JPWO2004068673A1 - 永久磁石式モータ用ロータ - Google Patents
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Abstract
Description
このような永久磁石式モータ用ロータには、例えば、永久磁石をロータヨークに埋め込んで耐久性等の向上を図った技術が提案されている(例えば、特開平6−38415号公報参照)。また、ロータヨークと永久磁石との接合に焼結接合を用いて、磁気効率や熱ひけ性の向上を図った技術も提案されている(例えば、特開平7−177712号公報参照)。さらに、上記接合に高分子材料による接着技術を用いて、コストやロータヨークと永久磁石と間の接合強度の向上を図った技術も提案されている(例えば、特開2002−272033号公報参照)。
しかしながら、上記特開平6−38415号公報に記載されたロータは、ロータヨークを永久磁石で挟み込んで半径方向に二重にすることからコストが割高となるとともに、永久磁石がロータ表面に露出していないことからロータとステータとのエアーギャップに基づく磁気効率が低いという欠点がある。また、上記特開平7−177712号公報に記載されたロータは、粉末冶金手段に用いる製造設備によってコストが割高となるとともに、接着媒体を用いない焼結接合を採用したことにより、高温・高速回転での接合強度やサーマルショックを含めた耐久性が低く、しかもロータヨークを積層体とする場合には粉末冶金法が適用できないことから製造不可能であるという欠点がある。さらに、上記特開2002−272033号公報に記載されたロータは、ロータ使用時の温度下において、高分子材料からなる接着剤の軟化により耐久性が劣化するとともに、永久磁石の接着剤は金属膜に比べて熱伝導率が低く、ロータ側に熱が逃げていかないため、永久磁石からロータヨークへの熱ひけ性が低い等の欠点もある。しかも、上記特開2002−272033号公報に記載されたロータは、高分子材料からなる接着剤を使用することにより、ロータとステータとのエアーギャップに基づく磁気効率や永久磁石とロータヨークとの間の介在物ギャップに基づく磁気効率が低いという欠点もある。
したがって、近年においては、耐久性、コスト、ロータとステータとのエアーギャップに基づく磁気効率、永久磁石とロータヨークとの間の介在物ギャップに基づく磁気効率、熱ひけ性、およびロータヨークと永久磁石との間の接合強度に関する全ての性能が、高いレベルで好適に実現される永久磁石式モータ用ロータの開発技術が要請されていた。
本発明の永久磁石式モータ用ロータは、永久磁石をロータヨーク表面に接合してなり、上記永久磁石と上記ロータヨークとの間に金属膜を介在させ、ビーム溶接により接合を行うことを特徴としている。
本発明の永久磁石式モータ用ロータでは、永久磁石とロータヨークとの間に金属膜を介在させることで、真空ビームやレーザービーム等により、ビーム照射部分の金属膜が溶解して、溶接におけるろう材の役割を担うことから、永久磁石とロータヨークとの間の接合が強固なものとなる。このため、高温・高速回転での接合強度やサーマルショックを含めた耐久性を向上させることができる。また、通常鉄系材料からなるロータヨークと金属膜(例えば、銅)との間の熱膨張係数の差が小さく、金属膜自体が変形することで、金属膜が永久磁石とロータヨークの間において緩衝剤の役割を果たし、大幅な温度変化の下でのロータヨークの膨張と収縮とを吸収し、冷熱耐久性を向上させることができる。
また、本発明の永久磁石式モータ用ロータでは、上記特開平6−38415号公報に記載したロータのように、永久磁石をロータに埋め込む必要がなく、また上記特開2002−272033号公報に記載したロータのように高分子材料からなる接着剤を使用する必要もないので、コスト削減を図ることもできる。なお、高分子材料からなる接着剤を使用しないことから、接着時に悪臭が発生することもなく、しかも塗布などの工程も必要ないので、作業性に優れるという利点もある。
さらに、本発明の永久磁石式モータ用ロータでは、永久磁石がロータ表面に露出していることから、ロータとステータとのエアーギャップに基づく磁気効率が高く、また高分子からなる接着剤を使用する場合に比して、永久磁石とロータヨークとの間に介在させる金属膜の厚さをメッキや溶射等により薄くすることができることから、永久磁石とロータヨークとの間の介在物ギャップに基づく磁気効率が高いという利点もある。なお、永久磁石とロータヨークとの接合にビーム溶接を用いることで、溶接時に発生する熱は永久磁石とロータヨークとの接合界面の極微小領域にしか加わらないため、永久磁石自身の磁気特性の劣化も生じない。
しかも、本発明の永久磁石式モータ用ロータでは、使用時に永久磁石に渦電流が発生した場合でも、永久磁石とロータヨークとの間に介在した金属膜の熱伝導率が大きく、永久磁石からロータヨークへの熱ひけ性が高いため、安定した使用を実現することができる。また、粉末冶金法を採用しないため、ロータを積層構造とする場合にも製造することができる。
以上に示したように、本発明の永久磁石式モータ用ロータによれば、耐久性、コスト、ロータとステータとのエアーギャップに基づく磁気効率、永久磁石とロータヨークとの間の介在物ギャップに基づく磁気効率、熱ひけ性、およびロータヨークと永久磁石との間の接合強度に関する全ての性能が、高いレベルで好適に実現される。
このような永久磁石式モータ用ロータにおいては、上記金属膜を永久磁石表面に形成することが望ましい。本発明によれば、永久磁石をロータヨークにビーム溶接する前に、真空蒸着法やスパッタリング法等に比して安価かつ簡易に永久磁石表面全体を金属膜で予め覆うことができ、永久磁石の腐食や磁石表面の破損を効果的に防止することができる。
また、このような永久磁石式モータ用ロータにおいては、上記金属膜の厚さが25〜90μmであることが望ましい。
このような本発明の永久磁石式モータ用ロータでは、金属膜の厚さを25μm以上としているため、上記のような強固な接合を十分に実効あるものとすることができる。しかも、本発明では、金属膜の厚さを90μm以下としていることから、金属膜を過剰に使用することがなく、この観点からもコスト削減を十分に図ることができる。
さらに、このような永久磁石式モータ用ロータにおいては、上記金属膜が、ニッケルまたは銅のうちの少なくとも一種類を含む膜であることを特徴とすることが望ましい。本発明によれば、耐食性に優れるニッケルまたは熱伝導性に優れる銅を金属膜に含ませることにより、永久磁石の耐食性または永久磁石からロータヨークへの熱ひけ性の少なくとも一方を向上させることができる。なお、ニッケルや銅は単体で用いることができることは勿論、ニッケルと銅とを別個の層として金属膜を2層とすることもできる。また、ニッケルと銅とからなる合金を金属膜とすることもできる。
加えて、このような永久磁石式モータ用ロータにおいては、ロータヨークが積層ロータヨークであることが望ましい。このような構成を採用することで、ビーム溶接時に金属膜が溶解した際に、通常円板状のチップが積層されたロータヨークのチップ同士の間隙に溶融金属膜が幾分浸入するため、永久磁石とロータヨークとの接合がより強固なものとなり、高温・高速回転での接合強度やサーマルショックを含めた耐久性をさらに向上させることができる。
第2図は、本発明の第1実施形態に係る永久磁石式モータ用ロータの製造例を示す斜視図である。
第3図は、本発明の第1実施形態に係るメッキ付き永久磁石とロータヨークとの接合態様を示す平面図である。
第4図は、(A)は、図3に示したメッキ付き永久磁石とロータヨークとの間のビーム溶接態様の一の例を示す斜視図であり、(B)は、図3に示したメッキ付き永久磁石とロータヨークとの間のビーム溶接態様の他の例を示す斜視図である。
第5図は、本発明の第2実施形態に係るメッキ付き永久磁石とロータヨークとの接合態様を示す平面図である。
第6図は、(A)は、ロータヨーク材とメッキ付き永久磁石とをレーザービーム溶接により接着する一態様を示す斜視図であり、(B)は、ロータヨーク材と永久磁石とをエポキシ接着剤を塗布して接着する一態様を示す斜視図であり、(C)は、(A)または(B)の態様により接着されたロータヨークと(メッキ付き)永久磁石とに対して引張りせん断試験を実施する際の斜視図である。
第7図は、実施例1、ならびに比較例1および比較例2の評価結果を示すグラフである。
第8図は、実施例3〜7および比較例4,5についての、引張りせん断試験の結果を示すグラフである。
第9図は、実施例8〜13についての、引張りせん断試験の結果を示すグラフである。
以下に、本発明の永久磁石式モータ用ロータの製造例を図面を参照して説明する。
本発明の永久磁石式モータ用ロータを製造する際には、図1に示すように、鉄系材料からなる複数枚の円板状チップを順次積層してロータヨーク1を成形する。次いで、図2に示すように、永久磁石の全面に予め銅メッキを施した銅メッキ付き永久磁石2をロータヨーク1の周面に所定数(同図においては4つ)接合する。
図3は、図2に示したロータヨーク1と銅メッキ付き永久磁石2との接合部分を示す平面図である。上述したように、銅メッキ付き永久磁石2はNd−Fe−B系の希土類磁石からなる永久磁石3の全面に銅メッキ膜4が予め被覆されたものであり、この銅メッキ付き永久磁石2が、図3に示すように、ロータヨーク1の周面に配置され、次いでレーザービームによる溶接が施される。
図4(A)は、図3に示したロータヨーク1と銅メッキ付き永久磁石2との間のビーム溶接態様の一の例を示す斜視図である。同図に示す例によれば、レーザビームによる溶接箇所はロータヨーク1と銅メッキ付き永久磁石2との接触面の外周の一部(図中の波線部)である。これに対し、図4(B)は、図3に示したロータヨーク1と銅メッキ付き永久磁石2との間のビーム溶接態様の他の例を示す斜視図である。同図に示す例によれば、レーザビームによる溶接箇所はロータヨーク1と銅メッキ付き永久磁石2との接触面の外周の全体(図中の波線部)である。
図3および図4(A),(B)に示した接合態様にしたがい、レーザービーム溶接を行った場合には、ビーム照射部分の銅メッキ膜4が溶解して、銅メッキ膜4が溶接におけるろう材の役割を担うことから、図3においてロータヨーク1と永久磁石3との間の接合が強固なものとなる。このため、高温・高速回転での接合強度やサーマルショックを含めた耐久性を向上させることができる。特に、図4(B)に示すように、レーザビームによる溶接箇所をロータヨーク1と銅メッキ付き永久磁石2との接触面の外周の全体とした場合には、上記接合がより強固なものとなり、耐久性をより向上させることができる。また、図3において、鉄系材料からなるロータヨーク1と銅メッキ膜4との間の熱膨張係数の差が小さく、銅メッキ膜4自体が変形して緩衝するので、銅メッキ膜4がロータヨーク1と永久磁石3との間において緩衝剤の役割を果たし、大幅な温度変化の下でのロータヨーク1の弾性変形を防止し、冷熱耐久性を向上させることができる。
また、図3および図4(A),(B)に示した磁石式モータ用ロータでは、銅メッキ付き永久磁石2をロータヨーク1に埋め込む構造としておらず、また高分子材料からなる接着剤を使用する構造でもないので、コスト削減を図ることもできる。さらに、銅メッキ付き永久磁石2がロータヨーク1の表面に露出していることから、ロータとステータとのエアーギャップに基づく磁気効率が高く、しかも高分子からなる接着剤を使用する場合に比して、ロータヨーク1と永久磁石3との間に介在させる銅メッキ膜4の厚さが極めて薄いことから、ロータヨーク1と永久磁石3との間の介在物ギャップに基づく磁気効率が高いという利点もある。
さらに、図3および図4(A),(B)に示した永久磁石式モータ用ロータでは、使用時に永久磁石3に渦電流が発生した場合でも、ロータヨーク1と永久磁石3との間に介在した銅メッキ膜4の熱伝導率が大きいため、永久磁石3からロータヨーク1への熱ひけ性が高く、安定した使用が実現される。
(2)第2実施形態
図5を参照して本発明の第2実施形態の永久磁石式モータ用ロータの製造例を説明する。図5は、図2に示したロータヨーク1とメッキ付き永久磁石2との接合部分をより詳細に示す平面図である。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様な構成要素には同符号を付して、その構成・作用の説明は省略する。
第2実施形態では、メッキ付き永久磁石2は、Nd−Fe−B系の希土類磁石からなる永久磁石3の全面に厚さ30μmの銅メッキ膜4が被覆され、その外周に厚さ30μmのニッケルメッキ膜5がさらに被覆されたものである。図5に示すように、ニッケルの優れた耐食性を十分に発揮させるためには、ニッケルメッキ膜5を銅メッキ膜の外側に被覆することが好ましい。このように成形されたメッキ付き永久磁石2は、図5に示すように、ロータヨーク1の周面に配置され、次いでレーザービームによる溶接が施される。
図4(A),(B)および図5に示した接合態様にしたがい、第1実施形態と同様にレーザービーム溶接を行った場合には、ビーム照射部分の銅メッキ膜4およびニッケルメッキ膜5が溶解して、両メッキ膜4,5が溶接におけるろう材の役割を担うことから、図5においてロータヨーク1と永久磁石3との間の接合が強固なものとなる。特に、図5に示すロータにおいては、銅メッキ膜4とニッケルメッキ膜5との全厚さを25μm以上としているため、このような強固な接合を十分に実効あるものとすることができる。なお、第2実施形態では、メッキ膜を銅メッキ膜4およびニッケルメッキ膜5の2層としていることから、銅の有する優れた熱伝導性と、ニッケルの有する優れた耐食性とを兼ね備えることができる。
また、図4(A),(B)および図5に示した磁石式モータ用ロータでは、メッキ付き永久磁石2をロータヨーク1に埋め込む構造としておらず、また高分子材料からなる接着剤を使用する構造ともしていないので、コスト削減を図ることもできる。しかも、図5に示すロータでは、銅メッキ膜4とニッケルメッキ膜5との全厚さを90μm以下としているため、金属膜を過剰に使用することがなく、この観点からもコスト削減を十分に図ることができる。
さらに、図4(A),(B)および図5に示した永久磁石式モータ用ロータでは、使用時に永久磁石3に渦電流が発生した場合でも、ロータヨーク1と永久磁石3との間に介在した銅メッキ膜4およびニッケルメッキ膜5の熱伝導率が大きいため、永久磁石3からロータヨーク1への熱ひけ性が高く、安定した使用が実現される。
なお、本願発明の目的は、上述したとおり、耐久性、コスト、ロータとステータとのエアーギャップに基づく磁気効率、永久磁石とロータヨークとの間の介在物ギャップに基づく磁気効率、熱ひけ性、およびロータヨークと永久磁石との間の接合強度に関する全ての性能を高いレベルで好適に実現することであるため、これら全ての性能についての評価試験を行うことが望ましい。しかしながら、本願発明にかかる永久磁石式モータ用ロータについては、永久磁石をロータに埋め込む態様を採用せず、しかも上記接着剤を使用していないので、コスト削減は明らかに図られている。また、上記接着剤を使用していないので、ロータとステータとのエアーギャップに基づく磁気効率や永久磁石とロータヨークとの間の介在物ギャップに基づく磁気効率に優れることも明らかである。さらに、ロータヨークと永久磁石との接着媒体として上記接着剤を使用せずに金属膜を使用していることことから、永久磁石からロータヨークへの熱ひけ性についても優れることが推測される。したがって、以下の実施例では、上記各性能を除いた性能、すなわち、ロータヨークと永久磁石との間の接合強度についての種々の評価試験結果を示す。なお、高温・高速回転での接合強度やサーマルショックを含めた耐久性については、上記ロータヨークと永久磁石との間の接合強度の結果から推定することができる。
(A)接着媒体に金属膜を使用した場合と、エポキシ樹脂を使用した場合とにお ける接合強度の比較
[比較例1]
鉄系材料からなるロータヨーク材13と、Nd−Fe−B系の希土類磁石からなる永久磁石14とを用意し、これらを図6(B)に示すように、接触面全体にエポキシ接着剤(ブレニー技研製「GM8300」)を80μmの厚さに塗布して接着した。次いで、実施例1と同様に、接合されたロータヨーク13と永久磁石14とに対して、JIS K 6850に準拠した引張りせん断試験を実施した。なお、各試験条件については、実施例1と同様とした。
[比較例2]
鉄系材料からなるロータヨーク材13と、Nd−Fe−B系の希土類磁石からなる永久磁石14とを用意し、これらを図6(B)に示すように、接触面全体にエポキシ接着剤(コニシ株式会社製「ボンドEセット」)を80μmの厚さに塗布して接着した。次いで、実施例1と同様に、接合されたロータヨーク13と永久磁石14に対して、JIS K 6850に準拠した引張りせん断試験を実施した。なお、各試験条件については、実施例1と同様とした。以上、実施例1および比較例1,2についての評価試験結果を図7に示す。
図7によれば、実施例1では、−20℃から200℃まで、ほぼ同じ強度が得られることが判る。よって、実施例1に相当するロータは、その使用時の全温度領域において安定して使用することができる。これに対し、比較例1では、低温側では十分な接合強度が得られるものの、高温側では接合強度が著しく低下することが判る。よって、比較例1に相当するロータは、その使用時の高温度領域においては安定して使用することができない。また、比較例2では、低温側および高温側の双方で、十分な接合強度が得られないことが判る。よって、比較例2に相当するロータは、その使用時の全温度領域において安定して使用することができない。なお、高温・高速回転での接合強度やサーマルショックを含めた耐久性については、上記ロータヨークと永久磁石との間の接合強度の結果を考慮すれば、実施例1については優れており、各比較例については不良であることが推定される。
(B)永久磁石からロータヨークへの熱ひけ性
永久磁石からロータヨークへの熱ひけ性については、ロータ全体の熱伝導率が問題となるため、この熱伝導率について調査した。
[比較例3]
鉄系材料からなるロータヨーク材13と、Nd−Fe−B系の希土類磁石からなる永久磁石14とを用意し、これらを図6(B)に示すように、接触面全体にエポキシ接着剤(ブレニー技研製「GM8300」)を塗布して接着した。次いで、同図における接合部分における熱伝導率をJIS R 1611に準拠したレーザーフラッシュ法により測定した。
上記熱伝導率測定の結果、実施例2では、熱伝導率が50〜400W/m・Kと高い値を示した。これは、永久磁石とロータヨークとの間に銅メッキ膜を介在させたことにより、金属同士の接触部分が存在するためである。したがって、実施例2では優れた熱ひけ性が実現される。一方、比較例3では、熱伝導率が0.1〜0.9W/m・Kと著しく低いものとなった。これは、永久磁石とロータヨークとの間にエポキシ樹脂を介在させたことにより、樹脂部分において熱が滞留し、優れた熱伝導性が実現されないためである。したがって、比較例3では優れた熱ひけ性が実現されない。
(C)金属膜を銅メッキ膜から構成し、銅メッキ膜の膜厚を変化させた場合の接 合強度
[比較例4,5]
鉄系材料からなるロータヨーク(外径170mm、厚さ55mm)に、Nd−Fe−B系の希土類磁石からなる永久磁石を銅メッキ(膜厚20μm(比較例4),膜厚100μm(比較例5))した各メッキ付き永久磁石をレーザビーム溶接により接合してロータをそれぞれ製造した。次いで、各ロータにおいて、接合されたロータヨークと永久磁石とに対し、JIS K 6850に準拠した引張りせん断試験を実施した。なお、各試験条件については、実施例1と同様とした。なお、引張りせん断試験実施温度は、200℃とした。さらに、各ロータを8000rpmで30分回転させ、永久磁石のロータヨークからの離脱について調査した。
図8は、実施例3〜7および比較例4,5についての、引張りせん断試験の結果を示すグラフである。同図に示すところのよれば、実施例3〜7については、銅メッキの膜厚の増大に伴い、接合強度が高められていることから、製造コストの観点から好適な例であるといえる。また実施3〜7については、上記のようにロータを回転させても永久磁石のロータヨークからの離脱は生じなかったため、使用に耐え得る十分な接合強度が得られていることも確認された。
これに対し、比較例4については、上記のようにロータを回転させた場合、永久磁石のロータヨークからの離脱が生じたため、使用に耐え得る十分な接合強度が得られていないことから、好適な例とはいえない。また比較例5については、図8に示すように、実施例7に比して銅メッキの膜厚を増大させているにもかかわらず、接合強度が高められていないので、製造コストの観点から好適な例であるとはいえない。以上示したとおり、実施例3〜7および比較例4,5についての接合強度等の調査結果から、金属膜厚の好適な範囲は、本願の請求項3に記載したように、25〜90μmであるといえる。
(D)金属膜を銅メッキ膜とニッケルメッキ膜との少なくとも一方から構成し、 全メッキ膜の厚みを一定とするとともに、各メッキ膜の膜厚を変化させた場合の 接合強度
図9によれば、実施例8〜13のいずれの例においても、図8から推測して、使用に耐え得る好適な接合強度が得られていることが判る。また、銅メッキとニッケルメッキとの膜厚を変化させても、全体の金属膜厚が一定であれば、接合強度にはほとんど影響がないことが判る。
Claims (6)
- 永久磁石をロータヨーク表面に接合してなる永久磁石式モータ用ロータにおいて、前記永久磁石と前記ロータヨークとの間に金属膜を介在させ、ビーム溶接により接合を行うことを特徴とする永久磁石式モータ用ロータ。
- 前記金属膜を永久磁石表面に形成することを特徴とする請求項1に記載の永久磁石式モータ用ロータ。
- 前記金属膜の厚さが25〜90μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の永久磁石式モータ用ロータ。
- 前記金属膜が、ニッケルまたは銅のうちの少なくとも一種類を含む膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の永久磁石式モータ用ロータ。
- 前記金属膜は、銅からなる銅膜とニッケルからなるニッケル膜とから構成されていることを特徴とする請求項4に記載の永久磁石式モータ用ロータ。
- 前記ロータヨークが積層ロータヨークであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の永久磁石式モータ用ロータ。
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