JP3869174B2 - 親水膜付き曲げガラスおよびその製造方法 - Google Patents

親水膜付き曲げガラスおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に車両用窓ガラスとして好適な防汚機能や親水性による雨天時の視認性向上機能を有する親水膜付き曲げガラスおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、酸化チタンの光触媒効果による親水性、防曇性、防汚性を持った商品が種々開発され、特許も多く出願されている。
例えば、光触媒半導体結晶微粒子(例えばTiO2結晶微粒子)とバインダーとして親水性物質であるSiO2を組み合わせた被膜系は、常温もしくは低温での熱処理でも光触媒活性が発揮される利点を有するが、SiO2自体に耐アルカリ性がないため、例えば、車両用の窓ガラスに使うための評価の一つとして、耐アルカリ性試験を行うと、試験後に膜が払拭により傷がつくか剥離するため、到底このような耐久性を要する部位には使うことができず、さらにTiO2結晶微粒子の含有量が多い場合には、光触媒活性は高いが耐摩耗性が劣るという問題が生じる。
また、TiO2結晶微粒子を用いずにTi(OC374の加水分解物とSiO2を組み合わせて、600℃程度の熱処理を行い、TiO2結晶を膜中に析出させる被膜系は、前述の被膜系に比べて比較的耐久性が高くなる利点を有するが、前述の被膜系と同様にSiO2自体に耐アルカリ性がなく、耐久性が劣るという問題を有している。
さらにまた、アルカリバリア層なしで、TiO2結晶微粒子を用いた単層構成の場合には、560℃〜700℃の高温でガラスを曲げ焼成することによって、ガラス中のアルカリ成分が光触媒膜中に移行するために著しく光触媒機能が低下するという問題が起こる。
【0003】
前の耐薬品性、機械的強度等を改善するために、例えば、特開平9−328336号公報には、平均粒子径が100nm未満のTiO2微粒子と、ジルコニウムテトラアルコキシドやジルコニウムアセチルアセトンキレート化合物、ジルコニウムアルコキシアセチルアセトンキレート化合物、ジルコニウムアセテート化合物等のZr元素含有化合物とアルコキシシラン化合物やクロロシラン化合物、イソシアネートシラン化合物、またはそれらの部分加水分解生成物等のSi元素含有化合物が特定の組成比で構成された光触媒活性を有する組成物および被膜の製造法が開示されている。また例えば、特開平10−216528号公報には、光触媒粒子(酸化チタン)とシリコンアルコキシドを原料として生成されるシリカとジルコニウムアルコキシドを原料として生成されるジルコニアの一方または両方をバインダーとして使用し、バインダーにシリカとジルコニアの両方を用いる場合にはシリカとジルコニアの含有量を特定の比率とした光触媒体及びそれを用いた装置及び熱交換器フィンが開示されている。
また例えば、特開平9−227159号公報には、基材の表面に接合された透明で光触媒性半導体材料を含む層を備えた乗り物の前後方窓ガラスが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平9−328336号公報記載の発明は、TiO2微粒子:ZrO2(重量比)=1:0.02〜0.5の範囲であり、Zr源にはジルコニウムテトラアルコキシドやジルコニウムアセチルアセトンキレート化合物、ジルコニウムアルコキシアセチルアセトンキレート化合物、ジルコニウムアセテート化合物等のZr元素含有化合物を用いている。また特開平10−216528号公報記載の発明はバインダー中のシリカ含有量が60〜90wt%でジルコニア含有量が10〜40wt%の比率であり、Zr源にはジルコニウムアルコキシドを用いているが、いずれの発明の被膜とも車両用の窓ガラスの車外側に用いるには耐アルカリ性、耐摩耗性が充分であるとは言い難いものである。
また、前記特開平9−328336号公報記載の発明は、曲げ加工されたガラスに光触媒膜を形成するものであり、曲げの形状によっては均一な膜を被覆することが難しく、且つ被膜塗布装置が複雑なるとともに、光触媒膜としてジルコニアを含有するとの記載も全くない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した課題に鑑みてなしたものであり、曲げガラスに最適な膜組成であるSiO2、ZrO2、TiO2結晶よりなる親水膜であって、それらの成分比を限定し、特に、TiO2結晶としてTiO2微粒子源を少なくとも一部用いることにより、曲げ加工等の高温での焼成を行っても、該膜にクラックが発生せず、アルカリバリヤー層を設けなくても前記の高温処理を受けてもガラス中のアルカリ成分の移行により光触媒の性能が劣化されることなく、且つTiO2結晶に対してZrO2を多く含有することで、防汚性や親水性などの光触媒活性と、耐摩耗性と耐薬品性(耐酸性および耐アルカリ性)とが両立した高性能、高耐久性を有することを見出した。
【0006】
すなわち、本発明の親水膜付き曲げガラスは、曲げガラス表面に形成された光触媒作用を有する親水膜を有する親水膜付き曲げガラスであり、前記親水膜は、前記親水膜は、ZrO2とSiO2からなる被膜形成成分中にTiO2結晶が分散されたものからなり、該膜の各成分の含有量の割合は重量%換算で、ZrO2が25〜60%、SiO2が15〜50%、TiO2結晶が25〜45%であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の親水膜付き曲げガラスは、親水膜がZrO2とSiO2とTiO2結晶の含有量の合計量が90重量%以上からなることを特徴とし、さらに膜厚は50〜300nmであることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明の親水膜付き曲げガラスは、該ガラスが、親水膜が車両用窓ガラスの車外側となるように装着されることを特徴とする。
【0009】
またさらに、本発明の親水膜付き曲げガラスは、ガラスの曲げ加工が親水膜の焼成と同時、あるいは親水膜を焼成した後に行われたものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の親水膜付き曲げガラスの製造方法は、平板状のガラス表面に、ZrO2、SiO2、TiO2の各原料からなる塗布液を塗布し成膜した後、560℃〜700℃の温度で焼成することにより、親水膜を形成するとともに該ガラスを所定形状に曲げ加工してなる親水膜付き曲げガラスであって、該親水膜は、その膜組成が重量%換算で、ZrO2が25〜60%、SiO2が15〜50%、TiO2結晶が25〜45%からなり、ZrO2とSiO2からなる被膜形成成分中にTiO2結晶が分散された光触媒作用を有する膜であることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の親水膜付き曲げガラスの製造方法は、親水膜を成膜した後、300℃〜620℃の温度で仮焼成したのち、560℃〜700℃の温度で本焼成し該被膜の本焼成同時にガラスの曲げ加工も行うこともできる。
【0012】
さらにまた、本発明の親水膜付き曲げガラスの製造方法は、TiO2の原料に一次粒子の平均粒径が30nm以下であるTiO2結晶微粒子を用いることを特徴とし、またZrO2の原料として、Zrの塩化物または硝酸塩を用いることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のZrO2とSiO2からなる被膜形成成分中にTiO2結晶が分散された親水膜付き曲げガラスは、例えば、平板状のガラス表面にZrO2、SiO2、TiO2の各原料からなる塗布液を塗布したのち、300℃〜620℃で仮焼成した後に、560℃〜700℃の曲げ焼成を行うことにより作製することができる。
【0014】
ZrO2原料としては、耐久性、特に耐摩耗性と耐酸性および耐アルカリ性の点からZrの塩化物または硝酸塩を用いることが好ましく、例えば、Zrの塩化物としては塩化ジルコニウムやオキシ塩化ジルコニウム(8水和物)や、塩素含有ジルコニウムアルコキシド Zr(OCm2m+1xCly(m,x,y:整数、x+y=4)などが使用でき、Zrの硝酸塩としては、オキシ硝酸ジルコニウム(2水和物)などが使用できる。
【0015】
被膜中のZrO2含有量は、耐アルカリ性および光触媒能力の点から25wt%以上含むことが必要であるが、60wt%以上と多過ぎると耐摩耗性および/または光触媒能力が乏しくなるために好ましくない。さらに好ましくは被膜中のZrO2含有量が25wt%以上、45wt%以下である。
なお、ZrO2を添加するに伴い耐アルカリ性が向上する以外に、ZrO2の添加量が25重量%以上の場合には光触媒活性も飛躍的に向上するので好ましい。
【0016】
また、SiO2原料としては、焼成後に酸化ケイ素を生成するものであればよく、例えば、テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどのアルコキシシランや、それらの加水分解物や重縮合物およびアセチルアセトンなどの安定化剤で安定化したもの、さらに市販のシリカ薬液、例えばコルコートP(コルコート製)、MSH2(三菱化学製)、CSG−DI−0600(チッソ製)などを用いることが出来る。被膜中のSiO2含有量は、耐摩耗性の点より15wt%以上含むことが必要であるが、50wt%以上にすると光触媒能力および/または耐アルカリ性が乏しくなるために好ましくない。さらに好ましくは被膜中のSiO2含有量が25wt%以上、45wt%以下である。
【0017】
また、TiO2結晶源としては、焼成後にTiO2結晶を含むものであればよく、特に、市販されているような粉体状の光触媒用TiO2微粒子或いは薬液を用いることも可能であり、粉体状の光触媒用TiO2微粒子としては、例えば、ST−01、ST−21(石原テクノ製)、SSP−25、SSP−20(堺化学工業製)、PC−101(チタン工業製)、スーパータイタニアF−6、スーパータイタニアF−5(昭和タイタニウム製)、DN−22A(古河機械金属製)などを用いることが可能である。また、光触媒用薬液としては、例えば、STS−01、STS−02(石原テクノ製)、PC−201(チタン工業製)A−6、M−6(多木化学製)などを用いることも可能であり、さらに、光触媒用TiO2微粒子とシリカ原料との混合物であるST−K01、ST−K03(石原テクノ製)なども用いることができる。なお、TiO 2 の含有量は、親水性、防汚性を発現するに必要な光触媒能力の点から25wt%以上含むことが必要であるが、耐アルカリ性と耐摩耗性の点より45wt%以下に含有量を抑えることが必要である。また、粉体状の光触媒用TiO2微粒子は、粉体を液体に分散するのに一般的に用いられる混合操作、例えばボールミルなどで容易に被膜薬液に分散することができ、その際ZrO2源やSiO2源と一緒に混合・分散しても問題ない。
【0018】
光触媒活性と耐摩耗性や耐酸性、耐アルカリ性などの耐久性の点より、被膜中のZrO2とSiO2とTiO2結晶の含有量の合計は90wt%以上とすることが必要である。なお、ZrO2とSiO2とTiO2結晶以外の成分は10%以下の範囲で含まれていても差し支えなく、具体的には非晶質のTiO223、B23、SnO2等の酸化物、C(カーボン)等である。また、被膜中のTiO2源として用いる光触媒用TiO2微粒子、或いは薬液中のTiO2の一次粒子の平均粒径は、30nm以下にすることが被膜の透明性および耐久性を高める点より好ましい。
【0019】
親水膜の成膜方法としては、特に限定されるものではないが、ディップコート法、スピンコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法等の一般的な成膜方法で成膜することができる。
【0020】
上記の成膜された被膜は、最終的に560℃〜700℃の温度で曲げ加工のための焼成処理を行うが、同時に被膜の耐久性もこの焼成によって得られる。なお、曲げ加工のための焼成の前に、300℃〜620℃、好ましくは450℃〜620℃、の温度で仮焼成を行い、続いて560〜700℃、好ましくは600〜700℃、の温度で該膜の本焼成とガラスの曲げ加工を兼ねて本焼成をすることも可能であり、このような仮焼成と本焼成の2段階の焼成を行うことにより形成された親水膜はより緻密となり、特に耐摩耗性が向上する利点を有する。なお、曲げ加工のための焼成時間は、車両用曲げガラスの場合には、(最高焼成温度−100℃)以上の温度にある時間が1分間以上、より好ましくは2分間以上になるようにすることが望ましい。焼成時間の上限は特に限定されるものではないが、生産性から焼成時間の上限は、(最高焼成温度−100℃)以上の温度に保持される時間が、強化ガラスの場合は3分程度、合わせガラスの場合は10分間程度にすることが好ましい。
なお、本発明の膜は、TiO2が膜中で微粒子として存在しており、且つその他の成分を所定割合になるように限定しているので、親水膜を形成した後にガラスを曲げ加工しても該被膜にクラックが入らない。
【0021】
親水膜の膜厚は、30nmから500nmであれば形成された被膜は光触媒活性と高い耐久性を保有するが、より好ましくは膜厚を50nm〜300nmにすることにより、1回の成膜で良好な透光性とさらに高い耐久性を有する親水膜が得られるので、より好ましい。
【0022】
本発明の親水膜付き曲げガラスは、親水性による雨天時の視認性向上や防汚などの目的で、車両用の窓ガラスの車外側や車両用ドアミラーに親水膜を使うような耐久性を要する使用環境でも、十分な耐久性と光触媒による親水性や防汚性などを有する。
【0023】
ガラスとしては、通常用いられるソーダライムシリケートが一般的であり、ガラスは、クリアやそれ以外のブルーやグレー、ブロンズ、グリーンなどの着色したガラスで、強化加工、合わせガラス、穴あけ加工、親水膜と反対側の面に蒸着やスパッタ、プリントなどのコートで金属膜や酸化物膜樹脂膜などの膜を付けること、エッチングやサンドブラストなどで親水膜と反対側の面を加工することなどの各種加工やそれらを組合せることは構わない。
なお、本発明の親水膜付き曲げガラスは、建築用、車両用、産業用等特にその用途を限定するものではないが、特に車両用のフロント窓ガラス、リヤ窓ガラス、サイド窓ガラス用曲げガラスとして好適である。
【0024】
【作用】
本発明の親水膜中のTiO2結晶は、太陽光や蛍光灯などに含まれる紫外線が照射されると光触媒効果により被膜表面に付着した有機物を分解し、被膜の表面を清浄に保つ作用(酸化分解型反応と呼ばれる)を示すとともに、TiO2結晶表面も親水化(超親水性型反応と呼ばれる)される。しかし、TiO2単体の被膜の場合には、紫外線が照射されないと、一旦親水化されても比較的短時間にTiO2本来の疎水性に戻る。
そこで本発明では紫外線がない、または紫外線強度が弱い状況でも親水性を維持するために親水性に優れたSiO2を添加し、親水性を改善すると共に、光触媒効果に必要な水をより多く吸着させることで被膜の光触媒能力を高めるとともに、耐摩耗性などの耐久性を高める効果を併せ持つ。
【0025】
しかし、被膜を外側にして車両用に使うには耐久性、特に耐摩耗性、耐アルカリ性が不足しており、これを改善するために本発明ではZrO2を添加している。特に、ZrO2の添加は耐アルカリ性の改善以外に、この系において光触媒能力をも向上する。
さらに、車両用等の曲げガラスの場合には、親水膜を形成後に曲げ加工をするが、本発明は、TiO2結晶としてTiO2微粒子源を少なくとも一部用いているため、曲げ加工等の高温での焼成を行っても、該膜にクラックが発生しない。
上記のような被膜組成とすることにより、該被膜は光触媒能力と共に高い耐久性、特に耐摩耗性と耐アルカリ性を持ち、該被膜の表面は親水性が維持された状態になっており、一時的に排ガスや塵埃などの汚れが付着した場合でも、有機分は光触媒効果で分解されると共に、被膜表面は親水性になっているので雨水が汚れと被膜表面との間に入り汚れが浮いて流れ落ちると共に、曲げガラスの場合でも高品質、高耐久性の膜を有する。
【0026】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
但し、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0027】
(実施例1)
〔サンプル作製〕
被膜薬液のZrO2源にZrOCl2(キシダ化学製)、SiO2源にCSG−DI−0600(チッソ製)、TiO2微粒子源とSiO2源にST−K01(TiO2:SiO2=8:2重量比、石原テクノ製)を用いて、溶媒にエタノール(キシダ化学製)と1−メトキシ−2−プロパノール(キシダ化学製)を用いて、被膜成分比が30ZrO2・30SiO2・40TiO2(wt%)になるよう調合した。次によく水と洗剤とセリアで洗浄した1000mm×1800mmで厚み3.5mmのグリーンのフロートガラス板(ソーダライムシリケートガラス)を素板とし、ディップコート法で被膜薬液を用いてコートし、ガラス温度で600℃で5分間焼成した後、所定の形状に切断、シーミングや、黒枠、熱線のプリント等の前処理を行い、650℃で曲げ焼成を行うことにより、膜厚が120nmの30ZrO2・30SiO2・40TiO2(wt%)で被膜されたバックウインドウガラスを得た。
【0028】
〔評価方法〕
得られたサンプルについて、車両用の車外側に用いられる親水ガラスとして下記の評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0029】
▲1▼耐摩耗性
摩耗ホイールCSー10F、荷重500gfでテーバー式摩耗試験でヘーズ値を評価した。
評価は、初期のヘーズ値H0が1%以下かつ、初期と1000回転中の最大ヘーズ値HMaxとのヘーズ変化量△H(△H=HMax−H0)が△H≦2%である場合を合格(○)とし、H0>1%または△H>2%のものを不合格(×)とした。
【0030】
▲2▼耐酸性
23℃±2℃に保った1重量%の硫酸に24時間浸漬後、流水中でネルで払拭し、乾燥して外観を評価した。
評価は、著しい外観変化がない場合を合格(○)とし、著しい変色または傷が入った場合或いは膜が剥離したものは不合格(×)とした。
【0031】
▲3▼耐アルカリ性
23℃±2℃に保った1重量%の水酸化ナトリウム溶液に24時間浸漬後、流水中でネルで払拭し、乾燥して外観を評価した。
評価は、著しい外観変化がない場合を合格(○)とし、著しい変色または傷が入った場合或いは膜が剥離したものは不合格(×)とした。
【0032】
▲4▼光触媒活性
表面に付いた汚れを分解する能力の光触媒活性をステアリン酸の分解度で評価した。評価方法は、FT−IR分光装置(パーキンエルマー社製)を用いて、2910cm-1から2920cm-1に現れるステアリン酸のC−H伸縮振動に起因するピーク強度(吸光度A)を、ステアリン酸塗布前Abとステアリン酸塗布時A0および紫外線を1時間照射した後A1についてそれぞれ求め、ピーク強度の変化量:{(A0−Ab)−(A1−Ab)}×1000を算出しステアリン酸の分解度とした。(ステアリン酸分解度が大きいほど光触媒活性は高くなる)。
なお、ステアリン酸のサンプルへの塗布は3wt%ステアリン酸−エタノール溶液にサンプルを浸漬し、8mm/secで引き上げることで行った。紫外線源にはブラックライトFL15BLB(東芝電気製)を用いて、サンプル表面の紫外線強度を4mW/cm2(365nm)とした。
評価は、前記ピーク強度の変化量が5以上の場合を合格(○)とし、5未満を不合格(×)とした。
【0033】
▲5▼親水維持性
防汚性には光触媒活性以外に一度親水化された表面がある程度親水性が維持されることも重要で、親水維持性は、サンプル作製後、7日間紫外線強度1μW/cm2(365nm)以下の環境下の実験室に放置した後の水に対する接触角で評価した。
評価は、7日後の接触角θがθ≦20゜を合格(○)とし、θ>20゜を不合格(×)で示した。
【0034】
〔評価結果〕
得られた親水膜付きガラスを前記に示す方法で評価した結果、表1に示すように、サンプルは光触媒活性を持ちつつ、車両用の窓ガラス(膜側が車外側)に使用しても充分な親水性を有していた。
また、耐酸性、耐アルカリ性、耐摩耗性試験にも合格した。
なお、通常のバックウインドウガラスをリファレンスとして実際に屋外曝露して汚れの付き具合を評価したところ、被膜の付いていないガラスに比べて格段に汚れが少ないことが確認できた。
【0035】
【表1】
Figure 0003869174
【0036】
(実施例2)
被膜成分比を40ZrO2・20SiO2・40TiO2(wt%)とした以外は実施例1と同様に行った。
得られた親水膜付きガラスを前記に示す方法で評価した結果、表1の結果のように、サンプルは光触媒活性を持ちつつ、車両用の窓ガラス(膜側が車外側)に使用できるほど高い耐久性を有していた。
【0037】
(実施例3)
被膜成分比を30ZrO2・40SiO2・30TiO2(wt%)とし、膜厚を150nmとした以外は実施例1と同様に行った。
得られた親水膜付きガラスを前記に示す方法で評価した結果、表1の結果のように、サンプルは光触媒活性を持ちつつ、車両用の窓ガラス(膜側が車外側)に使用できるほど高い耐久性を有していた。
【0038】
(実施例4)
被膜成分比を50ZrO2・20SiO2・30TiO2(wt%)とし、膜厚を150nmとした以外は実施例1と同様に行った。
得られた親水膜付きガラスを前記に示す方法で評価した結果、表1の結果のように、サンプルは光触媒活性を持ちつつ、車両用の窓ガラス(膜側が車外側)に使用できるほど高い耐久性を有していた。
【0039】
(実施例5)
SiO2源とTiO2微粒子源にMSH2(三菱化学製)とPC−101(チタン工業製)とをエタノールにボールミルで分散した薬液を用いて、ZrO2源にZr(OC493Clを用いた以外は実施例1と同様に行った。
得られた親水膜付きガラスを前記に示す方法で評価した結果、表1の結果のように、サンプルは光触媒活性を持ちつつ、車両用の窓ガラス(膜側が車外側)に使用できるほど高い耐久性を有していた。
【0040】
(実施例6)
ZrO2、SiO2、TiO2以外にAl23源に硝酸アルミニウム(キシダ化学製)を用いて被膜成分比を30ZrO2・5Al23・25SiO2・40TiO2(wt%)にした以外は実施例1と同様に行った。
得られた親水膜付きガラスを前記に示す方法で評価した結果、表1の結果のように、サンプルは光触媒活性を持ちつつ、車両用の窓ガラス(膜側が車外側)に使用できるほど高い耐久性を有していた。
【0041】
(比較例1)
被膜薬液にST−K01(TiO2:SiO2=8:2重量比、石原テクノ製)とエタノール(キシダ化学製)と1−メトキシ−2−プロパノール(キシダ化学製)を用いて、被膜成分比を20SiO2・80TiO2(wt%)にした以外は実施例1と同様に行った。
得られた親水膜付きガラスを前記に示す方法で評価した結果、表1の結果のように耐摩耗性と耐アルカリ性がなかった。
【0042】
(比較例2)
被膜薬液にST−K03(TiO2:SiO2=5:5重量比、石原テクノ製)とエタノール(キシダ化学製)と1−メトキシ−2−プロパノール(キシダ化学製)を用いて、被膜成分比を50SiO2・50TiO2(wt%)にした以外は実施例1と同様に行った。
得られた親水膜付きガラスを前記に示す方法で評価した結果、表1の結果のように光触媒活性が低く、また耐アルカリ性がなかった。
【0043】
(比較例3)
被膜成分比を10ZrO2・40SiO2・50TiO2(wt%)とした以外は実施例1と同様に行った。
得られた親水膜付きガラスを前記に示す方法で評価した結果、表1の結果のように光触媒活性が低く、また耐アルカリ性がなかった。
【0044】
(比較例4)
被膜成分比を30ZrO2・20SiO2・50TiO2(wt%)とした以外は実施例1と同様に行った。
得られた親水膜付きガラスを前記に示す方法で評価した結果、表1の結果のように耐摩耗性がなかった。
【0045】
(比較例5)
被膜成分比を10ZrO2・50SiO2・40TiO2(wt%)とした以外は実施例1と同様に行った。
得られた親水膜付きガラスを前記に示す方法で評価した結果、表1の結果のように光触媒活性がほとんどなかった。
【0046】
(比較例6)
被膜成分比を20ZrO2・40SiO2・40TiO2(wt%)とした以外は実施例1と同様に行った。
得られた親水膜付きガラスを前記に示す方法で評価した結果、表1の結果のように光触媒活性がほとんどなかった。
【0047】
(比較例7)
被膜成分比を50ZrO2・10SiO2・40TiO2(wt%)とした以外は実施例1と同様に行った。
得られた親水膜付きガラスを前記に示す方法で評価した結果、表1の結果のように耐摩耗性がなかった。
【0048】
(比較例8)
被膜成分比を10ZrO2・70SiO2・20TiO2(wt%)とした以外は実施例1と同様に行った。
得られた親水膜付きガラスを前記に示す方法で評価した結果、表1の結果のように光触媒活性と親水維持性がなかった。
【0049】
(比較例9)
被膜成分比を30ZrO2・50SiO2・20TiO2(wt%)とした以外は実施例1と同様に行った。
得られた親水膜付きガラスを前記に示す方法で評価した結果、表1の結果のように光触媒活性と親水維持性がなかった。
【0050】
(比較例10)
被膜薬液のSiO2源にCSG−DI−0600(チッソ製)、TiO2微粒子源とSiO2源にST−K01(TiO2:SiO2=8:2重量比、石原テクノ製)、さらにTiO2源に等モルのアセチルアセトンで安定化したTi(OC374のエタノール薬液、溶媒にエタノール(キシダ化学製)と1−メトキシ−2−プロパノール(キシダ化学製)を用いて、被膜成分比を30TiO2[Ti(OC374源からのTiO2分]・30SiO2・40TiO2[ST−K01からのTiO2分](wt%)とした以外は実施例1と同様に行った。
得られた親水膜付きガラスを前記に示す方法で評価した結果、表1の結果のように耐アルカリ性がなかった。
【0051】
【発明の効果】
以上のように、本発明の親水膜付き曲げガラスとその製造方法によれば、親水性による雨天時の視認性向上や防汚などの目的で、例えば車両用の窓ガラスの車外側に親水膜を使うような耐久性を要する使用環境でも、十分な耐久性と光触媒による親水性や防汚性などを持つ高耐久性、高性能を有する曲げガラスを提供できる。

Claims (7)

  1. 曲げガラス表面に形成された光触媒作用を有する親水膜を有する親水膜付き曲げガラスであり、前記親水膜は、ZrO2とSiO2からなる被膜形成成分中にTiO2結晶が分散されたものからなり、該膜の各成分の含有量の割合は重量%換算で、ZrO2が25〜60%、SiO2が15〜50%、TiO2結晶が25〜45%であることを特徴とする親水膜付き曲げガラス。
  2. ZrO2とSiO2とTiO2結晶の含有量の合計量が90重量%以上からなるものであることを特徴とする請求項1記載の親水膜付き曲げガラス。
  3. 膜厚が50〜300nmである請求項1または2記載の親水膜付き曲げガラス。
  4. 平板状のガラス表面に、ZrO2、SiO2、TiO 2 用の各原料からなる塗布液を塗布し成膜し後、560℃〜700℃の温度で焼成することにより、親水膜を形成するとともに該ガラスを所定形状に曲げ加工することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の親水膜付き曲げガラスの製造方法。
  5. 親水膜を成膜したのち、300℃〜620℃の温度で仮焼成した後、560℃〜700℃の温度で焼成し、該膜の本焼成と同時にガラスの曲げ加工を行うことを特徴とする請求項記載の親水膜付き曲げガラスの製造方法。
  6. TiO2の原料に一次粒子の平均粒径が30nm以下であるTiO2結晶微粒子を用いることを特徴とする請求項4または5記載の親水膜付き曲げガラスの製造方法。
  7. ZrO2の原料にZrの塩化物または硝酸塩を用いることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の親水膜付き曲げガラスの製造方法。
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