JP4287075B2 - コーヒー飲料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コーヒー生豆の風味を改善する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コーヒー生豆には、農産物特有の耕地の土などの汚れや、コーヒーのパーチメント、シルバースキン等の夾雑物が表面に付着している。これらの付着物は、収穫後に充分取り除かれないまま出荷されている。コーヒー生豆の代表的な品種としてアラビカ種やロブスタ種等があり、中でも、ロブスタ種のコーヒー生豆は、ロブ臭と呼ばれる独特の風味と後味を有しており、一部の消費者には受け入れられないものとなっている。
【0003】
これらの問題に対して従来取り組まれている方法には、焙煎前に洗浄処理、遠心脱水処理をし、豆表面の汚れやシルバースキンを除去する方法(特開2000−333609号公報)、生豆に水分を吸収させて含水率を30〜45%の範囲にし、次いで、高圧蒸気処理してロブスタ種の土臭い、カビ臭い成分を除去する方法(特開平3−160948号公報)、または260〜300°Fのスチームにて処理する方法(特開平6−303905号公報)等が挙げられる。
【0004】
これらの方法はいずれも、大掛かりな装置および大掛かりな前処理を必要とするものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、大掛かりな装置を必要とせず、コーヒー生豆の雑味や不快な味覚を低減し、ロブスタ種等の品種固有の風味を改善する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、コーヒー生豆をほぼ飽和状態に達するまで含水させることによってコーヒーの風味を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明のコーヒー生豆の風味を改善する方法は、コーヒー生豆の重量に対して2.5〜10倍重量の10〜60℃の水を加え、水温と同温度下で4〜24時間コーヒー生豆を浸漬させることを特徴とする。
【0007】
コーヒー生豆に加える水としては、イオン交換水、蒸留水、ショ糖溶液等が挙げられる。
【0008】
加える水の量は、コーヒー生豆を浸漬させるのに必要かつ十分な量という観点から、コーヒー生豆の重量に対して2.5〜10倍重量であり、2.5〜5倍重量が好ましい。
【0009】
水温は、コーヒー生豆の品質を低下させずに雑味、不快な味覚を除くという観点から10〜60℃であり、好ましくは10〜30℃である。
【0010】
浸漬時間は、コーヒー生豆の処理を十分に行うためには4〜24時間であり、6〜12時間が好ましい。
【0011】
本発明において処理対象のコーヒー生豆は、特に限定されず、一般に入手可能ないかなる種類の豆であってもよい。中でも、ロブスタ種コーヒー豆、リベリカ種コーヒー豆等その味覚が一部の消費者に好まれにくい生豆や、豆表面にパーチメント、シルバースキン等の果皮や農産物特有の土等の汚れがあり外見上見劣りする生豆の風味改善効果が顕著であり、好ましい。
【0012】
本発明においては、浸漬後のコーヒー生豆のISO 6673による含水率は、ほぼ飽和状態に達するまで浸漬するという観点から、コーヒー生豆の種類にもよるが40〜60%が好ましく、50〜60%がより好ましい。
【0013】
[作用効果]
本発明の方法によると、10〜60℃の水で浸漬処理するという簡便な操作のみでコーヒー生豆の洗浄と高含水化が可能であり、生豆の焙煎時に水蒸気蒸留による不快成分の飛散効果が高まり、コーヒーの風味を改善することができる。本発明の方法は、ロブスタ種コーヒー豆等の品種でも良好な風味に改質することができる。また、本発明によると、浸漬後のコーヒー生豆の含水率を規定することにより、風味改善の目安が明瞭となる。
【0014】
以下、コーヒー生豆の風味改善方法を詳細に説明する。
【0015】
まず、コーヒー生豆を秤量し、適当な容器に入れる。容器はガラス製、ステンレス製等のいずれでも構わないが、コーヒー生豆と水を収納することができ、コーヒー生豆の撹拌ができるような大きさ、構造を有することが好ましい。
【0016】
次いで、コーヒー生豆の重量に対し、2.5〜10倍重量の水を前記容器に入れる。水温は、前記したように10〜60℃であり、必要に応じて、冷却または加温した水を使用する。
【0017】
ここで、コーヒー生豆と水を馴染ませて豆の湿潤を促進するために、撹拌操作を行ってもよい。撹拌は、コーヒー豆が破砕したり、外観が傷つかない程度に強制水流により行うことが必要であり、ガラス製、ステンレス製もしくはテフロン(登録商標)製の撹拌棒または撹拌翼等を用いた水平撹拌機で行ってもよい。また、撹拌に超音波洗浄を加えてもよい。
【0018】
浸漬処理は、常圧下、加えた水の温度を一定に保つように行う。好ましくは、10〜60℃に設定した恒温槽内にコーヒー生豆と水を保持する。浸漬時間は、4〜24時間であり、コーヒー生豆の含水率がほぼ飽和状態に達するまで行う。場合によっては、撹拌操作を浸漬処理中継続してもよい。
【0019】
「コーヒー生豆の含水率がほぼ飽和状態に達した」ことは、ISO 6673によりコーヒー生豆の含水率を測定することによって確認することができる。本発明においては、前記したように、コーヒー生豆の種類にもよるが、40〜60%程度を指標とする。
【0020】
浸漬終了後、前記容器より水を排出し、浸漬された生豆を取り出す。この段階では、生豆の表面が濡れているので、次の焙煎工程で焙煎機に搬送されやすいように豆の表面の過剰な水分を除去、乾燥させてもよい。水分の除去は、遠心分離機等を用い、表面の水分を脱水する程度に行えばよい。乾燥は、通常の恒温乾燥機を用いて、100℃前後で30分程度行えばよい。なお、表面を乾燥させた後の生豆の含水率も、前記範囲内にあることが好ましい。
【0021】
次いで、コーヒー生豆を焙煎する。焙煎方法は、公知の焙煎装置を用いて、公知の方法で行えばよい。焙煎装置には、直火型ドラムタイプや熱風対流タイプ等があるが、開封式の直火型ドラムタイプが好ましい。
【0022】
焙煎されたコーヒー豆は、レギュラーコーヒー豆として供せられる。また、焙煎コーヒー豆から通常の粉砕、抽出方法によってコーヒー液を調製し、糖分、ミルク成分等を適宜添加してコーヒー飲料として供される。また、抽出されたコーヒー液を常法により乾燥させて粉末インスタントコーヒーとしても供される。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0024】
[実施例1]
コーヒー生豆として、2種類のブラジル産アラビカ種コーヒー(A、B)をそれぞれ200g秤量し、別々のビーカーに入れ、各ビーカーに20℃の蒸留水500gを加え、適宜撹拌し、20℃の恒温槽にて24時間浸漬保持した。
【0025】
4時間および24時間浸漬した生豆の一部をビーカーより取り出し、ISO 6673による生豆の含水率を測定したところ、コーヒーAではそれぞれ51.2%および56.9%であり、コーヒーBではそれぞれ49.5%および57.2%であった。
【0026】
24時間浸漬後、ビーカーから水を排出し、生豆を全量取り出し、小型焙煎機(プロバット社製サンプルロースター)を用いて、L値16.5に焙煎を行った。焙煎した豆を粉砕機(BONMAC製コーヒーカッター、570N)にて中細挽に粉砕した。
【0027】
粉砕したコーヒーのうち30gを分取し、ペーパーフィルターを用いて450mlの沸騰水を加え、濾過抽出して試験液とした。
【0028】
[比較例1]
実施例1で使用したコーヒー生豆を、浸漬を行わないこと以外は実施例1と同様にして焙煎、粉砕、濾過抽出し、比較液とした。
【0029】
[官能評価]
実施例1および比較例1で得られた試料を、専門パネル5名による官能試験によって評価した。評価基準は、以下の通りであり、結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
± :非常に弱い
+ :弱い
++ :強い
+++:非常に強い。
【0031】
[ガスクロマトグラフィーによる香気量の測定]
実施例1および比較例1で得られた試料10mlを、22mlのバイアル瓶に採取し、密栓した。密栓したバイアル瓶を、Tekmar社製ガスクロマトグラフィー用オートサンプラにて80℃で20分間加温した後サンプリングし、ガスクロマトグラフィーで分析した。
【0032】
測定条件
測定装置:日立製ガスクロマトグラフィーG−3000
カラム:ジーエルサイエンス(株)製TC−WAX 0.53mm×30m
キャリヤーガス:ヘリウム
キャリヤーガス流量:1ml/分
カラム温度:40℃(5分)→220℃(5℃/分で昇温)
検出器:FID。
【0033】
ガスクロマトグラフィー分析によるピークの総面積と、各ピークを分析時のカラム温度を基に3つに分類した際の面積割合を算出し、比較した。
【0034】
【表2】
高沸点エリア:カラム温度101℃〜200℃
中沸点エリア:カラム温度41℃〜100℃
低沸点エリア:カラム温度40℃。
【0035】
表1より、実施例1で得られた試験液は、渋味、雑味等の味覚が低減し、マイルドな味覚であった。表2より、試験液の香気成分は、比較液の香気成分と比べて、中沸点部の香気割合が減るとともに低沸点部の香気割合が増え、香気量を減少することなく、官能試験による渋味や雑味の軽減を支持する結果を得た。
【0036】
[実施例2]
コーヒー生豆として、インドネシア産ロブスタ種コーヒーを200g秤量し、ビーカーに入れ、20℃の蒸留水500gを加え、適宜撹拌し、20℃の恒温槽にて24時間浸漬保持した。
【0037】
4時間および24時間浸漬した生豆の一部をビーカーより取り出し、ISO 6673による生豆の含水率を測定したところ、それぞれ56.5%および59.9%であった。
【0038】
24時間浸漬後、ビーカーから水を排出し、生豆を取り出し、乾燥機にて103℃で30分間、表面の余分な水分を乾燥させた(乾燥後の含水率は4時間浸漬した豆では52.7%、24時間浸漬した豆では58.0%:ISO 6673による測定結果)。次いで、小型焙煎機(プロバット社製サンプルロースター)を用いて、L値16.5に焙煎を行った。焙煎した豆を粉砕機(BONMAC製コーヒーカッター、570N)にて中細挽に粉砕した。
【0039】
粉砕したコーヒーのうち30gを分取し、ペーパーフィルターを用いて450mlの沸騰水を加え、濾過抽出して試験液とした。
【0040】
[比較例2]
実施例2で使用したコーヒー生豆を、浸漬および乾燥を行わないこと以外は実施例2と同様にして焙煎、粉砕、濾過抽出し、比較液とした。
【0041】
[官能評価]
実施例2および比較例2で得られた試料を、専門パネル5名による官能試験によって評価した。評価基準は、以下の通りであり、結果を表3に示す。
【0042】
【表3】
± :非常に弱い
+ :弱い
++ :強い
+++:非常に強い。
【0043】
[ガスクロマトグラフィーによる香気量の測定]
実施例2および比較例2で得られた試料10mlを、22mlのバイアル瓶に採取し、密栓した。密栓したバイアル瓶を、Tekmar社製ガスクロマトグラフィー用オートサンプラにて80℃で20分間加温した後サンプリングし、ガスクロマトグラフィーで分析した。
【0044】
測定条件
測定装置:日立製ガスクロマトグラフィーG−3000
カラム:ジーエルサイエンス(株)製TC−WAX 0.53mm×30m
キャリヤーガス:ヘリウム
キャリヤーガス流量:1ml/分
カラム温度:40℃(5分)→220℃(5℃/分で昇温)
検出器:FID。
【0045】
ガスクロマトグラフィー分析によるピークの総面積と、各ピークを分析時のカラム温度を基に3つに分類した際の面積割合を算出し、比較した。
【0046】
【表4】
高沸点エリア:カラム温度101℃〜200℃
中沸点エリア:カラム温度41℃〜100℃
低沸点エリア:カラム温度40℃。
【0047】
表3より、実施例2で得られた試験液は、ロブスタ種特有のロブ臭および後味が軽減し、マイルドな味覚であった。表4より、試験液の香気成分は、比較液の香気成分と比べて、中沸点部の香気割合が減るとともに低沸点部の香気割合が増え、香気量を減少することなく、官能試験によるロブ臭および後味の軽減を支持する結果を得た。
Claims (4)
- コーヒー飲料の製造方法であって、コーヒー生豆の重量に対して2.5〜10倍重量の10〜60℃の水を加え、水温と同温度下で4〜24時間コーヒー生豆を浸漬させる工程、およびその後コーヒー生豆を乾燥させ焙煎する工程を含む、コーヒー飲料の製造方法。
- 前記コーヒー生豆がアラビカ種、ロブスタ種またはリベリカ種のコーヒー生豆である請求項1に記載の製造方法。
- 浸漬後のコーヒー生豆のISO6673による含水率が40〜60%である請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記コーヒー生豆表面の乾燥が、遠心分離機による水分除去および100℃30分の処理によってなされる、請求項1から3までのいずれかに記載の製造方法。
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