JP2003112950A - 金属酸化物薄膜被覆板状体の製造方法及び金属酸化物薄膜被覆板状体 - Google Patents

金属酸化物薄膜被覆板状体の製造方法及び金属酸化物薄膜被覆板状体

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JP2003112950A
JP2003112950A JP2001303570A JP2001303570A JP2003112950A JP 2003112950 A JP2003112950 A JP 2003112950A JP 2001303570 A JP2001303570 A JP 2001303570A JP 2001303570 A JP2001303570 A JP 2001303570A JP 2003112950 A JP2003112950 A JP 2003112950A
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Takeshi Nakajima
武司 中島
Takeshi Isaki
健 勇木
Masaru Akiyama
勝 秋山
Keizo Masada
圭三 政田
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Nakajima Glass Co Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 干渉色や干渉縞を発生せずしかも透明性の良
好な金属酸化物薄膜を透明基板上に形成すること。 【解決手段】 金属元素を含有する液体からなる霧状の
微粒子を透明基板の表面に付着させることによって前記
液体を透明基板の表面に塗布してから、加熱処理して、
薄膜表面に微細な凹凸を有する金属酸化物薄膜を形成す
る金属酸化物薄膜被覆板状体の製造方法である。このと
き前記透明基板がガラス基板であって、その表面に前記
液体を塗布してから加熱処理して金属酸化物薄膜を形成
することが好適である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透明基板の表面に
金属酸化物薄膜を形成する金属酸化物薄膜被覆板状体の
製造方法に関する。特に、金属元素を含有する液体から
なる霧状の微粒子を透明基板の表面に付着させることに
よって前記液体を透明基板の表面に塗布して、薄膜表面
に微細な凹凸を有する金属酸化物薄膜を形成する金属酸
化物薄膜被覆板状体の製造方法に関する。また、透明基
板の表面に形成された金属酸化物薄膜の表面に微細な凹
凸を有する金属酸化物薄膜被覆板状体に関する。
【0002】
【従来の技術】ガラス基板の表面に金属酸化物の皮膜を
形成することで、ガラスに紫外線遮断性や熱線遮断性等
の各種の機能を付与することが可能である。中でも近
年、ガラス基板の表面に酸化チタン薄膜を形成すること
で、防曇性が得られることが明らかになり、このことは
例えば特許第2756474号公報に記載されている。
これは、光触媒半導体である酸化チタン結晶に、当該半
導体のバンドギャップエネルギーより高いエネルギーの
波長の光が照射されることで、その表面が高度に親水化
されるというものである。このように酸化チタン薄膜で
ガラス表面を覆うことで、窓ガラス、風防ガラスや鏡な
ど曇って視認性が低下することが嫌われる用途に広く応
用可能であるとされている。
【0003】上記特許第2756474号公報には、有
機あるいは無機のチタン化合物を含有する溶液や、酸化
チタン微粒子を含有するゾルをガラス基板に塗布してか
ら、高温で焼成して酸化チタン結晶からなる薄膜を形成
する方法が記載されている。ガラス板に塗布する方法と
しては、フローコーティングやスプレーコーティングな
どを採用した実施例が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ガラス
基板等の透明基板の表面に金属元素を含有する液体を塗
布してから加熱処理して金属酸化物薄膜を形成する場合
に、膜厚ムラや欠陥のない塗膜を形成することは必ずし
も容易ではない。一般に金属酸化物はガラスやプラスチ
ックよりも高い屈折率を有することが多く、ガラス基板
等の透明基板の表面に薄膜を形成した場合には、干渉色
を呈することが多い。このとき、膜厚ムラや欠陥の存在
は干渉色の変化や干渉縞の発生によって容易に視認され
るから、僅かな膜厚ムラや欠陥が外観上問題になりやす
い。特に酸化チタンの結晶は屈折率が高いから、この点
で問題になりやすい。また、塗布面積が大きくなると、
均一に塗布することが一層困難となり、歩留まりの低下
が問題となりやすい。
【0005】本発明は上記課題を解決するためになされ
たものであり、金属元素を含有する液体を透明基板の表
面に塗布して、干渉色や干渉縞を発生せずしかも透明性
の良好な金属酸化物薄膜を形成する、金属酸化物薄膜被
覆板状体の製造方法を提供するものである。また、外観
に優れた金属酸化物薄膜被覆板状体を提供するものであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題は、金属元素を
含有する液体からなる霧状の微粒子を透明基板の表面に
付着させることによって前記液体を透明基板の表面に塗
布して、薄膜表面に微細な凹凸を有する金属酸化物薄膜
を形成する金属酸化物薄膜被覆板状体の製造方法を提供
することによって達成される。薄膜の表面に微細な凹凸
を形成することによって、干渉色の発生を抑えながら透
明性に優れた薄膜を形成することができる。
【0007】このとき、金属元素を含有する液体が金属
酸化物微粒子を含有するゾルであることが、表面に微細
な凹凸を形成させるのに有効であることから好適であ
る。また、金属元素を含有する液体中の金属元素含有量
が0.1〜10重量%であることも、薄膜表面に大きな
凹凸が発生して透明性が悪化するのを抑えることができ
ることから好適である。
【0008】前記金属元素を含有する液体を塗布する際
にエアー式スプレーガンを用い、該エアー式スプレーガ
ンに供給するエアー圧力を0.13〜0.8MPa、ノ
ズルからの単位時間当たりの吐出量を1〜10ml/分
とすることが好適である。少量の塗布量を低圧で吹き付
けることによって、気泡の噛み込みがなく、しかも均一
な厚みで塗布することが容易となる。
【0009】またこのとき、前記金属元素を含有する液
体を塗布する際に超音波噴霧器を用い、該超音波噴霧器
の液体タンクにおける液温を透明基板の表面温度よりも
5〜90℃高く設定することも好適である。透明基板の
表面を液滴の温度よりも低く保つことで特に薄く均一に
塗布することができる。
【0010】本発明に使用する透明基板がガラス基板で
あることが好適である。また、本発明に使用する透明基
板の面積が0.5m以上である場合に、本発明を実施
する実益が大きい。さらに、前記透明基板の表面を酸性
水溶液と界面活性剤含有水溶液を用いて洗浄してから、
前記金属元素を含有する液体を塗布することも好適であ
る。透明基板、特にガラス基板の運搬中に付着した汚れ
などを適切に洗浄することができ、塗布ムラや欠陥の発
生を防止し、金属酸化物薄膜の密着性を向上させること
ができる。
【0011】また、金属元素を含有する液体を透明基板
の表面に塗布してから、加熱処理して金属酸化物薄膜を
形成することが好適である。加熱処理することによって
金属酸化物薄膜を強固なものとすることができる。特に
透明基板がガラス基板である場合には高温で焼結するこ
とが可能であり、好適である。
【0012】本発明で形成される金属酸化物薄膜の平均
膜厚が0.02〜1μmである場合に、一般に干渉色を
発生しやすく、本発明の実施の意義が大きい。また、金
属酸化物薄膜がアナターゼ型酸化チタンからなること
が、光触媒効果を発現できて好ましい。また、得られた
金属酸化物薄膜被覆板状体の曇価が5%以下であること
が好ましい。
【0013】また、前述の課題は、透明基板の表面に形
成された金属酸化物薄膜の表面に微細な凹凸を有し、該
表面のJIS Bで規定する十点平均粗さRzの値が5
〜50nmである、金属酸化物薄膜被覆板状体を提供す
ることによっても達成される。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明は、金属元素を含有する液
体からなる霧状の微粒子を透明基板の表面に付着させる
ことによって前記液体を透明基板の表面に塗布して、薄
膜表面に微細な凹凸を有する金属酸化物薄膜を形成する
金属酸化物薄膜被覆板状体の製造方法である。
【0015】本発明に用いられる金属元素を含有する液
体は塗布後に金属酸化物薄膜を形成するものであればよ
く、特に限定されない。チタン、セリウム、ジルコニウ
ム、亜鉛、スズ、ストロンチウム、鉄、ビスマス、アル
ミニウム、アンチモン、ニッケル、クロム、バリウム、
タンタル、ハフニウム等各種の金属元素を含有する液体
を使用することができる。
【0016】透明基板に塗布する液体中の金属元素含有
量は10重量%以下であることが好ましい。濃度がこれ
よりも大きい場合には、表面の凹凸の深さが深くなりす
ぎて薄膜の透明性が低下する虞があり、均一な厚みの膜
を形成することも困難な場合がある。5重量%以下であ
ることが好ましく、3重量%以下であることがより好ま
しく、1重量%以下であることが最適である。低濃度の
液体を使用した場合には、一度の塗布作業で得られる膜
厚は小さくなるが、金属酸化物薄膜の厚みが均一になり
やすく、その表面に形成される凹凸も微細にできる。生
産性を考慮すれば、金属元素の含有量は通常0.1重量
%以上である。
【0017】また、前記金属元素を含有する液体が金属
酸化物微粒子を含有するゾルであることが好適である。
このようなゾルは、元々固体微粒子を含んでいるので、
表面に微細な凹凸を形成させるのに有効である。
【0018】金属元素を含有する液体の中でも、親水性
や防汚性等の光触媒機能を有し、しかも形成される金属
酸化物の屈折率が高いために膜厚ムラが干渉色によって
外観上問題になりやすいことから、チタン元素を含有す
る液体を塗布する際に、本発明を実施する実益が大き
い。チタン元素を含有する液体は塗布後に酸化チタン薄
膜を形成するものであればよく、特に限定されない。例
えば、有機チタン化合物や無機チタン化合物の溶液を使
用しても良いし、酸化チタン微粒子を含有するゾルを使
用しても良い。
【0019】溶液に使用される有機チタン化合物として
は、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタ
ン、テトラn−プロポキシチタン、テトラブトキシチタ
ン、テトラメトキシチタンなどのアルコキシド、カルボ
ン酸塩あるいはキレート化合物などが挙げられる。ま
た、塩化チタン、硫酸チタン、ペルオキソチタン酸など
の無機チタン化合物を用いることも可能である。これら
の溶液をそのまま、あるいは加水分解してから塗布に供
することができる。
【0020】また、酸化チタン微粒子を含有するゾルを
透明基板上に塗布することが好適である。このとき、ゾ
ル中に含まれる酸化チタン粒子は無定形であっても良い
し、アナターゼ型あるいはルチル型の結晶からなる粒子
であっても良い。中でも、アナターゼ型酸化チタン微粒
子を含有するゾルであることが、短い焼成時間でも酸化
チタン結晶からなる強固な薄膜を得ることができ、アル
カリ金属を含有するガラス基板を使用した際にもアルカ
リ金属の酸化チタン薄膜中への拡散を抑制することもで
きるので好適である。
【0021】このような酸化チタンゾルの平均粒径は特
に限定されないが、通常100nm以下であり、白化の
少ない均質な膜を得るためには30nm以下であること
が好適である。ゾルの媒質は特に限定されないが、主成
分が水であることが、塗布作業の際の作業環境の安全性
の観点から好適である。この点は、酸化チタン以外の金
属酸化物のゾルである場合にも同様である。
【0022】チタン元素を含有する液体のpHが3以上
であることが好ましい。中性またはアルカリ性の液体を
使用するほうが、アルカリ金属を含有するガラス基板を
使用する際にアルカリ金属イオンの酸化チタン薄膜への
拡散を防止できる。pHは好適には5以上である。ま
た、14以下であることが好ましい。
【0023】また、光触媒効果を発揮させる場合には、
チタン元素以外の金属元素やケイ素等の半金属元素の含
有率は少ないほうが好ましい。具体的には、チタン元素
の含有量に対して重量比で1/10以下の含有量である
ことが好適であり、実質的に全く含まないことがより好
適である。
【0024】チタン元素を含有する液体として本発明で
使用されるもののうち、好適なものとして、アナターゼ
型の酸化チタンゾルにペルオキシチタン酸を含有する液
体が挙げられる。この液体は、中性でありながら、水中
に酸化チタン粒子が良好に分散されたものであり、本発
明の実施に好適である。
【0025】本発明で原材料として使用される透明基板
の材質は特に限定されず、ガラス基板や、プラスチック
基板などを使用することができる。プラスチック基板と
しては、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル
(PMMA)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエ
チレンテレフタレート(PET)等、各種の透明樹脂か
らなるプラスチック基板が使用可能である。しかしなが
ら、塗布後に高温に加熱することによって強固な金属酸
化物薄膜を形成することが可能な点から、ガラス基板を
使用することが好適である。
【0026】本発明で原料として使用されるガラス基板
は、その表面圧縮応力が10MPa以下であることが好
適である。この値はJIS R3222に準じて測定し
たものである。このように表面圧縮応力が少ないガラス
基板を軟化温度の付近まで加熱してから、一定の条件で
冷却した場合には、ガラス基板表面に大きな圧縮応力を
有する金属酸化物薄膜被覆ガラス板が得られる。そうす
ることで、後述するように、ガラス基板に対して密着性
の良い金属酸化物薄膜を形成することができる。
【0027】ガラス板の材質は特に限定されないが、ア
ルカリ金属を5〜15重量%含有するガラス基板が好適
である。このような量のアルカリ金属を含有させること
で、加熱処理時に到達する最高温度に近いところまでガ
ラス基板の軟化点を低下させることができる。これによ
り、例えば酸化チタン薄膜を形成する場合には、アナタ
ーゼ型のチタニアの結晶を成長させることのできる温度
付近でガラス基板の弾性率を低下させることができ、冷
却時に適当な表面圧縮応力を発生させることができる。
その結果として摩擦耐性に優れた金属酸化物薄膜を得る
ことができる。このようなガラス基板としては、工業的
重要性が大きく、強化処理を施す必要性も大きいことか
ら、ソーダライムガラスが最適である。
【0028】透明基板の寸法は特に限定されるものでは
ないが、通常厚さが2.5〜25mm程度である。ま
た、通常面積は0.01m以上であるが、特に広い面
積に塗布する際に塗布ムラが問題となりやすく本発明の
塗布方法を採用することが好適であることから、面積が
0.5m以上である基板に金属酸化物薄膜を形成する
ことが好適である。より好適には1m以上である。
【0029】金属元素を含有する液体を塗布する前に、
透明基板の表面を洗浄しておくことが、塗布ムラや欠陥
の発生を防止し、金属酸化物薄膜の密着性を向上させる
ために好ましい。界面活性剤を使用して洗浄するのみで
も良いが、酸性水溶液と界面活性剤含有水溶液の両方で
洗浄することが好ましい。酸を含有する水溶液、例えば
酢酸水で洗浄してから、さらに界面活性剤を含有する水
で洗浄し、最後に水で十分洗浄することで、特にガラス
の運搬中に付着した汚れなどを適切に洗浄することが可
能である
【0030】本発明では、金属元素を含有する液体から
なる霧状の微粒子を透明基板の表面に付着させることに
よって前記液体を塗布するものである。こうすることに
よって、金属酸化物薄膜の表面に微細な凹凸を形成する
ことが可能であり、干渉色が視認されない薄膜を形成す
ることができる。特に酸化チタンの結晶は約2.5以上
の高い屈折率を有しているために、干渉色が外観上問題
となりやすいからこの点は重要である。また、僅かな膜
厚ムラでも干渉色の変化や干渉縞として容易に視認され
るので、外観ムラの目立たない金属酸化物薄膜を得るた
めにも、上記方法が好適である。この方法は、膜厚ムラ
の発生しやすい大面積に均一に塗布する場合に特に有効
である。
【0031】具体的には、エアー式スプレーガンや超音
波噴霧器を使用して塗布することが好適である。このよ
うな装置を使用して塗布することで、例えば金属酸化物
ゾルを塗布することも可能である。このようなゾルは、
元々固体微粒子を含んでいるので、表面に微細な凹凸を
形成させるのに有効である。このとき透明性の高い塗膜
を得るためには、金属元素を含有する液体中の金属元素
含有量を0.1〜10重量%とすることが好適である。
希薄な液を塗布することで、酸化チタン薄膜表面に大き
な凹凸を発生して透明性が悪化するのを最低限に抑える
ことができるからである。
【0032】金属元素を含有する液体を塗布する際にエ
アー式スプレーガンを用いる場合には、ノズルからの単
位時間当たりの吐出量を1〜10ml/分とすることが
好適である。このように比較的少量の吐出量で吹き付け
ることによって、気泡の噛み込みがなく、微細な凹凸を
形成することができ、しかも均一な厚みで塗布すること
が容易となる。吐出量はより好適には7ml/分以下で
ある。また、スプレーガンに供給する好適なエアー圧力
は0.13〜0.8MPaである。エアー圧力を低めに
設定するほうが、望ましい表面形状を実現しやすいこと
から、エアー圧力はより好適には0.4MPa以下であ
り、さらに好適には0.3MPa以下である。なお、こ
こでいうエアー圧力は絶対圧力であり、大気圧との差圧
はこの値から約0.1MPa減じた値となる。必要に応
じて、塗布、乾燥を繰り返して重ね塗りを行うこともで
きる。
【0033】また、金属元素を含有する液体を塗布する
際に超音波噴霧器を用いる場合には、超音波噴霧器の液
体タンクにおける液温を透明基板の表面温度よりも5〜
90℃高く設定することが好適である。超音波噴霧器か
ら発生する液滴は、エアー式スプレーガンによって発生
する液滴よりも小さく、強い気流で吹き付けるわけでは
ないが、透明基板の表面を液滴の温度よりも低く保つこ
とで透明基板上に均質に塗布することができる。本方法
は、特に極めて薄く均一に塗布する際に、表面に微細な
凹凸を有する金属酸化物薄膜を形成することができて有
用である。
【0034】塗布された塗膜は必要に応じて乾燥され
る。乾燥方法は特に限定されるものではなく、比較的低
温で加熱する方法や乾燥空気を吹き付ける方法が例示さ
れる。例えば、前述のようにエアー式スプレーガンを用
いて塗布する場合には、スプレーガンのノズルに供給す
る液体を遮断して、エアーのみを吹き付けて乾燥させる
方法が好適に採用される。また、超音波噴霧器を使用す
る場合には、塗布膜厚が薄いこともあり、乾燥空気を接
触させるだけでも乾燥させることが可能である。また、
塗膜に紫外線や電子線等の放射線を照射して硬化させる
こともできる。
【0035】金属元素を含有する液体が塗布された透明
基板に加熱処理を施すことが好適である。こうすること
によって、強固な金属酸化物薄膜を形成することができ
る。特に透明基板がガラス基板である場合には、高温で
の焼成が可能であるから特に強固な金属酸化物薄膜を形
成することができる。このときの加熱方法は特に限定さ
れるものではないが、金属酸化物結晶が形成され、その
結晶が成長できるような温度にすることが好適である。
【0036】透明基板としてガラス基板を使用する場
合、加熱処理に際しては、金属元素を含有する液体が塗
布された表面を550〜700℃の最高温度まで加熱す
ることが好適である。この温度範囲で加熱することで金
属酸化物薄膜を強固なものとすることができると同時
に、ガラス基板の軟化点に近い温度まで加熱すること
で、冷却後の金属酸化物薄膜が基板に密着しやすくなる
からである。代表的なソーダライムガラスではASTM
C338−57で規定されるガラスの軟化点は720
〜730℃である。前記最高温度が550℃未満では、
金属酸化物薄膜が強固なものとならず、また、ガラスの
軟化点から随分低い値であるために金属酸化物薄膜の密
着性も不十分となる虞がある。最高温度は好適には60
0℃以上である。一方、最高温度が700℃を超えたの
では、ガラスの軟化の兆候が見られ、焼成中にガラス基
板の平面性が損なわれ、得られるガラス板に歪が生じる
虞がある。最高温度は好適には650℃以下である。
【0037】金属元素を含有する液体が塗布されたガラ
ス板を加熱する際の昇温速度は特に限定されない。しか
しながら下記式(2)を満足する速度で昇温することが
好適である。 5 ≦ b/t ≦ 30 (2) 但し、 b:加熱する際に、200℃から500℃まで昇温する
のに要する時間(秒) t:ガラス基板の厚さ(mm)である。
【0038】このように比較的急速に昇温させること
で、金属酸化物の結晶の成長可能な温度まで短時間で上
昇させることができる。したがって、b/tの値が5以
上であることが好適であり、10以上であることがより
好適である。但し、厚みの大きいガラス基板をあまり急
速に加熱したのでは、基板の表面と中心との温度差が大
きくなりすぎて、発生する過大な応力によって加熱時に
ガラス基板が破損する虞があることから、b/tの値が
30以下であることが好適である。より好適には20以
下である。
【0039】チタン元素を含有する液体が塗布されたガ
ラス板を加熱する場合には、ガラス基板としてアルカリ
金属を含有するガラス基板を使用する場合に、アルカリ
金属イオンが不必要に拡散することを防止することがで
きる。特に酸化チタンが無定形であったり、不完全な結
晶形態であったり、揮発成分を含んでいるようなときに
はアルカリ金属イオンが拡散しやすいため、急速に昇温
して、アナターゼ型の結晶が成長可能な温度まですばや
く到達させることが好適である。
【0040】また、前記金属元素を含有する液体が塗布
された表面の温度が550〜700℃の温度範囲にある
時間が20〜500秒であることが好適である。この温
度範囲にある時間が一定時間であることで、比較的柔ら
かい状態にあるガラス基板上で金属酸化物の結晶が十分
に成長し、結果として強固な薄膜がガラス基板に密着す
ることができるのではないかと考えられる。この時間が
20秒未満である場合には、膜の硬度や強度が不十分に
なったり、基板への密着性が低下したりする虞がある。
より好適には40秒以上である。一方、この時間が50
0秒を超える場合には、ガラス基板に歪が生じ易くな
る。より好適には300秒以下である。
【0041】チタン元素を含有する液体が塗布されたガ
ラス板を加熱する場合には、550〜700℃の温度範
囲にある時間が短すぎる場合には、アナターゼ型の結晶
成長が不十分となりやすい。また、前記時間が長すぎる
とアルカリ金属イオンが酸化チタン薄膜中に拡散した
り、ルチル型の結晶構造を有する結晶が増加したりする
虞があり好ましくない。
【0042】さらに、上記最高温度に到達した後で、下
記式(1)を満足する条件で冷却することが好ましい。 0.2 ≦ a/t ≦ 5 (1) 但し、 a:冷却する際に、500℃から200℃まで降温する
のに要する時間(秒) t:ガラス基板の厚さ(mm)である。
【0043】降温速度をガラス基板の厚みの2乗で割っ
た値が、降温後に得られるガラス板に残存する表面圧縮
応力の値と相関関係を有することが経験的に分かってい
る。このように急速に冷却することで、基板表面に圧縮
応力が残存する形で冷却することができる。基板表面に
圧縮応力が残存することで、ガラス基板自体の強度が向
上するのみならず、基板表面に形成される金属酸化物膜
を剥離しにくいものにすることができるようである。
(1)式中a/tの値が0.2未満の場合には、冷却
速度が速すぎて降温途中でガラス基板が破損する虞があ
る。好適には0.3以上であり、より好適には0.5以
上である。一方、(1)式中a/tの値が5を超える
場合には、得られる金属酸化物薄膜の密着性が不十分に
なる。好適には3以下であり、より好適には2以下であ
る。
【0044】上述のように、ガラス基板を昇温させ、高
温に維持し、その後降温させるための装置は、特に限定
されるものではない。例えば、ガラスの強化処理を行う
強化炉などを好適に使用することができる。
【0045】例えば、金属元素を含有する液体を塗布し
たガラス板は、高温に維持された加熱炉の中に導入され
る。複数のローラーを回転させて加熱炉内に導入するこ
とが好適である。加熱炉内を加熱する方法は特に限定さ
れず、電気ヒーターによる加熱であっても良いし、ガス
や石油等の燃料を燃焼させて加熱する方法であっても良
い。加熱炉内で好適には式(2)を満足するような条件
でガラス板を昇温させる。この間、加熱炉内においてロ
ーラーの回転方向を切り替えることでガラス板を水平方
向に揺動することが好ましい。こうすることで局所的な
加熱ムラの発生を防止することができ、ガラス板が破損
するのを防止することができる。ローラー搬送以外の搬
送方法としてコンベア搬送や吊り下げ搬送も採用可能で
ある。
【0046】加熱炉内でのガラス基板表面の温度は、非
接触式の赤外線温度計によって連続的にモニターするこ
とが可能である。最高温度に到達してから加熱炉から取
り出して式(1)を満足する条件で冷却する。加熱炉か
ら取り出す際には、例えば、ローラーを回転させて取り
出すことが可能である。冷却に際しては、冷却槽の中
で、加圧した空気を一気に吹き付けて冷却する方法が好
適である。空気は、基板の両面に配置された多数のノズ
ルから吹き付けて、均一に冷却できるようにすることが
好ましい。このとき、加熱炉内と同様に、ローラーの回
転方向を切り替えることでガラス板を水平方向に揺動す
ることが、局所的な冷却ムラの発生を防止することがで
き、ガラス板が破損するのを防止することができて好ま
しい。
【0047】こうして得られたガラス基板の表面圧縮応
力が20〜250MPaであることが好適である。この
値はJIS R3222に準じて測定したものである。
このように一定の表面圧縮応力が残存するようにするこ
とで、金属酸化物薄膜とガラス基板との密着性が良好に
なる。ガラス基板に残存する表面圧縮応力が小さすぎる
場合には得られる金属酸化物薄膜の密着性が不十分にな
り、好適には50MPa以上である。一方、大きすぎる
場合には、降温途中でガラス基板が破損する虞があり、
好適には200MPa以下である。このように強固かつ
密着性に優れた金属酸化物薄膜を形成するための熱処理
条件の設定の結果、金属酸化物薄膜の形成と同時にいわ
ゆる倍強度ガラス、強化ガラスあるいは超強化ガラスと
呼ばれるガラスと同等の強度を有するガラス板が製造で
きるので、生産効率の点からも極めて優れている。な
お、上記表面圧縮応力は金属酸化物薄膜の形成されてい
ない面で測定することが可能である。
【0048】このようにして得られた、金属酸化物薄膜
の表面に形成された凹凸の形状は、干渉色を発生しない
程度に凹凸を深くすることが好適である。一方、凹凸の
深さが一定以上になると、今度は膜面が白化し、曇価
(ヘーズ値)が上昇して好ましくない。したがって、両
者を同時に満足する凹凸形状にする必要がある。このよ
うな凹凸形状の測定方法は限定されるものではなく、触
針式のものを使用することも可能ではあるが、白化を防
止するための凹凸の深さは光の波長よりも小さな深さで
あることを要するから、原子間力顕微鏡や、トンネル顕
微鏡の原理を利用した観察方法が好適である。
【0049】凹凸の深さは、干渉色を発生せず、曇価が
上昇しない凹凸であれば良いが、具体的には、原子間力
顕微鏡を用いて13μmの長さに渡ってスキャンしたと
きのJIS B0601で規定する十点平均粗さ(R
z)の値が5〜50nmであることが好適である。干渉
色を発生しないためには上記Rzの値が10nm以上で
あることがより好適である。また、金属酸化物薄膜の白
化を防止するためには、上記Rzの値が30nm以下で
あることがより好適である。この凹凸深さであれば可視
光の空気中での波長(380〜780nm)に比べて十
分に小さいので白化しにくい。一方、金属酸化物薄膜内
を往復する光路長は、凹部と凸部とでは、凹凸の深さの
2倍にさらに金属酸化物の屈折率を掛けた値になるの
で、上記5〜50nm程度の凹凸であっても光路長の差
は大きく、干渉色を発生しにくいようである。
【0050】形成される金属酸化物薄膜の平均膜厚が、
0.02〜1μmであることが、干渉色の発生を防止で
きる本発明においては有用である。より好適には0.0
5μm以上であり、さらに好適には0.1μm以上であ
る。一方、平均膜厚が一定以上厚くなっても、原料コス
トが上昇するだけである。より好適には0.7μm以下
であり、さらに好適には0.5μm以下である。
【0051】酸化チタン薄膜が形成された場合、酸化チ
タン結晶の屈折率はアナターゼ型で約2.5であり、一
般のガラスやプラスチックの屈折率(1.5前後)と比
較してかなり大きいことから、界面での反射に由来する
干渉色の発生する可能性が特に大きい。本発明の塗布方
法を採用することによって、酸化チタン薄膜の表面に微
細な凹凸を形成することが可能であり、干渉色が観察さ
れず、しかも透明性に優れた薄膜を形成することができ
る。
【0052】酸化チタン薄膜の結晶構造は特に限定され
ないが、アナターゼ型を主として含むものであることが
好ましく、実質的にアナターゼ型の結晶のみからなる薄
膜であることが、光触媒活性の点からより好ましい。形
成された酸化チタンの結晶構造は広角X線回折測定など
で確認できる。
【0053】得られた金属酸化物薄膜を有する板状体の
曇価(ヘーズ値)が5%以下であることが好適であり、
2%以下であることがより好適である。ここで曇価と
は、JIS R3212に記載された方法に準じて測定
した値である。高度な視認性が要求される用途向けに
は、曇価が1%以下であることがより好適であり、0.
5%以下であることが更に好適である。 さらに可視光
(380〜780nm)全域に亘って70%以上の光線
透過率を有することが好適である。光線透過率は上記波
長全域に亘って75%以上であることがより好適であ
り、80%以上であることがさらに好適である。
【0054】このように、広い面積の透明基板に対して
も干渉色の発生しない、透明性に優れた、外観の良好な
金属酸化物薄膜を形成することができる。しかも透明基
板としてガラス基板を使用した際に、強固かつ密着性の
良好な金属酸化物薄膜を形成することができ、ガラスの
強度を向上させることも可能であり、さらに生産性も良
好なので、多くの用途に使用することができる。酸化チ
タン薄膜を形成した場合には、光触媒機能を発揮するこ
とができ、表面の親水化のほか、防汚機能、抗菌機能、
有毒ガスの分解機能、脱臭機能なども発揮される。
【0055】好適な用途としては、例えば、建築物用窓
ガラス、建築物外壁用ガラス、天窓、手すり用ガラス
板、自動車用窓ガラス、鉄道車両用窓ガラス、航空機用
窓ガラス、船舶用窓ガラス、エレベーター用窓ガラス、
その他各種乗り物用の窓ガラス、道路又は鉄道用の防音
壁、太陽光発電用カバーガラス、太陽熱温水器用カバー
ガラス、防護用又はスポーツ用ゴーグル又はマスク、冷
凍冷蔵食品陳列ケースのガラス板、野菜陳列ケースのガ
ラス板、計測機器のカバーガラス、各種鏡などが例示さ
れる。また、上記各種用途のガラス板をポリカーボネー
ト板やアクリル板等のプラスチック板に置き換えたもの
に対しても好適に使用される。
【0056】さらに、樹脂中間膜の両側にガラス板を積
層した合わせガラスであって、少なくとも一方のガラス
板として上記ガラス板を金属酸化物薄膜被覆面を外側に
して積層してなる合わせガラスも極めて有用である。こ
こで使用される樹脂中間膜としては、ポリビニルブチラ
ール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンな
どが挙げられる。このような合わせガラスの製造方法と
しては、常圧下で加熱圧着する方法や減圧下で加熱して
接着する方法が例示される。このように外観が良好で、
強固かつ密着性の良好な金属酸化物薄膜を有し、しかも
強度の高いガラス板を使用して、いわゆる合わせガラス
の構成とすることで、安全性をさらに改善した合わせガ
ラスを提供することができる。なおこのとき、合わせガ
ラスの片側のガラス板の代わりに、透明基板としてプラ
スチック板を用いた本発明の金属酸化物薄膜被覆板状体
を使用することもできる。このような高度な安全性能が
要求される用途は、道路や鉄道用の防音壁、建築物用の
外壁、建築物用窓ガラス、天窓、手すり用ガラス板など
である。
【0057】なかでも、道路や鉄道用の防音壁は、大面
積に亘って干渉縞の発生しない透明な酸化物薄膜を形成
することが要求され、しかも高度な安全性を要求される
から、上記合わせガラスを使用することが特に有用な用
途である。しかも粉塵や排ガス等で汚染されやすく、清
掃回数を減らす要求も高い用途であることから、酸化チ
タン薄膜を形成することが特に好適である。
【0058】
【実施例】以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に
説明する。
【0059】実施例1 原料として、縦1000mm、横1000mm、厚さ4
mmのソーダライムガラスを使用した。このソーダライ
ムガラスは、アルカリ金属としてナトリウムを10重量
%含有するものであり、ASTM C338−57に準
じて測定した軟化温度が720〜730℃のものであ
る。このソーダライムガラス基板の錫拡散層側の面の表
面圧縮応力をJIS R3222に準じて測定したとこ
ろ、6.3MPaであった。ソーダライムガラスの表裏
両面を1規定の酢酸水溶液を用いてスポンジでガラス基
板の表面を洗浄してから水洗し、引き続き界面活性剤を
水で希釈したものを用いて、スポンジでガラス基板の表
面を洗浄した。その後、界面活性剤を多量の水で洗い流
してからエアーブローして水分を取り除いた。
【0060】洗浄したガラス基板を壁面に立てかけて、
錫拡散層側の反対側の面にアネスト岩田株式会社製のエ
アー式スプレーガン「小型LPH−100−124LV
G」を用いて酸化チタン微粒子含有ゾルを塗布した。こ
こで使用した酸化チタン微粒子含有ゾルは、山中産業株
式会社製「YAL−COAT」であり、アナターゼ型酸
化チタン微粒子を含有し、ペルオキシチタン酸を併せて
含有するゾルである。チタン元素の含有量は約0.5重
量%であり、媒質は主として水であり、液のpHは6.
8である。スプレーガンに供給するエアー圧を0.2M
Pa(大気圧との差圧は約0.1MPa)とし、ノズル
からの単位時間当たりの塗布量を5ml/分に設定し
て、ガラス基板から15cm離れた位置から、一定距離
を保ちながら水平方向に移動させながら塗布した。左端
あるいは右端まで到達したところで上下方向に位置をず
らせて全体に塗布を行った。微細で均一な霧状の液滴が
ガラス基板上に均一に付着した。このときガラス基板の
全体が一様に濡れるようなことがなく、液が流れるよう
なこともないようにした。
【0061】噴霧塗布した後、スプレーガンへのゾルの
供給を止め、エアーのみをエアー圧0.2MPa(大気
圧との差圧は約0.1MPa)で供給して、やはり15
cm離れた位置から空気を吹き付けて塗布したときと同
様に移動させて、乾燥空気を塗布面に吹き付けて塗膜を
乾燥させた。引き続いて再びスプレーガンにゾルを供給
して1回目と同様にして2回目の塗布を行い、その後1
回目と同様にして乾燥させた。さらにもう一回同様に塗
布と乾燥を繰り返し、合計で3回重ね塗りを行った。上
記塗布作業においては、塗布した直後には軽く曇るもの
の、乾燥すればほぼ透明になった。また、乾燥前後にお
いて干渉色に由来すると思われる着色は認められなかっ
た。
【0062】こうして得られた塗膜が形成されたガラス
板を、タムグラス・エンジニアリング社製強化炉「HT
F2448」を用いて加熱処理した。まず室温下で塗布
面が上側になるようにして搬送ローラーの上に載せ、ロ
ーラーを回転させて加熱炉中に搬送した。加熱炉は電気
ヒーターによって炉温が705〜735℃に維持されて
いる。この中に搬送されたガラス基板の塗布面の表面温
度は、加熱炉の内部に設置された非接触式の赤外線温度
計によって経時的にモニターした。その結果、200℃
から500℃まで温度が上昇するのに64秒要した。所
要時間(b:秒)を板厚(t:mm)で割った値(b/
t)は16であった。加熱炉内ではローラーの回転を反
転させながらオシュレーション(揺動)操作を繰り返し
て、加熱ムラが発生するのを防止した。
【0063】その後最高温度の625℃まで達したとこ
ろで、加熱炉から冷却槽内にローラーを用いて搬送し、
冷却槽内で冷却した。冷却に際しては、基板の上下両方
向から多数のノズルを介して大量の圧縮空気を吹き付け
て冷却した。この間、冷却槽内においては、冷却ムラを
防止するために、加熱中と同様にローラーの反転操作に
よる揺動を継続した。
【0064】加熱炉内で550℃に到達してから、最高
温度625℃を経て、冷却槽中で550度に冷却される
までの時間は50秒であった。また、冷却時に500℃
から200℃まで温度が降下するのに14秒要した。所
要時間(a:秒)を板厚(t:mm)の2乗で割った値
(a/t)は0.88であった。冷却槽中でほぼ室温
まで冷却して、酸化チタン薄膜被覆ガラス板が製造され
た。
【0065】得られた酸化チタン薄膜の平均厚みは、塗
布時のコート量から算出して約0.3μmである。外観
は無色透明であり、基板に平行な方向に近い斜め方向か
らよく観察すると僅かに白濁しているのが認められる程
度であり、一見しただけでは透明な、良好な外観を呈し
ていた。干渉色も全く認められなかった。得られたガラ
ス板の分光透過率測定チャートを図1に示すが、可視光
域(380nm〜780nm)全域において80%以上
の良好な光線透過率を有していた。また、JIS R3
212に準じて曇価(ヘーズ値)を測定したところ、ほ
ぼ0%(0.1%未満)であった。
【0066】得られた酸化チタン薄膜を、広角X線回折
測定した結果を図2に示す。図中四角形で示しているピ
ークがアナターゼ型の結晶構造に由来する回折ピークで
あり、逆三角形で示しているピークがルチル型の結晶構
造に由来する回折ピークである。アナターゼ型の酸化チ
タン結晶に由来するピークが観察され、ルチル型の酸化
チタン結晶に由来するピークは観察されなかった。
【0067】得られた酸化チタン薄膜の表面を日本電子
株式会社製走査型プローブ顕微鏡JSPM−4200を
用いて観察した。先端の鋭利なプローブと試料表面の原
子間力を測定することによって表面形状を観察するもの
である。AFMコンタクトモードで13μmの距離をス
キャンした表面の凹凸形状を測定した結果を図3に示
す。JIS B0601で規定する十点平均粗さRzの
値は18.4nmであり、可視光線の波長よりかなり小
さい凹凸が形成されていることがわかる。
【0068】また、上記プローブ顕微鏡にHysitr
on社製ナノメカニカルシステム「Triboscop
e」を装着して表面硬度を測定した。得られた膜の硬度
(Hardness)は6.22GPaであった。な
お、原料で用いたソーダライムガラスの硬度を同様に測
定したところ7.09GPaであり、ガラスにほぼ匹敵
する高硬度の膜が得られていることが判明した。さら
に、鉛筆硬度試験をしたところ、硬度6Hの鉛筆を用い
て擦っても、膜が完全に剥がれて基板面が露出すること
はなかった。
【0069】酸化チタン膜面に、太陽光線を3日間照射
してから、実際に息を吹きかけて、防曇効果を確認した
ところ、吐きかけた息が水膜を形成したと思われる干渉
縞が視認された後、速やかにその干渉縞が消失し、優れ
た防曇効果を有していることが認められた。また、6ヶ
月間屋外に曝しておいても、その防曇効果は失われなか
った。また、酸化チタン薄膜面の水に対する接触角を測
定したところ、5度以下であった。
【0070】また、有機物質の分解効果について、日石
三菱株式会社製グリース「エピノックグリースAP2」
10gを100cmの面積に塗油して、3ヶ月間屋外
の太陽光の当たるところに放置したところ、普通のガラ
ス基板に塗油した対照品に比べて分解性に格段の差があ
り、ほぼ消滅していることが確認された。
【0071】得られた板ガラスの表面圧縮応力を、酸化
チタン薄膜の形成されていない側の面の表面圧縮応力を
JIS R3222に準じて測定したところ、104M
Paであり、一般の4mm厚の強化ガラスと同程度の表
面圧縮応力を有していた。
【0072】実施例2 実施例1と同様にして洗浄、乾燥したソーダライムガラ
ス基板に、実施例1と同じ酸化チタン微粒子含有ゾルを
塗布した。塗布に際しては、市販の加湿用途の超音波噴
霧器を使用した。当該噴霧器のタンク中のゾルの温度を
90℃に加熱してから、表面温度が23℃のガラス基板
上に噴霧塗布した。ガラス基板から20cm離れた位置
から、霧状の液滴がガラス基板上に均一に付着するよう
にした。ガラス基板に付着させた後でドライヤーを用い
て乾燥させた。上記塗布作業においても実施例1同様、
塗布した直後には軽く曇るものの、乾燥すればほぼ透明
になった。また、乾燥前後において干渉色に由来すると
思われる着色は認められなかった。
【0073】こうして得られた塗膜が形成されたガラス
板を、実施例1と同様の操作で加熱処理して酸化チタン
薄膜を形成した。外観は無色透明であり、基板に平行な
方向に近い斜め方向からよく観察することで確認できる
白濁の程度は実施例1よりもさらに少ないレベルであ
り、実施例1よりも透明性が良好であった。また、干渉
色も全く認められなかった。
【0074】比較例1 実施例1と同様にして洗浄、乾燥したソーダライムガラ
ス基板を立てかけて、実施例1と同じ酸化チタン微粒子
含有ゾルをその表面に流すことによって、フローコート
法によって塗布した。こうして得られた基板を、実施例
1と同様にして加熱処理して酸化チタン薄膜が表面に形
成されたガラス基板を得た。得られた酸化チタン薄膜は
干渉縞が顕著に観察され、外観不良であった。
【0075】
【発明の効果】本発明によって、干渉色や干渉縞を発生
せずしかも透明性の良好な金属酸化物薄膜を透明基板上
に形成することが可能である。特に広い面積に亘って、
酸化チタンのような屈折率の高い金属酸化物薄膜を形成
する際に、良好な外観とすることができて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたガラス板の分光透過率測定
チャートである。
【図2】実施例1で形成された酸化チタン薄膜の広角X
線回折チャートである。
【図3】実施例1で形成された酸化チタン薄膜の表面の
凹凸形状である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 政田 圭三 岡山県倉敷市玉島長尾2627番地の2 Fターム(参考) 4G059 AA01 AC01 AC21 AC30 EA01 EA04 EB06

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属元素を含有する液体からなる霧状の
    微粒子を透明基板の表面に付着させることによって前記
    液体を透明基板の表面に塗布して、薄膜表面に微細な凹
    凸を有する金属酸化物薄膜を形成する金属酸化物薄膜被
    覆板状体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記金属元素を含有する液体が金属酸化
    物微粒子を含有するゾルである請求項1記載の金属酸化
    物薄膜被覆板状体の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記金属元素を含有する液体中の金属元
    素含有量が0.1〜10重量%である請求項1又は2記
    載の金属酸化物薄膜被覆板状体の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記金属元素を含有する液体を塗布する
    際にエアー式スプレーガンを用い、該エアー式スプレー
    ガンに供給するエアー圧力を0.13〜0.8MPa、
    ノズルからの単位時間当たりの吐出量を1〜10ml/
    分とする請求項1〜3いずれか記載の金属酸化物薄膜被
    覆板状体の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記金属元素を含有する液体を塗布する
    際に超音波噴霧器を用い、該超音波噴霧器の液体タンク
    における液温を透明基板の表面温度よりも5〜90℃高
    く設定する請求項1〜3いずれか記載の金属酸化物薄膜
    被覆板状体の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記透明基板がガラス基板である請求項
    1〜5いずれか記載の金属酸化物薄膜被覆板状体の製造
    方法。
  7. 【請求項7】 前記透明基板の面積が0.5m以上で
    ある請求項1〜6いずれかに記載の金属酸化物薄膜被覆
    板状体の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記透明基板の表面を酸性水溶液と界面
    活性剤含有水溶液を用いて洗浄してから、前記金属元素
    を含有する液体を塗布する請求項1〜7いずれか記載の
    金属酸化物薄膜被覆板状体の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記液体を透明基板の表面に塗布してか
    ら、加熱処理して金属酸化物薄膜を形成する請求項1〜
    8いずれか記載の金属酸化物薄膜被覆板状体の製造方
    法。
  10. 【請求項10】 形成される金属酸化物薄膜の平均膜厚
    が0.02〜1μmである請求項1〜9いずれかに記載
    の金属酸化物薄膜被覆板状体の製造方法。
  11. 【請求項11】 形成される金属酸化物薄膜がアナター
    ゼ型酸化チタンからなる請求項1〜10いずれかに記載
    の金属酸化物薄膜被覆板状体の製造方法。
  12. 【請求項12】 曇価が5%以下である請求項1〜11
    いずれかに記載の金属酸化物薄膜被覆板状体の製造方
    法。
  13. 【請求項13】 透明基板の表面に形成された金属酸化
    物薄膜の表面に微細な凹凸を有し、該表面のJIS B
    で規定する十点平均粗さRzの値が5〜50nmであ
    る、金属酸化物薄膜被覆板状体。
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