JP4501562B2 - 積層膜付き基材およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、光触媒膜上のシリコーン系シーリング材によって生じる汚染を防止する技術に関する。
近年、建材周辺部にシール材として使用されるシリコーン系シーリング材から遊離したシリコーンオイルによるガラス等の基材表面の汚染が問題となっている。この汚染は、シリコーン系シーリング材中に存在する未反応のオルガノポリシロキサン(低分子量のシリコーンオイル)が遊離し基材上に拡散することにより、基材表面が撥水性となり、親油性の汚染物質が付着しやすくなることにより生じると考えられる(例えば、非特許文献1参照。)。また、シリコーンオイル以外にも、シーリング材から親油性の他の物質が遊離し、基材表面を汚染する可能性も指摘されている。特に、基材がガラス等の透明基材である場合、この汚染により透明性が低下し、視認性が悪化する問題がある。
一方、透明基材表面に付着した汚れを分解し、透明基材本来の透明性を復活させる方法として、基材上に光触媒膜を形成する方法が知られている。光触媒を光励起することにより光触媒膜の表面に付着した有機汚れなどが光触媒の作用により分解され、結果として基材表面の透明性が復活する。現在では、透明性以外にも、親水性、防汚性、防曇性、流滴性等の機能を付与する目的で、各種光触媒膜が提案されている。例えば、少なくともシリコーン系シーリング材近傍に光触媒膜をコーティングすることで、シーリング材からの親油性物質を光触媒により分解または改質する発明が開示されている(例えば、特許文献1または2参照。)。しかし、これらの光触媒膜では親油性の汚染物質の汚れを充分に除去できないという問題がある。
また、一度撥水性へと変化した光触媒膜表面を親水性へと復活させる洗浄剤も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、洗浄を頻繁に行うのは実用上非常に手間がかかるという問題がある。
また、徐放性物質で流れ落ちる量をコントロールすることによって、手間をかけずに汚れの付着を防止し、汚れが付着した場合には速やかに除去することによって親水化表面を繰り返し再現する方法も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、この方法は、徐放性物質が有機系(実施例においては徐放性物質としてポリエーテルを使用)であるために、光触媒膜上では光触媒膜の作用で徐放性物質が光分解されて消失し、効果が充分に発揮できない点で問題がある。
特開平8−302856号公報 特開2001−55799号公報 特開2001−64683号公報 特開2000−265163号公報 岡本 肇,忍 裕司「建築技術」1997年8月 p152−160
本発明の目的は、従来技術が有する前述の欠点、特にシリコーン系シーリング材から遊離したシリコーンオイル等によるガラス等の基材表面の汚染を長期間防止し、透明性を維持でき、光触媒膜の親水性等の諸特性が劣化しない自己流出性の層を有する光触媒膜を含む積層膜付き基材およびその製造方法の提供を目的とする。特に、基材を設置した直後はシリコーンオイルが遊離しやすく、設置直後の基材表面の汚染を防止できる光触媒膜を含む積層膜付き基材およびその製造方法の提供を目的とする。
本発明は、光触媒膜を含む積層膜付き基材の最外層に、自己流出性の層が形成されてなる積層膜付き基材を提供する。
本発明においては、光触媒膜を含む積層膜の最表面に自己流出性の層(以下、自己流出層という。)を有するため、シーリング材に起因するシリコーンオイル等の親油性の汚れ(以下、汚染物質という。)が一度付着しても、降雨や洗浄によって流出除去が可能となり、汚染物質による汚染を長期間防止することができる。また、自己流出層は、ある程度の期間屋外に設置された後の光触媒膜の上に形成された場合であっても、汚染物質による汚染を防止できる。
また、本発明における自己流出層付き積層膜は、汚染物質に汚染される可能性のあるすべての基材、例えば、建材、ガラス、樹脂等に有効である。また既存の光触媒膜の最表面を簡便に処理するだけで汚染物質による汚れを防止できる性質、すなわち耐汚染性を格段に高めることができるため、経済性に優れる。特に、ガラス等の透明基材の上に光触媒膜を形成した場合であっても長期間透明性を維持でき、視認性に優れる。
本発明の積層膜付き基材は、自己流出層が形成されているので、長期間にわたって、親水性、汚れ分解性および防曇性に優れる。すなわち、汚染物質による汚染を防止することで、光触媒膜を含む積層膜の表面に付着する水滴が濡れ広がり、光触媒膜の汚れを分解する作用が劣化せず、さらに表面が曇らず防曇性に優れる。また、太陽光等の光が照射されることによって汚れ分解性(特に有機物の汚れの分解)が維持され、さらに、降雨等により水が本発明の積層膜付き基材の表面を流れ落ちる際に、無機物の汚れも洗い流され、セルフクリーニング効果が維持される。
汚染物質は、シーリング材を施工した直後に最も多く発生し、その後徐々に減少すると考えられる。汚染物質による汚染を解決すべく、単に光触媒膜のみを形成した場合(例えば、特許文献1または2参照。)、汚染物質が光触媒膜表面へ徐々に拡散し、汚染物質が光触媒膜に結合または吸着することにより膜表面が撥水性に変化する。その結果、大気中の親油性物質を主成分とする物質が膜表面に付着しやすくなり、表面汚れが発生し、外観を損ねるだけでなく、本来の光触媒膜の諸特性が維持できなくなる問題があることが分かった。また、光触媒膜を形成することにより、膜を形成しない場合よりも表面汚れは若干低減されるが、汚染物質による汚れを防止するには不充分であった。
本発明者らは、鋭意研究の結果、光触媒膜を含む積層膜の最表面に自己流出層を形成することで、拡散した汚染物質が光触媒膜に接する前に自己流出層に接し、自己流出層が降雨や洗浄により汚染物質とともに流出したり、光の照射によって分解し膜外へ除去されることで、本来の光触媒膜の諸特性が維持できることを見出した。また、一部の汚染物質は自己流出層の構造に取り込まれ、さらにその下の光触媒膜の表面や場合によっては内部に吸着することも考えられる。しかし、この場合は、その吸着量が少量であるため、光触媒の汚れ分解性により、汚染物質が光触媒膜と結合する前に除去され、光触媒膜表面に残留することを防止できることを見出した。なお、最外層とは、最も基材からみて遠くにある層であることを意味する。
以下、本発明について詳述する。
本発明における自己流出層は、降雨や洗浄等といった水や水蒸気との接触により、汚染物質とともに流出したり、太陽光の照射をすることにより一部または全部の層が分解除去されたりして、徐々に流出され消失していく層、つまり自己流出性の層である。自己流出層が徐々に流れ出ていくことにより、汚染物質による初期汚れを防止できるとともに、長期間汚れを防止でき、結果的に光触媒膜の諸特性が長期間維持されるため好ましい。
自己流出性の発現は、自己流出層を形成する原子の化学結合性が低く、かつ下層との反応性が低いという特徴によるものと考えられる。特に、層の硬化処理を低温で行うことで、上記特徴を発揮しやすくなり好ましい。本発明においては、層中に含まれる後述するような層構成酸化物の量を通常の硬化された膜と比較して低下させることで、層に大きな隙間を形成し、その隙間に界面活性剤を介在させることで、自己流出性を有し、かつ透明性を有する層を形成できると考えられる。
自己流出層の厚さは、1〜300nmであることが好ましい。特に、建材など高い機械的強度を要求される用途の場合、300nm超では傷つきやすく外観上の美観を損ねやすく、また、降雨や洗浄により自己流出層が一部除去されても本来の汚れ分解性等の光触媒機能が阻害されないため好ましくない。1nm未満では、汚染を効果的に防止できない点で好ましくない。
また、自己流出層の厚さは、層の透明性を要求される場合(例えば、基材がガラス等の透明基材の場合)、1〜100nmであることが好ましい。100nm超では初期の透明性が維持できず好ましくない。また、1nm未満では汚染を効果的に防止できない点で好ましくない。
本発明の自己流出層は、(a)界面活性剤ならびに(b)Al、Si、Ti、Zr、SnおよびZnからなる群から選ばれる1種以上の金属の酸化物を含むことが好ましい。上記構成とすることで、汚染物質による汚れを効果的に防止できるとともに、光触媒の諸特性を維持でき、かつ透明性をも維持でき好ましい。
界面活性剤は、自己流出層の成膜時の塗布性を高めるとともに、除去されやすい点で自己流出性の機能を自己流出層に付与できると考えられる。後述するように、界面活性剤は、自己流出層中では、弱い化学的結合により結合している層構成酸化物により保持されていると考えられており、降雨や洗浄等の水との接触により、界面活性剤が徐々に自己流出層外に流出していくと考えられる。自己流出層中の界面活性剤の含有量は、0.01〜99質量%、特に1〜90質量%であることが好ましい。
塗布性の向上および除去性という性能の要求から、界面活性剤は、−CHCHO−、−SO−、−NR−(Rは水素原子または有機基(例えば、アルキル基、アセトキシ基))、−NH、−SOYおよび−COOY(Yは水素原子、ナトリウム原子、アンモニウム基またはカリウム原子)からなる群から選ばれる1種以上の構造単位を有する化合物であることが好ましい。
特に、界面活性剤は、塗布液の安定性や親水性付与の点で、−CHCHO−からなる構造単位をもつ界面活性剤が好ましく、アルキルポリオキシエチレンエーテル、アルキルポリオキシエチレン−ポリプロピレンエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレンエステル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビトールエステル、アルキルポリオキシエチレンアミンおよびアミド、ポリエーテル変性のシリコーン系界面活性剤が例示される。また、上記界面活性剤のアルキル基部分の水素原子がフッ素原子に置換された界面活性剤であってもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤等が使用可能である。
自己流出層には、Al、Si、Ti、Zr、SnおよびZnからなる群から選ばれる1種以上の金属の酸化物(以下、層構成酸化物という。)を含むことが好ましい。層構成酸化物は、弱い化学的結合により構成材料として作用するとともに、界面活性剤を自己流出層内へ保持する役目を果たしていると考えられる。また、層構成酸化物を自己流出層に含むことにより、降雨や洗浄により水が塗れ広がりやすくなると考えられるため、汚染をより容易に除去できるようになるため好ましい。
層構成酸化物としては、SiまたはZrの酸化物が成膜しやすい点で好ましい。また、Ti、SnまたはZnの酸化物はそれ自体が光触媒性を有するために、結果として親水性を発現するため、水が塗れ広がりやすくなり好ましい。また、Al、SnまたはZnの酸化物は自己流出性を備えやすく好ましい。層構成酸化物としては、特にAlの酸化物を含むことが好ましく、さらにはSiおよび/またはTiとAlとの混合酸化物であることが好ましい。層構成酸化物にAlの酸化物を含んでいると、自己流出層のシリコーンに対する相互作用が小さく、光触媒膜表面にシリコーンが残留せずに流出しやすくなり好ましい。この理由は、Alの酸化物は等電点が高く表面電荷がプラスにシフトしやすいことと相関があると考えられる。また、Alの酸化物は、特に微粒子を用いた場合に多孔質構造を取りやすいため、多くのシリコーンが残留しても親水性を維持しやすくなると考えられるため好ましい。
自己流出層中の層構成酸化物の合計含有量は、自己流出層中に3〜99.9質量%、特に9〜98質量%であることが好ましい。3質量%未満では、自己流出層を構成しにくくなり界面活性剤を保持しにくくなり、99.9質量%超では、逆に強固な層が形成され、自己流出層の自己流出性が劣化するため好ましくない。特に自己流出層中にSiが含まれる場合、自己流出層中のSiの含有量は、Si/全金属(膜構成酸化物中の全金属を意味し、Siは金属に含まれる。以下同じ。)として1〜45原子%であることが好ましい。1原子%未満では層を構成しにくくなり、45原子%超では、汚染物質中のシリコーンオイルとSiとが相互作用により親和性を有し、自己流出層に付着するとSi−O結合が生じやすくシリコーンオイルが自己流出層に固着しやすくなるため、汚染が除去されにくくなり好ましくない。また、自己流出層にAlが含まれる場合、自己流出層中のAlの含有量は、Al/全金属として5〜100原子%、特に10〜75原子%であることが汚染防止の点で好ましい。また、自己流出層にTiが含まれる場合、自己流出層中のTiの含有量は、Ti/全金属の割合として5〜100原子%、特に30〜90原子%であることが汚染防止の点で好ましい。
自己流出層は、吸水性(水分をはじきにくくする性質)向上の点で親水性樹脂や吸水性樹脂等の樹脂を含有してもよい。前記樹脂としては、ポリアクリル酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースおよびその誘導体等が例示できる。樹脂を塗布液中に含有させることにより、自己流出層中に樹脂を容易に含有させることができる。自己流出層中の樹脂の含有量は1〜30質量%であることが好ましい。
自己流出層は、下記の方法により形成される。まず、層構成酸化物の前駆体をゾル化し、層構成酸化物からなる微粒子を形成する。上記微粒子を用いることで、低温の処理で、親水性が高く自己流出性が高い層が得られる点で好ましい。前記前駆体としては、膜構成酸化物を構成する金属の金属塩、金属アルコキシド、金属キレート化合物等が例示され、具体的には、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、テトラメトキシシラン、ケイ酸ナトリウム等が例示される。界面活性剤、層構成酸化物の微粒子、樹脂および溶媒を含む塗布液を光触媒膜を含む積層膜の上に塗布することにより、界面活性剤、層構成酸化物の微粒子および樹脂を含む自己流出層を形成できる。
特に、アルミナ微粒子を分散させたアルミナゾルを塗布液中に含むことが、アルミナ微粒子が多孔質性であるため表面積が増加し親水性を維持しやすくなり、降雨や洗浄で容易に洗い流されるようになるため好ましい。アルミナ微粒子の結晶形態としては、ベーマイトまたはγ−アルミナの結晶構造であることが透明性の点で好ましい。
アルミナゾルの製造方法としては、アルミン酸アルカリ金属塩と、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等の酸性アルミニウム塩と、場合によっては酸性溶液とを混合して得られる水和ゲルを熟成した後、酸を添加して解こうする方法、酸性アルミニウム塩をイオン交換して得られる水和ゲルを熟成した後、解こうする方法、アルミニウムアルコキシドを加水分解した後、解こうする方法等が挙げられる。これらの方法によればベーマイト構造のアルミナ微粒子が得られ、かつベーマイト構造は多孔質となりやすく吸収性に優れる点で好ましい。
この他にアルミナゾルとして通常市販されているもの(例えば、ベーマイト構造を有する触媒化成工業社製:AS−2、AS−3等)を用いてもよい。またγ−アルミナ微粒子の粉末(例えば、日本アエロジル社製:アルミニウムオキサイドC等)を溶媒に分散させてゾルとしたものを用いてもよい。なお、自己流出層にSiやTi等の他の金属の酸化物が含まれている場合、シリカゾルやチタニアゾル等の他の金属の酸化物ゾルは公知の方法で形成することができる。前記ベーマイト構造のアルミナ微粒子、界面活性剤および溶媒を含む塗布液を光触媒膜を含む積層膜の上に塗布することにより、ベーマイト構造を有するアルミナ微粒子および界面活性剤を含む自己流出層を形成できる。
塗布液中の固形分濃度(具体的には、層構成酸化物を酸化物に換算したゾルの固形分濃度(層構成酸化物がアルミナである場合はAlOOHに換算したゾルの固形分濃度)を意味する。)は、0.01〜20質量%であることが好ましい。上記範囲とすることで、自己流出性を有する層が形成しやすくなる。また、塗布液中にSiが含まれている場合、塗布液中のSiの含有量は、Si/全金属として0.01〜45原子%であることが好ましい。50原子%超では、汚染物質中のシリコーンオイルが層に固着しやすくなるため、汚染が除去しにくくなり好ましくない。また、塗布液中にAlが含まれている場合、塗布液中のAlの含有量は、Al/全金属として5〜100原子%、特に10〜75原子%であることが汚染防止の点で好ましい。また、塗布液中にTiが含まれる場合、塗布液中のTiの含有量は、Ti/全金属の割合として5〜100原子%、特に30〜90原子%であることが汚染防止の点で好ましい。
前記アルミナゾルの凝集粒子の平均粒子径(以下、単に凝集粒子径という。)は、20〜400nmであることが好ましい。20nm未満であると、アルミナゾルを乾燥して得られるキセロゲル(ゾルから溶媒を乾燥除去して得られる粉末状のもの)の細孔容積が小さくなり、得られる自己流出層の防曇性が低下するため好ましくない。400nm超であると得られる自己流出層の透明性が損なわれ、また、自己流出層の機械的強度が低下する傾向があり好ましくない。より好ましくは40〜250nmである。アルミナゾルの凝集粒子径は、動的光散乱法粒度分析計(例えば、日機装社製:マイクロトラックUPA)により測定できる。
アルミナゾルから溶媒を除去して得られるキセロゲルの細孔容積は、0.2〜1.5ミリリットル/gであることが好ましい。細孔容積が0.2ミリリットル/g未満では得られる自己流出層の防曇性が低下するため好ましくなく、細孔容積が1.5ミリリットル/g超では自己流出層の透明性が損なわれ、自己流出層の機械的強度が低下する傾向があるため好ましくない。より好ましくは、0.5〜1.2ミリリットル/gである。キセロゲルの細孔容積は、窒素吸脱着装置(例えば、カンタクーム社製:オートソーブ3B型)により測定できる。
塗布液中に含まれる界面活性剤の量は、0.001〜10質量%であることが塗布液の塗布性や自己流出性の発現の点で好ましい。界面活性剤の種類は、前述したような界面活性剤を任意に使用できる。
塗布液に含まれる溶媒としては、層構成酸化物の微粒子を溶解させうる溶媒であれば特に制限されず、作業性や実用性を考慮して適宜選択できる。具体的には、水や、アルコール類、エステル類、ケトン類、ジオール類、セロソルブ類、カルビトール類などの有機溶剤が挙げられる。
塗布液の塗布方法は、公知の方法から適宜選択すればよく、スプレーコート、スピンコート、ディップコート、はけ塗り、ローラー塗布、手塗り、浸漬塗布、各種印刷方式による塗布、カーテンフローコート、ダイコート、フローコート等が例示できる。
塗布液を光触媒膜を含む積層膜上に塗布した後、大気中で熱処理することで自己流出層が形成できる。熱処理温度は10〜150℃、特に10〜100℃であることが好ましい。10℃未満では、塗布液中の溶媒の揮発が進みにくい点で好ましくなく、150℃超では、層が強固に光触媒膜上に固定化され自己流出性が喪失しやすくなり、また本来の光触媒膜の諸特性を阻害する要因となるため好ましくない。また、熱処理の時間は、0.1〜60分であることが自己流出性を有する層を形成できる点で好ましい。熱処理以外に、電磁波(紫外線や電子線等)の照射を溶媒の揮発の目的で行ってもよい。
塗布液の塗布前に、光触媒膜の前処理をすることが好ましい。前記前処理は、洗浄、光照射処理、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、オゾン処理等の放電処理、水、酸やアルカリ等の化学処理、研磨剤を用いた物理的処理等であることが、効果的に汚れを分解できる点で好ましい。
本発明における光触媒膜は、ゾルゲル法等の湿式法、CVD法等の乾式法等で形成でき、製造方法は特に限定されない。特に、湿式法で光触媒膜を形成する場合、光触媒微粒子および媒体を含む光触媒膜形成用組成物を基材に塗布することで光触媒膜が形成できる。光触媒とは、光触媒の価電子帯と伝導電子帯との間のエネルギー差よりも大きなエネルギーの光を照射したときに、価電子帯中の電子の励起によって伝導電子と正孔を生成しうる性質を有する材料をいい、紫外線応答の光触媒のみならず、可視光応答の光触媒であってもよい。このような光触媒としては、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、三酸化タングステン、酸化第二鉄、チタン酸ストロンチウム、酸化ビスマス、酸化鉄等が好ましく挙げられる。特に酸化チタンが好ましい。光触媒の微粒子として酸化チタン微粒子を用いることで酸化チタンからなる膜を形成できる。酸化チタン膜は、酸化チタン以外の他の金属や金属酸化物との複合膜としてもよい。特にシリカとの複合膜とすることで、高い親水性を長期間維持でき、汚れ分解性をも発現できる点で好ましい。光触媒膜形成用組成物において、光触媒微粒子は、組成物中に0.08〜20質量%含まれることが好ましい。
光触媒膜形成用組成物中の光触媒微粒子の平均粒子径は、光散乱を利用して前記組成物中の微粒子の凝集粒子径を粒度分布計(例えば、HONEYWELL社製:マイクロトラックUPA)を用いて測定したものであり、5〜90nmであることが好ましい。平均粒子径が5nm未満であると、形成された光触媒膜の中に光触媒の微粒子が埋没するため、光触媒の種々の効果が発現しにくい。また、平均粒子径が90nm超であると、形成される光触媒膜の機械的強度が不足し、透明性が確保できないおそれがある。
本発明における光触媒膜形成用組成物は、媒体を含むことが好ましい。媒体としては、特に限定はなく、水を含む媒体が好ましく、溶剤が含まれていてもよい。溶剤は主に希釈のために用いられ、光触媒膜形成用組成物は溶液の形態であることが好ましい。該溶剤としては、低級アルコール、含窒素系溶剤、含イオウ系溶剤等の極性溶剤が好ましく、特に低級アルコールが好ましい。溶剤は2種類以上を用いてもよい。
本発明の光触媒膜形成用組成物には、機能性添加剤が含まれていてもよい。機能性添加剤としては、着色用染料、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光触媒微粒子以外の酸化物微粒子(五酸化リン、酸化マグネシウム等。平均粒子径は200nm以下が好ましい。)等が好ましく挙げられる。
本発明においては、例えば湿式法を用いて、光触媒膜形成用組成物を基材の表面に塗布し光触媒膜付き基材を形成できる。湿式法としては、例えば、スプレーコート法、はけ塗り、手塗り、回転塗布、浸漬塗布、各種印刷方式による塗布、カーテンフロー、ダイコート、フローコート等の塗布方法が好ましく挙げられる。
光触媒膜形成用組成物を塗布した後、媒体の除去や光触媒膜の硬度を高めることを目的として、後処理を施すことが好ましい。後処理としては、室温における乾燥や加熱、紫外線や電子線等の電磁波の照射等が挙げられる。加熱は基材の耐熱性を考慮して、50〜700℃、特に100〜350℃で5〜60分間大気中で行うことが好ましい。特に基材が有機樹脂などの耐熱性が低い材料である場合や基材中の低分子化合物が加熱により基材外に拡散する場合、後処理として、紫外線や電子線等の電磁波の照射を行うことが好ましい。
本発明においては、光触媒膜の厚さは、経済性も考慮して、1〜300nmが好ましく、特に5〜150nmが好ましい。1nm未満では所望の光触媒性能が発揮されないおそれがあり、300nm超では光触媒膜にクラックが入ったり、干渉縞が生じたり、傷が発生した場合にその傷が目立ったりして好ましくない。光触媒膜形成用組成物の濃度、溶剤の種類、塗布条件、後処理条件等を調節することにより、得られる光触媒膜の厚さを制御できる。
なお、本発明において、積層膜中に光触媒膜以外の膜を含んでいてもよい。例えば、基材と光触媒膜との間にシリカ膜等のアルカリバリア膜を設けたり、または光触媒膜上にシリカ膜等の膜を形成してもよい。積層膜が光触媒膜単膜であってもよい。
本発明が対象とする基材は、金属、セラミックス、ガラス、フィルムなど特に限定されない。基材の形状は平板に限らず、全面に、または、一部に曲率を有していてもよい。さらに、基材がガラスやフィルム等の透明基材である場合、自己流出層を光触媒膜を含む積層膜上に形成しても自己流出層が透明であるため、透明基材の視認性が劣ることがない。さらに、この自己流出層は、雨水等で洗い流されている途中の段階であっても、流出していく物質が透明であるため、透明基材の視認性が悪化しない点で優れている。また、流出が終了した後でも、残存する自己流出層が透明であるため、透明基材の視認性が悪化しない点で優れている。基材として透明基材を用いる場合には、その視認性の点から、自己流出層を有する光触媒膜を含む積層膜付き基材の可視光透過率(JIS R3106(1998年))が70%以上であることが好ましい。
本発明の自己流出層付き基材を有する物品は、多方面の用途に展開できる。たとえば、電車、自動車、船舶、航空機等のボディー、外壁、窓ガラス等の建材、液晶、PDP等の表示素子用カバー板、照明用カバーガラス、ミラー、ヘッドランプ、橋やトンネル等の構造物、農業用フィルム等の用途が例示できる。
本発明を実施例(例1〜13、16、17)、比較例(例14、15)により具体的に説明する。自己流出層を有する光触媒膜を含む積層膜付きガラス基材(以下、単に膜付き基材という。)は、以下の方法を用いて評価した。
[外観]
膜付き基材のヘーズ値を直読ヘーズコンピュータ(スガ試験機社製)で測定し、ヘーズ値が2.0%以下のものを○、2.0%を超えるものを×とした。
[厚さ]
膜付き基材を作製後、最外層の自己流出層をカッターで削り取り、自己流出層の暑さを触針法により測定した。
[初期親水性]
作製直後の自己流出層表面における水の接触角を接触角計(協和界面科学社製:CA−X150)にて測定した。測定は異なる5ヶ所の部位で行い、平均値を採用した。接触角は、20°以下であることが親水性を発揮できる点から好ましい。
[親水持続性]
作製直後から膜付き基材を光のあたらない環境に1週間保持した後、水の接触角を接触角計(協和界面科学社製:CA−X150)にて測定した。測定は異なる5ヶ所の部位で行い、平均値を採用した。接触角は、20°以下であることが親水性を長期間発揮できる点から好ましい。
[汚れ分解性]
作製直後の膜付き基材にオレイン酸を付着させて水の接触角が70°程度である汚れた表面を作り、その表面にブラックライト(中心波長365nm)を0.5mW/cmの強度で6時間照射した後、水の接触角を測定した。5°以下の場合を◎、10°以下の場合を○、20°以下の場合を△、20°超の場合を×として評価した。なお、実用上◎、○、△がこの順で好ましい。
[シリコーンオイルに対する防汚性]
膜付き基材の中央に厚さ5mm、面積10mm×40mmとなるようにシリコーン系シーリング材(シリコーン70:横浜ゴム社製)を塗布し、2日間乾燥させた後、水平面に対して45°傾斜、南向きで横浜地区の屋外に曝露し、曝露開始から1ヶ月経過した時点でサンプルを回収した。回収したサンプルの膜の表面に蒸留水をかけ、水滴が付着した疎水部位をシーリング材により汚染された部位と判断し、シーリング材端からの上下左右の疎水部位の距離を測定し、その長さが長いほどシーリング材による汚染が大きいと判断した。
疎水部位の長さを合計し、10mm以下の場合を◎、20mm以下の場合を○、30mm以下の場合を△、30mm超の場合を×として評価した。なお、実用上◎、○がこの順で好ましい。
[防曇性]
作製直後の膜付き基材表面に息を吹きかけ、曇らない場合を◎、息を吹きかけると半分以下の表面が曇るがすぐ透明になる場合を○、息を吹きかけると半分以上の表面が曇るが透明になる場合を△、息を吹きかけると曇りが発生し透明になるまでに時間がかかる場合を×とした。
[耐磨耗性]
作製直後の膜付き基材にテーバー磨耗試験(JIS−R3212(1998年)磨耗回数:100回、荷重:4.9N)を行い、磨耗試験前後におけるヘーズ値を測定(測定機器名:スガ試験機社製:直読ヘーズコンピュータ)し、その変化量を求めた。ヘーズ変化が3%以下であることが実用上好ましい。
[自己流出性]
膜付き基板を水平面に対して45°傾斜、南向きで横浜地区の屋外に曝露し、曝露開始から3ヶ月経過した時点でサンプルを回収した。曝露試験前後のサンプルの断面および表面のSEM像を、それぞれ観察した。
自己流出層の厚さの減少量が、初期に対して曝露後10%以上減少の場合を◎、10%以下減少の場合を○とした。また、膜表面の外観が曝露試験後に変化し若干粗くなっている場合を△、外観変化が見られないものを×とした。なお、逆に多量に流出する場合も長期間わたり自己流出性が維持できないため好ましくないが、実施例(例1〜13、16、17)において、自己流出層の厚さの減少量は50%以下である。
[透過率]
膜付き基材の可視光透過率を、分光光度計(日立製作所製:U−3500)により、JIS−R3106(1998年)に従い測定した。
例に用いられるサンプルは下記のとおり調製した。
(アルミナゾル(A)の調製)
塩化アルミニウム水溶液(Al濃度11.5質量%、Cl濃度24.5質量%)308gに水1343gを添加し、撹拌しながら、アルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度20質量%、NaO濃度19質量%)243gを添加した。形成された液を95℃に昇温した後、撹拌しながら、再びアルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度20質量%、NaO濃度19質量%)106gを添加した。この液を撹拌しながら液温を95℃に保持し24時間熟成してスラリーを得た。なお、95℃でアルミン酸ナトリウムを添加した直後の液のpHは9.2であった。熟成後のスラリーを限外濾過装置を用いて洗浄した後、再び95℃に昇温し、この洗浄後のスラリーの総固形分量の3質量%となる量のアミド硫酸を添加し、総固形分濃度が22.4質量%となるまで減圧濃縮した後、超音波分散してアルミナゾル(A)(AlOOH濃度:22質量%)を得た。
アルミナゾル(A)の結晶構造はX線解析の結果、ベーマイト構造であった。アルミナゾル(A)の凝集粒子径は80nmであった。また、アルミナゾル(A)から溶媒を除去して得られたキセロゲルの細孔容積は0.80ミリリットル/gであった。
(アルミナゾル(B)の調製)
塩化アルミニウム水溶液(Al濃度11.5質量%、Cl濃度24.5質量%)360gに水1235gを添加し、撹拌しながら、アルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度20質量%、NaO濃度19質量%)127gを添加した。形成された液を95℃に昇温した後、撹拌しながら、再びアルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度20質量%、NaO濃度19質量%)278gを添加した。この液を撹拌しながら液温を95℃に保持し48時間熟成してスラリーを得た。なお、95℃でアルミン酸ナトリウムを添加した直後の液のpHは8.8であった。熟成後のスラリーを限外濾過装置を用いて洗浄した後、再び95℃に昇温し、この洗浄後のスラリーの総固形分量の3質量%となる量のアミド硫酸を添加し、総固形分濃度が22.4%となるまで減圧濃縮した後、超音波分散してアルミナゾル(B)(AlOOH濃度:22質量%)を得た。
アルミナゾル(B)の結晶構造はX線解析の結果、ベーマイト構造であった。アルミナゾル(B)の凝集粒子径は170nmであった。また、アルミナゾル(B)から溶媒を除去して得られたキセロゲルの細孔容積は0.95ミリリットル/gであった。
(シリカゾル(C)の調製)
2−プロパノール22.6gに、テトラメトキシシラン3.8gと1質量%の硝酸水溶液3.6gを添加し、25℃で1時間撹拌して、シリカゾル(C)(SiO濃度:5質量%)を得た。
(シリカゾル(D)の調製)
水37.5gにケイ酸ソーダ4号(SiO:23.35質量%、NaO:6.29質量%。SiO/NaOのモル比:3.83。)12.5gを添加し、さらに強酸性陽イオン交換樹脂「SK1BH」(商品名、三菱化学社製)30gを添加して、10分間室温で撹拌して脱塩ケイ酸ソーダ液(ケイ酸の100質量部に対してナトリウムイオンは0.12質量部。)を調製した。さらに、この脱塩ケイ酸液に蒸留水を添加しシリカゾル(D)(SiO濃度:5質量%)を得た。
(光触媒膜付きガラス基材の形成)
ソーダライムガラス基材(100mm×100mm、厚さ3.5mm)を用意し、その膜形成部分の表面を酸化セリウムで研磨し、蒸留水で洗浄した後に乾燥させ、前処理済ガラス基材とした。
2−プロパノール38.1gに、アナターゼ型酸化チタン微粒子(平均粒子径:56nm)の水分散液「STS−01」(商品名、石原産業社製、固形分濃度30質量%、以下、チタニアゾル(E)と記す。)9gおよびシリカゾル(D)8.9gを添加し、さらに界面活性剤「L−77」(商品名、日本ユニカー社製)を液量に対して100ppmとなるように添加して、組成物1(ナトリウムイオン濃度は12ppm。)を得た。
組成物1の2ミリリットルを前処理済ガラス基材の表面に滴下し、スピンコート法により塗布した後、大気雰囲気中200℃にて60分間焼成し、厚さ80nmの光触媒膜付きガラス基材を得た。
(例1)
蒸留水39.4gおよびエタノール59.2gの混合溶液中に、アルミナゾル(A)0.5gとシリカゾル(C)0.9gとを混合した。次いで、ノニオン性界面活性剤「アデカトールSO−145」(商品名、旭電化工業社製)を混合液に対して400ppmとなるように添加して、塗布液1を得た(固形分濃度0.15質量%)。
塗布液1の2ミリリットルを前記光触媒膜付きガラス基材の表面に滴下し、スピンコート法により塗布した後、大気雰囲気中80℃にて5分間焼成し、厚さ40nmの自己流出層(金属の組成を原子比で表1に示す。以下、例2〜17についても同じ。)が形成された膜付き基材を得た。この膜付き基材を評価した結果を表1に示す。なお、自己流出層中のゾル(アルミナゾル、シリカゾル)の合計含有量は79質量%であり、自己流出層中の界面活性剤の含有量は21質量%であった。
(例2)
例1におけるアルミナゾル(A)0.5gの代わりにアルミナゾル(B)0.5gを用いる以外は例1と同様に処理して自己流出層が形成された膜付き基材を得た。この膜付き基材を評価した結果を表1〜2に示す。
(例3)
例1におけるアルミナゾル(A)0.5gの代わりにアルミナゾル「AS−2」(商品名、触媒化成工業社製)0.9gを用い、かつエタノール59.2gの代わりにエタノール58.8gを用いる以外は例1と同様に処理して自己流出層が形成された膜付き基材を得た。この膜付き基材を評価した結果を表1〜2に示す。なお、「AS−2」のAlOOH濃度は11.8質量%であり、AS−2の結晶構造、凝集粒子径および細孔容積は、各々ベーマイト構造、130nm、0.3ミリリットル/gであった。
(例4)
例1におけるシリカゾル(C)0.9gの代わりにシリカゾル(D)0.9gを用いる以外は例1と同様に処理して自己流出層が形成された膜付き基材を得た。この膜付き基材を評価した結果を表1〜2に示す。
(例5)
メタノール99.6gに、アルミナゾル(A)0.23gとチタニアゾル(E)0.17gとを混合した。次いで、ノニオン性界面活性剤「アデカトールSO−145」(商品名、旭電化工業社製)を混合液に対して400ppmとなるように添加して、塗布液2を得た(固形分濃度0.1質量%、Ti/全金属=43原子%、Al/全金属=57原子%)。
塗布液2の2ミリリットルを前記光触媒膜付きガラス基材の表面に滴下し、スピンコート法により塗布した後、大気雰囲気中80℃にて5分間焼成し、厚さ20nmの自己流出層が形成された膜付き基材を得た。この膜付き基材を評価した結果を表1〜2に示す。
(例6)
蒸留水39.2gおよびエタノール58.7gの混合溶液中に、アルミナゾル(A)1.6gとシリカゾル「OSCAL1432」(商品名、触媒化成工業社製、SiO濃度:30質量%)0.5gとを混合した。次いで、ノニオン性界面活性剤「アデカトールSO−145」(商品名、旭電化工業社製)を混合液に対して400ppmとなるように添加して、塗布液3を得た(固形分濃度0.5質量%)。
得られた塗布液3の2ミリリットルを前記光触媒膜付きガラス基材の表面に滴下し、スピンコート法により塗布した後、大気雰囲気中80℃にて5分間焼成し、厚さ30nmの自己流出層が形成された膜付き基材を得た。この膜付き基材を評価した結果を表1〜2に示す。
(例7)
ポリビニルアルコール樹脂「ポバール124」(商品名、クラレ社製)と水を混合して、固形分濃度0.15質量%の樹脂溶液1を得る。
次いで、樹脂溶液1と塗布液1とを、質量比で樹脂溶液1/塗布液1=20/80の比率で混合し、塗布液4を得る。(固形分濃度0.15質量%、固形分中のポリビニルアルコール樹脂=20質量%)。
塗布液4の2ミリリットルを前記光触媒膜付きガラス基材の表面に滴下し、スピンコート法により塗布後、大気雰囲気中40℃にて2時間焼成し、厚さ80nmの自己流出層が形成された膜付き基材を得る。この膜付き基材を評価した結果を表1〜2に示す。
(例8)
例7におけるポリビニルアルコール樹脂の代わりにポリアクリル酸樹脂「ジュリマーAPO−601N」(商品名、日本純薬社製)を用いる以外は、例7と同様な方法で自己流出層が形成された膜付き基材を得る。この膜付き基材を評価した結果を表1〜2に示す。
(例9)
蒸留水56.0gおよびメタノール41.7gの混合溶液中に、アルミナゾル(A)2.3gを混合した。次いで、ノニオン性界面活性剤「アデカトールSO−145」(商品名、旭電化工業社製)を混合液に対して1質量%となるように添加して、塗布液5を得た(固形分濃度0.5質量%)。
塗布液5の2ミリリットルを前記光触媒膜付きガラス基材の表面に滴下し、スピンコート法により塗布後、大気雰囲気中80℃にて5分間焼成し、厚さ70nmの自己流出層が形成された膜付き基材を得た。この膜付き基材を評価した結果を表1〜2に示す。
(例10)
例9におけるアルミナゾル(A)2.3gをチタニアゾル(E)1.7gに、メタノールの量を42.3gに変更した以外は例9と同様な方法で自己流出層が形成された膜付き基材を得た。この膜付き基材を評価した結果を表1〜2に示す。
(例11)
例9におけるアルミナゾル(A)2.3gをジルコニアゾル(ZrO濃度:20質量%)2.5gに、メタノールの量を41.5gに変更した他は例9と同様な方法で自己流出層が形成された膜付き基材を得た。この膜付き基材を評価した結果を表1〜2に示す。
(例12)
例9におけるアルミナゾル(A)2.3gを酸化錫ゾル「C−10」(商品名、多木化学社製、SnO濃度:10質量%)5.1gに、メタノールの量を38.9gに変更した他は例9と同様な方法で自己流出層が形成された膜付き基材を得た。この膜付き基材を評価した結果を表1〜2に示す。
(例13)
例9におけるアルミナゾル(A)2.3gを酸化亜鉛ゾル(ZnO濃度:10質量%)5.1gに、メタノールの量を38.9gに変更した他は例9と同様な方法で自己流出層が形成された膜付き基材を得た。この膜付き基材を評価した結果を表1〜2に示す。
(例14)
例9において界面活性剤を添加しない以外は例9と同様な方法で自己流出層が形成された膜付き基材を得た。この膜付き基材を評価した結果を表1〜2に示す。
(例15)
自己流出層を形成せず、光触媒膜付きガラス基材を評価した。結果を表1〜2に示す。
(例16)
例1と同様の光触媒膜付き基材を用いた建築物のガラス基材(設置してから約3年経過。)を水洗、乾燥した後、例1における塗布液1をスプレーコート法により塗布し24時間自然乾燥して厚さ10nmの自己流出層が形成された膜付き基材を得る。この膜付き基材を評価した結果を表1〜2に示す。
(例17)
例9におけるノニオン性界面活性剤「アデカトールSO−145」(商品名、旭電化工業社製)を硫黄含有アニオン性界面活性剤「アデカホープDES−3025」(商品名、旭電化工業社製)に変更した他は例9と同様な方法で自己流出層が形成された膜付き基材を得る。この膜付き基材を評価した結果を表1〜2に示す。
[曝露試験後の性能]
また、自己流出性の評価で実施した曝露試験後の膜付き基材について、外観、親水持続性、汚れ分解性、シリコーンオイルに対する防汚性、防曇性、耐摩耗性および透過率を評価する。実施例(例1〜13、16、17)の膜付き基材は、曝露試験後であっても、曝露試験前と同等の外観、親水持続性、汚れ分解性、シリコーンオイルに対する防汚性、防曇性、耐摩耗性および透過率を有することが確認される。
Figure 0004501562
Figure 0004501562
本発明の積層膜付き基材を有する物品は、特にシリコーン系シーリング材から拡散する汚染物質による汚染を防止する性能に優れ、建材をはじめ多方面の用途に展開が可能である。

Claims (3)

  1. 光触媒膜を含む積層膜付き基材の最外層に、(a)界面活性剤ならびに(b)Al、Si、Ti、Zr、SnおよびZnからなる群から選ばれる1種以上の金属の酸化物を含む自己流出性の層が形成されてなる積層膜付き基材。
  2. 光触媒膜を含む積層膜付き基材の最外層に、(a)界面活性剤および(c)ベーマイト構造を有するアルミナ微粒子を含む自己流出性の層が形成されてなる積層膜付き基材。
  3. 光触媒膜を含む積層膜付き基材上に、(a)界面活性剤ならびに(b)Al、Si、Ti、Zr、SnおよびZnからなる群から選ばれる1種以上の金属酸化物の微粒子を含む塗布液を塗布し、10〜150℃の温度で0.1〜60分間加熱することにより自己流出性の層を形成することを特徴とする積層膜付き基材の製造方法。
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