JPWO2005011396A1 - コーヒー焙煎豆の処理方法および水蒸気処理コーヒー焙煎豆 - Google Patents

コーヒー焙煎豆の処理方法および水蒸気処理コーヒー焙煎豆 Download PDF

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Abstract

コーヒー焙煎豆の酸味成分を低減し、かつ、その抽出率を向上させ、コーヒー由来の優れた香味を引き出すことのできるコーヒー焙煎豆の処理方法およびそれを用いた水蒸気処理コーヒー焙煎豆である。 コーヒー焙煎豆に水蒸気を通気状態で供給して水蒸気処理を行うコーヒー焙煎豆の処理方法、より具体的には、水蒸気供給路および水蒸気排出路を設けた豆収容部に、コーヒー焙煎豆を収容して、大気圧よりも高い出口圧力で水蒸気排出路から水蒸気が排出されるように、水蒸気供給路から水蒸気排出路に水蒸気を流通させて水蒸気処理を行うコーヒー焙煎豆の処理方法と、水蒸気処理を行ったコーヒー焙煎豆であり、そのコーヒー焙煎豆の抽出率が35%以上で、コーヒー焙煎豆に対するギ酸の含有量と酢酸の含有量の合計が0.25重量%以下である水蒸気処理コーヒー焙煎豆。

Description

本発明は、コーヒー焙煎豆の処理方法およびそれを用いた水蒸気処理コーヒー焙煎豆に関する。より詳しくは、コーヒー焙煎豆の酸味成分を低減し、可溶性固形分の抽出率を向上させるための技術に関する。
「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」と「飲用乳の表示に関する公正競争規約」により分類される、「コーヒー飲料」に関する殺菌条件は過酷であり、通常、120℃、20分程度の加熱殺菌が行われる。そのため、飲料内で加水分解を主とする化学変化を伴い、飲料が変質して味が変わってしまい、特に酸味が増すという問題があった。また、近年は、コーヒー飲料の酸味が好まれない傾向があった。
そのため、酸味の低減は、コーヒー飲料の重要な課題の一つであり、コーヒー抽出液中の酸味成分の除去という観点での発明が開示されているが、より簡便に酸味成分を低減する方法の開発が求められていた。
また、コーヒー抽出率の向上も、重要な課題の一つであった。コーヒー飲料のコーヒー原料の中でも、主な原料の一つは、コーヒー焙煎豆であり、焙煎度により、日本では一般に、浅炒り、中炒り、深炒りと呼ばれる。コーヒー飲料製造工場でレギュラーコーヒー豆を抽出する場合、一般には、ドリップ式抽出機を用い、粉砕したコーヒー焙煎豆から熱水(90〜100℃)で可溶性固形分を抽出する。
しかしながら、コーヒー飲料の製造においては、コーヒー焙煎豆の可溶性固形分の抽出率が低いという問題があった。
抽出率については、一般的に、「コーヒーを限界まで抽出すると、重量の35%相当量の成分が溶け出すが、この中には嫌味な成分も含まれているため、抽出は通常18%程度に抑えられる」と言われている(例えば、飲料用語事典、(株)ビバリッジジャパン社、86ページ参照)。
従来、主に抽出率の向上や匂いの改善を目的として、水蒸気で豆を処理する方法が検討されている。
例えば、特開2000−342182号公報には、コーヒー焙煎豆を飽和蒸気で蒸煮処理し、真空乾燥することにより、不快な酸味を低減して高品質に改良するコーヒー豆の改質方法が開示されている。つまり、短時間調理殺菌装置に使用される釜に、水蒸気を供給して5〜30分蒸煮することにより、コーヒー豆の改質を意図している。
ここで、蒸煮とは、水蒸気を熱媒体として加熱することを意味し、その方法は、原料に蒸気を直接接触させ伝熱させる、いわゆる蒸す方式と、ジャケット、パイプ等の熱板の内側に蒸気を通し、熱板を通じて伝熱する間接加熱方式、また、直接、間接を組み合わせた方式がある(例えば、食品設備・機器辞典、産業調査会 辞典出版センター、2002年、100ページ参照)。
しかし、コーヒー焙煎豆を蒸煮する技術において、生豆の臭気(ロブスタ臭)の除去や、焙煎時の臭気生成防止については種々検討されているものの、抽出率の向上と酸味の低減を両立させるという目的に対しては十分な効果を奏しているとはいえなかった。
そこで、本発明の目的は、コーヒー焙煎豆の酸味成分を低減し、かつ、その抽出率を向上させ、コーヒー由来の優れた香味を引き出すことのできるコーヒー焙煎豆の処理方法およびそれを用いた水蒸気処理コーヒー焙煎豆を提供することである。
通常、焙煎豆を流通状態の水蒸気で処理すると、必要な可溶性成分や香り成分が喪失するため、不適当と考えられていた。しかしながら、本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、焙煎豆であっても、連続的に水蒸気で処理することが可能であり、酸味成分の除去が可能であることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、コーヒー焙煎豆を、高温・高圧下において、水蒸気を連続的に供給する水蒸気処理を行い、コーヒー焙煎豆の水蒸気洗浄および水熱反応を同時に行った。排出された蒸気を凝縮液(ドレン)として回収した結果、コーヒー焙煎豆の可溶性固形分は、ドレンには殆ど溶出していないことが判った。一方、酸味成分として、ドレン中の各種有機酸を分析した結果、ギ酸、酢酸が特異的に除去できることが判った。さらに、水蒸気で連続的な水蒸気処理を行う前後におけるコーヒー焙煎豆の可溶性固形分の抽出率を評価した結果、水熱反応により抽出率が大きく向上することがわかった。
つまり、本発明のコーヒー焙煎豆の処理方法の第1の特徴構成は、コーヒー焙煎豆に水蒸気を通気状態で供給して水蒸気処理を行う点にある。
このようにして、処理されたコーヒー焙煎豆は、上述の知見に基づき酸味成分が除去され、かつ、水熱反応処理により、コーヒー可溶性固形分の抽出率が向上する。
また、特に、コーヒー焙煎豆としてロブスタ種を用いた場合には、ロブスタ種に特有の不快臭が、排出された蒸気の凝縮液に回収され、ロブスタ種の品質向上も同時に達成できる。
また、本発明のコーヒー焙煎豆の処理方法の第2の特徴構成は、水蒸気供給路および水蒸気排出路を設けた豆収容部に、コーヒー焙煎豆を収容して、大気圧よりも高い出口圧力で前記水蒸気排出路から水蒸気が排出されるように、前記水蒸気供給路から前記水蒸気排出路に水蒸気を流通させて水蒸気処理を行う点にある。
つまり、このようにして水蒸気処理すると、前記豆収容部が加圧状態に維持されつつ前記豆収容部に水蒸気が流通され、前記コーヒー焙煎豆と水蒸気との接触が図られる。コーヒー焙煎豆と水蒸気とが加圧状態で接触すると、前記水熱反応がより活発に行われ、可溶性固形分の抽出率が向上するとともに、酸味除去が効率よく行われる。そのため短時間で水蒸気処理を完了することができて、コーヒー焙煎豆の香気成分等の喪失を少なく抑えることができる。
また、本発明のコーヒー焙煎豆の処理方法の第3の特徴構成は、前記コーヒー焙煎豆が、全粒焙煎豆と目開き1.7mmのメッシュを通過する粉砕焙煎豆であり、前記粉砕焙煎豆の量が70重量%以下である点にある。
つまり、全粒焙煎豆のみならず、粗粉砕されたコーヒー焙煎豆においても適用可能であり、このような条件を満たす限り、後の実施例から明らかなように、たとえ粗粉砕されたコーヒー焙煎豆を含んでいても、所望どおりの酸味除去効果に加えて、ロースト香の低下を抑制することができる。
また、本発明のコーヒー焙煎豆の処理方法の第4の特徴構成は、前記コーヒー焙煎豆が全粒焙煎豆である点にある。
コーヒー焙煎豆の酸味成分は、焙煎効果を強く受けた豆の表層近くに多く存在するので、粉砕の程度の低い焙煎豆とすれば、十分に酸味成分を除去しつつ香気成分の喪失を抑制することができる。さらに、本発明者らによるとコーヒー焙煎豆は、全粒焙煎豆であっても十分に酸味成分除去が可能であることが確認されている。そのため、前記コーヒー焙煎豆を全粒焙煎豆としておくと、酸味成分を有効に除去しつつ香気成分の喪失を抑制することができ、しかもコーヒー焙煎豆の抽出率も高く維持することができる。
また、本発明のコーヒー焙煎豆の処理方法の第5の特徴構成は、前記水蒸気処理に使用する水蒸気の量が、前記コーヒー焙煎豆の重量の10重量%以上である点にある。
つまり、水蒸気処理に使用する水蒸気の量をコーヒー焙煎豆の重量の10重量%以上にすることにより、後の実施例から明らかなように、酸味の除去、特にギ酸や酢酸の除去効果が期待できる。
また、本発明のコーヒー焙煎豆の処理方法の第6の特徴構成は、水蒸気が飽和水蒸気である点にある。
焙煎豆中の酸味成分は飽和度の高い蒸気を用いることで効率的に除去することができる。そのため、特に飽和水蒸気を用いると、高い酸味除去効果を発揮することができる。
また、本発明のコーヒー焙煎豆の処理方法の第7の特徴構成は、水蒸気の温度が、100℃〜230℃である点にある。
前記水熱反応は高温高圧で活発に行われるため、水蒸気温度を高温に維持することによって、高い酸味成分除去効率を発揮させられる。そのため、前記コーヒー焙煎豆を100℃〜230℃で水蒸気処理すると、酸味成分を有効に除去しつつ香気成分の喪失を抑制することができ、しかもコーヒー焙煎豆の抽出率も高く維持することができる。
また、本発明の水蒸気処理コーヒー焙煎豆の特徴構成は、水蒸気を通気状態で供給して水蒸気処理を行ったコーヒー焙煎豆であり、そのコーヒー焙煎豆の抽出率が35%以上で、前記コーヒー焙煎豆に対するギ酸の含有量と酢酸の含有量の合計が0.25重量%以下である点にある。
つまり、水蒸気を通気状態で供給する水蒸気処理を行うことにより、従来では18%程度が限界であると考えられていた抽出率を大幅に上回るにもかかわらず、酸味が少なくて香気も十分なコーヒー焙煎豆を提供することができるようになった。
さらに、本発明の水蒸気処理コーヒー焙煎豆の特徴構成は、水蒸気供給路および水蒸気排出路を設けた豆収容部に、コーヒー焙煎豆を収容して、前記水蒸気供給路から前記水蒸気排出路に100℃〜230℃の飽和水蒸気を大気圧よりも高い出口圧力で前記水蒸気排出路から水蒸気が排出されるように流通させて水蒸気処理した点にある。
つまり、前記水蒸気処理コーヒー焙煎豆は、コーヒー焙煎豆が高温高圧で水蒸気処理されているから、酸味成分が十分に除去され、かつ、抽出率を高く維持されたものとなっている。そのため、酸味が少なく、コクがあって香気の十分なコーヒー飲料を提供することができるようになった。
なお、本発明における焙煎とは、コーヒーで一般に言われる焙煎、すなわち、コーヒー生豆に熱源をあてて煎ることを言う。一般に、焙煎の変化は、生豆の細胞壁が熱を受け、徐々に水性成分が蒸発し、組織が収縮するものとされており、生豆は焙煎されることによって初めて黒褐色となり、特有の香りと苦味や酸味を生じて飲用コーヒー豆になる。
従って、本発明でいうコーヒー焙煎豆とは、コーヒー生豆に対して上述の焙煎の工程を経たものをいう。本発明に用いるコーヒー焙煎豆の、品種、焙煎機、焙煎方法、焙煎度は特に限定されず、通常のものを用いることができる。
本発明において、コーヒー豆の品種としては、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種などを用いることができ、特にアラビカ種、ロブスタ種を好適に用いることができる。本発明は、特に酸味の強い品種に対して好適に用いることができ、酸味とともに不快臭を除けることから、不快臭のある品種、例えば、ロブスタ種に対しても好適に用いることができる。
コーヒー生豆の焙煎機は、一般的な焙煎機{水平(横)ドラム型焙煎機}を用いることができ、また、焙煎方法は、加熱方法で分類すると、直火、熱風、遠赤外線、マイクロウェーブなどを用いることができる。また、焙煎度は、米国方式の8段階の呼称で、ライトロースト、シナモンロースト、ミディアムロースト、ハイロースト、シティロースト、フルシティロースト、フレンチロースト、イタリアンローストのいずれであっても用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明によれば、水蒸気処理で、コーヒー焙煎豆の酸味の低減が図れることから、酸味の低減の必要な焙煎豆に好適に用いることができる。酸味の低減の必要な焙煎豆としては、例えば、焙煎度の高い豆や、高圧処理などを施して抽出率を向上させた焙煎豆などが挙げられる。抽出率を向上させた焙煎豆は多くの場合、酸味の向上が大きな課題であったことから、本発明は、例えば、抽出率を20%以上とした焙煎豆に対しても好適に用いることができる。従って、本発明の技術は、コーヒー豆の抽出率を向上させる種々の技術と組み合わせて用いることができる。
コーヒー焙煎豆の粒度は、連続的な水蒸気処理によるコーヒー可溶性固形分の流失を抑えるため、全粒または粉砕程度の弱いものが好ましい。特に、焙煎豆の酸味成分は焙煎効果を強く受けた豆の表層近くに多く存在することから、連続的な水蒸気処理によるコーヒー可溶性固形分の流失を最も受けにくい形状である、実質的に全粒(未粉砕)の焙煎豆を好適に用いることができる。ただし、連続的な水蒸気処理によるコーヒー可溶性固形分の流失が許容される範囲で、粉砕品(極荒挽など)を用いてもよい。
本発明においては、効率よく酸味成分を除去できることから、連続的に通気する水蒸気処理を行う。本発明において、水蒸気を通気して水蒸気処理する場合、水蒸気を実質的に連続的に通気することができれば、装置および方法は特に限定されない。水蒸気を断続的に、あるいは、段階的に流通させてもよい。排気弁が常に開いた状態で処理を行うか、或いは、排気弁が半連続的に開いた状態で、水蒸気がコーヒー焙煎豆を通過できる状態であればよい。
水蒸気処理を行う装置の種類は特に限定されず、連続的な水蒸気処理が制御できる装置であればよく、横型や縦型、バッチ式や連続式の装置を用いることができる。圧力容器を用いる場合に、一般的には、処理対象物を水蒸気処理する際に、所定の圧力(または温度)に到達すると、排気弁を閉じて、所定時間の保持を行うが、本発明においては、上記のように、排気弁は連続的または半連続的に、開いた状態で処理を行う。水蒸気の単位時間あたりの処理流量は、酸を除去できる程度の流量があればよく、特に限定されないが、例えば、コーヒー焙煎豆1kgあたり、0.1〜100kg/時が好ましい。
水蒸気の発生装置は特に限定されず、蒸気ボイラー、和釜などを用いることができる。水蒸気の水質は、純水から発生させた蒸気であるピュアスチームが好ましいが、食品の処理に使用可能な水質であれば、特に限定されず、場合によっては、水にアルコールなどを適量加えて蒸気を発生させてもよい。また、処理後の焙煎豆加工品の品質が許容される範囲であれば、水蒸気は省エネルギー化のため一部循環させて使用してもよい。
水蒸気の種類は原則として特に限定されず、飽和水蒸気、過熱水蒸気、過飽和水蒸気などを用いることができる。なお、焙煎豆の抽出率を向上させる効果を合わせて期待する場合には、水蒸気の温度条件を100℃程度以上とすることができるが、その場合には、経時的に酸の生成が進む。このように、焙煎豆中で酸の生成が並行して起こる条件の場合には、酸の除去効果の高い、飽和度の高い水蒸気、特に飽和水蒸気を好適に用いることができる。
一方、酸の生成の程度が低いまたは伴わないような処理条件(例えば、100℃以下、あるは低圧条件)の場合、水蒸気の種類は特に限定されず、飽和水蒸気、過熱水蒸気、過飽和水蒸気などを用いることができる。
水蒸気の温度および圧力条件は、原則として、酸味成分や不快臭を除去するためには、水蒸気の流れがあればよい。さらに、焙煎豆の抽出率の向上を併せて図るには、コーヒー豆中の不溶性成分である多糖類や繊維質などを加水分解して可溶性成分を得る必要があることから、水蒸気の温度および圧力条件はある程度高温高圧であることが望ましい。
すなわち、圧力は、加圧条件、特に0.1〜3.0MPaで処理することが望ましい。
この圧力条件を生み出すための温度条件は、水蒸気の種類により温度範囲が異なる。一般に100℃〜300℃の水蒸気が使用可能であるが、飽和水蒸気の場合には、約100℃〜230℃の温度範囲とすることで上記圧力とできる。更に好ましくは、水熱反応処理によりコーヒー可溶性固形分の抽出効率を高める条件である、圧力(約0.7〜3.0MPa)が望ましい。この圧力条件とするためには、飽和水蒸気の場合、約165℃〜230℃の温度範囲とすることで設定できる。
このような条件で水蒸気を通気するには、水蒸気供給路および水蒸気排出路を設けた豆収容部に、コーヒー焙煎豆を収容して、大気圧よりも高い出口圧力で前記水蒸気排出路から水蒸気が排出されるように、前記水蒸気供給路から前記水蒸気排出路に水蒸気を流通させる。
コーヒー焙煎豆を本発明における方法で安定して処理し、高品質のコーヒー焙煎豆を得るために、通気させる水蒸気による処理流量と処理時の環境温度・圧力を制御する。
主な制御法として、供給する水蒸気の温度と圧力の相関を利用し、環境温度・圧力を制御することができる。具体的には、任意の加工槽の形状や材質に対し、通気水蒸気に関して適当な管路径、配管材質、管路数などを選択し設計し、さらにはコントロール弁等で管路を自由に制御できる装置を取り付けた加工槽を用いることで、流路加工槽内を希望の一定の圧力環境下に保持しつつ、水蒸気を必要な供給流量で通気することができる。
コーヒー焙煎豆を連続的に水蒸気処理する際の水蒸気の流れ方向は特に限定されず、処理するコーヒー焙煎豆に対して、上から下方向、下から上方向、外から内方向、内から外方向などが挙げられる。
排出された蒸気は、操作環境を考えると直接排気するよりも、コンデンサーなどを使って凝縮し、水溶液として回収することが好ましい。また、場合によっては、通気した水蒸気は循環し再度コーヒー焙煎豆の処理に用いてもよい。凝縮液には、酸味成分や、ロブスタ種コーヒー焙煎豆の不快臭成分が回収される。
このようにして、酸味成分が除去された水蒸気で処理された本発明のコーヒー焙煎豆は、冷却、乾燥(真空乾燥、熱風乾燥など)を行った後、常法によって、サイロなどに保管することができる。
本発明における水蒸気処理されたコーヒー焙煎豆は、コーヒー飲料のコーヒー原料の一つとして、コーヒー焙煎豆(レギュラーコーヒー豆)、インスタントコーヒー、液体コーヒーエキスなどと共に用いることができ、常法により、コーヒー飲料製造工場で製造することができる。例えば、コーヒー飲料缶詰の製造工程を例として挙げると、「粉砕(レギュラーコーヒー豆およびコーヒー焙煎豆)」「抽出」「調合」「ろ過」「充填」「巻締」「殺菌」「冷却」「箱詰め」の工程で製造することができる。
或いは、コーヒー焙煎豆を用い、インスタントコーヒーや液体コーヒーエキスなどを調製してもよい。
以下、本発明について、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
全粒のコーヒー焙煎豆から酸味成分を低減する方法に関し、全粒のコーヒー焙煎豆を水に浸漬させる際の温度条件の影響を検討した。
すなわち、大気圧下において、75、85、95、100℃の各温度に保温した水300mlに、コーヒー焙煎豆20g(L=19(固体及び液体の色度/明るさを表す一般的な指標。L値と呼ばれる。)、アラビカ種)を添加して、5分間攪拌した後、ステンレスメッシュ(140メッシュ)に受けて固液分離を行って、各温度の浸漬液を得た(約300ml)。得られた浸漬液について、コーヒー可溶性固形分(Brix)と酸味成分(酸度)を測定した。
Brixの測定はATAGO社RX−5000αを用い、測定皿に浸漬液約0.5mlを滴下して測定した。
酸度は、滴定酸度を測定し、浸漬液を0.1N NaOHにてpH7まで滴定し、滴定に要した0.1N NaOHの量(ml)であらわした。
結果を表1に示す。Brixあたりの酸度は、95℃以下の温度水準の浸出液では6.1から9.2とほぼ同様に低値であったが、100℃の浸出液では、Brixあたりの酸度は57.4と、他の水準に比べ、高い値を示した。
従って、全粒のコーヒー焙煎豆は、95℃以下の温度の熱水に添加・攪拌しても酸味成分およびコーヒー可溶性固形分は選択的に分けられないが、驚くべきことに、100℃の熱水の場合には、コーヒー可溶性固形分に比べ、酸味成分を特異的に除去できるということがわかった。
Figure 2005011396
次に、100℃の場合に起こった上記の現象が、主に水蒸気によるものか或いは水によるものかを調べるために、小型のオートクレーブ(耐熱耐圧密閉容器)を用いて、100℃付近において検討した。
すなわち、コーヒー焙煎豆を、水蒸気で蒸らす処理(気相処理)と、水で浸漬する処理(液相処理)をそれぞれ行い、比較検討した。
気相処理として、具体的には、水300mlを入れたビーカーの上に、コーヒー焙煎豆30g(L=20、アラビカ種)を入れたステンレスメッシュ(140メッシュ、ビーカーと同じ径)を、水と直接接しないように置き、105℃、5分のオートクレーブ処理を行い、コーヒー焙煎豆を水蒸気で蒸らした後の、ビーカー中の水の、酸味成分(ここではpHを測定)およびコーヒー可溶性固形分(Brix)の評価を行った。
一方、液相処理として、具体的には、水300mlを入れたビーカーに、コーヒー焙煎豆30g(L=20)を添加し、浸漬させた状態で105℃、5分のオートクレーブ処理を行い、コーヒー焙煎豆を浸漬処理(液相処理)を行った。コーヒー焙煎豆を取り除き、得られたビーカー中の水を同様に評価した。
結果を表2に示す。表から明らかな通り、液相処理に比べ、気相処理を行った場合のビーカー中の水には、コーヒー可溶性固形(Brix)を含まずに、酸味成分を特異的に含んでいた。すなわち水蒸気により揮発性の酸味成分が豆から除去されて、ビーカー内に回収されたと考えられる。従って、酸味成分の特異的な除去には、コーヒー焙煎豆と水蒸気を接触させることが重要であることがわかった。
Figure 2005011396
コーヒー焙煎豆の酸味成分に対する水蒸気処理の及ぼす影響を検討した。
コーヒー焙煎豆として焙煎度の高いコーヒー焙煎豆(L=18、アラビカ種)を全粒で用いた。蒸気入口配管、出口配管を有する耐圧3.0MPaの圧力容器(豆収容部)に、コーヒー焙煎豆2.0kgを入れ、蒸気入口配管より0.2MPa(120℃)の低圧の飽和水蒸気を、コーヒー焙煎豆1kgあたり210kg/時の流量で通気する水蒸気処理を行って、圧力0.2MPa(120℃)、4分の水蒸気処理を行ったのち真空乾燥し、水蒸気処理コーヒー焙煎豆(以下本処理豆とする)を得た。
まず、本処理豆と未処理豆を抽出し、抽出率およびpHを測定した。すなわち、それぞれの豆の粉砕豆50gに500mlの95℃の熱水を加えて5分間の抽出を行い、抽出液のpH、可溶性固形分(Brix)および抽出率を評価した。
なお、抽出率*は、抽出液のBrix(B)、回収液量(A)、粉砕豆重量(C)から、以下の式に従って計算した。
*(%)=A(g)×B(%)/C(g)
結果を表3に示す。表から明らかな通り、本処理豆は未処理豆に比較して、抽出率はやや高かった。ところが、本処理豆においては、未処理豆に比較して、抽出液の酸味(pH)が高く、酸味が押さえられていることがわかった。
Figure 2005011396
そこで、本処理豆および未処理豆の酸味成分(有機酸)を分析した(図1)。分析は、それぞれの豆を粉砕し、0.5%過塩素酸(クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸)または水(酒石酸、フマル酸)を用いて抽出後ろ過した試験溶液を調製した後、高速液体クロマトグラフ法を用いて行い、コーヒー豆重量あたりの有機酸量で表した。図1中、値なしは、検出限界以下を示す。
その結果、図1から明らかな通り、本処理豆と未処理豆を比較すると、処理前に比べ、ギ酸および酢酸が低減されたことがわかる。なお、非揮発性の有機酸(クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸)の含量はほとんど変化が無かった。
次に、本処理豆の水蒸気処理の工程において排出された蒸気について評価した。すなわち、水蒸気処理により、排出された蒸気をコンデンサーで凝縮して回収した(以下、ドレンという)。ドレンは、コーヒー焙煎豆1kgあたり約2L得られた。ドレン中の可溶性固形分(Brix)と酸味成分(有機酸)を分析した。
ドレンのBrixは0.11(≒固形分1.1g/L)であった。コーヒー焙煎豆の重量あたりに換算すると、約0.2%程度(約2.2g/kg)の可溶性固形分しかドレンには溶出していないこととなり、水蒸気処理を経ても、可溶性成分の損失量は十分に少ない程度であることがわかった。
また、ドレンの酸味成分(有機酸)を分析した(図2)。分析は、ドレンをろ過した試験溶液を調製した後、高速液体クロマトグラフ法を用いて行い、ドレンの重量あたりの有機酸量で表した。その結果、酸味成分として、ギ酸、酢酸が特異的に検出された。
以上の結果より、焙煎豆に水蒸気を通気すると、焙煎豆中の可溶性成分を損なうことなく、焙煎豆中の酸味成分、特に、ギ酸および酢酸を特異的に除去できることがわかった。
酸味成分の除去効率を高める方法として、水蒸気を通気する方法を検討した。また、その際同時に、圧力容器内で高温下の水熱反応を行うことで、コーヒー焙煎豆の可溶性固形分の抽出率を向上させることができるのではないかと考えた。
そこで、全粒のコーヒー焙煎豆を、高温・高圧下において、水蒸気を通気し、コーヒー焙煎豆の水蒸気処理および水熱反応を同時に行った。
すなわち、蒸気入口配管、出口配管を有する耐圧3.0MPaの圧力容器に、コーヒー焙煎豆2.0kg(L=20、アラビカ種)を入れ、蒸気入口配管より1.3MPa(194℃)の高圧水蒸気(飽和水蒸気)を、コーヒー焙煎豆1kgあたり100kg/時の流量で通し、通気処理を行って、圧力1.3MPa(194℃)、4分の処理を行い、コーヒー焙煎豆である、本処理豆1を得た。
また、通気処理を行わない、すなわち、圧力容器に蒸気入口配管より水蒸気を供給し、容器内圧力が1.3MPa(194℃)になった時点で出口配管のバルブを閉じて処理を行う以外は、本処理豆1と同様の条件で処理を行い、対照豆を得た。
また、水蒸気で通気処理を行う前のコーヒー焙煎豆を、未処理豆とした。
さらに、通気処理を行う水蒸気の性質を評価するため、0.2MPa(194℃)の過熱水蒸気を用い、コーヒー焙煎豆1kgあたり100kg/時の流量で通し、通気処理を行って、圧力0.2MPa(194℃)、4分の処理を行い、コーヒー焙煎豆である、本処理豆2を得た。
本処理豆1および本処理豆2について、可溶性成分の損失について調べた。その結果、排出された蒸気のドレンは、コーヒー焙煎豆1kgあたり約2L得られた。ドレンを分析したところ、Brixは0.51(≒固形分5.1g/L)および0.35(≒固形分3.5g/L)であった。コーヒー焙煎豆の重量あたりに換算すると、約1%程度(約10g/kg)の可溶性固形分しかドレンには溶出していないこととなり、未粉砕の焙煎豆では、連続蒸気処理を経ても、可溶性成分の損失量は十分に少ない程度であることがわかった。
また、本処理豆1について、通気処理中に排出された蒸気を、コンデンサーで凝縮して回収し(以下、回収液をドレンという)、ドレンの可溶性固形分(Brix)と酸味成分(有機酸)を分析した。ドレンの有機酸分析は、実施例3と同様に行い、ドレンの重量あたりの有機酸量で表した。結果を図3に示す。図から明らかな通り、酸味成分として、ギ酸、酢酸が特異的に除去できた。
さらに、本処理豆1、本処理豆2、対照豆、未処理豆を乾燥・粉砕し、抽出液を評価した。すなわち、粉砕豆50gに500mlの95℃の熱水を加えて5分間の抽出を行い、抽出液の抽出率およびギ酸、酢酸の含有量を分析した。
結果を表4に示す。
Figure 2005011396
表4から明らかな通り、本処理豆1の抽出液は、対照豆および未処理豆の抽出液に比べてギ酸、酢酸の含有量は低く、本処理豆1の抽出液は対照豆および未処理豆の抽出液より酸味が低減されていた。本処理豆1では、ドレンに酸味成分が除去されたことが理由と考えられる。さらに、本処理豆2の抽出液も、対照豆および未処理豆の抽出液に比べてギ酸、酢酸の含有量が低いことから、通気処理に使用する水蒸気は飽和水蒸気だけでなく過熱水蒸気であっても、酸味成分の除去効果が認められることがわかった。
すなわち、本発明の方法によれば、酸味成分が除去され、可溶性成分を損なうことなく、かつ、水熱反応処理によりコーヒー可溶性固形分の抽出率が向上されたコーヒー焙煎豆を得られることがわかった。
次に、酸味成分の除去に必要な水蒸気量を検討した。本技術で使用する水蒸気量は、多いほど酸味成分の除去効果が上がると考えられる。そこで、蒸気入口配管、出口配管を有する耐圧3.0MPaの圧力容器にコーヒー焙煎豆2.0kgを入れ、蒸気入口配管より1.0MPa(180℃)の高圧水蒸気(飽和水蒸気)を、それぞれ総使用水蒸気量が10kg、2kg、0.5kg、0.2kg、0.1kgとなるように通気流量を調整し、通気処理を行って、圧力1.0MPa(180℃)、4分の処理を行い、コーヒー焙煎豆である、本処理豆を得た。なお、通気処理を行わない、すなわち、圧力容器に蒸気入口配管より水蒸気を供給し、容器内圧力が1.0MPa(180℃)になった時点で出口配管のバルブを閉じて処理を行う以外は、本処理豆と同様の条件で処理を行い、対照豆を得た。
得られた本処理豆と対照豆を乾燥・粉砕し、粉砕豆50gに500mlの95℃の熱水を加えて5分間の抽出を行い、得られた抽出液のギ酸、酢酸の含有量の測定、および、専門パネラーによる酸味の評価を行った。なお、酸味の評価は評点法で行い、
酸味を「感じる」=3点、
「やや感じる」=2点、
「感じない」=1点
の3段階とし、専門パネリスト5名の平均点を算出した。
結果を表5に示す。
Figure 2005011396
表5から明らかな通り、コーヒー焙煎豆2.0kgに対し、0.1kgの通気流量では、ギ酸、酢酸の含有量、および、酸味の評点法において対照豆と同等の結果であったが、0.2kg以上の通気流量では、ギ酸、酢酸の含有量、および、酸味の評点法において対照豆よりも数値が低い結果となった。このことから、本技術で使用する、通気処理用の水蒸気の総量は、装置に仕込んだコーヒー焙煎豆の重量の10%以上が好ましいと考えられる。
次に、通気処理に使用するコーヒー焙煎豆の粒度を検討した。本技術は、全粒のみならず、粗粉砕されたコーヒー焙煎豆においても適用できるものであるが、逆に細かくなり過ぎると、通気蒸気にロースト香が移行し、処理豆から得られる香りの総量が少なくなるだろうと考えられる。そこで、JIS標準ふるい(細目用)の10メッシュふるい(目開き1.7mm)を用い、メッシュパスする画分の割合にて10%、30%、50%、70%、そして90%の5水準のコーヒー焙煎豆各2.0kg(L=20、アラビカ種)を蒸気入口配管、出口配管を有する耐圧3.0MPaの圧力容器に入れ、蒸気入口配管より1.0MPa(180℃)の高圧水蒸気(飽和水蒸気)を、コーヒー焙煎豆1kgあたり100kg/時の流量で通し、通気処理を行って、圧力1.0MPa(180℃)、4分の処理を行い、コーヒー焙煎豆である、本処理豆を得た。
得られた処理豆を乾燥・粉砕し、粉砕豆50gに500mlの95℃の熱水を加えて5分間の抽出を行い、得られた抽出液のギ酸、酢酸の含有量、および、アラビカ種固有のロースト香の評価を行った。なお、ロースト香の評価は評点法で行い、
ロースト香を「感じる」=3点、
「やや感じる」=2点、
「感じない」=1点
の3段階とし、専門パネリスト5名の平均点を算出した。
結果を表6に示す。
Figure 2005011396
表6から明らかな通り、メッシュパスする画分の割合にかかわらず、酸味成分の除去効果が認められたが、メッシュパスする画分が90%になると、ロースト香の低下が認められた。このことから、コーヒー焙煎豆の10メッシュパスする画分の割合は、70%以下であることが望ましいことがわかった。
次に、コーヒー焙煎豆(全粒)を、ロブスタ種にかえて、高温・高圧下において、水蒸気を連続的に通気した。
すなわち、コーヒー焙煎豆としてロブスタ種(L=18)を用いた以外の条件は、実施例4と同様にして、連続的な水蒸気処理を行い、本処理豆を得た。また、水蒸気で通気処理を行う前のコーヒー焙煎豆を、未処理豆とした。そして、本処理豆、未処理豆を、実施例4と同様にして、乾燥・粉砕し、抽出液を評価した。また、本処理品、未処理品について、専門パネラーによるロブスタ臭の評価を行った。評価は,抽出率およびロブスタ臭の評価で行った。
なお,ロブスタ臭の評価は、評点法で行い、
ロブスタ臭を「感じる」=3点、
「やや感じる」=2点、
「感じない」=1点
の3段階とし、専門パネリスト5名の平均点を算出した。
結果を表7に示す。表7から明らかな通り、未処理豆に比べ、本処理豆は、抽出率が約1.6倍向上した。ロブスタ臭の評価の評点から、本処理品は未処理品に比べ、ロブスタ臭が少ないことがわかる。
Figure 2005011396
一方で、本処理豆を得る際に回収した蒸気ドレンの香り評価を行った。その結果、ドレンからは、不快なロブスタ臭が感じられた。
従って、本処理において、コーヒー焙煎豆としてロブスタ種を用いた場合には、ロブスタ種に特有の不快臭が排出された蒸気の凝縮液に回収・除去され、ロブスタ種の品質を高めることが出来ることが判った。
さらに、ロブスタ豆を用いた本発明の水蒸気処理コーヒー焙煎豆(本処理豆(乾燥後))と未処理豆における、基礎成分(水分、たんぱく質、脂質、灰分、糖質、食物繊維、その他)を評価した。
水分は、常圧加熱乾燥法、
たんぱく質は、ケルダール法、
脂質は、ソックスレ−抽出法(石油エーテル)、
灰分は、直接灰化法、
食物繊維は、酵素−重量法、
糖質は、栄養表示基準による計算式
[100−(水分+たんぱく質+脂質+灰分+食物繊維+カフェイン+タンニン)]
を用いて分析した。
結果を図4に示す。両豆の水分含量は2%および3%であった。水分以外の基礎成分の大きな変化として、未処理豆に比べて本処理豆は、食物繊維が約10数%減少し,糖質が6%および脂質が4%増加した。
従って、抽出率が向上した主な理由は、基礎成分で考えると、高温高圧下における水熱反応等により、食物繊維が分解し、糖質や脂質が増大したことによると考えられた。
次いで、本発明におけるコーヒー焙煎豆を用いて、乳入りコーヒー飲料を製造した。
すなわち、ロブスタ種の焙煎豆(L=24)を用いて圧力3.0MPa(230℃)、0.5分の通気処理を行った。他の条件は、実施例4と同様にして、本発明におけるコーヒー焙煎豆2kgを得た。得られたコーヒー焙煎豆100gを粉砕し、80℃の純水1000mlで、15分間ドリップ抽出した後、固液分離を行って、抽出液を得た。次に、牛乳200ml、砂糖100g、適量の重曹(レトルト殺菌後のpHが5.75になるように調整)に本抽出液を加え、純水にて最終2Lに調整した調合液を、均質化した後、190mL入りの缶に充填・密栓して、レトルト殺菌(125℃、20分)を行って、ミルク入りのコーヒー飲料である本処理飲料(レトルト殺菌後のpH=5.75)を得た。
また、コントロールとして、本発明における処理を行っていないロブスタ種の焙煎豆を用いて、上記と同様に調製し、ミルク入りのコーヒー飲料である未処理飲料(レトルト殺菌後のpH=5.75)を得た。
その結果、本処理飲料の抽出液は、Brix4.0のものが約800ml得られ、抽出率は、32.2%であった。一方、未処理飲料の抽出液は、Brix2.5のものが約800ml得られ、抽出率は、20.2%であった。
次に、本処理飲料、未処理飲料について、専門パネラーによる香味評価を行った。香味評価は、専門パネリスト5名により評点法で行って、平均点を算出した。
評点は、「良い」=5点、
「やや良い」=4点、
「ふつう」=3点、
「やや悪い」=2点、
「悪い」=1点
の5段階とした。
また、ロブスタ臭の評価は、
ロブスタ臭を「感じる」=3点、
「やや感じる」=2点、
「感じない」=1点
の3段階とした。
結果を表8に示す。香味評価の評点は、本処理飲料は未処理飲料に比べ、良い評価点を得た。また、本処理飲料は、コクがあり厚みがあるというコメントを得た。このコメントは、抽出率の増加が反映していると思われた。さらに、ロブスタ臭の評価の評点は、本処理飲料は未処理飲料に比べ、ロブスタ臭が少ないという評価点を得た。
Figure 2005011396
従って、コーヒー可溶性固形分の抽出効率が高まり、かつ、コーヒー由来の優れた香味が付与されたコーヒー飲料を得ることができた。また、ロブスタ臭が低減されたコーヒー飲料を得ることができた。
次に、実施例8で得られた本処理飲料および未処理飲料について、ホットベンダー(加熱可能な自動販売機)における保管を想定して、保存安定性の実験を行った。すなわち、70℃の恒温槽内に、本処理飲料および未処理飲料(両品ともにpH=5.75)を各2本入れ、1週後、2週後にサンプリングを行って、pHを測定して、pHの低下度合を評価した。
結果を図5に示す。未処理飲料の製造直後から1週後、2週後のpHの低下は、それぞれ0.22および0.38であったのに対し、本処理飲料の1週後、2週後のpH低下はそれぞれ0.13および0.25であり、本処理飲料は未処理飲料に比べ、pH低下度合が低いことがわかった。
従って、本発明におけるコーヒー焙煎豆加工品を用いた場合には、ホットベンダーにおける高温状態での保管時に、酸の発生によるpH低下度合が抑制されることがわかった。
本発明におけるコーヒー焙煎豆を用いて、ブラックコーヒー飲料を製造した。
すなわち、アラビカ種の焙煎豆(L=30)を用いて圧力0.7MPa(165℃)、20分の処理を、コーヒー焙煎豆1kgあたり50kg/時の流量で行った。他の製造条件は、実施例3と同様にして、本発明におけるコーヒー焙煎豆加工品2kgを得た。次に、コーヒー焙煎豆加工品40gを粉砕し、60℃の純水400mlで、20分間ドリップ抽出した後、固液分離を行って、抽出液を得た。次に、重曹1.5gに本抽出液を加え、純水にて最終1Lに調整した調合液を、190mL入りの缶に充填・密栓して、レトルト殺菌(125℃、5分)を行って、ブラックコーヒー飲料である本処理飲料を得た。
その結果、本処理飲料の抽出液の抽出率は30.4%と、コーヒー可溶性固形分の抽出効率が高く、また、官能評価では、酸味が少なく、かつ、コーヒー由来の優れたコクが付与されていた。
上述のように本発明のコーヒー焙煎豆の処理方法によると、酸味が少なく、かつ、コーヒー由来の優れた香味、コクが付与された良好なコーヒー飲料を提供可能な水蒸気処理コーヒー焙煎豆を得ることができる。
連続的な通気処理前後のコーヒー焙煎豆の有機酸分析を示すグラフ コーヒー焙煎豆の連続的な水蒸気処理を行った蒸気凝縮液中の有機酸分析を示すグラフ コーヒー焙煎豆の高温下での連続的な通気処理を行った蒸気凝縮液中の有機酸分析を示すグラフ 全粒コーヒー焙煎豆の高圧水蒸気の通気処理前後における基礎成分の変化を示すグラフ ホットベンダー保管を想定したコーヒー飲料のpH低下度合の評価を示すグラフ

Claims (9)

  1. コーヒー焙煎豆に水蒸気を通気状態で供給して水蒸気処理を行うコーヒー焙煎豆の処理方法。
  2. 水蒸気供給路および水蒸気排出路を設けた豆収容部に、コーヒー焙煎豆を収容して、大気圧よりも高い出口圧力で前記水蒸気排出路から水蒸気が排出されるように、前記水蒸気供給路から前記水蒸気排出路に水蒸気を流通させて水蒸気処理を行う請求項1に記載のコーヒー焙煎豆の処理方法。
  3. 前記コーヒー焙煎豆が、全粒焙煎豆と目開き1.7mmのメッシュを通過する粉砕焙煎豆であり、前記粉砕焙煎豆の量が70重量%以下である請求項1または2に記載のコーヒー焙煎豆の処理方法。
  4. 前記コーヒー焙煎豆が全粒焙煎豆である請求項1または2に記載のコーヒー焙煎豆の処理方法。
  5. 前記水蒸気処理に使用する水蒸気の量が、前記コーヒー焙煎豆の重量の10重量%以上である請求項1または2に記載のコーヒー焙煎豆の処理方法。
  6. 前記水蒸気が飽和水蒸気である請求項1または2に記載のコーヒー焙煎豆の処理方法。
  7. 前記水蒸気の温度が、100℃〜230℃である請求項1または2に記載のコーヒー焙煎豆の処理方法。
  8. 水蒸気を通気状態で供給して水蒸気処理を行ったコーヒー焙煎豆であり、そのコーヒー焙煎豆の抽出率が35%以上で、前記コーヒー焙煎豆に対するギ酸の含有量と酢酸の含有量の合計が0.25重量%以下である水蒸気処理コーヒー焙煎豆。
  9. 水蒸気供給路および水蒸気排出路を設けた豆収容部に、コーヒー焙煎豆を収容して、前記水蒸気供給路から前記水蒸気排出路に100℃〜230℃の飽和水蒸気を大気圧よりも高い出口圧力で前記水蒸気排出路から水蒸気が排出されるように流通させて水蒸気処理した請求項8に記載の水蒸気処理コーヒー焙煎豆。
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