カチオン化度7.2meq/g)に変更して4%配合し、カチオン性化合物2を配合しなかったこと以外は、実施例1とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
処理液の、カチオン性化合物1を配合せず、カチオン性化合物2を4%配合したこと以外は、実施例1とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
<比較例5>
処理液の、カチオン性化合物1を4%配合し、カチオン性化合物2を配合しなかったこと以外は、実施例1とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
<比較例6>
処理液の、カチオン性化合物1をポリエチレンイミン系高分子(日本触媒製の商品名エポミンP1000、カチオン化度8.5meq/g)変更したこと以外は、実施例1とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
各実施例及び比較例のインクジェット記録媒体を試料に用い、以下の方法で評価した。なおインク定着剤のカチオン化度は、以下の方法にて測定した。
・インク定着剤のカチオン化度測定
インク定着剤の粒子表面電荷測定装置(MUTEC TOLEDO DL−50)にて測定した。
インク受理層表面の像鮮明度を、測定光の入射方向を原紙の抄造方向(MD方向)に平行とし、反射角を60度、光学くし幅2mmとした他は、JIS K7105の方法に示された像鮮明度の反射法の測定条件に準じて測定した。像鮮明度が50%以上であれば、銀塩写真並の光沢感を有するものとなる。○であれば実用上問題がない。
△:像鮮明度が50%未満35%以上
×:像鮮明度が35%未満
Excel(Microsoft社)を使用し、 書式設定の“セルの網かけ”を “50%灰色”としたセルを、染料インクプリンター(PIXUS iP−4100、キヤノン社製)を用いて印刷した。白色度用高速分光光度計(CMS−35SPX:村上色彩技術研究所社製)を用いて印刷部の知覚色度指数を測定し、画像の赤味を評価した。評価が○、△であれば実用上問題がなく、元の灰色画像の色相を再現しているといえる。
△:(|a*|+|b*|)が5以上、8未満。
×:(|a*|+|b*|)が8以上。。
インクジェットプリンターとして、染料インクプリンター(PIXUS iP−4100、キヤノン社製)を用いた。上記ベタ印字部の各色境界部の滲み(境界滲み)を目視評価した。評価が○であれば実用上問題がない。
○:境界滲み殆ど認められない
△:境界滲みがやや認められる
×:境界滲みが著しく認められる
一方、表2の実施例2と比較例1〜6の比較からインク定着剤の種類とカチオン化度の範囲を変更した場合において、適正なインク定着剤を使用しない場合は色相と写真調インクジェット記録媒体としての要件を両立することができなかった。
Claims (1)
- 支持体上に、少なくとも顔料とバインダーを含有するインク受理層用塗工液を塗布して塗工層を設け、該塗工層の表面が湿潤状態にある間に、塗工層を凝固させる作用を有する凝固剤を含有する処理液を塗布した後、該塗工層を加熱した鏡面に圧接、乾燥してインク受理層を設けるインクジェット用記録媒体の製造方法において、前記処理液はカチオン化度が2.0meq/g以上4.0meq/g以下のカチオン性化合物を2種以上含有し、前記カチオン性化合物のうち少なくとも、1種はアクリル酸とベンジルアミンの縮合物であり、他の1種はジシアミンジアミドとエチレンアミンの縮合物であることを特徴とするインクジェット記録媒体の製造方法。
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