JP3671305B2 - インクジェット記録用媒体の塗工液及び記録媒体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、インクジェット記録方式に用いる被記録材用塗工液、更に詳しくは高解像度で発色性、耐水性、耐候性、耐光性に優れた記録画像を形成する被記録材料用塗工液およびそれを塗工した記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット用記録媒体としては、
(1)パルプを主成分とした一般の紙を低サイズ度となるように抄紙したもの、(2)特開昭56−148585号公報に記載されるように、一般の上質紙等のインク吸収性の低い基紙上に、多孔質の無機顔料を用いてインク吸収層を設けたもの等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、記録の多色化あるいは高速化に伴い、インクジェット用記録媒体に対しても、より高度の特性が要求され、インクジェット記録方式において高品位且つ高解像度のカラー画像を得るために、記録媒体は次のような諸性質を満たすことが必要であるとされている。
(1)インクの発色性に優れ、光学濃度、彩度の高い画像が得られること、
(2)インクが滲みすぎず、シャープな画像が得られること、
(3)付着したインク滴を速やかに吸収できること、
(4)記録画像の保存性に優れること(耐水性、耐光性等に優れること)。
【0004】
しかし、これらの性能を満たすには多量のインクを急速に吸収し且つ定着させることが必要となるため、顔料を含んだコート層を厚くしなければならない。その結果として、筆記性に乏しく、紙粉が発生しやすく、製造上の負担が大きく、コスト高となる等の問題が生じており、これらの問題を解決したインクジェット用記録媒体の提供が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は上記の要求性能をいずれも満足し、同時に以下の要求性能をも満たすインクジェット用記録媒体を作製するための添加物を提供することを目的とする。
(1)記録装置との適合性に優れること(紙粉やカールを発生しないこと)、
(2)被記録材としての一般的性能(強度、印刷適性、筆記性など)をもっていること、(3)他の記録方式にも使用できること(PPC、ドット記録等)。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、下記一般式(1)で示される、ベンジル基を有する(メタ)アクリルアミドアルキル第四級アンモニウム塩を骨格とする水溶性重合物を含有するインクジェット記録用媒体の塗工液が上記記録媒体を製造するために支持体に塗工するに適することを見出した。
【0007】
一般式(1)
【化1】
(式中、Rは水素又はメチル基、R1およびR2は同一または異なって、水素あるいはC1〜C18の脂肪族アルキル基、R3はC1〜C4のアルキレン基もしくはCH2CH(OH)CH2 を示す。
X-は陰イオンを表し、ハロゲンイオン、特に塩素,臭素,ヨウ素イオン、硫酸イオン、アルキル硫酸イオン、特にメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、アルキルあるいはアリールスルホン酸イオン、酢酸イオンである。YはNHを表す。)
【0008】
【作用】
本発明で使用する第四級アンモニウム塩型ポリマーが記録画像の耐水性とともに発色性に優れた効果を発揮する理由は明らかでないが、概ね次のように考えられる。一般にカチオン性ポリマーとインクジェット記録に用いられる染料との結合は主としてイオン結合であり、ポリマーの化学構造や大きさによってとりうるコンフォメーション、ポリマーのカチオン性の強さ、カチオン基の分布状態、あるいはポリマーの分子量等の要因が、ポリマーと染料との結合の仕方に作用し、その結果記録画像の耐水性や発色性に影響を与えていると考えられる。
カチオン性ポリマーと染料とが強固に結合するには、使用状態に於いて解離する強さを有するカチオン基が分子中に多数存在し、且つそのカチオン基に染料が接近できる構造を有している必要がある。そしていったんカチオン性ポリマーと染料とが結合してコンプレックスを形成したら、そこに水の分子が近寄りがたい構造を形成することが必要である。またポリマーのコンフォメーションによって染料がポリマーに取り囲まれたり、ポリマーが三次元網目構造をとる場合はその網目構造中に染料が取り込まれることによっても耐水性が得られる。
本発明の第四級アンモニウム塩型ポリマーはカチオン基が高密度で存在し、且つ疎水性を与えるベンジル基が存在することによって、またポリマーの分子量の効果によって、ポリマーが染料を強固に捕捉し再溶解させないので画像の耐水性が良く発色性に優れるものと考えられる。
【0009】
本発明で使用する重合物は式(1)に示すベンジル基を有する(メタ)アクリルアミドアルキルの第四級アンモニウム塩の水溶性重合体あるいは共重合体であり、共重合体である場合は上記第四級アンモニウム塩を50モル%以上含有することが好ましく、80モル%以上含有することが更に好ましい。これは水溶性重合体中に於ける上記第四級アンモニウム塩の割合が50モル%よりも低いと記録画像の濃度や耐水性が低下するためであり、望ましくは第四級アンモニウム塩の割合が80モル%以上であるならば記録画像の濃度や耐水性が向上できる。
【0010】
本発明の第四級アンモニウム塩型カチオン性重合体あるいは共重合体は、下記式(2)に示す第三級アミノ基を有するモノマーとアルキル化剤とを反応して得られる第四級アンモニウム塩モノマーを単独もしくは他の共重合しうるモノマーと重合するか、あるいは式(2)に示す第三級アミノ基を有するモノマーを単独もしくは他の共重合しうるモノマーと重合した後、アルキル化剤で四級化するか、あるいは式(3)に示す第四級アンモニウム塩モノマーを直接重合あるいは共重合させることにより得られる。
【0011】
重合法としては、ラジカル重合開始剤あるいはレドックス系重合剤を使用する水溶液重合法や有機溶媒中に単量体水溶液を乳化あるいは分散させて行う逆相乳化重合法や逆相懸濁重合法や単量体は溶解するが重合体あるいは共重合体は溶解しない有機溶媒中で重合を行う沈澱重合法、あるいは有機溶媒中で第三級アミノ基を有するモノマーを重合あるいは共重合させた後アルキル化剤で四級化する等の通常の方法が使用できる。
【0012】
一般式(2)
【化2】
但し、式中、Rは水素又はメチル基、R1及びR2は同一または異なって、水素あるいはC1〜C18の脂肪族アルキル基、R3はC1〜C4のアルキレン基もしくはCH2CH(OH)CH2 を示す。YはNHを示す。
【0013】
一般式(3)
【化3】
但し、式中、Rは水素又はメチル基、R1及びR2は同一または異なって、水素あるいはC1〜C18の脂肪族アルキル基、R3はC1〜C4のアルキレン基もしくはCH2CH(OH)CH2 を示す。X-は陰イオンを表し、ハロゲンイオン(特に塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)、硫酸イオン、アルキル硫酸イオン(特にメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン)、アルキルあるいはアリールスルホン酸イオン、酢酸イオンを示す。YはNHを示す。
【0014】
ここで、式(2)で示される第三級アミノ基を有するモノマーの具体例としてはN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。上記アルキル化剤の具体例としては塩化ベンジル、臭化ベンジルなどが挙げられる。他方、式(3)で示される第四級アンモニウム塩モノマーの具体例としては(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0015】
上記第三級アミノ基を有するモノマーあるいはその変性化された第四級アンモニウム塩モノマーあるいは第四級アンモニウム塩モノマー以外の単量体としては、非イオン性もしくはカチオン性で共重合可能なものであればよく、例えばエチレン、ブタジエン、スチレン、アルファメチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アルキルアミン、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドアルキルアミン、ビニルピリジン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の一種以上を共重合体の水溶性を損なわない範囲で共重合できる。
【0016】
本発明の水溶性重合物は、1万以上300万以下の平均重量分子量であることが好ましい。分子量が1万未満の場合には形成されるインク受容層の被膜性が低くなり、記録画像の濃度や耐水性が低下するので好ましくない。又分子量が300万を越える場合はポリマー溶液の粘度が高くなりすぎ、インク受容層を形成する操作上の問題が生じるので好ましくない。
【0017】
本発明における記録媒体の支持体となるのはインクジェット記録に適するものであればよく、代表的には紙が挙げられるが、その他に布や、例えばオーバーヘッドプロジェクションに使用されるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムのような各種樹脂フィルムなどを使用することもできる。
【0018】
本発明で使用する水溶性重合物は、支持体に対して塗布量又は含浸量として固形分で0.05〜2.5g/m2 、好ましくは0.1〜1.5g/m2 で十分な画像耐水効果が発現される。塗布方法としては従来法をそのまま用いることが可能である。即ち、サイズプレス、ゲートロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、スプレー等が利用できる。
【0019】
【実施例】
次に実施例、参考例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
[参考例1]
メタクロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド60%水溶液50.6gとアクリルアミド40%水溶液2.22gをイオン交換水140gに溶かし、窒素を吹き込みながら70℃まで加熱し、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ヒドロクロライド0.1%水溶液10gを加え、85℃で2時間反応して、化合物(A)203g(固形分15.4%、平均重量分子量:15万)を得た。
坪量100g/m2 、厚さ100μm、ステキヒトサイズ度5秒の原紙(1)に化合物(A)の5%水溶液をバーコーターを用いて乾燥固形分1g/m2 となるように塗工し、記録媒体を作製した。
上記の記録媒体のインクジェット記録適性はBJC−600J(キヤノン製)にて印刷し評価した。
評価項目として各色のベタ印刷部について以下の項目について行った。
(1)初期発色濃度:マクベス反射濃度計RD920にて測定した。
(2)耐水性:印刷後の試料を25℃のイオン交換水中に15分間浸せきした後、濃度をマクベス反射濃度計RD920にて測定した。
(3)耐光性:印刷後の試料をフェードメーターに投入し、60℃で40時間照射した後、濃度をマクベス反射濃度計RD920にて測定した。
結果を表1に示したが、化合物(A)の塗布により初期発色濃度が向上し、且つ耐水性、耐光性が改良された。
【0020】
[参考例2]
単量体としてメタクロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド60%水溶液56.3gとメチレンビスアクリルアミド0.43gを用いた他は参考例1と同じ条件で重合して、化合物(B)207g(固形分16.5%、平均重量分子量:55万)を得た。
坪量100g/m2 、厚さ100μm、ステキヒトサイズ度5秒の原紙(1)に化合物(B)の5%水溶液をバーコーターを用いて乾燥固形分1g/m2 となるように塗工し、記録媒体を作製した。
インクジェット適性の評価は参考例1と全く同様にして行った。結果を表1に示したが、化合物(B)の塗布により初期発色濃度が向上し、且つ耐水性、耐光性が改良された。
【0021】
[実施例1]
N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを塩化ベンジルで四級化したアクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド35.3gとメチレンビスアクリルアミド0.6gをイオン交換水185gに溶かし、窒素を吹き込みながら70℃まで加熱し、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ヒドロクロライド0.1%水溶液10gを加え、85℃で2時間反応し、化合物(C)231g(固形分15.5%、平均重量分子量:150万)を得た。
坪量100g/m2 、厚さ100μm、ステキヒトサイズ度5秒の原紙(1)に化合物(C)の5%水溶液をバーコーターを用いて乾燥固形分1g/m2 となるように塗工し、本発明の記録媒体を作製した。
インクジェット適性の評価は参考例1と全く同様にして行った。結果を表1に示したが、化合物(C)の塗布により初期発色濃度が向上し、且つ耐水性、耐光性が改良された。
【0022】
[実施例2]
単量体としてメタクリルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド60%水溶液28.1g、メタクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド60%水溶液29.5g、メチレンビスアクリルアミド0.5gを用いた他は実施例1と同じ条件で重合して、化合物(D)208g(固形分16.9%、平均重量分子量:120万)を得た。
坪量100g/m2 、厚さ100μm、ステキヒトサイズ度5秒の原紙(1)に化合物(D)の5%水溶液をバーコーターを用いて乾燥固形分1g/m2 となるように塗工し、本発明の記録媒体を作製した。
インクジェット適性の評価は参考例1と全く同様にして行った。結果を表1に示したが、化合物(D)の塗布により初期発色濃度が向上し、且つ耐水性、耐光性が改良された。
【0023】
[比較例1]
参考例1、2及び実施例1、2に用いた原紙(1)(坪量100g/m2 、厚さ100μm、ステキヒトサイズ度5秒)をそのまま使用して比較例とした。結果を表1に示す。
【0024】
[比較例2]
アクリルアミドの40%水溶液22.2gをイオン交換水35gに溶かし、窒素を吹き込みながら70℃まで加熱した後、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ヒドロクロライド0.1%水溶液10gを加え、85℃で2時間反応し、化合物(E)を得た。 坪量100g/m2 、厚さ100μm、ステキヒトサイズ度5秒の原紙(1)に化合物(E)の5%水溶液をバーコーターを用いて乾燥固形分1g/m2 となるように塗工して記録媒体を作製し、比較例とした。結果を表1に示す。
【0025】
[比較例3]
アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド75%水溶液28.6g、メチレンビスアクリルアミド0.15gを用いた他は参考例1と同じ条件で重合して、化合物(F)を得た。
坪量100g/m2 、厚さ100μm、ステキヒトサイズ度5秒の原紙(1)に化合物(F)の5%水溶液をバーコーターを用いて乾燥固形分1g/m2 となるように塗工して記録媒体を作製し、比較例とした。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
本発明の記録媒体は、表1に示すように、実施例1、2を比較例1〜3と比較すると明らかなように、インクジェット記録した場合に発色性、耐水性、耐光性に優れるなどの特性を有する。
Claims (4)
- 上記重合物が式(1)で示される単量体第四級アンモニウム塩を50mol%以上含有する請求項1に記載のインクジェット記録用媒体の塗工液。
- 上記重合物が1万以上300万以下の平均重量分子量である請求項1に記載のインクジェット記録用媒体の塗工液。
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JP27459694A JP3671305B2 (ja) | 1994-10-12 | 1994-10-12 | インクジェット記録用媒体の塗工液及び記録媒体 |
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