JP4093529B2 - 艶消し塗被紙 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は印刷用塗被紙に関し、嵩高(低密度)でありながら柔軟性に優れ、白紙光沢度が低いにもかかわらず画線部の印刷光沢度が高く、また画線部の微小な光沢むらが少なく、また印刷機での作業性が良好な艶消し塗被紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷物のビジュアル化やカラー化が進み、印刷用紙の高品質化の要求が高まっている。一方で、輸送および郵送コストの削減などのため、印刷物の軽量化に対する要求も高い。従来、これらの二つの要望は相反するものであり、高品質印刷塗被紙は原紙坪量および塗工量が多く、また表面処理による平滑化などにより、同一坪量で比較して密度の高いものであった。印刷物の軽量化には低坪量の用紙を選択することが可能であるが、密度が同等であれば軽量化に伴い紙厚も低くなり、冊子のボリューム感を損なうため好まれない。このため嵩高な、すなわち同一坪量で比較して紙厚の高いもしくは同一紙厚で比較して坪量の低く、かつ高級印刷用途としての塗被紙の要求を満たす高品質な塗被紙が求められている。
【0003】
また近年、ムックやポケットガイドと呼ばれる、版型が小さく携帯に便利な情報誌が好まれる傾向にある。これらの用紙に要求される特性としては柔軟性が重要である。剛直な用紙を使用した場合、版型が小さくなるほど冊子のページをめくる際にページが立ち易くなり、例えば外出先などで、冊子を片手で開いて読むには非常に不便であった。用紙の柔軟性の指標としては、クラークこわさ等が用いられ、低い方が柔軟性があり、こわさは紙厚の3乗に比例して高くなる。嵩高化により同一坪量で紙厚が高くなる場合こわさはそれに伴い高くなる事から、用紙の柔軟性と嵩高を両立させることは極めて困難であった。
【0004】
嵩高化のための手法としては、嵩高なパルプおよび嵩高な填料の使用による塗被紙用原紙の嵩高化、および塗被液組成物塗被量減少、および得られる塗被紙の表面処理の緩和等が用いられる。
【0005】
製紙用パルプとしては、化学薬品により繊維中のリグニンを抽出した化学パルプと、化学薬品を使用せずグラインダーで木材を磨り潰した砕木パルプやリファイナーで木材を解繊したサーモメカニカルパルプ等の機械パルプに大別される。一般的には、化学パルプと比較して機械パルプの方が繊維が剛直で嵩高(低密度)化には効果的である。しかしこれらの機械パルプは上質紙に配合すると白色度が低くなる等の品質上問題があり、また中質紙においても、結束繊維等による紙ムケ等印刷欠陥を生じ易いためその配合量には限界がある。また、近年の環境保護気運の高まりや資源保護の必要性から、古紙パルプが配合されることが多くなっている。しかし古紙パルプは一般的に、上質紙、新聞紙、雑誌、塗工紙等が混合されてパルプ化されることが多いため、バージン(紙に抄かれていない未使用の)機械パルプと比較して密度が高く、嵩高にならない。以上のように、パルプ面のみで十分な用紙の嵩高化を達成することは、木材資源の保護や用紙の品質設計を考えた場合困難である。また、上述のパルプを配合したのみでは嵩高化とともに剛度が高くなるため、用紙に十分な柔軟性を付与することは不可能であった。
【0006】
また、塗被紙用原紙の嵩高化として嵩高な填料の使用が考えられる。例えば特開平5-339898号公報には中空の合成有機物カプセルを配合することにより低密度化する手法が開示されている。しかしながらこのような合成有機物は紙力を低下させるため、印刷時の紙ムケや断紙などの問題がある上、十分な嵩高効果を得るには高配合する必要があるため、製造原価が高くなる等の問題もあった。特開昭52-74001号公報には、シラスバルーンを用いる方法が提案されている。しかしこれは、製紙用パルプとの混合性が悪く、また、それを配合した用紙も印刷むらが発生するなどの問題があった。また、以上の手法を用いても、用紙に柔軟性を付与することは不可能であった。
【0007】
塗被紙の塗被層は一般的に原紙に比較して密度が高いため、塗被層を設けない印刷用紙と比較して塗被紙の密度は高い。このため、塗被紙の嵩高化は、塗被組成物の塗被量を少なくする事によっても達成される。これは、塗被紙全体に占める塗被層の比率が小さくなるためである。しかし、塗被層を少なくする事は同時に、塗被層による原紙の被覆性を低下させるため、白紙光沢度、平滑性、印刷光沢度などの印刷品質を低下せしめるため、目標とする品質を維持しながら塗被量を減少させることには限界があった。
【0008】
塗被紙の印刷品質、特にインクの着肉濃度や画線部の光沢度(以下、印刷光沢度という)を向上するためには、塗被紙の平滑性を高める事が有効な手段の一つである。このため、光沢紙やダル調と呼ばれる艶消し塗被紙と光沢紙の中間的な白紙光沢度を有する塗被紙では、スーパーカレンダーやソフトニップカレンダー等の表面平滑化処理を施すことが一般的である。しかし、これらの処理は用紙を加圧して表面の平滑性を高めるものであるため、同時に用紙の紙厚が低くなり、目標とする印刷品質を得るには十分な嵩高化が達成できない場合があった。
【0009】
一般的な艶消し塗被紙の製造方法は白紙光沢度を低く抑える事を主目的とするため、塗料に配合される顔料は平均粒子径の大きい物が使用されてきた。例えば特開平8−60597号公報に開示されているように、塗料中の顔料のうち30重量部が重質炭酸カルシウムのエスカロン1500(平均粒子径1.65μm)、50重量部が二級カオリンのハイドラスパース(平均粒子径1.61μm)と平均粒子径の大きい顔料が主体であり、このため用紙の平滑性、白紙光沢度および印刷光沢度を目標としたレベルまで高める事は困難であった。
【0010】
一方でダル調塗被紙は、一般的に艶消し調塗被紙に軽度の表面処理を施した物であり艶消し塗被紙と比較して高い印刷光沢度が得られるが、より高い印刷光沢度を目標とする場合表面処理条件を強化する必要があり、マット調塗被紙と同様に、低密度による用紙のボリューム感を維持する事が困難であった。例えば、特開平7−119086号公報に開示されているように、表面処理装置として一般に使用されているスーパーカレンダーのロール表面粗さを粗くすることにより、用紙の白紙光沢度を低く抑えながら平滑性を高める手法がある。しかしながら、6段以上のロールでカレンダー処理した場合、密度が上昇して嵩高さが失われるため目標とした嵩高な艶消し塗被紙は得られない。
【0011】
また低密度でありながら印刷光沢度を向上し、かつ白紙光沢度を低く抑える手法としては表面粗さの粗い金属ロールと樹脂ロールの組み合わせによるカレンダーの使用がある。例えば特開平6−73685号公報、特平6−73686号公報、特開平6−73697号公報、特開平7−238493号公報で開示されているように、表面の粗い金属ロールを用い、処理温度が100℃以上で表面処理を行うものである。しかしながら、これらの技術を用いても本発明で目的とした嵩高な印刷用紙を得る事が困難であった。
【0012】
以上のように、従来の技術単独もしくは組み合わせだけでは、嵩高(低密度)でありながら柔軟性に優れ、白紙光沢度が低いにも関わらず、画線部の印刷光沢度が高く、また画線部の微小な光沢むらが少なく、印刷機での作業性が良好な印刷用塗被紙を得ることは不可能であった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
この様な状況に鑑みて、本発明の課題は、嵩高でありながら柔軟性に優れ、白紙光沢度が低いにも関わらず、印刷光沢度(印刷物の画線部の光沢度)が高く、画線部の微小な光沢むらが少なく、印刷機での作業性が良好な印刷用艶消し塗被紙を提供することにある。
【0014】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは、上記の如き困難な状況において鋭意検討を重ねた結果、原紙上に顔料と接着剤を含有する艶消し塗被紙において、原紙に柔軟化剤を含有し、顔料体積基準で0.4から4.2μmの範囲に65%以上含まれる粒径分布を有し、紙の坪量、密度、抄紙方向の裂断長およびヤング率の4者の積が1.0×1021g2・N/m6以上4.0×1021g2・N/m6以下となるように規定することによって、嵩高でありながら柔軟性に優れ、白紙光沢度が低いにも関わらず、印刷光沢度(印刷物の画線部の光沢度)が高く、画線部の微小光沢むら(印刷面感)が少なく、印刷機での作業性が良好な印刷用艶消し塗被紙が得られることを見出した。本発明においては、顔料として体積基準で0.4から4.2μmの範囲に65%以上含まれる粒径分布を有するカオリンを顔料100重量部当たり20重量部以上使用することが好ましく、より好ましくは50重量部以上、更に好ましくは70重量部以上である
【0015】
本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明者らは、用紙の柔軟性を検討する上で、冊子のめくりやすさに着目した。一般的に用紙のこわさはクラークこわさ、純曲げこわさ等で定量的に評価される。各種の冊子について被験者によるページのめくりやすさと、抄紙方向および幅方向の純曲げこわさとの相関について調査した結果、こわさが低い紙は柔軟となる傾向にあったが、こわさが同等であってもページのめくりやすさの官能評価は異なる用紙があった。すなわち、曲げこわさだけでは用紙の柔軟性は評価できないことが判明した。
【0017】
ページがめくられる際に、用紙には曲げ応力が加えられ、凸となる表面では引張り応力を、凹となる面では圧縮応力を受ける。そこで、幅方向および抄紙方向のヤング率とめくりやすさとの相関を求めた。その結果、幅方向の純曲げこわさが同等であっても、幅方向および抄紙方向のヤング率が低いほど、ページがめくりやすくなることが確認された。試験した多くの用紙で幅方向と抄紙方向のヤング率は正の相関にあったが、特に抄紙方向のヤング率が低い場合ページがめくりやすく柔軟であることに加えて、オフセット輪転印刷機で印刷する際に、給紙部、およびクーリングロール部等で張力の変動が少ないため、紙匹の走行安定性が増し、断紙が発生しにくいことが判明した。
【0018】
また本発明者らは、用紙の強度と柔軟性の関係についても調査した。その結果、紙厚が同等の用紙で比較した場合、裂断長が低い紙の方が柔軟性が高くなる傾向にあることが判明した。例えば裂断長が高い用紙の場合、用紙内のパルプ繊維の間で水素結合の形成量が多く、紙力は相対的に強くなる傾向にあるが、反面繊維の自由度が低下するため、同一の曲げ歪み、もしくは引張り歪みを得るために必要な曲げ応力、もしくは引張り応力が相対的に大きくなり、これによりページがめくりにくくなると考えられる。
【0019】
以上のことから、用紙のヤング率と裂断長を同時に、バランス良く低下させることにより、嵩高で用紙の柔軟性が向上するすなわち同等の坪量で比較して紙厚の高い紙にも応用可能な手法であることを見出した。さらに鋭意検討した結果、目的とする柔軟性が得られるヤング率、裂断長の範囲は、密度および坪量により異なり、用紙の坪量が高いほどヤング率、もしくは裂断長を低下させなければ、良好な柔軟性が得られなかった。すなわち、用紙の柔軟性は坪量、密度、抄紙方向のヤング率、および抄紙方向の裂断長の4者の積の値と良好な相関を示すことが判明した。4者の積が1.0×1021g2・N/m6以上4.0×1021g2・N/m6以下、好ましくは2.0×1021g2・N/m6以上3.5×1021g2・N/m6以下での範囲であれば印刷物を製本して冊子にした時のページのめくりやすさが良好で、嵩高であるためにボリューム感があり、また印刷時の断紙などの発生が少なく作業性が良好な印刷用塗被紙であることを見出した。従来の技術単独もしくは組み合わせによる用紙の嵩高化では得られなかった柔軟性を、ヤング率と裂断長をバランス良く低下させることで達成し、かつ、印刷機での作業性も良好な用紙が得られた。
【0020】
同一の坪量で比較して、密度が通常の値で4者の積の値が1.0×1021g2・N/m6未満である用紙は、過度にヤング率が低いもしくは裂断長が低いことであり、過度に柔軟であるために紙腰が無くページがめくりにくい、もしくは印刷機での張力に対する紙のひずみが大きくなり、弾性限界を超えて伸びた紙は破壊されてしまうため、断紙が起こり易い。また同一の坪量で比較してヤング率および裂断長が通常の値で4者の積の値が1.0×1021g2・N/m6未満である用紙は、過度に密度が低い用紙であり、このような紙は抄紙工程でのプレスやカレンダー処理圧力を極端に低下させる必要があり、このため平滑度が著しく低く印刷品質が劣ってしまう。
【0021】
一方で、同一の坪量で比較して、密度が通常の値で4者の積の値が4.0×1021g2・N/m6を超える用紙は、過度に裂断長が高い、もしくはヤング率が高い事であり、用紙が剛直となり柔軟な用紙が得られず、またヤング率が高い場合剛直になる上にさらに、印刷時の張力変動を吸収しきれず部分的に高い応力がかかってしまうために断紙などのトラブルが発生しやすい。また、同一の坪量で比較してヤング率および裂断長が通常の値で4者の積の値が4.0×1021g2・N/m6を超える用紙は、極端に密度が高い事であり、本発明の目的とする嵩高でボリューム感のある印刷用紙とはならない。
【0022】
しかし、用紙の坪量、密度、抄紙方向のヤング率、および抄紙方向の裂断長を以上の範囲に規定しても、本発明で目的とした白紙光沢度が低いにも関わらず、印刷光沢度(印刷物の画線部の光沢度)が高く、また画線部の微小光沢むら(印刷面感)が良好である艶消し塗被紙は得られなかった。
【0023】
そこで本発明者らは、塗被組成物についてさらに鋭意検討を行った。その結果、顔料粒子の粒子径の分布が狭く、すなわち粒度分布を狭くする事により塗被層による原紙の被覆性が向上することを見出した。
【0024】
一般的な塗被組成物用無機顔料は、有機合成粒子、例えばプラスチックピグメントのように粒子径がほぼ均一なものではなく、微細な粒子や粗大な粒子が混合されているため粒径分布が広い。粒子径が同一な球粒子で構成される単分散の場合、粒子の充填率は粒子径に依存せず同一であるが、多分散、例えば二種類の異なる粒子径をもつ球の混合系では、粒子の充填密度は大きい粒子径と小さい粒子径の比、および二種類の粒子の混合比率等に依存し、粒子径の比(小粒子の粒子径/大粒子の粒子径の値)が小さいほど充填率は高くなる。従って、粒度分布の狭い顔料からなる塗被層は、粒度分布の広いものに比べて小粒子の粒子径が大きくもしくは大粒子の粒子径が小さく、もしくは双方の効果によって顔料粒子の充填率が低くなり、塗被層の密度が低くなると考えられた。
【0025】
塗被紙において、塗被層による原紙の被覆性を向上させるには、塗被量を多くする事が有効であるが、嵩高な塗被紙を目標とした場合、原紙と比較して密度の高い塗被層の比率を高める事は、塗被紙の密度を高める事になり適さない。同一の塗被量で比較して塗被層による原紙の平滑性を向上するには、塗被層の密度を下げる必要がある。従って、多数の粒子径からなる粒子の混合物である塗被層において、顔料粒子の充填率を下げる事は塗被層の密度を下げる事になり、原紙の被覆性が向上するものと考えられる。
【0026】
従って、塗被層中に含まれる顔料粒子の粒度分布を規定する事で、白紙光沢度が低いにも関わらず、印刷光沢度が高く、印刷面感の良好な、高品質な艶消し塗被紙が得られる事が判明した。すなわち、塗被層中の顔料粒子が体積基準で0.4から4.2μmの範囲に65%以上含まれる粒径分布にすることで塗被層による原紙の被覆性が大幅に改善され、さらに塗被層中に体積基準で0.4から4.2μmの範囲に65%以上含まれる粒径分布を有するカオリンを20部以上含有させる事でさらに被覆性の良好な艶消し塗被紙が得られる事を見出した。これは、粒子の充填密度が低く嵩高な塗被層を形成する事に加え、板状のカオリン粒子が原紙表面に存在する微小な空隙を覆うため顔料が入り込むのを抑制し、原紙の被覆性が大幅に改善されるためと考えられる。
【0027】
塗被組成物中の顔料が体積基準で0.4から4.2μmの範囲に入る粒子の比率が65%未満であって、粒径が小さい粒子を多く含む場合粒子の充填密度が高くなり、またこれらの粒子は原紙表面の微小な空隙の中に入ってしまい原紙表層に残らないため、原紙の被覆性が劣り印刷光沢度が低くなり、また微小な光沢むらが多く印刷面感が劣る。また、体積基準で0.4から4.2μmの範囲に入る粒子の比率が65%未満であって、粒径が大きい粒子を多く含む場合、原紙表面の微小な空隙に入り込む粒子の比率は少ないが、粒子の充填密度が高くなり、また粗大な粒子により平滑性が低下するため、白紙光沢度および印刷光沢度が低くなり、また微小な光沢むらが多く印刷面感が劣る。尚、本発明の顔料の体積粒度分布測定は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法を(マルバーン(株)製、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置名:マスターサイザーS)を用いて、粒子の体積粒度分布を測定したものである。
【0028】
【発明の実施の形態】
用紙の坪量、密度、ヤング率、および裂断長の4者の積を1.0×1021g2・N/m6以上4.0×1021g2・N/m6以下にするためには、原紙に柔軟化剤を含有し、用紙の密度、抄紙方向のヤング率、および抄紙方向の裂断長を各々低下させる手段を組み合わせる事が好ましい。用紙の密度を低下させる方法としては、低密度のパルプおよび低密度の填料の配合率を向上させる方法、あるいは嵩高薬品の使用、あるいは抄紙工程のプレス圧やマシンキャレンダーの処理線圧低減などが挙げられる。用紙の抄紙方向のヤング率を低下させる方法としては、柔軟化剤の使用などが挙げられる。用紙の抄紙方向の裂断長を低下させる方法としては、填料の配合率を挙げる等の方法が用いられる。
【0029】
本発明において原紙に配合されるパルプの種類等は、例えば広葉樹クラフトパルプ(以下、LBKPとする)、針葉樹クラフトパルプ(以下、NBKPとする)、サーモメカニカルパルプ、砕木パルプ、古紙パルプ等が使用される。被覆性を向上し、光沢ムラを抑えるためには、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ等の化学パルプを用いることが好ましい。
【0030】
また、本発明で使用する填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、水和珪酸、ホワイトカーボン、酸化チタン、合成樹脂填料などの公知の填料を使用する事が出来る。ヤング率を低下させるために填料の使用量は、パルプ重量あたり6重量%以上が好ましく、より好ましくは10重量%以上である。さらに必要に応じて、硫酸バンド、サイズ剤、紙力増強剤、嵩高剤、歩留まり向上剤、着色顔料、染料、消泡剤などを含有しても良い。
【0031】
本発明で使用する柔軟化剤とは、パルプ繊維間結合を阻害する作用を有するか、繊維自体を柔軟化するものである。例えば、疎水基と親水基を持つ化合物であって、油脂系非イオン界面活性剤、糖アルコール系非イオン界面活性剤、糖系非イオン界面活性剤、多価アルコール型非イオン界面活性剤、高級アルコール、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物、高級アルコールまたは高級脂肪酸のポリオキシアルキレン付加物、高級脂肪酸エステルのポリオキシアルキレン付加物、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物のポリオキシアルキレン付加物、脂肪酸ポリアミドアミンなどを使用することができる。ヤング率の低下に加えて純曲げこわさおよび密度の低下も可能なものが好ましく、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物等を使用することが好ましい。
【0032】
更に密度、ヤング率および裂断長に影響しない範囲で、表面強度やサイズ性の向上の目的で、原紙に水溶性高分子を主成分とする表面処理剤の塗布を行っても良い。水溶性高分子としては、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酵素変性澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の、表面処理剤として通常使用されるものを単独、あるいはこれらの混合物を使用することができる。また、表面処理剤の中には、水溶性高分子の他に耐水化、表面強度向上を目的とした紙力増強剤やサイズ性付与を目的とした外添サイズ剤を添加することができる。表面処理剤は2ロールザイズプレスコーターや、ゲートロールコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、およびシムサイザーなどのフィルム転写型ロールコーター等の塗工機によって塗布する事ができる。また、本発明に使用される印刷用塗被紙原紙のpHは、酸性、中性、アルカリ性の何れでも良い。
【0033】
本発明においては、密度、ヤング率、および裂断長に影響しない範囲で、原紙に顔料と接着剤を有する塗被層を設ける。
【0034】
塗被層に用いる顔料として塗被紙用に従来から用いられている、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料、プラスチックピグメントなどの有機顔料であり、これらの顔料は塗被組成物中の粒子が体積基準で0.4から4.2μmの範囲に65%以上含まれる粒径分布を有する範囲内であれば必要に応じて1種類以上を選択して使用できる。
【0035】
本発明において使用する接着剤は、塗被紙用に従来から用いられている、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白の蛋白質類、酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉類、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体などの通常の塗被紙用接着剤1種類以上を適宜選択して使用される。これらの接着剤は顔料100重量部あたり5から50重量部、より好ましくは5〜25重量部程度の範囲で使用される。また、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤、印刷適性向上剤など、通常の塗被紙用塗被組成物に配合される各種助剤が適宜使用される。
【0036】
原紙上に設ける塗被層は、密度、ヤング率、および裂断長に影響しない範囲で、原紙の片面あるいは両面に、単層あるいは二層以上設ける事も可能である。本発明の塗被層の塗工量は、好ましくは片面当たり8〜25g/m2、より好ましくは10〜20g/m2である。
【0037】
塗被組成物を原紙に塗被するための方法としては、2ロールサイズプレスコーターや、ゲートロールコーター、およびブレードメタリングサイズプレスコーター、およびロッドメタリングサイズプレスコーター、シムサイザー等のフィルム転写型ロールコーターや、フラデッドニップ/ブレードコーター、ジェットファウンテン/ブレードコーター、ショートドウェルタイムアプリケート式コーターの他、ブレードの替わりにグルーブドロッド、プレーンロッド等を用いたロッドメタリングコーターや、カーテンコーター、ダイコーター等の公知のコーターにより塗被することができる。
【0038】
また、用紙の平滑性向上、および印刷品質向上等のため、上述の手法で得られた塗被紙を、密度に影響しない範囲で表面処理する事ができる。表面処理の方法としては弾性ロールにコットンロールを用いたスーパーカレンダーや、弾性ロールに合成樹脂ロールを用いたソフトニップカレンダー等、公知の表面処理装置を用いる事が出来る。ソフトニップカレンダーは合成樹脂ロール表面の耐熱温度がコットンロールに比べて高く設定することが可能なため、高温での処理が可能である。同一の平滑性を目標とした場合、スーパーカレンダーに比べて処理線圧を低く設定できる場合があるため、より低密度で平滑性の高い塗被紙が得られるため好ましい。本発明の印刷用塗被紙は、密度が好ましくは1.00g/cm3以下、より好ましくは0.90g/cm3以下でより効果が顕著である。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。尚、特に断らない限り、例中の部、および%はそれぞれ、重量部および重量%を示す。選られた印刷用塗被紙について、以下に示すような評価法に基づいて試験を行った。
<評価方法>
(顔料の体積粒度分布測定)レーザー回折/散乱式粒度分布測定器(マルバーン(株)製、機器名マスターサイザーS)を用いて粒子の体積粒度分布を測定し、0.4μmから4.2μmの範囲に該当する粒子のパーセントを計算により求めた。
(坪量) JIS P 8124:1998に従った。
(密度) JIS P 8118:1998に従った。
(ヤング率) JIS P 8113:1998に従い、引張り弾性率を測定し、これをヤング率とした。
(裂断長) JIS P 8113:1998に従った。
(被覆性) 塗被紙をバーンアウト処理液(2.5%塩化アンモニウム、50%イソプロピルアルコール水溶液)に2分浸漬し、風乾後に200℃送風乾燥器内で20分加熱処理した。サンプルの塗布量むらに由来する着色むらを10人のモニターにより、◎非常に優れる、○優れる、△やや劣る、×劣るの4段階で評価した。
(白紙光沢度) JIS P 8142:1998に従った。
(印刷光沢度) RI−II型印刷試験機を用い、東洋インキ製造株式会社製枚葉プロセスインキ(商品名TKハイエコー紅 MZ)を0.30cc使用して印刷を行い、一昼夜放置後、得られた印刷物の表面をJIS P 8142:1998に従って測定した。
(光沢むら) 白紙表面の微小な光沢むらを10人のモニターにより、◎非常に優れる、○優れる、△やや劣る、×劣るの4段階で評価した。
(柔軟性:ページのめくりやすさ) 白紙100枚をA5版サイズに断裁し、クリップで挟んで冊子のモデルを作成し、ページをめくった際のめくりやすさを10人のモニターにより、◎非常に優れる、○優れる、△やや問題あり、×問題ありの4段階で評価した。
(印刷機での作業性) サンプル巻き取りを、オフセット輪転印刷機にて、印刷速度250m/minで、6,000mの長さを印刷し、印刷中のインフィード部とクーリング部の張力変動を、○小さい、△やや大きい、×大きいまたは断紙が発生するものを×の、3段階で評価した。
[実施例1]
製紙用パルプとして化学パルプを100部、填料として軽質炭酸カルシウムを12部、柔軟剤として多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物(KB−110、花王株式会社製)を0.3部含有する坪量64g/m2の原紙に、顔料としてブラジル産カオリン(リオカピム社製、カピムDG、体積分布粒径0.40〜4.20μm:71.7%)100部からなる顔料(体積分布粒径0.40〜4.20μm:71.7%)に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.1部、バインダーとしてカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックスを11部、燐酸エステル化澱粉を3部加え、さらに水を加えて65%濃度に調整した塗被液を、塗被量が片面あたり14g/m2となるように、塗被速度800m/分のブレードコーターで両面塗被を行い、艶消し塗被紙を得た。
[実施例2]
塗被液に含まれる顔料として、重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製、FMT−90、体積分布粒径0.40〜4.20μm:71.7%)20部、ブラジル産カオリン(リオカピム社製、カピムDG、体積分布粒径0.40〜4.20μm:71.7%)80部からなる顔料(体積分布粒径、0.40〜4.20μm:71.7%)とした以外は、実施例1と同様の方法で艶消し塗被紙を得た。
[実施例3]
塗被液に含まれる顔料として、重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製、FMT−90、体積分布粒径0.40〜4.20μm:71.7%)60部、ブラジル産カオリン(リオカピム社製、カピムDG、体積分布粒径0.40〜4.20μm:71.7%)40部からなる顔料(体積分布粒径0.40〜4.20μm:71.7%)とした以外は、実施例1と同様の方法で艶消し塗被紙を得た。
[実施例4]
塗被液に含まれる顔料として、重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製、FMT−90、体積分布粒径0.40〜4.20μm:71.7%)50部、二級カオリン(ドライブランチカオリン社製、DBコート、体積分布粒径0.40〜4.20μm:61.8%)50部からなる顔料(体積分布粒径0.40〜4.20μm:66.8%)とした以外は、実施例1と同様の方法で艶消し塗被紙を得た。
[比較例1]
塗被液に含まれる顔料として、重質炭酸カルシウム(三共製粉製、エスカロン1500、体積分布粒径0.40〜4.20μm:25.0%)20部、ブラジル産カオリン(リオカピム社製、カピムDG、体積分布粒径0.40〜4.20μm:71.7%)80部からなる顔料(体積分布粒径0.40〜4.20μm:62.4%)とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗被紙を得た。
[比較例2]
原紙に多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物を含有しなかった以外は実施例2と同様の方法で艶消し塗被紙を得た。
[比較例3]
製紙用パルプとして化学パルプを100重量部、填料として軽質炭酸カルシウムを12重量部含有する坪量103g/m2の原紙に、重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製、FMT−90、体積分布粒径0.40〜4.20μm:71.7%)20重量部、ブラジル産カオリン(リオカピム社製、カピムDG体積分布粒径0.40〜4.20μm:71.7%)80重量部からなる顔料(体積分布粒径0.40〜4.20μm:71.7%)に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.1重量部、バインダーとしてカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックスを11重量部、燐酸エステル化澱粉を3重量部加え、さらに水を加えて65重量%濃度に調整した塗被液を、塗被量が片面あたり14g/m2となるように、塗被速度800m/分のブレードコーターで両面塗被を行い、艶消し塗被紙を得た。
[比較例4]
原紙の坪量を40g/m2、塗被量を片面あたり12g/m2とした以外は、実施例2と同様の方法で艶消し塗被紙を得た。
【0040】
上記条件で製造した艶消し塗被紙において、坪量、密度、抄紙方向の裂断長、および抄紙方向のヤング率を測定し、4者の積を算出した。また、塗料による原紙の被覆性、白紙光沢度、印刷光沢度、画線部の光沢むらを評価した。さらに同用紙について冊子に製本した際のページのめくりやすさの評価と印刷機での作業性についての評価を行い、結果を表1に示した。
[表1]
【0041】
表1から明らかなように、原紙に柔軟化剤を含有し、塗被層中の顔料粒子が体積基準で0.4から4.2μmの範囲に65%以上含まれる粒径分布を有し、塗被紙の坪量、密度、抄紙方向のヤング率、および抄紙方向の裂断長の4者の積の値が1.0×1021g2・N/m6以上4.0×1021g2・N/m6以下の範囲にあれば、柔軟性に優れるためページがめくりやすく、かつ嵩高で、印刷機の作業性にも優れ、白紙光沢度および画線部の印刷光沢度が高く、また画線部の微小な光沢むらが少なく、また印刷機での作業性が良好印刷用艶消し塗被紙である事が明らかである。
【0042】
【発明の効果】
本発明により、嵩高(低密度)で、柔軟性に優れ、白紙光沢度が低いにも関わらず、画線部の印刷光沢度が高く、また画線部の微小な光沢むらが少なく、また印刷機での作業性が良好な印刷用塗被紙を得る事が出来る。
Claims (1)
- 原紙上に、顔料と接着剤を含有する塗被層を有する印刷用塗被紙であって、原紙には疎水基と親水基を持つ化合物で、油脂系非イオン界面活性剤、糖アルコール系非イオン界面活性剤、糖系非イオン界面活性剤、多価アルコール型非イオン界面活性剤、高級アルコール、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物、高級アルコールまたは高級脂肪酸のポリオキシアルキレン付加物、高級脂肪酸エステルのポリオキシアルキレン付加物、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物のポリオキシアルキレン付加物、脂肪酸ポリアミドアミンから選択される柔軟化剤を含有し、塗被層には体積基準で0.4から4.2μmの範囲に65%以上含まれる粒径分布を有するカオリンを顔料100重量部当たり20重量部以上を含有し、さらに塗被層の塗被量は、片面あたり8〜25g/m 2 を塗被して、坪量、密度、抄紙方向のヤング率および抄紙方向の裂断長の4者の積が1.0×1021g2・N/m6以上4.0×1021g2・N/m6以下であることを特徴とする印刷用艶消し塗被紙。
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