JPWO2004085330A1 - 酸化チタン薄膜で被覆されたガラス板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

表面圧縮応力が10MPa以下であるガラス基板の表面に、チタン元素を含有する液体の微粒子からなるミストをガラス基板の表面に付着させることによって前記液体をガラス基板の表面に塗布する。続いて、当該液体が塗布された表面を550〜700℃の最高温度まで加熱してから、特定の条件で冷却し、得られるガラス板の表面圧縮応力が20〜250MPaとなるようにする。こうして、光触媒機能を有する酸化チタン薄膜で被覆されたガラス板が製造される。得られる酸化チタン薄膜は、密着性、摩擦耐性に優れている。また、その表面は微細な凹凸を有しているため、干渉色や干渉縞を発生せず、透明性も良好である。

Description

本発明は、酸化チタン薄膜で被覆されたガラス板の製造方法に関する。特に、防曇性、防汚性等の光触媒機能を有する酸化チタン薄膜を、特定の塗布条件あるいは加熱条件で形成してなる、酸化チタン薄膜で被覆されたガラス板の製造方法に関する。
ガラス基板の表面に酸化チタン薄膜を形成することで、防曇性が得られることについては、例えば特許第2756474号公報(WO96/29375)に記載されている。これは、光触媒半導体である酸化チタン結晶に、当該半導体のバンドギャップエネルギーより高いエネルギーの波長の光が照射されることで、その表面が高度に親水化されることによるものである。このように酸化チタン薄膜でガラス表面を覆うことで、窓ガラス、風防ガラスや鏡など曇って視認性が低下することが嫌われる用途に広く応用可能であるとされている。
上記特許第2756474号公報には、有機あるいは無機のチタン化合物を含有する溶液や、酸化チタン微粒子を含有するゾルをガラス基板に塗布してから、高温で焼成して酸化チタン結晶からなる薄膜を形成する方法が記載されている。ガラス板に塗布する方法としては、フローコーティングやスプレーコーティングなどを採用した実施例が記載されている。
また、特許第2756474号公報には、光照射によって親水性が得られる酸化チタンは、アナターゼ型の結晶であってもルチル型の結晶であっても構わないことが記載されており、化学物質の光分解がアナターゼ型のみで認められる点と異なっているとしている。無定形チタニア(酸化チタン)を焼成した場合に、400〜500℃以上で焼成すればアナターゼ型のチタニアが得られ、600〜700℃以上の温度で焼成した場合にはルチル型のチタニアが得られることも記載されており、具体的には、650℃で焼成してアナターゼ型の、800℃で焼成してルチル型の結晶がそれぞれ得られたことがその実施例11に記載されている。
また、特開平7−100378号公報には、チタニアゾルを基板にコーティングした後、室温から徐々に600℃から700℃の最終温度にまで加熱昇温して、アナターゼ型の酸化チタン薄膜を得る方法が記載されている。最終温度が高すぎたり、昇温速度が速すぎたりした場合には光分解性能の劣るルチル型結晶が混じることが記載されており、具体的には、750℃まで徐々に加熱した場合や、650℃まで直ちに加熱した場合には、相当量のルチル型の結晶が混じることが記載されている。
一方、前述の特許第2756474号公報の実施例29には、施釉タイルの表面にアナターゼ型のチタニアゾルとコロイダルシリカゾルの混合物をコーティングして800℃で焼成した例が記載されている。そこでは、チタニアにシリカを配合することで耐磨耗性が向上することが記載されているが、チタニアのみからなる膜の鉛筆硬度は6Bであるとされている。
また、前記特許第2756474号公報には、酸化チタンをコーティングする基材が、アルカリ金属イオンを含有するガラスの場合には、基材とチタニア層の間に予めシリカ等の中間層を形成してから焼成することが記載されている。こうすることによって、焼成中にガラス中のアルカリ金属イオンが酸化チタンコーティング中に拡散することを防止できるとしている。具体的には、ソーダライムガラスの表面に直接無定形チタニアをコーティングして、500℃で焼成した実施例において、中間層を設けた実施例に比べて水との接触角が増加しており、親水化性能が低下していることが実施例7に記載されている。
また、特開2001−180980公報(欧州特許出願公開第1081108号明細書)には酸化ジルコニウムと酸化ケイ素からなる皮膜形成成分中に酸化チタン結晶が分散された光触媒機能を有する親水膜が、ガラス表面に形成された曲げガラス及び強化ガラスが記載されている。具体的には、上記酸化物の原料液を塗布した後、560〜700℃の温度で焼成し、焼成と同時に曲げ加工または強化加工することが記載されている。当該公報では酸化ケイ素からなるアルカリバリア層なしで酸化チタン結晶皮膜を形成して560〜700℃の高温でガラスを曲げ焼成すると、ガラス中のアルカリ成分が光触媒薄膜中に移行するために著しく光触媒機能が低下するとされており、それを解決するために、酸化ケイ素のみならず酸化ジルコニウムをも含む皮膜形成成分中に酸化チタン結晶を分散させることが記載されている。
しかしながら、ガラス基板の表面にチタン元素を含有する液体を塗布してから加熱処理して酸化チタン薄膜を形成する場合に、膜厚ムラや欠陥のない塗膜を形成することは必ずしも容易ではない。酸化チタンはガラスよりも高い屈折率を有するために、ガラス基板の表面に酸化チタン薄膜を形成した場合には、干渉色を呈することが多い。このとき、膜厚ムラや欠陥の存在は干渉色の変化や干渉縞の発生によって容易に視認されるから、僅かな膜厚ムラや欠陥が外観上問題になりやすい。また、塗布面積が大きくなると、均一に塗布することが一層困難となり、歩留まりの低下が問題となりやすい。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、チタン元素を含有する液体をガラス基板の表面に塗布して、干渉色や干渉縞を発生せずしかも透明性の良好な、酸化チタン薄膜で被覆されたガラス板を製造する方法を提供するものである。
また、光触媒機能を有する酸化チタン薄膜で被覆されたガラス板の実用性を考える場合、その耐久性は極めて重要である。なかでも、太陽光によって光触媒機能を発現させるような屋外使用向けの用途においては、酸化チタン薄膜が防汚機能を有するといっても、一定期間ごとに簡単な清掃を行う必要がある場合が多く、このような場合に摩擦に対して十分な耐性を有することが重要である。前述の特許第2756474号公報にも記載されているように、チタニアゾルのみを焼成した場合の鉛筆硬度は6Bであり、実用的な摩擦耐性を考慮した場合、全く不十分な値である。この課題を解決することも、本発明の目的である。
一方、前述のように光触媒として使用される酸化チタンの形態はアナターゼ型の結晶形態を有することが好ましい。しかしながら焼成の温度条件によっては無定形やルチル型結晶の酸化チタンが形成されることもあり、アナターゼ型の酸化チタンからなる薄膜を形成するための条件設定は必ずしも容易ではない。
さらに、上述のように、酸化チタン塗膜をアルカリ金属を含有するガラス基板上に直接形成してから焼成した場合には、ガラス基板中に含まれているアルカリ金属イオンが酸化チタン薄膜中に移動拡散して、酸化チタンの光触媒としての性能が低下することが避けられなかった。しかしながら、光触媒である酸化チタン結晶を他の成分からなるマトリックス中に分散させたのでは、触媒効果を減少させることになりかねない。また、シリカ等からなる中間層を酸化チタン薄膜とガラス基板との間に形成する場合は、薄膜形成操作が煩雑になって生産性が低下するだけでなく、歩留まりの低下も問題である。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、表面圧縮応力が一定値以下であるガラス基板の表面にチタン元素を含有する液体を塗布し、該液体が塗布された表面をガラスの軟化温度に近い一定の最高温度まで加熱してから、ガラス板の厚みに関連した特定の冷却速度で冷却して、ガラス基板の表面圧縮応力が一定値になるようにする、酸化チタン薄膜で被覆されたガラス板の製造方法を提供するものである。
本発明の目的は、チタン元素を含有する液体の微粒子からなるミスト(霧)をガラス基板の表面に付着させることによって前記液体をガラス基板の表面に塗布して、薄膜の表面に微細な凹凸を有する酸化チタン薄膜を形成する、酸化チタン薄膜で被覆されたガラス板の製造方法を提供することによって達成される。薄膜の表面に微細な凹凸を形成することによって、干渉色の発生を抑えながら透明性に優れた薄膜を形成することができる。このとき、前記液体を塗布し、一旦乾燥させてから繰り返し塗布することが好適である。濡れたままで、全体に均一に塗布した場合には、干渉縞が発生するおそれがあるからである。
前記液体を塗布する際にエアー式スプレーガンを用い、該エアー式スプレーガンに供給するエアー圧力を0.13〜0.8MPa、ノズルからの単位時間当たりの吐出量を1〜10ml/分とすることが好適である。少量の塗布量を低圧で吹き付けることによって、気泡の噛み込みがなく、しかも均一な厚みで塗布することが容易となる。
また、前記液体を塗布する際に、同時に複数のエアー式スプレーガンを用い、それぞれのエアー式スプレーガンが発生するミストが相互に重ならないようにして塗布することも好適である。複数のスプレーガンを使用することによって生産性を向上させることができ、ミストの粒径が大きくなるのを防止できるからである。
エアー式スプレーガンを使用して塗布する場合には、ノズルの先端からガラス基板の表面までの距離を10〜50cmに保って塗布することが、均一に無駄のない塗布を行う上で好ましい。また、前記液体を塗布する前に予めガラス基板を加熱することが、塗布された液体が迅速に乾燥されて好ましい。さらにまた、ガラス基板を移動させながら、移動方向を横切る方向にエアー式スプレーガンを走査しながら塗布することが、簡単かつ均一に塗布できて好ましい。
前記エアー式スプレーガンを使用する方法以外では、前記液体を塗布する際に超音波噴霧器を用い、該超音波噴霧器の液体タンクにおける液温をガラス基板の表面温度よりも5〜90℃高く設定することも好適である。ガラス基板の表面を液滴の温度よりも低く保つことで、極めて微細な液滴を薄く均一に塗布することができる。
また、前記液体をガラス基板の表面に塗布してから、加熱処理して酸化チタン薄膜を形成することが好適である。加熱処理することによって酸化チタン薄膜を強固なものとすることができる。このとき、液体が塗布された表面を550〜700℃の最高温度まで加熱してから、下記式(1)を満足する条件で冷却することが好ましい。ここで、aは、冷却する際に500℃から200℃まで降温するのに要する時間(秒)であり、tは、ガラス基板の厚さ(mm)である。
0.2≦ a/t ≦ 5 (1)
また、本発明の目的は、表面圧縮応力が10MPa以下であるガラス基板の表面にチタン元素を含有する液体を塗布し、該液体が塗布された表面を550〜700℃の最高温度まで加熱してから、下記式(1)を満足する条件で冷却して、ガラス基板の表面圧縮応力が20〜250MPaとなるようにする、酸化チタン薄膜で被覆されたガラス板の製造方法を提供することによっても達成される。ここで、aは、冷却する際に500℃から200℃まで降温するのに要する時間(秒)であり、tは、ガラス基板の厚さ(mm)である。このような条件で製造することによって、ガラス基板の表面に、摩擦耐性に優れた、強固な酸化チタン薄膜を形成することが可能である。
0.2≦ a/t ≦ 5 (1)
このとき、前記液体が塗布された表面の温度が550〜700℃の温度範囲にある時間が20〜500秒であることが好適である。20秒以上とすることで強固な膜を形成することが可能である。また500秒以下にすることで、アルカリ金属を含有するガラス基板を使用した場合に、アルカリ金属イオンが酸化チタン薄膜中に拡散することを抑制することができる。
また、下記式(2)を満足する条件で加熱することも好適である。このような条件で加熱することによって、アルカリ金属イオンの拡散を防止しながら、ガラス基板の破損を防止することができる。
5 ≦ b/t ≦ 30 (2)
但し、
b:加熱する際に、200℃から500℃まで昇温するのに要する時間(秒)
t:ガラス基板の厚さ(mm)
である。
またこのとき、前記ガラス基板が、アルカリ金属を5〜15重量%含有するガラス基板であることが好適である。このようなガラスは、熱処理によって表面圧縮応力を向上させることが容易だからである。
本発明で使用されるガラス基板の面積が0.5m以上である場合に、本発明を実施する実益が大きい。さらに、前記ガラス基板の表面を酸性水溶液と界面活性剤含有水溶液を用いて洗浄してから、チタン元素を含有する液体を塗布することも好適である。ガラス基板の運搬中に付着した汚れなどを適切に洗浄することができ、塗布ムラや欠陥の発生を防止し、酸化チタン薄膜の密着性を向上させることができる。
本発明で使用される、チタン元素を含有する液体中のチタン元素含有量が0.1〜10重量%であることが、薄膜表面に大きな凹凸が発生して透明性が悪化するのを抑えることができることから好適である。また、前記液体が酸化チタン微粒子を含有するゾルであることが、表面に微細な凹凸を形成させるのに有効であることから好適である。特に、アナターゼ型酸化チタン微粒子を含有するゾルであることが、短い焼成時間でアナターゼ型の酸化チタン結晶からなる強固な薄膜を得ることができて好適である。
本発明で形成される酸化チタン薄膜の平均膜厚が0.02〜1μmである場合に、一般に干渉色を発生しやすく、本発明の実施の意義が大きい。酸化チタン薄膜がアナターゼ型酸化チタンからなることが、光触媒活性が高くて好ましい。形成される酸化チタン薄膜表面のJIS Bで規定する十点平均粗さRzの値が5〜50nmであることが、干渉色の発生を抑えながら透明性に優れた薄膜を形成されやすくて好ましい。また、得られたガラス板の曇価が5%以下であることが好ましい。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明では、まず、チタン元素を含有する液体をガラス基板の表面に塗布する。チタン元素を含有する液体は加熱処理後に酸化チタン薄膜を形成するものであればよく、特に限定されない。例えば、有機チタン化合物や無機チタン化合物の溶液を使用しても良いし、酸化チタン微粒子を含有するゾルを使用しても良い。
溶液に使用される有機チタン化合物としては、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタンなどのアルコキシド、カルボン酸塩あるいはキレート化合物などが挙げられる。また、塩化チタン、硫酸チタン、ペルオキソチタン酸などの無機チタン化合物を用いることも可能である。これらの溶液をそのまま、あるいは加水分解してから塗布に供することができる。
また、酸化チタン微粒子を含有するゾルをガラス基板上に塗布することが好適である。このとき、ゾル中に含まれる酸化チタン粒子は無定形であっても良いし、アナターゼ型あるいはルチル型の結晶からなる粒子であっても良い。中でも、アナターゼ型酸化チタン微粒子を含有するゾルであることが、短い焼成時間でも酸化チタン結晶からなる強固な薄膜を得ることができ、アルカリ金属を含有するガラス基板を使用した際にもアルカリ金属の酸化チタン薄膜中への拡散を防ぐこともできるので好適である。また、このようなゾルは、元々固体微粒子を含んでいるので、表面に微細な凹凸を形成させるのにも有効である。
このような酸化チタンゾルの平均粒径は特に限定されないが、通常100nm以下であり、白化の少ない均質な膜を得るためには30nm以下であることが好適である。ゾルの媒質は特に限定されないが、主成分が水であることが、塗布作業の際の作業環境の安全性の観点から好適である。
ガラス基板に塗布する液体中のチタン元素含有量は10重量%以下であることが好ましい。濃度がこれよりも大きい場合には、表面の凹凸の深さが深くなりすぎて薄膜の透明性が低下する虞があり、均一な膜を形成することが困難な場合がある。5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることが最適である。低濃度の液体を使用した場合には、一度の塗布作業で得られる膜厚は小さくなるが、酸化チタン薄膜の厚みが均一になりやすく、その表面に形成される凹凸も微細にできる。生産性を考慮すれば、チタン元素の含有量は通常0.1重量%以上である。
チタン元素を含有する液体のpHが3以上であることが好ましい。中性またはアルカリ性の液体を使用するほうが、アルカリ金属を含有するガラス基板を使用する際にアルカリ金属イオンの酸化チタン薄膜への拡散を防止できる。pHは好適には5以上である。また、14以下であることが好ましい。
また、ガラス基板に塗布する液体が、本発明の効果を阻害しない範囲でチタン元素以外の金属元素やケイ素等の半金属元素を含んでいても構わない。しかしながら、光触媒機能の効率的な発現のためには、チタン元素以外の金属元素や半金属元素の含有率は少ないほうが好ましい。具体的には、チタン元素の含有量に対して重量比で1/2以下の含有量であることが好適であり、1/10以下の含有量であることがより好適であり、実質的に全く含まないことが最適である。
チタン元素を含有する液体として本発明で使用されるもののうち、好適なものとして、アナターゼ型の酸化チタンゾルにペルオキシチタン酸を含有する液体が挙げられる。この液体は、中性でありながら、水中に酸化チタン粒子が良好に分散されたものであり、本発明の実施に好適である。
本発明で原料として使用されるガラス基板は特に限定されないが、その表面圧縮応力が10MPa以下であることが好適である。この値はJIS R3222に準じて測定したものである。このように表面圧縮応力が少ないガラス基板を軟化温度の付近まで加熱してから、一定の条件で冷却した場合には、ガラス基板表面に大きな圧縮応力を有するガラス板が得られる。そうすることで、後述するように、ガラス基板に対して密着性の良い酸化チタン薄膜を形成することができる。
ガラス基板の材質は特に限定されないが、アルカリ金属を5〜15重量%含有するガラス基板が好適である。アルカリ金属を含有することでガラスの軟化点は低下するが、この程度の量のアルカリ金属を含有させることで、本発明の加熱処理で到達する最高温度に近いところまでガラス基板の軟化点を低下させることができる。これにより、アナターゼ型のチタニアの結晶を成長させることのできる温度付近でガラス基板の弾性率を低下させることができ、本発明の加熱条件によって適当な表面圧縮応力を発生させることができる。その結果として摩擦耐性に優れた酸化チタン薄膜を得ることができる。このようなガラス基板としては、工業的重要性が大きく、強化処理を施す必要性も大きいことから、ソーダライムガラスが最適である。
ガラス基板の寸法は特に限定されるものではないが、通常厚さが2.5〜25mm程度である。また、ガラス基板の面積は通常0.01m以上であるが、面積が0.5m以上であることが好ましく、1m以上であることがより好ましい。特に広い面積に塗布する際に塗布ムラが問題となりやすく本発明の塗布方法を採用することが好適である。また、ガラスに強度が要求される用途では大面積で使用されることが多い。
チタン元素を含有する液体を塗布する前に、ガラス基板の表面を洗浄しておくことが、塗布ムラや欠陥の発生を防止し、酸化チタン薄膜の密着性を向上させるために好ましい。界面活性剤を使用して洗浄するのみでも良いが、酸性水溶液と界面活性剤含有水溶液の両方で洗浄することが好ましい。酸を含有する水溶液、例えば酢酸水で洗浄してから、さらに界面活性剤を含有する水で洗浄し、最後に水で十分洗浄することで、ガラスの運搬中に付着した汚れなどを適切に洗浄することが可能である。
チタン元素を含有する液体をガラス基板の表面に塗布する方法は特に限定されず、スプレーコーティング、フローコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールコーティングその他の各種のコーティング法が採用される。
なかでも、チタン元素を含有する液体の微粒子からなるミストをガラス基板の表面に付着させることによって前記液体をガラス基板の表面に塗布することが特に好適である。こうすることによって、酸化チタン薄膜の表面に微細な凹凸を形成することが可能であり、干渉色が視認されない薄膜を形成することができる。特に酸化チタンの結晶は約2.5以上の高い屈折率を有しているために、干渉色が外観上問題となりやすいからこの点は重要である。また、僅かな膜厚ムラでも干渉色の変化や干渉縞として容易に視認されるので、外観ムラの目立たない酸化チタン薄膜を得るためにも、上記方法が好適である。この方法は、膜厚ムラの発生しやすい大面積に均一に塗布する場合に特に有効である。
このとき、前記液体を塗布し、一旦乾燥させてから繰り返し塗布することが好適である。液体のままで全面に均一に塗布されたのでは、光学的に平滑な塗膜の表面が形成される場合が多く、干渉縞が発生するおそれがあるからである。光学的に不均質な塗膜を一旦形成して乾燥させてから、繰り返し塗布することによって、基板全体を確実に酸化チタン薄膜で覆いながら、光学的には不均質な膜とすることができる。その結果、良好な光触媒効果と基板への密着性を有しながら、干渉縞の観察されない酸化チタン薄膜を得ることができる。
具体的には、エアー式スプレーガンや超音波噴霧器を使用して塗布することが好適である。このような装置を使用して塗布することで、例えば酸化チタンゾルを塗布することも可能である。このようなゾルは、元々固体微粒子を含んでいるので、表面に微細な凹凸を形成させるのに有効である。このとき透明性の高い塗膜を得るためには、チタン元素を含有する液体中のチタン元素含有量を0.1〜10重量%とすることが好適である。希薄な液を塗布することで、酸化チタン薄膜表面に大きな凹凸を発生して透明性が悪化するのを最低限に抑えることができるからである。
チタン元素を含有する液体を塗布する際にエアー式スプレーガンを用いる場合には、ノズルからの単位時間当たりの吐出量を1〜10ml/分とすることが好適である。このように比較的少量の吐出量で吹き付けることによって、気泡の噛み込みがなく、微細な凹凸を形成することができ、しかも均一な厚みで塗布することが容易となる。吐出量はより好適には7ml/分以下である。また、スプレーガンに供給する好適なエアー圧力は0.13〜0.8MPaである。エアー圧力を低めに設定するほうが、望ましい表面形状を実現しやすいことから、エアー圧力はより好適には0.4MPa以下であり、さらに好適には0.3MPa以下である。なお、ここでいうエアー圧力は絶対圧力であり、大気圧との差圧はこの値から約0.1MPa減じた値となる。また、ノズルの先端からガラス基板の表面までの距離を10〜50cmに保って塗布することも好適である。当該距離が10cm未満の場合には、均一な塗膜を得ることが困難になる場合があり、より好適には15cm以上である。一方、当該距離が50cmを超える場合には、チタン元素を含有する液体のロスが大きく経済的でなくなるおそれがあり、より好適には40cm以下である。
また、エアー式スプレーガンを用いる場合には、同時に複数のエアー式スプレーガンを用い、それぞれのエアー式スプレーガンが発生するミストが相互に重ならないようにして塗布することが好ましい。本発明の塗布方法においては、少量の吐出量で吹き付けることが好ましいので、単一のノズルだけでは生産性が低下するおそれがあるからである。エアー式スプレーガンの台数は3台以上であることがより好ましく、4台以上であることがさらに好ましい。また、それぞれのスプレーガンが発生するミスト同士が相互に重なったのでは、重なった部分で粒径の大きいミストが発生して、均一な塗膜を形成することが困難になるおそれがあるからである。ガラス基板の表面において、それぞれのミスト同士は相互に、好適には1cm以上、より好適には5cm以上離れていることが好ましい。さらに、複数のエアー式スプレーガンを用いることによって、一旦乾燥させてから繰り返し塗布することが容易となる。
エアー式スプレーガンを用いる場合には、当該液体を塗布する前に予めガラス基板を加熱することが好適である。こうすることによって、特別な乾燥手段を施すことなく、塗布した液体を速やかに乾燥できるので、生産効率が向上する。本発明の塗布方法においては少量の液体を塗布する場合が多いので、このように予め加熱するだけで迅速に乾燥させることが容易である。また、一旦乾燥させてから繰り返し塗布する場合にも、塗布時間を容易に短縮することができる。加熱する温度は、ガラス基板の表面温度として、通常25〜150℃である。しかしながら、例えば、夏のように作業環境の温度が高い場合には、加熱しなくても良い場合もある。加熱温度が25℃以下の場合には、乾燥時間が遅いばかりでなく、ガラス基板の表面に吸着された水分の影響によって塗膜にムラが発生する場合がある。加熱温度は好適には30℃以上であり、より好適には35℃以上である。一方、加熱温度が150℃を超える場合には、ミストが基板表面に到達する前に溶媒が蒸発するおそれがあり、好適には100℃以下であり、より好適には80℃以下、さらに好適には60℃以下である。
以下、複数のエアー式スプレーガンを使用し、ガラス基板を移動させながら、移動方向を横切る方向にエアー式スプレーガンを走査しながら塗布する装置の具体的構成について、図面を使用して説明する。第1図は本発明で使用できる塗布装置の一例を示す平面図であり、第2図はその側面図、第3図はその正面図である。
ガラス基板1は、遠赤外線ヒーターが内蔵された加熱炉2中で加熱され、コンベアロール3の上を搬送され、塗布ユニット4の下を通過する。塗布ユニット4の下を通過するときの移動速度は、膜厚を均一にするために一定に保つことが好ましい。ガラス基板1の移動速度は通常0.1〜1m/分程度である。塗布ユニット4からは支持枠5によって、4台のエアー式スプレーガン6が、ガラス基板1の移動方向に平行に一定のピッチで吊下げられている。エアー式スプレーガン6のピッチ(L1)は、図の例では30cmである。エアー式スプレーガン6のノズル7の先端からガラス基板1の表面までの距離は、図の例では25cmである。また、ノズル7の先端から放出されるミストがガラス基板1の表面に届くエリアは、ガラス基板1の移動方向に長い楕円形状であって、その長径(L2)は図の例では20cmである。すなわち、10cmの間隔を空けて隣り合ったエアー式スプレーガン6からのミストがガラス基板1の表面に到達する。
ガラス基板1を一定速度で搬送しながら、エアー式スプレーガン6をガラス基板1の移動方向に垂直な方向に往復運動させる。このとき、一定の速度に保ってガラス基板1の端から端まで往復させることが好ましい。エアー式スプレーガン6の移動速度は、ガラス基板1の移動速度を考慮して定められ、ガラス基板1の移動速度が早ければ、エアー式スプレーガン6の移動速度も早くすることが好ましい。エアー式スプレーガン6が片道進むのに要する時間の間に、エアー式スプレーガン6の配置されたピッチよりも少ない距離を、ガラス基板1が移動するようにすることが、均一に塗布できて好ましい。エアー式スプレーガン6の移動速度は、通常0.5〜5m/分程度である。このような塗布装置を使用することによって、効率的かつ均一に塗布することが可能である。
また、チタン元素を含有する液体を塗布する際に超音波噴霧器を用いる場合には、超音波噴霧器の液体タンクにおける液温をガラス基板の表面温度よりも5〜90℃高く設定することが好適である。超音波噴霧器から発生する液滴は、エアー式スプレーガンによって発生する液滴よりも小さく、強い気流で吹き付けるわけではないが、ガラス基板の表面を液滴の温度よりも低く保つことでガラス基板上に均質に塗布することができる。本方法は、特に極めて薄く均一に塗布する際に、表面に微細な凹凸を有する酸化チタン薄膜を形成することができて有用である。
塗布された塗膜は、必要に応じて乾燥されてから加熱処理に供される。乾燥方法は特に限定されるものではなく、比較的低温で加熱する方法や乾燥空気を吹き付ける方法が例示される。例えば、前述のようにエアー式スプレーガンを用いて塗布する場合には、スプレーガンのノズルに供給する液体を遮断して、エアーのみを吹き付けて乾燥させる方法を採用することもできる。また、超音波噴霧器を使用する場合には、塗布膜厚が薄いこともあり、乾燥空気に接触させるだけでも乾燥させることが可能である。
こうしてチタン元素を含有する液体が塗布されたガラス基板に加熱処理を施すことによって、焼成された酸化チタン薄膜を形成することが好適である。こうすることによって、強固な酸化チタン薄膜を形成することができる。このときの加熱方法は特に限定されるものではないが、酸化チタン結晶が形成され、その結晶が成長できるような温度にすることが好適である。
加熱処理に際しては、前記液体が塗布された表面を550〜700℃の最高温度まで加熱することが特に好適である。この温度範囲で加熱することで酸化チタン薄膜を強固なものとすることができると同時に、ガラス基板の軟化点に近い温度まで加熱することで、冷却後の酸化チタン薄膜が基板に密着しやすくなるからである。代表的なソーダライムガラスではASTM C338−57で規定されるガラスの軟化点は720〜730℃である。前記最高温度が550℃未満では、酸化チタン薄膜が強固なものとならず、また、ガラスの軟化点から随分低い値であるために酸化チタン薄膜の密着性も不十分である。最高温度は好適には600℃以上である。一方、最高温度が700℃を超えたのでは、ガラスの軟化の兆候が見られ、焼成中にガラス基板の平面性が損なわれ、得られるガラス板に歪みが生じることになる。最高温度は好適には650℃以下である。
チタン元素を含有する液体が塗布されたガラス板を加熱する際の昇温速度は特に限定されない。しかしながら下記式(2)を満足する速度で昇温することが好適である。
5 ≦ b/t ≦ 30 (2)
但し、
b:加熱する際に、200℃から500℃まで昇温するのに要する時間(秒)
t:ガラス基板の厚さ(mm)である。
このように比較的急速に昇温させることで、アナターゼ型の酸化チタン結晶の成長可能な温度まで短時間で上昇させることができ、ガラス基板としてアルカリ金属を含有するガラス基板を使用する場合に、アルカリ金属イオンが不必要に拡散することを防止することができる。特に酸化チタンが無定形であったり、不完全な結晶形態であったり、揮発成分を含んでいるようなときにはアルカリ金属イオンが拡散しやすいため、急速に昇温して、アナターゼ型の結晶が成長可能な温度まですばやく到達させることが好適である。したがって、b/tの値が5以上であることが好適であり、10以上であることがより好適である。但し、厚みの大きいガラス基板をあまり急速に加熱したのでは、基板の表面と中心との温度差が大きくなりすぎて、発生する過大な応力によって加熱時にガラス基板が破損する虞があることから、b/tの値が30以下であることが好適である。より好適には20以下である。
また、前記液体が塗布された表面の温度が550〜700℃の温度範囲にある時間が20〜500秒であることが好適である。この温度範囲にある時間が一定時間であることで、比較的柔らかい状態にあるガラス基板上でアナターゼ型の結晶が十分に成長し、結果として強固な薄膜がガラス基板に密着することができるのではないかと考えられる。この時間が20秒未満である場合には、光触媒機能が十分に発揮できなかったり、膜の硬度や強度が不十分になったり、基板への密着性が低下したりする虞がある。より好適には40秒以上である。一方、この時間が500秒を超える場合には、ガラス基板に歪みが生じたり、アルカリ金属イオンが酸化チタン薄膜中に拡散したり、ルチル型の結晶構造を有する結晶が増加したりする虞があり好ましくない。より好適には300秒以下であり、さらに好適には100秒以下である。
さらに、上記最高温度に到達した後で、下記式(1)を満足する条件で冷却することが特に好適である。
0.2 ≦ a/t ≦ 5 (1)
但し、
a:冷却する際に、500℃から200℃まで降温するのに要する時間(秒)
t:ガラス基板の厚さ(mm)である。
降温速度をガラス基板の厚みの2乗で割った値が、降温後に得られるガラス板に残存する表面圧縮応力の値と相関関係を有することが経験的に分かっている。このように急速に冷却することで、基板表面に圧縮応力が残存する形で冷却することができる。基板表面に圧縮応力が残存することで、ガラス基板自体の強度が向上するのみならず、基板表面に形成される酸化チタン膜を剥離しにくいものにすることができるようである。(1)式中a/tの値が0.2未満の場合には、冷却速度が速すぎて降温途中でガラス基板が破損する虞がある。好適には0.3以上であり、より好適には0.5以上である。一方、(1)式中a/tの値が5を超える場合には、得られる酸化チタン薄膜の密着性が不十分になる。好適には3以下であり、より好適には2以下である。
上述のように、ガラス基板を昇温させ、高温に維持し、その後降温させるための装置は、本発明の処理条件を満足できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ガラスの強化処理を行う強化炉などを好適に使用することができる。
例えば、チタン元素を含有する液体を塗布したガラス板は、高温に維持された加熱炉の中に導入される。複数のローラーを回転させて加熱炉内に導入することが好適である。加熱炉内を加熱する方法は特に限定されず、電気ヒーターによる加熱であっても良いし、ガスや石油等の燃料を燃焼させて加熱する方法であっても良い。加熱炉内で好適には式(2)を満足するような条件でガラス板を昇温させる。この間、加熱炉内においてローラーの回転方向を切り替えることでガラス板を水平方向に揺動することが好ましい。こうすることで局所的な加熱ムラの発生を防止することができ、ガラス板が破損するのを防止することができる。ローラー搬送以外の搬送方法としてコンベア搬送や吊り下げ搬送も採用可能である。
加熱炉内でのガラス基板表面の温度は、非接触式の赤外線温度計によって連続的にモニターすることが可能である。最高温度に到達してから加熱炉から取り出して式(1)を満足する条件で冷却する。加熱炉から取り出す際には、例えば、ローラーを回転させて取り出すことが可能である。冷却に際しては、冷却槽の中で、加圧した空気を一気に吹き付けて冷却する方法が好適である。空気は、基板の両面に配置された多数のノズルから吹き付けて、均一に冷却できるようにすることが好ましい。このとき、加熱炉内と同様に、ローラーの回転方向を切り替えることでガラス板を水平方向に揺動することが、局所的な冷却ムラの発生を防止することができ、ガラス板が破損するのを防止することができて好ましい。
こうして得られたガラス基板の表面圧縮応力は20〜250MPaであることが好適である。この値はJIS R3222に準じて測定したものである。このように一定の表面圧縮応力が残存するようにすることで、酸化チタン薄膜とガラス基板との密着性が良好になる。ガラス基板に残存する表面圧縮応力が小さすぎる場合には得られる酸化チタン薄膜の密着性が不十分になり、好適には50MPa以上である。一方、大きすぎる場合には、降温途中でガラス基板が破損する虞があり、好適には200MPa以下である。このように高性能の光触媒性能を有する強固かつ密着性に優れた酸化チタン薄膜を形成するための熱処理条件の設定の結果、酸化チタン薄膜の形成と同時にいわゆる倍強度ガラス、強化ガラスあるいは超強化ガラスと呼ばれるガラスと同等の強度を有するガラス板が製造できるので、生産効率の点からも極めて優れている。なお、上記表面圧縮応力は酸化チタン薄膜の形成されていない面で測定することが可能である。
このようにして得られた酸化チタン薄膜の結晶構造は、特に限定されないが、アナターゼ型を主として含むものであることが好ましく、実質的にアナターゼ型の結晶のみからなる薄膜であることが、光触媒活性の点からより好ましい。形成された酸化チタンの結晶構造は広角X線回折測定などで確認できる。
形成される膜厚も特に限定されるものではなく、平均膜厚として0.02〜1μm程度が例示される。触媒活性の点からは、一定以上の膜厚を有することが好ましく、特に薄すぎる場合には基板からのアルカリ金属イオンの拡散の影響も受けやすい。より好適には0.05μm以上であり、さらに好適には0.1μm以上である。一方、膜厚が一定以上厚くなっても、もはやそれ以上の光触媒効果の向上は期待できず、原料コストが上昇するだけである。より好適には0.7μm以下であり、さらに好適には0.5μm以下である。
酸化チタン結晶の屈折率はアナターゼ型で約2.5であり、一般のガラスの屈折率(1.5程度)と比較してかなり大きいことから、界面での反射に由来する干渉色の発生する可能性が大きい。例えば0.1〜1μm程度の厚みの膜は干渉色を発生しやすい膜厚であるから、僅かな厚みムラが干渉縞として視認されやすい。その点からは、前述のようにチタン元素を含有する液体からなる霧状の微粒子を前記ガラス基板の表面に付着させることによって塗布することが好適である。こうすることによって、酸化チタン薄膜の表面に微細な凹凸を形成することが可能であり、干渉色が観察されず、しかも透明性に優れた薄膜を形成することができる。
酸化チタン薄膜の表面に形成された凹凸の形状は、干渉色を発生しない程度に凹凸を深くすることが好適である。一方、凹凸の深さが一定以上になると、今度は膜面が白化し、曇価(ヘーズ値)が上昇して好ましくない。したがって、両者を同時に満足する凹凸形状にすることが望ましい。このような凹凸形状の測定方法は限定されるものではなく、触針式のものを使用することも可能ではあるが、白化を防止するための凹凸の深さは光の波長よりも小さな深さであることを要するから、原子間力顕微鏡や、トンネル顕微鏡の原理を利用した観察方法が好適である。
凹凸の深さは、干渉色を発生せず、曇価が上昇しない凹凸であれば良いが、具体的には、原子間力顕微鏡を用いて13μmの長さに渡ってスキャンしたときのJIS B0601で規定する十点平均粗さ(Rz)の値が5〜50nmであることが好適である。干渉色を発生しないためには上記Rzの値が10nm以上であることがより好適である。また、酸化チタン薄膜の白化を防止するためには、上記Rzの値が30nm以下であることがより好適である。この凹凸深さであれば可視光の空気中での波長(380〜780nm)に比べて十分に小さいので白化しにくい。一方、酸化チタン薄膜内を往復する光路長は、凹部と凸部とでは、凹凸の深さの2倍にさらに屈折率の2.5を掛けた値になるので、上記5〜50nm程度の凹凸であっても光路長の差は大きく、干渉色を発生しにくいようである。
得られた酸化チタン薄膜を有するガラス板の曇価(ヘーズ値)が5%以下であることが好適であり、2%以下であることがより好適である。ここで曇価とは、JIS R3212に記載された方法に準じて測定した値である。高度な視認性が要求される用途向けには、曇価が1%以下であることがより好適であり、0.5%以下であることが更に好適である。さらに可視光(380〜780nm)全域に亘って70%以上の光線透過率を有することが好適である。光線透過率は上記波長全域に亘って75%以上であることがより好適であり、80%以上であることがさらに好適である。
このように、優れた光触媒機能を有し、強固かつ密着性の良好な酸化チタン薄膜を有するとともに、表面圧縮応力の高い高強度のガラス板が得られる。また、広い面積のガラス板に対しても外観の良好な酸化チタン薄膜を形成することができ、同時にガラスの強度を向上させることも可能であり、しかも生産性も良好なので、多くの用途に使用することができる。発揮することのできる光触媒機能としては、表面の親水化のほか、防汚機能、抗菌機能、有毒ガスの分解機能、脱臭機能などが挙げられる。例えば、建築物用窓ガラス、建築物外壁用ガラス、天窓、手すり用ガラス板、自動車用窓ガラス、鉄道車両用窓ガラス、航空機用窓ガラス、船舶用窓ガラス、エレベーター用窓ガラス、その他各種乗り物用の窓ガラス、道路又は鉄道用の防音壁、太陽光発電用カバーガラス、太陽熱温水器用カバーガラス、防護用又はスポーツ用ゴーグル又はマスク、冷凍冷蔵食品陳列ケースのガラス板、野菜陳列ケースのガラス板、計測機器のカバーガラス、各種鏡などが例示される。
さらに、樹脂中間膜の両側にガラス板を積層した合わせガラスであって、少なくとも一方のガラス板として上記ガラス板を酸化チタン薄膜の被覆面を外側にして積層してなる合わせガラスも極めて有用である。ここで使用される樹脂中間膜としては、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンなどが挙げられる。このような合わせガラスの製造方法としては、常圧下で加熱圧着する方法や減圧下で加熱して接着する方法が例示される。このように光触媒性能を有する強固かつ密着性の良好な酸化チタン薄膜を有し、しかも強度の高いガラス板を使用して、いわゆる合わせガラスの構成とすることで、安全性をさらに改善した合わせガラスを提供することができる。このような高度な安全性能が要求される用途は、道路や鉄道用の防音壁、建築物用の外壁、建築物用窓ガラス、天窓、手すり用ガラス板などである。
なかでも、道路や鉄道用の防音壁は、大面積に亘って干渉縞の発生しない透明な酸化物薄膜を形成することが要求され、しかも高度な安全性を要求されるから、このような合わせガラスを使用することが特に有用な用途である。加えて、粉塵や排ガス等で汚染されやすく、清掃回数を減らす要求も高い用途であることから、本発明のガラス板を使用した合わせガラスを使用することが特に有用な用途である。
第1図は、本発明で使用できる塗布装置の一例を示す平面図である。第2図は、第1図の塗布装置の側面図である。第3図は、第1図の塗布装置の正面図である。第4図は、実施例1で得られたガラス板の分光透過率測定チャートである。第5図は、実施例1で形成された酸化チタン薄膜の広角X線回折チャートである。第6図は、実施例1で形成された酸化チタン薄膜の表面の凹凸形状である。ここで、1はガラス基板を、2は加熱炉を、3はコンベアロールを、4は塗布ユニットを、5は支持枠を、6はエアー式スプレーガンを、7はノズルを、L1はエアー式スプレーガンのピッチを、L2はミストがガラス基板の表面に届くエリアの長径をそれぞれ示す。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
原料として、縦1000mm、横1000mm、厚さ4mmのソーダライムガラスを使用した。このソーダライムガラスは、アルカリ金属としてナトリウムを10重量%含有するものであり、ASTM C338−57に準じて測定した軟化温度が720〜730℃のものである。このソーダライムガラス基板の錫拡散層側の面の表面圧縮応力をJIS R3222に準じて測定したところ、6.3MPaであった。ソーダライムガラスの表裏両面を1規定の酢酸水溶液を用いてスポンジでガラス基板の表面を洗浄してから水洗し、引き続き界面活性剤を水で希釈したものを用いて、スポンジでガラス基板の表面を洗浄した。その後、界面活性剤を多量の水で洗い流してからエアーブローして水分を取り除いた。
洗浄したガラス基板を壁面に立てかけて、錫拡散層側の反対側の面にアネスト岩田株式会社製のエアー式スプレーガン「小型LPH−100−124LVG」を用いて酸化チタン微粒子含有ゾルを塗布した。ここで使用した酸化チタン微粒子含有ゾルは、山中産業株式会社製「YAL−COAT」であり、アナターゼ型酸化チタン微粒子を含有し、ペルオキシチタン酸を併せて含有するゾルである。チタン元素の含有量は約0.5重量%であり、媒質は主として水であり、液のpHは6.8である。スプレーガンに供給するエアー圧を0.2MPa(大気圧との差圧は約0.1MPa)とし、ノズルからの単位時間当たりの塗布量を5ml/分に設定して、ガラス基板から15cm離れた位置から、一定距離を保ちながら水平方向に移動させながら塗布した。左端あるいは右端まで到達したところで上下方向に位置をずらせて全体に塗布を行った。微細で均一な霧状の液滴がガラス基板上に均一に付着した。このときガラス基板の全体が一様に濡れるようなことがなく、液が流れるようなこともないようにした。
噴霧塗布した後、スプレーガンへのゾルの供給を止め、エアーのみをエアー圧0.2MPa(大気圧との差圧は約0.1MPa)で供給して、やはり15cm離れた位置から空気を吹き付けて塗布したときと同様に移動させて、乾燥空気を塗布面に吹き付けて塗膜を乾燥させた。引き続いて再びスプレーガンにゾルを供給して1回目と同様にして2回目の塗布を行い、その後1回目と同様にして乾燥させた。さらにもう一回同様に塗布と乾燥を繰り返し、合計で3回重ね塗りを行った。上記塗布作業においては、塗布した直後には軽く曇るものの、乾燥すればほぼ透明になった。また、乾燥前後において干渉色に由来すると思われる着色は認められなかった。
こうして得られた塗膜が形成されたガラス板を、タムグラス・エンジニアリング社製強化炉「HTF2448」を用いて加熱処理した。まず室温下で塗布面が上側になるようにして搬送ローラーの上に載せ、ローラーを回転させて加熱炉中に搬送した。加熱炉は電気ヒーターによって炉温が705〜735℃に維持されている。この中に搬送されたガラス基板の塗布面の表面温度は、加熱炉の内部に設置された非接触式の赤外線温度計によって経時的にモニターした。その結果、200℃から500℃まで温度が上昇するのに64秒要した。所要時間(b:秒)を板厚(t:mm)で割った値(b/t)は16であった。加熱炉内ではローラーの回転を反転させながらオシュレーション(揺動)操作を繰り返して、加熱ムラが発生するのを防止した。
その後最高温度の625℃まで達したところで、加熱炉から冷却槽内にローラーを用いて搬送し、冷却槽内で冷却した。冷却に際しては、基板の上下両方向から多数のノズルを介して大量の圧縮空気を吹き付けて冷却した。この間、冷却槽内においては、冷却ムラを防止するために、加熱中と同様にローラーの反転操作による揺動を継続した。
加熱炉内で550℃に到達してから、最高温度625℃を経て、冷却槽中で550度に冷却されるまでの時間は50秒であった。また、冷却時に500℃から200℃まで温度が降下するのに14秒要した。所要時間(a:秒)を板厚(t:mm)の2乗で割った値(a/t)は0.88であった。冷却槽中でほぼ室温まで冷却して、酸化チタン薄膜で被覆されたガラス板が製造された。
得られた酸化チタン薄膜の平均厚みは、塗布時のコート量から算出して約0.3μmである。外観は無色透明であり、基板に平行な方向に近い斜め方向からよく観察すると僅かに白濁しているのが認められる程度であり、一見しただけでは透明な、良好な外観を呈していた。干渉色も全く認められなかった。得られたガラス板の分光透過率測定チャートを第4図に示すが、可視光域(380nm〜780nm)全域において80%以上の良好な光線透過率を有していた。また、JIS R3212に準じて曇価(ヘーズ値)を測定したところ、ほぼ0%(0.1%未満)であった。
得られた酸化チタン薄膜を、広角X線回折測定した結果を第5図に示す。図中四角形で示しているピークがアナターゼ型の結晶構造に由来する回折ピークであり、逆三角形で示しているピークがルチル型の結晶構造に由来する回折ピークである。アナターゼ型の酸化チタン結晶に由来するピークが観察され、ルチル型の酸化チタン結晶に由来するピークは観察されなかった。
得られた酸化チタン薄膜の表面を日本電子株式会社製走査型プローブ顕微鏡JSPM−4200を用いて観察した。先端の鋭利なプローブと試料表面の原子間力を測定することによって表面形状を観察するものである。AFMコンタクトモードで13μmの距離をスキャンした表面の凹凸形状を測定した結果を第6図に示す。JIS B0601で規定する十点平均粗さRzの値は18.4nmであり、可視光線の波長よりかなり小さい凹凸が形成されていることがわかる。
また、上記プローブ顕微鏡にHysitron社製ナノメカニカルシステム「Triboscope」を装着して表面硬度を測定した。得られた膜の硬度(Hardness)は6.22GPaであった。なお、原料で用いたソーダライムガラスの硬度を同様に測定したところ7.09GPaであり、ガラスにほぼ匹敵する高硬度の膜が得られていることが判明した。さらに、鉛筆硬度試験をしたところ、硬度6Hの鉛筆を用いて擦っても、膜が完全に剥がれて基板面が露出することはなかった。
酸化チタン膜面に、太陽光線を3日間照射してから、実際に息を吹きかけて、防曇効果を確認したところ、吐きかけた息が水膜を形成したと思われる干渉縞が視認された後、速やかにその干渉縞が消失し、優れた防曇効果を有していることが認められた。また、6ヶ月間屋外に曝しておいても、その防曇効果は失われなかった。また、酸化チタン薄膜面の水に対する接触角を測定したところ、5度以下であった。
また、有機物質の分解効果について、日石三菱株式会社製グリース「エピノックグリースAP2」10gを100cmの面積に塗油して、3ヶ月間屋外の太陽光の当たるところに放置したところ、普通のガラス基板に塗油した対照品に比べて分解性に格段の差があり、ほぼ消滅していることが確認された。
得られた板ガラスの表面圧縮応力を、酸化チタン薄膜の形成されていない側の面の表面圧縮応力をJIS R3222に準じて測定したところ、104MPaであり、一般の4mm厚の強化ガラスと同程度の表面圧縮応力を有していた。
実施例1と同様にして洗浄、乾燥したソーダライムガラス基板に、実施例1と同じ酸化チタン微粒子含有ゾルを塗布した。洗浄したガラス基板を壁面に立てかけて、予め赤外線ヒーターでガラス基板の錫拡散層側の反対側の面を加熱して、表面温度が約35℃になるように加熱した。加熱されたガラス基板の表面に、実施例1と同じ条件でエアー式スプレーガンを用いて酸化チタン微粒子含有ゾルを塗布した。すなわち、スプレーガンに供給するエアー圧を0.2MPa(大気圧との差圧は約0.1MPa)とし、ノズルからの単位時間当たりの塗布量を5ml/分に設定して、ガラス基板から15cm離れた位置から、一定距離を保ちながら水平方向に移動させながら塗布した。左端あるいは右端まで到達したところで上下方向に位置をずらせて全体に塗布を行った。これによって、微細で均一な霧状の液滴がガラス基板上に均一に付着した。このとき、ガラス基板の温度が高いので、ガラス基板上に均一に付着した液滴は速やかに乾燥した。このことは、塗布した直後には認められる軽い曇りが速やかに消失し、ガラス板がほぼ透明になることからわかった。約10分かけてガラス板の全面に1回目の塗布作業を行ってから、すぐに第2回目の塗布作業を同様に行った。第2回目の塗布作業後に、すぐに第3回目の塗布作業を行い、合計で3回重ね塗りを行った。得られた塗膜には干渉色に由来すると思われる着色は認められなかった。
こうして得られた塗膜が形成されたガラス板を、実施例1と同様の操作で加熱処理して酸化チタン薄膜を形成した。外観は無色透明であり、基板に平行な方向に近い斜め方向からよく観察することで確認できる白濁の程度は実施例1と同程度であり、実施例1同様に透明性が良好であった。また、干渉色も全く認められなかった。
実施例1と同様にして洗浄、乾燥したソーダライムガラス基板に、実施例1と同じ酸化チタン微粒子含有ゾルを塗布した。塗布に際しては、市販の加湿用途の超音波噴霧器を使用した。当該噴霧器のタンク中のゾルの温度を90℃に加熱してから、表面温度が23℃のガラス基板上に噴霧塗布した。ガラス基板から20cm離れた位置から、霧状の液滴がガラス基板上に均一に付着するようにした。ガラス基板に付着させた後でドライヤーを用いて乾燥させた。上記塗布作業においても実施例1同様、塗布した直後には軽く曇るものの、乾燥すればほぼ透明になった。また、乾燥前後において干渉色に由来すると思われる着色は認められなかった。
こうして得られた塗膜が形成されたガラス板を、実施例1と同様の操作で加熱処理して酸化チタン薄膜を形成した。外観は無色透明であり、基板に平行な方向に近い斜め方向からよく観察することで確認できる白濁の程度は実施例1よりもさらに少ないレベルであり、実施例1よりも透明性が良好であった。また、干渉色も全く認められなかった。
熱処理を施す前までは実施例1と同様にしてガラス基板に塗膜を塗布した。得られたガラス基板を実施例1と同じように加熱している加熱炉に導入し、最高温度の625℃に達するまでは、実施例1と全く同じ操作を行った。最高温度にまで達したところで、加熱炉から冷却槽内にローラーを用いて搬送し、冷却槽内に導入したが、そこで冷却エアーを吹き付けずに徐冷した。この間、冷却槽内においては、冷却ムラを防止するために、ローラーの反転操作による揺動を継続した。
加熱炉内で550℃に到達してから、最高温度625℃を経て、冷却槽中で550度に冷却されるまでの時間は110秒であった。また、冷却時に500℃から200℃まで温度が降下するのに300秒要した。所要時間(a:秒)を板厚(t:mm)の2乗で割った値(a/t)は18.8であった。冷却槽中でほぼ室温まで徐冷して、酸化チタン薄膜で被覆されたガラス板が製造された。
得られた酸化チタン薄膜の平均厚みは、塗布時のコート量から算出して約0.3μmである。外観は無色透明であり、基板に平行な方向に近い斜め方向からよく観察すると僅かに白濁しているのが認められる程度であり、一見しただけでは透明な、良好な外観を呈していた。干渉色も全く認められなかった。外観的には実施例1と大差が認められない薄膜を得ることができた。
得られた酸化チタン薄膜に対して鉛筆硬度試験をしたところ、硬度2Hの鉛筆を用いて擦った時に、膜が完全に剥がれて基板面が露出した。膜の硬度あるいは密着性において実施例1に比べて低下していた。酸化チタン薄膜面の水に対する接触角を測定したところ、5度以下であり、この点は実施例1と相違が認められなかった。
得られた板ガラスの表面圧縮応力を、酸化チタン薄膜の形成されていない側の面の表面圧縮応力をJIS R3222に準じて測定したところ、0.7MPaであり、表面圧縮応力はほとんどゼロに近い値であった。すなわち、徐冷して表面圧縮応力が小さくなった場合には、強固な酸化チタン薄膜を形成することが困難であり、密着性が不十分であった。このことから、一定の速度で冷却して、表面圧縮応力が残存するような条件で酸化チタン薄膜を形成することが有効であることが明らかになった。
実施例1と同様にして洗浄、乾燥したソーダライムガラス基板を立てかけて、実施例1と同じ酸化チタン微粒子含有ゾルをその表面に流すことによって、フローコート法によって塗布した。こうして得られた基板を、実施例1と同様にして加熱処理して酸化チタン薄膜が表面に形成されたガラス基板を得た。
得られた酸化チタン薄膜に対して鉛筆硬度試験をしたところ、硬度6Hの鉛筆を用いて擦っても、膜が完全に剥がれて基板面が露出することはなく、実施例1同様に密着性に優れた膜が形成されていた。また、酸化チタン薄膜面の水に対する接触角を測定したところ、5度以下であり、この点でも実施例1と相違が認められなかった。
しかしながら、得られた酸化チタン薄膜は干渉縞が顕著に観察され、外観が悪化していた。フローコート法では、表面に微細な凹凸を有する酸化チタン薄膜を形成することができず、表面が平滑な被膜が形成されているものと推定され、そのため干渉縞が目立つようである。このことから、ミストをガラス基板の表面に付着させることによってチタン元素を含有する液体をガラス基板の表面に塗布して、薄膜の表面に微細な凹凸を有する酸化チタン薄膜を形成することが有効であることが明らかになった。
本発明によって、摩擦耐性に優れた強固な酸化チタン薄膜をガラス基板上に形成することが可能である。また、干渉色や干渉縞を発生せずしかも透明性の良好な金属酸化物薄膜を透明基板上に形成することも可能である。特に広い面積に亘って、酸化チタンのような屈折率の高い金属酸化物薄膜を形成する際に、良好な外観とすることができて有用である。この薄膜は光触媒としての機能を有しており、耐久性に優れた光触媒機能保有ガラスを提供することができる。しかもガラス板の強度も高いことから、防曇性、防汚性、有機物質の分解、強度等が要求される用途に最適なガラス板を提供することができる。

Claims (22)

  1. チタン元素を含有する液体の微粒子からなるミストをガラス基板の表面に付着させることによって前記液体をガラス基板の表面に塗布して、薄膜の表面に微細な凹凸を有する酸化チタン薄膜を形成する、酸化チタン薄膜で被覆されたガラス板の製造方法。
  2. 前記液体を塗布し、一旦乾燥させてから繰り返し塗布する請求項1記載のガラス板の製造方法。
  3. 前記液体を塗布する際にエアー式スプレーガンを用い、該エアー式スプレーガンに供給するエアー圧力を0.13〜0.8MPa、ノズルからの単位時間当たりの吐出量を1〜10ml/分とする請求項1又は2記載のガラス板の製造方法。
  4. 前記液体を塗布する際に、同時に複数のエアー式スプレーガンを用い、それぞれのエアー式スプレーガンが発生するミストが相互に重ならないようにして塗布する請求項1〜3のいずれか記載のガラス板の製造方法。
  5. ノズルの先端からガラス基板の表面までの距離を10〜50cmに保って塗布する請求項3又は4記載のガラス板の製造方法。
  6. 前記液体を塗布する前に予めガラス基板を加熱する請求項3〜5のいずれか記載のガラス板の製造方法。
  7. ガラス基板を移動させながら、移動方向を横切る方向にエアー式スプレーガンを走査しながら塗布する請求項3〜6のいずれか記載のガラス板の製造方法。
  8. 前記液体を塗布する際に超音波噴霧器を用い、該超音波噴霧器の液体タンクにおける液温をガラス基板の表面温度よりも5〜90℃高く設定する請求項1又は2記載のガラス板の製造方法。
  9. 前記液体をガラス基板の表面に塗布してから、加熱処理して酸化チタン薄膜を形成する請求項1〜8のいずれか記載のガラス板の製造方法。
  10. 前記液体が塗布された表面を550〜700℃の最高温度まで加熱してから、下記式(1)を満足する条件で冷却する、請求項9記載のガラス板の製造方法。
    0.2≦ a/t ≦ 5 (1)
    但し、
    a:冷却する際に、500℃から200℃まで降温するのに要する時間(秒)
    t:ガラス基板の厚さ(mm)
    である。
  11. 表面圧縮応力が10MPa以下であるガラス基板の表面にチタン元素を含有する液体を塗布し、該液体が塗布された表面を550〜700℃の最高温度まで加熱してから、下記式(1)を満足する条件で冷却して、ガラス基板の表面圧縮応力が20〜250MPaとなるようにする、酸化チタン薄膜で被覆されたガラス板の製造方法。
    0.2 ≦ a/t ≦ 5 (1)
    但し、
    a:冷却する際に、500℃から200℃まで降温するのに要する時間(秒)
    t:ガラス基板の厚さ(mm)
    である。
  12. 前記液体が塗布された表面の温度が550〜700℃の温度範囲にある時間が20〜500秒である請求項11記載のガラス板の製造方法。
  13. 下記式(2)を満足する条件で加熱する、請求項11又は12記載のガラス板の製造方法。
    5≦ b/t ≦ 30 (2)
    但し、
    b:加熱する際に、200℃から500℃まで昇温するのに要する時間(秒)
    t:ガラス基板の厚さ(mm)
    である。
  14. 前記ガラス基板が、アルカリ金属を5〜15重量%含有するガラス基板である請求項1〜13のいずれか記載のガラス板の製造方法。
  15. 前記ガラス基板の面積が0.5m以上である請求項1〜14のいずれか記載のガラス板の製造方法。
  16. 前記ガラス基板の表面を酸性水溶液と界面活性剤含有水溶液を用いて洗浄してから、前記液体を塗布する請求項1〜15のいずれか記載のガラス板の製造方法。
  17. 前記液体中のチタン元素含有量が0.1〜10重量%である請求項1〜16のいずれか記載のガラス板の製造方法。
  18. 前記液体が酸化チタン微粒子を含有するゾルである請求項1〜17のいずれか記載のガラス板の製造方法。
  19. 形成される酸化チタン薄膜の平均膜厚が0.02〜1μmである請求項1〜18のいずれか記載のガラス板の製造方法。
  20. 形成される酸化チタン薄膜がアナターゼ型酸化チタンからなる請求項1〜19のいずれか記載のガラス板の製造方法。
  21. 形成される酸化チタン薄膜表面のJIS Bで規定する十点平均粗さRzの値が5〜50nmである請求項1〜20のいずれか記載のガラス板の製造方法。
  22. 曇価が5%以下である請求項1〜21のいずれか記載のガラス板の製造方法。
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